説明

光結像性ポジ型底面反射防止膜

【課題】水性アルカリ性現像剤中で現像が可能な光結像性ポジ型底面反射防止膜組成物及び、このような組成物の使用方法を提供する。
【解決手段】光結像性ポジ型底面反射防止膜組成物であって、発色団基、ヒドロキシル及び/またはカルボキシル基、及び酸不安定基を含むポリマー、及び末端ビニルエーテル基を有する架橋剤を含み、更に光酸発生剤を含むかまたは含まない、上記組成物及び、このような組成物の使用方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規の光結像性で(photoimageable)かつ水性現像性(aqueous developable)のポジ型反射防止膜組成物、及び反射性基材とフォトレジスト塗膜との間にこの新規反射防止膜組成物の薄い層を形成することによってこれらの組成物を像の加工に使用することに関する。この組成物は、フォトリソグラフィ技術による半導体デバイスの製造、特に深紫外線(deep ultraviolet)で露光することを必要とするこのような半導体デバイスの製造に特に有用である。これらの塗膜は、特に、エッジビーズリムーバとの併用に適している。
【背景技術】
【0002】
フォトレジスト組成物は、微細化された電子部品の製造のためのマイクロリソグラフィプロセス、例えばコンピュータチップ及び集積回路の製造などに使用されている。これらのプロセスでは、一般的に、先ずフォトレジスト組成物のフィルムの薄い塗膜を、例えば集積回路の製造に使用されるシリコンウェハなどの基材上に塗布する。次いで、このコーティングされた基材をベーク処理してフォトレジスト組成物中の溶剤を蒸発させて、基材上に塗膜を定着させる。この基材のコーティングされそしてベーク処理された表面を次に放射線による像様露光に付す。
【0003】
この放射線露光処理は、コーティングされた表面の露光された領域に化学的な変化を引き起こす。可視光線、紫外線(UV)、電子ビーム及びX線放射エネルギーが、現在マイクロリソグラフィプロセスに常用されている放射線種である。この像様露光の後、このコーティングされた表面を現像剤溶液で処理して、フォトレジストの放射線露光された領域または未露光の領域のいずれかを溶解除去する。
【0004】
フォトレジスト組成物にはネガ型とポジ型の二つのタイプのものがある。ポジ型フォトレジスト組成物を放射線で像様露光すると、フォトレジスト組成物の放射線で露光された領域が現像剤溶液に可溶性になり、他方、フォトレジスト膜の未露光の領域は現像剤溶液に対し比較的不溶性のまま残る。それゆえ、露光されたポジ型フォトレジストを現像剤で処理すると、フォトレジスト塗膜の露光された領域が除去されて、塗膜にポジ型の像が形成される。それによって、フォトレジスト組成物が付着していたその下にある基材表面の所望の部分が裸出される。ネガ型フォトレジストでは、現像剤は、未露光の部分を除去する。
【0005】
半導体デバイスは微少化される傾向にあり、このような微細化に伴う問題を解消するために、より一層短い波長の放射線に感度を示す新しいフォトレジストや、精巧な多層系が使用されている。
【0006】
四分の一ミクロン未満の形状を有する像をパターン形成するためには、高解像度の化学増幅型深紫外線(100〜300nm)ポジ型及びネガ型フォトレジストを利用することができる。微細化に大きな進展をもたらした技術としては、主に二つの深紫外線(deep uv)露光技術があり、これらは、248nm及び193nmの放射線を放つレーザーである。このようなフォトレジストの例は、米国特許第4,491,628号明細書、米国特許第5,350,660号明細書、欧州特許出願公開第794458号明細書及び英国特許出願公開第2320718号明細書に記載されている。なお、これらの特許文献の内容は本明細書に掲載されたものとする。248nm用のフォトレジストは、典型的には、置換されたポリヒドロキシスチレン及びこれのコポリマーに基づくものである。他方、193nm露光用のフォトレジストは、芳香族類がこの波長では不透明なために非芳香族系のポリマーを必要とする。一般的に、芳香族官能基を除いたことによって失われた耐エッチング性を補填するためにこのポリマーには脂肪環式炭化水素が組み込まれる。更に、波長が短くなればなるほど、基材からの反射が、フォトレジストのリソグラフィ性能にとって益々有害となる。それゆえ、これらの波長では、反射防止膜が重要となる。
【0007】
フォトリソグラフィにおいて高吸光性の反射防止膜を使用することは、高反射性基材からの光の後方反射を原因とする問題を軽減するためのより簡単なアプローチである。底面反射防止膜は基材上に塗布され、次いでフォトレジストの層がこの反射防止膜の上に塗布される。フォトレジストは像様露光され、そして現像される。次いで、典型的には、露光された領域の反射防止膜をエッチングして、こうしてフォトレジストパターンが基材に転写される。従来技術において公知の反射防止膜の殆どは、ドライエッチング用に設計されている。エッチングプロセスの間にレジスト膜が過度に失われることなく反射防止膜がエッチングされるように、反射防止膜のエッチング速度はフォトレジストと比べて比較的速いものである必要がある。反射防止膜は、無機系の塗膜と有機系の塗膜の二つのタイプのものが知られている。しかし、これらの塗膜の双方とも、これまでは、ドライエッチングによって除去するように設計されている。
【0008】
加えて、反射防止膜のドライエッチング速度が、反射防止膜の上にコーティングされるフォトレジストのエッチング速度と同じくらいかまたはこれより遅い場合には、フォトレジストパターンが、損傷するかまたは基材に正確に転写されない恐れがある。有機系の塗膜を除去するためのエッチング条件も、基材に損傷を与え得る。それゆえ、特にエッチングよって損傷を受け易い化合物半導体のタイプの基材について、ドライエッチングする必要がなくそして良好なリソグラフィ性能も供し得る有機系反射防止膜に対する要望がある。
【0009】
本出願の新規のアプローチは、ドライエッチングによってではなく、水性アルカリ性溶液で現像することができる吸光性ポジ型像形成性底面反射防止膜を使用することである。水性液による底面反射防止膜の除去は、ドライエッチング速度について塗膜に課せられる要件を無くし、コスト集約的なドライエッチング工程を減少し、そしてドライエッチングによって起こる基材の損傷を避ける。本発明の吸光性底面反射防止膜組成物は、架橋化合物及びポリマーを含む。塗膜は硬化され、そして上面のポジ型フォトレジストを露光するのに使用するものと同じ波長の光が露光されると、フォトレジストの現像に使用するものと同じ現像剤中で像の形成が可能となる。このようなプロセスは、多数の工程を省略できるのでリソグラフィプロセスを大幅に簡素化する。反射防止膜が感光性であるため、反射防止膜が除去される範囲は光学的潜像によって画定される。これは、残ったフォトレジスト像を反射防止膜に良好に描画することを可能にする。
【0010】
米国特許第4,863,827号に記載のように二層系のフォトレジストは知られているが、これは、上面のフォトレジストと底面のフォトレジストに二つの異なる波長の露光を必要し、リソグラフィプロセスを煩雑なものとする。
【0011】
反射防止膜組成物を開示する特許は多数あるが、これらの塗膜は全て、水性現像剤溶液中に不溶性とするために硬化され、そしてドライエッチングによって除去しなければならない。米国特許第5,939,236号明細書は、ポリマー、酸もしくは熱酸発生剤、及び光酸発生剤を含む反射防止膜を開示している。しかし、この膜は、アルカリ水性現像剤溶液中に不溶性になるように完全に架橋される。この膜は、プラズマガスエッチングによって除去される。他の反射防止膜に関する特許の例は、米国特許第5,886,102号、米国特許第6,080,530号及び米国特許第6,251,562号である。
【0012】
米国特許第4,910,122号明細書は、水性現像可能な反射防止膜を開示している。しかし、膜全体の溶解度は、ベーク処理条件によって制御される。この反射防止膜は光結像が可能ではなく、それゆえ、明確に画定された可溶性領域と不溶性領域はその膜にはない。この反射防止膜の溶解はベーク処理条件によって制御されるため、その反射防止膜は現像剤の規定度及び現像時間に非常に影響を受け易く、また解像度は低い。規定度の高い現像剤及び/または長い現像時間は、反射防止膜の過度の除去を招き得る。
【0013】
反射防止膜を用いてフォトレジストに像を形成する他の方法が米国特許第5,635,333号明細書に記載されている。しかし、その反射防止膜は、フォトレジストと同時に現像されるものではない。
【0014】
米国特許第5,882,996号明細書は、二重ダマシン配線をパターン形成する方法を開示している。この方法では、現像剤に可溶性の反射防止膜介在層が使用される。この反射防止膜は二つのフォトレジスト層の間に形成され、そして好ましくは300〜700オングストロームの厚さ、1.4〜2.0の屈折率を有しそして水溶性である。この反射防止膜は光結像が可能でなく、また反射防止膜のケミストリーについては何ら記載されていない。
【0015】
様々なケミストリーを用いた酸感応性反射防止膜が、米国特許第6,110,653号明細書、米国特許第6,319,651号明細書、米国特許第6,054,254号明細書及び米国特許出願第2004/0018451号明細書に記載されている。
【0016】
本発明の新規反射防止組成物は、光結像が可能で、水性アルカリで現像が可能でありそしてポジ型の反射防止膜に関する。本発明の反射防止膜組成物は、フォトレジストへの基材からの反射を防ぐために、ポジ型フォトレジスト層の塗布の前に基材にコーティングされる。該反射防止膜の固形成分は、通常のフォトレジスト溶剤中に可溶性であり、かつ塗膜を形成することができるものであり、更に、エッジビーズリムーバ溶剤と相溶性である。エッジビーズリムーバ溶剤は、スピンコート工程中に形成される反射防止膜縁上の盛り上がり(buildup)を除去するために使用される。この反射防止膜は、その上に塗布される上面フォトレジスト層と同じ波長の化学線で光結像が可能であり、またフォトレジストを通常現像するのに使用されるものと同じ水性アルカリ性現像溶液で現像が可能である。単一の露光段階及び単一の現像段階の組み合わせは、リソグラフィプロセスを大幅に簡素化する。更に、水性現像性反射防止膜は、芳香族官能基を含まないフォトレジスト、例えば193nm及び157nm露光に使用されるようなフォトレジストを用いて像の形成を行う場合に特に望ましい。該新規組成物は、フォトレジストから基材への良好な像の転写を可能にし、またフォトレジスト中の反射ノッチング及び線幅変動もしくは定在波を防ぐ良好な吸光特性を有する。また、反射防止膜とフォトレジスト膜との間の相互混合は実質的にない。更に、該反射防止膜は、良好な溶液安定性を有し、そして良好な塗膜品質を有する薄い膜を形成する。後者はリソグラフィにとって特に有利である。該反射防止膜を像形成プロセスにフォトレジストと使用すると、基材に損傷を与えることなく鮮明な像が得られる。
【本発明の概要】
【0017】
本発明は、水性アルカリ性現像剤中で現像が可能な、光結像性ポジ型底面反射防止膜組成物であって、発色団基を有する少なくとも一種の繰り返し単位とヒドロキシル及び/またはカルボキシル基を有する少なくとも一種の繰り返し単位とを含んでなるポリマー、末端ビニルエーテル基を有する架橋剤、場合によっては及び光酸発生剤を含む、上記組成物に関する。更に本発明は、酸、または熱酸発生剤を含むこともでき、この際、好ましくは上記の酸、または上記熱酸発生剤から発生する酸は、1.0を超えるpKaを有する。更に本発明は、本発明の反射防止膜組成物を用いて像を形成する方法、特にエッジビーズ除去段階を含む方法にも関する。
【発明の開示】
【0018】
本発明は、ヒドロキシル及び/またはカルボキシル基を有する少なくとも一種の単位と吸光性発色団を有する少なくとも一種の単位とを含んでなるポリマー、末端ビニルエーテル基を有する架橋剤、場合によっては及び光酸発生剤を含む、新規の吸光性光結像性かつ水性現像性ポジ型像形成性反射防止膜組成物に関する。好ましくは、上記ポリマーは、アルカリ可溶性であり、水に不溶性である。本発明は更に、このような組成物を、特に約50nm〜約450nmの範囲の照射に使用する方法にも関する。
【0019】
本発明の反射防止膜組成物は、基材からのフォトレジストへの反射を防ぐために、基材上にかつポジ型フォトレジストの下にコーティングされる。この反射防止膜は、上面のフォトレジストと同じ波長の光で光結像可能であり、かつフォトレジストの典型的な現像に使用されるものと同じ水性アルカリ性現像溶液で現像が可能であるため、反射防止膜にパターンが形成される。該反射防止膜組成物は、ポリマー、架橋剤、場合によっては及び光酸発生剤を含む。該反射防止膜組成物は、反射性基材上にコーティングされる。上記ポリマーはエッジビーズリムーバとして使用される溶剤になお可溶性であるので、スピンコート工程の間に形成され得るエッジビーズを、次いで、エッジビーズ除去溶剤を用いて除去することができる。塗膜は次いでベーク処理して上記反射防止膜溶液の溶剤を除去し、またこのベーク処理により塗膜を架橋して、各層間の相互混合を防ぐかまたはその程度を最小化するとともに、塗膜を水性アルカリ性現像剤中に不溶性にする。以下の説明に拘束はされないが、上記ベーク処理工程の間に、反射防止膜中で、架橋剤、特に末端ビニルエーテル基を含む化合物と、ヒドロキシル及び/またはカルボキシル基を有するポリマーとの間で反応が起こり、塗膜内に酸不安定基が形成されるものと考えられる。ベーク処理及び硬化の後は、反射防止膜は、アルカリ性現像溶液及びフォトレジスト溶剤のどちらにも実質的に不溶性である。
【0020】
次いで、ポジ型フォトレジストを、硬化した反射防止膜の上にコーティングし、そしてベーク処理してフォトレジスト溶剤を除去する。このフォトレジストの塗布厚は、一般的には、下にある反射防止膜よりも厚い。化学線で露光する前は、フォトレジスト及び反射防止膜は両方とも、フォトレジストの水性アルカリ性現像溶液中に不溶性である。その後、この二層系を単一の段階において放射線で像様露光する。この際、上面のフォトレジスト中及び底面の反射防止膜中の両方で酸が発生する。反射防止膜中に光酸発生剤が存在する場合は、これは光分解される。反射防止膜中に光酸発生剤が存在しない場合には、フォトレジストから反射防止膜中へ酸が拡散し得る。次のベーク処理段階では、露光された領域において、架橋された部位(酸不安定基)を有する反射防止膜のポリマーが、光の作用下に発生した酸(光発生酸)の存在下に脱架橋し、そうして、このポリマー、それ故反射防止膜が水性アルカリ性現像剤中に可溶性になる。次の現像段階は、上記ポジ型フォトレジスト及び反射防止膜の両方の露光された領域を溶解して、ポジ型の像を形成し、そして次の加工にとって欠点の無い基材が得られる。
【0021】
本発明の新規方法に有用な新規反射防止膜は、架橋剤、ポリマー、場合によっては及び光酸発生剤を含む。前記ポリマーは、ヒドロキシ及び/またはカルボキシル基を有する少なくとも一種の単位と吸光性発色団を有する少なくとも一種の単位とを含んでなる。この吸光性発色団は、組成物中に遊離の染料が含まれている場合とは異なり、ポリマー鎖内に結合している。これは、このような遊離の染料の場合では、塗膜のベーク処理工程中にそれが分解や昇華を起こすので、それを防ぐためである。
【0022】
本発明の反射防止膜のポリマーは、ヒドロキシル及び/またはカルボキシル基を有する少なくとも一種の単位と、吸光性発色団を有する少なくとも一種の単位とを含む。吸光性発色団の例は、各々の環中に3〜10個の原子を有する1〜4つの孤立のもしくは縮合した環を有する炭化水素芳香族部分または複素環式芳香族部分である。ヒドロキシルまたはカルボキシル基を含むモノマーと重合することができる吸光性発色団を有するモノマーの例は、次の構造要素を含むビニル化合物、すなわち置換されているかもしくは置換されていないフェニル、置換されているかもしくは置換されていないアントラシル、置換されているかもしくは置換されていないフェナントリル、置換されているかもしくは置換されていないナフチル、酸素、窒素、硫黄もしくはこれらの組み合わせなどのヘテロ原子を含む置換されているかもしくは置換されていない複素環、例えばピロリジニル、ピラニル、ピペリジニル、アクリジニル、キノリニルを含むビニル化合物である。置換基は任意のヒドロカルビル基であることができ、そして更に、酸素、窒素、硫黄またはこれらの組み合わせなどのヘテロ原子を含むことができる。このような基の例は、(C〜C12)アルキレン、エステル、エーテルなどである。使用し得る他の発色団は、米国特許第6,114,085号、米国特許第5,652,297号、米国特許第5,981,145号、米国特許第6,187,506号、米国特許第5,939,236号、及び米国特許第5,935,760号に記載されている。これらの特許文献の内容は本明細書に掲載されたものとする。好ましい発色性モノマーは、置換されているかもしくは置換されていないフェニルのビニル化合物、置換されているかもしくは置換されていないアントラシルのビニル化合物、及び置換されているかもしくは置換されていないナフチルのビニル化合物であり、より好ましいモノマーは、スチレン、ヒドロキシスチレン、アセトキシスチレン、安息香酸ビニル、4−tert−ブチル安息香酸ビニル、エチレングリコールフェニルエーテルアクリレート、フェノキシプロピルアクリレート、N−メチルマレイミド、2−(4−ベンゾイル−3−ヒドロキシフェノキシ)エチルアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、フェニルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、9−アントラセニルメチルメタクリレート、9−ビニルアントラセン、2−ビニルナフタレン、N−ビニルフタルイミド、N−(3−ヒドロキシ)フェニルメタクリルアミド、N−(3−ヒドロキシ−4−ヒドロキシカルボニルフェニルアゾ)フェニルメタクリルアミド、N−(3−ヒドロキシル−4−エトキシカルボニルフェニルアゾ)フェニルメタクリルアミド、N−(2,4−ジニトロフェニルアミノフェニル)マレイミド、3−(4−アセトアミノフェニル)アゾ−4−ヒドロキシスチレン、3−(4−エトキシカルボニルフェニル)アゾ−アセトアセトキシエチルメタクリレート、3−(4−ヒドロキシフェニル)アゾ−アセトアセトキシエチルメタクリレート、3−(4−スルホフェニル)アゾアセトアセトキシエチルメタクリレートのテトラヒドロアンモニウムスルフェート塩及び等価構造体である。適当な露光波長において吸収を示す任意の発色団を、単独でまたは他の発色団と組み合わせて使用できることも本発明の範囲内に含まれる。
【0023】
本新規発明のポリマーは、アルカリ可溶性を供するためのヒドロキシ及び/またはカルボキシル基を有する少なくとも一種の単位、及び架橋部位を含む。このポリマーの一つの機能は、良好な塗膜品質を供することであり、他の機能は、像形成工程の間に反射防止膜の溶解性を変化させることである。ポリマー中のヒドロキシルまたはカルボキシル基は、溶解性を変化させるために必要な成分のうちの一つを提供する。重合時にこのような単位を供するモノマーの例は、次のものには限定されないが、ヒドロキシル及び/またはカルボキシル基を含む置換されているかもしくは置換されていないビニルモノマー、例えばアクリル酸、メタクリル酸、ビニルアルコール、ヒドロキシスチレン類、及び1,1’2,2’,3,3’−ヘキサフルオロ−2−プロパノールを含むビニルモノマーである。ただし、ポリマーをアルカリ可溶性及び好ましくは水不溶性にするものであればどのようなモノマーでも使用することができる。該ポリマーは、ヒドロキシル及び/またはカルボキシル基を含むモノマー性単位の混合物を含むこともできる。1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール基を含むビニルモノマーを以下の構造式(1)〜(6)で表される化合物及びこれらの置換等価物によって例示する。
【0024】
【化1】

ポリマーは、ヒドロキシルもしくはカルボキシル基を含むモノマーを、吸光性発色団を含むモノマーと重合することによって合成することができる。またその代わりに、アルカリ可溶性のポリマーを、ヒドロキシルもしくはカルボキシル基を供する化合物及び吸光性発色団を供する化合物と反応させることもできる。最終のポリマーでは、ヒドロキシルもしくはカルボキシル基を含む一種またはそれ以上の単位のモル%は5〜95、好ましくは10〜90、より好ましくは20〜80の範囲であることができ、そして最終ポリマー中の吸光性発色団のモル%は、5〜95、好ましくは10〜90、より好ましくは20〜80の範囲であることができる。ヒドロキシルまたはカルボキシル基が吸光性発色団に結合しているか、または発色団が、ヒドロキシまたはカルボキシル基に結合している場合、すなわちどちらの基も同じ単位内に存在する場合も本発明の範囲内に含まれる。一例として、上記の発色基は、側鎖としてヒドロキシル基及び/またはカルボキシル基を有することができるか、または上記の発色基とヒドロキシル基及び/またはカルボニル基は同一の基に結合することができる。
【0025】
ヒドロキシル基及び/またはカルボキシル基を含む上記単位及び吸光性発色団を含む上記単位の他、該ポリマーは、他のモノマー性単位、例えば他の望ましい性質を供し得る単位を含むことができる。第三のモノマーの例は、−CR−CR−であり、式中、R〜Rは、独立して、H、(C〜C10)アルキル、(C〜C10)アルコキシ、ニトロ、ハライド、シアノ、アルキルアリール、アルケニル、ジシアノビニル、SOCF、COOZ、SOZ、COZ、OZ、NZ、SZ、SOZ、NHCOZ、SONZであり、Zは、H、または(C〜C10)アルキル、ヒドロキシ(C〜C10)アルキル、(C〜C10)アルキルOCOCHCOCHであるか、あるいはRとRは一緒になって環状基、例えば酸無水物、ピリジンもしくはピロリドンを形成するか、あるいはR〜Rは、独立して、H、(C〜C10)アルキル、(C〜C10)アルコキシであり、そしてRは親水性基である。親水性基の例は、次のものには限定されないが、O(CHOH、O(CHO(CH)OH、(CHOH(nは0〜4である)、COO(C〜C)アルキル、COOX及びSOX(XはH、アンモニウム、アルキルアンモニウムである)である。他のモノマーとしては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、及びメタクリル酸ヒドロキシプロピルなどを挙げることができる。また、酸不安定基を含むモノマー性単位、例えば酸不安定基でキャップされたヒドロキシスチレン、ビニルアルコール、(メタ)アクリル酸なども使用することができる。酸不安定基の例は、次のものには限定されないが、少なくとも一つのβ水素を有する第二級及び第三級アルキル(炭素原子数は多くとも20まで)、アセタール類及びケタール類、トリメチルシリル、及びβ−トリメチルシリル置換アルキルである。酸不安定基の代表的な例は、tert−ブチル、tert−ペンチル、イソボルニル、1−アルキルシクロヘキシル、1−アルキルシクロペンチル、シクロヘキシル、2−アルキル−2−アダマンチル、2−アルキル−2−ノルボルニルである。酸不安定基の他の例は、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、置換されているかもしくは置換されていないメトキシカルボニル、β−トリアルキルシリルアルキル基(例えば、CH−CHSi(CH、CH(−CHSi(CH、CH−CH(Si(CH)、及びこれらの類似物などである。
【0026】
反射防止膜に適したポリマーとしてはノボラック樹脂も使用することができる。これらの樹脂は、典型的には、酸触媒、例えばシュウ酸、マレイン酸もしくは無水マレイン酸などの存在下に、ホルムアルデヒドと、一種もしくは二種以上のポリ置換フェノールとを縮合反応させることによって製造される。典型的なモノマーとしては、ホルムアルデヒド、クレゾール類、レゾルシノール類、キシレノール類などを挙げることができる。
【0027】
ポリマーの例は、ノボラック、ポリヒドロキシスチレン類、及びヒドロキシスチレンのコポリマーであり、この際、他のコモノマーは、スチレン、ビニルアルコール、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルなどのうちの少なくとも一種である。
【0028】
本発明のポリマーは、任意の公知の重合方法、例えば有機金属触媒を用いた開環メタセシス、遊離基重合、縮合重合、またはアニオンもしくはカチオン共重合技術によって合成することができる。また該ポリマーは、溶液重合、乳化重合、塊状重合、懸濁重合、または類似の重合方法で合成することができる。本発明のポリマーは、重量平均分子量が約1,000〜約1,000,000、好ましくは約2,000〜約80,000、より好ましくは約6,000〜約50,000のポリマーに重合される。重量平均分子量が1,000よりも低いと、良好な造膜性が反射防止膜に得られず、他方、重量平均分子量が大きすぎると、溶解性、貯蔵安定性などの性質が損なわれる恐れがある。遊離基ポリマーの多分散性(Mw/Mn)(Mwは重量平均分子量であり、Mnは数平均分子量である)は1.0〜10.0の範囲であることができる。ポリマーの分子量は、ゲル透過クロマトグラフィによって求めることができる。
【0029】
該新規反射防止膜組成物は基材上にコーティングした後、熱を加えて硬化する。加熱は、ポリマー中のカルボキシル基もしくはヒドロキシル基と架橋剤との間の架橋反応を誘発し、そうして酸不安定架橋結合が形成される。特定の酸不安定アセタール架橋結合は、架橋剤が、末端ビニルエーテル基を有する化合物であり、そしてポリマーがカルボキシル基もしくはヒドロキシル基を含むことによって、簡単に容易化することができる。得られる構造は、溶剤に対する耐性が強く、そしてフォトレジスト成分の相互拡散に影響されない。このような硬化プロセスは、通常の熱硬化性反射防止膜のものと同じである。
【0030】
本発明において有用な末端ビニルエーテル基を含む架橋剤は、次の一般式(7)で表すことができる。
【0031】
【化2】

式中、Rは、(C−C30)線状、分枝状もしくは環状アルキル、置換されているかもしくは置換されていない(C−C40)アリール、または置換されているかもしくは置換されていない(C−C40)脂肪環式炭化水素から選択され、そしてnは2以上である。末端ビニルエーテル基が、ポリマーのヒドロキシル基もしくはカルボキシル基と反応して酸不安定アセタール結合を与えるものと考えられる。このような末端ビニルエーテル基を含む架橋剤の例としては、ビス(4−ビニルオキシブチル)アジペート、ビス(4−ビニルオキシブチル)スクシネート、ビス(4−ビニルオキシブチル)イソフタレート、ビス(4−ビニルオキシメチルシクロヘキシルメチル)グルタレート、トリス(4−ビニルオキシブチル)トリメリテート、ビス(4−ビニルオキシメチルシクロヘキシルメチル)テレフタレート、ビス(4−ビニルオキシメチルシクロヘキシルメチル)イソフタレート、ビス(4−ビニルオキシブチル)(4−メチル−1,3−フェニレン)ビスカルバメート、ビス(4−ビニルオキシブチル)(メチレンジ−4,1−フェニレン)ビスカルバメート、及びトリエチレングリコールジビニルエーテル、1,4−シクロヘキサンジメンタノールジビニルエーテル、Aldrich Companyによって供給される様々なVectomer(R)ビニルエーテルモノマー、及びビニルオキシ側鎖基を有するポリマーなどが挙げられる。使用し得る他のビニルエーテル末端基を有する架橋剤は、T. Yamaoka, et al., Trends in Photochem. Photobio., 7:45 (2001); S. Moon, et al., Chem. Mater., 6:1854 (1994);またはH. Schacht, et al., ACS Symp. Ser. 706:78 (1998)に記載されている。これらの文献は、本明細書中に掲載されたものとする。
【0032】
末端ビニルエーテル基を含む架橋剤は、好ましくは、ポリマーの反応性基当たりで0.20〜2.00モル当量のビニルエーテル架橋官能基を供するような割合で反射防止膜に加えられる。特に好ましい割合は、反応性基あたり0.50〜1.50倍の反応性当量である。
【0033】
該反射防止膜組成物が光酸発生剤を含む態様の一つでは、反射防止膜中の光酸発生剤及びフォトレジスト中の光酸発生剤は、同じ波長の光に感度を示すものであり、それ故、同じ放射波長の光が、両方の層中に酸を発生させることができる。反射防止膜の露光された領域中の酸(なお、これは、フォトレジストからの拡散を通じて存在するものであるか、または反射防止膜中の光酸発生剤から光の作用によって発生したものである)は酸不安定架橋結合と反応してポリマーを脱架橋化し、反射防止膜の露光された領域を水性アルカリ性現像剤に対し可溶性にする。反射防止膜に選択される光酸発生剤は、使用するフォトレジストに依存する。該新規組成物の光酸発生剤(PAG)は、所望の露光波長、好ましくは、深紫外線フォトレジストには248nm、193nm及び157nmに吸収を示すものから、及び365nm、436nm及び広帯域フォトレジストにはナフトキノンジアジドもしくはスルホニウム塩から選択される。酸発生性感光性化合物の好適な例には、次のものには限定されないが、イオン性光酸発生剤(PAG)、例えばジアゾニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、または非イオン性PAG,例えばジアゾスルホニル化合物、スルホニルオキシイミド、及びニトロベンジルスルホネートエステルなどが挙げられる。しかし、照射時に酸を生成するものであればどのような感光性化合物でも使用することができる。オニウム塩は、通常は、有機溶剤中に可溶性の形で使用され、大概はヨードニウム塩もしくはスルホニウム塩として使用される。これらの例は、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムノナフルオロブタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムノナフルオロブタンスルホネート、及びこれらの類似物である。使用し得る照射時に酸を生成する他の化合物は、トリアジン類、オキサゾール類、オキサジアゾール類、チアゾール類、置換された2−ピロン類である。また、フェノール性スルホン酸エステル、ビス−スルホニルメタン類、ビス−スルホニルメタン類もしくはビス−スルホニルジアゾメタン類、トリフェニルスルホニウムトリス(トリフルオロメチルスルホニル)メチド、トリフェニルスルホニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、ジフェニルヨードニウムトリス(トリフルオロメチルスルホニル)メチド、ジフェニルヨードニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、及びこれらの同族体も可能な候補である。複数種の光活性化合物の混合物も使用することができる。
【0034】
図1は、有用なオニウム塩及びヒドロキシアミド酸誘導体などのPAG構造体の例を示す。式中、R、R及びRは、独立して、アルキル、フルオロアルキル、F、OC2n+1、OC2n+1、CO−tert−ブチル、OCH−CO2−tert−ブチル、OCHOCH(n=1〜4)であり、Xは、非求核性強酸のアニオン、例えば、O(SO2n=1)、AsF、SbF、−N(SO2n=12、C(SO2n=1である。
【0035】
365nmでの露光には、光酸発生剤は、スルホニウム塩またはジアゾナフトキノン類であることができ、特に、該ポリマーの酸不安定基と反応し得る酸を生成することができる2,1,4−ジアゾナフトキノン類であることができる。オキシムスルホネート類、置換されているかもしくは置換されていないナフタルイミジルトリフレート類もしくはスルホネート類も光酸発生剤として知られている。上面のフォトレジストと同じ波長の光を吸収する任意の光酸発生剤を使用することができる。当業界において既知の光酸発生剤、例えば米国特許第5,731,386号明細書、米国特許第5,880,169号明細書、米国特許第5,939,236号明細書、米国特許第5,354,643号明細書、米国特許第5,716,756号明細書、独国特許出願公開第3,930,086号明細書、独国特許出願公開第3,930,087号明細書、独国特許出願第P4,112,967.9号明細書、F. M. Houlihan et al., J. Photopolym. Sci. Techn., 3:259 (1990); T. Yamaoka et al., J. Photopolym. Sci. Techn., 3:275 (1990))、L. Schlegel et al., J. Photopolym. Sci. Techn., 3:281 (1990)またはM. Shirai et al., J. Photopolym. Sci. Techn., 3:301 (1990)に開示されている光酸発生剤を使用することができる。なお、前記文献の内容は本明細書に掲載されたものとする。
【0036】
該反射防止膜用の溶剤は、これが、反射防止膜の全ての固形成分を溶解し得るように選択される。該反射防止膜組成物のための好適な溶剤の例は、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、アニソール、2−ヘプタノン、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ブチル、ガンマブチロアセテート、エチルセロソルブアセテート、メチルセロソルブアセテート、メチル3−メトキシプロピオネート、ピルビン酸エチル、2−メトキシブチルアセテート、ジアセトンアルコール、ジエチルカーボネート、2−メトキシエチルエーテルであるが、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、またはこれらの混合物が好ましい。一般的に、毒性が低く、そして良好な塗布性と溶解性を有する溶剤が好ましい。
【0037】
本発明の組成物は、更に、酸または熱酸発生剤(thermal acid generator)を含むことができる。架橋は、熱の存在下に、ヒドロキシル及び/またはカルボキシル基を含むポリマーと、架橋剤との間で起こり得るが、典型的には、反応時間が長くなり得る。熱酸発生剤または酸は、架橋反応を加速するために使用され、そして短い硬化時間が好ましい場合に望ましい。熱酸発生剤は、加熱時に酸を遊離する。任意の公知の酸もしくは熱酸発生剤を使用することができる。その例は、次のものには限定されないが、2,4,4,6−テトラブロモシクロヘキサジエノン、ベンゾイントシレート、スクアリン酸、2−ニトロベンジルトシレート、クロロ酢酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、ノナフレート酸、トリフルオロメタンスルホン酸、有機スルホン酸の他のアルキルエステル、これらの酸の塩である。しかし、ある種の成分にとっては、高い酸性度を有する一部の酸及び熱酸発生剤よって生成される酸はアンダーカットを招く場合があり、所望の光結像プロセスの実施を妨げる恐れがあることが判明した。それゆえ、中程度の酸性度、すなわち1.0を超えるpKa(酸解離定数の−log10)を有する酸が、末端ビニル基を有する架橋剤との組み合わせにおいて特に、好ましいことが図らずしも見出された。5.0未満のpKa及び1.0を超えるpKaを有する酸も好ましい。生ずるアセタール結合は、光の作用により発生した酸の存在下に簡単に解裂が可能である。中程度の酸性度を有する酸または熱酸発生剤から誘導される酸の例は、次のものには限定されないが、マレイン酸(pKa:1.83)、クロロ酢酸(pKa:1.4)、ジクロロ酢酸(pKa:1.48)、シュウ酸(pKa:1.3)、桂皮酸(pKa:4.45)、酒石酸(pKa:4.3)、グリコール酸(pKa:3.8)、フマル酸(pKa:4.45)、マロン酸(pKa:2.8)、シアノ酢酸(pKa:2.7)などである。塩基によってブロックされて熱酸発生剤を形成している酸が好ましい。上に記載したものなどの酸は、アミンなどの塩基でブロックすることができる。典型的な塩基は、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリメチルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリドデシルアミンなどである。加えて、カルボン酸もしくはアリールカルボン酸などの弱酸のアニオンとのジアリールもしくはトリアルキルスルホニウム塩も使用することができる。塩基でブロックされた酸は、酸と塩基とを組み合わせることによって形成することができる。この際、酸:塩基の比率は約1:1〜約1:3の範囲である。上記の望ましいpKaを有する酸及びそれらの塩の更に別の例は、当業者が、入手可能な文献、例えばCRC Press Inc.によって発行されているCRCハンドブック・オブ・ケミストリー・アンド・フィジクスなどを調べれば知ることができる。前記の文献の内容は本明細書中に掲載されたものとする。いくつかの態様においては、熱酸発生剤が、酸を発生した後にこの酸が塗膜中にはいつまでもは残らず、それゆえ逆の反応を助長しないが、膜からは除去されるようなものであることが望ましい場合もある。架橋反応が起こった後は、酸は、熱によって分解されるかまたは気化し、そしてその分解生成物は塗膜から焼き出されるか、または酸が塗膜から昇華し得るものと考えられる。それ故、硬化後は、遊離の酸は塗膜中に残らないかまたは非常に僅かしか残らず、そしてアセタール結合の分解を引き起こす逆反応は起こらない。酸を発生することができ、次いでフォトレジストのコーティングの前に除去することができる熱酸発生剤がいくつかの場合において好ましい。膜中に残る弱酸は、アセタール結合の分解をそれほど妨げる恐れはないので、官能性であってもよい。酸、または熱酸発生剤から誘導される酸は、好ましくは、約130℃〜約220℃、より好ましくは150℃〜約200℃の範囲の温度において反射防止膜から除去される。上記酸または熱酸発生剤は、固形物の0.1〜25重量%、特に0.1〜約5重量%の範囲の量で反射防止膜組成物中に存在することができる。
【0038】
本発明の典型的な反射防止膜組成物は、反射防止膜組成物の全重量を基準にして固形物を約15重量%までの量、好ましくは8重量%未満の量で含むことができる。固形物は、反射防止膜組成物の全固形物含有量を基準にして、光酸発生剤0〜25重量%、ポリマー50〜99重量%、架橋剤1〜50重量%、場合によっては及び酸もしくは熱酸発生剤0〜25重量%を含んでなることができる。好ましくは、光酸発生剤の量は、約0.01〜約20重量%の範囲である。好ましくは、架橋剤は、約5〜約40重量%、より好ましくは10〜35重量%の範囲である。固形成分は、溶剤または複数種の溶剤の混合物中に溶解し、そして濾過して不純物を除く。該反射防止膜の成分は、イオン交換樹脂カラムに通すか、濾過もしくは抽出法などの技術によって処理して、製品の品質を高めることができる。
【0039】
本発明の反射防止膜には、塗膜の性能を高めるために、他の成分、例えば低級アルコール、染料、表面レベリング剤、粘着性促進剤、消泡剤などを加えることができる。これらの添加剤は、30重量%までの量で存在することができる。性能に悪影響を及ぼさない限り、他のポリマー、例えばノボラック、ポリヒドロキシスチレン、ポリメチルメタクリレート及びポリアリーレートも該組成物中に加えることができる。このポリマーの量は、好ましくは、該組成物の全固形物の50重量%未満、より好ましくは35重量%未満、更により好ましくは20重量%未満に抑える。安定性を高めるために該組成物中に塩基を加えることもできる。光塩基(photobases)及び非光塩基(nonphotobases)の両方とも既知の添加剤である。塩基の例は、アミン類、水酸化アンモニウム類、及び感光性塩基である。特に好ましい塩基は、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリオクチルアミン、n−オクチルアミン、トリメチルスルホニウムヒドロキシド、トリフェニルスルホニウムヒドロキシド、ビス(t−ブチルフェニル)ヨードニウムシクラメート、及びトリス(tert−ブチルフェニル)スルホニウムシクラメートである。
【0040】
該新規組成物の吸光パラメータ(k)は、偏光解析法を用いて測定して、約0.1〜約1.0、好ましくは約0.15〜約0.7の範囲である。該反射防止膜の屈折率(n)も最適化される。n及びk値は、偏光解析器、例えばJ. A. Woollam WVASE VU−302 TM偏光解析器を用いて計算することができる。k及びnの最適範囲の正確な値は、使用する露光波長及び用途に依存する。典型的には、193nmには、kの好ましい範囲は0.1〜0.75であり、248nmには、kの好ましい範囲は0.15〜0.8であり、そして365nmには、好ましい範囲は0.1〜0.8である。該反射防止膜の厚さは、上面のフォトレジストの厚さよりも薄い。好ましくは、該反射防止膜の膜厚は、(露光波長/屈折率)の値よりも薄く、より好ましくは(露光波長/2×屈折率)の値よりも薄い。この際、前記の屈折率とは、反射防止膜の屈折率のことであり、これは、偏光解析器で測定することができる。該反射防止膜の最適な膜厚は、露光波長、反射防止膜の屈折率及びフォトレジストの屈折率、上面及び底面と膜の吸光特性、及び基材の光学特性によって決定される。該底面反射防止膜は、露光及び現像段階によって除去しなければならないので、最適な膜厚は、反射防止膜に吸光がないところの光学ノードを避けることによって決定される。
【0041】
該反射防止膜組成物は、当業者には周知の技術を用いて基材上にコーティングされる。このような技術としては、例えば浸漬塗布法、スピンコート法または噴霧塗布法などがある。当業界において公知の様々な基材、例えば平坦な基材、起伏(トポグラフィ)のある基材や、または穴を有する基材などを使用することができる。半導体基材の例は、結晶性及びポリ結晶性ケイ素、二酸化ケイ素、(オキシ)窒化ケイ素、アルミニウム、アルミニウム/ケイ素アロイ、及びタングステンである。場合によっては、基材の縁のところに、エッジビーズと称されるフォトレジスト膜の盛り上がりが生ずることがある。このエッジビーズは、当業界において通常の技術、知識を持つものには周知の技術を用いて、溶剤または複数種の溶剤の混合物により除去することができる。本発明の組成物は、エッジビーズリムーバと特に相溶性が高い。エッジビーズリムーバに使用される典型的な溶剤は、乳酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、またはこれらの混合物である。塗膜は次いで硬化される。温度の好ましい範囲は、ホットプレートまたは等価の加熱装置の使用の場合には、約120℃〜約240℃で約30〜120秒、より好ましくは約150〜約200℃で45〜90秒である。該反射防止膜の膜厚は約20nm〜約300nmの範囲である。最適な膜厚は、当業界において周知な通りに、良好なリソグラフィ性が得られる厚さ、特にフォトレジスト中に定在波が観察されない厚さに定められる。本新規組成物では、その塗膜の優れた吸光性及び屈折率の性質の故に非常に薄い塗膜を使用し得ることが図らずしも見出された。硬化された反射防止膜は、この段階では、アルカリ性現像剤溶液中にも不溶性である。次いで、フォトレジストを、該反射防止膜の上にコーティングすることができる。
【0042】
水性アルカリ性溶液で現像されるポジ型フォトレジストが本発明に有用であるが、ただし、フォトレジスト及び反射防止膜中の各光活性化合物が、フォトレジストの結像プロセスに使用される同じ露光波長において吸収を示すことが条件である。ポジ型フォトレジスト組成物を放射線に像様露光すると、フォトレジスト組成物の放射線で露光された領域が現像剤溶液に溶けやすくなり(例えば、転位反応が起こる)、他方、未露光の領域は現像剤溶液に対して比較的不溶性のまま残る。それゆえ、露光されたポジ型フォトレジストを現像剤で処理すると、塗膜の露光された領域が除去されて、フォトレジスト塗膜にポジ型の像が形成される。フォトレジスト解像度とは、露光及び現像の後に、レジスト組成物が、フォトマスクから基材へと高いレベルの鋭い像縁をもって転写できる最小の図形(feature)と定義される。現在の多くの製造用途では、1ミクロン未満のオーダーのレジスト解像度が必要である。加えて、現像されたフォトレジストの壁の側面が、基材に対してほぼ垂直であることが大概の場合において望ましい。レジスト塗膜の現像された領域と現像されていない領域との間のこのような明確な境界画定が、基材へのマスク像の正確なパターン転写につながる。このことは、微細化に向かう傾向がデバイス上での微少寸法を小さくしているのでより一層重要である。
【0043】
ノボラック樹脂と、光活性化合物としてのキノンジアジド化合物とを含むポジ型フォトレジストは、塗業界において周知である。ノボラック樹脂は、典型的には、シュウ酸などの酸触媒の存在下に、ホルムアルデヒドと一種もしくは二種以上のポリ置換フェノールとを縮合することによって製造される。光活性化合物は、一般的には、ポリヒドロキシフェノール性化合物を、ナフトキノンジアジド酸またはそれらの誘導体と反応させることによって得られる。これらの種のレジストの感度は、典型的には、約300nm〜440nmの範囲である。
【0044】
約180nm〜約300nmの短波長に感度を示すフォトレジストも使用することができる。これらのフォトレジストは、通常は、ポリヒドロキシスチレンもしくは置換されたポリヒドロキシスチレン誘導体、光活性化合物、場合によっては及び溶解抑制剤を含む。次の文献、すなわち米国特許第4,491,628号明細書、米国特許第5,069,997号明細書及び米国特許第5,350,660号明細書に、これらの種の使用されるフォトレジストについての例示がある。なお、これらの特許文献の内容は本明細書中に掲載されたものとする。193nm及び157nm露光用の特に好ましいものは、非芳香族系ポリマー、光酸発生剤、場合によっては溶解抑制剤、及び溶剤を含むフォトレジストである。当業界において既知の193nmに感度を示すフォトレジストは、次の文献、すなわち欧州特許出願公開第794458号明細書、国際公開第97/33198号パンフレット及び米国特許第5,585,219号明細書に記載されている。これらの文献の内容は本明細書中に掲載されたものとする。しかし、193nmに感度を示すものであれば、どのようなフォトレジストでも、本発明の反射防止膜組成物の上に使用することができる。
【0045】
次いで、フォトレジストの膜を、硬化された該反射防止膜の上にコーティングしそしてベーク処理して、フォトレジスト溶剤を実質的に除去する。このフォトレジスト及び反射防止膜からなる二層の系は、次いで、化学線で像様露光する。次の加熱段階において、露光段階中に発生した酸が反応して、該反射防止膜組成物のポリマーを脱架橋させ、そうして該反射防止膜の露光された領域が現像溶液中にアルカリ可溶性になる。この露光後ベーク処理段階のための温度は、ホットプレートもしくは等価の加熱システムを用いた場合に40℃〜200℃で30〜200秒、好ましくは80℃〜160℃で40〜90秒の範囲であることができる。場合により、一部のアセタール酸不安定結合などのある種のケミストリーでは、脱保護化は室温で進行するので、露光後ベーク処理は無しで済ませることができる。該反射防止膜の露光された領域におけるポリマーは今や水性アルカリ性溶液中に可溶性である。この二層の系は、次いで水性アルカリ性現像剤中で現像して、フォトレジスト及び反射防止膜を除去する。この現像剤は、好ましくは水性アルカリ性溶液、例えばテトラメチルアンモニウムヒドロキシドを含む水性アルカリ性溶液である。この現像剤は、更に、界面活性剤、ポリマー、イソプロパノール、エタノールなどの添加剤を含むこともできる。フォトレジス膜及び反射防止膜のコーティング及び結像プロセスは当業者には周知であり、そして使用されるフォトレジストと反射防止膜との特定のタイプの組み合わせに最適化される。像が形成されたこの二層の系は、次いで、集積回路の製造プロセスによって要求されるように更に加工することができる。このような加工段階としては、例えば金属の付着及びエッチングなどがある。
【0046】
上に挙げた各々の文献は、全ての目的に関連してその内容の全てが本明細書中に掲載されたものとする。以下の具体例は、本発明の組成物を製造及び使用する方法の詳細な例示を教示するものである。しかし、これらの例は、本発明の範囲を如何様にも限定もしくは減縮することを意図したものではなく、そして本発明を実施するために排他的に使用しなければならない条件、パラメータまたは値を教示するものとは解釈するべきではない。
【実施例】
【0047】
吸光パラメータ(k)及び屈折率(n)は、角度可変分光光度偏光解析器を用いて測定した。底面反射防止膜(B.A.R.C.)溶液を、下塗りしたシリコンウェハ上にスピンコートしそしてベーク処理して、所定の膜厚を得た。次いで、このコーティングされたウェハを、J.A. WoollamまたはSopra Corporation製造の偏光解析器を用いて測定した。得られたデータを近似して、このB.A.R.C.膜のk及びn値を得た。
【0048】
合成例1
凝縮器、温度計、窒素ガス入口及び機械的攪拌機を備えた250ml四つ首フラスコに、9−アントラセンメタノールのメタクリレートエステル(AMMA)(4.2g)、4−アセトキシスチレン(13.8g)、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)(0.8g)、及びプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)(50g)を加えた。溶液が得られ、これを15分間脱気した。次いで、この反応混合物を70℃に加熱し、そして窒素を流しながらこの温度で5時間攪拌した。重合完了後、得られた溶液を室温まで冷却し、そしてテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(水中26重量%)溶液(7g)を加えた。反応温度を40℃に高めそしてこの温度に3時間維持して、その後、60℃に高めた。60℃で8時間加熱した後、反応混合物を室温まで冷却し、そして酢酸を用いて6のpHに酸性化した。得られたポリマーを、メタノール600ml中で析出させ、そして得られた固形物を濾過し、メタノール及び脱イオン水で洗浄し、次いで乾燥した。析出したポリマーを、PGME60g中で再溶解し、そして再びメタノール600ml中で析出させた。得られた固形物を濾過し、洗浄しそして減圧下に40℃で乾燥した。得られたポリマー(以下の構造式(I)で表されるポリマー)は、ポリスチレン標準を使用してゲル透過クロマトグラフィ(GPC)により測定して、12,800の重量平均分子量(Mw)及び5,400の数平均分子量(Mn)を有していた。
【0049】
【化3】

合成例2〜5
以下の構造式(II)〜(V)を有するポリマーを、合成例1と同様の手順で合成した。ただし、各々の構造式に示したモノマー比に沿って異なる種及び量のモノマーを使用した。
【0050】
【化4】

例1
合成例1からの構造式(I)で表されるコポリマー(2.5g)、トリス(4−ビニルオキシブチル)トリメリテート(0.25g、Vectomer(R)5015、Aldrich社から入手可能)、及びトリフェニルスルホニウムノナフレート(0.05g)を、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)68g及びプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)29g中に溶解して、反射防止膜組成物とした。この溶液を、0.1μmフィルターに通して濾過した。
【0051】
例2
合成例1からの構造式(I)で表されるコポリマー(3g)、ビス(4−ビニルオキシブチル)アジペート(0.4g、Vectomer(R)4060、Aldrich社から入手可能)、及びシュウ酸(0.01g)を、PGMEA67.6g及びPGME28.8g中に溶解して、反射防止膜組成物とした。この溶液を0.1μmフィルターに通して濾過した。
【0052】
例3
合成例2からの構造式(II)で表されるコポリマー(2.6g)、トリス(4−ビニルオキシブチル)トリメリテート(0.26g、Vectomer(R)5015、Aldrich社から入手可能)、及びトリフェニルスルホニウムノナフレート(0.05g)を、PGMEA68g及びPGME29g中に溶解して、反射防止膜組成物とした。この溶液を0.1μmフィルターに通した。
【0053】
例4
合成例1からの構造式(I)で表されるコポリマー(3g)、トリエチレングリコールジビニルエーテル(0.6g、RAPI−CURE(R)DVE−3、ISP社(日本)から入手可能)、及びシュウ酸(0.01g)を、PGMEA67.6g及びPGME28.8g中に攪拌しながら溶解して、反射防止膜組成物とした。この溶液を、0.1μmフィルターに通して濾過した。
【0054】
例5
合成例3からの構造式(III)で表されるコポリマー(4g)、トリス(4−ビニルオキシブチル)トリメリテート(0.5g、Vectomer(R)5015、Aldrich社から入手可能)、及びシュウ酸(0.02g)を、PGMEA70g及びPGME30g中に攪拌しながら溶解して反射防止膜組成物とした。この溶液を、0.1μmフィルターに通して濾過した。
【0055】
例6
合成例4からの構造式(IV)で表されるコポリマー(2g)、トリス(4−ビニルオキシブチル)トリメリテート(0.2g、Vectomer(R)5015、Aldrich社から入手可能)、及びシュウ酸(0.01g)を、PGMEA70g及びPGME30g中に攪拌しながら溶解して、反射防止膜組成物とした。この溶液を0.1μmフィルターに通して濾過した。
【0056】
例7
合成例5からの構造式(V)で表されるコポリマー(2g)、トリス(4−ビニルオキシブチル)トリメリテート(0.2g、Vectomer(R)5015、Aldrich社から入手可能)、及びシュウ酸(0.01g)を、PGMEA70g及びPGME30g中に攪拌しながら溶解して、反射防止膜組成物とした。この溶液を0.1μmフィルターに通して濾過した。
【0057】
例8
例1で調製した溶液を、2500rpmで60秒間、6インチシリコンウェハ上にスピンコートし、次いでホットプレートで170℃で90秒間ベーク処理して、硬化した反射防止膜層を形成した。J.A. Woollam companyまたはSopra corporation製の偏光解析器によって測定したこの塗膜の膜厚は、約700Åであった。このコーティングされたウェハを観察すると、コーティング工程中に反射防止膜上に形成されたエッジビーズは、30重量%PGMEA及び70重量%PGMEからなる混合物をエッジビーズ除去溶剤として用いて、シリコンウェハを裏面リンスすることによって簡単に除去できることが分かった。
【0058】
例1〜8で調製した溶液を6インチシリコンウェハ上にスピンコートし、そして異なる温度でホットプレート上でベーク処理した(一つのサンプルにつき一つのベーク処理温度及び二枚のウェハ)。B.A.R.C.塗膜の各々の組からの一つのコーティングされたウェハは、通常のフォトレジスト溶剤であるPGMEAでパドル現像し、そして残りのウェハは現像剤でパドル現像した。現像は、それぞれ60秒間行い、次いでスピン乾燥した。150℃を超える温度でベーク処理した場合は、これらのウェハ上では、反射防止膜層に明らかな膜厚の変化は観察されなかった。これは、これらの膜は高程度に架橋され、耐溶剤性であること、すなわち、フォトレジストをB.A.R.C.上にコーティングした際に、フォトレジスト溶剤との相互混合が起こらなかったことを示している。末端ビニルエーテル基を含む架橋剤を用いずに調製した調合物について比較試験を行ったところ、塗膜全体が、PGMEA及び現像剤の両方に除去され得ることが観察された。
【0059】
例9
例1〜4で調製した溶液を6インチシリコンウェハ上にスピンコートし、そして170℃で90秒間ベーク処理して、60ナノメータの厚さを得た。次いで、DUVフォトレジスト(AZ(R)DX6270P(Clariant(Japan)K.K.から入手可能))をその上にコーティングし、そして120℃で90秒間ソフトベーク処理して、0.45ミクロンの厚さを得た。これらのコーティングされたウェハを、Cannon FPA−3000 EX5 248nmステッパを用いて像様露光した。これらの露光されたウェハを、130℃で90秒間、露光後ベーク処理し、その後、AZ(R)300MIF現像剤(Clariant Corp.から入手可能な、2.38重量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液)を用いて60秒間パドル現像した。二次電子顕微鏡の結果は、22mJ/cmでは、0.20μm1:1密集ライン及び0.20μm孤立ラインの両方が、フォトレジスト層及び反射防止膜層の双方において完全に開いている(open)ことを示した。基材からの反射による明らかな定在波は、パターンプロフィル上には観察されなかった。
【0060】
例10
ポリ(ヒドロキシスチレン−メタクリレート)(55/45モル比)1.5g、シュウ酸/トリエチルアミン(1:1)0.075g、トリフェニルスルホニウムトリフレート0.06g、及びVectomerTM5015(Aldrich社から入手可能)0.225gを、乳酸エチル98.5g中に溶解してB.A.R.C.溶液を得た。この溶液を、0.2μmマイクロフィルターに通して濾過した。このB.A.R.C.膜は、J. A. Woollam WVASE VU−302 TM偏光解析器によって測定して、193nmにおいてそれぞれ1.59及び0.62の屈折率(n)及び吸光パラメータ(k)を示した。
【0061】
このB.A.R.C.溶液を、下塗りしたシリコンウェハ上にコーティングし、そしてホットプレートで200℃で60秒間加熱して、35nmの膜厚を得た。このB.A.R.C.ウェハを、330nmの膜厚でAZ(R)1020Pフォトレジスト(ニュージャージー州ソマービル在のClariant Corp.から入手可能)でコーティングした。このウェハを次いでホットプレートで120℃で60秒間ベーク処理した。このコーティングされたウェハを、像様露光のためにISI193nmミニステッパを用いて露光した。次いで、この露光されたウェハを、130℃で90秒間、露光後ベーク処理し、その後、AZ(R)300MIF現像剤を用いて23℃で30秒間パドル現像した。二次電子顕微鏡を用いて、0.15μmフォトレジスト/B.A.R.C.ライン(1:1)が、40mJ/cmの線量で得られたことが確認された。
【0062】
例11
ポリ(ヒドロキシスチレン−メタクリレート)(55/45モル比)0.075g、シアノ酢酸0.015g、及びVectomerTM5015(0.022g)をプロピレングリコールモノメチルエーテル8.0g中に溶解した。この溶液を0.2μmマイクロフィルターに通して濾過した。
【0063】
このB.A.R.C.溶液を、下塗りしたシリコンウェハ上にコーティングし、そしてホットプレートで175℃で60秒間加熱して293Åの膜厚を得た。このB.A.R.C.ウェハを、AZ(R)T430フォトレジスト(ニュージャージー州ソマービル在のClariant Corp.から入手可能)でコーティングし、ホットプレート上で120℃で60秒間加熱して116nmの膜厚を得た。このコーティングされたウェハを、像様露光のためにISI193nmミニステッパを用いて露光した。次いで、この露光されたウェハを120℃で20秒間、露光後ベーク処理し、次いで、AZ(R)300MIF現像剤を用いて23℃で30秒間パドル現像した。二次電子顕微鏡を用いて、0.20μmフォトレジスト/B.A.R.C.ライン(1:1)が、20mJ/cmの線量で得られたことが確認された。
【0064】
例12
例10からのB.A.R.C.溶液を、下塗りしたシリコンウェハ上にコーティングし、そして175℃で90秒間ベーク処理して499Åの膜厚を得た。このB.A.R.C.ウェハを、AZ(R)T430フォトレジスト(ニュージャージー州、ソマービル在のClariant Corp.から入手可能)でコーティングし、ホットプレート上で120℃で60秒間加熱して、116nmの膜厚を得た。このコーティングされたウェハを、像様露光のためのISI193nmミニステッパを用いて露光した。次いで、この露光されたウェハを120℃で20秒間、露光後ベーク処理し、その後AZ(R)300MIF現像剤を用いて23℃で30秒間パドル現像した。二次電子顕微鏡を用いて、0.35μmフォトレジスト/B.A.R.C.ライン(1:1)が21mJ/cmの線量で得られたことが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】図1は、光酸発生剤の構造の例を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性アルカリ性現像剤中で現像することが可能な光結像性ポジ型底面反射防止膜組成物であって、発色団基を有する少なくとも一種の繰り返し単位と、ヒドロキシル及び/またはカルボキシル基を有する少なくとも一種の繰り返し単位とを含んでなるポリマー、末端ビニルエーテル基を有する架橋剤、場合によっては及び光酸発生剤を含む、上記組成物。
【請求項2】
発色団基がポリマーに化学的に結合しており、そして次の構造要素を含む化合物、すなわち芳香族炭化水素環、置換されているかもしくは置換されていないフェニル基、置換されているかもしくは置換されていないアントラシル基、置換されているかもしくは置換されていないフェナントリル基、置換されているかもしくは置換されていないナフチル基、酸素、窒素、硫黄及びこれらの混合物から選択されるヘテロ原子を含む置換されているかもしくは置換されていない複素環式芳香族環を含む化合物、から選択される、請求項1の組成物。
【請求項3】
ヒドロキシル及び/またはカルボキシル基を含む繰り返し単位が、アクリル酸、メタクリル酸、ビニルアルコール、ヒドロキシスチレン類、及びヒドロキシスチレンと1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール含有ビニルモノマーとのコポリマーから選択されるモノマーから誘導される、請求項1の組成物。
【請求項4】
発色団基とヒドロキシル及び/またはカルボキシル基が同一の繰り返し単位中に存在する、請求項1の組成物。
【請求項5】
以下の一般構造式
【化1】

[式中、Rは、(C〜C30)線状、分枝状もしくは環状アルキル、置換されているかもしくは置換されていない(C〜C40)アリール、及び置換されているかもしくは置換されていない(C〜C40)脂肪環式炭化水素から選択され、そしてnは≧2である]
で表されるビニルエーテル末端基含有架橋剤を含む、請求項1の組成物。
【請求項6】
酸または熱酸発生剤を更に含む、請求項1の組成物。
【請求項7】
酸、または熱酸発生剤から誘導される酸が、1.0を超えるpKaを有する、請求項6の組成物。
【請求項8】
酸、または熱酸発生剤から誘導される酸が、220℃未満の温度で反射防止膜から除去されるものである、請求項6の組成物。
【請求項9】
染料を更に含む、請求項1の組成物。
【請求項10】
染料が、モノマー性染料、ポリマー性染料、及びモノマー性染料とポリマー性染料との混合物からなる群から選択される、請求項9の組成物。
【請求項11】
反射防止膜層が、0.1〜1.0の範囲のk値を有する、請求項1の組成物。
【請求項12】
反射防止膜層が、フォトレジストの厚さより薄い厚さを有する、請求項1の組成物。
【請求項13】
光酸発生剤が、50nm〜450nmの範囲の化学線に感度を示すものである、請求項1の組成物。
【請求項14】
次の段階、すなわち
a) 請求項1の光結像性底面反射防止膜組成物の塗膜を基材上に形成する段階、
b) 前記反射防止膜をベーク処理する段階、
c) 上面フォトレジスト層の塗膜を、上記底面塗膜の上に供する段階、
d) 上記フォトレジスト層及び底面反射防止膜層を、同じ波長の化学線で像様露光する段階、
e) 上記基材上の上記フォトレジスト層及び底面反射防止膜層を露光後ベーク処理する段階、及び
f) 上記フォトレジスト層及び底面反射防止膜層を水性アルカリ性溶液で現像する段階、
を含む、ポジ型の像を形成する方法。
【請求項15】
コーティングの後かつ反射防止膜組成物のベーク処理段階の前に、エッジビーズを除去する段階を更に含む、請求項14の方法。
【請求項16】
反射防止膜が、フォトレジスト層をコーティングする前のベーク処理段階の後で、有機溶剤及び水性アルカリ性溶液中に不溶性になり、そしてフォトレジスト層及び底面反射防止膜層の現像の前の化学線による露光の後で、水性アルカリ性溶液中に可溶性になる、請求項14の方法。

【図1】
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【公開番号】特開2011−150365(P2011−150365A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−59412(P2011−59412)
【出願日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【分割の表示】特願2007−504508(P2007−504508)の分割
【原出願日】平成17年3月23日(2005.3.23)
【出願人】(305010827)エイゼット・エレクトロニック・マテリアルズ・ユーエスエイ・コーポレイション (81)
【Fターム(参考)】