説明

光硬化樹脂硬化用照射器及びそれを備えた光硬化樹脂硬化用照射装置

【課題】 本発明は、橋脚コンクリートの壁面等に光硬化樹脂シートを被覆するような比較的広い照射範囲に適用出来る光硬化樹脂硬化用照射器及びそれを備えた光硬化樹脂硬化用照射装置を提供することを可能にすることを目的としている。
【解決手段】 方形状の枠体2と、該枠体2の両側辺に設けられ、支持体6に設けられ上下方向に配置された一対のレール7に沿って走行し得る車輪3と、枠体2の正面側に光を照射する光源体4と、該光源体4から出射される光を枠体2の正面側に反射する複数の山型反射板5とを有する構成としたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光硬化樹脂硬化用照射器及びそれを備えた光硬化樹脂硬化用照射装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、光硬化樹脂硬化用照射装置としては、例えば特開2002−12606号公報(特許文献1)の図4に示されたように、光照射装置を往復移動機能装置のスライダに取り付けて任意の高さに上下出来るように構成し、基部に取り付けられた駆動装置がスライダと連結されたチェーンを動かすことにより該スライダが2本のガイドに案内されて上下する構造としたものが提案されている。
【0003】
【特許文献1】特開2002−12606号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述の特許文献1の技術では、比較的照射範囲が狭く軽量な光照射装置の移動装置としては適用できるものの、橋脚耐震補強工事等で橋脚コンクリートの壁面に光硬化樹脂シートを被覆するような場合は比較的広い照射範囲が要求されるため光照射装置も大型化して重量が大きくなり、照射高さも高い位置まで移動させなければならないため大型の光照射装置とその移動手段が望まれていた。
【0005】
本発明は前記課題を解決するものであり、その目的とするところは、橋脚コンクリートの壁面等に光硬化樹脂シートを被覆するような比較的広い照射範囲に適用出来る光硬化樹脂硬化用照射器及びそれを備えた光硬化樹脂硬化用照射装置を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するための本発明に係る光硬化樹脂硬化用照射器は、方形状の枠体と、前記枠体の両側辺に設けられた車輪と、光源から出射される光を前記枠体の正面側に反射する複数の山型反射板と、前記山型反射板に取り付けられる光源体とからなることを特徴とする。
【0007】
また、本発明に係る光硬化樹脂硬化用照射装置の第1の構成は、前記光硬化樹脂硬化用照射器と、該光硬化樹脂硬化用照射器の枠体の両側辺に設けられた車輪が走行し得る一対のレールが上下方向に配置された支持体とを有することを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る光硬化樹脂硬化用照射装置の第2の構成は、前記光硬化樹脂硬化用照射装置の第1の構成において、前記支持体に設けられ上下方向に配置されたレールの一部から前記枠体を係止するために突出可能に設けられた係止部材を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る光硬化樹脂硬化用照射器の構成によれば、光源体と山型反射板とを設けた方形状の枠体の両側辺に設けた車輪を、支持体の上下方向に配置して設けられた一対のレールに沿って走行させることで光硬化樹脂硬化用照射器の高さを安定して移動させることが出来る。
【0010】
また、本発明に係る光硬化樹脂硬化用照射装置の第1の構成によれば、支持体に設けられ上下方向に配置された一対のレールの開放された上端部または下端部から光硬化樹脂硬化用照射器の枠体の両側辺に設けられた車輪を挿入し、該光硬化樹脂硬化用照射器を昇降手段により吊り下げて昇降させることで枠体の両側辺に設けた車輪を一対のレールに沿って走行させることで光硬化樹脂硬化用照射器の高さを安定して移動させることが出来る。
【0011】
また、本発明に係る光硬化樹脂硬化用照射装置の第2の構成によれば、支持体に設けられ上下方向に配置されたレールの一部から枠体を係止する係止部材を突出させた状態で該レールの開放された上端部または下端部から光硬化樹脂硬化用照射器の枠体の両側辺に設けられた車輪を挿入すると共に該光硬化樹脂硬化用照射器を昇降手段により吊り下げて昇降させることで、光硬化樹脂硬化用照射器が不意に落下しても所定の位置で枠体が係止部材により係止され、作業の安全を図ることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図により本発明に係る光硬化樹脂硬化用照射器及びそれを備えた光硬化樹脂硬化用照射装置の一実施形態を具体的に説明する。図1は本発明に係る光硬化樹脂硬化用照射器を示す三面図、図2は枠体の両側辺に設けられる車輪の構成を示す図、図3は上下方向に配置された一対のレールが設けられた支持体の構成を示す四面図、図4はレールの一部から突出可能に設けられた係止部材の構成を示す図、図5は係止部材により枠体が所定の高さで係止される様子を示す図である。
【0013】
図1〜図5において、1は光硬化樹脂硬化用照射器であり、角パイプ等により構成される方形状の枠体2と、該枠体2の両側辺に設けられ、角パイプ等により構成される軸組みからなる支持体6に設けられ上下方向に配置された一対の断面コ字形状のレール7に沿って走行し得るゴム製の車輪3と、枠体2の正面側に紫外線等の光を照射する長尺状の蛍光灯からなる光源体4と、該光源体4から出射される光を枠体2の正面側に反射する複数の山型反射板5とを有して構成されている。
【0014】
図5に示すように、本発明に係る光硬化樹脂硬化用照射装置10は、上述した光硬化樹脂硬化用照射器1と支持体6とにより構成される。尚、本実施形態では光源体4により紫外線を照射して紫外線硬化型の光硬化樹脂シートを硬化させる光硬化樹脂硬化用照射器1及びそれを備えた光硬化樹脂硬化用照射装置10として構成した場合の一例について説明する。
【0015】
図2に示すように、枠体2の両側辺の車輪3の近傍には断面コ字形状のレール7の起立片7bの内側に挿入されて該レール7上での車輪3の走行をガイドするガイド部材2aが溶接等により取り付けられており、該ガイド部材2aがレール7の起立片7bにより拘束されて車輪3がレール7上を安定して走行することが出来る。これにより、レール7に沿って移動する光硬化樹脂硬化用照射器1が支持体6の前後方向(図5の紙面手前側から奥側への方向)に振れる際にも枠体2がレール7から外れることがなく安定して移動することが出来る。
【0016】
支持体6に設けられ上下方向に配置された一対の断面コ字形状のレール7の上端部及び下端部はそれぞれ開放されており、該レール7の開放された上端部または下端部から図1に示す光硬化樹脂硬化用照射器1の枠体2の両側辺に設けられた車輪3を挿入し、枠体2の上辺に設けられたIボルト2bにワイヤ9を連結し、昇降手段となる電動ホイスト等により吊り下げて光硬化樹脂硬化用照射器1を昇降させることが出来る。
【0017】
図3〜図5に示すように、支持体6に設けられ上下方向に配置されたレール7の一部から該レール7に沿って下降する枠体2を係止する係止部材8が突出可能に設けられている。本実施形態の係止部材8は、図4に示すように、支持体6に上下方向に配置して設けられた一対の断面コ字形状のレール7の外側で所定の高さ位置に溶接等により取付けられた一対のナット部7aに螺合し得るボルト部8aと、該ボルト部8aに接続された軸部8bと、ボルト部8aの頭部に接続された摘み部8cとを有して構成されており、係止部材8の摘み部8cを把持してレール7の外側からナット部7a内に軸部8bを挿通し、該摘み部8cを回転させて該ナット部7aにボルト部8aを螺合締結することで、レール7の一部から該レール7に沿って下降する枠体2を係止する係止部材8を突出させることが出来る。
【0018】
図5に示すように、レール7の所定高さに設けられた一対の係止部材8を突出させた状態で該レール7の開放された上端部から光硬化樹脂硬化用照射器1の枠体2の両側辺に設けられた車輪3を挿入すると共に該光硬化樹脂硬化用照射器1を図示しない電動ホイスト等の昇降手段により吊り下げて昇降させる。
【0019】
支持体6のレール7に沿って移動する光硬化樹脂硬化用照射器1は電動ホイスト等の昇降手段を停止させることで支持体6の所定位置に固定され、橋脚コンクリートの壁面等に設けられた光硬化樹脂に所定時間停止した状態で光を照射することが出来る。
【0020】
万一、枠体2が不意に下降した場合でも図5に示すように、該枠体2の下辺が係止部材8に当接して支持され、作業の安全を図ることが出来る。
【0021】
上記構成によれば、光源体4と複数の山型反射板5とを設けた方形状の枠体2の両側辺に設けた車輪3を、支持体6の上下方向に配置して設けられた一対のレール7に沿って走行させることで光硬化樹脂硬化用照射器1の高さを安定して移動させることが出来、例えば橋脚コンクリートの壁面等に光硬化樹脂を被覆するような比較的広い照射範囲で10m近い任意の高さまで光硬化樹脂硬化用照射器1を安定して上下移動させて所定の位置に固定し、橋脚コンクリートの壁面等に設けられた光硬化樹脂に光を照射することが出来る。
【0022】
また、支持体6に上下方向に配置して設けられ上端部または下端部が開放された一対のレール7の該上端部または下端部から光硬化樹脂硬化用照射器1の枠体2の両側辺に設けられた車輪3を挿入し、該光硬化樹脂硬化用照射器1を昇降手段により吊り下げて昇降させることで枠体2の両側辺に設けた車輪3を一対のレール7に沿って走行させることで光硬化樹脂硬化用照射器1の高さを安定して移動させることが出来る。
【0023】
また、支持体6に上下方向に配置して設けられたレール7の一部から枠体2を係止する係止部材8を突出させた状態で該レール7の開放された上端部から光硬化樹脂硬化用照射器1の枠体2の両側辺に設けられた車輪3を挿入すると共に該光硬化樹脂硬化用照射器1を昇降手段により吊り下げて昇降させることで、光硬化樹脂硬化用照射器1が不意に落下しても所定の位置で枠体2の下辺が係止部材8により係止され、光硬化樹脂硬化用照射器1の下方で作業を行う場合でも作業の安全を図ることが出来る。
【0024】
また、垂直や傾斜している面に張られた光硬化樹脂シートに対して光硬化樹脂硬化用照射器1の光源体4を適切な距離を保ちながら所定時間継続して光硬化樹脂硬化用照射器1の位置を維持することが出来る。
【0025】
また、車輪3をゴム製にすることで光硬化樹脂シートの設置場所が民家に近接している場合でも光硬化樹脂硬化用照射器1の昇降時の騒音が少ない。
【0026】
また、橋脚毎に高さが異なる場合でも光硬化樹脂硬化用照射器1の昇降高さを適宜設定することが出来る。
【0027】
枠体2としては、例えば高さ2m以下の枠体2を数種類作成しておき、それらを適宜組み合わせて連結して使用することで目的の橋脚の高さに合わせて繰返し転用することが出来る。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明の活用例として、光硬化樹脂硬化用照射器及びそれを備えた光硬化樹脂硬化用照射装置に適用出来る。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係る光硬化樹脂硬化用照射器を示す三面図である。
【図2】枠体の両側辺に設けられる車輪の構成を示す図である。
【図3】上下方向に配置された一対のレールが設けられた支持体の構成を示す四面図である。
【図4】レールの一部から突出可能に設けられた係止部材の構成を示す図である。
【図5】係止部材により枠体が所定の高さで係止される様子を示す図である。
【符号の説明】
【0030】
1…光硬化樹脂硬化用照射器
2…枠体
2a…ガイド部材
2b…Iボルト
3…車輪
4…光源体
5…山型反射板
6…支持体
7…レール
7a…ナット部
7b…起立片
8…係止部材
8a…ボルト部
8b…軸部
8c…摘み部
9…ワイヤ
10…光硬化樹脂硬化用照射装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
方形状の枠体と、
前記枠体の両側辺に設けられた車輪と、
光源から出射される光を前記枠体の正面側に反射する複数の山型反射板と、
前記山型反射板に取り付けられる光源体と、
からなることを特徴とする光硬化樹脂硬化用照射器。
【請求項2】
請求項1に記載の光硬化樹脂硬化用照射器と、
前記光硬化樹脂硬化用照射器の枠体の両側辺に設けられた車輪が走行し得る一対のレールが上下方向に配置された支持体と、
を有することを特徴とする光硬化樹脂硬化用照射装置。
【請求項3】
前記支持体に設けられ上下方向に配置されたレールの一部から前記枠体を係止するために突出可能に設けられた係止部材を有することを特徴とする請求項2に記載の光硬化樹脂硬化用照射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−120941(P2008−120941A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−307932(P2006−307932)
【出願日】平成18年11月14日(2006.11.14)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】