説明

光触媒式空気浄化装置

【課題】設置スペースの増大化を伴うことなく浄化能力を簡単に変更することができるとともに、装置の低廉化を図った光触媒式空気浄化装置を提供する。
【解決手段】光触媒を担持した光触媒フィルタと、光触媒反応を励起するための光源と、前記光触媒フィルタ側への空気取り込みを案内する風ガイド11とを一体化し、空気が前記光触媒フィルタを通過できる構造に構成した、例えば5個の空気浄化モジュール20と、前記各空気浄化モジュール20共通の電源・制御装置50と、空気吐き出しファン51とを、同一外箱体30内に設置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光触媒を利用した光触媒式空気浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
酸化チタンなどの光触媒に紫外線などの光を照射すると、光触媒内部で正孔、電子が発生する。それら正孔、電子は光触媒表面に拡散し、該表面又はその近傍に存在する物質と反応する。
【0003】
この光触媒の性質を利用した空気浄化装置としては、従来、例えば下記特許文献1,2に記載のものが提案されていた。
【特許文献1】特開2005−296859号公報
【特許文献2】特開2000−202015号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1,2を含む従来の光触媒式空気浄化装置において、その浄化能力は光触媒の大きさ(面積)と紫外線ランプの数量を変えて対応しており、通常、光触媒フィルタ、紫外線ランプ、FAN、電源・制御回路を備えた一つの装置として構成されている。そのため、浄化能力に応じて装置の大きさが決定されてしまう。
【0005】
したがって、浄化空間の体積や空気汚染濃度に応じて浄化能力を上げたい場合には、形状を大型化したり、同形の装置を複数用意する必要がある。
【0006】
その際、(1)浄化能力を条件により変化させたい場合の応用がきかない、(2)複数の装置を設置するための広いスペースが必要となる、(3)装置毎に電源や制御装置、FANが必要なため高価となる等の問題点が生じる。
【0007】
本発明は上記課題を解決するものであり、設置スペースの増大化を伴うことなく浄化能力を簡単に変更することができるとともに、装置の低廉化を図った光触媒式空気浄化装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための請求項1に記載の光触媒式空気浄化装置は、光触媒を担持した光触媒フィルタと、光触媒反応を励起するための光源と、前記光触媒フィルタ側への空気取り込みを案内する風ガイドとを一体化し、空気が前記光触媒フィルタを通過できる構造に構成した複数の空気浄化モジュールと、前記各空気浄化モジュール共通の電源・制御装置と、空気吐き出しファンとを、同一外箱体内に設置したことを特徴としている。
【0009】
上記構成によれば、光触媒による空気浄化に必要な機能をモジュール化しているため、空気浄化モジュールの設置台数を増減することで浄化能力を簡単に変更することができる。
【0010】
また電源・制御装置および空気吐き出しファンを共通化してそれらの増加を抑制しているため、全体の装置構成を小型化することができるとともに、装置の低廉化を図ることができる。
【0011】
また請求項2に記載の光触媒式空気浄化装置は、前記複数の空気浄化モジュールは、該モジュールを同一外箱体内に段積み設置するための取り付け手段を備えていることを特徴としている。
【0012】
上記構成によれば、複数の空気浄化モジュールを段積みすることができるため、縦長、横長、又はそれらを組み合わせたバリエーションにより、設置場所に応じた様々な大きさ・形状の装置を製作することができる。これによって設置面積を最適に利用することができる。
【0013】
また請求項3に記載の光触媒式空気浄化装置は、前記光触媒式空気浄化装置が、空気浄化空間とは仕切り手段により仕切られた別の空間に設置され、該設置場所と前記空気浄化空間との間を結ぶ吸排気ダクトを備えていることを特徴としている。
【0014】
上記構成によれば、空気浄化空間の空気を、別の空間に設置した空気浄化装置により浄化し、空気浄化空間に排気することができる。このため、空気浄化空間における前記装置の占有面積はゼロとなり、空気浄化空間を有効利用することができる。
【0015】
さらに外箱体の扉にドアスイッチを設けておき、メンテナンス等で扉を開けたときにドアスイッチの検知信号により空気吐き出しファンを停止させるように構成しても良い。
【0016】
また請求項4に記載の光触媒式空気浄化装置は、前記風ガイドは、空気取り込みの案内方向が可変に構成されていることを特徴としている。
上記構成によれば、空気取り込みの案内方向が可変となるため、設置場所の条件に応じて効率よく空気を取り込むことができる。
【0017】
また請求項5に記載の光触媒式空気浄化装置は、前記複数の空気浄化モジュールには、配線用のコネクタが各々設けられていることを特徴としている。
【0018】
上記構成によれば、配線を容易に実施することができ、また空気浄化モジュールの設置台数を変更する場合の配線作業が簡単化される。
【発明の効果】
【0019】
(1)請求項1〜5に記載の発明によれば、光触媒による空気浄化に必要な機能をモジュール化しているため、空気浄化モジュールの設置台数を増減することで浄化能力を簡単に変更することができる。
【0020】
また電源・制御装置および空気吐き出しファンを共通化してそれらの増加を抑制しているため、全体の装置構成を小型化することができるとともに、装置の低廉化を図ることができる。
(2)また請求項2に記載の発明によれば、複数の空気浄化モジュールを段積みすることができるため、縦長、横長、又はそれらを組み合わせたバリエーションにより、設置場所に応じた様々な大きさ・形状の装置を製作することができる。これによって設置面積を最適に利用することができる。
(3)また請求項3に記載の発明によれば、空気浄化空間の空気を、別の空間に設置した空気浄化装置により浄化し、空気浄化空間に排気することができる。このため、空気浄化空間における前記装置の占有面積はゼロとなり、空気浄化空間を有効利用することができる。
(4)また請求項4に記載の発明によれば、空気取り込みの案内方向が可変となるため、設置場所の条件に応じて効率よく空気を取り込むことができる。
(5)また請求項5に記載の発明によれば、配線を容易に実施することができ、また空気浄化モジュールの設置台数を変更する場合の配線作業が簡単化される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明するが、本発明は下記の実施形態例に限定されるものではない。図1は本発明の一実施形態例における光触媒式空気浄化装置の空気浄化モジュールの構成を表し、(a)は平面(天井面)図、(b)は正面図、(c)は右側面図、(d)は内部を示す斜視図である。
【0022】
図1において、網目状の天井板1、右側面板2、左側面板3、背面板4およびフロントパネル5によって、底面が開口された筐体6が形成されている。この筐体6内には近紫外線ランプユニット(本発明の光源)7が配設され、該近紫外線ランプユニット7の上、下面に対向して光触媒フィルタユニット(本発明の光触媒フィルタ)8a,8bが各々配設されている。フロントパネル5の左側の固定部5aには配線用のコネクタ9が設けられ、右側の開閉部5bは開閉可能に構成されている。
【0023】
筐体6の右側面板2および左側面板3のフロントパネル5側端部には、L字状の取付具(本発明の取付手段)10が各々固設されている。この取付具10は、その上端を天井板1の位置とし、下端は筐体6の開口底面6aよりも所定距離下方の部位まで延設されている。
【0024】
取付具10の、例えば左、右各々4箇所には切り欠き穴10a…が設けられており、これら切り欠き穴10a…を通して、後述する外箱体に例えばビス止めにより取り付けられるものである。
【0025】
筐体6の背面板4の下端部と取付具10の下端部との間には、板状の風ガイド(本発明の風ガイド)11が取り付けられている。この風ガイド11と筐体6の開口底面6aとで囲まれる部位が空気取り込み領域11aとして形成される。
【0026】
上記のように筐体6、近紫外線ランプ7、光触媒フィルタユニット8a,8b、コネクタ9、取付具10および風ガイド11を一体化することによって空気浄化モジュール20を構成している。
【0027】
この空気浄化モジュール20の構成によって、空気取り込み領域11aから取り込まれた空気は、光触媒フィルタユニット8b,近紫外線ランプユニット7、光触媒フィルタユニット8aおよび天井板1を介して流通される。
【0028】
図1のように構成された空気浄化モジュール20は、図2、図3に示すような外箱体内に、後述する共通の電源・制御装置および空気吐き出しファンとともに、複数個段積み設置される。
【0029】
図2は縦長の外箱体30、図3は横長の外箱体40の外観を各々示しており、31、41は天井面に設けられた吐き出し口である。
【0030】
図4は縦長の外箱体30およびその内部の構成を表しており、(a)は正面図、(b)は扉32を除去した正面の構成図、(c)は右側面板33Rを除去した右側面の構成図である。
【0031】
扉32は片開き方式に構成され、該扉32には空気取り込みを可能とした吸気パネル34が設けられている。
【0032】
扉32から外箱体30の背面方向に所定距離隔てた部位には、左、右2枚の取付板35L,35Rが立設されている。この取付板35L,35Rには、図1のように構成された空気浄化モジュール20が例えば5個段積み状態で、各取付具10を介してビス止めなどにより取り付けられている。
【0033】
5個の空気浄化モジュール20の下部には、該5個のモジュール20共通の電源・制御装置50が配設されている。5個の空気浄化モジュール20の上部には、該5個のモジュール20共通の空気吐き出しファン51が配設されている。
【0034】
52は、上部に設けられた取付板35Uに取り付けられた電源スイッチである。5個の空気浄化モジュール20と電源・制御回路50はコネクタ9を介して接続される。
【0035】
上記のように構成された装置において、電源スイッチ52が投入されると、電源・制御装置50、5個の空気浄化モジュール20…および空気吐き出しファン51に電源が供給され各々駆動状態となる。
【0036】
この場合、吸気パネル34から取り込まれた空気は各風ガイド11によりガイドされて、空気取り込み領域11aから、各空気浄化モジュール20の光触媒フィルタユニット8b,近紫外線ランプユニット7、光触媒フィルタユニット8a、天井板1、共通の空気吐き出しファン51および吐き出し口31を介して流通する。この空気流通過程で各空気浄化モジュール20によって空気が浄化される。
【0037】
図2〜図4の実施例は、本発明の光触媒式空気浄化装置を、浄化しようとする場所(空気浄化空間)に設置するものであったが、これに限らず図5のように、空気浄化空間とは別の空間に設置する構成としても良い。
【0038】
図5において、(a)は正面図、(b)は外箱体60の扉61を除去した正面の構成図、(c)は右側面板62Rを除去した右側面の構成図である。外箱体60は、空気浄化空間Xとは所定の仕切手段、例えば壁70により区分された別の空間Yに設置されている。
【0039】
壁70の上部には所定径の穴が設けられ、該穴には排気ダクト71が挿通され、該ダクト71の一端には排気口72が設けられている。排気ダクト71の他端は、外箱体60の背面板62b上部に設けた穴63aに連結されている。
【0040】
この穴63a内には、外箱体60内で浄化された空気を排気ダクト71および排気口72を介して空気浄化空間Xに排気する空気吐き出しファン51が設けられている。
【0041】
壁70の下部には所定径の穴が設けられ、該穴には吸気ダクト73が挿通され、該ダクト73の一端には吸気口74が設けられている。吸気ダクト73の他端は、外箱体60の背面板62b下部に設けた穴63bに連結されている。
【0042】
外箱体60の背面板62bから扉61方向に所定距離隔てた部位には、左、右2枚の取付板64L,64Rが立設されている。この取付板64L,64Rには、図1のように構成された空気浄化モジュール20が例えば5個段積み状態で取り付けられている。
【0043】
ここで、この図5において、各空気浄化モジュール20の風ガイド11は、図1、図4とは逆方向に取り付けている。すなわち、例えば4つの切り欠き穴10aを有した取付具10を、筐体6の右側面板2および左側面板3の背面板4側端部に各々固設し、該取付具10の下端部とフロントパネル5の下端部との間に風ガイド11を取り付け、前記取付具10の各切り欠き穴10a…を通して、前記左右の取付板64L,64Rに例えばビス止めにより取り付けている。尚、外箱体60の扉61には図2〜図4のような吸気パネル34は設けていない。
【0044】
また、吸気ダクト73から吸い込まれた空気が直接空気吐き出しファン51に流れ込まないように、前記ファン51の下部には区分板65が設けられている。これによって、電源が投入されているときは、空気吐き出しファン51の駆動によって、吸気口74および吸気ダクト73から取り込まれた空気浄化空間Xの空気は各風ガイド11によりガイドされて、空気取り込み領域11aから、各空気浄化モジュール20の光触媒フィルタユニット8b,近紫外線ランプユニット7、光触媒フィルタユニット8a、天井板1、共通の空気吐き出しファン51、排気ダクト71および排気口72を介して流通する。この空気流通過程で各空気浄化モジュール20によって空気が浄化される。
【0045】
このように図5の構成によれば、空気浄化空間Xの空気を、別の空間Yに設置した空気浄化装置により浄化し、空気浄化空間Xに排気することができる。このため、空気浄化空間Xにおける前記装置の占有面積はゼロとなり、空気浄化空間Xを有効利用することができる。
【0046】
さらに外箱体60の扉61にドアスイッチ80を設けておき、メンテナンス等で扉61を開けたときにドアスイッチ80の検知信号により空気吐き出しファン51を停止させるように構成しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の一実施形態例の光触媒式空気浄化装置の要部である空気浄化モジュールを表し、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は右側面図、(d)は内部を示す斜視図。
【図2】本発明の一実施形態例の光触媒式空気浄化装置の全体の外観を示し、(a)は平面図、(b)は右側面図。
【図3】本発明の他の実施形態例の光触媒式空気浄化装置の全体の外観を示し、(a)は平面図、(b)は右側面図。
【図4】本発明の一実施形態例の光触媒式空気浄化装置の全体の詳細を表し、(a)は正面図、(b)は扉を外した正面図、(c)は右側面の内部を示す構成図。
【図5】本発明の他の実施形態例の光触媒式空気浄化装置の全体の詳細を表し、(a)は正面図、(b)は扉を外した正面図、(c)は右側面の内部を示す構成図。
【符号の説明】
【0048】
6…筐体、7…近紫外線ランプユニット、8a,8b…光触媒フィルタユニット、9…コネクタ、10…取付具、11…風ガイド、11a…空気取り込み領域、20…空気浄化モジュール、30,40,60…外箱体、31,41…吐き出し口、32,61…扉、34…吸気パネル、35L,35R、64L,64R…取付板、50…電源・制御装置、51…空気吐き出しファン、52…電源スイッチ、63a,63b…穴、65…区分板、70…壁、71…排気ダクト、72…排気口、73…吸気ダクト、74…吸気口、X…空気浄化空間、Y…別の空間。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光触媒を担持した光触媒フィルタと、光触媒反応を励起するための光源と、前記光触媒フィルタ側への空気取り込みを案内する風ガイドとを一体化し、空気が前記光触媒フィルタを通過できる構造に構成した複数の空気浄化モジュールと、
前記各空気浄化モジュール共通の電源・制御装置と、
空気吐き出しファンとを、
同一外箱体内に設置したことを特徴とする光触媒式空気浄化装置。
【請求項2】
前記複数の空気浄化モジュールは、該モジュールを同一外箱体内に段積み設置するための取り付け手段を備えていることを特徴とする請求項1に記載の光触媒式空気浄化装置。
【請求項3】
前記光触媒式空気浄化装置は、空気浄化空間とは仕切り手段により仕切られた別の空間に設置され、該設置場所と前記空気浄化空間との間を結ぶ吸排気ダクトを備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の光触媒式空気浄化装置。
【請求項4】
前記風ガイドは、空気取り込みの案内方向が可変に構成されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の光触媒式空気浄化装置。
【請求項5】
前記複数の空気浄化モジュールには、配線用のコネクタが各々設けられていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の光触媒式空気浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−112482(P2009−112482A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−287986(P2007−287986)
【出願日】平成19年11月6日(2007.11.6)
【出願人】(000006105)株式会社明電舎 (1,739)
【Fターム(参考)】