説明

光硬化性転写シート

【課題】電子デバイス、光学部品、及び記録媒体等の製造におけるナノインプリントプロセス法に使用される光硬化性転写シートであって、硬化後において高い耐熱性、及び高い表面硬度を有し、且つ硬化収縮性が低い光硬化性転写層を有する光硬化性転写シートを提供することにある。
【解決手段】加圧により変形可能で、ポリマーと光重合性官能基を有する反応性希釈剤を含む光硬化性組成物からなる光硬化性転写層11を有する光硬化性転写シート10であって、前記反応性希釈剤が、脂環基を有するモノマーを含み、且つ前記ポリマーが、脂環基又は芳香族炭化水素基を有する(メタ)アクリレート繰り返し単位を含むアクリル樹脂からなることを特徴とする光硬化性転写シート10。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子デバイス、光学部品、記録媒体等の製造に有利に使用することができる光硬化性転写シート、特に微細加工技術であるナノインプリントに使用することができる光硬化性転写シートに関する。
【背景技術】
【0002】
光或いは電子線を用いる微細加工技術の進展はめざましく、光では100nm、電子線では10nmの加工が達成されている。しかしながら、それら微細加工装置は高価なため、より安価な加工技術が求められている。このような目的に沿って、ナノインプリント技術によりシリコン基板等に所望の回路パターン等を形成する方法が確立されつつある。ナノインプリント技術は、従来のプレス技術と比較して、より微小な構造を実現するための微細加工の技術である。この技術自体には解像度に限界がなく、解像度はモールド(即ち金型)の作製精度によって決まる。従って、モールドさえ作製できれば、従来のフォトリソグラフィーより容易に、且つはるかに安価な装置により、極微細構造を形成することが可能である。
【0003】
ナノインプリント技術には転写される材料により2種類に大別される。一方は、転写される材料を加熱し、モールド(金型)により塑性変形させた後、冷却してパターンを形成する熱ナノインプリント技術である。もう一方は、基板上に室温で液状の光硬化性樹脂を塗布した後、光透過性のモールドを樹脂に押し当て、光を照射させることで基板上の樹脂を硬化させパターンを形成する光ナノインプリント技術である。特に光ナノインプリント技術は室温にてパターン形成できるため熱による基板、モールド間の線膨張係数差による歪が発生しにくく、高精度のパターン形成が可能であり、半導体等のリソグラフィ技術の代替技術として注目を集めている。
【0004】
ナノインプリントによりパターン成形を安価に行うことができるが、マザースタンパであるモールド(金型)に樹脂が付着し易く、樹脂が付着した場合、そのモールドを補修することは極めて困難である。モールド(金型)が非常に高価なため、製造全体として安価とは言えない場合が多い。
【0005】
特許文献1には、2工程によるインプリント法が開示されている。即ち、第1工程で、マイクロメータ又はナノメータのオーダの微細な凹凸のパターンニングがなされた表面を有するテンプレートに、サーモプラスティックポリマー等の可塑性ポリマーフォイルの表面と表面が向かい合い接触するように置かれ、インプリント処理により、テンプレート表面のパターンが反転されたものがポリマーフォイルの表面に形成される。そして、第2工程で、得られたポリマースタンパ(中間スタンパ)に、上記と同様な処理がなされ、他の可塑性ポリマーフォイルの表面に第二の反転レプリカ(テンプレートと同一のパターン)が形成される。
【0006】
この方法では、製品が中間スタンパを用いて成形されるため、マザースタンパ(テンプレート)には深刻な損傷が発生することはない。しかしながら、中間スタンパの作製に熱可塑性ポリマーを使用しているため、幅広く様々なポリマーを使用することができる反面、成形に加熱、冷却という大きなエネルギーが必要となること、そして成形時間が1分以上の長い時間が必要となることの不利がある。従って、連続製造する場合のタクト(処理に必要な時間)の短縮が困難となる。
【0007】
また特許文献1には、中間スタンパ作製時に、光硬化性樹脂を併用する例が記載されているが、光硬化性樹脂は液状物のため、作業性が悪く、また硬化収縮、厚みムラ等も大きいことから、上記タクトの短縮等を含む生産性の向上を図ることができない。さらに、マザースタンパとの剥離性、及び中間スタンパから凹凸パターンが転写された製品である硬化した光硬化性樹脂との剥離性が低いという問題がある。
【0008】
一方、特許文献2には、加圧により変形可能な光硬化性組成物からなる光硬化性転写シートを用いて中間スタンパを作製する方法が開示されている。これにより作業性、硬化収縮等については改善されている。また、特許文献2においては、光硬化性組成物が滑剤としてリン原子含有化合物を含むことにより、マザースタンパからの剥離性等も改善されている。
【0009】
また、特許文献3には、光硬化性組成物が滑剤としてリン原子含有化合物を含み、更に光硬化性組成物からなる光硬化性転写層の一方の表面に易接着層とポリマーフィルムを有する易接着フィルムを備えることにより、剥離性が高く、且つ膜自立性が向上された光硬化性転写シートが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2007−165812号公報
【特許文献2】特開2007−291339号公報
【特許文献3】特開2009−061628号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
光硬化性転写シートで転写した形状は電子デバイス、光学部品、及び記録媒体等に使用される。特に、光硬化性転写シートが、光学部品用に直接又は中間スタンパとして使用される場合には、以下の(i)〜(iii):
(i)光源からの熱により軟化、変形等することのない高い耐熱性、
(ii)デバイスの最表面で使用されるため、擦過等により傷がつき難い高い表面硬度、
(iii)形状転写において高い寸法精度を得るため、硬化時における低収縮性、
といった性質が要求される。
【0012】
しかしながら、特許文献2及び特許文献3の光硬化性転写シートは、特に金型の形状転写性や金型からの剥離性を重視したものであるため、これらの要求を十分に満たすものとは言えない。一般に、表面硬度や耐熱性を向上させるために、硬化性樹脂組成物の反応希釈剤として多官能モノマーを使用する場合があるが、多官能モノマーを使用すると、通常、硬化収縮が大きくなることが知られている。
【0013】
従って、本発明の目的は、電子デバイス、光学部品、及び記録媒体等の製造におけるナノインプリントプロセス法に使用される光硬化性転写シートであって、硬化後において高い耐熱性、及び高い表面硬度を有し、且つ硬化収縮性が低い光硬化性転写層を有する光硬化性転写シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的は、加圧により変形可能で、ポリマーと光重合性官能基を有する反応性希釈剤を含む光硬化性組成物からなる光硬化性転写層を有する光硬化性転写シートであって、前記反応性希釈剤が、脂環基を有するモノマーを含み、且つ前記ポリマーが、脂環基又は芳香族炭化水素基を有する(メタ)アクリレート繰り返し単位を含むアクリル樹脂からなることを特徴とする光硬化性転写シートによって達成される。光硬化性組成物に含まれる反応性希釈剤が、脂環基を有するモノマーを含むことで、脂環基を有するモノマーを含まない場合に比べて、光硬化性転写層の硬化後の耐熱性及び表面硬度が向上し、且つ硬化収縮率が低減される。また、ポリマーを上記アクリル樹脂とすることで、低い硬化収縮性を維持したまま、更に、耐熱性及び表面硬度が向上した光硬化性転写層を有する光硬化性転写シートを得ることができる。これは、脂環基及び/又は芳香族炭化水素基の嵩高さや極性が影響しているものと考えられる。
【0015】
本発明の光硬化性転写シートの好ましい態様は以下の通りである。
(1)前記脂環基を有するモノマーが、脂環基を有する(メタ)アクリル酸エステルである。
(2)前記脂環基を有するモノマーの脂環基が、炭素原子数5〜12個の脂環式炭化水素環を有する脂環基である。
(3)前記脂環基を有するモノマーの脂環基が、トリシクロデカン環を有する脂環基である。
(4)前記脂環基を有するモノマーが、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレートである。
(5)前記脂環基を有するモノマーの含有率が、前記光硬化性組成物の不揮発性成分に対して20〜80質量%である。
(6)前記ポリマーに含まれる脂環基又は芳香族炭化水素基を有する(メタ)アクリレート繰り返し単位の脂環基又は芳香族炭化水素基が、炭素原子数5〜12個の脂環基又は炭素原子数6〜12個の芳香族炭化水素基である。
(7)前記ポリマーに含まれる脂環基又は芳香族炭化水素基を有する(メタ)アクリレート繰り返し単位の脂環基又は芳香族炭化水素基が、イソボルニル基、又はベンジル基である。
(8)前記ポリマーに含まれる脂環基又は芳香族炭化水素基を有する(メタ)アクリレート繰り返し単位の含有率が、前記光硬化性組成物の不揮発性成分に対して10〜40質量%である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の光硬化性転写シートは、嵩高い脂環基を有するモノマーを含む光硬化性転写層を有するので、硬化後の光硬化性転写層の耐熱性及び表面硬度が向上し、且つ硬化収縮率が低減されているので、熱による軟化、変形等が生じ難く、擦過等による傷がつき難く、且つ、形状転写の寸法精度が高い光硬化性転写シートである。従って、本発明の光硬化性転写シートは、電子ディスプレイリブ、電子デバイス(リソグラフィ、トランジスタ)、光学部品(マイクロレンズアレイ、導波路、光学フィルタ、フォトニックス結晶)、バイオ関連材料(DNAチップ、マイクロリアクタ)、記録媒体(パターンドメディア、DVD)等の製造、特に光学部品の製造用に、製品材料として又は中間スタンパとして有利に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は本発明の光硬化性転写シートの代表的な一例を示す概略断面図である。
【図2】図2は本発明の光硬化性転写シートを用いた微細凹凸パターン形成方法の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に図面を参照しながら本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0019】
図1は本発明の光硬化性転写シート10の実施形態の代表的な一例を示す概略断面図である。光硬化性転写層11には、一方の表面に、易接着層12aを有するポリマーフィルム12bからなる透明フィルム12、及び他方の表面に剥離シート13が設けられている。透明フィルム12は、易接着層12aにより光硬化性転写層11に強力に接着されている。従って、易接着層12aは、光硬化性転写層11、硬化後の光硬化性転写層11及びポリマーフィルム12bと優れた接着性を示す。また、ポリマーフィルム12bにより、光硬化性転写シート10及び硬化後の光硬化性転写シート10の膜自立性が付与されている。剥離シート13は光硬化性転写層を保護するためのシートで、無くても良いが、長尺シートで使用する場合等はハンドリング性の点で設けた方が好ましい。剥離シートは、一般に、プラスチックシート上に剥離層が設けられたものであり、剥離層が光硬化性転写層11の表面と接触するように設けられており、通常使用時に除去される。
【0020】
[光硬化性転写層]
本発明における光硬化性転写層11は、金型(好ましくはスタンパ)の微細凹凸パターン表面を押圧することにより精確に転写できるように、加圧により変形し易い層である。そして、硬化後において、高い耐熱性及び高い表面硬度を有し、且つ硬化収縮性が低減されている。
【0021】
即ち、本発明において、光硬化性転写層11を形成する光硬化性組成物は、ポリマー、光重合性官能基(一般に炭素−炭素2重結合基、好ましくは(メタ)アクリロイル基(アクリロイル基及びメタクリロイル基を示す。以下同様。))を有する反応性希釈剤(モノマー及びオリゴマー)、光重合性開始剤、及び、所望により他の添加剤から構成されており、上記反応性希釈剤が、脂環基を有するモノマーを含んでおり、且つ上記ポリマーが、脂環基又は芳香族炭化水素基を有する(メタ)アクリレート繰り返し単位を含むアクリル樹脂からなっている。
【0022】
脂環基を有するモノマーは、上記の通り、(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリル酸エステル(アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルを示す。以下同様。)が好ましい。また、脂環基は(メタ)アクリル酸エステルのエステル部分に有することが好ましい。また、上記モノマーは一個以上の官能基を有していれば良く、二個以上の官能基を有するモノマーが好ましい。
【0023】
本発明の脂環基としては、脂環式炭化水素基、及び脂環式エーテル基を挙げることができる。脂環式炭化水素基としては、トリシクロデカン環、イソボルナン環、シクロヘキサン環、ビシクロオクタン環、ノルボルナン環、シクロデカン環、アダマンタン環、シクロペンタン環等の脂環式炭化水素環を有する脂環基が挙げられる。脂環式エーテル基としては、テトラヒドロフルフリル基、テトラヒドロピラン−2−メチル基、3−エチル−3−オキセタンメチル基等が挙げられる。これらの脂環基は、その脂環構造に、アルキル基、アルコキシ基、アルキレン基等の置換基が結合していても良い。
【0024】
上記反応希釈剤に含まれる脂環基を有するモノマーの脂環基としては、炭素原子数は5〜12個の脂環式炭化水素環を有する脂環基が好ましい。特に、トリシクロデカン環を有する脂環基が好ましい。
【0025】
上記脂環基を有するモノマーの例としては、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、トリシクロデシル(メタ)アクリレート、シクロデシル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、ノルボルニルメチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、メンチル(メタ)アクリレート、フェンチル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、ジメチルアダマンチル(メタ)アクリレート等が挙げられ、これらは単独又は二種類以上を組み合わせて使用することができる。これらのモノマーの内、より光硬化性転写層の硬化後の耐熱性及び表面硬度を向上させ、且つ硬化収縮性を低減させることができる点で、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【0026】
上記光硬化性組成物の反応希釈剤に含まれる脂環基を有するモノマーの含有率は、特に制限はないが、含有率が低過ぎると耐熱性及び表面硬度の向上、並びに硬化収縮性の低減の効果が低く、高過ぎると転写性や作業性が低下する場合がある。従って、反応希釈剤に含まれる脂環基を有するモノマーの含有率は、光硬化性組成物の不揮発性成分に対して、20〜80質量%が好ましく、更に30〜70質量%が好ましく、特に40〜60質量%が好ましい。なお、本発明において、光硬化性組成物の反応希釈剤に含まれる脂環基を有するモノマーの含有率(本発明において、「脂環基含有モノマー含有率M」とも言う)は、前記光硬化性組成物総質量(不揮発分)と、反応希釈剤に含まれる脂環基を有するモノマーの質量から、下記式(I)により算出する。
【0027】
脂環基含有モノマー含有率M=(反応希釈剤に含まれる脂環基含有モノマー質量/光硬化性組成物総質量)×100(%)・・・(I)
【0028】
また、上記光硬化性組成物を構成するポリマーは、光硬化性転写層の低い硬化収縮性を維持したまま、更に、耐熱性及び表面硬度を向上させるため、脂環基又は芳香族炭化水素基を有する(メタ)アクリレート(アクリレート及びメタクリレートを示す。以下同様。)繰り返し単位を含むアクリル樹脂から構成されている。
【0029】
脂環基は、上記と同様に脂環式炭化水素基、脂環式エーテル基を挙げることができる。脂環式炭化水素基の例としてはイソボルニル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、シクロデシル基、シクロペンチル基、メンチル基、フェンチル基、アダマンチル基等が挙げられる。脂環式エーテル基の例としてはテトラヒドロフルフリル基、テトラヒドロピラン−2−メチル基、3−エチル−3−オキセタンメチル基等が挙げられる。芳香族炭化水素基の例としては、ベンジル基、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、アントリル基、フェナントリル基、インデニル基、フルオレニル基、アズレニル基等が挙げられる。
【0030】
上記ポリマーを構成するアクリル樹脂の、脂環基又は芳香族炭化水素基有する(メタ)アクリレート繰り返し単位の脂環基又は芳香族炭化水素基としては、炭素原子数は5〜12個の脂環基又は炭素原子数6〜12個の芳香族炭化水素基が好ましい。光硬化性転写層の低い硬化収縮性を維持したまま、より耐熱性及び表面硬度を向上させることができる点で、特に、イソボルニル基、ベンジル基が好ましい。
【0031】
脂環基又は芳香族炭化水素基を有する(メタ)アクリレート繰り返し単位の含有率は、特に制限はないが、含有率が低過ぎると耐熱性及び表面硬度をより向上させる効果が低く、高過ぎると転写性や作業性が低下する場合がある。従って、脂環基又は芳香族炭化水素基を有する(メタ)アクリレート繰り返し単位の含有率は、光硬化性組成物の不揮発性成分に対して、10〜40質量%が好ましく、更に20〜40質量%が好ましい。
【0032】
なお、本発明において、光硬化性組成物中のポリマー中の脂環基又は芳香族炭化水素基を有する(メタ)アクリレート繰り返し単位の含有率(本発明において、「脂環基(芳香環)含有モノマー単位含有率T」とも言う)は、以下のように算出する。
【0033】
(1)光硬化性組成物のポリマー中の脂環基又は芳香族炭化水素基を有する(メタ)アクリレート繰り返し単位の含有率(本発明において、「脂環基(芳香環)含有モノマー単位含有率P」とも言う)を、光硬化性組成物のポリマーの調製に用いる脂環基(芳香環)含有モノマー質量及び総モノマー質量から、下記式(II)により算出する。
【0034】
脂環基(芳香環)含有モノマー単位含有率P=(ポリマー用脂環基(芳香環)含有モノマー質量/ポリマー用総モノマー質量)×100(%)・・・(II)
【0035】
(2)脂環基(芳香環)含有モノマー単位含有率Tを、脂環基(芳香環)含有モノマー単位含有率P、光硬化性組成物に用いる脂環基含有ポリマー質量及び光硬化性組成物総質量(不揮発分)から、下記式(III)により算出する。
【0036】
脂環基(芳香環)含有モノマー単位含有率T=
(((脂環基(芳香環)含有モノマー単位含有率P/100)×脂環基(芳香環)含有ポリマー質量)/光硬化性組成物総質量)×100(%)・・・(III)
【0037】
[反応性希釈剤]
本発明において、光硬化性転写層11を形成する光硬化性組成物の光重合性官能基を有する反応性希釈剤は、本発明の効果を阻害しない限り、上記の脂環基を有するモノマーの他のモノマー及びオリゴマーを含んでも良い。例えば、(メタ)アクリルモノマー類としては、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェニルオキシプロピル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルポリエトキシ(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニルオキシエチル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルホリン、N−ビニルカプロラクタム、o−フェニルフェニルオキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピルメタクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジプロポキシジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジアクリレート、グリセリンアクリレートメタクリレート、グリセリンジメタクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパンアクリレートメタクリレート、トリメチロールプロパンジメタクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリス〔(メタ)アクリロキシエチル〕イソシアヌレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0038】
また、(メタ)アクリレートオリゴマー類としては、ポリオール化合物(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,9−ノナンジオール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、トリメチロールプロパン、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,4−ジメチロールシクロヘキサン、ビスフェノールAポリエトキシジオール、ポリテトラメチレングリコール等のポリオール類、前記ポリオール類とコハク酸、マレイン酸、イタコン酸、アジピン酸、水添ダイマー酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の多塩基酸又はこれらの酸無水物類との反応物であるポリエステルポリオール類、前記ポリオール類とε−カプロラクトンとの反応物であるポリカプロラクトンポリオール類、前記ポリオール類と前記、多塩基酸又はこれらの酸無水物類のε−カプロラクトンとの反応物、ポリカーボネートポリオール、ポリマーポリオール等)と、有機ポリイソシアネート(例えば、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4'−ジイソシアネート、ジシクロペンタニルジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4'−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,2',4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等)と水酸基含有(メタ)アクリレート(例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェニルオキシプロピル(メタ)アクリレート、シクロヘキサン−1,4−ジメチロールモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート等)の反応物であるポリウレタン(メタ)アクリレート、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸の反応物であるビスフェノール型エポキシ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。これら光重合可能な官能基を有する化合物は1種又は2種以上、混合して使用することができる。
【0039】
本発明において、光硬化性組成物のポリマーと反応性希釈剤との質量比は、20:80〜80:20、特に30:70〜70:30の範囲が好ましい。反応性希釈剤の量が多過ぎると、べたついて作業性が低下する場合があり、反応性希釈剤の量が少な過ぎると、タック(軽い力で短時間に被接着体に粘着する力)が小さ過ぎて転写性が低下する場合がある。
【0040】
[ポリマー]
本発明において、光硬化性転写層11を形成する光硬化性組成物のポリマーを構成する樹脂は、上述の通り、脂環基又は芳香族炭化水素基を有する(メタ)アクリレート繰り返し単位を含むアクリル樹脂である。
【0041】
ポリマーに脂環基又は芳香族炭化水素基を有する(メタ)アクリレート繰り返し単位を含ませるために、ポリマーを構成するモノマー成分として、脂環基又は芳香族炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステルを含有させる。
【0042】
脂環基を有する(メタ)アクリル酸エステルの例としては、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。芳香族炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステルの例としては、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ナフチル(メタ)アクリレート、ビフェニル(メタ)アクリレート、アントリル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0043】
この場合、光硬化性転写層の耐熱性及び表面硬度をより向上させるために、炭素原子数が5〜12個の脂環基及び炭素原子数6〜12個の芳香族炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステルが好ましく、特にイソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートを用いることが好ましい。
【0044】
ポリマー中の脂環基又は芳香族炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル((メタ)アクリレート)繰り返し単位の含有率としては、特に制限はないが、好ましくは30〜100質量%であり、更に好ましくは50〜90質量%である。上述のように、本発明においては、光硬化性組成物全体に対する、脂環基又は芳香族炭化水素基を有する(メタ)アクリレート繰り返し単位の含有率が、光硬化性転写層の耐熱性の向上等に影響する場合があるので、このポリマーの調製の段階で、脂環基又は芳香族炭化水素基を有する(メタ)アクリレート繰り返し単位の含有率を調節するのが好ましい。
【0045】
本発明において、ポリマーの(メタ)アクリレート繰り返し単位は、本発明の効果を阻害しない限り、他の脂環基及び芳香族炭化水素基を有さない(メタ)アクリレート繰り返し単位を含んでいても良い。例えば、炭素原子数1〜12の直鎖状、分岐状のアルキル基を有する(メタ)アクリレート繰り返し単位を含んでいても良い。即ち、ポリマーの(メタ)アクリレート繰り返し単位を構成するモノマー成分としては、メチル(メタ)アクリレートや、アルコール残基が炭素原子数2〜10個の(メタ)アクリル酸エステルを用いることができる。
【0046】
アルコール残基が炭素原子数2〜10個(特に3〜5個)のアルキル(メタ)アクリル酸エステルの例としては、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。他のアクリル酸エステル成分としては、メチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートが好ましい。このような(メタ)アクリル酸エステルは、その繰り返し単位として、ポリマー中に、一般に5〜80質量%、特に10〜50質量%含まれることが好ましい。
【0047】
また、一般に、光硬化性転写層11を形成する光硬化性組成物のポリマーは、ガラス転移温度(Tg)が80℃以上のポリマーであることが好ましい。これにより、金型の微細凹凸パターンが容易に転写でき、硬化も高速で行うことができる。また硬化された形状も高いTgを有するのでその形状が変わることなく長期に維持され得る。ガラス転移温度が80℃以上のポリマーとしては、重合性官能基を有することが、反応性希釈剤と反応が可能となり硬化の高速化に有利である。またヒドロキシル基を有することにより、光硬化性転写層11にジイソシアネートを含ませることで、ポリマーを僅かに架橋させることが可能となり、転写層のしみ出し、層厚変動が大きく抑えられた層とするのに特に有利である。ジイソシアネートは、ヒドロキシル基を有さないポリマーでもある程度、上記の効果を有する。
【0048】
従って、アクリル樹脂は、前述したように、重合性官能基を有するアクリル樹脂又はヒドロキシル基を有するアクリル樹脂であることが特に好ましい。
【0049】
本発明において、重合性官能基を有するアクリル樹脂は、上記の少なくとも1種の脂環基又は芳香族炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステルと、必要に応じて他の(メタ)アクリル酸エステルと、グリシジル(メタ)アクリレートとをモノマー成分とした共重合体で、且つ該グリシジル基に重合性官能基を有するカルボン酸が反応したもの、或いは上述の(メタ)アクリル酸エステルと、重合性官能基を有するカルボン酸をモノマー成分とした共重合体で、且つ当該カルボン酸基にグリシジル(メタ)アクリレートが反応したものである。
【0050】
また、グリシジル(メタ)アクリレート又は重合性官能基を有するカルボン酸は、その繰り返し単位として、ポリマー中に、一般に5〜25質量%、特に5〜20質量%含まれることが好ましい。得られた共重合体のグリシジル基又はカルボン酸基に、それぞれ重合性官能基を有するカルボン酸又はグリシジル(メタ)アクリレートを反応させる。
【0051】
上記の重合性官能基を有するアクリル樹脂は、例えば、以下のように製造することができる。
【0052】
上記の少なくとも1種の脂環基又は芳香族炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステルと、必要に応じて他の(メタ)アクリル酸エステルと、グリシジル基を1個かつ重合性官能基を1個有する化合物(好ましくはグリシジル(メタ)アクリレート)或いは重合性官能基を有するカルボン酸とを、ラジカル重合開始剤と有機溶剤の存在下で溶液重合法などの公知の方法にて反応させて共重合体であるグリシジル基含有アクリル樹脂(a)又はカルボキシル基含有アクリル樹脂(b)を得る。
【0053】
次いで得られたグリシジル基含有アクリル樹脂(a)に重合性官能基を有するカルボン酸を加え、或いは得られたカルボキシル基含有アクリル樹脂(b)にグリシジル基を1個かつ重合性官能基を1個有する化合物(好ましくはグリシジルメタクリレート)を加え、必要に応じ加熱することによりアクリル系光硬化型樹脂(A)又はアクリル系光硬化型樹脂(B)を得る。この配合比は、グリシジル基とカルボキシル基のモル比が1/0.9〜1/1となるように配合するのが好ましく、より好ましくは1/1である。グリシジル基過剰では長期安定性において増粘、ゲル化のおそれがあり、カルボキシル基過剰では皮膚刺激性が上がり作業性が低下する。さらに1/1の場合は残存グリシジル基がなくなり、貯蔵安定性が顕著に良好になる。反応は塩基性触媒、リン系触媒などの存在下で公知の方法にて行うことができる。
【0054】
また、本発明において、ヒドロキシル基を有するアクリル樹脂は、上記の少なくとも1種の脂環基又は芳香族炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステルと、必要に応じて他の(メタ)アクリル酸エステルと、アルコール残基がヒドロキシル基を有する炭素原子数2〜4個のアルキルの(メタ)アクリル酸エステルの少なくとも1種との共重合体である。
【0055】
アルコール残基がヒドロキシル基を有する炭素原子数2〜4個のアルキルの(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレートを挙げることができ、その繰り返し単位として、ポリマー中に、一般に5〜25質量%、特に5〜20質量%含まれることが好ましい。
【0056】
本発明において、アクリル樹脂は、数平均分子量が80000以上、特に80000〜1000000、そして重量平均分子量が90000以上、特に90000〜300000であることが好ましい。
【0057】
さらに本発明では、アクリル樹脂として、ヒドロキシル基等の活性水素を有する官能基及び光重合性官能基の両方を有するアクリル樹脂も使用することができる。このような反応性アクリル樹脂は、主鎖又は側鎖に光重合性官能基及び活性水素を有する官能基を有するものである。従って、このような反応性アクリル樹脂は、例えば、上述の脂環基を有する(メタ)アクリル酸エステルの少なくとも1種を含む(メタ)アクリレートモノマーと、ヒドロキシル基等の官能基を有する(メタ)アクリレート(例、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート)とを共重合させ、得られた重合体とイソシアナトアルキル(メタ)アクリレートなどの、重合体の官能基と反応し且つ光重合性基を有する化合物と反応させることにより得ることができる。その際、ヒドロキシル基が残るようにイソシアナトアルキル(メタ)アクリレートの量を調節して使用することにより、活性水素を有する官能基としてヒドロキシル基及び光重合性官能基を有するアクリル樹脂が得られる。
【0058】
或いは上記において、ヒドロキシル基の代わりにアミノ基を有する(メタ)アクリレート(例、2−アミノエチル(メタ)アクリレート)を用いることにより活性水素を有する官能基としてアミノ基を有する、光重合性官能基含有アクリル樹脂を得ることができる。同様に、活性水素を有する官能基としてカルボキシル基等を有する、光重合性官能基含有アクリル樹脂も得ることができる。
【0059】
本発明では、前記光重合性官能基をウレタン結合を介して有するアクリル樹脂も好ましい。
【0060】
上記光重合性官能基を有するアクリル樹脂は、光重合性官能基を一般に1〜50モル%、特に5〜30モル%含むことが好ましい。この光重合性官能基としては、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基が好ましく、特にアクリロイル基、メタクリロイル基が好ましい。
【0061】
本発明において、光硬化性転写層を形成する光硬化性組成物には、本発明の効果を損なわない限り、別のポリマーを含んでいても良い。別のポリマーとしては、ポリ酢酸ビニル、ビニルアセテート/(メタ)アクリレート共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、ポリスチレン及びその共重合体、ポリ塩化ビニル及びその共重合体、ブタジエン/アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体、メタクリレート/アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体、2−クロロブタジエン−1,3−ポリマー、塩素化ゴム、スチレン/ブタジエン/スチレン共重合体、スチレン/イソプレン/スチレンブロック共重合体、エポキシ樹脂、ポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン、セルロースエステル、セルロースエーテル、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール等を挙げることができる。
【0062】
[透明フィルム]
本発明において、透明フィルム12のポリマーフィルム12bは、本発明の光硬化性転写シート10に使用可能な透明性や物性があれば、どのようなものでも良い。好ましくはポリエステルフィルムである。このポリエステルは、芳香族二塩基酸又はそのエステル形成性誘導体とジオール又はそのエステル形成性誘導体とから合成される線状飽和ポリエステルである。
【0063】
このようなポリエステルの例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ(1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)等を挙げることができ、これらの共重合体又はこれと副成分(50モル%未満)としての他樹脂とのブレンドであってもよい。これらのポリエステルのうち、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレートが力学的物性や光学物性等のバランスが良いので好ましい。特に、ポリエチレン−2,6−ナフタレートは機械的強度の大きさ、熱収縮率の小ささ、加熱時のオリゴマー発生量の少なさなどの点でポリエチレンテレフタレートに優っており最も好ましい。
【0064】
ポリマーフィルム12bの厚さは1〜500μmであることが好ましく、より好ましくは3〜400μm、更に好ましくは6〜300μm、特に好ましくは12〜250μmである。
【0065】
本発明において、透明フィルム12の易接着層12aは無くてもいが、ポリマーフィルム12bと光硬化性転写層11との密着性をより強力にするために、易接着層12aを設けた方が好ましい。易接着層12aは、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂の1種又は2種以上の混合物からなる易接着であることが好ましい。
【0066】
易接着層12aの厚さは、0.01〜0.3μmの範囲、特に0.02〜0.2μmの範囲あることが好ましい。
【0067】
以下に、本発明において、光硬化性転写シートを形成する他の材料について述べる。
【0068】
[光重合開始剤]
光硬化性転写層を形成する光硬化性組成物に含まれる、光重合開始剤としては、公知のどのような光重合開始剤でも使用することができるが、配合後の貯蔵安定性の良いものが望ましい。このような光重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン系、ベンジルジメチルケタールなどのベンゾイン系、ベンゾフェノン系、イソプロピルチオキサントン、2−4−ジエチルチオキサントンなどのチオキサントン系、その他特殊なものとしては、メチルフェニルグリオキシレートなどが使用できる。特に好ましくは、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルホリノプロパン−1、ベンゾフェノン等が挙げられる。これら光重合開始剤は、必要に応じて、4−ジメチルアミノ安息香酸のごとき安息香酸系又は、第3級アミン系などの公知慣用の光重合促進剤の1種または2種以上を任意の割合で混合して使用することができる。また、光重合開始剤のみの1種または2種以上の混合で使用することができる。光硬化性組成物(不揮発分)中に、光重合開始剤を一般に0.1〜20質量%、特に1〜10質量%含むことが好ましい。
【0069】
光重合開始剤のうち、アセトフェノン系重合開始剤としては、例えば、4−フェノキシジクロロアセトフェノン、4−t−ブチル−ジクロロアセトフェノン、4−t−ブチル−トリクロロアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−ドデシルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルホリノプロパン−1など、ベンゾフェノン系重合開始剤としては、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、4−ベンッゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノンなどが使用できる。
【0070】
アセトフェノン系重合開始剤としては、特に、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルホリノプロパン−1が好ましい。ベンゾフェノン系重合開始剤としては、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチルが好ましい。また、第3級アミン系の光重合促進剤としては、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、4,4’−ジメチルアミノベンゾフェノン、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン、2−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸(n−ブトキシ)エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、4−ジメチルアミノ安息香酸2−エチルヘキシルなどが使用できる。特に好ましくは、光重合促進剤としては、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸(n−ブトキシ)エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、4−ジメチルアミノ安息香酸2−エチルヘキシルなどが挙げられる。
【0071】
[ジイソシアネート]
本発明において、光硬化性転写層を形成する光硬化性組成物中に硬化剤としてジイソシアネートを添加する場合は、トリレンジイソシアネート(TDI)、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4−ジイソシアネート、ジシクロペンタニルジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4’−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,2’,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートを使用することができる。またトリメチロールプロパンのTDI付加体等の3官能以上のイソシアネート化合物等のポリイソシアネートシアネートも使用することができる。これらの中でトリメチロールプロパンのヘキサメチレンジイソシアネート付加体が好ましい。
【0072】
本発明において、ジイソシアネートは、光硬化性組成物(不揮発性成分)中に0.2〜4質量%、特に0.2〜2質量%の範囲で含まれていることが好ましい。転写層のしみ出しを防止するために適当な架橋がもたらされると共に、スタンパ等の金型の凹凸の良好な転写性も維持される。上記化合物とポリマーとの反応は、転写層形成後、徐々に進行し、常温(一般に25℃)、24時間でかなり反応している。転写層形成用の塗布液を調製した後、塗布するまでの間にも反応は進行するものと考えられる。転写層を形成後、ロール状態で巻き取る前にある程度硬化させることが好ましいので、必要に応じて、転写層を形成時、或いはその後、ロール状態で巻き取る前の間に加熱して反応を促進させても良い。
【0073】
[その他]
本発明において、光硬化性転写層を形成する光硬化性組成物には、更に、所望により下記の熱可塑性樹脂及び他の添加剤を添加することが好ましい。
【0074】
他の添加剤として、離型性をさらに向上させるため、滑剤(離型剤)を添加することができる。滑剤としては、リン酸アルキルポリオキシアルキレン化合物、リン酸トリアルキルエステル化合物、リン酸塩及びリン酸アミド等のリン原子含有化合物、非変性又は変性ポリシロキサン等のシリコーン系樹脂、フルオロ(メタ)アクリレート類等のフッ素原子含有エチレン性化合物等が挙げられる。滑剤の添加量は上記ポリマー(不揮発性成分)100質量部に対し通常0.01〜5質量部である。
【0075】
また、他の添加剤として、シランカップリング剤(接着促進剤)を添加することができる。このシランカップリング剤としてはビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシランなどがあり、これらの1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。これらシランカップリング剤の添加量は、上記ポリマー(不揮発性成分)100質量部に対し通常0.01〜5質量部で十分である。
【0076】
また同様に接着性を向上させる目的でエポキシ基含有化合物を添加することができる。エポキシ基含有化合物としては、トリグリシジルトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート;ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル;1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル;アクリルグリシジルエーテル;2−エチルヘキシルグリシジルエーテル;フェニルグリシジルエーテル;フェノールグリシジルエーテル;p−t−ブチルフェニルグリシジルエーテル;アジピン酸ジグリシジルエステル;o−フタル酸ジグリシジルエステル;グリシジルメタクリレート;ブチルグリシジルエーテル等が挙げられる。また、エポキシ基を含有した分子量が数百から数千のオリゴマーや重量平均分子量が数千から数十万のポリマーを添加することによっても同様の効果が得られる。これらエポキシ基含有化合物の添加量は上記ポリマー(不揮発性成分)100質量部に対し0.1〜20質量部で十分で、上記エポキシ基含有化合物の少なくとも1種を単独で又は混合して添加することができる。
【0077】
さらに他の添加剤として、加工性や貼り合わせ等の加工性向上の目的で炭化水素樹脂を添加することができる。この場合、添加される炭化水素樹脂は天然樹脂系、合成樹脂系のいずれでも差支えない。天然樹脂系ではロジン、ロジン誘導体、テルペン系樹脂が好適に用いられる。ロジンではガム系樹脂、トール油系樹脂、ウッド系樹脂を用いることができる。ロジン誘導体としてはロジンをそれぞれ水素化、不均一化、重合、エステル化、金属塩化したものを用いることができる。テルペン系樹脂ではα−ピネン、β−ピネンなどのテルペン系樹脂のほか、テルペンフェノール樹脂を用いることができる。また、その他の天然樹脂としてダンマル、コーバル、シェラックを用いても差支えない。一方、合成樹脂系では石油系樹脂、フェノール系樹脂、キシレン系樹脂が好適に用いられる。石油系樹脂では脂肪族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、脂環族系石油樹脂、共重合系石油樹脂、水素化石油樹脂、純モノマー系石油樹脂、クマロンインデン樹脂を用いることができる。フェノール系樹脂ではアルキルフェノール樹脂、変性フェノール樹脂を用いることができる。キシレン系樹脂ではキシレン樹脂、変性キシレン樹脂を用いることができる。
【0078】
上記炭化水素樹脂等の樹脂の添加量は適宜選択されるが、上記ポリマー(不揮発性成分)100質量部に対して1〜20質量部が好ましく、より好ましくは5〜15質量部である。
【0079】
以上の添加剤の他、本発明の光硬化性組成物は紫外線吸収剤、老化防止剤、染料、加工助剤等を少量含んでいてもよい。また、場合によってはシリカゲル、炭酸カルシウム等の微粒子等の添加剤を少量含んでもよい。
【0080】
本発明において、光硬化性転写層の周波数1Hzにおける貯蔵弾性率は、25℃において1×10Pa以下であることが好ましく、特に1×10〜6×10Paの範囲であることが好ましい。また80℃において8×10Pa以下であることが好ましく、特に1×10〜5×10Paの範囲であることが好ましい。これにより、精確で迅速な転写が可能となる。さらに、本発明の光硬化性転写層は、ガラス転移温度を20℃以下であることが好ましい。これにより、得られる光硬化性転写層がスタンパ等の金型の凹凸面に圧着されたとき、常温においてもその凹凸面に緊密に追随できる可撓性を有することができる。特に、ガラス転移温度が15℃〜−50℃、さらに0℃〜−40℃の範囲にすることにより追随性が高いものとなる。ガラス転移温度が高すぎると、貼り付け時に高圧力及び高圧力が必要となり作業性の低下につながり、また低すぎると、硬化後の十分な硬度が得られなくなる。
【0081】
また本発明において、光硬化性転写層は、300mJ/cmの紫外線照射後のガラス転移温度が65℃以上となるように設計されていることが好ましい。短時間の紫外線照射により、転写での残留応力から発生しやすいピット形状等のダレ発生を防止することが容易で、転写されたピット形状等を保持することができる。
【0082】
本発明の光硬化性転写シートは、上述の光硬化組成物の構成成分を均一に混合し、押出機、ロール等で混練した後、カレンダー、ロール、Tダイ押出、インフレーション等の製膜法により所定の形状に製膜して製造することができる。好ましくは透明フィルムの易接着層の表面に製膜して光硬化性転写層を形成する。より好ましい本発明の光硬化性接着剤の製膜方法は、各構成成分を良溶媒に均一に混合溶解し、この溶液をシリコーンやフッ素樹脂を精密にコートしたセパレーターにフローコート法、ロールコート法、グラビアロール法、マイヤバー法、リップダイコート法等により易接着層上に塗工し、溶媒を乾燥することにより製膜する方法である。
【0083】
また、光硬化性転写シートの厚さは1〜1200μm、特に5〜500μmとすることが好ましい。特に5〜300μm(好ましくは150μm以下)が好ましい。1μmより薄いと封止性が劣り、一方、1000μmより厚いと得られる成形体の厚みが増し、成形体の収納、アッセンブリー等に問題が生じるおそれがある。
【0084】
光硬化性転写層の厚さは、1〜300μm、特に3〜100μmが好ましい。
【0085】
[剥離シート]
本発明の光硬化性転写シートを構成する光硬化性転写層に剥離シートを設ける場合、剥離シートは一般にプラスチックフィルム上に、シリコーン等の表面張力の低い剥離層を有する。例えば、ヒドロキシル基を有するポリシロキサンと水素化ポリシロキサンとの縮合反応生成物からなる剥離層、或いは不飽和2重結合基(好ましくはビニル基)を有するポリシロキサン(好ましくはジメチルポリシロキサン)と水素化ポリシロキサン(好ましくはジメチルポリシロキサン)から形成される剥離層等を挙げることができる。
【0086】
剥離シートのプラスチックフィルムとしては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリシクロヘキシレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ナイロン46、変性ナイロン6T、ナイロンMXD6、ポリフタルアミド等のポリアミド系樹脂、ポリフェニレンスルフィド、ポリチオエーテルサルフォン等のケトン系樹脂、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン等のサルフォン系樹脂の他に、ポリエーテルニトリル、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、トリアセチルセルロース、ポリスチレン、ポリビニルクロライド等の有機樹脂を主成分とする透明樹脂フィルムを用いることができる。これら中で、ポリカーボネート、ポリメチルメタアクリレート、ポリビニルクロライド、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレートのフィルムが好適に用いることができ、特にポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましい。厚さは10〜200μmが好ましく、特に30〜100μmが好ましい。
【0087】
本発明の方法において、本発明の光硬化性転写シートは、アニール処理されていることが好ましい。アニール処理は、転写シートを30〜100℃、特に40〜70℃の温度で、1時間〜30日間、特に10時間〜10日間に亘って保管することにより行うことが好ましい。転写シートは、一般にロール状態(巻かれた状態)でアニール処理することが好ましい。このようなアニール処理により、剥離シートの剥離層の剥離を促進する成分(離型成分)が、光硬化性転写層への移行が進み、スタンパの除去が容易になると考えられる。
【0088】
[凹凸パターン形成方法]
次に、本発明の光硬化性転写シート10を用いた、微細凹凸パターンの形成方法について、図面を参照しながら説明する。一般にナノインプリントプロセス法もこの微細凹凸パターンの形成方法のように行うことができる。
【0089】
図2は、本発明の光硬化性転写シート10を用いた微細凹凸パターンの形成方法の代表的な一例を示す概略断面図である。まず光硬化性転写シート10から、剥離シート13を除去し、光硬化性転写層11を露出させる。光硬化性転写層11は透明フィルム12のポリマーフィルム12b上の易接着層12aに接着、固定されている。金型としてスタンパ14を、その微細凹凸パターン面が光硬化性転写層11の表面に対向するように配置する(図2(a))。続いて、光硬化性転写層11上に、スタンパ14を押圧し、光硬化性転写層11の表面がスタンパ14の凹凸パターンの表面に沿って密着した積層体を形成する(図2(b):以上工程(1))。押圧が可能なように、光硬化性転写層11は必要に応じて加熱される。常温で押圧可能であれば加熱する必要はない。この状態で、光硬化性転写層11を、光(UV)照射することにより硬化させる(工程(2))。押圧しながら光照射することがタクトを短縮できるので好ましい。その後、スタンパ14を硬化した光硬化性転写層11cから除去する(図2(c):工程(3))。このようにして、スタンパ14の微細凹凸パターンが反転した凹凸パターンを光硬化性転写層11上に形成する。
【0090】
上記においては、金型としてスタンパを用いて説明したが、他の金型でも同様に行うことができる。微細凹凸パターンを転写することに有利なことから、金型として、ナノインプリントプロセス法等に使用するスタンパが好ましい。材質はどのようなものでも良いが、好ましくはニッケル、チタン、シリコン、石英等が適用できる。特にニッケルが好ましい。
【0091】
上記のスタンパ14の微細凹凸パターンが反転した凹凸パターンが形成された光硬化性転写シート10を中間スタンパとして使用する場合は、更に同様な工程により、別の光硬化性転写シート(本発明の光硬化性転写シートでも、異なるものでも良い)や、基板上に形成された光硬化性樹脂層(例えば、液状の光硬化性樹脂組成物からなる)の表面に凹凸パターンを形成することができる。この場合、基板としては、電子部品用の基板や、これに所定の配線パターンが形成されたもの等が挙げられる。例えば、シリコンウェーハ、銅、クロム、鉄、アルミニウム等の金属製基板や、ガラス基板等が挙げられる。
【0092】
本発明の光硬化性転写シートは硬化後において光硬化性転写層の耐熱性及び表面硬度が向上され、且つ硬化収縮性が低減されている。従って、得られた反転凹凸パターンを有する光硬化性転写シートは、高い寸法精度でスタンパの形状を転写しており、光学部品のように光源から熱を受ける環境下や、擦過等により傷つくおそれがあるデバイスの最表面で使用する場合でも軟化、変形、破損等の損傷が生じ難い。また、中間スタンパとして用いる場合にも、スタンパの形状を高い寸法精度で製品に転写することができる。
【0093】
本発明の方法において、光硬化性転写シートを硬化する場合は、光源として紫外〜可視領域に発光する多くのものが採用でき、例えば超高圧、高圧、低圧水銀灯、ケミカルランプ、キセノンランプ、ハロゲンランプ、マーキュリーハロゲンランプ、カーボンアーク灯、白熱灯、レーザ光等が挙げられる。照射時間は、ランプの種類、光源の強さによって一概には決められないが、0.1秒〜数十秒程度、好ましくは0.5〜数秒である。紫外線照射量は、300mJ/cm以上が好ましい。
【0094】
また、硬化促進のために、予め積層体を30〜80℃に加温し、これに紫外線を照射してもよい。
【0095】
以下に実施例を示し、本発明についてさらに詳述する。
【実施例】
【0096】
(1)光硬化性組成物に用いるポリマーの調製
表1に示したモノマー成分の配合比(モル比)で常法により重合反応を行い、表1に示した重量平均分子量(Mw)、脂環基(芳香環)含有モノマー単位含有率Pのポリマー1〜6を調整した。なお、脂環基を有するモノマーとして、イソボルニルメタクリレート(モノマーC)、芳香族炭化水素を有するモノマーとして、ベンジルメタクリレート(モノマーD)を用いた。
【0097】
【表1】

【0098】
(2)光硬化性転写層サンプルの作製(実施例1〜4、及び比較例1〜3)
(1)で調製したポリマーを用いて、表2に示した配合の実施例1〜4、及び比較例1〜3の光硬化性組成物による光硬化性転写層サンプルを作製した。反応性希釈剤の脂環基を有するモノマーとしてジメチロールトリシクロデカンジアクリレートを用いた。即ち、各光硬化性組成物の混合物を均一に溶解、混練し、PETフィルム上に均一に塗工することで光硬化性転写層サンプルを調製した。
【0099】
脂環基含有モノマー含有率M、及び脂環基(芳香環)含有モノマー単位含有率Tは表2に示した通りである。
【0100】
【表2】

【0101】
(3)評価方法
(i)硬化収縮率
各光硬化性転写層サンプルの水中重量、空中重量を測定し、アルキメデスの原理から密度を算出した。硬化前の密度と硬化後の密度から、各光硬化性転写層サンプルの体積収縮率を算出した。硬化は、UV照射:5000mJ/cmで行った。
(ii)表面硬度
各光硬化性転写層サンプルを硬化し、Fisher Scopeを用いて、マルテンス硬さ(HM)(N/mm)を測定した。硬化は、UV照射:3000mJ/cmで行った。
(iii)ガラス転移温度
耐熱性の指標として、ガラス転移温度を測定した。
各光硬化性転写層サンプルを硬化し、UVレオメータ(HAAKE MARS)を用いて、粘弾性の温度依存を測定し、tanδのピーク温度をガラス転移温度とした。
測定周波数は1Hz、硬化は、UV照射:3000mJ/cmで行った。
【0102】
(4)評価結果
評価結果を表3に示す。
【0103】
【表3】

【0104】
表3に示した通り、反応性希釈剤に脂環基を有するモノマー(2個の官能基を有する)を用い、且つポリマーに脂環基又は芳香族炭化水素基を有する(メタ)アクリレート繰り返し単位を含むアクリル樹脂を用いた実施例1〜4では、反応性希釈剤に脂環基を有さないモノマーを含まない(2個の官能基を有する)比較例1に比べて、硬化収縮率が低減されていた。更に、3個の官能基を有するモノマーを用いた比較例2に比べて、表面硬度、ガラス転移温度が向上されていた。なお、比較例2では、比較例1に比べて表面硬度、ガラス転移温度が向上したが、硬化収縮率がやや上昇していた。
【0105】
また、反応性希釈剤に脂環基を有するモノマーを用い、ポリマーに脂環基又は芳香族炭化水素基を有する(メタ)アクリレート繰り返し単位を含まない比較例3では、比較例1に比べて、硬化収縮率が低減されていたが、表面硬度、ガラス転移温度は比較例2に及ばず、十分向上されていなかった。
【0106】
従って、光硬化性組成物の反応性希釈剤に脂環基を有するモノマーを含み、且つポリマーに脂環基又は芳香族炭化水素基を有する(メタ)アクリレート繰り返し単位を含むアクリル樹脂を用いることで、光硬化性転写層の表面硬度、耐熱性を十分に向上させ、且つ硬化収縮率を低減させることができることが示された。
【0107】
なお、本発明は上記の実施の形態の構成及び実施例に限定されるものではなく、発明の要旨の範囲内で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0108】
10 光硬化性転写シート
11 光硬化性転写層
11c 光硬化性転写層(硬化後)
12 透明フィルム
12a 易接着層
12b ポリマーフィルム
13 剥離シート
14 スタンパ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加圧により変形可能で、ポリマーと光重合性官能基を有する反応性希釈剤を含む光硬化性組成物からなる光硬化性転写層を有する光硬化性転写シートであって、
前記反応性希釈剤が、脂環基を有するモノマーを含み、且つ
前記ポリマーが、脂環基又は芳香族炭化水素基を有する(メタ)アクリレート繰り返し単位を含むアクリル樹脂からなることを特徴とする光硬化性転写シート。
【請求項2】
前記脂環基を有するモノマーが、脂環基を有する(メタ)アクリル酸エステルである請求項1に記載の光硬化性転写シート。
【請求項3】
前記脂環基を有するモノマーの脂環基が、炭素原子数5〜12個の脂環式炭化水素環を有する脂環基である請求項1又は2に記載の光硬化性転写シート。
【請求項4】
前記脂環基を有するモノマーの脂環基が、トリシクロデカン環を有する脂環基である請求項1〜3のいずれか1項に記載の光硬化性転写シート。
【請求項5】
前記脂環基を有するモノマーが、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレートである請求項1〜4のいずれか1項に記載の光硬化性転写シート。
【請求項6】
前記脂環基を有するモノマーの含有率が、前記光硬化性組成物の不揮発性成分に対して20〜80質量%である請求項1〜5のいずれか1項に記載の光硬化性転写シート。
【請求項7】
前記ポリマーに含まれる脂環基又は芳香族炭化水素基を有する(メタ)アクリレート繰り返し単位の脂環基又は芳香族炭化水素基が、炭素原子数5〜12個の脂環基又は炭素原子数6〜12個の芳香族炭化水素基である請求項1〜6のいずれか1項に記載の光硬化性転写シート。
【請求項8】
前前記ポリマーに含まれる記脂環基又は芳香族炭化水素基を有する(メタ)アクリレート繰り返し単位の脂環基又は芳香族炭化水素基が、イソボルニル基、又はベンジル基である請求項1〜7のいずれか1項に記載の光硬化性転写シート。
【請求項9】
前記ポリマーに含まれる前記脂環基又は芳香族炭化水素基を有する(メタ)アクリレート繰り返し単位の含有率が、前記光硬化性組成物の不揮発性成分に対して10〜40質量%である請求項1〜8のいずれか1項に記載の光硬化性転写シート。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−107109(P2012−107109A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−256455(P2010−256455)
【出願日】平成22年11月17日(2010.11.17)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】