説明

光触媒塗装体および光触媒コーティング液

【課題】 光触媒機能に優れ、長期に亘りその外観変化が抑制される光触媒塗装体およびその形成のために用いられる光触媒コーティング液の提供
【解決手段】 光触媒機能に優れ、また長期に亘りその外観変化が抑制される光触媒塗装体およびその形成のために用いられる光触媒コーティング液が開示されている。本発明による塗装体は、基材表面に光触媒層を備えた光触媒塗装体であって、前記光触媒層が、光触媒性金属酸化物粒子と、シリカ粒子と、樹脂エマルジョンの乾燥物とを含んでなり、前記シリカ粒子が疎水性基を有する物質により被覆又は変性処理されてなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有害ガス分解性、降雨・水洗によるセルフクリーニング性、水洗容易性、VOC(揮発性有機化合物(volatile organic compounds))分解性、抗菌性、防カビ性、抗ウイルス性等の光触媒機能を有する光触媒塗装体に関する。さらに、本発明は、外装、内装等を構成する部材にコーティング層を形成することにより、有害ガス分解性、降雨・水洗によるセルフクリーニング性、水洗容易性、VOC分解性、抗菌性、防カビ性、抗ウイルス性等の光触媒機能を付与可能な光触媒コーティング液に関する。
【背景技術】
【0002】
酸化チタンなどの光触媒が、近年建築物の建造物、構造物、乗物およびそれらを構成する部材、複合材などに利用されている。
【0003】
屋外での利用としては、基材表面に光触媒を坦持させることにより、基材に、光エネルギーを利用してのNOx、SOx等の有害物質の分解機能を付与することが行われている。また、光照射時に親水性となった層表面は、降雨により付着汚れが洗い流される、いわゆるセルフクリーニング機能を有することになる。
【0004】
また屋内での利用としては、基材表面に光触媒を坦持させることにより、基材に、光エネルギーを利用してのVOC等の有害物質の分解機能を付与したり、抗菌機能、防カビ機能、抗ウイルス機能を付与したりすることが行われている。
【0005】
建築物の建造物、構造物、乗物およびそれらを構成する部材、複合材などの場合、生活空間で利用されるために、上記光触媒機能を付与したい基材の表面は、意匠性を持たせたい場合が多い。
そのため、従来より、光触媒層に着色顔料を添加し、意匠性を同時に持たせる提案がなされている(特許文献1;特開2004−051644号公報)。
【0006】
一方、建築物の建造物、構造物、乗物およびそれらを構成する部材、複合材には、基材として樹脂板、壁紙、塗装板、フィルム積層板、化粧板などのように有機物の表面を含む基材が多く、それらの基材では多くの場合意匠性が付与され着色されている。
それらの基材に光触媒層を形成する場合、光触媒機能を発揮するとともに、基材が紫外線や光触媒の分解活性により劣化しにくいこと、すなわち、基材の有する意匠が長期にわたって維持されることが求められる。
【0007】
上記課題を解決する1つの方法としては基材と光触媒層との間に、光触媒を含有しない中間層を形成する技術が提案されている(特許文献2;特開平7−171408号公報)。
しかしこの方法では工数が増加するためにコスト高になりやすい。
そこで、中間層を形成することなく光触媒機能と基材の紫外線や光触媒の分解活性による劣化抑制機能を同時に発揮しうる技術が求められている。
【0008】
このような基材に直接1コートで光触媒機能を発揮する光触媒コーティング組成物としては、例えば、シラン変性された光触媒粒子と、珪素原紙に結合したアルコキシ基及び/又は水酸基の含有量が7〜20mmol/gであるコロイダルシリカと、珪素原子に結合したアルコキシ基及び又は/水酸基の含有量が1〜20mmol/gである重合体エマルジョン粒子を含んでなる水系有機・無機複合組成物が知られている。(特許文献3;特開2008−222887号公報)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−051644号公報
【特許文献2】特開平7−171408号公報
【特許文献3】特開2008−222887号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明者らは、今般、パーフルオロ基を有する物質により被覆又は変性処理したシリカ粒子を、光触媒性金属酸化物粒子と樹脂エマルジョンとを含むコーティング液により形成された光触媒層が、未処理のシリカ粒子をそのまま用いて形成した光触媒層に比較して顕著に改善された光触媒機能を有することを見出した。本発明はかかる知見に基づくものである。
【0011】
したがって、本発明は、光触媒機能に優れ、長期に亘りその外観変化が抑制される光触媒塗装体およびその形成のために用いられる光触媒コーティング液の提供をその目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
そして、本発明による光触媒塗装体は、基材表面に光触媒層を備えた光触媒塗装体であって、前記光触媒層は、光触媒性金属酸化物粒子と、シリカ粒子と、樹脂エマルジョンの乾燥物と、を備え、前記シリカ粒子はパーフルオロ基を有する物質により被覆或いは変性処理されている。
【0013】
また、本発明による光触媒コーティング液は、光触媒性金属酸化物粒子と、シリカ粒子と、樹脂エマルジョンと、溶媒と、を備え、前記シリカ粒子は、パーフルオロ基を有する物質により被覆或いは変性処理されている。
【0014】
本発明による光触媒塗装体は、光触媒機能に優れる。さらに本発明の好ましい態様によれば、基材の光触媒による浸食や紫外線劣化が抑制され、光触媒層が透明な場合には基材の意匠を活かすことができ、光触媒層に着色顔料が含有されている場合には基材隠蔽性に優れ、光触媒層により意匠を付与することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
光触媒塗装体
本発明による光触媒塗装体は、基材表面に光触媒層を備えた光触媒塗装体であって、前記光触媒層は、光触媒性金属酸化物粒子と、シリカ粒子と、樹脂エマルジョンの乾燥物とを含んでなり、前記シリカ粒子がパーフルオロ基を有する物質により被覆又は変性処理されている。パーフルオロ基を有する物質により被覆又は変性処理されたシリカ粒子を用いることにより、意外なことにシリカ粒子をそのまま添加した場合よりも顕著に光触媒活性を増加させることができる。また長期に亘り塗装体の外観変化が抑制される。
【0016】
なお、本発明でいう光触媒層とは、基材表面に光触媒粒子を含むコーティング液を適用して形成される部分を言う。その部分に光触媒粒子が存在すればどのような形態であってもよい。すなわち、完全に膜状になっていても良く、部分的に膜状になっていても良い。また、基材表面上に島状に離散して存在していても良い。
【0017】
本発明の好ましい形態によれば、パーフルオロ基を有する物質は、パーフルオロ基を有するシラン及び/又はパーフルオロ基を有するシリコーンである。これら物質は、シリカ粒子と共通するシロキサン結合を有するため、カップリング処理等により、これら物質によるシリカ表面の被覆、変性が容易に行える。
【0018】
本発明の好ましい形態によれば、前記光触媒層の膜厚は、3μmを超え3mm未満であるようにする。3μmを超えることで、光触媒層による紫外線の隠蔽性が高まり、基材への紫外線の影響を低めることができる。その結果、紫外線による基材の劣化を有効に抑制できる。また、光触媒層に着色顔料が含有されている場合には、基材の隠蔽性が十分に得られ、光触媒層により基材に意匠を付与することができる。また、3mm未満であることで、塗膜としての基本性状が維持されるとともに、適切な養生時間での塗膜形成が可能となる。
【0019】
本発明の好ましい形態によれば、光触媒層は透明とされる。光触媒層が透明であることで、基材の有する意匠をそのまま利用することができる。ここで、「透明」の度合いとしては、波長550nmにおいての光触媒層の直線透過率を50%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上確保するとより好ましい。
【0020】
本発明の好ましい形態によれば、樹脂エマルジョンの乾燥物の含量は、樹脂エマルジョン、光触媒性金属酸化物粒子、およびシリカ粒子の固形分の合計質量に対して50%以上、好ましくは70%以上、最も好ましくは85%以上であるようにする。このような含量とすることで、光触媒層の透明性を確保しやすくなる。
【0021】
本発明の一つの好ましい形態によれば、光触媒層は更に着色顔料を含むことができる。光触媒層が着色顔料により着色されていることで、基材の隠蔽性が得られ、また光触媒層により基材に意匠を付与することができる。
【0022】
本発明の好ましい形態によれば、樹脂エマルジョンは、シリコーンエマルジョン及び/又はフッ素樹脂エマルジョンである。これらエマルジョンの利用により、屋外の苛酷な条件での使用の際にも、優れた光触媒分解機能が発揮され、かつ長期に亘り基材の外観変化が抑制される。
【0023】
本発明の好ましい形態によれば、樹脂エマルジョンの平均粒径は、光触媒性金属酸化物粒子および前記シリカ粒子の平均粒径よりも大とする。これにより、光触媒性金属酸化物粒子が光触媒層表面方向に移動し、光触媒の基材への影響が小さくなると考えられることから好ましい。
【0024】
本発明の好ましい形態によれば、光触媒性金属酸化物粒子としては、アナターゼ型酸化チタン、ルチル型酸化チタン、ブルッカイト型酸化チタンなどの酸化チタン、酸化錫、酸化亜鉛、チタン酸ストロンチウム、酸化タングステン、酸化セリウムのような金属酸化物の粒子、これら粒子を複数種複合させた粒子、これら粒子に銅、白金、鉄、パラジウム、銀、金、酸化第一銅、酸化第二銅等を複合又はドープした粒子、これら粒子の表面をシランやシリコーンや加水分解性金属塩で被覆又は変性処理した粒子等が好適に利用可能である。
【0025】
本発明の好ましい形態によれば、光触媒性金属酸化物粒子は10nm以上100nm未満の平均粒径を有するのが好ましく、より好ましくは10nm以上60nm以下である。なお、この平均粒径は、走査型電子顕微鏡により20万倍の視野に入る任意の100個の粒子の長さを測定した個数平均値として算出される。
【0026】
粒子の形状としては真球が最も良いが、略円形や楕円形でも良く、その場合の粒子の長さは((長径+短径)/2)として略算出される。この範囲内であると、耐候性、有害ガス分解性が効率良く発揮されるとともに、透明性、塗膜強度等が良好になる。
【0027】
また、本発明の好ましい態様によれば、光触媒性金属酸化物粒子は3nm以上30nm未満の平均結晶子径を有するのが好ましく、より好ましくは5nm以上20nm以下である。なお、この平均粒径は、粉末X線回折法により得られるX線プロファイルの3強線の積分幅からシェラー式により算出される。
【0028】
本発明の好ましい形態によれば、光触媒性金属酸化物粒子の含有量は、乾燥質量(固形分質量)で、前記樹脂エマルジョン、前記光触媒性金属酸化物粒子および前記シリカ粒子の合計質量に対して0.1質量%を超え15質量%未満、より好ましくは0.5質量%を超え5質量%未満であるようにする。
【0029】
本発明の好ましい形態によれば、シリカ粒子は、好ましくは5nmを超え100nm以下、より好ましくは10nmを超え50nm以下の平均粒径を有する。なお、この平均粒径は、走査型電子顕微鏡により20万倍の視野に入る任意の100個の粒子の長さを測定した個数平均値として算出される。粒子の形状としては真球が最も良いが、略円形や楕円形でも良く、その場合の粒子の長さは((長径+短径)/2)として略算出される。このようなシリカ粒子を用いることで、塗膜強度を向上させつつ、光触媒分解活性を向上させることができるため有利である。
【0030】
シリカ粒子を被覆または変性処理するパーフルオロ基を有する物質としては、例えば、シリカ粒子に結合するための官能基およびパーフルオロ基を有する物質が好適に利用できる。具体的には、パーフルオロ基を有する加水分解性シラン、パーフルオロ基を有する加水分解性シリコーン、パーフルオロ基を有するビニル基含有フッ素樹脂、パーフルオロ基を有するビニル基含有炭化水素樹脂、パーフルオロ基を有する(メタ)アクリル官能基含有フッ素樹脂、パーフルオロ基を有するアクリル官能基含有炭化水素樹脂、パーフルオロ基を有するエポキシ官能基含有フッ素樹脂、パーフルオロ基を有するエポキシ官能基含有炭化水素樹脂、パーフルオロ基を有するシリル基含有フッ素樹脂、パーフルオロ基を有するシリル基含有炭化水素樹脂、それらの物質に変性基が置換された物質、それらの物質のブロック共重合体等が好適に利用できる。被覆または変性処理に用いる物質の量は、シリカ量に対して0.1〜20質量%が好ましく、より好ましくは1〜10質量%である。
【0031】
パーフルオロ基を有する加水分解性シランとしては、例えば、3,3,3−トリフロロプロピルトリメトキシシラン、3,3,3−トリフロロプロピルトリエトキシシラン等のモノアルコキシシラン類等を挙げることができる。また、これらは、単独で使用することができる。また、2種以上又は他の加水分解性シランを混合して使用することができる。
【0032】
本発明において用いるパーフルオロ基を有する加水分解性シリコーンとしては、上記シランモノマー単位の加水分解・縮合部位を含むシリコーン好適に利用できる。
【0033】
本発明において用いる樹脂エマルジョンとしては、例えば、フッ素樹脂、シリコーン、アクリルシリコーン、酢酸ビニル、酢酸ビニルアクリル、アクリルウレタン、アクリル、エポキシ、塩化ビニル酢酸ビニル、塩化ビニリデン、SBRラテックス等のエマルジョンが利用できる。
【0034】
フッ素樹脂エマルジョンとしては、例えばポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、ポリクロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、エチレン−テトラフルオロエチレンコポリマー、エチレン−クロロトリフルオロエチレンコポリマー、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテルコポリマー、パーフルオロシクロポリマー、ビニルエーテル−フルオロオレフィンコポリマー、ビニルエステル−フルオロオレフィンコポリマー、テトラフルオロエチレン−ビニルエーテルコポリマー、クロロトリフルオロエチレン−ビニルエーテルコポリマー、テトラフルオロエチレンウレタン架橋体、テトラフルオロエチレンエポキシ架橋体、テトラフルオロエチレンアクリル架橋体、テトラフルオロエチレンメラミン架橋体等フルオロ基を含有するポリマーのエマルジョンが好適に利用できる。
【0035】
また、シリコーンのエマルジョンとしては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリクロシラン、メチルトリブロムシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、メチルトリt−ブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリクロルシラン、エチルトリブロムシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリt−ブトキシシラン、nープロピルトリメトキシシラン、nープロピルトリエトキシシラン、nープロピルトリクロシラン、nープロピルトリブロムシラン、nープロピルトリイソプロポキシシラン、nープロピルトリt−ブトキシシラン、nーヘキシルトリメトキシシラン、nーヘキシルトリエトキシシラン、nーヘキシルトリクロシラン、nーヘキシルトリブロムシラン、nーヘキシルトリイソプロポキシシラン、nーヘキシルトリt−ブトキシシラン、nーデシルトリメトキシシラン、nーデシルトリエトキシシラン、nーデシルトリクロシラン、nーデシルトリブロムシラン、nーデシルトリイソプロポキシシラン、nーデシルトリt−ブトキシシラン、nーオクタトリメトキシシラン、nーオクタトリエトキシシラン、nーオクタトリクロシラン、nーオクタトリブロムシラン、nーオクタトリイソプロポキシシラン、nーオクタトリt−ブトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリクロシラン、フェニルトリブロムシラン、フェニルトリイソプロポキシシラン、フェニルトリt−ブトキシシラン、ジメチルジクロルシラン、ジメチルジブロムシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジクロルシラン、ジフェニルジブロムシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、フェニルメチルジクロルシラン、フェニルメチルジブロムシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、フェニルメチルジエトキシシラン、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリブロムシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリt−ブトキシシラン、トリフルオロプロピルトリクロルシラン、トリフルオロプロピルトリジブロムシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリクロルシラン、トリフルオロプロピルトリイソプロポキシシラン、トリフルオロプロピルトリt−ブトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリt−ブトキシシラン、γ−メタアクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタアクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタアクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタアクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタアクリロキシプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−メタアクリロキシプロピルトリt−ブトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−アミノメタアクリロキシプロピルトリt−ブトキシシラン、γ−メチルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メチルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メチルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メチルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−メチルカプトプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−メチルカプトプロピルトリt−ブトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシランの加水分解、脱水縮重合物などのエマルジョンが好適に利用できる。
【0036】
本発明による塗装体が含んでいてもよい着色顔料としては、無機顔料が長期に亘る外観変化を抑制しやすく好ましい。無機顔料としては、酸化チタン、亜鉛華、ベンガラ、酸化クロム、コバルトブルー、鉄黒などの金属酸化物系、アルミナホワイト、黄色酸化鉄などの金属水酸化物系、紺青などのフェロシアン化合物系、黄鉛、ジンクロメート、モリブデンレッドなどのクロム酸鉛系、硫化亜鉛、朱、カドミウムイエロー、カドミウムレッドなどの硫化物、セレン化合物、バライト、沈降性硫酸バリウムなどの硫酸塩系、重質炭酸カルシウム、沈降性炭酸カルシウムなどの炭酸塩系、含水珪酸塩、クレイ、群青などの珪酸塩系、カーボンブラックなどの炭素系、アルミニウム粉、ブロンズ粉、亜鉛粉などの金属粉系、雲母・酸化チタン系などのパール顔料系などが挙げられる。
【0037】
本発明による塗装体にあっては、光触媒層中に親水性シリカ粒子以外の無機酸化物粒子が含まれていてもよい。無機酸化物粒子は、光触媒粒子と共に層を形成可能な無機酸化物の粒子であれば特に限定されず、種々の無機酸化物の粒子が使用可能である。そのような無機酸化物粒子の例としては、アルミナ、ジルコニア、セリア、イットリア、酸化錫、酸化鉄、酸化マンガン、酸化ニッケル、酸化コバルト、ハフニア等の単一酸化物の粒子;およびチタン酸バリウム、ケイ酸カルシウム、ホウ酸アルミニウム、チタン酸カリウム等の複合酸化物の粒子が挙げられる。
【0038】
本発明の好ましい態様によれば、さらに高い光触媒能を発現するために、バナジウム、鉄、コバルト、ニッケル、パラジウム、亜鉛、ルテニウム、ロジウム、銅、銀、白金および金からなる群より選ばれる少なくとも一種の金属および/またはその金属からなる金属化合物を塗装体は含んでいてもよい。これらの化合物は後述するコーティング液に混合させて光触媒層に存在させてもよく、またこれら化合物を光触媒粒子に担持させることで、光触媒層中に存在させることができる。
【0039】
本発明による塗装体の光触媒層は、有機防カビ剤が配合されていてもよく、その具体例としては、有機窒素硫黄系化合物、ピリチオン系化合物、有機ヨウ素系化合物、トリアジン系化合物、イソチアゾリン系化合物、イミダゾール系化合物、ピリジン系化合物、ニトリル系化合物、チオカーバメート系化合物、チアゾール系化合物、有機よう素化合物、ジスルフィド系化合物が挙げられ、単独もしくは混合物として用いられる。防カビ剤は一般に藻を防ぐ効果も合わせ持つものが多いことから、防カビ剤を添加することによって、カビと藻の両方を抑制することも期待できる。
【0040】
本発明による塗装体の光触媒層は、紫外線吸収剤を含んでいてもよい。紫外線吸収剤の含有量は、光触媒活性及び/又は親水性の発現を阻害せずに耐候性を向上できる量であれば限定されない、例えば、光触媒体に0.001〜10質量%、好ましくは0.01〜5質量%である。
【0041】
本発明において利用可能は紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系紫外線吸収剤を好ましいものとして例示することができる。
【0042】
とりわけ、トリアジン系紫外線吸収剤が化学的に安定なため好ましい。トリアジン系紫外線吸収剤として具体的には、ヒドロキシフェニルトリアジンまたはその誘導体が好適に利用できる。
【0043】
上記ベンゾフェノン系の紫外線吸収剤としては、具体的には、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−ドデシルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ベンジルオキシベンゾフェノン、ビス(5−ベンゾイル−4−ヒドロキシ−2−メトキシフェニル)メタン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’ジメトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、4−ドデシルオキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−2’−カルボキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ステアリルオキシベンゾフェノン、オクタベンゾン、及び2−ヒドロキシ−4−アクリロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メタクリロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−5−アクリロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−5−メタクリロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(アクリロキシ−エトキシ)ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(メタクリロキシ−エトキシ)ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(メタクリロキシ−ジエトキシ)ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(アクリロキシ−トリエトキシ)ベンゾフェノン等の重合性のベンゾフェノン系紫外線吸収剤やそれらの(共)重合物などが挙げられる。
【0044】
また、上記ベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤として具体的には、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−3’,5’−ビス(α,α’−ジメチルベンジル)フェニル〕ベンゾトリアゾール)、メチル−3−〔3−tert−ブチル−5−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシフェニル〕プロピオネートとポリエチレングリコール(分子量300)との縮合物(日本チバガイギー(株)製、製品名:TINUVIN−1130)、イソオクチル−3−〔3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル〕プロピオネート(日本チバガイギー(株)製、製品名:TINUVIN−384)、2−(3−ドデシル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール(日本チバガイギー(株)製、製品名:TINUVIN−571)、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−4’−オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−3’−(3”,4”,5”,6”−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5’−メチルフェニル 〕ベンゾトリアゾール、2,2−メチレンビス〔4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール〕、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール(日本チバガイギー(株)製、製品名:TINUVIN−900)、及び2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール(大塚化学(株)製、製品名:RUVA−93)、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロキシエチル−3−tert−ブチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリリルオキシプロピル−3−tert−ブチルフェニル)−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、3−メタクリロイル−2−ヒドロキシプロピル−3−〔3’−(2”−ベンゾトリアゾリル)−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチル〕フェニルプロピオネート(日本チバガイギー(株)製、製品名:CGL−104)等の重合性のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤やそれらの(共)重合物の他、TINUVIN−384−2(製品名、日本チバガイギー(株)製)、TINUVIN−99−2(製品名、日本チバガイギー(株)製)、TINUVIN−109(製品名、日本チバガイギー(株)製)、TINUVIN−328(製品名、日本チバガイギー(株)製)、TINUVIN−928(製品名、日本チバガイギー(株)製)などが挙げられる。
【0045】
また、本発明の好ましい態様によれば、光触媒層はヒンダードアミン系及び/又はヒンダードフェノール系等の光安定剤を更に含有してよい。上記紫外線吸収剤との相乗効果により、本発明の光触媒層は卓越した耐候性、耐光性を示すため好ましい。
【0046】
特に、本発明の好ましい形態によれば、紫外線吸収剤としてヒドロキシフェニルトリアジン化合物を、光安定剤としてヒンダードアミン化合物を配合させるとよい。この組み合わせにより、光触媒層による380nm未満の短波長の紫外線の吸収性能が安定する。
【0047】
本発明において、光触媒層中の光安定剤の含有量は、光触媒活性及び/又は親水性の発現を阻害せずに耐候性を向上できる量であれば制限はないが、例えば光触媒層に0.001〜10質量%、好ましくは0.01〜5質量%含有させることが好ましい。
【0048】
ヒンダードアミン系光安定剤の具体例としては、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)サクシネート、ビス(2,2,6,6−テトラメチルピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)2−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−ブチルマロネート、1−〔2−〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピニルオキシ〕エチル〕−4−〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピニルオキシ〕−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケートとメチル−1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル−セバケートの混合物(日本チバガイギー(株)製、製品名:TINUVIN−292)、ビス(1−オクトキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、TINUVIN−123(製品名、日本チバガイギー(株)製)、TINUVIN−111FDL(製品名、日本チバガイギー(株)製)、TINUVIN292(製品名、日本チバガイギー(株)製)、及び1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルメタクリレート、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルアクリレート、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレート、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルアクリレート、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−イミノピペリジルメタクリレート、2,2,6,6,−テトラメチル−4−イミノピペリジルメタクリレート、4−シアノ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレート、4−シアノ−1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルメタクリレートなどの重合性のヒンダードアミン系紫外線吸収剤やそれらの(共)重合物を挙げることができる。
【0049】
また、ヒンダードフェノール系光安定剤の具体例としては、ビス(3,5−tert−ブチル)−4−ヒドロキシトルエン、TINUVIN−144(製品名、日本チバガイギー(株)製)等を挙げることができる。
【0050】
光触媒コーティング液
本発明の別の態様によれば、上述の本発明による塗装体の形成に好ましい、光触媒コーティング液が提供され、このコーティング液は、光触媒性金属酸化物粒子と、シリカ粒子と、樹脂エマルジョンと、溶媒とを含んでなり、前記シリカ粒子は、パーフルオロ基を有する物質により被覆又は変性処理されてなるものである。
【0051】
本発明によるコーティング液が含む、光触媒性金属酸化物粒子と、シリカ粒子と、樹脂エマルジョンは、上述の塗装体を構成する成分と、液体組成物を構成する状態にあること以外は、実質的に同一のものであってよい。また、それら成分について好ましい態様として挙げられたものも、本発明によるコーティング液において同様に好ましいものとして添加されてよい。
また、コーティング液の組成は、乾燥後に上述した組成を実現するものであればよい。従って、以下の説明は、一部既に説明されたものであるが、以下にその明確性のために重複を問わず説明する。
【0052】
本発明の好ましい形態によれば、樹脂エマルジョンの固形分の含量は、樹脂エマルジョン、光触媒性金属酸化物粒子およびシリカ粒子の固形分の合計質量に対して50%以上、好ましくは70%以上、最も好ましくは85%以上であるようにする。
【0053】
また、着色顔料を含む塗装体を実現するために、本発明の好ましい形態によれば、本発明によるコーティング液は、更に着色顔料を含有することができる。
【0054】
また、本発明の好ましい形態によれば、樹脂エマルジョンは、シリコーンエマルジョン及び/又はフッ素樹脂エマルジョンである。
【0055】
本発明の好ましい形態によれば、コーティング液中において、樹脂エマルジョンの平均粒径は、光触媒性金属酸化物粒子および前記シリカ粒子の平均粒径よりも大とする。これにより、光触媒性金属酸化物粒子が光触媒層表面方向に移動し、光触媒の基材への影響が小さくなると考えられる。
【0056】
本発明の好ましい形態によれば、光触媒性金属酸化物粒子としては、アナターゼ型酸化チタン、ルチル型酸化チタン、ブルッカイト型酸化チタンなどの酸化チタン、酸化錫、酸化亜鉛、チタン酸ストロンチウム、酸化タングステン、酸化セリウムのような金属酸化物の粒子、これら粒子を複数種複合させた粒子、これら粒子に銅、白金、鉄、パラジウム、銀、金、酸化第一銅、酸化第二銅等を複合又はドープした粒子、これら粒子の表面をシランやシリコーンや加水分解性金属塩で被覆、変性処理した粒子等が好適に利用可能である。
【0057】
本発明の好ましい形態によれば、光触媒性金属酸化物粒子は10nm以上100nm未満の平均粒径を有するのが好ましく、より好ましくは10nm以上60nm以下である。なお、この平均粒径は、走査型電子顕微鏡により20万倍の視野に入る任意の100個の粒子の長さを測定した個数平均値として算出される。
【0058】
粒子の形状としては真球が最も良いが、略円形や楕円形でも良く、その場合の粒子の長さは((長径+短径)/2)として略算出される。この範囲内であると、耐候性、有害ガス分解性が効率良く発揮されるとともに、透明性、塗膜強度等が良好になる。
【0059】
また、本発明の好ましい態様によれば、光触媒性金属酸化物粒子は3nm以上30nm未満の平均結晶子径を有するのが好ましく、より好ましくは5nm以上20nm以下である。なお、この平均粒径は、粉末X線回折法により得られるX線プロファイルの3強線の積分幅からシェラー式により算出される。
【0060】
本発明の好ましい形態によれば、コーティング液中の光触媒性金属酸化物粒子の含有量は、乾燥質量(固形分質量)で、前記樹脂エマルジョン、前記光触媒性金属酸化物粒子および前記シリカ粒子の合計質量に対して0.1質量%を超え15質量%未満、より好ましくは0.5質量%を超え5質量%未満であるようにする。
【0061】
本発明の好ましい形態によれば、シリカ粒子は、好ましくは5nmを超え100nm以下、より好ましくは10nmを超え50nm以下の平均粒径を有する。なお、この平均粒径は、走査型電子顕微鏡により20万倍の視野に入る任意の100個の粒子の長さを測定した個数平均値として算出される。粒子の形状としては真球が最も良いが、略円形や楕円形でも良く、その場合の粒子の長さは((長径+短径)/2)として略算出される。
【0062】
シリカ粒子を被覆または変性処理するパーフルオロ基を有する物質としては、例えば、シリカ粒子に結合するための官能基およびパーフルオロ基を有する物質が好適に利用できる。具体的には、パーフルオロ基を有する加水分解性シラン、パーフルオロ基を有する加水分解性シリコーン、パーフルオロ基を有するビニル基含有フッ素樹脂、パーフルオロ基を有するビニル基含有炭化水素樹脂、パーフルオロ基を有する(メタ)アクリル官能基含有フッ素樹脂、パーフルオロ基を有するアクリル官能基含有炭化水素樹脂、パーフルオロ基を有するエポキシ官能基含有フッ素樹脂、パーフルオロ基を有するエポキシ官能基含有炭化水素樹脂、パーフルオロ基を有するシリル基含有フッ素樹脂、パーフルオロ基を有するシリル基含有炭化水素樹脂、それらの物質に変性基が置換された物質、それらの物質のブロック共重合体等が好適に利用できる。被覆または変性処理に用いる物質の量は、シリカ量に対して0.1〜20質量%が好ましく、より好ましくは1〜10質量%である。
【0063】
本発明において用いる樹脂エマルジョンとしては、例えば、フッ素樹脂、シリコーン、アクリルシリコーン、酢酸ビニル、酢酸ビニルアクリル、アクリルウレタン、アクリル、エポキシ、塩化ビニル酢酸ビニル、塩化ビニリデン、SBRラテックス等のエマルジョンが利用できる。
【0064】
本発明によるコーティング液が着色顔料を含む場合、その着色顔料としては無機顔料が長期に亘る外観変化を抑制しやすく好ましい。無機顔料としては、酸化チタン、亜鉛華、ベンガラ、酸化クロム、コバルトブルー、鉄黒などの金属酸化物系、アルミナホワイト、黄色酸化鉄などの金属水酸化物系、紺青などのフェロシアン化合物系、黄鉛、ジンクロメート、モリブデンレッドなどのクロム酸鉛系、硫化亜鉛、朱、カドミウムイエロー、カドミウムレッドなどの硫化物、セレン化合物、バライト、沈降性硫酸バリウムなどの硫酸塩系、重質炭酸カルシウム、沈降性炭酸カルシウムなどの炭酸塩系、含水珪酸塩、クレイ、群青などの珪酸塩系、カーボンブラックなどの炭素系、アルミニウム粉、ブロンズ粉、亜鉛粉などの金属粉系、雲母・酸化チタン系などのパール顔料系などが挙げられる。
【0065】
本発明によるコーティング液は、親水性シリカ粒子以外の無機酸化物粒子を含んでいてもよい。無機酸化物粒子は、光触媒粒子と共に層を形成可能な無機酸化物の粒子であれば特に限定されず、種々の無機酸化物の粒子が使用可能である。そのような無機酸化物粒子の例としては、アルミナ、ジルコニア、セリア、イットリア、酸化錫、酸化鉄、酸化マンガン、酸化ニッケル、酸化コバルト、ハフニア等の単一酸化物の粒子;およびチタン酸バリウム、ケイ酸カルシウム、ホウ酸アルミニウム、チタン酸カリウム等の複合酸化物の粒子が挙げられる。
【0066】
本発明の好ましい態様によれば、本発明によるコーティング液は、さらに高い光触媒能を発現するために、バナジウム、鉄、コバルト、ニッケル、パラジウム、亜鉛、ルテニウム、ロジウム、銅、銀、白金および金からなる群より選ばれる少なくとも一種の金属および/またはその金属からなる金属化合物を含んでいてもよい。
【0067】
本発明による光触媒コーティング液に用いられる溶媒としては、特に限定されないが、水、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール、水およびアルコールの混合溶媒等が特に好適に利用できる。とりわけ、水を溶媒として用いると、塗膜形成時に有機物の揮発、蒸発に伴う異臭、環境汚染を有効に防止できるので好ましい。
【0068】
また、光触媒コーティング液の固形分濃度は特に限定されないが、3〜70質量%、より好ましくは5〜60質量%、最も好ましくは10〜50質量%とするのが、その塗布が容易となり好ましい。なお、光触媒コーティング液中の構成成分の分析は、コーティング液を限外ろ過によって粒子成分と濾液に分離し、それぞれを赤外分光分析、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー、蛍光X線分光分析などで分析し、スペクトルを解析することによって評価することができる。
【0069】
本発明の光触媒コーティング液には、その他、種々の添加剤を配合することができる。
【0070】
本発明の好ましい態様によれば、光触媒コーティング液は、水に可溶又は水と均一分散可能な、沸点が100℃以上の被膜形成助剤を含むことができる。この被膜形成助剤は大部分の水分が気化した後も被膜中に残存し、樹脂エマルション界面を溶解することで融着を促進させ、造膜温度を下げることができる。具体的には、1−ブタノール、イソブチルアルコール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、イソペンチルアルコール、乳酸メチル、乳酸エチル、3−メチル−3−メトキシブタノール等のアルコール類、1,2−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン等のポリオール類、2−ブトキシエタノール、2−フェノキシエタノール、2−エトキシエチルアセタート、2−ブトキシエチルアセタート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセタート等のエチレングリコール誘導体、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、1−メトキシ−2−メチルエチルアセタート、1−エトキシ−2−メチルエチルアセタート、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート等のプロピレングリコール誘導体、3−メトキシブチルアセタート等のブチレングリコール誘導体、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、γ−ブチロラクトン、炭酸プロピレン、ジブチルフタレート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート等のエステル類等を例示することができる。特に、2−エトキシエチルアセタート、2−ブトキシエチルアセタート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセタート、1−エトキシ−2−メチルエチルアセタート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート等のアルキレングリコール誘導体が好ましい。
【0071】
本発明によるコーティング液における上記被膜形成助剤の添加量は、シリコーン樹脂100重量部に対して0〜20重量部、特に1〜15重量部とすることが好ましい。
【0072】
本発明によるコーティング液は、任意成分として界面活性剤を含んでいてもよい。本発明の好ましい態様においては、界面活性剤は、光触媒粒子1重量部に対して、10重量部未満、より好ましくは、0.1〜2重量部程度添加される。
【0073】
本発明によるコーティング液に添加が可能な界面活性剤の例としては、スルホン酸ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルアンモニウム塩、スルホン酸ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルナトリウム塩、脂肪酸ナトリウムセッケン、脂肪酸カリセッケン、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、アルキルサルフェート、アルキルエーテルサルフェート、アルキルサルフェートソーダ塩、アルキルエーテルサルフェートソーダ塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェート、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートソーダ塩、アルキルサルフェートTEA塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートTEA塩、2−エチルヘキシルアルキル硫酸エステルナトリウム塩、アシルメチルタウリン酸ナトリウム、ラウロイルメチルタウリン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、スルホコハク酸ラウリル2ナトリウム、ポリオキシエチレンスルホコハク酸ラウリル2ナトリウム、ポリカルボン酸、オレオイルザルコシン、アミドエーテルサルフェート、ラウロイルザルコシネート、スルホFAエステルナトリウム塩等のアニオン性界面活性剤;ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウラート、ポリオキシエチレンステアレート、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオレエート、ソルビタンアルキルエステル、ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル、ポリエーテル変性シリコーン、ポリエステル変性シリコーン、ソルビタンラウラート、ソルビタンステアレート、ソルビタンパルミテート、ソルビタンオレエート、ソルビタンセスキオレエート、ポリオキシエチレンソルビタンラウラート、ポリオキシエチレンソルビタンステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンオレエート、グリセロールステアレート、ポリグリセリン脂肪酸エステル、アルキルアルキロールアミド、ラウリン酸ジエタノールアミド、オレイン酸ジエタノールアミド、オキシエチレンドデシルアミン、ポリオキシエチレンドデシルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンオクタデシルアミン、ポリオキシエチレンアルキルプロピレンジアミン、ポリオキシエチレンオキシプロピレンブロックポリマー、ポリオキシエチレンステアレート等のノニオン性界面活性剤;ジメチルアルキルベタイン、アルキルグリシン、アミドベタイン、イミダゾリン等の両性界面活性剤、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、アルキルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、テトラデシルメチルベンジルアンモニウムクロライド、ジオレイルジメチルアンモニウムクロライド、1−ヒドロキシエチル−2−アルキルイミダゾリン4級塩、アルキルイソキノリニウムブロマイド、高分子アミン、オクタデシルトリメチルアンモニウムクロライド、アルキルトリメチルアンモニウムクロライド、ドデシルトリメチルアンモニウムクロライド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロライド、ベヘニルトリメチルアンモニウムクロライド、アルキルイミダゾリン4級塩、ジアルキルジメチルアンモニウムクロライド、オクタデシルアミン酢酸塩、テトラデシルアミン酢酸塩、アルキルプロピレンジアミン酢酸塩、ジデシルジメチルアンモニウムクロライド等のカチオン性界面活性剤等が挙げられる。
【0074】
光触媒塗装体の製造方法
本発明の光触媒塗装体は、上記光触媒コーティング液を、基材上に塗布することにより製造することができる。光触媒層の塗装方法は、前記液剤を刷毛塗り、ローラー、スプレー、ロールコーター、フローコーター、ディップコート、流し塗り、スクリーン印刷等、一般に広く行われている方法を利用できる。コーティング液の基材への塗布後は、常温乾燥させればよく、あるいは必要に応じて加熱乾燥してもよい。
【0075】
基材
本発明に用いる基材は、無機材料、有機材料、複層材料を問わず種々の材料であってよく、その形状も限定されない。材料の観点からみた基材の好ましい例としては、金属、セラミック、ガラス、プラスチック、ゴム、石、セメント、コンクリ−ト、繊維、布帛、木、紙、それらの組合せ、それらの積層体、それらの表面に少なくとも一層の被膜を有するものが挙げられる。用途の観点からみた基材の好ましい例としては、建材、建物外装および内装、窓枠、窓ガラス、構造部材、乗物の外装及び塗装、機械装置や物品の外装、防塵カバー及び塗装、交通標識、各種表示装置、広告塔、道路用遮音壁、鉄道用遮音壁、橋梁、ガードレ−ルの外装及び塗装、トンネル内装及び塗装、碍子、太陽電池カバー、太陽熱温水器集熱カバー、ビニールハウス、車両用照明灯のカバー、屋外用照明器具、台、浴室材、キッチンパネル、流し台、レンジ、換気扇、空調、フィルター、便器、浴槽及び上記物品表面に貼着させるためのフィルム、シート、シール等が挙げられる。
【実施例】
【0076】
本発明を以下の例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0077】
実施例1.
(シリカ粒子の表面被覆処理)
シリカ粒子(平均粒径50nm)100重量部に対してパーフルオロアルキルトリアルコキシシラン5重量部を反応させて、疎水化処理されたシリカ粒子を作製した。
(光触媒塗装体の作製)
アナターゼ型酸化チタン粒子(平均結晶子径10nm)1.3質量部、上記疎水化処理されたシリカ粒子8.7質量部、およびメチルフェニルシリル基を有するシリコーンエマルジョンを固形分として90質量部配合した固形分濃度25質量%の光触媒水性コーティング液を調製し、透明な2mm厚のソーダライムガラス基材上に150℃×5分乾燥して、光触媒塗装体を得た。
(光触媒塗装体の評価)
得られた光触媒塗装体の光触媒層を断面観察したところ、膜厚は約7μmであった。
また、光触媒層の550nmの波長の光の透過率は82%であった。
この光触媒塗装体について、光触媒分解活性を、JISR1703−2「光触媒材料のセルフクリーニング性能試験方法−第2部:湿式分解性能」の試験法に従い行った。その結果、MB活性指数は6.5と良好な結果を示した。
【0078】
実施例2.
(シリカ粒子の表面被覆処理)
シリカ粒子(平均粒径50nm)100重量部に対してパーフルオロアルキルトリアルコキシシラン5重量部を反応させて、疎水化処理されたシリカ粒子を作製した。
(光触媒塗装体の作製)
アナターゼ型酸化チタン粒子(平均結晶子径10nm)1.3質量部、上記疎水化処理されたシリカ粒子8.7質量部、およびジメチルシリル基を有するシリコーンエマルジョンを固形分として90質量部配合した固形分濃度25質量%の光触媒水性コーティング液を調製し、透明な2mm厚のソーダライムガラス基材上に150℃×5分乾燥して、光触媒塗装体を得た。
(光触媒塗装体の評価)
得られた光触媒塗装体の光触媒層を断面観察したところ、膜厚は約7μmであった。
また、光触媒層の550nmの波長の光の透過率は84%であった。
この光触媒塗装体について、光触媒分解活性を、JISR1703−2「光触媒材料のセルフクリーニング性能試験方法−第2部:湿式分解性能」の試験法で行った。その結果、MB活性指数は6.4と良好な結果を示した。
【0079】
比較例1.
アナターゼ型酸化チタン粒子(平均結晶子径10nm)1.3質量部、シリカ粒子(平均粒径50nm)8.7質量部、メチルフェニルシリコーンエマルジョンを固形分として90質量部配合した固形分濃度25質量%の光触媒水性コーティング液を調製し、透明な2mm厚のソーダライムガラス基材上に150℃×5分乾燥して、光触媒塗装体を得た。
得られた光触媒塗装体の光触媒層を断面観察したところ、膜厚は約7μmであった。
また、光触媒層の550nmの波長の光の透過率は83%であった。
この光触媒塗装体について、光触媒分解活性を、JISR1703−2「光触媒材料のセルフクリーニング性能試験方法−第2部:湿式分解性能」の試験法に従い行った。その結果、MB活性指数は1.1と低い値を示した。
【0080】
実施例3.
(シリカ粒子の表面被覆処理)
シリカ粒子(平均粒径50nm)100重量部に対してパーフルオロアルキルトリアルコキシシラン5重量部を反応させて、疎水化処理されたシリカ粒子を作製した。
(光触媒塗装体の作製)
アナターゼ型酸化チタン粒子(平均結晶子径10nm)1.3質量部、上記疎水化処理されたシリカ粒子8.7質量部、およびメチルフェニルシリコーンエマルジョンを固形分として45質量部、無機顔料45質量部を配合した固形分濃度40質量%の光触媒水性コーティング液を調製し光触媒塗料を得た。
150mm×65mmに裁断した石綿セメント珪酸カルシウム板(JIS A5418に準拠したもの)にエポキシ樹脂系プライマーをスプレー塗装し、室温で24時間乾燥させた。続いて、アクリルウレタン塗料を、上記したプライマー塗装を行った石綿セメント珪酸カルシウム板上にスプレー塗装し、室温で24時間乾燥させた。さらに続いて、上記光触媒塗料を、アクリルウレタン塗装を行った石綿セメント珪酸カルシウム板上に刷毛塗りし、コーティング物を得た。
(光触媒塗装体の評価)
得られた光触媒塗装体の光触媒層を断面観察したところ、膜厚は約40μmであった。
この光触媒塗装体について、光触媒分解活性を、JISR1703−2「光触媒材料のセルフクリーニング性能試験方法−第2部:湿式分解性能」の試験法に従って行った。その結果、MB活性指数は6.0と良好な結果を示した。
得られた光触媒塗装体について、以下の通り耐候性試験を行った。光触媒塗装体をJIS B7753に規定されるサンシャインウエザオメーター(スガ試験機製、S−300C)に投入した。100hr経過後に試験片を取り出し、投入前後の外観変化を観察した。その結果、外観に変化は認められなかった。
【0081】
実施例4.
(アナターゼ型酸化チタン粒子の表面被覆処理)
アナターゼ型酸化チタン粒子(平均結晶子径10nm)100重量部に対してパーフルオロアルキルトリアルコキシシラン5重量部を反応させて、疎水化処理された酸化チタン粒子を作製した。
(シリカ粒子の表面被覆処理)
シリカ粒子(平均粒径50nm)100重量部に対してパーフルオロアルキルトリアルコキシシラン5重量部を反応させて、疎水化処理されたシリカ粒子を作製した。
(光触媒塗装体の作製)
上記疎水化処理された酸化チタン粒子1.3質量部、上記疎水化処理されたシリカ粒子8.7質量部、およびメチルフェニルシリル基を有するシリコーンエマルジョンを固形分として90質量部配合した固形分濃度25質量%の光触媒水性コーティング液を調製し、透明な2mm厚のソーダライムガラス基材上に150℃×5分乾燥して、光触媒塗装体を得た。
(光触媒塗装体の評価)
得られた光触媒塗装体の光触媒層を断面観察したところ、膜厚は約7μmであった。
また、光触媒層の550nmの波長の光の透過率は84%であった。
この光触媒塗装体について、光触媒分解活性を、JISR1703−2「光触媒材料のセルフクリーニング性能試験方法−第2部:湿式分解性能」の試験法に従って行った。その結果、MB活性指数は9.3と良好な結果を示した。
【0082】
実験例5.
(シリカ粒子の表面被覆処理)
シリカ粒子(平均粒径50nm)100重量部に対してパーフルオロアルキルトリアルコキシシラン5重量部を反応させて、疎水化処理されたシリカ粒子を作製した。
(光触媒塗装体の作製)
アナターゼ型酸化チタン粒子(平均結晶子径10nm)1.3質量部、上記疎水化処理されたシリカ粒子8.7質量部、およびメチルフェニルシリル基を有するシリコーンエマルジョンを固形分として90質量部配合した固形分濃度25質量%の光触媒水性コーティング液を調製し、スレート板上にアクリル系着色塗装した基材上に80℃×30分乾燥して、光触媒塗装体を得た。
こうして得られた50×100mmの大きさの光触媒塗装体について、以下の通り耐候性試験を行った。光触媒塗装体をJIS B7753に規定されるサンシャインウエザオメーター(スガ試験機製、S−300C)に投入した。100hr経過後に試験片を取り出し、投入前後の外観変化を観察した。その結果、外観に変化は認められなかった。
【0083】
実験例6.
(アナターゼ型酸化チタン粒子の表面被覆処理)
アナターゼ型酸化チタン粒子(平均結晶子径10nm)100重量部に対してパーフルオロアルキルトリアルコキシシラン5重量部を反応させて、疎水化処理された酸化チタン粒子を作製した。
(シリカ粒子の表面被覆処理)
シリカ粒子(平均粒径50nm)100重量部に対してトリアルコキシシラン5重量部を反応させて、疎水化処理されたシリカ粒子を作製した。
(光触媒塗装体の作製)
上記疎水化処理された酸化チタン粒子1.3質量部、上記疎水化処理されたシリカ粒子8.7質量部、およびメチルフェニルシリル基を有するシリコーンエマルジョンを固形分として90質量部配合した固形分濃度25質量%の光触媒水性コーティング液を調製し、透明なスレート板上にアクリル系着色塗装した基材上に150℃×5分乾燥して、光触媒塗装体を得た。
こうして得られた50×100mmの大きさの光触媒塗装体について、以下の通り耐候性試験を行った。光触媒塗装体をJIS B7753に規定されるサンシャインウエザオメーター(スガ試験機製、S−300C)に投入した。100hr経過後に試験片を取り出し、投入前後の外観変化を観察した。その結果、外観に変化は認められなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材表面に光触媒層を備えた光触媒塗装体であって、
前記光触媒層が、光触媒性金属酸化物粒子と、シリカ粒子と、樹脂エマルジョンの乾燥物とを含んでなり、
前記シリカ粒子はパーフルオロ基を有する物質により被覆又は変性処理されていることを特徴とする光触媒塗装体。
【請求項2】
前記パーフルオロ基を有する物質が、パーフルオロ基を有するシラン及び/又はパーフルオロ基を有するシリコーンである、請求項1〜2のいずれか1項に記載の光触媒塗装体。
【請求項3】
前記光触媒性金属酸化物が、光触媒性酸化チタンである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の光触媒塗装体。
【請求項4】
前記光触媒層の膜厚が3μmを超え3mm未満であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の光触媒塗装体。
【請求項5】
前記光触媒層が透明である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の光触媒塗装体。
【請求項6】
前記樹脂エマルジョンの乾燥物の含量が、前記樹脂エマルジョンの乾燥物、前記光触媒性金属酸化物粒子および前記シリカ粒子の合計質量に対して50%以上である、請求項11〜5のいずれか1項に記載の光触媒塗装体。
【請求項7】
前記光触媒層が、更に着色顔料を含んでなる、請求項1〜5のいずれか一項に記載の光触媒塗装体。
【請求項8】
前記樹脂エマルジョンが、シリコーンエマルジョン及び/又はフッ素樹脂エマルジョンである、請求項1〜7のいずれか一項に記載の光触媒塗装体。
【請求項9】
前記樹脂エマルジョンの平均粒径が、前記光触媒性金属酸化物粒子および前記シリカ粒子の平均粒径よりも大である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の光触媒塗装体。
【請求項10】
光触媒性金属酸化物粒子と、
シリカ粒子と、
樹脂エマルジョンと、
溶媒とを含んでなり、
前記シリカ粒子が、パーフルオロ基を有する物質により被覆または変性処理されなるものであることを特徴とする、光触媒コーティング液。
【請求項11】
前記パーフルオロ基を有する物質が、パーフルオロ基を有するシラン及び/又はパーフルオロ基を有するシリコーンである、請求項10に記載の光触媒コーティング液。
【請求項12】
前記光触媒性金属酸化物が、光触媒性酸化チタンである、請求項10又は11の何れか1項に記載の光触媒コーティング液。
【請求項13】
前記光触媒層が更に着色顔料を含んでなる、請求項10〜12のいずれか一項に記載の光触媒コーティング液。
【請求項14】
前記樹脂エマルジョンの固形分の含量が、前記樹脂エマルジョン、前記光触媒性金属酸化物粒子および前記シリカ粒子の固形分の合計質量に対して50%以上である、請求項12〜13のいずれか一項に記載の光触媒コーティング液。
【請求項15】
前記樹脂エマルジョンが、シリコーンエマルジョン及び/又はフッ素樹脂エマルジョンである、請求項10〜15のいずれか一項に記載の光触媒コーティング液。
【請求項16】
前記樹脂エマルジョンの平均粒径が、前記光触媒性金属酸化物粒子および前記シリカ粒子の平均粒径よりも大である、請求項10〜15のいずれか一項に記載の光触媒コーティング液。

【公開番号】特開2012−96188(P2012−96188A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−247435(P2010−247435)
【出願日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】