光触媒体
【課題】 例えば過酸化水素の製造に用いた場合に過酸化水素を収率よく得ることができる光触媒体およびその製造方法を提供する。
【解決手段】 本発明の光触媒体は、酸化タングステン粒子の表面に白金が担持され、該白金の上にパラジウムが担持されてなり、酸化タングステン粒子100質量部に対して、白金担持量が0.01〜3質量部であり、パラジウム担持量が0.01〜3質量部である。本発明の光触媒体は、酸化タングステン粒子を、白金化合物および犠牲剤を含む溶液中に分散させ、酸化タングステン粒子を光励起しうる波長範囲の光を照射して、白金担持酸化タングステン粒子を得る第一工程と、該第一工程で得られた白金担持酸化タングステン粒子を、パラジウム化合物および犠牲剤を含む溶液中に分散させ、酸化タングステン粒子を光励起しうる波長範囲の光を照射する第二工程とを含むことを特徴とする
【解決手段】 本発明の光触媒体は、酸化タングステン粒子の表面に白金が担持され、該白金の上にパラジウムが担持されてなり、酸化タングステン粒子100質量部に対して、白金担持量が0.01〜3質量部であり、パラジウム担持量が0.01〜3質量部である。本発明の光触媒体は、酸化タングステン粒子を、白金化合物および犠牲剤を含む溶液中に分散させ、酸化タングステン粒子を光励起しうる波長範囲の光を照射して、白金担持酸化タングステン粒子を得る第一工程と、該第一工程で得られた白金担持酸化タングステン粒子を、パラジウム化合物および犠牲剤を含む溶液中に分散させ、酸化タングステン粒子を光励起しうる波長範囲の光を照射する第二工程とを含むことを特徴とする
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光触媒体に関し、詳しくは、酸素分子と水または有機物とを接触させることによる過酸化水素の製造に適した光触媒体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、光触媒体は過酸化水素の製造に用いられており、例えば、酸化タングステン粒子の表面に白金だけが担持された光触媒体を用い、酸化タングステン粒子を光励起しうる波長範囲の光を照射しながら、水中で光触媒体に水中に溶存する酸素分子と酢酸とを接触させる方法が報告されている(非特許文献1)。かかる方法によれば、光触媒体により酢酸が酸化されるのに伴い溶存酸素が還元され、目的の過酸化水素が生成する。
しかしながら、従来の光触媒体を用いて上述した過酸化水素の製造を行なった場合、必ずしも収率よく過酸化水素を得ることができなかった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Journal of the American Chemical Society, Vol. 130, No. 25, P.7780-7781 (2008)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、例えば過酸化水素の製造に用いた場合に過酸化水素を収率よく得ることができる光触媒体およびその製造方法、並びに該光触媒体を用いた過酸化水素の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決するべく鋭意研究を重ねた。その結果、酸化タングステン粒子の表面に白金が担持されてなる従来の光触媒体にさらにパラジウムを担持させるとともに、白金およびパラジウムの担持量を特定範囲に設定した光触媒体であれば、高い収率で過酸化水素を製造できることを見出し、本発明を完成した。
【0006】
すなわち、本発明は以下の構成からなる。
(1)酸化タングステン粒子の表面に白金が担持され、該白金の上にパラジウムが担持されてなり、酸化タングステン粒子100質量部に対して、白金担持量が0.01〜3質量部であり、パラジウム担持量が0.01〜3質量部であることを特徴とする光触媒体。
(2)酸化タングステン粒子を、白金化合物および犠牲剤を含む溶液中に分散させ、酸化タングステン粒子を光励起しうる波長範囲の光を照射して、白金担持酸化タングステン粒子を得る第一工程と、該第一工程で得られた白金担持酸化タングステン粒子を、パラジウム化合物および犠牲剤を含む溶液中に分散させ、酸化タングステン粒子を光励起しうる波長範囲の光を照射する第二工程とを含むことを特徴とする光触媒体の製造方法。
(3)前記(1)に記載の光触媒体に、酸化タングステン粒子を光励起しうる波長範囲の光の照射下、酸素分子と水とを接触させることを特徴とする過酸化水素の製造方法。
(4)有機物をも接触させる、前記(3)記載の過酸化水素の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、過酸化水素を収率よく製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施例の(評価1)における光触媒体粉末(1)の結果を示すグラフである。
【図2】実施例の(評価1)における光触媒体粉末(2)の結果を示すグラフである。
【図3】実施例の(評価1)における光触媒体粉末(3)の結果を示すグラフである。
【図4】実施例の(評価1)における光触媒体粉末(C1)の結果を示すグラフである。
【図5】実施例の(評価1)における光触媒体粉末(C2)の結果を示すグラフである。
【図6】実施例の(評価1)における光触媒体粉末(C3)の結果を示すグラフである。
【図7】実施例の(評価2)の結果を示すグラフである。
【図8】実施例の(評価3)における光触媒体粉末(5)の結果を示すグラフである。
【図9】実施例の(評価3)における光触媒体粉末(6)の結果を示すグラフである。
【図10】実施例の(評価3)における光触媒体粉末(7)の結果を示すグラフである。
【図11】実施例の(評価3)における光触媒体粉末(C4)の結果を示すグラフである。
【図12】実施例の(評価4)における光触媒体粉末(5)の結果を示すグラフである。
【図13】実施例の(評価4)における光触媒体粉末(C4)の結果を示すグラフである。
【図14】実施例の(評価4)における光触媒体粉末(C5)の結果を示すグラフである。
【図15】実施例の(評価5)における光触媒体粉末(5)の結果を示すグラフである。
【図16】実施例の(評価5)における光触媒体粉末(C4)の結果を示すグラフである。
【図17】実施例の(評価5)における光触媒体粉末(C5)の結果を示すグラフである。
【図18】実施例の(評価5)における光触媒体粉末(C6)の結果を示すグラフである。
【図19】実施例の(評価6)における光触媒体粉末(5)の結果を示すグラフである。
【図20】実施例の(評価6)における光触媒体粉末(C4)の結果を示すグラフである。
【図21】実施例の(評価6)における光触媒体粉末(C5)の結果を示すグラフである。
【図22】実施例の(参考)における光触媒体粉末(3)の結果を示すグラフである。
【図23】実施例の(参考)における光触媒体粉末(C1)の結果を示すグラフである。
【図24】実施例の(参考)における光触媒体粉末(C2)の結果を示すグラフである。
【図25】実施例の(参考)における光触媒体粉末(C3)の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の光触媒体は、酸化タングステン粒子の表面に白金が担持され、この白金の上にパラジウムが担持されてなる。かかる光触媒体は、例えば後述する本発明の光触媒の製造方法により容易に製造することができる。勿論、本発明の光触媒体は、後述する本発明の光触媒の製造方法により得られたものに限定されないことは言うまでもない。
【0010】
白金の担持量は、酸化タングステン粒子100質量部に対して、下限が0.01質量部以上、好ましくは0.03質量部以上であり、上限が3質量部以下、好ましくは1質量部以下である。白金担持量が0.01質量部未満であると、触媒性能が不充分となり、例えば本発明の光触媒体を過酸化水素の合成に用いた場合、生成する過酸化水素の量が少なくなる。一方、白金担持量が3質量部を超えると、例えば本発明の光触媒体を過酸化水素の合成に用いた場合に、結果的に得られる過酸化水素の量が少なくなる。
【0011】
パラジウムの担持量は、酸化タングステン粒子100質量部に対して、下限が0.01質量部以上、好ましくは0.03質量部以上、より好ましくは0.05質量部以上であり、上限が3質量部以下、好ましくは2質量部以下、より好ましくは1質量部以下である。パラジウム担持量が0.01質量部未満であると、触媒性能が不充分となり、例えば本発明の光触媒体を過酸化水素の合成に用いた場合、生成する過酸化水素の量が少なくなる。一方、パラジウム担持量が3質量部を超えると、例えば本発明の光触媒体を過酸化水素の合成に用いた場合に、結果的に得られる過酸化水素の量が少なくなる。
【0012】
前記酸化タングステン粒子を構成する酸化タングステンとしては、タングステンの価数が4価のものであってもよいし、価数が6価のものであってもよく、通常は4価から6価までの間のいずれの価数の酸化タングステンを用いてもよい。好ましくは、単独で光触媒活性を示す酸化タングステンがよく、特に6価のWO3が好ましい。
【0013】
前記酸化タングステン粒子は、例えば、
(i)タングステン酸塩(タングステン酸ナトリウム、タングステン酸カルシウム、タングステン酸アンモニウム等)の水溶液に酸(塩酸や硝酸等)を加えることにより沈殿物としてタングステン酸を得、得られたタングステン酸を焼成する方法、
(ii)メタタングステン酸アンモニウムまたはパラタングステン酸アンモニウムを加熱することにより熱分解する方法、
などによって得ることができる。また、市販の酸化タングステン粒子を利用してもよいことは勿論である。
【0014】
本発明の光触媒体の製造方法は、酸化タングステン粒子を、白金化合物および犠牲剤を含む溶液中に分散させ、酸化タングステン粒子を光励起しうる波長範囲の光を照射して、白金担持酸化タングステン粒子を得る第一工程と、該第一工程で得られた白金担持酸化タングステン粒子を、パラジウム化合物および犠牲剤を含む溶液中に分散させ、酸化タングステン粒子を光励起しうる波長範囲の光を照射する第二工程とを含む。かかる製造方法によれば、酸化タングステン粒子の表面に白金が担持され、さらにその白金の上にパラジウムが担持されて、本発明の光触媒体を得ることができる。
【0015】
前記第一工程および第二工程は、具体的には、水等の適当な溶媒に白金化合物またはパラジウム化合物と犠牲剤とを溶解させた溶液中に、酸化タングステン粒子または白金担持酸化タングステン粒子を分散させ、上述した波長範囲の光を照射するものである。これにより、光励起によって生成した電子によって、白金化合物またはパラジウム化合物が還元され、白金粒子またはパラジウム粒子として、酸化タングステン粒子の表面または白金担持酸化タングステン粒子の表面に担持される。なお、第一工程で得られる白金担持酸化タングステン粒子および第二工程で得られる光触媒体は、必要に応じて、水等により洗浄してもよく、好ましくは、洗浄後、室温〜200℃の温度の範囲で乾燥するのがよい。なお、原料とする酸化タングステン粒子については、上述した通りである。
【0016】
第一工程で用いる白金化合物は、白金粒子に遷移しうる化合物であれば、特に制限されないが、例えば、塩化白金〔PtCl2、PtCl4〕、臭化白金〔PtBr2、PtBr4〕、沃化白金〔PtI2、PtI4〕、塩化白金カリウム〔K2(PtCl4)〕、ヘキサクロロ白金酸〔H2PtCl6〕、亜硫酸白金〔H3Pt(SO3)2OH〕、酸化白金〔PtO2〕、塩化テトラアンミン白金〔Pt(NH3)4Cl2〕、炭酸水素テトラアンミン白金〔C2H14N4O6Pt〕、テトラアンミン白金リン酸水素〔Pt(NH3)4HPO4〕、水酸化テトラアンミン白金〔Pt(NH3)4(OH)2〕、硝酸テトラアンミン白金〔Pt(NO3)2(NH3)4〕、テトラアンミン白金テトラクロロ白金〔(Pt(NH3)4)(PtCl4)〕、ジニロトジアミン白金〔Pt(NO3)2(NH3)2〕等が挙げられる。なお、白金化合物は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0017】
第二工程で用いるパラジウム化合物は、パラジウム粒子に遷移しうる化合物であれば、特に制限されないが、例えば、酢酸パラジウム〔(CH3COO)2Pd〕、塩化パラジウム〔PdCl2〕、臭化パラジウム〔PdBr2〕、沃化パラジウム〔PdI2〕、水酸化パラジウム〔Pd(OH)2〕、硝酸パラジウム〔Pd(NO3)2〕、酸化パラジウム〔PdO〕、硫酸パラジウム〔PdSO4〕、テトラクロロパラジウム酸カリウム〔K2(PdCl4)〕、テトラブロモパラジウム酸カリウム〔K2(PdBr4)、K2(PdBr4)〕、テトラアンミンパラジウム硝酸塩〔Pd(NH3)4(NO3)2〕、テトラアンミンパラジウムテトラクロロパラジウム酸〔(Pd(NH3)4)(PdCl4)〕、テトラクロロパラジウム酸アンモニウム〔(NH4)2PdCl4〕等が挙げられる。なお、パラジウム化合物は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0018】
第一工程および第二工程で用いる犠牲剤としては、光照射によって容易に酸化分解され得るものが好ましく、例えば、エタノール、メタノール、プロパノール等のアルコール、アセトン等のケトン、蓚酸等のカルボン酸が用いられる。犠牲剤が固体の場合、通常は、この犠牲剤を適当な溶媒に溶解してから添加して用いてもよいし、固体のまま用いてもよい。なお、犠牲剤は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。また、第一工程で用いる犠牲剤と第二工程で用いる犠牲剤とは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0019】
白金化合物またはパラジウム化合物と犠牲剤とを溶解させた溶液における白金化合物またはパラジウム化合物の濃度や、その使用量(酸化タングステン粒子または白金担持酸化タングステン粒子に対する溶液の割合)は、各溶液に含まれる白金化合物またはパラジウム化合物の量が、酸化タングステン粒子に対して、白金換算またはパラジウム換算で、上述した担持量の範囲となるように適宜設定すればよい。また、白金化合物またはパラジウム化合物と犠牲剤とを溶解させた溶液における犠牲剤の濃度は、白金化合物またはパラジウム化合物の量などに応じて適宜設定すればよい。
【0020】
前記第一工程および第二工程において照射する、酸化タングステン粒子を光励起しうる波長範囲の光とは、通常は190〜500nmの範囲であり、かかる波長範囲の光の範囲を含んでいればこれより長波長の光を含んでいてもよい。光の照射は、酸化タングステン粒子または白金担持酸化タングステン粒子を分散させた分散液を攪拌しながら行なってもよいし、前記分散液を透明なガラス製またはプラスチック製の管に流通させながらこの管の外側から行なってもよい。光照射に用いる光源としては、上述した波長範囲の光を照射しうるものであれば特に制限はなく、例えば、高圧水銀灯、低圧水銀灯、蛍光灯、ハロゲンランプ、キセノンランプ、発光ダイオード、太陽光線等を用いることができる。
【0021】
前記第一工程および第二工程における光の照射時間は、照射する光の強さにもよるが、本発明で規定する担持量であれば、上述した一般的な光源によって充分に白金やパラジウムを担持させやすいことから、下限は通常10分以上、好ましくは30分以上である。一方、ある程度光照射を行なえば白金化合物またはパラジウム化合物の大部分は白金またはパラジウムとなって担持されるので、光照射にかかるコストの観点から、上限は通常24時間以下、好ましくは6時間以下である。
【0022】
前記第一工程および第二工程における光の照射は、2段以上に分けて行ってもよい。例えば、まず、白金化合物またはパラジウム化合物のみを溶解させた溶液(犠牲剤を含まない溶液)に酸化タングステン粒子または白金担持酸化タングステン粒子を分散させて、予備処理として第1段の光照射を行い、その後、前記溶液に犠牲剤を添加して、第2段の光照射を行うことが好ましい。
【0023】
本発明の光触媒は、良好な光触媒性能を発揮するものであり、光触媒反応を利用した種々の用途に用いることができるが、とりわけ、過酸化水素の合成に適したものである。以下、本発明の光触媒を用いた過酸化水素の製造方法について説明する。
本発明の光触媒体に、これを構成する酸化タングステン粒子を光励起しうる波長範囲の光の照射下、酸素分子と水とを接触させることにより、過酸化水素を製造することができる。具体的には、まず、光を透過するガラス製等の管または容器に、本発明の光触媒体を、粉末のまま、もしくはガラス基板や金属基板等に塗布して入れるか、または、管もしくは容器の内壁に本発明の光触媒体を直接塗布しておく。次いで、管または容器に水を導入して、外部から光を照射すればよい。こうして光を光触媒体に照射すると、管または容器に導入された水が酸化分解し、それに伴って、水に溶存する酸素分子が還元されて過酸化水素が生成する。
さらに、光触媒体の酸化分解反応を促進し、過酸化水素の生成量を向上させるには、本発明の光触媒体に光照射下で、酸素分子および水とともに、有機物をも接触させることが望ましい。この場合、具体的には、有機物を溶解ないし分散させた溶液を管または容器に導入すればよい。
【0024】
過酸化水素の製造方法において照射する光は、酸化タングステン粒子を光励起しうる波長範囲、具体的には、通常、190〜500nmの範囲の光である。かかる光を照射する光源は、特に制限されるものではなく、例えば、太陽光線、蛍光灯、ハロゲンランプ、ブラックライト、キセノンランプ、水銀灯、ナトリウムランプ等が適用できる。光源には、必要に応じて、紫外線カットフィルターまたは赤外線カットフィルターを装着してもよい。光の照射時間は、光源の光の強度および触媒の量などに応じて適宜設定すればよい。
【0025】
過酸化水素の製造方法における反応条件(光照射時の状態)としては、反応圧力は、通常0.008〜0.12MPa、好ましくは0.009〜0.11MPaであり、反応温度は、通常0〜60℃、好ましくは15〜40℃である。
【実施例】
【0026】
以下、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
なお、得られた光触媒体の評価は、下記(I−1)、(I−2)、(II−1)、(II−2)および(II−3)のいずれかの方法で行った。
【0027】
<(I−1)酢酸水溶液からの過酸化水素合成反応>
粉末状の光触媒体5mgをガラス製試験管に入れ、キセノンランプ(300W)により波長300nm〜500nmの光を30分間照射した。次いで、濃度30mmol/Lの酢酸水溶液10mLを加えた後、常温、常圧下で、キセノンランプ(300W)により波長300nm〜500nmの光を照射した。そして、光照射開始から所定時間経過後の懸濁液を0.5mL取り出してろ過し、濃度0.10mol/Lのフタル酸カリウム水溶液および濃度0.40mol/Lのヨウ化カリウム水溶液を加えて、過酸化水素との反応により生成したI3-を紫外可視吸収スペクトル測定により定量することにより、過酸化水素の生成量を算出した。
【0028】
<(I−2)水からの過酸化水素合成反応>
上記(I−1)の過酸化水素合成反応において、濃度30mmol/Lの酢酸水溶液10mLに代えて、水10mLを用いたこと以外は同様に操作し、過酸化水素の生成量を算出した。
【0029】
<(II−1)酢酸水溶液からの過酸化水素合成反応>
粉末状の光触媒体0.10gと水0.50mLとを乳鉢に入れて混合し、次いで、アセチルアセトン10μLを加えて混合した後、さらに、界面活性剤(トリトンX−100)をスポイトで2滴加えて混合した。この混合物をスライドガラス上に数滴滴下し、ガラス棒を用いたブレード法により薄く延ばした後、500℃で30分間焼成することにより、触媒塗膜を形成した。なお、混合物の滴下量は、膜形成前と膜形成後のスライドガラスの質量変化から求められる塗膜質量が9〜11mgとなるようにした。
【0030】
次に、100mLスクリューバイアルに上記で得られた触媒塗膜をスライドガラスごと入れ、キセノンランプ(300W)により30分間、前光照射を行った後、濃度30mmol/Lの酢酸水溶液100mLを加え、マグネチックスターラーを用いて撹拌させながら、常温、常圧下で、キセノンランプ(300W)により波長300nm〜500nmの光を照射した。そして、光照射開始から所定時間経過後の溶液を1.0mL取り出し、濃度0.10mol/Lのフタル酸カリウム水溶液および濃度0.40mol/Lのヨウ化カリウム水溶液を加えて、過酸化水素との反応により生成したI3-を紫外可視吸収スペクトル測定により定量することにより、過酸化水素の生成量を算出した。
【0031】
<(II−2)水からの過酸化水素合成反応>
上記(II−1)と同様にして触媒塗膜を形成し、得られた触媒塗膜を用いて、濃度30mmol/Lの酢酸水溶液100mLに代えて、水100mLを用いたこと以外は(II−1)の過酸化水素合成反応と同様に操作し、過酸化水素の生成量を算出した。
【0032】
<(II−3)2−プロパノールからの過酸化水素合成反応>
上記(II−1)と同様にして触媒塗膜を形成し、得られた触媒塗膜を用いて、濃度30mmol/Lの酢酸水溶液100mLに代えて、濃度30mmol/Lの2−プロパノール水溶液100mLを用いたこと以外は(II−1)の過酸化水素合成反応と同様に操作し、過酸化水素の生成量を算出した。
【0033】
(実施例1)
酸化タングステン粒子(WO3:高純度化学製、純度99.99%)4gを水50mLに分散させ、5分間超音波照射を行った後に、遠心分離機(コクサン製「H−201F」)にて1000rpmの回転速度で10分間処理することにより、粒子径の大きな粒子を沈降させて分離した。次いで、さらに同じ遠心分離機にて1000rpmの回転速度で10分間処理することにより、全ての粒子を沈降させ、上澄みを分離した。その後、120℃で乾燥して、酸化タングステン粒子を得た。
【0034】
得られた酸化タングステン粒子0.60gに水10mLと濃度244mmol/Lのヘキサクロロ白金酸水溶液とを加え、5分間超音波処理を行った。このとき、ヘキサクロロ白金酸水溶液の使用量は、酸化タングステン粒子100質量部に対して白金換算で0.5質量部となる量とした。次いで、発光ダイオードにより波長400nmの光を1時間照射した後、メタノール1.1mLを加え、引き続き、上記と同様にして波長400nmの光を2時間照射した。その後、遠心分離により分散液中の粒子を回収し、120℃で乾燥して、酸化タングステン粒子の表面に白金が担持されてなる白金担持酸化タングステン粒子を得た。
【0035】
次に、上記で得られた白金担持酸化タングステン粒子0.60gに水10mLと濃度565mmol/Lの塩化パラジウム水溶液とを加え、5分間超音波処理を行った。このとき、塩化パラジウム水溶液の使用量は、酸化タングステン粒子100質量部に対してパラジウム換算で0.1質量部となる量とした。次いで、発光ダイオードにより波長400nmの光を1時間照射した後、メタノール1.1mLを加え、引き続き、上記と同様にして波長400nmの光を2時間照射した。その後、遠心分離により分散液中の粒子を回収し、120℃で乾燥して、白金担持酸化タングステン粒子の表面にパラジウムが担持されてなる光触媒体の粉末(1)を得た。
【0036】
(実施例2)
実施例1において、塩化パラジウム水溶液の使用量を、酸化タングステン粒子100質量部に対してパラジウム換算で0.3質量部となる量に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、白金担持酸化タングステン粒子の表面にパラジウムが担持されてなる光触媒体の粉末(2)を得た。
【0037】
(実施例3)
実施例1において、塩化パラジウム水溶液の使用量を、酸化タングステン粒子100質量部に対してパラジウム換算で0.5質量部となる量に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、白金担持酸化タングステン粒子の表面にパラジウムが担持されてなる光触媒体の粉末(3)を得た。
【0038】
(実施例4)
実施例1において、塩化パラジウム水溶液の使用量を、酸化タングステン粒子100質量部に対してパラジウム換算で0.05質量部となる量に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、白金担持酸化タングステン粒子の表面にパラジウムが担持されてなる光触媒体の粉末(4)を得た。
【0039】
(比較例1)
実施例1と同様にして得られた酸化タングステン粒子0.60gに水10mLと濃度244mmol/Lのヘキサクロロ白金酸水溶液とを加え、5分間超音波処理を行った。このとき、ヘキサクロロ白金酸水溶液の使用量は、酸化タングステン粒子100質量部に対して白金換算で0.5質量部となる量とした。次いで、発光ダイオードにより波長400nmの光を1時間照射した後、メタノール1.1mLを加え、引き続き、上記と同様にして波長400nmの光を2時間照射した。その後、遠心分離により分散液中の粒子を回収し、120℃で乾燥して、酸化タングステン粒子の表面に白金が担持されてなる白金担持酸化タングステン粒子を、比較用の光触媒体粉末(C1)として得た(この粉末は、実施例1における白金担持酸化タングステン粒子と同一である)。
【0040】
(比較例2)
実施例1と同様にして得られた酸化タングステン粒子0.60gに水10mLと濃度565mmol/Lの塩化パラジウム水溶液とを加え、5分間超音波処理を行った。このとき、塩化パラジウム水溶液の使用量は、酸化タングステン粒子100質量部に対してパラジウム換算で0.5質量部となる量とした。次いで、発光ダイオードにより波長400nmの光を1時間照射した後、メタノール1.1mLを加え、引き続き、上記と同様にして波長400nmの光を2時間照射した。その後、遠心分離により分散液中の粒子を回収し、120℃で乾燥して、酸化タングステン粒子の表面にパラジウムが担持されてなるパラジウム担持酸化タングステン粒子を、比較用の光触媒体粉末(C2)として得た。
【0041】
(比較例3)
実施例1と同様にして得られた酸化タングステン粒子0.60gに水10mLと濃度565mmol/Lの塩化パラジウム水溶液とを加え、5分間超音波処理を行った。このとき、塩化パラジウム水溶液の使用量は、酸化タングステン粒子100質量部に対してパラジウム換算で0.5質量部となる量とした。次いで、発光ダイオードにより波長400nmの光を1時間照射した後、メタノール1.1mLを加え、引き続き、上記と同様にして波長400nmの光を2時間照射した。その後、遠心分離により分散液中の粒子を回収し、120℃で乾燥して、酸化タングステン粒子の表面にパラジウムが担持されてなるパラジウム担持酸化タングステン粒子を得た。
【0042】
次に、上記で得られたパラジウム担持酸化タングステン粒子0.60gに水10mLと濃度244mmol/Lのヘキサクロロ白金酸水溶液とを加え、5分間超音波処理を行った。このとき、ヘキサクロロ白金酸水溶液の使用量は、酸化タングステン粒子100質量部に対して白金換算で0.5質量部となる量とした。次いで、発光ダイオードにより波長400nmの光を1時間照射した後、メタノール1.1mLを加え、引き続き、上記と同様にして波長400nmの光を2時間照射した。その後、遠心分離により分散液中の粒子を回収し、120℃で乾燥して、パラジウム担持酸化タングステン粒子の表面に白金が担持されてなる粒子を、比較用の光触媒体粉末(C3)として得た。
【0043】
(実施例5)
実施例1において、ヘキサクロロ白金酸水溶液の使用量を、酸化タングステン粒子100質量部に対して白金換算で0.1質量部となる量に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、白金担持酸化タングステン粒子の表面にパラジウムが担持されてなる光触媒体の粉末(5)を得た。
【0044】
(実施例6)
実施例2において、ヘキサクロロ白金酸水溶液の使用量を、酸化タングステン粒子100質量部に対して白金換算で0.1質量部となる量に変更したこと以外は、実施例2と同様にして、白金担持酸化タングステン粒子の表面にパラジウムが担持されてなる光触媒体の粉末(6)を得た。
【0045】
(実施例7)
実施例3において、ヘキサクロロ白金酸水溶液の使用量を、酸化タングステン粒子100質量部に対して白金換算で0.1質量部となる量に変更したこと以外は、実施例3と同様にして、白金担持酸化タングステン粒子の表面にパラジウムが担持されてなる光触媒体の粉末(7)を得た。
【0046】
(比較例4)
比較例1において、ヘキサクロロ白金酸水溶液の使用量を、酸化タングステン粒子100質量部に対して白金換算で0.1質量部となる量に変更したこと以外は、比較例1と同様にして、酸化タングステン粒子の表面に白金が担持されてなる白金担持酸化タングステン粒子を、比較用の光触媒体粉末(C4)として得た。
【0047】
(比較例5)
比較例2において、塩化パラジウム水溶液の使用量を、酸化タングステン粒子100質量部に対してパラジウム換算で0.1質量部となる量に変更したこと以外は、比較例2と同様にして、酸化タングステン粒子の表面にパラジウムが担持されてなるパラジウム担持酸化タングステン粒子を、比較用の光触媒体粉末(C5)として得た。
【0048】
(比較例6)
比較例3において、塩化パラジウム水溶液の使用量を、酸化タングステン粒子100質量部に対してパラジウム換算で0.1質量部となる量に変更し、ヘキサクロロ白金酸水溶液の使用量を、酸化タングステン粒子100質量部に対して白金換算で0.1質量部となる量に変更したこと以外は、比較例3と同様にして、パラジウム担持酸化タングステン粒子の表面に白金が担持されてなる粒子を、比較用の光触媒体粉末(C6)として得た。
【0049】
(評価1)
酸化タングステン粒子100質量部に対する白金担持量が0.5質量部である光触媒体粉末(1)〜(3)、比較用の光触媒体粉末(C1)〜(C3)を用いて、それぞれ、上記(I−1)の方法で酢酸水溶液からの過酸化水素合成反応を行い、所定の光照射時間における過酸化水素生成量を調べた。光触媒体粉末(1)の結果を図1に、光触媒体粉末(2)の結果を図2に、光触媒体粉末(3)の結果を図3に、光触媒体粉末(C1)の結果を図4に、光触媒体粉末(C2)の結果を図5に、光触媒体粉末(C3)の結果を図6に、それぞれ示す。
【0050】
(評価2)
パラジウム/(白金+パラジウム)の質量比が異なる光触媒体粉末の触媒性能を比較するため、光触媒体粉末(1)〜(4)および比較用の光触媒体粉末(C1)〜(C2)をそれぞれ用いて、上記(I−2)の方法で水からの過酸化水素合成反応を行い、光照射30分後の過酸化水素生成量を調べた。結果を図7に示す。
【0051】
なお、各光触媒体粉末のパラジウム/(白金+パラジウム)質量比は、百分率(すなわち、〔パラジウム担持量/(白金担持量+パラジウム担持量)〕×100)で表すと、下記の通りである。
光触媒体粉末(C1):0%
光触媒体粉末(4):9.1%
光触媒体粉末(1):16.7%
光触媒体粉末(2):37.5%
光触媒体粉末(3):50%
光触媒体粉末(C2):100%
【0052】
(評価3)
酸化タングステン粒子100質量部に対する白金担持量が0.1質量部である光触媒体粉末(5)〜(7)および比較用の光触媒体粉末(C4)を用いて、それぞれ、上記(I−1)の方法で酢酸水溶液からの過酸化水素合成反応を行い、所定の光照射時間における過酸化水素生成量を調べた。光触媒体粉末(5)の結果を図8に、光触媒体粉末(6)の結果を図9に、光触媒体粉末(7)の結果を図10に、光触媒体粉末(C4)の結果を図11に、それぞれ示す。
【0053】
(評価4)
酸化タングステン粒子100質量部に対する白金担持量が0.1質量部である光触媒体粉末(5)および比較用の光触媒体粉末(C4)と、光触媒体粉末(C4)における白金を同じ担持量のパラジウムに代えた比較用の光触媒体粉末(C5)とを用いて、それぞれ、上記(II−2)の方法で水からの過酸化水素合成反応を行い、所定の光照射時間における過酸化水素生成量を調べた。光触媒体粉末(5)の結果を図12に、光触媒体粉末(C4)の結果を図13に、光触媒体粉末(C5)の結果を図14に、それぞれ示す。
【0054】
(評価5)
酸化タングステン粒子100質量部に対する白金担持量が0.1質量部である光触媒体粉末(5)および比較用の光触媒体粉末(C4)、(C6)と、光触媒体粉末(C4)における白金を同じ担持量のパラジウムに代えた比較用の光触媒体粉末(C5)とを用いて、それぞれ、上記(II−3)の方法で2−プロパノール水溶液からの過酸化水素合成反応を行い、所定の光照射時間における過酸化水素生成量を調べた。光触媒体粉末(5)の結果を図15に、光触媒体粉末(C4)の結果を図16に、光触媒体粉末(C5)の結果を図17に、光触媒体粉末(C6)の結果を図18に、それぞれ示す。
【0055】
(評価6)
酸化タングステン粒子100質量部に対する白金担持量が0.1質量部である光触媒体粉末(5)および比較用の光触媒体粉末(C4)と、光触媒体粉末(C4)における白金を同じ担持量のパラジウムに代えた比較用の光触媒体粉末(C5)とを用いて、それぞれ、上記(II−1)の方法で酢酸水溶液からの過酸化水素合成反応を行い、所定の光照射時間における過酸化水素生成量を調べた。光触媒体粉末(5)の結果を図19に、光触媒体粉末(C4)の結果を図20に、光触媒体粉末(C5)の結果を図21に、それぞれ示す。
【0056】
(参考)
光触媒体が有する過酸化水素の分解性を調べるため、光触媒体粉末(3)および比較用の光触媒体粉末(C1)〜(C3)を用いて、以下の試験を行った。
すなわち、各光触媒体粉末5mgをガラス製試験管にいれ、キセノンランプ(300W)により波長300nm〜500nmの光を30分間照射した。次いで、濃度30mmol/Lの酢酸水溶液10mLを加え、さらに過酸化水素を濃度6.5μmol/Lとなるように加えた後、遮光下(暗中)で攪拌し、40分後の懸濁液をろ過し、濃度0.10mol/Lのフタル酸カリウム水溶液および濃度0.40mol/Lのヨウ化カリウム水溶液を加えて、過酸化水素との反応により生成したI3-を紫外可視吸収スペクトル測定により定量することにより、懸濁液中に含まれる過酸化水素の生成量を算出した。光触媒体粉末(3)の結果を図22に、光触媒体粉末(C1)の結果を図23に、光触媒体粉末(C2)の結果を図24に、光触媒体粉末(C3)の結果を図25に、それぞれ示す。
【技術分野】
【0001】
本発明は、光触媒体に関し、詳しくは、酸素分子と水または有機物とを接触させることによる過酸化水素の製造に適した光触媒体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、光触媒体は過酸化水素の製造に用いられており、例えば、酸化タングステン粒子の表面に白金だけが担持された光触媒体を用い、酸化タングステン粒子を光励起しうる波長範囲の光を照射しながら、水中で光触媒体に水中に溶存する酸素分子と酢酸とを接触させる方法が報告されている(非特許文献1)。かかる方法によれば、光触媒体により酢酸が酸化されるのに伴い溶存酸素が還元され、目的の過酸化水素が生成する。
しかしながら、従来の光触媒体を用いて上述した過酸化水素の製造を行なった場合、必ずしも収率よく過酸化水素を得ることができなかった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Journal of the American Chemical Society, Vol. 130, No. 25, P.7780-7781 (2008)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、例えば過酸化水素の製造に用いた場合に過酸化水素を収率よく得ることができる光触媒体およびその製造方法、並びに該光触媒体を用いた過酸化水素の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決するべく鋭意研究を重ねた。その結果、酸化タングステン粒子の表面に白金が担持されてなる従来の光触媒体にさらにパラジウムを担持させるとともに、白金およびパラジウムの担持量を特定範囲に設定した光触媒体であれば、高い収率で過酸化水素を製造できることを見出し、本発明を完成した。
【0006】
すなわち、本発明は以下の構成からなる。
(1)酸化タングステン粒子の表面に白金が担持され、該白金の上にパラジウムが担持されてなり、酸化タングステン粒子100質量部に対して、白金担持量が0.01〜3質量部であり、パラジウム担持量が0.01〜3質量部であることを特徴とする光触媒体。
(2)酸化タングステン粒子を、白金化合物および犠牲剤を含む溶液中に分散させ、酸化タングステン粒子を光励起しうる波長範囲の光を照射して、白金担持酸化タングステン粒子を得る第一工程と、該第一工程で得られた白金担持酸化タングステン粒子を、パラジウム化合物および犠牲剤を含む溶液中に分散させ、酸化タングステン粒子を光励起しうる波長範囲の光を照射する第二工程とを含むことを特徴とする光触媒体の製造方法。
(3)前記(1)に記載の光触媒体に、酸化タングステン粒子を光励起しうる波長範囲の光の照射下、酸素分子と水とを接触させることを特徴とする過酸化水素の製造方法。
(4)有機物をも接触させる、前記(3)記載の過酸化水素の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、過酸化水素を収率よく製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施例の(評価1)における光触媒体粉末(1)の結果を示すグラフである。
【図2】実施例の(評価1)における光触媒体粉末(2)の結果を示すグラフである。
【図3】実施例の(評価1)における光触媒体粉末(3)の結果を示すグラフである。
【図4】実施例の(評価1)における光触媒体粉末(C1)の結果を示すグラフである。
【図5】実施例の(評価1)における光触媒体粉末(C2)の結果を示すグラフである。
【図6】実施例の(評価1)における光触媒体粉末(C3)の結果を示すグラフである。
【図7】実施例の(評価2)の結果を示すグラフである。
【図8】実施例の(評価3)における光触媒体粉末(5)の結果を示すグラフである。
【図9】実施例の(評価3)における光触媒体粉末(6)の結果を示すグラフである。
【図10】実施例の(評価3)における光触媒体粉末(7)の結果を示すグラフである。
【図11】実施例の(評価3)における光触媒体粉末(C4)の結果を示すグラフである。
【図12】実施例の(評価4)における光触媒体粉末(5)の結果を示すグラフである。
【図13】実施例の(評価4)における光触媒体粉末(C4)の結果を示すグラフである。
【図14】実施例の(評価4)における光触媒体粉末(C5)の結果を示すグラフである。
【図15】実施例の(評価5)における光触媒体粉末(5)の結果を示すグラフである。
【図16】実施例の(評価5)における光触媒体粉末(C4)の結果を示すグラフである。
【図17】実施例の(評価5)における光触媒体粉末(C5)の結果を示すグラフである。
【図18】実施例の(評価5)における光触媒体粉末(C6)の結果を示すグラフである。
【図19】実施例の(評価6)における光触媒体粉末(5)の結果を示すグラフである。
【図20】実施例の(評価6)における光触媒体粉末(C4)の結果を示すグラフである。
【図21】実施例の(評価6)における光触媒体粉末(C5)の結果を示すグラフである。
【図22】実施例の(参考)における光触媒体粉末(3)の結果を示すグラフである。
【図23】実施例の(参考)における光触媒体粉末(C1)の結果を示すグラフである。
【図24】実施例の(参考)における光触媒体粉末(C2)の結果を示すグラフである。
【図25】実施例の(参考)における光触媒体粉末(C3)の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の光触媒体は、酸化タングステン粒子の表面に白金が担持され、この白金の上にパラジウムが担持されてなる。かかる光触媒体は、例えば後述する本発明の光触媒の製造方法により容易に製造することができる。勿論、本発明の光触媒体は、後述する本発明の光触媒の製造方法により得られたものに限定されないことは言うまでもない。
【0010】
白金の担持量は、酸化タングステン粒子100質量部に対して、下限が0.01質量部以上、好ましくは0.03質量部以上であり、上限が3質量部以下、好ましくは1質量部以下である。白金担持量が0.01質量部未満であると、触媒性能が不充分となり、例えば本発明の光触媒体を過酸化水素の合成に用いた場合、生成する過酸化水素の量が少なくなる。一方、白金担持量が3質量部を超えると、例えば本発明の光触媒体を過酸化水素の合成に用いた場合に、結果的に得られる過酸化水素の量が少なくなる。
【0011】
パラジウムの担持量は、酸化タングステン粒子100質量部に対して、下限が0.01質量部以上、好ましくは0.03質量部以上、より好ましくは0.05質量部以上であり、上限が3質量部以下、好ましくは2質量部以下、より好ましくは1質量部以下である。パラジウム担持量が0.01質量部未満であると、触媒性能が不充分となり、例えば本発明の光触媒体を過酸化水素の合成に用いた場合、生成する過酸化水素の量が少なくなる。一方、パラジウム担持量が3質量部を超えると、例えば本発明の光触媒体を過酸化水素の合成に用いた場合に、結果的に得られる過酸化水素の量が少なくなる。
【0012】
前記酸化タングステン粒子を構成する酸化タングステンとしては、タングステンの価数が4価のものであってもよいし、価数が6価のものであってもよく、通常は4価から6価までの間のいずれの価数の酸化タングステンを用いてもよい。好ましくは、単独で光触媒活性を示す酸化タングステンがよく、特に6価のWO3が好ましい。
【0013】
前記酸化タングステン粒子は、例えば、
(i)タングステン酸塩(タングステン酸ナトリウム、タングステン酸カルシウム、タングステン酸アンモニウム等)の水溶液に酸(塩酸や硝酸等)を加えることにより沈殿物としてタングステン酸を得、得られたタングステン酸を焼成する方法、
(ii)メタタングステン酸アンモニウムまたはパラタングステン酸アンモニウムを加熱することにより熱分解する方法、
などによって得ることができる。また、市販の酸化タングステン粒子を利用してもよいことは勿論である。
【0014】
本発明の光触媒体の製造方法は、酸化タングステン粒子を、白金化合物および犠牲剤を含む溶液中に分散させ、酸化タングステン粒子を光励起しうる波長範囲の光を照射して、白金担持酸化タングステン粒子を得る第一工程と、該第一工程で得られた白金担持酸化タングステン粒子を、パラジウム化合物および犠牲剤を含む溶液中に分散させ、酸化タングステン粒子を光励起しうる波長範囲の光を照射する第二工程とを含む。かかる製造方法によれば、酸化タングステン粒子の表面に白金が担持され、さらにその白金の上にパラジウムが担持されて、本発明の光触媒体を得ることができる。
【0015】
前記第一工程および第二工程は、具体的には、水等の適当な溶媒に白金化合物またはパラジウム化合物と犠牲剤とを溶解させた溶液中に、酸化タングステン粒子または白金担持酸化タングステン粒子を分散させ、上述した波長範囲の光を照射するものである。これにより、光励起によって生成した電子によって、白金化合物またはパラジウム化合物が還元され、白金粒子またはパラジウム粒子として、酸化タングステン粒子の表面または白金担持酸化タングステン粒子の表面に担持される。なお、第一工程で得られる白金担持酸化タングステン粒子および第二工程で得られる光触媒体は、必要に応じて、水等により洗浄してもよく、好ましくは、洗浄後、室温〜200℃の温度の範囲で乾燥するのがよい。なお、原料とする酸化タングステン粒子については、上述した通りである。
【0016】
第一工程で用いる白金化合物は、白金粒子に遷移しうる化合物であれば、特に制限されないが、例えば、塩化白金〔PtCl2、PtCl4〕、臭化白金〔PtBr2、PtBr4〕、沃化白金〔PtI2、PtI4〕、塩化白金カリウム〔K2(PtCl4)〕、ヘキサクロロ白金酸〔H2PtCl6〕、亜硫酸白金〔H3Pt(SO3)2OH〕、酸化白金〔PtO2〕、塩化テトラアンミン白金〔Pt(NH3)4Cl2〕、炭酸水素テトラアンミン白金〔C2H14N4O6Pt〕、テトラアンミン白金リン酸水素〔Pt(NH3)4HPO4〕、水酸化テトラアンミン白金〔Pt(NH3)4(OH)2〕、硝酸テトラアンミン白金〔Pt(NO3)2(NH3)4〕、テトラアンミン白金テトラクロロ白金〔(Pt(NH3)4)(PtCl4)〕、ジニロトジアミン白金〔Pt(NO3)2(NH3)2〕等が挙げられる。なお、白金化合物は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0017】
第二工程で用いるパラジウム化合物は、パラジウム粒子に遷移しうる化合物であれば、特に制限されないが、例えば、酢酸パラジウム〔(CH3COO)2Pd〕、塩化パラジウム〔PdCl2〕、臭化パラジウム〔PdBr2〕、沃化パラジウム〔PdI2〕、水酸化パラジウム〔Pd(OH)2〕、硝酸パラジウム〔Pd(NO3)2〕、酸化パラジウム〔PdO〕、硫酸パラジウム〔PdSO4〕、テトラクロロパラジウム酸カリウム〔K2(PdCl4)〕、テトラブロモパラジウム酸カリウム〔K2(PdBr4)、K2(PdBr4)〕、テトラアンミンパラジウム硝酸塩〔Pd(NH3)4(NO3)2〕、テトラアンミンパラジウムテトラクロロパラジウム酸〔(Pd(NH3)4)(PdCl4)〕、テトラクロロパラジウム酸アンモニウム〔(NH4)2PdCl4〕等が挙げられる。なお、パラジウム化合物は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0018】
第一工程および第二工程で用いる犠牲剤としては、光照射によって容易に酸化分解され得るものが好ましく、例えば、エタノール、メタノール、プロパノール等のアルコール、アセトン等のケトン、蓚酸等のカルボン酸が用いられる。犠牲剤が固体の場合、通常は、この犠牲剤を適当な溶媒に溶解してから添加して用いてもよいし、固体のまま用いてもよい。なお、犠牲剤は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。また、第一工程で用いる犠牲剤と第二工程で用いる犠牲剤とは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0019】
白金化合物またはパラジウム化合物と犠牲剤とを溶解させた溶液における白金化合物またはパラジウム化合物の濃度や、その使用量(酸化タングステン粒子または白金担持酸化タングステン粒子に対する溶液の割合)は、各溶液に含まれる白金化合物またはパラジウム化合物の量が、酸化タングステン粒子に対して、白金換算またはパラジウム換算で、上述した担持量の範囲となるように適宜設定すればよい。また、白金化合物またはパラジウム化合物と犠牲剤とを溶解させた溶液における犠牲剤の濃度は、白金化合物またはパラジウム化合物の量などに応じて適宜設定すればよい。
【0020】
前記第一工程および第二工程において照射する、酸化タングステン粒子を光励起しうる波長範囲の光とは、通常は190〜500nmの範囲であり、かかる波長範囲の光の範囲を含んでいればこれより長波長の光を含んでいてもよい。光の照射は、酸化タングステン粒子または白金担持酸化タングステン粒子を分散させた分散液を攪拌しながら行なってもよいし、前記分散液を透明なガラス製またはプラスチック製の管に流通させながらこの管の外側から行なってもよい。光照射に用いる光源としては、上述した波長範囲の光を照射しうるものであれば特に制限はなく、例えば、高圧水銀灯、低圧水銀灯、蛍光灯、ハロゲンランプ、キセノンランプ、発光ダイオード、太陽光線等を用いることができる。
【0021】
前記第一工程および第二工程における光の照射時間は、照射する光の強さにもよるが、本発明で規定する担持量であれば、上述した一般的な光源によって充分に白金やパラジウムを担持させやすいことから、下限は通常10分以上、好ましくは30分以上である。一方、ある程度光照射を行なえば白金化合物またはパラジウム化合物の大部分は白金またはパラジウムとなって担持されるので、光照射にかかるコストの観点から、上限は通常24時間以下、好ましくは6時間以下である。
【0022】
前記第一工程および第二工程における光の照射は、2段以上に分けて行ってもよい。例えば、まず、白金化合物またはパラジウム化合物のみを溶解させた溶液(犠牲剤を含まない溶液)に酸化タングステン粒子または白金担持酸化タングステン粒子を分散させて、予備処理として第1段の光照射を行い、その後、前記溶液に犠牲剤を添加して、第2段の光照射を行うことが好ましい。
【0023】
本発明の光触媒は、良好な光触媒性能を発揮するものであり、光触媒反応を利用した種々の用途に用いることができるが、とりわけ、過酸化水素の合成に適したものである。以下、本発明の光触媒を用いた過酸化水素の製造方法について説明する。
本発明の光触媒体に、これを構成する酸化タングステン粒子を光励起しうる波長範囲の光の照射下、酸素分子と水とを接触させることにより、過酸化水素を製造することができる。具体的には、まず、光を透過するガラス製等の管または容器に、本発明の光触媒体を、粉末のまま、もしくはガラス基板や金属基板等に塗布して入れるか、または、管もしくは容器の内壁に本発明の光触媒体を直接塗布しておく。次いで、管または容器に水を導入して、外部から光を照射すればよい。こうして光を光触媒体に照射すると、管または容器に導入された水が酸化分解し、それに伴って、水に溶存する酸素分子が還元されて過酸化水素が生成する。
さらに、光触媒体の酸化分解反応を促進し、過酸化水素の生成量を向上させるには、本発明の光触媒体に光照射下で、酸素分子および水とともに、有機物をも接触させることが望ましい。この場合、具体的には、有機物を溶解ないし分散させた溶液を管または容器に導入すればよい。
【0024】
過酸化水素の製造方法において照射する光は、酸化タングステン粒子を光励起しうる波長範囲、具体的には、通常、190〜500nmの範囲の光である。かかる光を照射する光源は、特に制限されるものではなく、例えば、太陽光線、蛍光灯、ハロゲンランプ、ブラックライト、キセノンランプ、水銀灯、ナトリウムランプ等が適用できる。光源には、必要に応じて、紫外線カットフィルターまたは赤外線カットフィルターを装着してもよい。光の照射時間は、光源の光の強度および触媒の量などに応じて適宜設定すればよい。
【0025】
過酸化水素の製造方法における反応条件(光照射時の状態)としては、反応圧力は、通常0.008〜0.12MPa、好ましくは0.009〜0.11MPaであり、反応温度は、通常0〜60℃、好ましくは15〜40℃である。
【実施例】
【0026】
以下、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
なお、得られた光触媒体の評価は、下記(I−1)、(I−2)、(II−1)、(II−2)および(II−3)のいずれかの方法で行った。
【0027】
<(I−1)酢酸水溶液からの過酸化水素合成反応>
粉末状の光触媒体5mgをガラス製試験管に入れ、キセノンランプ(300W)により波長300nm〜500nmの光を30分間照射した。次いで、濃度30mmol/Lの酢酸水溶液10mLを加えた後、常温、常圧下で、キセノンランプ(300W)により波長300nm〜500nmの光を照射した。そして、光照射開始から所定時間経過後の懸濁液を0.5mL取り出してろ過し、濃度0.10mol/Lのフタル酸カリウム水溶液および濃度0.40mol/Lのヨウ化カリウム水溶液を加えて、過酸化水素との反応により生成したI3-を紫外可視吸収スペクトル測定により定量することにより、過酸化水素の生成量を算出した。
【0028】
<(I−2)水からの過酸化水素合成反応>
上記(I−1)の過酸化水素合成反応において、濃度30mmol/Lの酢酸水溶液10mLに代えて、水10mLを用いたこと以外は同様に操作し、過酸化水素の生成量を算出した。
【0029】
<(II−1)酢酸水溶液からの過酸化水素合成反応>
粉末状の光触媒体0.10gと水0.50mLとを乳鉢に入れて混合し、次いで、アセチルアセトン10μLを加えて混合した後、さらに、界面活性剤(トリトンX−100)をスポイトで2滴加えて混合した。この混合物をスライドガラス上に数滴滴下し、ガラス棒を用いたブレード法により薄く延ばした後、500℃で30分間焼成することにより、触媒塗膜を形成した。なお、混合物の滴下量は、膜形成前と膜形成後のスライドガラスの質量変化から求められる塗膜質量が9〜11mgとなるようにした。
【0030】
次に、100mLスクリューバイアルに上記で得られた触媒塗膜をスライドガラスごと入れ、キセノンランプ(300W)により30分間、前光照射を行った後、濃度30mmol/Lの酢酸水溶液100mLを加え、マグネチックスターラーを用いて撹拌させながら、常温、常圧下で、キセノンランプ(300W)により波長300nm〜500nmの光を照射した。そして、光照射開始から所定時間経過後の溶液を1.0mL取り出し、濃度0.10mol/Lのフタル酸カリウム水溶液および濃度0.40mol/Lのヨウ化カリウム水溶液を加えて、過酸化水素との反応により生成したI3-を紫外可視吸収スペクトル測定により定量することにより、過酸化水素の生成量を算出した。
【0031】
<(II−2)水からの過酸化水素合成反応>
上記(II−1)と同様にして触媒塗膜を形成し、得られた触媒塗膜を用いて、濃度30mmol/Lの酢酸水溶液100mLに代えて、水100mLを用いたこと以外は(II−1)の過酸化水素合成反応と同様に操作し、過酸化水素の生成量を算出した。
【0032】
<(II−3)2−プロパノールからの過酸化水素合成反応>
上記(II−1)と同様にして触媒塗膜を形成し、得られた触媒塗膜を用いて、濃度30mmol/Lの酢酸水溶液100mLに代えて、濃度30mmol/Lの2−プロパノール水溶液100mLを用いたこと以外は(II−1)の過酸化水素合成反応と同様に操作し、過酸化水素の生成量を算出した。
【0033】
(実施例1)
酸化タングステン粒子(WO3:高純度化学製、純度99.99%)4gを水50mLに分散させ、5分間超音波照射を行った後に、遠心分離機(コクサン製「H−201F」)にて1000rpmの回転速度で10分間処理することにより、粒子径の大きな粒子を沈降させて分離した。次いで、さらに同じ遠心分離機にて1000rpmの回転速度で10分間処理することにより、全ての粒子を沈降させ、上澄みを分離した。その後、120℃で乾燥して、酸化タングステン粒子を得た。
【0034】
得られた酸化タングステン粒子0.60gに水10mLと濃度244mmol/Lのヘキサクロロ白金酸水溶液とを加え、5分間超音波処理を行った。このとき、ヘキサクロロ白金酸水溶液の使用量は、酸化タングステン粒子100質量部に対して白金換算で0.5質量部となる量とした。次いで、発光ダイオードにより波長400nmの光を1時間照射した後、メタノール1.1mLを加え、引き続き、上記と同様にして波長400nmの光を2時間照射した。その後、遠心分離により分散液中の粒子を回収し、120℃で乾燥して、酸化タングステン粒子の表面に白金が担持されてなる白金担持酸化タングステン粒子を得た。
【0035】
次に、上記で得られた白金担持酸化タングステン粒子0.60gに水10mLと濃度565mmol/Lの塩化パラジウム水溶液とを加え、5分間超音波処理を行った。このとき、塩化パラジウム水溶液の使用量は、酸化タングステン粒子100質量部に対してパラジウム換算で0.1質量部となる量とした。次いで、発光ダイオードにより波長400nmの光を1時間照射した後、メタノール1.1mLを加え、引き続き、上記と同様にして波長400nmの光を2時間照射した。その後、遠心分離により分散液中の粒子を回収し、120℃で乾燥して、白金担持酸化タングステン粒子の表面にパラジウムが担持されてなる光触媒体の粉末(1)を得た。
【0036】
(実施例2)
実施例1において、塩化パラジウム水溶液の使用量を、酸化タングステン粒子100質量部に対してパラジウム換算で0.3質量部となる量に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、白金担持酸化タングステン粒子の表面にパラジウムが担持されてなる光触媒体の粉末(2)を得た。
【0037】
(実施例3)
実施例1において、塩化パラジウム水溶液の使用量を、酸化タングステン粒子100質量部に対してパラジウム換算で0.5質量部となる量に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、白金担持酸化タングステン粒子の表面にパラジウムが担持されてなる光触媒体の粉末(3)を得た。
【0038】
(実施例4)
実施例1において、塩化パラジウム水溶液の使用量を、酸化タングステン粒子100質量部に対してパラジウム換算で0.05質量部となる量に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、白金担持酸化タングステン粒子の表面にパラジウムが担持されてなる光触媒体の粉末(4)を得た。
【0039】
(比較例1)
実施例1と同様にして得られた酸化タングステン粒子0.60gに水10mLと濃度244mmol/Lのヘキサクロロ白金酸水溶液とを加え、5分間超音波処理を行った。このとき、ヘキサクロロ白金酸水溶液の使用量は、酸化タングステン粒子100質量部に対して白金換算で0.5質量部となる量とした。次いで、発光ダイオードにより波長400nmの光を1時間照射した後、メタノール1.1mLを加え、引き続き、上記と同様にして波長400nmの光を2時間照射した。その後、遠心分離により分散液中の粒子を回収し、120℃で乾燥して、酸化タングステン粒子の表面に白金が担持されてなる白金担持酸化タングステン粒子を、比較用の光触媒体粉末(C1)として得た(この粉末は、実施例1における白金担持酸化タングステン粒子と同一である)。
【0040】
(比較例2)
実施例1と同様にして得られた酸化タングステン粒子0.60gに水10mLと濃度565mmol/Lの塩化パラジウム水溶液とを加え、5分間超音波処理を行った。このとき、塩化パラジウム水溶液の使用量は、酸化タングステン粒子100質量部に対してパラジウム換算で0.5質量部となる量とした。次いで、発光ダイオードにより波長400nmの光を1時間照射した後、メタノール1.1mLを加え、引き続き、上記と同様にして波長400nmの光を2時間照射した。その後、遠心分離により分散液中の粒子を回収し、120℃で乾燥して、酸化タングステン粒子の表面にパラジウムが担持されてなるパラジウム担持酸化タングステン粒子を、比較用の光触媒体粉末(C2)として得た。
【0041】
(比較例3)
実施例1と同様にして得られた酸化タングステン粒子0.60gに水10mLと濃度565mmol/Lの塩化パラジウム水溶液とを加え、5分間超音波処理を行った。このとき、塩化パラジウム水溶液の使用量は、酸化タングステン粒子100質量部に対してパラジウム換算で0.5質量部となる量とした。次いで、発光ダイオードにより波長400nmの光を1時間照射した後、メタノール1.1mLを加え、引き続き、上記と同様にして波長400nmの光を2時間照射した。その後、遠心分離により分散液中の粒子を回収し、120℃で乾燥して、酸化タングステン粒子の表面にパラジウムが担持されてなるパラジウム担持酸化タングステン粒子を得た。
【0042】
次に、上記で得られたパラジウム担持酸化タングステン粒子0.60gに水10mLと濃度244mmol/Lのヘキサクロロ白金酸水溶液とを加え、5分間超音波処理を行った。このとき、ヘキサクロロ白金酸水溶液の使用量は、酸化タングステン粒子100質量部に対して白金換算で0.5質量部となる量とした。次いで、発光ダイオードにより波長400nmの光を1時間照射した後、メタノール1.1mLを加え、引き続き、上記と同様にして波長400nmの光を2時間照射した。その後、遠心分離により分散液中の粒子を回収し、120℃で乾燥して、パラジウム担持酸化タングステン粒子の表面に白金が担持されてなる粒子を、比較用の光触媒体粉末(C3)として得た。
【0043】
(実施例5)
実施例1において、ヘキサクロロ白金酸水溶液の使用量を、酸化タングステン粒子100質量部に対して白金換算で0.1質量部となる量に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、白金担持酸化タングステン粒子の表面にパラジウムが担持されてなる光触媒体の粉末(5)を得た。
【0044】
(実施例6)
実施例2において、ヘキサクロロ白金酸水溶液の使用量を、酸化タングステン粒子100質量部に対して白金換算で0.1質量部となる量に変更したこと以外は、実施例2と同様にして、白金担持酸化タングステン粒子の表面にパラジウムが担持されてなる光触媒体の粉末(6)を得た。
【0045】
(実施例7)
実施例3において、ヘキサクロロ白金酸水溶液の使用量を、酸化タングステン粒子100質量部に対して白金換算で0.1質量部となる量に変更したこと以外は、実施例3と同様にして、白金担持酸化タングステン粒子の表面にパラジウムが担持されてなる光触媒体の粉末(7)を得た。
【0046】
(比較例4)
比較例1において、ヘキサクロロ白金酸水溶液の使用量を、酸化タングステン粒子100質量部に対して白金換算で0.1質量部となる量に変更したこと以外は、比較例1と同様にして、酸化タングステン粒子の表面に白金が担持されてなる白金担持酸化タングステン粒子を、比較用の光触媒体粉末(C4)として得た。
【0047】
(比較例5)
比較例2において、塩化パラジウム水溶液の使用量を、酸化タングステン粒子100質量部に対してパラジウム換算で0.1質量部となる量に変更したこと以外は、比較例2と同様にして、酸化タングステン粒子の表面にパラジウムが担持されてなるパラジウム担持酸化タングステン粒子を、比較用の光触媒体粉末(C5)として得た。
【0048】
(比較例6)
比較例3において、塩化パラジウム水溶液の使用量を、酸化タングステン粒子100質量部に対してパラジウム換算で0.1質量部となる量に変更し、ヘキサクロロ白金酸水溶液の使用量を、酸化タングステン粒子100質量部に対して白金換算で0.1質量部となる量に変更したこと以外は、比較例3と同様にして、パラジウム担持酸化タングステン粒子の表面に白金が担持されてなる粒子を、比較用の光触媒体粉末(C6)として得た。
【0049】
(評価1)
酸化タングステン粒子100質量部に対する白金担持量が0.5質量部である光触媒体粉末(1)〜(3)、比較用の光触媒体粉末(C1)〜(C3)を用いて、それぞれ、上記(I−1)の方法で酢酸水溶液からの過酸化水素合成反応を行い、所定の光照射時間における過酸化水素生成量を調べた。光触媒体粉末(1)の結果を図1に、光触媒体粉末(2)の結果を図2に、光触媒体粉末(3)の結果を図3に、光触媒体粉末(C1)の結果を図4に、光触媒体粉末(C2)の結果を図5に、光触媒体粉末(C3)の結果を図6に、それぞれ示す。
【0050】
(評価2)
パラジウム/(白金+パラジウム)の質量比が異なる光触媒体粉末の触媒性能を比較するため、光触媒体粉末(1)〜(4)および比較用の光触媒体粉末(C1)〜(C2)をそれぞれ用いて、上記(I−2)の方法で水からの過酸化水素合成反応を行い、光照射30分後の過酸化水素生成量を調べた。結果を図7に示す。
【0051】
なお、各光触媒体粉末のパラジウム/(白金+パラジウム)質量比は、百分率(すなわち、〔パラジウム担持量/(白金担持量+パラジウム担持量)〕×100)で表すと、下記の通りである。
光触媒体粉末(C1):0%
光触媒体粉末(4):9.1%
光触媒体粉末(1):16.7%
光触媒体粉末(2):37.5%
光触媒体粉末(3):50%
光触媒体粉末(C2):100%
【0052】
(評価3)
酸化タングステン粒子100質量部に対する白金担持量が0.1質量部である光触媒体粉末(5)〜(7)および比較用の光触媒体粉末(C4)を用いて、それぞれ、上記(I−1)の方法で酢酸水溶液からの過酸化水素合成反応を行い、所定の光照射時間における過酸化水素生成量を調べた。光触媒体粉末(5)の結果を図8に、光触媒体粉末(6)の結果を図9に、光触媒体粉末(7)の結果を図10に、光触媒体粉末(C4)の結果を図11に、それぞれ示す。
【0053】
(評価4)
酸化タングステン粒子100質量部に対する白金担持量が0.1質量部である光触媒体粉末(5)および比較用の光触媒体粉末(C4)と、光触媒体粉末(C4)における白金を同じ担持量のパラジウムに代えた比較用の光触媒体粉末(C5)とを用いて、それぞれ、上記(II−2)の方法で水からの過酸化水素合成反応を行い、所定の光照射時間における過酸化水素生成量を調べた。光触媒体粉末(5)の結果を図12に、光触媒体粉末(C4)の結果を図13に、光触媒体粉末(C5)の結果を図14に、それぞれ示す。
【0054】
(評価5)
酸化タングステン粒子100質量部に対する白金担持量が0.1質量部である光触媒体粉末(5)および比較用の光触媒体粉末(C4)、(C6)と、光触媒体粉末(C4)における白金を同じ担持量のパラジウムに代えた比較用の光触媒体粉末(C5)とを用いて、それぞれ、上記(II−3)の方法で2−プロパノール水溶液からの過酸化水素合成反応を行い、所定の光照射時間における過酸化水素生成量を調べた。光触媒体粉末(5)の結果を図15に、光触媒体粉末(C4)の結果を図16に、光触媒体粉末(C5)の結果を図17に、光触媒体粉末(C6)の結果を図18に、それぞれ示す。
【0055】
(評価6)
酸化タングステン粒子100質量部に対する白金担持量が0.1質量部である光触媒体粉末(5)および比較用の光触媒体粉末(C4)と、光触媒体粉末(C4)における白金を同じ担持量のパラジウムに代えた比較用の光触媒体粉末(C5)とを用いて、それぞれ、上記(II−1)の方法で酢酸水溶液からの過酸化水素合成反応を行い、所定の光照射時間における過酸化水素生成量を調べた。光触媒体粉末(5)の結果を図19に、光触媒体粉末(C4)の結果を図20に、光触媒体粉末(C5)の結果を図21に、それぞれ示す。
【0056】
(参考)
光触媒体が有する過酸化水素の分解性を調べるため、光触媒体粉末(3)および比較用の光触媒体粉末(C1)〜(C3)を用いて、以下の試験を行った。
すなわち、各光触媒体粉末5mgをガラス製試験管にいれ、キセノンランプ(300W)により波長300nm〜500nmの光を30分間照射した。次いで、濃度30mmol/Lの酢酸水溶液10mLを加え、さらに過酸化水素を濃度6.5μmol/Lとなるように加えた後、遮光下(暗中)で攪拌し、40分後の懸濁液をろ過し、濃度0.10mol/Lのフタル酸カリウム水溶液および濃度0.40mol/Lのヨウ化カリウム水溶液を加えて、過酸化水素との反応により生成したI3-を紫外可視吸収スペクトル測定により定量することにより、懸濁液中に含まれる過酸化水素の生成量を算出した。光触媒体粉末(3)の結果を図22に、光触媒体粉末(C1)の結果を図23に、光触媒体粉末(C2)の結果を図24に、光触媒体粉末(C3)の結果を図25に、それぞれ示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化タングステン粒子の表面に白金が担持され、該白金の上にパラジウムが担持されてなり、酸化タングステン粒子100質量部に対して、白金担持量が0.01〜3質量部であり、パラジウム担持量が0.01〜3質量部であることを特徴とする光触媒体。
【請求項2】
酸化タングステン粒子を、白金化合物および犠牲剤を含む溶液中に分散させ、酸化タングステン粒子を光励起しうる波長範囲の光を照射して、白金担持酸化タングステン粒子を得る第一工程と、該第一工程で得られた白金担持酸化タングステン粒子を、パラジウム化合物および犠牲剤を含む溶液中に分散させ、酸化タングステン粒子を光励起しうる波長範囲の光を照射する第二工程とを含むことを特徴とする光触媒体の製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載の光触媒体に、酸化タングステン粒子を光励起しうる波長範囲の光の照射下、酸素分子と水とを接触させることを特徴とする過酸化水素の製造方法。
【請求項4】
有機物をも接触させる、請求項3記載の過酸化水素の製造方法。
【請求項1】
酸化タングステン粒子の表面に白金が担持され、該白金の上にパラジウムが担持されてなり、酸化タングステン粒子100質量部に対して、白金担持量が0.01〜3質量部であり、パラジウム担持量が0.01〜3質量部であることを特徴とする光触媒体。
【請求項2】
酸化タングステン粒子を、白金化合物および犠牲剤を含む溶液中に分散させ、酸化タングステン粒子を光励起しうる波長範囲の光を照射して、白金担持酸化タングステン粒子を得る第一工程と、該第一工程で得られた白金担持酸化タングステン粒子を、パラジウム化合物および犠牲剤を含む溶液中に分散させ、酸化タングステン粒子を光励起しうる波長範囲の光を照射する第二工程とを含むことを特徴とする光触媒体の製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載の光触媒体に、酸化タングステン粒子を光励起しうる波長範囲の光の照射下、酸素分子と水とを接触させることを特徴とする過酸化水素の製造方法。
【請求項4】
有機物をも接触させる、請求項3記載の過酸化水素の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【公開番号】特開2010−188240(P2010−188240A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−33249(P2009−33249)
【出願日】平成21年2月16日(2009.2.16)
【出願人】(504173471)国立大学法人北海道大学 (971)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年2月16日(2009.2.16)
【出願人】(504173471)国立大学法人北海道大学 (971)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】
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