説明

光触媒の製造方法

【課題】 光触媒成分とナノカーボン類とを含み、高い活性を示す光触媒を製造する方法を提供する。
【解決手段】 炭素の6員環構造を外殻に有する管状のナノカーボン類と、光を照射されることによって電子および正孔を生成する光触媒成分とを含む光触媒の製造方法であって、ナノカーボン類は、前記光触媒成分を触媒として炭素含有物質を反応させることによって製造する、光触媒の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光触媒の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
酸化チタン(TiO)に代表される光触媒成分の触媒活性を向上させるために、光触媒成分とともに助触媒成分を用いた光触媒が開発されている。このような光触媒の代表例として、光触媒成分としての酸化チタン(TiO)と、助触媒成分としての白金(Pt)とを含むTiO/Pt触媒が挙げられる。このような光触媒成分と助触媒成分としての金属成分(以下、金属助触媒成分という)とを含む光触媒では、金属助触媒成分上で電子と反応物質との反応が行われ、光触媒成分上で正孔と反応物質との反応が行われる。光を照射することによって、光触媒成分によって生成された電子と正孔とを分離して、電子と正孔との再結合を防ぐことによって、触媒活性を向上させている。
【0003】
光触媒成分と金属助触媒成分とを含む光触媒の活性をさらに向上させるために、特許文献1および特許文献2では、カーボンナノチューブをさらに用いている。特許文献1では、金属助触媒成分として、カーボンナノチューブを製造する反応に触媒活性を示す金属成分を用いている。金属助触媒成分は、光触媒成分上に担持されており、カーボンナノチューブは、金属助触媒成分から伸びるように生成された状態となっている。カーボンナノチューブは、触媒表面積を向上させる目的で用いられている。特許文献2では、光触媒成分と金属助触媒成分は離間されており、カーボンナノチューブを介して連結している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−21354号公報
【特許文献2】特開2009−249206号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、カーボンナノチューブ等のナノカーボン類は、助触媒成分として有効であることに着目した。ナノカーボン類を助触媒成分として用いる場合、光によって励起された電子は、光触媒成分から助触媒成分に受け渡され、さらに、助触媒成分から反応物質に受け渡される。光触媒の活性を向上させるためには、光触媒成分から助触媒成分への電子の移動速度と、助触媒成分から反応物質への電子の移動速度を向上させる必要がある。前者の電子の移動速度は、光触媒成分と助触媒成分が接触する確率に依存し、後者の電子の移動速度は、助触媒成分と反応物質が接触する確率に依存する。これらの確率を高くすることによって光触媒の活性を向上させる場合には、光触媒成分、助触媒成分、反応物質の量を増やす必要があり、触媒効率の向上に限界があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、炭素の6員環構造を外殻に有する管状のナノカーボン類と、光を照射されることによって電子および正孔を生成する光触媒成分とを含む光触媒の製造方法を提供する。この製造方法では、ナノカーボン類は、光触媒成分を触媒として炭素含有物質を反応させることによって製造する。
【0007】
本発明によれば、助触媒成分として用いるナノカーボン類は、光触媒成分を触媒として製造され、光触媒成分を基点として成長する。このため、光触媒成分と助触媒成分であるナノカーボン類が物理的化学的に結合した光触媒を得ることができ、光触媒成分から助触媒成分への電子の移動速度が高く、高い触媒活性を示す光触媒を製造することができる。さらに、光触媒成分がナノカーボン類を製造するための触媒を兼ねているため、光触媒を製造する工程を簡略化でき、製造コスト削減にも寄与し得る。
【0008】
光触媒成分は、TiO,InTaO,NiO/In0.9Ni0.1TaOからなる群から選ばれる少なくとも1つ以上を含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、光触媒成分とナノカーボン類とを含み、高い活性を示す光触媒を製造する方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本願は、炭素の6員環構造を外殻に有する管状のナノカーボン類と、光を照射されることによって電子および正孔を生成する光触媒成分とを含む光触媒の製造方法を開示する。この製造方法は、光触媒成分を準備する工程と、ナノカーボン類を製造する工程を含む。光触媒成分を準備する工程では、光を照射されることによって電子および正孔を生成する性質を有し、かつ、ナノカーボン類生成反応に触媒活性を示す性質を有する物質を準備する。このような光触媒成分としては、例えば、TiO,InTaO,NiO/In0.9Ni0.1TaO等の光を照射されることによって電子および正孔を生成する性質を有し、かつ、ナノカーボン類生成反応に触媒活性を示す性質を有する公知の物質を単独または複数組み合わせて用いることができる。
【0011】
ナノカーボン類を製造する工程では、光触媒成分を触媒として炭素含有ガスを反応させることによってナノカーボン類を製造する。本願に係る製造方法によって製造されるナノカーボン類は、グラファイトシート又はグラフェンが管状に丸まった形態を有するナノオーダーのカーボン構造体もしくはその誘導体である。外殻は、グラファイトシートと同様の網目状の炭素の6員環構造を有しており、その一部に5員環、7員環、8員環等を含んでいてもよい。本願に係る製造方法に好適に製造できるナノカーボン類としては、特に限定されないが、外殻が単層の単層ナノチューブ(SWNT)、外殻が多層の多層ナノチューブ(MWNT)、カーボンナノホーンおよびその誘導体を例示することができる。なお、本願に係るナノカーボン類は、2つの端部を有する一連の直管状または曲がり管状であってもよいし、分岐を有して3つ以上の端部を有する形状であってもよい。また、管状の外殻の端部の一部または全部が開放された状態となっていてもよい。
【0012】
本願に係る製造方法において、ナノカーボン類は、光触媒成分を触媒として炭素含有物質を反応させることによって製造する。炭素含有物質としては、ナノカーボン生成反応の原料として公知の炭素含有物質を用いることができ、炭化水素ガスもしくは芳香族ガス等の有機ガス、一酸化炭素、二酸化炭素、黒鉛等を例示することができ、特に限定されないが、有機ガスが好ましい。
【0013】
本願に係る製造方法において、光触媒成分の存在下で炭素含有物質を反応させる方法として、アーク法、レーザーアブレーション法、熱CVD法等の従来公知の方法を用いることができる。光触媒成分上で炭素含有物質の反応が起こり、光触媒成分上でナノカーボン類が成長する。特に限定されないが、熱CVD法は、簡易かつ大規模生産が可能な方法という点において好ましい。熱CVD法は、ナノカーボン生成用の触媒を用いてメタンガスやアセチレンガス等の炭素含有ガスを500〜1000℃で熱処理する方法であり、原料である炭素含有ガスは、ナノカーボン生成用触媒を基点として成長する。なお、製造されたナノカーボン類の端部を開放するために、熱処理や酸処理等によるナノカーボン類の部分酸化処理をさらに行ってもよい。
【0014】
本願に係る製造方法では、光触媒成分を基板や基体に固定化した後で、ナノカーボン類を製造する工程を行ってもよい。光触媒成分もしくはその前駆体を基板や基体に固定化する公知の方法によって、固定化を行うことができる。
【0015】
上記のとおり、本願に係る製造方法によれば、光触媒成分とナノカーボン類が物理的および化学的に結合されている光触媒を製造することができる。このため、光触媒成分からナノカーボン類への電子の移動速度が高く、光触媒反応において高い活性を示す光触媒を製造することができる。
【0016】
なお、本願に係る製造方法は、本願に係るナノカーボン類以外の助触媒成分をさらに含む光触媒の製造にも利用できる。本願に係るナノカーボン類以外の助触媒成分としては、例えば、Pt,Ni,Pd,Au,Ag,Ru,Rh,Fe,Co,Cu,Zn等の金属成分を好適に用いることができる。
【0017】
以上、本発明の実施形態の一例について詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【0018】
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素の6員環構造を外殻に有する管状のナノカーボン類と、光を照射されることによって電子および正孔を生成する光触媒成分とを含む光触媒の製造方法であって、
前記ナノカーボン類は、前記光触媒成分を触媒として炭素含有物質を反応させることによって製造する、光触媒の製造方法。
【請求項2】
前記光触媒成分は、TiO,InTaO,NiO/In0.9Ni0.1TaOからなる群から選ばれる少なくとも1つ以上を含む、請求項1に記載の光触媒の製造方法。

【公開番号】特開2012−245470(P2012−245470A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−119397(P2011−119397)
【出願日】平成23年5月27日(2011.5.27)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】