説明

光触媒構造体、およびこれを用いた光触媒機能製品

【課題】光触媒層の脆さやはがれやすさが低減されて、かつ長期の光照射による光触媒性能の低下が抑制された光触媒構造体を提供する。
【解決手段】樹脂基材と、この樹脂基材の面に積層された無機酸化物層と、この無機酸化物層の面に積層された光触媒層とを含む光触媒構造体であって、前記無機酸化物層の層厚が110〜190nmであり、かつ前記光触媒層の層厚が60〜500nmである。前記無機酸化物層は、真空蒸着法、スパッタリング法、イオン化蒸着法、イオンビーム法、または化学気相蒸着法により作製されるのが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光触媒構造体、およびこれを用いた光触媒機能製品に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体にバンドギャップ以上のエネルギーを持つ光を照射すると、価電子帯の電子が伝導帯に励起され、価電子帯に正孔が生成する。このようにして生成した正孔は強い酸化力を有し、励起した電子は強い還元力を有することから、半導体に接触した物質に酸化還元作用を及ぼす。この酸化還元作用は光触媒作用と呼ばれており、かかる光触媒作用を示し得る半導体は光触媒体と呼ばれている。このような光触媒体として酸化チタンや酸化タングステンが知られている。
【0003】
光触媒体を樹脂等に担持させた光触媒構造体において、光触媒体を樹脂等の基材表面に直接担持させて、光触媒体から構成される光触媒層を基材表面に形成すると、光触媒作用により、光触媒層と樹脂等の基材との密着性が損なわれ、容易に光触媒体が脱落してしまい、また光触媒構造体の光触媒活性も著しく低下するという問題があった。
【0004】
そこで、特許文献1には、光触媒層と樹脂基材の間に、酸化ケイ素および/または酸化アルミニウムの薄膜からなり光触媒作用に不活性な接着層を設けて、光触媒作用による光触媒層と樹脂基材の密着性の低下を抑制した光触媒構造体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000-225663号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示のような接着層では層厚が薄く、光触媒層と接着層、もしくは接着層と樹脂基材と、の密着性が不十分であった為、光触媒層の脱落が起こらない光触媒構造体が求められていた。しかも、上記のような接着層を設けた場合には、光触媒層が長期に光照射を受けると、光触媒性能が著しく低下する不具合があった。
【0007】
そこで、本発明は、光触媒層の脆さやはがれやすさが低減されて、かつ長期の光照射による光触媒性能の低下が抑制された光触媒構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、樹脂基材と光触媒層との間に介在する無機酸化物層の層厚と、光触媒層の層厚を調整することにより、上記課題を解決した光触媒構造体を見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は以下の構成からなる。
(1)樹脂基材と、この樹脂基材の面に積層された無機酸化物層と、この無機酸化物層の面に積層された光触媒層とを含む光触媒構造体であって、前記無機酸化物層の層厚が110〜190nmであり、かつ前記光触媒層の層厚が60〜500nmであることを特徴とする光触媒構造体。
(2)前記無機酸化物層が、真空蒸着法、スパッタリング法、イオン化蒸着法、イオンビーム法、または化学気相蒸着法により作製される前記(1)に記載の光触媒構造体。
(3)前記無機酸化物層を構成する成分が少なくとも酸化ケイ素、酸化アルミニウム、および酸化マグネシウムから選ばれる1つである前記(1)または(2)に記載の光触媒構造体。
(4)前記光触媒層が光触媒体から構成される前記(1)〜(3)のいずれかに記載の光触媒構造体。
(5)前記光触媒体が酸化チタン粒子または酸化タングステン粒子である前記(4)に記載の光触媒構造体。
(6)前記光触媒体に、貴金属または貴金属前駆体が担持されている前記(4)または(5)に記載の光触媒構造体。
(7)前記貴金属がCu、Pt、Au、Pd、Ag、Ru、Ir及びRhから選ばれる少なくとも1種である前記(6)に記載の光触媒構造体。
(8)前記(1)〜(7)のいずれかに記載の光触媒構造体を用いた光触媒機能製品。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、長時間光を照射しても、樹脂基材と無機酸化物層、または無機酸化物層と光触媒層の間の密着性を損なうことなく、しかも光照射による光触媒活性の劣化を低減させた光触媒構造体を得ることができる。その結果、本来の優れた光触媒作用を維持する光触媒機能製品を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
【0012】
本発明の光触媒構造体は、樹脂基材と、この樹脂基材の面に積層され所定の層厚を有する無機酸化物層と、この無機酸化物層の面に積層され所定の層厚を有する光触媒層とを含むものである。
【0013】
[光触媒体]
本発明における光触媒層は、光触媒体から構成される。光触媒体としては、例えば、紫外線や可視光線の照射により光触媒作用を発現する半導体であり、具体的には、X線分析法などで特定の結晶構造を決定できる、金属元素と酸素、窒素、硫黄、フッ素との化合物等が挙げられる。
金属元素としては、例えば、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Tc、Re、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Ga、In、Tl、Ge、Sn、Pb、Bi、La、Ceなどが挙げられる。その化合物としては、これら金属の1種類または2種類以上の酸化物、窒化物、硫化物、酸窒化物、酸硫化物、窒弗化物、酸弗化物、酸窒弗化物などが挙げられる。なかでも、TiやWの酸化物が好ましく、とりわけ可視光線の照射で高い光触媒活性を示すことからWの酸化物が好ましい。光触媒体は粒子状であることが好ましく、TiやWの酸化物としては、酸化チタン粒子や酸化タングステン粒子であることが好ましい。なお、光触媒体は単独で用いてもよいし2種類以上を併用してもよい。
【0014】
酸化チタン粒子は、光触媒作用を示す粒子状の酸化チタンであれば、特に制限はされないが、例えば、メタチタン酸粒子、結晶型がアナターゼ型、ブルッカイト型、ルチル型などである二酸化チタン〔TiO2〕粒子等が挙げられる。なお、酸化チタン粒子は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0015】
メタチタン酸粒子は、例えば、硫酸チタニルの水溶液を加熱して加水分解させる方法により得ることができる。
二酸化チタン粒子は、例えば、(i)硫酸チタニルまたは塩化チタンの水溶液を加熱することなく、これに塩基を加えることにより沈殿物を得、この沈殿物を焼成する方法、(ii)チタンアルコキシドに水、酸の水溶液または塩基の水溶液を加えて沈殿物を得、この沈殿物を焼成する方法、(iii)メタチタン酸を焼成する方法などによって得ることができる。これらの方法で得られる二酸化チタン粒子は、焼成する際の焼成温度や焼成時間を調整することにより、アナターゼ型、ブルッカイト型またはルチル型など、所望の結晶型にすることができる。
【0016】
酸化チタン粒子としては、前記の他にも、特開2001−72419号公報、特開2001−190953号公報、特開2001−316116号公報、特開2001−322816号公報、特開2002−29749号公報、特開2002−97019号公報、国際公開第01/10552号、特開2001−212457公報、特開2002−239395号公報、国際公開第03/080244号、国際公開第02/053501号、特開2007−69093号公報、Chemistry Letters, Vol.32, No.2, P.196−197(2003)、Chemistry Letters, Vol.32, No.4, P.364−365(2003)、Chemistry Letters, Vol.32, No.8, P.772−773(2003)、Chem. Mater. , 17, P.1548−1552(2005)等に記載の酸化チタン粒子を用いてもよい。また、特開2001−278625号公報、特開2001−278626号公報、特開2001−278627号公報、特開2001−302241号公報、特開2001−335321号公報、特開2001−354422号公報、特開2002−29750号公報、特開2002−47012号公報、特開2002−60221号公報、特開2002−193618号公報、特開2002−249319号公報などに記載の方法により得られる酸化チタン粒子を用いることもできる。
【0017】
酸化チタン粒子の粒子径は、特に制限されないが、光触媒作用の観点から、平均分散粒子径で、通常20〜150nm、好ましくは40〜100nmである。
酸化チタン粒子のBET比表面積は、特に制限されないが、光触媒作用の観点から、通常100〜500m2/g、好ましくは300〜400m2/gである。
【0018】
酸化タングステン粒子は、光触媒作用を示す粒子状の酸化タングステンであれば、特に制限はされないが、例えば、三酸化タングステン〔WO3〕粒子等が挙げられる。なお、酸化タングステン粒子は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0019】
三酸化タングステン粒子は、例えば、(i)タングステン酸塩の水溶液に酸を加えることにより、沈殿物としてタングステン酸を得、このタングステン酸を焼成する方法、(ii)メタタングステン酸アンモニウム、パラタングステン酸アンモニウムを加熱することにより熱分解する方法、(iii)金属状のタングステン粒子を焼成する方法などによって得ることができる。
【0020】
酸化タングステン粒子の粒子径は、特に制限されないが、光触媒作用の観点から、平均分散粒子径で、通常50〜200nm、好ましくは80〜130nmである。
前記酸化タングステン粒子のBET比表面積は、特に制限されないが、光触媒作用の観点から、通常5〜100m2/g、好ましくは20〜50m2/gである。
【0021】
本発明における光触媒体は、貴金属またはその前駆体を担持されていることが好ましい。
貴金属とは、光触媒体の表面に担持されて電子吸引性を発揮しうる化合物であり、貴金属の前駆体とは、光触媒体の表面で貴金属に遷移しうる化合物(例えば、光照射により貴金属に還元されうる化合物)である。貴金属が光触媒体に担持されて存在すると、光の照射により伝導帯に励起された電子と価電子帯に生成した正孔との再結合が抑制され、光触媒作用をより高めることができる。
【0022】
貴金属またはその前駆体は、Cu、Pt、Au、Pd、Ag、Ru、Ir、およびRhからなる群より選ばれる1種以上の金属原子を含有してなるものであることが好ましい。より好ましくは、Cu、Pt、AuおよびPdのうちの1種以上の金属原子を含有してなるものである。
貴金属としては、例えば、金属原子からなる金属、もしくは、これらの金属の酸化物や水酸化物等が挙げられ、貴金属の前駆体としては、例えば、金属原子からなる金属の硝酸塩、硫酸塩、ハロゲン化物、樹脂酸塩、炭酸塩、リン酸塩等が挙げられる。
【0023】
貴金属の好ましい具体例としては、Cu、Pt、Au、Pd等の金属が挙げられる。また、貴金属の前駆体の好ましい具体例としては、Cuを含む前駆体として、硝酸銅〔Cu(NO3)2〕、硫酸銅〔CuSO4〕、塩化銅〔CuCl2、CuCl〕、臭化銅〔CuBr2、CuBr〕、沃化銅〔CuI〕、沃素酸銅〔CuI26〕、塩化アンモニウム銅〔Cu(NH4)2Cl4〕、オキシ塩化銅〔Cu2Cl(OH)3〕、酢酸銅〔CH3COOCu、(CH3COO)2Cu〕、蟻酸銅〔(HCOO)2Cu〕、炭酸銅〔CuCO3〕、蓚酸銅〔CuC24〕、クエン酸銅〔Cu2647〕、リン酸銅〔CuPO4〕等;Ptを含む前駆体として、塩化白金〔PtCl2、PtCl4〕、臭化白金〔PtBr2、PtBr4〕、沃化白金〔PtI2、PtI4〕、塩化白金カリウム〔K2(PtCl4)〕、ヘキサクロロ白金酸〔H2PtCl6〕、亜硫酸白金〔H3Pt(SO3)2OH〕、酸化白金〔PtO2〕、塩化テトラアンミン白金〔Pt(NH3)4Cl2〕、炭酸水素テトラアンミン白金〔C21446Pt〕、テトラアンミン白金リン酸水素〔Pt(NH3)4HPO4〕、水酸化テトラアンミン白金〔Pt(NH3)4(OH)2〕、硝酸テトラアンミン白金〔Pt(NO3)2(NH3)4〕、テトラアンミン白金テトラクロロ白金〔(Pt(NH3)4)(PtCl4)〕、ジニトロアジアミン白金〔Pt(NO2)2(NH3)2〕等;Auを含む前駆体として、塩化金〔AuCl〕、臭化金〔AuBr〕、沃化金〔AuI〕、水酸化金〔Au(OH)2〕、テトラクロロ金酸〔HAuCl4〕、テトラクロロ金酸カリウム〔KAuCl4〕、テトラブロモ金酸カリウム〔KAuBr4〕、酸化金〔Au23〕等;Pdを含む前駆体として、酢酸パラジウム〔(CH3COO)2Pd〕、塩化パラジウム〔PdCl2〕、臭化パラジウム〔PdBr2〕、沃化パラジウム〔PdI2〕、水酸化パラジウム〔Pd(OH)2〕、硝酸パラジウム〔Pd(NO3)2〕、酸化パラジウム〔PdO〕、硫酸パラジウム〔PdSO4〕、テトラクロロパラジウム酸カリウム〔K2(PdCl4)〕、テトラブロモパラジウム酸カリウム〔K2(PdBr4)〕、テトラアンミンパラジウム硝酸塩〔Pd(NH3)4(NO3)2〕、テトラアンミンパラジウムテトラクロロパラジウム酸〔(Pd(NH3)4)(PdCl4)〕、テトラクロロパラジウム酸アンモニウム〔(NH4)2PdCl4〕、テトラアンミンパラジウム塩化物〔Pd(NH3)4Cl2〕、テトラアンミンパラジウム臭化物〔Pd(NH3)4Br2〕等がそれぞれ挙げられる。なお、貴金属またはその前駆体は、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。また、1種以上の貴金属と1種以上の貴金属前駆体とを併用してもよいことは勿論である。
【0024】
貴金属またはその前駆体を含有させる場合、その含有量は、金属原子換算で、光触媒体の合計量100質量部に対して、通常0.005〜0.6質量部、好ましくは0.01〜0.4質量部である。貴金属またはその前駆体が0.005質量部未満であると、貴金属による光触媒活性の向上効果が充分に得られないおそれがあり、一方、0.6質量部を超えると、却って光触媒作用が低下するおそれがある。
【0025】
本発明における光触媒層は、光触媒体を分散媒に分散させた光触媒分散液または光触媒分散液に後述する光触媒用バインダ成分を添加した光触媒コーティング液を用いて形成することができる。
光触媒分散液を構成する分散媒としては、特に制限はなく、通常は、水を主成分とする水性溶媒が用いられる。具体的には、分散媒は、水単独であってもよいし、水と水溶性有機溶媒との混合溶媒であってもよい。水と水溶性有機溶媒との混合溶媒を用いる場合には、水の含有量が50質量%以上であることが好ましい。
水溶性有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどの水溶性アルコール溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等が挙げられる。なお、分散媒は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0026】
光触媒分散液において、分散媒の含有量は、光触媒体の合計量100質量部に対して、通常2〜200質量倍、好ましくは10〜100質量倍である。分散媒が光触媒体の合計量100質量部に対して、2質量倍未満であると、光触媒体が沈降し易くなり、一方、200質量倍を超えると、容積効率の点で不利となるので、いずれも好ましくない。
【0027】
光触媒分散液は、その水素イオン濃度が、通常pH2.0〜pH7.0、好ましくはpH2.5〜pH6.0である。水素イオン濃度がpH2.0未満であると、酸性が強すぎて取扱いが面倒であり、一方、pH7.0を超えると、例えば、光触媒体に酸化タングステン粒子が含まれる場合、酸化タングステン粒子が溶解するおそれがあるので、いずれも好ましくない。
光触媒分散液の水素イオン濃度は、通常、酸を加えることにより調整すればよい。
水素イオン濃度の調整に用いることのできる酸としては、例えば、硝酸、塩酸、硫酸、リン酸、ギ酸、酢酸、蓚酸等が挙げられる。
【0028】
本発明では、光触媒分散液を用いて無機酸化物層の面に光触媒層を形成する際に、光触媒体をより強固に無機酸化物層の面に保持させるために、光触媒分散液に光触媒層用バインダ成分を含んでもよい。
【0029】
光触媒層用バインダ成分としては、例えば、蟻酸ジルコニウム、グリコール酸ジルコニウム、シュウ酸ジルコニウム、水酸化ジルコニウム、酸化ジルコニウム等のジルコニウム化合物;水酸錫、酸化錫等の錫化合物;水酸化二オブ、酸化二オブ等の二オブ化合物;テトラエトキシシラン(ケイ酸エチル)、ケイ酸メチル(テトラメトキシシラン)、メチルトリエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン等のシリコンアルコキシド;コロイダルシリカ、酸化ケイ素等のシリコン化合物などが挙げられ、これらをそれぞれ単独で、又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。さらに、例えば、特開平8−67835号公報、特開平9−25437号公報、特開平10―183061号公報、特開平10―183062号公報、特開平10―168349号公報、特開平10―225658号公報、特開平11―1620号公報、特開平11―1661号公報、特開2004―059686号公報、特開2004―107381号公報、特開2004―256590号公報、特開2004―359902号公報、特開2005―113028号公報、特開2005―230661号公報、特開2007―161824号公報などに記載されている公知の光触媒層用バインダを用いてもよい。
【0030】
光触媒分散液の製造方法は、特に制限されるものではなく、前述した各成分を分散媒中に適宜、添加、混合することにより光触媒分散液が得られる。以下、各成分の混合順序や混合方法などについて、その一実施態様を述べる。
【0031】
光触媒体として、例えば、酸化チタン粒子と酸化タングステン粒子を用いる場合、酸化チタン粒子と酸化タングステン粒子の混合は、酸化チタン粒子を分散媒中に添加して分散させた酸化チタン粒子分散液を調製し、これに、酸化タングステン粒子、もしくは酸化タングステン粒子を分散媒中に分散させた酸化タングステン粒子分散液を添加して、混合する態様が好ましい。より好ましくは、酸化チタン粒子分散液と酸化タングステン粒子分散液とを混合する態様である。酸化チタン粒子分散液または酸化タングステン粒子分散液を調製する際には、各粒子と分散媒とを混合した後、例えば、媒体撹拌式分散機を用いるなど、従来公知の分散処理を施すことが好ましい。
【0032】
貴金属またはその前駆体を光触媒分散液に含有させる場合、例えば、それらをそのままの状態で混合してもよいし、別途、光触媒分散液を構成する分散媒と同じ分散媒に溶解または分散させた後に、これを光触媒分散液と混合してもよい。
【0033】
貴金属の前駆体を光触媒分散液に添加する場合には、その添加後に光照射を光触媒分散液に行うことが好ましい。
照射する光としては、光触媒体のバンドギャップ以上のエネルギーを有する光であれば特に制限はなく、可視光線でもよいし、紫外線でもよい。光触媒分散液に光照射を行うことにより、光励起によって生成した電子によって貴金属前駆体が還元されて貴金属となり、光触媒体に担持される。なお、貴金属前駆体を光触媒分散液に添加する場合に、たとえ光触媒分散液に光照射を行なわなくても、得られた光触媒分散液により形成された光触媒層に光が照射された時点で貴金属へ還元されるので、その光触媒能が損なわれることはない。光照射は、貴金属前駆体を光触媒分散液に添加後であれば、どの段階で行なってもよい。
また、貴金属前駆体を光触媒分散液に添加する場合には、より効率よく貴金属前駆体を貴金属に還元する目的で、光照射の前に、本発明の効果を損なわない範囲で、適宜、メタノールやエタノールや蓚酸等を光触媒分散液に加えることもできる。
【0034】
光触媒層用バインダ成分を光触媒分散液に含有させる場合は、光触媒層用バインダ成分の添加はどの段階で行なってもよく、これにより光触媒コーティング液を得ることができる。
【0035】
[無機酸化物層]
本発明における樹脂基材上に形成される無機酸化物層は、層厚が110〜190nm、好ましくは120〜180nmである。層厚が110nm未満である場合、例えば、長期の光照射を受けると、光触媒性能の劣化が大きくなる。一方、層厚が190nmを越えると、無機酸化物層の柔軟性が低下し、無機酸化物層にひび割れが見られるようになり、光触媒活性が低下することがある。
【0036】
無機酸化物層を作製する方法としては、無機酸化物層の層厚が上記範囲内となるように作製できれば特に限定されず、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオン化蒸着法、またはイオンビーム法などの物理気相蒸着法(PVD)や、プラズマCVD法、ALCVD法、ガスソースMBE法等の化学気相蒸着法(CVD)による気相成長法;ゾル−ゲル法、溶融温度降下法などの液相成長法などが挙げられ、なかでも、真空蒸着法、スパッタリング法、イオン化蒸着法、またはイオンビーム法による方法が好ましい。
【0037】
また、本発明における無機酸化物層を構成する成分としては、例えば、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化チタン、酸化コバルト、酸化銅、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化イットリウム、酸化インジウム、酸化銀、酸化錫などが挙げられ、これらの中でも製造コストの観点から、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、および酸化マグネシウムから選ばれる少なくとも1種を用いるのが好ましい。尚、これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。
【0038】
[樹脂基材]
本発明における樹脂基材の例として、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂などの合成樹脂などが挙げられる。
【0039】
樹脂基材としては、樹脂基材が熱硬化性樹脂である場合には、例えば、アラミド樹脂、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、ポリウレタン樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、シリコーン樹脂、メラミンユリア樹脂などが挙げられ、樹脂基材が熱可塑性樹脂である場合には、例えば、縮重合系熱可塑性樹脂やビニルモノマーを重合して得られる樹脂などが挙げられる。
【0040】
縮重合系熱可塑性樹脂の例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ乳酸、生分解性ポリエステル、ポリエステル系液晶ポリマーなどのポリエステル系樹脂;エチレンジアミン−アジピン酸重縮合体(ナイロン−66)、ナイロン−6、ナイロン−12、ポリアミド系液晶ポリマーなどのポリアミド樹脂;ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンオキシド、ポリメチレンオキシド、アセタール樹脂などのポリエーテル系樹脂;セルロースおよびその誘導体などの多糖類系樹脂などが挙げられる。
【0041】
ビニルモノマーを重合して得られる樹脂の例としては、下記詳述するポリオレフィン系樹脂;ポリスチレン、ポリ−α−メチルスチレン、スチレン−エチレン−プロピレン共重合体(ポリスチレン−ポリ(エチレン/プロピレン)ブロック共重合体)、スチレン−エチレン−ブテン共重合体(ポリスチレン−ポリ(エチレン/ブテン)ブロック共重合体)、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレン共重合体(ポリスチレン−ポリ(エチレン/プロピレン)−ポリスチレンブロック共重合体)、エチレン−スチレン共重合体などの芳香族炭化水素化合物由来の構成単位を含有する樹脂;ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラールなどのポリビニルアルコール系樹脂;ポリメチルメタクリレート、モノマーとしてメタクリル酸エステル、アクリル酸エステル、メタクリル酸アミド、アクリル酸アミドを含むアクリル系樹脂;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなど塩素系樹脂;ポリテトラフルオロエチレン、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、エチレン−テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリフッ化ビニリデンなどのフッ素系樹脂などが挙げられる。
上述のポリオレフィン系樹脂としては、α−オレフィン、シクロオレフィン、極性ビニルモノマーから選ばれる1種以上のモノマーを重合して得られる樹脂である。また、ポリオレフィン系樹脂は、モノマーの重合で生じたポリオレフィン系樹脂がさらに変性されて生じた変性ポリオレフィン系樹脂であってもよい。ポリオレフィン系樹脂が共重合体である場合には、その共重合体は、ランダム共重合体であってもブロック共重合体であってもよい。
ポリオレフィン系樹脂の例としては、プロピレン系樹脂やエチレン系樹脂などが挙げられる。以下、これらについて詳述する。
【0042】
[プロピレン系樹脂]
プロピレン系樹脂とは、主にプロピレン由来の構成単位からなる樹脂であって、プロピレンの単独重合体のほか、プロピレンとそれに共重合可能なコモノマーとのプロピレン系共重合体も含む。
【0043】
プロピレンと共重合されるコモノマーとしては、例えば、エチレンや、炭素原子数4〜20のα−オレフィンなどが挙げられる。
炭素原子数4〜20のα−オレフィンとしては、例えば、1−ブテン、2−メチル−1−プロペン、1−ペンテン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、2−エチル−1−ブテン、2,3−ジメチル−1−ブテン、2−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、3,3−ジメチル−1−ブテン、1−ヘプテン、2−メチル−1−ヘキセン、2,3−ジメチル−1−ペンテン、2−エチル−1−ペンテン、2−メチル−3−エチル−1−ブテン、1−オクテン、5−メチル−1−ヘプテン、2−エチル−1−ヘキセン、3,3−ジメチル−1−ヘキセン、2−メチル−3−エチル−1−ペンテン、2,3,4−トリメチル−1−ペンテン、2−プロピル−1−ペンテン、2,3−ジエチル−1−ブテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、 1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセンなどが挙げられる。
【0044】
前記α−オレフィンの中で好ましいものは、炭素原子数4〜12のα−オレフィンであり、具体的には、1−ブテン、2−メチル−1−プロペン;1−ペンテン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン;1−ヘキセン、2−エチル−1−ブテン、2,3−ジメチル−1−ブテン、2−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、3,3−ジメチル−1−ブテン;1−ヘプテン、2−メチル−1−ヘキセン、2,3−ジメチル−1−ペンテン、2−エチル−1−ペンテン、2−メチル−3−エチル−1−ブテン;1−オクテン、5−メチル−1−ヘプテン、2−エチル−1−ヘキセン、3,3−ジメチル−1−ヘキセン、2−メチル−3−エチル−1−ペンテン、2,3,4−トリメチル−1−ペンテン、2−プロピル−1−ペンテン、2,3−ジエチル−1−ブテン;1−ノネン;1−デセン;1−ウンデセン;1−ドデセンなどを挙げることができる。共重合性の観点からは、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン及び1−オクテンが好ましく、とりわけ1−ブテン及び1−ヘキセンがより好ましい。
【0045】
プロピレン系共重合体として、例えば、プロピレン/エチレン共重合体やプロピレン/1−ブテン共重合体などを挙げることができる。
【0046】
[エチレン系樹脂]
エチレン系樹脂とは、主にエチレン由来の構成単位からなる樹脂であって、エチレンの単独重合体のほか、エチレンとそれに共重合可能なコモノマーとの共重合体であってもよく、その例としては、エチレン−α−オレフィン共重合体、高密度ポリエチレン、高圧法低密度ポリエチレン、エチレン−エチレン系不飽和カルボン酸類共重合体などが挙げられる。
【0047】
エチレン−α−オレフィン共重合体は、エチレンと炭素原子数4〜12のα−オレフィンを共重合して得られるエチレン−α−オレフィン共重合体である。
炭素原子数4〜12のα−オレフィンとしては、例えば、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、ヘプテン−1、オクテン−1、ノネン−1、デセン−1、ドデセン−1、4−メチル−ペンテン−1、4−メチル−ヘキセン−1、ビニルシクロヘキサン、ビニルシクロヘキセン、スチレン、ノルボルネン、ブタジエン、イソプレン等が挙げられ、好ましくはヘキセン−1、4−メチル−ペンテン−1、オクテン−1である。さらにはシクロオレフィンも広義のα―オレフィンとして挙げられ、その例として、ノルボルネン、ジメタノオクタヒドロナフタレン(DMON)などが挙げられる。また、上記の炭素原子数4〜12のα−オレフィンは単独で用いてもよく、少なくとも2種を併用してもよい。
【0048】
[エチレン−エチレン系不飽和カルボン酸類共重合体]
エチレン−エチレン系不飽和カルボン酸類共重合体とは、エチレンとエチレン系不飽和カルボン酸類との共重合体である。
エチレン系不飽和カルボン酸類とは、カルボン酸類であって、炭素−炭素二重結合などのような重合性の炭素−炭素不飽和結合であるエチレン系不飽和結合を有する化合物であり、エチレン系不飽和カルボン酸類加水分解物も含む。
【0049】
エチレン系不飽和カルボン酸類としては、例えば、飽和カルボン酸のビニルエステル、不飽和カルボン酸のビニルエステル、α,β−不飽和カルボン酸エステルなどが挙げられる。
【0050】
飽和カルボン酸のビニルエステルとしては、炭素原子数2〜4程度の飽和脂肪族カルボン酸のビニルエステルが好ましく、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニルなどが挙げられる。
不飽和カルボン酸のビニルエステルとしては、炭素原子数2〜5程度の不飽和脂肪族カルボン酸のビニルエステルが好ましく、例えば、アクリル酸ビニル、メタクリル酸ビニルなどが挙げられる。
α,β−不飽和カルボン酸エステルとしては、炭素原子数3〜8程度のα,β−不飽和カルボン酸のエステルが好ましく、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸tert−ブチルなどのアクリル酸のアルキルエステル;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸tert−ブチルなどのメタクリル酸のアルキルエステルなどが挙げられる。
エチレン系不飽和カルボン酸類の中でも、酢酸ビニル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、メタクリル酸メチルが好ましく、酢酸ビニルがさらに好ましい。かかるエチレン系不飽和カルボン酸類は、それぞれ単独または2種以上を組み合わせて用いられる。
【0051】
また、エチレン系不飽和カルボン酸類加水分解物としては、例えば、エチレン―酢酸ビニル共重合体の加水分解によって得られるエチレン―酢酸ビニル共重合体けん化物なども好ましく用いられる。
【0052】
[変性ポリオレフィン系樹脂]
上記したプロピレン系樹脂やエチレン系樹脂に代表されるポリオレフィン系樹脂は、変性されていてもよい。変性ポリオレフィン系樹脂としては、以下の(A)〜(C)に示す樹脂などが挙げられる。
(A)オレフィンの単独重合体に、不飽和カルボン酸および/またはその誘導体をグラフト重合して得られる変性ポリオレフィン系樹脂。
(B)少なくとも二種のオレフィンの共重合体に、不飽和カルボン酸および/またはその誘導体をグラフト重合して得られる変性ポリオレフィン系樹脂。
(C)オレフィンを単独重合した後に少なくとも2種のオレフィンを共重合して得られるブロック共重合体に、不飽和カルボン酸および/またはその誘導体をグラフト重合して得られる変性ポリオレフィン系樹脂。
【0053】
変性ポリオレフィン樹脂として、好ましくは、以下の(D)や(E)に示す樹脂などが挙げられる。
(D)エチレンおよび/またはプロピレンに由来する単位をポリマーの主な構成単位とするポリオレフィン樹脂に、無水マレイン酸をグラフト重合することによって得られる変性ポリオレフィン系樹脂。
(E)エチレンおよび/またはプロピレンを主な成分とするオレフィンと、メタクリル酸グリシジルエステルまたは無水マレイン酸とを共重合することによって得られる変性ポリオレフィン系樹脂。
【0054】
その他の変性ポリオレフィン系樹脂として、例えば、ケイ素、チタン、フッ素などの元素を含有したモノマー(カップリング剤)やそれらを含有したポリマーなどを、ポリオレフィン系樹脂と反応させたもの等が挙げられる。
【0055】
[光触媒構造体]
このようにして樹脂基材上に作製した所定層厚の無機酸化物層の面に所定層厚の光触媒層を形成することにより、本発明の光触媒構造体を得ることができる。
光触媒構造体の形状は、特に限定されず、要求される機能、使用される用途に応じた形状で用いられる。例えば、フィルムやシートなどの板状、棒状、繊維状、球状、三次元構造体状などである。なお、光触媒層は、無機酸化物層の面であれば、どの部分に形成されていてもよいが、例えば、光(可視光線など)が照射される面であって、かつ悪臭物質が発生する箇所や病原菌やウイルスが存在する箇所と連続または断続して空間的につながる面に形成されていることが好ましい。
【0056】
光触媒層の形成方法としては、例えば、光触媒分散液または光触媒コーティング液を無機酸化物層の面に、例えば、グラビアコーティング、リバースコーティング、刷毛ロールコーティング、スプレーコーティング、キスコーティング、ダイコーティング、ディッピング、バーコーティングなどの公知の方法で塗布することができる。
【0057】
光触媒分散液または光触媒コーティング液を乾燥する方法としては、特に限定されない。
光触媒分散液または光触媒コーティング液の分散媒の除去時の圧力や温度は、これらの分散媒により適宜調整すればよく、例えば、分散媒が水である場合は、常圧下、25℃〜140℃で分散媒の除去が可能である。
【0058】
光触媒層の層厚は、60〜500nmが好ましく、80〜300nmであるのがより好ましい。光触媒層の層厚が60nm未満である場合、光触媒構造体が十分な光触媒性能を発現せず、また長期の光照射により光触媒性能がさらに低下するおそれがある。一方、光触媒層の層厚が500nmを越える場合、層厚に見合うだけの十分な光触媒性能が得られず、製造コストの観点から好ましくない。
【0059】
[光触媒機能製品]
本発明の光触媒機能製品は、光触媒構造体を、例えば、天井材、タイル、ガラス、壁紙、壁材、床等の建築資材、自動車内装材(自動車インストルメントパネル、自動車用シート、自動車用天井材)、冷蔵庫やエアコン等の家電製品、衣類やカーテン等の繊維製品、タッチパネル、電車のつり革、エレベーターのボタン等、不特定多数の人が接触する基材表面などに利用したものである。光触媒構造体は、屋外においては勿論のこと、蛍光灯やナトリウムランプ、および発光ダイオードのような可視光源からの光しか受けない屋内環境においても、光照射によって高い光触媒作用を示すことから、本発明における光触媒機能製品は、屋内照明による光照射によって、ホルムアルデヒドやアセトアルデヒドなどの揮発性有機物、アルデヒド類、メルカプタン類、アンモニアなどの悪臭物質、窒素酸化物の濃度を低減させ、黄色ブドウ球菌、大腸菌、炭疽菌、結核菌、コレラ菌、ジフテリア菌、破傷風菌、ペスト菌、赤痢菌、ボツリヌス菌、およびレジオネラ菌等の病原菌等を死滅、分解、除去することができ、また、七面鳥ヘルぺスウイルス、マレック病ウイルス、伝染性ファブリキウス嚢病ウイルス、ニューカッスル病ウイルス、伝染性気管支炎ウイルス、伝染性喉頭気管炎、鳥脳脊髄炎ウイルス、鶏貧血ウイルス、鶏痘ウイルス、鳥類レオウイルス、鳥類白血病ウイルス、細網内皮症ウイルス、鳥類アデノウイルス及び出血性腸炎ウイルス、ヘルペスウイルス、天然痘ウイルス、牛痘ウイルス、水庖唐ウイルス、麻疹ウイルス、アデノウイルス、コクサッキーウイルス、カリシウイルス、レトロウイルス、コロナウイルス、鳥インフルエンザウイルス、ヒトインフルエンザウイルス、豚インフルエンザウイルス、ノロウイルス及びその組換え体等を無害化することができ、さらに、ダニアレルゲンやスギ花粉アレルゲン等のアレルゲンを無害化することができる。また、本発明の光触媒機能製品は、可視光線を照射すれば、充分な親水性を発揮し、防曇性を発現するだけでなく、汚れに水をかけるだけで容易に拭き取ることができるようになり、さらに帯電をも防止できる。
【実施例】
【0060】
以下、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
なお、実施例および比較例における各物性の測定および光触媒活性の評価については、以下の方法で行った。
【0061】
(結晶型)
X線回折装置((株)リガク製の「RINT2000/PC」)を用いてX線回折スペクトルを測定し、そのスペクトルから結晶型を決定した。
【0062】
(BET比表面積)
比表面積測定装置(湯浅アイオニクス(株)製の「モノソーブ」)を用いて窒素吸着法により測定した。
【0063】
(平均分散粒子径)
サブミクロン粒度分布測定装置(コールター(株)製の「N4Plus」)を用いて粒度分布を測定し、この装置に付属のソフトにより自動的に単分散モード解析して得られた結果を、平均分散粒子径(nm)とした。
【0064】
(密着性)
光触媒構造体における光触媒層の密着性は、粘着セロファンテープを光触媒層の表面に貼着した後、素早く剥したときに、光触媒層が同時に剥れるか否かにより評価した。
【0065】
(紫外線の照射)
光触媒構造体への長期の光照射は、加速的に促進耐候試験機(スガ試験機(株)製の紫外線オートフェードメーター「U48AU」)にて以下の条件で行った。
光源 :紫外線カーボンアーク
放電電圧 :135V
放電電流 :16A
放射照度 :500±100W/cm2(波長300−700nm)
ブラックパネル温度:63℃
湿度 :50%RH
スプレーサイクル :なし
照射時間 :80時間
雰囲気 :大気下
【0066】
(光触媒活性の評価)
測定対象の光触媒構造体を5cm×10cmに切り出し、紫外線強度が2mW/cm2((株)トプコン製の紫外線強度計「UVR−2」に同社製受光部「UD−36」を取り付けて測定)となるようにブラックライトからの紫外線を16時間照射して、これを光触媒活性測定用試料とした。
次に、この光触媒活性測定用試料をガスバッグ(内容積1L)の中に入れて密閉し、次いで、このガスバッグ内を真空にした後、酸素と窒素との体積比が1:4である混合ガス469mLを封入し、さらにその中に1容量%でアセトアルデヒドを含む窒素ガスを、ガスバック内のアセトアルデヒドの濃度が20ppmとなるように封入して、暗所で室温下で1時間保持した。その後、市販の白色蛍光灯を光源とし、測定サンプル近傍での照度が6000ルクス〔照度計「T−10」(コニカミノルタセンシング(株)製)で測定〕になるようにガスバッグを設置し、アセトアルデヒドの分解反応を行った。測定サンプル近傍の紫外光の強度は40μW/cm2〔(株)トプコン製の紫外線強度計「UVR−2」に、同社製受光部「UD−36」を取り付けて測定〕であった。蛍光灯照射後よりガスバッグ内のガスを1.5時間毎にサンプリングして、アセトアルデヒドの濃度をガスクロマトグラフ((株)島津製作所製の「GC−14A」)にて測定し、光照射後3.0時間までの照射時間に対するアセトアルデヒドの濃度から一次反応速度定数を算出し、これをアセトアルデヒドの分解能とした。一次反応速度定数が大きいほど、アセトアルデヒドの分解能は大きい。
【0067】
(製造例1)
(光触媒分散液)
分散媒としてイオン交換水4kgに、酸化タングステン粒子(日本無機化学工業(株)製)1kgを加えて混合して混合物を得た。この混合物を湿式媒体撹拌ミル[コトブキ技研工業(株)製の「ウルトラアペックスミル UAM−1」]を用いて分散処理して酸化タングステン粒子分散液を得た。
【0068】
得られた酸化タングステン粒子分散液における酸化タングステン粒子の平均粒子径は118nmであった。また、この分散液の一部を真空乾燥して固形分を得たところ、得られた固形分のBET比表面積は40m2/gであった。なお、分散処理前の混合物についても同様に真空乾燥して固形分を得、分散処理前の混合物の固形分と分散処理後の固形分について、X線回折スペクトルをそれぞれ測定して比較したところ、同じピーク形状であり、分散処理による結晶型の変化は見られなかった。この時点で、得られた分散液を20℃で24時間保持したところ、保管中に固液分離は見られなかった。
【0069】
この酸化タングステン粒子分散液にヘキサクロロ白金酸(H2PtCl6)の水溶液をヘキサクロロ白金酸が白金原子換算で酸化タングステン粒子の使用量100質量部に対して0.12質量部になるように加え、原料分散液としてヘキサクロロ白金酸含有酸化タングステン粒子分散液を得た。この分散液100質量部中に含まれる固形分(酸化タングステン粒子の量)は、17.6質量部(固形分濃度17.6質量%)であった。この分散液のpHは2.0であった。
【0070】
次いで、pH電極とこのpH電極に接続され、0.1質量%のアンモニア水を供給してpHを一定に調整する制御機構を有するpHコントローラ(pH=3に設定)とを備え、水中殺菌灯[三共電気(株)製の「GLD15MQ」]を設置したガラス管(内径37mm、高さ360mm)からなる光照射装置でヘキサクロロ白金酸含有酸化タングステン粒子分散液500gを毎分1Lの速度で循環させ、光照射(紫外線)を行いながら、pHコントローラーによりアンモニア水を加えてヘキサクロロ白金酸含有酸化タングステン粒子分散液のpHを3.0にした。この分散液に光照射を行った時間は1.5時間であった。その後、引き続き循環させながら、更に50質量%のメタノール水溶液を15g加えて、この分散液に光(紫外線)を1.5時間照射した。光照射中、pHコントローラーによりアンモニア水が加えられ、この分散液のpHは3.0に維持された。光照射前および光照射中に消費したアンモニア水の合計量は71.6gであった。
【0071】
得られた白金担持酸化タングステン粒子分散液を20℃で24時間保管したところ、保管後に固液分離は見られなかった。またこの分散液中の固形分濃度は15質量%であった。
【0072】
得られた白金担持酸化タングステン粒子分散液に水を入れて固形分濃度を7.1質量%に希釈し、この液420gにエタノールを180g加えて光触媒分散液を得た。この光触媒分散液の固形分濃度は5質量%であった。
【0073】
(製造例2)
(光触媒コーティング液)
高純度正ケイ酸エチル(多摩化学工業(株)製)26gにエタノール120gを混合した溶液に、水193gを添加し混合撹拌を行った。その後、更にコロイダルシリカ(日産化学工業(株)製の「STOS」:20.4質量%)61gを添加し攪拌を行い、光触媒層用バインダを得た。
【0074】
得られた光触媒層用バインダ80gに、製造例1で得られた光触媒分散液320gを添加して光触媒コーティング液を得た。
【0075】
(実施例1)
樹脂基材としてポリエチレンテレフタレートからなるフィルム(融点:260℃ 厚み:100μm)を用い、このフィルムの表面に、無機酸化物層として、酸化ケイ素(SiO2(C)、純度99.9%以上、キャノンオプトロン(株)製)を用いて、RF式イオンプレーティング装置((株)昭和真空製の「SIP−3060」)にて真空蒸着法で酸化ケイ素層を作製した。層厚は150nmであった。
【0076】
この酸化ケイ素層を作製したフィルムを7cm×15cmに切り出し、この酸化ケイ素層の上に製造例2で得た光触媒コーティング液をバーコーター(6番)で塗布し、70℃で15分間乾燥して光触媒構造体を得た。この光触媒構造体の光触媒層の層厚は110nmであった。
【0077】
この光触媒構造体の光触媒性能を評価したところ、一次反応速度定数は0.385h-1であった。次に、この光触媒構造体に紫外線を80時間照射し、その後、再度光触媒性能を評価したところ、一次反応速度定数は0.265h-1であった。
これらから紫外線照射前に対する紫外線照射後の光触媒性能の維持率は69%であった。光触媒性能の維持率は、以下の式から求めた。
光触媒性能の維持率=紫外線照射後の一次反応速度定数/紫外線照射前の一次反応速度定数
尚、紫外線照射前後で、光触媒層および無機酸化物層の密着性は共に良好であった。
【0078】
(比較例1)
酸化ケイ素層の層厚を100nmとした以外は、実施例1と同様の方法で光触媒構造体を得た。この光触媒構造体の光触媒性能を評価したところ、一次反応速度定数は0.357h-1であった。次に実施例1と同様にして、この光触媒構造体に紫外線を80時間照射し、その後、再度光触媒性能を評価したところ、一次反応速度定数は0.077h-1であった。
これらから紫外線照射前に対する紫外線照射後の光触媒性能の維持率は22%であった。尚、紫外線照射前後で、光触媒層および無機酸化物層の密着性は共に良好であった。
【0079】
(比較例2)
酸化ケイ素層の層厚を200nmとした以外は、実施例1と同様の方法で光触媒構造体を得た。この光触媒構造体の光触媒性能を評価したところ、一次反応速度定数は0.317h-1であった。次に実施例1と同様にして、この光触媒構造体に紫外線を80時間照射し、その後再度光触媒性能を評価したところ、一次反応速度定数は0.108h-1であった。
これらから紫外線照射前に対する紫外線照射後の光触媒性能の維持率は34%であった。尚、紫外線照射前後で、光触媒層および無機酸化物層の密着性は共に良好であった。
【0080】
(実施例2)
光触媒コーティング液をバーコーター(9番)で塗布した以外は、実施例1と同様の方法で光触媒構造体を得た。この光触媒構造体の光触媒層の層厚は170nmであった。
【0081】
この光触媒構造体の光触媒性能を評価したところ、一次反応速度定数は0.702h-1であった。次に実施例1と同様にして、この光触媒構造体に紫外線を80時間照射し、その後、再度光触媒性能を評価したところ、一次反応速度定数は0.483h-1であった。
これらから紫外線照射前に対する紫外線照射後の光触媒性能の維持率は69%であった。尚、紫外線照射前後で、光触媒層および無機酸化物層の密着性は共に良好であった。
【0082】
(比較例3)
光触媒コーティング液をバーコーター(3番)で塗布した以外は、実施例1と同様の方法で光触媒構造体を得た。この光触媒構造体の光触媒層の層厚は48nmであった。
【0083】
この光触媒構造体の光触媒性能を評価したところ、一次反応速度定数は0.136h-1であった。次に実施例1と同様にして、この光触媒構造体に紫外線を80時間照射し、その後再度光触媒性能を評価したところ、一次反応速度定数は0.019h-1であった。
これらから紫外線照射前に対する紫外線照射後の光触媒性能の維持率は14%であった。尚、紫外線照射前後で、光触媒層および無機酸化物層の密着性は共に良好であった。
【0084】
(比較例4)
酸化ケイ素層の層厚を100nmとし、光触媒コーティング液をバーコーター(9番)で塗布した以外は、実施例1と同様の方法で光触媒構造体を得た。この光触媒構造体の光触媒層の層厚は170nmであった。この光触媒構造体の光触媒性能を評価したところ、一次反応速度定数は0.498h-1であった。次に実施例1と同様にして、この光触媒構造体に紫外線を80時間照射し、その後再度光触媒性能を評価したところ、一次反応速度定数は0.215h-1であった。
これらから紫外線照射前に対する紫外線照射後の光触媒性能の維持率は43%であった。尚、紫外線照射前後で、光触媒層および無機酸化物層の密着性は共に良好であった。
【0085】
(比較例5)
酸化ケイ素層の層厚を100nmとし、光触媒コーティング液をバーコーター(3番)で塗布した以外は、実施例1と同様の方法で光触媒構造体を得た。この光触媒構造体の光触媒層の層厚は48nmであった。この光触媒構造体の光触媒性能を評価したところ、一次反応速度定数は0.235h-1であった。次に実施例1と同様にして、この光触媒構造体に紫外線を80時間照射し、その後再度光触媒性能を評価したところ、一次反応速度定数は0.026h-1であった。
これらから紫外線照射前に対する紫外線照射後の光触媒性能の維持率は11%であった。尚、紫外線照射前後で、光触媒層および無機酸化物層の密着性は共に良好であった。
【0086】
(比較例6)
酸化ケイ素層の層厚を200nmとし、光触媒コーティング液をバーコーター(3番)で塗布した以外は、実施例1と同様の方法で光触媒構造体を得た。この光触媒構造体の光触媒層の層厚は48nmであった。この光触媒構造体の光触媒性能を評価したところ、一次反応速度定数は0.275h-1であった。次に実施例1と同様にして、この光触媒構造体に紫外線を80時間照射し、その後再度光触媒性能を評価したところ、一次反応速度定数は0.039h-1であった。
これらから紫外線照射前に対する紫外線照射後の光触媒性能の維持率は14%であった。尚、紫外線照射前後で、光触媒層および無機酸化物層の密着性は共に良好であった。
【0087】
(参考例1)
実施例1および2で得た光触媒構造体を、天井を構成する天井材の表面に用いることにより、屋内照明による光照射により屋内空間における揮発性有機物(例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、アセトン、トルエン等)や悪臭物質の濃度を低減することができ、さらには、黄色ブドウ球菌や大腸菌等の病原菌や、インフルエンザウイルス等のウイルスを死滅させることもでき、また、ダニアレルゲンやスギ花粉アレルゲン等のアレルゲンを無害化することもできる。さらに、基材表面が親水化し、汚れを容易に拭き取ることができるようになり、さらに帯電をも防止できる。
【0088】
(参考例2)
実施例1および2で得た光触媒構造体を、屋内の壁面に施工されたタイルの表面に用いることにより、屋内照明による光照射により屋内空間における揮発性有機物(例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、アセトン、トルエン等)や悪臭物質の濃度を低減することができ、さらには、黄色ブドウ球菌や大腸菌等の病原菌や、インフルエンザウイルス等のウイルスを死滅させることもでき、また、ダニアレルゲンやスギ花粉アレルゲン等のアレルゲンを無害化することもできる。さらに、基材表面が親水化し、汚れを容易に拭き取ることができるようになり、さらに帯電をも防止できる。
【0089】
(参考例3)
実施例1および2で得た光触媒構造体を、窓ガラスの屋内側の表面に用いることにより、屋内照明による光照射により屋内空間における揮発性有機物(例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、アセトン、トルエン等)や悪臭物質の濃度を低減することができ、さらには、黄色ブドウ球菌や大腸菌等の病原菌や、インフルエンザウイルス等のウイルスを死滅させることもでき、また、ダニアレルゲンやスギ花粉アレルゲン等のアレルゲンを無害化することもできる。さらに、基材表面が親水化し、汚れを容易に拭き取ることができるようになり、さらに帯電をも防止できる。
【0090】
(参考例4)
実施例1および2で得た光触媒構造体を、壁紙の表面に用いることにより、屋内照明による光照射により屋内空間における揮発性有機物(例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、アセトン、トルエン等)や悪臭物質の濃度を低減することができ、さらには、黄色ブドウ球菌や大腸菌等の病原菌や、インフルエンザウイルス等のウイルスを死滅させることもでき、また、ダニアレルゲンやスギ花粉アレルゲン等のアレルゲンを無害化することもできる。さらに、基材表面が親水化し、汚れを容易に拭き取ることができるようになり、さらに帯電をも防止できる。
【0091】
(参考例5)
実施例1および2で得た光触媒構造体を、屋内の床面の表面に用いることにより、屋内照明による光照射により屋内空間における揮発性有機物(例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、アセトン、トルエン等)や悪臭物質の濃度を低減することができ、さらには、黄色ブドウ球菌や大腸菌等の病原菌や、インフルエンザウイルス等のウイルスを死滅させることもでき、また、ダニアレルゲンやスギ花粉アレルゲン等のアレルゲンを無害化することもできる。さらに、基材表面が親水化し、汚れを容易に拭き取ることができるようになり、さらに帯電をも防止できる。
【0092】
(参考例6)
実施例1および2で得た光触媒構造体を、自動車用インストルメントパネル、自動車用シート、自動車の天井材などの自動車内装材の表面に用いることにより、車内照明による光照射により車内空間における揮発性有機物(例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、アセトン、トルエン等)や悪臭物質の濃度を低減することができ、さらには、黄色ブドウ球菌や大腸菌等の病原菌や、インフルエンザウイルス等のウイルスを死滅させることもでき、また、ダニアレルゲンやスギ花粉アレルゲン等のアレルゲンを無害化することもできる。さらに、基材表面が親水化し、汚れを容易に拭き取ることができるようになり、さらに帯電をも防止できる。
【0093】
(参考例7)
実施例1および2で得た光触媒構造体を、エアコンの表面に用いることにより、屋内照明による光照射により屋内空間における揮発性有機物(例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、アセトン、トルエン等)や悪臭物質の濃度を低減することができ、さらには、黄色ブドウ球菌や大腸菌等の病原菌や、インフルエンザウイルス等のウイルスを死滅させることもでき、また、ダニアレルゲンやスギ花粉アレルゲン等のアレルゲンを無害化することもできる。さらに、基材表面が親水化し、汚れを容易に拭き取ることができるようになり、さらに帯電をも防止できる。
【0094】
(参考例8)
実施例1および2で得た光触媒構造体を、冷蔵庫の庫内の表面に用いることにより、屋内照明や冷蔵庫内の光源による光照射により冷蔵庫内における揮発性有機物(例えば、エチレン等)や悪臭物質の濃度を低減することができ、さらには、黄色ブドウ球菌や大腸菌等の病原菌や、インフルエンザウイルス等のウイルスを死滅させることもでき、また、ダニアレルゲンやスギ花粉アレルゲン等のアレルゲンを無害化することもできる。さらに、基材表面が親水化し、汚れを容易に拭き取ることができるようになり、さらに帯電をも防止できる。
【0095】
(参考例9)
実施例1および2で得た光触媒構造体を、タッチパネル、電車のつり革、エレベーターのボタン等、不特定多数の人が接触する基材表面に用いることにより、屋内照明による光照射により屋内空間における揮発性有機物(例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、アセトン、トルエン等)や悪臭物質の濃度を低減することができ、さらには、黄色ブドウ球菌や大腸菌等の病原菌や、インフルエンザウイルス等のウイルスを死滅させることもでき、また、ダニアレルゲンやスギ花粉アレルゲン等のアレルゲンを無害化することもできる。さらに、基材表面が親水化し、汚れを容易に拭き取ることができるようになり、さらに帯電をも防止できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂基材と、この樹脂基材の面に積層された無機酸化物層と、この無機酸化物層の面に積層された光触媒層とを含む光触媒構造体であって、前記無機酸化物層の層厚が110〜190nmであり、かつ前記光触媒層の層厚が60〜500nmであることを特徴とする光触媒構造体。
【請求項2】
前記無機酸化物層が、真空蒸着法、スパッタリング法、イオン化蒸着法、イオンビーム法、または化学気相蒸着法により作製される請求項1に記載の光触媒構造体。
【請求項3】
前記無機酸化物層を構成する成分が少なくとも酸化ケイ素、酸化アルミニウム、および酸化マグネシウムから選ばれる1つである請求項1または2に記載の光触媒構造体。
【請求項4】
前記光触媒層が光触媒体から構成される前記(1)〜(3)のいずれかに記載の光触媒構造体。
【請求項5】
前記光触媒体が酸化チタン粒子または酸化タングステン粒子である請求項4に記載の光触媒構造体。
【請求項6】
前記光触媒体に、貴金属または貴金属前駆体が担持されている請求項4または5に記載の光触媒構造体。
【請求項7】
前記貴金属がCu、Pt、Au、Pd、Ag、Ru、Ir及びRhから選ばれる少なくとも1種である請求項6に記載の光触媒構造体。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の光触媒構造体を用いた光触媒機能製品。

【公開番号】特開2012−71252(P2012−71252A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−217739(P2010−217739)
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】