光硬化性(メタ)アクリル樹脂の製造方法
【課題】紫外線吸収性を有し、長期の耐候性を有し、各種溶剤や多くの樹脂及びモノマーとの溶解性にも優れ、低温時にも析出することなく透明な塗膜が形成でき、広範な光硬化性(メタ)アクレート樹脂等に配合して均一に分散・溶解できる観点から望ましい光硬化性(メタ)アクリル樹脂を製造すること。
【解決手段】特定の化合物(a1)と、特定の化合物(b2)と、前記(a1)、(b2)の何れとも共重合可能な他のモノマー(c1)とを、分割添加し、ラジカル重合開始剤を使用して、最終的に所定量比となるように、複数回反応させて共重合させ、特定の成分単位を含有する前駆体を形成する工程(1)と、前記前駆体と、特定の化合物(b1)とを反応させる工程(2)とを含む、特定の成分単位を含有する光硬化性(メタ)アクリル樹脂の製造方法。
【解決手段】特定の化合物(a1)と、特定の化合物(b2)と、前記(a1)、(b2)の何れとも共重合可能な他のモノマー(c1)とを、分割添加し、ラジカル重合開始剤を使用して、最終的に所定量比となるように、複数回反応させて共重合させ、特定の成分単位を含有する前駆体を形成する工程(1)と、前記前駆体と、特定の化合物(b1)とを反応させる工程(2)とを含む、特定の成分単位を含有する光硬化性(メタ)アクリル樹脂の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光硬化性(メタ)アクリル樹脂の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、光硬化性樹脂組成物に紫外線吸収剤を配合することにより耐光性および耐候性を改善する方法は知られている。この方法では、紫外線吸収剤が樹脂からブリードアウトし、効果の持続性が継続・持続しにくいという欠点があった。
【0003】
これに対して、特許第2963029号(日本触媒、特許文献1)では、2−[2'−ヒドロキシ−5'−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾールと、シクロアルキル(メタ)アクリレートなどのシクロアルキル基含有不飽和単量体と、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどの水酸基含有不飽和単量体とを共重合してなる共重合体が含まれた塗料組成物が開示されている。この共重合体では、紫外線吸収剤は、共重合体中に組み込まれており、その紫外線吸収剤のブリードアウトの問題はない。
【0004】
しかし、この組成物は上記の共重合体(水酸基含有アクリルポリオール)と、ポリイソシアネート化合物やその変性物などのイソシアネート基含有架橋剤と、を配合してなる2液塗料組成物である。つまり、上記の紫外線吸収剤含有共重合体自体は光硬化性を有しておらず、架橋剤であるポリイソシアネート化合物などと組合わせ、2液のウレタン硬化反応により硬化塗膜形成ができる共重合体であり、光硬化性樹脂組成物に使用することができない。
【0005】
そこで上記問題点を解決するべく本発明者らは鋭意研究を重ねたところ、
(イ)得られる共重合体(光硬化性(メタ)アクリル樹脂)中に、紫外線吸収性を有する紫外線吸収性化合物成分単位(A)と共に、少なくとも側鎖末端に共重合反応に供されていない未反応の(メタ)アクリロイル基を有している光重合性多官能性(メタ)アクリロイル基含有化合物成分単位(B)などが存在していると、この光硬化性アクリル樹脂は、少なくとも共重合体側鎖に光硬化可能な(メタ)アクリロイル基を含有しているため光硬化性を有していること、
(ロ)この光硬化性アクリル樹脂が含まれた光硬化性樹脂組成物は、該組成物の硬化反応により、光硬化性アクリル樹脂が硬化物中に反応固定化されることで長期の耐候性を付与することができること、
(ハ)また、この光硬化性(メタ)アクリル樹脂は、各種溶剤や樹脂及びモノマーへの溶解性に劣る紫外線吸収剤と異なり、ケトン、エステル、エーテル、芳香族系の各種溶剤や、多くの樹脂及びモノマーとの溶解性がよいため低温時にも析出することなく透明な塗膜が形成でき、広範な光硬化性(メタ)アクレート樹脂等に配合して均一に分散・溶解することができる。また樹脂やモノマーへの溶解性がよいので組成物中の紫外線吸収成分の割合を高めることができ、そのため紫外線吸収性能をより高めることが可能となること、などを見出して本発明を完成するに至った。
【0006】
なお、上記反応性紫外線吸収剤(モノマー)の2−[2'−ヒドロキシ−5'−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール(商品名「RUVA−93」大塚化学(株)製)を、共重合用モノマーの1種として用いた例としては、該モノマーと、シクロヘキシルアクリレートとの共重合体(特開平9−3134号公報、特許文献2)等が挙げられる。
【0007】
その他、特開平6−88065号公報(特許文献3)には、重合可能な不飽和二重結合がアルキレン鎖を介してウレタン結合によりベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の骨格に結合している紫外線吸収剤及びこれを含む紫外線吸収組成物が開示されている。
【0008】
特開平6−88066号公報(特許文献4)には、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤の骨格にウレタン結合を介して重合可能な不飽和二重結合を分子内に有する紫外線吸収剤及びこれを含む紫外線吸収組成物が開示されている。
【0009】
さらに、紫外線吸収剤およびこれに関連する技術としては、特開平6−128502号公報(特許文献5、対応特許第3223459号)、特開昭61−236805号公報(特許文献6)、特開平4−106161号公報(特許文献7)、特開平5−65316号公報(特許文献8)、特開平10−130456号公報(特許文献9)、特開2001−342439号公報(特許文献10)等が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第2963029号
【特許文献2】特開平9−3134号公報
【特許文献3】特開平6−88065号公報
【特許文献4】特開平6−88066号公報
【特許文献5】特開平6−128502号公報
【特許文献6】特開昭61−236805号公報
【特許文献7】特開平4−106161号公報
【特許文献8】特開平5−65316号公報
【特許文献9】特開平10−130456号公報
【特許文献10】特開2001−342439号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記のような従来技術に伴う問題点を解決しようとするものであって、紫外線吸収性を有し、長期の耐候性を有し、各種溶剤、樹脂及びモノマーへの溶解性に劣る反応性紫外線吸収剤と異なり、ケトン、エステル、エーテル、芳香族系の各種溶剤や、多くの樹脂及びモノマーとの溶解性にも優れ、低温時にも析出することなく透明な塗膜が形成でき、広範な光硬化性(メタ)アクレート樹脂等に配合して均一に分散・溶解することができる光硬化性(メタ)アクリル樹脂を提供することを目的としている。
【0012】
また本発明は、上記効果を有する紫外線吸収性光硬化性樹脂組成物を提供することを目的としている。
また本発明は、上記組成物から形成され、紫外線吸収性や硬度、耐スチールウール性、耐カール性などの物性を有する耐候性被膜、該被膜で被覆された基材、被覆フィルムを提供することを目的としている。
【0013】
また本発明は、基材表面上に、特定の耐候性被膜を形成させることによる、紫外線の吸収方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る光硬化性(メタ)アクリル樹脂は、
(A)紫外線吸収性化合物骨格と、(メタ)アクリロイル基とを有する(メタ)アクリロイル基含有紫外線吸収性化合物(a1)から誘導される紫外線吸収性化合物成分単位と、(B)(メタ)アクリロイル基と官能基を有する2種の化合物(b1)と(b2)からウレタン結合またはエステル結合を介して誘導される側鎖末端に(メタ)アクリロイル基を
有する光重合性(メタ)アクリロイル基含有化合物成分単位と、
(C)上記成分単位(A)を形成する(メタ)アクリロイル基含有紫外線吸収性化合物(a1)、および
上記成分単位(B)を形成する光重合性(メタ)アクリロイル基含有化合物を誘導する化合物(b2)
の何れとも共重合可能な他のモノマー(c1)から誘導される成分単位と、
を含有することを特徴としている。
【0015】
本発明では、上記(メタ)アクリロイル基含有紫外線吸収性化合物(a1)が、2−[2'−ヒドロキシ−5'−((メタ)アクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾールであることが原料入手の容易性、共重合体の性能が上記目的に照らして優れるなどの点で好ましい。
【0016】
本発明では、光重合性(メタ)アクリロイル基含有化合物成分単位(B)が、下記一般式(B−I)〜(B−III)からなる群から選ばれた少なくとも1種であることが(共重
合体の性能、原料入手の容易性、(メタ)アクリロイル基含有化合物成分単位(B)を誘導する上での合成容易性などの点で好ましい。
一般式(I):
【0017】
【化4】
一般式(B−II):
【0018】
【化5】
一般式(B−III):
【0019】
【化6】
[式(B−I)、(B−II)、(B−III)中、RはHまたはCH3を示す。]
本発明では、上記光重合性(メタ)アクリロイル基含有化合物成分単位(B)が、予め共重合体(前駆体)中に導入された2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート単位中のイソシアネート基(−NCO)と、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートのヒドロキシル基(−OH)とのウレタン化反応により形成され、一般式(B−II)で表されることが好ましい。
【0020】
本発明では、上記光重合性(メタ)アクリロイル基含有化合物成分単位(B)が、予め共重合体中に導入された(メタ)アクリル酸単位と、グリシジル(メタ)アクリレートとのエステル化反応により形成され、一般式(B−II)で表されることが好ましい。
【0021】
本発明では、上記光重合性(メタ)アクリロイル基含有化合物成分単位(B)が、予め共重合体中に導入された(メタ)アクリル酸単位と、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートのグリシジルエーテルとのエステル化反応により形成され、一般式(B−III)
で表されることが好ましい。
【0022】
本発明に係る光硬化性(メタ)アクリル樹脂は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)で測定した光硬化性(メタ)アクリル樹脂の数平均分子量(Mn)が800〜7,000であり、重量平均分子量(Mw)が3,000〜50,000であり、分子量分布(Mw/Mn)が2〜9であることが好ましい。
【0023】
本発明のより好ましい態様に係る光硬化性(メタ)アクリル樹脂は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィーで測定した光硬化性(メタ)アクリル樹脂の数平均分子量(Mn)が1,000〜5,000であり、重量平均分子量(Mw)が4,000〜30,000であり、分子量分布(Mw/Mn)が2.5〜7であることが望ましい。
【0024】
本発明に係る光硬化性(メタ)アクリル樹脂は、
光硬化性(メタ)アクリル樹脂を構成する成分単位(A)、成分単位(B)および成分単位(C)の合計[(A)+(B)+(C)]を100重量%とするとき、
紫外線吸収性化合物成分単位(A)5〜90重量%であり、
光重合性(メタ)アクリロイル基含有化合物成分単位(B)が5〜80重量%であり、
上記他のモノマー(c1)から誘導される成分単位(C)が1〜80重量%であることが望ましい。
【0025】
本発明のさらに好ましい態様では、光硬化性(メタ)アクリル樹脂を構成する成分単位(A)、成分単位(B)および成分単位(C)の合計[(A)+(B)+(C)]を100重量%とするとき、
紫外線吸収性化合物成分単位(A)が10〜80重量%であり、
光重合性(メタ)アクリロイル基含有化合物成分単位(B)が15〜70重量%であり、
上記他のモノマー(c1)から誘導される成分単位(C)が5〜70重量%であることが望ましい。
【0026】
本発明の特に好ましい態様では、上記光硬化性(メタ)アクリル樹脂を構成する成分単位(A)、成分単位(B)および成分単位(C)の合計[(A)+(B)+(C)]を100重量%とするとき、
紫外線吸収性化合物成分単位(A)が20〜60重量%であり、
光重合性(メタ)アクリロイル基含有化合物成分単位(B)が25〜60重量%であり、
上記他のモノマー(c1)から誘導される成分単位(C)が10〜55重量%であることが望ましい。
【0027】
本発明に係る紫外線吸収性光硬化性樹脂組成物は、上記のいずれかに記載の光硬化性(メタ)アクリル樹脂(d1)と、
光硬化性(メタ)アクリロイル基含有樹脂(e1)と、
上記樹脂(e1)に比して、より低分子量の光硬化性単量体またはそのオリゴマー(f1)と、
光重合開始剤(g1)と、
を含有している。
【0028】
本発明に係る紫外線吸収性光硬化性樹脂組成物は、上記光硬化性(メタ)アクリロイル基含有樹脂(e1)が、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレートおよびポリエーテル(メタ)アクリレートからなる群から選ばれた少なくとも1種であることが望ましい。
【0029】
本発明に係る上記紫外線吸収性光硬化性樹脂組成物は、上記光硬化性(メタ)アクリロイル基含有樹脂(e1)が、ゲルパーミエイションクロマトグラフィーで測定した数平均分子量(Mn)が300〜50000であり、かつ、
エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレートおよびポリエーテル(メタ)アクリレートからなる群から選ばれた少なくとも1種であることが望ましい。
【0030】
さらに好ましい態様では、上記光硬化性(メタ)アクリロイル基含有樹脂(e1)が、ゲルパーミエイションクロマトグラフィーで測定した数平均分子量(Mn)が1000〜10000であり、かつ、
エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレートおよびポリエーテル(メタ)アクリレートからなる群から選ばれた少なくとも1種であることが硬度、耐スチールウール性の点で望ましい。
【0031】
本発明に係る上記紫外線吸収性光硬化性樹脂組成物のより好ましい態様では、上記成分(e1)よりは低分子量の光硬化性単量体またはそのオリゴマー(f1)の分子量が、100〜2000、より好ましくは150〜1000の光硬化性単量体またはそのオリゴマーであることが硬度、耐スチールウール性の点で望ましい。
【0032】
本発明に上記紫外線吸収性光硬化性樹脂組成物の好ましい態様では、上記光重合開始剤(g1)が、アシルホスフィンオキシド類またはチオキサントン類を少なくとも含むものであることが望ましい。
【0033】
本発明に係る耐候性被膜は、上記のいずれかに記載された紫外線吸収性光硬化性樹脂組成物から形成されたことを特徴とする。
本発明に係る基材は、上記のいずれかに記載された光硬化性樹脂組成物から形成された耐候性被膜によって被覆されたもの(被覆基材)であることを特徴とする。
【0034】
本発明に係る被覆フィルムは、プラスチックフィルムの表面を、上記のいずれかに記載された紫外線吸収性光硬化性樹脂組成物からなる紫外線吸収被膜で被覆したことを特徴とする。
【0035】
本発明に係る紫外線吸収方法は、基材表面上に、上記のいずれかに記載された紫外線吸収性光硬化性樹脂組成物からなる耐候性被膜を形成させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0036】
本発明に係る光硬化性(メタ)アクリル樹脂には、側鎖末端に共重合反応に供されていない未反応の(メタ)アクリロイル基を有している光重合性(メタ)アクリロイル基含有化合物成分単位(B)が存在しているので、この光硬化性アクリル樹脂は、光硬化性を有している。
【0037】
また、この光硬化性アクリル樹脂が含まれた光硬化性樹脂組成物は、光硬化反応により、光硬化性アクリル樹脂が硬化物中に反応固定化されることにより紫外線吸収作用を有する成分のブリードアウトがなく、長期の耐候性を付与することができる。
【0038】
また、この光硬化性(メタ)アクリル樹脂は、各種溶剤や樹脂及びモノマーへの溶解性に劣る紫外線吸収剤と異なり、溶剤や樹脂及びモノマーによく溶解するので、低温時にも析出することなく透明な塗膜を形成でき、広範な種類の光硬化性(メタ)アクレート樹脂等に配合することにより、均一に分散・溶解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】図1は、実施例1で得られた光硬化性アクリル共重合体B−1のIRスペクトルである。
【図2】図2は、実施例2で得られた光硬化性アクリル共重合体B−2のIRスペクトルである。
【図3】図3は、実施例3で得られた光硬化性アクリル共重合体B−3のIRスペクトルである。
【図4】図4は、実施例4で得られた光硬化性アクリル共重合体B−4のIRスペクトルである。
【図5】図5は、実施例5で得られた光硬化性アクリル共重合体B−5のIRスペクトルである。
【図6】図6は、実施例6で得られた光硬化性アクリル共重合体B−6のIRスペクトルである。
【図7】図7は、実施例7で得られた光硬化性アクリル共重合体B−7のIRスペクトルである。
【図8】図8は、実施例8で得られた光硬化性アクリル共重合体B−8のIRスペクトルである。
【図9】図9は、実施例1で得られた光硬化性アクリル共重合体B−1のGPCクロマトグラムである。
【図10】図10は、実施例2で得られた光硬化性アクリル共重合体B−2のGPCクロマトグラムである。
【図11】図11は、実施例3で得られた光硬化性アクリル共重合体B−3のGPCクロマトグラムである。
【図12】図12は、実施例4で得られた光硬化性アクリル共重合体B−4のGPCクロマトグラムである。
【図13】図13は、実施例5で得られた光硬化性アクリル共重合体B−5のGPCクロマトグラムである。
【図14】図14は、実施例6で得られた光硬化性アクリル共重合体B−6のGPCクロマトグラムである。
【図15】図15は、実施例7で得られた光硬化性アクリル共重合体B−7のGPCクロマトグラムである。
【図16】図16は、実施例8で得られた光硬化性アクリル共重合体B−8のGPCクロマトグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明に係る、反応性紫外線吸収剤が共重合された光硬化性(メタ)アクリル樹脂{(メタ)アクリロイル基含有光硬化性アクリル樹脂ともいう。}、その樹脂を含有する光硬化性樹脂組成物およびその組成物よりなる耐候性被膜等について具体的に説明する。
【0041】
[光硬化性(メタ)アクリル樹脂(d1)]
本発明に係る光硬化性(メタ)アクリル樹脂(共重合体、樹脂(d1)などともいう。)は、下記の成分単位(A)と(B)と(C)とを含有している。
成分単位(A):
紫外線吸収性化合物骨格と、(メタ)アクリロイル基とを有する(メタ)アクリロイル基含有紫外線吸収性化合物(a1)から誘導される紫外線吸収性化合物成分単位(A)。成分単位(B):
(メタ)アクリロイル基と官能基を有する2種の化合物(b1)と(b2)からウレタン結合またはエステル結合を介して誘導される側鎖末端に(メタ)アクリロイル基を有する光重合性(メタ)アクリロイル基含有化合物成分単位(B)。
成分単位(C):
上記成分単位(A)を形成する(メタ)アクリロイル基含有紫外線吸収性化合物(a1)、および上記成分単位(B)を形成する光重合性(メタ)アクリロイル基含有化合物を誘導する化合物(b2)の何れとも共重合可能な他のモノマー(c1)から誘導される成分単位(C)。
【0042】
本発明に係る光硬化性(メタ)アクリル樹脂には、該樹脂を構成する成分単位(A)、成分単位(B)および成分単位(C)の合計[(A)+(B)+(C)]を100重量%とするとき、紫外線吸収性化合物成分単位(A)が通常、5〜90重量%、好ましくは10〜80重量%、特に好ましくは20〜60重量%であり、光重合性(メタ)アクリロイル基含有化合物成分単位(B)が通常、5〜80重量%、好ましくは15〜70重量%、特に好ましくは25〜60重量%であり、上記他のモノマー(c1)から誘導される成分単位(C)が通常、1〜80重量%、好ましくは5〜70重量%、特に好ましくは10〜55重量%の割合で存在していることが光硬化性、紫外線吸収性、硬度などの物性の点で望ましい。
【0043】
本発明の上記光硬化性(メタ)アクリル樹脂中において、上記各成分単位は、その合計量が上記範囲となるように、ランダム、ブロック、交互共重合などの何れの形態で配列していてもよいが、通常、任意の順序でランダムに配列している。
【0044】
なお、光硬化性(メタ)アクリル樹脂中における上記成分単位(A)量が、上記範囲より少ないと、紫外線吸収性が低くなる傾向があり、また、上記範囲を超えると上記成分単位(B)量が少なくなり光硬化性が劣る傾向がある。
【0045】
また、光硬化性(メタ)アクリル樹脂中における上記成分単位(B)量が、上記範囲より少ないと、光硬化性が劣る傾向があり、また、上記範囲を超えると上記成分単位(A)量が少なくなり紫外線吸収性が低くなる傾向がある。
【0046】
また、光硬化性(メタ)アクリル樹脂中における上記成分単位(C)量が、上記範囲より少ないと、硬度が低くなる傾向があり、また、上記範囲を超えると上記成分単位(A)量または上記成分単位(B)量が少なくなり紫外線吸収性が低くなるかまたは光硬化性が劣る傾向がある。
【0047】
本発明に係る光硬化性(メタ)アクリル樹脂は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)で測定した光硬化性(メタ)アクリル樹脂の数平均分子量(Mn)が通常、800〜7,000、好ましくは1,000〜5,000であり、重量平均分子量(Mw)が通常、3,000〜50,000(5万)、好ましくは4,000〜30,000(3万)であり、分子量分布(Mn/Mw)が通常、2〜9、好ましくは2.5〜7であることが光硬化性樹脂組成物を基材に塗布、加工する際の適正な粘度、粘性にする点などで好ましい。
【0048】
以下、各成分単位(A)、(B)、(C)および、これら成分単位を形成(誘導)可能な化合物(a1)、(b1)あるいは(b2)、(c1)等について説明する。
【0049】
<紫外線吸収性化合物成分単位(A)、およびこれを誘導可能な化合物(a1)>
紫外線吸収性化合物成分単位(A)(成分単位(A))は、側鎖に、紫外線吸収性化合物骨格と、(メタ)アクリロイル基とを有する。
紫外線吸収性化合物骨格としては、光の吸収波長が300〜400nm程度であり、かつ吸収係数が大きく、光や熱で分解しないことなどが求められる。また、紫外線吸収性化合物骨格は、芳香族誘導体(例:ベンゼン、ナフタレンなどの誘導体。)に、発色団(例:C=N、N=N、N=O、C=Oなど。)や助色団(例:NH2、OH、SO3H、COOHなど。)を有している化合物から誘導されており、UV吸収して分子内反転を起こして安定化させる機能をもっていることが多い(http://www.osaka-kyoiku.ac.jp/~sawada/plastic/kaisitu.html#head参照)。
【0050】
このような紫外線吸収性化合物骨格としては、例えば、特開2001−64504号公報[0021]等に記載の紫外線吸収剤より誘導される骨格、例えば、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、サリチル酸フェニル系、トリアジン系、シアノアクリレート系のものなどが挙げられる。好ましい紫外線吸収剤骨格は、ベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤骨格である。
【0051】
この成分単位(A)は、(メタ)アクリロイル基含有紫外線吸収性化合物(a1)から誘導される。より具体的には、紫外線吸収性化合物骨格となる紫外線吸収性物質{例:紫外線吸収性骨格であるベンゾトリアゾール系骨格を有する2−[2'−ヒドロキシ−5'−(ヒドロキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール}と、(メタ)アクリロイル基を有する物質{例:(メタ)アクリル酸エステル}とを反応させて得られる(メタ)アクリロイル基含有紫外線吸収性化合物(a1)などから誘導される。
【0052】
具体的には、例えば、(イ):2−[2'−ヒドロキシ−5'−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール[商品名:RUVA−93、大塚化学(株)製]、
その他に、2−(2'−ヒドロキシ−3'−t−ブチル−5'−メタクリロキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2'−(メタ)アクリロイルオキシ−5'−メチルフェニル〕ベンゾトリアゾール、2−〔2'−(メタ)アクリロイルオキシ−5'−t−オクチルフェニル〕ベンゾトリアゾール、2−〔2'−(メタ)アクリロイルオキシ−3',5'−ジ−t−ブチルフェニル〕ベンゾトリアゾールなどのベンゾトリアゾール化合物;2−ヒドロキシ−4−(メタクリロイルオキシエトキシ)ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(アクリロイルオキシエトキシ)ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メタクリロイルオキシメチルアミノベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(メタクリロイルオキシメトキシ)ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メタクリロイルオキシメチルチオベンゾフェノン、2−(メタ)アクリロイルオキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−(メタ)アクリロイルオキシ−2'−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2'−ジ(メタ)アクリロイルオキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2'−ジ(メタ)アクリロイルオキシ−4,4'−ジメトキシベンゾフェノン、2−(メタ)アクリロイルオキシ−4−メトキシ−2'−カルボキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−〔3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ〕ベンゾフェノン、2,2'−ジヒドロキシ−4−〔3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ〕ベンゾフェノンなどのベンゾフェノン化合物;2−(4,6−ジフェニル−1,2,5−トリアジン−2−イル)−5−(メタクリロイルオキシエトキシ)−フェノールなどのトリアジン化合物;2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3−ジフェニル(メタ)アクリレートなどのシアノアクリレート化合物などが挙げられる。(特開2001−342439号公報[0015]に記載の紫外線吸収剤を参照)
【0053】
これらのうちでは、2−[2'−ヒドロキシ−5'−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、他のラジカル重合性モノマーである、(メタ)アクリル酸エステル等のモノマー(b2)、スチレン、アクリルニトリルなどの他のモノマー(c1)の何れとも良好にラジカル共重合可能であり、得られる共重合体、あるいはその硬化物が含まれた塗膜は、紫外線吸収性に優れ、しかも、高温での加工時等に紫外線吸収剤の揮散がなく、また塗膜表面から溶出(ブリードアウト)がなく、高い安全性と、長期間に亘って安定した耐候性を発揮できるなどの点で望ましい。
これら(メタ)アクリロイル基含有紫外線吸収性化合物(a1)は、共重合体中に、1種または2種以上存在していてもよい。
【0054】
<光重合性(メタ)アクリロイル基含有化合物成分単位(B)、およびこれを誘導する化合物(b1)、(b2)>
光重合性(メタ)アクリロイル基含有化合物成分単位(B)(成分単位(B))は、少なくとも、側鎖末端に光重合性の官能基である(メタ)アクリロイル基を有する。
【0055】
本発明では、光重合性(メタ)アクリロイル基含有化合物成分単位(B)が、下記一般式(B−I)〜(B−III)からなる群から選ばれた少なくとも1種であることが(共重合体の性能、原料入手の容易性、(メタ)アクリロイル基誘導の合成容易性などの点で好ましい。
【0056】
一般式(B−I):
【0057】
【化7】
一般式(B−II):
【0058】
【化8】
一般式(B−III):
【0059】
【化9】
[式(B−I)、(B−II)、(B−III)中、RはHまたはCH3を示す。]
【0060】
<(B−I)>
上記一般式(B−I)で表される光重合性(メタ)アクリロイル基含有化合物成分単位は、好ましくは、予め、ラジカル重合性基である(メタ)アクリロイル基などと、非ラジカル重合性の官能基であるイソシアネート基(NCO)などとを有するモノマーである2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネートなど(モノマー(b2)に相当)を共重合時に用いて、成分単位(B)形成用の非ラジカル重合性の官能基を側鎖に有するユニット(B')を、光硬化性(メタ)アクリル樹脂形成性の共重合体(前駆体)中に導入する。
【0061】
NCO含有モノマーとしては、他に、昭和電工社製「カレンズMOI」(2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート)、昭和電工社製「カレンズAOI」(2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート)、日本ペイント社製「MAI」(メタクリロイルイソシアネート)等が挙げられる。
【0062】
次いで、得られた共重合体(前駆体)中の非ラジカル重合性の官能基(例:NCO基)と、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等のOH基含有モノマー(モノマー(b1)に相当)と、を反応させて、上記一般式(B−I)で表される光重合性多官能性(メタ)アクリロイル基含有化合物成分単位(B)を形成すること、すなわち成分単位(B−I)を有する光硬化性(メタ)アクリル樹脂を形成することが望ましい。なお、他にOH基含有モノマーとしては、例えば、2HEA(正式名称:2−ヒドロキシエチルアクリレート)、2HEMA(正式名称:2−ヒドロキシエチルメタクリレート)、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、ラクトン変性2−ヒドロキシ(メタ)アクリレート、またポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール−プロピレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール−テトラメチレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、ポリ(プロピレングリコール−テトラメチレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、などのOH基末端ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0063】
このOH基含有モノマーの2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどは、上記非ラジカル重合性の官能基(例:NCO基)と反応可能な官能基(例:OH基)を有し、かつ共重合体(前駆体)中に導入すべき光硬化に関与する基である(メタ)アクリロイル基などを有する。
【0064】
本発明では、このようなOH基含有モノマー中のOH基と、ユニット(B')中の非ラジカル重合性の官能基であるNCO基とを反応させて、上記一般式(B−I)で表される光重合性(メタ)アクリロイル基含有化合物成分単位(B)を有する共重合体を形成することが望ましい(例:実施例1、2、5など)。
【0065】
この反応では、共重合体(前駆体)中に予め導入された2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート単位(B')中の非ラジカル重合性の官能基であるイソシアネート基(−NCO)と、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートのヒドロキシル基(−OH)とのウレタン化反応により、成分単位(B−I)が形成されている。
【0066】
<NCO基含有成分単位(B')+2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート→成分単位(
B−I)>
【0067】
【化10】
なお、光硬化性(メタ)アクリル樹脂の製造に際し、最初から、共重合性モノマーとして、例えば、(メタ)アクリロイル基を2個またはそれ以上有するモノマー[すなわち少なくとも2個の(メタ)アクリロイル基を有する光重合性多官能性(メタ)アクリロイル基含有化合物に相当]を、成分単位(B−I)形成用のモノマーとして配合すると、各モノマーの2重結合の解裂が複数箇所で生じて網目状の架橋反応が進行して、硬化等してしまい、所望の光硬化性(メタ)アクリル樹脂は得られない。下記成分単位(B−II)、(B−III)の場合もこれと同様である。
【0068】
ここで、付言しておくと、成分単位(a)に相当する「RUVA−93(大塚化学)」には、ベンゼン環に「OH」基があるが、成分単位(B)形成用の2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネートとは実質上、ウレタン化反応しないと思われる。
【0069】
その理由は、フェノールOH基とNCOの反応性は遅く、OHの近くにベンゾトリアゾールがあるため立体障害で反応性は更に遅くなること、ウレタン化触媒無添加であること、またアクリル重合後IRで見ると、NCO吸収ピークがありGPCで異常な高分子量部分は見られないことより、本発明におけるアクリル重合条件ではウレタン化反応は生じていないと思われる。
【0070】
<(B−II)>
また、上記一般式(B−II)で表される光重合性(メタ)アクリロイル基含有化合物成分単位は、好ましくは、予め、ラジカル重合性基である(メタ)アクリロイル基などと、非ラジカル重合性の官能基であるカルボキシル基(COOH)、エポキシ基含有基(例:グリシジル基、エポキシ基)などとを有するモノマーである(メタ)アクリル酸、グリシジル(メタ)アクリレートなど(モノマー(b2)に相当)を共重合時に用いて、成分単位(B)形成用のユニット(B')を、光硬化性(メタ)アクリル樹脂形成性の共重合体(前駆体)中に導入しておくことも望ましい。
【0071】
次いで、得られた共重合体(前駆体)中の非ラジカル重合性の官能基{例:(メタ)アクリル酸ではCOOH基、}と、「(メタ)アクリル酸グリシジルエーテル」などとをエステル化反応させて、上記一般式(B−II)で表される光重合性(メタ)アクリロイル基含有化合物成分単位(B)を形成することが望ましい。
【0072】
この「(メタ)アクリル酸グリシジルエーテル」などは、上記非ラジカル重合性の官能基(例:COOH基)と反応して結合可能な官能基(例:COOHに対してはエポキシ基など。)を有し、かつ共重合体(前駆体)中に導入すべき光硬化に関与する基である(メタ)アクリロイル基などを有するものであればよい。
【0073】
なお、予め非ラジカル重合性官能基としてのエポキシ基を有するモノマーである「グリシジル(メタ)アクリレート」などを用いて、側鎖にグリシジル基を有する共重合体(前駆体)を形成しておき、次いで、このグリシジル基と反応性の基の1種であるカルボキシル基(COOH)を有し、かつ光硬化性基の(メタ)アクリロイル基等をも有するモノマーの「(メタ)アクリル酸」などを接触させて、共重合体中に光硬化性基を導入するようにしてもよい(例:実施例3、4、6、8など)。
【0074】
<グリシジル(メタ)アクリレート成分単位(B')+(メタ)アクリル酸→成分単位(B−II)>
【0075】
【化11】
<(B−III)>
また、上記一般式(B−III)で表される光重合性(メタ)アクリロイル基含有化合物成分単位は、好ましくは、予め、ラジカル重合性基である(メタ)アクリロイル基などと、非ラジカル重合性の官能基であるカルボキシル基(COOH)などとを有するモノマーである(メタ)アクリル酸など(化合物(b2)に相当)を共重合時に用いて、成分単位(B)形成用のユニット(B')である(メタ)アクリル酸単位などを、光硬化性(メタ)アクリル樹脂形成性の共重合体(前駆体)中に導入しておくことが望ましい。
【0076】
このユニット(B')としての(メタ)アクリル酸単位を有する共重合体(前駆体)は、該前駆体中、特に側鎖中に、光硬化性基となるラジカル重合性の(メタ)アクリロイル基などをまだ有していない(前記(B−I),(B−II)の場合も前駆体(B')は同様である)。
【0077】
(メタ)アクリル酸単位を形成できる(メタ)アクリル酸は、「化合物(b2)」に相当する。この化合物(b2)単位すなわち(メタ)アクリル酸単位は、「4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートのグリシジルエーテル」等に代表される「グリジジル基と(メタ)アクリロイル基とを含有する化合物(b1)」とエステル化反応させると、光重合性(メタ)アクリロイル基含有化合物成分単位(B)が形成される。
【0078】
なお、前駆体ユニット(B')を共重合せずに「化合物(b2)」に相当する(メタ)アクリル酸と、「化合物(b1)」に相当する「4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートのグリシジルエーテル」との反応物は、「少なくとも2個の(メタ)アクリロイル基を有する光重合性多官能性(メタ)アクリロイル基含有化合物(BX)」ということができ、両末端にラジカル重合性の(メタ)アクリロイル基を有するため、それ自体を重合用モノマーとして用いることはできない。
【0079】
光硬化性(メタ)アクリル樹脂の製造時に、もし、モノマー(a)およびモノマー(c)と共に、化合物(BX)を用いてこれらをラジカル重合すると、化合物(BX)による架橋反応も生じて生成物は硬化してしまう。
【0080】
本発明では、次いで、得られた共重合体(前駆体)中、さらに具体的には(メタ)アクリル酸単位中の非ラジカル重合性の官能基(例:COOH基)と、「4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートのグリシジルエーテル」等とをエステル化反応させて、上記一般式(B−III)で表される光重合性(メタ)アクリロイル基含有化合物成分単位(B)を
形成すること、すなわち成分単位(B−III)を有する光硬化性(メタ)アクリル樹脂を
形成することが望ましい。
【0081】
このグリシジル基と(メタ)アクリロイル基とを含有する化合物である「4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートのグリシジルエーテル」等は、上記非ラジカル重合性の官能基(例:COOH基)と反応可能な官能基(例:エポキシ基、グリシジル基)を有し、かつ共重合体(前駆体)中に導入すべき光硬化に関与する基である(メタ)アクリロイル基などを有する。
【0082】
本発明では、このような「4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートのグリシジルエーテル」等に含まれるグリシジル基と、ユニット(B')中のカルボキシル基(COOH)とをエステル化反応させて、上記一般式(B−III)で表される光重合性(メタ)アクリロイル基含有化合物成分単位(B)を有する共重合体を形成することが望ましい(例:実施例7など)。
【0083】
<COOH基含有成分単位(B')+「4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートのグリシジルエーテル」→成分単位(B−III)>
【0084】
【化12】
【0085】
<成分単位(C)、およびこれを誘導可能な化合物(c1)>
上記モノマー(a1)およびモノマー(b2)と共重合可能な「その他のモノマー(c1)」としては、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシ(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルニトリル、スチレン、α−メチルスチレン、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、等が挙げられる。
【0086】
<光硬化性(メタ)アクリル樹脂の製造>
次に、上記光硬化性(メタ)アクリル樹脂の製造方法について説明する。
(イ)前駆体の製造
本発明では、例えば、上述した成分単位(A)と、成分単位(B)と、成分単位(C)とを上記量(重量%)で含有する光硬化性(メタ)アクリル樹脂を製造するには、予め、上記量の「RUVA−93」(大塚化学(株)製)に代表される(メタ)アクリロイル基含有紫外線吸収性化合物(a1)と、
2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネートなどラジカル重合性基((メタ)アクリロイル基)と非ラジカル重合性基(NCO)とを有するモノマー(b2)と、他のモノマー(c1)とを共重合する。このような共重合反応の際には各成分を分割添加し、最終的に所定量比となるように、複数回の反応を行ってもよい。
【0087】
この前駆体形成反応は、合計時間として、通常60〜130℃程度の温度で、6〜12時間程度行われる。その後、使用したラジカル重合開始剤を失活させるため開始剤半減期が数分の高温度で1〜2時間保温する。
【0088】
(ロ)光硬化性基の導入
次いで、生成した共重合体(前駆体)と、該前駆体中の非ラジカル重合性基(NCO)と反応性の官能基(OH基)と、ラジカル重合性基((メタ)アクリロイル基)とを有する化合物(例:2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート)とを通常50〜100℃程度の温度で、1〜10時間程度反応させて、所望の光硬化性(メタ)アクリル樹脂を製造することができる。
【0089】
この前駆体の製造(イ)および後段の光硬化性(メタ)アクリロイル基の導入(ロ)の際には、従来より公知のラジカル重合開始剤{例:AIBN(2,2−アゾビスイソブチロニトリル)、}、ウレタン反応触媒{例:ジブチル錫ジラウレート}、有機溶媒(例:酢酸ブチル、キシレン、MIBK、)などを適宜量で用いることができる。
【0090】
なお、上記反応の際には、2HEAのアクリロイル基重合禁止の役割を担うp−メトキシフェノールのような重合禁止剤を併用してもよい(例:実施例1等参照)。他の光硬化性(メタ)アクリル樹脂の場合も上記に準じて製造すればよい。
【0091】
このようにして得られた光硬化性(メタ)アクリル樹脂には、用いられた各モノマー量に対応する量で、各成分単位(A)、(B)、(C)が存在している。このことの確認は、例えば、IR測定、紫外線吸収性試験、光硬化性試験、などにて行われる。
【0092】
上記共重合体としては、下記構造式(I)、(II)、(III)、(IV)に示すようなものが挙げられる。
【0093】
【化13】
【0094】
【化14】
【0095】
【化15】
【0096】
【化16】
また、このようにして得られた光硬化性(メタ)アクリル樹脂のGPCで測定した数平均分子量(Mn)が通常、800〜7,000、好ましくは1,000〜5,000であり、重量平均分子量(Mw)が通常、3,000〜50,000(5万)、好ましくは4,000〜3,0000(3万)であり、分子量分布(Mw/Mn)が通常、2〜9、好ましくは2.5〜7であることが光硬化性樹脂組成物を基材に塗布、加工する際の適正な粘度、粘性にする点などで望ましい。
【0097】
なお、Mn、Mwの調整は、反応濃度、反応温度、重合開始剤量と種類、などにより、適宜設計・変更できる。例えば、反応濃度を高く、温度を下げ、また重合開始剤量を減らせば、Mn、Mwは増大する。
【0098】
本発明によれば、(メタ)アクリロイル基を導入したベンゾトリアゾール型、ベンゾフェノン型、ベンゾフェノール型等の重合性紫外線吸収剤単量体と重合性不飽和単量体との共重合体が得られる。この共重合体を配合した光硬化型塗料組成物などの下記光硬化性樹脂組成物は、従来の一般的な低分子の紫外線吸収剤を配合した光硬化型塗料組成物と異なり、紫外線吸収剤のブリードアウトの問題が解消される。
【0099】
[光硬化性樹脂組成物]
本発明に係る紫外線吸収性光硬化性樹脂組成物は、少なくとも、上記のいずれかに記載の光硬化性(メタ)アクリル樹脂(d1)と、
光硬化性(メタ)アクリロイル基含有樹脂(e1)と、
上記樹脂(e1)に比して、より低分子量の光硬化性単量体またはそのオリゴマー(f1)と、
光重合開始剤(g1)と、
を含有している。
【0100】
この組成物の(e1)(d1)(f1)(g1)(固形分)の合計「(e1)+(d1)+(f1)+(g1)」を100重量%とするとき、光硬化性(メタ)アクリル樹脂(d1)(固形分)は通常通常、5〜70重量部、好ましくは20〜60重量部の量で、光硬化性(メタ)アクリロイル基含有樹脂(e1)(固形分)は通常、5〜50重量部、好ましくは10〜40重量部の量で、上記樹脂(e1)に比して、より低分子量の光硬化性単量体またはそのオリゴマー(f1)は、通常1〜50重量部、好ましくは5〜40重量部の量で、光重合開始剤(g1)は、通常1〜20重量部、好ましくは5〜15重量部の量で用いられる。
【0101】
<光硬化性(メタ)アクリロイル基含有樹脂(e1)>
本発明に係る紫外線吸収性光硬化性樹脂組成物は、上記光硬化性(メタ)アクリロイル基含有樹脂(e1)が、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレートおよびポリエーテル(メタ)アクリレートからなる群から選ばれた少なくとも1種を(共)重合して形成されたものであることが硬度、耐スチールウール性の点で望ましい。
【0102】
本発明では、上記光硬化性(メタ)アクリロイル基含有樹脂(e1)は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィーで測定した数平均分子量(Mn)が300〜50,000(5万)であり、かつ、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレートおよびポリエーテル(メタ)アクリレートからなる群から選ばれた少なくとも1種であることが望ましい。
【0103】
さらに好ましい態様では、上記光硬化性(メタ)アクリロイル基含有樹脂(e1)が、ゲルパーミエイションクロマトグラフィーで測定した数平均分子量(Mn)が1000〜10000であり、かつ、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレートおよびポリエーテル(メタ)アクリレートからなる群から選ばれた少なくとも1種であることが硬度、耐スチールウール性の点で望ましい。
【0104】
<低分子量の光硬化性単量体またはそのオリゴマー(f1)>
本発明に係る上記紫外線吸収性光硬化性樹脂組成物のより好ましい態様では、上記成分(e1)よりは低分子量の光硬化性単量体またはそのオリゴマー(f1)の分子量が、100〜2000、より好ましくは150〜1000の光硬化性単量体またはそのオリゴマーであることが硬度、耐スチールウール性、反応性の点で望ましい。
【0105】
<光重合開始剤(g1)>
本発明に上記紫外線吸収性光硬化性樹脂組成物の好ましい態様では、上記光重合開始剤(g1)が、アシルホスフィンオキシド類またはチオキサントン類を少なくとも含むものであることが望ましい。
【0106】
この組成物には、上記成分以外に、通常、紫外線吸収性光硬化性樹脂組成物に含まれるような成分(例:重合禁止剤、非反応性希釈剤、消泡剤、沈降防止剤、レベリング剤、分散剤、熱安定剤、つや消し剤、着色顔料、導電性金属酸化物)などが本発明の目的に反しない範囲で含まれていてもよい。
【0107】
このような組成物を得るには、上記各成分を一度に、あるいは少しずつ任意順序で添加混合すればよい。この際には、従来より公知の方法を適宜利用でき、例えば、ディスパー、ミル、ミキサー等にて混合攪拌等すればよい。
【0108】
[耐候性被膜、基材、紫外線吸収方法]
本発明に係る耐候性被膜は、上記のいずれかに記載された紫外線吸収性光硬化性樹脂組成物から形成されたことを特徴とする。
【0109】
本発明に係る基材は、上記のいずれかに記載された光硬化性樹脂組成物から形成された耐候性被膜によって被覆されたもの(被覆基材)であることを特徴とする。本発明に係る被覆フィルムは、プラスチックフィルムの表面を、上記のいずれかに記載された紫外線吸収性光硬化性樹脂組成物からなる紫外線吸収被膜で被覆したことを特徴とする。
【0110】
本発明に係る紫外線吸収方法は、基材表面上に、上記のいずれかに記載された紫外線吸収性光硬化性樹脂組成物からなる耐候性被膜を形成させることを特徴とする。
【0111】
[実施例]
以下、本発明に係る(メタ)アクリロイル基含有光硬化性アクリル樹脂、その光硬化性アクリル樹脂を含有する光硬化性樹脂組成物およびその組成物を用いて形成される耐候性被膜についてその好適態様を示す実施例に基いてさらに具体的に説明するが、本発明は係る実施例により何ら限定されるものではない。
【0112】
(B−I)GPCによる(メタ)アクリロイル基含有光硬化性アクリル樹脂の数平均分子量(Mn)と重量平均分子量(Mw)の測定条件:
装置:東ソー(株)製HLC−8120GPC、
カラム:東ソー(株)製Super H2000+H4000、
(各内径6mm長さ15cm)
展開溶媒:THF、 カラム恒温槽温度:40℃、
流速:0.5ml/min、 対照:単分散ポリスチレン、
検出器:屈折率変化。
【0113】
(B−II)不揮発分の測定条件:
試料1gを108℃循環式乾燥器に1時間乾燥した後の加熱残渣。
(B−III)粘度の測定条件:
E粘度計、25℃で測定。
【0114】
[実施例1]
攪拌装置、温度計、窒素ガス導入管および還流冷却管を備えた300ml反応容器に、酢酸ブチル100部を仕込み窒素ガス雰囲気中で、95℃まで昇温しMMA(メチルメタクリレート)12.5部、カレンズMOI(昭和電工社製、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート)5部、RUVA−93(大塚化学社製、2−(2'−ヒドロキシ−5'−メタクリロキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール)7.5部、AIBN(2,2'−アゾビスイソブチロニトリル)を0.75部加えて、95℃で45分反応した。次に同様にMMA12.5部、カレンズMOI5部、RUVA−93を7.5部、AIBNを0.75部加えて、95℃で45分反応した。さらにこの操作を2回繰り返し4回目を加えた後95℃で1.5時間反応してAIBN0.14部加えた。続いて45分毎にAIBN0.14部を2回加えて45分後、120℃で45分保温した後冷却した。これで高耐候性アクリル共重合体A−1が得られた。
【0115】
更に、2HEA(2−ヒドロキシエチルアクリレート)15.71部、p−メトキシフェノール0.0079部、ジブチルスズジラウレート0.029部、酢酸ブチル15.71部を加え90℃で1時間反応した。
【0116】
この反応により光硬化高耐候性アクリル共重合体B−1が得られた。得られたB−1は、不揮発分が50.7%で、粘度が1030mPa・s/25℃の透明溶液であり、ゲル・パーミュエーション・クロマトグラフィー(GPC)よる数平均分子量(Mn)は3990であり、重量平均分子量(Mw)は17890であり、かつ分散比Mw/Mnは4.48であった。
【0117】
[実施例2]
攪拌装置、温度計、窒素ガス導入管および還流冷却管を備えた300ml反応容器に、酢酸ブチル100部を仕込み窒素ガス雰囲気中で、95℃まで昇温しMMA7.5部、カレンズMOIを10部、RUVA−93を7.5部、AIBNを0.75部加えて、95℃で45分反応した。次に同様にMMA7.5部、カレンズMOIを10部、RUVA−93を7.5部、AIBNを0.75部加えて、95℃で45分反応した。さらにこの操作(すなわち、MMA7.5部、カレンズMOIを10部、RUVA−93を7.5部、AIBNを0.75部加えて、95℃で45分反応)を2回繰り返し4回目を加えた後95℃で1.5時間反応してAIBN 0.14部加えた。続いて45分毎にAIBN0.14部を2回加えて45分後、120℃で45分保温した後冷却した。
【0118】
これにより高耐候性アクリル共重合体A−2が得られた。更に、2HEA31.42部、p−メトキシフェノール0.0157部、ジブチルスズジラウレート0.033部、酢酸ブチル31.42部を加え90℃で1時間反応した。
【0119】
これにより光硬化高耐候性アクリル共重合体B−2が得られた。得られた共重合体B−2は、不揮発分が49.7%で、粘度が840mPa・s/25℃の透明溶液であり、ゲル・パーミュエーション・クロマトグラフィー(GPC)よる数平均分子量(Mn)は4340であり、重量平均分子量(Mw)は24250であり、かつ分散比Mw/Mnは5.59であった。
【0120】
[実施例3]
攪拌装置、温度計、窒素ガス導入管および還流冷却管を備えた300ml反応容器に、酢酸ブチル100部を仕込んで窒素ガス雰囲気中で、95℃まで昇温しMMA12.5部、GMA(グリシジルメタクリレート)5部、RUVA−93を7.5部、AIBNを0.75部加えて、95℃で45分反応した。次に同様にMMA12.5部、GMA5部、RUVA−93を7.5部、AIBNを0.75部加えて、95℃で45分反応した。さらにこの操作(すなわち、MMA12.5部、GMA5部、RUVA−93を7.5部、AIBNを0.75部加えて、95℃で45分反応)を2回繰り返し4回目を加えた後95℃で1.5時間反応してAIBN0.14部加えた。続いて45分毎にAIBN0.14部を2回加えて投入し45分後、120℃で45分保温した後冷却した。これにより高耐候性アクリル共重合体A−3が得られた。更に、98%アクリル酸10.14部、p−メトキシフェノール0.0051部、BHT(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール)0.112部、ジメチルベンジルアミン2.24部を加え110℃で3.5時間反応した後にn−ブタノール10.14を加えた。これで光硬化高耐候性アクリル共重合体B−3が得られた。得られた共重合体B−3は、不揮発分が51.4%で、粘度が2290mPa・s/25℃の透明溶液であり、ゲル・パーミュエーション・クロマトグラフィー(GPC)よる数平均分子量(Mn)は1600であり、重量平均分子量(Mw)は4830であり、かつ分散比Mw/Mnは3.02であった。
【0121】
[実施例4]
攪拌装置、温度計、窒素ガス導入管および還流冷却管を備えた300ml反応容器に、酢酸ブチル100部を仕込んで窒素ガス雰囲気中で、95℃まで昇温しMMA7.5部、GMA10部、RUVA−93を7.5部、AIBNを0.75部加えて、95℃で45分反応した。次に同様にMMA7.5部、GMA10部、RUVA−93を7.5部、AIBNを0.75部加えて、95℃で45分反応した。さらにこの操作(すなわち、MMA7.5部、GMA10部、RUVA−93を7.5部、AIBNを0.75部加えて、95℃で45分反応)を2回繰り返し4回目を加えた後95℃で1.5時間反応してAIBN0.14部加えた。続いて45分毎にAIBN0.14部を2回加えて投入し45分後、120℃で45分保温した後冷却した。
【0122】
これで高耐候性アクリル共重合体A−4が得られた。更に、98%アクリル酸20.28部、p−メトキシフェノール0.0101部、BHT0.123部、ジメチルベンジルアミン2.45部を加え110℃で5.5時間反応した後にn−ブタノール20.28部を加えた。これで光硬化高耐候性アクリル共重合体B−4が得られた。
【0123】
得られた共重合体B−4は、不揮発分が50.5%で、粘度が2780mPa・s/25℃の透明溶液であり、ゲル・パーミュエーション・クロマトグラフィー(GPC)よる数平均分子量(Mn)は1460であり、重量平均分子量(Mw)は4730であり、かつ分散比Mw/Mnは3.24であった。
【0124】
[実施例5]
攪拌装置、温度計、窒素ガス導入管および還流冷却管を備えた500ml反応容器に、酢酸ブチル100部を仕込み窒素ガス雰囲気中で、95℃まで昇温しMMA5部、カレンズMOI(昭和電工(株)製、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート)5部、RUVA−93(大塚化学社製、2−(2'−ヒドロキシ−5'−メタクリロキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール)15部、AIBNを0.75部加えて、95℃で45分反応した。次に同様にMMA5部、カレンズMOI 5部、RUVA−93を15部、AIBNを0.75部加えて、95℃で45分反応した。さらにこの操作(すなわち、MMA5部、カレンズMOI 5部、RUVA−93を15部、AIBNを0.75部加えて、95℃で45分反応)を2回繰り返し4回目を加えた後95℃で1.5時間反応してAIBN0.14部加えた。続いて45分毎にAIBN0.14部を2回加えて45分後、120℃で45分保温した後冷却した。
【0125】
これで高耐候性アクリル共重合体A−5が得られた。更に、2HEA15.71部、p−メトキシフェノール0.0158部、ジブチルスズジラウレート0.029部を加え90℃で1時間反応した。その後、酢酸ブチル16.15部を加えた。
【0126】
これで光硬化高耐候性アクリル共重合体B−5が得られた。得られた共重合体B−5は、不揮発分が51.3%で、粘度が730mPa・s/25℃の透明溶液であり、ゲル・パーミュエーション・クロマトグラフィー(GPC)よる数平均分子量(Mn)は3,530であり、重量平均分子量(Mw)は14250であり、かつ分散比Mw/Mnは4.04であった。
【0127】
[実施例6]
攪拌装置、温度計、窒素ガス導入管および還流冷却管を備えた500ml反応容器に、酢酸ブチル100部を仕込んで窒素ガス雰囲気中で、95℃まで昇温しMMA3.33部、GMA3.33部、RUVA−93を10部、AIBNを0.5部加えて、95℃で45分反応した。次に同様にMMA3.33部、GMA3.33部、RUVA−93を10部、AIBNを0.5部加えて、95℃で45分反応した。さらにこの操作(すなわち、MMA3.33部、GMA3.33部、RUVA−93を10部、AIBNを0.5部加えて、95℃で45分反応)を4回繰り返し6回目を加えた後95℃で1.5時間反応してAIBN0.14部加えた。続いて45分毎にAIBN0.14部を2回加えて投入し45分後、120℃で45分保温した後冷却した。これにより高耐候性アクリル共重合体A−6が得られた。
【0128】
更に、98%アクリル酸10.14部、p−メトキシフェノール0.0051部、BHT0.11部、ジメチルベンジルアミン2.2部を加え110℃で3.5時間反応した。その後、n−ブタノール13.15部を加えた。
【0129】
これで光硬化高耐候性アクリル共重合体B−6が得られた。得られた共重合体B−6は、不揮発分が64.6%で、粘度が1130mPa・s/25℃の透明溶液であり、ゲル・パーミュエーション・クロマトグラフィー(GPC)よる数平均分子量(Mn)は3080であり、重量平均分子量(Mw)は12110であり、かつ分散比Mw/Mnは3.93であった。
【0130】
[実施例7]
攪拌装置、温度計、窒素ガス導入管および還流冷却管を備えた500ml反応容器に、酢酸ブチル60部、n−ブタノール40部を仕込んで窒素ガス雰囲気中で、95℃まで昇温しMMA3.33部、メタクリル酸3.33部、RUVA−93を10部、AIBNを0.5部加えて、95℃で45分反応した。次に同様にMMA3.33部、メタクリル酸3.33部、RUVA−93を10部、AIBNを0.5部加えて、95℃で45分反応した。さらにこの操作(すなわち、MMA3.33部、メタクリル酸3.33部、RUVA−93を10部、AIBNを0.5部加えて、95℃で45分反応)を4回繰り返し6回目を加えた後95℃で1.5時間反応してAIBN0.14部加えた。続いて45分毎にAIBN0.14部を2回加えて投入し45分後、115℃で45分保温した後冷却した。
【0131】
これにより高耐候性アクリル共重合体A−7が得られた。更に、4HBAGE(三菱化学社製、4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル)48.84部、p−メトキシフェノール0.0244部、BHT(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール)0.149部、酢酸ブチル21.78部、ジメチルベンジルアミン1.50部を加え100℃で6時間反応した。
【0132】
これにより光硬化高耐候性アクリル共重合体B−7が得られた。得られた共重合体B−7は、不揮発分が55.1%で、粘度が1430mPa・s/25℃の透明溶液であり、ゲル・パーミュエーション・クロマトグラフィー(GPC)よる数平均分子量(Mn)は3830であり、重量平均分子量(Mw)は25090であり、かつ分散比Mw/Mnは6.55であった。
【0133】
[実施例8]
攪拌装置、温度計、窒素ガス導入管および還流冷却管を備えた500ml反応容器に、酢酸ブチル60部、n−ブタノール40部を仕込んで窒素ガス雰囲気中で、95℃まで昇温しMMA3.33部、メタクリル酸3.33部、RUVA−93を10部、AIBNを0.5部加えて、95℃で45分反応した。次に同様にMMA3.33部、メタクリル酸3.33部、RUVA−93を10部、AIBNを0.75部加えて、95℃で45分反応した。さらにこの操作(すなわち、MMA3.33部、メタクリル酸3.33部、RUVA−93を10部、AIBNを0.75部加えて、95℃で45分反応)を4回繰り返し6回目を加えた後95℃で1.5時間反応してAIBN0.14部加えた。続いて45分毎にAIBN0.14部を2回加えて投入し45分後、115℃で45分保温した後冷却した。
【0134】
これで高耐候性アクリル共重合体A−8が得られた。更に、GMA34.68部、p−メトキシフェノール0.0173部、BHT0.135部、酢酸ブチル10.19部、ジメチルベンジルアミン1.35部を加え100℃で6時間反応した。
【0135】
これで光硬化高耐候性アクリル共重合体B−8が得られた。得られたB−8は、不揮発分が54.4%で、粘度が2130mPa・s/25℃の透明溶液であり、ゲル・パーミュエーション・クロマトグラフィー(GPC)よる数平均分子量(Mn)は4090であり、重量平均分子量(Mw)は15920であり、かつ分散比Mw/Mnは3.89であった。
【0136】
上記実施例1〜8の配合組成および量比、得られた(共)重合体の溶液性状、NV,粘度、Mn、Mw、Mw/Mn等を併せて表1に示す。
【0137】
【表1】
【0138】
[実施例A1〜11、比較例A1〜6]
実施例A1〜11、比較例A1〜6では、表2〜4に示す配合成分を、当該表に示す配合比で使用して、諸物性を評価した。
結果を合わせて表2〜4に示す。なお、用いた各成分を以下に示す。
【0139】
<光硬化性樹脂組成物およびその塗膜物性等>
[1]本発明に係る光硬化性(メタ)アクリル樹脂(d1):実施例1〜8のB−1〜B−8。
【0140】
[2]本発明に係る光硬化性(メタ)アクリロイル基含有樹脂(e1):
アートレジンUN−3320HA「ウレタンアクリレート」(根上工業社製)、
Ebecryl3700「エポキシアクリレート」(ダイセル・サイテック社製)、
アロニックスM−7100「エステルアクリレート」(東亞合成社製)。
【0141】
[3]本発明で用いられる光硬化性モノマー(f1):
「ニューフロンティアPET−3」(化学名:ペンタエリスリトールトリアクリレート、第一工業製薬社製)。
「アロニックスM−400」(東亞合成社製、化学名:ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物)。
【0142】
[4]光重合開始剤(g1):
「イルガキュア184」(化学名:1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン、チバスペシャリティケミカルズ社製)。
「バイキュア55」(化学名:メチル−フェニルグリオキシレート、アクゾノーベル社製)。
「ルシリン TPO」(化学名:ジフェニル−2,4,6−トリメチルベンゾイルフォスフィンオキサイド、BASF社製)。
「KAYACURE DETX−S」(化学名:2,4−ジエチルチオキサントン、日本化薬社製)。
【0143】
[5]添加剤(レベリング剤):
「ポリフローNo.75」(共栄社化学社製)。
【0144】
[比較例]
表4に示す通り、上記実施例以外の材料を使用。
[6]紫外線吸収性化合物:
「SANDUVOR 3212 LIQUID」(クラリアントジャパン社製)。
「RUVA−93」(大塚化学社製)。
「TINUVIN400」(チバスペシャリティケミカルズ社製)。
「酸化亜鉛ペースト770」(テイカ社製)。
【0145】
[7]添加剤(光安定剤):
「TINUVIN123「HALS」(チバスペシャリティケミカルズ社製)。
[1]〜[7]を表2〜4に示す成分組成および配合比にて用い、本発明および比較例にかかわる塗料組成物を得た。
【0146】
<評価塗膜の形成>
膜厚100μmの易接着処理PETフィルム(東洋紡製コスモシャインA4300)上に、バーコーターにて乾燥膜厚7μmに調整して表2〜4の上記塗料を塗装した。
【0147】
次に80W/cm高圧水銀ランプ全反射集光ミラー1灯タイプを装着し、照射する物体までの距離が15cmの装置(IST社製)にコンベア―スピード5m/分でこの塗装フィルムを2回(積算光量 約300mJ/cm2)通過させ、紫外線を照射することにより硬化させ硬化塗膜を形成させた。
【0148】
<評価方法等>
1)塗料状態、2)塗膜状態、3)硬度、4)密着性、5)耐候性、6)透過率、7)耐スチールウール性、8)耐カール性ついて評価した。結果を表2〜4に示す。
【0149】
1)塗料状態(相溶性による白濁評価)
目視にて、3段階評価した。
3;完全に溶解し、透明な状態(合格)。
2;温度変化により、白濁及び結晶析出(不合格)。
1;白濁及び溶解しきれず結晶が沈殿している(不合格)。
【0150】
2)塗膜状態
目視にて、3段階評価した。
3;透明な塗膜を形成(合格)。
2;一応塗膜を形成しているが、一部結晶析出や変色及びブリードアウトしている(不合格)。
1;硬化不良(不合格)。
【0151】
3)硬度
JIS K5600にて硬度を3段階評価した。
3;硬度2H以上(合格)。
2;硬度B〜H(不合格)。
1;B未満(不合格)。
【0152】
4)密着性
塗膜にカッターで碁盤目(100目)にキズを入れ、セロテープ(ニチバン社製 24mm幅)を密着させた後、垂直方向にはがし、はがれを評価した。
3;100/100 (合格)。
2;80〜99/100 (不合格)。
1;0〜79/100(不合格)。
【0153】
5)耐候性
岩崎電気社製、アイスーパーUVテスター SUV−W23 で100時間暴露後、色差計(JUKI社製 JP7100F)にてΔbを測定して3段階で評価を行った。
3;黄変が少なく透明で良好。外観に大きな変化がない。Δb=2未満(合格)。
2;わずかに黄変して透明。Δb=2以上5未満(不合格)。
1;黄変して、膜及び素材が劣化。Δb=5以上(不合格)。
【0154】
6)UVカット性
日立社I製、U−3400 Spectrophotometerにて塗装フィルムを測定し、波長370nmの透過率を測定し3段階で評価を行った。
3;透過率30%以下(合格)。
2;透過率30〜50%(不合格)。
1;透過率50%以上(不合格)。
【0155】
7)耐スチールウール性
学振型摩擦試験機(荷重500g、スチールウール#0000)にて50回往復試験を行い試験後、その外観を3段階で評価を行った。
3;ほとんど傷なし(傷0〜3本)(合格)。
2;傷少量(傷4〜10本)(不合格)。
1;傷多量(傷10本以上)(不合格)。
【0156】
8)耐カール性
100mm×100mmの試験片を作製し、その2隅を押さえ、もう2隅の浮き上がりの平均値を測定し、3段階で評価を行った。
3;3cm以下(合格)。
2;3cm〜10cm(不合格)。
1;10cm以上(不合格)。
【0157】
【表2】
【0158】
【表3】
【0159】
【表4】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光硬化性(メタ)アクリル樹脂の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、光硬化性樹脂組成物に紫外線吸収剤を配合することにより耐光性および耐候性を改善する方法は知られている。この方法では、紫外線吸収剤が樹脂からブリードアウトし、効果の持続性が継続・持続しにくいという欠点があった。
【0003】
これに対して、特許第2963029号(日本触媒、特許文献1)では、2−[2'−ヒドロキシ−5'−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾールと、シクロアルキル(メタ)アクリレートなどのシクロアルキル基含有不飽和単量体と、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどの水酸基含有不飽和単量体とを共重合してなる共重合体が含まれた塗料組成物が開示されている。この共重合体では、紫外線吸収剤は、共重合体中に組み込まれており、その紫外線吸収剤のブリードアウトの問題はない。
【0004】
しかし、この組成物は上記の共重合体(水酸基含有アクリルポリオール)と、ポリイソシアネート化合物やその変性物などのイソシアネート基含有架橋剤と、を配合してなる2液塗料組成物である。つまり、上記の紫外線吸収剤含有共重合体自体は光硬化性を有しておらず、架橋剤であるポリイソシアネート化合物などと組合わせ、2液のウレタン硬化反応により硬化塗膜形成ができる共重合体であり、光硬化性樹脂組成物に使用することができない。
【0005】
そこで上記問題点を解決するべく本発明者らは鋭意研究を重ねたところ、
(イ)得られる共重合体(光硬化性(メタ)アクリル樹脂)中に、紫外線吸収性を有する紫外線吸収性化合物成分単位(A)と共に、少なくとも側鎖末端に共重合反応に供されていない未反応の(メタ)アクリロイル基を有している光重合性多官能性(メタ)アクリロイル基含有化合物成分単位(B)などが存在していると、この光硬化性アクリル樹脂は、少なくとも共重合体側鎖に光硬化可能な(メタ)アクリロイル基を含有しているため光硬化性を有していること、
(ロ)この光硬化性アクリル樹脂が含まれた光硬化性樹脂組成物は、該組成物の硬化反応により、光硬化性アクリル樹脂が硬化物中に反応固定化されることで長期の耐候性を付与することができること、
(ハ)また、この光硬化性(メタ)アクリル樹脂は、各種溶剤や樹脂及びモノマーへの溶解性に劣る紫外線吸収剤と異なり、ケトン、エステル、エーテル、芳香族系の各種溶剤や、多くの樹脂及びモノマーとの溶解性がよいため低温時にも析出することなく透明な塗膜が形成でき、広範な光硬化性(メタ)アクレート樹脂等に配合して均一に分散・溶解することができる。また樹脂やモノマーへの溶解性がよいので組成物中の紫外線吸収成分の割合を高めることができ、そのため紫外線吸収性能をより高めることが可能となること、などを見出して本発明を完成するに至った。
【0006】
なお、上記反応性紫外線吸収剤(モノマー)の2−[2'−ヒドロキシ−5'−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール(商品名「RUVA−93」大塚化学(株)製)を、共重合用モノマーの1種として用いた例としては、該モノマーと、シクロヘキシルアクリレートとの共重合体(特開平9−3134号公報、特許文献2)等が挙げられる。
【0007】
その他、特開平6−88065号公報(特許文献3)には、重合可能な不飽和二重結合がアルキレン鎖を介してウレタン結合によりベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の骨格に結合している紫外線吸収剤及びこれを含む紫外線吸収組成物が開示されている。
【0008】
特開平6−88066号公報(特許文献4)には、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤の骨格にウレタン結合を介して重合可能な不飽和二重結合を分子内に有する紫外線吸収剤及びこれを含む紫外線吸収組成物が開示されている。
【0009】
さらに、紫外線吸収剤およびこれに関連する技術としては、特開平6−128502号公報(特許文献5、対応特許第3223459号)、特開昭61−236805号公報(特許文献6)、特開平4−106161号公報(特許文献7)、特開平5−65316号公報(特許文献8)、特開平10−130456号公報(特許文献9)、特開2001−342439号公報(特許文献10)等が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第2963029号
【特許文献2】特開平9−3134号公報
【特許文献3】特開平6−88065号公報
【特許文献4】特開平6−88066号公報
【特許文献5】特開平6−128502号公報
【特許文献6】特開昭61−236805号公報
【特許文献7】特開平4−106161号公報
【特許文献8】特開平5−65316号公報
【特許文献9】特開平10−130456号公報
【特許文献10】特開2001−342439号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記のような従来技術に伴う問題点を解決しようとするものであって、紫外線吸収性を有し、長期の耐候性を有し、各種溶剤、樹脂及びモノマーへの溶解性に劣る反応性紫外線吸収剤と異なり、ケトン、エステル、エーテル、芳香族系の各種溶剤や、多くの樹脂及びモノマーとの溶解性にも優れ、低温時にも析出することなく透明な塗膜が形成でき、広範な光硬化性(メタ)アクレート樹脂等に配合して均一に分散・溶解することができる光硬化性(メタ)アクリル樹脂を提供することを目的としている。
【0012】
また本発明は、上記効果を有する紫外線吸収性光硬化性樹脂組成物を提供することを目的としている。
また本発明は、上記組成物から形成され、紫外線吸収性や硬度、耐スチールウール性、耐カール性などの物性を有する耐候性被膜、該被膜で被覆された基材、被覆フィルムを提供することを目的としている。
【0013】
また本発明は、基材表面上に、特定の耐候性被膜を形成させることによる、紫外線の吸収方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る光硬化性(メタ)アクリル樹脂は、
(A)紫外線吸収性化合物骨格と、(メタ)アクリロイル基とを有する(メタ)アクリロイル基含有紫外線吸収性化合物(a1)から誘導される紫外線吸収性化合物成分単位と、(B)(メタ)アクリロイル基と官能基を有する2種の化合物(b1)と(b2)からウレタン結合またはエステル結合を介して誘導される側鎖末端に(メタ)アクリロイル基を
有する光重合性(メタ)アクリロイル基含有化合物成分単位と、
(C)上記成分単位(A)を形成する(メタ)アクリロイル基含有紫外線吸収性化合物(a1)、および
上記成分単位(B)を形成する光重合性(メタ)アクリロイル基含有化合物を誘導する化合物(b2)
の何れとも共重合可能な他のモノマー(c1)から誘導される成分単位と、
を含有することを特徴としている。
【0015】
本発明では、上記(メタ)アクリロイル基含有紫外線吸収性化合物(a1)が、2−[2'−ヒドロキシ−5'−((メタ)アクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾールであることが原料入手の容易性、共重合体の性能が上記目的に照らして優れるなどの点で好ましい。
【0016】
本発明では、光重合性(メタ)アクリロイル基含有化合物成分単位(B)が、下記一般式(B−I)〜(B−III)からなる群から選ばれた少なくとも1種であることが(共重
合体の性能、原料入手の容易性、(メタ)アクリロイル基含有化合物成分単位(B)を誘導する上での合成容易性などの点で好ましい。
一般式(I):
【0017】
【化4】
一般式(B−II):
【0018】
【化5】
一般式(B−III):
【0019】
【化6】
[式(B−I)、(B−II)、(B−III)中、RはHまたはCH3を示す。]
本発明では、上記光重合性(メタ)アクリロイル基含有化合物成分単位(B)が、予め共重合体(前駆体)中に導入された2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート単位中のイソシアネート基(−NCO)と、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートのヒドロキシル基(−OH)とのウレタン化反応により形成され、一般式(B−II)で表されることが好ましい。
【0020】
本発明では、上記光重合性(メタ)アクリロイル基含有化合物成分単位(B)が、予め共重合体中に導入された(メタ)アクリル酸単位と、グリシジル(メタ)アクリレートとのエステル化反応により形成され、一般式(B−II)で表されることが好ましい。
【0021】
本発明では、上記光重合性(メタ)アクリロイル基含有化合物成分単位(B)が、予め共重合体中に導入された(メタ)アクリル酸単位と、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートのグリシジルエーテルとのエステル化反応により形成され、一般式(B−III)
で表されることが好ましい。
【0022】
本発明に係る光硬化性(メタ)アクリル樹脂は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)で測定した光硬化性(メタ)アクリル樹脂の数平均分子量(Mn)が800〜7,000であり、重量平均分子量(Mw)が3,000〜50,000であり、分子量分布(Mw/Mn)が2〜9であることが好ましい。
【0023】
本発明のより好ましい態様に係る光硬化性(メタ)アクリル樹脂は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィーで測定した光硬化性(メタ)アクリル樹脂の数平均分子量(Mn)が1,000〜5,000であり、重量平均分子量(Mw)が4,000〜30,000であり、分子量分布(Mw/Mn)が2.5〜7であることが望ましい。
【0024】
本発明に係る光硬化性(メタ)アクリル樹脂は、
光硬化性(メタ)アクリル樹脂を構成する成分単位(A)、成分単位(B)および成分単位(C)の合計[(A)+(B)+(C)]を100重量%とするとき、
紫外線吸収性化合物成分単位(A)5〜90重量%であり、
光重合性(メタ)アクリロイル基含有化合物成分単位(B)が5〜80重量%であり、
上記他のモノマー(c1)から誘導される成分単位(C)が1〜80重量%であることが望ましい。
【0025】
本発明のさらに好ましい態様では、光硬化性(メタ)アクリル樹脂を構成する成分単位(A)、成分単位(B)および成分単位(C)の合計[(A)+(B)+(C)]を100重量%とするとき、
紫外線吸収性化合物成分単位(A)が10〜80重量%であり、
光重合性(メタ)アクリロイル基含有化合物成分単位(B)が15〜70重量%であり、
上記他のモノマー(c1)から誘導される成分単位(C)が5〜70重量%であることが望ましい。
【0026】
本発明の特に好ましい態様では、上記光硬化性(メタ)アクリル樹脂を構成する成分単位(A)、成分単位(B)および成分単位(C)の合計[(A)+(B)+(C)]を100重量%とするとき、
紫外線吸収性化合物成分単位(A)が20〜60重量%であり、
光重合性(メタ)アクリロイル基含有化合物成分単位(B)が25〜60重量%であり、
上記他のモノマー(c1)から誘導される成分単位(C)が10〜55重量%であることが望ましい。
【0027】
本発明に係る紫外線吸収性光硬化性樹脂組成物は、上記のいずれかに記載の光硬化性(メタ)アクリル樹脂(d1)と、
光硬化性(メタ)アクリロイル基含有樹脂(e1)と、
上記樹脂(e1)に比して、より低分子量の光硬化性単量体またはそのオリゴマー(f1)と、
光重合開始剤(g1)と、
を含有している。
【0028】
本発明に係る紫外線吸収性光硬化性樹脂組成物は、上記光硬化性(メタ)アクリロイル基含有樹脂(e1)が、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレートおよびポリエーテル(メタ)アクリレートからなる群から選ばれた少なくとも1種であることが望ましい。
【0029】
本発明に係る上記紫外線吸収性光硬化性樹脂組成物は、上記光硬化性(メタ)アクリロイル基含有樹脂(e1)が、ゲルパーミエイションクロマトグラフィーで測定した数平均分子量(Mn)が300〜50000であり、かつ、
エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレートおよびポリエーテル(メタ)アクリレートからなる群から選ばれた少なくとも1種であることが望ましい。
【0030】
さらに好ましい態様では、上記光硬化性(メタ)アクリロイル基含有樹脂(e1)が、ゲルパーミエイションクロマトグラフィーで測定した数平均分子量(Mn)が1000〜10000であり、かつ、
エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレートおよびポリエーテル(メタ)アクリレートからなる群から選ばれた少なくとも1種であることが硬度、耐スチールウール性の点で望ましい。
【0031】
本発明に係る上記紫外線吸収性光硬化性樹脂組成物のより好ましい態様では、上記成分(e1)よりは低分子量の光硬化性単量体またはそのオリゴマー(f1)の分子量が、100〜2000、より好ましくは150〜1000の光硬化性単量体またはそのオリゴマーであることが硬度、耐スチールウール性の点で望ましい。
【0032】
本発明に上記紫外線吸収性光硬化性樹脂組成物の好ましい態様では、上記光重合開始剤(g1)が、アシルホスフィンオキシド類またはチオキサントン類を少なくとも含むものであることが望ましい。
【0033】
本発明に係る耐候性被膜は、上記のいずれかに記載された紫外線吸収性光硬化性樹脂組成物から形成されたことを特徴とする。
本発明に係る基材は、上記のいずれかに記載された光硬化性樹脂組成物から形成された耐候性被膜によって被覆されたもの(被覆基材)であることを特徴とする。
【0034】
本発明に係る被覆フィルムは、プラスチックフィルムの表面を、上記のいずれかに記載された紫外線吸収性光硬化性樹脂組成物からなる紫外線吸収被膜で被覆したことを特徴とする。
【0035】
本発明に係る紫外線吸収方法は、基材表面上に、上記のいずれかに記載された紫外線吸収性光硬化性樹脂組成物からなる耐候性被膜を形成させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0036】
本発明に係る光硬化性(メタ)アクリル樹脂には、側鎖末端に共重合反応に供されていない未反応の(メタ)アクリロイル基を有している光重合性(メタ)アクリロイル基含有化合物成分単位(B)が存在しているので、この光硬化性アクリル樹脂は、光硬化性を有している。
【0037】
また、この光硬化性アクリル樹脂が含まれた光硬化性樹脂組成物は、光硬化反応により、光硬化性アクリル樹脂が硬化物中に反応固定化されることにより紫外線吸収作用を有する成分のブリードアウトがなく、長期の耐候性を付与することができる。
【0038】
また、この光硬化性(メタ)アクリル樹脂は、各種溶剤や樹脂及びモノマーへの溶解性に劣る紫外線吸収剤と異なり、溶剤や樹脂及びモノマーによく溶解するので、低温時にも析出することなく透明な塗膜を形成でき、広範な種類の光硬化性(メタ)アクレート樹脂等に配合することにより、均一に分散・溶解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】図1は、実施例1で得られた光硬化性アクリル共重合体B−1のIRスペクトルである。
【図2】図2は、実施例2で得られた光硬化性アクリル共重合体B−2のIRスペクトルである。
【図3】図3は、実施例3で得られた光硬化性アクリル共重合体B−3のIRスペクトルである。
【図4】図4は、実施例4で得られた光硬化性アクリル共重合体B−4のIRスペクトルである。
【図5】図5は、実施例5で得られた光硬化性アクリル共重合体B−5のIRスペクトルである。
【図6】図6は、実施例6で得られた光硬化性アクリル共重合体B−6のIRスペクトルである。
【図7】図7は、実施例7で得られた光硬化性アクリル共重合体B−7のIRスペクトルである。
【図8】図8は、実施例8で得られた光硬化性アクリル共重合体B−8のIRスペクトルである。
【図9】図9は、実施例1で得られた光硬化性アクリル共重合体B−1のGPCクロマトグラムである。
【図10】図10は、実施例2で得られた光硬化性アクリル共重合体B−2のGPCクロマトグラムである。
【図11】図11は、実施例3で得られた光硬化性アクリル共重合体B−3のGPCクロマトグラムである。
【図12】図12は、実施例4で得られた光硬化性アクリル共重合体B−4のGPCクロマトグラムである。
【図13】図13は、実施例5で得られた光硬化性アクリル共重合体B−5のGPCクロマトグラムである。
【図14】図14は、実施例6で得られた光硬化性アクリル共重合体B−6のGPCクロマトグラムである。
【図15】図15は、実施例7で得られた光硬化性アクリル共重合体B−7のGPCクロマトグラムである。
【図16】図16は、実施例8で得られた光硬化性アクリル共重合体B−8のGPCクロマトグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明に係る、反応性紫外線吸収剤が共重合された光硬化性(メタ)アクリル樹脂{(メタ)アクリロイル基含有光硬化性アクリル樹脂ともいう。}、その樹脂を含有する光硬化性樹脂組成物およびその組成物よりなる耐候性被膜等について具体的に説明する。
【0041】
[光硬化性(メタ)アクリル樹脂(d1)]
本発明に係る光硬化性(メタ)アクリル樹脂(共重合体、樹脂(d1)などともいう。)は、下記の成分単位(A)と(B)と(C)とを含有している。
成分単位(A):
紫外線吸収性化合物骨格と、(メタ)アクリロイル基とを有する(メタ)アクリロイル基含有紫外線吸収性化合物(a1)から誘導される紫外線吸収性化合物成分単位(A)。成分単位(B):
(メタ)アクリロイル基と官能基を有する2種の化合物(b1)と(b2)からウレタン結合またはエステル結合を介して誘導される側鎖末端に(メタ)アクリロイル基を有する光重合性(メタ)アクリロイル基含有化合物成分単位(B)。
成分単位(C):
上記成分単位(A)を形成する(メタ)アクリロイル基含有紫外線吸収性化合物(a1)、および上記成分単位(B)を形成する光重合性(メタ)アクリロイル基含有化合物を誘導する化合物(b2)の何れとも共重合可能な他のモノマー(c1)から誘導される成分単位(C)。
【0042】
本発明に係る光硬化性(メタ)アクリル樹脂には、該樹脂を構成する成分単位(A)、成分単位(B)および成分単位(C)の合計[(A)+(B)+(C)]を100重量%とするとき、紫外線吸収性化合物成分単位(A)が通常、5〜90重量%、好ましくは10〜80重量%、特に好ましくは20〜60重量%であり、光重合性(メタ)アクリロイル基含有化合物成分単位(B)が通常、5〜80重量%、好ましくは15〜70重量%、特に好ましくは25〜60重量%であり、上記他のモノマー(c1)から誘導される成分単位(C)が通常、1〜80重量%、好ましくは5〜70重量%、特に好ましくは10〜55重量%の割合で存在していることが光硬化性、紫外線吸収性、硬度などの物性の点で望ましい。
【0043】
本発明の上記光硬化性(メタ)アクリル樹脂中において、上記各成分単位は、その合計量が上記範囲となるように、ランダム、ブロック、交互共重合などの何れの形態で配列していてもよいが、通常、任意の順序でランダムに配列している。
【0044】
なお、光硬化性(メタ)アクリル樹脂中における上記成分単位(A)量が、上記範囲より少ないと、紫外線吸収性が低くなる傾向があり、また、上記範囲を超えると上記成分単位(B)量が少なくなり光硬化性が劣る傾向がある。
【0045】
また、光硬化性(メタ)アクリル樹脂中における上記成分単位(B)量が、上記範囲より少ないと、光硬化性が劣る傾向があり、また、上記範囲を超えると上記成分単位(A)量が少なくなり紫外線吸収性が低くなる傾向がある。
【0046】
また、光硬化性(メタ)アクリル樹脂中における上記成分単位(C)量が、上記範囲より少ないと、硬度が低くなる傾向があり、また、上記範囲を超えると上記成分単位(A)量または上記成分単位(B)量が少なくなり紫外線吸収性が低くなるかまたは光硬化性が劣る傾向がある。
【0047】
本発明に係る光硬化性(メタ)アクリル樹脂は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)で測定した光硬化性(メタ)アクリル樹脂の数平均分子量(Mn)が通常、800〜7,000、好ましくは1,000〜5,000であり、重量平均分子量(Mw)が通常、3,000〜50,000(5万)、好ましくは4,000〜30,000(3万)であり、分子量分布(Mn/Mw)が通常、2〜9、好ましくは2.5〜7であることが光硬化性樹脂組成物を基材に塗布、加工する際の適正な粘度、粘性にする点などで好ましい。
【0048】
以下、各成分単位(A)、(B)、(C)および、これら成分単位を形成(誘導)可能な化合物(a1)、(b1)あるいは(b2)、(c1)等について説明する。
【0049】
<紫外線吸収性化合物成分単位(A)、およびこれを誘導可能な化合物(a1)>
紫外線吸収性化合物成分単位(A)(成分単位(A))は、側鎖に、紫外線吸収性化合物骨格と、(メタ)アクリロイル基とを有する。
紫外線吸収性化合物骨格としては、光の吸収波長が300〜400nm程度であり、かつ吸収係数が大きく、光や熱で分解しないことなどが求められる。また、紫外線吸収性化合物骨格は、芳香族誘導体(例:ベンゼン、ナフタレンなどの誘導体。)に、発色団(例:C=N、N=N、N=O、C=Oなど。)や助色団(例:NH2、OH、SO3H、COOHなど。)を有している化合物から誘導されており、UV吸収して分子内反転を起こして安定化させる機能をもっていることが多い(http://www.osaka-kyoiku.ac.jp/~sawada/plastic/kaisitu.html#head参照)。
【0050】
このような紫外線吸収性化合物骨格としては、例えば、特開2001−64504号公報[0021]等に記載の紫外線吸収剤より誘導される骨格、例えば、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、サリチル酸フェニル系、トリアジン系、シアノアクリレート系のものなどが挙げられる。好ましい紫外線吸収剤骨格は、ベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤骨格である。
【0051】
この成分単位(A)は、(メタ)アクリロイル基含有紫外線吸収性化合物(a1)から誘導される。より具体的には、紫外線吸収性化合物骨格となる紫外線吸収性物質{例:紫外線吸収性骨格であるベンゾトリアゾール系骨格を有する2−[2'−ヒドロキシ−5'−(ヒドロキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール}と、(メタ)アクリロイル基を有する物質{例:(メタ)アクリル酸エステル}とを反応させて得られる(メタ)アクリロイル基含有紫外線吸収性化合物(a1)などから誘導される。
【0052】
具体的には、例えば、(イ):2−[2'−ヒドロキシ−5'−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール[商品名:RUVA−93、大塚化学(株)製]、
その他に、2−(2'−ヒドロキシ−3'−t−ブチル−5'−メタクリロキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2'−(メタ)アクリロイルオキシ−5'−メチルフェニル〕ベンゾトリアゾール、2−〔2'−(メタ)アクリロイルオキシ−5'−t−オクチルフェニル〕ベンゾトリアゾール、2−〔2'−(メタ)アクリロイルオキシ−3',5'−ジ−t−ブチルフェニル〕ベンゾトリアゾールなどのベンゾトリアゾール化合物;2−ヒドロキシ−4−(メタクリロイルオキシエトキシ)ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(アクリロイルオキシエトキシ)ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メタクリロイルオキシメチルアミノベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(メタクリロイルオキシメトキシ)ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メタクリロイルオキシメチルチオベンゾフェノン、2−(メタ)アクリロイルオキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−(メタ)アクリロイルオキシ−2'−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2'−ジ(メタ)アクリロイルオキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2'−ジ(メタ)アクリロイルオキシ−4,4'−ジメトキシベンゾフェノン、2−(メタ)アクリロイルオキシ−4−メトキシ−2'−カルボキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−〔3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ〕ベンゾフェノン、2,2'−ジヒドロキシ−4−〔3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ〕ベンゾフェノンなどのベンゾフェノン化合物;2−(4,6−ジフェニル−1,2,5−トリアジン−2−イル)−5−(メタクリロイルオキシエトキシ)−フェノールなどのトリアジン化合物;2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3−ジフェニル(メタ)アクリレートなどのシアノアクリレート化合物などが挙げられる。(特開2001−342439号公報[0015]に記載の紫外線吸収剤を参照)
【0053】
これらのうちでは、2−[2'−ヒドロキシ−5'−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、他のラジカル重合性モノマーである、(メタ)アクリル酸エステル等のモノマー(b2)、スチレン、アクリルニトリルなどの他のモノマー(c1)の何れとも良好にラジカル共重合可能であり、得られる共重合体、あるいはその硬化物が含まれた塗膜は、紫外線吸収性に優れ、しかも、高温での加工時等に紫外線吸収剤の揮散がなく、また塗膜表面から溶出(ブリードアウト)がなく、高い安全性と、長期間に亘って安定した耐候性を発揮できるなどの点で望ましい。
これら(メタ)アクリロイル基含有紫外線吸収性化合物(a1)は、共重合体中に、1種または2種以上存在していてもよい。
【0054】
<光重合性(メタ)アクリロイル基含有化合物成分単位(B)、およびこれを誘導する化合物(b1)、(b2)>
光重合性(メタ)アクリロイル基含有化合物成分単位(B)(成分単位(B))は、少なくとも、側鎖末端に光重合性の官能基である(メタ)アクリロイル基を有する。
【0055】
本発明では、光重合性(メタ)アクリロイル基含有化合物成分単位(B)が、下記一般式(B−I)〜(B−III)からなる群から選ばれた少なくとも1種であることが(共重合体の性能、原料入手の容易性、(メタ)アクリロイル基誘導の合成容易性などの点で好ましい。
【0056】
一般式(B−I):
【0057】
【化7】
一般式(B−II):
【0058】
【化8】
一般式(B−III):
【0059】
【化9】
[式(B−I)、(B−II)、(B−III)中、RはHまたはCH3を示す。]
【0060】
<(B−I)>
上記一般式(B−I)で表される光重合性(メタ)アクリロイル基含有化合物成分単位は、好ましくは、予め、ラジカル重合性基である(メタ)アクリロイル基などと、非ラジカル重合性の官能基であるイソシアネート基(NCO)などとを有するモノマーである2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネートなど(モノマー(b2)に相当)を共重合時に用いて、成分単位(B)形成用の非ラジカル重合性の官能基を側鎖に有するユニット(B')を、光硬化性(メタ)アクリル樹脂形成性の共重合体(前駆体)中に導入する。
【0061】
NCO含有モノマーとしては、他に、昭和電工社製「カレンズMOI」(2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート)、昭和電工社製「カレンズAOI」(2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート)、日本ペイント社製「MAI」(メタクリロイルイソシアネート)等が挙げられる。
【0062】
次いで、得られた共重合体(前駆体)中の非ラジカル重合性の官能基(例:NCO基)と、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等のOH基含有モノマー(モノマー(b1)に相当)と、を反応させて、上記一般式(B−I)で表される光重合性多官能性(メタ)アクリロイル基含有化合物成分単位(B)を形成すること、すなわち成分単位(B−I)を有する光硬化性(メタ)アクリル樹脂を形成することが望ましい。なお、他にOH基含有モノマーとしては、例えば、2HEA(正式名称:2−ヒドロキシエチルアクリレート)、2HEMA(正式名称:2−ヒドロキシエチルメタクリレート)、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、ラクトン変性2−ヒドロキシ(メタ)アクリレート、またポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール−プロピレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール−テトラメチレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、ポリ(プロピレングリコール−テトラメチレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、などのOH基末端ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0063】
このOH基含有モノマーの2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどは、上記非ラジカル重合性の官能基(例:NCO基)と反応可能な官能基(例:OH基)を有し、かつ共重合体(前駆体)中に導入すべき光硬化に関与する基である(メタ)アクリロイル基などを有する。
【0064】
本発明では、このようなOH基含有モノマー中のOH基と、ユニット(B')中の非ラジカル重合性の官能基であるNCO基とを反応させて、上記一般式(B−I)で表される光重合性(メタ)アクリロイル基含有化合物成分単位(B)を有する共重合体を形成することが望ましい(例:実施例1、2、5など)。
【0065】
この反応では、共重合体(前駆体)中に予め導入された2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート単位(B')中の非ラジカル重合性の官能基であるイソシアネート基(−NCO)と、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートのヒドロキシル基(−OH)とのウレタン化反応により、成分単位(B−I)が形成されている。
【0066】
<NCO基含有成分単位(B')+2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート→成分単位(
B−I)>
【0067】
【化10】
なお、光硬化性(メタ)アクリル樹脂の製造に際し、最初から、共重合性モノマーとして、例えば、(メタ)アクリロイル基を2個またはそれ以上有するモノマー[すなわち少なくとも2個の(メタ)アクリロイル基を有する光重合性多官能性(メタ)アクリロイル基含有化合物に相当]を、成分単位(B−I)形成用のモノマーとして配合すると、各モノマーの2重結合の解裂が複数箇所で生じて網目状の架橋反応が進行して、硬化等してしまい、所望の光硬化性(メタ)アクリル樹脂は得られない。下記成分単位(B−II)、(B−III)の場合もこれと同様である。
【0068】
ここで、付言しておくと、成分単位(a)に相当する「RUVA−93(大塚化学)」には、ベンゼン環に「OH」基があるが、成分単位(B)形成用の2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネートとは実質上、ウレタン化反応しないと思われる。
【0069】
その理由は、フェノールOH基とNCOの反応性は遅く、OHの近くにベンゾトリアゾールがあるため立体障害で反応性は更に遅くなること、ウレタン化触媒無添加であること、またアクリル重合後IRで見ると、NCO吸収ピークがありGPCで異常な高分子量部分は見られないことより、本発明におけるアクリル重合条件ではウレタン化反応は生じていないと思われる。
【0070】
<(B−II)>
また、上記一般式(B−II)で表される光重合性(メタ)アクリロイル基含有化合物成分単位は、好ましくは、予め、ラジカル重合性基である(メタ)アクリロイル基などと、非ラジカル重合性の官能基であるカルボキシル基(COOH)、エポキシ基含有基(例:グリシジル基、エポキシ基)などとを有するモノマーである(メタ)アクリル酸、グリシジル(メタ)アクリレートなど(モノマー(b2)に相当)を共重合時に用いて、成分単位(B)形成用のユニット(B')を、光硬化性(メタ)アクリル樹脂形成性の共重合体(前駆体)中に導入しておくことも望ましい。
【0071】
次いで、得られた共重合体(前駆体)中の非ラジカル重合性の官能基{例:(メタ)アクリル酸ではCOOH基、}と、「(メタ)アクリル酸グリシジルエーテル」などとをエステル化反応させて、上記一般式(B−II)で表される光重合性(メタ)アクリロイル基含有化合物成分単位(B)を形成することが望ましい。
【0072】
この「(メタ)アクリル酸グリシジルエーテル」などは、上記非ラジカル重合性の官能基(例:COOH基)と反応して結合可能な官能基(例:COOHに対してはエポキシ基など。)を有し、かつ共重合体(前駆体)中に導入すべき光硬化に関与する基である(メタ)アクリロイル基などを有するものであればよい。
【0073】
なお、予め非ラジカル重合性官能基としてのエポキシ基を有するモノマーである「グリシジル(メタ)アクリレート」などを用いて、側鎖にグリシジル基を有する共重合体(前駆体)を形成しておき、次いで、このグリシジル基と反応性の基の1種であるカルボキシル基(COOH)を有し、かつ光硬化性基の(メタ)アクリロイル基等をも有するモノマーの「(メタ)アクリル酸」などを接触させて、共重合体中に光硬化性基を導入するようにしてもよい(例:実施例3、4、6、8など)。
【0074】
<グリシジル(メタ)アクリレート成分単位(B')+(メタ)アクリル酸→成分単位(B−II)>
【0075】
【化11】
<(B−III)>
また、上記一般式(B−III)で表される光重合性(メタ)アクリロイル基含有化合物成分単位は、好ましくは、予め、ラジカル重合性基である(メタ)アクリロイル基などと、非ラジカル重合性の官能基であるカルボキシル基(COOH)などとを有するモノマーである(メタ)アクリル酸など(化合物(b2)に相当)を共重合時に用いて、成分単位(B)形成用のユニット(B')である(メタ)アクリル酸単位などを、光硬化性(メタ)アクリル樹脂形成性の共重合体(前駆体)中に導入しておくことが望ましい。
【0076】
このユニット(B')としての(メタ)アクリル酸単位を有する共重合体(前駆体)は、該前駆体中、特に側鎖中に、光硬化性基となるラジカル重合性の(メタ)アクリロイル基などをまだ有していない(前記(B−I),(B−II)の場合も前駆体(B')は同様である)。
【0077】
(メタ)アクリル酸単位を形成できる(メタ)アクリル酸は、「化合物(b2)」に相当する。この化合物(b2)単位すなわち(メタ)アクリル酸単位は、「4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートのグリシジルエーテル」等に代表される「グリジジル基と(メタ)アクリロイル基とを含有する化合物(b1)」とエステル化反応させると、光重合性(メタ)アクリロイル基含有化合物成分単位(B)が形成される。
【0078】
なお、前駆体ユニット(B')を共重合せずに「化合物(b2)」に相当する(メタ)アクリル酸と、「化合物(b1)」に相当する「4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートのグリシジルエーテル」との反応物は、「少なくとも2個の(メタ)アクリロイル基を有する光重合性多官能性(メタ)アクリロイル基含有化合物(BX)」ということができ、両末端にラジカル重合性の(メタ)アクリロイル基を有するため、それ自体を重合用モノマーとして用いることはできない。
【0079】
光硬化性(メタ)アクリル樹脂の製造時に、もし、モノマー(a)およびモノマー(c)と共に、化合物(BX)を用いてこれらをラジカル重合すると、化合物(BX)による架橋反応も生じて生成物は硬化してしまう。
【0080】
本発明では、次いで、得られた共重合体(前駆体)中、さらに具体的には(メタ)アクリル酸単位中の非ラジカル重合性の官能基(例:COOH基)と、「4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートのグリシジルエーテル」等とをエステル化反応させて、上記一般式(B−III)で表される光重合性(メタ)アクリロイル基含有化合物成分単位(B)を
形成すること、すなわち成分単位(B−III)を有する光硬化性(メタ)アクリル樹脂を
形成することが望ましい。
【0081】
このグリシジル基と(メタ)アクリロイル基とを含有する化合物である「4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートのグリシジルエーテル」等は、上記非ラジカル重合性の官能基(例:COOH基)と反応可能な官能基(例:エポキシ基、グリシジル基)を有し、かつ共重合体(前駆体)中に導入すべき光硬化に関与する基である(メタ)アクリロイル基などを有する。
【0082】
本発明では、このような「4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートのグリシジルエーテル」等に含まれるグリシジル基と、ユニット(B')中のカルボキシル基(COOH)とをエステル化反応させて、上記一般式(B−III)で表される光重合性(メタ)アクリロイル基含有化合物成分単位(B)を有する共重合体を形成することが望ましい(例:実施例7など)。
【0083】
<COOH基含有成分単位(B')+「4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートのグリシジルエーテル」→成分単位(B−III)>
【0084】
【化12】
【0085】
<成分単位(C)、およびこれを誘導可能な化合物(c1)>
上記モノマー(a1)およびモノマー(b2)と共重合可能な「その他のモノマー(c1)」としては、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシ(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルニトリル、スチレン、α−メチルスチレン、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、等が挙げられる。
【0086】
<光硬化性(メタ)アクリル樹脂の製造>
次に、上記光硬化性(メタ)アクリル樹脂の製造方法について説明する。
(イ)前駆体の製造
本発明では、例えば、上述した成分単位(A)と、成分単位(B)と、成分単位(C)とを上記量(重量%)で含有する光硬化性(メタ)アクリル樹脂を製造するには、予め、上記量の「RUVA−93」(大塚化学(株)製)に代表される(メタ)アクリロイル基含有紫外線吸収性化合物(a1)と、
2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネートなどラジカル重合性基((メタ)アクリロイル基)と非ラジカル重合性基(NCO)とを有するモノマー(b2)と、他のモノマー(c1)とを共重合する。このような共重合反応の際には各成分を分割添加し、最終的に所定量比となるように、複数回の反応を行ってもよい。
【0087】
この前駆体形成反応は、合計時間として、通常60〜130℃程度の温度で、6〜12時間程度行われる。その後、使用したラジカル重合開始剤を失活させるため開始剤半減期が数分の高温度で1〜2時間保温する。
【0088】
(ロ)光硬化性基の導入
次いで、生成した共重合体(前駆体)と、該前駆体中の非ラジカル重合性基(NCO)と反応性の官能基(OH基)と、ラジカル重合性基((メタ)アクリロイル基)とを有する化合物(例:2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート)とを通常50〜100℃程度の温度で、1〜10時間程度反応させて、所望の光硬化性(メタ)アクリル樹脂を製造することができる。
【0089】
この前駆体の製造(イ)および後段の光硬化性(メタ)アクリロイル基の導入(ロ)の際には、従来より公知のラジカル重合開始剤{例:AIBN(2,2−アゾビスイソブチロニトリル)、}、ウレタン反応触媒{例:ジブチル錫ジラウレート}、有機溶媒(例:酢酸ブチル、キシレン、MIBK、)などを適宜量で用いることができる。
【0090】
なお、上記反応の際には、2HEAのアクリロイル基重合禁止の役割を担うp−メトキシフェノールのような重合禁止剤を併用してもよい(例:実施例1等参照)。他の光硬化性(メタ)アクリル樹脂の場合も上記に準じて製造すればよい。
【0091】
このようにして得られた光硬化性(メタ)アクリル樹脂には、用いられた各モノマー量に対応する量で、各成分単位(A)、(B)、(C)が存在している。このことの確認は、例えば、IR測定、紫外線吸収性試験、光硬化性試験、などにて行われる。
【0092】
上記共重合体としては、下記構造式(I)、(II)、(III)、(IV)に示すようなものが挙げられる。
【0093】
【化13】
【0094】
【化14】
【0095】
【化15】
【0096】
【化16】
また、このようにして得られた光硬化性(メタ)アクリル樹脂のGPCで測定した数平均分子量(Mn)が通常、800〜7,000、好ましくは1,000〜5,000であり、重量平均分子量(Mw)が通常、3,000〜50,000(5万)、好ましくは4,000〜3,0000(3万)であり、分子量分布(Mw/Mn)が通常、2〜9、好ましくは2.5〜7であることが光硬化性樹脂組成物を基材に塗布、加工する際の適正な粘度、粘性にする点などで望ましい。
【0097】
なお、Mn、Mwの調整は、反応濃度、反応温度、重合開始剤量と種類、などにより、適宜設計・変更できる。例えば、反応濃度を高く、温度を下げ、また重合開始剤量を減らせば、Mn、Mwは増大する。
【0098】
本発明によれば、(メタ)アクリロイル基を導入したベンゾトリアゾール型、ベンゾフェノン型、ベンゾフェノール型等の重合性紫外線吸収剤単量体と重合性不飽和単量体との共重合体が得られる。この共重合体を配合した光硬化型塗料組成物などの下記光硬化性樹脂組成物は、従来の一般的な低分子の紫外線吸収剤を配合した光硬化型塗料組成物と異なり、紫外線吸収剤のブリードアウトの問題が解消される。
【0099】
[光硬化性樹脂組成物]
本発明に係る紫外線吸収性光硬化性樹脂組成物は、少なくとも、上記のいずれかに記載の光硬化性(メタ)アクリル樹脂(d1)と、
光硬化性(メタ)アクリロイル基含有樹脂(e1)と、
上記樹脂(e1)に比して、より低分子量の光硬化性単量体またはそのオリゴマー(f1)と、
光重合開始剤(g1)と、
を含有している。
【0100】
この組成物の(e1)(d1)(f1)(g1)(固形分)の合計「(e1)+(d1)+(f1)+(g1)」を100重量%とするとき、光硬化性(メタ)アクリル樹脂(d1)(固形分)は通常通常、5〜70重量部、好ましくは20〜60重量部の量で、光硬化性(メタ)アクリロイル基含有樹脂(e1)(固形分)は通常、5〜50重量部、好ましくは10〜40重量部の量で、上記樹脂(e1)に比して、より低分子量の光硬化性単量体またはそのオリゴマー(f1)は、通常1〜50重量部、好ましくは5〜40重量部の量で、光重合開始剤(g1)は、通常1〜20重量部、好ましくは5〜15重量部の量で用いられる。
【0101】
<光硬化性(メタ)アクリロイル基含有樹脂(e1)>
本発明に係る紫外線吸収性光硬化性樹脂組成物は、上記光硬化性(メタ)アクリロイル基含有樹脂(e1)が、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレートおよびポリエーテル(メタ)アクリレートからなる群から選ばれた少なくとも1種を(共)重合して形成されたものであることが硬度、耐スチールウール性の点で望ましい。
【0102】
本発明では、上記光硬化性(メタ)アクリロイル基含有樹脂(e1)は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィーで測定した数平均分子量(Mn)が300〜50,000(5万)であり、かつ、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレートおよびポリエーテル(メタ)アクリレートからなる群から選ばれた少なくとも1種であることが望ましい。
【0103】
さらに好ましい態様では、上記光硬化性(メタ)アクリロイル基含有樹脂(e1)が、ゲルパーミエイションクロマトグラフィーで測定した数平均分子量(Mn)が1000〜10000であり、かつ、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレートおよびポリエーテル(メタ)アクリレートからなる群から選ばれた少なくとも1種であることが硬度、耐スチールウール性の点で望ましい。
【0104】
<低分子量の光硬化性単量体またはそのオリゴマー(f1)>
本発明に係る上記紫外線吸収性光硬化性樹脂組成物のより好ましい態様では、上記成分(e1)よりは低分子量の光硬化性単量体またはそのオリゴマー(f1)の分子量が、100〜2000、より好ましくは150〜1000の光硬化性単量体またはそのオリゴマーであることが硬度、耐スチールウール性、反応性の点で望ましい。
【0105】
<光重合開始剤(g1)>
本発明に上記紫外線吸収性光硬化性樹脂組成物の好ましい態様では、上記光重合開始剤(g1)が、アシルホスフィンオキシド類またはチオキサントン類を少なくとも含むものであることが望ましい。
【0106】
この組成物には、上記成分以外に、通常、紫外線吸収性光硬化性樹脂組成物に含まれるような成分(例:重合禁止剤、非反応性希釈剤、消泡剤、沈降防止剤、レベリング剤、分散剤、熱安定剤、つや消し剤、着色顔料、導電性金属酸化物)などが本発明の目的に反しない範囲で含まれていてもよい。
【0107】
このような組成物を得るには、上記各成分を一度に、あるいは少しずつ任意順序で添加混合すればよい。この際には、従来より公知の方法を適宜利用でき、例えば、ディスパー、ミル、ミキサー等にて混合攪拌等すればよい。
【0108】
[耐候性被膜、基材、紫外線吸収方法]
本発明に係る耐候性被膜は、上記のいずれかに記載された紫外線吸収性光硬化性樹脂組成物から形成されたことを特徴とする。
【0109】
本発明に係る基材は、上記のいずれかに記載された光硬化性樹脂組成物から形成された耐候性被膜によって被覆されたもの(被覆基材)であることを特徴とする。本発明に係る被覆フィルムは、プラスチックフィルムの表面を、上記のいずれかに記載された紫外線吸収性光硬化性樹脂組成物からなる紫外線吸収被膜で被覆したことを特徴とする。
【0110】
本発明に係る紫外線吸収方法は、基材表面上に、上記のいずれかに記載された紫外線吸収性光硬化性樹脂組成物からなる耐候性被膜を形成させることを特徴とする。
【0111】
[実施例]
以下、本発明に係る(メタ)アクリロイル基含有光硬化性アクリル樹脂、その光硬化性アクリル樹脂を含有する光硬化性樹脂組成物およびその組成物を用いて形成される耐候性被膜についてその好適態様を示す実施例に基いてさらに具体的に説明するが、本発明は係る実施例により何ら限定されるものではない。
【0112】
(B−I)GPCによる(メタ)アクリロイル基含有光硬化性アクリル樹脂の数平均分子量(Mn)と重量平均分子量(Mw)の測定条件:
装置:東ソー(株)製HLC−8120GPC、
カラム:東ソー(株)製Super H2000+H4000、
(各内径6mm長さ15cm)
展開溶媒:THF、 カラム恒温槽温度:40℃、
流速:0.5ml/min、 対照:単分散ポリスチレン、
検出器:屈折率変化。
【0113】
(B−II)不揮発分の測定条件:
試料1gを108℃循環式乾燥器に1時間乾燥した後の加熱残渣。
(B−III)粘度の測定条件:
E粘度計、25℃で測定。
【0114】
[実施例1]
攪拌装置、温度計、窒素ガス導入管および還流冷却管を備えた300ml反応容器に、酢酸ブチル100部を仕込み窒素ガス雰囲気中で、95℃まで昇温しMMA(メチルメタクリレート)12.5部、カレンズMOI(昭和電工社製、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート)5部、RUVA−93(大塚化学社製、2−(2'−ヒドロキシ−5'−メタクリロキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール)7.5部、AIBN(2,2'−アゾビスイソブチロニトリル)を0.75部加えて、95℃で45分反応した。次に同様にMMA12.5部、カレンズMOI5部、RUVA−93を7.5部、AIBNを0.75部加えて、95℃で45分反応した。さらにこの操作を2回繰り返し4回目を加えた後95℃で1.5時間反応してAIBN0.14部加えた。続いて45分毎にAIBN0.14部を2回加えて45分後、120℃で45分保温した後冷却した。これで高耐候性アクリル共重合体A−1が得られた。
【0115】
更に、2HEA(2−ヒドロキシエチルアクリレート)15.71部、p−メトキシフェノール0.0079部、ジブチルスズジラウレート0.029部、酢酸ブチル15.71部を加え90℃で1時間反応した。
【0116】
この反応により光硬化高耐候性アクリル共重合体B−1が得られた。得られたB−1は、不揮発分が50.7%で、粘度が1030mPa・s/25℃の透明溶液であり、ゲル・パーミュエーション・クロマトグラフィー(GPC)よる数平均分子量(Mn)は3990であり、重量平均分子量(Mw)は17890であり、かつ分散比Mw/Mnは4.48であった。
【0117】
[実施例2]
攪拌装置、温度計、窒素ガス導入管および還流冷却管を備えた300ml反応容器に、酢酸ブチル100部を仕込み窒素ガス雰囲気中で、95℃まで昇温しMMA7.5部、カレンズMOIを10部、RUVA−93を7.5部、AIBNを0.75部加えて、95℃で45分反応した。次に同様にMMA7.5部、カレンズMOIを10部、RUVA−93を7.5部、AIBNを0.75部加えて、95℃で45分反応した。さらにこの操作(すなわち、MMA7.5部、カレンズMOIを10部、RUVA−93を7.5部、AIBNを0.75部加えて、95℃で45分反応)を2回繰り返し4回目を加えた後95℃で1.5時間反応してAIBN 0.14部加えた。続いて45分毎にAIBN0.14部を2回加えて45分後、120℃で45分保温した後冷却した。
【0118】
これにより高耐候性アクリル共重合体A−2が得られた。更に、2HEA31.42部、p−メトキシフェノール0.0157部、ジブチルスズジラウレート0.033部、酢酸ブチル31.42部を加え90℃で1時間反応した。
【0119】
これにより光硬化高耐候性アクリル共重合体B−2が得られた。得られた共重合体B−2は、不揮発分が49.7%で、粘度が840mPa・s/25℃の透明溶液であり、ゲル・パーミュエーション・クロマトグラフィー(GPC)よる数平均分子量(Mn)は4340であり、重量平均分子量(Mw)は24250であり、かつ分散比Mw/Mnは5.59であった。
【0120】
[実施例3]
攪拌装置、温度計、窒素ガス導入管および還流冷却管を備えた300ml反応容器に、酢酸ブチル100部を仕込んで窒素ガス雰囲気中で、95℃まで昇温しMMA12.5部、GMA(グリシジルメタクリレート)5部、RUVA−93を7.5部、AIBNを0.75部加えて、95℃で45分反応した。次に同様にMMA12.5部、GMA5部、RUVA−93を7.5部、AIBNを0.75部加えて、95℃で45分反応した。さらにこの操作(すなわち、MMA12.5部、GMA5部、RUVA−93を7.5部、AIBNを0.75部加えて、95℃で45分反応)を2回繰り返し4回目を加えた後95℃で1.5時間反応してAIBN0.14部加えた。続いて45分毎にAIBN0.14部を2回加えて投入し45分後、120℃で45分保温した後冷却した。これにより高耐候性アクリル共重合体A−3が得られた。更に、98%アクリル酸10.14部、p−メトキシフェノール0.0051部、BHT(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール)0.112部、ジメチルベンジルアミン2.24部を加え110℃で3.5時間反応した後にn−ブタノール10.14を加えた。これで光硬化高耐候性アクリル共重合体B−3が得られた。得られた共重合体B−3は、不揮発分が51.4%で、粘度が2290mPa・s/25℃の透明溶液であり、ゲル・パーミュエーション・クロマトグラフィー(GPC)よる数平均分子量(Mn)は1600であり、重量平均分子量(Mw)は4830であり、かつ分散比Mw/Mnは3.02であった。
【0121】
[実施例4]
攪拌装置、温度計、窒素ガス導入管および還流冷却管を備えた300ml反応容器に、酢酸ブチル100部を仕込んで窒素ガス雰囲気中で、95℃まで昇温しMMA7.5部、GMA10部、RUVA−93を7.5部、AIBNを0.75部加えて、95℃で45分反応した。次に同様にMMA7.5部、GMA10部、RUVA−93を7.5部、AIBNを0.75部加えて、95℃で45分反応した。さらにこの操作(すなわち、MMA7.5部、GMA10部、RUVA−93を7.5部、AIBNを0.75部加えて、95℃で45分反応)を2回繰り返し4回目を加えた後95℃で1.5時間反応してAIBN0.14部加えた。続いて45分毎にAIBN0.14部を2回加えて投入し45分後、120℃で45分保温した後冷却した。
【0122】
これで高耐候性アクリル共重合体A−4が得られた。更に、98%アクリル酸20.28部、p−メトキシフェノール0.0101部、BHT0.123部、ジメチルベンジルアミン2.45部を加え110℃で5.5時間反応した後にn−ブタノール20.28部を加えた。これで光硬化高耐候性アクリル共重合体B−4が得られた。
【0123】
得られた共重合体B−4は、不揮発分が50.5%で、粘度が2780mPa・s/25℃の透明溶液であり、ゲル・パーミュエーション・クロマトグラフィー(GPC)よる数平均分子量(Mn)は1460であり、重量平均分子量(Mw)は4730であり、かつ分散比Mw/Mnは3.24であった。
【0124】
[実施例5]
攪拌装置、温度計、窒素ガス導入管および還流冷却管を備えた500ml反応容器に、酢酸ブチル100部を仕込み窒素ガス雰囲気中で、95℃まで昇温しMMA5部、カレンズMOI(昭和電工(株)製、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート)5部、RUVA−93(大塚化学社製、2−(2'−ヒドロキシ−5'−メタクリロキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール)15部、AIBNを0.75部加えて、95℃で45分反応した。次に同様にMMA5部、カレンズMOI 5部、RUVA−93を15部、AIBNを0.75部加えて、95℃で45分反応した。さらにこの操作(すなわち、MMA5部、カレンズMOI 5部、RUVA−93を15部、AIBNを0.75部加えて、95℃で45分反応)を2回繰り返し4回目を加えた後95℃で1.5時間反応してAIBN0.14部加えた。続いて45分毎にAIBN0.14部を2回加えて45分後、120℃で45分保温した後冷却した。
【0125】
これで高耐候性アクリル共重合体A−5が得られた。更に、2HEA15.71部、p−メトキシフェノール0.0158部、ジブチルスズジラウレート0.029部を加え90℃で1時間反応した。その後、酢酸ブチル16.15部を加えた。
【0126】
これで光硬化高耐候性アクリル共重合体B−5が得られた。得られた共重合体B−5は、不揮発分が51.3%で、粘度が730mPa・s/25℃の透明溶液であり、ゲル・パーミュエーション・クロマトグラフィー(GPC)よる数平均分子量(Mn)は3,530であり、重量平均分子量(Mw)は14250であり、かつ分散比Mw/Mnは4.04であった。
【0127】
[実施例6]
攪拌装置、温度計、窒素ガス導入管および還流冷却管を備えた500ml反応容器に、酢酸ブチル100部を仕込んで窒素ガス雰囲気中で、95℃まで昇温しMMA3.33部、GMA3.33部、RUVA−93を10部、AIBNを0.5部加えて、95℃で45分反応した。次に同様にMMA3.33部、GMA3.33部、RUVA−93を10部、AIBNを0.5部加えて、95℃で45分反応した。さらにこの操作(すなわち、MMA3.33部、GMA3.33部、RUVA−93を10部、AIBNを0.5部加えて、95℃で45分反応)を4回繰り返し6回目を加えた後95℃で1.5時間反応してAIBN0.14部加えた。続いて45分毎にAIBN0.14部を2回加えて投入し45分後、120℃で45分保温した後冷却した。これにより高耐候性アクリル共重合体A−6が得られた。
【0128】
更に、98%アクリル酸10.14部、p−メトキシフェノール0.0051部、BHT0.11部、ジメチルベンジルアミン2.2部を加え110℃で3.5時間反応した。その後、n−ブタノール13.15部を加えた。
【0129】
これで光硬化高耐候性アクリル共重合体B−6が得られた。得られた共重合体B−6は、不揮発分が64.6%で、粘度が1130mPa・s/25℃の透明溶液であり、ゲル・パーミュエーション・クロマトグラフィー(GPC)よる数平均分子量(Mn)は3080であり、重量平均分子量(Mw)は12110であり、かつ分散比Mw/Mnは3.93であった。
【0130】
[実施例7]
攪拌装置、温度計、窒素ガス導入管および還流冷却管を備えた500ml反応容器に、酢酸ブチル60部、n−ブタノール40部を仕込んで窒素ガス雰囲気中で、95℃まで昇温しMMA3.33部、メタクリル酸3.33部、RUVA−93を10部、AIBNを0.5部加えて、95℃で45分反応した。次に同様にMMA3.33部、メタクリル酸3.33部、RUVA−93を10部、AIBNを0.5部加えて、95℃で45分反応した。さらにこの操作(すなわち、MMA3.33部、メタクリル酸3.33部、RUVA−93を10部、AIBNを0.5部加えて、95℃で45分反応)を4回繰り返し6回目を加えた後95℃で1.5時間反応してAIBN0.14部加えた。続いて45分毎にAIBN0.14部を2回加えて投入し45分後、115℃で45分保温した後冷却した。
【0131】
これにより高耐候性アクリル共重合体A−7が得られた。更に、4HBAGE(三菱化学社製、4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル)48.84部、p−メトキシフェノール0.0244部、BHT(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール)0.149部、酢酸ブチル21.78部、ジメチルベンジルアミン1.50部を加え100℃で6時間反応した。
【0132】
これにより光硬化高耐候性アクリル共重合体B−7が得られた。得られた共重合体B−7は、不揮発分が55.1%で、粘度が1430mPa・s/25℃の透明溶液であり、ゲル・パーミュエーション・クロマトグラフィー(GPC)よる数平均分子量(Mn)は3830であり、重量平均分子量(Mw)は25090であり、かつ分散比Mw/Mnは6.55であった。
【0133】
[実施例8]
攪拌装置、温度計、窒素ガス導入管および還流冷却管を備えた500ml反応容器に、酢酸ブチル60部、n−ブタノール40部を仕込んで窒素ガス雰囲気中で、95℃まで昇温しMMA3.33部、メタクリル酸3.33部、RUVA−93を10部、AIBNを0.5部加えて、95℃で45分反応した。次に同様にMMA3.33部、メタクリル酸3.33部、RUVA−93を10部、AIBNを0.75部加えて、95℃で45分反応した。さらにこの操作(すなわち、MMA3.33部、メタクリル酸3.33部、RUVA−93を10部、AIBNを0.75部加えて、95℃で45分反応)を4回繰り返し6回目を加えた後95℃で1.5時間反応してAIBN0.14部加えた。続いて45分毎にAIBN0.14部を2回加えて投入し45分後、115℃で45分保温した後冷却した。
【0134】
これで高耐候性アクリル共重合体A−8が得られた。更に、GMA34.68部、p−メトキシフェノール0.0173部、BHT0.135部、酢酸ブチル10.19部、ジメチルベンジルアミン1.35部を加え100℃で6時間反応した。
【0135】
これで光硬化高耐候性アクリル共重合体B−8が得られた。得られたB−8は、不揮発分が54.4%で、粘度が2130mPa・s/25℃の透明溶液であり、ゲル・パーミュエーション・クロマトグラフィー(GPC)よる数平均分子量(Mn)は4090であり、重量平均分子量(Mw)は15920であり、かつ分散比Mw/Mnは3.89であった。
【0136】
上記実施例1〜8の配合組成および量比、得られた(共)重合体の溶液性状、NV,粘度、Mn、Mw、Mw/Mn等を併せて表1に示す。
【0137】
【表1】
【0138】
[実施例A1〜11、比較例A1〜6]
実施例A1〜11、比較例A1〜6では、表2〜4に示す配合成分を、当該表に示す配合比で使用して、諸物性を評価した。
結果を合わせて表2〜4に示す。なお、用いた各成分を以下に示す。
【0139】
<光硬化性樹脂組成物およびその塗膜物性等>
[1]本発明に係る光硬化性(メタ)アクリル樹脂(d1):実施例1〜8のB−1〜B−8。
【0140】
[2]本発明に係る光硬化性(メタ)アクリロイル基含有樹脂(e1):
アートレジンUN−3320HA「ウレタンアクリレート」(根上工業社製)、
Ebecryl3700「エポキシアクリレート」(ダイセル・サイテック社製)、
アロニックスM−7100「エステルアクリレート」(東亞合成社製)。
【0141】
[3]本発明で用いられる光硬化性モノマー(f1):
「ニューフロンティアPET−3」(化学名:ペンタエリスリトールトリアクリレート、第一工業製薬社製)。
「アロニックスM−400」(東亞合成社製、化学名:ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物)。
【0142】
[4]光重合開始剤(g1):
「イルガキュア184」(化学名:1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン、チバスペシャリティケミカルズ社製)。
「バイキュア55」(化学名:メチル−フェニルグリオキシレート、アクゾノーベル社製)。
「ルシリン TPO」(化学名:ジフェニル−2,4,6−トリメチルベンゾイルフォスフィンオキサイド、BASF社製)。
「KAYACURE DETX−S」(化学名:2,4−ジエチルチオキサントン、日本化薬社製)。
【0143】
[5]添加剤(レベリング剤):
「ポリフローNo.75」(共栄社化学社製)。
【0144】
[比較例]
表4に示す通り、上記実施例以外の材料を使用。
[6]紫外線吸収性化合物:
「SANDUVOR 3212 LIQUID」(クラリアントジャパン社製)。
「RUVA−93」(大塚化学社製)。
「TINUVIN400」(チバスペシャリティケミカルズ社製)。
「酸化亜鉛ペースト770」(テイカ社製)。
【0145】
[7]添加剤(光安定剤):
「TINUVIN123「HALS」(チバスペシャリティケミカルズ社製)。
[1]〜[7]を表2〜4に示す成分組成および配合比にて用い、本発明および比較例にかかわる塗料組成物を得た。
【0146】
<評価塗膜の形成>
膜厚100μmの易接着処理PETフィルム(東洋紡製コスモシャインA4300)上に、バーコーターにて乾燥膜厚7μmに調整して表2〜4の上記塗料を塗装した。
【0147】
次に80W/cm高圧水銀ランプ全反射集光ミラー1灯タイプを装着し、照射する物体までの距離が15cmの装置(IST社製)にコンベア―スピード5m/分でこの塗装フィルムを2回(積算光量 約300mJ/cm2)通過させ、紫外線を照射することにより硬化させ硬化塗膜を形成させた。
【0148】
<評価方法等>
1)塗料状態、2)塗膜状態、3)硬度、4)密着性、5)耐候性、6)透過率、7)耐スチールウール性、8)耐カール性ついて評価した。結果を表2〜4に示す。
【0149】
1)塗料状態(相溶性による白濁評価)
目視にて、3段階評価した。
3;完全に溶解し、透明な状態(合格)。
2;温度変化により、白濁及び結晶析出(不合格)。
1;白濁及び溶解しきれず結晶が沈殿している(不合格)。
【0150】
2)塗膜状態
目視にて、3段階評価した。
3;透明な塗膜を形成(合格)。
2;一応塗膜を形成しているが、一部結晶析出や変色及びブリードアウトしている(不合格)。
1;硬化不良(不合格)。
【0151】
3)硬度
JIS K5600にて硬度を3段階評価した。
3;硬度2H以上(合格)。
2;硬度B〜H(不合格)。
1;B未満(不合格)。
【0152】
4)密着性
塗膜にカッターで碁盤目(100目)にキズを入れ、セロテープ(ニチバン社製 24mm幅)を密着させた後、垂直方向にはがし、はがれを評価した。
3;100/100 (合格)。
2;80〜99/100 (不合格)。
1;0〜79/100(不合格)。
【0153】
5)耐候性
岩崎電気社製、アイスーパーUVテスター SUV−W23 で100時間暴露後、色差計(JUKI社製 JP7100F)にてΔbを測定して3段階で評価を行った。
3;黄変が少なく透明で良好。外観に大きな変化がない。Δb=2未満(合格)。
2;わずかに黄変して透明。Δb=2以上5未満(不合格)。
1;黄変して、膜及び素材が劣化。Δb=5以上(不合格)。
【0154】
6)UVカット性
日立社I製、U−3400 Spectrophotometerにて塗装フィルムを測定し、波長370nmの透過率を測定し3段階で評価を行った。
3;透過率30%以下(合格)。
2;透過率30〜50%(不合格)。
1;透過率50%以上(不合格)。
【0155】
7)耐スチールウール性
学振型摩擦試験機(荷重500g、スチールウール#0000)にて50回往復試験を行い試験後、その外観を3段階で評価を行った。
3;ほとんど傷なし(傷0〜3本)(合格)。
2;傷少量(傷4〜10本)(不合格)。
1;傷多量(傷10本以上)(不合格)。
【0156】
8)耐カール性
100mm×100mmの試験片を作製し、その2隅を押さえ、もう2隅の浮き上がりの平均値を測定し、3段階で評価を行った。
3;3cm以下(合格)。
2;3cm〜10cm(不合格)。
1;10cm以上(不合格)。
【0157】
【表2】
【0158】
【表3】
【0159】
【表4】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外線吸収性化合物骨格および(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリロイル基含有紫外線吸収性化合物(a1)と、
(メタ)アクリロイル基および非ラジカル重合性官能基を有する化合物(b2)と、
前記(メタ)アクリロイル基含有紫外線吸収性化合物(a1)、前記化合物(b2)の何れとも共重合可能な他のモノマー(c1)とを、分割添加し、ラジカル重合開始剤を使用して、最終的に所定量比となるように、複数回反応させて共重合させ、下記成分単位(A)、(B´)および(C)を含有する前駆体を形成する工程(1)と、
前記前駆体と、該前駆体中の非ラジカル重合性官能基(ii)に反応可能な官能基(i)および(メタ)アクリロイル基を有する化合物(b1)とを反応させる工程(2)とを含むことを特徴とする、下記成分単位(A)、(B)および(C)を含有する光硬化性(メタ)アクリル樹脂の製造方法;
・成分単位(A);紫外線吸収性化合物骨格と(メタ)アクリロイル基とを有する(メタ)アクリロイル基含有紫外線吸収性化合物(a1)から誘導される紫外線吸収性化合物成分単位;
・成分単位(B´):(メタ)アクリロイル基および非ラジカル重合性官能基(ii)を有する化合物(b2)から誘導され、かつ側鎖末端に非ラジカル重合性官能基(ii)を有する成分単位、
・成分単位(C);上記成分単位(A)を形成する(メタ)アクリロイル基含有紫外線吸収性化合物(a1)、および上記成分単位(B´)を形成する光重合性(メタ)アクリロイル基含有化合物を誘導する化合物(b2)の何れとも共重合可能な他のモノマー(c1)から誘導される成分単位、
・成分単位(B);上記成分単位(B´)の非ラジカル重合性官能基(ii)と、上記化合物(b1)の官能基(i)とを反応させて得られたウレタン結合またはエステル結合を介して誘導される側鎖末端に(メタ)アクリロイル基を有する光重合性(メタ)アクリロイル基含有化合物成分単位。
【請求項2】
上記工程(1)と工程(2)との間に、前記ラジカル重合開始剤の半減期が数分である高温で、45分〜2時間保温してラジカル重合開始剤を失活させる工程(1´)を実施することを特徴とする請求項1に記載の、光硬化性(メタ)アクリル樹脂の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の製造方法で得られた光硬化性(メタ)アクリル樹脂。
【請求項1】
紫外線吸収性化合物骨格および(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリロイル基含有紫外線吸収性化合物(a1)と、
(メタ)アクリロイル基および非ラジカル重合性官能基を有する化合物(b2)と、
前記(メタ)アクリロイル基含有紫外線吸収性化合物(a1)、前記化合物(b2)の何れとも共重合可能な他のモノマー(c1)とを、分割添加し、ラジカル重合開始剤を使用して、最終的に所定量比となるように、複数回反応させて共重合させ、下記成分単位(A)、(B´)および(C)を含有する前駆体を形成する工程(1)と、
前記前駆体と、該前駆体中の非ラジカル重合性官能基(ii)に反応可能な官能基(i)および(メタ)アクリロイル基を有する化合物(b1)とを反応させる工程(2)とを含むことを特徴とする、下記成分単位(A)、(B)および(C)を含有する光硬化性(メタ)アクリル樹脂の製造方法;
・成分単位(A);紫外線吸収性化合物骨格と(メタ)アクリロイル基とを有する(メタ)アクリロイル基含有紫外線吸収性化合物(a1)から誘導される紫外線吸収性化合物成分単位;
・成分単位(B´):(メタ)アクリロイル基および非ラジカル重合性官能基(ii)を有する化合物(b2)から誘導され、かつ側鎖末端に非ラジカル重合性官能基(ii)を有する成分単位、
・成分単位(C);上記成分単位(A)を形成する(メタ)アクリロイル基含有紫外線吸収性化合物(a1)、および上記成分単位(B´)を形成する光重合性(メタ)アクリロイル基含有化合物を誘導する化合物(b2)の何れとも共重合可能な他のモノマー(c1)から誘導される成分単位、
・成分単位(B);上記成分単位(B´)の非ラジカル重合性官能基(ii)と、上記化合物(b1)の官能基(i)とを反応させて得られたウレタン結合またはエステル結合を介して誘導される側鎖末端に(メタ)アクリロイル基を有する光重合性(メタ)アクリロイル基含有化合物成分単位。
【請求項2】
上記工程(1)と工程(2)との間に、前記ラジカル重合開始剤の半減期が数分である高温で、45分〜2時間保温してラジカル重合開始剤を失活させる工程(1´)を実施することを特徴とする請求項1に記載の、光硬化性(メタ)アクリル樹脂の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の製造方法で得られた光硬化性(メタ)アクリル樹脂。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2012−31434(P2012−31434A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−248843(P2011−248843)
【出願日】平成23年11月14日(2011.11.14)
【分割の表示】特願2006−64943(P2006−64943)の分割
【原出願日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【出願人】(390033628)中国塗料株式会社 (57)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月14日(2011.11.14)
【分割の表示】特願2006−64943(P2006−64943)の分割
【原出願日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【出願人】(390033628)中国塗料株式会社 (57)
【Fターム(参考)】
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