説明

光触媒構造体

【課題】触媒効率を飛躍的かつ安定的に向上させることができる光触媒構造体を提供する。
【解決手段】金属ナノ粒子12と、半導体光触媒16と、前記金属ナノ粒子12と前記半導体光触媒16との間に介在する、前記半導体光触媒16を励起する波長の光に対して透明な材料14と、を含むことを特徴とする光触媒構造体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒効率に優れた光触媒構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
光触媒は、自身のバンドギャップ以上のエネルギーを持つ波長の光が照射されると、光励起により、伝導帯に電子を、荷電子帯に正孔を生じ、それらによる強い還元力や酸化力により、有害物質等を分解する働きをする触媒である。光触媒の持つ、空気浄化、水浄化、抗菌・殺菌、防汚・防曇等の様々な機能に着目し、各産業分野において、種々の検討がなされている。
【0003】
触媒としての量子収量(触媒効率)向上を目的として、光触媒である酸化チタンの表面に金属粒子を接触させる技術が知られている(例えば、非特許文献1参照)。この技術により量子収量(触媒効率)が向上する理由としては、酸化チタンの表面に金属粒子を接触させることにより、酸化と還元との両方の反応が別々の場所で起こり、電子と正孔との再結合による失活を防ぐことができるため、と考えられている。
【0004】
また、光の利用効率を高めることができる光触媒として、光触媒材料と表面プラズモン共鳴を起こす金属材料とを共存させる技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−288405号公報
【非特許文献1】橋本和仁編、藤嶋昭編、「酸化チタン光触媒のすべて−抗菌・防汚・空気浄化のために」、株式会社シーエムシー出版、1998年7月、p.22
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の酸化チタンの表面に金属粒子を接触させる技術ではいずれも触媒効率向上効果は2倍程度であり、触媒効率の更なる向上が望まれている。
また、上述の光触媒材料と表面プラズモン共鳴を起こす金属材料とを共存させる技術では、金属材料の状態によっては表面プラズモン共鳴が消失することがあり、単に光触媒材料と金属材料とを共存させるのみでは、触媒効率を安定的に向上できるとは限らない。
【0006】
本発明は上記に鑑みなされたものであり、触媒効率を飛躍的かつ安定的に向上させることができる光触媒構造体を提供することを目的とし、該目的を達成することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は鋭意検討した結果、金属ナノ粒子と半導体光触媒とを共存させる形態を具体的に特定することで上記課題を解決できるとの知見を得、該知見に基づき本発明を完成した。
即ち、前記課題を解決するための具体的手段は以下の通りである。
<1> 金属ナノ粒子と、半導体光触媒と、前記金属ナノ粒子と前記半導体光触媒との間に介在する、前記半導体光触媒を励起する波長の光に対して透明な材料と、を含むことを特徴とする光触媒構造体である。
<2> 前記金属ナノ粒子が、前記半導体光触媒の反応表面に存在しないことを特徴とする<1>に記載の光触媒構造体である。
【0008】
<3> 前記半導体光触媒が、基材上に形成された薄膜であることを特徴とする<1>又は<2>に記載の光触媒構造体である。
<4> 前記半導体光触媒を励起する波長の光に対して透明な材料が、前記金属ナノ粒子の少なくとも1部を覆うようにして基材上に形成された薄膜であり、前記半導体光触媒が、前記透明な材料からなる薄膜上に形成された薄膜であることを特徴とする<1>〜<3>のいずれか1つに記載の光触媒構造体である。
<5> 前記金属ナノ粒子が、銀を含むことを特徴とする<1>〜<4>のいずれか1つに記載の光触媒構造体である。
【0009】
<6> 前記半導体光触媒が、酸化チタンを含むことを特徴とする<1>〜<5>のいずれか1つに記載の光触媒構造体である。
<7> 前記半導体光触媒を励起する波長の光に対して透明な材料が、酸化ケイ素を含むことを特徴とする<1>〜<6>のいずれか1つに記載の光触媒構造体である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、触媒効率を飛躍的かつ安定的に向上させることができる光触媒構造体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の光触媒構造体は、金属ナノ粒子と、半導体光触媒と、前記金属ナノ粒子と前記半導体光触媒との間に介在する、前記半導体光触媒を励起する波長の光に対して透明な材料と、を含んで構成される。
金属ナノ粒子と半導体光触媒とを共存させることにより、金属ナノ粒子の局在表面プラズモン光により、半導体光触媒における光の利用効率を飛躍的に向上させることができるが、局在表面プラズモン光は、金属ナノ粒子が酸化すると消失する。そこで、金属ナノ粒子と半導体光触媒との間に、前記半導体光触媒を励起する波長の光に対して透明な材料を介在させることで、金属ナノ粒子の酸化を防ぎ、局在表面プラズモン光を維持することができる。従って、本発明の光触媒構造体は、上記構成とすることで、半導体光触媒の触媒効率を飛躍的かつ安定的に向上させることができる。
前記透明な材料を介在させない場合、金属ナノ粒子は容易に酸化してしまい、局在表面プラズモン光を生じなくなるため、触媒効率を安定的に向上させることはできない。
【0012】
本発明の光触媒構造体においては、前記金属ナノ粒子は、前記半導体光触媒の反応表面に存在しないことが好ましい。即ち、前記金属ナノ粒子は、前記半導体光触媒中に内包されていることが好ましい。このように構成することで、半導体光触媒の反応表面の一部が金属ナノ粒子によって遮られることがなくなり、光の利用効率がさらに向上し、触媒効率がさらに向上する。
【0013】
本発明の光触媒構造体の形態としては特に限定はないが、例えば、以下2つの実施形態が好適である。なお、以下において、「半導体光触媒を励起する波長の光に対して透明な材料」を、単に「透明材料」ということがある。
【0014】
本発明の光触媒構造体の第1の実施形態は、基材上に半導体光触媒からなる薄膜を設け、該薄膜中に金属ナノ粒子を内包させ、前記金属ナノ粒子と前記薄膜との界面の一部又は全部に、透明材料を介在させる形態である。前記第1の形態の中でも、前記透明材料が、前記金属ナノ粒子の少なくとも1部を覆うようにして基材上に形成された薄膜であり、前記半導体光触媒が、前記透明な材料からなる薄膜上に形成された薄膜である形態がより好ましい。
【0015】
図1(a)、(b)は、いずれも前記第1の実施形態を模式的に表した断面図である。
図1(a)では、基材10上に金属ナノ粒子12が存在し、該金属ナノ粒子12を覆うようにして基材上に透明材料14が形成され、透明材料14上に半導体光触媒16が形成されている。なお、図1は構造をわかりやすくするために、金属ナノ粒子12を半球で表し、透明材料14を均一な膜厚の薄膜として表しているが、第1の実施形態における金属ナノ粒子の形状や透明材料の形状が、図1に示した金属ナノ粒子の形状や透明材料の形状に限定されるわけではない。
図1(b)では、基材10上に半導体光触媒16が形成され、透明材料14で覆われた金属ナノ粒子12が内包されている。
【0016】
本発明による効果をより効果的に得る観点からは、前記第1の実施形態においては、以下の条件を満たすことが好ましい。
即ち、半導体光触媒の膜厚は10〜1000nmが好ましく、50〜150nmがより好ましい。透明材料の膜厚(基材上の厚み)は、100nm以下が好ましく、5〜50nmがより好ましい。透明材料の厚み(金属ナノ粒子上の厚み)としては、2〜50nmが好ましく、2〜9nmがより好ましい。金属ナノ粒子の粒径としては、5〜100nmが好ましく、10〜100nmがより好ましい。
また、基材10としては、
ガラス、金属、プラスチック、セラミックス、半導体、結晶、木材など、種々の材料を特に制限なく用いることができる。
【0017】
本発明の光触媒構造体の第2の実施形態は、粒子状の半導体光触媒が、一部又は全部が透明材料で覆われた金属ナノ粒子を内包する形態である。
図2は、第2の実施形態を模式的に表した断面図である。
図2では、粒子状の半導体光触媒16中に、透明材料14で覆われた金属ナノ粒子12が内包されている。
【0018】
本発明による効果をより効果的に得る観点からは、前記第2の実施形態においては、以下の条件を満たすことが好ましい。
半導体光触媒の粒径としては、20〜2000nmが好ましく、100〜300nmがより好ましい。金属ナノ粒子上の透明材料の厚みとしては、200nm以下が好ましく20〜100nmがより好ましい。金属ナノ粒子の数平均粒径としては、5〜300nmが好ましく、5〜100nmがより好ましい。
【0019】
次に、本発明の光触媒構造体を構成する各成分について説明する。
<金属ナノ粒子>
本発明の光触媒構造体は、金属ナノ粒子を少なくとも1種含む。
前記金属ナノ粒子としては特に限定はないが、局在表面プラズモン光をより効果的に利用する観点からは、銀、金、銅、若しくはアルミニウム、又はこれらを含むあらゆる合金を含むことが好ましく、銀を含むことがより好ましい。ここで、銀を含む金属ナノ粒子としては、銀原子のみから構成される銀ナノ粒子であっても、銀原子と他の金属原子とから構成される銀合金ナノ粒子であってもよい。
【0020】
<半導体光触媒>
本発明の光触媒構造体は、半導体光触媒を少なくとも1種含む。
前記半導体光触媒としては特に限定はないが、例えば、酸化チタン、窒素ドープ酸化チタン、炭素ドープ酸化チタン、硫黄ドープ酸化チタンを用いることができる。中でも、触媒効率向上の観点からは、酸化チタンが好ましい。
【0021】
また、局在表面プラズモン光の効率的な利用の観点からは、金属ナノ粒子の局在表面プラズモン光の波長と、半導体光触媒を励起する光の波長とが近くなるように(好ましくは、吸収帯の重なりが50%以上となるように、金属ナノ粒子と半導体光触媒との組み合わせを選択することが好ましい。
上記観点からは、本発明における好ましい組み合わせとしては、銀ナノ粒子と半導体光触媒(例えば、酸化チタン)との組み合わせ、白金または金ナノ粒子と窒素ドープ酸化チタンとの組み合わせ、白金または金ナノ粒子と硫黄ドープ酸化チタンとの組み合わせ、等が挙げられる。
中でも、銀ナノ粒子と酸化チタンとの組み合わせが特に好ましい。
尚、酸化チタンを励起する波長は約380nmである。一方、銀ナノ粒子の局在表面プラズモン光の波長は、半径20nmの銀ナノ粒子では、350〜410nm付近であり、半径50nmの銀ナノ粒子では、350〜550nm付近である。
【0022】
<半導体光触媒を励起する波長の光に対して透明な材料>
本発明の光触媒構造体は、半導体光触媒を励起する波長の光に対して透明な材料(以下、「透明材料」ともいう)を少なくとも1種含む。
ここで、「透明」とは、半導体光触媒を励起する波長の光の透過率が10%以上であることをいう。光の利用効率の観点からは、前記透過率は90%以上がより好ましい。
透明材料としては、特に限定はないが、シリカ(非晶質シリカ等)、公知のプラスチック材料、公知のガラス材料、を用いることができる。
中でも、光の利用効率や金属ナノ粒子の酸化防止の観点からは、非晶質シリカが好ましい。
【0023】
<光触媒構造体の製造方法>
本発明の光触媒構造体の製造方法については、特に限定はないが、例えば、前記第1の形態における光触媒構造体は以下のようにして作製できる。
即ち、基材上に金属ナノ粒子を形成し、基材上の前記銀ナノ粒子が形成された側の面に、前述の透明材料を形成し、形成された透明材料上に半導体光触媒を形成することにより作製できる。
【0024】
前記金属ナノ粒子は、金属薄膜を形成し、形成された金属薄膜を熱処理することにより形成できる。このような金属ナノ粒子の形成方法は、例えば、T.Shima and J.Tominaga, J. Vac. Sci and Technol, A21, 634 (2003).に記載されている。
金属薄膜の形成は、蒸着法、スパッタ法等公知の方法により行うことができる。中でも、金属ナノ粒子のサイズを均一に揃える観点からは、蒸着法が好ましい。
蒸着法の条件としては、金属種により異なるが、真空度3×10−4Pa以下、通電加熱電流50〜100アンペアが好ましい。
前記熱処理の条件としては、金属種により異なるが、200〜1000℃で1〜100分間熱処理することが好ましく、700〜800℃で5〜10分間熱処理することがより好ましい。
【0025】
透明材料の形成は、透明材料の種類により異なるが、スパッタ法、蒸着法、ゾルゲル法、液相析出法等公知の方法により行うことができる。中でも、金属ナノ粒子の酸化防止等の観点からは、スパッタ法が好ましい。
前記スパッタ法の条件としては、金属ナノ粒子の酸化防止等の観点からは、スパッタ電力40〜300Wが好ましく、50〜200Wがより好ましい。
【0026】
半導体光触媒の形成は、半導体光触媒の種類により異なるが、スパッタ法、蒸着法、ゾルゲル法、液相析出法等公知の方法により行うことができる。
粒子状半導体光触媒としては、ゾルゲル法やその他の化学的手法が好ましい。
【0027】
<局在表面プラズモン光、光の利用効率等>
次に、本発明の効果に関連する事項として、局在表面プラズモン光、光の利用効率等について、前記金属ナノ粒子として銀ナノ粒子を、前記半導体光触媒として酸化チタンを、前記透明材料として非晶質シリカを用いた場合を例にとって説明する。
【0028】
(局在表面プラズモン光の電場強度の計算結果)
半径20nmの銀ナノ粒子の周りを厚さ10nmの非晶質シリカ(SiO)でコーティングした構造体1について、前記構造体1から発生する局在表面プラズモン光の電場強度を、Mie散乱理論により計算した。
尚、Mie散乱については、例えば、岩波理化学事典(第五版)、p.1351に詳細に説明されている。
【0029】
図3は、上記で計算された局在表面プラズモンの電場強度の様子を示す図である(計算結果)。
図3中内側の円20は、半径20nmの銀ナノ粒子表面を表し、外側の円22は、厚さ10nmの非晶質シリカの表面を表す。色が薄い程電場強度が強いことを示す(図4、図5においても同じ)。
図3より、銀ナノ粒子表面付近のみならず、非晶質シリカ表面付近にも局在表面プラズモン光が発生することがわかる。
以上の計算結果より、金属ナノ粒子と半導体光触媒との間に透明材料を介在させた場合においても、局在表面プラズモン光を利用できることがわかる。
なお、実際の実験では、金属ナノ粒子と半導体光触媒との間に透明材料を介在させなかった場合は局在表面プラズモン光は認められず、金属ナノ粒子と半導体光触媒との間に透明材料を介在させた場合にのみ局在表面プラズモン光が認められた(後述の実施例2参照)。この原因は、前者の場合、金属ナノ粒子が酸化し、局在表面プラズモン光を有しなくなったためと考えられる。
【0030】
(局在表面プラズモン光の非晶質シリカ膜厚依存性)
図4は、上記構造体1において、非晶質シリカの膜厚を変化させたときの局在表面プラズモン光の波長の変化及び電場強度の変化を示したものである(計算結果)。
図4より、非晶質シリカの厚さが薄いほど、電場強度も強く、また波長も短波長となることがわかる。また、非晶質シリカの厚さを厚くすると、局在表面プラズモン光の波長は410nm付近に収束することがわかる。酸化チタンの触媒活性は波長400nm以下で高くなることが知られていることを考慮すると、例えば、構造体1の構成においては、銀ナノ粒子のコーティング膜である非晶質シリカの厚さは50nm以下であることが好ましい。
【0031】
(局在表面プラズモン光の銀ナノ粒子サイズ依存性)
図5は、上記構造体1の銀ナノ粒子の半径を20nmから50nmに代えた構造体2について、非晶質シリカの膜厚を変化させたときの局在表面プラズモン光の波長の変化及び電場強度の変化を示したものである(計算結果)。
図5より、銀ナノ粒子が半径50nmの場合は、半径20nmの場合と比較して、局在表面プラズモン光の波長が広帯域になることがわかる。該波長は、500nm以上の領域にも達している。
以上の計算結果にみられるように、金属ナノ粒子の半径を調整することで、金属ナノ粒子の局在表面プラズモン光の波長を、共に用いる半導体光触媒の励起波長に合わせることが可能である。例えば、銀ナノ粒子と可視領域に励起波長を有する光触媒との組み合わせの場合は、銀ナノ粒子の半径は20nmより50nmの方が好適であることがわかる。また、銀ナノ粒子と約380nmに励起波長を有する酸化チタンとの組み合わせの場合は、銀ナノ粒子の半径は50nmより20nmの方が好適であることがわかる。
【0032】
(局在表面プラズモン光の銀ナノ粒子形成条件依存性)
次に、以下のようにして実際に銀ナノ粒子を形成し、局在表面プラズモン光の銀ナノ粒子形成条件依存性を調べた。
蒸着法により、基板上に膜厚2.5nm、3.0nm、5.0nm、7.0nm、9.0nm、10.0nm、12.0nm、15.0nmの銀薄膜をそれぞれ形成した。銀薄膜が形成された各基板を800℃で5分間焼成し、各基板上に銀ナノ粒子を形成した。
各膜厚の条件により形成された銀ナノ粒子のそれぞれについて、光吸収スペクトルを測定した。測定結果を図6に示す。
銀膜厚が2.5nmから9.0nmと厚くなるに従い、局在表面プラズモン光のピーク強度が増大していくこと、及び、短波長側にシフトしていくことがわかった。10.0nmより大きくなると、ピーク強度は減少し、長波長側にシフトしていくことがわかった。
以上の結果より、銀ナノ粒子と約380nmに励起波長を有する酸化チタンとの組み合わせの場合は、膜厚10.0nm以下の銀薄膜を用いて銀ナノ粒子を形成することが好ましいことがわかった。
【0033】
(触媒効率の計算)
半径20nmの銀ナノ粒子の周りを厚さ10nmの非晶質シリカ(SiO)でコーティングした構造体1について、銀ナノ粒子の周囲360°方向における局在表面プラズモン光(波長394nm)の強度を計算した。
図7のグラフは、銀ナノ粒子の周り(Inner shell)の電場強度30、及び、非晶質シリカの周り(Outer shell)の電場強度32についての計算結果である。なお、横軸は位置(θ)を示し、縦軸は入射光の電場強度を1としたときの、局在表面プラズモン光の相対的な電場強度(Amplitude enhancement)を示す。
図7より、非晶質シリカの周りでは、最大で約14倍、平均で約10倍に電場強度が増大していることがわかった。また、銀ナノ粒子の周りでは、最大で約24倍、平均で約19倍に電場強度が増大していることがわかった。
以上の結果より、半径20nmの銀ナノ粒子の周りを厚さ10nmの非晶質シリカ(SiO)でコーティングした構造体1を、半導体光触媒に内包させることで、光の利用効率が最大で約14倍、平均で約10倍となり、光触媒が銀ナノ粒子を内包しない場合と比較し、触媒効率を最大で約14倍、平均で約10倍に増大できることがわかった。
【0034】
以上で説明したとおり、本発明の光触媒構造体は、光触媒の触媒効率を飛躍的かつ安定的に向上できる。このため本発明の光触媒構造体は、住宅関連、水処理・土壌関連、空気処理関連、医療関連、電子部品関連、電気製品関連、車両関連、道路関連、農業関連等、様々な産業分野に適用できる。

【実施例】
【0035】
以下、本発明について実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0036】
〔実施例1〕
<光触媒構造体の作製>
(銀ナノ粒子の形成)
まず、非晶質シリカ基板上に、スパッタ法により銀薄膜を形成した。別途、非晶質シリカ基板上に、蒸着法により銀薄膜を形成した。銀薄膜の膜厚は、両者とも2.5nmとした。銀薄膜を形成した非晶質シリカ基板のそれぞれについて、ポータブル電気炉F−B1414型(Barnstead International社製)を用いて、700℃で5分間熱処理(焼成)を行った。前記熱処理後の非晶質シリカ基板のそれぞれについて、銀薄膜形成面側から走査型電子顕微鏡(SEM)観察を行った結果、スパッタ法及び蒸着法のいずれの方法においても銀ナノ粒子を形成できることがわかった。
【0037】
なお、スパッタ法及び蒸着法の詳細な条件は以下の通りである。
〜スパッタ法による銀薄膜形成条件〜
スパッタ装置としては、芝浦メカトロニクス製、機種名:CFS−4EP−LLを用いた。銀薄膜の形成は、ターゲットとして銀を用い、出力50W、真空度0.5Pa、の条件で、アルゴンガス雰囲気で行った。
〜蒸着法による銀薄膜形成条件〜
蒸着装置としては、アールデック社製、機種名:ビームトロンを用いた。銀薄膜の形成は、真空度は3×10−4Pa、通電加熱電流65アンペアの条件で行った。
【0038】
図8(a)は、非晶質シリカ基板上にスパッタ法を用いて銀ナノ粒子を形成した様子を示すSEM像であり、図8(b)は、非晶質シリカ基板上に蒸着法を用いて銀ナノ粒子を形成した様子を示すSEM像である。図8(a)と図8(b)との比較により、スパッタ法(図8(a))と比べて蒸着法(図8(b))の方が、銀ナノ粒子の粒径を均一に揃えることができ(蒸着法の場合の粒径は約10〜20nm)、銀ナノ粒子の面密度を高くすることができることがわかった。
【0039】
(非晶質シリカ膜の形成)
非晶質シリカ基板(以下、単に「基板」ともいう)上に、前記銀ナノ粒子の形成における蒸着法の条件と同様の条件で、蒸着法により、膜厚3.0nm、7.0nm、9.0nm、12.0nmの銀薄膜をそれぞれ形成した。銀薄膜を形成した4種類の基板を、いずれも800℃で5分間熱処理し、熱処理後の各基板上の銀薄膜形成面側に、スパッタ法により下記条件で膜厚40nmの非晶質シリカ膜をそれぞれコーティングした。
【0040】
〜 スパッタ法による非晶質シリカ膜の形成条件 〜
スパッタ装置としては、芝浦メカトロニクス製、機種名:CFS−4EP−LLを用いた。非晶質シリカ膜の形成は、ターゲットとしてSiOを用い、出力50W、真空度0.5Paの条件で、アルゴンガス雰囲気で行った。スパッタを10分間、15分間、20分間行なうと、SiO(非晶質シリカ膜)の厚さはそれぞれ20nm、30nm、40nmとなった。
【0041】
非晶質シリカ膜がコーティングされた各基板について、非晶質シリカ膜形成面側から走査型電子顕微鏡(SEM)観察を行った。図9(a)は、膜厚3.0nmの銀薄膜を形成した場合のSEM像であり、図9(b)は、膜厚7.0nmの銀薄膜を形成した場合のSEM像であり、図10(a)は、膜厚9.0nmの銀薄膜を形成した場合のSEM像であり、図10(b)は、膜厚12.0nmの銀薄膜を形成した場合のSEM像である。
図9(a)、図9(b)、図10(a)、及び図10(b)に示すように、形成した銀薄膜の膜厚が厚いほど、形成された銀ナノ粒子の粒径が大きいことがわかった。
【0042】
(酸化チタン膜の形成)
上記で得られた各基板上の非晶質シリカ膜上に、さらに、ゾルゲル法により下記条件で酸化チタン膜を形成し、光触媒構造体を得た。
【0043】
〜 ゾルゲル法による酸化チタン膜の形成条件 〜
ゾルゲル溶液「ビストレイターH NDH510−C」(日本曹達社製)を原液〜10倍まで酢酸エチルで希釈したものをスピンコートし、所望の膜厚とした。120度で乾燥後、500度、30分で焼成を行った。
【0044】
銀薄膜の膜厚を10.0nmとした以外は上記光触媒構造体の作製と同様にして、別途光触媒構造体を作製し、得られた光触媒構造体について、走査型電子顕微鏡(SEM)による観察を行った。
図11(a)は、光触媒構造体の断面を示すSEM像であり、図11(b)は、光触媒構造体の酸化チタン膜表面を示すSEM像である。
図11(a)より、非晶質シリカ膜54(膜厚40nm)及び酸化チタン膜56(膜厚90nm)の膜中に、粒径約60nmの銀ナノ粒子52が確認できる。なお、図11(a)において、非晶質シリカ基板50と非晶質シリカ膜54との界面は、同質の材料同士の界面であるため明確に確認することはできない。
また、図11(b)中の雲状の白い領域(例えば、領域58)は、酸化チタン膜及び非晶質シリカ膜に覆われた銀ナノ粒子であると考えられる。
【0045】
次に、銀薄膜の膜厚10.0nmの条件で得られた上記光触媒構造体について、非晶質シリカ膜の膜厚40nmを、膜厚20nmに変えたところ、非晶質シリカ膜が銀ナノ粒子を覆うことができず、酸化チタン膜表面に銀が析出してしまった。
【0046】
〔実施例2〕
<光触媒構造体の光吸収スペクトル測定>
基板上に、蒸着法により膜厚10.0nmの銀薄膜を形成し、800℃で5分間熱処理を行って、粒径70nmの銀ナノ粒子を形成した。
前記基板上の銀ナノ粒子形成面側に、スパッタ法により膜厚25nmの非晶質シリカ膜を形成し、形成された非晶質シリカ膜上に、ゾルゲル法により膜厚170nmの酸化チタンを堆積させて、光触媒試料1を作製した。
なお、上記以外の条件については、実施例1の条件と同様である。
光触媒試料1の構造は、酸化チタン膜中に、非晶質シリカでコーティングされた銀ナノ粒子を含む構造(以下、「TiO/SiO/Ag」とも表記する)である。
【0047】
次に、非晶質シリカ膜を形成しなかった以外は上記光触媒試料1の作製と同様にして、比較試料1を作製した。比較試料1の構造は、酸化チタン膜中に、非晶質シリカでコーティングされていない銀ナノ粒子を含む構造(以下、「TiO/Ag」とも表記する)である。
【0048】
また、銀ナノ粒子を形成せず、非晶質シリカ膜も形成しなかった以外は上記光触媒試料1の作製と同様の方法により、比較試料2を作製した。比較試料2の構造は、酸化チタン膜中に銀ナノ粒子を含まない構造(以下、「TiO」とも表記する)である。
【0049】
上記で得られた光触媒試料1、比較試料1、及び比較試料2のそれぞれについて、パーキンエルマー社製 ラムダ900を用いて光吸収スペクトルを測定した。測定結果を図12に示す。
図12のグラフからわかるように、光触媒試料1(「TiO/SiO/Ag」)では、波長420nm付近に局在表面プラズモン光による吸収ピークが観測された。これに対し、比較試料1(「TiO/Ag」)、及び、比較試料2(「TiO」)では、局在表面プラズモン光による吸収ピークは観測されなかった。
光触媒試料1のみで局在表面プラズモン光による吸収ピークがみられる理由は、非晶質シリカで銀ナノ粒子をコーティングすることにより、酸化チタンと銀が接触しなくなり、銀の酸化を防ぐことができたためと考えられる。
【0050】
〔実施例3〕
<触媒効率の評価>
メチレンブルーの除去効率を測定することにより、触媒効率の評価を行った。
(測定試料の作製)
基板上に、蒸着法により膜厚10.0nmの銀薄膜を形成し、800℃5分間熱処理を行って銀ナノ粒子を形成した。次に、前記基板上の銀ナノ粒子形成面側に、スパッタ法により膜厚40nmの非晶質シリカ膜を形成し、形成された非晶質シリカ膜上に、ゾルゲル法により膜厚90nmの酸化チタンを堆積させて、光触媒試料11(「TiO/SiO/Ag」)を作製した。
なお、上記以外の条件については、実施例2の光触媒試料1の作製条件と同様である。
次に、銀ナノ粒子及び非晶質シリカ膜を形成しなかった以外は上記光触媒試料11(「TiO/SiO/Ag」)と同様にして、比較試料11(「TiO」)を作製した。
【0051】
(メチレンブルーの除去効率の測定)
光触媒試料11(「TiO/SiO/Ag」)の酸化チタン膜表面に、波長580nmにおける吸光度が0.17程度となるようにメチレンブルーを吸着させ、光触媒試料11の表面(酸化チタン膜表面)に対してブラックライトを照射した。ブラックライト照射時間を、0〜4.0分間の間で0.5分間刻みで変化させ、各照射時間経過後に照射を止めて、光吸収スペクトルにより波長580nmにおけるメチレンブルーの吸光度Iをそれぞれ測定した。なお、ブラックライト照射直後(各照射時間経過後に照射を止めた直後)はメチレンブルーが褪色して見えるので、上記の測定は、暗所で励起状態にあるメチレンブルーを緩和させた後に行った。
次に、上記各照射時間について、前記吸光度Iの変化率(I−I/I)を求め、メチレンブルーの吸着量の減少率を見積もった。ここで、Iは照射時間0分(即ち、照射なし)のときの吸光度Iを表し、Iは照射時間t経過後の吸光度Iを表す。
前記吸光度Iの変化率(I−I/I)、即ち、メチレンブルーの吸着量の減少率が大きい程、触媒効率に優れていることを示す。
なお、上記測定は、試料中異なる3点(測定点1〜3)についてそれぞれ行った。
【0052】
尚、上記各操作の詳細な条件は以下の通りである。
〜 メチレンブルーの吸着 〜
メチレンブルーは和光純薬製、メチレンブルー三水和物を用いた。
〜 ブラックライト照射 〜
ブラックライトは、ナショナル製、ブラックライトブルー蛍光灯、FL10BL−B、10Wを用いた。このランプの輝度分布は波長360nmにピークを持つ。
【0053】
次に、比較試料11(「TiO」)についても、光触媒試料11(「TiO/SiO/Ag」)と同様の評価を行った。
【0054】
光触媒試料11(「TiO/SiO/Ag」)についての測定結果を図13(a)に、比較試料11(「TiO」)についての測定結果を図13(b)に示す。
図13(a)、(b)のグラフにおいて、横軸はブラックライト照射時間を示し、縦軸は、吸光度Iの前記変化率〔(I−I)/I〕(図13(a)、(b)中では「ΔAbsorbance」と表記する)を示す。グラフの傾きの絶対値が大きい程、メチレンブルーの除去効率(分解効率)に優れ、触媒効率に優れていることを示す。
図13(a)のグラフの傾きを、最小二乗法により求めたところ−2.489×10−3〔1/min〕であり、図13(b)のグラフの傾きを、最小二乗法により求めたところ−5.556×10−4〔1/min〕であった。
図13(a)のグラフの傾きと図13(b)のグラフの傾きを比較することにより、光触媒試料11(「TiO/SiO/Ag」)は、比較試料11(「TiO」)に対し、メチレンブルーの除去効率が約4.5倍であることがわかった。
即ち、前者は後者と比較して触媒効率が約4.5倍優れていることがわかった。
【0055】
〔実施例4〕
<局在表面プラズモン光の非晶質シリカ膜厚依存性>
次に、以下のようにして、局在表面プラズモン光の非晶質シリカ膜厚依存性を調査した。
(測定試料の作製)
実施例1の蒸着法の条件と同様の条件で、基板上に蒸着法により膜厚7.0nmの銀薄膜を形成し、銀薄膜が形成された基板について、800℃で5分間熱処理を行って銀ナノ粒子を形成した。形成された銀ナノ粒子の粒径は約50nmであった。
銀ナノ粒子が形成された基板の銀ナノ粒子形成面側に、スパッタ電力50Wの条件で膜厚8nmの非晶質シリカ膜を形成し、形成された非晶質シリカ膜上に、ゾルゲル法により膜厚70nmの酸化チタン膜を堆積させて、「TiO/SiO/Ag」構造の光触媒試料を作製した。
なお、上記以外の条件については、実施例2の光触媒試料1の作製条件と同様である。
【0056】
次に、非晶質シリカ膜の形成において、スパッタ時間の調整により膜厚を、12nm、16nm、30nmのそれぞれに変えた以外は上記と同様にして、「TiO/SiO/Ag」構造の光触媒試料をそれぞれ作製した。
また、非晶質シリカ膜及び酸化チタン膜を形成しなかった以外は上記と同様にして、比較試料(銀ナノ粒子単体)を作製した。
【0057】
得られた光触媒試料及び比較試料について、パーキンエルマー社製 ラムダ900を用いて光吸収スペクトルの測定を行った。測定結果を図14に示す。図14において、「8nmSiO/Ag」等の表記は、非晶質シリカ膜の膜厚が8nmの光触媒試料(「TiO/SiO/Ag」構造)であることを示す。また、「Ag」の表記は、比較試料(銀ナノ粒子単体)を示す。
【0058】
図14より、非晶質シリカの膜厚が8nm、12nm、16nmの場合は、非晶質シリカの上に酸化チタンを堆積させると、銀ナノ粒子単体の場合に比べ、局在表面プラズモン光の吸収強度が減少してしまうことがわかった。一方、非晶質シリカの膜厚が30nmの場合は、非晶質シリカの上に酸化チタンを堆積させても、銀ナノ粒子単体の場合に比べ、局在表面プラズモン光の吸収強度は減少せず、むしろ増大していた。
以上より、非晶質シリカの膜厚を厚くした方が、銀と酸化チタンとの接触をより有効に妨げることができ、光の利用効率及び触媒効率を向上できることがわかった。
【0059】
〔実施例5〕
<局在表面プラズモン光の非晶質シリカ膜形成条件等依存性>
次に、以下のようにして、局在表面プラズモン光の非晶質シリカ膜形成条件依存性を調査した。
(測定試料の作製)
実施例1の蒸着法の条件と同様の条件で、基板上に蒸着法により膜厚10.0nmの銀薄膜を形成し、銀薄膜が形成された基板について、800℃で5分間熱処理を行って銀ナノ粒子を形成した。形成された銀ナノ粒子の粒径は約70nmであった。
銀ナノ粒子が形成された基板の銀ナノ粒子形成面側に、スパッタ電力200Wの条件で膜厚20nmの非晶質シリカ膜を形成し、形成された非晶質シリカ膜上に、ゾルゲル法により膜厚70nmの酸化チタン膜を堆積させて、「TiO/SiO/Ag」構造の光触媒試料を作製した。
なお、上記以外の条件については、実施例2の光触媒試料1の作製条件と同様である。
【0060】
次に、上記の光触媒試料の作製中、非晶質シリカ膜の形成において、スパッタ電力を50Wに変え、さらにスパッタ時間の調整により膜厚を、16nm、20nm、24nm、30nmのそれぞれの膜厚に変えた以外は上記と同様にして、「TiO/SiO/Ag」構造の光触媒試料をそれぞれ作製した。
また、酸化チタン膜を形成せず、非晶質シリカをスパッタ電力50W、膜厚30nmの条件で形成した以外は上記と同様にして、「SiO/Ag」構造の比較試料を作製した。
【0061】
得られた光触媒試料及び比較試料について、パーキンエルマー社製 ラムダ900を用いて光吸収スペクトルの測定を行った。
測定結果を図15に示す。図15において、「200W、20nm」等の表記は、膜厚20nmの非晶質シリカ膜をスパッタ電力200Wの条件で形成した光触媒試料であることを示す。また、比較試料については、「50W、30nm、TiOなし」と表記する。
【0062】
図15より、スパッタ電力200Wの場合、局在表面プラズモン光の吸収速度が小さくなるのに対し、スパッタ電力50Wの場合、局在表面プラズモン光の吸収速度が大きくなることがわかった。この結果は、スパッタ電力50Wで堆積させた非晶質シリカ膜の方が隔壁として良好であることを意味する。この原因については、低い電力で堆積させた方が非晶質シリカが緻密な膜となり、銀ナノ粒子の酸化をより効果的に抑制できるためと考えられる。
また、非晶質シリカの膜厚を16nm、20nm、24nm、30nmと厚くするにつれて、局在表面プラズモン光の吸収強度が増大することがわかった。このように、実施例4の場合と同様に、非晶質シリカの膜厚を厚くした方が、銀と酸化チタンとの接触をより有効に妨げることができ、光の利用効率及び触媒効率を向上できることがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】(a)、(b)は、本発明の第1の実施形態を模式的に表した断面図である。
【図2】本発明の第2の実施形態を模式的に表した断面図である。
【図3】本発明において、局在表面プラズモン光の電場強度を示す図である。
【図4】本発明において、半径20nmの銀ナノ粒子の局在表面プラズモン光と非晶質シリカ膜厚との関係を示す図である。
【図5】本発明において、半径50nmの銀ナノ粒子の局在表面プラズモン光と非晶質シリカ膜厚との関係を示す図である。
【図6】各形成条件における銀ナノ粒子の光吸収スペクトルである。
【図7】本発明において、銀ナノ粒子の外側及び非晶質シリカの外側における電場強度を示す図である。
【図8】(a)は、スパッタ法を用いて形成された銀ナノ粒子のSEM像であり、(b)は、蒸着法を用いて形成された銀ナノ粒子のSEM像である。
【図9】(a)は、膜厚3.0nmの銀薄膜を形成した場合の非晶質シリカ形成後のSEM像であり、(b)は、膜厚7.0nmの銀薄膜を形成した場合の非晶質シリカ形成後のSEM像である。
【図10】(a)は、膜厚9.0nmの銀薄膜を形成した場合の非晶質シリカ形成後のSEM像であり、(b)は、膜厚12.0nmの銀薄膜を形成した場合の非晶質シリカ形成後のSEM像である。
【図11】(a)は、本発明の一形態についての断面を示すSEM像であり、(b)は、本発明の一形態についての酸化チタン膜表面を示すSEM像である。
【図12】本発明の一形態及び比較試料における光吸収スペクトルである。
【図13】(a)は、本発明の一形態における、触媒効率を示すグラフであり、(b)は、比較試料における触媒効率を示すグラフである。
【図14】本発明の一形態について、局在表面プラズモン光の非晶質シリカ膜厚依存性を示す光吸収スペクトルである。
【図15】本発明の一形態について、局在表面プラズモン光の非晶質シリカ膜形成条件等依存性を示す光吸収スペクトルである。
【符号の説明】
【0064】
10 基材
12 金属ナノ粒子
14 半導体光触媒を励起する波長の光に対して透明な材料(透明材料)
16 半導体光触媒
20 銀ナノ粒子表面を示す円
22 非晶質シリカ表面を示す円
30 銀ナノ粒子の周り(Inner shell)における電場強度
32 非晶質シリカの周り(Outer shell)における電場強度
50 非晶質シリカ基板
52 銀ナノ粒子
54 非晶質シリカ膜
56 酸化チタン膜
58 雲状の白い領域(酸化チタン膜及び非晶質シリカ膜に覆われた銀ナノ粒子)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属ナノ粒子と、半導体光触媒と、前記金属ナノ粒子と前記半導体光触媒との間に介在する、前記半導体光触媒を励起する波長の光に対して透明な材料と、を含むことを特徴とする光触媒構造体。
【請求項2】
前記金属ナノ粒子が、前記半導体光触媒の反応表面に存在しないことを特徴とする請求項1に記載の光触媒構造体。
【請求項3】
前記半導体光触媒が、基材上に形成された薄膜であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の光触媒構造体。
【請求項4】
前記半導体光触媒を励起する波長の光に対して透明な材料が、前記金属ナノ粒子の少なくとも1部を覆うようにして基材上に形成された薄膜であり、前記半導体光触媒が、前記透明な材料からなる薄膜上に形成された薄膜であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の光触媒構造体。
【請求項5】
前記金属ナノ粒子が、銀を含むことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の光触媒構造体。
【請求項6】
前記半導体光触媒が、酸化チタンを含むことを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の光触媒構造体。
【請求項7】
前記半導体光触媒を励起する波長の光に対して透明な材料が、酸化ケイ素を含むことを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の光触媒構造体。

【図1】
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【図2】
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【図6】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−264611(P2008−264611A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−107381(P2007−107381)
【出願日】平成19年4月16日(2007.4.16)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成18年度、経済産業省委託研究「原子力試験研究委託費/高レベル放射性廃棄物の燃料電池への応用に関する研究」産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【出願人】(504137912)国立大学法人 東京大学 (1,942)
【Fターム(参考)】