説明

光触媒ナノシート、光触媒材料、および、それらの製造方法

【課題】 酸化チタンナノシートに替わる光触媒ナノシート、光触媒材料およびそれらの製造方法を提供すること。
【解決手段】 本発明による光触媒ナノシートは、NbOおよび/またはTiO八面体ユニットからなり、Nb、Nb17、TiNbO、TiNbO、TiNbO14、CaNb10およびLaNbからなる群から選択されたナノシートからなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光触媒ナノシート、それを用いた光触媒材料、および、それらの製造方法に関し、より詳しくは結晶がNbOおよび/またはTiO八面体ユニットからなる光触媒ナノシート、それを用いた光触媒材料、および、それらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アナターゼ、ルチル等の二酸化チタンは、光触媒性および光誘起親水化特性を示すことが知られている。これらの二酸化チタンを窓材、建材など様々な部材に薄膜としてコーティングすることにより、その光触媒性および光誘起親水化特性によって部材の表面を清浄に保つ効果があることが高い注目を集めており、ビルディングの窓、壁、テント外面などのセルフクリーニング・コーティング技術として応用が始まっている。
【0003】
これら二酸化チタンは、通常、ゾル・ゲル法に代表される液相プロセス、スパッタリング法に代表される気相プロセス等によりコーティングされる。しかしながら、コーティングされた二酸化チタン薄膜は、球状の二酸化チタン粒子が互いに結合し、2次元方向に広がった構造を有する。そのため、二酸化チタン粒子による表面の凹凸が激しく、初期防汚性に乏しいという問題がある。
【0004】
このような問題に対して、二酸化チタンに替えて酸化チタンナノシートをコーティングする技術が知られている(例えば、特許文献1を参照)。特許文献1によれば、層状チタン酸化物を単層剥離することによって分子レベルの薄さとミクロン以上の横サイズを持つ酸化チタンナノシートが合成される。
【0005】
この酸化チタンナノシートは、アナターゼなどの二酸化チタンと同様に光触媒性および光誘起親水化特性を示すことに加えて、二酸化チタン薄膜にはない極めて高い2次元異方性を有している。また、液媒体中に分散したコロイドとして酸化チタンナノシートが得られるため、ナノレベルで厚さを精密に制御できるので、製膜性に優れており、大面積コーティングを簡便かつ安価に行うことができるという利点がある。また、このようにして得られた酸化チタンナノシートの表面は、ナノレベルで平滑であるといった特徴を有する。
【0006】
このような酸化チタンナノシートにより、初期防汚性に優れた光触媒薄膜が期待される。しかしながら、酸化チタンナノシートをコーティングして形成される薄膜は、二酸化チタン粒子をゾル・ゲル法により形成される光触媒薄膜と比較して、光触媒性が必ずしも十分ではないという問題がある。
【0007】
【特許文献1】特開平9−227123号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
以上のような実情に鑑み、本願発明は、酸化チタンナノシート同様に優れた平滑性を有しつつ、二酸化チタンと同様、または、それより優れた光触媒性および光誘起親水化特性を発現する光触媒ナノシートを提供することを課題とする。
【0009】
さらに、このような機能を持ちながら、部材との密着性に優れたナノシートからなる光触媒ナノシートを提供することを課題とする。
【0010】
また、このような機能をもった光触媒ナノシートを用いた光触媒材料とそれを高収率で製造できる方法とを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)本発明による光触媒ナノシートは、NbOおよび/またはTiO八面体ユニットからなり、Nb、Nb17、TiNbO、TiNbO、TiNbO14、CaNb10およびLaNbからなる群から選択されたナノシートからなることを特徴とする。
(2)前記(1)に記載の光触媒ナノシートであって、前記選択されたナノシートは、アルカリ金属を含有する層状化合物から剥離されてなることを特徴とする。
(3)本発明による光触媒ナノシートの製造方法は、MNb、MNb17、MTiNbO、MTiNbO、MTiNbO14、MCaNb10およびMLaNbからなる群から選択されたアルカリ金属を含有する層状化合物(ここで、Mはアルカリ金属)を、酸水溶液を用いて酸処理し、前記層状化合物中の前記アルカリ金属が交換された水素イオン交換体を生成するステップと、前記水素イオン交換体と塩基性物質とを反応させ、前記水素イオン交換体が剥離されたナノシートからなるコロイド溶液を得るステップとからなることを特徴とする。
(4)本発明による基材上に付与された光触媒薄膜からなる光触媒材料であって、前記光触媒薄膜は、前記(1)または(2)のいずれかに記載の光触媒ナノシートからなることを特徴とする。
(5)前記(4)に記載の光触媒材料であって、前記光触媒薄膜の表面粗さは最大2nmであることを特徴とする。
(6)本発明による光触媒材料の製造方法は、Nb、Nb17、TiNbO、TiNbO、TiNbO14、CaNb10およびLaNbからなる群から選択されたナノシートを含有するコロイド溶液を基材上に付与するステップからなることを特徴とする。
(7)前記(6)に記載の方法であって、前記付与するステップに続いて100℃以上900℃未満の温度範囲で熱処理するステップをさらに包含することを特徴とする。
(8)前記(6)に記載の方法において、前記付与するステップは、交互吸着法、LB法、ドロップ法、スピンコート法およびディップコート法からなる群から選択されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明による光触媒ナノシートは、光触媒性を示すので光触媒薄膜用の光触媒ナノシートとして機能する。中でも、Nb、TiNbO、CaNb10およびLaNbは、既存のアナターゼよりも高い光誘起親水化特性を示すので、セルフクリーニング機能、防塵機能および冷却機能に優れている。また、本発明による光触媒ナノシートは、800℃の高温熱処理後でもナノシート構造を維持するとともに、既存のアナターゼよりも高い光誘起親水化特性を示すので、部材への適用に当たり加熱処理することでもその機能を損なうことがない。また、本発明による光触媒ナノシートは、層状化合物を剥離して得られるため、分子レベルのシート厚を有する。このような光触媒ナノシートを薄膜化すれば、凹凸のない初期防汚性に優れた光触媒薄膜が得られる。また、本発明による光触媒ナノシートは、高温熱処理によっても光触媒性および光誘起親水化特性を損なわないので、実用プロセスにおいて有利である。
【0013】
本発明の光触媒材料によれば、基材と、その上に付与された上述の光触媒ナノシートからなる光触媒薄膜とからなる。光触媒薄膜は、光触媒ナノシートが有する面内方向の高い柔軟性を利用し、任意の形状および任意の表面状態の基材にも密着できる。このため、基材の材料・形状に制限がないため好適である。また、光触媒薄膜もまた、光触媒ナノシートの光触媒性および光誘起親水化特性を示すとともに、光触媒ナノシートのシート厚を反映した凹凸(最大でも2nm)を有するので、初期防汚性に優れる。
【0014】
本発明の光触媒ナノシートの製造方法によれば、アルカリ金属を含有する層状化合物を出発原料として用いて、単層剥離することによって光触媒ナノシートを得る。酸処理し、塩基性物質と反応させるだけでよいので、複雑な装置を不要とし、簡便かつ安価に光触媒ナノシートを提供できる。
【0015】
本発明の光触媒材料の製造方法によれば、光触媒ナノシートからなるコロイド溶液を基材に付与することによって、光触媒材料を得る。光触媒ナノシートの構造柔軟性により、任意の形状および任意の表面状態の基材が適用できるので、用途の制限がなく有利である。基材への付与は種々のウェットプロセスにより簡便に行われ、用途に応じて光触媒薄膜の膜厚、大きさ等を制御することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明者らは、酸化チタンナノシートに代替する材料として、アルカリ金属を含有するチタンおよび/またはニオブ系の層状酸化物に着目した。アルカリ金属を含有するチタンおよび/またはニオブ系の層状酸化物には、例えば、KNb、KNb17、KTiNbO、CsTiNbO、KTiNbO14、KCaNb10およびKLaNbがある。
【0017】
アルカリ金属を含有する層状化合物(以降では単にアルカリ金属含有層状化合物と称する)のナノシートは、Ti3d軌道またはNd4d軌道とO2p軌道とに由来する半導体的なバンド電子構造を有する。本発明者らは、このようなバンド電子構造に基づいて、これらのナノシートが光触媒性を示し、光触媒薄膜および光触媒材料として有効であることを明らかにした。
【0018】
また、上述のアルカリ金属含有層状化合物のうちいくつか(KTiNbO14をのぞく化合物)はナノシート化が報告されているものの、良質なナノシートが得られていない。したがって、本発明者らは、これらのナノシートを良質かつ高収率で得るために、原料となるアルカリ金属含有層状化合物の合成、製造プロセスを確立した。
【0019】
さらに、本発明者らは、これらアルカリ金属含有層状化合物から得られるナノシートを薄膜化し、その膜厚、表面構造、ラフネス、および、膜内構造をナノレベルで制御することに成功した。
【0020】
以降では、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0021】
(実施の形態1)
図1は、本発明による光触媒ナノシートの模式図である。
【0022】
本発明による光触媒ナノシート100は、Nb、Nb17、TiNbO、TiNbO、TiNbO14、CaNb10およびLaNbからなる群から選択されたナノシートからなる。
【0023】
本発明による光触媒ナノシートは、MNb、MNb17、MTiNbO、MTiNbO、MTiNbO14、MCaNb10およびMLaNbからなる群から選択されるアルカリ金属含有層状化合物110を単層剥離することによって得られる。ここでMは、アルカリ金属、Li、Na、K、RbおよびCsのいずれかであるが、合成の容易性の観点からKおよびCsが好ましい。
【0024】
図2は、本発明による各種光触媒ナノシートの模式図を示す。
【0025】
図2に示される本発明による各光触媒ナノシートは、Nb(図2(A))、Nb17(図2(B))、TiNbO(図2(C))、TiNbO(図2(D))、TiNbO14(図2(E))、CaNb10(図2(F))およびLaNb(図2(G))である。いずれの光触媒ナノシートも、NbOおよび/またはTiOの八面体のユニット200に基づいており、ユニット200が所定の配列をした二次元結晶である。このようなユニット200に基づく本発明による光触媒ナノシートは、元素が規則正しく配列しており、なおかつ、バラエティに富んだ種々の構造を有している。
【0026】
このような豊富な構造により、選択するナノシートによって種々の効果が得られる。例えば、図2(F)に示されるCaNb10は、リジッドな結晶構造を有しており、アルカリ金属層状化合物110を形成しやすい。そのため、大きなナノシート100が得られ易いという効果がある。また、図2(D)および(E)TiNbOおよびTiNbO14は、比較的結晶構造がシンプルであるため、構造柔軟性の高いナノシートが得られ易いという効果がある。さらに、ナノシートの種類によって、光触媒性および光誘起親水化特性の強弱があるので、要求に応じたナノシートを選択することができるため有利である。
【0027】
これらのナノシートは、いずれも、既存のアナターゼ等の酸化チタンと同様に、光触媒性および光誘起親水化特性を示す。中でも、TiNbO、LaNb、NbおよびCaNb10は、酸化チタンよりも高い光誘起親水化特性を示すことが確認され、セルフクリニーニング機能、防塵機能および冷却機能に有効である。これらの特性については後述の実施例において詳述する。
【0028】
上述したように、アルカリ金属含有層状化合物を剥離して得られるナノシートの厚さ(シート厚)は、分子レベルであるのに対して、横方向の大きさはミクロンオーダである。結晶構造から得られる理論的なシート厚は、1〜2nm程度であり、このような光触媒ナノシートを薄膜化すれば、シート厚を反映した凹凸のない光触媒薄膜が得られるので、初期防汚性の向上に有利である。詳細には、後述するように、光触媒薄膜は、光触媒ナノシートの単層構造または多層構造からなる。光触媒薄膜の凹凸(表面粗さ)は、その表面となる光触媒ナノシートの部分的な重なり、または、光触媒ナノシート間に生じ得る隙間によって決まるが、一部光触媒ナノシートの重なりがあっても凹凸は最大で2nmとなる。なお、このような光触媒薄膜の製造方法については実施の形態2で詳述する。
【0029】
また、面方向の大きさがミクロンオーダであるため、大面積の光触媒薄膜を得るに有利である。さらに、本発明による光触媒ナノシートは、上述したように、厚さ方向には分子レベルであるが、面方向にはミクロンオーダの広がりを持っており、ナノシートに特有の構造柔軟性を有する。これにより、本発明による光触媒ナノシートを薄膜化すれば、柔軟性を有した光触媒薄膜が得られるので、用途の形状等に制限がなく、汎用性が高い。
【0030】
さらに、これらの光触媒ナノシート100は、例えば、800℃の高温熱処理を行っても、その結晶構造を維持することが分かった。これは、NbOまたはTiOの八面体のユニット200が結合した二次元シート構造が安定であるためと考えられる。このような特徴により、高温熱処理後も、光触媒性および光誘起親水特性が損なわれることはない。このような特性は、本発明の光触媒ナノシート100を実用化する際にプロセス上の熱処理を行うことができるため、極めて有利である。
【0031】
このような光触媒ナノシート100は、通常、溶媒に分散させてコロイド溶液として保持される。このような保持により長時間保存可能であるとともに、持ち運び・搬送も簡便である。さらに、光触媒ナノシート100を薄膜化するための場所が特定されないので、プロセス上有利である。
【0032】
図3は、本発明による光触媒材料の模式図を示す。
【0033】
光触媒材料300は、基材310と、その上に位置する光触媒薄膜320とからなる。光触媒薄膜320は、図1および図2を参照して説明した光触媒ナノシート100からなる。
【0034】
基材310は、光触媒薄膜320が付与される任意の材料であるが、例えば、建物、乗物等の窓材、外壁材、陶磁器材料等がある。上述したように、光触媒ナノシート100は、構造柔軟性を有しているので、光触媒ナノシート100から形成された光触媒薄膜320もまた構造柔軟性を有している。したがって、光触媒薄膜320は、基材310の表面が曲率または凹凸を有していても、そのような形状を反映して、基材310上に位置することができる。本発明による光触媒材料300は、基材310の材料・表面形状に制限がないので、光触媒性およびセルフクリーニング機能等の光誘起親水化特性が求められるあらゆる材料として有効である。
【0035】
光触媒薄膜320は、光触媒ナノシート100の単層構造であってもよいし、多層構造であってもよい。光触媒薄膜320が光触媒ナノシート100の単層構造である場合、光触媒薄膜320は、光触媒ナノシート100が面方向に集積し、配列した状態を意図する。光触媒薄膜320が光触媒ナノシート100の多層構造である場合、光触媒薄膜320は、光触媒ナノシート100がカウンターイオンを挟んで積層された状態を意図する。なお、カウンターイオンは、光触媒ナノシート100間の結合を維持するように機能する。
【0036】
このように、光触媒薄膜320は、光触媒ナノシート100の単層構造または多層構造により、その膜厚をナノオーダ(分子レベル)で制御することができる。なお、単層構造であっても多層構造であっても、光触媒薄膜320の表面粗さ(凹凸)は、光触媒ナノシート100の部分的な重なりの程度または光触媒ナノシート100間に生じ得る隙間の程度によるものの、最大2nmに抑えることができることが分かった。初期防汚性を向上させるためには、表面粗さが小さいほどよいとされており、本発明による光触媒薄膜320は、極めて初期防汚性に優れていることが示唆される。
【0037】
本発明による光触媒材料300は、光触媒薄膜320による光触媒性(例えば、抗菌機能)が要求される任意の用途に適用可能である。例えば、基材310がタイルである場合には、光触媒材料300は、紫外光照射によって汚れ物質および雑菌を分解する抗菌タイルとして機能する。また、光触媒材料300は、光触媒薄膜320による光誘起親水化特性(セルフクリーニング機能、防塵機能、冷却機能)が要求される任意の用途に適用可能である。例えば、基材310が外部用窓材である場合には、光触媒材料300は、雨水によって洗浄されるセルフクリーニング機能を備えた窓材として機能し、基材310がミラーである場合には、光触媒材料300は、表面に水滴が形成されない(すなわち、薄い水膜となる)ので防曇機能を備えたミラーとして機能し、基材310が建築材である場合には、光触媒材料300は、建築材を少量の水で覆うことができるので大気冷却・壁面冷却を可能にする省エネ建築材として機能する。なお、当然のことながら、光触媒材料300は、光触媒ナノシート100の機能を組み合わせた用途に用いることも想定の範囲内である。
【0038】
(実施の形態2)
次に、実施の形態1で説明した光触媒ナノシート100および光触媒材料300の製造方法を説明する。
【0039】
図4は、本発明による光触媒ナノシートの製造工程を示すフローチャートである。
【0040】
ステップごとに説明する。
【0041】
ステップS410:アルカリ金属含有層状化合物110(図1)を、酸水溶液を用いて酸処理し、水素イオン交換体を生成する。アルカリ金属含有層状化合物110は、MNb、MNb17、MTiNbO、MTiNbO、MTiNbO14、MCaNb10およびMLaNbからなる群から選択される。ここで、Mは、周期律表の第1族元素であるアルカリ金属である。上述したように、Mは、合成の観点からKおよびCsが好ましい。アルカリ金属含有層状化合物110は、アルカリ金属Mとチタン・ニオブ系のナノシートとの層状構造からなる。例えば、アルカリ金属含有層状化合物110がMTiNbOである場合、MTiNbOは、アルカリ金属MとTiNbOとの層状構造からなる。酸水溶液としては無機酸、有機酸を使用することができるが、通常は、塩酸、硫酸、硝酸、酢酸および炭酸からなる群から選択される。
【0042】
アルカリ金属含有層状化合物110を酸水溶液により酸処理すると、アルカリ金属含有層状化合物110中のアルカリ金属Mイオンは、水素イオンまたはオキソニウムイオンと置換し、水素イオン交換体(図示せず)を生成する。
【0043】
酸処理条件は、酸水溶液の規定が0.1規定以上であり、室温(10℃〜30℃)にて少なくとも24時間反応させる。酸水溶液の規定が0.1規定よりも小さい場合、イオン交換が十分に進行せず、後述する剥離反応が生じにくくなる場合がある。
【0044】
ステップS420:水素イオン交換体と塩基性物質とを反応させ、ナノシートを含有するコロイド溶液を得る。塩基性物質は、ステップS420で得られた水素イオン交換体の層状構造を剥離するように機能する物質であり、具体的には、テトラブチルアンモニウムイオン(TBA)、テトラプロピルアンモニウムイオン、テトラエチルアンモニウムイオン、テトラメチルアンモニウムイオン、n−プロピルアミン、n−エチルアミンおよびエタノールアミンを含む水溶液である。中でも、収率の観点からTBAの水溶液が望ましい。
【0045】
水素イオン交換体中のプロトンと、塩基性物質とのモル比は、好ましくは、1〜10の範囲である。モル比が1未満または10を超えると、剥離が十分に進行しない場合がある。なお、最適なモル比は、用いるアルカリ金属含有層状化合物によって異なることに留意されたい。
【0046】
剥離反応は、単に、水素イオン交換体と塩基性物質とを室温にて混合するだけでよいが、混合に加えて振盪させてもよい。これにより、剥離が促進するので、収率が向上する。剥離反応は、数日(例えば、4日)以上振盪させることによって、100%の収率を得ることができる。剥離が進行すると、乳白色の溶液となるので、目視にて確認し、反応をやめてもよい。
【0047】
このようにして、アルカリ金属含有層状化合物110が剥離した、本発明による光触媒ナノシート100が分散したコロイド溶液を得ることができる。本発明の方法によれば、アルカリ金属層状化合物110を単に酸処理し、剥離するだけでよいので、専用の装置は不要である。したがって製造が簡便であり、大量生産に好適である。
【0048】
次に、光触媒材料300(図3)の製造方法を説明する。
【0049】
光触媒材料300は、基材310(図3)に光触媒ナノシート100(図1)を含有するコロイド溶液を付与することによって得られる。例えば、図4を参照して説明したステップS420に続いて、コロイド溶液を基材に付与してもよい。コロイド溶液は、ステップS410およびステップS420を用いて調製される。
【0050】
コロイド溶液が付与される基材310は、実施の形態1で説明したように、光触媒性を発現させるべき任意の材料、形状が適用可能である。基材310は、親水化処理をしておくことが望ましい。これにより、基材310の濡れ性が向上するので、コロイド溶液の基材310への付与が容易になる。
【0051】
基材310への付与は、液相プロセスを介した任意の方法を採用できるが、好ましくは、交互吸着法、ラングミュア・ブロジェット(LB)法、スピンコート法、ドロップ法およびディップコート法からなる群から選択される方法が採用される。各方法についてさらに詳述する。
【0052】
(1)交互吸着法
図5は、交互吸着法を用いた光触媒材料の製造プロセスを示す図である。
【0053】
ステップS510:基材310にカウンターイオンとしてカチオン性ポリマー540を付与する。カチオン性ポリマー540は、基材310の表面をカチオン性にする任意のポリマーを適用できるが、例示的には、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)(PDDA)、ポリエチレンイミン(PEI)、塩酸ポリアリルアミン(PAH)である。中でもPDDAおよびPEIは汎用性があるため、好ましい。
【0054】
カチオン性ポリマー540を基材310に付与することにより、基材310の表面がカチオン性になり、アニオン性の光触媒ナノシート100とより強固に結合する。
【0055】
ステップS520:カチオン性ポリマー540が付与された基材310に、光触媒ナノシート100を含有するコロイド溶液(例えば、ステップS420で得られたコロイド溶液)を付与する。コロイド溶液は必要に応じて濃度調整される。静電相互作用により、カチオン性ポリマー540上に光触媒ナノシート100が結合、自己整合することによって、光触媒薄膜320が形成される。
【0056】
ステップS530:必要に応じて、ステップS510およびステップS520を繰返し、光触媒薄膜320が所望の厚さを有するまで繰り返す。光触媒薄膜320が光触媒ナノシート100の単層構造を有する場合には、ステップS530を省略してよい。
【0057】
このようにして、単層構造または多層構造からなる光触媒薄膜320を備えた光触媒材料300が得られる。交互吸着法であれば、光触媒薄膜320の膜厚をナノオーダ(分子レベル)で制御できるため、好ましい。交互吸着法であれば、高価な装置を必要としないので、光触媒材料300を安価に提供できる。また、基材310の大きさ、および、コロイド溶液の容量によっては、光触媒材料300の大面積化も可能である。
【0058】
なお、ステップS530に続いて、紫外線等の光を照射してカチオン性ポリマー540を除去してもよい。
【0059】
(2)LB法
図6は、LB法を用いた光触媒材料の製造プロセスを示す図である。
【0060】
ステップS610:展開液に基材310を浸漬させる。展開液として、光触媒ナノシート100を含有するコロイド溶液(例えば、ステップS420で得られたコロイド溶液)を希釈、調製する。展開液(調製されたコロイド溶液)はトラフ(水槽)に展開され、光触媒ナノシート100の一部は、気液界面に浮遊する。
【0061】
ステップS620:基材310を引き上げ、基材310上に光触媒ナノシート100からなる光触媒薄膜320を形成する。LB法では、トラフに基材310を浸漬させた後、展開液表面を一定の表面圧まで圧縮して、光触媒薄膜320を気液界面に形成し、垂直引き上げ法で基材310をコロイド溶液から引上げることによって、基材310上に光触媒薄膜320を転写(形成)する。
【0062】
このようにして、光触媒ナノシート100の単層構造からなる光触媒薄膜320を基材310上に備えた光触媒材料300が得られる。LB法であれば、展開液表面に光触媒ナノシート100が互いに重なることなく、面方向に集積した単層構造(このような単層構造を単層膜と呼ぶ)からなる光触媒薄膜320が気液界面に形成されるので、極めて均質かつ良質な単層膜の光触媒薄膜320を基材310上に形成することができる。高品質な光触媒薄膜320が要求される用途に適している。
【0063】
(3)スピンコート法
既知のスピンコート法と同様に、スピンコート材として光触媒ナノシート100を含有するコロイド溶液(例えば、ステップS420で得られたコロイド溶液)を用いる。高速で回転する基材310上にコロイド溶液を滴下し、遠心力によって均一な光触媒薄膜320を得る。この場合、LB法とは異なり、必ずしも光触媒ナノシート100の単層構造の光触媒薄膜320とはならないが、比較的簡便に、均一な光触媒薄膜320が得られる。
【0064】
(4)ドロップ法(滴下法)
既知のドロップ法と同様に、基材310上に光触媒ナノシート100を含有するコロイド溶液(例えば、ステップS420で得られたコロイド溶液)をピペット等により滴下し、乾燥させて、光触媒薄膜320を得る。この場合、光触媒ナノシート100が互いに重なった多層構造からなる光触媒薄膜320が得られる。均一な光触媒薄膜320を備えた光触媒材料300を得るのは困難であるが、品質が要求されない用途には有効である。
【0065】
(5)ディップコート法(浸漬法)
既知のディップコート法と同様に、基材310を、光触媒ナノシート100を含有するコロイド溶液(例えば、ステップS420で得られたコロイド溶液)に浸漬させ、引き上げ、乾燥させて、光触媒薄膜320を得る。この場合も、ドロップ法同様、光触媒ナノシート100が互いに重なった多層構造からなる光触媒薄膜320が得られる。均一な光触媒薄膜320を備えた光触媒材料300を得るのは困難であるが、品質が要求されない用途には有効である。
【0066】
このようにして得られた光触媒材料300において、基材310と光触媒薄膜320との密着性をより高めるために、コロイド溶液の基材310への付与に続いて、光触媒材料300を熱処理してもよい。熱処理によって、基材310と光触媒薄膜320との間で反応が生じ、それによって生じる結合により密着性が向上する。ここで熱処理の温度条件は、少なくとも100℃以上で900℃未満の温度範囲で行われる。100℃以上であれば、基材310と光触媒薄膜320との間での反応を生じさせることができるので、密着性の向上が期待できる。900℃を超えると、光触媒薄膜320の化学変化および膜質の劣化が生じるので好ましくない。より好ましい熱処理の温度条件は、300℃以上で800℃以下の温度範囲である。300℃以上800℃以下であれば、膜質、光触媒性および光誘起親水化特性を損なうことなく、短時間で確実に密着性を改善できる。
【0067】
(実施の形態3)
次に、本発明に好適なアルカリ金属含有層状化合物110(図1)の製造方法について説明する。本発明による光触媒ナノシート100を高収率かつ高品質で得るためには、実施の形態2のステップS410(図4)において用いるアルカリ金属含有層状化合物は、不純物を含まないことが望ましい。本発明者らは、鋭意工夫によりアルカリ金属含有層状化合物の製造方法を確立し、その結果、高収率かつ高品質な光触媒ナノシート100、および、光触媒材料300を得ることに成功した。
【0068】
図7は、アルカリ金属含有層状化合物の製造工程を示すフローチャートである。
【0069】
ステップごとに詳述する。
【0070】
ステップS710:原料混合物を調整する。原料混合物は、アルカリ金属含有層状化合物を構成する各元素(但し、酸素を除く)の化合物の混合物である。具体的には、アルカリ金属層状化合物としてMNbまたはMNb17を製造する場合には、原料混合物は、加熱して酸化アルカリとなるアルカリ金属源と、加熱して酸化ニオブとなるニオブ源とを含む。アルカリ金属層状化合物としてMTiNbO、MTiNbOまたはMTiNbO14を製造する場合には、原料混合物は、加熱して酸化アルカリとなるアルカリ金属源と、加熱して酸化ニオブとなるニオブ源と、加熱して酸化チタンとなるチタン源とを含む。アルカリ金属含有層状化合物としてMCaNb10を製造する場合には、原料混合物は、加熱して酸化アルカリとなるアルカリ金属源と、加熱して酸化ニオブとなるニオブ源と、加熱して酸化カルシウムとなるカルシウム源とを含む。アルカリ金属含有層状化合物としてMLaNbを製造する場合には、原料混合物は、加熱して酸化アルカリとなるアルカリ金属源と、加熱して酸化ニオブとなるニオブ源と、加熱して酸化ランタンとなるランタン源とを含む。
【0071】
より具体的には、加熱して酸化アルカリとなるアルカリ金属源とは、例えば、硝酸塩、炭酸塩、カルボン酸塩、硫酸塩等のアルカリ金属塩、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属アルコキシド等である。加熱して酸化ニオブとなるニオブ源とは、例えば、ニオブアルコキシド、ニオブ水酸化物、ニオブ塩等である。加熱して酸化チタンとなるチタン源とは、例えば、チタンアルコキシド、チタン水酸化物、チタン塩等である。加熱して酸化カルシウムとなるカルシウム源とは、カルシウムアルコキシド、カルシウム水酸化物、炭酸カルシウム等のカルシウム塩等である。加熱して酸化ランタンとなるランタン源とは、ランタンアルコキシド、ランタン水酸化物、ランタン塩等である。
【0072】
取扱の簡便性、入手・合成の容易性から、アルカリ金属源はアルカリ金属塩が好ましく、中でも、常温常圧にて安定なアルカリ金属の硝酸塩または炭酸塩が好ましい。同様に、取扱の簡便性、入手・合成の容易性から、カルシウム源はカルシウム塩が好ましく、常温常圧にて安定な炭酸カルシウムが好ましい。また、常温常圧にて安定な、ニオブ源として酸化ニオブ、チタン源として酸化チタン、ランタン源として酸化ランタンを用いてもよい。
【0073】
このように、原料混合物としてアルカリ金属含有層状化合物を構成する各元素(但し、酸素を除く)の化合物を用いることにより、それぞれの元素の化合物として高純度の化合物を用いることができるので、不純物の混入を抑制することができる。その結果、得られるアルカリ金属含有層状化合物の純度を向上させることができる。
【0074】
各化合物の混合は、例えば、アルミナ乳鉢を用いて60分間粉砕・混合される。十分な粉砕・混合により、各化合物間の反応が促進するので好ましい。
【0075】
ステップS720:原料混合物を焼成する。なお、焼成は、仮焼成と本焼成と2段階で行ってもよい。仮焼成後に再度粉砕・混合し、本焼成での反応を促進させてもよい。焼成条件は、目的とするアルカリ金属含有層状化合物に応じて異なる。
【0076】
次に、各アルカリ金属含有層状化合物について、好適な製造方法を説明する。
【0077】
(1)MNb
アルカリ金属源としてアルカリ金属の硝酸塩と、ニオブ源として酸化ニオブとを混合し、原料混合物を得る(ステップS710)。ここで、アルカリ金属の硝酸塩と酸化ニオブとは、MNbを満たす化学量論比で混合される。
次に、原料混合物を所定の温度プログラムにより仮焼成する(ステップS720)。所定の温度プログラムは、550℃以上650℃以下の温度範囲まで1.5時間以上2.5時間以下の間で昇温し、550℃以上650℃以下の温度範囲で1.5時間以上2.5時間以下の間保持し、次いで、550℃以上650℃以下の温度範囲から850℃以上950℃以下の温度範囲まで1.5時間以上2.5時間以下の間で昇温し、その後、室温まで急冷する。このように、比較的小さな昇温速度で昇温させるので、アルカリ金属源としてアルカリ金属の硝酸塩中に含まれる水分子の突沸が抑制される。このように、アルカリ金属の硝酸塩を用い、所定の温度プログラムを用いることにより、純度をさらに向上させることができることが分かった。
【0078】
仮焼成後、原料混合物を本焼成する(ステップS720)。850℃以上950℃以下の温度範囲で少なくとも20時間焼成する。20時間より少ないとMNb11の不純物が生成する場合がある。
【0079】
(2)MNb17
アルカリ金属源としてアルカリ金属の炭酸塩と、ニオブ源として酸化ニオブとからなる原料混合物を混合する(ステップS710)。ここで、アルカリ金属の炭酸塩と酸化ニオブとは、MNb17を満たす化学量論比よりもアルカリ金属の炭酸塩がリッチ、例えば、モル比で10%リッチ、となるように混合される。これは、焼成時にアルカリ金属が蒸発する場合があるためである。
【0080】
次に、原料混合物を仮焼成する(ステップS720)。仮焼成は、原料混合物を、850℃以上950℃以下の温度範囲に0.5時間以上1.5時間以下の間焼成し、急冷する。混合粉砕後、原料混合物を本焼成する(ステップS720)。具体的には、原料混合物を1000℃以上1100℃未満の温度範囲で少なくとも20時間焼成する。20時間より少ないとMNbOの不純物が生成する場合がある。
【0081】
(3)MTiNbO
アルカリ金属源としてアルカリ金属の炭酸塩と、ニオブ源として酸化ニオブと、チタン源として酸化チタンとからなる原料混合物を混合する(ステップS710)。ここで、アルカリ金属の炭酸塩と、酸化ニオブと、酸化チタンとは、MTiNbOを満たす化学量論比よりもアルカリ金属の炭酸塩がリッチ、例えば、モル比で5%リッチ、となるように混合される。これは、焼成時にアルカリ金属が蒸発する場合があるためである。
【0082】
次に、原料混合物を仮焼成する(ステップS720)。仮焼成は、原料混合物を、850℃以上950℃以下の温度範囲に0.5時間以上1.5時間以下の間焼成し、急冷する。混合粉砕後、原料混合物を本焼成する(ステップS720)。具体的には、原料混合物を1050℃より高温かつ1150℃未満の温度範囲で少なくとも20時間焼成する。1050℃以下1150℃以上で焼成すると、MTi13の不純物が生成する場合がある。
【0083】
(4)MTiNbO
アルカリ金属源としてアルカリ金属の硝酸塩と、ニオブ源として酸化ニオブと、チタン源として酸化チタンとからなる原料混合物を混合する(ステップS710)。ここで、アルカリ金属の硝酸塩と、酸化ニオブと、酸化チタンとは、MTiNbOを満たす化学量論比よりもアルカリ金属の硝酸塩がリッチ、例えば、モル比で10%リッチ、となるように混合される。原料混合物が化学量論比通りである場合、アルカリ金属の蒸発により不純物が生成する場合がある。
【0084】
次に、原料混合物を所定の温度プログラムにより仮焼成する(ステップS720)。所定の温度プログラムは、350℃以上450℃以下の温度範囲まで0.5時間以上1.5時間以下の間で昇温し、700℃以上800℃以下の温度範囲まで3.5時間以上4.5時間以下の間でさらに昇温し、700℃以上800℃以下の温度範囲で少なくとも30分間保持し、次いで、900℃以上1000℃以下の温度範囲まで0.5時間以上1.5時間以下の間で昇温し、900℃以上1000℃以下の温度範囲で少なくとも30分保持し、その後、室温まで急冷する。このように、比較的小さな昇温速度で昇温させ、段階的に焼成するので、アルカリ金属の硝酸塩中に含まれる水分子の突沸が抑制される。このように、アルカリ金属の硝酸塩を用い、所定の温度プログラムを用いることにより、純度をさらに向上させることができることが分かった。
【0085】
仮焼成後、原料混合物を本焼成する(ステップS720)。具体的には、原料混合物を1050℃以上1150℃以下の温度範囲で少なくとも20時間焼成する。
【0086】
(5)MTiNbO14
アルカリ金属源としてアルカリ金属の炭酸塩と、ニオブ源として酸化ニオブと、チタン源として酸化チタンとからなる原料混合物を混合する(ステップS710)。ここで、アルカリ金属の炭酸塩と、酸化ニオブと、酸化チタンとは、MTiNbOを満たす化学量論比で混合される。
【0087】
次に、原料混合物を仮焼成する(ステップS720)。仮焼成は、原料混合物を、850℃以上950℃以下の温度範囲に0.5時間以上1.5時間以下の間焼成し、急冷する。仮焼成後、原料混合物を本焼成する(ステップS720)。具体的には、原料混合物を950℃以上1050℃以下の温度範囲で少なくとも10時間焼成する。950℃未満の温度で焼成すると、KTiの不純物が生成する場合がある。
【0088】
(6)MCaNb10
アルカリ金属源としてアルカリ金属の炭酸塩と、ニオブ源として酸化ニオブと、カルシウム源として炭酸カルシウムとからなる原料混合物を混合する(ステップS710)。ここで、アルカリ金属の炭酸塩と、酸化ニオブと、炭酸カルシウムとは、MCaNb10を満たす化学量論比よりもアルカリ金属の炭酸塩がリッチ、例えば、モル比で10%リッチ、となるように混合される。これは、焼成時にアルカリ金属が蒸発する場合があるためである。
【0089】
次に、原料混合物を焼成する(ステップS720)。焼成は、所定の温度プログラムにより本焼成のみで足りる。所定の温度プログラムは、850℃以上950℃以下の温度範囲に2.5時間以上3.5時間以下の間で昇温し、850℃以上950℃以下の温度範囲に0.5時間以上1.5時間以下の間保持し、次いで、1150℃以上1250℃以下の温度範囲に2.5時間以上3.5時間以下の間で昇温し、1150℃以上1250℃以下の温度範囲で少なくとも12時間焼成し、その後、750℃以上850℃以下の温度範囲に2.5時間以上3.5時間以下の間で降温し、急冷する。
【0090】
(7)MLaNb
アルカリ金属源としてアルカリ金属の炭酸塩と、ニオブ源として酸化ニオブと、ランタン源として酸化ランタンとからなる原料混合物を混合する(ステップS710)。ここで、アルカリ金属の炭酸塩と、酸化ニオブと、酸化ランタンとは、MLaNbを満たす化学量論比よりもアルカリ金属の炭酸塩がリッチ、例えば、モル比で15%リッチ、となるように混合される。これは、焼成時にアルカリ金属が蒸発する場合があるためである。
【0091】
次に、原料混合物を焼成する(ステップS720)。焼成は、所定の温度プログラムにより本焼成のみで足りる。所定の温度プログラムは、1100℃〜1200℃の温度範囲に2.5時間〜3.5時間の間で昇温し、1100℃〜1200℃の温度範囲で0.5時間〜1.5時間保持し、室温まで除冷する。
【0092】
実施の形態3で説明したアルカリ金属含有層状化合物の製造プロセスを実施の形態2で説明した図4のステップS410に先立って行ってもよい。これにより、高純度・高収率で光触媒ナノシート、さらには光触媒材料が得られる。
【0093】
以降では実施例を述べる。実施例では、アルカリ金属含有層状化合物の製造における最適化条件(化合物の組み合わせ、焼成条件)、水素イオン交換体を得るための最適化条件(酸処理回数、濃度)を示すが、本発明は実施例に限定されるものではないことに留意されたい。実施例および比較例の合成条件等を表1にまとめて示す。
【0094】
【表1】

【実施例1】
【0095】
基材310(図3)として石英ガラス基板およびシリコン(Si)基板上に、交互吸着法を用いて、Nbナノシートからなる光触媒薄膜320(図3)が付与された光触媒材料300(図3)を製造した。光触媒材料の製造に先立って、アルカリ金属がKであるKNbのアルカリ金属含有層状化合物を合成した。
【0096】
KNO(4.5357g、和光純薬工業製、特級)と、Nb(17.8871g、レアメタリック製、純度99.99%)とを混合し、原料混合物を得た(図7のステップS710)。KNbの化学量論比を満たすよう、KNOとNbとのモル比は2:3であった。原料混合物は、アルミナ乳鉢を用いて60分間、粉砕・混合された。
【0097】
次いで、原料混合物を所定の温度プログラムを用いて仮焼成した(図7のステップS720)。原料混合物を白金るつぼに移し、電気炉に入れた。所定の温度プログラムは、室温から600℃まで2時間で昇温し、600℃で2時間保持し、次いで、600℃から900℃まで2時間で昇温し、保持することなく白金るつぼを電気炉から取り出し、室温で急冷した。
【0098】
室温にて約10分間除熱し、白金るつぼ中の試料をアルミナ乳鉢で粉砕・混合を行った。粉砕・混合された試料を再度白金るつぼに移し、900℃に加熱した電気炉に入れ、20時間本焼成した(図7のステップS720)。その後、白金るつぼを電気炉から取り出し、室温で急冷し、アルカリ金属含有層状化合物110(図1)を得た。このようにして得られたアルカリ金属含有層状化合物110について粉末X線回折を行い、KNb単相であることを確認した。なお、本焼成において、同様の温度条件にて焼成時間を5時間および10時間と変化させた場合には、KNb11の不純物が生成した。このことからも、制御された温度プログラム、および、20時間以上の本焼成が好ましいことが分かった。
【0099】
次に、このようにして得られたアルカリ金属含有層状化合物KNbを用いて、光触媒ナノシートNbを合成した。
【0100】
アルカリ金属含有層状化合物KNbを、酸水溶液として硝酸水溶液(13.5規定、和光純薬工業製、特級)を用いて酸処理し、水素イオン交換体を生成した(図4のステップS410)。なお、硝酸水溶液を、超純水(>18MΩcm)を用いて2規定となるように調製した。
【0101】
具体的な反応は、KNb(1g)と硝酸水溶液(100mL)とを200mL三角フラスコ中で作用させ、12時間毎に1回攪拌し、反応を促進させた。24時間毎に硝酸水溶液を交換し、72時間反応させた。反応終了後、生成物を超純水でろ過し、空気中で風乾させ、水素イオン交換体を得た。
【0102】
次いで、水素イオン交換体0.4gと塩基性物質として水酸化テトラブチルアンモニウム水溶液(TBAOHaq.)100mL(和光純薬工業製、特級;濃度10%)とを反応させ、水素イオン交換体を剥離し、Nbナノシートからなるコロイド溶液を得た(図4のステップS420)。
【0103】
具体的な反応は、TBAOHaq.中のTBAと水素イオン交換体中のHとのモル比が10:1となるように調整した。200mL三角フラスコに超純水77.1mLを入れ、次いで、TBAOHaq.22.9mLを加え、合計100mLの溶液を得た。この溶液に水素イオン交換体0.4gを加え、シェイカーで180rpm、10日間振盪させた。三角フラスコ中の溶液が乳白色の溶液となり、水素イオン交換体の剥離が完全に行われたことを確認した。このようにして、Nbナノシートからなるコロイド溶液(以降ではNbコロイド溶液と呼ぶ)を得た。
【0104】
交互吸着法を用いてNbコロイド溶液を、石英ガラス基板およびSi基板それぞれに付与した。付与に先立って、石英ガラス基板およびSi基板を親水化処理した。具体的には、石英ガラス基板およびSi基板の表面を、アセトンを含ませたベムコットンで拭き、メタノールと塩酸とを1:1で混合させた混合溶液に30分間浸漬させた。これにより、石英ガラス基板およびSi基板の表面の有機物等の汚れを除去した。その後、石英ガラス基板およびSi基板を超純水で洗浄し、エタノール/塩酸(1:1)混合溶液と濃硫酸溶液とにそれぞれ30分間浸漬させた。これにより、石英ガラス基板およびSi基板の表面は親水化された。
【0105】
親水化処理した石英ガラス基板およびSi基板にカチオン性ポリマーとしてポリ塩化ジアリルジメチルアンモニウム(PDDA)を付与した(図5のステップS510)。具体的には、23gL−1の濃度に調整されたPDDA水溶液に、塩化ナトリウム(NaCl)を添加し、0.01Mに調整した。NaClは、PDDAの表面電荷を向上させるので、交互吸着法による多層構造の光触媒薄膜の形成を促進させることができる。なお、0.01Mを超えると、NaClが多層構造形成の障害となり、好ましくない。一方、NaClを添加しないと、PDDAの表面電荷が向上せず、多層構造の形成が困難になる。NaClを添加したPDDA水溶液にTBAOHaq.を滴下し、PDDA水溶液のpHを9に調整した。このように調製されたPDDA水溶液に、親水化処理された石英ガラス基板およびSi基板をそれぞれ20分間浸漬させた。その後、石英ガラス基板およびSi基板を超純水で洗浄し、窒素ガスフローし、表面を乾燥させた。
【0106】
次いで、PDDAが付与された石英ガラス基板およびSi基板にNbコロイド溶液を付与した(図5のステップS520)。Nbコロイド溶液は超純水を用いて濃度0.4gL−1、および、塩酸溶液を用いてpH9に調整された。付与は、Nbコロイド溶液に、PDDAが付与された石英ガラス基板およびSi基板を20分間浸漬させた。その後、石英ガラス基板およびSi基板を超純水で洗浄し、窒素ガスフローし、表面を乾燥させた。
【0107】
ステップS510およびステップS520を10回繰り返した(図5のステップS530)。このようにして得られる光触媒材料を、(Nb/PDDA)/ガラス、および、(Nb/PDDA)/Siと称する。なお、ここで、nは図5のステップ530の繰返し回数を示す。
【0108】
試料として(Nb/PDDA)/ガラスを用いて、Nbナノシートの光触媒性を評価した。評価法は、表面に有機色素としてメチレンブルーを吸着させた(Nb/PDDA)/ガラスの光分解に伴う吸着色素量の変化を測定した。測定には、UV−vis吸収スペクトル測定を用い、色素の光分解速度から(Nb/PDDA)/ガラスの光触媒活性を求めた。
【0109】
具体的には、(Nb/PDDA)/ガラスの前処理として紫外光(1mWcm−2、λ<300nm)を72時間照射し、TBA等の表面の汚れを除去した。その後、(Nb/PDDA)/ガラスの表面に0.1Mのメチレンブルー溶液を滴下し、空気中で24時間乾燥させ、定着させた。光源としてキセノンランプを用いて紫外光(10mWcm−2、λ<300nm)を照射し、メチレンブルーの吸光度変化を測定した。結果を図8、表2および表3に示し詳述する。
【0110】
次に、試料として(Nb/PDDA)/ガラスを用いて、Nbナノシートの光誘起親水化特性を評価した。光触媒性の評価と同様に、紫外光を照射し、(Nb/PDDA)/ガラスを前処理した後、(Nb/PDDA)/ガラスを暗所で1ヶ月保管した。その後、(Nb/PDDA)/ガラスに水滴を滴下し、再度、同条件で紫外光を照射した。水滴の水接触角と、紫外光照射時間との関係を調べた。測定には水接触角測定装置を用い、親水化反応速度を求めた。結果を図9、表4および表5に示し詳述する。
【0111】
交互吸着法による多層構造について調べるために、図5のステップS530を繰り返すごとに(すなわち、(Nb/PDDA)/ガラスのn=1〜10それぞれについて)、UV−vis吸収スペクトルを測定した。結果を図10に示し後述する。
【0112】
多層構造の光触媒薄膜を有する光触媒材料として、(Nb/PDDA)10/Siの構造評価をX線回折(XRD)によって行った。結果を図14に示し後述する。
【0113】
多層構造の光触媒薄膜を有する光触媒材料として、(Nb/PDDA)10/ガラスの光触媒性を調べた。具体的には、紫外光(1mWcm−2、λ<300nm)の照射前後のXRD測定を行い、層間距離を測定した。結果を図15に示し後述する。
【0114】
多層構造の光触媒薄膜を有する光触媒材料として、(Nb/PDDA)10/Siの表面状態を原子間力顕微鏡(AFM)によって観察した。結果を図19および表6に示し後述する。
【実施例2】
【0115】
基材310(図3)として石英ガラス基板およびSi基板上に、交互吸着法を用いて、Nb17ナノシートからなる光触媒薄膜320(図3)が付与された光触媒材料300(図3)を製造した。光触媒材料の製造に先立って、アルカリ金属がKであるKNb17のアルカリ金属含有層状化合物を合成した。
【0116】
CO(5.5824g、レアメタリック製、純度99.99%)と、Nb(15.3379g、レアメタリック製、純度99.99%)とを混合し、原料混合物を得た(図7のステップS710)。ここで、KNb17の化学量論比よりもKCOをモル比で10%過剰に添加し、KCOとNbとのモル比は2.2:3であった。原料混合物は、アルミナ乳鉢を用いて60分間、粉砕・混合された。
【0117】
次いで、原料混合物を仮焼成した(図7のステップS720)。原料混合物を白金るつぼに移し、900℃に加熱した電気炉に入れ、1時間保持した。その後、白金るつぼを電気炉から取り出し、室温で急冷した。
【0118】
室温にて約10分間除熱し、白金るつぼ中の試料をアルミナ乳鉢で粉砕・混合を行った。粉砕・混合された試料を再度白金るつぼに移し、1050℃に加熱した電気炉に入れ、20時間本焼成した(図7のステップS720)。その後、白金るつぼを電気炉から取り出し、室温で急冷し、アルカリ金属含有層状化合物110(図1)を得た。このようにして得られたアルカリ金属含有層状化合物110について粉末XRD測定を行い、KNb17単相であることを確認した。なお、本焼成において、1100℃にて10時間焼成した場合には、KNbOの不純物が生成した。このことからも、少なくとも20時間の本焼成が好ましいことが分かった。
【0119】
次に、このようにして得られたアルカリ金属含有層状化合物KNb17を用いて、光触媒ナノシートNb17を合成した。
【0120】
アルカリ金属含有層状化合物KNb17を、酸水溶液として塩酸水溶液(12規定、和光純薬工業製、特級)を用いて酸処理し、水素イオン交換体を生成した(図4のステップS410)。なお、塩酸水溶液を、超純水(>18MΩcm)を用いて1規定となるように調整した。なお、塩酸水溶液を用いた以外は、実施例1と同様の条件で酸処理し、水素イオン交換体を得た。
【0121】
次いで、水素イオン交換体0.4gと塩基性物質として水酸化テトラブチルアンモニウム水溶液(TBAOHaq.)100mL(和光純薬工業製、特級;濃度10%)とを反応させ、水素イオン交換体を剥離し、Nb17ナノシートからなるコロイド溶液を得た(図4のステップS420)。
【0122】
具体的な反応は、TBAOHaq.中のTBAと水素イオン交換体中のHとのモル比が10:1となるように調整した。200mL三角フラスコに超純水50.5mLを入れ、次いで、TBAOHaq.49.5mLを加え、合計100mLの溶液を得た。この溶液に水素イオン交換体0.4gを加え、シェイカーで180rpm、10日間振盪させた。三角フラスコ中の溶液が乳白色の溶液となり、水素イオン交換体の剥離が完全に行われたことを確認した。このようにして、Nb17ナノシートからなるコロイド溶液(以降ではNb17コロイド溶液と呼ぶ)を得た。
【0123】
交互吸着法を用いてNb17コロイド溶液を石英ガラス基板およびSi基板に付与した。Nb17コロイド溶液の石英ガラス基板およびSi基板への付与は、実施例1と同じ濃度に調整したNb17コロイド溶液を用い、同様の手順によって行ったため、説明を省略する。実施例1と同様に、得られた光触媒材料を、(Nb17/PDDA)/ガラス、および、(Nb17/PDDA)/Siと称する。なお、ここで、nは図5のステップ530の繰返し回数を示す。
【0124】
実施例1と同様に、試料として(Nb17/PDDA)/ガラスを用いて、Nb17ナノシートの光触媒性および光誘起親水化特性を評価した。光誘起親水化特性の結果を図9、表4および表5に示し詳述する。
【0125】
最終的に得られた多層構造の光触媒薄膜を有する光触媒材料として、(Nb17/PDDA)10/Siの表面状態を原子間力顕微鏡(AFM)によって観察した。結果を図20および表6に示し後述する。
【実施例3】
【0126】
基材310(図3)として石英ガラス基板およびSi基板上に、交互吸着法を用いて、TiNbOナノシートからなる光触媒薄膜320(図3)が付与された光触媒材料300(図3)を製造した。光触媒材料の製造に先立って、アルカリ金属がKであるKTiNbOのアルカリ金属含有層状化合物を合成した。
【0127】
CO(5.5839g、レアメタリック製、純度99.99%)と、TiO(6.1473g、レアメタリック製、純度99.99%)と、Nb(10.2281g、レアメタリック製、純度99.99%)とを混合し、原料混合物を得た(図7のステップS710)。KTiNbOの化学量論比よりもKCOをモル比で5%過剰に添加し、KCOとTiOとNbとのモル比は1.05:2:1であった。原料混合物は、アルミナ乳鉢を用いて60分間、粉砕・混合された。
【0128】
次いで、原料混合物を仮焼成した(図7のステップS720)。原料混合物を白金るつぼに移し、900℃に加熱した電気炉に入れ、1時間保持した。その後、白金るつぼを電気炉から取り出し、室温で急冷した。
【0129】
室温にて約10分間除熱し、白金るつぼ中の試料をアルミナ乳鉢で粉砕・混合を行った。粉砕・混合された試料を再度白金るつぼに移し、1100℃に加熱した電気炉に入れ、20時間本焼成した(図7のステップS720)。その後、白金るつぼを電気炉から取り出し、室温で急冷し、アルカリ金属含有層状化合物110(図1)を得た。このようにして得られたアルカリ金属含有層状化合物110について粉末XRD測定を行い、KTiNbO単相であることを確認した。なお、本焼成において、1000℃および1150℃と変化させた場合、および、KTiNbOの化学量論比の原料混合物を用いた場合には、KTi13の不純物が生成した。このことからも、KTiNbO単相で得るためには、原料混合物中のKCOの蒸発を抑制すること、および、1050℃以上1150℃未満の温度範囲の本焼成が好ましいことが分かった。
【0130】
次に、このようにして得られたアルカリ金属含有層状化合物KTiNbOを用いて、光触媒ナノシートTiNbOを合成した。
【0131】
アルカリ金属含有層状化合物KTiNbOを、実施例2と同様に酸水溶液として塩酸水溶液(12規定、和光純薬工業製、特級)を用いて酸処理し、水素イオン交換体を生成した(図4のステップS410)。
【0132】
次いで、水素イオン交換体0.4gと塩基性物質として水酸化テトラブチルアンモニウム水溶液(TBAOHaq.)100mL(和光純薬工業製、特級;濃度10%)とを反応させ、水素イオン交換体を剥離し、TiNbOナノシートからなるコロイド溶液を得た(図4のステップS420)。
【0133】
具体的な反応は、TBAOHaq.中のTBAと水素イオン交換体中のHとのモル比が5:1となるように調整した。200mL三角フラスコに超純水77.3mLを入れ、次いで、TBAOHaq.22.7mLを加え、合計100mLの溶液を得た。この溶液に水素イオン交換体0.4gを加え、シェイカーで180rpm、10日間振盪させた。三角フラスコ中の溶液が乳白色の溶液となり、水素イオン交換体の剥離が完全に行われたことを確認した。このようにして、TiNbOナノシートからなるコロイド溶液(以降ではTiNbOコロイド溶液と呼ぶ)を得た。
【0134】
交互吸着法を用いてTiNbOコロイド溶液を石英ガラス基板およびSi基板に付与した。TiNbOコロイド溶液の石英ガラス基板およびSi基板への付与は、実施例1と同じ濃度に調整したTiNbOコロイド溶液を用い、同様の手順によって行ったため、説明を省略する。実施例1と同様に、得られた光触媒材料を、(TiNbO/PDDA)/ガラス、および、(TiNbO/PDDA)/Siと称する。なお、ここで、nは図5のステップ530の繰返し回数を示す。
【0135】
実施例1と同様に、試料として(TiNbO/PDDA)/ガラスを用いて、TiNbOナノシートの光触媒性および光誘起親水化特性を評価した。それぞれの結果を図8、図9および表2〜表5に示し詳述する。
【0136】
実施例1と同様に、交互吸着法による多層構造のUV−vis吸収スペクトル測定、(TiNbO/PDDA)10/SiのXRD測定、(TiNbO/PDDA)10/ガラスの光触媒性、および、(TiNbO/PDDA)10/SiのAFM測定により評価した。これらの結果を、図11、図14、図16、図21および表6に示し後述する。
【実施例4】
【0137】
基材310(図3)として石英ガラス基板およびSi基板上に、交互吸着法を用いて、TiNbOナノシートからなる光触媒薄膜320(図3)が付与された光触媒材料300(図3)を製造した。光触媒材料の製造に先立って、アルカリ金属がCsであるCsTiNbOのアルカリ金属含有層状化合物を合成した。
【0138】
CsNO(9.8901g、レアメタリック製、純度99.99%)と、TiO(7.3694g、レアメタリック製、純度99.99%)と、Nb(6.1308g、レアメタリック製、純度99.99%)とを混合し、原料混合物を得た(図7のステップS710)。CsTiNbOの化学量論比よりもCsNOをモル比で10%過剰に添加し、CsNOとTiOとNbとのモル比は、2.2:4:1であった。原料混合物は、アルミナ乳鉢を用いて60分間、粉砕・混合された。
【0139】
次いで、原料混合物を所定の温度プログラムを用いて仮焼成した(図7のステップS720)。原料混合物を白金るつぼに移し、電気炉に入れた。所定の温度プログラムは、室温から400℃まで1時間で昇温し、400℃から750℃まで4時間で昇温し、750℃で30分間保持し、次いで、750℃から950℃まで1時間で昇温し、950℃で30分間焼成した。その後、白金るつぼを電気炉から取り出し、室温で急冷した。
【0140】
室温にて約10分間除熱し、白金るつぼ中の試料をアルミナ乳鉢で粉砕・混合を行った。粉砕・混合された試料を再度白金るつぼに移し、1100℃に加熱した電気炉に入れ、20時間本焼成した(図7のステップS720)。その後、白金るつぼを電気炉から取り出し、室温で急冷し、アルカリ金属含有層状化合物110(図1)を得た。このようにして得られたアルカリ金属含有層状化合物110について粉末XRD測定を行い、CsTiNbO単相であることを確認した。なお、原料混合物を化学量論比で調整し、同様の温度条件にて焼成した場合には、不明な不純物が生成した。このことからも、CsTiNbO単相で得るためには、原料混合物中のCsNOの蒸発を抑制することが重要であることが分かった。
【0141】
次に、このようにして得られたアルカリ金属含有層状化合物CsTiNbOを用いて、光触媒ナノシートTiNbOを合成した。
【0142】
アルカリ金属含有層状化合物CsTiNbOを、実施例2と同様に酸水溶液として塩酸水溶液(12規定、和光純薬工業製、特級)を用いて酸処理し、水素イオン交換体を生成した(図4のステップS410)。
【0143】
次いで、水素イオン交換体0.4gと塩基性物質として水酸化テトラブチルアンモニウム水溶液(TBAOHaq.)100mL(和光純薬工業製、特級)とを反応させ、水素イオン交換体を剥離し、TiNbOナノシートからなるコロイド溶液を得た(図4のステップS420)。
【0144】
具体的な反応は、TBAOHaq.中のTBAと水素イオン交換体中のHとのモル比が5:1となるように調整した。200mL三角フラスコに超純水84.6mLを入れ、次いで、TBAOHaq.15.4mLを加え、合計100mLの溶液を得た。この溶液に水素イオン交換体0.4gを加え、シェイカーで180rpm、10日間振盪させた。三角フラスコ中の溶液が乳白色の溶液となり、水素イオン交換体の剥離が完全に行われたことを確認した。このようにして、TiNbOナノシートからなるコロイド溶液(以降ではTiNbOコロイド溶液と呼ぶ)を得た。
【0145】
交互吸着法を用いてTiNbOコロイド溶液を石英ガラス基板およびSi基板に付与した。TiNbOコロイド溶液の石英ガラス基板への付与は、実施例1と同じ濃度に調整したTiNbOコロイド溶液を用い、同様の手順によって行ったため、説明を省略する。実施例1と同様に、得られた光触媒材料を、(TiNbO/PDDA)/ガラス、および、(TiNbO/PDDA)/Siと称する。なお、ここで、nは図5のステップ530の繰返し回数を示す。
【0146】
実施例1と同様に、試料として(TiNbO/PDDA)/ガラスを用いて、TiNbOナノシートの光触媒性および光誘起親水化特性を評価した。それぞれの結果を図8、図9および表2〜表5に示し詳述する。
【0147】
実施例1と同様に、交互吸着法による多層構造のUV−vis吸収スペクトル測定、(TiNbO/PDDA)10/SiのXRD測定、(TiNbO/PDDA)10/ガラスの光触媒性、および、(TiNbO/PDDA)10/SiのAFM測定を行った。これらの結果を、図12、図14、図17、図22および表6に示し後述する。
【実施例5】
【0148】
基材310(図3)として石英ガラス基板およびSi基板上に、TiNbO14ナノシートからなる光触媒薄膜320(図3)が付与された光触媒材料300(図3)を製造した。光触媒材料の製造に先立って、アルカリ金属がKであるKTiNbO14のアルカリ金属含有層状化合物を合成した。
【0149】
CO(6.1553g、レアメタリック製、純度99.99%)と、TiO(11.8586g、レアメタリック製、純度99.99%)と、Nb(3.9461g、レアメタリック製、純度99.99%)とを混合し、原料混合物を得た(図7のステップS710)。KTiNbO14の化学量論比を満たすよう、KCOとTiOとNbとのモル比は3:10:1であった。原料混合物は、アルミナ乳鉢を用いて60分間、粉砕・混合された。
【0150】
次いで、原料混合物を仮焼成した(図7のステップS720)。原料混合物を白金るつぼに移し、900℃に加熱した電気炉に入れ、1時間保持した。その後、白金るつぼを電気炉から取り出し、室温で急冷した。
【0151】
室温にて約10分間除熱し、白金るつぼ中の試料をアルミナ乳鉢で粉砕・混合を行った。粉砕・混合された試料を再度白金るつぼに移し、1000℃に加熱した電気炉に入れ、12時間本焼成した(図7のステップS720)。その後、白金るつぼを電気炉から取り出し、室温で急冷し、アルカリ金属含有層状化合物110(図1)を得た。このようにして得られたアルカリ金属含有層状化合物110について粉末XRD測定を行い、KTiNbO14単相であることを確認した。なお、本焼成において、800℃および900℃で焼成した場合、KTiの不純物が生成した。このことからも、KTiNbO14単相で得るためには、少なくとも950℃での本焼成が好ましいことが分かった。
【0152】
次に、このようにして得られたアルカリ金属含有層状化合物KTiNbO14を用いて、光触媒ナノシートTiNbO14を合成した。
【0153】
アルカリ金属含有層状化合物KTiNbO14を、実施例2と同様に酸水溶液として塩酸水溶液(12規定、和光純薬工業製、特級)を用いて酸処理し、水素イオン交換体を生成した(図4のステップS410)。
【0154】
次いで、水素イオン交換体0.4gと塩基性物質として水酸化テトラブチルアンモニウム水溶液(TBAOHaq.)100mL(和光純薬工業製、特級)とを反応させ、水素イオン交換体を剥離し、TiNbO14ナノシートからなるコロイド溶液を得た(図4のステップS420)。
【0155】
具体的な反応は、TBAOHaq.中のTBAと水素イオン交換体中のHとのモル比が1:1となるように調整した。200mL三角フラスコに超純水94.6mLを入れ、次いで、TBAOHaq.5.4mLを加え、合計100mLの溶液を得た。この溶液に水素イオン交換体0.4gを加え、シェイカーで180rpm、10日間振盪させた。三角フラスコ中の溶液が乳白色の溶液となり、水素イオン交換体の剥離が完全に行われたことを確認した。このようにして、TiNbO14ナノシートからなるコロイド溶液(以降ではTiNbO14コロイド溶液と呼ぶ)を得た。
【0156】
交互吸着法を用いてTiNbO14コロイド溶液を石英ガラス基板およびSi基板に付与した。TiNbO14コロイド溶液の石英ガラス基板およびSi基板への付与は、実施例1と同じ濃度に調整したTiNbO14コロイド溶液を用い、同様の手順によって行ったため、説明を省略する。実施例1と同様に、得られた光触媒材料を、(TiNbO14/PDDA)/ガラス、および、(TiNbO14/PDDA)/Siと称する。なお、ここで、nは図5のステップ530の繰返し回数を示す。
【0157】
実施例1と同様に、試料として(TiNbO14/PDDA)/ガラスを用いて、TiNbO14ナノシートの光触媒性および光誘起親水化特性を評価した。それぞれの結果を図8、図9および表2〜表5に示し詳述する。
【0158】
実施例1と同様に、交互吸着法による多層構造のUV−vis吸収スペクトル測定、(TiNbO14/PDDA)10/SiのXRD測定、(TiNbO14/PDDA)10/ガラスの光触媒性評価、および、(TiNbO14/PDDA)10/SiのAFM測定を行った。これらの結果を、図13、図14、図18、図23および表6に示し後述する。
【実施例6】
【0159】
基材310(図3)として石英ガラス基板上に、交互吸着法を用いて、CaNb10ナノシートからなる光触媒薄膜320(図3)が付与された光触媒材料300(図3)を製造した。光触媒材料の製造に先立って、アルカリ金属がKであるKCaNb10のアルカリ金属含有層状化合物を合成した。
【0160】
CO(2.7246g、レアメタリック製、純度99.99%)と、CaCO(7.1751g、レアメタリック製、純度99.99%)と、Nb(14.2917g、レアメタリック製、純度99.99%)とを混合し、原料混合物を得た(図7のステップS710)。KCaNb10の化学量論比よりもKCOをモル比で10%過剰に添加し、KCOとCaCOとNbとのモル比は1.1:4:3であった。原料混合物は、アルミナ乳鉢を用いて60分間、粉砕・混合された。
【0161】
次いで、原料混合物を焼成した(図7のステップS720)。原料混合物を白金るつぼに移し、電気炉に入れた。室温から900℃まで3時間で昇温し、900℃で1時間保持した。次いで、900℃から1200℃まで3時間で昇温し、1200℃で12時間焼成した。その後、1200℃から800℃まで3時間で降温し、白金るつぼを電気炉から取り出し、アルカリ金属含有層状化合物110(図1)を得た。このようにして得られたアルカリ金属含有層状化合物110について粉末XRD測定を行い、KCaNb10単相であることを確認した。なお、原料混合物をKCaNb10のモル比で調整した場合、KCOの蒸発により不純物が生成した。このことからも、KCaNb10単相で得るためには、原料混合物中のKCOの蒸発を抑制することが重要であることが分かった。
【0162】
次に、このようにして得られたアルカリ金属含有層状化合物KCaNb10を用いて、光触媒ナノシートCaNb10を合成した。
【0163】
アルカリ金属含有層状化合物KCaNb10を、酸水溶液として硝酸水溶液(13.5規定、和光純薬工業製、特級)を用いて酸処理し、水素イオン交換体を生成した(図4のステップS410)。なお、硝酸水溶液を、超純水(>18MΩcm)を用いて5規定となるように調製した。
【0164】
具体的な反応は、KCaNb10(5g)と硝酸水溶液(200mL)とを500mLビーカ中でスターラを用いて攪拌し、72時間反応させた。反応終了後、生成物を超純水でろ過し、空気中で風乾させ、水素イオン交換体を得た。
【0165】
次いで、水素イオン交換体0.4gと塩基性物質として水酸化テトラブチルアンモニウム水溶液(TBAOHaq.)100mL(和光純薬工業製、特級)とを反応させ、水素イオン交換体を剥離し、CaNb10ナノシートからなるコロイド溶液を得た(図4のステップS420)。
【0166】
具体的な反応は、TBAOHaq.中のTBAと水素イオン交換体中のHとのモル比が2:1となるように調整した。200mL三角フラスコに超純水96.2mLを入れ、次いで、TBAOHaq.3.8mLを加え、合計100mLの溶液を得た。この溶液に水素イオン交換体0.4gを加え、シェイカーで180rpm、4日間振盪させた。三角フラスコ中の溶液が乳白色の溶液となり、水素イオン交換体の剥離が完全に行われたことを確認した。このようにしてCaNb10ナノシートからなるコロイド溶液(以降ではCaNb10コロイド溶液と呼ぶ)を得た。
【0167】
交互吸着法を用いてCaNb10コロイド溶液を石英ガラス基板に付与した。実施例1と同様に、石英ガラス基板を親水化処理した。
【0168】
親水化処理した石英ガラス基板にカチオン性ポリマーとしてポリエチレンイミン(PEI)を付与した(図5のステップS510)。具体的には、PEI水溶液の濃度およびpHを、それぞれ、2.5gL−1、および、9に調整した。pHの調整には、塩酸溶液を用いた。
【0169】
このように調製されたPEI水溶液に、親水化処理された石英ガラス基板を20分間浸漬させた。その後、石英ガラス基板を超純水で洗浄し、窒素ガスフローし、表面を乾燥させた。
【0170】
次いで、PEIが付与された石英ガラス基板にCaNb10コロイド溶液を付与した(図5のステップS520)。CaNb10コロイド溶液は、1500rpmで10分間遠心分離し、未剥離物質を除去した後、濃度0.4gL−1およびpH9に調整された。ここでもpHの調整には塩酸溶液を用いた。付与は、CaNb10コロイド溶液に、PEIが付与された石英ガラス基板を20分間浸漬させた。その後、石英ガラス基板を超純水で洗浄し、窒素ガスフローし、表面を乾燥させた。実施例6では、実施例1とは異なり、図5のステップS530を行わず、単層構造の光触媒薄膜を形成し、終了した。
【0171】
実施例1と同様に、試料として(CaNb10/PDDA)/ガラスを用いてCaNb10ナノシートの光触媒性および光誘起親水化特性の評価、ならびに、AFM観察をした。光誘起親水化特性およびAFM観察の結果を図9および表4〜表6に示し詳述する。
【実施例7】
【0172】
基材310(図3)として石英ガラス基板上に、交互吸着法を用いて、LaNbナノシートからなる光触媒薄膜320(図3)が付与された光触媒材料300(図3)を製造した。光触媒材料の製造に先立って、アルカリ金属がKであるKLaNbのアルカリ金属含有層状化合物を合成した。
【0173】
CO(3.3403g、レアメタリック製、純度99.99%)と、La(6.8474g、レアメタリック製、純度99.99%)と、Nb(11.1728g、レアメタリック製、純度99.99%)とを混合し、原料混合物を得た(図7のステップS710)。KLaNbの化学量論比よりもKCOをモル比で15%過剰に添加し、KCOとLaとNbとのモル比は1.15:2:1であった。原料混合物は、アルミナ乳鉢を用いて60分間、粉砕・混合された。
【0174】
次いで、原料混合物を焼成した(図7のステップS720)。原料混合物を白金るつぼに移し、電気炉に入れた。室温から1150℃まで3時間で昇温し、1150℃で1時間保持した。その後、1150℃から室温まで降温し、白金るつぼを電気炉から取り出し、アルカリ金属含有層状化合物110(図1)を得た。このようにして得られたアルカリ金属含有層状化合物110について粉末XRD測定を行い、KLaNb単相であることを確認した。なお、原料混合物をKLaNbの化学量論比で調整した場合、KCOの蒸発により不純物が生成した。このことからも、KLaNb単相で得るためには、原料混合物中のKCOの蒸発を抑制することが重要であることが分かった。
【0175】
次に、このようにして得られたアルカリ金属含有層状化合物KLaNbを用いて、光触媒ナノシートLaNbを合成した。
【0176】
アルカリ金属含有層状化合物KLaNbを、実施例2と同様に酸水溶液として塩酸水溶液(12規定、和光純薬工業製、特級)を用いて酸処理し、水素イオン交換体を生成した(図4のステップS410)。
【0177】
次いで、水素イオン交換体0.4gと塩基性物質として水酸化テトラブチルアンモニウム水溶液(TBAOHaq.)100mL(和光純薬工業製、特級)とを反応させ、水素イオン交換体を剥離し、LaNbナノシートからなるコロイド溶液を得た(図4のステップS420)。
【0178】
具体的な反応は、TBAOHaq.中のTBAと水素イオン交換体中のHとのモル比が5:1となるように調整した。200mL三角フラスコに超純水88.5mLを入れ、次いで、10%TBAOHaq.11.5mLを加え、合計100mLの溶液を得た。この溶液に水素イオン交換体0.4gを加え、シェイカーで180rpm、10日間振盪させた。三角フラスコ中の溶液が乳白色の溶液となり、水素イオン交換体の剥離が完全に行われたことを確認した。このようにして、LaNbナノシートからなるコロイド溶液(以降ではLaNbコロイド溶液と呼ぶ)を得た。
【0179】
交互吸着法を用いてLaNbコロイド溶液を石英ガラス基板に付与した。LaNbコロイド溶液の石英ガラス基板への付与は、実施例1と同じ濃度に調整したLaNbコロイド溶液を用い、図5のステップS530を繰返し行わない以外は同様であるため、説明を省略する。
【0180】
実施例1と同様に、試料として(LaNb/PDDA)/ガラスを用いてLaNbナノシートの光触媒性および光誘起親水化特性の評価、ならびに、AFM観察をした。光誘起親水化特性およびAFM観察の結果を図9および表4〜表6に示し詳述する。
【実施例8】
【0181】
基材310(図3)としてシリコン(Si)基板上に、LB法を用いて、Nbナノシートからなる単層構造の光触媒薄膜320(図3)が付与された光触媒材料300(図3)を製造した。
【0182】
実施例1で作製したNbコロイド溶液を濃度16mgL−1になるように調製し、トラフに展開した。実施例1と同様に親水化処理したSi基板をトラフに浸漬させ、30分間静置し、気−水界面を安定化し、下層液の温度を一定(25℃)にした(図6のステップS610)。
【0183】
気−水界面上に吸着したNbナノシートを、圧縮速度0.5mmsec−1で圧縮し、気−水界面上にNbナノシートからなる単層構造の光触媒薄膜320を形成した。次いで、表面圧力を12mNm−1に維持し、30分間静置し、光触媒薄膜320を安定化させた。その後、Si基板を、表面圧力を維持しつつ、速度1mmsec−1で垂直に引き上げた(図6のステップS620)。
【0184】
このようにして得られた光触媒材料Nb/Siの表面状態をAFMによって観察した。結果を図24に示し、後述する。
【実施例9】
【0185】
基材310(図3)としてシリコン(Si)基板上に、LB法を用いて、TiNbOナノシートからなる単層構造の光触媒薄膜320(図3)が付与された光触媒材料300(図3)を製造した。
【0186】
実施例3で作製したTiNbOコロイド溶液を濃度16mgL−1になるように調製し、トラフに展開した。表面圧力を15mNm−1とした以外は、実施例8と同様の手順により光触媒材料を得た。
【0187】
このようにして得られた光触媒材料TiNbO/Siの表面状態をAFMによって観察した。結果を図25に示し、後述する。
【実施例10】
【0188】
基材310(図3)としてシリコン(Si)基板上に、LB法を用いて、TiNbOナノシートからなる単層構造の光触媒薄膜320(図3)が付与された光触媒材料300(図3)を製造した。
【0189】
実施例4で作製したTiNbOコロイド溶液を濃度16mgL−1になるように調製し、トラフに展開した。表面圧力を15mNm−1とした以外は、実施例8と同様の手順により光触媒材料を得た。
【0190】
このようにして得られた光触媒材料TiNbO/Siの表面状態をAFMによって観察した。結果を図26に示し、後述する。
【実施例11】
【0191】
基材310(図3)としてシリコン(Si)基板上に、LB法を用いて、TiNbO14ナノシートからなる単層構造の光触媒薄膜320(図3)が付与された光触媒材料300(図3)を製造した。
【0192】
実施例5で作製したTiNbO14コロイド溶液を濃度16mgL−1になるように調製し、トラフに展開した。表面圧力を17mNm−1とした以外は、実施例8と同様の手順により光触媒材料を得た。
【0193】
このようにして得られた光触媒材料TiNbO14/Siの表面状態をAFMによって観察した。結果を図27に示し、後述する。
【実施例12】
【0194】
基材310(図3)としてシリコン(Si)基板上に、LB法を用いて、CaNb10ナノシートからなる単層構造の光触媒薄膜320(図3)が付与された光触媒材料300(図3)を製造した。
【0195】
実施例6で作製したCaNb10コロイド溶液を濃度32mgL−1になるように調製し、トラフに展開した。表面圧力を8.5mNm−1とした以外は、実施例8と同様の手順により光触媒材料を得た。
【0196】
このようにして得られた光触媒材料CaNb10/Siの表面状態をAFMによって観察した。結果を図28に示し、後述する。
【実施例13】
【0197】
基材310(図3)としてシリコン(Si)基板上に、滴下法を用いて、Nbナノシートからなる光触媒薄膜320(図3)が付与された光触媒材料300(図3)を製造した。
【0198】
実施例1で作製したNbコロイド溶液を濃度0.2gL−1になるように調製した。Si基板表面を、アセトンを含ませたベムコットンで洗浄した。Si基板表面に、パスツールピペットにより濃度調整されたNbコロイド溶液を1滴滴下した後、5〜7時間風乾し、水分を蒸発させた。
【0199】
このようにして得られた光触媒材料Nb/Siの表面状態をAFMによって観察した。結果を図29に示し、後述する。
【実施例14】
【0200】
基材310(図3)としてシリコン(Si)基板上に、滴下法を用いて、TiNbOナノシートからなる光触媒薄膜320(図3)が付与された光触媒材料300(図3)を製造した。
【0201】
実施例3で作製したTiNbOコロイド溶液を濃度16mgL−1になるように調製した。実施例1と同様に親水化処理したSi基板表面に、実施例13と同様に、パスツールピペットにより濃度調整されたTiNbOコロイド溶液を1滴滴下した後、5〜7時間風乾し、水分を蒸発させた。
【0202】
このようにして得られた光触媒材料TiNbO/Siの表面状態をAFMによって観察した。結果を図30に示し、後述する。
【実施例15】
【0203】
基材310(図3)としてシリコン(Si)基板上に、滴下法を用いて、TiNbOナノシートからなる光触媒薄膜320(図3)が付与された光触媒材料300(図3)を製造した。
【0204】
実施例4で作製したTiNbOコロイド溶液を濃度50mgL−1になるように調製した。実施例1と同様に親水化処理したSi基板表面に、実施例13と同様に、パスツールピペットにより濃度調整されたTiNbOコロイド溶液を1滴滴下した後、5〜7時間風乾し、水分を蒸発させた。
【0205】
このようにして得られた光触媒材料TiNbO/Siの表面状態をAFMによって観察した。結果を図31に示し、後述する。
【実施例16】
【0206】
基材310(図3)としてシリコン(Si)基板上に、滴下法を用いて、TiNbO14ナノシートからなる光触媒薄膜320(図3)が付与された光触媒材料300(図3)を製造した。
【0207】
実施例5で作製したTiNbO14コロイド溶液を濃度16mgL−1になるように調製した。実施例1と同様に親水化処理したSi基板表面に、実施例13と同様に、パスツールピペットにより濃度調整されたTiNbO14コロイド溶液を1滴滴下した後、5〜7時間風乾し、水分を蒸発させた。
【0208】
このようにして得られた光触媒材料TiNbO14/Siの表面状態をAFMによって観察した。結果を図32に示し、後述する。
【実施例17】
【0209】
実施例1で得られた光触媒材料(Nb/PDDA)/ガラス、および、実施例8で得られた光触媒材料Nb/Siを、それぞれ、電気炉中で設定温度(100℃、200℃、300℃、400℃、500℃、600℃、700℃、800℃および900℃)で1時間、加熱した。加熱条件は、電気炉に光触媒材料を配置し、室温(30℃)から各設定温度まで5℃/分で昇温し、各設定温度にて1時間保持した後、室温まで降温した。
【0210】
各設定温度で加熱後のNb/Siについて、表面状態をAFMによって観察した。観察結果を図33に示し、後述する。また、各設定温度で加熱後のNb/Siについて、Photon Factory BL−6(高エネルギー加速器研究機構)を用いて面内X線回折測定(in−plane XRD)を行い、構造変化を調べた。結果を図34に示し、後述する。
【0211】
各設定温度で加熱後の(Nb/PDDA)/ガラスについて、実施例1と同様に光誘起親水化特性を評価した。結果を図35および表8に示し、後述する。
【比較例1】
【0212】
レピドクロサイト型層状チタン酸カリウムKTi2−x/3Lix/3(x=0.7)を、実施例1と同様の手順により、酸処理し、水素イオン交換体として層状チタン酸粉末(H4x/3Ti2−x/3・nHO)を得た。層状チタン酸粉末0.5gをTBAOHaq.100mLと反応さ、乳白色の溶液を得た。反応は、室温にてシェイカーで150rpm、7日間振盪させた。このようにして、Ti0.87ナノシートからなるコロイド溶液(以降ではTi0.87コロイド溶液と呼ぶ)を得た。
【0213】
交互吸着法を用いて、50倍に希釈したTi0.87コロイド溶液を、石英ガラス基板に付与した。実施例1と同様に石英ガラス基板を親水化処理した。以降の手順は、図5のステップS530を繰返し行わない以外は実施例1と同様であるため、説明を省略する。このようにして得た光触媒材料(Ti0.87/PDDA)/ガラスを用いて、実施例1と同様に、Ti0.87ナノシートの光誘起親水化特性を評価した。結果を図9、表4および表5に示し詳述する。
【0214】
以降では、実施例1〜17および比較例1による結果を示し、詳述する。
【0215】
図8は、実施例1および3〜5の光触媒性を示す図である。
【0216】
いずれも紫外光を照射することによって、吸光度の低下を示した。このことは、紫外光の照射によって、メチレンブルーが分解されていることを示し、いずれも光触媒性を有することが分かった。中でもTiNbO光触媒ナノシート(実施例4)は、他のNb光触媒ナノシート(実施例1)、TiNbO光触媒ナノシート(実施例3)、TiNbO14光触媒ナノシート(実施例5)に比べて、短時間の紫外光の照射によって吸光度の劇的な低下が見られ、光触媒性が高いことが分かった。以降では簡単のため、材料名のみ記載する。なお、図示しないが、他のNb17、CaNb10およびLaNbについても同様に吸光度の低下が見られ、光触媒性があることを確認した。参考のため表2に吸光度の変化量を示す。
【0217】
【表2】

【0218】
図8および表2の吸光度の変化量と紫外光照射時間との関係から各光触媒ナノシートについて、メチレンブルーの吸光度の変化率を求めた。結果を表3に示す。
【0219】
【表3】


表3より、TiNbOの光触媒性が極めて高いことが分かった。
【0220】
図9は、実施例1〜7および比較例1の光誘起親水化特性を示す図である。
【0221】
いずれも紫外光を照射することによって、(親水化速度と定義されている)接触角の逆数が増大、すなわち、接触角が低減した。詳細には、紫外光を照射することによって、接触角の逆数が0.2〜0.4まで増大し、すなわち接触角が2.5°〜5°まで低下し、光触媒ナノシートの表面は、高度の親水性状態となることが分かった。参考のため表4に水接触角の逆数の値を示す。
【0222】
【表4】

【0223】
図9および表4の水接触角の逆数と紫外光照射時間との関係から各光触媒ナノシートについて、親水化反応速度を求めた。結果を表5に示す。
【0224】
【表5】

【0225】
表5によれば、本発明の光触媒ナノシートの中でもNb(実施例1)、TiNbO(実施例3)、CaNb10(実施例6)、LaNb(実施例7)は、既存の酸化チタンTi0.87(比較例1)と比較して、大きな親水化反応速度を有することが分かった。これらの光触媒ナノシートは、とりわけ、光誘起親水化特性を利用する、セルフクリーニング用途、防塵用途および冷却用途に有効であることが示唆される。このように、本発明によれば、用途・要求に応じた光触媒性および光誘起親水化特性を有する光触媒ナノシートを適宜選択し、設計できる。
【0226】
図10は、実施例1のUV−vis吸収スペクトルを示す図である。
図11は、実施例3のUV−vis吸収スペクトルを示す図である。
図12は、実施例4のUV−vis吸収スペクトルを示す図である。
図13は、実施例5のUV−vis吸収スペクトルを示す図である。
【0227】
図10〜図13によれば、いずれも、図5のステップS530の繰り返しごとに、一定量の吸光度の増加が観察された。このことから、光触媒ナノシートとPDDAとが規則的に累積した多層構造からなる光触媒薄膜が石英ガラス基板上に形成されことが示される。
【0228】
図14は、実施例1および3〜5のXRDパターンを示す図である。
【0229】
いずれのXRDパターンも2θ=5°付近に大きな回折ピークを示した。このことからも、光触媒ナノシートとPDDAとが規則的に累積した多層構造からなる光触媒薄膜がSi基板上に形成されたことが示される。
【0230】
図15は、実施例1の紫外光照射前後のXRDパターンを示す図である。
図16は、実施例3の紫外光照射前後のXRDパターンを示す図である。
図17は、実施例4の紫外光照射前後のXRDパターンを示す図である。
図18は、実施例5の紫外光照射前後のXRDパターンを示す図である。
【0231】
図15〜図18によれば、いずれも紫外光を照射することにより、2θ=5°近傍のピークが、高角側にシフトすることが分かった。このことは、面間隔、すなわち層間距離が減少することを意味する。具体的な層間距離の変化を図15〜図18それぞれに示す。
【0232】
このような層間距離の変化は、紫外光照射により、これらナノシートの光触媒作用によって層間に存在するPDDAが分解されたためである。層間距離の変化量(約0.3nm〜0.6nm)は、PDDAの1層分におおよそ一致する。このことからも、これらナノシートが、光触媒ナノシートとして機能することが確認された。
【0233】
図19は、実施例1の表面のAFM像を示す図である。
図20は、実施例2の表面のAFM像を示す図である。
図21は、実施例3の表面のAFM像を示す図である。
図22は、実施例4の表面のAFM像を示す図である。
図23は、実施例5の表面のAFM像を示す図である。
【0234】
図19および図21〜23は、一部重なっているものの、面方向に集積したナノシートが、基材表面を密に覆っている様子を示した。これにより、交互吸着法によって形成された光触媒ナノシートからなる光触媒薄膜は、比較的均一であることが分かった。図19および図21〜23のいずれも0.8nm〜1.1nmの間の表面粗さを有し、平滑であった。Nb17(図20)は、他のナノシートと比べて、シートが丸まった形状が見られた。このことは、Nb17光触媒ナノシートからなる光触媒薄膜の製造においては、基材との密着性を高めるためにさらなる精査が必要であることを示す。
【0235】
【表6】

【0236】
また、表6に示されるように、ナノシートの厚さは、1nm〜2nmであった。この厚さは、結晶構造(例えば、図2)から算出される厚さとほぼ一致しており、出発原料であるアルカリ金属含有層状化合物が単層剥離されたことを示唆する。
【0237】
図24は、実施例8の表面のAFM像を示す図である。
図25は、実施例9の表面のAFM像を示す図である。
図26は、実施例10の表面のAFM像を示す図である。
図27は、実施例11の表面のAFM像を示す図である。
図28は、実施例12の表面のAFM像を示す図である。
【0238】
図24〜図28によれば、いずれも極めて平滑な表面を示し、その表面粗さは0.15nm〜0.26nmの間であった。また、図24〜図28より、LB法によれば、光触媒ナノシートが面方向に集積した単層構造、詳細には、ナノシートが重なることなく集積した単層膜からなる光触媒薄膜を得ることができることがわかった。
【0239】
図29は、実施例13の表面のAFM像を示す図である。
図30は、実施例14の表面のAFM像を示す図である。
図31は、実施例15の表面のAFM像を示す図である。
図32は、実施例16の表面のAFM像を示す図である。
【0240】
図29〜図32に示されるように、いずれも、0.72nm〜1.6nmの間の表面粗さを有し、ナノシートが重なり合った構造を示した。このことから、滴下法によれば、平滑性は劣るものの簡便に光触媒ナノシートからなる光触媒薄膜が形成されるので好ましい。
【0241】
図19〜図32により得られる光触媒薄膜の平滑性について表7にまとめる。
【0242】
【表7】

【0243】
表7より、平滑性が高く、極めて均質な光触媒薄膜を得る場合にはLB法が最適であることが分かる。また、膜厚が制御された光触媒薄膜を得る場合には交互吸着法が最適である。このように、光触媒薄膜が適用される用途に求められる膜質(平滑性、膜厚等)に応じて、製造法を選択することが望ましい。
【0244】
図33は、実施例17による熱処理後の表面のAFM像を示す図である。
【0245】
図33には、熱処理前の表面の状態として実施例8のAFM像を合わせて示す。図33によれば、Nb光触媒ナノシートの表面状態は、800℃の熱処理後であっても、変化はなかった。900℃の熱処理を行うと、ナノシートが針状に変化した。これは、NbからNbに変化したためと考えられる。このことから、ナノシートの加熱は、好ましくは900℃未満であることが示唆される。これにより、ナノシートと基材との間の密着性を向上させるための熱処理を行っても、さらには、プロセス上の熱処理を行っても、ナノシートの表面の平滑性を維持できるため、極めて有利である。
【0246】
図34は、実施例17による熱処理後のin−plane XRDパターンを示す図である。
【0247】
図34には、熱処理前のXRDパターンも合わせて示す。図34のXRDパターンによれば、熱処理前のXRDパターンと、100℃〜800℃の各温度で熱処理した後のそれとはほぼ同一であった。900℃で熱処理した後のXRDパターンには低角側にピークが見られた。これらのピークは、Nbの回折ピークに一致することを確認した。このことからも、900℃以上の熱処理により、Nbは、Nbに変化するため、熱処理は、900℃未満が好ましいことが分かった。このように、Nbに高温熱処理を行っても、その結晶構造が維持されるのは、NbOの八面体のユニットが結合した二次元シート構造が極めて安定であるためと考えられる。
【0248】
図35は、実施例17による熱処理後の光誘起親水化特性を示す図である。
【0249】
図35には参考のため、熱処理前の光誘起親水化特性を合わせて示す。熱処理温度が高温になるにしたがって、光誘起親水化特性の低下が見られた。しかしながら、注目すべきことに、800℃の熱処理後であっても、Nb光触媒ナノシートは、Ti0.87を上回る光誘起親水化特性を有した(例えば、図9を参照)。このことは、Nb光触媒ナノシートは、光誘起親水化特性だけでなく光触媒性についても同様の効果が期待される。また、Nb以外にも、図9においてTi0.87を上回る光誘起親水化特性を有したTiNbO、CaNb10およびLaNbについても同様の効果が予想される。
【0250】
図35の水接触角の逆数と紫外光照射時間との関係から熱処理温度について、親水化反応速度を求めた。結果を表8に示す。
【0251】
【表8】

【0252】
表8によれば、800℃で熱処理した後のNbの親水化反応速度(0.018°/min)は、表5に示される比較例(Ti0.87)のそれ(0.011°/min)よりも大きいことが分かった。
【0253】
以上、図33〜図35より、本発明による光触媒ナノシートの中でも、Nb、TiNbO、CaNb10およびLaNbは、熱処理後も膜の表面状態および光誘起親水化特性を維持するので、基材との密着性の向上のための熱処理、さらにはプロセス上の熱処理が可能であるため、実用上極めて有利である。
【産業上の利用可能性】
【0254】
本発明によれば、酸化チタンナノシートおよび既存のアナターゼとは異なる材料からなり、用途に応じて適宜選択し、種々の設計が可能な光触媒ナノシートが提供される。このような光触媒ナノシートを基材上に薄膜化した光触媒材料によれば、光触媒ナノシートの特有の柔軟性により、任意の形状・表面形態を反映した光触媒材料が提供されるので、従来適用が困難とされる用途にも光触媒性および光誘起親水化特性を発現させることができる。当然のことながら、本発明の光触媒ナノシートおよび光触媒材料は、光触媒性および光誘起親水化特性が要求される任意の用途に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0255】
【図1】本発明による光触媒ナノシートの模式図
【図2】本発明による各種光触媒ナノシートの模式図
【図3】本発明による光触媒材料の模式図
【図4】本発明による光触媒ナノシートの製造工程を示すフローチャート
【図5】交互吸着法を用いた光触媒材料の製造プロセスを示す図
【図6】LB法を用いた光触媒材料の製造プロセスを示す図
【図7】アルカリ金属含有層状化合物の製造工程を示すフローチャート
【図8】実施例1および3〜5の光触媒性を示す図
【図9】実施例1〜7および比較例1の光誘起親水化特性を示す図
【図10】実施例1のUV−vis吸収スペクトルを示す図
【図11】実施例3のUV−vis吸収スペクトルを示す図
【図12】実施例4のUV−vis吸収スペクトルを示す図
【図13】実施例5のUV−vis吸収スペクトルを示す図
【図14】実施例1および3〜5のXRDパターンを示す図
【図15】実施例1の紫外光照射前後のXRDパターンを示す図
【図16】実施例3の紫外光照射前後のXRDパターンを示す図
【図17】実施例4の紫外光照射前後のXRDパターンを示す図
【図18】実施例5の紫外光照射前後のXRDパターンを示す図
【図19】実施例1の表面のAFM像を示す図
【図20】実施例2の表面のAFM像を示す図
【図21】実施例3の表面のAFM像を示す図
【図22】実施例4の表面のAFM像を示す図
【図23】実施例5の表面のAFM像を示す図
【図24】実施例8の表面のAFM像を示す図
【図25】実施例9の表面のAFM像を示す図
【図26】実施例10の表面のAFM像を示す図
【図27】実施例11の表面のAFM像を示す図
【図28】実施例12の表面のAFM像を示す図
【図29】実施例13の表面のAFM像を示す図
【図30】実施例14の表面のAFM像を示す図
【図31】実施例15の表面のAFM像を示す図
【図32】実施例16の表面のAFM像を示す図
【図33】実施例17による熱処理後の表面のAFM像を示す図
【図34】実施例17による熱処理後のin−plane XRDパターンを示す図
【図35】実施例17による熱処理後の光誘起親水化特性を示す図
【符号の説明】
【0256】
100 光触媒ナノシート
110 アルカリ金属含有層状化合物
200 NbOまたはTiOの八面体ユニット
300 光触媒材料
310 基材
320 光触媒薄膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
NbOおよび/またはTiO八面体ユニットからなる光触媒ナノシートであって、Nb、Nb17、TiNbO、TiNbO、TiNbO14、CaNb10およびLaNbからなる群から選択されたナノシートからなることを特徴とする、光触媒ナノシート。
【請求項2】
請求項1に記載の光触媒ナノシートであって、前記選択されたナノシートは、アルカリ金属を含有する層状化合物から剥離されてなることを特徴とする、光触媒ナノシート。
【請求項3】
光触媒ナノシートの製造方法であって、
MNb、MNb17、MTiNbO、MTiNbO、MTiNbO14、MCaNb10およびMLaNbからなる群から選択されたアルカリ金属を含有する層状化合物(ここで、Mはアルカリ金属)を、酸水溶液を用いて酸処理し、前記層状化合物中の前記アルカリ金属が交換された水素イオン交換体を生成するステップと、
前記水素イオン交換体と塩基性物質とを反応させ、前記水素イオン交換体が剥離されたナノシートからなるコロイド溶液を得るステップと
からなることを特徴とする、方法。
【請求項4】
基材上に付与された光触媒薄膜からなる光触媒材料であって、
前記光触媒薄膜は、請求項1または2に記載の光触媒ナノシートからなることを特徴とする、光触媒材料。
【請求項5】
請求項4に記載の光触媒材料であって、前記光触媒薄膜の表面粗さは最大2nmであることを特徴とする、光触媒材料。
【請求項6】
光触媒材料の製造方法であって、
Nb、Nb17、TiNbO、TiNbO、TiNbO14、CaNb10およびLaNbからなる群から選択されたナノシートを含有するコロイド溶液を基材上に付与するステップからなることを特徴とする、製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法であって、前記付与するステップに続いて100℃以上900℃未満の温度範囲で熱処理するステップをさらに包含することを特徴とする、製造方法。
【請求項8】
請求項6に記載の方法において、前記付与するステップは、交互吸着法、LB法、ドロップ法、スピンコート法およびディップコート法からなる群から選択されることを特徴とする、製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【公開番号】特開2009−292680(P2009−292680A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−147592(P2008−147592)
【出願日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成19年度、独立行政法人科学技術振興機構、戦略的創造研究推進事業委託事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(301023238)独立行政法人物質・材料研究機構 (1,333)
【Fターム(参考)】