説明

光触媒反応装置

【課題】空気が流れる際の圧力損失が小さくでき、光触媒反応の作業性の低下を防ぐことができる光触媒反応装置を提供する。
【解決手段】電源に接続された正極の高電圧端子4と負極の高電圧端子2と、高電圧端子4,2間に配置され、光触媒を担持する誘電体から成る光触媒担持体5とを備え、高電圧端子4,2への電流供給によって光触媒担持体5の表面に発生する放電光を、光触媒に接触、付着または接近した物質を光触媒反応によって分解する光触媒反応用光源とする光触媒反応装置であって、光触媒担持体5の形状は、断面円形を有する部材であり、光触媒担持体5の長手方向(X方向)が気流の流れ方向(Z方向)と直交するように配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光触媒反応装置に関し、特に光触媒担持体の部位で沿面放電または端子間放電光を発生させて、放電光を直接光源として利用して光触媒反応を高い活性のもとで効率よく進めることができる光触媒反応装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図6は、従来の光触媒反応装置を示している。この光触媒反応装置では、光触媒担持体203は厚みの大きい大型の直方体形状の多孔質焼結体である。この光触媒担持体203が、電源に接続された高電圧端子(正極)201と、高電圧端子(負極)202間に配置され、この高電圧端子201,202への電流供給をすることによって、光触媒担持体203の表面に発生する放電光を、光触媒を活性化するための光源として用いている(特許文献1を参照。)。図6の光触媒反応装置では、高電圧端子(正極)201がくし型の構造である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3504165号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上述した図6に示す光触媒反応装置の構造では、光触媒担持体203として大型の直方体形状の多孔質焼結体を用いていることと、高電圧端子(正極)201がくし型の構造であるために、以下のような問題があった。すなわち、従来の光触媒反応装置を使用すると、空気が流れる際に空気の流れが光触媒担持体203とくし型の高電圧端子(正極)201により遮られてしまうので、空気の圧力損失が大きく、光触媒反応の作業性が低下してしまう。また、従来の光触媒反応装置では、厚みの大きい大型の直方体形状の多孔質焼結体製の光触媒担持体203を用いているので、機械的強度が低く、薄型化が難しいこともある。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、その目的は、空気が流れる際の圧力損失が小さくでき、光触媒反応の作業性の低下を防ぐことができる光触媒反応装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の光触媒反応装置は、電源に接続された正極の高電圧端子と負極の高電圧端子と、前記高電圧端子間に配置され、光触媒を担持する誘電体から成る光触媒担持体とを備え、前記高電圧端子への電流供給によって前記光触媒担持体の表面に発生する放電光を、前記光触媒に接触、付着または接近した物質を光触媒反応によって分解するための光触媒反応用光源とする光触媒反応装置であって、前記光触媒担持体の形状は、断面円形を有する部材であり、前記光触媒担持体の長手方向が気流の流れ方向と直交するように配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、空気が流れる際の圧力損失が小さくでき、光触媒反応の作業性の低下を防ぐことができる光触媒反応装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の光触媒反応装置の実施形態1を示す構成図である。
【図2】図1に示す光触媒反応装置を示す斜視図である。
【図3】本発明の光触媒反応装置の実施形態2を示す斜視図である。
【図4】図4(A)は、本発明の光触媒反応装置の実施形態3を示す図であり、図4(B)は、本発明の光触媒反応装置の実施形態4を示す図である。
【図5】本発明の光触媒反応装置の実施形態5を示す斜視図である。
【図6】従来例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0010】
(実施形態1)
図1は、本発明の光触媒反応装置の実施形態1を示す構成図である。
【0011】
図1に示すように、光触媒反応装置1は、流路R内に配置されている。この流路Rは、反応用の物質を含む気相または液相の媒体M、例えば空気を流通させるために配置されている。図1では、1つの流路Rが模式的に図示され、流路R内には例えばファンモータFが配置され、ファンモータFを駆動することで、空気のような媒体Mが流路R内を流通して光触媒反応装置1を通過するようになっている。媒体Mとしては、例えば空気、窒素(N、N、Nイオンや水等の分子等である。
【0012】
図2は、図1に示す光触媒反応装置1を示す斜視図である。
【0013】
図1と図2に示すように、光触媒反応装置1は、複数の正極の高電圧端子4と、1つの負極の板状の高電圧端子2と、複数の円筒状の光触媒担持体5と、高電圧電源部6を有している。
【0014】
図2に示す正極の高電圧端子4は細長い板状の部材である。正極の高電圧端子4は、導電性を有する金属材料、例えばステンレス製であり、具体的な寸法例としては厚さDが0.1mm、高さHが2mm、そして奥行きSが162mmである。
【0015】
図2に示す負極の高電圧端子2は導電性を有する金属材料、例えばステンレス製の1枚の板状の部材であるが、図1に示す媒体M、例えば空気の通り道を作って空気が流れる際の圧力損失が小さくするために、例えばメッシュ状に多数の穴が形成されている薄い板である。
【0016】
図2に示す円筒状の光触媒担持体5は、断面円形の部材の一例である円筒状の電気誘電体、例えばアルミナ製の円筒材であり、断面外形が直径d1=4mmの円、断面内形が直径d2=3.2mmの円で、長さKが192mmである。
【0017】
各円筒状の光触媒担持体5の外側部分には、光触媒が担持されている。このように各円筒状の光触媒担持体5の外側部分に担持されている光触媒としては、微粒子状のもので、例えば酸化チタンまたは酸化亜鉛を主成分とするものが適用される。なお、反応用の物質等によっては光触媒反応促進のために、これらの光触媒とともに、白金、金、およびこれらの金属とその遷移元素との合金から選ばれる少なくとも1種類を含む化合物を光触媒担持体5の外側部分に担持させてもよい。
【0018】
図2に示す負極の高電圧端子2の一方の面2Bには、上述した複数の円筒状の光触媒担持体5が、等間隔の隙間BでY方向に沿って相互に離して、しかもX方向に平行になるように固定されている。図2に示すように、これらの円筒状の光触媒担持体5は、負極の高電圧端子2の一方の面2Bに対して、樹脂製のサポート材5Sを用いてギャップG2を設けるようにして固定されている。また、各円筒状の光触媒担持体5の直上には、正極の高電圧端子4が、樹脂製のサポート材5Pを用いて、ギャップG1を設けるようにして固定されている。正極の高電圧端子4の高さHの方向がZ方向に沿い、S方向がX方向に沿っている。これにより、複数の正極の高電圧端子4は、等間隔の隙間でY方向に沿って相互に離して、しかもX方向に平行になるように配置されている。
【0019】
なお、Z方向は例えば空気のような媒体が流れる方向であり、X方向は、正極の高電圧端子4の長手方向と円筒状の光触媒担持体5の長手方向である。X、Y、Z方向は、互いに直交している。
【0020】
図2に示すように、正極の高電圧端子4と円筒状の光触媒担持体5の間および負極の高電圧端子2と円筒状の光触媒担持体5の間には、電気絶縁用のギャップG1,G2をそれぞれ設けることで、正極の高電圧端子4から直接、沿面放電が発生しないようにしている。
【0021】
正極の高電圧端子4が各円筒状の光触媒担持体5の直上に固定されているので、媒体Mが通過する際の圧力損失を低減して、効率よく放電光が各円筒状の光触媒担持体5へと届くようにしている。
【0022】
高電圧電源部6は、各正極の高電圧端子4と1つの負極の高電圧端子2の間に、高電圧を供給するために、各正極の高電圧端子4の側端部と1つの負極の高電圧端子2の側端部側に配置されている。高電圧電源部6としては、高周波電源、パルス電源または高周波パルス電源、あるいは高圧直流電源または高圧交流電源が適用される。高圧直流電源または高圧交流電源の場合には、1kV以上、例えば10kV以上の高電圧が各正極の高電圧端子4と1つの負極の高電圧端子2の間に、供給される。
【0023】
次に、上述した光触媒反応装置1による光触媒反応のメカニズムを説明する。
【0024】
図2に示す高電圧電源部6が、例えば5kVの高電圧を発生させる。発生した高電圧は、各正極の高電圧端子4と1つの負極の高電圧端子2の間に供給される。これにより、各正極の高電圧端子4と1つの負極の高電圧端子2の間には、電界を発生させる。各正極の高電圧端子4と円筒状の光触媒担持体5の間には、放電(空気の絶縁破壊)が発生し、この円筒状の光触媒担持体5の表面に沿って沿面放電を発生して、この沿面放電に伴い放電光が発生する。
【0025】
光触媒担持体5の光触媒は、放電光に含まれる波長360〜400nmの短波長光線の照射によって励起されて活性化する。活性化された光触媒と接触、付着または接近した無機性、有機性の物質である図1の例えば空気のような媒体Mを、光触媒反応で酸化、還元する。
【0026】
本発明の実施形態1では、筒状の光触媒担持体5を用い、光触媒担持体5の直上に平行に細長い板状の正極の高電圧端子4が配置され、光触媒担持体5が電源に接続された正極の高電圧端子4と負極の高電圧端子2間に配置されている。これらの正極の高電圧端子4と負極の高電圧端子5に電流供給することで、光触媒担持体5の表面に発生する放電光を、光触媒を活性化するための光源として用いることができる。
【0027】
筒状の光触媒担持体5を用いており、しかも、光触媒担持体4の長手方向(X方向)が空気の気流の流れ方向(Z方向)と直交するように配置されているために、例えば空気が流れる際の圧力損失が小さくでき、光触媒反応の作業性の低下を防ぐことができる。
【0028】
図2に示す本発明の実施形態1の光触媒反応装置1は、図6に示す従来の厚みの大きい大型の直方体形状の多孔質焼結体である光触媒担持体203を用いる光触媒反応装置に比べて、薄型化が図れる。
【0029】
図2に示すように、各円筒状の光触媒担持体5と負極の高電圧端子2の一方の面2Bとの間にはギャップG2が設けられ、各円筒状の光触媒担持体5と正極の高電圧端子4との間にもギャップG1を設けられているので、正極の高電圧端子4から直接、沿面放電が発生しないようにすることができる。
【0030】
光触媒担持体5の直上に平行に細長い板状の正極の高電圧端子4がギャップG1を介して位置されている。これにより、正極の高電圧端子4から直接、沿面放電が発生しないようにして、光触媒担持体において沿面放電が発生させることができる。また、光触媒担持体5の直上に平行に細長い板状の正極の高電圧端子4が配置されているので、空気が通る際の圧力損失を低減し、効率よく放電光が各円筒状の光触媒担持体5に届くようにしている。
【0031】
次に、本発明の別の実施形態を説明する。以下に説明する本発明の別の実施形態の要素が、図1と図2に示す本発明の実施形態1と要素と同様である場合には、同じ符号を記してその説明を用いる。
【0032】
(実施形態2)
図3は、本発明の光触媒反応装置の実施形態2を示す斜視図である。
【0033】
図3に示す本発明の実施形態2の光触媒反応装置1Aは、複数の正極の高電圧端子4と、複数の負極の高電圧端子12と、複数の円筒状の光触媒担持体5と、高電圧電源部6を有している。高電圧電源部6は、各正極の高電圧端子4と各負極の高電圧端子12に、高電圧を供給するために、各正極の高電圧端子4の側端部と各負極の高電圧端子12の側端部側に配置されている。
【0034】
複数の負極の高電圧端子12は、断面円形の部材の一例である円筒状の部材であるが、各負極の高電圧端子12はこの円筒状の光触媒担持体5の内部空間において同心円状にしかも光触媒担持体5の内周面に密接して配置されている。これにより、負極の高電圧端子12が光触媒担持体5の内部に配置されることで、光触媒担持体5の機械的な強度を向上でき、負極の高電圧端子を別途配置する必要が無く複数の要素を一体化しているので、光触媒反応装置1Aの更なる薄型化が図れる。この円筒状の負極の高電圧端子12は、導電性を有する金属材料、例えばステンレス製の部材であり、例えば断面外形が直径3mmの円、断面内形が直径2.4mmの円で、長さKが195mmである。
【0035】
このように、円筒状の負極の高電圧端子12が円筒状の光触媒担持体5の内部空間に同心円状に設けられていることにより、図2に示す実施形態1の効果に加えてさらに次のような効果がある。すなわち、円筒状の負極の高電圧端子12と正極の高電圧端子4と円筒状の光触媒担持体5との間の電界が大きくなり、放電のエネルギーが増加するか、またはより低い電圧で同程度の放電が可能になる。
【0036】
また、図3に示す本発明の実施形態2では、図2に示す本発明の実施形態1では用いられているメッシュ状に多数の穴が開いた薄い板状の負極の高電圧端子2を別途設ける必要がないので、空気のような媒体が通過する際の圧力損失がさらに小さくなる。
【0037】
このように、本発明の実施形態2では、筒状の光触媒担持体5を用いており、光触媒担持体4の長手方向(X方向)が気流の流れ方向(Z方向)と直交するように配置され、しかも負極の高電圧端子12が円筒状の光触媒担持体5の内部空間に同心円状に設けられているために、例えば空気が流れる際の圧力損失が小さくでき、光触媒反応の作業性の低下を防ぐことができ、光触媒反応装置の更なる薄型化が図れる。
【0038】
(実施形態3)
図4(A)は、本発明の光触媒反応装置の実施形態3を示す図である。
【0039】
図3に示す光触媒反応装置1Aの構造において、円筒状の金属物体である負極の高電圧端子12を円筒状の光触媒担持体5の内部に同心円状に設ける方法としては、円筒状の負極の高電圧端子12の外周部分に対して、光触媒担持体を溶射することにより円筒状の光触媒担持体5を形成することで実現できる。
【0040】
これにより、円筒状の負極の高電圧端子12と円筒状の光触媒担持体5との間におけるギャップをなくすことができ、円筒状の負極の高電圧端子12と円筒状の光触媒担持体5との間に放電が発生しないようにすることができる。負極の高電圧端子12の外周囲に光触媒担持体5が溶射により形成されているので、光触媒担持体5の機械的な強度を向上でき、複数の要素を一体化しているので、光触媒反応装置の薄型化が図れる。
【0041】
また、光触媒担持体5を薄くすることができるので、本発明の実施形態3は、本発明の実施形態2に比較して、円筒状の負極の高電圧端子12と円筒状の光触媒担持体5との間の電界が大きくなり、放電のエネルギーが増加するか、またはより低い電圧で同程度の放電が可能である。
【0042】
(実施形態4)
図4(B)は、本発明の光触媒反応装置の実施形態4を示す図である。
【0043】
図3に示す光触媒反応装置1Aの構造において、円筒状の金属物体である負極の高電圧端子12には、切り欠き部13が軸方向に沿って形成されている。これにより、円筒状の金属物体である負極の高電圧端子12にバネ性を持たせることができ、負極の高電圧端子12の外周面は円筒状の光触媒担持体5の内面に押し付けて固定することができる。従って、円筒状の負極の高電圧端子12の外周面と円筒状の光触媒担持体5の内周面との間におけるギャップをなくすことができ、円筒状の負極の高電圧端子12と円筒状の光触媒担持体5との間に放電が発生しないようにすることができる。
【0044】
また、本発明の実施形態4の光触媒反応装置では、負極の高電圧端子12に切り欠き部13を設けるだけで済むので、本発明の実施形態3の光触媒反応装置において溶射により円筒状の光触媒担持体5を形成するのに比べて、低コストで構成できる。
【0045】
(実施形態5)
図5は、本発明の光触媒反応装置の実施形態5を示す斜視図である。
【0046】
図5に示す実施形態5の光触媒反応装置1Bは、複数の正極の高電圧端子4と、1つの負極の高電圧端子2と、複数の円柱状の光触媒担持体15と、高電圧電源部6を有している。図5に示す本発明の実施形態5の光触媒反応装置1Bが、図2に示す本発明の実施形態1の光触媒反応装置1と異なる点は、図5に示すように円筒状の光触媒担持体ではなく、円柱状(または棒状)の光触媒担持体15が用いられていることである。本発明の実施形態5の光触媒反応装置1Bの他の要素については、本発明の実施形態光触媒反応装置1の対応する要素と同じであり、同じ符号を記しており、作用効果も同じである。
【0047】
図5に示す正極の高電圧端子4は細長い板状の部材である。正極の高電圧端子4は、導電性を有する金属材料、例えばステンレス製であり、具体的な寸法例としては厚さDが0.1mm、高さHが2mm、そして奥行きSが162mmである。
【0048】
図5に示す負極の高電圧端子2は例えばステンレス製の1枚の板状の部材であるが、図1に示す媒体M、例えば空気の通り道を作るためにメッシュ状に多数の穴が形成されている薄い板である。
【0049】
図5に示す円柱状(または棒状)の光触媒担持体15は、断面円形の部材の一例である円柱状の電気誘電体であり、例えばアルミナ製の棒状部材であり、断面が直径d3=4mmの円で、長さKが192mmである。この円柱状の光触媒担持体15の外側部分には、光触媒が担持されている。
【0050】
図5に示す負極の高電圧端子2の一方の面2Bには、上述した複数の円柱状の光触媒担持体5が、等間隔の隙間BでY方向に沿って相互に離して、しかもX方向に平行になるように固定されている。図2に示すように、これらの円柱状の光触媒担持体15は、負極の高電圧端子2の一方の面2Bに対して、樹脂製のサポート材5Sを用いてギャップG2を設けるようにして固定されている。また、各円柱状の光触媒担持体15の直上には、正極の高電圧端子4が、樹脂製のサポート材5Pを用いて、ギャップG1を設けるようにして固定されている。正極の高電圧端子4の高さHの方向がZ方向に沿い、S方向がX方向に沿っている。これにより、複数の正極の高電圧端子4は、等間隔の隙間でY方向に沿って相互に離して、しかもX方向に平行になるように配置されている。
【0051】
以上説明したように、本発明の実施形態の光触媒反応装置によれば、円筒状の光触媒担持体あるいは円柱状の光触媒担持体を用い、光触媒担持体の直上に平行に細長い板状の正極の高電圧端子を配置し、光触媒担持体が、電源に接続された正極の高電圧端子と負極の高電圧端子間に配置している。これらの正極の高電圧端子と負極の高電圧端子に電流供給することで、光触媒担持体の表面に発生する放電光を、光触媒を活性化するための光源として用いることができる。
【0052】
本発明の実施形態の光触媒反応装置は、光触媒反応の分野における光源技術およびその光源と光触媒担持体、光触媒等との複合技術の改良であり、光触媒担持体の部位で沿面放電または端子間放電を発生させて、その放電光を直接光源として利用して光触媒反応を高い活性のもとで効率よく進めることができる。
【0053】
本発明の実施形態の光触媒反応装置によれば、高周波放電、パルス放電、高周波パルス放電、高圧直流放電、高圧交流放電による放電光に含まれる波長360〜400nmの短波長光線の照射によって励起されて活性化する光触媒により、これと接触、付着又は接近した無機性、有機性の物質を光触媒反応で酸化、還元することができる。この場合、光触媒は、汚れ成分を除去する洗浄、汚れ成分の付着を防止する防汚、殺菌、脱臭、空気の清浄、排気処理、水の清浄、排水処理、水の分解、有機合成または有機分解反応の促進、無機性、有機性の環境汚染物質の分解など広く応用することができる。
【0054】
これらの応用分野は光励起されたときに生ずる強力な光触媒の酸化力、還元力による光触媒反応、光触媒作用によるものである。例えば、短波長光線を照射した前記光触媒は、空気中の酸素(O2 )、又は水に溶存している酸素を活性化し、オゾン(O3 )又は活性酸素(O)を発生し、空気中に含まれるかび類、細菌類、トリハロメタン等の有機塩素化合物、や内分泌撹乱化学物質(いわゆる環境ホルモン)を酸化分解し、脱臭、脱色、殺菌、または消毒作用を行う。そして、短波長光線の照射により励起された光触媒が、例えば水(H2 O)の分解に高い活性を示し、水を分解して活性酸素(O)と水素(H2 )とを発生する。
【0055】
本発明の光触媒反応装置は、電源に接続された正極の高電圧端子と負極の高電圧端子と、前記高電圧端子間に配置され、光触媒を担持する誘電体から成る光触媒担持体とを備え、前記高電圧端子への電流供給によって前記光触媒担持体の表面に発生する放電光を、前記光触媒に接触、付着または接近した物質を光触媒反応によって分解するための光触媒反応用光源とする光触媒反応装置であって、前記光触媒担持体の形状は、断面円形を有する部材であり、前記光触媒担持体の長手方向が気流の流れ方向と直交するように配置されていることを特徴とする。上記構成によれば、空気が流れる際の圧力損失が小さくでき、光触媒反応の作業性の低下を防ぐことができる。
【0056】
本発明の光触媒反応装置では、前記光触媒担持体は、円筒状の部材であることを特徴とする。これにより、板状の光触媒担持体を用いるのに比べて、空気が流れる際の圧力損失が小さくできる。
【0057】
本発明の光触媒反応装置では、前記光触媒担持体は、円柱状の部材であることを特徴とする。これにより、板状の光触媒担持体を用いるのに比べて、空気が流れる際の圧力損失が小さくできる。
【0058】
本発明の光触媒反応装置では、前記負極の高電圧端子は板状の部材であり、前記負極の高電圧端子上に前記光触媒担持体がギャップを介して固定されていることを特徴とする。これにより、正極の高電圧端子4から直接、沿面放電が発生しないようにすることができる。
【0059】
本発明の光触媒反応装置では、前記負極の高電圧端子は、前記光触媒担持体の内部に配置されていることを特徴とする。これにより、負極の高電圧端子と光触媒担持体の機械的な強度を向上でき、複数の要素を一体化しているので薄型化が図れる。
【0060】
本発明の光触媒反応装置では、前記光触媒担持体は、前記負極の高電圧端子の周囲部分に溶射することで形成されていることを特徴とする。これにより、負極の高電圧端子と光触媒担持体との間のギャップを無くすことができ、複数の要素を一体化しているので薄型化が図れる。
【0061】
本発明の光触媒反応装置では、前記負極の高電圧端子は、前記光触媒担持体の内部に配置されている円筒状の部材であり、前記負極の高電圧端子の長手方向に沿って切り欠き部を有することを特徴とする。これにより、負極の高電圧端子には、バネ性を持たせることができるので、負極の高電圧端子の外周面と光触媒担持体の内周面とのギャップを無くすことができる。
【0062】
本発明の光触媒反応装置では、前記正極の高電圧端子は、前記光触媒担持体の直上において前記光触媒担持体に平行に配置された細長い板状の部材であり、前記正極の高電圧端子は前記光触媒担持体に対してギャップを介して固定されていることを特徴とする。これにより、正極の高電圧端子4から直接、沿面放電が発生しないようにして、光触媒担持体において沿面放電が発生させることができる。また、空気が通る際の圧力損失を低減できる。
【0063】
本発明は、上記実施形態に限定されない。例えば、正極の高電圧端子の数と光触媒担持体の数と負極の高電圧端子の数は、図示例に特に限定されず、任意に設定できる。負極の高電圧端子2は例えばステンレス製の1枚の板状の部材であり、例えばメッシュ状に多数の穴が形成されている薄い板であるが、これに限らず例えば格子状の板材であっても良い。
【0064】
さらに、本発明の実施の形態に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることにより種々の発明を形成できる。例えば、本発明の実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施の形態に亘る構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0065】
1・・・光触媒反応装置、2・・・負極の高電圧端子、4・・・正極の高電圧端子、5・・・光触媒担持体、6・・・高電圧電源部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源に接続された正極の高電圧端子と負極の高電圧端子と、前記高電圧端子間に配置され、光触媒を担持する誘電体から成る光触媒担持体とを備え、前記高電圧端子への電流供給によって前記光触媒担持体の表面に発生する放電光を、前記光触媒に接触、付着または接近した物質を光触媒反応によって分解するための光触媒反応用光源とする光触媒反応装置であって、
前記光触媒担持体の形状は、断面円形を有する部材であり、前記光触媒担持体の長手方向が気流の流れ方向と直交するように配置されていることを特徴とする光触媒反応装置。
【請求項2】
前記光触媒担持体は、円筒状の部材であることを特徴とする請求項1に記載の光触媒反応装置。
【請求項3】
前記光触媒担持体は、円柱状の部材であることを特徴とする請求項1に記載の光触媒反応装置。
【請求項4】
前記負極の高電圧端子は板状の部材であり、前記負極の高電圧端子上に前記光触媒担持体がギャップを介して固定されていることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の光触媒反応装置。
【請求項5】
前記負極の高電圧端子は、前記光触媒担持体の内部に配置されていることを特徴とする請求項2に記載の光触媒反応装置。
【請求項6】
前記光触媒担持体は、前記負極の高電圧端子の周囲部分に溶射することで形成されていることを特徴とする請求項5に記載の光触媒反応装置。
【請求項7】
前記負極の高電圧端子は、前記光触媒担持体の内部に配置されている円筒状の部材であり、前記負極の高電圧端子の長手方向に沿って切り欠き部を有することを特徴とする請求項5に記載の光触媒反応装置。
【請求項8】
前記正極の高電圧端子は、前記光触媒担持体の直上において前記光触媒担持体に平行に配置された細長い板状の部材であり、前記正極の高電圧端子は前記光触媒担持体に対してギャップを介して固定されていることを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか1つの項に記載の光触媒反応装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−147885(P2011−147885A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−11571(P2010−11571)
【出願日】平成22年1月22日(2010.1.22)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】