説明

光触媒担持ポリテトラフルオロエチレン繊維およびその製造方法

【課題】耐熱性、耐薬品性に優れ、かつ表面に吸着した物質を光触媒作用により分解する機能を有し、さらには長期にわたって使用しても強度劣化の少ないPTFE繊維、およびその製造方法を提供する。
【解決手段】PTFE樹脂からなる繊維であって、以下の[A]〜[C]を必須成分とした化合物が付与されてなることを特徴とする光触媒担持PTFE繊維。
[A]:光触媒機能を有する金属化合物、[B]:アルコキシ末端アミノ変性シリコーン、[C]:アミノアルコキシシラン

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱性、耐薬品性に優れ、かつ表面に吸着した物質を光触媒作用により分解する機能を有し、さらには長期にわたって使用しても強度劣化の少ないポリテトラフルオロエチレン繊維に関する。
【背景技術】
【0002】
酸化チタンをはじめとする光触媒粒子は、その物質の伝導帯と価電子帯の間のエネルギーギャップよりも大きなエネルギーを持つ光を照射されることにより、価電子帯中の電子が励起され、伝導帯に電子が、価電子帯に正孔が生成する。これらの電子および正孔が酸化還元反応を行うことで、接触する有機物などを分解する。このような現象を利用し、空気や水質の浄化、外装材等の防汚への応用が活発に行われている。
【0003】
しかし、酸化チタン等の光触媒活性は非常に強力であり、表面に接触した有機物を分解すると同時に、担持体そのものも分解し、劣化させてしまうという問題点があった。例えば特許文献1では光触媒の表面を被覆することにより、繊維と光触媒の直接の接触を避け、繊維の劣化を抑えられると提案されているが、この被覆により光触媒自体の酸化還元の活性も低下してしまうという問題がある。
【0004】
また特許文献2では、接着剤を用いて基材に光触媒性粒子を付着する方法が提案されているが、フッ素繊維の特性の一つである高い非粘着性のために、十分な担持が達成できず、長期使用する際に脱落するという問題がある。また脱落を防ぐために接着剤成分を多量に用いると、繊維の風合いが硬くなり、フッ素繊維の特徴である平滑性が活かされない結果となる。
【0005】
特許文献3では、光触媒性粒子を含むフッ素樹脂スラリーを金属板に塗布し焼成することでフィルムを得るという製法で作られているが、一度に生産される繊維の量が短いため生産性が悪く、現実的ではない。
【0006】
また特許文献4では、フッ素樹脂と光触媒を混合し、押し出し成形後に圧延してシート状にし加熱焼成することで光触媒担持フッ素樹脂フィルムを形成する方法が提案されており、これをスリットすることで繊維と成すことは可能である。しかし、この方法では内部に含まれる数多くの光触媒粒子は、外部の分解すべき有機物と接触することができず、光触媒として作用しないだけでなく、成形品の強度が十分に得られないという問題がある。
また特許文献5では、マトリックス紡糸法によるポリテトラフルオロエチレン繊維の製造において、光触媒を練りこむ方法が紹介されているが、練り込みの場合大半の光触媒は繊維内部に存在しているため、特許文献4の場合と同様に、内部に含まれる数多くの光触媒粒子は、外部の分解すべき有機物と接触することができず、光触媒として作用しないだけでなく、成形品の強度が十分に得られないという問題がある。
【特許文献1】特開2004−195416号公報
【特許文献2】特開平7−108138号公報
【特許文献3】特開平10−230134号公報
【特許文献4】特開平10−5545号公報
【特許文献5】特開平10−57816号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、耐熱性、耐薬品性に優れ、かつ表面に吸着した物質を光触媒作用により分解する機能を有し、さらには長期にわたって使用しても強度劣化の少ないポリテトラフルオロエチレン繊維を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するにあたって以下のような手段を採用する。
すなわち、ポリテトラフルオロエチレン樹脂からなる繊維であって、以下の[A]〜[C]の化合物を必須成分として付与することを特徴とする光触媒担持ポリテトラフルオロエチレン繊維である。
[A]:光触媒機能を有する金属化合物
[B]:アルコキシ末端アミノ変性シリコーン
[C]:アミノアルコキシシラン。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、耐熱性、耐薬品性に優れ、かつ表面に吸着した物質を光触媒作用により分解する機能を有し、さらには長期にわたって使用しても強度劣化の少ないポリテトラフルオロエチレン繊維を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明はフッ素樹脂のひとつであるポリテトラフルオロエチレン(以下PTFEと略称することがある)樹脂からなる繊維に関するものである。
【0011】
フッ素樹脂にはPTFEの他にPTFEに共重合した4フッ化エチレン−6フッ化プロピレン中剛体(FEP)、4フッ化エチレン−パーフロロアルコキシ基共重合体(PFA)、4フッ化エチレンオレフィン共重合体(ETFE)などがあり、これらは溶融紡糸により生産されている。しかしながら、本発明では耐熱性の点から最も優れるPTFE樹脂がもちいられる。
【0012】
これまでPTFE繊維の製造方法にはマトリックス紡糸法(エマルジョン紡糸法とも呼ばれる)、スプリット剥離法、ペースト押出し法などが知られている。スプリット剥離法とはPTFEの粉末をシリンダ圧縮せしめた後、燒結、スプリット剥離させた後、延伸する製法である。ペースト押出し法はマトリックスポリマーを用いずにPTFEの粉末をワックス状潤滑剤と混練し、棒状もしくはフィルム状に成形した後、該潤滑剤を除去し、延伸、焼成(焼成しない場合もある)する製法である。しかしながら、これら2つの製法ではどうしてもその製法上細かく切り裂いて得られる最終繊維状物の断面は扁平形状であり、しかもランダムで均一性に劣り、特に短繊維としてフェルト加工する際にはネップなどが生成されやすいという欠点があった。
【0013】
本発明に係るPTFE繊維を得るにはマトリックス紡糸法の実施が好ましい。マトリックス紡糸法とは、ビスコースなどをマトリックスとしてPTFEの水分散液との混合液を凝固液中に吐出して繊維化し、次いで精練した後焼成を行う方法である。ポリマー融点以上で焼成することで、マトリックスポリマーの大部分を焼成飛散させながら、PTFEを溶融し、粒子間を融着することではじめてその後の延伸性が付与される。焼成後、未延伸糸は直接1ステップもしくは2ステップに分けて延伸され、強度が実現する。またこの製法により得られるPTFE繊維は物性のバラツキが均一であり、特に短繊維としてフェルト加工する際、加工性が良好である。
【0014】
本発明におけるPTFE繊維は、[A]:光触媒機能を有する金属化合物、[B]:アルコキシ末端アミノ変性シリコーン、[C]:アミノアルコキシシランの化合物を必須成分として付与されてなるものである。
【0015】
本発明において、用いられる[A]:光触媒機能を有する金属化合物(以下「光触媒性金属化合物」という)とは、光を照射することによって物質表面で酸化還元が起こり、臭気成分や細菌、微生物等の有機化合物を分解する化合物である。このような化合物としては、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、および酸化タングステンなどを適用することができる。その中でも比較的安価に入手できる二酸化チタン(TiO)が最も好適であり、その結晶構造は、ブルッカイト型、ルチル型、アナターゼ型の3種のうち、光触媒活性の高いアナターゼ型が特に好ましい。
【0016】
また、これら光触媒性金属化合物の表面にさらに金属粒子を付加担持させることで光触媒反応の速度をさらに増大させ得ることが知られており、付加させる金属粒子の材質としては、白金、ルテニウム、パラジウム、ロジウム、タンタル、銀、ニッケル、銅、ジルコニウム、クロム、バナジウム、酸化スズ、酸化マンガン、酸化ニッケル、酸化ルテニウムなどがある。
【0017】
光触媒性金属化合物の粒径は、平均粒子径で0.5μm以下であることが好ましく、0.01μm以下であることがさらに好ましい。これは、粒径が小さくなるほど表面積が増大し、臭気や有害成分を分解する活性点が多く存在するためである。通常粒径の下限値は0.001μmである。
【0018】
本発明において用いられる[B]アルコキシ末端アミノ変性シリコーンは、次の一般式(1)に示すものが好ましく、アミノ含量が0.1重量%以上、アミノ当量が10000以下、25℃における粘度が100mPa・s以上であるとさらに好ましい。アミノ含量が0.1未満、アミノ等量が10000を越え、25℃における粘度が100未満であると、必須成分の繊維表面に対する固着が弱くなり、十分な耐久性が得られない場合がある。
【0019】
【化1】

【0020】
(式中、Rは炭素数1〜5のアルキル基、Rは水素もしくは炭素数1〜5のアルキル基、Aは1〜5個のアミノ基を有する炭素数1〜10のアルキル基、hおよびkは正の整数をそれぞれ表す。)
【0021】
上記式(1)中、RおよびRで示されるアルキル基は炭素数が5以下であることが好ましい。炭素数が5を超えると、分子全体における疎水基の比率が高くなるために、均一な水分散液を作製することが困難になり、生産中に分離してしまったり、固化してしまったりと作業性が悪化する可能性がある。また、炭素数が長すぎることで、架橋反応時の反応点の障壁となり、架橋反応が十分に起こらなくなることがある。
【0022】
上記式(1)中、Aで示されるアルキル基に含まれるアミノ基は、5個以下であることが好ましい。アミノ基の数が5個を超えると、分子中の反応点が過剰となり、好ましくない副反応が起こるため、十分な強度の架橋皮膜が得られないことがある。またアルキル基の炭素数は10個以下であることが好ましい。炭素数が10個を超えると、架橋反応時の反応点の障壁となり、架橋反応が十分に起こらなくなることがある。好ましい具体例としては、メトキシアミノ変性シリコーン、エトキシアミノ変性シリコーンなどが挙げられる。
【0023】
本発明において用いられる[C]アミノシランは、次の一般式(2)に示すものが好ましく、アミノ含量が5%以上であるとさらに好ましい。アミノ含量が5%未満であると必須成分の繊維表面に対する固着が弱くなり十分な耐久性が得られない場合がある。
【0024】
【化2】

【0025】
(式中、RおよびRは炭素数1〜5のアルキル基、Aは1〜5個のアミノ基を有する炭素数1〜10のアルキル基をそれぞれ表す。)
【0026】
上記式(2)中、RおよびRで示されるアルキル基は炭素数が5以下であることが好ましい。炭素数が5を超えると、分子全体における疎水基の比率が高くなるために、均一な水分散液を作製することが困難になり、生産中に分離してしまったり、固化してしまったりと作業性が悪化する可能性がある。また、炭素数が長すぎることで、架橋反応時の反応点の障壁となり、架橋反応が十分に起こらなくなることがある。
【0027】
上記式(2)中、Aで示されるアルキル基に含まれるアミノ基は、5個以下であることが好ましい。アミノ基の数が5個を超えると、分子中の反応点が過剰となり、好ましくない副反応が起こるため、十分な強度の架橋皮膜が得られないことがある。またアルキル基の炭素数は10個以下であることが好ましい。炭素数が10個を超えると、架橋反応時の反応点の障壁となり、架橋反応が十分に起こらなくなることがある。好ましい具体例としては、メチルジメトキシジアミノシラン、エチルジメトキシジアミノシランなどが挙げられる。
【0028】
[B]アルコキシ末端アミノ変性シリコーン及び[C]アミノシランに含まれるアルキル基の構造に関しては特に限定はされないが、極端に嵩高い置換基、例えばt−ブチル基などを多用することは、架橋反応時の反応点の障壁となり得るため、架橋反応が十分に起こらなくなることがあり好ましくない。
【0029】
また、かかる[B]アルコキシ末端アミノ変性シリコーン及び[C]アミノシランの添加量としては、それらの量の和([B]+[C])が繊維重量全体に対して0.2重量%以上が好ましく、0.5重量%以上が特に好ましい。0.2重量%未満では十分な洗濯耐久性が得られず、また平滑な風合いが乏しくなる。
【0030】
本発明における必須成分の比率に関しては、[A]/([B]+[C])=30/70〜70/30が好ましい。[A]/([B]+[C])が30/70未満では十分な光触媒性能が得られない。また70/30を越えると、光触媒性金属化合物を担持する固着力が不足するため、繊維表面からの脱落が見られるようになるだけでなく、PTFE繊維の特徴の一つである平滑性が失われてしまう。
【0031】
本発明において、PTFE繊維に上記[A]〜[C]の化合物を付与する方法は特に限定されないが、たとえば、上記[A]〜[C]の化合物を含有する混合液中にPTFE繊維を浸漬する方法あるいは、上記[A]〜[C]の化合物を含有する混合液をPTFE繊維にスプレーする方法などいずれでもよい。
【0032】
PTFE繊維表層部に光触媒性金属化合物とともにガス吸着剤を共存させることもできる。ガス吸着剤としては、ゼオライトなどの無機多孔質物質が上げられるが、なかでも安価な活性炭が好ましい。このガス吸着剤により、夜間等の光が光触媒性金属化合物に照射されないときには汚染物質が吸着され、光が照射されたときに光触媒分解をすることができる。また、吸着により、汚染物質と光触媒性金属化合物との接触時間を長くすることができるため、光触媒を一層効果的に作用させることができる。
【0033】
本発明の光触媒担持PTFE繊維の繊度は、1.5dtex以上、18.0dtex以下であることが好ましく、2.0dtex以上、10.0dtex以下であることがさらに好ましい。繊度が1.5dtex未満であると、繊維の表面積が増大し、光触媒作用は向上するが、繊維径が細いために光触媒担持PTFE繊維の強度が十分に得られない。また、18.0dtexを超える繊度の場合、繊維の表面積が十分に得られないだけでなく、風合いが低下し、またフィルター用途などに用いる場合十分なダスト捕集性能が得られない場合がある。
【0034】
次に本発明の光触媒担持PTFE繊維の繊度バラツキは該繊維の繊度の10%以下であることが好ましく、5%以下であることがさらに好ましい。繊度バラツキは該繊維の繊度の10%を超えると、安定した加工を行うことが困難となり好ましくない。なお前述した通り、スプリット剥離法やペースト押出し法で得られる繊維の断面はランダムでその繊度も不均一である。したがってその繊度バラツキも非常に大きい。そのため、フェルト加工時にネップなどが生じやすく加工が困難という欠点があったが、本発明のように繊度バラツキは該繊維の繊度の10%以下に抑えることにより問題が解消される。
【0035】
本発明の光触媒担持PTFE繊維の破断強度は0.4cN/dtex以上であることが好ましい。破断強度が0.4cN/dtex未満の場合、加工する際に糸が容易に切れてしまい工程通過性が悪化するだけでなく、毛羽発生による品位低下、フライ発生による作業環境の悪化などの問題が発生する。
【0036】
本発明の光触媒担持PTFE繊維の断面形状は特に限定されるものではないが、例えば丸断面、扁平断面、レンズ型断面、三葉断面、マルチローバル断面その他の公知の異型断面でもよい。
【0037】
本発明の光触媒担持PTFE繊維は、公知の方法により加工を行い二次製品とすることができる。織物にしたてる場合は、本発明の光触媒担持PTFE繊維を縦糸および/又は横糸に用いることにより得ることができる。その際、他の天然繊維、化学繊維、金属繊維と交織することも可能である。
【実施例】
【0038】

以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。本発明はこれらに限定されるものではない。なお、繊維の各物性の評価方法は以下のとおりである。
【0039】
(1)繊度バラツキ
PTFE延伸糸からサンプルをランダムに抜き取り、下に記す包埋法により断面写真を撮影した。その上でそれぞれの断面写真を切り取り、重量を測定することで断面積を求め、PTFEの比重2.3g/cmを用いて繊度を算出した。ランダムに30本測定し、平均値を求め、その平均値と最小繊度、最大繊度の大きい方のバラツキの程度を測定した。
【0040】
<包埋法>サンプル糸を形成枠にやや張力を加えセロハンテープで固定する。200℃で加熱してパラフィンとステアリン酸の混合物を溶融させる。130℃になったらエチルセルロースを少量ずつ加え、撹拌しながら1時間保温して泡を抜く。100℃まで落とした後、形成枠に流しこむ。冷却・固化させた後、適当な大きさのブロックに切り分ける。ミクロトームを用いて、ブロックから切片(厚さ7μm程度)を切りだし、スライドグラスの上にのせる。この時、スライドグラス上にアルブメンを薄く塗り伸ばしておく(アルブメンは卵の白身とグリセリン等量、防腐剤としてサリチル酸ソーダ1wt%添加したもの)。70℃に保った乾燥機に20分放置して熱処理を行い乾燥させた後、酢酸イソアミル浴に約1時間浸し、脱包埋を行い、その後風乾する。スライドグラスの上に流動パラフィンを一滴つけ、空気が入らないようにカバーグラスを静かに載せ、顕微鏡を用いて写真を撮影する。倍率は400倍とした。
◎(優秀):5%未満
○(良好):5%以上、10%未満
△(不良):10%以上、15%未満
×(不良):15%以上。
【0041】
(2)カード通過性
室内温度30℃、相対湿度60℃とし、カード機に2g/mの原綿を投入しつつ、ウェブの様子を目視で観察し、3分間のネップの発生数を以下のように評価した。
◎(優秀):ネップが発生しない
○(良好):3分間でネップが1〜5個発生する
△(不良):3分間でネップが6〜20個発生する
×(不良):3分間でネップが20個以上発生する。
【0042】
(3)光触媒性能−1
光触媒製品協議会の光触媒性能評価試験法の、ガスバッグA法に準拠して、アセトアルデヒドの分解実験を行い、紫外線照射開始後2時間でのアセトアルデヒド除去率について以下のように評価した。
◎(優秀):90%以上
○(良好):80%以上、90%未満
△(不良):70%以上、80%未満
×(不良):70%未満。
【0043】
(4)耐久性
側地25cm×25cm(40番/40番:T120本/L120本(インチ))のダウンプルーフに開繊した試料綿を詰め込み、JIS L 1096:1999 6.23のA法に準じて10回洗濯した後、上記(3)光触媒性能−1と同様の方法でアセトアルデヒド除去率を測定し、以下の式によって光触媒性の耐久性を算出し評価した。
耐久性[%] = (洗濯後の光触媒性能)/(洗濯前の光触媒性能)×100
◎(優秀):90%以上
○(良好):70%以上、90%未満
△(不良):50%以上、70%未満
×(不良):50%未満。
【0044】
(5)光触媒性能−2
光触媒製品協議会の光触媒性能評価試験法の、ガスバッグA法に従って、アセトアルデヒドの分解実験を行った。試験は開始後0〜2時間は暗室で、続く2〜4時間を紫外線照射下で実施し、2時間後および4時間後のアセトアルデヒド除去率を以下のように評価した。
◎(優秀):90%以上
○(良好):80%以上、90%未満
△(不良):70%以上、80%未満
×(不良):70%未満。
【0045】
実施例1〜4、比較例1〜4
マトリックスとして塩点8.0、セルロース濃度9.0重量%のビスコースを用い、濃度60重量%のPTFE水分散液と混合した後、硫酸濃度10%、硫酸ソーダ濃度11%を含有する凝固浴に複数の口金孔から吐出し、マトリックス紡糸法で紡糸した後、80℃の温水で精練した。ニップローラーで絞った後1〜5%のリラックスを与えながら80℃以上320℃未満の温度で半焼成し、320℃〜380℃の温度で焼成を行い、PTFE未延伸糸を得た。その後、2つの速度の異なるローラー間で330℃の熱ピンに接触させながら7.5倍に延伸し、PTFE延伸糸を得た。続く合糸、捲縮、切断工程を経て得られたPTFEステープルに、表1に示す必須成分[A]〜[C]の混合液をスプレー方式で繊維に対し0.5重量%となるように付与し、150℃×15分の熱処理を施して試料綿を作製した。なお、必須成分[A]には粒径20nmの光触媒性酸化チタンを用いた。これらの試料綿を用いて上述の評価を行い、その結果を表2に示す。
【0046】
比較例5
PTFEステープル(東レ・ファインケミカル社製“トヨフロン”)を用いて実施例1と同様の評価を行ったところ、表2に示すように加工性良好ながら、光触媒性は全く見られなかった。
【0047】
【表1】

【0048】
【表2】

【0049】
実施例5、比較例5
上記実施例および比較例と同様の方法で得られたステープルに、表3に示す必須成分および吸着剤として活性炭の含まれる混合液をスプレー方式で繊維に対し0.5重量%となるように付与し、150℃×15分の熱処理を施して試料綿を作製した。これらの試料綿を用いて、実施例1と同様の評価およびアセトアルデヒド除去率の評価を行い、その結果を表4に示す。
【0050】
【表3】

【0051】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、触媒や吸着剤として利用できるだけでなく、これらの機能を付与したフィルターや、長期にわたって使用できるアパレル、インテリア資材などとしても利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリテトラフルオロエチレン樹脂からなる繊維であって、以下の[A]〜[C]の化合物を必須成分として付与することを特徴とする光触媒担持ポリテトラフルオロエチレン繊維。
[A]:光触媒機能を有する金属化合物
[B]:アルコキシ末端アミノ変性シリコーン
[C]:アミノアルコキシシラン
【請求項2】
さらに、ガス吸着剤を含有する請求項1記載の光触媒担持ポリテトラフルオロエチレン繊維。
【請求項3】
繊維の繊度ばらつきが10%以下であることを特徴とする請求項1または2記載の光触媒担持ポリテトラフルオロエチレン繊維。
【請求項4】
マトリックス紡糸法によって製造することを特徴とする請求項1記載の光触媒担持ポリテトラフルオロエチレン繊維の製造方法。

【公開番号】特開2008−138307(P2008−138307A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−324463(P2006−324463)
【出願日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】