説明

光硬化性転写シート、及びこれを用いた凹凸パターンの形成方法

【課題】ナノインプリントプロセス法において、中間スタンパの作製に使用できる光硬化性転写シートであり、微細凹凸パターンを有する金型との離型性、凹凸パターンが転写される光硬化性樹脂との離型性が良好であり、且つ転写性に優れた光硬化性転写シートを提供する。更に、それを用いた凹凸パターンの形成方法を提供する。
【解決手段】加圧により変形可能で、ポリマーと光重合性官能基を有する反応性希釈剤を含む光硬化性組成物からなる光硬化性転写層11を有する光硬化性転写シートであって、前記ポリマーが、主鎖に脂環式構造を有する繰り返し単位、及び(メタ)アクリレート繰り返し単位を含む樹脂からなり、且つ前記ポリマー中の脂環式構造を有する繰り返し単位の含有率が15〜70質量%であることを特徴とする光硬化性転写シート10。更に、これを用いた凹凸パターンを形成する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子デバイス、光学部品、記録媒体等の製造に有利に使用することができる光硬化性転写シート、及びこれを用いた凹凸パターンの形成方法、特に微細加工技術であるナノインプリントに関する。
【背景技術】
【0002】
光或いは電子線を用いる微細加工技術の進展はめざましく、光では100nm、電子線では10nmの加工が達成されている。しかしながら、それら微細加工装置は高価なため、より安価な加工技術が求められている。このような目的に沿って、ナノインプリント技術によりシリコン基板等に所望の回路パターン等を形成する方法が確立されつつある。ナノインプリント技術は、従来のプレス技術と比較して、より微小な構造を実現するための微細加工の技術である。この技術自体には解像度に限界がなく、解像度はモールド(即ち金型)の作製精度によって決まる。したがって、モールドさえ作製できれば、従来のフォトリソグラフィーより容易に、且つはるかに安価な装置により、極微細構造を形成することが可能である。
【0003】
ナノインプリント技術には転写される材料により2種類に大別される。一方は、転写される材料を加熱し、モールド(金型)により塑性変形させた後、冷却してパターンを形成する熱ナノインプリント技術である。もう一方は、基板上に室温で液状の光硬化性樹脂を塗布した後、光透過性のモールドを樹脂に押し当て、光を照射させることで基板上の樹脂を硬化させパターンを形成する光ナノインプリント技術である。特に光ナノインプリント技術は室温にてパターン形成できるため熱による基板、モールド間の線膨張係数差による歪が発生しにくく、高精度のパターン形成が可能であり、半導体等のリソグラフィ技術の代替技術として注目を集めている。
【0004】
ナノインプリントによりパターン成形を安価に行うことができるが、マザースタンパであるモールド(金型)に樹脂が付着し易く、樹脂が付着した場合、そのモールドを補修することは極めて困難である。モールド(金型)が非常に高価なため、製造全体として安価とは言えない場合が多い。
【0005】
特許文献1には、2工程によるインプリント法が開示されている。即ち、第1工程で、マイクロメータ又はナノメータのオーダの微細な凹凸のパターンニングがなされた表面を有するテンプレートに、サーモプラスティックポリマー等の可塑性ポリマーフォイルの表面と表面が向かい合い接触するように置かれ、インプリント処理により、テンプレート表面のパターンが反転されたものがポリマーフォイルの表面に形成される。そして、第2工程で、得られたポリマースタンパ(中間スタンパ)に、上記と同様な処理がなされ、他の可塑性ポリマーフォイルの表面に第二の反転レプリカ(テンプレートと同一のパターン)が形成される。この方法では、製品が中間スタンパを用いて成形されるため、マザースタンパ(テンプレート)には深刻な損傷が発生することはない。しかしながら、中間スタンパの作製に熱可塑性ポリマーを使用しているため、幅広く様々なポリマーを使用することができる反面、成形に加熱、冷却という大きなエネルギーが必要となること、そして成形時間が1分以上の長い時間が必要となることとの不利がある。従って、連続製造する場合のタクト(処理に必要な時間)の短縮が困難となる。
【0006】
また特許文献1には、中間スタンパ作製時に、光硬化性樹脂を併用する例が記載されているが、光硬化性樹脂は液状物のため、作業性が悪く、また硬化収縮、厚みムラ等も大きいことから、上記タクトの短縮等を含む生産性の向上を図ることができない。さらに、マザースタンパとの剥離性、及び中間スタンパから凹凸パターンが転写された製品である硬化した光硬化性樹脂との剥離性が低いという問題がある。
【0007】
一方、特許文献2には、加圧により変形可能な光硬化性組成物からなる光硬化性転写シートを用いて中間スタンパを作製する方法が開示されている。これにより作業性、硬化収縮等については改善されている。また、特許文献2においては、光硬化性組成物が滑剤としてリン原子含有化合物を含むことにより、マザースタンパからの剥離性等が改善されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−165812号公報
【特許文献2】特開2007−291339号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献2の光硬化性転写シートを用いて、上述のような2工程のインプリント法を行う場合、第1工程のマザースタンパからインプリント処理により中間スタンパを得る工程における成型性、離型性は良好であるが、第2工程の中間スタンパから光硬化性樹脂(特に、硬化性が良好なラジカル硬化型の液状紫外線硬化樹脂)への転写においては、中間スタンパに光硬化性樹脂が付着し、精確な凹凸パターンの成型が十分にできない場合がある。
【0010】
従って、本発明の目的は、ナノインプリントプロセス法において、中間スタンパの作製に有利に使用することができる光硬化性転写シートであって、その際に使用される微細凹凸パターンを有する金型との離型性、及び中間スタンパから凹凸パターンが転写された光硬化性樹脂との離型性が良好であり、且つ凹凸パターンの転写性に優れた光硬化性転写シートを提供することにある。
【0011】
また、本発明の目的は、上記光硬化性転写シートを用いて微細な凹凸パターンを形成する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的は、加圧により変形可能で、ポリマーと光重合性官能基を有する反応性希釈剤を含む光硬化性組成物からなる光硬化性転写層を有する光硬化性転写シートであって、
前記ポリマーが、主鎖に脂環式構造を有する繰り返し単位、及び(メタ)アクリレート(アクリレート又はメタクリレートを示す。以下同様)繰り返し単位を含む樹脂からなり、且つ前記ポリマー中の脂環式構造を有する繰り返し単位の含有率が15〜70質量%であることを特徴とする光硬化性転写シートによって達成される。これにより金型や光硬化性樹脂との離型性、特に光硬化性樹脂(特にラジカル硬化型の紫外線硬化樹脂)との離型性が良好な光硬化性転写シートとすることができる。
【0013】
本発明者らは、特願2009-213968号(未公開)において、脂環基を有する(メタ)アクリレート繰り返し単位を含むアクリル樹脂からなるポリマーを用いて離型性が向上された光硬化性転写シートを開発している。特願2009-213968号では、極性が低い脂環基を側鎖に有するポリマーによって離型性を向上させていたが、本発明においては、ポリマーの主鎖に上記の含有率で脂環骨格を含有させることで、更に極性を下げることが可能となり、離型性を更に向上させることができるものと考えられる。なお、ポリマー中の脂環式構造の繰り返し単位が70質量%を超えると、高い転写性、硬化性を有するアクリル系樹脂としての性質が低下し、光硬化性転写層の転写性が低下する。
【0014】
本発明の光硬化性転写シートの好ましい態様は以下の通りである。
(1)前記脂環式構造を有する繰り返し単位が、下記式(I):
【0015】
【化1】



[但し、式中、Xは、それぞれ独立してメチレン基、エチレン基又は2価の酸素原子を表し、R、R、R、Rは、それぞれ独立して水素原子、又は炭素原子数1〜19の直鎖状、分岐状もしくは環状の炭化水素基、及び-(CH-C(O)-OR、−(CH−OR、−(CH−C(O)−OR、−(CH−C(O)−OR−C(O)−OR(但し、式中、mは0〜6の整数であり、R、Rは、それぞれ独立して炭素原子数1〜19の直鎖状、分岐状もしくは環状の炭化水素基を表す)からなる群から選択される置換基を表し、R、Rはそれらが結合して、環員炭素原子と共に環状構造を形成しても良く、nは0〜3の整数である]
で表される繰り返し単位である。
(2)前記式(I)における、Xがメチレン基であり、nが0である。
(3)前記脂環式構造を有する繰り返し単位が、2−ノルボルネン由来の繰り返し単位である。
(4)前記ポリマー中の脂環式構造を有する繰り返し単位の含有率が15〜60質量%である。
(5)前記脂環式構造を有する繰り返し単位の含有率が、前記光硬化性組成物の乾燥質量に対して8〜30質量%である。
(6)前記ポリマー中の(メタ)アクリレート繰り返し単位が、炭素原子数1〜12の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基を有する(メタ)アクリレート繰り返し単位を含む。
(7)前記ポリマーが、重合性官能基又はヒドロキシル基を有する樹脂からなる。
【0016】
また、上記目的は、下記の工程:
(1)表面に微細な凹凸パターンを有する金型の表面を、本発明の光硬化性転写シートの転写層に、当該金型の凹凸パターン面が、当該転写層の表面に接触するように裁置、押圧して、転写層の表面が凹凸パターン表面に沿って密着した積層体を形成する工程;
(2)金型を有する積層体の転写層を紫外線照射により硬化させる工程、及び
(3)金型を除去することにより、当該転写層の表面に微細な反転凹凸パターンを形成する工程;
を含む凹凸パターンの形成方法によっても達成される。
この方法においては、本発明の光硬化性転写シートを用いて、金型の表面の微細な凹凸パターンを転写しているので、光硬化性転写シートと金型との離型性が良好で、金型に転写層の一部が付着することなく、欠陥のない反転凹凸パターンを転写層に形成することができる。
更に、前記工程(3)を終了した後、
下記の工程:
(4)前記金型の凹凸パターンの反転凹凸パターンが形成された光硬化性転写シート(中間スタンパ)の当該反転凹凸パターンの表面を、基板上に形成された光硬化性樹脂組成物からなる光硬化性樹脂層に、該中間スタンパの反転凹凸パターン面が光硬化性樹脂層の表面に接触するように裁置、押圧して、光硬化性樹脂層の表面が反転凹凸パターン表面に沿って密着した積層体を形成する工程;
(5)中間スタンパを有する積層体の光硬化性樹脂層を紫外線照射により硬化させる工程;及び
(6)中間スタンパを除去することにより、光硬化性樹脂層の表面に前記金型と同一の微細な凹凸パターンを形成する工程;
を行う本発明の凹凸パターンの形成方法によっても達成される。
この方法においては、金型の反転凹凸パターンが形成された本発明の光硬化性転写シートを中間スタンパとして用いて、基板上に形成された光硬化性樹脂層に微細な凹凸パターンを転写しているので、特に中間スタンパと硬化した光硬化性樹脂層との離型性が良好で、中間スタンパに光硬化性樹脂層の一部が付着することなく、欠陥のない金型と同一の凹凸パターンを形成することができる。
【0017】
本発明の凹凸パターンの形成方法の好ましい態様は以下の通りである。
(1)前記光硬化性樹脂組成物が液状である。本発明の方法においては、特に液状の光硬化性樹脂組成物であっても離型性が良好であり、有効である。
(2)前記金型がスタンパである。本発明の方法は、ナノインプリントプロセス法に使用するスタンパを用いた凹凸パターンの形成に有効である。
【発明の効果】
【0018】
本発明の光硬化性転写シートは、主鎖に脂環骨格を所定の含有率で有することにより極性が低下したポリマーを含む光硬化性転写層を有するので、金型や光硬化性樹脂との離型性、特に光硬化性樹脂(特にラジカル硬化型の紫外線硬化樹脂)との離型性が良好で、且つ凹凸パターンの転写性に優れた光硬化性転写シートである。また、本発明の光ナノインプリントプロセス法等の微細な凹凸パターンの形成方法は、中間スタンパとして本発明の光硬化性転写シートを用いているので、金型の凹凸パターンを精確に製品である光硬化性樹脂まで転写することができる方法である。
【0019】
従って、本発明の凹凸パターンの形成方法により、電子ディスプレイリブ、電子デバイス(リソグラフィ、トランジスタ)、光学部品(マイクロレンズアレイ、導波路、光学フィルタ、フォトニックス結晶)、バイオ関連材料(DNAチップ、マイクロリアクタ)、記録媒体(パターンドメディア、DVD)を有利に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は本発明の光硬化性転写シートの代表的な一例を示す概略断面図である。
【図2】図2は本発明の微細凹凸パターン形成方法の代表的な一例を示す概略断面図である。
【図3】図3は本発明の微細凹凸パターン形成方法の代表的な一例を示す概略断面図である(図2から続いて行う場合)。
【図4】図4は本発明に従う微細凹凸パターンの連続形成方法の代表的な一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に図面を参照しながら本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0022】
図1は本発明の光硬化性転写シート10の実施形態の代表的な一例を示す概略断面図である。光硬化性転写層11には、一方の表面に、易接着層12aを有するポリマーフィルム12bからなる透明フィルム12、及び他方の表面に剥離シート13が設けられている。透明フィルム12は、易接着層12aにより光硬化性転写層11に強力に接着されている。従って、易接着層12aは、光硬化性転写層11、硬化後の光硬化性転写層11及びポリマーフィルム12bと優れた接着性を示す。また、ポリマーフィルム12bにより、光硬化性転写シート10及び硬化後の光硬化性転写シート10の膜自立性が付与されている。剥離シート13は光硬化性転写層を保護するためのシートで、無くても良いが、長尺シートで使用する場合等はハンドリング性の点で設けた方が好ましい。剥離シートは、一般に、プラスチックシート上に剥離層が設けられたものであり、剥離層が光硬化性転写層11の表面と接触するように設けられており、通常、使用時に除去される。
【0023】
[光硬化性転写層]
本発明における光硬化性転写層11は、金型(好ましくはスタンパ)の微細凹凸パターン表面を押圧することにより精確に転写できるように、加圧により変形し易い層であるとともに、硬化後における金型との離型性に優れ、更に中間スタンパとして使用した場合には、凹凸パターンが転写された製品の光硬化性樹脂(特にラジカル硬化型の紫外線硬化性樹脂)との離型性に優れており、且つ転写性に優れている。
【0024】
即ち、本発明において、光硬化性転写層11を形成する光硬化性組成物は、ポリマー、光重合性官能基(一般に炭素−炭素2重結合基、好ましくは(メタ)アクリロイル基(アクリロイル基及びメタクリロイル基を示す。以下同様。))を有する反応性希釈剤(モノマー及びオリゴマー)、光重合性開始剤、及び所望により他の添加剤から構成されている。そして、上記ポリマーは、主鎖に脂環式構造を有する繰り返し単位、及び(メタ)アクリレート繰り返し単位を含む樹脂から構成されており、且つ前記ポリマー中の脂環式構造を有する繰り返し単位の含有率が15〜70質量%であることを特徴とする。脂環式構造を有する繰り返し単位により構成される脂環骨格は極性が低く、本発明においては、ポリマーの主鎖に脂環骨格を含有させることで、脂環基が、例えばアクリル樹脂の側鎖にある場合よりも、ポリマーの極性を更に低下させることが可能となる。これにより、本発明の光硬化性転写層は、金型や光硬化性樹脂との離型性、特に光硬化性樹脂との離型性が更に良好になっている。また、ポリマー中の脂環式構造を有する繰り返し単位の含有率は1質量%未満であると、ポリマーの極性を低下させる効果がほとんどなく、70質量%を超えると転写性が低下する。これは、高い転写性、硬化性を有するアクリル系樹脂としての性質が低下するためと考えられる。
【0025】
本発明において、主鎖とはモノマー単位の連結により構成された鎖の部分を言う。従って、主鎖に脂環式構造を有する繰り返し単位を含むとは、ノルボルネン系モノマー等の環状オレフィンの開環重合等により形成される脂環骨格を含むことを意味する。
【0026】
本発明において、脂環式構造を有する繰り返し単位は、特に制限はなく、例えば、ノルボルネン系モノマー、単環の環状オレフィン系モノマー、環状共役ジエン系モノマー、及びビニル脂環式炭化水素系モノマー等の脂環式構造を有するモノマーを重合させることで形成される繰り返し単位が挙げられる。好ましい脂環式構造を有する繰り返し単位としては、下記式(I):
【0027】
【化2】



[但し、式中、Xは、それぞれ独立してメチレン基、エチレン基又は2価の酸素原子を表し、R、R、R、Rは、それぞれ独立して水素原子、又は炭素原子数1〜19の直鎖状、分岐状もしくは環状の炭化水素基、及び-(CH-C(O)-OR、−(CH−OR、−(CH−C(O)−OR、−(CH−C(O)−OR−C(O)−OR(但し、式中、mは0〜6の整数であり、R、Rは、それぞれ独立して炭素原子数1〜19の直鎖状、分岐状もしくは環状の炭化水素基を表す)からなる群から選択される置換基を表し、R、Rはそれらが結合して、環員炭素原子と共に環状構造を形成しても良く、nは0〜2の整数である]
で表される、繰り返し単位が挙げられる。
【0028】
上記式(I)中、Xはメチレン基、エチレン基が好ましく、特にメチレン基が好ましい。また、nは0又は1が好ましく、特に0が好ましい。R、R、R、Rは、水素、メチル基、エチル基、及びt−ブトキシカルボニル基、t-ブトキシカルボニルメトキシカルボニル基等が好ましく挙げられる。
【0029】
脂環式構造を有する繰り返し単位は、上述の通り、脂環式構造を有するモノマーを由来とするものであり、下記式(II):
【0030】
【化3】



[但し、式中、X、R、R、R、R及びnは上記式(I)と同義である]
で表されるノルボルネン系モノマー由来のものが好ましい。
【0031】
ノルボルネン系モノマーとして具体的には、例えば2-ノルボルネン(即ち、ビシクロ[2.2.1]へプト-2-エン)、5−メチル−ビシクロ[2.2.1]へプト-2-エン、5,5−ジメチル−ビシクロ[2.2.1]へプト-2-エン、5−エチル−ビシクロ[2.2.1]へプト-2-エン、5−ブチル−ビシクロ[2.2.1]へプト-2-エン、5−ヘキシル−ビシクロ[2.2.1]へプト-2-エン、5−オクチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−ビニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−プロペニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタト−2−エン、1,3−ジシクロペンタジエン、5−シクロペンチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−シクロヘキシル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−シクロヘキセニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−フェニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、テトラシクロドデセン(即ち、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−ドデカ−3−エン)、8−メチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−ドデカ−3−エン、8−エチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−ドデカ−3−エン、8−メチリデンテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−ドデカ−3−エン、8−エチリデンテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−ドデカ−3−エン、8−ビニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−ドデカ−3−エン、8−プロペニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−ドデカ−3−エン、8−シクロペンチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−ドデカ−3−エン、8−シクロヘキシル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−ドデカ−3−エン、8−シクロヘキセニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−ドデカ−3−エン、8−フェニル−シクロペンチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−ドデカ−3−エン、1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレン(即ち、テトラシクロ[7.4.0.110,13.02,7]トリデカ−2,4,6,11−テトラエン)、1,4−メタノ−1,4,4a,5,10,10a−ヘキサヒドロアントラセン(即ち、テトラシクロ[8.4.0.111,14.03,8]テトラデカ−3,5,7,12−テトラエン)、ペンタシクロ[6.5.13,6.02,7.09,13]ペンタデカ−3,10−ジエン、ペンタシクロ[7.4.0.13,6.110,13.02,7]ペンタデカ−4,11−ジエン、5−メトキシカルボニルビシクロ[ 2.2.1 ]ヘプト−2−エン、5−エトキシカルボニルビシクロ[ 2.2.1 ]ヘプト−2−エン、5−n−プロポキシカルボニルビシクロ[ 2.2.1 ]ヘプト−2−エン、5−i−プロポキシカルボニルビシクロ[ 2.2.1 ]ヘプト−2−エン、5−n−ブトキシカルボニルビシクロ[ 2.2.1 ]ヘプト−2−エン、5−(2−メチルプロポキシ)カルボニルビシクロ[ 2.2.1 ]ヘプト−2−エン、5−(1−メチルプロポキシ)カルボニルビシクロ[ 2.2.1 ]ヘプト−2−エン、5−t−ブトキシカルボニルビシクロ[ 2.2.1 ]ヘプト−2−エン、5−シクロヘキシルオキシカルボニルビシクロ[ 2.2.1 ]ヘプト−2−エン、5−(4−t−ブチルシクロヘキシルオキシ)カルボニルビシクロ[ 2.2.1]ヘプト−2−エン、5−フェノキシカルボニルビシクロ[ 2.2.1 ]ヘプト−2−エン、5−(1−エトキシエトキシ)カルボニルビシクロ[ 2.2.1 ]ヘプト−2−エン、5−(1−シクロヘキシルオキシエトキシ)カルボニルビシクロ[ 2.2.1]ヘプト−2−エン、5−t−ブトキシカルボニルメトキシカルボニルビシクロ[ 2.2.1 ]ヘプト−2−エン、5−テトラヒドロフラニルオキシカルボニルビシクロ[ 2.2.1 ]ヘプト−2−エン、5−テトラヒドロピラニルオキシカルボニルビシクロ[ 2.2.1 ]ヘプト−2−エン、5−メチル−5−メトキシカルボニルビシクロ[ 2.2.1 ]ヘプト−2−エン、5−メチル−5−エトキシカルボニルビシクロ[ 2.2.1 ]ヘプト−2−エン、5−メチル−5−n−プロポキシカルボニルビシクロ[ 2.2.1 ]ヘプト−2−エン、5−メチル−5−i−プロポキシカルボニルビシクロ[ 2.2.1 ]ヘプト−2−エン、5−メチル−5−n−ブトキシカルボニルビシクロ[ 2.2.1 ]ヘプト−2−エン、5−メチル−5−(2−メチルプロポキシ)カルボニルビシクロ[ 2.2.1]ヘプト−2−エン、5−メチル−5−(1−メチルプロポキシ)カルボニルビシクロ[ 2.2.1]ヘプト−2−エン、5−メチル−5−t−ブトキシカルボニルビシクロ[ 2.2.1 ]ヘプト−2−エン、5−メチル−5−シクロヘキシルオキシカルボニルビシクロ[ 2.2.1 ]ヘプト−2−エン、5−メチル−5−(4−t−ブチルシクロヘキシルオキシ)カルボニルビシクロ[ 2.2.1 ]ヘプト−2−エン、5−メチル−5−フェノキシカルボニルビシクロ[ 2.2.1 ]ヘプト−2−エン、5−メチル−5−(1−エトキシエトキシ)カルボニルビシクロ[ 2.2.1]ヘプト−2−エン、5−メチル−5−(1−シクロヘキシルオキシエトキシ)カルボニルビシクロ[2.2.1 ]ヘプト−2−エン、5−メチル−5−t−ブトキシカルボニルメトキシカルボニルビシクロ[ 2.2.1 ]ヘプト−2−エン、5−メチル−5−テトラヒドロフラニルオキシカルボニル)ビシクロ[ 2.2.1] ヘプト−2−エン、5−メチル−5−テトラヒドロピラニルオキシカルボニルビシクロ[ 2.2.1] ヘプト−2−エン、5,6−ジ(メトキシカルボニル)ビシクロ[ 2.2.1 ]ヘプト−2−エン、5,6−ジ(エトキシカルボニル)ビシクロ[ 2.2.1 ]ヘプト−2−エン、5,6−ジ(n−プロポキシカルボニル)ビシクロ[ 2.2.1 ]ヘプト−2−エン、5,6−ジ(i−プロポキシカルボニル)ビシクロ[ 2.2.1 ]ヘプト−2−エン、5,6−ジ(n−ブトキシカルボニル)ビシクロ[ 2.2.1 ]ヘプト−2−エン、5,6−ジ(2−メチルプロポキシカルボニル)ビシクロ[ 2.2.1 ]ヘプト−2−エン、5,6−ジ(1−メチルプロポキシカルボニル)ビシクロ[ 2.2.1 ]ヘプト−2−エン、5,6−ジ(t−ブトキシカルボニル)ビシクロ[ 2.2.1 ]ヘプト−2−エン、5,6−ジ(シクロヘキシルオキシカルボニル)ビシクロ[ 2.2.1 ]ヘプト−2−エン、5,6−ジ(4−t−ブチルシクロヘキシルオキシカルボニル)ビシクロ[ 2.2.1 ]ヘプト−2−エン、5,6−ジ(フェノキシカルボニル)ビシクロ[ 2.2.1 ]ヘプト−2−エン、5,6−ジ(1−エトキシエトキシカルボニル)ビシクロ[ 2.2.1 ]ヘプト−2−エン、5,6−ジ(1−シクロヘキシルオキシエトキシカルボニル)ビシクロ[ 2.2.1 ]ヘプト−2−エン、5,6−ジ(t−ブトキシカルボニルメトキシカルボニル)ビシクロ[ 2.2.1 ]ヘプト−2−エン、5,6−ジ(テトラヒドロフラニルオキシカルボニル)ビシクロ[ 2.2.1 ]ヘプト−2−エン、5,6−ジ(テトラヒドロピラニルオキシカルボニル)ビシクロ[ 2.2.1 ]ヘプト−2−エン等が挙げられる。これらを1種又は複数種組み合わせて使用することができる。脂環式構造を有する繰り返し単位は、2−ノルボルネン由来のものが特に好ましい。
【0032】
本発明において、ポリマー中の脂環式構造を有する繰り返し単位の含有率(本発明において、「脂環式モノマー単位含有率P」とも言う)は15〜70質量%であれば特に制限はないが、より離型性、転写性及び作業性に優れた光硬化性転写シートとするため15〜60質量%が好ましく、更に30〜60質量%が好ましい。
【0033】
また、本発明において、光硬化性組成物全体に対する脂環式構造を有する繰り返し単位の含有率には特に制限はないが、低すぎると光硬化性転写層の離型性が低下し、高すぎると転写性及び作業性が低下する場合がある。従って、光硬化性組成物中の脂環式構造を有する繰り返し単位の含有率(本発明において、「脂環式モノマー単位含有率T」とも言う)は、光硬化性組成物の乾燥質量に対して8〜30質量%が好ましく、更に15〜25質量%が好ましい。
【0034】
なお、本発明において、ポリマー中及び光硬化性組成物中の脂環式構造を有する繰り返し単位の含有率(脂環式モノマー単位含有率P、及び脂環式モノマー単位含有率T)は、以下のように算出する。
(1)脂環式モノマー単位含有率Pは、光硬化性組成物のポリマーの調製に用いる脂環式構造を有するモノマー(本発明において、「脂環式モノマー」とも言う)の質量及び総モノマー質量から、式(V)により算出する。
脂環式モノマー単位含有率P=
(脂環式モノマー質量/総モノマー質量)×100(%)・・・(V)
(2)脂環式モノマー単位含有率Tを、脂環式モノマー単位含有率P、光硬化性組成物に用いる脂環式構造を有する繰り返し単位を含むポリマー(本発明において、「脂環式構造含有ポリマー」とも言う)の質量及び光硬化性組成物総質量から、式(VI)により算出する。
【0035】
脂環式モノマー単位含有率T=
(((脂環式モノマー単位含有率P/100)×脂環式構造含有ポリマー質量)/光硬化性組成物総質量)×100(%)・・・(VI)
【0036】
[ポリマー]
本発明において、光硬化性転写層11を形成する光硬化性組成物のポリマーを構成する樹脂は、主鎖に上述の脂環式構造を有する繰り返し単位と、(メタ)アクリレート繰り返し単位を含む樹脂(即ち、アクリル樹脂の主鎖に脂環式構造を有する繰り返し単位を含有する樹脂(本発明において、単に「アクリル樹脂」とも言う))である。
【0037】
(メタ)アクリレート繰り返し単位は、炭素原子数1〜12の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基を有する(メタ)アクリレート繰り返し単位を含むことが好ましい。即ち、ポリマー(メタ)アクリレート繰り返し単位を構成するモノマー成分としては、メチル(メタ)アクリレートや、アルコール残基が炭素原子数2〜10個の(メタ)アクリル酸エステル、炭素原子数が3〜12個の脂環基(脂環式炭化水素基、脂環式エーテル基を含む)を有する(メタ)アクリル酸エステルを用いることができる。アルコール残基が炭素原子数2〜10個(特に3〜5個)のアルキル(メタ)アクリル酸エステルとしては、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。脂環基を有するアクリル酸エステルとしては、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。モノマー成分としては、メチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートが好ましく、特にメチル(メタ)アクリレートが好ましい。このような(メタ)アクリル酸エステルは、その繰り返し単位として、ポリマー中に、一般に5〜30質量%、特に10〜30質量%含まれることが好ましい。
【0038】
また、一般に、光硬化性転写層11を形成する光硬化性組成物のポリマーは、ガラス転移温度(Tg)が80℃以上のポリマーであることが好ましい。これにより、金型の微細凹凸パターンが容易に転写でき、硬化も高速で行うことができる。また硬化された形状も高いTgを有するのでその形状が変わることなく長期に維持され得る。ガラス転移温度が80℃以上のポリマーとしては、重合性官能基を有することが、反応性希釈剤と反応が可能となり硬化の高速化に有利である。またヒドロキシル基を有することにより、光硬化性転写層11にジイソシアネートを含ませることで、ポリマーを僅かに架橋させることが可能となり、転写層のしみ出し、層厚変動が大きく抑えられた層とするのに特に有利である。ジイソシアネートは、ヒドロキシル基を有さないポリマーでもある程度、上記の効果を有する。
【0039】
従って、本発明におけるアクリル樹脂は、重合性官能基又はヒドロキシル基を有するアクリル樹脂であることが特に好ましい。
【0040】
本発明において、重合性官能基を有するアクリル樹脂は、例えば上述の脂環式構造を有するモノマーの少なくとも1種と、グリシジル(メタ)アクリレートをモノマー成分とした共重合体で、且つ該グリシジル基に重合性官能基を有するカルボン酸が反応したもの、或いは上述の脂環式構造を有するモノマーの少なくとも1種と、重合性官能基を有するカルボン酸をモノマー成分とした共重合体で、且つ当該カルボン酸基にグリシジル(メタ)アクリレートが反応したものである。
【0041】
脂環式構造を有するモノマーについては上述の通りである。
ポリマー中の脂環式構造を有する繰り返し単位の含有率(脂環式モノマー単位含有率P)は、上述のように15〜70質量%であれば、特に制限はない。上述のように、本発明においては光硬化性組成物全体に対する脂環式構造を有する繰り返し単位の含有率(脂環式モノマー単位T)が、光硬化性転写層の離型性等に影響する場合があるので、このポリマーの調製の段階で、脂環式構造を有する繰り返し単位の含有率を調節するのが好ましい。
【0042】
また、グリシジル(メタ)アクリレート又は重合性官能基を有するカルボン酸は、その繰り返し単位として、ポリマー中に、一般に5〜25質量%、特に5〜20質量%含まれることが好ましい。得られた共重合体のグリシジル基又はカルボン酸基に、それぞれ重合性官能基を有するカルボン酸又はグリシジル(メタ)アクリレートを反応させる。
【0043】
上記の重合性官能基を有するアクリル樹脂は、例えば、以下のように製造することができる。
【0044】
上述の1種又は複数種の脂環式構造を有するモノマー及び(メタ)アクリルレートモノマーと、グリシジル基を1個かつ重合性官能基を1個有する化合物(好ましくはグリシジル(メタ)アクリレート)或いは重合性官能基を有するカルボン酸とを、ラジカル重合開始剤と有機溶剤の存在下で溶液重合法などの公知の方法にて反応させて共重合体であるグリシジル基含有アクリル樹脂(a)又はカルボキシル基含有アクリル樹脂(b)を得る。
次いで得られたグリシジル基含有アクリル樹脂(a)に重合性官能基を有するカルボン酸を加え、或いは得られたカルボキシル基含有アクリル樹脂(b)にグリシジル基を1個かつ重合性官能基を1個有する化合物(好ましくはグリシジルメタクリレート)を加え、必要に応じ加熱することによりアクリル系光硬化型樹脂(A)又はアクリル系光硬化型樹脂(B)を得る。この配合比は、グリシジル基とカルボキシル基のモル比が1/0.9〜1/1となるように配合するのが好ましく、より好ましくは1/1である。グリシジル基過剰では長期安定性において増粘、ゲル化のおそれがあり、カルボキシル基過剰では皮膚刺激性が上がり作業性が低下する。さらに1/1の場合は残存グリシジル基がなくなり、貯蔵安定性が顕著に良好になる。反応は塩基性触媒、リン系触媒などの存在下で公知の方法にて行うことができる。
【0045】
また、本発明において、ヒドロキシル基を有するアクリル樹脂は、上述の脂環式構造を有するモノマーの少なくとも1種と、アルコール残基がヒドロキシル基を有する炭素原子数2〜4個のアルキルの(メタ)アクリル酸エステルの少なくとも1種との共重合体である。
【0046】
脂環式構造を有するモノマーについては上述の通りである。
ポリマー中の脂環式構造を有する繰り返し単位の含有率(脂環式モノマー単位含有率P)は、上述のように15〜70質量%であれば、特に制限はない。上述のように、本発明においては光硬化性組成物全体に対する脂環式構造を有する繰り返し単位の含有率(脂環式モノマー単位T)が、光硬化性転写層の離型性等に影響する場合があるので、このポリマーの調製の段階で、脂環式構造を有する繰り返し単位の含有率を調節するのが好ましい。
【0047】
また、アルコール残基がヒドロキシル基を有する炭素原子数2〜4個のアルキルの(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレートを挙げることができ、その繰り返し単位として、ポリマー中に、一般に5〜25質量%、特に5〜20質量%含まれることが好ましい。
【0048】
本発明において、アクリル樹脂は、数平均分子量が90000以上、特に90000〜1000000、そして重量平均分子量が90000以上、特に90000〜300000であることが好ましい。
【0049】
さらに本発明では、アクリル樹脂として、ヒドロキシル基等の活性水素を有する官能基及び光重合性官能基の両方を有する樹脂も使用することができる。このような反応性樹脂は、主鎖又は側鎖に光重合性官能基及び活性水素を有する官能基を有するものである。従って、このような反応性樹脂は、例えば、上述の脂環式構造を有するモノマー及び(メタ)アクリレートモノマーと、ヒドロキシル基等の官能基を有する(メタ)アクリレート(例、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート)とを共重合させ、得られた重合体とイソシアナトアルキル(メタ)アクリレートなどの、重合体の官能基と反応し且つ光重合性基を有する化合物と反応させることにより得ることができる。その際、ヒドロキシル基が残るようにイソシアナトアルキル(メタ)アクリレートの量を調節して使用することにより、活性水素を有する官能基としてヒドロキシル基及び光重合性官能基を有するアクリル樹脂が得られる。
【0050】
或いは上記において、ヒドロキシル基の代わりにアミノ基を有する(メタ)アクリレート(例、2−アミノエチル(メタ)アクリレート)を用いることにより活性水素を有する官能基としてアミノ基を有する、光重合性官能基含有アクリル樹脂を得ることができる。同様に、活性水素を有する官能基としてカルボキシル基等を有する、光重合性官能基含有アクリル樹脂も得ることができる。
【0051】
本発明では、前記光重合性官能基をウレタン結合を介して有するアクリル樹脂も好ましい。
【0052】
上記光重合性官能基を有するアクリル樹脂は、光重合性官能基を一般に1〜50モル%、特に5〜30モル%含むことが好ましい。この光重合性官能基としては、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基が好ましく、特にアクリロイル基、メタクリロイル基が好ましい。
【0053】
本発明において、光硬化性転写層を形成する光硬化性組成物には、本発明の効果を損なわない限り、別のポリマーを含んでいても良い。別のポリマーとしては、ポリ酢酸ビニル、ビニルアセテート/(メタ)アクリレート共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、ポリスチレン及びその共重合体、ポリ塩化ビニル及びその共重合体、ブタジエン/アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体、メタクリレート/アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体、2−クロロブタジエン−1,3−ポリマー、塩素化ゴム、スチレン/ブタジエン/スチレン共重合体、スチレン/イソプレン/スチレンブロック共重合体、エポキシ樹脂、ポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン、セルロースエステル、セルロースエーテル、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール等を挙げることができる。
【0054】
[反応性希釈剤]
本発明において、光硬化性転写組成物に含まれる光重合性官能基を有する反応性希釈剤(モノマー及びオリゴマー)としては以下のものが挙げられる。例えば、(メタ)アクリルモノマー類としては、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカンモノ(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェニルオキシプロピル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルポリエトキシ(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニルオキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルホリン、N−ビニルカプロラクタム、o−フェニルフェニルオキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピルメタクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジプロポキシジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジアクリレート、グリセリンアクリレートメタクリレート、グリセリンジメタクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパンアクリレートメタクリレート、トリメチロールプロパンジメタクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリス〔(メタ)アクリロキシエチル〕イソシアヌレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。また、(メタ)アクリレートオリゴマー類としては、ポリオール化合物(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,9−ノナンジオール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、トリメチロールプロパン、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,4−ジメチロールシクロヘキサン、ビスフェノールAポリエトキシジオール、ポリテトラメチレングリコール等のポリオール類、前記ポリオール類とコハク酸、マレイン酸、イタコン酸、アジピン酸、水添ダイマー酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の多塩基酸又はこれらの酸無水物類との反応物であるポリエステルポリオール類、前記ポリオール類とε−カプロラクトンとの反応物であるポリカプロラクトンポリオール類、前記ポリオール類と前記、多塩基酸又はこれらの酸無水物類のε−カプロラクトンとの反応物、ポリカーボネートポリオール、ポリマーポリオール等)と、有機ポリイソシアネート(例えば、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4'−ジイソシアネート、ジシクロペンタニルジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4'−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,2',4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等)と水酸基含有(メタ)アクリレート(例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェニルオキシプロピル(メタ)アクリレート、シクロヘキサン−1,4−ジメチロールモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート等)の反応物であるポリウレタン(メタ)アクリレート、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸の反応物であるビスフェノール型エポキシ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。これら光重合可能な官能基を有する化合物は1種又は2種以上、混合して使用することができる。
【0055】
本発明において、光硬化性組成物のポリマーと反応性希釈剤との質量比は、20:80〜80:20、更に30:70〜70:30の範囲が好ましく、特に、45:55〜55:45の範囲が好ましい。反応性希釈剤の量が多過ぎると、べたついて作業性が低下する場合があり、反応性希釈剤の量が少な過ぎると、タック(軽い力で短時間に被接着体に粘着する力)が小さ過ぎて転写性が低下する場合がある。
【0056】
[透明フィルム]
本発明において、透明フィルム12のポリマーフィルム12bは、本発明の光硬化性転写シート10に使用可能な透明性や物性があれば、どのようなものでも良い。好ましくはポリエステルフィルムである。このポリエステルは、芳香族二塩基酸又はそのエステル形成性誘導体とジオール又はそのエステル形成性誘導体とから合成される線状飽和ポリエステルである。
【0057】
このようなポリエステルの例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ(1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)等を挙げることができ、これらの共重合体又はこれと副成分(50モル%未満)としての他樹脂とのブレンドであってもよい。これらのポリエステルのうち、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレートが力学的物性や光学物性等のバランスが良いので好ましい。特に、ポリエチレン−2,6−ナフタレートは機械的強度の大きさ、熱収縮率の小ささ、加熱時のオリゴマー発生量の少なさなどの点でポリエチレンテレフタレートに優っており最も好ましい。
【0058】
ポリマーフィルム12bの厚さは1〜500μmであることが好ましく、より好ましくは3〜400μm、更に好ましくは6〜300μm、特に好ましくは12〜250μmである。
【0059】
本発明において、透明フィルム12の易接着層12aは無くてもいが、ポリマーフィルム12bと光硬化性転写層11との密着性をより強力にするために、易接着層12aを設けた方が好ましい。易接着層12aは、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂の1種又は2種以上の混合物からなる易接着であることが好ましい。
易接着層12aの厚さは、0.01〜0.3μmの範囲、特に0.02〜0.2μmの範囲あることが好ましい。
【0060】
[凹凸パターン形成方法]
次に、上記光硬化性転写シート10を用いて、本発明の微細凹凸パターンの形成方法について、図面を参照しながら詳細に説明する。一般にナノインプリントプロセス法もこの微細凹凸パターンの形成方法のように行うことができる。
図2及び図3は、本発明の微細凹凸パターンの形成方法における実施の形態の代表的な一例を示す概略断面図である。まず光硬化性転写シート10から、剥離シート13を除去し、光硬化性転写層11を露出させる。光硬化性転写層11は透明フィルム12のポリマーフィルム12b上の易接着層12aに接着、固定されている。金型としてスタンパ14を、その微細凹凸パターン面が光硬化性転写層11の表面に対向するように配置する(図2(a))。続いて、光硬化性転写層11上に、スタンパ14を押圧し、光硬化性転写層11の表面がスタンパ14の凹凸パターンの表面に沿って密着した積層体を形成する(図2(b):以上工程(1))。押圧が可能なように、光硬化性転写層11は必要に応じて加熱される。常温で押圧可能であれば加熱する必要はない。この状態で、光硬化性転写層11を、光(UV)照射することにより硬化させる(工程(2))。押圧しながら光照射することがタクトを短縮できるので好ましい。その後、スタンパ14を硬化した光硬化性転写層11cから除去する(図2(c):工程(3))。このようにして、スタンパ14の微細凹凸パターンが反転した凹凸パターンを光硬化性転写層11上に形成する。本発明の方法においては、本発明の光硬化性転写シート10を使用しているので、転写性が良く、スタンパ14と硬化した光硬化性転写層11cとの離型性が極めて良好で、その転写層11の一部がスタンパ14に付着することもない。従って、欠陥のない反転凹凸パターンを形成することができ、スタンパ14を損傷することもない。
【0061】
上記のスタンパ14の微細凹凸パターンが反転した凹凸パターンが形成された光硬化性転写シート10を中間スタンパとして使用する場合は、更に以下の工程により、基板15上に形成された光硬化性樹脂層16の表面に凹凸パターンを形成することができる。
【0062】
基板15の表面には液状の光硬化性樹脂組成物が塗布され、光硬化性樹脂層16が形成されている。基板15は、電子部品用の基板や、これに所定の配線パターンが形成されたもの等が挙げられる。例えば、シリコンウェーハ、銅、クロム、鉄、アルミニウム等の金属製基板や、ガラス基板等が挙げられる。
【0063】
上記で得られた、透明フィルム12上にスタンパ14の微細な凹凸パターンが反転した凹凸パターン面が形成された光硬化性転写層11cを備えた中間スタンパ20を、その凹凸パターン面が光硬化性樹脂層16の表面に対抗するように配置する(図3(d))。次いで、光硬化性樹脂層16上に中間スタンパ20を押圧する(図3(e):以上工程(4))。押圧が可能なように、光硬化性樹脂層16は、必要に応じて加熱される。常温で押圧可能であれば加熱する必要はない。この状態で、光硬化性樹脂層16を、光(UV)照射することにより硬化させる(工程(5))。押圧しながら光照射することがタクトを短縮できるので好ましい。その後、中間スタンパ20を凹凸パターン面が形成され且つ硬化した光硬化性樹脂層16から除去する(図3(f):工程(6))。このようにして、スタンパの微細凹凸パターンと同じパターンの微細凹凸パターンを光硬化性樹脂層16上に形成する。本発明の方法においては、本発明の光硬化性転写シート10が中間スタンパ20に使用されているので、転写性が良く、光硬化性樹脂層16と中間スタンパ20との離型性が極めて良好で、光硬化性樹脂層16の一部が中間スタンパ20に付着することもない。従って、欠陥のない凹凸パターン(金型と同じ凹凸パターン)を光硬化性樹脂層16の表面に形成することができる。
【0064】
光硬化性樹脂層16は、光硬化性転写シート10と同様な加圧変形性のある光硬化性組成物によって形成されていても良いが、基板15上に薄膜に塗布できる点で液状の光硬化性樹脂組成物が好ましい。特に本発明の方法においては、本発明の光硬化性転写シートを使用するので、液状の光硬化性樹脂組成物との離型性が改善されており、有効である。
一般に、工程(1)〜(6)を繰り返して微細凹凸パターンを有する光硬化性樹脂層を形成するが、中間スタンパ20を用いて、多数の微細凹凸パターンを有する光硬化性樹脂層を作成しても良い。即ち、工程(1)〜(3)を行った後、工程(4)〜(6)を繰り返
して行っても良い。
【0065】
上記においては、金型としてスタンパを用いて説明したが、他の金型でも同様に行うことができる。微細凹凸パターンを転写することに有利なことから、金型として、ナノインプリントプロセス法等に使用するスタンパが好ましい。材質はどのようなものでも良いが、好ましくはニッケル、チタン、シリコン、石英等が適用できる。特にニッケルが好ましい。
【0066】
図4は、本発明の凹凸パターン形成方法を連続的に行う実施の形態の代表的な1例を示す概略断面図である。まず、送りロール36aから光硬化性転写シート30が送り出され、剥離シート33が案内ロール36cを介して、巻き取りロール36bに巻き取られて除去される。透明フィルム32(ポリマーフィルム及びその上に易接着層を有する)に接着固定されている光硬化性転写層31は露出され、案内ロール36dを介して矢印方向に搬送され、微細な凹凸パターンを有するスタンパ部34とUVランプ37を備え、上下に作動するUV透過型圧着部35の間に来た時、搬送が停止し、UV透過型圧着部35が下方に移動して透明フィルム32を押し下げ、光硬化性転写層31をスタンパ部34に押圧する。押圧後又は押圧と同時にUVランプ37で光照射され、光硬化性転写層31は硬化する。その後、UV透過型圧着部35が上方に移動するとともに、硬化した光硬化性転写層31cはスタンパ部34から剥離し、光硬化性転写層31cの表面にはスタンパ部34の微細な凹凸パターンが反転した凹凸パターンが形成されている(中間スタンパ)。
【0067】
透明フィルム32に接着固定された光硬化性転写層31cは、搬送が再開され、液状光硬化性樹脂組成物が塗布されて光硬化性樹脂層41が形成されている基板40と、UVランプ47を備え、上下に作動するUV透過型圧着部45の間に来た時、搬送が再び停止する。次いで、UV透過型圧着部45が下方に移動し、透明フィルム32を押し下げ、光硬化性転写層31cを光硬化性樹脂層41に押圧する。押圧後又は押圧と同時にUVランプ47で光照射され、光硬化性樹脂層41は硬化する。その後、UV透過型圧着部45が上方に移動するとともに、硬化した光硬化性樹脂層41は光硬化性転写層31cから剥離し、光硬化性樹脂層41の表面にはスタンパ部34と同一の微細な凹凸パターンが形成され、製品となる。透明フィルム32に接着固定された光硬化性転写層31cは中間スタンパとして、更に連続して同様な処理により、複数の光硬化性樹脂層に微細な凹凸パターンを形成しても良い。その後、透明フィルム32に接着固定された光硬化性転写層31cは案内ロール36eを介して巻き取りロール36fによって巻き取られる。スタンパ部34から光硬化性転写層31への転写と光硬化性転写層31cから光硬化性樹脂層41への転写は連続して行わなくても良い。例えば、透明フィルムに接着固定された光硬化性転写層31cを巻き取りロール36fで巻き取った後、適宜、中間スタンパとして使用して、光硬化性樹脂層41へ転写して製品製造を行っても良い。
【0068】
以下に、本発明において、光硬化性転写シートを形成する他の材料について述べる。
[光重合開始剤]
光硬化性転写層を形成する光硬化性組成物に含まれる光重合開始剤としては、公知のどのような光重合開始剤でも使用することができるが、配合後の貯蔵安定性の良いものが望ましい。このような光重合開始剤としては、例えばアセトフェノン系、ベンジルジメチルケタールなどのベンゾイン系、ベンゾフェノン系、イソプロピルチオキサントン、2−4−ジエチルチオキサントンなどのチオキサントン系、その他特殊なものとしては、メチルフェニルグリオキシレートなどが使用できる。特に好ましくは2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルホリノプロパン−1、ベンゾフェノン等が挙げられる。これら光重合開始剤は、必要に応じて、4−ジメチルアミノ安息香酸のごとき安息香酸系又は、第3級アミン系などの公知慣用の光重合促進剤の1種または2種以上を任意の割合で混合して使用することができる。また、光重合開始剤のみの1種または2種以上の混合で使用することができる。光硬化性組成物(不揮発分)中に、光重合開始剤を一般に0.1〜20質量%、特に1〜10質量%含むことが好ましい。
【0069】
光重合開始剤のうち、アセトフェノン系重合開始剤としては、例えば、4−フェノキシジクロロアセトフェノン、4−t−ブチル−ジクロロアセトフェノン、4−t−ブチル−トリクロロアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−ドデシルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルホリノプロパン−1など、ベンゾフェノン系重合開始剤としては、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、4−ベンッゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノンなどが使用できる。
【0070】
アセトフェノン系重合開始剤としては、特に、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルホリノプロパン−1が好ましい。ベンゾフェノン系重合開始剤としては、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチルが好ましい。また、第3級アミン系の光重合促進剤としては、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、4,4’−ジメチルアミノベンゾフェノン、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン、2−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸(n−ブトキシ)エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、4−ジメチルアミノ安息香酸2−エチルヘキシルなどが使用できる。特に好ましくは、光重合促進剤としては、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸(n−ブトキシ)エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、4−ジメチルアミノ安息香酸2−エチルヘキシルなどが挙げられる。
【0071】
[ジイソシアネート]
本発明において、光硬化性転写層を形成する光硬化性組成物中に硬化剤としてジイソシアネートを添加する場合は、トリレンジイソシアネート(TDI)、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4−ジイソシアネート、ジシクロペンタニルジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4’−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,2’,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートを使用することができる。またトリメチロールプロパンのTDI付加体等の3官能以上のイソシアネート化合物等のポリイソシアネートシアネートも使用することができる。これらの中でトリメチロールプロパンのヘキサメチレンジイソシアネート付加体が好ましい。
【0072】
本発明において、ジイソシアネートは、光硬化性組成物(不揮発分)中に0.2〜4質量%、特に0.2〜2質量%の範囲で含まれていることが好ましい。転写層のしみ出しを防止するために適当な架橋がもたらされると共に、スタンパ等の金型の凹凸の良好な転写性も維持される。上記化合物とポリマーとの反応は、転写層形成後、徐々に進行し、常温(一般に25℃)、24時間でかなり反応している。転写層形成用の塗布液を調製した後、塗布するまでの間にも反応は進行するものと考えられる。転写層を形成後、ロール状態で巻き取る前にある程度硬化させることが好ましいので、必要に応じて、転写層を形成時、或いはその後、ロール状態で巻き取る前の間に加熱して反応を促進させても良い。
【0073】
[その他]
本発明において、光硬化性転写層を形成する光硬化性組成物には、更に、所望により下記の熱可塑性樹脂及び他の添加剤を添加することが好ましい。
他の添加剤として、離型性をさらに向上させるため、滑剤(離型剤)を添加することができる。滑剤としては、リン酸アルキルポリオキシアルキレン化合物、リン酸トリアルキルエステル化合物、リン酸塩及びリン酸アミド等のリン原子含有化合物、非変性又は変性ポリシロキサン等のシリコーン系樹脂が挙げられる。滑剤の添加量は上記ポリマー(固形分)100質量部に対し通常0.01〜5質量部である。
【0074】
また、他の添加剤として、シランカップリング剤(接着促進剤)を添加することができる。このシランカップリング剤としてはビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシランなどがあり、これらの1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。これらシランカップリング剤の添加量は、上記ポリマー(固形分)100質量部に対し通常0.01〜5質量部で十分である。
【0075】
また同様に接着性を向上させる目的でエポキシ基含有化合物を添加することができる。エポキシ基含有化合物としては、トリグリシジルトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート;ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル;1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル;アクリルグリシジルエーテル;2−エチルヘキシルグリシジルエーテル;フェニルグリシジルエーテル;フェノールグリシジルエーテル;p−t−ブチルフェニルグリシジルエーテル;アジピン酸ジグリシジルエステル;o−フタル酸ジグリシジルエステル;グリシジルメタクリレート;ブチルグリシジルエーテル等が挙げられる。また、エポキシ基を含有した分子量が数百から数千のオリゴマーや重量平均分子量が数千から数十万のポリマーを添加することによっても同様の効果が得られる。これらエポキシ基含有化合物の添加量は上記ポリマー(固形分)100質量部に対し0.1〜20質量部で十分で、上記エポキシ基含有化合物の少なくとも1種を単独で又は混合して添加することができる。
【0076】
さらに他の添加剤として、加工性や貼り合わせ等の加工性向上の目的で炭化水素樹脂を添加することができる。この場合、添加される炭化水素樹脂は天然樹脂系、合成樹脂系のいずれでも差支えない。天然樹脂系ではロジン、ロジン誘導体、テルペン系樹脂が好適に用いられる。ロジンではガム系樹脂、トール油系樹脂、ウッド系樹脂を用いることができる。ロジン誘導体としてはロジンをそれぞれ水素化、不均一化、重合、エステル化、金属塩化したものを用いることができる。テルペン系樹脂ではα−ピネン、β−ピネンなどのテルペン系樹脂のほか、テルペンフェノール樹脂を用いることができる。また、その他の天然樹脂としてダンマル、コーバル、シェラックを用いても差支えない。一方、合成樹脂系では石油系樹脂、フェノール系樹脂、キシレン系樹脂が好適に用いられる。石油系樹脂では脂肪族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、脂環族系石油樹脂、共重合系石油樹脂、水素化石油樹脂、純モノマー系石油樹脂、クマロンインデン樹脂を用いることができる。フェノール系樹脂ではアルキルフェノール樹脂、変性フェノール樹脂を用いることができる。キシレン系樹脂ではキシレン樹脂、変性キシレン樹脂を用いることができる。
【0077】
上記炭化水素樹脂等の樹脂の添加量は適宜選択されるが、上記ポリマー(固形分)100質量部に対して1〜20質量部が好ましく、より好ましくは5〜15質量部である。
【0078】
以上の添加剤の他、本発明の光硬化性組成物は紫外線吸収剤、老化防止剤、染料、加工助剤等を少量含んでいてもよい。また、場合によってはシリカゲル、炭酸カルシウム等の微粒子等の添加剤を少量含んでもよい。
【0079】
本発明において、光硬化性転写層の周波数1Hzにおける貯蔵弾性率は、25℃において1×10Pa以下であることが好ましく、特に1×10〜6×10Paの範囲であることが好ましい。また80℃において8×10Pa以下であることが好ましく、特に1×10〜5×10Paの範囲であることが好ましい。これにより、精確で迅速な転写が可能となる。さらに、本発明の光硬化性転写層は、ガラス転移温度を20℃以下であることが好ましい。これにより、得られる光硬化性転写層がスタンパ等の金型の凹凸面に圧着されたとき、常温においてもその凹凸面に緊密に追随できる可撓性を有することができる。特に、ガラス転移温度が15℃〜−50℃、さらに0℃〜−40℃の範囲にすることにより追随性が高いものとなる。ガラス転移温度が高すぎると、貼り付け時に高圧力及び高圧力が必要となり作業性の低下につながり、また低すぎると、硬化後の十分な硬度が得られなくなる。
【0080】
また本発明において、光硬化性転写層は、300mJ/cmの紫外線照射後のガラス転移温度が65℃以上となるように設計されていることが好ましい。短時間の紫外線照射により、転写での残留応力から発生しやすいピット形状等のダレ発生を防止することが容易で、転写されたピット形状等を保持することができる。
【0081】
本発明の光硬化性転写シートは、上述の光硬化組成物の構成成分を均一に混合し、押出機、ロール等で混練した後、カレンダー、ロール、Tダイ押出、インフレーション等の製膜法により所定の形状に製膜して製造することができる。好ましくは透明フィルムの易接着層の表面に製膜して光硬化性転写層を形成する。より好ましい本発明の光硬化性接着剤の製膜方法は、各構成成分を良溶媒に均一に混合溶解し、この溶液をシリコーンやフッ素樹脂を精密にコートしたセパレーターにフローコート法、ロールコート法、グラビアロール法、マイヤバー法、リップダイコート法等により易接着層上に塗工し、溶媒を乾燥することにより製膜する方法である。
【0082】
また、光硬化性転写シートの厚さは1〜1200μm、特に5〜500μmとすることが好ましい。特に5〜300μm(好ましくは150μm以下)が好ましい。1μmより薄いと封止性が劣り、一方、1000μmより厚いと得られる成形体の厚みが増し、成形体の収納、アッセンブリー等に問題が生じるおそれがある。
光硬化性転写層の厚さは、1〜300μm、特に3〜100μmが好ましい。
【0083】
[剥離シート]
本発明の光硬化性転写シートを構成する光硬化性転写層に剥離シートを設ける場合、剥離シートは一般にプラスチックフィルム上に、シリコーン等の表面張力の低い剥離層を有する。例えば、ヒドロキシル基を有するポリシロキサンと水素化ポリシロキサンとの縮合反応生成物からなる剥離層、或いは不飽和2重結合基(好ましくはビニル基)を有するポリシロキサン(好ましくはジメチルポリシロキサン)と水素化ポリシロキサン(好ましくはジメチルポリシロキサン)から形成される剥離層等を挙げることができる。
剥離シートのプラスチックフィルムとしては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリシクロヘキシレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ナイロン46、変性ナイロン6T、ナイロンMXD6、ポリフタルアミド等のポリアミド系樹脂、ポリフェニレンスルフィド、ポリチオエーテルサルフォン等のケトン系樹脂、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン等のサルフォン系樹脂の他に、ポリエーテルニトリル、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、トリアセチルセルロース、ポリスチレン、ポリビニルクロライド等の有機樹脂を主成分とする透明樹脂フィルムを用いることができる。これら中で、ポリカーボネート、ポリメチルメタアクリレート、ポリビニルクロライド、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレートのフィルムが好適に用いることができ、特にポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましい。厚さは10〜200μmが好ましく、特に30〜100μmが好ましい。
【0084】
本発明の方法において、本発明の光硬化性転写シートは、アニール処理されていることが好ましい。アニール処理は、転写シートを30〜100℃、特に40〜70℃の温度で、1時間〜30日間、特に10時間〜10日間に亘って保管することにより行うことが好ましい。転写シートは、一般にロール状態(巻かれた状態)でアニール処理することが好ましい。このようなアニール処理により、剥離シートの剥離層の剥離を促進する成分(離型成分)の光硬化性転写層への移行が進み、スタンパの除去が容易になると考えられる。
【0085】
[光硬化性樹脂組成物]
本発明の方法において、本発明の光硬化性転写シートを中間スタンパとして、凹凸パターンを形成する製品の光硬化性樹脂組成物はどのようなものでも良い。特にナノインプリントプロセス法に使用できる液状組成物が好ましい。液状組成物の場合、粘度は10〜10000cpsが好ましい。光硬化性樹脂組成物は光硬化性樹脂と光開始剤を含む組成物が好ましい。
【0086】
光硬化性樹脂としては、例えば、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート、エポキシ樹脂、イミド系オリゴマー、ポリエン・チオール系オリゴマー等が挙げられる。
【0087】
ウレタンアクリレートは、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等のジイソシアネート類とポリ(プロピレンオキサイド)ジオール、ポリ(プロピレンオキサイド)トリオール、ポリ(テトラメチレンオキサイド)ジオール、エトキシ化ビスフェノールA等のポリオール類と2−ヒドロキシエチルアクリレート2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、グリシドールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート等のヒドロキシアクリレート類とを反応させることによって得られ、分子中に官能基としてアクリロイル基とウレタン結合を有するものである。
【0088】
ポリエステルアクリレートとしては、例えば、無水フタル酸とプロピレンオキサイドとアクリル酸とからなるポリエステルアクリレート、アジピン酸と1,6−ヘキサンジオールとアクリル酸とからなるポリエステルアクリレート、トリメリット酸とジエチレングリコールとアクリル酸とからなるポリエステルアクリレート等が挙げられる。
【0089】
エポキシアクリレートは、エピクロルヒドリン等のエポキシ化合物とアクリル酸又はメタクリル酸との反応により合成されたものであり、例えば、ビスフェノールAとエピクロルヒドリンとアクリル酸との反応により合成されるビスフェノールA型エポキシアクリレート、ビスフェノールSとエピクロルヒドリンとアクリル酸との反応により合成されるビスフェノールS型エポキシアクリレート、ビスフェノールFとエピクロルヒドリンとアクリル酸との反応により合成されるビスフェノールF型エポキシアクリレート、フェノールノボラックとエピクロルヒドリンとアクリル酸との反応により合成されるフェノールノボラック型エポキシアクリレート等が挙げられる。
【0090】
エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;トリスフェノールメタントリグリシジルエーテル等の芳香族エポキシ樹脂、及び、これらの水添化物や臭素化物等が挙げられる。
光重合開始剤(G)としては、光ラジカル重合開始剤及び光カチオン重合開始剤が好ましく、光ラジカル重合開始剤としては、例えば、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、α−ヒドロキシ−α−α’−ジメチルアセトフェノン、メトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン等のアセトフェノン誘導体;ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル等のベンゾインエーテル系化合物;ベンジルジメチルケタール等のケタール誘導体;ハロゲン化ケトン、アシルフォスフィンオキシド、アシルフォスフォナート、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−N,N−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−1−ブタン、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキシドビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキシド、ビス(η5−シクロペンタジエニル)−ビス(ペンタフルオロフェニル)−チタニウム、ビス(η5−シクロペンタジエニル)−ビス[2,6−ジフルオロー3−(1H−ピリ−1−イル)フェニル]−チタニウム、アントラセン、ペリレン、コロネン、テトラセン、ベンズアントラセン、フェノチアジン、フラビン、アクリジン、ケトクマリン、チオキサントン誘導体、ベンゾフェノン、アセトフェノン、2−クロロチオキサンソン、2,4−ジメチルチオキサンソン、2,4−ジエチルチオキサンソン、2,4−ジイソプロピルチオキサンソン、イソプロピルチオキサンソン等が挙げられる。光カチオン重合開始剤としては、例えば、鉄−アレン錯体化合物、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルホニウム塩、オニウム塩、ピリジニウム塩、アルミニウム錯体/シラノール塩、トリクロロメチルトリアジン誘導体等が挙げられる。上記オニウム塩やピリジニウム塩の対アニオンとしては、例えば、SbF6−、PF6−、AsF6−、BF4−、テトラキス(ペンタフルオロ)ボレート、トリフルオロメタンスルフォネート、メタンスルフォネート、トリフルオロアセテート、アセテート、スルフォネート、トシレート、ナイトレート等が挙げられる。
光重合開始剤(G)の添加量は、一般に光硬化性樹脂100重量部に対して、0.1〜15重量部であり、好ましくは、0.5〜10重量部である。
上記光硬化性樹脂組成物には、反応性希釈剤が添加されてもよく、反応性希釈剤としては、例えば、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、2−(2−エトキシエトキシ)エチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、2−フェノキシエチルアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート等が挙げられる。
【0091】
上記光硬化性樹脂組成物には、更に、必要に応じて、一般に添加されている光重合開始助剤、熱重合禁止剤、充填剤、接着付与剤、チクソ付与剤、可塑剤、着色剤等が添加されてもよい。
【0092】
本発明の方法において、光硬化性転写シート及び製品の光硬化性樹脂を硬化する場合は、光源として紫外〜可視領域に発光する多くのものが採用でき、例えば超高圧、高圧、低圧水銀灯、ケミカルランプ、キセノンランプ、ハロゲンランプ、マーキュリーハロゲンランプ、カーボンアーク灯、白熱灯、レーザ光等が挙げられる。照射時間は、ランプの種類、光源の強さによって一概には決められないが、0.1秒〜数十秒程度、好ましくは0.5〜数秒である。紫外線照射量は、300mJ/cm以上が好ましい。
【0093】
また、硬化促進のために、予め積層体を30〜80℃に加温し、これに紫外線を照射してもよい。
【0094】
以下に実施例を示し、本発明についてさらに詳述する。
【実施例】
【0095】
(1)光硬化性組成物に用いるポリマーの調製
表1に示したモノマー成分の配合比(モル比)で常法により重合反応を行い、表1に示した重量平均分子量(Mw)、脂環式モノマー単位含有率P((脂環式モノマー質量/総モノマー質量)×100(%))のポリマー1〜6を調整した。なお、脂環式モノマーとして、2−ノルボルネン(モノマーA)を用いた。また、対照として、脂環基を側鎖に有するイソボルニルメタクリレート(モノマーB)を用いたポリマーを調製した。
【0096】
【表1】

【0097】
(2)光硬化性転写シートの作製(実施例1〜4、及び比較例1〜3)
(1)で調製したポリマーを用いて、表2に示した配合の実施例1〜4、及び比較例1〜3の光硬化性組成物による光硬化性転写シートを作製した。
【0098】
【表2】



【0099】
即ち、各光硬化性組成物の混合物を均一に溶解、混練し、透明フィルム(商品名HPE、帝人デュポンフィルム社製;幅300mm、長さ300m、厚さ75μm)上に全面塗布し、乾燥厚さ25μmの光硬化性転写層を形成し、シートの反対側に剥離シート(商品名A31、帝人デュポンフィルム社製;幅300mm、長さ300m、厚さ50μm)を貼付し、ロール状に巻き上げ、光硬化性転写シートのフルエッジタイプのロール(直径260mm)を得た。上記透明フィルムはPETフィルム(75μm)上に易接着層(ポリエステル/アクリル樹脂混合物、層厚0.2μm)からなるものである。脂環式モノマー単位含有率T((((脂環式モノマー単位含有率P/100)×脂環式構造含有ポリマー質量)/光硬化性組成物総質量)×100)は表2に示した通りである。
(3)凹凸パターン形成試験
実施例1〜4、及び比較例1〜3の光硬化性転写シートを用いて、図4に示した凹凸パターン形成工程を行った。即ち、微細な凹凸パターンを有するニッケル製スタンパ(パターン形状:ライン/スペース=1μm/1μm、深さ500nm)を用い、各光硬化性転写シートを中間スタンパとして、シリコン基板上に形成した2種類の液状光硬化性樹脂組成物(UVナノインプリント用樹脂PAK-1(東洋合成社製)、及び光硬化性樹脂組成物TMP−A(TMP−A(共栄社化学社製)+IRGACURE−651(質量比99:1で混合))からなる光硬化性樹脂層にそれぞれ凹凸パターンを形成した。成型条件は以下の通りである。
(中間スタンパへの転写条件)
成型装置:平板プレス(0.5MPa×5秒)
UV照射:300mJ/cm×10秒
モールドパターン:20mm角
(光硬化性樹脂層への転写条件)
液状光硬化性樹脂層形成:スピンコート
成型装置:ロールラミネーター
UV照射:350mJ/cm×3秒
モールドパターン:20mm角
(4)評価方法
(中間スタンパへの転写の評価)
(i)離型性
転写成型後、光硬化性転写シートを90°剥離で引っ張り上げ、以下のように評価した。
○:面内に目視で剥離欠陥がなく、剥離強度が10gf/25mm以下である。
△:面内に目視で剥離欠陥がなく、剥離強度が10gf/25mmより上である。
×:剥離時に目視で欠陥が発生。
(ii)転写性
離型性の評価が△以上の中間スタンパの凹凸パターンの垂直破断面を走査型顕微鏡(SEM)(倍率2万倍)で観察し、以下のように評価した。
○:転写凹凸パターンの深さが全ての箇所で450nm以上である。
△:転写凹凸パターンの深さが400〜450nmの箇所がある。
×:転写凹凸パターンの深さが400nm以下の箇所がある。
(iii)作業性
光硬化性転写シートの剥離シートの剥離作業について以下のように評価した。
○:剥離シートの肌が乱れず完全に剥離できる。
△:光硬化性転写層の剥離シートへの移行はないが、剥離シートの肌にうねりやスジが発生する。
×:光硬化性転写層の剥離シートへの移行が生じ、層厚ムラや糸引きが発生する。
(光硬化性樹脂層への転写の評価)
(i)離型性
・各光硬化性樹脂層の評価
転写成型後、光硬化性転写シートを90°剥離で引っ張り上げ、2種類の光硬化性樹脂層について以下のように評価した。
○:面内に目視で剥離欠陥がなく、剥離強度が7gf/25mm以下である。
△:面内に目視で剥離欠陥がなく、剥離強度が7gf/25mmより上である。
×:剥離時に目視で欠陥が発生。
(ii)転写性
離型性の評価が△以上の各光硬化性樹脂層の凹凸パターンの垂直破断面を走査型顕微鏡(SEM)(倍率2万倍)で観察し、以下のように評価した。
○:転写凹凸パターンの深さが全ての箇所で450nm以上である。
△:転写凹凸パターンの深さが400〜450nmの箇所がある。
×:転写凹凸パターンの深さが400nm以下の箇所がある。
(5)評価結果
評価結果を表3に示す。
【0100】
【表3】


【0101】
脂環式構造を有する繰り返し単位を15〜70質量%の範囲で含有するポリマー1〜3を含む光硬化性組成物(脂環式構造を有する繰り返し単位を8〜30質量%の範囲で含有する)を用いた実施例1〜4では、金型と中間スタンパとの離型性、転写性、及び中間スタンパと光硬化性樹脂層との離型性、転写性の評価が△以上であった。これに対し、脂環式構造を有する繰り返し単位を76.6質量%含有するポリマー4を含む光硬化性組成物を用いた比較例1では、金型と中間スタンパの転写性、作業性が低くなった。これは高い転写性、硬化性を有するアクリル系樹脂としての性質が低下したためと考えられた。
【0102】
また、主鎖に脂環式構造を有する繰り返し単位を含有させる代わりに、脂環基を有する(メタ)アクリレート繰り返し単位を有するポリマー5(即ち、側鎖に脂環基を有するポリマー)を含む光硬化性組成物(光硬化性組成物中の脂環基含有モノマー含有率:36.5質量%)を用いた比較例2でも全ての評価で△以上であったが、脂環基の含有率で比較すると、主鎖に含有させる本発明の方が離型性の向上に効果的であることが認められた。
【0103】
脂環式構造を有する繰り返し単位を含まない比較例3は金型と中間スタンパとの離型性、転写性は良好であったが、中間スタンパと光硬化性樹脂層との離型性が不良であった。
また、脂環式モノマー単位含有率Tは8.2質量%である実施例1より、実施例2〜4の方が、離型性が良好であり、脂環式モノマー単位含有率Tが15〜25質量%の場合に、更に離型性が向上することが認められた。
【0104】
なお、本発明は上記の実施の形態の構成及び実施例に限定されるものではなく、発明の要旨の範囲内で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0105】
10、30 光硬化性転写シート
11、31 光硬化性転写層
11c、31c 光硬化性転写層(硬化後)
12、32 透明フィルム
12a 易接着層
12b ポリマーフィルム
13、33 剥離シート
14 スタンパ
15、40 基板
16、41 光硬化性樹脂層
20 中間スタンパ
34 スタンパ部
35、45 UV透過型圧着部
36a 送りロール 36b、36f 巻き取りロール
36c、36d、36e 案内ロール 37、47 UVランプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加圧により変形可能で、ポリマーと光重合性官能基を有する反応性希釈剤を含む光硬化性組成物からなる光硬化性転写層を有する光硬化性転写シートであって、
前記ポリマーが、主鎖に脂環式構造を有する繰り返し単位、及び(メタ)アクリレート繰り返し単位を含む樹脂からなり、且つ前記ポリマー中の脂環式構造を有する繰り返し単位の含有率が15〜70質量%であることを特徴とする光硬化性転写シート。
【請求項2】
前記脂環式構造を有する繰り返し単位が、下記式(I):
【化1】



[但し、式中、Xは、それぞれ独立してメチレン基、エチレン基又は2価の酸素原子を表し、R、R、R、Rは、それぞれ独立して水素原子、又は炭素原子数1〜19の直鎖状、分岐状もしくは環状の炭化水素基、及び-(CH-C(O)-OR、−(CH−OR、−(CH−C(O)−OR、−(CH−C(O)−OR−C(O)−OR(但し、式中、mは0〜6の整数であり、R、Rは、それぞれ独立して炭素原子数1〜19の直鎖状、分岐状もしくは環状の炭化水素基を表す)からなる群から選択される置換基を表し、R、Rは相互に結合して、環員炭素原子と共に環状構造を形成しても良く、nは0〜3の整数である]
で表される繰り返し単位である請求項1に記載の光硬化性転写シート。
【請求項3】
前記式(I)における、Xがメチレン基であり、nが0である請求項2に記載の光硬化性転写シート。
【請求項4】
前記脂環式構造を有する繰り返し単位が、2−ノルボルネン由来の繰り返し単位である請求項1〜3のいずれか1項に記載の光硬化性転写シート。
【請求項5】
前記ポリマー中の、脂環式構造を有する繰り返し単位の含有率が15〜60質量%である請求項1〜4のいずれか1項に記載の光硬化性転写シート。
【請求項6】
前記脂環式構造を有する繰り返し単位の含有率が、前記光硬化性組成物の乾燥質量に対して8〜30質量%である請求項1〜4のいずれか1項に記載の光硬化性転写シート。
【請求項7】
前記ポリマー中の(メタ)アクリレート繰り返し単位が、炭素原子数1〜12の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基を有する(メタ)アクリレート繰り返し単位を含む請求項1〜6のいずれか1項に記載の光硬化性転写シート。
【請求項8】
下記の工程:
(1)表面に微細な凹凸パターンを有する金型の表面を、請求項1〜7のいずれか1項に記載の光硬化性転写シートの転写層に、当該金型の凹凸パターン面が、当該転写層の表面に接触するように裁置、押圧して、転写層の表面が凹凸パターン表面に沿って密着した積層体を形成する工程;
(2)金型を有する積層体の転写層を紫外線照射により硬化させる工程、及び
(3)金型を除去することにより、当該転写層の表面に微細な反転凹凸パターンを形成する工程;
を含む凹凸パターンの形成方法。
【請求項9】
前記工程(3)を終了した後、
下記の工程:
(4)前記金型の凹凸パターンの反転凹凸パターンが形成された光硬化性転写シート(中間スタンパ)の当該反転凹凸パターンの表面を、基板上に形成された光硬化性樹脂組成物からなる光硬化性樹脂層に、該中間スタンパの反転凹凸パターン面が光硬化性樹脂層の表面に接触するように裁置、押圧して、光硬化性樹脂層の表面が反転凹凸パターン表面に沿って密着した積層体を形成する工程;
(5)中間スタンパを有する積層体の光硬化性樹脂層を紫外線照射により硬化させる工程;及び
(6)中間スタンパを除去することにより、光硬化性樹脂層の表面に前記金型と同一の微細な凹凸パターンを形成する工程;
を行う請求項8に記載の凹凸パターンの形成方法。
【請求項10】
前記光硬化性樹脂組成物が液状である請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記金型がスタンパである請求項8〜10のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−178052(P2011−178052A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−45048(P2010−45048)
【出願日】平成22年3月2日(2010.3.2)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】