説明

光硬化透明樹脂組成物

【課題】光カチオン重合が可能であり、高い硬化密度、優れた機械的特性、熱−機械的特性、電気的特性を有する光硬化性透明樹脂組成物を提供する。
【解決手段】ゾル−ゲル反応によって製造される光カチオン重合が可能な脂環式エポキシ基を有するオリゴシロキサン樹脂に、光硬化を促進し、粘度を制御し、且つ物理的性質て物性を改善するためにオキセタンモノマーを添加した光硬化性透明樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゾル−ゲル反応によって製造される光カチオン重合が可能な脂環式エポキシ基を有するオリゴシロキサン樹脂に、光硬化を促進し、粘度を制御し、且つ物理的性質を改善するためのオキセタンモノマーを混合した、光硬化透明樹脂組成物に関する。前記オキセタンモノマーが添加された光カチオン重合が可能な光硬化透明樹脂組成物は、速い光硬化、優れた機械的特性、熱−機械的特性、電気的特性を有する硬化物を提供する。
【背景技術】
【0002】
脂環式エポキシ基の光カチオン重合は、アクリル基の光ラジカル重合に比べて長所が多い。脂環式エポキシ基の光カチオン重合反応は、酸素に敏感でなく、リビング(living)特性を有しており、酸素に敏感で、リビング(living)特性を有しないアクリル基の光ラジカル重合反応に比べて硬化度が高い硬化物が得られ、硬化中に不活性気体に雰囲気を維持する必要がないため、より簡単な工程が可能である。このような高い硬化度を具現することができる光カチオン重合による脂環式エポキシ硬化物は、光ラジカル重合によるアクリル硬化物に比べて低い収縮率、優れた機械的、電気的特性、優れた耐化学性、様々な基板との優れた接着力など、長所を多く有しているが、脂環式エポキシ樹脂の光カチオン重合は、光ラジカル重合に比べて光硬化速度が遅く、前駆体の種類が制限されているため、産業的な利用が少ない傾向にある(Prog.Polym.Sci.,21、593−650(1996))。
【0003】
ゾル−ゲル反応によって合成される光カチオン重合が可能な脂環式エポキシ基を有するオリゴシロキサン樹脂は、シロキサンネットワークの存在により光カチオン重合が可能な脂環式エポキシ基を有するモノマー/ポリマーに比べて光カチオン重合が速いという長所を有する。また、シロキサンネットワークにより、脂環式エポキシオリゴシロキサン樹脂の硬化物は、脂環式エポキシ基を有するポリマー硬化物に比べて低い収縮率、高い熱安定性、耐化学性などの優れた特性を有する。しかし、光カチオン重合が可能な脂環式エポキシオリゴシロキサン樹脂の光カチオン重合速度は、アクリルモノマー/ポリマーの光ラジカル重合に比べてまだ不十分である。
【0004】
従って、光カチオン重合が可能な脂環式エポキシオリゴシロキサン樹脂の応用分野の拡大のために、光カチオン重合速度を改善する必要がある。また、光カチオン重合速度が増加した脂環式エポキシオリゴシロキサン樹脂の硬化物は、より高い硬化密度を有することができるため、既存の脂環式エポキシオリゴシロキサン樹脂硬化物より優れた機械的特性、熱−機械的特性、電気的特性のような優れた特性を有すると期待される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Prog.Polym.Sci.,21、593−650(1996)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記従来技術の問題点を解決するために導き出されたものであり、ゾル−ゲル反応によって製造される光カチオン重合が可能な脂環式エポキシ基を有するオリゴシロキサン樹脂に、オキセタンモノマーを添加して光硬化を促進し、粘度を制御することができ、物性を向上させることができる光硬化透明樹脂組成物及びこれを用いた光硬化透明樹脂を提供することを目的とする。
【0007】
本発明は、光カチオン重合が可能であり、高い硬化密度、優れた機械的特性、熱−機械的特性及び電気的特性を有する光硬化透明樹脂組成物及びこれを用いた光硬化透明樹脂を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために本発明は、光カチオン重合が可能な脂環式エポキシ基を有するアルコキシシラン単独、または光カチオン重合が可能な脂環式エポキシ基を有するアルコキシシランとアルコキシシランまたはシラノールとの間の、ゾル−ゲル反応によって製造される光カチオン重合が可能な脂環式エポキシ基を有するオリゴシロキサン樹脂に、速い光硬化速度、粘度制御、高い硬化密度のためのオキセタンモノマーが添加された光硬化透明樹脂を提供する。
【0009】
本発明による光カチオン重合が可能な脂環式エポキシ基を有するオリゴシロキサン樹脂は、光カチオン重合が可能な脂環式エポキシ基を有するアルコキシシラン単独、または光カチオン重合が可能な脂環式エポキシ基を有するアルコキシシランとアルコキシシランまたはシラノールとの間の、ゾル−ゲル反応により製造される。
【0010】
前記ゾル−ゲル反応によって合成された光カチオン重合が可能な脂環式エポキシ基を有するオリゴシロキサン樹脂に、オキセタンモノマーを添加することにより、オリゴシロキサン樹脂の粘度を制御することができ、光硬化速度を速くすることができ、高い硬化密度を有する硬化物を得ることができる。
【0011】
本発明の光カチオン硬化が可能な脂環式エポキシ基を有するオリゴシロキサン樹脂にオキセタンモノマーが添加された光硬化透明樹脂の硬化物は、高い硬化密度によって優れた機械的特性、熱−機械的特性、電気的特性を有する。
【0012】
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0013】
光カチオン重合が可能な脂環式エポキシ基を有するオリゴシロキサンは、ゾル−ゲル反応により製造される。下記反応式1は、光カチオン重合が可能な脂環式エポキシ基を有するオリゴシロキサンを製造するための一般的な加水ゾル−ゲル反応であって、水の存在下でアルコキシシランの加水分解−縮合反応を示したものである。
【0014】
[反応式1]




【0015】
前記反応式1から分かるように、出発物質であるアルコキシシランのアルコキシ基が水により加水分解されて水酸基を形成し、他のモノマーのアルコキシ基または水酸基と縮合反応を行ってシロキサン結合をすることにより、オリゴシロキサンを形成する。
【0016】
下記反応式2は、非加水ゾル−ゲル反応により、水の添加なしに水酸基を有するシラノールとアルコキシ基を有するアルコキシシランとの間の縮合反応を示すものである。
【0017】
[反応式2]

【0018】
前記反応式2から分かるように、出発物質であるシラノールの水酸基とアルコキシシランのアルコキシ基との縮合反応によりシロキサン結合を行うことで、オリゴシロキサンを形成する。
【0019】
前記一般的な加水ゾル−ゲル反応を用いて光カチオン重合が可能な脂環式エポキシ基を有するオリゴシロキサン樹脂を製造するために、光カチオン重合が可能な脂環式エポキシ基を有するアルコキシシラン単独または他のアルコキシシランとの混合物に水を添加する加水分解−縮合反応によりシロキサン結合が形成されるため、ゾル−ゲル反応を促進するために触媒が投入されることが好ましい。使用可能な触媒としては、酢酸、リン酸、硫酸、塩酸、硝酸、クロロスルホン酸、パラトルエン酸、卜リクロロ酢酸、ポリリン酸、ピロリン酸、ヨード酸、酒石酸、過塩素酸のような酸性触媒、またはアンモニア、水酸化ナトリウム、n−ブチルアミン、ジ−n−ブチルアミン、トリ−n−ブチルアミン、イミダゾール、過塩素酸アンモニウム、水酸化カリウム、水酸化バリウムなどのような塩基触媒、Amberite IPA−400(Cl)のようなイオン交換樹脂(ion exchange resin)が挙げられる。触媒の投入量は特に制限されず、アルコキシシラン100重量部に対して、0.0001〜10重量部を添加することが好ましい。
【0020】
前記反応は常温で6〜144時間攪拌することが好ましく、反応速度を促進し、完全な縮合反応を行うために、0〜100℃、好ましくは60〜80℃で12〜36時間加水分解−縮合反応を誘導して光カチオン重合が可能な脂環式エポキシ基を有するオリゴシロキサン樹脂を製造することができる。
【0021】
また、加水分解−縮合反応により製造された光カチオン重合が可能な脂環式エポキシ基を有するオリゴシロキサン樹脂中には、副産物であるアルコール及び反応後に残存する水が存在するが、これらは、大気圧及び減圧下で、0〜120℃、好ましくは−0.1MPa、50〜70℃の条件下で10〜60分間反応を行うことにより除去することができる。
【0022】
前記一般的な非加水ゾル−ゲル反応を用いて光カチオン重合が可能なエポキシオリゴシロキサン樹脂を製造するために、光カチオン重合が可能な脂環式エポキシ基を有するアルコキシシランのアルコキシ基とシラノールの水酸基との間の縮合反応により光カチオン重合が可能な脂環式エポキシ基を有するオリゴシロキサンが形成されるため、反応温度を低め、ゾル−ゲル反応を促進するための触媒を投入することが好ましい。使用可能な触媒としては、水酸化バリウム、水酸化ストロンチウムなどのような水酸化金属が挙げられる。触媒の投入量は特に制限されず、全体シランの0.0001〜10重量部を添加することが好ましい。前記反応は、常温で2〜72時間程度攪拌し、反応速度を促進して完全な縮合反応を行うために、0〜100℃、好ましくは60〜80℃で2〜6時間縮合反応を誘導してシロキサン結合を形成することができる。
【0023】
本発明は、前記製造された光カチオン重合が可能な脂環式エポキシ基を有するオリゴシロキサン樹脂の粘度を制御し、光硬化速度を増加し、高い硬化密度の硬化物を得るために、光カチオン重合が可能な脂環式エポキシ基を有するオリゴシロキサン樹脂にオキセタンモノマーを含む。
【0024】
光カチオン重合が可能な脂環式エポキシ基を有するオリゴシロキサン樹脂に添加されたオキセタンモノマーの添加量は制限されないが、高い硬化密度を有した硬化物を得るために、樹脂に対して0.5〜2.0当量比でオキセタンモノマーを添加することが好ましい。
【0025】
前記光カチオン重合が可能な脂環式エポキシ基を有するアルコキシシランは、下記化学式1から1種以上の物質を選択して用いることができる。
【0026】
[化学式1]

【0027】
(前記化学式1中、Rは、脂環式エポキシ基であり、Rは、直鎖または分岐鎖の(C1〜C7)アルキルであり、nは、1〜3の整数である。)
【0028】
より具体的に、前記光カチオン重合が可能な脂環式エポキシ基を有するアルコキシシランは、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシランで構成された群から選択される1種以上を用いることができるが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0029】
前記アルコキシシランまたはシラノールは、下記化学式2から1種以上の物質を選択して用いることができる。
【0030】
[化学式2]

【0031】
(前記化学式2中、Rは、(C1〜C20)アルキル、(C3〜C8)シクロアルキル、(C3〜C8)シクロアルキルで置換された(C1〜C20)アルキル、(C2〜C20)アルケニル、(C2〜C20)アルキニル及び(C6〜C20)アリールからなる群から選択される1種以上またはアクリル基、メタクリル基、アリル基、ハロゲン基、アミノ基、メルカプト基、エーテル基、エステル基、(C1〜C20)アルコキシ基、スルホン基、ニトロ基、ヒドロキシ基、シクロブテン基、カルボニル基、カルボキシル基、アルキド基、ウレタン基、ビニル基、ニトリル基、エポキシ基、オキセタン基及びフェニル基からなる群から選択される1種以上の官能基を含み、Rは、直鎖または分岐鎖の(C1〜C7)アルキルまたは水素であり、nは、0〜3の整数である。)
【0032】
より具体的に、前記アルコキシシランまたはシラノールは、トリフェニルシラノール、フェニルトリシラノール、ジフェニルシランジオール、ジイソブチルシランジオール、トリフェニルメトキシシラン、トリフェニルエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ジイソブチルジメトキシシラン、ジイソブチルジエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、プロピルエチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリプロポキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、N−(3−アクリルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(3−アクリルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(3−アクリルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)−3−アミノプロピルトリプロポキシシラン、3−アクリルオキシプロピルメチルビス(トリメトキシ)シラン、3−アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリルオキシプロピルトリプロポキシシラン、3−(メタ)アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリルオキシプロピルトリプロポキシシラン、N−(アミノエチル−3−アミノプロピル)トリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル−3−アミノプロピル)トリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、クロロプロピルトリメトキシシラン、クロロプロピルトリエトキシシラン及びヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシランからなる群から選択される1種以上を用いることができるが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0033】
前記オキセタンモノマーは、少なくとも一つ以上のオキセタン基を含むモノマーから1種以上選択され、好ましくは下記化学式3の構造を含むオキセタンモノマーであることを特徴とする。
【0034】
[化学式3]

【0035】
(前記化学式3中、Rは、水素、(C1〜C20)アルキル、(C3〜C8)シクロアルキル、(C3〜C8)シクロアルキルで置換された(C1〜C20)アルキル、(C2〜C20)アルケニル、(C2〜C20)アルキニル及び(C6〜C20)アリールからなる群から選択される。)
【0036】
より具体的には、前記オキセタン基を有するモノマーは、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、2−エチルヘキシルオキセタン、キシレンビスオキセタン、3−エチル−3[[3−エチルオキセタン−3−ニル]メトキシ]メチル]オキセタンからなる群から選択される1種以上を含む。
【0037】
本発明において、オキセタンモノマーと光カチオン重合が可能な脂環式エポキシ基を有するオリゴシロキサン樹脂が混合した光硬化透明樹脂の光カチオン重合のために、光カチオン重合光開始剤を含むことが好ましい。
【0038】
前記光カチオン重合光開始剤の添加量は、オキセタンモノマーが添加された光カチオン重合が可能な光硬化透明樹脂100重量部に対して、0.1〜10重量部を添加することが好ましい。
【0039】
前記光カチオン重合光開始剤は、オニウム塩、有機金属塩などを用いることができるが、これに限定されるものではない。詳細には、ジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩、アリールジアゾニウム塩、鉄−アレン複合体などを用いることができるが、これに限定されるものではない。
【0040】
より詳細には、前記光カチオン重合光開始剤は、アリールスルホニウムヘキサフルオロアンチモニウム塩、アリールスルホニウムヘキサフルオロホスフェート塩、ジフェニルジヨードニウムヘキサフルオロホスフェート塩、ジフェニルジヨードニウムヘキサアンチモニウム塩、ジトリルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート塩、9−(4−ヒドロキシエトキシフェニル)チアントレニウムヘキサフルオロホスフェート塩からなる群から選択される1種以上を含む。
【0041】
また、前記オキセタンモノマーが添加された光カチオン重合が可能な光硬化透明樹脂が光カチオン重合段階を経て形成される場合、前記段階以降に熱処理段階を含むことができる。前記熱処理段階を経ることにより、光カチオン重合のリビング(living)特性によってオリゴシロキサン樹脂硬化物のより高い硬化密度を達成することができる。前記熱処理段階は、250℃以下、具体的には、50〜250℃で行うことができ、前記熱処理段階は、150℃以下、具体的には50〜150℃で行うことが好ましい。前記熱処理段階の温度が250℃以上の高温である場合には、有機官能基間の結合鎖を破壊する可能性があり、温度が低すぎる場合には、光カチオン重合のリビング(living)特性がよく発現されない可能性がある。
【発明の効果】
【0042】
本発明の光カチオン重合が可能な脂環式エポキシ基を有するシロキサン樹脂に、オキセタンモノマーを添加することにより、粘度を制御することができ、光硬化速度を高めることができる。従って、オキセタンが添加された光硬化透明樹脂の低い粘度によって優れた加工特性を得ることができ、速い光硬化速度によって硬化物の高い硬化密度を得ることができるという長所がある。本発明によるオキセタンが添加された光カチオン重合が可能な光硬化透明樹脂は、優れた機械的特性、熱−機械的特性、電気的特性を示すことができるため、産業全般に適用されることができるという長所がある。
【発明を実施するための形態】
【0043】
本発明を以下の実施例によって説明する。しかし、これは本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0044】
<実施例1>
2−(3,4−エポキシシクルロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(ECTMS、Gelest社製):ジフェニルシランジオール(DPSD、Gelest社製)を12.32g:10.82g(0.05mol:0.05mol)の割合で混合して100mlの二口フラスコに入れた。その後、前記混合物に0.02g(シランに対して0.1mol%)の水酸化バリウムを触媒として添加し、80℃で4時間窒素パージ下で攪拌した。4時間のゾル−ゲル反応後に得た樹脂を0.45μmのテフロンフィルタ(Teflon filter)を用いて濾過した後、脂環式エポキシオリゴシロキサン樹脂を得た。次に、3−エチル−3[[3−エチルオキセタン−3−イル]メトキシ]メチル]オキセタンを樹脂に対して20重量部(当量比1:1)添加し、光硬化触媒としてアリールスルホニウムヘキサフルオロアンチモニウム塩を混合された樹脂に対して2重量部を添加してから3時間攪拌した後、粘度を測定した。製造された試料を365nm波長の紫外線ランプに3分間露出して光硬化度を確認した。光硬化が完全に完了した後、150℃の温度で2時間熱硬化を行って電気的特性、熱−機械的特性、機械的特性を評価した。
【0045】
<実施例2>
2−(3,4−エポキシシクルロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(ECTMS、Gelest社製):ジフェニルジメトキシシラン(DPDMS、Aldrich社製)を12.32g:10.82g(0.05mol:0.05mol)の割合で混合して100mlの一口フラスコに入れた。その後、前記混合物に水2.7gを添加して1gのAmberite IPA−400(Cl)を触媒として添加し、80℃で24時間還流下で攪拌した。24時間のゾル−ゲル反応後に得た樹脂を減圧蒸発器を用いて−0.1MPaの圧力と60℃の温度で樹脂中の水とメタノールを除去した。その後、0.45μmのテフロンフィルタ(Teflon filter)を用いて濾過した後、脂環式エポキシオリゴシロキサン樹脂を得た。次に、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタンを樹脂に対して20重量部(当量比1:1)添加し、光硬化触媒として9−(4−ヒドロキシエトキシフェニル)チアントレニウムヘキサフルオロアンチモニウム塩を混合された樹脂に対して2重量部添加してから3時間攪拌した後、粘度を測定した。製造された試料を365nm波長の紫外線ランプに3分間露出して光硬化度を確認した。光硬化が完全に完了した後、150℃の温度で2時間熱硬化を行って電気的特性、熱−機械的特性、機械的特性を評価した。
【0046】
<実施例3>
2−(3,4−エポキシシクルロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(ECTMS、Gelest社製)24.63g(0.1mol)を100mlの一口フラスコに入れた。その後、前記混合物に水2.7gを添加して1gのAmberite IPA−400(Cl)(Aldrich社製)を触媒として添加し、80℃で24時間還流下で攪拌した。24時間のゾル−ゲル反応後に得た樹脂を減圧蒸発器を用いて−0.1MPaの圧力と60℃の温度で樹脂中の水とメタノールを除去した。その後、0.45μmのテフロンフィルタ(Teflon filter)を用いて濾過した後、脂環式エポキシオリゴシロキサン樹脂を得た。次に、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタンを樹脂に対して60重量部(当量比1:1)添加し、光硬化触媒として9−(4−ヒドロキシエトキシフェニル)チアントレニウムヘキサフルオロアンチモニウム塩を混合された樹脂に対して2重量部添加してから3時間攪拌した後、粘度を測定した。製造された試料を365nm波長の紫外線ランプに3分間露出して光硬化度を確認した。光硬化が完全に完了した後、150℃の温度で2時間熱硬化を行って電気的特性、熱−機械的特性、機械的特性を評価した。
【0047】
<比較例1>
2−(3,4−エポキシシクルロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(ECTMS、Gelest社製):ジフェニルシランジオール(DPSD、Gelest社製)を12.32g:10.82g(0.05mol:0.05mol)の割合で混合して100mlの二口フラスコに入れた。その後、前記混合物に0.02g(シランに対して0.1mol%)の水酸化バリウムを触媒として添加し、80℃で4時間窒素パージ下で攪拌した。4時間のゾル−ゲル反応後に得た樹脂を0.45μmのテフロンフィルタ(Teflon filter)を用いて濾過した後、脂環式エポキシオリゴシロキサン樹脂を得た。光硬化触媒としてアリールスルホニウムヘキサフルオロアンチモニウム塩を混合された樹脂に対して2重量部添加してから3時間攪拌した後、粘度を測定した。製造された試料を365nm波長の紫外線ランプに3分間露出して光硬化度を確認した。光硬化が完全に完了した後、150℃の温度で2時間熱硬化を行って電気的特性、熱−機械的特性、機械的特性を評価した。
【0048】
<比較例2>
2−(3,4−エポキシシクルロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(ECTMS、Gelest社製):ジフェニルジメトキシシラン(DPDMS、Aldrich社製)を12.32g:10.82g(0.05mol:0.05mol)の割合で混合して100mlの一口フラスコに入れた。その後、前記混合物に水2.7gを添加して1gのAmberite IPA−400(Cl)を触媒として添加し、80℃で24時間還流下で攪拌した。24時間のゾル−ゲル反応後に得た樹脂を減圧蒸発器を用いて−0.1MPaの圧力と60℃の温度で樹脂中の水とメタノールを除去した。その後、0.45μmのテフロンフィルタ(Teflon filter)を用いて濾過した後、脂環式エポキシオリゴシロキサン樹脂を得た。光硬化触媒として9−(4−ヒドロキシエトキシフェニル)チアントレニウムヘキサフルオロアンチモニウム塩を混合された樹脂に対して2重量部添加してから3時間攪拌した後、粘度を測定した。製造された試料を365nm波長の紫外線ランプに3分間露出して光硬化度を確認した。光硬化が完全に完了した後、150℃の温度で2時間熱硬化を行って電気的特性、熱−機械的特性、機械的特性を評価した。
【0049】
<比較例3>
2−(3,4−エポキシシクルロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(ECTMS、Gelest社製)24.63g(0.1mol)を100mlの一口フラスコに入れた。その後、前記混合物に水2.7gを添加して1gのAmberite IPA−400(Cl)(Aldrich社製)を触媒として添加し、80℃で24時間還流下で攪拌した。24時間のゾル−ゲル反応後に得た樹脂を減圧蒸発器を用いて−0.1MPaの圧力と60℃の温度で樹脂中の水とメタノールを除去した。その後、0.45μmのテフロンフィルタ(Teflon filter)を用いて濾過した後、脂環式エポキシオリゴシロキサン樹脂を得た。光硬化触媒として9−(4−ヒドロキシエトキシフェニル)チアントレニウムヘキサフルオロアンチモニウム塩を混合された樹脂に対して2重量部添加してから3時間攪拌した後、粘度を測定した。製造された試料を365nm波長の紫外線ランプに3分間露出して光硬化度を確認した。光硬化が完全に完了した後、150℃の温度で2時間熱硬化を行って電気的特性、熱−機械的特性、機械的特性を評価した。
【0050】
<試験例>
前記実施例及び比較例から得られたサンプルの物性を下記の方法で評価し、その結果を表1に示す。
【0051】
[粘度]
Brookfield社のRheometer RVDV−III+を用いて摂氏25℃での粘度を測定した。
【0052】
[光硬化度]
樹脂を365nm波長の紫外線ランプに3分間露出後、JASCO社のFT−IR460PLUSを用いてFT−IRスペクトルを得た後、フェニル基とエポキシ基との間の割合を用いてConversion Degree(光硬化度、%)を計算した。
【0053】
[リーク電流]
Keithley社のKeithley237を用いて得たI−V曲線を用いて1MV/cmでのリーク電流を測定した。
【0054】
[曲げ弾性率(Flexural Modulus)]
Instron Corporation社の万能試験機(Universal Testing Machine)(Model:INSTRON 5583)を用いてASTM D790−92により製造されたサンプルを用いて3点曲げ試験(3−point bending test)を行って曲げ弾性率(Flexural Modulus)を測定した。
【0055】
[熱膨脹係数]
Seiko Instrument社の熱応力分析器(Thermomechanical analyzer)Extar6000を用いて窒素雰囲気下で5℃/分の昇温率で225℃まで加熱しながら100℃〜150℃の温度範囲での値を測定した。100mNの荷重と20Hzの周波数を用いた。
【0056】
【表1】

【0057】
前記表1から分かるように、実施例1〜実施例3を比較例1〜比較例3と比較すると、オキセタンモノマーが添加されている光カチオン重合が可能な光硬化シロキサン樹脂の粘度は1/10以下に減少し、光硬化度は高い塩基度を有するオキセタンモノマーの速い増殖(propagation)効果によって20〜40%増加したことが確認できた。また、オキセタンモノマーが添加されている光カチオン重合が可能な光硬化シロキサン樹脂で製造された硬化物のリーク電流は、オキセタンモノマーがない場合に比べて半分以下に減少したことが確認できた。曲げ弾性率(Flexural Modulus)は、約100〜200MPa増加し、熱膨脹係数もまた約15〜20ppm/℃程度減少したことが確認できた。これは、本発明によるオキセタンモノマーの添加による高い硬化密度によって現われる効果を示すものである。
【0058】
前記実施例及び比較例の結果により、本発明によるゾル−ゲル反応によって製造される光カチオン重合が可能な脂環式エポキシ基を有するオリゴシロキサン樹脂にオキセタンモノマーを添加した光硬化透明樹脂は、速い光カチオン重合速度を有し、低い粘度を有しており、従来の脂環式エポキシオリゴシロキサンが有する低い光カチオン重合度及び低い工程性を解決することができる。また、光カチオン重合が可能な脂環式エポキシ基を有するオリゴシロキサン樹脂にオキセタンモノマーを添加した光硬化透明樹脂により得られる硬化物は、高い硬化密度、優れた機械的特性、熱−機械的特性、電気的特性を有するため、光ラジカル重合のアクリルモノマー/ポリマーが用いられる光学及びディスプレイのような様々な分野の応用を代替することができると期待される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂環式エポキシ基を有するオリゴシロキサン樹脂、オキセタンモノマー及びカチオン光重合開始剤を含む光硬化透明樹脂組成物。
【請求項2】
脂環式エポキシ基を有するオリゴシロキサン樹脂が、脂環式エポキシ基を有するアルコキシシラン単独、または脂環式エポキシ基を有するアルコキシシランとアルコキシシランまたはシラノールとの間の、加水または非加水ゾル−ゲル反応により製造される請求項1に記載の光硬化透明樹脂組成物。
【請求項3】
脂環式エポキシ基を有するアルコキシシランが、下記化学式1の物質から選択される1種以上である請求項2に記載の光硬化透明樹脂組成物。
[化学式1]

(前記化学式1中、Rは、脂環式エポキシ基であり、Rは、直鎖または分岐鎖の(C1〜C7)アルキルであり、nは、1〜3の整数である。)
【請求項4】
アルコキシシランまたはシラノールが、下記化学式2の物質から選択される1種以上である請求項2に記載の光硬化透明樹脂組成物。
[化学式2]

(前記化学式2中、Rは、(C1〜C20)アルキル、(C3〜C8)シクロアルキル、(C3〜C8)シクロアルキルで置換された(C1〜C20)アルキル、(C2〜C20)アルケニル、(C2〜C20)アルキニル及び(C6〜C20)アリールからなる群から選択される1種以上またはアクリル基、メタクリル基、アリル基、ハロゲン基、アミノ基、メルカプト基、エーテル基、エステル基、(C1〜C20)アルコキシ基、スルホン基、ニトロ基、ヒドロキシ基、シクロブテン基、カルボニル基、カルボキシル基、アルキド基、ウレタン基、ビニル基、ニトリル基、エポキシ基、オキセタン基及びフェニル基からなる群から選択される1種以上の官能基を含み、Rは、直鎖または分岐鎖の(C1〜C7)アルキルまたは水素であり、nは、0〜3の整数である。)
【請求項5】
オキセタンモノマーが、脂環式エポキシ基を有するオリゴシロキサン樹脂に対して0.5〜2.0当量比である請求項1に記載の光硬化透明樹脂組成物。
【請求項6】
オキセタンモノマーが、少なくとも一つ以上のオキセタン基を含むモノマーであって、下記化学式3の構造を含む請求項1に記載の光硬化透明樹脂組成物。
[化学式3]

(前記化学式3中、Rは、水素、(C1〜C20)アルキル、(C3〜C8)シクロアルキル、(C3〜C8)シクロアルキルで置換された(C1〜C20)アルキル、(C2〜C20)アルケニル、(C2〜C20)アルキニル及び(C6〜C20)アリールからなる群から選択される。)
【請求項7】
ゾル−ゲル反応が、酸触媒、塩基触媒、イオン交換樹脂(ion exchange resin)または水酸化金属触媒の存在下で行われる請求項1に記載の光硬化透明樹脂組成物。
【請求項8】
カチオン光重合開始剤が、オニウム塩または有機金属塩を含む請求項1に記載の光硬化透明樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の光硬化透明樹脂組成物を光硬化し、50〜200℃で熱処理して製造される光硬化透明樹脂。

【公開番号】特開2012−180505(P2012−180505A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−7313(P2012−7313)
【出願日】平成24年1月17日(2012.1.17)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
2.TEFLON
【出願人】(592127149)韓国科学技術院 (129)
【氏名又は名称原語表記】KOREA ADVANCED INSTITUTE OF SCIENCE AND TECHNOLOGY
【住所又は居所原語表記】373−1,Gusung−dong,Yuseong−ku,Daejeon 305−701 KR
【Fターム(参考)】