説明

光触媒含有層付基板、およびその製造方法

【課題】 本発明は、エネルギー照射に伴う光触媒の作用を利用してパターンを形成する際に用いられ、パターン形成の際にパターンが形成される側の対向基板と光触媒含有層との距離を一定に保つことが可能な光触媒含有層付基板を提供することを主目的としている。
【解決手段】 上記目的を達成するために、本発明は、基体と、前記基体上に形成され、少なくとも光触媒を含有する光触媒含有層と、スペーサ部とを有し、
スペーサ部を介して対向して配置される対向基板に、エネルギー照射に伴う光触媒の作用を及ぼして、特性の変化した特性変化パターンを形成するために用いられる光触媒含有層付基板であって、
前記スペーサ部が、前記特性変化パターンの形成に寄与しない特性変化パターン非形成領域に形成されていることを特徴とする光触媒含有層付基板を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エネルギー照射に伴う光触媒の作用を利用したパターニングに用いることが可能な光触媒含有層付基板、およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、基材上に図案、画像、文字、回路等の種々のパターンを形成するパターン形成体の製造方法として、様々な方法が提案されており、例えば、平版印刷や、オフセット印刷、ヒートモード記録材料を用いた平版印刷原版を作製する印刷法等も用いられている。また、例えば、基材上に塗布したフォトレジスト層にパターン露光を行い、露光後、フォトレジストを現像し、さらにエッチングを行ったり、フォトレジストに機能性を有する物質を用いて、フォトレジストの露光によって目的とするパターンを直接形成する等のフォトリソグラフィーによるパターン形成体の製造方法も知られている。
【0003】
しかしながら、例えばカラーフィルタ等に用いられる、高精細なパターン形成体を製造する際には、上記印刷法では位置精度が低い等の問題があり、用いることが難しかった。また、上記フォトリソグラフィー法においては、フォトレジストを用いるとともに、露光後に液体現像液によって現像を行ったり、エッチングを行う必要があるので、廃液を処理する必要が生じる等の問題があった。また、フォトレジストとして機能性の物質を用いた場合には、現像の際に使用されるアルカリ液等によって劣化する等の問題もあった。
【0004】
そこで、基材上に、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により特性が変化する特性変化層を形成し、光触媒を含有する光触媒含有層基板と対向させて配置した後、所定の方向から露光することにより、特性変化層の特性が変化したパターンを形成するパターン形成体の製造方法が本発明者等において検討されてきた(特許文献1)。この方法によれば、エネルギー照射に伴う光触媒の作用によって、上記特性変化層の特性を利用して、容易に着色層等の機能性部を形成することが可能なパターン形成体を高精細に製造することがきる。また、現像液等を用いる必要がない、という利点も有する。このような光触媒の作用機構は、必ずしも明確なものではないが、エネルギーの照射によって生成したキャリアが、近傍の化合物との直接反応、あるいは、酸素、水の存在下で生じた活性酸素種によって、有機物の化学構造に変化を及ぼすものと考えられている。
【0005】
ここで、上述したパターン形成体の製造方法においては、光触媒含有層側で生じさせた活性酸素種等により、対向する特性変化層の特性を変化させるものであることから、特性変化層と光触媒含有層との距離が重要となる。すなわち、特性変化層と光触媒含有層との距離が遠い場合には、光触媒含有層側で生じた活性酸素種等が特性変化層に届きにくくなり、特性変化パターンを形成する効率が低くなる。一方、光触媒含有層と特性変化層とを密着させた場合は、上記活性酸素種の脱着がしにくくなり、結果的に特性変化パターンを形成する効率が低くなる。
【0006】
そこで、上記特性変化層と光触媒含有層との間に一定の間隙を有するように、それぞれの基板を配置することが好ましいが、上記間隙は、通常200μm以下とされ、このような狭い間隙をあけてそれぞれの基板を保持することは難しかった。またこのことから、複数のパターン形成体を製造した場合、それぞれの特性変化の度合いが異なるものとなり、これらの特性変化パターン上に、一定の条件で均一な機能性部を形成することが困難となる、という問題があった。
【0007】
このような問題を解決するために、例えば特許文献1には、光触媒含有層側基板に設けられる遮光部をスペーサとして用いる方法も提案されているが、この場合、特性変化パターン等と遮光部とが接触することから、この部分に傷が生じてしまう場合等があり、実用化が難しかった。
【0008】
【特許文献1】特開2000−249821号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、エネルギー照射に伴う光触媒の作用を利用してパターンを形成する際に用いられ、パターン形成の際にパターンが形成される側の対向基板と光触媒含有層との距離を一定に保つことが可能な光触媒含有層付基板の提供が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、基体と、上記基体上に形成され、少なくとも光触媒を含有する光触媒含有層と、スペーサ部とを有し、スペーサ部を介して対向して配置される対向基板に、エネルギー照射に伴う光触媒の作用を及ぼして、特性の変化した特性変化パターンを形成するために用いられる光触媒含有層付基板であって、上記スペーサ部が、上記特性変化パターンの形成に寄与しない特性変化パターン非形成領域に形成されていることを特徴とする光触媒含有層付基板を提供する。
【0011】
本発明によれば、上記光触媒含有層付基板と対向基板とを、スペーサ部を介して接触させることから、対向基板と光触媒含有層付基板との間隙を一定に保つことができる。したがって、本発明の光触媒含有層付基板を用いることにより、対向基板に特性が均一に変化した特性変化パターンを形成することができる。またこの際、上記スペーサ部が上記特性変化パターン非形成領域に形成されていることから、特性変化パターン等とスペーサ部とが接触しないものとすることができ、特性変化パターン等に欠陥が生じることのないものとすることができる、という利点を有する。
【0012】
上記発明においては、上記スペーサ部と上記基体との間に、スペーサ部用遮光部が形成されていることが好ましい。これにより、上記光触媒含有層付基板側からスペーサ部が形成されている領域にエネルギーが照射された場合であっても、上記スペーサ部にエネルギー照射に伴う光触媒の作用が及ばないものとすることができ、上記スペーサ部が劣化等して、対向基板との間隙が変化してしまうことを防止することができるからである。
【0013】
また、上記発明においては、上記特性変化パターンの形成に寄与する特性変化パターン形成用領域内にパターン形成用遮光部を有することが好ましい。これにより、上記光触媒含有層付基板と対向基板とを対向させた状態で、光触媒含有層付基板側から全面にエネルギーを照射することにより、対向基板にパターン状に特性変化パターンを形成することが可能となるからである。
【0014】
本発明はまた、基体と、上記基体上に形成され、少なくとも光触媒を含有する光触媒含有層と、スペーサ部とを有し、スペーサ部を介して対向して配置される対向基板に、エネルギー照射に伴う光触媒の作用を及ぼして、特性の変化した特性変化パターンを形成するために用いられる光触媒含有層付基板の製造方法であって、上記基体上に、撥液性を有する光触媒含有層形成用塗工液を塗布して上記光触媒含有層を形成する光触媒含有層形成工程と、上記特性変化パターンの形成に寄与しない特性変化パターン非形成領域の上記光触媒含有層上に、ノズル吐出法によりスペーサ部形成用塗工液を塗布し、スペーサ部を形成するスペーサ部形成工程とを有することを特徴とする光触媒含有層付基板の製造方法を提供する。
【0015】
本発明によれば、上記光触媒含有層形成工程により形成された光触媒含有層が撥液性を有することから、スペーサ部形成用塗工液をノズル吐出法により吐出した際、スペーサ部形成用塗工液が、光触媒含有層上に濡れ広がらずに、塗布された位置に留まるものとすることができる。したがって、特性変化パターンの形成に寄与しない領域に、所定の高さのスペーサ部を有する光触媒含有層付基板を製造することが可能となるのである。
【0016】
また、本発明は、基体と、上記基体上に形成され、少なくとも光触媒を含有する光触媒含有層と、スペーサ部とを有し、スペーサ部を介して対向して配置される対向基板に、エネルギー照射に伴う光触媒の作用を及ぼして、特性の変化した特性変化パターンを形成するために用いられる光触媒含有層付基板の製造方法であって、基体上に、撥液性を有する光触媒含有層形成用塗工液を塗布して光触媒含有層を形成する光触媒含有層形成工程と、上記特性変化パターンの形成に寄与しない特性変化パターン非形成領域の上記光触媒含有層にパターン状にエネルギーを照射し、上記光触媒含有層上に液体との接触角が低下した濡れ性変化パターンを形成する濡れ性変化パターン形成工程と、上記濡れ性変化パターン上に、ノズル吐出法によりスペーサ部形成用塗工液を塗布し、スペーサ部を形成するスペーサ部形成工程とを有することを特徴とする光触媒含有層付基板の製造方法を提供する。
【0017】
本発明によれば、濡れ性変化パターン形成工程により、撥液性である上記光触媒含有層内に、親液性領域である濡れ性変化パターンが形成される。これにより、スペーサ部形成用塗工液を濡れ性変化パターン上に塗布した際、上記濡れ性変化パターン上にのみスペーサ部形成用塗工液を留まらせることができる。したがって、本発明によれば、特性変化パターンの形成に寄与しない領域に、所定の高さのスペーサ部を有する光触媒含有層付基板を製造することが可能となるのである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、エネルギー照射に伴う光触媒の作用を利用してパターンを形成する際、光触媒含有層と、対向して配置される対向基板との距離を一定のものとすることができ、対向基板の特性を均一に変化させることが可能となる。またこの際、上記特性変化パターン等と光触媒含有層付基板の部材とが接触しないものとすることができ、特性変化パターン等に欠陥を生じさせないものとすることができる、という利点を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明はエネルギー照射に伴う光触媒の作用を利用したパターニングに用いることが可能な光触媒含有層付基板、およびその製造方法に関するものである。以下、それぞれについて分けて説明する。
【0020】
A.光触媒含有層付基板
まず、本発明の光触媒含有層付基板について説明する。本発明の光触媒含有層付基板は、基体と、上記基体上に形成され、少なくとも光触媒を含有する光触媒含有層と、スペーサ部とを有し、スペーサ部を介して対向して配置される対向基板に、エネルギー照射に伴う光触媒の作用を及ぼして、特性の変化した特性変化パターンを形成するために用いられる光触媒含有層付基板であって、上記スペーサ部が、上記特性変化パターンの形成に寄与しない特性変化パターン非形成領域に形成されていることを特徴とするものである。
【0021】
本発明の光触媒含有層付基板を図1(a)を用いて説明する。本発明の光触媒含有層付基板1は、基体2と、その基体2上に形成された光触媒含有層3と、スペーサ部4とを有するものであって、光触媒含有層付基板1は、上記スペーサ部4を介して対向基板11と対向するように配置されて用いられるものである。具体的には、上記光触媒含有層付基板1と対向基板11とを対向させて配置し、例えば光触媒含有層付基板1側からエネルギー20を照射すること等により、対向基板11にエネルギー照射に伴う光触媒の作用を及ぼして、対向基板11に特性の変化した特性変化パターン12を形成する(図1(b))ために用いられるものである。
【0022】
ここで、本発明において上記スペーサ部4は、例えば図1(a)に示すように、上記特性変化パターン12の形成に寄与しない特性変化パターン非形成領域(図中、bで示される領域)に形成される。
【0023】
なお、本発明においていう、特性変化パターンの形成に寄与する特性変化パターン形成用領域(図中、aで示される領域)とは、対向基板にパターン状に光触媒の作用を及ぼして、特性の変化した領域と特性の変化していない領域とからなるパターンを形成するために用いられる領域をいうこととする。また、特性変化パターンの形成に寄与しない特性変化パターン非形成領域とは、上記特性変化パターン形成の際、特性の変化した領域と特性の変化していない領域とからなるパターンの形状等に影響を及ぼさない領域をいうこととする。また、上記光触媒含有層付基板が、スペーサ部を介して対向基板と対向するように配置されるとは、上記光触媒含有層付基板のスペーサ部が形成されている側と対向基板とが面するように配置されることをいうこととする。
【0024】
本発明によれば、上記対向基板と光触媒含有層付基板とが、上記スペーサ部を介して配置されることから、上記対向基板と光触媒含有層付基板との間隙を常に一定に保つことが可能となる。したがって、光触媒含有層付基板によって、対向基板の特性を常に一定に変化させることが可能となり、この特性変化パターン上に、一定の条件で均一な機能性部を形成可能なものとすることができるのである。
【0025】
また本発明においては、上記スペーサ部が、特性変化パターン非形成領域に形成されていることから、対向基板に形成される特性変化パターンやその周辺部等とスペーサ部とが接触することのないものとすることができ、対向基板の特性変化パターンが形成されている領域等に欠陥を生じさせないものとすることができる、という利点を有する。
以下、本発明の光触媒含有層付基板について各構成ごとに詳しく説明する。
【0026】
1.スペーサ部
まず、本発明に用いられるスペーサ部について説明する。本発明に用いられるスペーサ部は、光触媒含有層付基板内における特性変化パターンの形成に寄与しない特性変化パターン非形成領域に形成されるものであり、光触媒含有層付基板と対向基板とが対向して配置された際、これらの間隙が一定のものとなるように形成されたものであれば、その形成位置等は特に限定されるものではない。
【0027】
本発明において上記スペーサ部は、例えば図1(a)に示すように、上記光触媒含有層3上に形成されたものであってよく、また例えば図2に示すように、基体2と光触媒含有層3との間に形成されたものであってもよい。本発明においては特に、スペーサ部が光触媒含有層上に形成されていることが好ましい。このような構成とすることにより、後述する光触媒含有層の形成が容易であり、光触媒含有層にクラック等が入りにくいものとすることができるからである。
【0028】
また、上記スペーサ部が形成される領域としては、特性変化パターン非形成領域内あって、光触媒含有層付基板と対向基板とがスペーサ部を介して配置されることが可能な領域であれば特に限定されるものではなく、光触媒含有層付基板の大きさや、特性変化パターン非形成領域の形状等に合わせて適宜選択される。
【0029】
また本発明においては、上記スペーサ部の形状についても特に限定されるものではなく、例えば図3に示すように、スペーサ部4が光触媒含有層付基板の特性変化パターン形成用領域(aで示される領域)の周囲の特性変化パターン非形成領域(bで示される領域)に、連続的に形成されているもの等であってもよく、また例えば図4に示すように、特性変化パターン形成用領域(aで示される領域)の周囲の特性変化パターン非形成領域(bで示される領域)に、例えば円柱状や各柱状、錐台状、半球状等、パターン状に形成されているもの等であっててもよい。またさらに、上記スペーサ部の、対向基板と接する面の形状についても特に限定されるものではなく、例えば円状や矩形状等、任意の形状とすることができる。また、上記スペーサ部が形成される面積としては、光触媒付基板と対向基板とを一定の間隙となるように保つことが可能であれば、特に限定されるものではなく、光触媒付基板の大きさや、スペーサ部の硬度等により適宜選択される。
【0030】
本発明においては、上記スペーサ部の高さは0.5μm〜3mm程度、特に5μm〜50μm程度とされることが好ましい。本発明においては、スペーサ部の高さが上記光触媒含有層と対向基板との間隙とほぼ同等とされる。したがって、上記スペーサ部の高さをこのような範囲内とすることにより、本発明の光触媒含有層付基板を、対向基板に光触媒の作用を効率的に及ぼすことが可能なものとすることができるのである。
【0031】
ここで、上述したスペーサ部は、一般的なフォトリソグラフィー法や印刷法等により形成されたもの等であってもよいが、本発明においては、特にノズル吐出法により形成されたものであることが好ましい。ノズル吐出法によりスペーサ部を形成する場合には、スペーサ部を形成するスペーサ部形成用塗工液を基体や光触媒含有層等の全面に塗布する必要がない。したがって、特性変化パターン形成用領域にスペーサ部形成用塗工液の残渣等が付着し、光触媒含有層の感度が低下することを防止することができるからである。上記ノズル吐出法として、具体的には、インクジェット法やディスペンサを用いた塗布方法等が挙げられる。
【0032】
また、スペーサ部の形成に用いられる材料としては、一般的な液晶表示装置における柱状スペーサに用いられる感光性材料等を用いることができる。このような材料としては、例えばアクリル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−塩化ビニル共重合体、エチレンビニル共重合体、ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体、ABS樹脂、ポリメタクリル酸樹脂、エチレンメタクリル酸樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、塩素化塩化ビニル、ポリビニルアルコール、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、ポリビニルブチラール、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミック酸樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂等、および、重合可能なモノマーであるメチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルアクリレート、n−プロピルメタクリレート、イソプロピルアクリレート、イソプロピルメタクリレート、sec−ブチルアクリレート、sec−ブチルメタクリレート、イソブチルアクリレート、イソブチルメタクリレート、tert−ブチルアクリレート、tert−ブチルメタクリレート、n−ペンチルアクリレート、n−ペンチルメタクリレート、n−ヘキシルアクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、n−オクチルアクリレート、n−オクチルメタクリレート、n−デシルアクリレート、n−デシルメタクリレート、スチレン、α−メチルスチレン、N−ビニル−2−ピロリドン、グリシジル(メタ)アクリレートの一種以上と、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸の2量体(例えば東亜合成化学(株)製M−5600)、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、ビニル酢酸、これらの酸無水物等の一種以上からなるポリマーまたはコポリマー等の樹脂を1種または2種以上混合したものを挙げることができる。その中でも、アクリル樹脂、エポキシ樹脂等を用いた感光性樹脂組成物であることが好ましい。これらの樹脂は、塑性変形量が少なく光触媒含有層付基板と対向基板との間隙をより一定に保つことが可能となるからである。
【0033】
2.光触媒含有層
次に、本発明に用いられる光触媒含有層について説明する。本発明に用いられる光触媒含有層は、後述する基体上に形成されるものであり、少なくとも光触媒を含有するものであって、光触媒含有層中に含有される光触媒の作用により、対向されて配置された対向基板の特性を変化させることが可能なものであれば、特に限定されるものではない。
【0034】
このような光触媒含有層は、光触媒とバインダとから構成されているものであってもよく、また光触媒単体で製膜されたものであってもよい。また、その表面の濡れ性は特に親液性であっても撥液性であってもよい。光触媒のみからなる光触媒含有層の場合は、有機基等を分解または変性する効率が向上し、特性変化パターン形成の際の処理時間の短縮化等のコスト面で有利である。一方、光触媒とバインダとからなる光触媒含有層の場合は、光触媒含有層の形成が容易であるという利点を有する。
【0035】
本発明に用いられる光触媒含有層中に含有される光触媒としては、半導体として知られる例えば二酸化チタン(TiO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO)、酸化タングステン(WO)、酸化ビスマス(Bi)、および酸化鉄(Fe)を挙げることができる。また半導体以外としては、金属錯体や銀なども用いることができる。本発明においては、これらから選択して1種または2種以上を混合して用いることができる。
【0036】
本発明においては、特に二酸化チタンが、バンドギャップエネルギーが高く、化学的に安定で毒性もなく、入手も容易であることから好適に使用される。二酸化チタンには、アナターゼ型とルチル型があり本発明ではいずれも使用することができるが、アナターゼ型の二酸化チタンが好ましい。アナターゼ型二酸化チタンは励起波長が380nm以下にある。
【0037】
このようなアナターゼ型二酸化チタンとしては、例えば、塩酸解膠型のアナターゼ型チタニアゾル(石原産業(株)製STS−02(平均粒径7nm)、石原産業(株)製ST−K01)、硝酸解膠型のアナターゼ型チタニアゾル(日産化学(株)製TA−15(平均粒径12nm))等を挙げることができる。
【0038】
また光触媒の粒径は小さいほど光触媒反応が効果的に起こるので好ましく、平均粒径が50nm以下であることが好ましく、20nm以下の光触媒を使用するのが特に好ましい。
【0039】
上述したような光触媒のみからなる光触媒含有層の形成方法としては、例えば、スパッタリング法、CVD法、真空蒸着法等の真空製膜法を用いる方法を挙げることができる。真空製膜法により光触媒含有層を形成することにより、均一な膜でかつ光触媒のみを含有する光触媒含有層とすることが可能である。また、有機基の分解や変性等を均一に行うことが可能であり、かつ光触媒のみからなることから、バインダを用いる場合と比較して効率的に有機基の分解や変性等を行うことができる。
【0040】
また、光触媒のみからなる光触媒含有層の形成方法としては、例えば光触媒が二酸化チタンの場合は、基体上に無定形チタニアを形成し、次いで焼成により結晶性チタニアに相変化させる方法等が挙げられる。ここで用いられる無定形チタニアとしては、例えば四塩化チタン、硫酸チタン等のチタンの無機塩の加水分解、脱水縮合、テトラエトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラ−n−プロポキシチタン、テトラブトキシチタン、テトラメトキシチタン等の有機チタン化合物を酸存在下において加水分解、脱水縮合によって得ることができる。次いで、400℃〜500℃における焼成によってアナターゼ型チタニアに変性し、600℃〜700℃の焼成によってルチル型チタニアに変性することができる。
【0041】
一方、光触媒含有層にバインダを用いる場合は、バインダの主骨格が上記の光触媒の光励起により分解されないような高い結合エネルギーを有するものが好ましく、例えばオルガノポリシロキサン等を挙げることができる。
【0042】
このようにオルガノポリシロキサンをバインダとして用いた場合は、上記光触媒含有層は、光触媒とバインダであるオルガノポリシロキサンとを必要に応じて他の添加剤とともに溶剤中に分散して塗布液を調製し、この塗布液を基体上に塗布することにより形成することができる。使用する溶剤としては、エタノール、イソプロパノール等のアルコール系の有機溶剤が好ましい。塗布はスピンコート、スプレーコート、ディップコート、ロールコート、ビードコート等の公知の塗布方法により行うことができる。バインダとして紫外線硬化型の成分を含有している場合、紫外線を照射して硬化処理を行うことにより光触媒含有層を形成することができる。
【0043】
また、バインダとして無定形シリカ前駆体を用いることができる。この無定形シリカ前駆体は、一般式SiXで表され、Xはハロゲン、メトキシ基、エトキシ基、またはアセチル基等であるケイ素化合物、それらの加水分解物であるシラノール、または平均分子量3000以下のポリシロキサンが好ましい。
【0044】
具体的には、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラメトキシシラン等が挙げられる。また、この場合には、無定形シリカの前駆体と光触媒の粒子とを非水性溶媒中に均一に分散させ、基体上に空気中の水分により加水分解させてシラノールを形成させた後、常温で脱水縮重合することにより光触媒含有層を形成できる。シラノールの脱水縮重合を100℃以上で行えば、シラノールの重合度が増し、膜表面の強度を向上できる。また、これらの結着剤は、単独あるいは2種以上を混合して用いることができる。
【0045】
バインダを用いた場合の光触媒含有層中の光触媒の含有量は、5〜60重量%、好ましくは20〜40重量%の範囲で設定することができる。また、光触媒含有層の厚みは、0.05〜10μmの範囲内が好ましい。
【0046】
また、光触媒含有層には上記の光触媒、バインダの他に、界面活性剤を含有させることができる。具体的には、日光ケミカルズ(株)製NIKKOL BL、BC、BO、BBの各シリーズ等の炭化水素系、デュポン社製ZONYL FSN、FSO、旭硝子(株)製サーフロンS−141、145、大日本インキ化学工業(株)製メガファックF−141、144、ネオス(株)製フタージェントF−200、F251、ダイキン工業(株)製ユニダインDS−401、402、スリーエム(株)製フロラードFC−170、176等のフッ素系あるいはシリコーン系の非イオン界面活性剤を挙げることができ、また、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤を用いることもできる。
【0047】
さらに、光触媒含有層には上記の界面活性剤の他にも、ポリビニルアルコール、不飽和ポリエステル、アクリル樹脂、ポリエチレン、ジアリルフタレート、エチレンプロピレンジエンモノマー、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリイミド、スチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリエステル、ポリブタジエン、ポリベンズイミダゾール、ポリアクリルニトリル、エピクロルヒドリン、ポリサルファイド、ポリイソプレン等のオリゴマー、ポリマー等を含有させることができる。
【0048】
ここで本発明においては、例えば図1や図2に示すように、基体2の全面に光触媒含有層3が形成されたものであってもよいが、例えば図5に示すように、特性変化パターン形成用領域(図中、aで示される領域)において光触媒含有層3がパターン状に形成されたもの等であってもよい。この場合、光触媒含有層付基板側から全面にエネルギーを照射した場合であっても、光触媒含有層が形成されている領域のみ、対向基板の特性を変化させることが可能となる。このような光触媒含有層のパターニング方法は、特に限定されるものではないが、例えばフォトリソグラフィー法等により行うことが可能である。
【0049】
3.基体
次に、本発明に用いられる基体について説明する。本発明に用いられる基体としては、上記光触媒含有層やパターン形成用遮光部、スペース部等が形成可能なものであれば、特に限定されるものではない。このような基体としては、可撓性を有するもの、例えば樹脂製フィルム等であってもよく、可撓性を有さないもの、例えばガラス基板等であってもよい。また、透明性については、エネルギー照射方向等によって、適宜選択される。
【0050】
なお、上記基体表面と上記光触媒含有層等との密着性を向上させるために、基体上にアンカー層を形成するようにしてもよい。このようなアンカー層としては、例えば、シラン系、チタン系のカップリング剤等を挙げることができる。
【0051】
4.光触媒含有層付基板
次に、本発明の光触媒含有層付基板について説明する。本発明の光触媒含有層付基板は、対向基板と上記スペーサ部を介して対向するように配置し、所定の方向からエネルギーを照射することによって、光触媒含有層中の光触媒の作用により対向基板に特性の変化した特性変化パターンを形成するために用いられるものである。
【0052】
本発明の光触媒含有層付基板と対向して配置されて用いられる対向基板としては、上記光触媒含有層中の光触媒の作用により特性が変化するものであれば、特に限定されるものではない。例えば表面の有機基が分解や酸化等されて表面の濡れ性が変化するものであってもよく、また例えば他の物質との密着性が変化するもの等であってもよい。このような対向基板としては、例えば特開2003−195029号公報に記載されているような、特性変化層を有する基板とすることができる。
【0053】
また、上記特性変化パターン形成の際に用いられるエネルギーとしては、対向基板の特性を変化させることが可能ないかなるエネルギー線の照射をも含む概念であり、可視光に限定されるものではない。このようなエネルギー照射に用いられる光の波長は、400nm以下の範囲、好ましくは380nm以下の範囲から設定される。これは、上述したように光触媒含有層に用いられる好ましい光触媒が二酸化チタンであり、この二酸化チタンにより光触媒作用を活性化させるエネルギーとして、上述した波長の光が好ましいからである。
【0054】
このようなエネルギー照射に用いることができる光源としては、水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、エキシマランプ、その他種々の光源を挙げることができる。
【0055】
また、上述したような光源を用いてエネルギーを照射する方法の他、エキシマ、YAG等のレーザを用いてパターン状に描画照射する方法を用いることも可能である。
【0056】
ここで、エネルギー照射に際してのエネルギーの照射量は、対向基板の特性が変化し、特性変化パターンが形成されるのに必要な照射量とする。
また、上記エネルギーの照射方向としては、特に限定されるものではなく、光触媒含有層付基板の構造や、対向基板の透明性等により適宜選択される。
【0057】
またこの際、光触媒含有層を加熱しながらエネルギー照射することにより、感度を上昇させることが可能となり、効率的に特性変化パターンを形成することができる点で好ましい。具体的には30℃〜80℃の範囲内で加熱することが好ましい。
【0058】
なお、本発明の光触媒含有層付基板を用いて形成される特性変化パターンとしては、対向基板の用途に応じて適宜選択される。
【0059】
ここで、本発明の光触媒含有層付基板は、上記基体、光触媒含有層、およびスペーサ部を有するものであれば特に限定されるものではなく、必要に応じて、適宜他の層を有していてもよい。本発明においては、特に図1や図2に示すように、スペーサ部4が形成されている領域に、スペーサ部用遮光部6が形成されていることが好ましい。これにより、例えばスペーサ部が形成されている領域にエネルギーが照射された場合であっても、スペーサ部がエネルギー照射に伴う光触媒の作用により劣化しないものとすることができるからである。
【0060】
また、本発明においては、例えば図1や図2に示すように、特性変化パターン形成用領域内(図中、aで示される領域)に、パターン形成用遮光部5が形成されていることが好ましい。これにより、光触媒含有層付基板側から全面にエネルギーを照射した場合であっても、パターン状に対向基板に光触媒の作用を及ぼすことができ、描画照射等をすることなく、効率的に特性変化パターンを形成することができるからである。
以下、本発明に用いられるスペーサ部用遮光部、およびパターン形成用遮光部について詳しく説明する。
【0061】
(スペーサ部用遮光部)
本発明に用いられるスペーサ部用遮光部としては、スペーサ部が形成されている領域に形成されており、エネルギー照射された際、上記光触媒の作用によってスペーサ部が劣化することを防止することが可能なものであれば特に限定されるものではない。
【0062】
このようなスペーサ部用遮光部としては、例えば上記基体とスペーサ部との間、すなわち上記基体上や光触媒含有層上に形成されているものであってもよく、また例えば、基体の、上記スペーサ部が形成されている側と反対側の面に形成されているもの等であってもよい。また、例えば光触媒含有層と基体との間にスペーサ部が形成されている場合には、光触媒含有層とスペーサ部との間にスペーサ部形成用遮光部が形成されていてもよく、上記光触媒含有層上にスペーサ部用遮光部が形成されていてもよい。
また、上記スペーサ部用遮光部の形状としては、上記スペーサ部が形成されている領域に照射されるエネルギーを遮蔽することが可能な形状であれば特に限定されるものではなく、上記スペーサ部の形状に合わせて適宜選択される。
【0063】
このようなスペーサ部用遮光部としては、一般的に遮光部として用いられるものと同様とすることができ、照射されるエネルギーを遮蔽することが可能なものであれば、その材料は特に限定されるものではなく、遮光部の形成面の特性や、形成方法等に応じて適宜選択されて用いられる。
【0064】
例えば、スパッタリング法、真空蒸着法等により厚み300〜2000Å程度のクロム等の金属薄膜を形成し、この薄膜をパターニングすることにより形成されてもよい。このパターニングの方法としては、スパッタ、金属エッチング、リフトオフ等の通常のパターニング方法を用いることができる。
【0065】
また、樹脂バインダ中にカーボン微粒子、金属酸化物、無機顔料、有機顔料等の遮光性粒子を含有させた層をパターン状に形成する方法であってもよい。用いられる樹脂バインダとしては、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ゼラチン、カゼイン、セルロース等の樹脂を1種または2種以上混合したものや、感光性樹脂、さらにはO/Wエマルジョン型の樹脂組成物、例えば、反応性シリコーンをエマルジョン化したもの等を用いることができる。このような樹脂製のスペーサ部用遮光部の厚みとしては、0.5〜10μmの範囲内で設定することができる。このような樹脂製のスペーサ部用遮光部のパターニングの方法は、フォトリソ法、印刷法等一般的に用いられている方法を用いることができる。
【0066】
なお、本発明においては、特に後述するパターン形成用遮光部と同時に、同一の材料を用いて上記スペーサ部形成用遮光部が形成されたものであることが好ましい。これにより、製造効率等の面で好ましいものとすることができるからである。
【0067】
(パターン形成用遮光部)
次に、本発明に用いられるパターン形成用遮光部としては、上記特性変化パターン形成用領域内に形成されるものである。このようなパターン形成用遮光部の形成位置は、下記の二つの態様とすることができる。
【0068】
一つが、例えば図2に示すように、基体2と光触媒含有層3との間にパターン形成用遮光部5を形成する態様である。もう一つは、例えば図6に示すように、基体2上に光触媒含有層3を形成し、その上にパターン形成用遮光部5を形成する態様である。
【0069】
いずれの態様においても、フォトマスクを用いる場合と比較すると、パターン形成用遮光部が、上記光触媒含有層と対向基板との配置部分の近傍に配置されることになるので、基体内等におけるエネルギーの散乱の影響を少なくすることができることから、エネルギーのパターン照射を極めて正確に行うことが可能となる。
【0070】
このようなパターン形成用遮光部の形成方法は、特に限定されるものではなく、パターン形成用遮光部の形成面の特性や、必要とするエネルギーに対する遮蔽性等に応じて適宜選択されて用いられ、上述したスペーサ部用遮光部の形成方法と同様とすることができる。
【0071】
なお、上記説明においては、パターン形成用遮光部の形成位置として、基体と光触媒含有層との間、および光触媒含有層表面の二つの場合について説明したが、その他、基体の光触媒含有層が形成されていない側の表面にパターン形成用遮光部を形成する態様も採ることが可能である。この態様においては、例えばフォトマスクをこの表面に着脱可能な程度に密着させる場合等が考えられ、エネルギーを照射するパターンを小ロットで変更するような場合に好適に用いることができる。
【0072】
ここで、上述したように基体上にパターン形成用遮光部をパターン状に形成して、その上に光触媒含有層を形成して光触媒含有層付基板とする場合においては、上記パターン形成用遮光部と光触媒含有層との間にプライマー層を形成することが好ましい。
【0073】
このプライマー層の作用・機能は必ずしも明確なものではないが、パターン形成用遮光部と光触媒含有層との間にプライマー層を形成することにより、プライマー層は光触媒の作用を阻害する要因となる隣接するパターン形成用遮光部間に存在する開口部からの不純物、特に、パターン形成用遮光部をパターニングする際に生じる残渣や、金属、金属イオン等の不純物の拡散を防止する機能を示すものと考えられる。したがって、プライマー層を形成することにより、高感度で有機物の分解または変性等を進行させることができるのである。
【0074】
なお、本発明においてプライマー層は、パターン形成用遮光部のみならずパターン形成用遮光部間に形成された開口部に存在する不純物が光触媒の作用に影響することを防止するものであるので、プライマー層は開口部を含めた、光触媒含有層付基板全面にわたって形成されていることが好ましい。
【0075】
本発明におけるプライマー層は、光触媒含有層基板のパターン形成用遮光部と光触媒含有層とが接触しないようにプライマー層が形成された構造であれば特に限定されるものではない。
【0076】
このプライマー層を構成する材料としては、特に限定されるものではないが、光触媒の作用により分解されにくい無機材料が好ましい。具体的には無定形シリカを挙げることができる。このような無定形シリカを用いる場合には、この無定形シリカの前駆体は、一般式SiXで示され、Xはハロゲン、メトキシ基、エトキシ基、またはアセチル基等であるケイ素化合物であり、それらの加水分解物であるシラノール、または平均分子量3000以下のポリシロキサンが好ましい。
【0077】
また、プライマー層の膜厚は、0.001μmから1μmの範囲内であることが好ましく、特に0.001μmから0.1μmの範囲内であることが好ましい。
【0078】
B.光触媒含有層付基板の製造方法
次に、本発明の光触媒含有層付基板の製造方法について説明する。本発明の光触媒含有層付基板の製造方法は、2つの実施態様がある。それぞれの実施態様ごとに説明する。
【0079】
1.第1実施態様
まず、本発明における光触媒含有層付基板の製造方法の第1実施態様は、基体と、上記基体上に形成され、少なくとも光触媒を含有する光触媒含有層と、スペーサ部とを有し、スペーサ部を介して対向して配置される対向基板に、エネルギー照射に伴う光触媒の作用を及ぼして、特性の変化した特性変化パターンを形成するために用いられる光触媒含有層付基板の製造方法であって、上記基体上に、撥液性を有する光触媒含有層形成用塗工液を塗布して上記光触媒含有層を形成する光触媒含有層形成工程と、上記特性変化パターンの形成に寄与しない特性変化パターン非形成領域の上記光触媒含有層上に、ノズル吐出法によりスペーサ部形成用塗工液を塗布し、スペーサ部を形成するスペーサ部形成工程とを有することを特徴とする方法である。
【0080】
本実施態様により製造される光触媒含有層付基板は、例えば図1(a)に示すような、基体2と、その基体2上に形成された光触媒含有層3と、スペーサ部4とを有するものであって、例えば図1(a)に示すように、上記スペーサ部4を介して対向基板11と配置し、例えば光触媒含有層付基板1側からエネルギー20を照射することにより、光触媒含有層3中の光触媒の作用を利用して、対向基板11に特性の変化した特性変化パターン12を形成する(図1(b))ために用いられるものである。
【0081】
本実施態様の光触媒含有層付基板の製造方法においては、例えば図7に示すように、基体2上に撥液性を有する光触媒含有層3を形成する光触媒含有層形成工程(図7(a))と、この光触媒含有層3のうち、特性変化パターン形成に寄与しない特性変化パターン非形成領域(図中、bで示される領域)上にノズル吐出法によりスペーサ部を形成するスペーサ部形成用塗工液7を塗布するスペーサ部形成工程(図7(b))とが行われる。
【0082】
本実施態様においては、上記光触媒含有層形成工程において、撥液性を有する光触媒含有層が形成されることから、ノズル吐出法によりスペーサ部形成用塗工液を塗布した際、スペーサ部形成用塗工液が光触媒含有層表面に濡れ広がらないものとすることができる。したがって、スペーサ部形成用塗工液を塗布された位置に留まらせることができ、所定の高さのスペーサ部を特性変化パターン非形成領域に有する光触媒含有層付基板を製造することが可能となるのである。
【0083】
また、本実施態様によれば、例えばフォトリソグラフィー法等のように、光触媒含有層全面にスペーサ部形成用塗工液を塗布する必要がない。したがって、特性変化パターンの形成に寄与する特性変化パターン形成用領域にスペーサ部形成用塗工液の残渣等が付着しないものとすることができ、このような残渣によって特性変化パターンの形成効率が低下することのない光触媒含有層付基板とすることができる。
以下、本実施態様の各工程ごとに詳しく説明する。
【0084】
a.光触媒含有層形成工程
本実施態様における光触媒含有層形成工程は、基体上に、撥液性を有する光触媒含有層形成用塗工液を塗布して上記光触媒含有層を形成する工程である。
【0085】
本工程に用いられる光触媒含有層形成用塗工液としては、撥液性を有するものであって、少なくとも光触媒を含有するものであれば特に限定されるものではなく、例えば光触媒と撥液性を有するバインダと、必要に応じて添加された添加剤や溶剤等とを含有するものとすることができる。上記バインダとして用いられる材料は、撥液性を有し、かつバインダの主骨格が上記の光触媒の光励起により分解されないような高い結合エネルギーを有するものが好ましく、例えばオルガノポリシロキサン等を用いることができる。
【0086】
また、本工程における光触媒含有層形成用塗工液の塗布方法としては、特に限定されるものではなく、例えばスピンコート、スプレーコート、ディップコート、ロールコート、ビードコート等の公知の塗布方法を用いることができる。また、バインダとして紫外線硬化型の成分を含有している場合、紫外線を照射して硬化処理を行うことにより光触媒含有層を形成することができる。
【0087】
ここで、本工程により形成される光触媒含有層の表面の液体との接触角は、40mN/mの液体との接触角が10°以上、中でも表面張力30mN/mの液体との接触角が10°以上、特に表面張力20mN/mの液体との接触角が10°以上とされることが好ましい。
【0088】
これにより、後述するスペーサ部形成工程において光触媒含有層上にスペーサ部形成用塗工液を塗布した際、スペーサ部形成用塗工液が光触媒含有層上で濡れ広がらないものとすることができ、所定の膜厚を有するスペーサ部を形成することができるからである。
【0089】
なお、上記光触媒含有層形成用塗工液に用いられる光触媒や、バインダ、添加剤、溶剤等については、上述した「A.光触媒含有層付基板」の光触媒含有層の項で説明したものと同様とすることができるので、ここでの詳しい説明は省略する。
【0090】
b.スペーサ部形成工程
次に、本実施態様におけるスペーサ部形成工程について説明する。本実施態様におけるスペーサ部形成工程は、上記特性変化パターンの形成に寄与しない特性変化パターン非形成領域の上記光触媒含有層上に、ノズル吐出法によりスペーサ部形成用塗工液を塗布する工程である。
【0091】
本工程おいて上記スペーサ部形成用塗工液を塗布する方法としては、ノズル吐出法であれば特に限定されるものではなく、例えばインクジェット法や、ディスペンサを用いた塗布方法等を用いることができる。
【0092】
また、本実施態様に用いられるスペーサ部形成用塗工液としては、上記光触媒含有層付基板と対向基板とがスペーサ部を介して配置された際に、所定の間隙を保つことが可能なスペーサ部を形成可能なものであれば特に限定されるものではなく、例えば感光性樹脂を必要に応じて他の添加剤とともに溶剤中に分散したもの等とすることができる。このような樹脂については、上述した「A.光触媒含有層付基板」のスペーサ部の項で説明したものと同様とすることができるので、ここでの詳しい説明は省略する。
【0093】
ここで、本工程により形成されるスペーサ部の高さとしては0.5μm〜3mm程度、特に5μm〜50μm程度であることが好ましい。本実施態様においては、スペーサ部の高さが上記光触媒含有層と対向基板との間隙と同等とされることから、上記スペーサ部の高さをこのような範囲内とすることにより、対向基板に光触媒の作用を効率的に及ぼすことが可能な光触媒含有層付基板とすることができるからである。
【0094】
なお、本工程によりスペーサ部が形成される領域や、スペーサ部の形状等については、上述した「A.光触媒含有層付基板」の項で説明したものと同様とすることができるので、ここでの詳しい説明は省略する。
【0095】
c.その他の工程
本実施態様の光触媒含有層付基板の製造方法は、上記光触媒含有層形成工程、およびスペーサ部形成工程を有するものであれば、特に限定されるものではなく、例えば特性変化パターン形成用領域にパターン形成用遮光部を形成するパターン形成用遮光部形成工程や、特性変化パターン非形成領域にスペーサ部用遮光部を形成するスペーサ部用遮光部形成工程、上記スペーサ部形成工程後に、全面にエネルギーを照射して光触媒含有層全面を親液性とする光触媒含有層親液化工程等を有していてもよい。なお、上記パターン形成用遮光部や、スペーサ部用遮光部等については、上述した「A.光触媒含有層付基板」の項で説明したものと同様とすることができるので、ここでの詳しい説明は省略する。
【0096】
2.第2実施態様
次に、本発明の光触媒含有層付基板の製造方法における第2実施態様について説明する。本実施態様における光触媒含有層付基板の製造方法としては、基体と、上記基体上に形成され、少なくとも光触媒を含有する光触媒含有層と、スペーサ部とを有し、スペーサ部を介して対向して配置される対向基板に、エネルギー照射に伴う光触媒の作用を及ぼして、特性の変化した特性変化パターンを形成するために用いられる光触媒含有層付基板の製造方法であって、基体上に、撥液性を有する光触媒含有層形成用塗工液を塗布して光触媒含有層を形成する光触媒含有層形成工程と、上記特性変化パターンの形成に寄与しない特性変化パターン非形成領域の上記光触媒含有層にパターン状にエネルギーを照射し、上記光触媒含有層上に液体との接触角が低下した濡れ性変化パターンを形成する濡れ性変化パターン形成工程と、上記濡れ性変化パターン上に、ノズル吐出法によりスペーサ部形成用塗工液を塗布し、スペーサ部を形成するスペーサ部形成工程とを有することを特徴とする方法である。
【0097】
本実施態様により製造される光触媒含有層付基板は、例えば図1(a)に示すような、基体2と、その基体2上に形成された光触媒含有層3と、スペーサ部4とを有するものであって、例えば図1(a)に示すように、上記スペーサ部4を介して対向基板11と配置し、例えば光触媒含有層付基板1側からエネルギー20を照射することにより、光触媒含有層3中の光触媒の作用を利用して、対向基板11に特性の変化した特性変化パターン12を形成する(図1(b))ために用いられるものである。
【0098】
本実施態様における光触媒含有層付基板の製造方法においては、例えば図8に示すように、基体2上に撥液性を有する光触媒含有層形成用塗工液を塗布し、光触媒含有層3を形成する光触媒含有層形成工程(図8(a))と、特性変化パターン非形成領域(図中、bで示される領域)における上記光触媒含有層3にパターン状にエネルギー20を照射し、濡れ性がパターン状に変化した濡れ性変化パターン8を形成する濡れ性変化パターン形成工程(図8(b))と、上記濡れ性変化パターン8上に、ノズル吐出法によりスペーサ部形成用塗工液7を塗布し、スペーサ部を形成するスペーサ部形成工程(図8(c))とが行われる。
【0099】
本実施態様によれば、撥液性の光触媒含有層上に上記濡れ性変化パターンを形成することから、この濡れ性の差を利用して、高精細なパターン状にスペーサ部を形成することが可能となる。またこの際、上記スペーサ部形成用塗工液は、撥液性である領域には濡れ広がらず、親液性である濡れ性変化パターン上にのみスペーサ部形成用塗工液を塗布することができる。したがって、濡れ性変化パターン上にスペーサ部形成用塗工液を厚く塗布することが可能となり、所定の膜厚を有するスペーサ部を特性変化パターン非形成領域に有する光触媒含有層付基板を製造することができるのである。
【0100】
また、本実施態様においても、例えばフォトリソグラフィー法等のように、光触媒含有層全面にスペーサ部形成用塗工液を塗布する必要がない。したがって、特性変化パターンの形成に寄与する特性変化パターン形成用領域にスペーサ部形成用塗工液の残渣等が付着しないものとすることができ、効率よく特性変化パターンを形成可能な光触媒含有層付基板とすることができる。
以下、本実施態様における各工程ごとに詳しく説明する。なお、光触媒含有層形成工程については、上述した第1実施態様で説明した工程と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0101】
a.濡れ性変化パターン形成工程
まず、本実施態様における濡れ性変化パターン形成工程について説明する。本実施態様における濡れ性変化パターン形成工程は、上記特性変化パターンの形成に寄与しない特性変化パターン非形成領域における光触媒含有層に、パターン状にエネルギーを照射し、上記光触媒含有層上に液体との接触角が低下した濡れ性変化パターンを形成する工程である。
【0102】
本実施態様においては、上記濡れ性変化パターンが可能な方法であれば、そのエネルギー照射方法等は特に限定されるものではない。このようなエネルギー照射方法としては、例えばフォトマスク等を用いてパターン状にエネルギーを照射する方法や、レーザ等を用いて描画照射する方法等が挙げられる。このような濡れ性変化パターンの形成に用いられるエネルギー等については、上述した「A.光触媒含有層付基板」で説明したものと同様とすることができるので、ここでの詳しい説明は省略する。
【0103】
また本工程において形成される親液性パターンの形状としては、後述するスペーサ部形成工程においてスペーサ部が形成される形状と同じ形状であれば、特に限定されるものではなく、光触媒含有層付基板や特性変化パターン非形成領域の大きさや形状等により適宜選択される。
【0104】
ここで、本実施態様においては、上記濡れ性変化パターンの液体との接触角が、40mN/mの液体との接触角が9°未満、好ましくは表面張力50mN/mの液体との接触角が10°以下、特に表面張力60mN/mの液体との接触角が10°以下となるように、エネルギーが照射されることが好ましい。これにより、後述するスペーサ部形成工程において塗布されるスペーサ部形成用塗工液が、親液性パターン上に濡れ広がることができるからである。
【0105】
b.スペーサ部形成工程
次に、本実施態様におけるスペーサ部形成工程について説明する。本実施態様におけるスペーサ部は、上記親液性パターン上に、ノズル吐出法によりスペーサ部形成用塗工液を塗布する工程である。
【0106】
本工程おいて上記スペーサ部形成用塗工液を塗布する方法としては、ノズル吐出法であれば特に限定されるものではなく、例えばインクジェット法や、ディスペンサを用いた塗布方法等を用いることができる。
【0107】
また、本実施態様に用いられるスペーサ部形成用塗工液としては、上記光触媒含有層付基板と対向基板とがスペーサ部を介して配置された際に、所定の間隙を保つことが可能なスペーサ部を形成可能なものであれば特に限定されるものではなく、例えば感光性樹脂を必要に応じて他の添加剤とともに溶剤中に分散したもの等とすることができる。このような樹脂については、上述した「A.光触媒含有層付基板」のスペーサ部の項で説明したものと同様とすることができるので、ここでの詳しい説明は省略する。
【0108】
ここで、本工程により形成されるスペーサ部の高さとしては0.5μm〜3mm程度、特に5μm〜50μm程度であることが好ましい。本実施態様においては、スペーサ部の高さが上記光触媒含有層と対向基板との間隙と同等とされることから、上記スペーサ部の高さをこのような範囲内とすることにより、対向基板に光触媒の作用を効率的に及ぼすことが可能な光触媒含有層付基板とすることができるからである。
【0109】
なお、本工程によりスペーサ部が形成される領域や、スペーサ部の形状等については、上述した「A.光触媒含有層付基板」の項で説明したものと同様とすることができるので、ここでの詳しい説明は省略する。
【0110】
c.その他の工程
本実施態様の光触媒含有層付基板の製造方法は、上記光触媒含有層形成工程、濡れ性変化パターン形成工程、およびスペーサ部形成工程を有するものであれば、特に限定されるものではなく、例えば特性変化パターン形成用領域にパターン形成用遮光部を形成するパターン形成用遮光部形成工程や、特性変化パターン非形成領域にスペーサ部用遮光部を形成するスペーサ部用遮光部形成工程、上記スペーサ部形成工程後に、全面にエネルギーを照射して光触媒含有層全面を親液性とする光触媒含有層親液化工程等を有していてもよい。なお、上記パターン形成用遮光部や、スペーサ部用遮光部等については、上述した「A.光触媒含有層付基板」の項で説明したものと同様とすることができるので、ここでの詳しい説明は省略する。
【0111】
また、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0112】
以下に実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明する。
【0113】
[実施例1]
1.光触媒含有層付基板の形成
テトラメトキシシラン(GE東芝シリコーン(株)製 TSL8114)5gと0.05規定塩酸2.5gとを混合し、24時間攪拌した。次に、この溶液0.1gと光触媒無機コーティング剤(石原産業(株)製 ST-K03)50gとを混合し、1時間常温で撹拌した。これをイソプロピルアルコールにより2倍に希釈し光触媒含有層形成用塗工液とした。この光触媒含有層形成用塗工液を100μmでライン&スペースのパターン(パターン形成用遮光部)及びスペーサ部用遮光部(材質:クロム)が形成されたフォトマスク基板(12.5cm×12.5cm)上に、スピンコーターにより塗布し、その後、150℃で10分間の乾燥処理を行うことにより、厚さ0.15μmの光触媒含有層を形成した。
【0114】
2.スペーサ部の形成
ポリカーボネートが主成分のユーピロンZ400(三菱ガス化学製)50gをジクロロメタン30gと112トリクロロエタン70gとに溶解しスペーサ部形成用塗工液とした。
このスペーサ部形成用塗工液を、上記光触媒含有層を介してスペーサ部用遮光部上にディスペンサーにより塗布し、100℃で60分間の乾燥処理を行うことにより、スペーサ部(厚み10μm 幅2mm 長さ10cm 2ライン)を形成し、光触媒含有層付基板とした。
【0115】
3.濡れ性変化層(対向基板)の形成
フルオロアルキルシラン(GE東芝シリコーン(株)製 TSL8233)0.4gとテトラメトキシシラン(GE東芝シリコーン(株)製 TSL8114)5gと0.02規定塩酸2.5gとを混合し8時間攪拌した。これをイソプロピルアルコールにより100倍に希釈し濡れ性変化層用組成物とした。次に、透明基板上に、上記濡れ性変化層用組成物をスピンコーターにより塗布し、その後、150℃で10分間の乾燥処理を行うことにより、濡れ性変化層(厚み0.1μm)を形成した。
【0116】
4.パターン形成工程
前記スペーサ部を有する光触媒含有層付基板と前記濡れ性変化層とをスペーサ部を介して対向させ、光触媒含有層付基板側から超高圧水銀ランプ(波長254nm 10mW/cm)で露光した。30秒露光することで、濡れ性変化層上に親水性の領域と撥水性の領域とからなる100μmのライン&スペース(親水部10°以下、疎水部95°)が形成された。また、上記濡れ性変化層を同様に、200枚露光したが、スペーサ部の劣化はなかった。
【0117】
[実施例2]
1.光触媒含有層付基板の形成
イソプロピルアルコール30gとフルオロアルキルシランが主成分であるMF-160E(トーケムプロダクツ(株)製)0.4gとトリメトキシメチルシラン(東芝シリコーン(株)製、TSL8113)3gと、光触媒である酸化チタン水分散体であるST-K01(石原産業(株)製)20gとを混合し、100℃で20分間撹拌した。これをイソプロピルアルコールにより3倍に希釈し光触媒含有層形成用塗工液とした。この光触媒含有層形成用塗工液を100μmでライン&スペースのパターン(パターン形成用遮光部)及びスペーサ部用遮光部(材質:クロム)が形成されたフォトマスク基板(12.5cm×12.5cm)上に、スピンコーターにより塗布し、その後、150℃で10分間の乾燥処理を行うことにより、厚さ0.15μmの光触媒含有層を形成した。次に、スペーサ部用遮光部上の光触媒含有層を露光することにより、3mm角の親水性部を形成した。
【0118】
2.スペーサ部の形成
ポリカーボネートが主成分のユーピロンZ400(三菱ガス化学製)50gをジクロロメタン30gと112トリクロロエタン70gとに溶解しスペーサ部形成用塗工液とした。
このスペーサ部形成用塗工液を、光触媒含有層を介してスペーサ部用遮光部の親水性部にディスペンサーにより塗布し、100℃で60分間の乾燥処理を行うことにより、スペーサ部(厚み10μm 3mm角 4点)を形成した。その後、全面露光により、光触媒含有層の特性変化パターン形成領域全面を親液性とし、光触媒含有層付基板とした。
【0119】
3.濡れ性変化層(対向基板)の形成
フルオロアルキルシラン(GE東芝シリコーン(株)製 TSL8233)0.4gとテトラメトキシシラン(GE東芝シリコーン(株)製 TSL8114)5gと0.02規定塩酸2.5gとを混合し8時間攪拌した。これをイソプロピルアルコールにより100倍に希釈し濡れ性変化層用組成物とした。次に、透明基板上に、上記濡れ性変化層用組成物をスピンコーターにより塗布し、その後、150℃で10分間の乾燥処理を行うことにより、濡れ性変化層(厚み0.1μm)を形成した。
【0120】
4.パターン形成工程
前記スペーサ部を有する光触媒含有層付基板と前記濡れ性変化層とをスペーサ部を介して対向させ、光触媒含有層付基板側から超高圧水銀ランプ(波長254nm 10mW/cm)で露光した。40秒露光することで、濡れ性変化層上に100μmのライン&スペース(親水部10°以下、疎水部95°)が形成された。また、上記濡れ性変化層を同様に、200枚露光したが、スペーサ部の劣化はなかった。
【図面の簡単な説明】
【0121】
【図1】本発明の光触媒含有層付基板を説明するための説明図である。
【図2】本発明の光触媒含有層付基板の一例を示す概略断面図である。
【図3】本発明に用いられるスペーサ部の形状を説明するための説明図である。
【図4】本発明に用いられるスペーサ部の形状を説明するための説明図である。
【図5】本発明の光触媒含有層付基板の他の例を示す概略断面図である。
【図6】本発明の光触媒含有層付基板の他の例を示す概略断面図である。
【図7】本発明の光触媒含有層付基板の製造方法の一例を示す工程図である。
【図8】本発明の光触媒含有層付基板の製造方法の他の例を示す工程図である。
【符号の説明】
【0122】
1 …光触媒含有層付基板
2 …基体
3 …光触媒含有層
4 …スペーサ部
5 …パターン形成用遮光部
6 …スペーサ部用遮光部
11…対向基板
20…エネルギー
a …特性変化パターン形成用領域
b …特性変化パターン非形成領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体と、前記基体上に形成され、少なくとも光触媒を含有する光触媒含有層と、スペーサ部とを有し、
スペーサ部を介して対向して配置される対向基板に、エネルギー照射に伴う光触媒の作用を及ぼして、特性の変化した特性変化パターンを形成するために用いられる光触媒含有層付基板であって、
前記スペーサ部が、前記特性変化パターンの形成に寄与しない特性変化パターン非形成領域に形成されていることを特徴とする光触媒含有層付基板。
【請求項2】
前記スペーサ部と前記基体との間に、スペーサ部用遮光部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の光触媒含有層付基板。
【請求項3】
前記特性変化パターンの形成に寄与する特性変化パターン形成用領域内にパターン形成用遮光部を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の光触媒含有層付基板。
【請求項4】
基体と、前記基体上に形成され、少なくとも光触媒を含有する光触媒含有層と、スペーサ部とを有し、
スペーサ部を介して対向して配置される対向基板に、エネルギー照射に伴う光触媒の作用を及ぼして、特性の変化した特性変化パターンを形成するために用いられる光触媒含有層付基板の製造方法であって、
前記基体上に、撥液性を有する光触媒含有層形成用塗工液を塗布して前記光触媒含有層を形成する光触媒含有層形成工程と、
前記特性変化パターンの形成に寄与しない特性変化パターン非形成領域の前記光触媒含有層上に、ノズル吐出法によりスペーサ部形成用塗工液を塗布し、スペーサ部を形成するスペーサ部形成工程と
を有することを特徴とする光触媒含有層付基板の製造方法。
【請求項5】
基体と、前記基体上に形成され、少なくとも光触媒を含有する光触媒含有層と、スペーサ部とを有し、
スペーサ部を介して対向して配置される対向基板に、エネルギー照射に伴う光触媒の作用を及ぼして、特性の変化した特性変化パターンを形成するために用いられる光触媒含有層付基板の製造方法であって、
基体上に、撥液性を有する光触媒含有層形成用塗工液を塗布して光触媒含有層を形成する光触媒含有層形成工程と、
前記特性変化パターンの形成に寄与しない特性変化パターン非形成領域の前記光触媒含有層にパターン状にエネルギーを照射し、前記光触媒含有層上に液体との接触角が低下した濡れ性変化パターンを形成する濡れ性変化パターン形成工程と、
前記濡れ性変化パターン上に、ノズル吐出法によりスペーサ部形成用塗工液を塗布し、スペーサ部を形成するスペーサ部形成工程と
を有することを特徴とする光触媒含有層付基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−218410(P2006−218410A)
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−34651(P2005−34651)
【出願日】平成17年2月10日(2005.2.10)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】