説明

光触媒担持体及びその製造方法

【課題】金属微粒子担持の耐久性が高く、製造コストが安価で且つ容易に製造することができる光触媒担持体及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明にかかる光触媒担持体1は、基体3と、基体表面に形成した光触媒層5と、光触媒層表面に設けた金属担持光触粒子7を備えており、金属担持光触媒7は粒状光触媒9に金属粒子11を担持して形成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基体表面に光触媒を担持した光触媒担持体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、銀(Ag)等の金属微粒子を二酸化チタン(TiO)等の光触媒に担持することで、硫黄を含む化合物(メチルメルカプタン、硫化水素、硫化メチル、二硫化メチル等)の脱臭性能を向上させることが公知である。かかる金属担持光触媒の製造方法として、特許文献1には、セラミックフォーム(基体)表面に二酸化チタン膜を形成し、二酸化チタン膜を形成したセラミックフォームを銀イオン溶液に含浸後、還元雰囲気中で焼成をすることで、図2に示すように、基体3の表面に形成した二酸化チタン層5の表面に金属微粒子11を点在させた金属担持光触媒の製造方法が開示されている。
【0003】
また、特許文献2には、セラミック多孔体(基体)を酸化チタンゾル液に浸漬した後焼成し、この焼成体を銀コロイドの分散液に浸漬した後に、乾燥させて銀微粒子を担持した金属担持光触媒の製造方法が開示されている。この特許文献2の技術においても、図2に示すように、基体3の表面に形成した二酸化チタン層5の表面に金属微粒子11を点在させる構成としている。
【0004】
特許文献3には、二酸化チタンの微粒子を分散した水と、銀のコロイド水溶液とを混合した後、生成物をろ過膜で分離して得る金属担持光触媒の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−73571号公報
【特許文献2】特開2005−111354号公報
【特許文献3】特公平6−87979号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1や特許文献2の技術では、図2に示すように、光触媒層5を形成後に、その層5の表面に金属微粒子11を担持する構成であるから、金属微粒子11が化学的に不安定であると共に、空気中で酸化されやすいという問題がある。更に、金属微粒子11は光触媒層5の表面に担持しているだけであるから脱落しやすく、耐久性に劣るという問題がある。
【0007】
更に、特許文献3の技術では、高価な金属粒子コロイド溶液を用いているので、コストが高くなるという問題がある。
【0008】
本発明は、金属微粒子担持の耐久性が高く、製造コストが安価で且つ容易に製造することができる光触媒担持体及びその製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る光触媒担持体1は、図1に示すように、基体3と、基体表面に形成した光触媒層5と、光触媒層5の表面に設けた金属担持光触媒粒子7とを備えることを特徴とする。
【0010】
基体3は、樹脂材、セラミックス、金属等が用いられ、特に制限はないが、ゼオライトや多孔質のセラミックスが好ましい。多孔質のセラミックスは、例えば、アルミナ粉末を溶媒に分散したスラリーをウレタンフォームに含浸させた後、焼成してウレタンを焼き抜くことにより、アルミナからなるセラミックスフォームを得ることができる。セラミックスの材質としては、アルミナに限らず、炭化珪素、シリカ、ジルコニア等があり、又はこれらの混合タイプでも良い。
【0011】
金属担持光触媒粒子7は、粒状光触媒9の表面に金属微粒子11を担持したものであり、金属微粒子11は硫化水素などの硫黄化合物を寄せ付ける能力を持ち、粒状光触媒9が金属微粒子11を担持することで、硫化水素の吸着能力が高められる。特に、金属微粒子11が銀粒子であり、粒状光触媒9が二酸化チタンである場合には、硫化水素の吸着能力が高い。
【0012】
更に、金属担持光触媒粒子7に、紫外光を照射した際に生じた励起電子は、金属微粒子11に拡散することになるので、光触媒に金属微粒子を担持することは、励起電子と電子ホールとの電荷分離を高めさせ、硫化水素に対する分解性能が高められる。
【0013】
第2の発明は、第1の発明に係る光触媒担持体の製造方法であって、基体表面に光触媒層を形成する第1工程と、光触媒の有機化合物前駆体と金属塩とをアルコール及び水の少なくとも一方を含む溶媒に混合し、水熱処理することにより金属担持光触媒の粉末を得る第2工程と、第2工程で得た粉末を第1工程で得た光触媒層表面に付与する第3工程とを備えることを特徴とする。
【0014】
第2工程の水熱温度は、高すぎても低すぎても金属微粒子イオンを還元しにくくなるので、水熱温度は250℃以下が望ましく、更に望ましくは、150℃〜180℃である。
【0015】
水熱処理で得た粉末の金属担持光触媒は、次に熱処理することが望ましい。熱処理は、特定雰囲気は必要なく、空気中でも良い。
熱処理温度は、特に制限はなく、得られる結晶の制御によっても異なるが、例えば、400℃〜700℃である。光触媒が二酸化チタンの場合は、熱処理温度が400℃、500℃では二酸化チタンの結晶型がアナターゼであり、600℃、700℃では、アナターゼとルチルとの混合型、又はルチルである。
【0016】
第2工程における光触媒の有機化合物前駆体は、光触媒金属とアルコール等の反応によって得られるものであり、例えば、光触媒金属成分がチタンの場合には、ブチルチタネート、プロピルチタネート、トリエタノールアミンチタネート等がある。
【0017】
光触媒金属成分としては、Ti、V、W、Mo、Sr及びZn等がある。
【0018】
金属担持光触媒7が担持する金属微粒子11としては、Ag、Pt、Ir、Rh、Ru、Pd、Au、Cu、Zn、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLu等があるが、Ag(銀)が好ましく用いられる。
【0019】
第2工程で用いられる溶媒は、アルコール、水、アルコールと水との混合物のいずれかが用いられる。アルコールとしては、特に制限はないが、例えば、エタノール、メタノール、ブチルアルコール等がある。
【0020】
例えば、ブチルチタネート、硝酸銀をそれぞれTiO、Agイオンの出発原料とし、エタノールまたは水は溶媒をとし、混合溶液を水熱させることにより、ブチルチタネートを分解しTiOを合成するとともに、AgイオンをAgに還元してTiO粒子表面に析出する。尚、水熱方法で得たAg担持TiO粉末を更に熱処理することで、Ag担持TiO粉末を製造することが好ましい。
【0021】
第3工程は、第2工程で得た粉末の分散液を吹き付けたり、第2工程で得た粉末の分散液に浸漬したり、分散液を塗りつけたりした後、乾燥又は焼成する。好ましくは、第2工程で得た粉末の分散液を光触媒層5の表面に吹き付け、その後焼成する。
【0022】
第2工程で得た粉末の分散液は、金属担持光触媒粉末をエタノール中に超音波分散させた後、水に加え必要な濃度まで希釈する方法で製造する。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、硫黄を含む化合物に対する吸着及び酸化分解性能が高い光触媒担持体を提供できると共に、金属担持の耐久性が高く、製造コストが安価で且つ製造が容易な光触媒担持体及びその製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明にかかる光触媒担持体の断面図である。
【図2】従来の光触媒担持体の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施例について説明する。
(実施例)
第1工程
大きさ75×75×8mm、空孔径2〜3mmのアルミナフォームを酸化チタンゾルに浸漬し、引き上げた後、余分な酸化チタンゾルをブロアで取除き、大気中400℃で焼成し、酸化チタンのコーティング層を持ったセラミックフォームを得た。
【0026】
第2工程
0.2gのAgNOと1.5mlブチルチタネートを25mlのエタノールに混合させ、その後、100mlテフロン内壁のSUS密閉容器に入れ、160℃で24h(時間)水熱した。
沈殿物質は黒い粉末だった。沈殿物質をエタノールと水で繰り返し洗浄・濾過した後一晩80℃で乾燥した。次いで、空気中に500℃で2h熱処理した。得た黒粉末は、X線回析でアナターゼ型のTiOナノ粒子とAgナノ粒子から構成していたことを確認した。SEM測定から、Agナノ粒子はTiOナノ粒子表面に担持し、TiO粒子は15〜20nm、Ag粒子は5〜10nmであった。
【0027】
第3工程
0.2gのAg担持酸化チタン粒子の黒粉末を25mlのエタノール液に入れ、超音波で10分間分散させた後、25mlの水を加えさらに5分間超音波を掛け、Ag担持酸化チタン粒子の分散液を得た。
そして、酸化チタンのコーティング層を持ったセラミックフォームにAg担持酸化チタン粒子の分散液を吹付け、次いで、400℃で焼成し、Ag担持光触媒セラミックフォームを得た。
【0028】
Ag担持光触媒セラミックフォームの構成は、SEM観察したところ、基体から表に向け、中心はアルミナセラミック基体、その基体の上は約1〜10μmの酸化チタン層、その層の表面には直径約0.1〜0.5μmの凝集したAg担持酸化チタン粒子が島状に分散していた。
【0029】
(評価試験)
Sを硫黄化合物代表として、実施例で得たAg担持光触媒セラミックフォームはHSに対する吸着能力、酸化分解能力をガスバック法で評価した。
大きさ75×75×8mm、空孔径2〜3mmのAg担持アルミナフォームを評価サンプルとした。3L(リットル)のテドラーバッグに評価サンプルを入れ、HS濃度30ppmを含有する空気を吸着平衡でHS濃度20〜25ppmに安定するまで繰り返し、3Lのサンプルバッグに充填し、HSに対してサンプルの吸着値を計算した。
S濃度20−25ppmに安定なると、0.6mW/cmで365nmの紫外光を照射し、HSの分解速度を求めた。尚、HS濃度はガスクロマトグラフィで測定した。
【0030】
比較品として、Ag担持酸化チタン粉末を吹き付けずに酸化チタンコーティングのみを施したアルミナセラミックフォームを用いた。比較品の大きさと空孔径は評価サンプルと同じだった。
【0031】
比較品のHSの吸着能力は、20.4mgHS/gTiO、HS酸化分解速度は
1.5ppm/minであった。
一方、評価サンプルはHSの吸着能力は63.8mgHS/gTiO、比較品の3.1倍であった、HS酸化分解速度は4.5ppm/min、比較品の3.0倍であった。
【0032】
この評価試験結果から明らかなように、本発明によれば、硫黄を含む化合物に対する吸着及び酸化分解性能が高い金属担持光触媒提供できた。また、本発明にかかる金属担持光触媒は、先行技術文献1及び2のように光触媒層の表面に金属微粒子を担持するものではないので、金属担持の耐久性が高く、しかも先行技術文献3のように金属粒子コロイド液を用いないので製造コストが安価で且つ製造が容易であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体と、基体表面に形成した光触媒層と、光触媒層表面に設けた金属担持光触媒粒子とを備えることを特徴とする光触媒担持体。
【請求項2】
光触媒層は二酸化チタン層であり、金属担持光触媒粒子は銀を担持した粒子状二酸化チタンであることを特徴とする光触媒担持体。
【請求項3】
基体表面に光触媒層を形成する第1工程と、光触媒の有機化合物前駆体と金属塩とをアルコール及び水の少なくとも一方を含む溶媒に混合し、水熱処理することにより金属担持光触媒の粉末を得る第2工程と、第2工程で得た粉末を第1工程で得た光触媒層表面に付与する第3工程とを備えることを特徴とする光触媒担持体の製造方法。
【請求項4】
第3工程では、第2工程で得た金属担持光触媒の粉末の分散液を、第1工程の光触媒層表面に供給し、次に焼成したことを特徴とする請求項3に記載の金属担持光触媒の製造方法。
【請求項5】
第2工程において、光触媒の有機化合物前駆体はブチルチタネートであり、金属塩は硝酸銀であることを特徴とする請求項4に記載の金属担持光触媒の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−139613(P2012−139613A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−292147(P2010−292147)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(510037259)昭和セラミックス株式会社 (2)
【Fターム(参考)】