説明

光触媒担持斜行ハニカム及び空気清浄装置

【課題】ガス状化学汚染物質を含有する排水の処理量が少なく、ランニングコストが低い空気清浄装置、及びガス状化学汚染物質を含有する排水の処理量を、少なくすることができる斜行ハニカムを提供する。
【解決手段】斜行ハニカム担体に、光触媒粒子及び吸着剤粒子が担持されていることを特徴とする光触媒担持斜行ハニカム、及び該光触媒担持斜行ハニカムが備えられていることを特徴とする空気清浄装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被処理空気を水と接触させることにより、該被処理空気中の化学汚染物質の除去を行う空気清浄装置に用いられる斜行ハニカム、及び該斜行ハニカムを備える空気清浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造・液晶製造等の先端産業では、製品の歩留まりや品質、信頼性を確保するため、クリーンルーム内における空気や製品表面の汚染制御が重要となっている。特に半導体産業分野では製品の高集積度化が進むにつれ、HEPA、ULPA等を用いた粒子状汚染物質の制御に加え、ガス状化学汚染物質の制御が不可欠となっている。
【0003】
該ガス状化学汚染物質には、例えば、アンモニア、NOx、SOx等があるが、該ガス状化学汚染物質は、HEPA、ULPA等では除去できない。
【0004】
そこで、従来より、該ガス状化学汚染物質を含む被処理空気を、水と接触させることにより、該被処理空気中の該ガス状化学汚染物質の除去が行われてきた。例えば、WO 03/001122 A1国際公開公報には、前後両面及び上下両面に開口を有する斜行ハニカムを備える、空気清浄装置が開示されている。該空気清浄装置では、該斜行ハニカムに、被処理空気及び循環水が、供給方向が直交するように供給され、該斜行ハニカム内で、該化学汚染物質が該循環水と接触する。この時、該化学汚染物質が該循環水に溶解するので、該被処理空気中から該化学汚染物質が除去される。該空気清浄装置中で、該斜行ハニカムは、該化学汚染物質と該循環水の接触効率を高める働きをする。
【0005】
【特許文献1】WO 03/001122 A1国際公開公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
WO 03/001122 A1国際公開公報に記載されている空気清浄装置等、従来の空気清浄装置では、被処理空気と接触させた水は、該接触後、回収され、再び被処理空気と接触させる水として、循環使用されている。そのため、該空気清浄装置の運転と共に、循環水中の化学汚染物質の濃度が高まっていく。
【0007】
そして、例えば、ガス状化学汚染物質がアンモニアの場合、該循環水中のアンモニア濃度が、800〜1200μg/kgより高くなると、該循環水中からのアンモニアの気散が起こるため、被処理空気と接触させる水としては使用できなくなる。そこで、該循環水中のアンモニア濃度が高くなり過ぎないように、常に、一定量を排出し、純水等の清浄な水を供給しなければならなかった。
【0008】
そのため、従来の空気清浄装置では、ガス状化学汚染物質を含有する排水が多量に発生するため、その処理コストが高くなり、加えて、純水等の供給量が多くなるため、純水等の供給コストが高くなるので、ランニングコストが高いという問題があった。
【0009】
従って、本発明の課題は、ガス状化学汚染物質を含有する排水の処理量が少なく、ランニングコストが低い空気清浄装置、及びガス状化学汚染物質を含有する排水の処理量を、少なくすることができる斜行ハニカムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記従来技術における課題を解決すべく、鋭意研究を重ねた結果、斜行ハニカムに、光触媒粒子及び吸着剤粒子を担持し、該吸着剤粒子を該光触媒粒子の近傍に存在させることにより、循水中の化学汚染物質が、光触媒反応により、極めて効率的に分解除去されること等を見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
すなわち、本発明(1)は、斜行ハニカム担体に、光触媒粒子及び吸着剤粒子が担持されている光触媒担持斜行ハニカムを提供するものである。
【0012】
また、本発明(2)は、前記本発明(1)記載の光触媒担持斜行ハニカムを備える空気清浄装置を提供するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の斜行ハニカムによれば、循環水中の化学汚染物質が、光触媒反応により、効率的に分解除去されるので、該化学汚染物質を含有する排水の量が少なくなり、且つ供給する純水等の量が少なくなる。また、本発明の空気清浄装置によれば、該化学汚染物質を含有する排水の量が少なく、且つ供給する純水等の量が少なくなるので、ランニングコストが低くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の光触媒担持斜行ハニカムは、斜行ハニカム担体に、光触媒粒子及び吸着剤粒子が担持されている。
【0015】
先ず、該光触媒担持斜行ハニカムの構造について、図1及び図2を参照に説明する。図1は、本発明の光触媒担持斜行ハニカムを示す模式図である。図2は、本発明に係るコルゲート状担体シートを、通気空洞の形成方向に対して垂直な面で切った時の斜視図である。図1中、光触媒担持斜行ハニカム1は、波形形状に加工されているコルゲート状担体シート3を、図1中のA方向に積層して作成される斜行ハニカム担体2に、光触媒粒子及び吸着剤粒子が担持されており、四面、すなわち、被処理空気供給面4(図1中、右面)、清浄空気排出面5(図1中、左面)、循環水供給面6(図1中、上面)、循環水排出面7(図1中、下面)に、通気空洞の開口8を有している。該コルゲート状担体シート3が積層される方向(A方向)と、該光触媒担持斜行ハニカム1に、循環水10が供給される方向(B方向)と、被処理空気9が供給される方向(C方向)は、それぞれ直交している。
【0016】
図2には、該斜行ハニカム担体2の作成に用いられるコルゲート状担体シート3qを示すが、該コルゲート状担体シート3qは、波形形状に加工されており、該斜行ハニカム担体2中で、他のコルゲート状担体シート3p及び3rに挟み込まれることにより、該コルゲート状担体シート3qの山部11が連続する方向に延びた、略半円柱状の通気空洞12が形成される。以下の説明において、山部11の頂点部分の延長線(尾根の部分)を、山部の稜線13と呼ぶが、該通気空洞12は山部の稜線13に対して平行方向に形成されている。図2では、該コルゲート状担体シート3qを挟み込んでいる、該コルゲート状担体シート3p及び3rを記載していないが、山部11aと11cを結ぶ線上に、該コルゲート状担体シート3pの山部の稜線が位置することになるので、該コルゲート状担体シート3q及び山部11aと11cを結ぶ線に囲まれる部分が、通気空洞12aである。同様に、山部11bと11dを結ぶ線上に、該コルゲート状担体シート3rの山部の稜線が位置することになるので、該コルゲート状担体シート3q及び山部11bと11dを結ぶ線に囲まれる部分が、通気空洞12bである。
【0017】
該コルゲート状担体シートは、山部の稜線の方向が、(i)挟まれている両側の他のコルゲート状担体シートの山部の稜線の方向とは異なる方向であり、且つ(ii)1枚置きに同一方向となるように積層される。具体例を示すと、(i)該コルゲート状担体シート3pの山部の稜線の方向が、該コルゲート状担体シート3qの山部の稜線の方向とは異なる方向になるように、すなわち、A方向から見た時に、該コルゲート状担体シート3pの山部の稜線と、該コルゲート状担体シート3qの山部の稜線が交差するように、且つ(ii)該コルゲート状担体シート3pの山部の稜線の方向と、該コルゲート状担体シート3rの山部の稜線の方向が同一方向となるように、すなわち、A方向から見た時に、該コルゲート状担体シート3pの山部の稜線と、該コルゲート状担体シート3rの山部の稜線が平行になるように積層される。
【0018】
該通気空洞12の形成方向について、更に詳細に説明する。コルゲート状担体シート3aは、該光触媒担持斜行ハニカム1の最も外側のコルゲート状担体シートであり、コルゲート状担体シート3bは、外側から2番目のコルゲート状担体シートである。図1に示すように、該C方向と該通気空洞12の形成方向の関係、すなわち、該C方向に対する該コルゲート状担体シート3aの山部の稜線の角度Xは、通常15〜45度、好ましくは25〜35度であり、該C方向に対する該コルゲート状担体シート3bの山部の稜線の角度Xは、通常−15〜−45度、好ましくは−25〜−35度である。また、該コルゲート状担体シート3aの山部の稜線と該コルゲート状担体シート3bの山部の稜線の交差角度Yは、通常30〜90度、好ましくは50〜70度である。
【0019】
該コルゲート状担体シート3の山高さ(図2中、符号h)は、特に制限されないが、好ましくは2.0〜8.0mm、特に好ましくは3.0〜5.0mmである。また、該コルゲート状担体シート3のピッチ(図2中、符号p)は、特に制限されないが、好ましくは2.5〜12.0mm、特に好ましくは5.0〜10.0mmである。該山高さh及び該ピッチpが該範囲内であることにより、ガス状化学汚染物質の除去効率及び圧力損失のバランスがよくなる。
【0020】
該コルゲート状担体シートは、基材繊維により形成される織布又は不繊布を、波形形状に成形したものであり、該織布又は該不織布は、基材繊維を、抄紙すること又は乾式成形することにより得られる。
【0021】
該基材繊維としては、例えば、シリカ・アルミナ繊維、シリカ繊維、アルミナ繊維、ムライト繊維、ガラス繊維、ロックウール繊維、炭素繊維等の無機繊維;ポリエステル、ポリオレフィン等の有機繊維が挙げられる。また、該基材繊維は、1種単独又は2種以上の組合わせであっても良い。
【0022】
該基材繊維の平均繊維径は、特に制限されないが、好ましくは1〜20μm、特に好ましくは3〜10μmである。該平均繊維径が該範囲内にあることにより、該斜行ハニカム担体の機械的強度が高くなる。
【0023】
該基材繊維により形成される該織布又は該不織布の繊維間空隙率は、特に制限されないが、好ましくは75〜95%である。該繊維間空隙率とは、該織布又は該不織布の見かけ体積から、該織布又は該不織布中の繊維の体積を引いた部分(以下、繊維間空隙とも記載する。)が、該織布又は該不織布中の見かけ体積中に占める割合をいう。該繊維間空隙率が該範囲内にあることにより、該光触媒粒子及び該吸着剤粒子が該コルゲート状担体シートの外側表面だけでなく繊維間空隙にも担持されるので、該光触媒粒子及び該吸着剤粒子の担持量が多くなる。また、該織布又は該不織布の厚さは、特に制限されないが、好ましくは0.1〜1.0mm、特に好ましくは0.3〜0.8mmである。該厚さが該範囲内にあることにより、該斜行ハニカム担体の機械的強度が増し、また、該斜行ハニカム担体の繊維間空隙に担持される該光触媒粒子及び該吸着剤粒子の量が多くなる。
【0024】
該光触媒粒子は、380nm以下の波長の紫外光又は380nm以上の波長の可視光により励起され、化学汚染物質を触媒的に分解する性質を持つものであれば、特に制限されず、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛等が挙げられる。これらのうち、酸化チタンが、光触媒活性が高い点で好ましい。また、酸化チタンには、アナターゼ型、ブルッカイト型、ルチル型等があるが、特に制限されない。
【0025】
該光触媒粒子の平均粒径は、特に制限されないが、好ましくは6nm〜10μmである。
【0026】
該光触媒粒子の担持量は、0.5重量%以上、好ましくは0.5〜10重量%、特に好ましくは1〜5重量%である。該光触媒粒子の担持量が、0.5重量%未満だと、循環水中の化学汚染物質の分解効率が低くなる。なお、該光触媒粒子の担持量は、該光触媒担持斜行ハニカムの重量に対する該光触媒粒子の重量の百分率である。
【0027】
該光触媒担持斜行ハニカムの単位体積当りの該光触媒粒子の担持量は、0.5〜10kg/m、好ましくは1〜5kg/mである。
【0028】
該吸着剤粒子は、多孔質の物質であり、化学汚染物質を可逆的に吸着するものであれば、特に制限されず、例えば、シリカ−アルミナ粒子、シリカゲル粒子、ゼオライト粒子、合成ケイ酸アルミニウム、合成ケイ酸マグネシウム、合成ハイドロタルサイト等が挙げられる。
【0029】
該吸着剤粒子の平均粒径は、特に制限されないが、好ましくは8nm〜50μmである。
【0030】
該光触媒粒子の担持量に対する該吸着剤粒子の担持量の重量比(吸着剤粒子/光触媒粒子)は、1〜3、好ましくは1〜2である。該担持量の重量比が、上記範囲にあることにより、該吸着剤粒子の化学汚染物質の吸着量と該光触媒粒子による化学汚染物質の分解量のバランスが良くなるので、循環水中の化学汚染物質の分解効率が高くなる。
【0031】
また、該光触媒粒子は、該吸着剤粒子の近傍に存在する程、該化学汚染物質の分解には有利なので、該吸着剤粒子の表面又は内部の細孔に、取り込まれた状態で存在していることが好ましい。
【0032】
該光触媒粒子及び該吸着剤粒子は、結合剤により、該斜行ハニカム担体に担持されている。該結合剤としては、例えば、シリカゾル、アルミナゾル、チタニアゾル等の無機系結合剤;アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シリコーン系樹脂、及びこれらの共重合樹脂等の有機系結合剤が挙げられる。
【0033】
該斜行ハニカムは、他に、充填剤を含有することができる。該充填剤は、該斜行ハニカムの表面を濡れ易くする働きを有する。該充填剤としては、例えば、アルミナ、シリカ、チタニア等が挙げられる。
【0034】
該光触媒担持斜行ハニカム1には、被処理空気供給面4から、被処理空気9が供給され、該循環水供給面6から、循環水10が供給される。該被処理空気9及び該循環水10の供給を行うと同時に、該光触媒担持斜行ハニカム1には、紫外光又は可視光が照射される。この時、被処理空気9中のガス状化学汚染物質が、循環水10と接触することにより、該化学汚染物質が該循環水10に溶解する。次いで、該循環水10が該光触媒担持斜行ハニカム1に担持されている該吸着剤粒子と接触することにより、該化学汚染物質が、該吸着剤粒子に吸着され、そして、近傍に存在している該光触媒粒子により分解される。すなわち、該吸着剤粒子は、該循環水10中に極低濃度で溶解している該化学汚染物質を、該循環水10中から取り出して、近傍の該光触媒粒子に接触させることにより、該化学汚染物質と該光触媒粒子の接触効率を高め、該化学汚染物質の分解を効率良く行わせる働きをする。一方、該吸着剤粒子が存在しない場合、すなわち、該光触媒粒子のみが担持されている斜行ハニカムでは、化学汚染物質を含む循環水が、該光触媒粒子の表面を流れるわずかな時間しか、該化学汚染物質は該光触媒粒子に接触することができず、接触効率が低くいので、該化学汚染物質の分解効率が低い。
【0035】
このように、本発明の光触媒担持斜行ハニカムは、循環水中の化学汚染物質の分解効率を高くすることができるので、該化学汚染物質を含有する排水の処理量を少なくすることができる。
【0036】
該光触媒担持斜行ハニカムの製造方法について説明する。該光触媒担持斜行ハニカムを製造する方法としては、特に制限されないが、以下に、その一例を示す。
【0037】
先ず、平坦状の担体シートを、コルゲーターと呼ばれる装置を用いて、波形形状に加工し、コルゲート状担体シートを得る。そして、該コルゲート状担体シートを、山部の稜線の交差角度がYとなるように、積層し、コルゲート状担体シート積層物を作成する。なお、該平坦状の担体シートは、充填剤が担持されているものであってもよい。
【0038】
次に、該光触媒粒子、該吸着剤粒子及び該結合剤を、必要に応じて、更に充填剤を、水に加え、分散させ、スラリーを調製する。上記のようにして得られたコルゲート状担体シート積層物を、該スラリーに浸漬するか、又は該コルゲート状担体シート積層物に、該スラリーをスプレー等により吹き付けるか若しくは塗工することにより、該スラリーを該コルゲート状担体シート積層物に付着させる。そして、該スラリーが付着したコルゲート状担体シート積層物を、自然乾燥又は乾燥機中で乾燥させることにより、該光触媒粒子及び該吸着剤粒子等が担持されたコルゲート状担体積層物を得る。
【0039】
次いで、該光触媒粒子及び該吸着剤粒子等が担持されたコルゲート状担体シート積層物を、該C方向に対する山部の稜線の角度が、X及びXとなるようにカットし、該光触媒担持斜行ハニカムを得る。
【0040】
本発明の空気清浄装置は、前記本発明の光触媒担持斜行ハニカムを備える。該空気製造装置について、図3を参照に説明する。図3は、本発明の実施の形態例の空気清浄装置である。空気清浄装置20は、第一分解部21及び第二分解部22を有しており、該第一分解部21及び該第二分解部22には、本発明の光触媒担持斜行ハニカム23が設置されている。被処理空気45が、該第一分解部21の被処理空気供給口24から供給され、該第一分解部21及び該第二分解部22を通過し、該第二分解部22の清浄空気排出口25から排出されるように、該第一分解部21、該第二分解部22、第一ダクト26、第二ダクト27及び第三ダクト28が配置されている。該第一ダクト26、該第二ダクト27及び第三ダクト28の上方及び下方には、紫外線ランプ29が設置されている。更に、該第一分解部21及び該第二分解部22の循環水排出口30から排出される循環水31を貯留する循環水貯留部32、循環ポンプ33、排水ポンプ34、該循環水貯留部32と該循環ポンプ33を繋ぐ循環水抜出管35、該循環ポンプ33と該第一分解部21の循環水供給口36を繋ぐ第一循環水供給管37、該第一循環水供給管37から分岐し、該第二分解部22の循環水供給口36を繋ぐ第二循環水供給管38、該第一循環水供給管37から分岐する純水供給管39、該循環水貯留部32と該排水ポンプ34を繋ぐ第一排水管40、該排水ポンプ34に繋がる第二排水管41が設置される。更に、該第二分解部22の後段に、湿度調節手段42、被処理空気吸引ファン43、ULPA44が設置される。また、図示していないが、該第一循環水供給管37、該第二循環水供給管38、該純水供給管39には、供給量を調節するためのバルブが付設されており、該第一分解部21及び該第二分解部22の循環水供給口36には、循環水31を循環水供給面全体に均一に供給するための、分配管が設置されている。
【0041】
該空気清浄装置20の運転方法を説明する。該被処理空気吸引ファン43により、該第一分解部21の被処理空気供給口24側から、被処理空気45を、該第一分解部21、該第二分解部22の順に通過させると共に、該循環ポンプ33により、該第一分解部21及び該第二分解部22の循環水供給口36側から、循環水31を、該第一分解部21及び該第二分解部22に供給し、該第一分解部21及び該第二分解部22に備えられている該光触媒担持斜行ハニカム23内で、該被処理空気45と該循環水31を接触させる。同時に、紫外線ランプ29により、該光触媒担持斜行ハニカム23への紫外線の照射を行い、該循環水31中の化学汚染物質の分解を行う。そして、該第二分解部22を通過させた清浄空気46を、続いて、該湿度調節手段42及びULPA44に通過させ、クリーンルームへ返送する。また、該光触媒担持斜行ハニカム23内で、該被処理空気45と接触した該循環水31は、該第一分解部21及び該第二分解部22の循環水排出口30から排出され、該循環水貯留部32に溜まる。
【0042】
本発明の空気清浄装置は、循環水中の化学汚染物質を、該光触媒粒子により効率的に分解することができるので、該化学汚染物質を含有する排水の量を少なくし、且つ純水等の供給水の供給量を少なくすることができる。従って、該空気清浄装置は、ランニングコストが低い。また、該循環水中又は該光触媒担持斜行ハニカム上での、菌類の発生を抑制することができる。
【0043】
次に、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、これは単に例示であって、本発明を制限するものではない。
【実施例】
【0044】
(実施例1)
(コルゲート状担体シート積層物の作製)
平均繊維径6μmのガラス繊維を、湿式抄紙し繊維間空隙率が90%、厚みが0.5mmの平坦状担体シートを得た。次いで、充填剤としてアルミナ(活性アルミナKC−501、住友化学社製)30kg、及び結合剤としてアルミナゾル(アルミナゾル−520、日産化学社製、固形分20%)100kgを混合して、充填剤スラリーを作成した。該充填剤スラリーを該平坦状担体シートに塗工、乾燥した後、コルゲーターを用いて、波形加工し、ピッチpが10.0mm、山高さhが5.0mmのコルゲート状担体シートを得た。次いで、該コルゲート状担体シートを、山部の稜線の交差角度Yが60度となるように、1枚毎に通気空洞の方向を変え、順に重ね合わせて積層し、固定した後、500℃で焼成し、充填剤が担持されているコルゲート状担体シート積層物Aを得た。
【0045】
(スラリーの調製)
光触媒としてアナターゼ型の酸化チタン(酸化チタンSTS−21(アナターゼ型)、石原産業社製、固形分30%)10kg、吸着剤として合成ケイ酸アルミニウム(キョーワード700PEL、協和化学工業社製)3kg、結合剤としてシリカゾルA(スノーテックス033、日産化学社製、固形分33%)10kg、精製水100kgを混合して、スラリーBを調製した。
【0046】
(光触媒担持斜行ハニカムの作製)
該充填剤が担持されているコルゲート状担体シート積層物Aを、該スラリーBに浸漬した後、130℃で乾燥することにより、光触媒担持コルゲート状担体シート積層物Cを得た。次いで、得られた光触媒担持コルゲート状担体シート積層物Cを、大きさが縦400mm、横300mm、厚み100mm、角度Xが30度、角度Xが−30度となるようにカットし、光触媒担持斜行ハニカムD1を得た。また、該光触媒担持斜行ハニカムD1と同様の方法で、大きさが縦400mm、横300mm、厚み100mm、角度Xが30度、角度Xが−30度の光触媒担持斜行ハニカムD2を得た。
【0047】
(空気製造装置の製造)
図3に記載の空気清浄装置と同様の空気清浄装置を用意し、該光触媒担持斜行ハニカムD1を第一分解部に、該光触媒担持斜行ハニカムD2を第二分解部に設置した。
【0048】
(空気清浄装置の運転)
該光触媒担持斜行ハニカムD1及びD2が装着された空気清浄装置を、表1に示す条件で運転した。その結果を表2に示す。
【0049】
(実施例2)
(コルゲート状担体シート積層物の作製)
実施例1と同様の方法で行った。
【0050】
(スラリーの調製)
光触媒としてアナターゼ型の酸化チタン粒子10kgに代えて、ブルッカイト型の酸化チタン粒子(NTB−200(ブルッカイト型)、昭和電工社製、固形分10%)30kgとし、結合剤としてシリカゾルA 10kgに代えて、シリカゾルB(スノーテックスN30G、日産化学社製、固形分30%)10kgとし、精製水100kgに代えて、精製水80kgとする以外は、実施例1と同様の方法で行い、スラリーEを得た。
【0051】
(光触媒担持斜行ハニカムの作製)
スラリーBに代えて、スラリーEとする以外は、実施例1と同様の方法で行い、光触媒担持斜行ハニカムF1及びF2を得た。
【0052】
(空気製造装置の製造)
光触媒担持斜行ハニカムD1代えて、光触媒担持斜行ハニカムF1とし、光触媒担持斜行ハニカムD2に代えて、光触媒担持斜行ハニカムF2とする以外は、実施例1と同様の方法で行った。
【0053】
(空気清浄装置の運転)
該光触媒担持斜行ハニカムF1及びF2が装着された空気清浄装置を、表1に示す条件で運転した。その結果を表2に示す。
【0054】
(比較例1)
(コルゲート状担体シート積層物の作製)
実施例1と同様の方法で行った。
【0055】
(スラリーの調製)
光触媒として実施例1で用いたアナターゼ型の酸化チタン10kg、結合剤として実施例1で用いたシリカゾルA 10kg、精製水62kgを混合して、スラリーGを得た。
【0056】
(光触媒担持斜行ハニカムの作製)
スラリーBに代えて、スラリーGとする以外は、実施例1と同様の方法で行い、光触媒担持斜行ハニカムH1及びH2を得た。
【0057】
(空気製造装置の製造)
光触媒担持斜行ハニカムD1代えて、光触媒担持斜行ハニカムH1とし、光触媒担持斜行ハニカムD2に代えて、光触媒担持斜行ハニカムH2とする以外は、実施例1と同様の方法で行った。
【0058】
(空気清浄装置の運転)
該光触媒担持斜行ハニカムH1及びH2が装着された空気清浄装置を、表1に示す条件で運転した。その結果を表2に示す。
【0059】
(比較例2)
(コルゲート状担体シート積層物の作製)
実施例1と同様の方法で行い、充填剤が担持されているコルゲート状担体シート積層物Jを得た。
(斜行ハニカムの作成)
該充填剤が担持されているコルゲート状担体シート積層物Jを、大きさが縦400mm、横300mm、厚み100mm、角度Xが30度、角度Xが−30度となるようにカットし、斜行ハニカムK1を得た。また、該斜行ハニカムK1と同様の方法で、大きさが縦400mm、横300mm、厚み100mm、角度Xが30度、角度Xが−30度の斜行ハニカムK2を得た。
【0060】
(空気製造装置の製造)
光触媒担持斜行ハニカムD1代えて、斜行ハニカムK1とし、光触媒担持斜行ハニカムD2に代えて、斜行ハニカムK2とする以外は、実施例1と同様の方法で行った。
(空気清浄装置の運転)
該斜行ハニカムK1及びK2が装着された空気清浄装置を、表1に示す条件で運転した。その結果を表2に示す。
【0061】
【表1】

【0062】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の光触媒担持斜行ハニカムを示す模式図である。
【図2】本発明に係るコルゲート状担体シートを、通気空洞の形成方向に対して垂直な面で切った時の斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態例の空気清浄装置である。
【符号の説明】
【0064】
1、23 光触媒担持斜行ハニカム
2 斜行ハニカム担体
3、3a、3b、3p、3q、3r コルゲート状担体シート
4 被処理空気供給面
5 清浄空気排出面
6 循環水供給面
7 循環水排出面
8 開口
9、45 被処理空気
10、31 循環水
11a、11b、11c、11d 山部
12、12a、12b 通気空洞
13 山部の稜線
20 空気清浄装置
21 第一分解部
22 第二分解部
24 被処理空気供給口
25 清浄空気排出口
26 第一ダクト
27 第二ダクト
28 第三ダクト
29 紫外線ランプ
30 循環水排出口
32 循環水貯留部
33 循環ポンプ
34 排水ポンプ
35 循環水抜出管
36 循環水供給口
37 第一循環水供給管
38 第二循環水供給管
39 純水供給管
40 第一排水管
41 第二排水管
42 湿度調節手段
43 被処理空気吸引ファン
44 ULPA
46 清浄空気
p ピッチ
h 山高さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
斜行ハニカム担体に、光触媒粒子及び吸着剤粒子が担持されていることを特徴とする光触媒担持斜行ハニカム。
【請求項2】
前記光触媒粒子が、酸化チタンであることを特徴とする請求項1記載の光触媒担持斜行ハニカム。
【請求項3】
前記吸着剤が、シリカゲル粒子、ゼオライト粒子、合成ケイ酸アルミニウム粒子、合成ケイ酸マグネシウム粒子、合成ハイドロタルサイト粒子であることを特徴とする請求項1又は2いずれか1項記載の光触媒担持斜行ハニカム。
【請求項4】
前記光触媒粒子の担持量に対する前記吸着剤粒子の担持量の重量比が、1〜3であることを特徴とする請求項1〜3いずれか1項記載の光触媒担持斜行ハニカム。
【請求項5】
前記請求項1〜4いずれか1項記載の光触媒担持斜行ハニカムを備えることを特徴とする空気清浄装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−231094(P2006−231094A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−38723(P2005−38723)
【出願日】平成17年2月16日(2005.2.16)
【出願人】(000110804)ニチアス株式会社 (432)
【Fターム(参考)】