説明

光線治療器

【課題】エネルギー量を増大させても火傷などの危険も高くない光線治療器を提供する。
【解決手段】光治療器11は、治療光源12、生体の信号を検出する生体信号検出部14、治療光源12からの治療光を生体に照射する治療光照射部15、生体信号検出部14からの入力信号に応じて治療光源12を制御する制御部13を備える。生体の信号を検出し、血流が少なく効果的な治療効果が得られる生体状態のときに同期させて治療光16の出力または照射時間を制御することができ、治療効果を最大限に活かすことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、疼痛緩和等に用いる光線治療器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年ではレーザ治療器に代表される光線治療器が普及してきており、実際の臨床の場でも広く利用されている。このうち、レーザ治療器は患部へレーザ光を照射することで筋肉や関節の慢性疼痛の緩解や創傷治癒促進させることができ、整形外科、麻酔科、内科等で広く利用されている。
【0003】
レーザ光の出力は数10mW〜1000mW程度が主流であったが、治療効果を高めるためにレーザ光治療器の高出力化が進んできている。最近では、レーザ光のピーク出力が10W程度の高い出力を低いデューティ比の繰り返しパルスにより平均1〜2Wで照射させるレーザ治療器が提案されている。(例えば特許文献1参照)このように、従来よりも10倍程度の高い出力のレーザ光を一定のパルス照射によって照射させるため、生体表面を火傷させることなく生体の深部まで治療光を到達させることが可能となった。
【0004】
ここで、特許文献1に開示された従来のレーザ治療器の構成について図6を用いて説明する。従来のパルスレーザ治療器は、内部にレーザを発振するレーザ発振部2と、レーザ発振部2から発振されるレーザの出力を制御するレーザ制御器3とを備え、レーザ発振部2から発振されたレーザ7は、光ファイバー4により照射プローブ5まで導光され、照射プローブ5の照射先端部6から照射される構成であった。さらにハイパワーレーザをパルス照射する機能を有することで、熱影響を回避しながら、生体への深達性を高めることができるものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−298208号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように光線治療器の治療効果を高めるため、生体内の深部まで治療光が到達するように物理的な光のエネルギー量を増大してきた。しかしながら、エネルギー量を大きくするにつれ、火傷などの危険も高くなり、患部に伝わる温熱の影響があるため、エネルギー量を増大させることだけで治療効果を高めるには限界があった。
【0007】
また、一定の繰り返しパルスでレーザ照射させることでレーザ光の生体への深達度を上げたが、レーザが持つ疼痛緩和効果を発揮するにはまだ十分とは言えなかった。
【0008】
本発明は、上記従来の問題を解決し、患者が最大限の治療効果を得られることのできる光線治療器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
光は物質での散乱や水やヘモグロビンへの吸収があるため、血流量などの変化により、生体への光の深達度も変化をする。すなわち、血流量が少ないときに治療光を照射することが効率的な治療効果を得られることになる。本発明はかかる知見に基づいてなされたものである。
【0010】
本発明の光線治療器は、治療光源と、生体の信号を検出する生体信号検出部と、前記治療光源からの治療光を生体に照射する治療光照射部と、前記生体信号検出部からの入力信号に応じて前記治療光源を制御する制御部とを備えた構成を有する。
【0011】
この構成により、生体信号検出部で生体の信号を検出し、その信号に応じて制御部が治療光源を制御できるようになり、治療光が最大限に活かされる生体状態のときに治療光の出力または照射時間を制御して照射することで、治療効果を最大限に活かし、効能効果を上げることができる。
【0012】
さらに、前記生体信号検出部は生体の脈拍または血流量を検出し、前記制御部は生体の脈拍または血流量に応じて治療光の出力または照射時間を制御することを特徴とする。
【0013】
この構成により、生体信号検出部で生体の脈拍または血流量を検出し、制御部が脈拍を打つ直前または血流量が少ないときに治療光の出力を上げるまたは治療光の照射時間を長くするように治療光源を制御することで、血流量が少なく治療光の深達度が高い状態の効果的な治療効果が得られるときに同期させて治療光を制御して照射することができ、治療効果を最大限に活かすことができる。つまり、血液量が少ないときに治療光が照射することで生体深部まで治療光を到達させることができ、効率的な治療効果を得ることができる。
【0014】
また、万一脈拍の誤検知により、血流が多いときに治療光を照射してしまったとしても生体への透過性が低くなり、治療効果が減るだけで安全性の心配がない。従って、本発明の光線治療器は、従来よりも治療効果は高まり、安全性においては危険度が高まることのない有用な機器である。
【0015】
さらに、生体の脈拍または血流量に応じて制御する治療光の出力または照射時間を設定できる操作部を備えた構成を有している。
【0016】
この構成により、個人差や体調に対応した治療や症状に応じた治療ができる。
【0017】
さらに、上記本発明の光線治療器において、治療光の光源としてはレーザ発振器や発光ダイオードが考えられる。
【0018】
上記のような光源による疼痛緩和等の治療では医薬品と異なり、副作用がないことが有用とされている。レーザ発振器と発光ダイオードは同エネルギーにすることで同様な効果を得ることができる。発光ダイオードを治療光源とすることでレーザ素子よりも構造的に強固であるため、静電気等の影響に強い光線治療器とすることができる。また安価にすることもできる。
【0019】
さらに、本発明の光線治療器は、前記生体信号検出部において治療光の反射光または透過光を受光測定して生体の信号を検出することができ、生体信号検出部と治療光照射部を一体化構造となる構成を有している。
【0020】
この構成により、生体信号検出部と治療光照射部を別々に設ける必要がなく、コンパクトで使い勝手の良い光線治療器を提供することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、生体の信号、特に脈拍や血流量を検出し、血流が少なく治療光の深達度が高いなどの効果的な治療効果が得られる生体状態のときに同期させて治療光を制御して照射することができ、治療効果を最大限に活かすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施の形態1における光線治療器の概略構成の一例を示す図。
【図2】本発明の実施の形態1における光線治療器の動作の一例を示すフローチャート。
【図3】脈拍と治療光の照射のパターンの一例を示す線図。
【図4】本発明と従来の治療光が生体へ深達するようすを示す説明図。
【図5】本発明の実施形態2における光線治療器の概略構成の一例を示す図。
【図6】従来の光治療器の概略構成の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態1について、図面を参照しながら説明する。
【0024】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1は、生体の脈拍または血流量などの生体の信号を検出する生体信号検出部と生体信号検出部からの入力信号に応じて治療光源を制御する制御部を備えることにより、血流が少なく治療光の深達度が高くなる状態ときに治療光の出力を上げるまたは照射時間を長くするといった制御を行い、効果的な治療効果を得られるようにした光線治療器である。
【0025】
図1に本発明の実施の形態1における光線治療器の概略構成を示す。
【0026】
図1に示すように、光線治療器11は、生体の脈拍または血流量などの生体の信号を検出する生体信号検出部14を備え、治療光16を発振させる治療光源12、前記治療光源12の発振を制御する制御部13、治療光源12から発振された治療光を生体に照射する治療光照射部15、生体の脈拍または血流量に応じて制御する治療光の出力または照射時間を設定できる操作部17で構成される。
【0027】
生体信号検出部14は、発光ダイオードとCdSやとフォトトランジスタなどの組み合わせで血液による光の変化量から脈拍また血流量を検出するセンサを搭載する。測定部位は、指先、手首、耳たぶが考えられるが、脈拍が検出できればどの生体部位であっても構わない。また、脈拍の検出には光センサだけでなく、電極を用いた心電計や心音計による信号を用いてもよい。操作部17で入力された照射条件と生体信号検出部14で検出された脈拍または血流量に従って、治療光の出力または照射ON/OFFの制御信号を制御部13から治療光源12へ送り、治療光16を発振させる。
【0028】
治療光源12は例えば、半導体レーザを用い、用途に応じて出力パワーを変えて疼痛緩和の治療を行う。また、治療光源12は発光ダイオードであっても実施可能である。また、治療光源12は有機EL素子であっても実施可能である。
【0029】
次に、本発明の光線治療器の動作について説明する。図2は装置の使用を開始してから治療光の照射を終了するまでの一例を示すフローチャートである。
【0030】
使用開始時には、電源投入後、操作部17より治療光16の出力と照射時間、治療時間を入力する(S100、S101)。
【0031】
次に、ステップS102で治療開始スイッチが押された場合、生体信号検出部14により脈拍または血流量などの生体の信号を検出する。制御部13は、ここで検出した脈拍より治療光を照射するタイミングを算出し、治療光源12の発振を制御することで治療光を照射する(S104、S105)。
【0032】
ここで脈拍と治療光の照射のパターンの一例について図3を用いて説明する。図3に示すように心拍数が60回/分のときは1s、90回/分のときは0.66s、45回/分のときは1.33s間隔で脈拍がある。例えば、心拍数が60回/分(脈拍の間隔が1s)のとき、脈拍の間で血流が少ない状態のときに500msの照射時間で治療光を照射する。また、心拍数が90回/分(脈拍の間隔が0.66s)のときは、脈拍の間で血流が少ない状態のときに330msの照射時間で治療光を照射する。さらに、心拍数が45回/分(脈拍の間隔が1.33s)のときは、脈拍の間で血流が少ない状態のときに665msの照射時間で治療光を照射する。照射のタイミングは例えば脈拍を検出後、脈拍間隔の1/4の時間起点としておくことで、心拍数の変動に対応ができるようになる。例えば、脈拍を検出後250msから治療光の照射を開始し、心拍数に応じて照射時間だけ治療光の照射を行うことで、心拍数が変動しても確実に脈拍の間に治療光の照射を行うことができる。治療光の照射は連続照射、パルス照射のどちらでも構わない。
【0033】
治療光の照射後は設定された治療時間が経過するか、照射STOPスイッチを押すことで治療光の照射を停止させる(S106〜S109)。
【0034】
この構成によれば、生体信号検出部14で生体の脈拍または血流量を検出し、脈拍の間に治療光16を生体患部に照射するように治療光源12を制御部13で制御することで、血流が少なく効果的な治療効果が得られる生体状態に同期させて治療光16を増大させるなどの制御をすることができ、治療効果を最大限に活かすことができる。治療光が生体への深達する様子を従来と本発明で比較し、図4に示す。図4の左側の図(従来)のように、血流が多いときに治療光を照射しても血液による散乱や吸収の影響により深達度は低い。これに対し、図4の右側の図(本発明)のように、血流が少ないときに治療光を照射することで高い深達度を実現できる。さらに治療効果を高める方法として、従来のように治療光のエネルギー量を増やすという方法ではないため、火傷などの熱影響の危険の心配がなく安全面においても極めて有用な光線治療器だといえる。
【0035】
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2にかかる光線治療器の概略構成を図5に示す。図5において、実施の形態1にかかる光線治療器と同一の機能を有する箇所については同一番号を付与し、説明を省略する。
【0036】
本発明の実施の形態2の光治療器11は、生体信号検出および治療光照射部18を搭載し、治療光16の反射光を受光することで脈拍を検出でき、生体信号検出部と治療光照射部が一体型構造となっている構成である。
【0037】
生体信号検出および治療光照射部18はフォトトランジスタ、フォトダイオード、光導電素子等の受光素子から成り、治療光源12の発光ダイオード等の反射光は血流の散乱光であり、この反射光を受光することで脈拍および血流量を測定することができる。
【0038】
本発明の実施の形態2にかかる光線治療器では治療中は低出力の治療光を常時照射させることができる。実施の形態1では脈拍の間で血流が少ない状態のときに治療光を照射しているが、本実施の形態2では、脈拍の間で血流が少ない状態のときに治療光の出力を高くし、脈拍の瞬間及びその前後には治療光の出力を低くする。これにより治療光が最大限に活かされる生体状態のときに治療光を照射して、その効能効果を上げることができる。実施の形態2のその他の構成及び作用は、実施の形態1と同様である。
【0039】
以上のように構成された本発明の実施の形態2の光線治療器によれば、治療光16の反射光または透過光を受光して生体の脈拍を検出する生体信号検出および治療光照射部18を有しており、治療光照射部と生体信号検出部を別々に設ける必要がなく、治療効果が高いだけでなく、さらにコンパクトで使い勝手の良い光線治療器を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
以上のように、本発明にかかる光線治療器は、生体信号検出部で生体の脈拍または血流量などの生体の信号を検出し、血流が少なく効果的な治療効果が得られる生体状態に同期させて治療光を制御することで治療効果を最大限に活かすことができ、疼痛緩和等に用いる光線治療器等として特に有用である。
【符号の説明】
【0041】
1 パルスレーザ治療器
2 レーザ発振器
3 レーザ制御部
4 光ファイバー
5 照射プローブ
6 照射先端部
7 レーザ
8 表示部
9 操作部
11 光線治療器
12 治療光源
13 制御部
14 生体信号検出部
15 治療光照射部
16 治療光
17 操作部
18 生体信号検出および治療光照射部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療光源と、
生体の信号を検出する生体信号検出部と、
前記治療光源からの治療光を生体に照射する治療光照射部と、
前記生体信号検出部からの入力信号に応じて前記治療光源を制御する制御部と
を備えた光線治療器。
【請求項2】
前記生体信号検出部は生体の脈拍または血流量を検出し、前記制御部は前記生体の脈拍または血流量に応じて治療光の出力または照射時間を制御することを特徴とする請求項1記載の光線治療器。
【請求項3】
生体の脈拍または血流量に応じて制御する治療光の出力または照射時間を設定できる操作部を備えた請求項1または請求項2に記載の光線治療器。
【請求項4】
前記治療光源はレーザ発振器または発光ダイオードからなる請求項1から請求項3のいずれかに記載の光線治療器。
【請求項5】
前記生体信号検出部は前記治療光の反射光または透過光を受光測定し、前記生体信号検出部と前記治療光照射部が一体型構造となっていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の光線治療器。

【図2】
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【図3】
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【図1】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−19798(P2011−19798A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−168656(P2009−168656)
【出願日】平成21年7月17日(2009.7.17)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】