説明

光結合システム

【課題】複数のノードの各ノードを他のノードに対して1対1の関係で独立して接続する光学的静的網を容易に形成することが可能である。
【解決手段】ノード110、ノード112等の複数のノードとハブ130と光バックプレーン80とを具えて構成される光結合システムである。ハブは、複数のノードの各ノードを他のノードに対して1対1の関係で独立して接続する、フレキシブル光ファイバ配線板等の光配線板によって構成される静的網132を具えている。光バックプレーン80は、複数のノードとハブとを光学的に接続する光ファイバープレートを具えている。それぞれのノードは、送信パケット信号及び受信パケット信号を処理するパケット信号処理回路と光電変換器とを具えている。一のノードから他のノードに向けて信号が送られる場合、一のノードから送信される信号は、ハブが具える静的網と光バックプレーンとを介して他のノードに入力される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、光伝送路を用いて複数の電気回路サブシステムであるノード(Node)間の情報伝送を、ハブ(Hub)を介して実現するための光結合システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、広帯域なネットワークの拡充と動画像転送など大量の高速パケット転送を必要とする応用の増大によりネットワークを流通する情報量が増大している。その結果、インターネットにおけるルータ等の中継機器システム内において情報伝送を行う単位となる電気回路サブシステムであるノードや、ノード相互間の通信を媒介するサブシステムであるハブ等の情報処理容量の向上が求められている。しかしながら電気信号による伝送速度限界が、システム全体としての情報処理容量の向上の障壁となっている。この障壁を打開するためには、ノード間を光伝送路によって相互接続することが有効である。
【0003】
このようなノード間の相互接続は、一般的には、電気信号が用いられている。一方、光ファイバ等の光伝送路を敷線した光バックプレーンに、ノード及びハブを、光ソケットを介して挿入接続することによって達成されるシステムも提案されている(例えば、特許文献1〜3を参照)。このシステムでは、ノード及びハブには光電変換器が具えられている。また、ノードは、外部ネットワークに接続され、パケット処理を行うLSI群、光電変換器等の素子が一枚のプリント配線基板上に配置され、これら素子間がこのプリント配線基板上に形成されている電気信号伝送路及び光信号伝送路によって接続されて構成されている。
【0004】
図1を参照して、ノード間の相互接続技術を用いる従来の光結合システムの基本的構成及びその動作の概略について説明する。図1は、動的網(dynamic network)を具えているハブを用いた従来の光結合システムの概略的ブロック構成図である。動的網とは、送信側のノードと受信側のノードとを結ぶ伝送線路の選択を、スイッチ動作に基づいて行う配線ネットワークをいう。例えば、動的網は後述するように電気的に動作するクロスポイントスイッチLSI等によって実現される。図1において、ブロックが具える素子間の結線については、図示を省略してある。
【0005】
図1に示す従来の光結合システムの構成上の特徴は、複数のノードの各ノードに対して他のノードを1対1の関係で接続して通信を実行するために、クロスポイントスイッチによって、送信側のノードと受信側のノードとを結ぶ伝送線路の選択が行われる点にある。すなわち、従来の光結合システムは、ノード間を接続する伝送路の選択に、動的網が使われることが特徴である。
【0006】
図1に示す従来の光結合システムは、ハブ30を介してノード10とノード60が結合されている。ハブ30は、クロスポイントスイッチLSI等によって実現される動的網30-1と光電変換器30-2を具えている。また、ノードは送信信号である送信パケット信号及び受信信号である受信パケット信号を処理するパケット信号処理回路と光電変換器とを具えている。すなわち、ノード10はパケット信号処理回路10-1と光電変換器10-2とを具え、ノード60は、パケット信号処理回路60-1と光電変換器60-2とを具えている。図1では、ハブ30を介してノード10とノード60とを代表して示してあるが、光結合システムが具えるノードはこの2つに限られず、総計3個以上であれば幾つであってもかまわない。
【0007】
ノード10からノード60に向けて信号が送られる場合、ノード10から送信される信号は、ハブ30が具える動的網30-1によって、ノード60に出力されるための伝送線路が選択されて出力され、光バックプレーン80を介してノード60に入力される。このようにして、ノード10からノート60へ向けた通信が行われる。
【0008】
図1に示すように従来の光結合システムは、ノードとハブのいずれにおいても光電変換が行われる。ノードにおける光電変換は、ノードにおける受信パケット信号の処理が電気的手段で行われるため、光パケット信号の形態で受信された受信パケット信号を、電気パケット信号に変換する必要性から行われる。現在の技術では、ノードにおいて実行される受信パケット信号処理を光学的に行うことは不可能であるので、ノードにおいて実行される光電変換は必須の機能である。一方、ハブにおける光電変換は、動的網を実現する手段が電気的に機能するクロスポイントスイッチLSIが用いられていることに起因して必要とされる。
【0009】
動的網をクロスポイントスイッチLSIによって実現する場合、光パケット信号を電気パケット信号に変換してクロスポイントスイッチLSIに入力し、クロスポイントスイッチLSIから出力される電気パケット信号を光パケット信号に変換する、光電変換器を必要とする。この光電変換器とクロスポイントスイッチLSIとを結合するインターフェースを工夫することによって、低コスト、低消費電力、かつ高いスループットが実現された光結合システムが開示されている(例えば非特許文献1を参照)。
【0010】
従来の光結合システムは、その具体的な実現手段が複数知られているが、ここでは、動的網の動作を具体的に明らかにするために、非特許文献1に開示されている技術を用いて構成される光結合システムを一例として取り上げる。図2を参照して、この光結合システムの構成及びその動作について具体的に説明する。
【0011】
図2は、動的網により構成されるハブを用いた、非特許文献1に開示されている従来の光結合システムの具体例を示す概略的ブロック構成図である。この光結合システムにおいて、光ソケットとクロスポイントスイッチLSIとを結合するインターフェースは、PETIT (Photonic/Electronic Tied Interface)を用いて実現されている。図2において、光信号の伝送路を太線で示し、電気信号の伝送路を細線で示してある。PETITとは、光電変換機能を有するインターフェースの一種である。
【0012】
図2に示す従来の光結合システムは、ノード10及び60と、光ソケット22及び50と、ハブ30とを具えて構成されている。図2では、ノード10及び60についてのみ具体的な構成を示してあるが、この光結合システムは、6個のノードが接続可能である場合を示している。すなわち、光ソケット52、54、56及び58を介して更に4個のノードを接続可能な構成として示してあり、これらの光ソケットを介して接続される4個のノードについては図示を省略してある。図2では、合計6個のノードを具える光結合システムを示しているが、ノードの数は6個に限定されることはなく3個以上であれば幾つであってもよい。
【0013】
また、図2はノードとハブとの接続の関係を概念的に分かり易く、必要最小限の構成要素について象徴的に示したものであって、その実装形態を正確に反映して示したものではない。実装においては、光バックプレーンに対して、ノード及びハブを構成するボードが略直角となるように光バックプレーンが具えるソケットに挿入されて光結合システムが構築される。図2では、このような実装上の情報については、図示を省略してある。
【0014】
ノード10は、パケット信号処理回路14及び光電変換器18がプリント配線基板12に搭載されて構成されている。パケット信号処理回路14と光電変換器18は、プリント配線基板12に形成された電気伝送路16によって接続されている。光電変換器18と光ソケット22とは、光伝送路20によって接続されている。同様に、ノード60は、パケット信号処理回路72及び光電変換器68がプリント配線基板62に搭載されて構成されている。パケット信号処理回路72と光電変換器68は、プリント配線基板62に形成された電気伝送路70によって接続されている。光電変換器68と光ソケット50とは、光伝送路64によって接続されている。光伝送路64は、一般に入力用光伝送路と出力用光伝送路との両方の光伝送路を含む。
【0015】
一方、ハブ30は、クロスポイントスイッチLSI 40、光電変換器36、44、66、74、76、78を具えて構成されている。
【0016】
いま、ノード10からノード60に向けて信号が送られる場合を説明する。この場合には、ノード10から送信される光信号は、光ソケット22を介してハブ30に入力される。ハブ30に入力された光信号は光伝送路32を伝搬してPETITコネクタ34を介して光電変換器36に入力されて電気信号に変換される。この電気信号は、電気伝送路38を伝搬してクロスポイントスイッチLSI 40に入力される。
【0017】
非特許文献1に開示されているPETITとは、小型化された光学的入出力インターフェースを意味しており、電気信号と光信号とを接続するための素子である。すなわち、電気信号を光信号に変換して接続し、また光信号を電気信号に変換して接続する機能を有する素子である。図2では、PETITコネクタと光電変換器とを一体化して示すことによってPETITを示している。ここで、光電変換器とは、電気信号を光信号に変換する半導体レーザ等の発光素子と、光信号を電気信号に変換するフォトダイオード等の受光素子との双方を指す。すなわち、PETITは、発光素子と受光素子との双方を具えて構成されている。
【0018】
図2において、PETITコネクタ34と光電変換器36を一体化して構成されるインターフェースがPETITである。PETITコネクタ34は、光電変換器36と光伝送路とを接合するために好適な形状に形成された光コネクタである。また、PETITコネクタ46と光電変換器44を一体化して構成されるインターフェースがPETITである。同様に、光電変換器66、74、76及び78もPETITを構成する光電変換器である。
【0019】
クロスポイントスイッチLSI 40に入力された電気信号は、クロスポイントスイッチLSI 40によって転送先のノードに向けて出力される。例えば、ノード10からクロスポイントスイッチLSI 40に入力された電気信号が、ノード60に向けて出力される場合を説明する。電気信号は通常パケット信号の形態であり、転送先のノード宛先(この場合ノード60)がこのパケット信号を構成するヘッダに書き込まれている。
【0020】
ノード10からクロスポイントスイッチLSI 40に入力された電気信号は、クロスポイントスイッチLSI 40によって、この宛先に転送されるべく伝送線路が選択されて、クロスポイントスイッチLSI 40から出力される。この場合、転送先のノード宛先がノード60であるので、クロスポイントスイッチLSI 40から出力された電気信号は電気伝送路42に入力され、電気伝送路42を伝搬して光電変換器44に入力される。
【0021】
光電変換器44に入力された電気信号は光信号に変換されて、この光信号はPETITコネクタ46を介して光伝送路48に入力される。光伝送路48を伝搬した光信号は光ソケット50を介してノード60に入力される。
【0022】
ノード60に入力された光信号は、光伝送路64を伝搬して光電変換器68に入力されて電気信号に変換される。この電気信号は電気伝送路70を伝播してパケット信号処理回路72に入力される。このようにして、ノード10からノート60へ向けた通信が行われる。ノード60からノード10へ向けた通信も、信号の伝搬方向が逆となるだけであって、同様の経路をたどって行われる。
【0023】
図2では図示を省略してあるが、光ソケット52、54、56及び58を介してそれぞれ接続される4個のノードを含め、6個のノードの各ノードに対して他のノードを1対1の関係で接続して通信を行う場合についても、ノード10とノート60との通信と同様に行われる。
【0024】
すなわち、6個の各ノードから光信号の形態で送信された信号は、ハブ30が具える光電変換器によって電気信号の形態の信号に変換されて、クロスポイントスイッチLSI 40に入力される。クロスポイントスイッチLSI 40に入力されたそれぞれの信号は、送信先のノードと結ぶ伝送線路が選択されて、選択先のノードに接続されている光電変換器に入力される。例えば、クロスポイントスイッチLSI 40に入力された信号の送信先がノード60である場合は、ノード60と結ぶ伝送線路が選択されて、ノード60に接続されている光電変換器44に入力される。
【0025】
このように、6個のノードの各ノードに対して他のノードを1対1の関係で接続して通信を行う場合、クロスポイントスイッチLSI 40によって、送信側のノードと受信側のノードとを結ぶ伝送線路の選択が行われる。すなわち、図2に示す従来の光結合システムは、ノード間の接続において、1対1の関係で接続されるノードの組み合わせを決定する送信側のノードと受信側のノードとを結ぶ伝送線路の選択を、クロスポイントスイッチLSI 40によって電気的に実行されている。このように、送信側のノードと受信側のノードとを結ぶ伝送線路の選択を、スイッチ動作に基づいて行う配線ネットワークを上述した動的網という。
【0026】
上述したように、図2に示す従来の光結合システムは、各ノードに対して他のノードを1対1の関係で接続して通信を行う構成となっている。そのため、一般にノードの数をnとした場合、各ノードからは出力信号を出力する(n-1)個のポートが必要であり、各ノードへ信号を入力するための(n-1)個のポートが必要である。すなわち、図2では、簡略化して各ノードからの入出力信号の伝送線路を1本で代表させて示してあるが、実際には、信号を入力するための(n-1)本の伝送路と、信号を出力するための(n-1)本の伝送路との合計2(n-1)本の伝送線路が必要である。ここで、nは3以上の整数である。
【0027】
従って、図2では、各ノードが具える光電変換器も1台ではなく、(n-1)個の電気信号を光信号に変換する光電変換器と、(n-1)個の光信号を電気信号に変換する光電変換器とが必要である。図2では電気信号を光信号に変換する光電変換器も、光信号を電気信号に変換する光電変換器も互いに区別することなくO/Eと表記してあるが、両者を特に区別して説明する必要があるときは、以後、電気信号を光信号に変換する光電変換器をE/O変換器、光信号を電気信号に変換する光電変換器をO/E変換器と書き分けることもある。
【0028】
上述の信号伝送線路の数及び光電変換器の数に関する状況を正しく反映させた構成について、図3を参照して説明する。図3は、パケット信号処理回路14とクロスポイントスイッチLSI 40との接続部分の概略的ブロック構成図である。図3において、光信号の経路を太線で示し、電気信号の経路を細線で示してある。
【0029】
図3ではn個のノードが1つのハブを介して光結合システムを形成している場合を想定し、ノード10が具えるパケット信号処理回路14とハブ30が具えるクロスポイントスイッチLSI 40との接続部分を示している。
【0030】
ノード10は、ノード10を除く(n-1)個のノードと接続可能とするために、パケット信号処理回路14からはノード10を除く(n-1)個のノードのそれぞれに送信する送信信号が電気の形態で出力される。すなわち、(n-1)本の電気信号伝送路と、(n-1)とおりの電気信号をそれぞれ光信号に変換するための(n-1)個のO/E変換器が必要となる。図3では、O/E変換器24-1〜24-(n-1)と示してある。
【0031】
また、パケット信号処理回路14にはノード10を除く(n-1)個のノードのそれぞれから送信されてくる光の形態の受信信号が電気の形態の受信信号に変換さて入力される。すなわち、光の形態の(n-1)とおりの光信号を電気信号に変換するための(n-1)個のO/E変換器が必要となる。図3では、E/O変換器26-1〜26-(n-1)と示してある。
【0032】
図2に光電変換器18と示した部分は、正確には、図3に示すように、O/E変換器24-1〜24-(n-1)及びO/E変換器24-1〜24-(n-1)を全て含んでいる。また、図2ではパケット信号処理回路14と光電変換器18との間は、1本の電気伝送路16として示してあるが、正確にはO/E変換器24-1〜24-(n-1)に接続される(n-1)本の電気信号線路と、E/O変換器26-1〜26-(n-1)に接続される(n-1)本の電気信号線路との合計2(n-1)本の電気信号線路を含んでいる。同様に、図2では光ソケット22と光電変換器18の間は、1本の光伝送路20として示してあるが、正確には、O/E変換器24-1〜24-(n-1)に接続される(n-1)本の光信号線路と、E/O変換器26-1〜26-(n-1)に接続される(n-1)本の光信号線路との合計2(n-1)本の光信号線路を含んでいる。
【0033】
また、光電変換器36は、(n-1)個のO/E変換器と(n-1)個のE/O変換器を含んでおり光ソケット22と光電変換器36との間は、2(n-1)本の光伝送路を含んでいる。また、光電変換器36とクロスポイントスイッチLSI 40との間は、2(n-1)本の電気伝送路を含んでいる。図3において、図2に示す電気伝送路16、38及び光伝送路20、32がそれぞれ(n-1)本ずつの束を意味することを、(n-1)と示した楕円で束ねて示してある。
【特許文献1】特表2003−515785号公報
【特許文献2】特開2007−102013号公報
【特許文献3】特開2007−104487号公報
【非特許文献1】Ichiro Hatakeyama, et al., "A 400 Gbps Backplane Switch with 10 Gbps/port Optical I/O Interfaces", Active and Passive Optical Components for WDM Communications, V. Edited by Dutta, Achyut K.; Ohishi, Yasutake; Dutta, Niloy K.; Moerk, Jesper. Proceedings of the SPIE, Volume 6014, pp. 158-164 (2005).
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0034】
上述の従来の光結合システムは、上述したように、一のノードから他のノードにハブを介して情報を伝送するに当たり、ハブが具えている電気的スイッチ回路によって情報の伝達回路を確保する動的網が形成されている。動的網においては現状では実用的な光スイッチが存在していないために、上述した従来例に示したようにハブにおいて電気信号を光信号に変換する光電変換器が必要とされる。
【0035】
すなわち、動的網においては、上述の光電変換器あるいは電気的スイッチ回路といった能動素子が必要とされ、能動素子は受動素子と比較してその信頼性は低い。そのためシステムとしての信頼性を確保するために、通常、同一構造を二重化する等の対策が講じられることがあり、そのために装置の製造コストが高くなる。
【0036】
また、能動素子は、光回路素子等の受動素子と比較するとその動作速度が遅い。そのためノード間の情報の伝送速度を向上させるために、ノード間を光信号によって相互接続する手段を用いても、達成可能な伝送速度には、能動素子の動作速度によって規定される上限が存在する。
【0037】
そこで、動的網ではなく光学的手段を用い静的網を構成して、能動素子の動作速度に起因する伝送速度の律速状況を打開することが考えられる。静的網とは、送信側のノードと受信側のノードとを結ぶ伝送線路が決定されているネットワークを言う。すなわち、静的網では、送信側のノードと受信側のノードの全ての組み合わせが伝送路によって常につながっており、スイッチ動作に基づいて伝送路の切換を行う必要がない。以後、光学的手段を用いて構成される静的網を光学的静的網ということもある。
【0038】
また、静的網には種々の種類があるが、以下では、これらのうち最も強力な完全網について説明する。完全網においては、任意の送信側のノードは他の全てのノードと接続されている。静的網に関する一般的な解説は、例えば、富田著、「並列コンピュータ工学」(昭晃堂、1996年、ISBN978-4-7856-3100-0)に記載されている。
【0039】
光学的静的網によって光結合システムを構成する場合、単純には、ハブを廃止して、光バックプレーンにおいて光ファイバあるいは光導波路を用いて、複数のノードの各ノードを他のノードに対して1対1の関係で独立して接続する静的網を形成すれば、上述の動的網を利用する場合の問題点は解消される。しかしながら、この光バックプレーンに静的網を構成する手法は、複数のノード間を1対1の関係で独立して接続するために非常に複雑な光伝送路の配置をする必要が生じ、現実的には実現することが困難である。
【0040】
例えば、光バックプレーンに静的網を構成するには、複雑な光伝送路を、光バックプレーンに設置されている多数の電気コネクタあるいは光コネクタを避けながら配置しなければならない。このような構成は、ノードの数が増えるとそれに比例して光伝送路の本数が増えるので、ノードの数の増大にともなって実現が非常に困難となる。
【0041】
そこで、この発明の目的は、複数のノードの各ノードを他のノードに対して1対1の関係で独立して接続する光学的静的網を容易に形成することが可能である、光結合システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0042】
この発明の発明者は、光バックプレーンに静的網を構成する代わりに、ハブに静的網を構成することによって上記課題が解決することを確信した。すなわち、ハブに静的網を構成すれば、光バックプレーンに設置される光伝送路の設置形態に対して、何ら変更をする必要がない。
【0043】
しかも社団法人日本プリント回路工業会によるJPCA(Japan Printed Circuit Association)規格で規定されたフレキシブル光ファイバ配線板等を適宜利用すれば、この発明の光結合システムに好適な静的網を、ハブを構成するプリント配線基板上に設置することが可能であることを確信した。JPCA規格についての詳細は、社団法人日本プリント回路工業会から発行されている「石英系光ファイバを用いたフレキシブル光配線板の配線設計ガイダンス」(2005年発行)に記載されている。
【0044】
上述の理念に基づくこの発明の要旨によれば、以下の構成の光結合システムが提供される。
【0045】
この発明の光結合システムは、複数のノードとハブと光バックプレーンとを具えて構成され、ハブは、複数のノードの各ノードを他のノードに対して1対1の関係で独立して接続する静的網を具えていることが特徴である。光バックプレーンは、複数のノードとハブとを結ぶ光伝送路を有している。ノードとは、情報伝送を行う単位となる電気回路サブシステムを指す。また、ハブとはノード相互間の通信を媒介するサブシステムを指す。
【0046】
静的網は、上述したように種々の種類があり、このうち最も強力な静的網が完全網である。この発明の光結合システムでは、静的網として完全網を採用することはもちろん、完全網以外の静的網であっても適用可能である。静的網を完全網として構成するか否かは、この発明の光結合システムで使われる通信形態に依存し、この発明の光結合システムで使われるパケット信号の構成に依存する設計的な事項である。従って、この発明の光結合システムが具える静的網は、必ずしも完全網として構成される必要はなく、完全網を除く静的網として構成することも可能である。この場合は、この発明の光結合システムを、ノード間の通信に使われるパケット信号のヘッダに書き込まれた宛先に対応して、複数のパケット信号をノード間転送することが可能である構成とする。
【0047】
静的網は、好ましくは、光配線板を用いて構成するのがよい。また、光配線板は、フレキシブルなシート又は基板上に、光ファイバを1対1の関係で独立して接続する配線パターンで配線しかつ固定して、その上に保護膜を設けて形成されるフレキシブル光ファイバ配線板とするのが好適である。
【0048】
また、ノードの入出力端と光伝送路の入出力端との接合をする光入出力端子、及び光配線板の入出力端と光伝送路の入出力端との接合をする光入出力端子を、MTコネクタ(Mechanically Transferable Connector)とするのが好適である。以後、入出力端子を、入力端子と出力端子との接続機能を具えたコネクタという意味に使うこともある。光入出力端子を、接続機能を含めて意味する場合、光コネクタということもある。また、光コネクタを実装上の具体的な形状を有する素子として捉える場合は、光ソケットということもある。
【0049】
ハブは、電気信号によって全てのノードと結合されており、電源投入時の初期設定、システム故障処理、当該ハブの温度制御処理を行う管理システムを有しているのが良い。
【発明の効果】
【0050】
この発明の光結合システムは、それを構成するハブが静的網を具えているので、光バックプレーンに設置されている光伝送路の形態を何ら変更する必要がない。すなわち、光バックプレーンには静的網を構成する必要がないので、光バックプレーンは、単純に複数本の光ファイバあるいは光導波路等の光伝送路を平行に配置すれば良い。
【0051】
そのため、ノードの数がn個である場合、上述したように光導波路が2(n-1)本必要であるが、これら光伝送路は単純に互いに平行になるように配置すれば済む。従って、光バックプレーンには、例えば2(n-1)本の光ファイバを並列に配列して構成される、通常のフラット光ファイバケーブルを配置するだけで、容易に光伝送路を配置することが可能である。以後、複数本の光ファイバを並列に配列して構成されるフラット光ファイバケーブルを、光ファイバープレートということもある。
【0052】
また、静的網を、ハブを構成するプリント配線基板上に設置するには、このプリント配線基板上に静的網を設置するために必要なスペースを確保すればよい。ハブを構成するプリント配線基板に静的網を設置するために必要なスペースを確保することは、設計上何ら支障を生じることなく可能である。すなわち、光結合システムにおいて必要とされる、複数のノードの各ノードを他のノードに対して1対1の関係で独立して接続する機能を有する静的網を、ハブを構成するプリント配線基板上に容易に形成することが可能である。
【0053】
光配線板として、フレキシブル光ファイバ配線板を利用することが可能であり、JPCA規格で規定されたフレキシブル光ファイバ配線板等を適宜利用すれば、標準的な部品を利用して光結合システムを実現することが可能である。そのことによって、光結合システムの部品の統一化を容易に実現でき、よって製造コストの低減に資することとなり、光結合システムの産業上の利用価値が高まる。
【0054】
ノードの入出力端と光伝送路の入出力端との接合をする光入出力端子、及び光配線板の入出力端と光伝送路の入出力端との接合をする光入出力端子を、この業界において既に統一規格となっているMTコネクタとすることによって、上述のフレキシブル光ファイバ配線板同様、光結合システムの部品の統一化による利益を享受できる。
【0055】
また、ハブが上述の管理システムを有することによって、電源投入時の初期設定、システム故障処理、当該ハブの温度制御処理を行うことが可能である、優れた光結合システムを実現することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0056】
以下、図4から図8を参照して、この発明の実施の形態につき説明する。なお、各図は、この発明が理解できる程度に各構成部分を概略的に示してあるに過ぎず、この発明を図示例に限定するものではない。また、上述の図1から図3を含め、各図において同様の構成要素については同一の番号を付して示し、これらの機能等に関して、その重複する説明を省略することもある。以下の図4から図8において、光信号の経路を太線で示し、電気信号の経路を細線で示してある。
【0057】
<光結合システム>
図4を参照して、この発明の実施の形態の光結合システムの基本構成及びその動作の概略について説明する。図4は、この発明の実施の形態の光結合システムの概略的ブロック構成図である。図4において、ブロックが具える素子間の結線については、図示を省略してある。
【0058】
この発明の実施の形態の光結合システムは、ノード110、ノード112等の複数のノードとハブ130と光バックプレーン80とを具えて構成される。ハブ130は、複数のノードの各ノードを他のノードに対して1対1の関係で独立して接続する静的網132を具えている。光バックプレーン80は、ノード110、ノード112等の複数のノードとハブ130とを結ぶ光伝送路を有している。
【0059】
すなわち、この発明の実施の形態の光結合システムの、ノード110及びノード112を取り上げて説明すると、ハブ130を介してノード110とノード112が結合されている。静的網132は、フレキシブル光ファイバ配線板等の光配線板によって構成されている。また、ノードは、図1を参照して説明した従来の光結合システムと同様に、送信信号である送信パケット信号及び受信信号である受信パケット信号を処理するパケット信号処理回路と光電変換器とを具えている。すなわち、ノード110はパケット信号処理回路110-1と光電変換器110-2とを具え、ノード112は、パケット信号処理回路112-1と光電変換器112-2とを具えている。図4に示す構成例では、ハブ130を介してノード110とノード112とを代表して示してあるが、ノードは3個以上であれば設計に応じた必要な個数だけ設ければよいことは、図1を参照して説明に示した従来の光結合システムと同様である。
【0060】
ノード110からノード112に向けて送信される信号は、ハブ130が具える静的網132を介して、ノード112に出力される伝送線路に出力され、光バックプレーン80を介してノード112に入力される。このようにして、ノード110からノード112へ向けた通信が行われる。
【0061】
次に、図5を参照して、この発明の光結合システムをより具体化した実施例について説明する。図5は、この発明の実施例の光結合システムの概略的ブロック構成図である。
【0062】
この発明の実施例の光結合システムは、ノード110、ノード112、ノード114等の複数のノードとハブ130とバックプレーン100とを具えて構成され、ハブ130は、複数のノードの各ノードを他のノードに対して1対1の関係で独立して接続する静的網132と、管理システム134とを具えている。
【0063】
バックプレーン100は、電源配線バックプレーン102、電気バックプレーン104及び光バックプレーン106を具えて構成されている。
【0064】
ハブ130が具える管理システム134は、電気バックプレーン104を介してノード110、ノード112、ノード114等の複数のノードと電気的に個別に接続されており、電源投入時の初期設定、システム故障処理、当該ハブの温度制御処理を行う。また、静的網132は、ノード110、ノード112、ノード114等の複数のノードに対してこれらのノードを1対1の関係で独立して接続する機能を有している。静的網132とノード110、ノード112、ノード114等の複数のノードとは、光バックプレーン106を介して光学的に個別に接続されている。
【0065】
ノード110、ノード112、ノード114等の複数のノードには、外部ネットワーク200から10ギガビットイーサネットパケットが入出力される。ここで、イーサネットは富士ゼロックス株式会社の登録商標であり、IEEE 802.3委員会によって標準化されたコンピュータネットワークの規格のひとつである。
【0066】
ノード110、ノード112、ノード114等の複数のノードでは、それぞれ光信号の形態の光パケット信号を電気信号の形態である電気パケット信号に変換して、この電気パケット信号のヘッダに示されている宛先のアドレスに応じて、当該ノードで処理すべきパケットに対しては当該ノードが具える情報処理回路(図示を省略してある。)によって所定の処理がなされて受信される。また、電気信号のヘッダに示されている宛先のアドレスが他のノードである場合は、当該アドレスで規定されるノードへの出力ポートを選択して、当該ノードに送信する。この場合、電気パケット信号を光パケット信号に変換した上で、光バックプレーン106を介して当該ノードに向けて送信される。
【0067】
図5に示す電源120は、電源配線バックプレーン102を介して、ノード110、ノード112、ノード114等の複数のノードに対して電力を供給する。電源120から供給される電力は、ハブ130が具える管理システム134に直接供給されて、電源投入時の初期設定、システム故障処理、当該ハブの温度制御処理のために使われる。
【0068】
以上説明した様に、図5に示す光結合システムのバックプレーン100が具える電源配線バックプレーン102及び電気バックプレーン104については、従来の光結合システムにおける場合と同様である。
【0069】
<光バックプレーンとノードとの接続>
図6を参照して、光バックプレーンとノードとの接続に関して説明する。図6は、光バックプレーンとノードとの接続の説明に供するための概略的ブロック構成図である。図6では、ノード110を一例として示してあるが、他のノードも同様の構成である。また、図6では、光バックプレーンに接続されるノードの数を4個である場合を想定して示してある。そのため、ノード110から光バックプレーン106に向けて光パケット信号を送るための光伝送路が3本必要であり、光バックプレーン106からノード110に向けて光パケット信号を送るための光伝送路が3本必要であるので、光バックプレーン106とノード110との間には、光伝送路が合計6本必要となる。
【0070】
ノード110は、外部ネットワーク200からパケット信号を受信して、このパケット信号を処理して、ノード110から出力する光パケット信号を生成してバックプレーン100に向けて出力するために、受信パケット信号処理部140、パラレル/シリアル変換器(P/S変換器)142、及びE/O変換器144を具えている。P/S変換器142は、受信パケット信号処理部140から出力される並列化されたパラレル信号をシリアル信号に変換する。E/O変換器144は、P/S変換器142から出力されるシリアル信号を光パケット信号に変換する。受信パケット信号処理部140からP/S変換器142に電気パケット信号を送信する電気伝送路が6本示してあるが、これは6本に限定されることはなく、ノード110以外に3個のノードを具えて構成される光結合システムの場合は3の倍数本となる。
【0071】
すなわち、P/S変換器142から出力されるシリアル信号の出力数は、この光結合システムが有するノード数をnとして(n-1)に等しくなる。P/S変換器142に入力されるパラレル信号の入力数と、P/S変換器142から出力されるシリアル信号の出力数の比をパラレル数と言うものとすると、パラレル数は1つのシリアル信号が幾つのパラレル信号がP/S変換されて生成されたかを示している。パラレル数は通常はバイト単位、すなわち8又は16が採用される。
【0072】
P/S変換器142からは、ノード110以外の3個のノードに送信するための光パケット信号(シリアル信号)が生成されて出力される。図6では、このことを、ノード110から先端に矢印を付した3本の上向きの直線で示してある。
【0073】
また、ノード110は、バックプレーン100から受け取ったパケット信号を処理して、外部ネットワーク200へ向けて送信するために、送信パケット信号処理部150、シリアル/パラレル変換器(S/P変換器)152、及びO/E変換器154を具えている。O/E変換器154は、光バックプレーン106を伝搬してノード110に入力された光パケット信号を、電気パケット信号に変換して出力する。S/P変換器154は、O/E変換器154から出力される電気パケット信号(シリアル信号)を電気パケット信号(パラレル信号)に変換する。S/P変換器154から出力された電気パケット信号は送信パケット信号処理部150に入力されて、この電気パケット信号のヘッダに示されている宛先のアドレスに応じて、ノード110で処理すべきパケットと他のノードに送信すべき電気パケット信号とが識別されてそれぞれ処理される。
【0074】
送信パケット信号処理部150にS/P変換器152から入力される電気パケット信号を送信する電気伝送路が6本示してあるが、これは6本に限定されることがないことは、上述したP/S変換器142に電気パケット信号を送信する電気伝送路が6本に限定されないことと同様である。1バイトが8ビットであることから、通常多くの場合、ノード数が4つの場合を例にとると、任意の一つのノードがこのノードを除く他の3つのノードと結ぶ線路は24本(=8×3)となる。図6では、電気パケット信号を送信する電気伝送路が6本示してあることを含めて、簡略化して6本示してあるが、上述のように24本等であり、通常はもっと本数が多い。
【0075】
外部ネットワーク200からは、ノード110以外の3個のノードからそれぞれ送られてくる独立した光パケット信号がそれぞれO/E変換器164、172及び180に入力されて電気パケット信号に変換され、それぞれS/P変換器162、170及び178でパラレル信号に変換されて出力される。S/P変換器162、170及び178から出力されるそれぞれのパラレル信号は、受信パケット信号処理部140に入力される。
【0076】
また、送信パケット信号処理部150からは、ノード110以外の3個のノードへ送るための独立した3系統の電気パラレル信号が出力される。送信パケット信号処理部150から出力された独立した3系統の電気パラレル信号は、それぞれP/S変換器166、174及び182に入力され電気シリアル信号に変換されて出力される。P/S変換器166、174及び182から出力された電気シリアル信号は、それぞれE/O変換器168、176及び184に入力されて光シリアル信号、すなわち光パケット信号に変換されて、外部ネットワーク200に入力される。
【0077】
図6では、ノード110とバックプレーン100との結合の構成と、ノード110の具体的な構成の実施例を示したが、図5に示したノード112及び114についても同様である。
【0078】
ノード110が具えるP/S変換器142は、受信パケット信号処理部140から出力される並列化されたパラレル信号をシリアル信号に変換する。E/O変換器144は、P/S変換器142から出力されるシリアル信号を光パケット信号に変換する。
【0079】
また、P/S変換器142からは、ノード110以外の3個のノードに送信するための光パケット信号が生成されて出力される。図6では、このことを、ノード110から先端に矢印を付した3本の上向きの直線で示してある。
【0080】
受信パケット信号処理部140及び送信パケット信号処理部150を電気的に制御するための電気信号は、バックプレーン100が具える電気バックプレーン104を介して供給される。図4に示したノード110が具えるパケット信号処理回路110-1とは、図6に示す受信パケット信号処理部140、送信パケット信号処理部150、複数のP/S変換器及び複数のS/P変換器等の素子を統合したパケット信号処理回路に対応する。また、図4に示した光電変換器110-2は、E/O変換器144、O/E変換器150等の複数の光電変換器に対応する。
【0081】
ノード110とバックプレーン100とは、光ソケット146、156、及び電気ソケット158、160によって、光学的及び電気的に接続される。図6ではこれらのソケットが簡略化してノード110にのみに具えられているように図示してあるが、バックプレーン100側にもこれらのソケットとかみ合わさって接合するための同種のソケットが設けられている。
【0082】
また、受信パケット信号処理部140、送信パケット信号処理部150、複数のP/S変換器及び複数のS/P変換器を駆動するための電力は、図5に示した電源120から、バックプレーン100が具える電源配線バックプレーン102及び電気ソケット160を介して供給される。図6では、電気ソケット160からノード110の内部につながる電気配線については、この発明の本質的な部分ではないので、図示を省略してある。
【0083】
図6では、ノード110から出力される光パケット信号を伝送する光伝送路を、概念的に太線の先端に矢印をつけた直線で示してある。実装においては、ノード110及びバックプレーン100に具えられる光ソケットによって、接続され、ノード110から出力される光パケット信号が、光バックプレーン106に配線されている光伝送路に入力される構成となっている。この部分の実装上の構成については、従来の光結合システムと同様であるので、当業者にとっては自明の構成である。
【0084】
光ソケット146は、ノード110から出力される光パケット信号を光バックプレーン106に出力するための光伝送路を接続するための光ソケットである。図6ではこの光伝送路を3本としてあるが、本数には本質的な意味はなく、光結合システムの設計的事項に属する。すなわち、図6ではバックプレーン100を介して接続されているノードの数が4個であるとして設定されているので、ノード110を除く他の3個のノードに接続される光伝送路が3本必要となることを示しているに過ぎない。一般にバックプレーン100を介して接続されているノードの数がn個である場合は、この光伝送線の数は(n−1)本となる。
【0085】
この発明の好適な実施形態によれば、光ソケット146、156、及び光バックプレーン106を介して、図5に示したハブ130が具える静的網132によって、複数のノードの各ノードを他のノードに対して1対1の関係で独立して接続する構成とするのがよい。そこで、図7を参照して、まず、光バックプレーン106が具える光伝送路と、ハブ130と、複数のノードのそれぞれの接続端子とがどのように接続されるかについて説明する。
【0086】
<光バックプレーンによる接続>
図7を参照して、上述のハブ130及び複数のノードのそれぞれの接続端子と光バックプレーン106が具える光伝送路との接続構成について説明する。図7は、光バックプレーンを構成する光ファイバープレートによる、この発明の光学的静的網により構成されるハブの接続端子と4個のノードのそれぞれが具える接続端子との接続の形態を示す概略的構成図である。光ファイバープレートは、JPCA規格であるJPCA-PE02に規定されて作製された光配線板の中から適宜選択して利用することが可能である。
【0087】
図7では、ハブ130に対して、ノードN1〜N4の4個のノードが接続されて構成される光結合システムにおいて、ハブ130及びノードN1〜N4の4個のノードがそれぞれ具える光ソケットと、これらの光ソケットを結ぶ光バックプレーンに形成される光導波路との関係を示している。光バックプレーンに形成される光導波路を太線で示し、信号の伝送方向を太線で示した光導波路の終端に矢印を付して示してある。ここでは、光バックプレーンに形成される光導波路を光ファイバープレートで形成されているものとして説明する。
【0088】
ノードの数が4であるから、ハブ130から各ノードへ向けた信号の光伝送線路はそれぞれ3本ずつ必要となる。また、各ノードからハブ130へ向けた信号の光伝送路もそれぞれ3本ずつ必要となる。従って、ハブ130と各ノードとを結ぶ光ファイバープレートに含まれる光伝送路の本数は、それぞれ6本必要となる。従って、図7では、ハブ130とそれぞれのノードとを結ぶ光伝送路は6本示してある。一般にノードの数がnである場合、ハブ130と各ノードとを結ぶ光ファイバープレートに含まれる光伝送路の本数は、それぞれ2(n-1)本必要となる。
【0089】
ハブ130は、光コネクタHUA、HDA、HUB及びHDBの4個の光コネクタを具えている。光コネクタHUAはポート番号が1〜3である入力端及びポート番号が4〜6である出力端を具えた光コネクタであり、光コネクタHDAはポート番号が1〜3である入力端及びポート番号が4〜6である出力端を具えた光コネクタであり、光コネクタHUBはポート番号が7〜9である入力端及びポート番号が10〜12である出力端を具えた光コネクタであり、光コネクタHDBはポート番号が7〜9である入力端及びポート番号が10〜12である出力端を具えた光コネクタである。
【0090】
ノードN1とハブ130とは光ファイバープレート190で光学的に結合されており、ノードN2とハブ130とは光ファイバープレート192で光学的に結合されており、ノードN3とハブ130とは光ファイバープレート194で光学的に結合されており、ノードN4とハブ130とは光ファイバープレート196で光学的に結合されている。光ファイバープレート190、192、194及び196は、光バックプレーン106に設置されている。
【0091】
図7では、説明の便宜上ハブ130が光コネクタHUA、HDA、HUB及びHDBの4個のコネクタを具えている場合を示しているが、これに限定されるものではない。例えば、ポート番号が1〜6である入力端及びポート番号が7〜12である出力端を具えた光コネクタHAと、ポート番号が1〜6である入力端及びポート番号が7〜12である出力端を具えた光コネクタHBとを具える構成とすることも可能である。どのような数の入出力端を具える光コネクタを使うかは設計的事項に属する。
【0092】
図7に示す、光コネクタHUA、HDA、HUB及びHDBの4個の光コネクタとしては、MTコネクタを適宜利用することが可能である。また、JPCA規格であるJPCA-PE03-01に規定されて作製された光コネクタから適宜選択して利用することが可能である。
【0093】
図7において、ハブ130については破線の長方形で囲って示してあり、その破線の長方形内には光コネクタの識別記号であるHUA、HDA、HUB及びHDBと、それぞれポート番号だけを示してある。HUA、HDA、HUB及びHDBの各ポートを結ぶ光伝送路である光学的静的網については、図示を省略してある。そこで次にこの光学的静的網の実施形態例について説明する。
<光学的静的網>
図8を参照して、この発明の光結合システムに用いて好適な光学的静的網の実施形態例について説明する。図8は、この発明の光結合システムに用いて好適な静的網の概略的構成図である。
【0094】
図8において、破線の長方形でハブ130及び静的網132の存在を示してある。ハブ130は、上述したように光コネクタHUA、HDA、HUB及びHDBの4個の光コネクタを具え、各光コネクタは3個の入力ポート及び3個の出力ポートを具えている。図8において、3個の入力ポート及び3個の出力ポートを具えるノードN1の光コネクタを、簡単のためにN1と示してある。
【0095】
上述したように、N1のポート1〜3は出力ポートであり、ポート4〜6は入力ポートである。同様に、ノードN2の光コネクタをN2と示してあり、N2のポート1〜3は出力ポートであり、ポート4〜6は入力ポートである。ノードN3の光コネクタをN3と示してあり、N3のポート1〜3は出力ポートであり、ポート4〜6は入力ポートである。ノードN4の光コネクタをN4と示してあり、N4のポート1〜3は出力ポートであり、ポート4〜6は入力ポートである。
【0096】
また、光コネクタHUA、HDA、HUB及びHDBの4個の光コネクタのそれぞれは、ノードN2、N1、N3、及びN4が具える光コネクタと光伝送路を介して結合されている。光コネクタHUAのポート1〜3は入力ポートであり、ポート4〜6は出力ポートである。光コネクタHDAのポート1〜3は入力ポートであり、ポート4〜6は出力ポートである。光コネクタHUBのポート7〜9は入力ポートであり、ポート10〜12は出力ポートである。光コネクタHDBのポート7〜9は入力ポートであり、ポート10〜12は出力ポートである。
【0097】
図8では、光コネクタHUA、HUB、HDA及びHDBの入力ポートを実線の正方形で、出力ポートを破線に正方形で示してある。また、光コネクタN1と光コネクタHDAとの間、光コネクタN2と光コネクタHUAとの間、光コネクタN3と光コネクタHUBとの間、光コネクタN4と光コネクタHDBとの間は、図7に示したように、それぞれ光パックプレーンが具える光ファイバープレートで構成された光伝送路で結合されているが、簡潔のために図8ではこれらの光伝送路は図示を省略してある。
【0098】
図8に光伝送路を太線で示し、信号の伝送方向をそれぞれの太線で示した光伝送路の先端に矢印を付して示してある。図8に示す接続パターンは一例にすぎず、この接続パターンに限られるものではない。静的網を介して接続されているノードの数が全部でn個である場合、各ノードの出力ポート及び入力ポートはそれぞれ(n-1)個必要である。そして、それぞれのノードが具える出力ポート何れもが、当該ノードを除く全ての何れかのノード対して1対1の関係で独立して接続されるという条件を満たしていれば、いかなる接続パターンを形成してもよい。
【0099】
例えば、n個のノードを具えて構成される光結合システムにおいて、これらのノードをN1〜Nnとしたとき、ノードN1が具えている(n−1)個の出力ポートは、ノードN1を除き、ノードN2が具えている(n−1)個の入力ポートの内の一つの入力ポートと、ノードN3が具えている(n−1)個の入力ポートの内の一つの入力ポートと、...ノードNnが具えている(n−1)個の入力ポートの内の一つの入力ポートと接続される。ノードN2が具えている(n−1)個の出力ポートは、ノードN2を除き、ノードN1が具えている(n−1)個の入力ポートの内の一つの入力ポートと、ノードN3が具えている(n−1)個の入力ポートの内の一つの入力ポートと、...ノードNnが具えている(n−1)個の入力ポートの内の一つの入力ポートと接続される。ノードN3からノードNnがそれぞれ具えている(n−1)個の出力ポートについても同様である。
【0100】
接続パターンを決定するに当たり、光伝送路が互いに交差する点において、3個以上の光伝送路が同一の位置で交差することがないように光伝送路を配置するのがよい。
【0101】
これは、3個以上の光伝送路が同一の位置で交差すると、この交差点において、光伝送路の重なりのための積層厚みが厚くなり、この交差点の近傍で、光伝送路の曲げの曲率半径を小さくする必要が生じる。光伝送路はできるだけ曲率半径が大きくなるように曲げるのが、光損失の大きさを小さく保つ上で、また、光導波路に加わる応力の大きさを小さくする上で望ましい。従って、光伝送路を、曲率半径を小さくして曲げざるを得なくなるような、3個以上の光伝送路が1点で交差する配線形態を採らないのが望ましい。
【0102】
静的網132を形成するには、高分子フィルム等のフレキシブルなシート又は基板上の光ファイバを挟んで積層構造に形成した光配線板を利用することが可能である。光配線板としては、JPCA規格であるJPCA-PE02-01に規定されて作製された光配線板から適宜選択して利用することが可能である。JPCA-PE02-01に規定されて作製された光配線板には、フレキシブルなシート又は基板上に、光ファイバを1対1の関係で独立して接続する配線パターンで配線しかつ固定して、その上に保護膜を設けて形成されるフレキシブル光ファイバ配線板が存在する。このフレキシブル光ファイバ配線板を、ハブ130の配線ボードに貼り付けることによって、この発明の光結合システムに利用して好適な静的網を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】動的網により構成されるハブを用いる従来の光結合システムの概略的ブロック構成図である。
【図2】動的網により構成されるハブを用いる従来の光結合システムの具体例を示す概略的ブロック構成図である。
【図3】パケット信号処理回路とクロスポイントスイッチLSIとの接続部分の概略的ブロック構成図である。
【図4】この発明の実施の形態の光結合システムの概略的ブロック構成図である。
【図5】この発明の光結合システムの実施例の概略的ブロック構成図である。
【図6】光バックプレーンとノードとの接続の説明に供するための概略的ブロック構成図である。
【図7】光バックプレーンを構成する光ファイバープレートによる、この発明の静的網により構成されるハブの接続端子と4個のノードのそれぞれの接続端子との接続の形態を示す概略的構成図である。
【図8】この発明の光結合システムに用いて好適な静的網の概略的構成図である。
【符号の説明】
【0104】
10、60、110、112、114:ノード
10-1、14、60-1、72、110-1、112-1:パケット信号処理回路
10-2、18、30-2、36、44、60-2、66、68、74、76、78、110-2、112-2:光電変換器
12、62:プリント配線基板
16、38、42、70:電気伝送路
20、32、48、64:光伝送路
22、50、52、54、56、58、146、156:光ソケット
24-1、24-(n-1)、84-1、84-(n-1)、154、164、172、180:O/E変換器
26-1、26-(n-1)、82-1、82-(n-1)、144、168、176、184:E/O変換器
30、130:ハブ
30-1:動的網
34、46:PETITコネクタ
40:クロスポイントスイッチLSI
80、106:光バックプレーン
100:バックプレーン
102:電源配線バックプレーン
104:電気バックプレーン
120:電源
132:静的網
134:管理システム
140:受信パケット信号処理部
142、166、174、182:P/S変換器
150:送信パケット信号処理部
152、162、170、178:S/P変換器
158、160:電気ソケット
190、192、194、196:光ファイバープレート
200:外部ネットワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報伝送を行う単位となる電気回路サブシステムである複数のノード(Node)と、
該ノード相互間の通信を媒介するサブシステムであるハブ(Hub)と、
前記複数のノードと前記ハブとを結ぶ光伝送路を有する光バックプレーンを具え、
前記ハブは、前記複数のノードの各ノードを他のノードに対して1対1の関係で独立して接続する静的網(static network)を具えることを特徴とする光結合システム。
【請求項2】
前記静的網は、光配線板を用いて構成されることを特徴とする請求項1に記載の光結合システム。
【請求項3】
前記光配線板は、フレキシブルなシート又は基板上に、光ファイバを前記1対1の関係で独立して接続する配線パターンで配線しかつ固定して、その上に保護膜を設けて形成されるフレキシブル光ファイバ配線板であることを特徴とする請求項2に記載の光結合システム。
【請求項4】
前記ノードの入出力端と前記光伝送路の入出力端との接合をする光入出力端子、及び前記光配線板の入出力端と前記光伝送路の入出力端との接合をする光入出力端子が、MTコネクタ(Mechanically Transferable Connector)であることを特徴とする請求項2または3に記載の光結合システム。
【請求項5】
前記ハブは、管理システムを有し、該管理システムは、電気信号によって前記ノードの全てと結合されており、電源投入時の初期設定、システム故障処理、当該ハブの温度制御処理を行うことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の光結合システム。
【請求項6】
前記静的網は、完全網を除く静的網であり、かつ前記ノード間の通信に使われるパケット信号のヘッダに書き込まれた宛先に対応して、複数の前記ノード間で、前記パケット信号を転送することが可能である構成とされていることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の光結合システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−224951(P2009−224951A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−65489(P2008−65489)
【出願日】平成20年3月14日(2008.3.14)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【出願人】(000004547)日本特殊陶業株式会社 (2,912)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【出願人】(390005049)ヒロセ電機株式会社 (383)
【出願人】(000000158)イビデン株式会社 (856)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】