説明

光触媒反応装置

【課題】水中の細菌、有機物、防汚等を含有する排液を連続で酸化、還元反応させ光触媒反応により分解処理する方法を提供する。
【解決手段】円筒処理容器内に光触媒を薄膜としてコーティングした複数のガラス基板を反応板として配置して、円筒処理容器下面に設けた液入口より外部送液圧力により、連続的に処理液を供給して、円筒処理容器上側面に設けた光ファイバー導入口に、光源より光ファイバーを介して、反応板の上部リングに光照射されて、反応板内を光照射して薄膜上の被処理物質の酸化還元反応を行い、被処理物質を水と二酸化炭素に分解処理を行い、円筒処理容器上側面に設けた液出口より排出される事を特徴とする光触媒反応装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中の微量有害物質を光触媒反応で分解・除去する光触媒反応装置に関する
【背景技術】
【0002】
有害物質を流通式の光触媒反応装置で処理を行おうとすると、光触媒と被処理物質の接触面だけの反応となる事と照射光が被処理物質に十分届かないために、装置内の滞留時間を長くしたり、装置を大きくするか、流量を低く設定する必要がある。
【0003】
光触媒反応は、非常に強力で、有機化合物を主体とするほとんどの有害物質を酸化分解できる。
【0004】
しかし、反応速度が遅いことから、有害物質の処理流体中の濃度が希薄な場合、反応速度が拡散律速となるため、さらに滞留時間を長くとる必要がある。そのため光触媒表面の吸着能力を高めることで有害物質の実質の滞留時間を長くする方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】担体上を照射領域と非照射領域とが交互に切り替わるようにして、レーザー光で被処理物質を吸着、濃縮し、担体での表面濃度を高めて、この非照射領域にレーザー光を断続的に照射して被処理物質を吸着、濃縮し、このときの量子効率と分解率とが向上する提案がされている。しかし、レーザー光は面照射ではなくスポット光であり、被処理物質の濃度や濁度などの影響を受けて処理効率が悪い。
【特許文献2】表面に酸化チタンを担持した粒体を充填して、並行にらせん状や蛇行状に延びる複数の被処理流体流路を形成するとともに、該被処理流体流路中の前記酸化チタン担持粒体に光を照射可能な光照射手段を設けた方法が提案されている。しかし、複数の被処理流体流路内の表面に酸化チタンを担持した粒体を充填して光照射しても酸化還元反応は表面に位置する担体の充填した外面のみで反応が起こることになり、充填された内部に位置する酸化チタンは光の影響を受けず反応しない(特許文献1)特開2001−239257(特許文献2)特開2005-103458
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、担体上で光照射領域が狭く、反応板表面への被処理物質の吸着が進行しにくいため、担体表面における被処理物質の濃度が高くならないので、量子効率、被処理物質の分解率が共に低くなる。また、光があたらない非照射領域においては、吸着破過が起こってしまうため、装置としての分解率は低下してしまう。
そこで、反応板内部から光照射を行い、リン酸銀の薄膜で酸化還元を行える事に着目し、それを用いて、被処理流体を高い効率をもって処理できるようにした光触媒反応装置を提供することにあり、水中の細菌、有機物、防汚等を含有する排液を連続で酸化、還元反応させ光触媒反応により分解処理する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第一の発明によれば、円筒形状の容器で内面は鏡面として前記円筒形状の下面は閉塞されて下側面は液入口を具えて、上側面は液出口と光ファイバー導入口を供えて流体流路によって連通されて、反応板を複数収納して前記反応板は円形状ガラスを基板として両面外周は凸状のリングを具えて、下段に配置された前記反応板の凸状リングと密接して配置されて、前記ガラス基板の両面と側面は複数の突起部を具えて、厚みを500nm以下とした光触媒の薄膜が形成されて、複数の連通穴を具えたことを特徴とする光触媒反応装置である。
【0008】
第二の発明によれば、前記円筒形状の容器は外部光源を具えて、照射光は導光路として光ファイバーに集光されて前記光ファイバー導入口より、前記反応板の最上段に位置する凸状リングの上面に対向して配置されて光照射することにより、反応板内を乱反射して光触媒に照射されて、流体流路内の被処理流体と接触することと、下段に配置した前記反応板のリングに照射されて、照射光は複数の前記反応板に伝播されることを特徴とする光触媒反応装置である。
【0009】
本発明においては、光ファイバーより照射された光は最上部の反応板に設けたリングから下部に設けた複数のリングより反応板に順次導かれて照射光は反応板内を乱反射して、ガラス表面に薄膜として配置した光触媒に照射される。外部光源として太陽光では天気や天気模様にされる為に光源として白色LEDを使用することにより450nm近辺の可視光を利用可能であり、消費電力も僅かである。
【0010】
そして、容器内に配置された複数の反応板の表面に目的の被処理物質を吸着させ、光は反応板内面より光触媒に照射されて酸化、還元反応を行える構造として、広い反応板面積への表面被処理物の吸着と被処理物質の濃度や色度、付着厚み等の影響を受けずに一定の光照射が行えることになり、常に一定な酸化、還元反応が行える。
【0011】
そして、反応板の表面は複数の突起部や表面の凹凸などにより被処理物質との接触面積を増やす構造として、複数の連通穴より処理水は上部へ移動して複数の反応板と被処理物質との酸化還元反応を繰り返して分解処理する方法とした
【0012】
反応板の両面に具えたリングの表面は平滑で透明として、照射された光を伝播される構造であり、反応板の外側に回りこんだ被処理物質はガラス側面に施した薄膜で酸化、還元される事になる。
【0013】
光触媒を構成する物質の種類は特に限定されないが、Ag3PO4、TiO2、SnO2、WO3、ZnO、SrTiO3等の光触媒物質を例示できる。特に、ここではリン酸銀が好ましい
【0014】
光触媒層を、物理的気相成長法、化学的気相成長法、有機金属化学的気相成長法などの気相法によって成膜することもできる。
【0015】
被処理物質は、有害成分や汚染成分を含むガスでも、液体であってよい。汚染物質ないし有害物質としては、トリクロロエチレン、ホルムアルデヒド、トルエン、ベンゼン、キシレン、NOx、ダイオキシン、色度成分、COD、トリハロメタン、環境ホルモン、POPSや活性汚泥法による余剰汚泥や油分を含む汚水処理等でもよい。
【0016】
図1は、第一の発明に係る装置1の内部を概略的に示す部分断面図であり、図2は、反応板8の外観を示し、図3は反応板断面図で図4は外部光源を示す。
本例の光触媒反応装置1は、外観略円筒形状の容器で一方の下面側には流体の入口2が設けられている。装置1の他方の上面側には流体の出口3が設けられており、出口3の対抗面の少し上に光ファイバー導入口4を具えている。装置1内には略円形上の反応板8が複数枚リング間同士で密接して収容されており、両方のリング間はシールされている。
【0017】
外部ポンプなどの送液圧力により、被処理物質は流体の入口2から反応装置1に移動される。最初に、外部光源13から光ファイバー14により反応装置1上部に導かれて円周に配置されたリングより光は反応板8の両面に設けた薄膜10より、被処理物質へと光が照射され、最下段の反応板8の下面の流体中に含まれる目的の被処理物質が吸着され、被処理物質の濃度が上昇する。この状態で濃縮された被処理物質が分解される。流体は担体3を通過し、出口9から排出される。
【発明の効果】
【0018】
以上、本発明の光触媒反応装置によれば、リン酸銀による光触媒活性を利用して、被処理流体を極めて高い効率をもって酸化分解処理できるようになり、とくに水処理の分野に最適な、従来にない高効率かつ処理能力の光触媒反応装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の光触媒反応装置の構造を示す図である。
【図2】本発明の反応板の構造を示す図である。
【図3】本発明の反応板の断面図を示す図である。
【図4】本発明の外部光源を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明の望ましい実施の形態を、図面を参照して説明する。図1〜図4は、本発明の一実施態様に係る光触媒反応装置を示している。図1において、1は光触媒反応装置全体を示しており、2は液入口を示している。3は、液出口を示しており、4は外部光源と接続された光ファイバー入口を示しており、5は内部鏡面を示しており、6は複数の反応板の収納方法を示している。
【0021】
図2は、反応板7の構造を示して、透明度のよい白色系の硬質ガラスを担体として、担体両面の外周は凸状のリング8を具えて、上下に配置された反応板7の凸状のリング8と密接する構造として、複数の反応板7の周りを支柱で固定している。
【0022】
そして、外部光源13からの照射光はファイバーケーブル14を経由して光ファイバー導入口4に導かれ、反応板7の凸状リング8と対向して配置されて光は反応板7に伝播される。一部の光は反応板7内を乱反射して担体表面の薄膜に届き、被処理物質が酸化分解され、一部の照射光は下部に配置された反応板7の凸状のリング8と密接されて、配置された反応板7に伝播される。
【0023】
被処理物質は流体の入口2から反応装置1に流入して、外部光源13から光ファイバー14により反応装置1上部に導かれた照射光は、最下段に設けた反応板7内を乱反射して、流体中に含まれる目的の被処理物質が吸着され、被処理物質の濃度が上昇する。濃縮された被処理物質が分解されると共に、被処理流体は流通容器内のレベルが高くなることにより、反応板7の貫通穴より、反応板7の上面の薄膜と接触して被処理物質が酸化分解する。
【0024】
また、複数の反応板が並設されているので、被処理物質は液送圧により順次上の反応板と接触して容易に処理量の増大をはかることができる。
【実施例】
【0025】
以下に、本発明の実施例を説明する。光触媒反応装置1の下側に設けた液入口2より外部より被処理物質が反応容器7に流入して、反応板7と接触する。
【0026】
図2は、反応板7の構造を示して、光透過率のよい白色系の硬質ガラスを担体として、板厚を8mmとして、両面の外周の高さを2mmとして幅は5mmとした凸状リング8として、内周面は2mm削って低い構造として、被処理物質との接触面積を増やす構造で、高さ1mm前後とした複数の円柱や表面を粗く加工したガラス表面として透明にする。ガラス表面の内周面は担体内部からの照射光が薄膜10へ透過可能としたリン酸銀の薄膜10が形成されている。反応板7は円形ガラス基板で、上下の反応板7と凸状リング部8が接触する構造としている。
【0027】
リン酸銀を薄膜10とした反応板7は、本実施態様では、反応板7を20枚重ねて反応容器内1に収容して、反応容器はSUS304で内面は鏡面で反応板7の周りを支柱で固定している。
【0028】
そして、反応容器1の下側より被処理物質が流入して下側に設けた反応板7より酸化還元が行われる。
【0029】
薄膜10は物理的気相成長法、化学的気相成長法、有機金属化学的気相成長法などで可能であり、薄膜10としての厚みは500nm以下として、照射光はガラスを透過して半透明上の薄膜10表面より被処理物質に到達する厚みとする。
【0030】
LED光源13から照射光は光ファイバー14を導光路として、反応槽1内の反応板7と概ね10mm前後の非接触で光ファイバーリング12を対向して配置して、反応容器1に組み立てられた状態では、排水口3より上部に位置して液面とは接触しない構造がよい。本実施態様では、この組み立てられた反応部が、円筒状の反応容器1内に収容される。反応容器1の内面は、光反射面に形成されている。光反射面は、反応容器1の構成材料自身に光反射機能を有するもの(たとえば、鏡面に仕上げたステンレス)を採用することによって形成してもよく、内面をメッキ等により光反射面に形成してもよい。
【0031】
上記のように構成された光触媒反応装置においては、ポンプ等により送水されてきた被処理流体が給水口2から流体流路に導入され、流路途中に設けた反応板に施されたリン酸銀の薄膜にLED光源13からの光を照射することで光触媒活性を惹起させ、それによって被処理流体中の菌や微生物、有機物等が酸化分解される。処理水は、最上段の反応板の貫通穴を通過して排水口より排出される。被処理流体流路は反応板と反応板の間隔がこの場合は4mmとして蜜に配設されて、反応板内部より可視光は照射されるので、定流量、定送圧、定照射量となり、処理水の濁度、濃度等の条件に左右されず、リン酸銀の薄膜上で被処理流体は定量的な処理が可能となり、処理効率が高められる。
【0032】
また、複数の反応板が並設されているので、容易に処理量の増大をはかることができる。とくに、リン酸銀の光触媒活性による酸化分解処理には、比較的長い被処理流体の滞留時間が要求されるが、低流速であっても大流量処理が可能となる複数の反応板が並設されているので、容易に処理量の増大をはかることができる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、光触媒反応装置に関し、とくに光触媒としてリン酸銀を用いて被処理流体を効率よく処理できるようにした光触媒反応装置に関する。
【符号の説明】
【0034】
1反応容器
【0035】
2液入口
【0036】
3液出口
【0037】
4光ファイバー導入口
【0038】
5鏡面
【0039】
6複数の反応板
【0040】
7反応板リング
【0041】
8反応板
【0042】
凹凸部
【0043】
10薄膜
【0044】
11貫通穴
【0045】
12光源リング
【0046】
13光源部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒形状の容器で内面は鏡面とした前記円筒形状の下面は閉塞されて下側面は液入口を具えて、上側面は液出口と光ファイバー導入口を供えた流体流路によって連通されて、反応板を複数収納して前記反応板は円形状ガラスを基板として両面外周は凸状のリングを具えて、下段に配置された前記反応板の凸状リングと密接して配置されて、前記ガラス基板の両面は複数の突起部を具えて、厚みを500nm以下とした光触媒の薄膜が形成されて、複数の連通穴を具えたことを特徴とする光触媒反応装置。
【請求項2】
前記円筒形状の容器は外部光源を具えて、照射光は導光路として光ファイバーに集光されて前記光ファイバー導入口より、前記反応板の最上段に位置する凸状リングの上面に対向して配置されて光照射することにより、反応板内を乱反射して光触媒に照射されて、流体流路内の被処理流体と接触することと、下段に配置した前記反応板のリングに照射されて、照射光は複数の前記反応板に伝播されることを特徴とする光触媒反応装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−13836(P2013−13836A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−146932(P2011−146932)
【出願日】平成23年7月1日(2011.7.1)
【出願人】(302061462)
【Fターム(参考)】