説明

光触媒体

本発明は、光触媒粒子を樹脂基体上に、その光触媒機能を損なうことなく、強固に、かつ、長期にわたって使用しても光触媒粒子の脱離や樹脂基体の劣化が発生し難い光触媒体を提供することを目的とする。光触媒粒子がシラン化合物を介して化学結合により基体上に結合してなる光触媒体で、前記シラン化合物を介して化学結合がグラフト重合で、また、前記グラフト重合が放射線グラフト重合であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、消臭や微生物の殺菌、空気中の低濃度窒素酸化物の除去などの様々な反応を誘起する光触媒粒子を化学結合してなる光触媒体に関する。
【背景技術】
光触媒粒子は、光励起により生じた電子の持つ強い還元力や正孔の持つ強い酸化力により、防汚、防曇、殺菌、消臭、空気浄化などの様々な性能を発現することから、日用品や建材、土木など、様々な分野での応用開発が進められている。また、最近では可視光でも応答する可視光応答型光触媒粒子も開発されてきており、紫外線量が少ない室内での応用展開も可能なことから、実用性に優れた応用が期待されている。そこで、光触媒粒子の持つ様々な有効な機能を、日用品や建材、土木などの様々な分野で応用するためには、光触媒粒子をあらゆる基体上に、その光触媒機能を損なうことなく、強固に、かつ、結合する基体への光触媒機能が及ぼさないように接着、結合する方法が求められている。特に、光触媒粒子を結合する基体が樹脂の場合では、光触媒粒子の持つ強い酸化力により樹脂が劣化して結合した光触媒粒子の脱離による光触媒機能の低下や、樹脂基体の本来の持つ機能が損なわれる問題があった。したがって、光触媒粒子を樹脂からなる繊維やフィルム、成型体などの表面に結合して利用する際に、樹脂の劣化が起こり難い光触媒粒子の結合法は、実用性の観点から極めて重要な技術となる。
従来、光触媒粒子の樹脂基体上への結合としては、光触媒粒子が持つ強い酸化力でも劣化し難いとされる、フッ素樹脂などの有機系バインダーを用いる方法(例えば、特許文献1参照。)、シリコーン樹脂などの有機系バインダーを用いる方法(例えば、特許文献2参照。)などが提案されている。また、基体樹脂と光触媒微粒子の接触を防ぐ方法も提案されており、例えば、スパッタリング法で樹脂表面にケイ素酸化物や酸化アルミニウムなどの無機皮膜を形成する方法(例えば、特許文献3,4,5参照。)などがある。
前述のフッ素樹脂をバインダーに使用する場合、最も耐酸化性にに優れた4フッ化エチレンでは樹脂基体表面に接着し難く、そのため、接着性を改善するために熱硬化性樹脂などを混合して用いられている。しかしながら、フッ素樹脂以外に炭化水素からなる樹脂が混合されるため、光触媒粒子が持つ強い酸化力で炭化水素からなる樹脂が分解されることから、着色や悪臭などが発生する問題があった。また、シリコーン樹脂の場合、使用するシリコーン樹脂の種類によっては樹脂基体との密着性や均一な光触媒粒子の固定層を形成することが困難であるなどの問題があった。
他方、光触媒粒子と樹脂基体との接触を防ぐために、スパッタリング法により樹脂基体表面にバリヤ性に優れた緻密なケイ素酸化物や酸化アルミニウムなどの無機皮膜を形成する方法も提案されているが、樹脂基体と無機皮膜の熱膨張係数の違いや樹脂の種類によっては、接着性に優れた無機皮膜を形成することは困難であり、また、スパッタリングにより発生する熱による樹脂基体の変形や、生産性が低いなど、様々な解決しなければならない問題が残されていた。
【特許文献1】: 特開平10−216210号公報
【特許文献2】: 特開平10−001879号公報
【特許文献3】: 特開平8−215295号公報
【特許文献4】: 特開平10−17614号公報
【特許文献5】: 特開2002−248355号公報
【発明の開示】
本発明は、光触媒粒子を樹脂基体上に、その光触媒機能を損なうことなく、強固に、かつ、長期にわたって使用しても光触媒粒子の脱離や樹脂基体の劣化が発生し難い光触媒体を提供することにある。
前記課題を達成するために、本発明の光触媒体は次の構成を有する。
すなわち、本発明は、光触媒粒子がシラン化合物を介して化学結合により基体上に結合してなる光触媒体を提供するものである。
また、本発明は、前記シラン化合物を介した化学結合がグラフト重合であることを特徴とする前記の光触媒体を提供するものである。
さらに、本発明は、前記グラフト重合が放射線グラフト重合であることを特徴とする請求項2に記載の光触媒体を提供するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
以下に本発明についてさらに詳述する。本発明で用いられる光触媒粒子とは、そのバンドギャップ以上のエネルギーを持つ波長の光を照射することで、光触媒機能を発現する粒子のことであり、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化タングステン、酸化鉄、チタン酸ストロンチウム、硫化カドミウム、セレン化カドミウムなどの公知の金属化合物半導体を、単一または2種以上組み合わせて用いることができる。これらの光触媒粒子のうち、透明性、耐久性に優れ、無害である酸化チタンが好ましく用いられる。
酸化チタンの結晶構造はルチル型、アナダーセ型、ブルーカイト型、その他、無定形であっても本発明では問わない。また、酸化チタンの一部の酸素原子がアニオンである窒素原子で置換されたTiO2−Xや酸素原子が欠落し化学量論比から著しく外れたTiO2−X(Xは1.0以下)なども用いられる。
光触媒粒子の内部やその表面に、光触媒機能を増す目的で、バナジウム、銅、ニッケル、コバルト、クロム、パラジウム、銀、白金、金などの金属や金属化合物を含有させても良い。
また、光触媒粒子とともに吸着剤を用いても良く、消臭性能や環境大気中の汚染物質除去性能は、光触媒粒子と吸着剤を併用することで向上できる。吸着剤としては、活性炭などの炭素系吸着剤、ゼオライト系吸着剤、モレキュラシーブ、アパタイト、アルミナ、酸化ケイ素などの金属酸化物系吸着剤、キレート樹脂などが好適である。
本発明では、光触媒粒子を樹脂基体上に化学結合により、結合する材料としてシラン化合物が用いられる。具体的なシラン化合物としてはX−Si(OR)の一般式で示されるシランカップリング剤が挙げられる。尚、Xは有機物と反応する官能基でビニル基、エポキシ基、スチリル基、メタクリロ基、アクリロキシ基、イソシアネート基、ポリスルフィド基、アミノ基、メルカプト基、クロル基などであり、Rは加水分解可能なメトキシ基、エトキシ基などである。これらのメトキシ基やエトキシ基からなるアルコキシ基は加水分解してシラノール基を生ずる。このシラノール基やビニル基やエポキシ基、スチリル基、メタクリロ基、アクリロキシ基、イソシアネート基などの不飽和結合などを有する官能基は反応性が高いことが知られている。本発明は反応性に優れたシランカップリング剤を用いることで光触媒粒子を化学結合により、基体表面に結合せしめたものである。
本発明で用いられるシランカップリング剤の一例としては、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシランの塩酸塩、2−(3、4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1、3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。
これらのシランカップリング剤は一種もしくは二種以上混合して用いられる。その使用形態としては必要量のシランカップリング剤をメタノールやエタノールなどの溶剤に溶解し、加水分解に必要な水を加えて用いられる。用いられる溶剤としては、エタノール、メタノール、プロパノールやブタノールなどの低級アルコール類、蟻酸やプロピオン酸などの低級アルキルカルボン酸類、トルエンやキシレンなどの芳香族化合物、酢酸エチルや酢酸ブチルなどのエステル類、メチルセルソルブやエチルセルソルブなどのセロソルブ類を単独または複数組み合わせて用いても良い。さらに、水溶液の状態で使用しても良く、水への溶解性が悪い場合では、酢酸を添加してpHを弱酸性に調整してアルコキシシランの加水分解性を促進し、水溶性を上げて用いられる。
本発明では、前述したシランカップリング剤の溶液に、必要に応じて、Si(OR(式中、Rは炭素数1〜4のアルキル基を示す)で示されるアルコキシシラン化合物、一例として、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランなどや、RSi(OR4−n(式中、Rは炭素数1〜6の炭化水素基、Rは炭素数1〜4のアルキル基、nは1〜3の整数を示す)で示されるアルコキシシラン化合物、一例として、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシアン、フェニルトリエトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、ヘキシルトリメトキシシランなどが添加されて用いられる。
本発明での光触媒体は、前述したシランカップリング剤の溶液に光触媒粒子を分散した溶液を用いて製造される。光触媒粒子の分散は、ホモミキサーやマグネットスターラーなどを用いた撹拌分散や、ボールミル、サンドミル、高速回転ミル、ジェットミルなどを用いた分散、超音波を用いた分散などにより行われる。
本発明の光触媒体に用いられる基体を構成する材料としては、少なくとも基体表面が樹脂からなるものであれば良い。樹脂としては合成樹脂や天然樹脂が用いられ、その一例としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、EVA樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリアクリル酸メチル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂、PTFEなどの熱可塑性樹脂や、ポリ乳酸樹脂、ポリヒドロキシブチレート樹脂、修飾でんぷん樹脂、ポリカプロラクト樹脂、ポリブチレンサクシネート樹脂、ポリブチレンアジペートテレフタレート樹脂、ポリブチレンサクシネートテレフタレート樹脂、ポリエチレンサクシネート樹脂などの生分解性樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、エポキシ樹脂、エポキシアクリレート樹脂、ケイ素樹脂、アクリルウレタン樹脂、ウレタン樹脂などの熱硬化性樹脂や、シリコーン樹脂、ポリスチレンエラストマー、ポリエチレンエラストマー、ポリプロピレンエラストマー、ポリウレタンエラストマーなどのエラストマー、漆などの天然樹脂や綿、麻、絹などの天然繊維などが挙げられる。
これらの樹脂の形態は板状、フィルム状、繊維状、メッシュ状、粒状など、使用目的に合った形状であれば良く、本発明では特に問わない。また、アルミニウムやマグネシウム、鉄などの金属材料表面や、ガラス、セラミックスなどの無機材料表面に、フィルム状で積層されたり、吹き付け塗装や浸漬塗装、静電塗装などの塗装法や、スクリーン印刷やオフセット印刷などの印刷法により薄膜として形成されてあっても良い。さらに、これらの樹脂は顔料や染料などにより着色されてあっても良く、シリカ、アルミナ、珪藻土、マイカなどの無機材料が充填されてあっても良い。
本発明に係るグラフト重合において用いられる放射線としては、α線、β線、γ線、電子線、紫外線などを挙げることができるが、本発明において用いるのには、γ線、電子線、紫外線が適している。
本発明でのグラフト重合を用いた光触媒体は、前述した光触媒粒子を分散したシランカップリング剤溶液を、結合しようとする基体表面に塗布し、必要に応じて溶剤を加熱乾燥などの方法により除去した後、γ線、電子線、紫外線などの放射線を、光触媒とシランカップリング剤の混合物が塗布された基体表面に照射することで、シランカップリング剤を基体表面にグラフト重合させる同時に光触媒粒子を結合させることで行われる所謂同時照射グラフト重合と、予め光触媒粒子を結合しようとする基体表面にγ線、電子線、紫外線などの放射線を照射した後、光触触媒粒子が分散したシランカップリング剤溶液を塗布してシランカップリング剤と基体とを反応させると同時に光触媒粒子を固定させる所謂前照射グラフト重合の2法より製造される。
また、シランカップリング剤のグラフト重合を効率よく、かつ、均一に行わせるためには、予め、樹脂基体表面がコロナ放電処理やプラズマ放電処理、火炎処理、クロム酸や過塩素酸などの酸化性酸水溶液による化学的な処理などにより親水化処理されてあれば特に好ましい。
【実施例】
次に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
<光触媒体の作製>
本発明での光触媒体の作製は、電子線照射装置として岩崎電気株式会社製、エレクトロカーテン型、CB250/15/180L、を用いて実施した。
【実施例1】
20gのビニルトリエトキシシラン(信越化学工業株式会社製、KBM−1003)をメタノール80gに溶解した後、7.3gの水(シラン化合物に対して3モル等量以上の水)を加えてシランカップリング剤の一部を加水分解した。このシランカップリング剤溶液に光触媒粒子として酸化チタン(石原産業株式会社製、MTP−621)を4.0g加えた後、高速回転ジェットミル(エムテクニック株式会社製、W−MOTION)を用いて酸化チタン粒子を分散した。
厚さ125μmのポリエステルフィルム(パナック株式会社製、ルミラー)の表面を大気中でコロナ放電処理を施した後、前記酸化チタン粒子が分散したシランカップリング剤溶液をスプレーにて塗布し、100℃、3分間乾燥した。次にシランカップリング剤溶液を塗布したポリエステルフィルムに電子線を200kVの加速電圧で5Mrad照射することで、ポリエステルフィルム上に酸化チタン粒子がシランカップリング剤で結合されてなる光触媒体を得た。
【実施例2】
実施例1で基体に用いたポリエステルフィルムの代わりに55μmのポリエステルフィラメントで作製した200メッシュのメッシュクロスを用いた以外、実施例1と同様の条件で光触媒体を得た。
【実施例3】
3−メタクリロシキプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製、KBM−503)10gをメタノール90gに溶解した後、2.2gの水(シラン化合物に対して3モル等量以上の水)を加えてシランカップリング剤の一部を加水分解した。このシランカップリング剤溶液に光触媒粒子として酸化チタン(石原産業株式会社製、MTP−621)を4.0g加えた後、高速回転ジェットミル(エムテクニック株式会社製、W−MOTION)を用いて酸化チタン粒子を分散した。
厚さ125μmのポリエステルフィルム(パナック株式会社製、ルミラー)の表面を大気中でコロナ放電処理を施した後、前記酸化チタン粒子が分散したシランカップリング剤溶液をスプレーにて塗布し、100℃、3分間乾燥した。次にシランカップリング剤溶液を塗布したポリエステルフィルムに電子線を200kVの加速電圧で5Mrad照射することで、ポリエステルフィルム上に酸化チタン粒子がシランカップリング剤で結合されてなる光触媒体を得た。
【実施例4】
N−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシランの塩酸塩の40重量%メタノール溶液(信越化学工業株式会社製、KBM−575)100gに5.8gの水を加えてシランカップリング剤の一部を加水分解した。このシランカップリング剤溶液に光触媒粒子として酸化チタン(エコデバイス株式会社製、BA−PW25)を10.0g加えた後、ボールミルにて酸化チタンを分散した。
厚さ100μmのポリエチレンフィルム(リンテック株式会社製)の表面を大気中でコロナ放電処理を施した後、前記酸化チタン粒子が分散したシランカップリング剤溶液をスプレーにて塗布し、80℃、5分間乾燥した。次にシランカップリング剤溶液を塗布したポリエチレンフィルムに電子線を200kVの加速電圧で5Mrad照射することで、ポリエチレンフィルム上に酸化チタン粒子がシランカップリング剤で結合されてなる光触媒体を得た。
【実施例5】
3−グリシドキシプロピルトリメトシキシラン(信越化学工業株式会社製、KBM−403)10gをメタノール90gに溶解し、2.3gの水(シラン化合物に対して3モル等量以上の水)を加えてシランカップリング剤の一部を加水分解した。このシランカップリング剤溶液に光触媒粒子として酸化チタン(石原産業株式会社製、ST−01)を3.0g加えた後、高速回転ジェットミル(エムテクニック株式会社製、W−MOTION)を用いて酸化チタン粒子を分散した。
厚さ1.0mmのアルミニウム板上に熱硬化型アクリル系塗料(関西ペイント株式会社製、MG1000)をスプレーにて塗布した後180℃、30分間乾燥することで、厚さ30μmの厚さの塗膜が形成された塗膜被覆アルミニウム板を得た。次に、この塗膜被覆アルミニウム板表面を大気中でコロナ放電処理を施した後、前記酸化チタン粒子が分散したシランカップリング剤溶液をスプレーにて塗布し、100℃、3分間乾燥した。次にシランカップリング剤溶液を塗布した塗膜被覆アルミニウム板に電子線を240kVの加速電圧で10Mrad照射することで、塗膜被覆アルミニウム板上に酸化チタン粒子がシランカップリング剤で結合されてなる光触媒体を得た。
比較例1
実施例1と同様にして得られた光触媒粒子を分散したシランカップリング剤溶液を100μmの厚さのポリエステルフィルム上にスプレーにて塗布した後、100℃、30分間乾燥することで光触媒体を得た。
比較例2
実施例5と同様にして得られた光触媒粒子を分散したシランカップリング剤溶液を、実施例5で得られた塗膜被覆アルミニウム板上にスプレーにて塗布した後、150℃、30分間乾燥することで光触媒体を得た。
<光触媒体の評価>
得られた光触媒体は、光触媒粒子を含んだ膜の均一性を目視により評価した。また、該光触媒粒子を含んだ膜の密着性は、光触媒体表面にセロハンテープを張り付けた後、該セロハンテープを剥がすことにより評価した。
光触媒体の触媒活性は、アセトアルデヒドによる紫外線照射前後の濃度を定量して評価した。まず、作製した光触媒体をテドラーパックに入れた後、100ppm程度の濃度のアセトアルデヒドを同テドラーパック内に3L注入した。次に、テドラーパック内のアセトアルデヒド濃度が一定になるように30分間程度放置した後、各試料の表面で紫外線光強度が1.0mW/cmとなるように20Wのブラックライト(東芝ライテック株式会社製、FL20SBLB)を用いて120分間紫外線を照射した。テドラーパック内のアセトアルデヒドの濃度はアセトアルデヒドガス検知管(株式会社ガステック製)を用いて測定した。結果は紫外線照射前のアセトアルデヒド濃度を100とした場合での相対値で示した。結果を表1に示した。
表1に結果を示したように、本発明のグラフト重合で得られた光触媒体は、基体表面に形成された光触媒粒子を含んだ膜が均一に、かつ、基体表面に強固に密着していたのに対し、比較例の乾燥により得られた光触媒体は、光触媒粒子を含んだ膜が部分的に存在した状態で不均一であり、さらに、形成された光触媒粒子を含んだ膜は、セロハンテープを用いた試験で簡単に剥離したことから、密着強度は非常に低いことが確認された。

【産業上の利用可能性】
本発明でのシラン化合物のグラフト重合により光触媒粒子を樹脂基体表面へ結合した光触媒体は、シラン化合物のアルコキシ基の加水分解により生成したシラノール基が、光触媒粒子である酸化チタンの表面に脱水縮合反応で強固に化学的に結合し、さらに、シラン化合物のビニル基、エポキシ基、スチリル基、メタクリロ基、アクリロキシ基、イソシアネート基、ポリスルフィド基などが、放射線の照射により樹脂基体表面に生成したラジカルによるグラフト重合で化学的に結合することによってなされている。よって、光触媒粒子は樹脂基体表面にシラン化合物を介して化学的な結合で強固に結合されていることから、本発明の光触媒体は様々な環境で使用しても光触媒粒子の脱離などが起こり難い耐久性に優れたものである。さらに、光触媒粒子と樹脂基体との間には、アルコキシ基の加水分解で形成したシラノール基が、縮合して酸化ケイ素の緻密な薄膜を形成していることから、この緻密な酸化ケイ素の薄膜は光触媒粒子と樹脂基体との直接接触を阻害するため、樹脂基体表面は光触媒粒子の持つ強い酸化、還元作用を受けない。これより、樹脂基体の光触媒粒子による劣化は発生しないので、本発明の光触媒体は、長期間使用しても基体の劣化が起こらないことから、実用性に優れた極めて有用なものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光触媒粒子がシラン化合物を介して化学結合により基体上に結合してなる光触媒体。
【請求項2】
前記シラン化合物を介した化学結合がグラフト重合であることを特徴とする請求項1に記載の光触媒体。
【請求項3】
前記グラフト重合が、放射線グラフト重合であることを特徴とする請求項2に記載の光触媒体。

【国際公開番号】WO2004/078347
【国際公開日】平成16年9月16日(2004.9.16)
【発行日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−503015(P2005−503015)
【国際出願番号】PCT/JP2004/002200
【国際出願日】平成16年2月25日(2004.2.25)
【出願人】(391018341)NBC株式会社 (59)
【Fターム(参考)】