説明

光触媒担持繊維布帛

【課題】光触媒の性能を減じることなく、水質浄化、洗浄処理を伴う用途、雨などにさらされる環境での使用に適した水に対する耐久性に優れた光触媒担持繊維布帛を提供する。
【解決手段】繊維基材に対して2〜10wt%アクリル系樹脂を塗布または含浸させた繊維基材に、該アクリル系樹脂を0〜3wt%と変性した光触媒0.1〜5wt%を混用して担持させたことを特徴とする光触媒担持繊維布帛。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水洗処理などの水に対して耐久性に優れた光触媒担持繊維布帛であって、水質浄化用途、衣類、カーテン、寝具、マットなど洗浄処理を伴う用途、テントなどのアウトドアで用いて雨などで濡れる可能性のある用途に適した、抗菌、消臭、有機物分解機能に優れた光触媒担持繊維布帛、特に不織布に関する。
【背景技術】
【0002】
光触媒は光が照射されると有機物を分解する機能があり、環境浄化、消臭、抗菌、防汚などの機能を発現し、昨今では広く応用されるようになってきた。しかしながら、繊維製品へ応用するにあたり、繊維基材自体が有機物であるため光触媒が基材を損傷・劣化させてしまうため、これまで、さまざまな対策がとられてきている。
例えば、特許文献1に開示のようにバインダーを用いる方法や、特許文献2に開示のように光触媒を変性する方法が挙げられる。
光触媒をバインダー樹脂を用いて繊維基材に固着する方法では、光触媒の表層が樹脂で覆われるため、光触媒の能力が効率よく生かされず、充分な効果を得るためには多量の光触媒を固着する必要が生じる。また、そのためにバインダー樹脂の量が増え、硬化して風合いを損ねることも用途によっては問題となる。
【0003】
特許文献1には、柔軟風合いが得られるアクリルシリコン系バインダー樹脂を用いることにより風合い硬化を防ぐ手法が開示されているが、光触媒とアクリルシリコン系バインダー樹脂の配合割合が限定される。すなわち、光触媒の配合量が増えると光触媒の繊維基材に結合する確率が増え、繊維基材を劣化させる原因となる。また、アクリルシリコン系バインダー樹脂の配合量が増えると光触媒とアクリルシリコン系バインダー樹脂が結合する割合が増え、該樹脂が光触媒の表面を覆ってしまい機能性が低下する。このような問題は特許文献1に記載されているアクリルシリコン系バインダーに限定されず、バインダー方式で光触媒を担持方法を用いる場合における共通の課題である。
特許文献2には、光触媒をオルガノシラン等で変性し、バインダーを使わなくても繊維基材を損傷することなく光触媒を担持し得る光触媒組成物が開示されている。しかしながら、繊維との親和力が不十分で、水質浄化する用途や、洗浄処理を必要とする用途、雨などにさらされる環境で使用する用途など水を介在する用途では光触媒が脱落し、効果がなくなるという問題があった。
【0004】
【特許文献1】特開2005−097773号公報
【特許文献2】特開2006−116449号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記の課題を解決することを目的とし、水質浄化、洗浄処理を伴う用途、雨などにさらされる環境での使用する用途などに適した水に対する耐久性に優れた光触媒担持繊維布帛を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは鋭意検討した結果、予め、アクリル系樹脂を繊維基材に特定量塗布または含浸させる前処理を施し、さらに、該アクリル系樹脂と変性した光触媒を組み合わて繊維基材に担持させることで、光触媒の効果を減ずることなく水に対する耐久性が向上することを見出し、本発明を成すに至った。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
(1)繊維基材に対して2〜10wt%アクリル系樹脂を塗布または含浸させた繊維基材に、該アクリル系樹脂を0〜3wt%と変性した光触媒0.1〜5wt%を混用して担持させたことを特徴とする光触媒担持繊維布帛。
(2)光触媒を変性している樹脂が少なくともシリコーン樹脂を含有していることを特徴とする上記(1)に記載の光触媒担持繊維布帛。
(3)繊維布帛が不織布であることを特徴とする上記(1)または(2)に記載の光触媒担持繊維布帛。
(4)繊維布帛が長繊維不織布であることを特徴とする上記(3)に記載の光触媒担持繊維布帛。
(5)繊維布帛がメルトブローン層を含むことを特徴とする上記(4)に記載の光触媒担持繊維布帛。
【発明の効果】
【0007】
本発明の光触媒担持繊維布帛は、厳しい水洗条件下においても、光触媒が有する消臭性、抗菌性、有機物分解性等をほとんど低下させることなく、優れた水耐久性を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下本発明について詳述する。
本発明は、あらかじめ繊維基布にアクリル系樹脂を含浸またはコーティング法などで塗布しておいた繊維基材に、変性した光触媒をDIP−NIPして熱処理する方法や、グラビアロール、インクジェットを用いたプリント方法により水耐久性を得るものである。
また、変性した光触媒加工液に上記アクリル系樹脂を少量添加することにより、さらに水に対する耐久性を向上させることができる。
すなわち、本発明の特徴は以下の3つである。
1.繊維基材の表面に、あらかじめアクリル系樹脂層を形成することで、繊維基材と光触媒の接着性を向上させた。
2.光触媒を変性化することで、アクリル系樹脂層との親和性を向上させることができ、繊維基材の保護と水に対する耐久性が向上した。
3.光触媒を担持する際にアクリル系樹脂を混用することで、変性した光触媒と繊維基材表面のアクリル系樹脂層との接着性をさらに向上でき、多量の光触媒を担持させることが可能になり、光触媒効果をさらに増加させることが可能になった。
【0009】
本発明に用いられるアクリル系樹脂は、風合い改良、バインダー用途、耐水性向上などさまざまな目的で使用されている製品のいずれを用いてもよい。アクリル系樹脂にはアニオン系、ノニオン系、カチオン系等の種類があるが、用いる繊維基材の材質に適合したものであればいずれを用いてもよい。アクリル系樹脂には、ポリアクリル酸やそのエステルおよびポリメタクリル酸とそのエステルを単体あるいはこれらの共重合体が主ではあるが、酢酸ビニルなどの他の化合物と共重合して使用される場合もあり、このいずれを用いてもよい。前処理に用いられるアクリル系樹脂の量は、繊維基材に対し2〜10wt%である。2wt%未満であれば繊維基材に十分なアクリル系樹脂の皮膜が形成されず、変性した光触媒が直接繊維基材に担持される場合が増え、水に対する耐久性が不十分である。
また、10wt%を超える量のアクリル系樹脂を用いることは、使用する用途の風合いなどのために必要であれば用いてもよいが、変性した光触媒の接着効果に更なる向上は見られない。本発明におけるアクリル系樹脂層の役割は変性した光触媒の接着性であり、水耐久性に寄与するものである。
【0010】
本発明に用いられる変性した光触媒とは、特許文献2に記載されている如きものであり、光触媒親和性有機成分と光触媒難分解成分との複合化合物が光触媒粒子の表面に固定化されたものや、アパタイト結晶中の一部が光触媒機能を有する金属とイオン交換した金属修飾アパタイト、多孔質リン酸カルシウム等で被覆した光触媒などが用いられる。これらの光触媒複合体は、イオン的にあるいは共有結合でアクリル系樹脂層と相互作用し、接着性が高まる。
光触媒の例としては、例えば、TiO2 、ZnO、SrTiO3 、CdSなど種々の物質が知られている。これらの光触媒はいずれを用いてもよいが、光触媒活性、安全性、化学的安定性の点からTiO2 が最も好ましい。
光触媒を変性する物質について、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂等が挙げられ、シリコーン系樹脂が好ましく用いられる。
【0011】
シリコーン系樹脂の例としては、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、アルコキシ基含有シリコーンオイル、ビニル基含有シリコーンオイル、シラノール基含有シリコーンオイル等のシリコーンオイル類、アルコール変性シリコーン、アルキル変性シリコーンなどの変性シリコーン類、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン等のアルキルアルコキシシランのモノマー、オリゴマーおよび重合体、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤及びその反応生成物、シリコーン界面活性剤などが挙げられる。これらのシリコーンは単独でも、2種類以上を同時に用いることもできる。
フッ素系樹脂としては、2−パーフルオロオクチルエチルトリメトキシシラン等のフルオロアルキルシラン類やその重縮合体、PTFEやポリフッ化ビニリデン、フルオロオレフィン類とモノマー類との共重合体を挙げることができる。
特に、シリコーン系樹脂において、シリコーン系樹脂のケイ素原子に結合した水酸基やメトキシ基はアルコール性の水酸基と反応しやすいので、あらかじめアクリル系樹脂を含浸させた繊維基材に変性された光触媒をDIP−NIPで付与し、熱処理を加えるだけで、水に対する耐久性が得られるので好ましい。
【0012】
これらの点から考えて、光触媒を変性する物質については、好ましくはシリコーン系樹脂を用いるほうが良い。さらにポリシロキサン系の樹脂で、主鎖(Si−O−Si)の末端基が水酸基(SiOH)のものや、シラノール基含有シリコーン、メトキシ基を主とするアルコキシシランを含むものが、さらに好ましい。またこの方法によれば、特許文献2に開示されている変性光触媒は、好ましく用いることができる。
変性した光触媒の担持量は、アクリル系樹脂で前処理された繊維基材に対して0.1〜5wt%であることが必要である。光触媒の担持目的が抗菌性にある場合は、比較的少量の光触媒で効果が発揮でき、0.1wt%の担持でも十分な効果が得られる。また、光触媒の担持目的が消臭性にある場合は、消臭したいガスの種類にもよるが、0.5〜5wt%の担持が好ましく用いられる。
これらのアクリル系樹脂と変性した光触媒は親和性が高く、アクリル系樹脂によるコーティング布や含浸布では、変性した光触媒が均一に付着するとともに、含浸布では内部まで浸透して光触媒の担持量が高い繊維布帛ができる。
【0013】
本発明による変性光触媒をDIP−NIPにて繊維布帛に担持させるとき、アクリル系樹脂を0〜3wt%添加するとさらに水耐久性が向上する。このことは、特に粒径の大きな変性光触媒を用いる場合や、用途により多量の光触媒を担持させる必要が生じた場合に有効である。
上述したように、変性された光触媒を繊維表面に単層で均一に担持させる場合は、アクリル系樹脂を加えなくても水耐久性に優れた光触媒担時繊維布帛が得られる。この場合、変性した光触媒の粒径は小さいほうが望ましい。光触媒の粒子径は1〜400nmであることが好ましく、より好ましくは1〜50nmである。より多くの光触媒を担時させる必要がある用途では、繊維表面を覆ってしまう量以上の変性した光触媒を水耐久性を持つ状態で担時することができない。多量の変性した光触媒を担時させる必要があるときは、3wt%以下のアクリル系樹脂を光触媒担時加工時に加えるとよい。これによって繊維布帛表面に担時された光触媒にさらに積層する状態で光触媒を担時できるようになる。このとき、3wt%を超えてアクリル系樹脂を加えると、バインダーを用いて光触媒を担時させたときと同様、光触媒の表面をアクリル系樹脂が覆うことになり、効果を発現する効率が悪化する。
【0014】
本発明に用いられる繊維布帛は編物、織物、不織布など特に限定されない。繊維構造から考えればより多くの光触媒を担時させるためには繊度の細い布帛を用いるほうがより好ましい。特に、フィルター用途や資材用途では不織布が用いられることが多い。これらの用途では不織布は繊維径の細いメルトブローン層を含むものを用いれば比表面積が大きくより多くの光触媒を斑なく担時できるので好ましく用いられる。
繊維布帛の材質はポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、セルロース繊維等いずれの繊維素材でもよい。アクリル系樹脂との親和性を考慮すれば合成繊維であることが望ましい。また、ポリエステルはアルコール性の水酸基を含有するので好ましく用いられる繊維基材である。
アクリル系樹脂の処理温度は、用いる繊維基材の特性とアクリル系樹脂の特性に応じて設定すればよく、特に限定されない。一般的には100〜180℃である。
光触媒の担時加工も変性した樹脂の性質に応じて設定すればよく、特に限定されない。
【実施例】
【0015】
以下の実施例などにより、本発明を更に具体的に説明するが、本発明の範囲はこれら実施例などにより何ら限定されるものではない。
実施例において、各種の物性は、下記の方法で測定した。
1.基材の洗浄方法
試料を5cm×20cmにサンプリングし、長さ方向に巻いて高さ5cmの筒状にした試料を100ccのバイアル瓶に入れ、イオン交換水を50cc入れてふたをする。サンプル瓶を激しく上下に100回振り、バイアル瓶中の水を廃棄する。この操作を1セットとし、5回繰り返す。1セット毎にサンプルの表裏・前後を変えて巻きなおして斑なく洗浄するようにする。
2.酸化チタン含有量
蛍光X線測定装置:リガク社製、RIX3001
測定条件:金属高速条件30HMTL、2θスキャン
Ti−KA、ピーク角度86.1deg 測定条件Hv03
n=5測定し、平均値を求めた。値はX線強度(kcps)である。
【0016】
3.アンモニア消臭性能
酸化チタン光触媒を担持した繊維布帛5cm×10cm角を内容量1lのテトラバッグ袋内に入れた後、袋内が100ppmになるようにアンモニアガスを注入し、この袋を、25℃に保ったインキュベーター内紫外線ランプの40cm直下に設置した。なお、試験用サンプルはあらかじめ紫外線ランプを24時間照射後、消臭試験に供した。用いた紫外線ランプは、東芝ライテック社製;FL10SBLBを上記インキュベーター内で4本設置した。
結果は初期アンモニアガス濃度に対する残留ガスの割合(%)で表した。
このとき、試験サンプルを入れない状態では、アンモニアガスの1時間後の残留濃度は、95ppmであった。
【0017】
4.抗菌性試験
酸化チタン光触媒を担持した繊維不織布5cm×5cm角を用い、JIS−L−1902;定量試験(菌液吸収法)に準拠して行った。
試験菌株 :黄色ぶどう状球菌
生菌数の測定法 :混釈平版培養法
培養時間 :18時間(培養中、紫外線強度0.1mW/cm2 のUV照射を行った)
結果は静菌活性値で表した。静菌活性値2.2以上で効果ありと判断される。
【0018】
5.変性光触媒の合成
反応器に1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンを76.4g、1,3,5−トリメチル−1,3,5−トリフェニルシクロトリシロキサンを408g、ヘキサメチルジシロキサン40.5g、および硫酸化ジルコニア20gを仕込み、50℃で3時間攪拌した後、さらに80℃に加熱して5時間攪拌した。硫酸化ジルコニアをろ過した後、真空化130℃で低沸分を除去し、重量平均分子量6600のメチルハイドロジェンシロキサン−メチルフェニルシロキサン−ジメチルシロキサンコポリマー(合成シリコーン化合物)780gを得た。
上記合成シリコーン化合物40gを反応器に入れ、攪拌しながら80℃に昇温し、ポリオキシエチレンアリルメチルエーテル(重量平均分子量800)を200gと塩化白金酸6水和物5質量%イソプロパノール溶液1.0gを混合した溶液を攪拌下で約1時間かけて添加し、さらに80℃で5時間攪拌を続けた後、室温にまで冷却して、Si−H基含有化合物溶液(1)を得た。
反応器に酸化チタンヒロドゾル(TiO2 濃度19.2質量% 平均結晶粒子径6nm)78.1gと水221.9gを入れた後、Si−H基含有化合物溶液(1)41.3gを40℃下攪拌しながら30分かけて添加し、水を加えて5質量%の分散性の良好な変性光触媒ヒドロゾルを得た。
【0019】
[実施例1]
旭化成せんい社製、スパンボンド;エルタスE01050(PET素材、目付50g/m2 )を、アクリル樹脂;ボンコートR3380E(不揮発分44−46%)(大日本インキ社製)20重量部、水80部の加工液に十分浸漬し、接圧0.3MPa、ロール速度2.5m/分のマングルで絞り、150℃で90秒、ピンテンター方式で熱処理を行った。続いて、上記アクリル樹脂加工を行ったスパンボンドを上記の方法で合成した変性光触媒ヒドロゾルを20重量部、水80重量部を調合した加工液に浸漬し、上記と同様の条件で絞り、150℃で90秒、ピンテンター方式で熱処理を行った。
得られた光触媒担持スパンボンドと洗浄処理後のTi含有量およびアンモニア消臭試験ガス残存率を表1に記載した。実施例1で使用したスパンボンドにあらかじめ含有されている酸化チタンのX線強度は4.3kcpsであった。加工後の変性した光触媒担持量は測定した値から4.3kcpsを差し引き、X線強度11.9kcpsとなり、洗浄後は9.8kcpsとなってTiO2 担持量の保持率は82%であった。このサンプルの消臭性能は洗浄後も十分保持されたものであった。
【0020】
[実施例2]
アクリル樹脂加工液の調合割合を、ボンコートR3380Eを10重量部、水を90重量部にした以外は実施例1と同様の方法で光触媒担持スパンボンドを得た。
得られた光触媒担持スパンボンドと洗浄処理後のTi含有量およびアンモニア消臭試験ガス残存率を表1に記載した。加工後の変性した光触媒担持量は、X線強度8.3kcpsとなり、洗浄後は8.5kcpsとなってTiO2 担持量の保持率はほぼ100%であった。このサンプルの消臭性能は洗浄後も十分保持されたものであった。
【0021】
[実施例3]
アクリル樹脂加工液の調合割合を、ボンコートR3380Eを5重量部、水を95重量部にした以外は実施例1と同様の方法で光触媒担持スパンボンドを得た。
得られた光触媒担持スパンボンドと洗浄処理後のTiO2 含有量およびアンモニア消臭試験ガス残存率を表1に記載した。加工後の変性した光触媒担持量は、X線強度8.0kcpsとなり、洗浄後は6.1kcpsとなってTiO2 担持量の保持率は76%であった。このサンプルの消臭性能は洗浄後やや落ちていたが、消臭効果は認められる範囲であった。
【0022】
[実施例4]
旭化成せんい社製、スパンボンド;エルタスE01090(PET素材 目付90g/m2 )を、アクリル樹脂;ボンコートR3380E(大日本インキ社製)15重量部、水85部の加工液に十分浸漬し、接圧0.3MPa、ロール速度2.5m/分のマングルで絞り、150℃で90秒、ピンテンター方式で熱処理を行った。続いて、上記アクリル樹脂加工を行ったスパンボンドを光触媒純分5%含有する光触媒加工剤を50重量部、ボンコートR3380E:5重量部、水:45重量部を調合した加工液に浸漬し、上記と同様の条件で絞り、150℃で90秒、ピンテンター方式で熱処理を行った。
得られた光触媒担持スパンボンドと洗浄処理後のTiO2 含有量およびアンモニア消臭試験ガス残存率を表1に記載した。
実施例4で使用したスパンボンドにあらかじめ含有されている酸化チタンのX線強度は6.9kcpsであった。加工後の変性した光触媒担持量は測定した値から6.9kcpsを差し引き、X線強度45.9kcpsとなり、洗浄後は42.0kcpsとなってTiO2 担持量の保持率は92%であった。このサンプルの消臭性能は洗浄後も十分保持されたものであった。
【0023】
[実施例5]
光触媒加工液の調合割合において、光触媒純分5%含有する光触媒加工剤を50重量部、水を:50重量部を調合した加工液を用いた以外は実施例4と同様の方法で処理し、光触媒担持スパンボンドを得た。光触媒担持スパンボンドと洗浄処理後のTi含有量およびアンモニア消臭試験ガス残存率を表1に記載した。加工後の変性した光触媒担持量は、X線強度45.7kcpsとなり、洗浄後は32.1kcpsとなってTiO2 担持量の保持率は70%であった。このサンプルの洗浄後TiO2 担持量はやや落ちていたが、効果は十分認められる範囲であった。
【0024】
[実施例6]
旭化成せんい社製、スパンボンド−メルトブローン−スパンボンド3層構造不織布(PET素材、目付50g/m2 メルトブローン層を23%含有)を、基材として用いた以外は実施例1と同様の方法で光触媒担持不織布を得た。
得られた光触媒担持不織布と洗浄処理後のTi含有量およびアンモニア消臭試験ガス残存率を表1に記載した。
スパンボンドにあらかじめ含有されている酸化チタンのX線強度は3.3kcpsであった。加工後の変性した光触媒担持量は測定した値から3.3kcpsを差し引き、X線強度13.2kcpsとなり、洗浄後は12.5kcpsとなってTiO2 担持量の保持率は95%であった。このサンプルの消臭性能は洗浄後も十分保持されたものであった。
【0025】
[比較例1]
旭化成せんい社製、スパンボンドE01050をアクリル樹脂の前処理を行うことなく、光触媒純分5%含有する光触媒加工剤を20重量部、水80重量部を調合した加工液に浸漬し、上記と同様の条件で絞り、150℃で90秒、ピンテンター方式で熱処理を行った。
得られた光触媒担持スパンボンドと洗浄処理後のTi含有量およびアンモニア消臭試験ガス残存率を表1に記載した。加工後の変性した光触媒担持量は、X線強度6.9kcpsとなり、洗浄後は3.1kcpsとなってTiO2 担持量の保持率はほぼ45%であった。このサンプルの消臭性能は、実施例1と比較して同濃度の光触媒加工液に浸漬したにもかかわらず、光触媒の担持量が少なく、且つ洗浄後は光触媒の脱落も多くて効果の減少が大きい。
【0026】
[比較例2]
旭化成せんい社製、スパンボンドE01050をアクリル樹脂の前処理を行うことなく、光触媒純分5%含有する光触媒加工剤を20重量部、アクリル樹脂20重量部、水40重量部を調合した加工液に浸漬し、上記と同様の条件で絞り、150℃で90秒、ピンテンター方式で熱処理を行った。
得られた光触媒担持スパンボンドと洗浄処理後のTi含有量およびアンモニア消臭試験ガス残存率を表1に記載した。実施例3に比較して、初期の効果が小さい。
【0027】
[実施例7]
旭化成せんい社製、スパンボンド;エルタスE01030(PET素材、目付30g/m2 )を、アクリル樹脂;ボンコートR3380E(不揮発分44−46%)(大日本インキ社製)5重量部、水95部の加工液に十分浸漬し、接圧0.3MPa、ロール速度2.5m/分のマングルで絞り、150℃で90秒、ピンテンター方式で熱処理を行った。続いて、上記アクリル樹脂加工を行ったスパンボンドを上記の方法で合成した変性光触媒ヒドロゾルを10重量部、水90重量部を調合した加工液に浸漬し、上記と同様の条件で絞り、150℃で90秒、ピンテンター方式で熱処理を行った。
得られた光触媒担持スパンボンドと洗浄処理後のTiO2 含有量および抗菌試験の静菌活性値を表2に記載した。
使用したスパンボンドにあらかじめ含有されている酸化チタンのX線強度は2.6kcpsであった。加工後の変性した光触媒担持量は測定した値から2.6kcpsを差し引き、X線強度2.5kcpsとなり、洗浄後は2.2kcpsとなってTiO2 担持量の保持率は88%であった。このサンプルの抗菌性能は洗浄後も十分保持されたものであった。
【0028】
[実施例8]
光触媒加工液を変性光触媒ヒドロゾル2重量部、水98重量部を調合した加工液に浸漬した以外は実施例7と同様の方法での方法で光触媒担持スパンボンドを得た。
得られた光触媒担持スパンボンドと洗浄処理後のTiO2 含有量および抗菌試験の静菌活性値を表2に記載した。加工後の変性した光触媒担持量は測定した値から2.6kcpsを差し引き、X線強度0.6kcpsとなり、洗浄後は0.6kcpsとなってTiO2 担持量の保持率はほぼ100%であった。このサンプルの抗菌性能は洗浄後も十分保持されたものであった。
【0029】
[比較例3]
旭化成せんい社製、スパンボンドE01030をアクリル樹脂の前処理を行うことなく、光触媒純分5%含有する光触媒加工剤を10重量部、水90重量部を調合した加工液に浸漬し、上記と同様の条件で絞り、150℃で90秒、ピンテンター方式で熱処理を行った。
得られた光触媒担持スパンボンドと洗浄処理後のTiO2 含有量および抗菌試験の静菌活性値を表2に記載した。加工後の変性した光触媒担持量は、測定した値から2.6kcpsを差し引き、X線強度2.2kcpsとなり、洗浄後は0.3kcpsとなってTiO2 担持量の保持率はほぼ14%であった。このサンプルは、実施例7と比較して光触媒の脱落が多く、抗菌性能は効果のある範囲であるが、実施例7に比べて洗浄後の効果の低下が大きい。
【0030】
【表1】

【0031】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は光触媒の能力を失うことなく、水耐久性を付与した光触媒担時不織布であって、水質浄化フィルター、養液の培地、カーテンや衣類などの洗濯、洗浄を伴う用途、テントや傘など雨などにさらされる環境での用途など、生活環境や産業において広く利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維基材に対して2〜10wt%アクリル系樹脂を塗布または含浸させた繊維基材に、該アクリル系樹脂を0〜3wt%と変性した光触媒0.1〜5wt%を混用して担持させたことを特徴とする光触媒担持繊維布帛。
【請求項2】
光触媒を変性している樹脂が少なくともシリコーン樹脂を含有していることを特徴とする請求項1に記載の光触媒担持繊維布帛。
【請求項3】
繊維布帛が不織布であることを特徴とする請求項1または2に記載の光触媒担持繊維布帛。
【請求項4】
繊維布帛が長繊維不織布であることを特徴とする請求項3に記載の光触媒担持繊維布帛。
【請求項5】
繊維布帛がメルトブローン層を含むことを特徴とする請求項4に記載の光触媒担持繊維布帛。

【公開番号】特開2008−50707(P2008−50707A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−226070(P2006−226070)
【出願日】平成18年8月23日(2006.8.23)
【出願人】(303046303)旭化成せんい株式会社 (548)
【Fターム(参考)】