説明

光触媒壁紙、それから誘導される多孔性光触媒壁紙

【課題】環境汚染物質の分解除去効果や防汚効果とそれらの持続性に優れる多孔性光触媒壁紙及びその前駆体である光触媒壁紙を提供する。
【解決手段】光触媒aと該光触媒への親和力が強く、光触媒作用によって分解される光触媒親和性有機成分Bと光触媒作用により容易に分解しない難分解成分Cとが結合した複合化合物BCが担持されてなることを特徴とする光触媒壁紙、及びそれから誘導される多孔性光触媒壁紙。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光触媒壁紙、それから誘導される長期間にわたり優れた光触媒活性を発現する孔性光触媒壁紙に関する。
具体的には、本発明は、長期にわたり、日常生活において発生する各種悪臭ガスや有害ガス、有害化合物等の分解、除去および殺菌、防カビ等に有用であり、また、たばこのヤニ汚れ等を分解し外観の美観を維持する事ができる多孔性光触媒壁紙に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅環境の整備が著しく進むとともに、 住宅品質確保促進法の施行もあいまって、建造物のロングライフ化ひいては内装部材のロングライフ化が強く望まれている。特に、最近の住宅モデルでは、エントランス部分からの吹き抜け空間や、それに続くリビングやダイニングの大空間部分の壁面を、施工当初の品質に維持及び保守するのは容易なことではない。また、一般家屋等の室内においては、その壁面に湿気などによってカビが発生することがある。従来このような場合、空調設備によりカビの発生原因となる湿気そのものを除いたり、防カビ剤を混練した合成樹脂フィルムからなる壁紙を壁面に貼り付けて、カビの発生を防止していた。しかしながら、空調設備を用いる除湿には限度があり、カビの発生防止のためにはそれほど効果が無く、また防カビ剤を混練した合成樹脂フィルムからなる壁紙を用いると、カビの発生を防止できても、その防カビ剤は、アレルギー症状の原因となったり、体調を悪くしたりといった人体への悪影響がみられ、問題となっている。また、一般家屋等の室内においては、例えば、タバコの煙、ペット用動物、生ゴミなどの悪臭の発生原因となるものが多々存在する。
【0003】
従来、このような悪臭を脱臭する方法として、悪臭物質と薬剤とを化学反応させる方法、芳香剤で悪臭物質をマスキングする方法、活性炭、ゼオライトなどの吸着剤にて悪臭物質を吸着する方法、または、これらの方法を組み合わせて行う方法があった。このような各種の脱臭方法が使用されているが、薬剤及び芳香剤は、共に悪臭物質と反応した後での再生はほとんど不可能である。また、吸着剤の場合も、吸着容量が飽和すると脱臭性能は著しく低下する。従って、どのような方法においても、新しいものと定期的に交換しなければならないといった問題がある。
これらの課題に対して、近年、二酸化チタン等の光触媒を含む塗料からなる被覆層を設けた壁紙が多く提案されている。この様な壁紙は、内装部材を保護してロングライフ化に寄与するだけでなく、光触媒が室内の蛍光灯や白熱電球等によってもその効果である抗菌性能や防臭、防汚性能を発現するので、居住空間の環境浄化にも有効である。
【0004】
従来、光触媒含有壁紙用塗料としては、光触媒、無機バインダー、無機充填剤、合成樹脂等の有機バインダー等を含むものが提案されている。例えば、特開平10−183023号公報には、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド等のカルボニル基含有α,β−エチレン性不飽和モノマー及び必要に応じて前記以外のエチレン性不飽和モノマーを乳化重合させてなる共重合体エマルション、アジピン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、クエン酸トリヒドラジド、ナフトエ酸テトラヒドラジド等のヒドラジン誘導体、活性アルミナ、活性白土、ゼオライト等の顔料成分及び二酸化チタン等の光触媒を含有する光触媒含有塗料が記載されている。また、例えば、特開平10−251565号公報には、二酸化チタン等の光触媒及び、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸等のカルボキシ基含有重合性不飽和モノマーとメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、スチレン等のその他の重合性不飽和モノマーとの共重合体を含有する光触媒含有塗料が記載されている。しかし、これらの方法では光触媒と壁紙基材との接着性を付与する為に用いる有機バインダーが光触媒作用により分解されてしまい、耐久性の点で問題がある。また、接着性を増すために大量の有機バインダーを用いると、光触媒と臭気原因物質あるいは汚染原因物質との接触が妨げられるため、光触媒に求められる防臭、防汚性能が低下してしまう問題があった。
【0005】
これらの問題を解決する手段として、例えば、特開2001−341217号公報には、合成樹脂シートの表面に光触媒の微粒子を付着させ、該光触媒微粒子が合成樹脂表面に露出するようにした後、微光触媒粒子を合成樹脂シートに押し込んだり、光触媒微粒子を混練した熱可塑性樹脂フィルムを壁紙基材に張り合わせた後、該熱可塑性フィルム裏面を加熱して溶融させ、光触媒微粒子の一部をフィルム表面に露出させた壁紙が提案されている。これにより、光触媒粒子が直接、臭気あるいは汚染原因物質と接触する機会が増し、防臭、防汚効果は高まるものの、光触媒粒子による合成樹脂の分解劣化という問題は解決されないままである。また、例えば、特開平10−180943号公報には、二酸化チタン等の光触媒と水ガラス、アルミノ珪酸塩、アルカリ金属珪酸塩、リン酸塩、コロイダルシリカ、コロイダルアルミナ等の無機バインダーとを含む光触媒含有塗料が記載されている。しかし、この方法では、無機バインダーが二酸化チタンの表面を被覆するため、有機壁紙基材の分解を抑制する効果はあるものの、二酸化チタンに本来期待される、防臭、防汚機能が低下してしまうといった問題があり、本質的な問題解決とはなっていない。さらに、例えば、特開平10−264283号公報には、二酸化チタン等の光触媒、熱可塑性樹脂(アクリル樹脂、スチレン−アクリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体等)の水性エマルジョン、皮膜成形性無機物(コロイダルシリカ、コロ イダルアルミナ、サポナイト、ヘクトライト、カオリナイト、セピオライト等)、コロイダルシリカ複合熱可塑性高分子エマルジョン等のバンイダー等を含む光触媒含有塗料が、また、例えば、特開平11−279446号公報には、コロイダルシリカ、アルミナゾル、サポナイト、ヘクトライト、セピオライト等の無機系バインダー、二酸化チタン等の光触媒、ポリビニルアルコール及び、水系ラテックスや水系エマルジョン等の有機系バインダーを含有する光触媒含有塗料が記載されている。しかしながら、これらの方法ではいずれにしても二酸化チタンによりバインダー成分として用いられている有機樹脂が分解したり、壁紙の基材として有機物質を用いた場合、基材そのものも分解するといった問題が解決されていない。
【0006】
これらの問題に対して、例えば特開2001−159099号公報には、上述した光触媒による壁紙基材の劣化を防止する目的で、光触媒含有層と壁紙基材の間に保護層を介在させる方法が提案されているが、この方法では、塗装工程が煩雑で作業性が悪いうえ、バインダーとして有機樹脂を用いた場合の塗膜の劣化を防ぐといった問題は未解決である。
上述した理由により、かねてより保護層を必要とせず、かつセルフクリーニング性を有し、防臭、防汚性能に優り、長期耐久性を有する、光触媒含有塗膜を設けた壁紙が切望されていた。
【特許文献1】特開平10−183023号公報
【特許文献2】特開平10−251565号公報
【特許文献3】特開2001−341217号公報
【特許文献4】特開平10−180943号公報
【特許文献5】特開平10−264283号公報
【特許文献6】特開平11−279446号公報
【特許文献7】特開2001−159099号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、煩雑な工程を必要とせずに、光触媒による優れた防臭、防汚効果が付与された機能性壁紙を提供する事を目的とする。
具体的には、基材保護層を必要とせず、耐久性の優れる機能性壁紙を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは鋭意検討した結果、本発明をなすに至った。
すなわち、本発明は以下の通りである。
1. 光触媒(a)と該光触媒への親和力が強く、光触媒作用によって分解される光触媒親和性有機成分(B)と光触媒作用により容易に分解しない難分解成分(C)とが結合した複合化合物(BC)が担持されてなることを特徴とする光触媒壁紙。
2. 光触媒(a)を発明1の複合化合物(BC)で変性処理されてなる変性光触媒(A)が担持されてなることを特徴とする光触媒壁紙。
3. 該光触媒親和性有機成分(B)がポリオキシアルキレン基を有することを特徴とする発明1、2のいずれかの光触媒壁紙。
4. 光触媒(a)が可視光応答型光触媒であることを特徴とする発明1〜3のいずれかの光触媒壁紙。
5. 増感色素が担持されてなることを特徴とする発明1〜4のいずれかの光触媒壁紙。
6. 発明1〜4のいずれかの光触媒壁紙に、担持された光触媒(a)のバンドギャップエネルギーよりも高いエネルギーの光を照射することにより光触媒(a)1gあたりのBET表面積が10m以上増加した多孔性光触媒壁紙。
7. 発明5の光触媒壁紙に、担持された増感色素の吸収光を照射することにより光触媒(a)1gあたりのBET表面積が10m以上増加した多孔性光触媒壁紙。
8. 有機物分解活性を有することを特徴とする発明6、7のいずれかの多孔性光触媒壁紙。
9. 抗菌性能を有することを特徴とする発明6、7のいずれかの多孔性光触媒壁紙。
10. 防カビ性能を有することを特徴とする発明6、7のいずれかの多孔性光触媒壁紙。
【発明の効果】
【0009】
本発明の光触媒壁紙からは、光照射という簡単な操作で、環境浄化材料(シックハウス原因物質、タバコのヤニ等の有害物質分解)、防汚材料(抗菌、防カビ等)、易洗浄材料として優れた性能を有する、耐久性の良好な多孔性光触媒壁紙を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明について詳述する。
本発明の光触媒壁紙は、光触媒(a)と該光触媒への親和力が強く、光触媒作用によって分解される光触媒親和性有機成分(B)と光触媒作用により容易に分解しない難分解成分(C)とが結合した複合化合物(BC)が担持されてなることを特徴とする。この様な光触媒壁紙は、光照射により、光触媒(a)に近接する光触媒親和性有機成分(B)が効率的、かつ選択的に分解され、難分解成分(C)の存在によって光触媒(a)が壁紙を分解することを防止するため、外観の構造変化がほとんど無くBET表面積が増加した、環境浄化効果や防汚効果に優れた多孔性光触媒壁紙に誘導される。
【0011】
また、本発明の光触媒壁紙において、上記複合化合物(BC)で光触媒(a)が変性処理された変性光触媒(A)が担持されたものは、上記光照射によるBET表面積の増加が非常に大きく、生成する空孔の均一性にも優れるため最も好ましい。
ここで、上記変性処理とは、上記複合化合物(BC)を、光触媒(a)の表面に固定化することを意味する。複合化合物(BC)の光触媒粒子の表面への固定化は、ファン・デル・ワールス力(物理吸着)、クーロン力または化学結合によるものである。特に、化学結合を利用した変性は、複合化合物(BC)と光触媒との相互作用が強く、複合化合物(BC)が光触媒粒子の表面に強固に固定化されるので好ましい。
【0012】
本発明において上記光触媒(a)とは、光照射によって酸化、還元反応を起こす物質のことを言う。すなわち伝導帯と価電子帯との間のエネルギーギャップよりも大きなエネルギー(すなわち短い波長)の光(励起光)を照射したときに、価電子帯中の電子の励起(光励起)が生じて、伝導電子と正孔を生成しうる物質であり、このとき、伝導帯に生成した電子の還元力および/または価電子帯に生成した正孔の酸化力を利用して、種々の化学反応を行うことができる。例えば、種々の有機物の酸化分解反応を挙げることができる。従って、この光触媒を壁紙の表面に担持させれば、室内等に存在する有害物質や壁紙に付着した種々の有機物(汚染物質)を、光エネルギーを利用して酸化分解することができ、空気を浄化したり、壁紙の表面の美観を保つことが可能となる。
【0013】
本発明において、壁紙の表面を光触媒活性にするのに有用に使用できる光触媒(a)としては、、バンドギャップエネルギーが好ましくは1.2〜5.0eV、更に好ましくは1.5〜4.1eVの半導体化合物を挙げることができる。バンドギャップエネルギーが1.2eVより小さいと光照射による酸化、還元反応を起こす能力が非常に弱く好ましくない。バンドギャップエネルギーが5.0eVより大きいと、正孔と電子を生成させるのに必要な光のエネルギーが非常に大きくなるため好ましくない。
【0014】
上記光触媒(a)の例としては、例えば、TiO、ZnO、SrTiO、CdS、GaP、InP、GaAs、BaTiO、BaTiO、BaTi、KNbO、Nb、Fe、Ta、KTaSi、WO、SnO、Bi、BiVO、NiO、CuO、SiC、MoS、InPb、RuO、CeO、Ta等、さらにはTi、Nb、Ta、Vから選ばれた少なくとも1種の元素を有する層状酸化物(例えば特開昭62−74452号公報、特開平2−172535号公報、特開平7−24329号公報、特開平8−89799号公報、特開平8−89800号公報、特開平8−89804号公報、特開平8−198061号公報、特開平9−248465号公報、特開平10−99694号公報、特開平10−244165号公報等参照)を挙げることができる。
これらの光触媒(a)の中でTiO(酸化チタン)は無害であり、化学的安定性にも優れるため好ましい。酸化チタンとしては、アナターゼ、ルチル、ブルッカイトのいずれも使用できる。
【0015】
また、本発明に使用する光触媒(a)として、可視光(例えば約400〜800nmの波長)の照射により光触媒活性及び/又は親水性を発現することが出来る可視光応答型光触媒を選択すると、本発明の光触媒壁紙の多孔性光触媒壁紙への誘導化は可視光によっても生じる。また、生成する多孔性光触媒壁紙は室内等の紫外線が十分に照射されない場所等においても環境浄化効果や防汚効果を十分に発現することが出来るため好ましい。これらの可視光応答型光触媒のバンドギャップエネルギーは、好ましくは1.2〜3.1eV、より好ましくは1.5〜2.9eV、更に好ましくは1.5〜2.8eVである。
【0016】
上記可視光応答型光触媒は、可視光で光触媒活性及び/又は親水性を発現するものであれば全て使用することが出来るが、例えばTaON、LaTiON、CaNbON、LaTaON、CaTaON等のオキシナイトライド化合物(例えば特開2002−66333号公報参照)やSmTi等のオキシサルファイド化合物(例えば特開2002−233770号公報参照)、Ta等の窒化化合物、CaIn、SrIn、ZnGa、NaSb等のd10電子状態の金属イオンを含む酸化物(例えば特開2002−59008号公報参照)、アンモニアや尿素等の窒素含有化合物存在下でチタン酸化物前駆体(オキシ硫酸チタン、塩化チタン、アルコキシチタン等)や高表面酸化チタンを焼成して得られる窒素ドープ酸化チタン(例えば特開2002−29750号公報、特開2002−87818号公報、特開2002−154823号公報、特開2001−207082号公報参照)、チオ尿素等の硫黄化合物存在下にチタン酸化物前駆体(オキシ硫酸チタン、塩化チタン、アルコキシチタン等)を焼成して得られる硫黄ドープ酸化チタン、酸化チタンを水素プラズマ処理したり真空下で加熱処理したりすることによって得られる酸素欠陥型の酸化チタン(例えば特開2001−98219号公報参照)、さらには光触媒粒子をハロゲン化白金化合物で処理したり(例えば特開2002−239353号公報参照)、タングステンアルコキシドで処理(特開2001−286755号公報参照)することによって得られる表面処理光触媒等を好適に挙げることができる。
【0017】
上記可視光応答型光触媒の中でオキシナイトライド化合物、オキシサルファイド化合物は可視光による光触媒活性が大きく、特に好適に使用することができる。
本発明において特に好適に使用できるオキシナイトライド化合物は、遷移金属を含むオキシナイトライドであり、光触媒活性が大きいものとして、好ましくは遷移金属がTa、Nb、Ti、Zr、Wからなる群から選択される少なくとも1つであることを特徴とするオキシナイトライドであり、より好ましくは、アルカリ、アルカリ土類及びIIIB族の金属からなる群から選択される少なくとも1つの元素を更に含むことを特徴とするオキシナイトライドであり、更に好ましくはCa、Sr、Ba、Rb、La、Ndからなる群から選ばれる少なくとも1つの金属元素を更に含むことを特徴とするオキシナイトライドである。
【0018】
上記遷移金属を含むオキシナイトライドの例としては、LaTiON、LaCaTiON(v+w=3)、LaCaTaON(v+w=3)、LaTaON、CaTaON、SrTaON、BaTaON、CaNbON、CaWON、SrWON等の一般式AMO(A=アルカリ金属、アルカリ土類金属、IIIB族金属;M=Ta、Nb、Ti、Zr、W;x+y=3)で表される化合物やTaON、NbON、WON、LiLaTaN等を挙げることができる。これらの中で、LaTiON、LaCaTiON(v+w=3)、LaCaTaON(v+w=3)、TaONが可視光での光触媒活性が非常に大きいため好ましい。
【0019】
本発明において特に好適に使用できるオキシサルファイド化合物は、遷移金属を含むオキシサルファイドであり、光触媒活性が大きいものとして、好ましくは遷移金属がTa、Nb、Ti、Zr、Wからなる群から選択される少なくとも1つであることを特徴とするオキシサルファイドであり、より好ましくは、アルカリ、アルカリ土類及びIIIB族の金属からなる群から選択される少なくとも1つの元素を更に含むことを特徴とするオキシサルファイドであり、更に好ましくは希土類元素を更に含むことを特徴とするオキシサルファイドである。
上記遷移金属を含むオキシサルファイドの例としては、SmTi、NdTi、LaTi、PrTi、SmNbS等を挙げることができる。これらの中で、SmTi、NdTiが可視光での光触媒活性が非常に大きいため非常に好ましい。
【0020】
また、本発明における光触媒(a)として、アパタイト結晶中の金属イオンの一部を、光触媒作用を有する金属酸化物の金属イオン(例えばチタンイオン等)とイオン交換してなる金属修飾アパタイト(特開2000−327315号広報参照)も、菌やウィルス、汚れ等に対する吸着特性が優れるため好適に使用できる。
更に、上述した光触媒(a)は、好適にPt、Rh、Ru、Nb、Cu、Sn、Ni、Feなどの金属及び/又はこれらの酸化物を添加あるいは固定化したり、多孔質リン酸カルシウム等で被覆したり光触媒(例えば特開平10−244166号公報参照)して使用することもできる。
上記光触媒(a)の結晶粒子径(1次粒子径)は1〜400nmであることが好ましく、より好ましくは1〜50nmの光触媒が好適に選択される。
【0021】
本発明において上記複合化合物(BC)は、例えば光触媒親和性有機成分(B)を官能基として有する難分解成分(C)や、光触媒親和性有機成分(B)と難分解成分(C)のグラフト重合体、ブロック重合体、ランダム重合体等を例示することができる。
本発明における上記光触媒親和性有機成分(B)としては、例えば光触媒粒子表面に存在する水酸基や物理吸着水と親和力を有するポリオキシアルキレン基、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、部分鹸化ポリ酢酸ビニル、アクリル酸重合体(共重合物を含む)、メタクリル酸重合体(共重合物を含む)、アクリルアミド重合体(共重合物を含む)、スチレンスルホン酸重合体(共重合物を含む)、ビニルピロリドン重合体(共重合物を含む)、ポリアリルアミン、カルボキシルメチル化セルロース、カルボキシルメチル化ニトロセルロース等を挙げることができる。
【0022】
これらの中で、ポリオキシアルキレン基は一般に光触媒に対する親和力に優れ、光触媒作用により容易に分解することができるため好ましい。
本発明における上記難分解成分(C)としては、好ましくは光触媒壁紙表面の紫外線強度を7mW/cmになるようにブラックライトの光を5時間照射した時の質量減少が5%以下であるもの等を挙げることができる。
上記難分解性成分(C)の具体例としては、例えば水ガラス等の無機系化合物やシリコーン系樹脂及びフッ素系樹脂等を挙げることができる。
【0023】
本発明において、上記シリコーン系樹脂を例示すると、例えばジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、アルコキシ基含有シリコーンオイル、シラノール基含有シリコーンオイル、ビニル基含有シリコーンオイル、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン等のシリコーンオイル類、アルコール変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、フロロアルキル変性シリコーン等の変性シリコーン類、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン等の(アルキル)アルコキシシランのモノマー、オリゴマー、及び重合体、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤及びその反応生成物、シリコーン界面活性剤等である。これらのシリコーンは単独でも、2種以上を同時に用いることもできる。
【0024】
本発明において、上記フッ素系樹脂としては、例えば2−パーフルオロオクチルエチルトリメトキシシラン、2−パーフルオロオクチルエチルトリエトキシシラン、2−パーフルオロオクチルエチルメチルジメトキシシラン、トリフルオロメチルエチルトリメトキシシラン、トリフルオロメチルエチルトリエトキシシラン等のフルオロアルキルシラン類やその重縮合体、PTFEやポリフッ化ビニリデン、さらにはナフィオン樹脂、クロロトリフルオロエチレンやテトラフルオロエチレン等のフルオロオレフィン類とモノマー類(ビニルエーテル、ビニルエステル、アリル化合物等)との共重合体等を挙げることができる。これらのフッ素系樹脂は、単独でも、2種以上を同時に用いることもできる。
【0025】
本発明において、上記複合化合物(BC)の好ましい例として、下式(1)で表されるSi化合物やポリオキシアルキレン基を有するフッ素系樹脂を例示する事ができる。
SiO(4−x−y−z)/2 (1)
(式中、Rは各々独立に直鎖状または分岐状の炭素数1〜30のアルキル基、炭素数5〜20のシクロアルキル基、直鎖状または分岐状の炭素数が1〜30個のフルオロアルキル基、又は直鎖状または分岐状の炭素数2〜30のアルケニル基、フェニル基から選ばれた1種以上からなる基を表す。
【0026】
Qは下式(2)で表されるポリオキシアルキレン基を含有する基を表す。
−(O)O(RO) (2)
(式中R、Rは各々独立に直鎖状または分岐状の炭素数1〜10のアルキレン基を表す。Rは、水素原子、直鎖状または分岐状の炭素数1〜30のアルキル基、炭素数5〜20のシクロアルキル基、又は直鎖状または分岐状の炭素数2〜30のアルケニル基、フェニル基を表す。aは0または1であり、bは1〜100の整数を表す。)
【0027】
Xは各々独立に水素原子、水酸基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアシロキシ基、アミノキシ基、炭素数1〜20のオキシム基、又はハロゲン原子を表す。また、0≦x<4、0≦y<4、0<z<4、及び0<(x+y+z)<4である。)
本発明の光触媒壁紙において、上述した光触媒(a)と複合化合物(BC)は質量比(A)/(BC)=0.001〜1000の割合で担持された系が好ましい。
【0028】
本発明において、光触媒(a)を変性処理するのに有用な上記複合化合物(BC)は、例えばSi−H基、加水分解性シリル基(アルコキシシリル基、ヒドロキシシリル基、ハロゲン化シリル基、アセトキシシリル基、アミノキシシリル基等)、エポキシ基、アセトアセチル基、チオール基、酸無水物基等の光触媒粒子(a)と反応性を有するものが好適に例示できる。
本発明において、光触媒(a)の複合化合物(BC)による変性処理は、水及び/又は有機溶媒の存在、あるいは非存在下において、光触媒(a)と該複合化合物(BC)を好ましくは質量比(a)/(BC)=1/99〜99.9/0.1、より好ましくは(a)/(BC)=10/90〜99/1の割合で好ましくは0〜200℃にて混合することにより実施できる。
本発明において、光触媒(a)の変性に使用される複合化合物(BC)としてSi−H基を含有するものを用いると、非常に効率よく光触媒(a)の粒子表面を変性することができるため好ましい。
【0029】
上記Si−H基を有する複合化合物(BC)の好ましい例として、例えば式(3)及び/または式(4)で表されるSi−H基含有化合物(b1)を例示することができる。
H−(RSiO)−SiR−Q (3)
(式中、RおよびQは式(1)で定義した通りである。mは整数であり、0≦m≦1000である。)
(RHSiO)(RSiO)(RQSiO)(RSiO1/2 (4)
(式中、RおよびQは式(1)で定義した通りである。
pは1以上の整数であり、q及びrは0又は1以上の整数であり、(p+q+r)≦10000であり、そしてsは0又は2である。但し、(p+q+r)が2以上の整数であり且つs=0の場合、該Hシリコーン化合物は環状シリコーン化合物であり、s=2の場合、該Hシリコーン化合物は鎖状シリコーン化合物である。)
【0030】
本発明において、光触媒(a)の式(3)及び/または式(4)で表されるSi−H基含有化合物(b1)による変性処理は、水及び/又は有機溶媒の存在、あるいは非存在下において、光触媒(a)と該Si−H基含有化合物(b1)を好ましくは質量比(a)/(b1)=1/99〜99.9/0.1、より好ましくは(a)/(b1)=10/90〜99/1の割合で好ましくは0〜200℃にて混合することにより実施できる。
【0031】
この変性の操作により混合液からは水素ガスが発生すると共に、光触媒(a)として光触媒ゾルを用いた場合、その平均粒子径の増加が観察される。
また、光触媒(a)として酸化チタンを用いた場合、上記変性の操作により、Ti−OH基の減少がIRスペクトルにおける3630〜3640cm−1の吸収の減少、あるいは消失として観測される。
これらのことより、式(3)及び/または式(4)で表されるSi−H基含有化合物(b1)で変性処理されてなる変性光触媒(A)はSi−H基含有化合物(b1)と光触媒(a)との単なる混合物ではなく、両者の間には化学反応に伴う何らかの相互作用を生じていることが予測できる。
実際、この様にして得られた変性光触媒(A)は、溶媒に対する分散安定性、透明性、化学的安定性、耐久性等において非常に優れたものとなる。
【0032】
本発明の光触媒壁紙において、増感色素を担持されたものは、光触媒(a)が酸化チタンの様な紫外線にのみ応答するものであっても、後述する光触媒壁紙の光照射によるBET表面積の増加(多孔性光触媒壁紙の生成)が可視光領域の光によって起こると共に、生成する多孔性光触媒壁紙は室内等の紫外線が十分に照射されない場所等においても環境浄化効果や防汚効果を発現することが出来るため好ましい。
【0033】
本発明において使用できる増感色素とは、可視光領域に吸収を持つ種々の金属錯体や有機色素を示す。この様な増感色素としては、例えばキサンテン系色素、オキソノール系色素、シアニン系色素、メロシアニン系色素、ローダシアニン系色素、スチリル系色素、ヘミシアニン系色素、メロシアニン系色素、フタロシアニン系色素(金属錯体を含む)、ポルフィリン系色素(金属錯体を含む)、トリフェニルメタン系色素、ペリレン系色素、コロネン系色素、アゾ系色素、ニトロフェノール系色素、さらには特開平1−220380号公報や特許出願公表平5−504023号公報に記載のルテニウム、オスミウム、鉄、亜鉛の錯体や、他にルテニウムレッド等の金属錯体を挙げることができる。
【0034】
これらの増感色素の中で、400nm以上の波長領域で吸収を持ち、かつ最低空軌道のエネルギー準位(励起状態の酸化還元電位)が光触媒の伝導帯のエネルギー準位より高いものが好ましく選択される。このような増感色素の選択は、赤外・可視・紫外領域における光の吸収スペクトルの測定、電気化学的方法による酸化還元電位の測定、分子軌道法を用いたエネルギー準位の算定、更には光触媒と分光増感色素によって作成したGratzel型湿式太陽電池の光照射による起電力の有無や効率等によって実施することができる。
この様な観点から見た好ましい増感色素の例としては、9−フェニルキサンテン骨格を有する化合物(フロオレセイン、エオシンY、エオシンB、ローズベンガル、ローダミンB、フロキシン、ピロガロール、ウラニン、アシッドレッド等)や2,2−ビピリジン誘導体を配位子として含むルテニウム錯体、ルテニウムレッド、ペリレン骨格を有する化合物、フタロシアニン系金属錯体、ポルフィリン系金属錯体等を挙げることができる。
【0035】
本発明の光触媒壁紙において、吸着系脱臭剤が担持されたものを選択すると、光照射によって得られる多孔性光触媒壁紙の脱臭効果に速効性が付与されると共に、脱臭機能がより効率的に発現できるため好ましい。
上記本発明に用いられる吸着系脱臭剤としては、例えば物理的吸着剤、化学的吸着剤、物理化学的吸着剤などで、悪臭物質を吸着し脱臭効果を発揮するものを指し、無色又は白色で無毒なものが好適である。このような吸着系脱臭剤としては、ゼオライト(親水性・疎水性)、活性白土、酸性白土、ハイドロタルサイト、セピオライト、シリカ−アルミナ、シリカ−マグネシア、シリカと酸化亜鉛の組成物、活性炭などが挙げられ、物理的吸着剤としては、アブセンツ(ユニオン昭和株式会社製商品名)などが、化学的吸着剤としてはシュークレンズ(ラサ工業株式会社製商品名)やキョーワード(協和化学工業株式会社製商品名)などが市販されている。これらは単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0036】
また、本発明の光触媒壁紙において、上記光触媒(a)と上記吸着系脱臭剤との共存下で上述した複合化合物(BC)により変性処理された吸着系脱臭剤−光触媒複合型の変性光触媒(A’)を用いると、上述した吸着系脱臭剤と光触媒の相乗効果を効率的に発現できるため非常に好ましい。
本発明の光触媒壁紙において、抗菌性金属を固定化されたものを選択すると、光照射によって得られる多孔性光触媒壁紙の抗菌・防カビ効果に速効性が付与されると共に、抗菌・防カビ機能がより効率的に発現できるため好ましい。すなわち抗菌性金属は、もともとその金属が細菌やカビなどの細胞中の活性中心と結合する力が強く、抗菌性があるものとして知られており、光照射時での光触媒による抗菌・防カビ効果と暗所での抗菌性金属による抗菌・防カビ効果とを複合させることができるため非常に好ましい。
【0037】
本発明に用いることが出来る上記抗菌性金属としては、例えば銀、銅、白金、金、パラジウム、ニッケル、コバルト、ロジウム、ニオブ、スズなどの金属及び/またはこれらの酸化物やその混合物を挙げることができる。これらの中で、銀あるいは銅を用いることが好ましい。
また、上記抗菌性金属は光触媒(a)(好ましくは変性光触媒(A))に単に添加したり、固定化したりして用いることが可能である。抗菌性金属を光触媒(a)(好ましくは変性光触媒(A))に固定化する方法としては、抗菌性金属を物理吸着させる方法や光還元法や熱処理によって固定化する方法が挙げられる。また、光触媒(a)に該抗菌性金属を物理吸着や光還元法、熱処理等によって固定化した後、複合化合物(BC)を用いて前述した方法で変性処理を行うことによっても実施できる。
【0038】
また、本発明の光触媒壁紙には、光触媒(a)(好ましくは変性光触媒(A))の壁紙への接着性を補助する目的で、樹脂(F)を、本発明の光触媒(a)に対し、質量比(a)/(F)=1/99〜99/1、好ましくは(a)/(F)=10/90〜90/10で含むものを担持することもできる。
本発明の光触媒壁紙に担持できる樹脂(F)としては、全ての合成樹脂及び天然樹脂が使用可能である。
上記合成樹脂としては、熱可塑性樹脂と硬化性樹脂(熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂、湿気硬化性樹脂等)の使用が可能であり、例えばアクリル樹脂、メタクリル樹脂、フッ素樹脂、アルキド樹脂、アミノアルキド樹脂、ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン−ブタジエン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリケトン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、ポリスルフォン樹脂、ポリフェニレンスルホン樹脂ポリエーテル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコン−アクリル樹脂、シリコーン樹脂、さらには水ガラスやジルコニウム化合物、過酸化チタン等の無機系化合物等を挙げることができる。
【0039】
また、上記天然高分子としては、ニトロセルロース等のセルロース系樹脂、天然ゴム等のイソプレン系樹脂、カゼイン等のタンパク質系樹脂やでんぷん等を挙げることができる。
また、本発明の光触媒壁紙は、必要により顔料、架橋剤、充填剤、分散剤、光安定剤、湿潤剤、可塑剤、染料、防腐剤等がそれぞれの目的に応じて選択、組み合わせて担持することができる。
本発明の光触媒壁紙は、例えば光触媒(a)と複合化合物(BC)(好ましくは変性光触媒(A))や、必要に応じて増感色素等の光触媒壁紙に担持させる事ができる上述した成分、及び溶剤等を含有させた光触媒組成物(D)で壁紙を処理する事により得る事ができる。また、該光触媒組成物(D)で処理された壁紙基材から壁紙を作成する事によっても得る事ができる。
【0040】
上記光触媒組成物(D)に好適に用いることができる溶剤としては、例えば水、エチレングリコール、ブチルセロソルブ、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、エタノール、メタノール等のアルコール類、トルエンやキシレン等の芳香族炭化水素類、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素類、酢酸エチル、酢酸n−ブチル等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド等のアミド類、クロロホルム、塩化メチレン、四塩化炭素等のハロゲン化合物類、ジメチルスルホキシド、ニトロベンゼン等、さらにはこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0041】
本発明において、上記光触媒組成物(D)によるで壁紙または壁紙基材の処理は、例えば光触媒組成物(D)を壁紙または壁紙原料に塗布又は含浸し、乾燥した後、所望により好ましくは20℃〜500℃、より好ましくは40℃〜250℃の熱処理や紫外線照射等を行うことにより実施することができる。上記塗布方法としては、例えばスプレー吹き付け法、フローコーティング法、ロールコート法、刷毛塗り法、ディップコーティング法、パッディング法、キャスティング法、スポンジ塗り法、ナイフコート法、グラビアコート法、スクリーンコート法、彫刻ロールコート法、フレキソコート法等の方法が挙げられる。
【0042】
この際、本発明の光触媒壁紙における光触媒(a)の担持量は、壁紙質量に対して好ましくは0.001〜50質量%、より好ましくは0.1〜30質量%である。光触媒(a)の含有量が0.001質量%未満の場合は、光触媒壁紙の光触媒活性が低くなり好ましくない。また、形成される皮膜の膜厚は、好ましくは0.1〜200μm、より好ましくは0.2〜20μm、さらに好ましくは0.5〜10μmである。
また、本発明の機能性壁紙は、上記光触媒組成物(D)を上述した方法で塗布したフィルムを壁紙基材表面に接着剤で貼着したり、ホットメルト接着法、ヒートシール法、ラミネート接着法等により固定化することにより得ることができる。ここで上記フィルム基材には、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリル樹脂、ポリカーボネート等のプラスチック製フィルムが好適に利用できる。
【0043】
本発明の機能性壁紙を得るのに使用できる壁紙基材は、紙およびプラスチックフィルムを代表的なものとして挙げることができる。紙としては、薄紙、紙間強化紙、含浸紙、合成紙などが挙げられ、プラスチックフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレン−2,6−ナフタレート(PEN)などのポリエステル;ナイロン6、ナイロン6,6などのポリアミド;ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)などのポリオレフィン;ポリカーボネート(PC)、ポリメタクリル酸メ チル(PMMA)などのポリアクリルを挙げることができ、その他に、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)などのフッ素系フィルム、塩化ビニル系樹脂などを挙げることができる。また、金属、木質基材、無機系ボードなどの薄板を基材として用いることもできる。また、これらの壁紙基材の上には、絵柄が設けられていてもよい。絵柄を形成するインキには、有機顔料、無機顔料のいずれも使用でき、そのビヒクルとしては、熱可塑性樹脂もしくは熱硬化性樹脂などの有機系樹脂やシロキサン樹脂も使用できる。さらに、絵つけ方法としては、グラビア印刷、オフセット印刷、シルク印刷、フレキソ印刷などが使用できる。
【0044】
また、本発明の上記光触媒組成物(D)は、劣化した壁紙の再塗装にも有用である。これらの基材には、下地調整、密着性向上、多孔質基材の目止め、平滑化、模様付けなどを目的として、予め表面処理を施すこともできる。紙質基材に対する表面処理としては、例えば、目止め、防虫処理などを挙げることができ、プラスチック系基材に対する表面処理としては、例えば、ブラスト処理、薬品処理、脱脂、火炎処理、酸化処理、蒸気処理、コロナ放電処理、紫外線照射処理、プラズマ処理、イオン処理などを挙げることができる。また、金属系基材に対する表面処理としては、例えば、研磨、脱脂、メッキ処理、クロメート処理、火炎処理、カップリング処理などを挙げることができ、木質基材に対する表面処理としては、例えば、研磨、目止め、防虫処理などを挙げることができ、無機窯業系基材に対する表面処理としては、例えば、研磨、目止め、模様付けなどを挙げることができ、さらに劣化塗膜に対する表面処理としては、例えば、ケレンなどを挙げることができる。
【0045】
本発明の光触媒組成物(D)による塗布操作は、基材の種類や状態、塗布方法によって異なる。例えば、用途に 応じてプライマーを用いても用いなくてもよい。プライマーの種類は特に限定されず、基材と組成物との密着性 を向上させる作用を有するものであればよく、基材の種類、使用目的に応じて選択する。プライマーは、単独でまたは2種以上を混合して使用することができ、また顔料などの着色成分を含むエナメルでも、該着色成分を含まないクリヤーでもよい。プライマーの種類としては、例えば、アルキド樹脂、アミノアルキド樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂、アクリルシリコン樹脂、アクリル樹脂エマルジョン、エポキシ樹脂エマルジョン、ポリウレタンエマルジョン、ポリエステルエマルジョンなどを挙げることができる。また、これらのプライマーには、厳しい条件での基材と塗膜との密着性が必要な場合、各種の官能基を付与することもできる。このような能基としては、例えば、水酸基、カルボキシル基、カルボニル基、アミド基、アミン基、グリシジル基、アルコキシシリル基、エーテル結 合、エステル結合などを挙げることができる。さらに、プライマーには、紫外線吸収剤、紫外線安定剤などが配合されていてもよい。

本発明の光触媒壁紙は、担持された光触媒(a)のバンドギャップエネルギーよりも高いエネルギーの光(増感色素を含有する場合は、該増感色素の吸収光を含む光)を照射することにより、光触媒(a)1gあたりのBET表面積が、好ましくは10m以上増加する。この様にして得られた多孔性光触媒壁紙は、環境浄化機能(有毒有機物分解、抗菌性能、防カビ性能等)や防汚機能(汚染有機物分解等)に非常に優れるものとなる。これらの機能は、上記光触媒(a)1gあたりのBET表面積の増加が50m以上で顕著になり、100m以上の増加で著しく顕著になる。
【0046】
本発明において、光触媒(a)のバンドギャップエネルギーよりも高いエネルギーの光や増感色素の吸収光を含む光の光源としては、例えば太陽光や街灯、常夜灯等の環境にある光源、さらには一般照明が利用できる。一般照明としては蛍光灯、白熱電灯、メタルハライドランプ、ブラックライトランプ、キセノンランプ、水銀灯、LED等が好適に利用できる。光の照度は、0.001mW/cm以上あることが好ましく、0.01mW/cm以上だとより好ましく、0.1mW/cm以上だとさらに好ましい。
本発明の光触媒壁紙は、一般家庭の内装はもちろん、オフィス、工場、スポーツ、医療施設等の内装にも好適に用いることができ、優れた環境浄化機能(有毒有機物分解、抗菌性能、防カビ性能等)や防汚機能(汚染有機物分解等)を発現する。
【実施例】
【0047】
以下の実施例、参考例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。実施例、参考例及び比較例中において、各種の物性は下記の方法で測定した。
1.粒径分布及び数平均粒子径
試料中の光触媒含有量が1〜20質量%となるよう適宜溶媒を加えて希釈し、湿式粒度分析計(日機装製マイクロトラックUPA−9230)を用いて測定した。
【0048】
2.重量平均分子量
ポリスチレン標品を用いて作成した検量線を用い、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって求めた。
GPCの条件は以下の通りである。
・装置:東ソー製HLC−8020 LC−3A型クロマトグラフ
・カラム:TSKgel G1000HXL、TSKgel G2000HXLおよびTSKgel G4000HXL(いずれも東ソー製)を直列に接続して用いた。
・データ処理装置:島津製作所製CR−4A型データ処理装置
・移動相:
テトラヒドロフラン
・流速:1.0ml/min.
・サンプル調製法
移動相に使用する溶媒で希釈(濃度は0.5〜2重量%の範囲で適宜調節した)して分析に供した。
【0049】
3.赤外線吸収スペクトル
日本分光製FT/IR−5300型赤外分光計を用いて測定した。
4.BET表面積
ユアサアイオニクス製窒素吸着装置(オートソーブ−1−MP)を用いて測定した。
【0050】
5.脱臭性
10cm×10cmの試料を5lのテドラーバッグに入れ、アセトアルデヒド100ppmを含む空気3lを導入した後、テドラーバッグを密栓した。次いでテドラーバッグ中の試料に東芝ライテック製FL20SBLB型ブラックライトの光を2時間照射した後、テドラーバッグ内のアセトアルデヒド量をガステック製検知管で測定した。
このとき、トプコン製UVR−2型紫外線強度計{受光部として、トプコン製UD−36型受光部(波長310〜400nmの光に対応)を使用}を用いて測定した紫外線強度が1mW/cmとなるよう調整した。
【0051】
6.防カビ試験
あらかじめ滅菌しておいたポテトデキストロース寒天培地をシャーレに入れ固化させた。その寒天培地の上に試験片(5cm×1cm)を置いた。続いて0.005質量%のスルホコハク酸ジオクチルナトリウム水溶液10mlに別途培養したアスペルギルス・ニガー(IFO 4414)を5白金耳取り、遠心分離により胞子を分離した。その胞子をGPLP培地10mlに入れた菌液をシャーレのテストピースの上に噴霧し、室温で14日間蛍光灯(100W)を照射後、試料の外観(目視で評価)に基づき、防カビ性を以下の3段階で評価した。
○:菌糸の生育全くなし
△:菌糸の若干の生育が観察される
×:菌糸が表面を50〜100%覆う
【0052】
7.抗菌性試験
5cm×1cmの試料を殺菌されたプラスティックシャーレに入れ、大腸菌の菌数が約10個/mlとなるように調整された菌液を、それぞれのシャーレ中の試料に0.5mlずつ滴下し、シャーレをポリエチレンフィルムで覆い外気と遮断し、検体試料上の菌液の乾燥と外部からの菌の侵入を防止した。続いて、シャーレの外から東芝ライテック製FL20SBLB型ブラックライトの光を4時間照射した後、シャーレの試料から菌液を洗い出し、培地に移して、その生菌数を測定し、次式により求めた死滅率に基づき、抗菌性を以下の3段階で評価した。
死滅率={(当初生菌数−試験後の生菌数)/当初生菌数}×100
○:死滅率80%以上
△:死滅率20%以上80%未満
×:死滅率20%未満
紫外線強度は、トプコン製UVR−2型紫外線強度計{受光部として、トプコン製UD−36型受光部(波長310〜400nmの光に対応)を使用}を用いて測定した紫外線強度が1mW/cmとなるよう調整した。
【0053】
8.耐光性
試料に東芝ライテック製FL20S BLB型ブラックライトの光を30日間照射後、試料の外観(目視で評価)に基づき、耐光性を以下の3段階で評価した。
このとき、トプコン製UVR−2型紫外線強度計{受光部として、トプコン製UD−36型受光部(波長310〜400nmの光に対応)を使用}を用いて測定した紫外線強度が3mW/cmとなるよう調整した。
○:外観変化なし
△:光触媒層の剥がれ
×:部材の部分的分解
【0054】
[参考例1]
変性光触媒ヒドロゾル(A−1)の合成。
還流冷却器、温度計および撹拌装置を有する反応器に、LS−8600[1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンの商品名(信越化学工業製)]474g、LS−8620[オクタメチルシクロテトラシロキサンの商品名(信越化学工業製)]76.4g、LS−8490[1,3,5−トリメチル−1,3,5−トリフェニルシクロトリシロキサンの商品名(信越化学工業製)408g、LS−7130[ヘキサメチルジシロキサンの商品名(信越化学工業製)40.5g、及び硫酸化ジルコニア20gを仕込み、50℃で3時間攪拌した後、さらに80℃に加熱したまま5時間攪拌した。硫酸化ジルコニアをろ過したのち、130℃、真空下で低沸分を除去し、重量平均分子量6600、Si−H基含量7.93mmol/gのメチルハイドロジェンシロキサン−メチルフェニルシロキサン−ジメチルシロキサンコポリマー(合成シリコーン化合物)780gを得た。
【0055】
還流冷却器、温度計および撹拌装置を取りつけた反応器に上記合成シリコーン化合物40gを入れ、撹拌下80℃に昇温した。これにユニオックスPKA−5118[ポリオキシエチレンアリルメチルエーテルの商品名(日本油脂社製)、重量平均分子量800]200gと脱水したメチルエチルケトン200g、および塩化白金酸6水和物5質量%イソプロパノール溶液1.0gを混合した溶液を攪拌下で約1時間かけて添加し、さらに80℃にて5時間攪拌を続けた後室温にまで冷却することにより、Si−H基含有化合物溶液(1)を得た。
得られたSi−H基含有化合物溶液(1)4gに水100gを加えると、透明な水溶液となった。
【0056】
また、得られたSi−H基含有化合物溶液(1)3.97gにブチルセロソルブ8gを添加・混合した後、1N水酸化ナトリウム水溶液8mlを添加すると、水素ガスが発生し、その体積は21℃において21.0mlであった。この水素ガス生成量から求めた、Si−H基含有化合物溶液(1)1g当りのSi−H基含量は0.22mmol/g(合成シリコーン化合物1g当たりに換算したSi−H基含量は約2.37mmol/g)であった。
【0057】
還流冷却器、温度計および撹拌装置を取りつけた反応器に、TKS−203[酸化チタンヒドロゾルの商品名(テイカ製)、中性、TiO2濃度19.2質量%、平均結晶子径6nm(カタログ値)のもの]78.1gと水221.9gを入れた後、これに合成したSi−H基含有化合物溶液(1)41.3gを40℃にて攪拌下約30分かけて添加し、さらに40℃にて12時間撹拌を続けた後、減圧蒸留によりメチルエチルケトンを除去し、水を加えて5質量%の非常に分散性の良好な変性光触媒ヒドロゾル(A−1)を得た。この時、Si−H基含有化合物溶液(1)の反応に伴い生成した水素ガス量は20℃において210mlであった。また、得られた変性酸化チタンヒドロゾル(A−1)をKBr板上にコーティングしIRスペクトルを測定したところ、Ti−OH基の吸収(3630〜3640cm−1)の消失が観測された。
【0058】
また、得られた変性光触媒ヒドロゾル(A−1)の粒径分布は単一分散(数平均粒子径は55nm)であり、さらに変性処理前のTKS203の単一分散(数平均粒子径は12nm)の粒径分布が大きな粒径側に移動していることが確認できた。
得られた変性光触媒ヒドロゾル(A−1)を乾燥させたもののBET表面積は0.1m/g未満であった。これに対し、変性光触媒ヒドロゾル(A−1)をガラス板に厚さ約3μmで塗布して室温で乾燥させた後、東芝ライテック製FL20S BLB型ブラックライトの光[トプコン製UVR−2型紫外線強度計{受光部として、トプコン製UD−36型受光部(波長310〜400nmの光に対応)を使用}を用いて測定した紫外線強度が2mW/cmとなるよう調整]を5日間照射し、ガラス板から剥がしたもののBET表面積は210m/gであった。
【0059】
[参考例2]
変性光触媒ヒドロゾル(A−2)の合成。
【0060】
還流冷却器、温度計および撹拌装置を取りつけた反応器に、TSS4110[可視光応答型酸化チタンゾルの商品名(住友化学工業製)、光触媒濃度10質量%]15gと水15gを入れた後、これに参考例1で合成したSi−H基含有化合物溶液(1)4.1gを40℃にて攪拌下約30分かけて添加し、さらに40℃にて12時間撹拌を続けた後、減圧蒸留によりメチルエチルケトンを除去し、水を加えて5質量%の非常に分散性の良好な変性光触媒ヒドロゾル(A−2)を得た。この時、Si−H基含有化合物溶液(1)の反応に伴い生成した水素ガス量は20℃において25mlであった。
また、得られた変性光触媒ヒドロゾル(A−2)の粒径分布は単一分散(数平均粒子径は29nm)であり、さらに変性処理前のTSS4110の単一分散(数平均粒子径は13nm)の粒径分布が大きな粒径側に移動していることが確認できた。
【0061】
[実施例1]
参考例1で得られた変性光触媒ヒドロゾル(A−1)を10cm×10cmの市販の壁紙に厚さ約5μm設定で塗布した後、室温で12時間乾燥させることにより光触媒担持量が約0.022gの光触媒壁紙サンプル1を作成した。得られた光触媒壁紙サンプル1のBET表面積は0.1m/gであった。
得られた光触媒壁紙サンプル1に東芝ライテック製FL20SBLB型ブラックライトの光[トプコン製UVR−2型紫外線強度計(受光部:トプコン製UD−36型受光部)を用いて測定した紫外線強度が2mW/cmとなるよう調整]を24時間照射することによりBET表面積4.5m/gの多孔性光触媒壁紙サンプル1を得た。この際、光触媒壁紙サンプル1に担持された光触媒1gあたりのBET表面積の増加は約200mと計算できる。
【0062】
この多孔性光触媒壁紙サンプル1の脱臭性を評価したところ、100ppmのアセトアルデヒドがブラックライト照射後に0ppm(検出限界以下)となった。また、この多孔性光触媒壁紙サンプル1の防カビ性は良好(○)であり、抗菌性も良好な結果(○)となった。また、多孔性光触媒壁紙サンプル1の耐光性は良好(○)であった。
さらに、耐光性試験後の多孔性光触媒壁紙サンプル1を用いて再度脱臭性を評価したところ、100ppmのアセトアルデヒドがブラックライト照射後に0ppm(検出限界以下)となり、脱臭性能も保持していた。
【0063】
[実施例2]
参考例1で得られた変性光触媒ヒドロゾル(A−1)の代わりに、参考例2で得られた変性光触媒ヒドロゾル(A−2)用いる以外は実施例1と同様の操作を行って光触媒担持量が約0.020gの光触媒壁紙サンプル2を作成した。得られた光触媒壁紙サンプル2のBET表面積は0.1m/gであった。
得られた光触媒壁紙サンプル2に東芝ライテック製蛍光灯(メロウ5N)の光[トプコン製UVR−2型紫外線強度計{受光部として、トプコン製UD−40型受光部(波長370〜490nmの光に対応)を使用}を用いて測定した可視光強度が0.5mW/cmとなるよう調整。この際、トプコン製UD−36型受光部(波長310〜400nmの光に対応)で測定した紫外線強度は15μW/cm]を5日間照射することにより、BET表面積3.9m/gの多孔性光触媒和紙2を得た。この際、光触媒壁紙サンプル2に含有される光触媒1gあたりのBET表面積の増加は約190mと計算できる。
【0064】
この多孔性光触媒壁紙サンプル2の脱臭性を評価したところ、100ppmのアセトアルデヒドがブラックライト照射後に5ppmとなった。また、この多孔性光触媒壁紙サンプル2の防カビ性は良好(○)であり、抗菌性も良好な結果(○)となった。また、多孔性光触媒壁紙サンプル2の耐光性は良好(○)であった。
さらに、耐光性試験後の多孔性光触媒壁紙サンプル2を用いて再度脱臭性を評価したところ、100ppmのアセトアルデヒドがブラックライト照射後に0ppm(検出限界以下)となり、脱臭性能も保持していた。
【0065】
[実施例3]
参考例1で得られた変性光触媒ヒドロゾル(A−1)100gに増感色素としてエオシンY0.01gを添加し、実施例1と同様の操作を行って光触媒担持量が約0.025gの光触媒壁紙サンプル3を作成した。得られた光触媒壁紙サンプル3のBET表面積は0.1m/gであった。
得られた光触媒壁紙サンプル3に実施例2と同じ光強度の東芝ライテック製蛍光灯(メロウ5N)の光を5日間照射することにより、BET表面積が4.3m/gの多孔性光触媒壁紙サンプル3を得た。この際、光触媒壁紙サンプル3に含有される光触媒1gあたりのBET表面積の増加は約170mと計算できる。
この多孔性光触媒壁紙サンプル3の脱臭性を評価したところ、100ppmのアセトアルデヒドがブラックライト照射後に0ppm(検出限界以下)となった。また、この多孔性光触媒壁紙サンプル3の防カビ性は良好(○)であり、抗菌性も良好な結果(○)となった。また、多孔性光触媒壁紙サンプル3の耐光性は良好(○)であった。
さらに、耐光性試験後の多孔性光触媒壁紙サンプル3を用いて再度脱臭性を評価したところ、100ppmのアセトアルデヒドがブラックライト照射後に0ppm(検出限界以下)となり、脱臭性能も保持していた。
【0066】
[参考例3]
実施例1で得られた光触媒壁紙サンプル1に実施例2と同じ光強度の東芝ライテック製蛍光灯(メロウ5N)の光を5日間照射したところ、BET表面積は0.4m/gとわずかに増加したが、実施例3で得た光触媒壁紙サンプル3と比べてBET表面積の増加は非常に小さかった。
[比較例1]
TKS203(参考例1と同じ)を水で5質量%に希釈した水分散体を用いて実施例1と同様の操作を行い、光触媒担持量が約0.020gの光触媒壁紙サンプル4を作成した。得られた光触媒壁紙サンプル4のBET表面積は4.0m/gであった。
得られた光触媒壁紙サンプル4に実施例1と同じ強度の東芝ライテック製FL20SBLB型ブラックライトの光を24時間照射したが、BET表面積は4.0m/gと変化しなかった。
また、得られた光触媒壁紙サンプル4の耐光性は、非常に悪い結果(×)であった。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明の多孔質光触媒壁紙は、長期にわたり、日常生活において発生する各種悪臭ガスや有害ガス、有害化合物等の分解、除去および殺菌、防カビ等に有用であり、また、たばこのヤニ汚れ等を分解し外観の美観を維持する事ができる為、環境浄化性能や防汚性能を有する壁紙として使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光触媒(a)と該光触媒への親和力が強く、光触媒作用によって分解される光触媒親和性有機成分(B)と光触媒作用により容易に分解しない難分解成分(C)とが結合した複合化合物(BC)が担持されてなることを特徴とする光触媒壁紙。
【請求項2】
光触媒(a)を請求項1に記載の複合化合物(BC)で変性処理されてなる変性光触媒(A)が担持されてなることを特徴とする光触媒壁紙。
【請求項3】
該光触媒親和性有機成分(B)がポリオキシアルキレン基を有することを特徴とする請求項1、2のいずれかに記載の光触媒壁紙。
【請求項4】
光触媒(a)が可視光応答型光触媒であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の光触媒壁紙。
【請求項5】
増感色素が担持されてなることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の光触媒壁紙。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかに記載の光触媒壁紙に、担持された光触媒(a)のバンドギャップエネルギーよりも高いエネルギーの光を照射することにより光触媒(a)1gあたりのBET表面積が10m以上増加した多孔性光触媒壁紙。
【請求項7】
請求項5に記載の光触媒壁紙に、担持された増感色素の吸収光を照射することにより光触媒(a)1gあたりのBET表面積が10m以上増加した多孔性光触媒壁紙。
【請求項8】
有機物分解活性を有することを特徴とする請求項6、7のいずれかに記載の多孔性光触媒壁紙。
【請求項9】
抗菌性能を有することを特徴とする請求項6、7のいずれかに記載の多孔性光触媒壁紙。
【請求項10】
防カビ性能を有することを特徴とする請求項6、7のいずれかに記載の多孔性光触媒壁紙。

【公開番号】特開2006−89858(P2006−89858A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−274026(P2004−274026)
【出願日】平成16年9月21日(2004.9.21)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】