説明

光磁気記憶媒体

本発明は、透明および不透明領域を含み、情報が保管される情報層(11)と、少なくとも一つの磁化領域を有するように設計された磁化層(12)であって、前記少なくとも一つの磁化領域は、光スポットが前記情報層の対応する透明領域を透過した際に一時的に形成される、磁化層と、を有する記憶媒体(10)に関する。また本発明は、そのような記憶媒体(10)の情報を読み取る読み取り装置に関する。前記読み取り装置は、入力光ビーム(21)から光スポットの配列を生じさせる光学素子(23)であって、光スポットが、前記情報層(11)の前記対応する透明領域を通過した場合、前記磁化層(12)内に、前記磁化領域が一時的に形成されるように設計された、光学素子と、センサ素子の配列を有し、前記少なくとも一つの磁化領域を検出する磁気センサ(24)と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報を保管するように設計された情報層を有する記憶媒体に関する。
【0002】
また本発明は、そのような記憶媒体の情報を読み取る装置に関する。
【0003】
本発明は、例えば光データ記憶の分野で利用される。
【背景技術】
【0004】
近年、コンテンツ配布のため、例えばDVD(デジタル多用途ディスク)標準規格に基づく記憶システムのような光記憶の利用が普及してきている。従来の光記憶システムの利点は、記憶媒体が比較的安価で容易に複製できることである。
【0005】
しかしながら、そのような従来の光記憶システムでは、情報層からデータを読み取る場合、CCD(電荷結合装置)またはCMOS(相補型金属酸化物半導体)画像センサが必要となる。該センサは、従来の光記憶システムにおいて最も高額な部品の一つである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、従来の記憶システムに比べて安価な記憶システムを提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題のため、本発明による記憶媒体は、
透明および不透明領域を有し、情報が保管される情報層と、
少なくとも一つの磁化領域を有するように設計された磁化層であって、前記少なくとも一つの磁化領域は、光スポットが前記情報層の対応する透明領域を透過した際に一時的に形成される、磁化層と、
を有することを特徴とする。
【0008】
また本発明は、そのような記憶媒体から情報を読み取る装置に関し、当該装置は、
入力光ビームから光スポットの配列を生じさせる光学素子であって、光スポットが前記情報層の前記対応する透明領域を通過した際に、前記磁化層内に、一時的に前記磁化領域が形成されるように設計された光学素子と、
前記少なくとも一つの磁化領域を検出するセンサ素子の配列を有する磁気センサと、
を有する。
【0009】
このように、本発明による記憶システムでは、CMOSまたはCCD画像センサの代わりに磁気センサが使用されるため、本記憶システムは、従来の光記憶システムに比べてより簡単で安価となる。
【0010】
本発明の実施例では、さらに当該記憶媒体は、磁化領域が対応する透明領域よりも大きくなる分離層を有する。その結果、そのような拡大効果のため、磁気センサは、情報層の解像度よりも低い解像度とすることができる。
【0011】
本発明の別の実施例では、情報層は、透明および不透明領域を有し、情報が保管される情報層であることが好ましく、対応する読み取り装置は、
入力光ビームから光スポットの配列を生じさせる光学素子と、
少なくとも一つの磁化領域を有するように設計された磁化層であって、前記少なくとも一つの磁化領域は、光スポットが前記情報層の対応する透明領域を通過した際に一次的に形成される、磁化層と、
前記少なくとも一つの磁化領域を検出するセンサ素子の配列を有する磁気センサと、
を有する。
【0012】
この場合、磁化層は、記憶媒体の一部ではなく、読み取り装置の一部となり、記憶システムの対コスト効果をより高めることが可能となる。
【0013】
本発明のこれらのおよび他の態様は、以下の実施例を参照することにより明らかとなろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、一例として添付図面を参照して本発明をより詳しく説明する。
【0015】
現在、従来の光記憶システムに替わる記憶システムが開発されている。将来、個体媒体は、コンテンツの配布用としてはあまり安価ではなくなることが予想され、新たな専用技術が、従来の光記憶に置き換わっていくものと考えられている。
【0016】
国際特許出願第03/04312号(代理人管理番号PHNL021405)には、磁気記憶システムが示されている。このシステムは、例えば、磁気再生専用メモリMROMシステムである。そのような記憶システムは、パターン化された磁気記憶媒体および読み取り装置を有する。記憶媒体は、情報層を有するカード型であり、この情報層には、ビット配列を構成する電磁気材料のパターンが設けられる。情報層内の前記電磁気材料の有無は、ビットの値を表す。対応する読み取り装置は、情報層と協働するインターフェース表面を有し、このインターフェース表面には、電磁気センサ素子の配列が設けられ、この電磁気センサ素子は、電磁気材料の存在を検知する。また対応する読み取り装置は、センサ素子と対応ビットの間の近接場作動距離内の、ビット位置近傍にセンサ素子を設置するための位置合わせ手段を有する。
【0017】
しかしながら、ビットの寸法が小さいため、センサと情報層の間の間隔は、小さくしなければならない。換言すれば、情報層とセンサの間の間隔は、ビット寸法と同等、すなわち500nm未満にする必要がある。この場合、システムは、コンタミネーションに対して極めて敏感になる。本願では、この問題に対処するための新たな記憶システムが提案される。
【0018】
図1は、本発明による記憶媒体10の詳細図である。前記記憶媒体は、情報層11、磁化層12および両者の間の分離層16を有する。
【0019】
情報は、情報層11において符号化される。例えば、情報層は、高分子材料で構成され、データビット配列により体系化されたバイナリデータを保管するように設計されている。情報担体に保管されたバイナリデータの状態は、透明または半透明領域および不透明領域(すなわち、光吸収領域)によって表される。情報層は、当業者には公知の従来の原理によって、複製または印刷される。
【0020】
情報層は、例えば、マクロセル内に配置されたデータビット配列を有し、マクロセルは、以降に詳細を示すように、単一の光スポットで読み取られるように設計されている。
【0021】
磁化層に使用される技術は、例えばMAMMOS(磁区拡大光磁気システム)超解像システムで使用されるものの同じである。前記技術は、阿波野らのアプライドフィジックスレター(Appl. Phys. Lett.)、69巻、No27、p4257-4259、1996年に示されている。
【0022】
磁化層12は、室温での磁化がほぼゼロで、高温で層が磁化するフェリ磁性材料を含む。そのような材料は、例えばGdFeCo等のフェリ磁性希土類遷移金属(RE-TM)合金である。情報層のデータビットが透明な場合、透過した光スポットは、磁化層を加熱し、これを磁化させる。熱プロファイルは、長手方向の軸xの関数としての磁化強度IMの変化を表す曲線13に示されている。得られた磁化は、磁化領域14で示されている。光の回折によって、磁化層での光スポット17が、情報層の対応透明領域15より大きくなることに留意する必要がある。従って、磁化層内の磁化領域14の寸法は、情報層11の対応透明領域15の寸法よりも大きくなる。
【0023】
入射光によって磁化層内に生じた磁化領域は、面内のまたは垂直な磁気異方性を示しても良い。一般に、磁化領域が垂直磁化を有する磁化層が好ましい。
【0024】
分離層16は、光を透過するように適合された材料、例えば透明または半透明高分子で構成される。分離層の厚さは、所望の達成拡大率(すなわち、透明領域の寸法に対する磁化領域の寸法の比)に依存する。
【0025】
分離層は、本発明の本質的部分ではないこと、および磁化領域の寸法を実質的に透明領域の寸法と等しくする場合、情報層は、磁化層と接していても良いことに留意する必要がある。
【0026】
図2は、本発明による、記憶媒体に保管されたデータを読み取るための読み取り装置の概略図である。
【0027】
読み取り装置は、光源から供給されるコヒーレントな入力光ビーム21から、光スポット配列を生じさせる光学素子23を有し、前記光スポット配列は、記憶媒体10を走査するように設計されている。この特徴的構成によって、データの並列読み出しが可能となる。入力光ビーム21は、例えば、導波管によって入力レーザービームを拡張することによって得られる。
【0028】
本発明の実施例(図示されていない)では、光学素子は、マイクロレンズの二次元配列に対応する。マイクロレンズ配列は、記憶媒体と平行に、記憶媒体から離して設置され、光スポットは、前記記憶媒体上に集束される。マイクロレンズの開口数および品質によって、光スポットの寸法が定まる。
【0029】
本発明の別の実施例では、光学素子は、開口の二次元配列に対応する。開口は、例えば直径1μmまたはこれ未満の円形孔に対応する。この場合、タルボット効果を利用した開口配列によって、光スポットの配列が生じる。タルボット効果は、回折現象の一つであり、以下のように機能する。入力光ビームのような、同じ波長の多数のコヒーレントな放射光が、開口配列等の周期回折構造を有する対象物に入射された場合、回折光は、回折構造から予想距離z0の位置に設置された平面に、放射光の同一像を再形成する。この距離z0は、タルボット距離として知られている。タルボット距離z0は、z0=2・n・d2/λの関係式によって表される。ここでdは、光エミッタの周期間隔、λは、入力光ビームの波長、nは、伝播空間の屈折率である。より一般的には、再結像は、エミッタからさらに離れた他の距離z(m)で生じ、これは、タルボット距離zの倍数であり、z(m)=2・n・m・d2/λとなる。ここでmは、整数である。また、そのような再結像は、m=1/2+整数でも生じるが、この場合、像は、半周期以上シフトする。また再結像は、m=1/4+整数、および3/4+整数でも生じるが、この像は、二重周波数を有し、これは、開口周期が開口配列の周期の半分であることを意味する。
【0030】
タルボット効果を利用することによって、開口配列から比較的遠い距離(数百μm、z(m)で表される)に、高品質の光スポット配列が生じ、光学レンズの必要性がなくなる。これにより、例えば開口配列と情報層の間に、被覆層を挿入することが可能となり、情報層が(例えば、埃、指紋で)汚染されることを防止することができる。またこの場合、実施が容易となり、マイクロレンズ配列を用いる場合に比べて対コスト効果のある方法で、情報層に適用される光スポット密度を増大させることが可能となる。
【0031】
現在のMAMMOSシステムの問題は、記録時に5〜8mW(ピーク値、パルス作動の場合、平均パワーは、2〜3mWにまで低下する)の単一スポットのレーザーパワーが、読み取り時には、1〜2mWとなることである。本願で提案する並列読み出しの場合、全パワーが、全ての平行光スポットに分配されるため、単位スポット当たりのレーザーパワーは、抑制される。
【0032】
さらに読み取り装置は、入力光ビーム21の光路に設置された位相変調器22を有する。従って、位相変調器22で定められた位相プロファイルを入力光ビーム21に適用することにより、および位相プロファイルを変化させることにより、非機械式走査が可能となる。位相変調器22によって、入力光ビーム21の位相は、横方向の距離に対して変化する。また位相変調器22は、光学素子23と記憶媒体10の間に設置しても良いことに留意する必要がある。
【0033】
位相変調器22が作動して、位相φ(x)が水平位置xに対して線形的に変化する場合、水平x軸に沿った光スポット配列に、水平方向のシフトΔxが生じる。この位相φ(x)は、以下の式で表される:
【0034】
【数1】

ここでλは、入力光ビーム21の波長であり、bは、可変パラメータである。
【0035】
位相変調器22によって、式(1)で定義される位相プロファイルが生じる場合、光スポット配列の水平方向のシフトxは、以下の式で表される:
【0036】
【数2】

ここで、Zは、タルボット距離z0、前記タルボット距離z0の倍数、または副倍数に対応する一定値である。
【0037】
パラメータbによって、水平方向のシフトΔxの変化を考慮して、位相プロファイルの線形因子を修正することができる。パラメータbの各値に対して、異なる位相プロファイルが定められる。パラメータbの変化の結果として、x方向にスポットのシフトが生じる。
【0038】
記憶媒体10の表面全体での走査のため、スポット配列の各光スポットによって、情報層の各マクロセルの走査を行う必要がある。従ってマクロセルの走査は、二次元走査に対応する。この二次元走査は、第1の軸xと第2の軸yによる線形位相変調を同時に定めることにより行われ、x軸による線形位相プロファイルと、y軸による線形位相プロファイルとの線形組み合わせによって、定められた位相プロファイルが得られる。マクロセルの走査法については、以降に詳細に説明する。
【0039】
位相変調器22は、マイクロレンズ配列に対応した制御可能な液晶(LC)セルを有することが好ましい。例えば、ピクセル化直線ネマチックLCセルが使用され、開口配列の各開口が独自のLCセルを有し、独自の位相φ(x)が得られる。従って、位相変換器は、LCセルの二次元配列に対応する。ネマチック材料は、電場および磁場によって配列させることができ、相変化が生じる。
【0040】
光学素子23によって生じる光スポット配列は、記憶媒体10の情報層11に照射される。情報層が透明な場合、透過した光は、曲線13に示される熱プロファイルで磁化層を加熱し、これにより、図1に示すように、磁化層内の比較的広い磁化領域で磁化が生じる。
【0041】
さらに、本発明による読み取り装置は、磁気センサ24を有し、このセンサは、磁化領域を読み取るセンサ素子配列を有する。前記磁気センサは、例えばTMR(トンネル磁気抵抗)センサまたはGMR(巨大磁気抵抗)センサである。
【0042】
そのようなセンサを用いて抵抗が測定されることにより、多層化スタックにおいて検出される磁気抵抗現象に基づいて、読み取りが行われる。巨大磁気抵抗GMR効果は、大きな磁気抵抗効果(5乃至15%)を示すため、出力信号が大きくなる。磁気トンネル接合では、大きなトンネル磁気抵抗TMR効果が利用され、抵抗が最大50%変化することが示されている。
【0043】
図3には、本発明による記憶システムに使用される、マクロセルの走査を実施するための部材の詳細図を示す。
【0044】
この図には、情報層11の透明領域を透過した光によって生じる熱に応じて、膨張層12に生じる磁化領域から、データを検出するように設計された磁気センサ24が示されている。センサは、センサ素子241乃至243を有するが、図3のセンサは、分かり易くするため、数を減らして示されている。情報層は、マクロセル内で体系化される。各マクロセルは、1組の基本データを有する。例えば、マクロセル111は、4ビット111aから111dを有する。
【0045】
特に、センサ素子241は、情報層のマクロセル111に保管されたデータを検出するように設計され、センサ素子242は、マクロセル112に保管されたデータを検出するように設計され、センサ素子243は、マクロセル113に保管されたデータを検出するように設計されている。この実施例では、一つのセンサ素子は、一つのマクロセルのデータを検出するように設計されており、前記マクロセルの各ビットは、光学素子23によって生じる単一の光スポットによって、連続的に読み取られる。
【0046】
図4には、記憶媒体のマクロセルの走査を実行する方法が示されているが、走査方法は、これに限定されるものではない。
【0047】
情報層11に保管されたデータは、黒い領域(すなわち不透明領域)と、白い領域(すなわち半透明または透明領域)によって示されている2つの状態のいずれかを有する。例えば、黒い領域は、「0」バイナリー状態に対応し、白い領域は、「1」バイナリー状態に対応する。
【0048】
センサ24のセンサ素子が、磁化層12内の磁化領域を検出した場合(すなわち、前記磁化層が、情報層11の透明領域を透過した出力光ビームによって局部的に照射された場合)の、磁化領域およびセンサ素子は、ハッチング領域で表されている。この場合、センサ素子は、第1の状態を示す電気出力信号を発する。一方、磁化層が局部的に照射されず、センサ24のセンサ素子が、前記磁化層12の磁化領域を検出しなかった場合のセンサ素子は、白い領域で表されている。この場合、センサは、第2の状態を示す電気出力信号を発する。
【0049】
図4の例では、各マクロセルは、4つのビットを有し、単一の光スポットが各マクロセルに同時に照射される。光スポット40による情報層11の走査は、例えば左から右に実施され、2つのビット間距離に等しい距離だけ、水平方向に移動される。
【0050】
位置Aでは、全ての光スポットが不透明領域に照射され、磁気センサのセンサ素子は、第2の状態にある。
【0051】
位置Bでは、光スポットの右側への第1の移動後に、左側の光スポットが透明領域に照射される結果、磁化層内に磁化領域が形成され、対応するセンサ素子が第1の状態になる。他の2つの光スポットは、不透明領域に照射されているため、2つの対応するセンサ素子は、第2の状態にある。
【0052】
位置Cでは、光スポットの右側への第2の移動の後、左側の光スポットが、不透明領域に設置されるため、対応するセンサ素子は、第2の状態となる一方、他の2つの光スポットは、透明領域に照射され、2つの対応するセンサ素子は、第1の状態となる。
【0053】
位置Dでは、光スポットの右側への第3の移動の後、中央の光スポットが不透明領域に照射されるため、対応するセンサ素子は、第2の状態となり、一方他の2つの光スポットは、透明領域に照射され、2つの対応するセンサ素子は、第1の状態となる。
【0054】
光スポットが、センサのセンサ素子と対向するマクロセルの全てのビットに照射されると、情報層のマクロセルの走査が完了する。情報層に照射される光スポットは、二次元配列を形成するため、センサのセンサ素子と対向するマクロセルは、列毎に連続的に読み取られ、所与のビット列のビット毎に読み取られる。これは、情報層を二次元的に走査することを意味する。
【0055】
磁化領域は、対応するセンサ素子と常に正確に対向している必要はなく、時折別のセンサ素子の検出領域内にあっても良いことに留意する必要がある。センサ素子は、所定の閾値よりも大きな磁化を検出するように適合されており、通常の場合、このようなことが問題とはならないからである。前記閾値は、所与のマクロセルと対向するセンサ素子が、所与のマクロセルの各透明ビットに対して活性化され、所与のマクロセルと隣接するマクロセルの透明ビットに対しては、活性化されないように選定される。すなわち、センサ素子の検出閾値は、前記センサ素子と対向するマクロセルのビットに対応する磁化領域を検出し、前記センサ素子と対向していない他のマクロセルのビットに対応する磁化領域を検出しないように調整される。
【0056】
あるいは、マクロセルと対応するセンサ素子の間にある間隔を設けることも可能である。さらに、生じ得るビット検出エラーの発生を許容して、このエラーを適当なエラー補正方式によって補正しても良い。
【0057】
また、センサ素子の寸法は、磁化領域よりも小さくすることができることに留意する必要がある。これにより、媒体とセンサの間の位置ずれが許容される。磁気センサは、磁化領域内の磁化方向に応じて、磁化の平行または垂直な成分に対して高い感度を示しても良い。
【0058】
本発明の別の実施例では、磁化層は、データ記憶媒体から物理的に分離され、読み取り装置に組み込まれている。この場合、記憶媒体は、情報層を有する従来の媒体であり、読み取り装置が磁化層を有する。磁化層は、磁気センサから分離された部材であっても良く、磁気センサ内に一体化されていても良い。そのような実施例では、コンタミネーションに対するロバスト性がさらに向上する。
【0059】
本発明では、情報層とセンサの間の間隔は、元々のビットではなく、磁化領域程度の寸法となるため、コンタミネーションに対する感度は、MROMシステムに比べて低くなる。換言すれば、磁化層によって、センサと情報層の間の間隔が大きくなる。
【0060】
本発明では、CMOSまたはCCD画像センサの代わりに、磁気センサが使用されるため、本システムは、光学システムに比べて単純で安価である。また、センサ上に情報層を結像するための光学装置が不要となる。
【0061】
コンテンツの配布に適したこの記憶システムを製作することにより、記憶媒体上の情報を複製することが可能となる。
【0062】
添付の特許請求の範囲のいかなる参照符号も、請求項の記載を限定するものと解してはならない。「有する」という動詞およびその変化形は、請求項に記載されている素子以外の、他のいかなるステップまたは素子の存在をも排斥するものではないことは、明らかであろう。ステップまたは素子の前の「一つの」という冠詞は、そのような素子またはステップが複数あることを排斥するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明による記憶媒体を示す図である。
【図2】記憶媒体の情報層を読み取るための、本発明による読み取り装置を示す図である。
【図3】本発明による記憶システムに使用されるマクロセルの走査を実施するための、部材の細部を示した図である。
【図4】本発明によるマクロセルの走査方式の原理を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明および不透明領域を有し、情報が保管される情報層と、
少なくとも一つの磁化領域を有するように設計された磁化層であって、前記少なくとも一つの磁化領域は、光スポットが前記情報層の対応する透明領域を透過した際に一時的に形成される、磁化層と、
を有する記憶媒体。
【請求項2】
さらに、前記磁化領域が前記対応する透明領域よりも大きくなる分離層を有することを特徴とする請求項1に記載の記憶媒体。
【請求項3】
前記情報層は、マクロセル内に配置されたデータビット配列を有し、各マクロセルは、単一の光スポットによって読み取られるように設計されていることを特徴とする請求項1に記載の記憶媒体。
【請求項4】
前記磁化層は、フェリ磁性材料で構成され、室温では、前記材料の磁化は、ほぼゼロであるのに対して、高温では、前記材料が磁化されることを特徴とする請求項1に記載の記憶媒体。
【請求項5】
請求項1に記載の記憶媒体から情報を読み取る読み取り装置であって、
入力光ビームから光スポットの配列を生じさせる光学素子であって、光スポットが前記情報層の前記対応する透明領域を通過した際に、前記磁化層内に、一時的に前記磁化領域が形成されるように設計された光学素子と、
前記少なくとも一つの磁化領域を検出するセンサ素子の配列を有する磁気センサと、
を有する読み取り装置。
【請求項6】
さらに、前記入力光ビームに位相プロファイルを適用することによって、および前記位相プロファイルを変化させることによって、前記記憶媒体を走査する位相変調器を有することを特徴とする請求項5に記載の読み取り装置。
【請求項7】
前記位相変調器は、前記入力光ビームの光路に設置されることを特徴とする請求項6に記載の読み取り装置。
【請求項8】
前記位相変調器は、前記光学素子と前記記憶媒体の間に設置されることを特徴とする請求項6に記載の読み取り装置。
【請求項9】
前記磁気センサは、トンネル磁気抵抗センサまたは巨大磁気抵抗センサであることを特徴とする請求項5に記載の読み取り装置。
【請求項10】
記憶媒体から情報を読み取る読み取り装置であって、
前記記憶媒体は、透明および不透明領域を有する、前記情報が保管された情報層を有し、
当該読み取り装置は、
入力光ビームから光スポットの配列を生じさせる光学素子と、
少なくとも一つの磁化領域を有するように設計された磁化層であって、前記少なくとも一つの磁化領域は、光スポットが前記情報層の対応する透明領域を通過した際に一次的に形成される、磁化層と、
前記少なくとも一つの磁化領域を検出するセンサ素子の配列を有する磁気センサと、
を有する読み取り装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【公表番号】特表2007−512643(P2007−512643A)
【公表日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−540656(P2006−540656)
【出願日】平成16年11月18日(2004.11.18)
【国際出願番号】PCT/IB2004/003792
【国際公開番号】WO2005/052945
【国際公開日】平成17年6月9日(2005.6.9)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)