説明

光触媒微粒子、光触媒分散液及び光触媒加工繊維

【課題】高い光触媒活性を示す光触媒微粒子を提供すること。
【解決手段】リン酸のアルカリ金属塩及びリン酸類のアルカリ金属塩から選択される1種以上のリン含有化合物と、前記リン含有化合物が複合化されたチタニアとを有することを特徴とする。チタニアにリン酸のアルカリ金属塩を複合化することで高い光触媒活性を発揮できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い光触媒活性を示す光触媒微粒子、光触媒分散液及び光触媒加工繊維に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から光触媒としてはチタニアが用いられている。チタニアに光線が照射されると、チタニアの価電帯の電子が空帯に励起し、価電子帯には正孔が生じる。この電子と正孔とが、それぞれ還元反応と酸化反応とを起こすことにより光触媒作用が発揮される。光触媒作用は光線と水との存在により発揮されるものと考えられており、消臭、防汚、抗菌、空気や水の浄化などへの応用がなされている。
【特許文献1】国際公開第2002/053285号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、従来の光触媒は十分な光触媒作用を発揮できているとは言い難く、更なる効果の発現が求められている。
【0004】
本発明は上記実情に鑑みなされたものであり、高い光触媒活性を示す光触媒微粒子、光触媒分散液及び光触媒加工繊維を提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する請求項1に記載の光触媒微粒子の特徴は、リン酸のアルカリ金属塩及びリン酸類のアルカリ金属塩から選択される1種以上のリン含有化合物と、
前記リン含有化合物が複合化されたチタニアと、
を有することにある。
【0006】
上記課題を解決する請求項2に記載の光触媒微粒子の特徴は、請求項1において、前記リン含有化合物が前記チタニアの表面に付着していることにある。
【0007】
上記課題を解決する請求項3に記載の光触媒微粒子の特徴は、請求項1又は2において、体積平均粒径が10nm〜200nmであることにある。
【0008】
上記課題を解決する請求項4に記載の光触媒微粒子の特徴は、請求項1〜3の何れか1項において、前記リン含有化合物がピロリン酸ナトリウム及び/又はトリリン酸ナトリウムであることにある。
【0009】
上記課題を解決する請求項5に記載の光触媒分散液の特徴は、請求項1〜4の何れか1項に記載の光触媒微粒子と、
水及び/又はアルコール類からなり、前記光触媒微粒子を分散する分散媒と、を有することにある。
【0010】
上記課題を解決する請求項6に記載の光触媒分散液の特徴は、請求項5において、前記光触媒微粒子が全体の質量を基準として0.1%〜20%含有することにある。
【0011】
上記課題を解決する請求項7に記載の光触媒分散液の特徴は、請求項5又は6において、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、及びコロイダルシリカからなる群から選択される1種以上の結着材を有することにある。
【0012】
上記課題を解決する請求項8に記載の光触媒分散液の特徴は、請求項5〜7の何れか1項において、ゼオライト、活性炭、シリカゲル、及び活性アルミナからなる群から選択される1種以上の吸着剤を有することにある。
【0013】
上記課題を解決する請求項9に記載の光触媒加工繊維の特徴は、請求項1〜4の何れか1項に記載の光触媒微粒子と、
前記光触媒微粒子を表面に付着、及び/又は、内部に練り込んでいる繊維とを有することにある。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る光触媒微粒子は、チタニアにリン含有化合物を複合化することで高い光触媒活性を発揮できる。光触媒活性が向上する機構としては以下の機構が推測される。光触媒は価電帯から空帯への電子の励起により光触媒作用を発現するが、リン含有化合物がチタニアに複合化することにより、リン含有化合物とチタニアとの界面にショットキー障壁が生じ、より狭いバンドギャップができることで、幅広いエネルギーの光を利用でき、結果として、高性能の光触媒が実現できるものと推測される。また、リン含有化合物が複合化することにより、生起した電子と正孔との電荷分離を促進して再結合を阻害することにより電子と正孔とが有効に利用されるようになって高性能な光触媒が実現できるものと推測される。
【0015】
なお、チタニアの表面にアルカリ土類金属を含む縮合リン酸塩が存在することを特徴とする技術が開示されているが(特許文献1)、特許文献1に開示された技術はアルカリ土類金属の塩を採用している点で本発明の光触媒微粒子と異なるものである。後に詳述するが、リン酸のアルカリ土類金属塩を採用した光触媒微粒子と比べ、アルカリ金属塩を採用した本発明の光触媒微粒子は著しく高い光触媒活性を発揮することを確認している。
【0016】
請求項2に係る光触媒微粒子は、リン含有化合物がチタニアの表面に付着させていることにより、簡単に製造することができる。更に、本構成でも高い光触媒活性を発揮できる。
【0017】
請求項3に係る光触媒微粒子は、粒度分布を上述の範囲に制御することにより、高い光触媒活性を発揮できる。粒度分布をこの範囲内にすることにより、比表面積が大きくなって、反応が速やかに進行されると共に、バンドギャップが小さくなって、より長波長側の光線でも光触媒活性を発揮できるようになる。
【0018】
請求項4に係る光触媒微粒子は、アルカリ金属塩のうち、ピロリン酸ナトリウム及び/又はトリリン酸ナトリウムを採用することにより、高い光触媒活性を発揮できる。
【0019】
請求項5に係る光触媒分散液は、上述の本発明の光触媒微粒子を含有しているため、その高い光触媒活性を有する分散液を提供できる。この分散液は液体のままで光触媒活性を発揮させることができるのはもちろん、何らかの基材上に塗布・乾燥させることも可能である。何らかの基材上に塗布・乾燥させた場合にはその基材の表面に光触媒活性を付与できる。
【0020】
特に請求項6に係る光触媒分散液のような濃度範囲にすることにより、高い光触媒活性を発揮できる。また、請求項7に係る光触媒分散液のような結着材を有することにより基材の表面に強固に付着させることができる。更に、請求項8に係る光触媒分散液のように吸着剤を含有させることにより、光触媒作用により生成した分解物を速やかに吸着除去することが可能になって、消臭、防汚、抗菌、空気や水の浄化などにおける作用増強が実現できる。
【0021】
請求項9に係る光触媒加工繊維は、上述した本発明の光触媒微粒子を表面乃至内部に有することにより、繊維に光触媒活性を付与することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下に本発明の光触媒微粒子、光触媒分散液、そして光触媒加工繊維について実施形態に基づき詳細に説明を行う。本実施形態の光触媒微粒子は消臭、防汚、抗菌、空気や水の浄化のために用いることができる。例えば、本実施形態の光触媒微粒子は本実施形態の光触媒分散液とした上で、対象となる基材上に塗布・乾燥することにより、基材に光触媒活性を付与することができる。また、本実施形態の光触媒加工繊維にすることで光触媒活性を備えた布(衣服、カーテン、壁紙、椅子表皮、ソファー表皮、自動車シート表皮など)、フィルタなどを提供可能である。
【0023】
(光触媒微粒子)
本実施形態の光触媒微粒子はチタニアとリン含有化合物とを有する。チタニアは光触媒として用いられるものであればどのようなものであっても良い。例えば、アナタース型、ブルッカイト型、ルチル型などの結晶構造をもつ一般的なチタニアを採用できる。
【0024】
チタニアを得る方法は特に限定しない。例えば、硫酸チタニル、チタンアルコキシド、塩化チタンなどを加水分解して、含水酸化チタンや水酸化チタンの微粒子とした後、焼成することにより、チタニア微粒子を得ることができる。この加水分解時、焼成時にリン含有化合物を添加しておくことでチタニア微粒子中にリン含有化合物を取り込むこともできる。
【0025】
チタニアの粒度分布としては特に限定しないが、最終的な光触媒微粒子の体積平均粒径が10nm〜200nmの範囲になるようにすることが望ましい。チタニアの粒度分布を制御する方法としては特に限定しないが、先の製造方法中において濃度を変化させたり、加水分解条件を変化させたり、焼成条件を変化させたりすることにより行うことができる。
【0026】
リン含有化合物はリン酸のアルカリ金属塩及びリン酸類のアルカリ金属塩から選択される1種以上の化合物である。アルカリ金属としてはナトリウム、カリウムが望ましく、ナトリウムが特に望ましい。リン酸類としてはピロリン酸、トリリン酸などを採用することが望ましい。リン含有化合物の含有量はチタニアの質量を基準として10%〜100%の範囲とすることが望ましい。
【0027】
リン含有化合物をチタニアに複合化する方法としては、前述したように、チタニアの微粒子を製造するときにリン含有化合物(又はリン含有化合物の原料・前駆体)を含有させる方法の他、チタニアとリン含有化合物とを物理的に混合する方法が挙げられる。物理的な混合としては水やアルコール類などのチタニア及びリン含有化合物に対して親和性が高い液体中にチタニア及びリン含有化合物を分散乃至溶解させた後、混合することで行うことができる。また、チタニア及びリン含有化合物を液体を使用せずにそのまま混合することによっても複合化することができる。液体を使用しない混合の方法としては、ボールミル、振動ボールミル、ビーズミル、遊星ミルなどの粉砕機、撹拌機などを用いて行う方法、メカノケミカル法などを利用してチタニアの表面にリン含有化合物を被覆することが望ましい。
【0028】
(光触媒分散液)
本実施形態の光触媒分散液は、上述の本実施形態の光触媒微粒子を分散媒中に分散した分散液である。特にスラリー状になっていることが望ましい。この光触媒分散液は塗料などに適用することで光触媒活性を発揮できる塗膜を提供できる。また、この分散液中に繊維製品又は繊維を浸漬することにより後述する光触媒加工繊維を提供することができる。
【0029】
分散媒としては水、アルコール類が採用される。アルコール類としてはメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノールなどどのようなものであっても良い。光触媒微粒子の含有量としては全体の質量を基準として、0.1%以上、0.2%以上、1%以上の濃度で含有することが望ましい。また、20%以下、10%以下、1%以下の濃度で含有することが望ましい。例えば、保存状態においては1%〜10%程度の濃度を採用することができる。また、繊維などを浸漬する場合には0.2%〜1%程度の濃度を採用することができる。分散媒中にて光触媒微粒子を製造することでそのまま光触媒分散液を調製することも可能である。
【0030】
更に、本光触媒分散液はその他の成分を含むことも可能である。その他の成分としては結着材、吸着剤などである。本光触媒分散液は、何らかの基材上に塗布・乾燥することにより、その基材の表面に光触媒活性を付与することができるが、結着材は乾燥後に分散されていた光触媒微粒子をその基材の表面に強固に付着させる作用を発揮するものである。結着材としてはウレタン樹脂、シリコーン樹脂、及びコロイダルシリカからなる群から選択されるものが使用可能であり、それらを単独又は複数組み合わせて使用することができる。ウレタン樹脂、シリコーン樹脂は重合前の組成物であっても良い。結着材としては光触媒微粒子への光の到達に与える影響が許容できるものを選択する。特に、光触媒活性を発揮するために照射が必要な波長域における吸光度が小さいことが望ましい。結着材の固形分は光触媒微粒子の質量を基準として5%〜50%程度含有することが望ましい。
【0031】
吸着剤はゼオライト、活性炭、シリカゲル、及び活性アルミナからなる群から選択される1種以上である。これらの吸着剤は光触媒微粒子が分解した分解物を一時的乃至永続的に吸着することにより、分解を促進する作用を発揮する。また、分解前の被分解対象物についても吸着させるようにすることにより、光触媒微粒子による分解速度が十分でない場合に補うことができる。
【0032】
(光触媒加工繊維)
本実施形態の光触媒加工繊維は前述の光触媒微粒子と繊維とを有する。本光触媒加工繊維は、糸、布、不織布、紙などとして使用することができる。それらの形態にした後にも光触媒活性を発現することが可能である。光触媒微粒子は上述したとおりなので更なる説明は省略する。
【0033】
繊維としては綿、絹、羊毛、麻、ポリアミド繊維、アクリル繊維、ポリエステル繊維、ポリオレフィン繊維、ポリウレタン繊維、レーヨン、アセテート繊維、アラミド繊維、ガラス繊維、炭素繊維などの通常の繊維を採用できる。
【0034】
繊維の表面に光触媒微粒子を付着させる方法としては特に限定しない。例えば、何らかの結着材を用いて付着させることができる。結着材としては光触媒分散液の欄にて説明したものがそのまま使用できるため、ここでの説明は省略する。更には前述した光触媒分散液中に繊維を浸漬することにより、本実施形態の光触媒加工繊維を得ることができる。
【0035】
繊維の内部に光触媒微粒子を練り込むこともできる。その場合には繊維を紡糸する工程において紡糸液中に光触媒微粒子を分散させた状態にする。光触媒微粒子と繊維を構成する材料との間における親和性が低い場合には光触媒微粒子の表面を改質するか、繊維を構成する材料を改質するかして親和性を向上することが望ましい。
【実施例1】
【0036】
蒸留水180.7gと、ピロリン酸ナトリウム(キシダ化学社製:二リン酸ナトリウム(10水和物)1級)9.3gとを20分間撹拌し均一な溶液(リン酸塩水溶液)とした。そして、別の容器中にて蒸留水255.4gと、チタニア微粒子(石原産業社製:ST−01:体積粒径105nm)18.6gとを撹拌混合して分散液(チタニア分散液)を得た。その後、3分間以上の時間を掛けてリン酸水溶液の撹拌を続けているチタニア分散液中に投入し混合液を得た。その後、20分間混合液を撹拌し、その後、超音波を照射して複合化を完了した(光触媒分散液)。
【0037】
得られた光触媒分散液を蒸留水にて10倍に希釈した。その希釈液中にポリエステル繊維からなる布を浸漬した。その布を絞ることでピックアップ率が100%となるようにした。その後、140℃で10分間乾燥することにより水分を蒸発させ、本実施例の試験試料としての光触媒加工繊維を得た。
【実施例2】
【0038】
蒸留水180.7gと、ピロリン酸ナトリウム9.3gとを20分間撹拌し均一な溶液(リン酸塩水溶液)とした。そして、別の容器中にて蒸留水210.0gと、酸性酸化チタンゾル(石原産業社製:STS−01:固形分29質量%:体積平均粒径58nm)64.0gとを撹拌混合して分散液(チタニア分散液)を得た。その後、3分間以上の時間を掛けてリン酸水溶液を撹拌を続けているチタニア分散液中に投入し混合液を得た。その後、20分間混合液を撹拌し、その後、超音波を照射して複合化を完了した(光触媒分散液)。
【0039】
得られた光触媒分散液を実施例1と同様にしてポリエステル製の布に付着させ、本実施例の試験試料とした。
【実施例3】
【0040】
蒸留水180.7gと、ピロリン酸ナトリウム9.3gとを20分間撹拌し均一な溶液(リン酸塩水溶液)とした。そして、別の容器中にて蒸留水197.6gと、酸性酸化チタンゾル64.0gとを撹拌混合して分散液(チタニア分散液)を得た。その後、3分間以上の時間を掛けてリン酸水溶液を撹拌を続けているチタニア分散液中に投入し混合液を得た。その後、20分間混合液を撹拌した。結着材としてのウレタン樹脂(三井化学ポリウレタン社製:WS−5000)12.4gを添加した。その後、超音波を照射して複合化を完了した(光触媒分散液)。
【0041】
得られた光触媒分散液を実施例1と同様にしてポリエステル製の布に付着させ、本実施例の試験試料とした。
[比較例1]
【0042】
蒸留水445.4gと、チタニア微粒子18.6gとを撹拌混合した後、超音波を照射して分散液(チタニア分散液)を得た。
【0043】
得られたチタニア分散液を実施例1と同様にしてポリエステル製の布に付着させ、本比較例の試験試料とした。
[比較例2]
【0044】
蒸留水400.0gと、酸性酸化チタンゾル64.0gとを撹拌混合した後、超音波を照射して分散液(チタニア分散液)を得た。
【0045】
得られたチタニア分散液を実施例1と同様にしてポリエステル製の布に付着させ、本比較例の試験試料とした。
[比較例3]
【0046】
蒸留水184.5gと、ピロリン酸アルミニウム(キシダ化学社製:リン酸アルミニウム)5.5gとを20分間撹拌し均一な溶液(リン酸塩水溶液)とした以外は実施例1と同様の操作を行い、最終的にポリエステル製の布に付着させ、本比較例の試験試料とした。
[比較例4]
【0047】
蒸留水184.5gと、リン酸(関東化学社製:リン酸)5.5gとを20分間撹拌し均一な溶液(リン酸水溶液)とした以外は実施例1と同様の操作を行い、最終的にポリエステル製の布に付着させ、本比較例の試験試料とした。
【0048】
(消臭性試験)
実施例及び比較例の試験試料並びに未処理のポリエステル布(対照試料)を用い、臭気成分であるアンモニア及びアセトアルデヒドの除去率を評価した。
【0049】
測定方法は、各試験試料及び対照試料を10cm×10cmの大きさとしたもの(約2.3g)をそれぞれテドラーバック(容積5L)に入れ、封入した。次いで、所定の濃度の臭気成分(テドラーバック中は窒素ガスにて充填されており、臭気成分は窒素ガスを基準として、アンモニア30ppm、アセトアルデヒド100ppmとした)を注入した。試験試料及び対照試料に対して十分に吸着させるために、テドラーバック内の臭気成分の濃度が臭気成分の注入後、1時間における変化が1ppm以下になるまで1時間毎にテドラーバック内の気体の入れ替え(所定の濃度の臭気成分を含む)を行った。
【0050】
臭気成分の濃度の差が1時間で1ppm以下になった後に、再度、所定濃度の臭気成分を含む窒素ガスを2.5Lと空気0.5Lとをテドラーバック内に入れ、試験を開始した。
【0051】
試験は2種類の光を照射する条件にて行った。1つはブラックライト蛍光ランプ(40W)を光源として用い、紫外線強度計(TOPCON社製、受光部UD−36)にて360nmの波長の光の強度を測定したときに、試験試料及び対照試料の表面における強度が1.0mW/cm2となるように調節して行った。もう1つは蛍光ランプ(40W)を光源として用い、紫外線強度計(TOPCON社製、受光部UD−36)にて360nmの波長の光の強度を測定したときに、試験試料及び対照試料の表面における強度が0.02mW/cm2となるように調節して行った。
【0052】
試験開始後、2時間、4時間、20時間、24時間経過後の臭気成分の濃度を測定した。濃度の測定はガステック社製のガス検知管(アンモニアには気体検知管No.3L、アセトアルデヒドにはNo.92L)にて行った。測定結果より「除去率」(%)={(対照試料における濃度)−(試験試料における濃度)}÷(対照試料における濃度)×100を算出した。結果を表1(アンモニア:ブラック蛍光ランプ)、表2(アセトアルデヒド:ブラック蛍光ランプ)、表3(アンモニア:蛍光ランプ)及び表4(アセトアルデヒド:蛍光ランプ)に示す。
【0053】
【表1】

【0054】
【表2】

【0055】
【表3】

【0056】
【表4】

【0057】
表1及び2より明らかなように、ブラック蛍光ランプ(紫外線)を用いた場合において、各実施例の試験試料は高い光触媒活性を示すことが分かった。特に実施例2の試験試料が高い光触媒活性を示した。実施例2に対応するチタニアを含有させている比較例2の試験試料についても他の比較例の試験試料よりも高い光触媒活性を示していることから、実施例2の試験試料が示す高い光触媒活性は酸性チタニアゾルを用いたことに起因するものと推測される。酸性チタニアゾルは分散性が高く、体積平均粒径も小さいため、光触媒活性が高いものと考えられる。
【0058】
表3及び4より明らかなように、蛍光ランプ(可視光)を用いた場合において、実施例2の試験試料は比較例2の試験試料と比べて高い光触媒活性(2倍から5倍程度)を示すことが分かった。
【0059】
以上の結果から、チタニアとリン酸塩(アルカリ金属塩)とを複合化させることにより、高い光触媒活性を示すことが分かった。
【0060】
また、リン酸塩としてアルミニウム塩を用いた以外は実施例と同様にした比較例3や、リン酸塩に替えてリン酸を用いた以外は実施例と同様にした比較例4が他の比較例と同程度の光触媒活性しか示していないことから、チタニアと複合化させるリン含有化合物としてはリン酸(類)のアルカリ金属塩が望ましいことが明らかになった。
【0061】
(褪色性試験)
実施例及び比較例の試験試料並びに対照試料を用い、青色色素であるメチレンブルーを用いた褪色性能を評価した。
【0062】
濃度2.4mg/Lに調製したメチレンブルー水溶液20mL中に、各試験試料及び対照試料、更には染色前のポリエステル布を8cm×5cmの大きさとしたものを浸漬した。その後、ブラック蛍光ランプ(40W)を用い、紫外線強度計にて360nmの波長における強度が各試験試料及び対照試料の表面において1.0mW/cm2になるように光を照射した。2時間照射後、各試験試料及び対照試料並びに染色前のポリエステル布を取り出し、乾燥させた後、測色色差計(日本電色工業社製:ZE−2000)にて測定し、青味を評価した。結果を表5に示す。
【0063】
【表5】

【0064】
表5より明らかなように、各実施例及び比較例の試験試料は対照試料と比べて白色に近づいていることが分かった。これは試験試料に付着させた光触媒微粒子の作用により、メチレンブルーを分解したためであると考えられる。特に、実施例2の試験試料は対応する比較例2の試験試料と比べ、より白色(及び染色前試料)に近づいており、より高い光触媒活性を示していることが明らかになった。また、結着材を含む実施例3の試験試料についても結着材を含まない比較例2の試験試料よりも高い光触媒活性を示すことが明らかになった。
【実施例4】
【0065】
蒸留水95.0gと、ピロリン酸ナトリウム5.0gとを20分間撹拌し均一な溶液(リン酸塩水溶液)とした。そして、別の容器中にて蒸留水333.3gと、酸性酸化チタンゾル66.7gとを撹拌混合して分散液(チタニア分散液)を得た。その後、3分間以上の時間を掛けてリン酸水溶液を撹拌を続けているチタニア分散液中に投入し混合液を得た。その後、20分間混合液を撹拌し、その後、超音波を照射して複合化を完了した(光触媒分散液)。
【0066】
得られた光触媒分散液を光触媒微粒子の濃度が6.4%となるように蒸留水にて希釈した。その希釈液中にポリエステル繊維からなる布を浸漬した。その布を絞ることでピックアップ率が100%となるようにした。その後、140℃で10分間乾燥することにより水分を蒸発させ、本実施例の試験試料としての光触媒加工繊維を得た。
[比較例5]
【0067】
蒸留水97.0gと、ピロリン酸カルシウム(キシダ化学社製:二リン酸カルシウム)3.0gとを20分間撹拌し均一な溶液(リン酸塩水溶液)とした。そして、別の容器中にて蒸留水333.3gと、酸性酸化チタンゾル66.7gとを撹拌混合して分散液(チタニア分散液)を得た。その後、3分間以上の時間を掛けてリン酸水溶液を撹拌を続けているチタニア分散液中に投入し混合液を得た。その後、20分間混合液を撹拌し、その後、超音波を照射して複合化を完了した(光触媒分散液)。
【0068】
得られたチタニア分散液を実施例4と同様にしてポリエステル製の布に付着させ、本比較例の試験試料とした。
【0069】
(消臭性試験)
実施例4及び比較例5の試験試料並びに未処理のポリエステル布(対照試料)を用い、臭気成分であるアンモニア及びアセトアルデヒドの除去率を評価した。
【0070】
測定方法は、各試験試料及び対照試料を10cm×20cmの大きさとしたもの(約4.5g)をそれぞれテドラーバック(容積5L)に入れ、封入した。次いで、所定の濃度の臭気成分(テドラーバック中は窒素ガスにて充填されており、臭気成分は窒素ガスを基準として、アンモニア30ppm、アセトアルデヒド100ppmとした)を注入した。試験試料及び対照試料に対して十分に吸着させるために、テドラーバック内の臭気成分の濃度が臭気成分の注入後、1時間における変化が1ppm以下になるまで1時間毎にテドラーバック内の気体の入れ替え(所定の濃度の臭気成分を含む)を行った。
【0071】
臭気成分の濃度の差が1時間で1ppm以下になった後に、再度、所定濃度の臭気成分を含む窒素ガスを3Lをテドラーバック内に入れ、試験を開始した。
【0072】
試験はブラックライト蛍光ランプ(40W)を光源として用い、紫外線強度計にて360nmの波長の光の強度を測定したときに、試験試料及び対照試料の表面における強度が1.0mW/cm2となるように調節して行った。
【0073】
試験開始後、2時間、4時間、20時間、24時間経過後の臭気成分の濃度を測定した。濃度の測定はガステック社製のガス検知管(アンモニアには気体検知管No.3L、アセトアルデヒドにはNo.92L)にて行った。測定結果より「除去率」(%)={(対照試料における濃度)−(試験試料における濃度)}÷(対照試料における濃度)×100を算出した。結果を表6(アンモニア:ブラック蛍光ランプ)及び表7(アセトアルデヒド:ブラック蛍光ランプ)に示す。
【0074】
【表6】

【0075】
【表7】

【0076】
表6及び7より明らかなように、ピロリン酸ナトリウムを用いた実施例4の試験試料はピロリン酸カルシウムを用いた比較例5の試験試料よりも高い光触媒活性を示すことが分かった。従って、ナトリウムを採用することによりカルシウムを採用した場合よりも高い光触媒活性を示すことが分かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リン酸のアルカリ金属塩及びリン酸類のアルカリ金属塩から選択される1種以上のリン含有化合物と、
前記リン含有化合物が複合化されたチタニアと、
を有することを特徴とする光触媒微粒子。
【請求項2】
前記リン含有化合物は前記チタニアの表面に付着している請求項1に記載の光触媒微粒子。
【請求項3】
体積平均粒径が10nm〜200nmである請求項1又は2に記載の光触媒微粒子。
【請求項4】
前記リン含有化合物はピロリン酸ナトリウム及び/又はトリリン酸ナトリウムである請求項1〜3の何れか1項に記載の光触媒微粒子。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか1項に記載の光触媒微粒子と、
水及び/又はアルコール類からなり、前記光触媒微粒子を分散する分散媒と、を有する光触媒分散液。
【請求項6】
前記光触媒微粒子が全体の質量を基準として0.1%〜20%含有する請求項5に記載の光触媒分散液。
【請求項7】
ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、及びコロイダルシリカからなる群から選択される1種以上の結着材を有する請求項5又は6に記載の光触媒分散液。
【請求項8】
ゼオライト、活性炭、シリカゲル、及び活性アルミナからなる群から選択される1種以上の吸着剤を有する請求項5〜7の何れか1項に記載の光触媒分散液。
【請求項9】
請求項1〜4の何れか1項に記載の光触媒微粒子と、
前記光触媒微粒子を表面に付着、及び/又は、内部に練り込んでいる繊維とを有することを特徴とする光触媒加工繊維。

【公開番号】特開2009−240990(P2009−240990A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−92798(P2008−92798)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(501402730)株式会社アドマテックス (82)
【Fターム(参考)】