説明

光線検知のための信号処理

デジタルデータで符号化された光線からその遷移によって得られる信号が生じるタイプの光学的コードセンサにおいて、データを引き出すための処理の前に可変帯域幅フィルタが配置される。光学的コードの距離が検知され、フィルタの帯域幅がバーコードの距離と関連して増加される。そのフィルタの入力信号はシフトレジスタに入力され、そのシフトレジスタの各ステージにおける出力が、係数セット全てを用いて特定の波形、好ましくはガウス波形になるように計算された所定の係数で乗算される。そのシフトレジスタの各係数によって乗算された出力は、一緒に加算されて、処理装置に入力するフィルタ処理された出力信号を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は信号処理に関し、特に、データで符号化された光線が処理後に引き出される信号の信号対雑音比(S/N)を改善するために、その光線を処理するための方法及びフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
伝送媒体として光を利用するデータ通信は幅広い支持を受けている。光を符号化したデータが以前から使用されている1つの利用例として、例えばバーコード走査装置(スキャナ)のような光学的コード走査装置がある。
【0003】
今日、バーコード走査装置は、離れたバーコードを照明するために通常はレーザ光を用いる。図1は、従来のバーコード走査装置の作用を説明するためのブロック図である。バーコードから反射されたレーザ光Lは、バーコードの暗部と明部によって変調され、その変調された光に対応する電流を生成するフォトダイオードPDに検知される。その電流信号はプリアンプ10に入力して電圧信号に変換される。その電圧信号は微分回路12に供給され、プリアンプの出力中の各トランジション(遷移)に対応するパルスが生成される。そして、自動利得制御(AGC)回路14は、受信信号の変動に関わらず信号の振幅を略一定に保つ。次に、その利得制御された信号はローパスフィルタ(LPF)16に入力して、外来の高周波変動が除去され、その後アナログデジタル変換器(ADC)18に入力する。その結果得られたデジタル信号は、その信号からバーコードを復号する処理装置20に入力する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このバーコードの復号において、フィルタに供給される信号の周波数スペクトルが走査装置からバーコードまでの距離に応じて変化するため、フィルタの有効性を制限するという問題が生じる。処理装置がバーコードを正確に認識できない場合には、従来は処理装置の認識を改善するために、フィルタの帯域幅を段階的に調整する一種の探索処理を実施してきた。しかし、これは、不可能ではないにしても、時間がかかる煩雑な処理であり、バーコードの効率的かつ正確な読み取りを困難にしていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明の1つの特徴は、上述したタイプの光学的コードセンサにおいて、ローパスフィルタを帯域幅可変フィルタに置き換えることである。光学的コードの距離が検知され、フィルタの帯域幅がバーコードの距離に応じて増加される。フィルタの入力信号はシフトレジスタに供給され、そのレジスタの各ステージの出力は、係数セット全てを用いて特定の波形、好ましくはガウス波形になるように計算された所定の係数によって乗算されるとよい。係数により乗算されたシフトレジスタの各ステージの出力は、処理装置に供給するフィルタ処理された出力信号を生成するために、一緒に加算される。
【0006】
帯域幅調節を行うために、レジスタのクロック比を調節するとよい。特に、検知されたバーコードまでの距離が、シフトレジスタ用のクロックを生成する電圧制御発振器(VCO)の周波数を制御するために使用される。
【0007】
この発明の前述した簡単な説明と、さらなる目的や特徴および利点は、添付図面を参照してこの発明の好適な実施例を詳細に説明することにより、より完全に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】従来のバーコード走査装置の作用を説明するためのブロック図である。
【図2】この発明によるバーコード走査装置の実施例の作用を説明するためのブロック図である。
【図3】異なる標準偏差(帯域幅)をもつフィルタのガウス波形を示す図である。
【図4】デジタルフィルタの好適な実施例を示すブロック図である。
【図5】デジタルフィルタの作用を理解するのに役立つ波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
まず図面の詳細を説明する、図2はこの発明によるバーコード走査装置の実施例の作用を説明するためのブロック図である。バーコードから反射されたレーザ光Lは、バーコードの暗部と明部によって変調され、その変調された光に対応する電流を生成するフォトダイオードPDに検知される。その電流信号はプリアンプに入力して電圧信号に変換される。その電圧信号は微分回路12に供給され、プリアンプの出力中の各トランジション(遷移)に対応するパルスが生成される。そして、自動利得制御(AGC)回路14は、受信信号の変動に関わらず信号振幅を略一定に保つ。その後、利得制御された信号はアナログデジタル変換器(ADC)18に入力する。その結果得られたデジタル信号は、デジタルフィルタ30及びデジタイザ22を通して、その信号からバーコードを復号する処理装置20に入力する。
【0010】
デジタルフィルタ30は、おおまかに言えば帯域幅を制御可能な可変フィルタである。距離検知器24はバーコードまでの距離を検知し、デジタルフィルタ30の帯域幅は、その距離と直接関連して制御される。
【0011】
デジタルフィルタ30によって受信されるパルスは、略ガウス波形を有する。通信理論に精通した当業者であれば、最良のS/N応答は整合したフィルタで得ることが理解できるであろう。すなわち、周波数スペクトルと入力信号の時間領域特性とを一致させることである。そのため、好ましい実施例において、フィルタ30はガウス時間領域応答を有するように設計された。
【0012】
図3は、異なる標準偏差(帯域幅)をもつフィルタのガウス波形を示す図である。1つの波形上にK、K,K,Kの点がマークされている。これらは、後述するガウス曲線又は正規曲線を描くために用いられる係数値を示す。
【0013】
図4は、フィルタ30の好ましい実施例を示す模式的なブロック図である。ADC18からの信号がシフトレジスタ32の入力として供給され、その各ステージ(段)から出力が取り出され、乗算器34において各係数K、K,K,Kの1つがそれぞれ乗じられる。そのように乗算されたシフトレジスタの出力は、その後処理装置20に供給する出力信号を生成するために加算器36において全て加算される。この工程は、ADC18からの入力信号をデジタルフィルタ30の特性で効率的に畳込み積分する(convolve)ことにより、連続的にリアルタイムで行われる。当業者であれば、これは入力信号特性と周波数領域におけるフィルタ特性とを掛け合わせることと等価であることが分かるであろう。すなわち、これはフィルタ特性を伝達関数として扱い、入力信号に対するフィルタ作用によって出力信号を得ることと基本的に同じである。
【0014】
電圧制御発振器(VCO)40は、シフトレジスタ32に対してクロック信号を供給する。電圧制御発振器は距離検知器50によって駆動される。距離検知器50は、バーコードの距離に応じて増加する電圧信号を生成し、それによって、VCO40の出力周波数を高くする。これは、同じ特性波形を保持している間ずっと、フィルタ30の帯域幅を効果的に増加させる。
【0015】
図5は、デジタルフィルタ30の作用をさらに理解するのに役立つ波形を示す。波形Aはフィルタへの入力波形を示す。波形Bはフィルタ30のガウス特性を示し、波形C及びDはVCO40によって異なる周波数が与えられたときの波形AとBとの間の畳込み波形を示す。この場合、周波数は波形Cより波形Dの方が増加されており、その結果S/Nが改している。当然のことながら波形C及びDは、プリアンプ10から受け取る信号の微分形式に対応している。検知されたバーコードに対応する信号は、これらの波形を積分することによって得られる。
【0016】
この発明の好適な実施例を説明してきたが、当業者であれば、特許請求の範囲によって規定されるこの発明の範囲及び精神から逸脱することなく、種々の追加、変更および置き換えが可能なことが分かるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
デジタルデータで符号化された光線からその遷移によって生じる信号における信号対雑音比を改善するための方法であって、
前記デジタルデータを引き出すために前記信号を処理する前に、前記光線の光源から読取られるターゲットまでの距離と直接関連して帯域幅が制御されるフィルタに、前記デジタルデータを入力させることを特徴とする信号対雑音比改善方法。
【請求項2】
請求項1に記載の信号対雑音比改善方法において、
前記フィルタがローパスフィルタであり、その帯域幅がカットオフ周波数によって定められることを特徴とする信号対雑音比改善方法。
【請求項3】
請求項1に記載の信号対雑音比改善方法において、
前記フィルタが、前記信号のパルス波形に対して整合した波形を有することを特徴とする信号対雑音比改善方法。
【請求項4】
請求項1に記載の信号対雑音比改善方法において、
前記光線がレーザ光であることを特徴とする信号対雑音比改善方法。
【請求項5】
請求項1に記載の信号対雑音比改善方法において、
前記光線が光学的コードから反射されレーザ光であることを特徴とする信号対雑音改善方法。
【請求項6】
請求項1に記載の信号対雑音比改善方法において、
前記フィルタはデジタルフィルタであり、その帯域幅は可変発振器の周波数によって制御され、さらに前記光線の光源の距離を検知し、その検知した距離と直接関連して前記発振器の前記周波数を調節することを特徴とする信号対雑音比改善方法。
【請求項7】
請求項6に記載の信号対雑音比改善方法において、
前記フィルタが、前記信号のパルス波形に対して整合した波形を有することを特徴とする信号対雑音比改善方法。
【請求項8】
請求項6に記載の信号対雑音比改善方法において、
前記フィルタは、前記信号を受け取り前記可変発振器によってシフトされるシフトレジスタを有し、該シフトレジスタが、前記データを引き出すための処理に必要な前記フィルタの出力を生成するために、各出力が所定の重み付けをもって加算される複数のステージを有することを特徴とする信号対雑音比改善方法。
【請求項9】
請求項6に記載の信号対雑音比改善方法において、
前記距離を検知し、それによって前記発振器の周波数を制御をする距離検知器を用いることを特徴とする信号対雑音比改善方法。
【請求項10】
請求項9に記載の信号対雑音比改善方法において、
前記発振器は、前記距離検知器の電圧出力に応答する電圧制御発振器であることを特徴とする信号対雑音比改善方法。
【請求項11】
デジタルデータで符号化された光線からその遷移によって生じる信号における信号対雑音比を改善するためのフィルタであって、前記信号が前記デジタルデータを引き出すために処理装置に入力される前に配置され、
制御信号の値と直接関連して前記帯域幅を制御する制御入力を有するフィルタ部と、
前記光線の光源の距離を決定し、該距離と直接関連する前記制御入力に印加される信号を生成するための距離検知部とを備えたことを特徴とするフィルタ。
【請求項12】
請求項11に記載のフィルタにおいて、
前記フィルタ部がローパスフィルタであり、その帯域幅がカットオフ周波数によって定められることを特徴とするフィルタ。
【請求項13】
請求項11に記載のフィルタにおいて、
前記フィルタ部が、前記信号のパルス波形に対して整合した波形を有することを特徴とするフィルタ。
【請求項14】
請求項11に記載のフィルタにおいて、
前記光線がレーザ光であることを特徴とするフィルタ。
【請求項15】
請求項11に記載のフィルタにおいて、
前記光線が光学的コードから反射されたレーザ光であることを特徴とするフィルタ。
【請求項16】
請求項11に記載のフィルタにおいて、
前記フィルタ部は帯域幅制御入力を有し、かつ前記周波数と直接関連して前記帯域幅を調節するために入力する信号の周波数に応答するデジタルフィルタであり、前記制御入力に接続した可変発振器と、前記光線の光源の距離を検知し、その距離と直接関連して前記発振器の周波数を調節する距離検知器とを備えたことを特徴とするフィルタ。
【請求項17】
請求項16に記載のフィルタにおいて、
前記フィルタ部分が、前記信号のパルス波形に対して整合した波形を有することを特徴とするフィルタ。
【請求項18】
請求項16に記載のフィルタにおいて、
前記フィルタ部は、前記信号を受け取って前記可変発振器によってシフトされるシフトレジスタを有し、さらにレジスタの各出力ステージに対して所定の重み付けを与える加重器と、前記データを引き出す処理に必要な前記フィルタの出力を生成するために重み付けした各出力を結合する加算器とを備えたことを特徴とするフィルタ。
【請求項19】
請求項18に記載のフィルタにおいて、
前記発振器は、前記距離検知器に応答する電圧制御発振器であることを特徴とするフィルタ。
【請求項20】
請求項18に記載のフィルタにおいて、
前記所定の重み付けは前記信号の前記パルス波形に関連することを特徴とするフィルタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2011−503712(P2011−503712A)
【公表日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−533056(P2010−533056)
【出願日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際出願番号】PCT/US2007/084071
【国際公開番号】WO2009/061319
【国際公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【出願人】(391062872)株式会社オプトエレクトロニクス (70)
【出願人】(592252968)オプチコン インコーポレイテッド (31)
【Fターム(参考)】