説明

光脱毛装置

【課題】 高コヒーレス性のレーザー光による毛根の生体組織を破壊・変質させて脱毛させる際、この光脱毛効果を一層高めるため、レーザー光発生手段以外の手段を付加した光脱毛装置を提供する。
【解決手段】 ここに提案する光脱毛プローブは光脱毛用の光を発する頭部12と手で握れる本体把持部14とから成り、頭部12にあるヘッド本体24の先端表面の一部に遠赤外線放出部20と透光部材を装着できる貫通穴29とを設け、ヘッド本体24の内側の前記透光部材の真下にレーザーダイオード30を設けている。更に、提案する光脱毛装置は上記の光脱毛プローブ10と、この光脱毛プローブに付属し、レーザーダイオード30,発光ダイオード32および遠赤外線放出部20に電力を送るための電源と、これ等の発光源30,20,32に対する光放出強度可変部および光放出持続期間調整部を備えた外部制御装置とから成る。

【考案の詳細な説明】
【0001】
【考案の属する技術分野】
この考案は、レーザー光を使用して脱毛を行う光脱毛装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
この種の光脱毛装置として、本出願人は実願平8−109号明細書にレーザーダイオード発光源を使用し、放出された高コヒーレス性を有する光を脱毛処理したい皮膚の個所に印加し、皮膚内の毛根の生体組織を破壊ないしは変質させ、脱毛処理することを提案した。そして、この明細書には脱毛効果を更に高めるため、レーザーダイオード発光源に加えて高周波電力の印加を追加する光脱毛装置も提案した。
【0003】
【考案が解決しようとする課題】
この考案の課題は、高コヒーレス性のレーザー光による毛根の生体組織を破壊・変質させて脱毛させる際、この光脱毛効果を一層高めるため、他の手段を付加した光脱毛装置を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記の課題は、この考案により、光脱毛用の光を発する頭部12と手で握れる本体把持部14とから成る光脱毛プローブにおいて、頭部12にあるヘッド本体24の先端表面の一部に遠赤外線放出部20と透光部材を装着できる貫通穴29とを設け、ヘッド本体24の内側の前記透光部材の真下にレーザーダイオード30を設けている光脱毛プローブによって解決されている。
【0005】
更に、上記の課題は、この考案により、上記の光脱毛プローブ10と、この光脱毛プローブに付属し、レーザーダイオード30,発光ダイオード32および遠赤外線放出部20に電力を送るための電源と、これ等の発光源30,20,32に対する光放出強度可変部および光放出持続期間調整部を備えた外部制御装置とから成る光脱毛装置によって解決されている。
【0006】
この考案による他の有利な構成は、実用新案登録請求の範囲の従属請求項に記載されている。
【0007】
【考案の実施の形態】
上記の構成で光脱毛の主役はレーザーダイオードであるが、これを更に支援する遠赤外線輻射を発する加熱部が付加している。この加熱部の動作はレーザーダイオードによる光脱毛の期間中に行われても良いが、光脱毛の期間の前、またはその後に行われても良い。そのため外部制御装置には、この加熱部の動作を任意に選定動作させることのでき作動スイッチが設けてある。
【0008】
更に、この考案による光脱毛プローブに付属する外部制御装置には、実願平8−109号明細書に説明したように、レーザーダイオードのための励起電源、強度可変部および印加期間設定部が備えてある。そして、光脱毛プローブに真空排気機構が組み込まれている場合には、真空排気用のポンプ、真空弁等も外部制御装置に内蔵されている。
【0009】
【実施例】
この考案による光脱毛プローブの一実施例を図面に示し、この考案による光脱毛装置をより詳しく説明する。
図1には、この考案による光脱毛プローブ10が示してある。この光脱毛プローブ10は脱毛させる皮膚の部位に密着させる先端部12と、それに続く片手で握れる本体把持部14とで構成され、この光脱毛プローブ10を制御する外部制御装置(図示せず)とプローブの間に装着されるケーブル16を保有する。
【0010】
図2には光脱毛プローブの先端部12が断面にして示してある。本体把持部14の先端に装着されたヘッド本体24の上側には、脱毛したい皮膚の部位を接触させて美容処理を行う。このヘッド本体24の軸線上にある貫通穴29には集光レンズ22が装着されている。集光レンズ22の周囲には遠赤外線放出部20が隣接配設されている。更に、この実施例の場合、ヘッド本体24の一部に真空排気により皮膚をヘッド本体24の上側表面に密着させるための排気口28が設けてあり、ヘッド本体24の側部にはネジ山Mを介してヘッド本体24の軸方向に移動可能なスリーブ26がある。このスリーブ26の移動によりスリーブの上端面とヘッド本体24の上面との間の接触間隔を調節できる。スリーブ26は脱毛処理すべき皮膚の部位を確認できるように透明ないしは半透明な材料で形成されている。ヘッド本体24の内部には基板(好ましくは印刷回路基板)34を固定でき、この基板34にはレーザーダイオード30と発光ダイオード32が実装されている。レーザーダイオード30は集光レンズ22の真下に配置され、放出する光をこの集光レンズ22を通して脱毛処理する皮膚に出射させる。レーザーダイオード30の直ぐ横に配設されている発光ダイオード32は、可視光を放出するもので、レーザーダイオード30の動作を確認するために使用される。この実施例の場合、レーザーダイオード30は放出される主成分の光の波長が約 785 nm で、その出力が 40 mW程度の近赤外線輻射を放出するものである。しかし、このレーザーダイオード30の動作は肉眼で確認できない。それ故、レーザーダイオード30を点灯させると、発光ダイオード32も同時に点灯するように回路を構成し、集光レンズ22を介して発光ダイオード32から出た可視光を外部、つまり頭部12の先端から確認してレーザーダイオード30の動作状況を確認する。更に、基板34には遠赤外線放出部20に導線Lを経由して給電するための印刷基板用コネクタが実装されている。
【0011】
把持本体部14の他端に接続するケーブル16は、この実施例の場合、レーザーダイオード30,発光ダイオード32および遠赤外線放出部20に所定の電力を送るための電気導線(図示せず)と、真空吸引用の可撓性吸気導管(図示せず)とで構成されている。前記電気導線は基板34に、その内部のコネクタを介して、あるいは直接直付けで接続されている。
【0012】
この考案による光脱毛装置の基本的な構造は、ここで提唱する遠赤外線輻射放出用の構成を除けば、既に述べた実願平8−109号明細書に詳しく説明されているので、その詳細の説明は省く。特に、排気口28,スリーブ26に相当するものは、この先願の考案と同一の原理に基づき使用される。図2には排気口28のみ図示しているが、実際にはこの排気口18に排気導管が連結し、この排気導管は電気導線と共にケーブル16を介して外部制御装置に通じている。
【0013】
遠赤外線放出部20は、図3Aに示すように、3層構造を有し、図3Bに示すように、ドーナツ状の形状である。このドーナツ体の一か所に両者を分離して電気絶縁する隙間45があり、隙間45の両端には導線Lに接続する通電用の端子Tが付けある。端子Tは電気発熱材料、主としてニクロム系材料の金属被膜で形成されたフィルムヒーター46に接続し、フィルムヒーター46の上には黒色の薄いカーボン膜44が蒸着されていて、更にこのカーボン膜44の上には遠赤外線輻射を上部(密着する皮膚)に効率良く伝達し、しかも皮膚からの反射を低減するための伝達層42が密着している。伝達層42は遠赤外線輻射の透過度が高い合成樹脂、例えばABS樹脂が適し、厚さは 1〜 3 mm 程度である。黒色カーボン膜44の厚さは数μm で、フィルムヒーター46の厚さは 1 mm あるいはそれ以下である。
【0014】
この考案による光脱毛装置を使用する手順は、先ず予め脱毛ワックス等を塗布した後、接着テープ等に脱毛したい毛髪を貼り付けていわば機械的に脱毛を行う。この状態では、毛根の生体組織は未だ生きているので、このまま放置すれば、再び毛髪が成長していくる。毛根の生体組織を死滅させるため、高コヒーレンス性を有する近赤外線のレーザー励起光を使用する。使用するレーザー光の出力は比較的小さく抑えてあるが、このレーザー励起光は身体に大きな負担を掛けるので、処理した皮膚の部分に熱を加えて生体組織の鎮静と同時に、その活動を高めるために、昇温させる遠赤外線輻射を印加する。遠赤外線輻射の印加は、本来の脱毛に使用する近赤外線輻射のレーザー光を印加する前、あるいは印加後に独立して行ってもよい。そのような操作が行えるように、付属する外部制御装置に対応する機能とその機能切換モードを用意すると効果的である。
【0015】
更に、ここに説明した実施例は皮膚を光脱毛プローブ10の頭部12の先端面に密着させるため、真空吸引装置を備えていたが、吸引装置を何ら備えていない装置も考えられる。このような装置は皮膚が比較的硬く、湾曲し難い個所に使用するのに適している。もちろん、このような場合には、光脱毛プローブには高さないしは間隔調整用のスリーブ26,付属するネジ山Mおよび排気口28は不要であり、付属する外部制御装置には真空排気系を装備する必要はない。
【0016】
集光レンズ22は、図2に示す実施例では、集光性のレンズであるが、この部分は内蔵されているレーザーダイオード30の光を外部(皮膚側)に伝達できる光学材料(例えば単なるガラス、石英のような光学部品)も使用できる。その場合、大切なことは、レーザーダイオード30と発光ダイオード32の光を効率良く(即ち、光損失をできる限り少なくして)外部に伝えることができる必要がある。
【0017】
上の説明は主にただ一つの好適実施例に付いて説明した。この実施例の構成を変形、改造することが想達できる。しかし、実用新案登録請求の範囲に規定する構成は全てこの考案の範疇に属する。
【0018】
【考案の効果】
以上説明したように、この考案による光脱毛装置では、高いコヒーレンス性のレーザー光により毛根の生体組織を破壊ないしは成育の抑制を行い、永久脱毛を可能にしている。従って、予備加熱による所望部位の昇温により、身体の受ける負担を軽減でき、生体組織の破壊・変質を効率良く助長できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この考案による光脱毛プローブの外観図、
【図2】 この考案による光脱毛プローブの頭部の詳細断面図、
【図3】 遠赤外線放出部の断面図(A)と平面図(B)。
【符号の説明】
10 光脱毛プローブ
12 頭部
14 本体把持部
16 ケーブル
20 遠赤外線放出部
22 集光レンズ
24 ヘッド本体
26 スリーブ
28 排気口
29 貫通穴
30 レーザーダイオード
32 発光ダイオード
34 基板
42 伝達層
44 カーボン被膜
45 隙間
46 フィルムヒータ
L 導線
M ネジ山
T 端子

【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】 光脱毛用の光を発する頭部(12)と手で握れる本体把持部(14)とから成る光脱毛プローブにおいて、頭部(12)にあるヘッド本体(24)の先端表面の一部に遠赤外線放出部(20)と透光部材を装着できる貫通穴(29)とを設け、ヘッド本体(24)の内側の前記透光部材の真下にレーザーダイオード(30)を設けていることを特徴とする光脱毛プローブ。
【請求項2】 前記透光部材は集光レンズ(22)であるか、高透光性のガラスないし石英の光学部品であることを特徴とする請求項1に記載の光脱毛プローブ。
【請求項3】 前記透光部材とレーザーダイオード(30)の近くにこのレーザーダイオード(30)の動作確認用の発光ダイオード(32)が設けてあることを特徴とする請求項1または2に記載の光脱毛プローブ。
【請求項4】 前記ヘッド本体(24)は、先端に排気口(28)と、接触高さ調整用のネジ山(M)を介して連結する透明あるいは半透明材料のスリーブ(26)が設け、このスリーブ(26)と、このスリーブ(26)に接触する皮膚と、前記ヘッド本体(24)とで仕切られる空間を排気口(28)を介して真空排気できることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の光脱毛プローブ。
【請求項5】 請求項1〜3の何ずれか1項の光脱毛プローブ(10)と、この光脱毛プローブに付属し、レーザーダイオード(30),発光ダイオード(32)および遠赤外線放出部(20)に電力を送るための電源と、これ等の発光源(30,20,32)に対する光放出強度可変部および光放出持続期間調整部を備えた外部制御装置とから成ることを特徴とする光脱毛装置。
【請求項6】 請求項4の光脱毛プローブ(10)と、この光脱毛プローブに付属し、レーザーダイオード(30),発光ダイオード(32)および遠赤外線放出部(20)に電力を送るための電源と、これ等の発光源(30,20,32)に対する光放出強度可変部および光放出持続期間調整部を備え、更に前記排気口(28)に連通して排気を行うための真空ポンプや調整真空弁から成る排気ユニットを含む外部制御装置とから成ることを特徴とする光脱毛装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【登録番号】第3028987号
【登録日】平成8年(1996)7月3日
【発行日】平成8年(1996)9月17日
【考案の名称】光脱毛装置
【国際特許分類】
【評価書の請求】有
【出願番号】実願平8−1687
【出願日】平成8年(1996)3月13日
【出願人】(000114628)ヤーマン株式会社 (31)