説明

光触媒反応を利用した、長寿命型活性酸素水の生成方法および活性酸素水の生成装置

【課題】長時間保持作用する機能を有する活性酸素種を含有する水の発現を制御可能な、強力な殺菌・駆虫・有機物分解能を有する活性酸素水生成装置を提供する。
【解決手段】光触媒体に照射する紫外線量・超音波の周波数及び出力・混入するガスの種別及び量、水溶液の温度およびpHを調節することにより、イオン類を含有する水溶液を紫外線照射された光触媒体により生起された活性酸素種を前記イオン類に反応せしめて活性酸素水とすることとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線照射された光触媒体で惹起された遊離電子および正孔(フォトン)を水と効率よく反応させることにより、活性酸素種を大量に発生させ、さらに水溶液中の溶質とを反応させることにより、長時間作動を実証可能な活性酸素を含有する前記溶質より生成したイオン種を含有する活性酸素水を生成し、優れた殺菌能および原虫類の駆虫能、有機物分解能を長時間保持作用する機能を有する活性酸素水を生成する、活性酸素水生成方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
活性酸素種は広く自然界、生体内に分布し、その強力な酸化力は細胞膜障害を惹起する殺菌能力がある事が知られ、空気清浄機などでその利用が注目されている。本来活性酸素種とは一般にスーパーオキサイドアニオンラジカル(O2-)、過酸化水素水(H2O2)、ヒドロキシラジカル(OH)および一重項酸素(1O2)などの酸素種を指し、広義では脂質過酸化物(LOOH, LOO)やハロゲン化酸素(ClO-)、さらには生体内血管内皮由来弛緩因子として同定された一酸化窒素ラジカル(NO)などを示す。血管内皮細胞障害の起因物質としてその存在を発見され、生体内障害伝達物質として扱われている。その障害の原因究明の過程よりその特性が解明され、生体内ではsuperoxide dismutase(SOD)とNOがO2-の消去に預かり、恒常性の維持を行っている事があきらかとなっている。
【0003】
しかし近年、植物が発芽する際に微量の活性酸素種が発現していることが知られるなど、自然界におけるその役割は未だに解明途中であるとともに、生体外での測定および定量はきわめて困難である。しかもその反応性と不安定性のため、その寿命は、数ミリ秒程度あるいはそれ以下の非常に短いものであり、その生成は不可能とされてきた。
【0004】
同様に自然界に存在しその酸化力による殺菌が利用されているものにマイナスイオンがある。広義では活性酸素種もその一部に含まれるものと考えられているが、空気中に含まれる、僅かな電気を帯びた物質のうち、負の電気を帯びたものとされているが、その物質の同定およびその代謝過程は未だ明らかにされていない。生成過程においては酸素分子のイオンや一定時間経過後には硝酸分子のイオンであると考えられているがこれが全てではない。
【0005】
活性酸素種としてあげられている物のうち、過酸化水素水は比較的安定したものであり、除菌および駆虫に広く利用されている。養殖魚の寄生した外寄生虫(えら虫、肌虫など)の駆除に用いられる際、過酸化水素水は200〜3000ppm以上の高濃度で使用されている。また単細胞性原虫類の代表例であるゾウリムシはその種により有効な過酸化水素濃度は異なり、ゾウリムシ(Paramecium caudatum)では1ppm程度でも死滅するにもかかわらず,ヒメゾウリムシ(Paramecium aurelia complex)では10ppm,ミドリゾウリムシ(P. bursaria)に至っては100ppmの高濃度を必要とするとされている。即ち対象となる種によって過酸化水素水の効果発現には、至適濃度が異なるという特徴も示されている。
【0006】
しかし実際には活性酸素種は過酸化水素水単独では存在せず、他の活性酸素種とともに存在し、その反応過程においてさまざまなイオンとして作用している事と考えられ、他のイオンとの相互作用により各々の濃度が低い濃度でも殺菌や原虫類の駆虫が可能となると推測できる。
【0007】
一方、光を光触媒体に照射して、光触媒反応を励起させ惹起された遊離電子および正孔(フォトン)は水や酸素と反応し活性酸素種を発生させるとされるが、極微量の過酸化水素以外、実証同定された活性酸素種は無く、生成された活性酸素種は、その光触媒体表面にごく近いところにおいて(通常40nmとされている)作用し、微生物の殺菌、種々の有機化学物質の酸化分解能を有していることが知られている。
【0008】
すなわち、光触媒体のごく近傍においてのみではあるが、これらスーパーオキサイドアニオンラジカル(O2-)やヒドロキシラジカル(OH・)などの反応性の高い活性酸素種は水に接触して溶解し、微生物やウイルスの細胞膜や機能性たんぱく質や遺伝子などを変異させ、微生物やウイルスの生存機能や増殖機能を停止させることが可能であるとされてきた。
【0009】
また、水中に存在する微生物を殺菌するために、たとえば図18に示す如く、超音波加湿機本体51と、前記超音波加湿機本体51内に設けられた水槽52と、前記水槽52の底部に設けられた超音波振動子53と、前記水槽52の上部に近紫外線を照射させるための近紫外線照射装置54を配設し、前記水槽52中に蓄えた水の殺菌が可能としている。しかし、本システムでの効果は殺菌に留まり、主たる目的とするレジオネラ菌が生息するアメーバ類などの原虫類に対しての駆虫効果は明らかでない。光触媒と紫外線源の距離が水の自由表面を介して離隔されているため紫外線の到達量が極めて少なく十分な酸素遊離基や水酸遊離基を得ることは出来ず、超音波加湿機程度の微弱な超音波振動では原虫類に対しての傷害は生じず、結果的にアメーバの細胞内で大量の増殖したレジオネラ菌が増殖し、アメーバ細胞の分裂に伴う細胞死の際に発生した、レジオネラ菌を大量に含んだヒュームを大量に拡散させる可能性がある。
【特許文献1】特開2001−327961号公報
【特許文献2】特開平5−305125号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
このように、前記した水殺菌装置では、光触媒反応によって発生した活性酸素種のみの反応に留まり、それに引き続く2次反応を導きだすことが出来ず、原虫類の駆除まで生じる活性酸素水を生成するに至らなかったと考えられる。また光触媒反応は10−6秒ときわめて短い時間しか酸化能力が持続しないため、反応局面が光触媒体のごく近傍の極めて限られた、ごく狭い領域のみでしか、その効果が得られないとされており、用いられたガラス焼結体にアナターゼ型酸化チタンや光増感剤を混入させたアナターゼ型酸化チタンでは充分にその効果を発現ずる事が出来ず、実用に至っていない現状であった。
【0011】
また、上記過酸化水素水で養殖魚を処理する方法(一般的に過酸化水素水浴といわれる)は、その強力な過酸化水素の酸化力が養殖魚自体にも及ぶこととなる。すなわち、養殖魚体の寄生虫などを減少させることで病状を回復させるというよりは、むしろ、病気により脆弱となった魚を寄生虫などと共に淘汰して、強い魚のみを生きながらえさせるといった感が否めないものであった。
【0012】
このようにして過酸化水素水の散布により死んだ脆弱な魚は、養殖魚の収穫量を減少させ、養殖効率の低下を招いており、寄生虫に感染した魚より安全に寄生虫を駆除することが可能となれば漁獲量の増加は明らかであり、流通価格の低下ばかりでなく食の安全も確保可能となる。
【0013】
また、散布する過酸化水素は、海水中での有効濃度は200〜3000ppmもの高濃度を必要とし、希釈されるとはいえ、ホルマリン浴などの従来の薬浴方法と同様にそのまま海洋中に流出・拡散・投棄されている。このことは、養殖以外の他の海洋生物に対して影響を及ぼし、環境影響上好ましいとは言い難く、また人体への影響も未だ定かではないものである。
【0014】
しかも、駆虫効果を生起させるためには、大量の過酸化水素製剤が必要となり、これらに要するコストや運搬のための労力は、作業に従事する者に対して多大な負担を強いており、海洋中に残留する薬物などを使用することなく、しかも、養殖魚体を損傷することなく、環境に対して影響を及ぼさない活性酸素水生成装置や殺虫方法が望まれていた。
【0015】
すなわち、活性酸素種を殺菌や駆虫を目的として利用するためには、目的とするイオンの量を制御することにより、使用目的に応じた濃度を決定することが重要である。
【0016】
そこで本発明者は、活性酸素種の存在を実証し、それらを大量に含有した水の生成が可能であると共に、微生物の除菌や寄生虫の駆虫を行うことができ、しかも、その強力な酸化能力を持続させ、省電力で、かつ、コンパクトで様々な機器に応用可能な活性酸素水生成装置の研究を行い、光触媒体の変更、紫外線量・超音波の周波数及び出力・混入するガスの種別及び量を調節することにより、惹起される活性酸素種イオン類の発現を制御可能な物として、より安全で人体及び環境への悪影響を生じない本発明を成すに至ったものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するために、本発明に係る活性酸素水は、イオン類を含有する水溶液に、紫外線照射された光触媒体で惹起された遊離電子および正孔(フォトン)を水と効率よく反応させことにより、活性酸素種を大量に発生させ、さらに水溶液中の溶質とを反応させることにより、前記溶質より生成したイオン種を含有する活性酸素水を生成し、優れた殺菌能および原虫類の駆虫能、有機物分解能を長時間保持作用する機能を有する活性酸素水を生成する、活性酸素水生成方法によって生成されるものとした。
【0018】
さらに、本発明に係る活性酸素水は、以下の特徴を有する活性酸素水生成装置で生成することとした。
(1)紫外線照射によって光触媒体で生成された活性酸素種および/または装置内を通過する水溶液と反応し二次的に産生されたイオン種が、殺菌能および原虫類の駆虫能、有機物分解能を長時間保持作用する機能を有すること。
(2)前記装置内を通過する水溶液は、酸素、塩素、アンモニアなどのガス類および/または塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸カリウム、塩化カリウム、炭酸カルシウム、臭化マグネシウム、亜塩素酸塩、次亜塩素酸塩などの塩類の少なくともいずれか一つを含有することを特徴とすること。
(3)前記光触媒体は、生成装置内を前記水溶液が通過する流路中に、前記紫外線光源の周囲に配置したことを特徴とすること。
(4)拡散させるための拡散手段を配設したこと。
(5)前記拡散手段は、超音波振動子による100kHz以上の超音波及び/または水中ファンによる水流であって、光触媒体及び/または水を動かすこと。
(6)前記拡散手段は、超音波振動子による500kHz以上の超音波であって、光触媒体及び/または水を動かすこと。
(7)前記光触媒体は、ガラス製繊維体またはセラミックス製繊維体または不織布であって、その表面をチタニア薄膜で被覆していること。
(8)前記光触媒体は表面にあらかじめアルミナ被膜を形成した金属製繊維体であって、その表面をチタニア薄膜で被覆していること。
(9)前記活性酸素水は、酸素ガス、オゾンガス、塩素ガス、一酸化窒素ガス、アンモニアガスの少なくともいずれか一つを回路内に混入させて生成すること。
(10)前記活性酸素水は、化学的処理および/または物理的処理により、活性半減期の制御が可能であること。
(11)前記活性酸素水は、ウミホタル由来ルシフェリンアナログを用いたスーパーオキサイド生成の検証もしくは、ESR法によりヒドロキシラジカルもしくはアスコルビン酸ラジカルの検出を行い、活性半減期が1分間以上であることの検証が可能である活性酸素水の生成が可能であること。
(12)前記活性酸素水は、ウミホタル由来ルシフェリンアナログを用いたスーパーオキサイド生成の検証もしくはESR法によりヒドロキシラジカルもしくはアスコルビン酸ラジカルの検出を行い、活性半減期が5分間以上であることの検証が可能である活性酸素水の生成が可能であること。
(13)前記活性酸素水は、ウミホタル由来ルシフェリンアナログを用いたスーパーオキサイド生成の検証もしくはESR法によりヒドロキシラジカルもしくはアスコルビン酸ラジカルの検出を行い、活性半減期が10分間以上であることの検証が可能である活性酸素水の生成が可能であること。
(14)前記活性酸素水は、ウミホタル由来ルシフェリンアナログを用いたスーパーオキサイド生成の検証もしくはESR法によりヒドロキシラジカルもしくはアスコルビン酸ラジカルの検出を行い、活性半減期が20分間以上であることの検証が可能である活性酸素水の生成が可能であること。
(15)前記活性酸素水は、ウミホタル由来ルシフェリンアナログを用いたスーパーオキサイド生成の検証もしくはESR法によりヒドロキシラジカルもしくはアスコルビン酸ラジカルの検出を行い、活性半減期が30分間以上であることの検証が可能である活性酸素水の生成が可能であること。
【発明の効果】
【0019】
請求項1に記載の活性酸素水生成方法では、紫外線照射された光触媒体で惹起された遊離電子および正孔(フォトン)を水と効率よく反応させことにより、活性酸素種を大量に発生させ、さらに水溶液中の溶質とを反応させることにより、前記溶質より生成したイオン種を含有する活性酸素水を生成し、優れた殺菌能および原虫類の駆虫能、有機物分解能を長時間保持作用する機能を有する活性酸素水とすることができ、そのため、活性酸素水生成装置外に活性酸素水を取り出し、その強力な酸化力を保持したまま別の場所での、細菌類の殺菌や原虫類の駆虫、有機物の分解が可能となる。また原虫類の駆虫が可能となったため、アメーバなどの原虫類の体内で増殖したレジオネラ菌の殺菌をも可能とする事ができる。
【0020】
また、請求項2に記載の活性酸素水生成装置では、紫外線照射によって光触媒体で生成された活性酸素種および/または装置内を通過する水溶液と反応し二次的に産生されたイオン種が、殺菌能および原虫類の駆虫能、有機物分解能を長時間保持作用する機能を有することができる。
【0021】
また、請求項3に記載の活性酸素水生成装置では、前記装置内を通過する水溶液は、酸素、塩素、アンモニアなどのガス類および/または塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸カリウム、塩化カリウム、炭酸カルシウム、臭化マグネシウム、亜塩素酸塩、次亜塩素酸塩などの塩類の少なくともいずれか一つを含有することとしたため、水中に、酸素、塩素、アンモニアなどのガス類および/または塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸カリウム、塩化カリウム、炭酸カルシウム、臭化マグネシウムなどの塩類から生じるイオン種を含有させた活性酸素水を生成することができる。
【0022】
また、請求項4に記載の活性酸素水生成装置では、前記光触媒体は、生成装置内を前記水溶液が通過する流路中に配置し、さらに光源をその周囲に配置したため、光源から放射された紫外線を光触媒体に効果的に照射することができ、光触媒体に活性酸素種を十分に生成することができる。
【0023】
また、請求項5に記載の活性酸素水生成装置では、前記容器内には、前記光触媒体表面で発生した活性酸素種を水中で拡散させるための拡散手段を配設したため、光触媒体表面から水中へ速やかに活性酸素種を遊離させることができる。
【0024】
また、請求項6に記載の活性酸素水生成装置では、前記拡散手段は、超音波振動子による100kHz以上の超音波及び/または水中ファンによる水流であって、光触媒体及び/または水を動かすこととしたため、光触媒体表面から水中へ活性酸素種をより速やかに遊離させることができる。
【0025】
また、請求項7に記載の活性酸素水生成装置では、前記拡散手段は、超音波振動子による500kHz以上の超音波であって、光触媒体及び/または水を動かすこととしたため、光触媒体表面から水中へ活性酸素種をより速やかに遊離させることができる。
【0026】
また、請求項8に記載の活性酸素水生成装置では、前記光触媒体は、ガラス製繊維体またはセラミックス製繊維体または不織布であって、その表面をチタニア薄膜で被覆しているため、表面積を大きくすることができると共に、光触媒体を比較的安価に製造することができ、活性酸素水生成装置を安価に製造することができる。
【0027】
また、請求項9に記載の活性酸素水生成装置では、前記光触媒体は表面にあらかじめアルミナ被膜を形成した金属製繊維体であって、しかもその表面にチタニア薄膜が緻密に形成されて、効率良く活性酸素種を生じさせることができると共に、光触媒体の耐久性を高めることができる。
【0028】
また、請求項10に記載の活性酸素水生成装置では、前記活性酸素水は、酸素ガス、オゾンガス、塩素ガス、一酸化窒素ガス、アンモニアガスの少なくともいずれか一つを回路内に混入させて生成することによりイオン類を含有する水溶液とする事が出来る。
【0029】
また、請求項11に記載の活性酸素水生成装置では、化学的処理および/または物理的処理を用い、活性半減期の制御が可能となることにより、より安全で、処理対象となる生物種および化学物質ごとに設定された至適活性酸素濃度を調節する事が出来る。
【0030】
また、請求項12に記載の活性酸素水生成装置では、ウミホタル由来ルシフェリンアナログを用いたスーパーオキサイド生成の検証もしくは、ESR法によりヒドロキシラジカルもしくはアスコルビン酸ラジカルの検出を行い、活性半減期が1分間以上であることの検証が可能である活性酸素水の生成が可能であるため、確実に生成装置外に、活性酸素水の効果をもたらす事が出来る。
【0031】
また、請求項13に記載の活性酸素水生成装置では、ウミホタル由来ルシフェリンアナログを用いたスーパーオキサイド生成の検証もしくは、ESR法によりヒドロキシラジカルもしくはアスコルビン酸ラジカルの検出を行い、活性半減期が5分間以上であることの検証が可能である活性酸素水の生成が可能であるため、確実に生成装置外に、活性酸素水の効果をもたらす事が出来、しかも水中で拡散し反応を継続することが出来る。
【0032】
また、請求項14に記載の活性酸素水生成装置では、ウミホタル由来ルシフェリンアナログを用いたスーパーオキサイド生成の検証もしくは、ESR法によりヒドロキシラジカルもしくはアスコルビン酸ラジカルの検出を行い、活性半減期が10分間以上であることの検証が可能である活性酸素水の生成が可能であるため、確実に生成装置外に、活性酸素水の効果をもたらす事が出来、しかも水中で拡散し反応を継続することが出来る。
【0033】
また、請求項15に記載の活性酸素水生成装置では、ウミホタル由来ルシフェリンアナログを用いたスーパーオキサイド生成の検証もしくは、ESR法によりヒドロキシラジカルもしくはアスコルビン酸ラジカルの検出を行い、活性半減期が20分間以上であることの検証が可能である活性酸素水の生成が可能であるため、確実に生成装置外に、活性酸素水の効果をもたらす事が出来、しかも水中で拡散し反応を継続することが出来る。
【0034】
また、請求項16に記載の活性酸素水生成装置では、ウミホタル由来ルシフェリンアナログを用いたスーパーオキサイド生成の検証もしくは、ESR法によりヒドロキシラジカルもしくはアスコルビン酸ラジカルの検出を行い、活性半減期が30分間以上であることの検証が可能である活性酸素水の生成が可能であるため、確実に生成装置外に、活性酸素水の効果をもたらす事が出来、しかも水中で拡散し反応を継続することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
本発明に係る活性酸素水生成装置は、光触媒体によって生成した活性酸素種と反応してイオン種が生成される水溶液を収容した容器と、同容器内の水溶液に浸漬して配置した光触媒体と、同光触媒体に紫外線を照射する光源とを有するものである。
【0036】
すなわち、本発明は、長時間作動を実証可能な活性酸素を含有する水を生成することの出来る活性酸素水生成装置を提供するものと言える。
【0037】
ここで、活性酸素水とは、水溶液中の溶質に、光触媒体で生じた活性酸素種や、光触媒体で生じた活性酸素種を反応させて生成した前記溶質由来のイオンを含有する水のことをいう。
【0038】
したがって、活性酸素水生成装置を前述の構成とすることにより、光源からの紫外線を光触媒体に照射して生じた活性酸素種を水中で拡散するとともに、同活性酸素種を水溶液中の溶質と反応させて、前記溶質より生成したイオン種を含有する水(活性酸素水)を生成することができる。
【0039】
ここで、水溶液中の溶質は、液体や固体を水に溶解したものであっても良く、また、気体を水に溶解したものであっても良い。例えば酸素ガス、オゾンガス、塩素ガス、一酸化窒素ガス、アンモニアガスのいずれか1種のガスを混入溶解させても良い。その際、ガスと溶質との混和においてより飽和度を上昇させるために事前に超音波振動にて攪拌混和させても良く、この気体と水を混合しての溶存濃度を高め、より細かな気泡状とした上で光触媒体繊維に表面に接触させるために用いる超音波周波数に規定はなく、より攪拌能力の高い16kHz低周波振動子を用いても良い。
【0040】
さらにオゾンガスや一酸化窒素ガスなどの定常状態でも非常に不安定なガスを用いた際は、後述の光触媒体表面の膜表面電子が不安定となり、より光触媒反応が励起しやすい状態となる。
【0041】
また、水溶液は、水に溶質を故意に添加したものではなく、例えば、海水や雨水等のように既に溶質を含むものであっても良い。溶質としては、酸素、塩素、アンモニアや、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸カリウム、塩化カリウム、炭酸カルシウム、臭化マグネシウム、亜塩素酸塩、次亜塩素酸塩のなどの塩類とすることができる。
【0042】
このようにして生成した活性酸素水の用途は、特に限定されるものではなく、例えば、殺菌、除菌、駆虫、洗浄、浄水処理、医薬品の開発、飲用等様々な分野で使用することができる。
【0043】
光触媒体の表面には、光触媒能を有する酸化チタン結晶がチタニア薄膜を形成し、このチタニア薄膜に紫外線ランプから放射された紫外線が当たることでチタニア薄膜が励起して光触媒体が活性化することとなる。
【0044】
活性化した光触媒体の表面では、紫外線ランプから放射された紫外線のエネルギー(hν)がチタニア薄膜を構成する酸化チタン(TiO2)を励起し、遊離電子および正孔(フォトン)を生じ、活性酸素水生成装置を満たしている水が、光触媒体に接触することで、活性酸素種が生じる。この励起した光触媒体に水が接触することで、活性酸素種が生じる反応を1次反応という。
【0045】
通常純水H2Oの場合、1次反応は、次のような反応が行われていると考えられる。
TiO2 + hν → e-+ h+VB
h+VB → h+tr
O2 + e-→O2-
O2・-+h+VB(h+tr)→ O2
OH- + h+VB → OH・
【0046】
さらに、水に酸素もしくはオゾンが大量に含有されている際は、これらの反応は加速され、大量のO2-(スーパーオキサイド)ならびにOH・(ヒドロキシラジカル)が生成される事となる。
【0047】
ここに、塩素イオンを含む水が介在した場合は、次のような反応が活性化していると考えられる。
2Cl- + O2 + e-→2ClO-
【0048】
さらに一酸化窒素ガスを大量に含む水が介在した場合は、
NO + e- →・NO
・NO - e- →NO2-
2NO2- - 2e-→2・NO3-
・NO + NO2- →N2O3
・NO + O2- →・ONOO-
・ONOO- + H+ →HOONO→OH・
とより細胞障害性の強力なイオンとなる。
【0049】
次いで、1次反応で生じた活性酸素種は、高い反応性を有しているため、活性酸素種同士や、水中に溶解している物質やイオンと反応を起こし、更なる生成物を生じさせる。ここで、1次反応で生じた活性酸素種が、水中に溶解している物質やイオンと起こす反応を2次反応という。
【0050】
そして、2次反応では、例えば次のような反応が起こっていると考えられる。
O2- + O2- + 2H+ → H2O2 + O2 (過酸化水素水の生成)
【0051】
他のイオンの含有されていない超純水を除き、通常の環境中に存在する水は、微量の元素イオンを含んだ状態にあるものと考えられる。特に水道水などは塩素殺菌が施されているため、下記のような2次反応が起こっているものと考えられる。
HCl+ O2・-+OH- →ClO2 + H2O (亜塩素酸の生成)
ClO2 + 2OH-→ HOCl + H2O (次亜塩素酸の生成)
【0052】
また、河川や海水などの生物が存在する環境では、アンモニアが含有されており、同様に下記の2次反応が起こっているものと考えられる。
NH3 + OH-→ NO-+ 2H2O (酸化窒素イオンの生成)
【0053】
上述の反応以外にも、さらに多くの2次反応が行われているのは勿論であるが、活性酸素水中には、このようにして生成された2次反応物(イオン種)が人為的に大量に含まれることとなる。
【0054】
特に接触させる水を海水や所定の物質を溶解した水溶液とした場合には、これらのイオン種を多種類に亘って生成させることができる。
【0055】
しかもこれらの反応は、電子の移動のみによって生じる反応群であり、それらは容易に可逆性反応となり、生じた2次反応イオンが2次反応前の状態へと戻るため、本来極めて短寿命であるはずの活性酸素が継続して産生され、あたかも活性半減期を有する活性酸素種を形成しているかのごとく作用させる事が可能となる。
【0056】
また、光触媒体を励起させるための紫外線は、太陽光及び/または人工光に含まれる紫外線を利用することができる。たとえば、太陽光を用いた場合は、光触媒体を励起させるための費用を削減することができ、しかも人工光で得られるより強い紫外線エネルギーを光触媒体へ照射することが可能となる。なお、水中に配設した光触媒体に光を照射する場合には、光ファイバーやプリズム等の反射体を利用し、太陽光や人工光を水中に導いて、水中で光触媒体に直接照射するようにしても良い。
【0057】
光触媒体は、ルチル型やアナターゼ型の結晶相を有する酸化チタン(チタニア)とすることができる。
【0058】
この酸化チタンを用いた光触媒体は、繊維状の担体にチタニアでディップコーティングを施すことにより、表面積を拡大させた高効率の光触媒体としても良い。
【0059】
ここで、繊維状の担体は、例えば1000番台〜7000番台等のアルミニウムを含む金属(以下、アルミニウム系金属ともいう)を好適に用いることができるが、このアルミニウム系金属を加熱して形成したアルミナ金属繊維体とすることにより、担体にチタニアが緻密にコーティングされることとなるので、さらに耐久性を向上することができる。
【0060】
特に、シリカを含有するアルミニウム系金属を使用することにより、繊維上に形成したチタニア薄膜がシリカと強固に結合することとなるため、耐食性と、耐熱性と、耐久性に優れた光触媒体を形成することができる。
【0061】
アルミナ金属繊維体は、担体を形成するアルミニウムを含む金属を所定の温度まで5℃/分の割合以下で加熱し、その後前記金属製繊維体の融点直前まで加熱して形成しても良い。
【0062】
ここで、前記所定の温度は下記の計算式で算出することができる。
所定温度(℃)=アルミニウムを含む金属の融点温度(℃)÷2
【0063】
さらに詳しく説明すると、表面がアルミナで覆われた金属製繊維体を担体として、チタニア薄膜を形成すべくディップコーティング加工に供すると、チタニアがアルミナ被膜上に緻密に薄膜を形成することが可能となり、ムラなくチタニア薄膜を形成することができる。
【0064】
ムラのないチタニア薄膜が紫外線で励起すると、光触媒反応をより効率的に行うことができるため、活性酸素種をより多く発生させることができる。
【0065】
ここで金属製繊維体のアルミナ被膜は、アルミニウム系金属繊維を5℃/分の割合以下(例えば、1〜5℃/分、好ましくは4〜5℃/分)で融点の約半分の温度に至るまでゆっくり加熱して表面を酸化させた後、融点直前まで加熱してより深層までの酸化を行い、アルミナ繊維としての機能を充分に発揮する人工酸化皮膜を形成するようにしている。なお、アルミニウム系金属とは、アルミニウムと、アルミニウム合金との両者を示すものである。
【0066】
すなわち、アルミニウム系金属製繊維体をアルミニウム系金属の融点の約半分の温度までの加熱で形成した酸化膜を用いて金属製繊維体を保護しながら、融点直前まで加熱し、均質なアルミナ被膜を形成しているものである。さらに、金属製繊維体を構成しているアルミニウム系金属の融点以上にまで加熱することにより金属製繊維体は極めて安定化された酸化被膜を形成することができる。
【0067】
したがって、この金属製繊維体にチタニア薄膜を形成した場合に、このチタニア薄膜と金属製繊維体との密着性を高めることができ、しかも絶縁体としてその形状を保持できるため、高効率の光触媒能を長期間保持する事ができる。
【0068】
また、アルミニウム系金属の融点の約半分の温度に至るまで加熱して酸化膜を形成し、この酸化膜により金属製繊維体を保護しながら、融点直前まで加熱し、その後さらに融点を越えて焼成した金属製繊維体は、アルミナの融点近傍まで温度上昇しても繊維形態の維持が可能であり、繊維の能力としてアルミナ繊維としての機能を示すようになる。光触媒体にルチル型光触媒反応を生じるルチル型繊維とするためには、ディップコーティング加工工程で、繊維をアルミニウム系金属の融点を超える750℃以上に焼成する必要があるが、この均質なアルミナ被膜を形成している極めて安定したアルミナ金属製繊維体は繊維形態を維持しながら、チタニア薄膜との密着性の高いルチル型チタニア繊維を作ることが可能である。
【0069】
このように、チタニア薄膜と、金属製繊維体との密着性を高めることで、超音波環境中でもチタニア薄膜が金属製繊維体から剥離することなく、十分な耐久性を有する光触媒体とすることができる。
【0070】
このようにアルミニウムを含む金属からなる繊維体を加熱してアルミナ金属繊維体を形成することにより、緻密なアルミナ被膜を有するアルミナ金属繊維体とすることができるため、光触媒体の耐久性や触媒効率をさらに向上させることができる。
【0071】
ここで、活性酸素種を水に拡散させるための手段は、例えば、超音波を利用することができる。
【0072】
ここで用いる超音波振動子の効果は、繊維状の光触媒体を細かく振動させて、光触媒反応により生じる活性酸素種の生成をよりスムーズに行うことが可能となり、しかも、光触媒繊維体上で惹起された光触媒反応により生じた電子および正孔を、容易に遊走可能とすることができる。
【0073】
またこの電子により光触媒体の繊維上で生成された活性酸素種は、繊維表面を流れる水の流速が、繊維が超音波振動により高速で移動することにより飛躍的に高まるため、水中に放出される事が可能となる。
【0074】
すなわち、これらの超音波は、光触媒体からの活性酸素種の遊離を促進すると共に、超音波と紫外線の波長の相互干渉作用により互いに反応を増強させている可能性が推測される。
【0075】
超音波振動子は、例えば、高周波超音波(一般に500kHz以上といわれている)を生じさせる霧化用超音波振動子(高周波超音波振動子)を使用することが推奨される。
【0076】
この霧化用超音波振動子から発生する高周波超音波振動は、繊維の洗浄能力は低いものの、光触媒反応で生じる電子や活性酸素種等を水中へ振り払う程度の力は十分有している。
【0077】
また、使用する超音波は中周波超音波(100〜500kHz)としても良い。
【0078】
中周波超音波振動子より発せられる中周波超音波を使用する際は、繊維状の光触媒体に超音波が当たった際に、音波の回折性が高まり、密閉容器内での水の撹拌がさらに強めることができ、光触媒体から活性酸素種を効率良く遊離させることができるが、光触媒体繊維の劣化は高周波振動子に比して否めないものとなる。
【0079】
しかし、この中周波超音波の作用により、繊維へ付着した汚れ成分等の比較的分子量の大きな物質に対する洗浄効果を生起する事が可能となる。但し、100kHz以下の低周波超音波は、光触媒体の変形や、光触媒体に形成した触媒反応面の剥離損傷を生じさせるおそれがあるので、使用しない方が好ましい。
【0080】
また、活性酸素種を水に拡散させるための手段としては、光触媒体を機械的に動かすように追加しても、効率良く活性酸素種を水に含ませることができる。
【0081】
これらの超音波は、光触媒体からの活性酸素種の遊離を促進すると共に、超音波と紫外線の波長の相互干渉作用により互いに反応を増強させている可能性が推測される。
【0082】
ところで、本発明に係る活性酸素水生成装置では、活性酸素水の効果は、生成装置初回通過時に付与され、通過した水は一定時間その機能を保有するが、処理を必要とする水が多量の際は循環処理を行ってもよい。その際、処理すべき水自体に細菌および駆虫の対象となる原虫類が混入している可能性もあり、光触媒反応を生起する部位(例えば光触媒体の近傍)の上流または下流または同位置において、殺菌灯による254〜265nmの波長の紫外線を併用して照射しても良い。
【0083】
すなわち、光触媒体に接触させる水溶液を殺菌灯で処理しても良く、光触媒体によって得られた活性酸素水を殺菌灯で処理しても良く、光触媒体が反応している近傍で殺菌灯による処理を行っても良い。
【0084】
換言すれば、光触媒体に接触させる水や活性酸素水や光触媒に接触している水に254〜265nmの波長の紫外線を照射しており、それぞれの水の中の微生物に細胞膜蛋白変成を生じさせ、生成した活性酸素水中の微生物や細菌に対する殺菌効果や寄生虫に対する駆虫効果を高めることができる。
【0085】
元来、殺菌灯による微生物の細胞膜変成は紫外線による微生物のDNAに変異障害とされているが、それは、紫外線照射の中断により、核酸は修復再生され、いわゆる光回復を生じ、細菌は再生復活するとされている。
【0086】
しかし、DNA障害を受けた菌体や弱った原虫類などの微生物は、活性酸素水生成装置に供給され、光触媒体で発生する活性酸素種(一次反応物)と反応、もしくは水溶液中の溶質と活性酸素種とが反応することで生成したイオン種(二次反応物)と反応することで、障害を受けた細胞膜より強力な酸化イオンが侵入することで酸化分解され、弱った菌体や原虫類などの微生物に致命的なダメージを与えて確実に水中の微生物を殺菌することができる。
【0087】
殺菌灯の併用により障害を受けた微生物の細胞膜は、活性酸素水による酸化変成をうけ、夾膜などの強い細胞膜を有する細菌に対しても、強い殺菌力を示し、核酸障害は恒久化し、光回復も発現することが出来なくなる。
特に水槽などに活性酸素水生成装置を設置して循環系を構成した状態で、より衛生的な活性酸素水とすることができる。
【0088】
活性酸素水中の活性酸素量は、前述のように、一定の半減期を有して減少していくのであるが、本発明においては、活性酸素水生成装置に活性酸素濃度制御部を設けることにより活性酸素濃度の減少速度を変化させることができる。
【0089】
活性酸素濃度制御部では、活性酸素の濃度の減少速度を加減する手段として、気相の減圧装置、水槽温度制御装置等の物理的手段または溶存イオン濃度および水溶液pH調整や、タイロンなどのスーパーオキシド除去剤など薬物添加などの処理の化学的手段を備えている。
【0090】
このように活性酸素濃度制御部を備えているので、本発明による活性酸素水生成装置で生成した活性酸素水を活性酸素の活用を求める期間中は気相の圧力を高めに保持するか水槽温度を低めに保つことにより高濃度の活性酸素を維持するよう減少速度を遅くし、その後においては、気相の圧力を真空ポンプなどにより減圧するか水槽温度を高めにすることにより減少速度を速くすることができる。減少速度を速くするためには、タイロンなどのスーパーオキシド除去剤を添加すると、急速な除去が可能となる。
【0091】
このような活性酸素濃度の制御は、活性酸素水の活性を所定の期間中のみ高め、その後は通常の水として不活性状態に戻す、という効果をもたらす。特に物理的手段による場合は、化学的手段による場合に比べて、残存物質の環境影響を最小限にすることができるので、好ましいのである。
【0092】
物理的手段としては、上記に述べた真空ポンプなどの気圧の操作手段や水槽温度制御装置のほか、水ポンプやバッキ法による攪拌、電気的中和などが適用可能である。
【0093】
なお、活性酸素濃度制御部は、後に詳述する活性酸素生成装置に付設することで、同活性酸素生成装置をコンパクトに構成することができるが、これに限定されるものではなく、たとえば、活性酸素水の通水経路中に活性酸素濃度制御部を配設するように、活性酸素生成装置と活性酸素濃度制御部とを別体に設けるようにしても良い。
【0094】
また、前述の活性酸素生成装置に配設した活性酸素の発生を助長する超音波振動子とは別に、前記超音波振動子から発せられる超音波を減衰させる超音波を発振する超音波振動子(以下、減衰超音波振動子という)を配設し、活性酸素の発生量を調節可能としても良い。
【0095】
すなわち、減衰超音波振動子から発振される超音波の周波数を、超音波振動子から発振される超音波と干渉して減衰できる周波数とする。
【0096】
このような構成とすることにより、超音波振動子に流れる電流と、減衰超音振動子に流れる電流とを適宜調整することにより、活性酸素の発生量を調整することができる。
【0097】
しかも、活性酸素の発生量を電気的に調整することが可能となるため、薬剤などによる調整に比して、さらに細かな調整を行うことができる。
【0098】
ところで、本発明に係る活性酸素水生成装置で生成した活性酸素水は、特に、微生物の殺菌を必要とする分野や、魚体の寄生虫の駆虫を必要とする分野、アメーバなどの原虫類の駆除を必要とする分野において、その絶大な効果を発揮する。前述のごとく生体における活性酸素種の影響はその種によって異なるが、細菌類より大きな固体である原虫類の駆虫には、除菌・殺菌・洗浄用途に比してより強力な酸化力が必要となる。よって駆虫が可能なこの活性酸素水生成装置によれば、生成した活性酸素水に微生物を接触させて除菌殺菌することにより、微生物を効果的に除菌殺菌することができる。
【0099】
この殺菌方法は、活性酸素水に微生物を接触させることができれば特に限定されるものではなく、水と共に微生物を活性酸素水生成装置に供給して、装置内部で微生物を活性酸素種やイオン種に接触させて殺菌するようにしても良い。
【0100】
また、活性酸素水生成装置は、生成した活性酸素水を洗浄対象物に接触させるべく洗浄システムを構成することで、除菌および殺菌に加え有機物の分解を行うことができ、微生物的な汚れは勿論のこと、見た目の汚れ等の物理的な汚れも落とすことができる。
【0101】
ここでいう洗浄対象物は、例えば入れ歯、医療器具、食器、野菜、精密機器、トイレ、布地、種籾等が挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0102】
次に、駆虫用の活性酸素水生成装置について述べる。
【0103】
本発明に係る活性酸素水生成装置によれば、光源からの紫外線を光触媒体に照射して生じた活性酸素種を水中で拡散することにより、水に活性酸素種の機能を付与し、この水による酸化反応を利用した魚の寄生虫の駆虫を行うことのできる駆虫用活性酸素水生成システムも提供することができる。
【0104】
すなわち、前述の除菌用活性酸素水生成システムと同様に、活性酸素水を寄生虫に接触させて、魚に付着・寄生している寄生虫の駆虫を行うようにしたものである。
【0105】
ここで駆虫用活性酸素水生成システムで用いる水は特に限定されるものではなく、たとえば、淡水、海水、浄水を問わず使用することができる。
【0106】
魚の寄生虫の駆虫を行うことのできる駆虫用活性酸素水生成システムには、殺菌効果を生起可能な殺菌灯を備えても良い。
【0107】
ところで、これらの魚の寄生虫の駆虫を行うことのできる駆虫用活性酸素水生成システムは、水槽などに活性酸素水生成装置を付設して構成しても良く、また、例えば生け簀などを大きな水槽に見立てて、生け簀全体を魚の寄生虫の駆虫を行うことのできる駆虫用活性酸素水生成システムとしても良い。
【0108】
すなわち、前者の例によれば、例えば、水と魚を収納した水槽に、活性酸素水生成装置を付設することにより、水槽内の水を、活性酸素水生成装置に供給し、活性酸素種やイオン種を含んだ水を再び水槽へ戻すことで、活性酸素種やイオン種を含んだ水と魚とを接触させて、魚体の寄生虫を駆虫可能な駆虫用活性酸素水生成システムとすることができる。
【0109】
本発明に係る活性酸素水生成装置を用いて、駆虫用活性酸素水生成システムを構成することにより、魚体の肌に寄生するハダムシ(Lepeophtheirus salmonis、Benedenia seriolae、Benedenia skii、Neobenedenia girellae、Entobdella soleae等)、魚体の鰓に寄生するエラムシ(Heterraxine Heterocerca、Zeuxapta japonica、Bivagina tai、Heterobothrium okamotoi、Heterobothrium tetrodonis、Neoheterobothrium hirame、Neoheterobothrium affine等)などの外寄生虫を駆虫することができ、これらの寄生虫に由来する魚の病気を予防、治療することができる。
【0110】
この際、水温を、駆虫対象の魚の育成環境水温度の±5℃以内、好ましくは±3℃以内に調節しながら、駆虫を行うことにより、効率良く寄生虫の駆除を行いながらも、温度による負担を魚にかけることなく駆虫することができる。
【0111】
また、水中溶存酸素濃度を12mg/L以下、好ましくは10mg/L以下で、しかも駆虫対象の魚の育成環境水の溶存酸素濃度に可能な限り近い値に調節することで、駆虫対象の魚が酸素障害によって衰弱するのを防ぎつつ、光触媒体と酸素との接触効率を向上させて駆虫効果をより好適に引き出すことができる。
【0112】
以下、本発明について、実施例を示しながら更に詳細に説明する。
【実施例1】
【0113】
図1に、本実施例に係る活性酸素水生成システムAを示す。本システムはこの活性酸素水生成装置1を基本ユニットとして、利用される目的に応じ基本ユニットを複数個直列・並列に配設し、活性酸素水の産生量を増加させることが出来る。
【0114】
水槽33には、あらかじめ水31が収納されており、この水31は、水31中に浸漬した給水ポンプ32を駆動させることにより、給水管3を通って活性酸素水生成装置1に送られるようにしている。
【0115】
そして、活性酸素水生成装置1で処理された水31は、活性酸素種やイオン種を豊富に含んだ活性酸素水となって、排水管10を通り、排水口11から流下して再び水槽33内に戻るように構成している。
【0116】
次に、活性酸素水生成装置1のさらに詳細な構成について図2〜4を用いて説明する。
【0117】
活性酸素水生成装置1は、図2に示すように上部開口を有する箱状の容器本体7と、容器本体7の上部開口を密閉するように閉塞する蓋体8とからなる密閉容器6を有している。
【0118】
この密閉容器6を構成する素材は特に限定されるものではなく、金属製、樹脂製、プラスチック製などとすることができるが、好ましくは紫外線照射によって劣化しにくい素材や、水や海水によって腐蝕されにくい耐蝕性を備える素材とすることが良い。このような素材で容器本体7や蓋体8を形成することにより、活性酸素水生成装置1の寿命を長くすることができる。図中では、密閉容器6をプラスチックで形成している。
【0119】
また、容器本体7の上部側面には、密閉容器6内部で生成した活性酸素水を取り出すための排水ホース接続部40を設けている。一方、容器本体7の下部側面には、外方へ伸延するように設けた給水管3を備えており、この給水管3の開口端部は、密閉容器6内部へ水を供給するための給水口2としている。なお、図1ではこの給水口2に給水ポンプ32を接続して、活性酸素水生成装置1に水31を送り込むようにしている。なお、本実施形態では、給水ポンプ32は(イーロカPF-380、流量6.2L/min)を使用している。
【0120】
そして、給水管3の中途部には、水溶液中の溶質となる物質(前駆物質)を流通可能とした中空状の前駆物質供給管4を接続し、この接続部分を前駆物質供給部5としている。
【0121】
ここでは、水に前駆物質を供給する手段として、前駆物質供給管4を給水管3に接続することにより、給水管内の水流で水中に酸素を効率良く拡散するようにしているが、活性酸素水生成装置1に供給する水31に前駆物質を含ませることができれば特に限定されるものではなく、たとえば前駆物質供給管4を活性酸素水生成装置1内に直接接続するようにしても良い。
【0122】
また、活性酸素水生成装置1に供給する前に、水31と前駆物質を攪拌混和させるために、別の反応槽をおき、同部に低周波超音波振動子をおき、強力な攪拌力により、溶解濃度を増加させてもよい。
【0123】
また、前駆物質供給管4を流通する前駆物質は、液体、気体、固体のいずれであっても良い。
【0124】
また、前駆物質を空気やオゾンとした場合には、好ましくはさらに酸素濃度が高い気体が良い。水中に供給する酸素濃度が高いほど、効率良く水中に酸素を含有させることができ、光触媒体での活性酸素種の発生量を増加させることができ、ひいてはイオン種の発生量を増加させることができる。
【0125】
さらに、水31の溶存酸素濃度を高める方法としては、例えば水と反応して発泡することにより、その気泡中に酸素を生じさせる発泡剤などを使用することができる。
【0126】
容器本体7の下部側面には、活性酸素種やイオン種を水中に拡散させる拡散手段として超音波発振器12を配設しており、この超音波発振器12は、容器6内に設けた超音波振動子22(2.4MHz霧化用超音波振動子)と接続している。なお、ここでは高周波超音波(一般に500kHz以上といわれている)を生じさせる超音波振動子を使用しているが、中周波超音波(100kHz〜500kHz)を使用するようにしても良い。
【0127】
これらの超音波は、光触媒体20からの活性酸素種の遊離を促進すると共に、超音波と紫外線の波長の相互干渉作用により互いに反応を増強させている可能性が推測される。
【0128】
また、本実施例1では、拡散手段として超音波を用いて、水31を介して光触媒体20を間接的に振動させ、活性酸素種やイオン種を拡散するようにしているが、これに限定されるものではなく、たとえば、容器6内で光触媒体20を直接的に動かしても良く、また、容器6内の水31を撹拌して水流を生じさせるファン(撹拌翼)などを追加配設して、活性酸素種やイオン種を拡散させるようにしても良い。
【0129】
蓋体8には、容器6の内部へ光を照射する光源として、蓋体8を貫通するように紫外線ランプ9(東芝ライテック社製EFD15BLB,ピーク波長352nm,紫外線出力1.8W)を挿入しており、この紫外線ランプ9に通電することで容器6内部に備えた後述の光触媒体20へ紫外線を照射可能としている。また、この紫外線ランプ9の通電部は空気中にあるため、発光部を水に水没させても、漏電等の事故の恐れが無い。しかし、安全性を向上させる目的で発光部を円筒状の石英ガラスで囲繞するように配設してもよい。また、その表面にプリズム加工を施して光源を散乱光とし、繊維状光触媒体にさまざまな角度より紫外線を照射することにより、繊維体に紫外線が照射されない部位が可及的に少なくするようにしてもよい。
【0130】
この紫外線ランプ9は、ブラックライトなどが使用可能であるが、350〜370nmの波長の紫外線、さらに好ましくは364nmの波長の紫外線を効果的に放射する紫外線ランプ9が最も効率よく光触媒反応を発現するとされるが、350nm以下の殺菌灯(254〜265nm)や日焼け用紫外線灯などの短波長の紫外線においても光触媒反応は惹起される。またブラックライトに限定されるものではなく、紫外線を放射可能な発光ダイオード(LED)やキセノンランプなどとすることもできる。また光源を太陽光とした場合は、太陽光に含まれている、多量の紫外線を光触媒体20へ照射することが可能となり、光ファイバーやプリズムを用いて光を水中に導き、光触媒体20へ照射することも可能である。また、光触媒体20がルチル型(可視光応答型)光触媒体であれば通常の可視光線光(室内照明灯)でも光触媒反応を惹起することが可能なため、光ファイバーやプリズムを用いて光を水中に導き、光触媒体20へ照射することも可能である。
【0131】
次に、容器6の蓋体8をはずし、容器本体7の上部開口から内部を見た状態を図3に示し、活性酸素水生成装置1の断面を図4に示す。
【0132】
容器本体7の内面側の底部には前述の超音波発振器12に接続した超音波振動子22が水に接触するように配設しており、この超音波振動子22の上部には筒状とした光触媒体20を配設している。この光触媒体20は、図4に示すように、蓋体8で容器本体7を閉塞した際に紫外線ランプ9の発光部41を囲繞するように配設している。それゆえ、紫外線ランプ9が放射した紫外線を、光触媒体20を励起するためのエネルギーとして効率良く利用することができる。
【0133】
ところで、紫外線ランプ9から照射され、光触媒体20をすり抜けた紫外線は、容器本体7や蓋体8に当たることとなる。
【0134】
ここで、この容器本体7と、蓋体8との外周面は紫外線等の光を反射可能とした反射材13で覆っている。
【0135】
したがって、容器本体7や蓋体8に到達した紫外線は、反射材13によって容器本体7の内方(すなわち、光触媒体20の方向)へ反射され、光触媒体20を励起させることとなり、紫外線ランプ9より照射された紫外線を光触媒体20の活性化エネルギーとして無駄なく利用することができる。
【0136】
この反射材13は光を反射できる素材、特に紫外線を反射できる素材が好ましく、たとえばアルミニウム箔を用いることができる。
【0137】
また、本実施例では、反射材13は容器本体7と、蓋体8との外周面に貼設しているが、内周面に貼設するようにしても良く、容器6自体を反射材13と同様の機能を有する素材で構成しても良い。特に、容器6がプラスチック製や樹脂製である場合は、容器6の内壁に反射材13を設けることで、容器6が受ける紫外線量を減らすことができ、紫外線によるプラスチックや樹脂の劣化や変性を防ぐことができる。
【0138】
また、光触媒体20は、アルミナ金属繊維体の実質的全表面を、チタニア薄膜で被覆したものとしており、紫外線ランプ9から放射された紫外線を受けることで、チタニア薄膜が励起可能となるようにしている。
【0139】
なお、本実施例1では、光触媒(チタニア)の担体を金属製繊維体としているが、これに限定されるものではなく、有機及び/又は無機材料で構成した多孔質体とすることができ、たとえば、ガラス製繊維体や、セラミックス製繊維体や、不織布の表面にチタニア薄膜を形成することにより光触媒体20としても良い。ここで、多孔質体とは、繊維体の集合であるウール状のものも含む概念である。
【0140】
次に、給水口2から供給された水が活性酸素種やイオン種を含んで排水口11から活性酸素水として取り出されるまでの流れを以下に説明する。
【0141】
すなわち、給水口2から供給された水31は、給水管3を流れて前駆物質供給部5に達する。前駆物質供給部5には、前駆物質供給管4が接続されており、前駆物質供給部5に達した水31と前駆物質供給管4によって送り込まれた前駆物質とが混合されることとなる。
【0142】
このようにして水31と混合された前駆物質は、水31に溶け込んで水中の前駆物質濃度を上昇させながら水溶液として容器6内に送り込まれる。
【0143】
容器6内部に到達した水溶液は、超音波振動によりさらに混合が促進され、水31中の前駆物質濃度をさらに上昇させ、均一な状態とする。
【0144】
また、前駆物質が気体の場合には、残存した微小な気泡が光触媒体20に衝突し、弾けて高周波の超音波を発生させる。この超音波は、光触媒体20を直接・間接的に振動させ、活性酸素種やイオン種の遊離を促進させる一助となる。
【0145】
前駆物質濃度が上昇した水31は容器6内部に到達し、容器6を満たしてゆくこととなる。
【0146】
一方、通電した紫外線ランプ9からは、350〜370nmの波長の紫外線が放射されることとなり、放射された紫外線は紫外線ランプ9を囲繞している光触媒体20に当たる。
【0147】
光触媒体20の表面には、光触媒能を有するチタニア薄膜を形成しているので、このチタニア薄膜に紫外線ランプ9から放射された紫外線が当たることでチタニア薄膜が励起して光触媒体20が活性化することとなる。
【0148】
活性化した光触媒体20の表面では、紫外線ランプ9から放射された紫外線のエネルギー(hν)がチタニア薄膜を構成する酸化チタン(TiO2)を励起しているので、容器6を満たしている水31(水溶液)が、励起した光触媒体20に接触することで、紫外線照射された光触媒体で惹起された遊離電子および正孔(フォトン)を水と効率よく反応させる事が可能となり、活性酸素種を大量に発生させ、活性酸素種が水溶液中に遊離することとなる。
【0149】
そして、光触媒体20より遊離した活性酸素種と、水溶液中の溶質とが反応してイオン種が生じることとなる。
【0150】
また、前駆物質として、水中の溶存酸素を高める物質(例えば分子状酸素等)を使用した場合、容器6中を満たしている水31には、前駆物質供給部5で酸素が混入されて溶存酸素濃度が高い状態となっているので、光触媒体20上に生じている電子(e-)および正孔と水31中に含まれる酸素との接触する効率を向上させることができる。
【0151】
それゆえ、酸素を多く含んだ水31が活性化した光触媒体20に接触することで、盛んに光触媒反応が起こり、光触媒体20表面に活性酸素種がより多く発生することとなる。
【0152】
これにより、さらにイオン種の生成量を増加させることができる。
【0153】
また酸素の混入に際して発生した細かな気泡は、金属繊維体に衝突する事により気泡が破裂し、超音波を発生し、金属繊維体を振動させ、金属繊維体上に発生した活性酸素種が金属繊維体より放出しやすくする。
【0154】
一方、通電した超音波発振器12は、密閉容器6の内部に配設した超音波振動子22を振動させて超音波を発生する。
【0155】
ここで、この発生した超音波は、水31や光触媒体20を振動させることとなるが、特に、本発明に係る活性酸素水生成装置1に備えた光触媒体20は、金属製繊維の表面に光触媒(たとえば、チタニア)をコーティングし、ウール状の集合体とした金属製繊維体としている。
【0156】
したがって、各金属製繊維の1本1本が有する表面積を集合した広大な表面積を備える金属製繊維体の表面から遊離電子および正孔(フォトン)が生じるのと同時に、この発生した遊離電子および正孔(フォトン)は速やかに超音波の振動によって光触媒体20の表面から振るい落とされて大量に水31中に遊離する。すなわち遊離電子および正孔(フォトン)は光触媒体に接する水の界面境界に惹起されるも、非常に軽微なエネルギーの作用により、光触媒体自体の移動も手伝って表面上極めて速い流速が界面境界を流れるため、反応面より遊離し水と反応し活性酸素を生じることとなる。
【0157】
そして、光触媒体20の表面には即時に新たな遊離電子および正孔(フォトン)が生じ、再び超音波の振動にあわせて振るい落とされ、また水31中に遊離することとなる。
【0158】
これが瞬時の間に幾度となく繰り返されることとなるため、極めて効率良く水31中に活性酸素種を含ませることができる。
【0159】
また光触媒体20は、たとえば板状の光触媒と比較して、超音波の細かい振動に合わせて振動を起こしやすく、光触媒体20の表面からより容易に活性酸素種を遊離させることができる。
【0160】
さらに、光触媒体20に多量に存在する金属製繊維の末端部分は、超音波振動下で自由端として振る舞うので、光触媒体20から効率良く活性酸素種を振るい落とすことができる。
【0161】
しかも、光触媒体20は、その担体として良好なチタニアコーティングが可能なアルミナ繊維としているので、アルミナ表面でチタニアが比較的強固に結びついており、耐久性が高いことから、超音波環境下の水中においても実用性を保ちながら長期間の使用に耐えることができる。このことは、特に、金属を腐食させやすい海水中で用いた場合などにおいて、顕著に実用性を示すこととなる。
【0162】
このように、光触媒体20の特徴と、超音波との相乗効果により、光触媒体20表面に生じた遊離電子および正孔(フォトン)が、水中に容易に遊離し活性酸素種が生じ、さらにこれらの活性酸素種と溶質とが反応する結果、多量のイオン種が水に含まれ、活性酸素水を生じることとなる。
【0163】
そして、給水口2から連続的に供給される水31によって、容器6内部で生成した活性酸素水は、容器6上部側面に設けた排水口11から押し出されることとなるため、活性酸素水を容器6内部から取り出すことができる。
【0164】
このようにして生成した活性酸素水に含まれるイオン種は非常に高い反応性と持続性を有しており、例えば、殺菌、除菌、駆虫、洗浄、浄水処理、医薬品の開発、飲用等様々な分野で使用することができる。
【0165】
特に、強力な酸化分解力を有するイオン種を生成可能な前駆物質を、前記前駆物質供給管4から供給した場合、生成した活性酸素水は、微生物や寄生虫などに対して致命的な影響を速やかに与えることが可能となる。
【実施例2】
【0166】
次に、実施例1で説明した活性酸素水生成装置1を用いて、除菌用活性酸素水生成システムを構成した場合について説明する。
【0167】
すなわち、図5に示すように、水槽33内の水31に浸漬した給水ポンプ32と、活性酸素水生成装置1との間には、殺菌灯24を備えた殺菌器23を設けており、殺菌灯24から放射された紫外線を殺菌器23の内部で循環する水31に照射可能としている。
【0168】
この殺菌器23に備えた殺菌灯24は、245〜265nm、さらに好ましくは256nmの波長の紫外線を放射可能としており、水中の微生物のDNAに変異障害によるダメージを与えて微生物を殺菌することができる。
【0169】
また、活性酸素水生成装置1の壁面に施した鏡面や、遮光した配管は、光回復を防止するという効果も有している。光回復を防止することで、245〜265nmの波長の紫外線による微生物へのダメージを効率的に与えることができ、殺菌効果を向上することができる。
【0170】
この活性酸素水生成装置1では、活性酸素種やイオン種が水中に拡散することとなるので、殺菌器23で殺菌されずに細胞膜の損傷を受け衰弱して活性酸素水生成装置1に到達した微生物を、活性酸素種やイオン種でさらに致命的なダメージを与えて殺菌することとなる。
【0171】
なお、殺菌器23は、活性酸素水生成装置1に連結管26を介して配設しているが、これに限定されるものではなく、活性酸素水生成装置1内に配設した光触媒体20を励起するための光源(たとえば、350〜370nmの波長の紫外線を発生する紫外線ランプ9)と共に、245〜265nmの波長の紫外線を発生する殺菌灯24を活性酸素水生成装置1内部に設置するようにして、活性酸素水生成装置1と殺菌器23とを一体的に構成しても良く、また、光触媒体20を励起可能な光と、殺菌可能な光とを同時に放射する光源を活性酸素水生成装置1内に設置するようにしても良い。
【実施例3】
【0172】
次に、本発明に係る活性酸素水生成装置を用いて、駆虫用活性酸素水生成システムを構築した例について説明する。この駆虫用活性酸素水生成システムは、魚等に寄生する寄生虫に対して優れた駆虫能力を発揮するものである。以下、駆虫用活性酸素水生成システムの構成例及び同駆虫用活性酸素水生成システムで生成した活性酸素水の駆虫効果について検証した結果を示す。
【0173】
〔駆虫用活性酸素水生成システムの構成例〕
駆虫用活性酸素水生成システム及び駆虫方法について、図6〜9を用いて使用状態を示しながら説明する。
【0174】
図6は水槽133に活性酸素水生成装置101を配設し、水槽133中の海水142を活性酸素水生成装置101に循環させて、海水142中に活性酸素種やイオン種を含ませるように構成した状態を示している。
【0175】
ここでは、給水口102の先端部分に給水ポンプ132を設置しており、この給水ポンプ132を稼働させ流量6.2L/minで活性酸素水生成装置101に向けて給水することにより、給水管103を通じて、酸素を溶存させた海水を活性酸素水生成装置101に供給することができる。
【0176】
そして、活性酸素水生成装置101に供給された海水には、紫外線ランプ109から照射された紫外線により光触媒体120が励起し、併せて、超音波振動子122から超音波が発せられるため、光触媒体120から活性酸素種が多量に遊離して、海水に活性酸素種やイオン種が効率良く溶存することとなる。
【0177】
この多量のイオン種が含まれる海水、すなわち活性酸素水となった海水は、排水管110を通り、排水口111より排出されて、再び水槽133に流入する。
【0178】
水槽133には、あらかじめ魚145を収納しているので、活性酸素水生成装置101から排出されたイオン種を含む水は、魚145に付着している微生物や寄生虫などに影響を及ぼし、魚145から寄生虫を駆虫することができる。なお、ここで魚145は、成魚のみならず、稚魚や幼魚をも含む概念を示すものである。
【0179】
なお、図6では、1つの水槽133に1台の活性酸素水生成装置101を配設しているが、図7に示すように、駆虫する魚145の数や、水槽133に収納した海水の量や、所望する活性酸素水のイオン種濃度に合わせて、活性酸素水生成装置101を配設する台数を増やすようにしても良い。
【0180】
また、図7では、水槽133に活性酸素水生成装置101を並列して配設しているが、図8に示すように、活性酸素水生成装置101を連結管126等を用いて直列に接続して配設するようにしても良い。この場合、2台の活性酸素水生成装置101を経て排水口111から排出される活性酸素水には、1台の活性酸素水生成装置101から排出される活性酸素水と比較してイオン種がより大量に含まれることとなるため、高濃度のイオン種を含有する水を所望する場合には、好適に用いることができる。
【0181】
〔駆虫用活性酸素水生成システムの使用状態例1〕
次に、活性酸素水生成装置101と殺菌器123とを経て生成した活性酸素水を魚に接触させることで、魚に付着している寄生虫や微生物を除去した例を図9に示す。
【0182】
水槽133に10リットルの海水142を収納し、この水槽133の上部に殺菌器123と活性酸素水生成装置101とを配設して駆虫用活性酸素水生成システムを構築した。
【0183】
ここでは、給水口102の先端部分に給水ポンプ132を設置しており、この給水ポンプ132を稼働させ流量6.2L/minで活性酸素水生成装置101に向けて給水することにより、給水管103を通じて、酸素を溶存させた海水を活性酸素水生成装置101に供給することができる。
【0184】
活性酸素水生成装置101を1時間に亘って事前に稼働させて、海水温度28℃、溶存酸素濃度(DO)を6.8mg/Lに調整した。この海水温度と溶存酸素濃度は、その後も一定に保つようにしながら試験を行った。循環する活性酸素水の過酸化水素水濃度は常に3ppm以下であった。
【0185】
そして、表1に示すように、試験の対象となる魚145を泳がせた。
【0186】
【表1】

表1に示すように、水槽にはカンパチ4匹とトラフグ4匹を収納した。また、これらの魚145のエラを事前に調査した結果、魚1匹あたりの平均エラムシ数は、カンパチ20匹とトラフグ30匹であった。
【0187】
そして、両水槽の活性酸素水生成装置101を2時間に亘り稼働・循環させ後に、同装置を停止し、カンパチ2匹とトラフグ2匹を取り出し、魚145のエラムシの状態を観察した。残るカンパチ2匹とトラフグ2匹は海の生け簀内へ戻し、20時間後に魚145のエラムシの状態を確認した。その結果を表2に示す。
【0188】
【表2】

表2に示すように、2時間に亘って活性酸素水生成装置101を稼働させた、カンパチ2匹とトラフグ2匹の魚145に付着していたエラムシの数は、終了直後は平均でカンパチ17匹とトラフグ15匹であり、寄生したエラムシの数は約半数になり、しかも寄生したエラムシの活動性は低下していた。
【0189】
動作後20時間経過した、残りのカンパチ2匹とトラフグ2匹の魚45に付着していたエラムシの数は、平均でカンパチ0匹とトラフグ2.5匹と著明に減少していた。
【0190】
これらの結果から、活性酸素水生成装置101で生成した活性酸素水は、多くのイオン種が含まれているため、まず、その海水を浄化し、ついでその浄化された水が、魚145に寄生したエラムシに対して極めて効果的に働いて、エラムシを駆虫したものと考えられた。
【0191】
〔駆虫用活性酸素水生成システムの使用状態例2〕
次に、活性酸素水生成装置101と殺菌器123とを経て生成した活性酸素水を魚に接触させることで、魚に付着している寄生虫や微生物を除去した例を、図9を用いて説明する。
【0192】
水槽133に30リットルの海水142を収納し、この水槽133の上部に殺菌器123と活性酸素水生成装置101とを配設して駆虫用活性酸素水生成システムを構成した。
【0193】
このような活性酸素水生成装置101を備える水槽133を2台用意して、それぞれの活性酸素水生成装置101を1時間に亘って稼働させて、海水温度28℃、溶存酸素濃度(DO)を6.8mg/Lに調整した。この海水温度と溶存酸素濃度は、一定に保つようにしながら試験を行った。また、駆虫用活性酸素水生成システムの使用状態例1と同様に、循環する活性酸素水の過酸化水素水濃度は常に3ppm以下であった。
【0194】
そして、表3に示すように、試験の対象となる魚145を泳がせた。なお、ここでは2台ある水槽133のうち、一方の水槽133を水槽Aとし、他方の水槽133を水槽Bとして説明する。
【0195】
【表3】

表3に示すように、水槽Aにはカンパチ6匹とトラフグ1匹を収納し、水槽Bには、カンパチ5匹を収納した。また、これらの魚145のエラを事前に調査した結果、魚1匹あたりの平均エラムシ数は、両水槽とも20匹であった。
【0196】
そして、両水槽の活性酸素水生成装置101を稼働させて試験を開始した。ここで、水槽Aは4時間、水槽Bは6時間に亘り活性酸素水生成装置101を稼働させた後に、同装置を停止し、20時間後の魚145のエラムシの状態を確認した。その結果を表4に示す。
【0197】
【表4】

表4に示すように、4時間に亘って活性酸素水生成装置101を稼働させ、20時間経過した水槽A内の魚145に付着していたエラムシの数は、平均で3匹であった。
【0198】
また、6時間に亘って活性酸素水生成装置101を稼働させ、20時間経過した水槽B内の魚145に付着していたエラムシの数は、平均で1匹であった。
【0199】
これらの結果から、活性酸素水生成装置101で生成した活性酸素水は、魚145に寄生したエラムシに対して極めて効果的に働いて、エラムシを駆虫することが可能であることを示唆している。
【0200】
さらに、本結果において特に注目すべき点は、エラムシの寄生により衰弱した魚145であるにも関わらず、死魚が1匹も出ていない点である。このことは、活性酸素水生成装置101で生成した活性酸素水が、エラムシに対しては強力に駆虫効果を示しながらも、魚145に対しては、非常に穏やかに作用し、殆ど悪影響を及ぼさないことを示唆しているものと考えられた。
【0201】
しかも、寄生虫に対する活性酸素水の駆虫効果はイオン種によるものなので、寄生虫や微生物が耐性を獲得するおそれがなく、長期に亘って使用することができる。
【0202】
また、寄生虫や微生物の駆除に使用した活性酸素水は、自然界に放流しても速やかに水や酸素などの物質に変化するため、環境に悪影響を与えるおそれがない。
【0203】
このように、魚145が生息している水中に活性酸素水を混入させて処理を行っても良いが、あらかじめ貯留した活性酸素水に、魚145を所定時間浸漬するようにしても同様の効果を得ることができる。
【0204】
また、強力なイオン種の侵襲を干渉するために、回路内へ徐放型炭酸カルシウムや焼成した新世紀隆起珊瑚等を入れることもできる。
【0205】
併せて、水中に浮遊する夾雑物や、魚体から脱落したエラムシなどの寄生虫が、光触媒体120に付着して、イオン種の生成効率が低下するのを防ぐために、給水ポンプ132から活性酸素水生成装置101へ供給される水の流路中にフィルタを設けるようにしても良い。
【0206】
本実施例では、魚145が養殖魚である場合について述べてきたが、この魚145が観賞魚である場合においても、応用できることはいうまでもない。特に、一般家庭などで飼育している観賞魚などに活性酸素水生成装置101を応用する場合には、定期的に水槽133内に活性酸素種を含む水を供給したり、過剰な活性酸素水の供給を防止したりするために、紫外線ランプ109の通電を制御するタイマーやリミッターを備えるようにしても良い。このような構成とすることで、常時観賞魚の健康状態を良好に保つことができる。
【0207】
しかも、紫外線ランプ109への通電を遮断している場合には、酸素を豊富に含んだ水が排水口111から水槽133内に供給されることとなるため、魚145の生育環境を良好に保つことができる。
【0208】
〔駆虫用活性酸素水生成システムの使用状態例3〕
次に、活性酸素水生成装置101を2台直列に設置して生成した活性酸素水を魚に接触させることで、魚に付着している寄生虫や微生物を除去した例を、図8を用いて説明する。
【0209】
水槽133に50リットルの海水142を収納し、この水槽133の上部に活性酸素水生成装置101を2台直列に配設して駆虫用活性酸素水生成システムを構成した。
【0210】
ここでは、給水口102の先端部分に給水ポンプ132を設置しており、この給水ポンプ132を稼働させ流量6.2L/minで活性酸素水生成装置101に向けて給水することにより、給水管103を通じて、酸素を溶存させた海水を活性酸素水生成装置101に供給することができる。
【0211】
この活性酸素水生成装置101を40分間に亘って事前に稼働させて、海水温度25℃、溶存酸素濃度(DO)を7.0mg/Lに調整した。この海水温度と溶存酸素濃度は、一定に保つようにしながら試験を行った。
【0212】
水槽には水槽に入れる前に鰓にエラムシの寄生を確認したヒラマサ5匹を収納した。この活性酸素水生成装置101を30分間に亘って稼働させて後、これらの魚のエラに付着したエラムシ数は、平均3匹であった。しかしそのエラムシは全て活動を停止し、白体化しており、その活性はなく高度の細胞障害により死滅したものと判断した。
【0213】
そこで、鰓に寄生したエラムシ単体を、実態顕微鏡で観察中に水槽よりスポイトで取り出した活性酸素水を滴下して、まったく関連のない場所で生じた反応を観察した。
【0214】
鰓に寄生したエラムシは活性酸素水を滴下された直後よりその付着面の白体化を生じ、30秒後には付着面全体が白体化する。そのまま白体化は全体に及び約15分間にわたり収縮運動を繰り返し、痙攣様に体を震えさせながら動いた後、収縮し丸くなったままその活動を停止した。この変化は同様に滴下を行ったエラムシ5匹で観察され、活性酸素水は約15分でエラムシを駆虫する事が可能であると判断した。
【0215】
エラムシの中には活性酸素水の滴下を受けたとたん鰓より離れ、その場より逃げようとするものもあり、高度の細胞障害が、高い過酸化水素濃度を必要とせず発現する事が可能であった。
【実施例4】
【0216】
次に、活性酸素水生成装置1を設置して生成した活性酸素水の活性酸素濃度を測定した例を、図1を用いて説明する。
【0217】
水槽33に2リットルの水31を収納し、この水槽33の上部に活性酸素水生成装置1を配設して活性酸素水生成システムを構成した。
【0218】
ここでは、給水口の先端部分に給水ポンプ32を設置しており、この給水ポンプ32を稼働させ流量6.2L/minで活性酸素水生成装置1に向けて給水した。
【0219】
水槽中に入れる水の種別は、水道水(残留塩素濃度0.8mg/L)、オートクレーヴ処理を行なった水道水(残留塩素濃度0mg/L)、井水、人工海水として、活性酸素種の測定実験を行った。回路前付加を行なう酸素流量は250ml/分、溶存酸素濃度(DO)を15.0mg/L とし、測定前循環時間は1時間で行なった。ガス検知管(気相)による検出とインディゴカーミン(液相)による比色法でオゾン発生の有無を確認したが、全く検出されず、オゾンによる作用ではないことを確認した。
【0220】
スーパーオキシドに特異的で一重項酸素にもある程度の反応性を示す化学発光試薬であるウミホタル由来ルシフェリンアナログ(以下CLAと略す、)を用いた活性酸素種生成の検証試験の結果を図10に示す。
【0221】
貯水槽より500μlをマイクロピペットで採取し、あらかじめCLAを添加した25mM燐酸カリウム緩衝液(pH7.0)500μlに加え(1:1混合、計1ml)、CLA依存性の化学発光をルミノメータで検出し、ペンレコーダーで記録した。その結果、図10に示すように、機能水の添加直後に爆発的なスーパーオキシド生成を反映したCLA発光が確認できた。活性酸素水生成装置から取り出し、ルミノメータ内に放置したにもかかわらず、長時間のCLA発光が確認できた。反応開始直後のピーク(最高値)の半分の量に相当する値となる時間を半減期と規定するに、約30分を要し、その後の減少スピードは極めて緩徐であり、45分後においても、ピーク値の40%を維持した。一般に、スーパーオキシドは非常に反応性に富み不安定なため、瞬時に消失するため、スーパーオキシド自身が長寿命化しているのではなくその生成が継続していることが示唆された。
【0222】
一般にCLAはスーパーオキシドの特異的検出試薬として用いられるが、一重項酸素にもある程度の反応性を示すことが知られる。そこで、観察された化学発光がスーパーオキシドの生成を反映したものであることを検証した。
【0223】
図11(a)は、スーパーオキシド除去剤が機能水のCLA発光に与える効果を示した図である。この図11(a)に示すように、スーパーオキシドの除去剤であるタイロンを添加することで、機能水によるCLA発光が阻害された。
【0224】
このことから観察されたCLA発光がスーパーオキシドの生成を反映したものであることが確認できた。
【0225】
また同様に一重項酸素の除去剤であるDABCOを処理した場合には、CLA発光の減少は認められなかった(図は示していない)。このことからもここで観察されたCLA発光が一重項酸素ではなくスーパーオキシドの生成を反映したものであることが裏付けられた。
【0226】
測定条件を厳密に規定する目的で緩衝剤を添加してpHを調整していたが、次にpHを調整せず、緩衝液を含まない水道水500μlにCLAを溶解し、そこに等量の機能水を添加する方法でスーパーオキシドの生成を解析した。
【0227】
図11(b)は、緩衝液を用いない場合の機能水におけるCLA発光の消長を示す図である。本試験の結果、図11(b)に示すように、緩衝液を含まない水道水中でも長寿命のCLA発光が観察された。但し、緩衝液でpHを7に調整した場合と比較すると半減期が12分程度に短縮された。
【0228】
このことは、機能水中の活性化学種の寿命あるいはスーパーオキシド生成反応がpHに大きく依存することを示している。
【0229】
つぎに過酸化水素の検出も化学発光基質としてルミノールを用い、触媒としてセイヨウワサビペルオキシダーゼを利用しおこなった。この手法により、nMレベルという極めて低濃度の過酸化水素の検出が機能水中に存在することが明らかになった。しかしその生成量は測定ごとに多少ではあるが変動し、活性酸素水の反応過程に過酸化水素水が関与している事が示唆された。
【0230】
これらの測定をオートクレーヴ処理を行なった水道水(残留塩素濃度0mg/L)、井水、人工海水においても行ったが、塩素が含まれていないオートクレーヴ処理を行なった水道水においては、スーパーオキサイドの検出は極少量であり半減期も短く、また塩基類の大量に含まれた海水においてはその産生量および半減期も極めて増大した。
【0231】
これにより、活性酸素水の生成には、イオン類を含有する水溶液である事が重要であり、水溶液は、酸素、塩素、アンモニアなどのガス類および/または塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸カリウム、塩化カリウム、炭酸カルシウム、臭化マグネシウム、亜塩素酸塩、次亜塩素酸塩などの塩類の少なくともいずれか一つを含有することが必要と判断できる。
【0232】
しかし、人体に無害とされ飲用に利用される水道水の水質基準値1.00mg/L未満程度の塩素濃度で、これらの爆発的な反応が生じることより、極微量のイオンを含んだ水溶液でその活性がえられることが判明した。
【0233】
またESR法によりヒドロキシラジカルおよびアスコルビン酸ラジカルの検出を行い、上記CLA法同様に、極微量ではあるが塩素を含んだ水道水および海水で大量のヒドロキシラジカルおよびアスコルビン酸ラジカルの検出が可能であった。
【実施例5】
【0234】
次に、活性酸素水生成装置1を設置して生成した活性酸素水の原虫類に対する影響を観察した例を、図1を用いて説明する。
【0235】
水槽33に2リットルの水31を収納し、この水槽33の上部に活性酸素水生成装置1を配設して活性酸素水生成システムを構成した。
【0236】
ここでは、給水口の先端部分に給水ポンプ32を設置しており、この給水ポンプ32を稼働させ流量6.2L/minで活性酸素水生成装置1に向けて給水した。
【0237】
水槽中に入れる水の種別は、水道水(残留塩素濃度0.8mg/L)で行った。回路前付加を行なう酸素流量は250ml/分、溶存酸素濃度(DO)を15.0mg/L とし、測定前循環時間は1時間で行なった。ガス検知管(気相)による検出とインディゴカーミン(液相)による比色法でオゾン発生の有無を確認したが、実施例4と同様に全く検出されず、オゾンによる作用ではないことを確認した。
【0238】
事前に1時間循環させた水槽内より1mlの活性酸素水を採取し、広く生体毒性評価試験などに利用される原生生物であるミドリゾウリムシ(学名:Paramecium bursaria)の細胞の育成基質上(200mlシャーレ)に少量添加したところ、概日性周期により運動を行わない時間帯にある細胞が刺激を受けて盛んに運動をするようになった。このとき無処理区では、ほぼ100%の細胞が基質上(シャーレ底面)で運動を停止する停滞期にあったのに対し、活性酸素水添加処理区では、ほぼ全ての細胞が遊走運動を開始した。ここでは、活性酸素水生成装置内を循環している水ではなく、装置から取り出した水を添加したにもかかわらず生物に対する活性が確認できたことから、活性酸素水中に含まれる活性成分は、水道水と酸素のみに由来する長寿命化学種であることが示された。
【実施例6】
【0239】
本発明に係る活性酸素水の効用は反応局所ばかりでなく、時間・空間ともに移動させた離れた場所でもその効果が発現する事が確認されている。そのため、前述のごとく、養殖魚に寄生した寄生虫の駆虫や後述のバラスト水処理などの際には、大量の水の処理が必要となる。
【0240】
その際に重要な因子としてなる光触媒体と光源との位置関係による、水流抵抗である。前述の活性酸素水生成装置1では水流の中央に光源を配置し、それを弊堯する形態で光触媒体を設置し、光触媒体へ超音波振動が伝播するように繊維直下に超音波振動子を配置した。
【0241】
大量の水の処理の際には光触媒体へ照射される紫外線量も単位面積あたりに大量に必要となる。
【0242】
そこで、図12に示すような活性酸素水生成ユニット70を用いることにより、大量の活性酸素水を生成することができる。
【0243】
すなわち、この活性酸素水生成ユニット70は、光触媒フィルタ71を備える通水部72と、同通水部72に対して紫外線を照射すべくサンドイッチ状に配設した光照射部73とを有している。
【0244】
光照射部73には、紫外線源として、殺菌灯74やブラックライト75が備えられており、通水部72との間に水密性を有するように配設された石英ガラス板76を介して、通水部72の光触媒フィルタ71に紫外線を照射可能に形成している。
【0245】
また、通水部72には、図13〜図15に示すように、蛇腹状に形成した光触媒フィルタ71と、超音波振動子77とを備えており、紫外線で励起した光触媒フィルタ71と、超音波振動子77より発せられる超音波との作用により、光触媒フィルタ71に接触している水を活性酸素水に変えるようにしている。
【0246】
ここで、超音波振動子77は、高周波霧化用超音波振動子を好適に用いることができ、発信する周波数として、1.6MHzや、2.4MHzのものを使用することができる。
【0247】
また、同通水部72には、側部下方に設けた通水口78と、側部上方で前記通水口78と対向する面に設けた出水口79とを配設しており、通水口78より供給された水は、光触媒フィルタ71に接触しながら活性酸素水に変化し、出水口79より吐出されることとなる。
【0248】
なお、図12〜図15に示した活性酸素水生成ユニットは、活性酸素水を大量に効率よく生成するための装置の一例であり、たとえば、光触媒体を流路へ配置し(図のごとく蛇腹状に配置しても良いが、多層状もしくは塊状に反応槽内に配置しても良い)、流路を挟み込むように、板状の石英ガラスで仕切り、流路外より内部に配置した光触媒体へ直管の紫外線ランプ(ブラックライトおよび殺菌灯)を照射するようにしても良い。
【0249】
このような構成とすることにより、紫外線ランプのメンテナンス性の向上及び流路の水流抵抗を低下させる事が可能となる。
【0250】
この際も、反応槽への水の流入口は反応槽底部に設け、排出口は反応槽上部もしくは天井部分へ設置する事が望まれる。
【実施例7】
【0251】
本発明に係る活性酸素水生成装置3で生成した活性酸素を大量に含んだ水を霧化し、病室等の殺菌に使用した例を示す。活性酸素水生成槽内で発生した活性酸素水をそのまま霧化させることにより、霧化した水に含まれた大量の活性酸素を、通常の方法では殺菌できない排気ダクトなどの殺菌にも使用する事が可能である。病院内の感染の拡散に、ダクト内の細菌巣が関与する事が指摘されているが、同部の殺菌にきわめて強力な殺菌力を有している活性酸素水を霧化した状態で到達させ、除菌を行なう。この際、反応槽へのカルキ剤や酸素発生剤などを使用することにより強力な殺菌力を付与させる事が可能である。
【0252】
また先述のごとく、活性半減期が長く、酸化力は強力であるため、使用に際しては眼球粘膜や上気道の保護が必要とされる。
【実施例8】
【0253】
本発明に係る活性酸素水生成装置は、実施例2で言及したように、微生物に対して優れた除菌・殺菌能力を発揮する。しかも実施例3の駆虫用活性酸素水生成システムに示された如く、活性酸素水の効用は反応局所ばかりでなく、時間・空間ともに移動させた離れた場所でもその効果が発現する事が確認されている。このような優れた除菌・殺菌・駆虫能力を生活用品等に応用した、活性酸素水生成装置の応用例を以下に示す。
【0254】
(i)循環水における殺菌装置に使用した例
まず、温水を循環させる浴槽や、冷却機器の室外機の循環水の微生物の処理を行った例を示す。この活性酸素水生成装置1を循環水処理回路中に配設することで、近年問題となっているレジオネラ菌の殺菌も行うことができる。
【0255】
すなわち、レジオネラ菌は、水中や湿った土壌中など環境中に存在し、至適温度が15〜43℃のグラム陰性桿菌であり、温水を循環させる浴槽や、エアコンディショナー、冷凍庫・冷蔵庫等の冷却機器に付設する室外機などの水中に生息する原虫類(アメーバ)の細胞内で大量に増殖する。
【0256】
しかもレジオネラ菌は、原虫類(アメーバ)の細胞内で大量に増殖し、原虫類が世代継代の後、死滅する際に体内から放出された生きた菌体を大量に含んだ水蒸気を直接吸入する事によりヒトに感染することが知られている。すなわち、レジオネラ菌の殺菌の対策としては、レジオネラ菌自体の殺菌のみならず、原虫類の細胞膜を破壊し、その中で増殖せんとしているレジオネラ菌を殺菌する双方を実現するプロセスが重要となる。単にレジオネラ菌の殺菌力のみでは不足するのである。
【0257】
この際、通常の殺菌だけでなく、細菌の寄生した原虫類の駆除が必要となり、より強力な酸化力が必要となる。
【0258】
しかしながら、本実施形態で示す活性酸素水生成装置で生成した活性酸素水によれば、実施例3で示したように、魚に寄生した寄生虫の駆虫も可能であり、寄生虫よりも弱い原虫類は駆除可能である。
【0259】
すなわち原虫類を殺虫し、更に、原虫類の中に生息するレジオネラ菌も殺菌することができるため、レジオネラ菌による感染症を防止することができる。
【0260】
この際、より幅広い殺菌効果と強い殺菌力を保持させるために、殺菌灯は併用する事が推奨される。
【0261】
(ii)船舶のバラスト水を処理した例
次に、船舶の重心や浮力を調整するバラスト水に含まれる有害有機物質や微生物の処理を行った例を示す。たとえば、本発明に係る活性酸素水生成装置を船舶のバラストタンク内や、バラスト水の汲排水口に配設することで、別途薬剤等を添加することなく、安全で効果的バラスト水を処理することができる。
【0262】
船舶は、海水をバラストタンク内に取り込んで重心や浮力の調整を行うが、多くの場合、バラストタンクに取り込まれた水(バラスト水)は、取り込んだ場所とは別の海洋上で排出することとなる。
【0263】
たとえば、外洋を航行する大型船舶では、積み荷が少ない状態では、バラストタンクにバラスト水を取り込んで船体を重くして船体の安定性を確保し、外国などの目的地に到着して積み荷を積載する際に、バラスト水を排水して船体を軽くし、船体の重量を調整している。
【0264】
しかしながら、海水中には、多くの微生物や有機物が存在しており、これらがバラスト水として、他の遠隔地で排水されることにより、排水場所の生態系や環境を破壊するおそれが懸念されている。
【0265】
特に、このようにして運ばれてきた海洋生物などは、排水場所の食物連鎖を破壊して異常増殖することなどもあり、養殖業などに多大なダメージを与える場合も考えられ、近年海洋性プランクトンおよび細菌を含む、バラスト水の国際規制が制定され、薬剤を使用しない処理方法による、海洋性プランクトンおよび細菌類の処理装置の搭載が必須となった。
【0266】
そこで、船舶のバラストタンクに、本発明に係る活性酸素水生成装置を配設することにより、汲水時に活性酸素水生成装置内を全量通過させる方法ばかりでなく、汲水した海水の一部を活性酸素水生成装置内へ取り込み、それを汲水した海水へ添加し、貯水槽内でバラスト水に含まれる微生物などを殺滅させる事ができ、しかも、航行中に活性酸素水生成装置を駆動させ、バラスト水を循環させることにより、汲水時に処理が不充分であった際の処理を継続して行なう事が可能である。またバラスト水に含まれる有害な有機物質を分解することも可能である。
【0267】
また、本来バラスト水貯水タンクは気密性に優れ、耐圧性も高いため、排水前にタンク内を陰圧にし、気相中へ余剰の活性酸素を誘導し、脱気することにより、その反応を停止させる事ができる。
【0268】
反応効率を増加させるためには、エンジンより排出されるNOガスを利用し、活性酸素水をより強力な酸化力を有し、バラスト水処理能力を高めることも可能である。
【0269】
しかも、活性酸素水生成装置にバラスト水を循環させて活性酸素水とした場合には、貝類や海草類などがバラストタンク内に付着することを防止できる。
【0270】
また、本例では、バラスト水の処理手段として、船舶のバラストタンクや排水口に設置する例を示しているが、特にこれに限定されるものではなく、船舶が停泊する港などに設置して、バラスト水をポンプなどにより回収し、活性酸素水生成装置で処理した後に海洋へ排水するようにしても良い。
【0271】
このように、活性酸素水生成装置でバラスト水を処理することにより、生態系の破壊や有害有機物質による環境汚染を防止することができ、しかも、薬剤などによるバラスト水の処理に比して、環境への悪影響を抑えながら、処理後のバラスト水を海洋へ排水することができる。
【0272】
(iii)入れ歯の洗浄例
次に、口腔内に装着する入れ歯34を活性酸素水反応水で除菌した例について図16を用いて説明する。所定の容量を有する水槽33に、本発明に係る活性酸素水生成装置1を配設し、水槽33内に入れ歯34を浸漬することで、別途薬剤等を添加することなく、優れた洗浄効果及び除菌・殺菌効果を得ることができる。
【0273】
すなわち、口腔内に装着する入れ歯34は、食べ物の滓やたばこのヤニ等が沈着し易く頻繁に洗浄する必要がある。しかしながら、沈着した汚れは落ちにくく、ブラシなどで力を入れて長時間磨くなどして多大な労力を費やしていた。
【0274】
また、入れ歯34は口腔内に装着するため、人体に有害な洗浄剤や殺菌剤を使用することができず、専ら市販の殺菌洗浄剤を用いて処理を行っていたが、沈着した汚れを落とすには効率的な手段とは言い難いものであった。
【0275】
そこで、本発明に係る活性酸素水生成装置を、たとえば図16に示すようにして、入れ歯洗浄装置35を一体的に構成し、水槽33の水31中に浸漬して活性酸素水生成装置1を稼働させることにより、入れ歯34を効果的に洗浄することができる。なお、図16では、水中の溶存酸素濃度を高める手段として、酸素発生剤63を水中に浸漬しており、この酸素発生剤63が水に触れて気泡を発生させることにより、この気泡中に含まれる酸素が水に溶け込むようにしている。
【0276】
そして、所定の容量を有する水槽33を2分割し、1方の水槽に本発明に係る活性酸素水生成装置1を配設、他方の水槽33内(洗浄槽)に入れ歯を浸漬することで、別途薬剤等を添加することなく、優れた洗浄効果及び除菌・殺菌効果を得ることができる。2つの水槽間は水中ファン61を設けて水の対流が可能とする事により、活性酸素水が洗浄槽内の入れ歯34の洗浄を行うことが可能である。
【0277】
特に、活性酸素種や過酸化水素を豊富に含む活性酸素を含有する水が入れ歯34に接触することで、入れ歯34に沈着している食べ物の滓やたばこのヤニが強力に酸化され、入れ歯34から汚れを除去することが容易となる。
【0278】
しかも、活性酸素水は強力な除菌・殺菌効果を有しているため、入れ歯34に付着している口腔内の常在菌や、入れ歯34に付着した食べ物の滓に繁殖する細菌や真菌類を除菌・殺菌し、入れ歯34を衛生的に保つことができる。
【0279】
また水槽33を2分割としているため、光触媒反応槽にある光触媒体を損傷することなく、洗浄槽内に低周波超音波振動子22を設置する事が可能となり、超音波による強力な振動力を利用して汚れを浮かすことが可能となり、活性酸素種による酸化分解反応を促進させる事が可能である。
【0280】
さらに、活性酸素水に含まれる活性酸素種や過酸化水素は、有機物に触れて反応することにより速やかに水(H2O)や酸素(O2)等の無害な物質に変換されるため、人体に悪影響を与えることなく、安心して入れ歯34を装着することが可能である。
【0281】
この入れ歯洗浄システムを用いる事により、医療器具62の洗浄を行う事も可能となる。
【0282】
(iv)食器の洗浄に使用した例
次に、活性酸素水を食器に接触させて、殺菌洗浄を行った例について述べる。たとえば、本発明に係る活性酸素水生成装置1を食器洗い機の給水ホースの間に配設し、食器洗い機と一体的に構成して活性酸素水生成装置1で生成した活性酸素水が食器に噴射されるようにすることで、別途薬剤等を添加することなく、安全で効果的、かつ、衛生的に食器を洗浄することができる。
【0283】
すなわち、食事の際に使用した食器(皿や箸、ナイフやフォーク)は、食品が付着しており、特に、魚や肉に由来する油分や、穀類に由来するデンプン質の汚れが多いとされている。このような汚れは、微生物の繁殖の場となりやすく、また、次にこれらの食器を使用する際に、食品と触れることとなるため、非衛生的である。
【0284】
したがって、水道水と共に食器用洗剤などを利用して、食事後の食器を洗浄することとなるが、食器洗いは家事の中でも重労働のひとつである。
【0285】
また、水道水を食器に噴射して洗浄する食器洗い機などを利用することもできるが、油汚れは食器用洗剤などで効果的に落とすことができるものの、デンプン質の汚れは落としにくいのが現状であった。
【0286】
そこで、食器洗い機から噴射される水を、本発明に係る活性酸素水生成装置1で生成した活性酸素水とすることにより、油汚れは勿論のこと、デンプン汚れなどでも、光触媒反応水が有する強力な酸化力により酸化して効果的に落とすことができ、しかも、食器を殺菌して衛生的な状態とすることができる。
【0287】
しかも、食事の際に発酵食品、例えば納豆のように芽胞性の微生物を利用した発酵食品を食した場合であっても、先に示した活性酸素水の殺菌効果の検証結果からもわかるように、十分に除菌することができる。
【0288】
また、本例では、活性酸素水を食器に接触させる手段として、食器洗い機にて活性酸素水を噴射する例を示しているが、特にこれに限定されるものではなく、適当量の容器に活性酸素水を貯水して、この貯水した光触媒反応水中に食器を浸漬するようにしても良い。
【0289】
このように、活性酸素水で食器を洗浄することにより、食器に活性酸素水が付着したまま使用した場合であっても人体に安全で、しかも、食器の洗浄時には、十分に食器を衛生的な状態とすることができる。
【0290】
(v)食品の洗浄に使用した例
次に、活性酸素水を食品に接触させて、殺菌洗浄や加工食品に付着した原虫類の除去を行った例について述べる。たとえば、本発明に係る活性酸素水生成装置1を食品加工用調理台などに配設し、野菜や果実の洗浄や魚介類の洗浄に利用することで、別途薬剤等を添加することなく、安全で衛生的な野菜や果実や鮮魚加工製品を得ることができる。
【0291】
すなわち、野菜や果実は主に屋外で栽培されて収穫されるので、汚れや微生物や昆虫などが付着している場合がある。たとえば、キャベツなどの葉ものの野菜は、地面から比較的低い位置で栽培されるので泥などが付着しやすく、また、蛾や蝶などの卵が産み付けられ、幼虫が繁殖する場でもある。
【0292】
したがって、野菜や果実は食用に供する前に洗浄を行うことが必要であるが、水で洗い流すだけでは、殺菌能力や洗浄能力に乏しく、効果的であるとは言い難い。
【0293】
また、食品用の洗剤などで野菜や果実を洗浄することも可能であるが、洗剤に含まれる界面活性剤などの成分が、洗浄後の野菜や果実に残留するおそれがあり、このような成分が口に入ることは消費者感情として避けたいものである。
【0294】
さらに鮮魚加工食品を製造する際に、魚介類の内臓に寄生したアニサキスなどの原虫寄生虫類を除去するために、検品作業を行うのは大変重要な作業である。しかし、原虫類の駆除が可能である活性酸素水生成装置で処理された活性酸素水で、これらを事前浸漬洗浄を行うことにより、駆虫を行うと冷凍による味鮮度の劣化を防ぎ、しかも安全な鮮魚加工食品を安価に提供する事が可能となる。
【0295】
そこで、本発明に係る活性酸素水生成装置1を調理台等と一体的に構成し、生成した活性酸素水を、野菜や果実の洗浄に利用することで、付着した汚れを効果的に落とすことができ、しかも、昆虫や微生物を殺滅することができる。
【0296】
しかも、野菜や果実は栽培時に農薬の噴霧を受けている場合が多いため、この活性酸素水を用いて野菜や果実を洗浄することにより、付着している農薬を活性酸素水に含まれる活性酸素種等で分解でき、人体への悪影響を低減することが可能となる。
【0297】
しかも、活性酸素水はいわゆるマイナスイオンを大量に含んでおり、葉ものの野菜などを萎れさせることなく、見た目の新鮮さを保持することができる。
【0298】
活性酸素水を野菜や果実に接触させる手段としては、適当量の容器に活性酸素水を貯水して、この貯水した活性酸素水中に浸漬するようにしても良く、また、霧状や雨滴状にして野菜や果実にかけるようにしても良い。
【0299】
このように、活性酸素水で野菜や果実を洗浄することにより、野菜や果実のみずみずしさを損なうことなく、人体に安全で、かつ、衛生的に野菜や果実の殺菌や洗浄を行うことができる。
【0300】
(vi)精密機器の洗浄に使用した例
次に、精密機器の洗浄に、本発明に係る活性酸素水生成装置1を使用した例について示す。たとえば、本発明に係る活性酸素水生成装置1を、半導体製造用のシリコンウエハー洗浄機の給水ホースの間に配設し、シリコンウエハー洗浄機と一体的に構成して、活性酸素水生成装置1で生成した活性酸素水がシリコンウエハーに触れるようにすることで、別途薬剤等を添加することなく、安全で効果的にシリコンウエハーを洗浄することができる。
【0301】
すなわち、電子機器に利用されている半導体の製造過程において、不要部分の除去に伴ってシリコンウエハー上に微細なダストが生じる場合がある。このダストは、半導体製造において不良品の原因となるので、有機溶媒やキレート剤などの有機化合物を用いて除去することとなるが、このダストの除去に用いた有機化合物などもシリコンウエハー上に付着することとなり、除去する必要がある。
【0302】
これらの有機化合物の除去には、過酸化水素水が使用されているが、取扱いに危険が伴うことと併せて、使用後の過酸化水素水を廃棄するにあたり処理を必要としている。
【0303】
そこで、過酸化水素水の代替として、本発明に係る活性酸素水生成装置で生成した活性酸素水を用いることで、シリコンウエハーに付着した有機化合物を除去することができる。
【0304】
しかも、活性酸素水は、過酸化水素水に比して人体に接触しても影響が少なく安全性が高いため、取扱いが容易であり、作業能率を向上させることができる。
【0305】
さらに、活性酸素水に含まれる活性酸素種の酸化力は高いが、極めて不安定であり、その反応時間は他の薬剤と比して短いため、連続的な半導体製造においても製造工程を時間的に妨げることなく洗浄を行うことが可能である。
【0306】
なお、本例では、洗浄対象をシリコンウエハーとしているが、これに限定されるものではなく、プリント基板や電子部品など、様々な精密機器の洗浄に利用することができる。
【0307】
(vii)トイレの貯水タンクに応用した例
次に、トイレに付設されている貯水タンクに、本発明に係る活性酸素水生成装置1を一体的に配設し、活性酸素水で便器を洗浄した例について図17を用いて説明する。このように便器を洗浄することで、別途薬剤等を添加することなく、トイレを衛生的に保つことができる。
【0308】
すなわち、トイレに設置した便器は用便を行う場であることから、非常に汚れやすい。たとえば、付着して固化した糞便や、尿が石化して沈着してしまうと、ブラシで擦るだけではなかなか落とすことができなかった。
【0309】
また、用便後の汚物を汚水管へ流し込むための水をあらかじめタンクに貯水するタイプの便器では、この貯水に界面活性剤などの市販の洗浄剤を混入する方法により、汚れの付着を防止しているが、既に付着した汚れなどにはあまり効果が見られなかった。
【0310】
そこで、本発明に係る活性酸素水生成装置1を、たとえば図11のように配設して便器洗浄装置36とし、タンク44に貯えられた水31を活性酸素水生成装置1に循環させ、貯水を活性酸素水とすることで、便器に付着した汚れを酸化させて、効果的に落とすことができる。なお、図11では、活性酸素水生成装置1の内部に収納されている光触媒体20に紫外線を照射するためのブラックライト9と、タンク44内の水31を給水口2から給水するための給水ポンプ32と、水31に酸素を混入させるための酸素供給管4は省略している。
【0311】
そして、タンク44に貯えられた活性酸素水は、ハンドル42を操作することで、水栓45が解放されて連絡管43から図示しない便器へ活性酸素水が流れ込むこととなる。
【0312】
しかも、活性酸素水は実施例2で示唆されたように強力な殺菌効果を有しているので、便器や便器の周辺部に付着している汚染菌や糞便中の菌類を確実に殺菌してトイレを清浄に保つことができる。
【0313】
併せて、活性酸素水は優れた消臭効果を有しているので、トイレ内にこもった用便後の臭気や汚水管から逆流してくる臭気を分解して消臭することができ、トイレ内の環境を衛生的かつ快適に使用することができる。
【0314】
このようにして汚物と共に便器から流された活性酸素水は、汚物や汚れなどの有機物と触れることで速やかに水や酸素となるので、環境に悪影響を与えるおそれもない。
【0315】
これらの効果は、便器で汚物を流すたびに生起されるので、常にトイレを衛生的に保つことができると共に、トイレの掃除のために費やしていた労力を飛躍的に削減することができる。
【0316】
(viii)洗濯機に使用した例
次に、活性酸素水を衣類や布地に接触させて、殺菌洗浄を行った例について述べる。たとえば、本発明に係る活性酸素水生成装置1を洗濯機などに配設し、衣類や布地の洗浄に利用することで、衛生的な状態とすることができる。
【0317】
たとえば、衣類は長時間に亘って身につけていることが多く、体から分泌された汗や油分などが多く付着している。
【0318】
したがって、衣類の着用後は洗濯を行うことが必要であるが、水で洗濯するだけでは洗浄能力に乏しく、効果的であるとは言い難い。
【0319】
また、洗濯洗剤などで洗浄することも可能であるが、洗濯洗剤に含まれる界面活性剤などの成分が、衣類に残留してアレルギーの原因のひとつになることも考えられる。
【0320】
そこで、洗濯機の洗濯槽に供給する水を、本発明に係る活性酸素水生成装置1で生成した活性酸素水とすることで、付着した汚れを効果的に落とすことができ、しかも、除菌することができるので、衣類を衛生的な状態とすることができる。
【0321】
また、テーブルを拭く布巾や掃除用の雑巾等は、その役割上汚れを拭き取ることとなるので、汚れが付着し、微生物が繁殖し易い状態になるが、本発明に係る洗濯機で洗濯することにより、衛生的な状態に保つことができると共に、汚れや微生物などを拭き広げてしまうことを防止できる。
【0322】
さらに、洗濯槽の外周は普段はよく見えないが、洗濯物との接触がないため汚れが付着しさらには雑菌の繁殖が進みやすい場所でもある。本装置を洗濯機に装着することにより、洗濯槽の外周におけるこれらの汚れ、雑菌の繁殖を防ぐことができる。
【0323】
(ix)種籾の洗浄に使用した例
次に、活性酸素水を種籾に接触させて、殺菌洗浄を行った例について述べる。たとえば、苗床に播種する前の種籾を、本発明に係る活性酸素水生成装置1で生成した活性酸素水に接触させることで、細菌やカビなどによる種苗の育成阻害を防止することができる。
【0324】
すなわち、稲作を行うにあたり、田植えをするための苗を育てる必要があるが、水と空気が存在する状態で種を発芽させるため、微生物が繁殖する場合がある。繁殖した微生物は、苗の適性な成育を阻害し、苗を腐敗させてしまうことがある。
【0325】
それゆえ、苗床に播種する種籾は、殺菌を行う必要があるが、殺菌に使用した後の薬剤が自然界に流出して、環境に悪影響を与えるおそれが懸念されている。
【0326】
また、一般の殺菌能力を有する薬剤は、植物の成育にも少なからず悪影響を及ぼすことが考えられる。
【0327】
そこで、本発明に係る活性酸素水生成装置1で生成した活性酸素水と、種籾とを接触させて、種籾に付着している微生物等を殺菌することにより、薬効が残存して植物の生育に悪影響を与えるおそれがなく、また、環境への悪影響を防止することができる。
【0328】
しかも、種籾の殺菌に別途薬剤を入手する必要がないので、稲作に要するコストを下げることができる。
【0329】
このようにして、活性酸素水生成装置1で生成した活性酸素水を、洗浄する対象物に接触させることにより、人体に安全で、かつ、衛生的な状態としながら殺菌や洗浄を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0330】
【図1】本発明に係る活性酸素水生成装置の使用形態を示した説明図である。
【図2】本発明に係る活性酸素水生成装置を示した外観図である。
【図3】本発明に係る活性酸素水生成装置の内部を示した説明図である。
【図4】本発明に係る活性酸素水生成装置の断面図である。
【図5】本実施形態に係る活性酸素水生成装置を示す説明図である。
【図6】本実施形態に係る駆虫用活性酸素水生成システムを示す説明図である。
【図7】本実施形態に係る駆虫用活性酸素水生成システムを示す説明図である。
【図8】本実施形態に係る駆虫用活性酸素水生成システムを示す説明図である。
【図9】本実施形態に係る駆虫用活性酸素水生成システムを示す説明図である。
【図10】活性酸素種生成の検証試験の結果を示す図である。
【図11】スーパーオキシド除去剤が機能水のCLA発光に与える効果を示した図及び緩衝液を用いない場合の機能水におけるCLA発光の消長を示す図である。
【図12】本実施形態に係る活性酸素水生成ユニットの外観を示す説明図である。
【図13】本実施形態に係る活性酸素水生成ユニットの通水部を示す説明図である。
【図14】本実施形態に係る活性酸素水生成ユニットの上面図である。
【図15】本実施形態に係る活性酸素水生成ユニットのX−X断面図である。
【図16】本実施形態に係る活性酸素水生成装置を用いた入れ歯洗浄システムを示す説明図である。
【図17】本実施形態に係る活性酸素水生成装置を用いた貯水タンクシステムを示す説明図である。
【図18】従来技術を示した説明図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン類を含有する水溶液に、紫外線照射された光触媒体で惹起された遊離電子および正孔(フォトン)を水と効率よく反応させことにより、活性酸素種を大量に発生させ、さらに水溶液中の溶質とを反応させることにより、前記溶質より生成したイオン種を含有する活性酸素水を生成し、優れた殺菌能および原虫類の駆虫能、有機物分解能を長時間保持作用する機能を有する活性酸素水を生成する、活性酸素水生成方法。
【請求項2】
紫外線照射によって光触媒体で生成された活性酸素種および/または装置内を通過する水溶液と反応し二次的に産生されたイオン種が、殺菌能および原虫類の駆虫能、有機物分解能を長時間保持作用する機能を有する活性酸素水を生成する、活性酸素水生成装置。
【請求項3】
前記装置内を通過する水溶液は、酸素、塩素、アンモニアなどのガス類および/または塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸カリウム、塩化カリウム、炭酸カルシウム、臭化マグネシウム、亜塩素酸塩、次亜塩素酸塩などの塩類の少なくともいずれか一つを含有することを特徴とする請求項2に記載の活性酸素水生成装置。
【請求項4】
前記光触媒体は、生成装置内を前記水溶液が通過する流路中に、前記紫外線光源の周囲に配置したことを特徴とする請求項2〜3いずれか1項に記載の活性酸素水生成装置。
【請求項5】
拡散させるための拡散手段を配設したことを特徴とする請求項2〜4いずれか1項に記載の活性酸素水生成装置。
【請求項6】
前記拡散手段は、超音波振動子による100kHz以上の超音波及び/または水中ファンによる水流であって、光触媒体及び/または水を動かすことを特徴とする請求項2〜4いずれか1項に記載の活性酸素水生成装置。
【請求項7】
前記拡散手段は、超音波振動子による500kHz以上の超音波であって、光触媒体及び/または水を動かすことを特徴とする請求項2〜4いずれか1項に記載の活性酸素水生成装置。
【請求項8】
前記光触媒体は、ガラス製繊維体またはセラミックス製繊維体または不織布であって、その表面をチタニア薄膜で被覆していることを特徴とする請求項2〜7いずれか1項に記載の活性酸素水生成装置。
【請求項9】
前記光触媒体は表面にあらかじめアルミナ被膜を形成した金属製繊維体であって、その表面をチタニア薄膜で被覆していることを特徴とする請求項2〜8いずれか1項に記載の活性酸素水生成装置。
【請求項10】
前記活性酸素水は、酸素ガス、オゾンガス、塩素ガス、一酸化窒素ガス、アンモニアガスの少なくともいずれか一つを回路内に混入させて生成することを特徴とする請求項2〜9いずれか1項に記載の活性酸素水生成装置。
【請求項11】
前記活性酸素水生成装置にて生成された活性酸素水は、化学的処理および/または物理的処理により、活性半減期の制御が可能であることを特徴とする請求項2〜10いずれか1項に記載の活性酸素水生成装置。
【請求項12】
前記活性酸素水生成装置にて生成された活性酸素水は、ウミホタル由来ルシフェリンアナログを用いたスーパーオキサイド生成の検証もしくは、ESR法によりヒドロキシラジカルもしくはアスコルビン酸ラジカルの検出を行い、活性半減期が1分間以上であることの検証が可能である活性酸素水の生成が可能であることを特徴とする請求項2〜11いずれか1項に記載の活性酸素水生成装置。
【請求項13】
前記活性酸素水生成装置にて生成された活性酸素水は、ウミホタル由来ルシフェリンアナログを用いたスーパーオキサイド生成の検証もしくはESR法によりヒドロキシラジカルもしくはアスコルビン酸ラジカルの検出を行い、活性半減期が5分間以上であることの検証が可能である活性酸素水の生成が可能であることを特徴とする請求項2〜12いずれか1項に記載の活性酸素水生成装置。
【請求項14】
前記活性酸素水生成装置にて生成された活性酸素水は、ウミホタル由来ルシフェリンアナログを用いたスーパーオキサイド生成の検証もしくはESR法によりヒドロキシラジカルもしくはアスコルビン酸ラジカルの検出を行い、活性半減期が10分間以上であることの検証が可能である活性酸素水の生成が可能であることを特徴とする請求項2〜12いずれか1項に記載の活性酸素水生成装置。
【請求項15】
前記活性酸素水生成装置にて生成された活性酸素水は、ウミホタル由来ルシフェリンアナログを用いたスーパーオキサイド生成の検証もしくはESR法によりヒドロキシラジカルもしくはアスコルビン酸ラジカルの検出を行い、活性半減期が20分間以上であることの検証が可能である活性酸素水の生成が可能であることを特徴とする請求項2〜12いずれか1項に記載の活性酸素水生成装置。
【請求項16】
前記活性酸素水生成装置は、生成された活性酸素水が、ウミホタル由来ルシフェリンアナログを用いたスーパーオキサイド生成の検証もしくはESR法によりヒドロキシラジカルもしくはアスコルビン酸ラジカルの検出を行い、活性半減期が30分間以上であることの検証が可能である活性酸素水の生成が可能であることを特徴とする請求項2〜12いずれか1項に記載の活性酸素水生成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2008−272616(P2008−272616A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−116267(P2007−116267)
【出願日】平成19年4月25日(2007.4.25)
【出願人】(504246694)有限会社K2R (6)
【Fターム(参考)】