説明

光触媒固着基材及びその製造方法。

【課題】
光触媒の酸化作用による変色や劣化を防いだ上に、光触媒が持つ消臭、抗菌および防汚等の機能を十分発揮しうるように光触媒を基材に固着する技術を提供することにある。
【解決手段】
光触媒とバインダー樹脂と水よりも高沸点の有機溶媒とからなる混合バインダー樹脂水溶液を各種基材に塗布し、その後、加熱乾燥することにより水を蒸発させ、その後さらに加熱乾燥することにより、光触媒表面から水よりも高沸点の有機溶媒を取り除くことによって、光触媒の能力が十分発揮されることを見出し、本発明に至ったものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内装外装を問わず各種基材に光触媒を固着させ、光触媒の各種機能を発揮させる技術に関するものであり、特に衣料や、カーテン、カーペット、壁紙等のインテリア用品、車両等のシート地、天井材などの基材に広く応用でき、消臭、抗菌および防汚等の機能を有する基材を製作するものである。
【背景技術】
【0002】
従来技術として、消臭、抗菌および防汚等の機能に関する技術は多く知られている。例えば、活性炭の優れた吸着作用を利用した消臭剤が市場に多く出されているが、これらは悪臭成分を素早く吸着し、周辺の臭気濃度を短期的に低下さす働きには優れているが、悪臭成分の量が減少するわけではなく、悪臭成分が再放出されることもあり有効期間に限りのある消臭方法とされている。
【0003】
また、消臭スプレーを、直接臭気を発するものに吹きつけ消臭するものも市場に多く出されているが、この方法は、芳香剤等の働きにより、一時的に臭いは消えるものの、時間がたてば再び臭気が発生し根本的な解決には到っていない。
【0004】
次ぎに、悪臭成分を分解して消臭する方法としては、フタロシアニンが良く知られているが、全ての悪臭に有効なものではなく、タバコ臭や、人体の汗の臭いであるイソ吉草酸等の悪臭に対しては有効な消臭方法とは言いがたいものである。
【0005】
その他では、悪臭成分を分解して消臭する方法として、光触媒が良く知られている。光触媒のなかでも酸化チタン光触媒は、水中のハロゲン含有有機物を炭酸ガスと水に分解したり、たばこ臭や、人体の汗の臭いであるイソ吉草酸等の悪臭を消臭したり、布に付着したたばこのヤニ等の着色物質を分解する防汚効果もあることがよく知られている。
【0006】
また、酸化チタン光触媒は、その強力な酸化力によって、大腸菌などを殺す機能もあることは確認されており、抗菌効果のあることも知られている。
【0007】
しかしながら、光触媒はそのような有益な機能を有する反面、光触媒を直接繊維布帛等の有機物にバインダー樹脂等によって担持させると、光触媒の強い酸化分解力によって、バインダー樹脂や繊維布帛が有機質の炭化水素を含む樹脂であるため分解されたり中間生成物を発生して、着色したり、異臭が発生するなどの諸問題が生じていた。そのため、使用が限定され、酸化に強いタイルやガラス等の無機の担持素材で使用されることが多かった。
【0008】
これを改善するため特許文献1においては、繊維布帛に酸化チタン光触媒をシリコーン架橋型樹脂で固定することにより、使用に際して繊維布帛に変色や劣化がなく、持続性のある優れた消臭、抗菌および防汚機能を有する繊維布帛の技術を開示している。
【0009】
また、出願人は特許文献2において、バインダー樹脂としてアクリルシリコン系バインダー樹脂を使用することにより、繊維布帛に変色や劣化がなく、持続性のある優れた消臭、抗菌および防汚機能を有する繊維布帛の技術を開示している。
【0010】
【特許文献1】特開平10−1879
【特許文献2】特開2005−097773
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記方法は、バインダー樹脂を使用することから、繊維布帛に固定する光触媒の表面をバインダー樹脂が覆いながら担持することになるので、光触媒の能力が100%発揮されるものとはなっていなかった。本発明の課題は、上述の事情に鑑み、光触媒の酸化作用による基材やバインダー樹脂の変色や劣化を防いだ上に、光触媒が持つ消臭、抗菌および防汚等の機能を十分発揮しうるように光触媒を基材に固着する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、変色や劣化を完全に防いだ上に、光触媒が持つ消臭、抗菌および防汚等の機能を十分発揮しうる光触媒固着基材を提供すべく検討を行なった結果、光触媒とバインダー樹脂と、水よりも高沸点の有機溶媒とからなる混合バインダー樹脂水溶液により光触媒を各種基材に加熱固定し、その後さらに加熱乾燥することにより光触媒表面から水よりも高沸点の有機溶媒を取り除くことによって、光触媒の能力が十分発揮されるようになることを見出し、本発明に至ったものである。上記課題を達成するために以下の手段を提供する。
【0013】
[1]光触媒とバインダー樹脂と、水よりも高沸点の有機溶媒とからなる混合バインダー樹脂水溶液を基材に塗布し、光触媒を固着した基材であって、前記水よりも高沸点の有機溶媒を蒸発除去したことに特徴のある光触媒固着基材。
【0014】
[2]前記光触媒の粒径が5nm〜50μmである前項1記載の光触媒固着基材。
【0015】
[3]前記光触媒の基材への付着量が、基材100重量部に対し、0.1〜25重量%である前項1又は2記載の光触媒固着基材。
【0016】
[4]前記基材が繊維布帛であって、前記バインダー樹脂がアクリルシリコン系バインダー樹脂であり、前記水よりも高沸点の有機溶媒が非極性有機溶媒であって、前記水よりも高沸点の有機溶媒と前記バインダー樹脂の混合比率は、90:10〜10:90であることを特徴とする前項1〜3のいずれかの項に記載の光触媒固着基材。
【0017】
[5]光触媒とバインダー樹脂と、水よりも高沸点の有機溶媒とを混合して混合バインダー樹脂水溶液を製造する工程と、基材に混合バインダー樹脂水溶液を塗布する工程と、次に該基材を加熱乾燥して水分を蒸発させ、光触媒とバインダー樹脂と、水よりも高沸点の有機溶媒を基材に固着する工程と、その後さらに加熱して水よりも高沸点の有機溶媒を蒸発させる工程からなることを特徴とする光触媒固着基材の製造方法。
【発明の効果】
【0018】
[1]の発明によれば、光触媒とバインダー樹脂と、水よりも高沸点の有機溶媒とからなる混合バインダー樹脂水溶液を基材に塗布し乾燥するので、バインダー樹脂が光触媒や基材を覆うようにして光触媒を基材にしっかり固定している。次に、さらに該基材を乾燥することにより水よりも高沸点の有機溶媒を蒸発除去するので、光触媒や基材の表面にバインダー樹脂の付着しない部分が発現し、光触媒に直接光が照射される量が増え、バインダー樹脂で覆われた状態よりも光触媒と悪臭ガスと接触する機会も多くなり、消臭機能を十分発揮することができるようになる。
【0019】
[2]の発明によれば、光触媒の粒径が5nm〜50μmであるので、ザラツキ感がなく、手触り感のよい消臭機能を有する基材とすることができる。
【0020】
[3]の発明によれば、光触媒の基材への付着量が、基材100重量部に対し、0.1〜25重量%であるので、基材の性質を維持したまま、十分な消臭機能を発揮する基材とすることができる。
【0021】
[4]の発明によれば、前記基材が繊維布帛であって、前記バインダー樹脂がアクリルシリコン系バインダー樹脂であるので、アクリルシリコン系バインダー樹脂のシリコン基と光触媒、アクリル基と基材がそれぞれ選択的に結合しやすいことから、基材に直接光触媒が結合することが少なくなるため、基材への光触媒の強い酸化作用の影響が回避され、基材の変色や劣化がなく、かつ持続性のある優れた消臭能を有する光触媒固着基材を得ることができる。また、前記水よりも高沸点の有機溶媒が非極性有機溶媒であるので、水に溶解しないので、100℃以下の加熱乾燥で水だけを除去し、基材と光触媒がしっかり固定される。さらに加熱して有機溶媒の沸点になったとき、有機溶媒が蒸発除去され、光触媒と基材の表面にバインダー樹脂が付着しない部分が発現し、光触媒と悪臭ガスとが接触する機会が増加し、消臭効率を向上することができる。また、前記水よりも高沸点の有機溶媒と前記バインダー樹脂の混合比率を、90:10〜10:90とするので、光触媒の基材への固着力が確保され、光触媒の酸化力も十分発揮することができる。
【0022】
[5]の発明によれば、消臭、抗菌、および防汚機能を有する基材の製造方法は、光触媒とバインダー樹脂と、水よりも高沸点の有機溶媒を混合して混合バインダー樹脂水溶液を製造する工程と、基材に混合バインダー樹脂溶液を塗布する工程と、その後基材を加熱乾燥して水分を蒸発させ、光触媒とバインダー樹脂と、水よりも高沸点の有機溶媒を基材に固着する工程と、その後さらに加熱して水よりも高沸点の有機溶媒を蒸発させる工程からなるので、光触媒と水よりも高沸点の有機溶媒がしっかりと基材に固着した後、光触媒表面や基材に付いた水よりも高沸点の有機溶媒が蒸発して取り除かれることから、光触媒に直接光が照射される量が増え、バインダー樹脂で覆われた状態よりも悪臭ガスと接触する面積が大きくなり、消臭機能を十分発揮しうる光触媒固着基材の製造方法とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明の消臭機能を有する基材について詳細に説明する。本発明のメカニズムは十分解明されていないが、バインダー樹脂がアクリルシリコン系バインダー樹脂の場合、光触媒は、アクリルシリコン系バインダー樹脂のシリコン基とシラノール結合で接合し、又アクリルシリコン系バインダー樹脂のアクリル基は、基材と強力に接合する。このように、光触媒が基材に直接結合するのではなく、シリコン基と酸化チタン光触媒、アクリル基と基材がそれぞれ選択的に結合することから、光触媒の酸化作用から基材の変色や劣化を防ぐことができるものである。また、アクリル基を介して基材と光触媒とが間接的に接合することから、基材の柔らかい風合いが守られるものである。光触媒をアクリルシリコン系バインダー樹脂のシリコン基を介して、基材と間接的に固定することにより、光触媒によって基材やバインダー樹脂が侵されない状態を確保したうえで、従来消臭が困難であったタバコ臭、汗臭なども簡単に消臭することができ、また付着したタバコのヤニなどの着色物質を分解して、防汚効果も得ることができるものである。
【0024】
また、水よりも高沸点の有機溶媒はバインダー樹脂と混ざり合い、光触媒と基材に共通に結合する。即ち光触媒表面と基材表面は、100℃までの加熱によりバインダー樹脂と有機溶媒の混合バインダー樹脂の薄膜に覆われ、光触媒が基材に固定される。その後、100℃以上に加熱乾燥すれば、有機溶媒は蒸発しバインダー樹脂のみが残ることから、光触媒表面にバインダー樹脂の付いていない部分が発現し、光触媒への光の照射量が増大し、元々持っている光触媒の酸化力を十分発揮させることができるようになる。
【0025】
本発明に用いる光触媒としては、例えば酸化チタン、酸化タングステン等を挙げることができるが特に限定されない。中でも酸化チタン光触媒は、市場に多く使われていることからコストも安く、入手しやすい。また、酸化チタン光触媒は、その酸化力により、黄色ブドウ球菌などに殺菌力があることは知られており、菌が人体代謝物などを分解する時に発生する悪臭を抑制し、抗菌効果も得ることができるものである。
【0026】
前記光触媒の粒径は、5nm〜50μmであるものが好ましい。光触媒の粒径が50μmを越えると悪臭の分解速度が遅くなり、またざらつき感が発現したり、基材が白くなり好ましくない。また、5nmを下回る粒径とすることは技術的に製造することは困難で、コスト的にも好ましくない。より好ましくは7nm〜5μmがよい。
【0027】
また、前記光触媒の基材への付着量は、基材100重量部に対し、0.1〜25重量%が好ましい。光触媒の基材への付着量が25重量%を越えると風合いが硬くなり、また基材が白化して好ましくない。また、0.1重量%を下回ると悪臭の分解速度が遅く、消臭効果が弱くなり好ましくない。より好ましくは0.7〜10重量%である。
【0028】
次に、水よりも高沸点の有機溶媒とバインダー樹脂との混合比率は90:10〜10:90とするのが好ましい。バインダー樹脂が10を下回ると、繊維布帛と光触媒との接着力が弱くなり好ましくない。また逆にバインダー樹脂が90を上回ると、光触媒の消臭効果が弱くなり好ましくない。さらに好ましい混合比率は80:20〜60:40である。
【0029】
バインダー樹脂と水よりも高沸点の有機溶媒と光触媒の混合溶液を作るには、例えば、バインダー樹脂溶液に光触媒を加え、よく攪拌して光触媒分散バインダー樹脂溶液を作成する。次に水よりも高沸点の有機溶媒を加え攪拌しながら、光触媒混合バインダー樹脂溶液を作る。バインダー樹脂がアクリルシリコン系バインダー樹脂の場合、選択的にシリコン基が光触媒とシラノール結合するため、酸化チタン光触媒の表面にはアクリルシリコン系バインダー樹脂のシリコン基と水よりも高沸点の有機溶媒が混同して接合していることになる。このようにした後、基材に塗布されることにより、アクリルシリコン系バインダー樹脂のアクリル基と水よりも高沸点の有機溶媒が混同して基材と接合することから、酸化チタン光触媒が基材と直接接合するのを防ぎ、さらに柔軟性を保ちながら基材と接合するものである。
【0030】
水よりも高沸点の有機溶媒としては、非極性の有機溶媒が好適で、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、C8以上の鎖状炭化水素や高沸点石油系溶剤(鉱物油)、テルペン油、大豆油、アマニ油、桐油、ヒマシ油等の天然系の溶剤、エーテル系溶剤を挙げることができる。中でもトルエンは、沸点が111℃であるので特に好ましい。
【0031】
酸化チタン光触媒の混入した混合バインダー樹脂水溶液によって酸化チタン光触媒を基材に担持させる方法は、浸漬法とコーティング法を例示できる。
【0032】
浸漬法は、基材をバインダー樹脂と酸化チタン光触媒と水よりも高沸点の有機溶媒の混合水溶液に浸漬した後マングルで絞り、これを乾燥させることによって繊維布帛に酸化チタン光触媒を担持させるもので均一に担持することができる。
【0033】
コーティング法は、基材にバインダー樹脂と酸化チタン光触媒と水よりも高沸点の有機溶媒の混合水溶液をコーティングした後乾燥させることによって基材に酸化チタン光触媒を担持させるもので、生産性を顕著に向上でき、担持量も精度高く制御できる。前記コーティング方法は、特に限定されるものではないが、例えばグラビアロール加工、スプレー加工、ロールコーター加工、ジェットプリント加工、転写プリント加工、スクリーンプリント加工等を例示することができる。
【0034】
コーティング法は、混合バインダー樹脂溶液を基材上に皮膜状に層となって全面接着するよりも、網目状に接着させることが可能な加工方法として有用な加工である。例えば基材が繊維布帛の場合、混合バインダー樹脂が層となって全面接着するのではなく、網目状に接着させることにより、繊維布帛を構成する糸が相対的に動きうることから、繊維布帛の柔軟性が確保されることと、繊維布帛に消臭、抗菌、防汚以外の機能性を付与する部分としての空間を残すことができ、難燃、撥水、撥油等の機能をさらに付与することができる。
【0035】
また、例えば基材が繊維布帛の場合では、光触媒の粒径は酸化作用の効果から小さいほど好ましく、また繊維径の10分の1以下の粒径のものが、繊維からの脱落のし難さの面から好ましく、20μm以下が推奨される。
【0036】
本発明に使用されるアクリルシリコン系バインダー樹脂は、共栄社化学製S−60NFEを使用した。
【0037】
シリコン基の末端が
【化01】

であるため、光触媒と優先的にシラノール結合で強く接合する。
【0038】
また、アクリル基は繊維との密着性に富み、物理的に強く結合する。特に、有機繊維であるアクリル、ナイロン、ポリエステル等の繊維との結合力は非常に強く、アクリル基が優先的に繊維布帛に結合し、接着部の柔軟性が確保され、耐久性も十分なものとなる。
【0039】
このようにして第一工程として光触媒とバインダー樹脂と、水よりも高沸点の有機溶媒を混合して混合バインダー樹脂水溶液を製造する。次に第二工程として、基材に混合バインダー樹脂水溶液を塗布する。さらに第三工程として、基材を100℃まで加熱乾燥して水分を蒸発させ、光触媒とバインダー樹脂と、水よりも高沸点の有機溶媒を基材に固着する。第四工程として、その後さらに100℃以上に加熱して水よりも高沸点の有機溶媒を蒸発させる工程から光触媒を基材に固着させるのである。これにより、光触媒表面や基材に付いた水よりも高沸点の有機溶媒が蒸発して取り除かれることから、光触媒に直接光が照射される量が増え、バインダー樹脂で覆われた状態よりも悪臭ガスと接触する面積が大きくなり、消臭機能を十分発揮しうる光触媒固着基材の製造方法とすることができる。
【0040】
次ぎに実施例により、本発明を具体的に説明する。なお実施例における各種消臭性能の測定は次のように行った。
(アンモニア消臭性能)
酸化チタン光触媒を担持した基材(繊維布帛10×10cm角)を内容量2リットルのテトラバッグ袋内に入れた後、袋内において濃度が100ppmとなるようにアンモニアガスを注入し、この袋を紫外線ランプ(ナショナル・ブラックライト・ブルーFL20S・BL−B・20ワット)の直下30cmに設置し、紫外線照射強度が3.0mワット/cmになるように微調整を行なった。1時間経過後にアンモニアガスの残存濃度を測定し、この測定値よりアンモニアガスを除去した総量を算出し、これよりアンモニアガスの除去率(%)を算出した。
【0041】
(硫化水素消臭性能)
アンモニアガスに代えて硫化水素ガスを用いて袋内において濃度が10ppmとなるように注入した以外は、上記アンモニア消臭性能測定と同様にして硫化水素ガスの除去率(%)を算出した。
【0042】
(メチルメルカプタン消臭性能)
アンモニアガスに代えてメチルメルカプタンガスを用いて袋内において濃度が10ppmとなるように注入した以外は、上記アンモニア消臭性能測定と同様にしてメチルメルカプタンガスの除去率(%)を算出した。
【0043】
(酢酸消臭性能)
アンモニアガスに代えて酢酸ガスを用いて袋内において濃度が10ppmとなるように注入した以外は、上記アンモニア消臭性能測定と同様にして酢酸ガスの除去率(%)を算出した。
【0044】
(アセトアルデヒド消臭性能)
アンモニアガスに代えてアセトアルデヒドガスを用いて袋内において濃度が10ppmとなるように注入した以外は、上記アンモニア消臭性能測定と同様にしてアセトアルデヒドの除去率(%)を算出した。
【0045】
(ホルムアルデヒド消臭性能)
アンモニアガスに代えてホルムアルデヒドガスを用いて袋内において濃度が10ppmとなるように注入した以外は、上記アンモニア消臭性能測定と同様にしてホルムアルデヒドの除去率(%)を算出した。
【0046】
(トルエン消臭性能)
アンモニアガスに代えてトルエンガスを用いて袋内において濃度が10ppmとなるように注入した以外は、上記アンモニア消臭性能測定と同様にしてトルエンの除去率(%)を算出した。
【0047】
そして、除去率が95%以上であるものを「◎」、除去率が90%以上95%未満であるものを「○」、除去率が85%以上90%未満であるものを「△」、除去率が85%未満であるものを「×」と評価した。
【実施例】
【0048】
<実施例1>
水100重量部に粒径10nmの酸化チタン光触媒1重量部を入れ、攪拌機により攪拌を行ない、次に5重量部のアクリルシリコン系バインダー樹脂(固形分50%)を加え、攪拌機により良く攪拌を行ない、分散液を得た。この分散液にさらに10重量部のトルエンを混入して均一な分散液(処理液)を得た。この処理液に、ポリエステル製のニードルパンチ不織布(目付60g/m)
を浸漬した後、取り出してマングルで絞り、100℃で5分間乾燥させてた後、140℃で2分間乾燥させ消臭性不織布を得た。前記酸化チタン光触媒の不織布への付着量は1.5重量%であった。次にこの酸化チタン光触媒の付着した不織布を、上記の各種ガスの消臭試験をおこない除去率を表に記載した。
【0049】
<実施例2>
次に、実施例1において、酸化チタン光触媒2重量部に5重量部のアクリルシリコン系バインダー樹脂(固形分50%)を加えた以外は実施例1と同様にして、消臭不織布を得た。酸化チタン光触媒の不織布への付着量は3.0重量%であった。
【0050】
<実施例3>
次に、実施例1において、粒径10nmの酸化チタン光触媒を粒径5μmとした以外は実施例1と同様にして、消臭不織布を得た。酸化チタン光触媒の不織布への付着量は1.5重量%であった。
【0051】
<実施例4>
実施例1において、粒径10nmの酸化チタン光触媒を粒径40μmとした以外は実施例1と同様にして、消臭不織布を得た。酸化チタン光触媒の不織布への付着量は1.5重量%であった。
【0052】
<比較例1>
実施例1において、水110重量部とし、トルエンを使用しなかった以外は実施例1と同様にして、消臭不織布を得た。酸化チタン光触媒の不織布への付着量は1.5重量%であった。
【0053】
<比較例2>
実施例1において、100℃で乾燥させなくて、140℃で5分間乾燥させ消臭性不織布を得たところ、不織布にしっかりと固着できないで、酸化チタン光触媒の一部が脱落する状況で、実用的ではなかった。
【表1】

【0054】
表1から解るように、トルエンを使用していない比較例1では、硫化水素、メチルメルカプタン、酢酸、アセトアルデヒド、ホルムアルデヒド、トルエンの消臭において十分な効果を発揮していないのに対して、水よりも高沸点の有機溶媒としてトルエンを使用した実施例1〜4は、試験を行なった全てのガスにおいて90%以上の消臭効果が有り、高沸点の有機溶媒の効果が確認できた。また、実施例2は、実施例1よりも酸化チタン光触媒の付着量が多いためその効果も大きくなっており、実施例1、実施例3、実施例4と酸化チタン光触媒の粒径が大きくなるにつれて、有効表面積が減少するので、効果も少なくなっているが、全てのガスにおいて十分な消臭能力を有している。
【0055】
また、図1は実施例1において、ポリエステル製のニードルパンチ不織布をポリエステルフィルムとしたときの電子顕微鏡写真であるが、フィルム表面に細泡が発現している様子が観察される。これに対し図2は、比較例1において、ポリエステル製のニードルパンチ不織布をポリエステルフィルムとしたときの電子顕微鏡写真であるが、フィルム表面に変化がなく、均一にバインダー樹脂がフィルム表面を覆っている様子が観察される。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】ポリエステルフィルムに本発明の加工を施した電子顕微鏡写真。
【図2】ポリエステルフィルムに本発明の加工のうちトルエンを使用しなかった場合の電子顕微鏡写真。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明の技術は、光触媒と基材とを、光触媒の能力が下がることを防ぎながら結合させるもので、利用される分野は広く、衣料や、カーテン、カーペット、壁紙等のインテリア用品、車両等のシート地、天井材、などに内装外装を問わず広く利用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光触媒とバインダー樹脂と、水よりも高沸点の有機溶媒とからなる混合バインダー樹脂水溶液を基材に塗布し、光触媒を固着した基材であって、前記水よりも高沸点の有機溶媒を蒸発除去したことに特徴のある光触媒固着基材。
【請求項2】
前記光触媒の粒径が5nm〜50μmである請求項1記載の光触媒固着基材。
【請求項3】
前記光触媒の基材への付着量が、基材100重量部に対し、0.1〜25重量%である請求項1又は2記載の光触媒固着基材。
【請求項4】
前記基材が繊維布帛であって、前記バインダー樹脂がアクリルシリコン系バインダー樹脂であり、前記水よりも高沸点の有機溶媒が非極性有機溶媒であって、前記水よりも高沸点の有機溶媒と前記バインダー樹脂の混合比率は、90:10〜10:90であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかの項に記載の光触媒固着基材。
【請求項5】
光触媒とバインダー樹脂と、水よりも高沸点の有機溶媒とを混合して混合バインダー樹脂水溶液を製造する工程と、基材に混合バインダー樹脂水溶液を塗布する工程と、次に該基材を加熱乾燥して水分を蒸発させ、光触媒とバインダー樹脂と、水よりも高沸点の有機溶媒を基材に固着する工程と、その後さらに加熱して水よりも高沸点の有機溶媒を蒸発させる工程からなることを特徴とする光触媒固着基材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−80237(P2008−80237A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−262448(P2006−262448)
【出願日】平成18年9月27日(2006.9.27)
【出願人】(390014487)住江織物株式会社 (294)
【Fターム(参考)】