説明

光触媒活性をもつ塗膜

本発明は、光触媒活性物質として干渉顔料、また所望により赤外線吸収材料を含み、建造物、乗り物、設備、遊歩道などの表面に用いられる光触媒活性をもつ塗膜、このような表面を製造する方法、およびこの塗膜で被覆された物体に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光触媒活性物質として薄片状顔料、好ましくは市販の干渉顔料を含み光触媒活性をもつ、表面用の塗膜、このタイプの塗膜の製造、およびコケ、藻類および他の増殖に対する保護が与えられた表面に関する。
【背景技術】
【0002】
自己洗浄表面は近年重要性を増している。特に自然の表面の自己洗浄作用が発見されて、またいわゆるロータスエフェクト(登録商標)が発明されて以来、自己洗浄性表面の産業上の利用の見込みについて多く研究されてきた。ロータスエフェクト(登録商標)の具体的な応用分野としては、例えば、 屋根瓦、石造建築塗装、ガラスおよび繊維が挙げられ、自己洗浄性と呼ばれる。処理された基材はマイクロないしナノ構造を有する表面をもち、汚れの粒子の付着を最小限に抑えることで雨水で洗い流されることを可能にするものである。これらの構造をもつ表面は近年多くの場合光触媒活性物質と組み合わせることで表面の良好な自己洗浄作用を達成してきた。
【0003】
例えば、二酸化チタンはこの種の光触媒活性を有することで太陽光のもとにおいて、付着した有機物質の分解をもたらすことが知られている。二酸化チタンのこうした光触媒活性は、とりわけ微粒子状の二酸化チタンが白色顔料としてよく使用される有機材料を含む塗料や塗膜にとっては不利であるが、他の用途では望ましい特性として応用されている。
【0004】
例えば欧州特許公報1074525B1には、n型半導体フィルムを下塗層としてその上に光触媒活性をもつフィルムを有し、その光触媒活性フィルムが二酸化チタンからなる、または二酸化チタン粒子を含む、ガラス基材について開示されている。一次層におけるエネルギーバンドギャップは光触媒活性をもつフィルムにおけるエネルギーバンドギャップよりも大きくなければならない。このようにして、正孔/電子ペアの再結合時間が長くなり、それにより光触媒活性が改善されるものと考えられる。下塗層と光触媒活性をもつ層のいずれもがスパッタリング法により成膜される。
【0005】
国際特許出願WO2004/005577とWO2005/105304には、光触媒活性をもつTiO2粒子を含む光触媒層を有し、TiO2の分布が傾斜していて、粒子がその光触媒層の表面に集中している基材について開示されている。使用されるTiO2はゾル・ゲル法により得られ、好ましくはナノスケールの形態にある、すなわちナノメートル領域内に平均粒径を有する。ドープされた二酸化チタン粒子を使用するのが好ましい。光触媒層は所望の基材上に塗布され、適度の熱を加えることで乾燥される。
【0006】
ドイツ特許DE10158433B4では多孔性の無機または無機/有機物質の下塗層からなり、その上に光触媒活性をもつ物質を含む個々のナノ粒子が互いに分離した状態で位置しているような光触媒活性をもつ塗膜が開示されている。ここでナノ粒子は二酸化チタンからなっていてよい。
【0007】
欧州特許公報EP1404793B1では、パーオキソ修飾された二酸化チタンおよび増感剤を含んでもよい液体光触媒組成物が開示され、ここで増感剤は修飾された酸化チタンの光触媒活性の改善を目的とし、可視・紫外または赤外光を吸収するものである。ここで使用される増感剤は水溶性染料であり、特にルテニウム錯体である。増感剤は光に曝されることで分解し、この方法で形成された自由電子は光触媒物質の伝導バンドへと輸送されることで光触媒活性を増すといわれている。この組成物は表面の一時的塗膜として使用でき、例えば衛生分野において、次回の洗浄までの期間を延長できる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記塗膜に一般的な特徴は、光触媒活性物質として使用されるナノ粒子材料を複雑な被覆プロセスで塗布する必要があり、および/または短期間の耐久力しかない薄いフィルムしか貼れず、これらは天候の影響を頻繁かつ強く受ける建造物などの表面の長期保護には適切でないことである。さらに、非常に高度の天候暴露、例えば比較的寒いため特に増殖の影響を受けやすい建造物の北側などの表面上においてコケ増殖または他の増殖を長期にわたって防止するために効果的に使用できる塗膜についての開示はこれまでない。
【0009】
その上、微粒子状の二酸化チタンは粒径にかかわりなく凝集しやすく、これは粒子の処理された基材の表面上に一様な分布と、それゆえ表面全体に一様に作用するその光触媒活性が使用時には妨げられることを意味する。
【0010】
もしTiO2ナノ粒子を光触媒活性物質として使用するのなら、製造者および使用者において関連して起こりうるリスクも過小評価してはならない。その間、ナノ粒子(状)の二酸化チタンはヒトの肺から、および皮膚や消化管から吸収される可能性があり、結果としてそこで蓄積する可能性がある。特にすべてのタイプの建築部材の外表面に塗布する場合、ナノ粒子の相当な部分の地下水への移動も無視できない。実際のリスク見込みについての詳細な調査は未だ実行できていないとはいえ、TiO2ナノ粒子の利用を避けることは、製造者と利用者にとっての見込まれる健康リスクを減らすことを意味している。従って、ナノ粒子材料に基づいていないが効能の良い光触媒活性をもつ塗膜が提供できることが望まれていた。
【0011】
さらに、建築部材、被覆要素および他の屋外領域用の物品は保護塗装層で被覆することができることが知られている。これらは一般にすべてのタイプの着色顔料を含み、また、特別な効果を達成するためには、真珠光沢効果と角度によって揺らめく色効果のいずれをももたらす干渉顔料をも含んでよい。ある干渉顔料をこの種の屋外の塗膜中の光触媒活性物質として使用することはこれまでに開示されていない。
【0012】
本発明の目的は、特に屋外設置物用の光触媒活性をもつ塗膜であって、一般にすぐに入手できる成分を有し、広範な温度範囲にわたって良好な光触媒活性を伴って経済的に有利に使用でき、所望により同時に塗布された表面の色特性を改善するために使用され、また、ナノ粒子状の光触媒活性物質を含まない塗膜を提供することにある。
【0013】
本発明のさらなる目的は、この種の塗膜の製造方法を提供することにある。
【0014】
加えて本発明の目的は、光触媒活性をもつ表面を提供することにある。
【0015】
今まさに二酸化チタンの層で被覆されている薄片状基材からなる干渉顔料が塗膜中の光触媒活性物質として非常に適切であることが見出された。
【課題を解決するための手段】
【0016】
従って本発明は、薄片状の基材を基礎とし、二酸化チタンの層で被覆された干渉顔料を光触媒活性物質として含む、光触媒活性をもつ塗膜に関する。
【0017】
本発明はまた、表面を光触媒活性物質としての、二酸化チタンの層および1種以上の適切なバインダーさらに所望により溶媒および/またはさらなる補助剤および/または添加剤で被覆されている薄片状の基材を基礎とする干渉顔料を含む塗料で覆い、このようにして得られた塗膜を放置して乾燥させおよび/または硬化させる、光触媒活性をもつ塗膜の製造方法に関する。
【0018】
本発明はさらに、表面が1種以上の適切なバインダーさらに所望により溶媒および/またはさらなる補助剤および/または添加剤からなる塗料で覆われた光触媒活性をもつ塗膜の製造方法に関し、このようにして得られた塗膜は、湿潤状態でブロンズィング法により、二酸化チタンの層で被覆されている薄片状の基材を基礎とする干渉顔料で被覆され、さらに続いて放置して乾燥および/または硬化させる。
【0019】
加えて本発明は、1種以上のバインダーと、光触媒活性物質としての二酸化チタンの層で被覆されている薄片状の基材を基礎とする干渉顔料と、所望により溶媒および所望によりさらなる補助剤および/または添加剤とを含む、光触媒活性をもつ塗料に関する。
【0020】
加えて本発明は、上述した塗膜を有する光触媒活性をもつ表面に関する。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明で光触媒物質として使用される干渉顔料は、二酸化チタンの層で被覆されている薄片状の基材を有する干渉顔料である。
【0022】
これらは好ましくは両面において二酸化チタンの層で被覆されている薄片状の基材からなる市販の干渉顔料であり、特に全部の面が二酸化チタンの層で被覆され(覆われ)ている干渉顔料である。
【0023】
本発明の目的のために適切な薄片状の基材としては、例えば、薄片状の天然もしくは合成雲母、カオリン、タルク、他のフィロケイ酸塩、SiO2、ガラス、ホウケイ酸塩、Al23、金属酸化物、金属、あるいは金属酸化物、金属酸化物水和物、金属亜酸化物、金属フッ化物、金属窒化物、金属オキシナイトライドまたはそれらの物質の混合物の1つ以上の層で被覆された薄片状の天然もしくは合成雲母、カオリン、タルク、他のフィロケイ酸塩、SiO2、ガラス、ホウケイ酸塩、Al23、金属酸化物または金属が挙げられる。
【0024】
これらの基材のサイズ自体は決定的なものではない。この基材は一般に厚さが0.01〜5μmであり、特に0.05〜4.5μmである。長さと幅の寸法は通常1〜250μm、好ましくは2〜200μm、特に2〜100μmである。これらは一般にアスペクト比(直径の粒厚に対する割合)が2:1〜25,000:1であり、特に3:1〜2000:1である。
【0025】
薄片状の天然雲母例えば白雲母、合成雲母、薄片状SiO2およびガラスフレークが特に適切であることが判明している。
【0026】
もし前記干渉顔料の光触媒特性に加えてその色特性すなわちその干渉色を活用することを意図するならば、それらの加わった塗料、および特に後者で製造され追加の色彩効果をもつ塗膜を提供するためには、前記原料の薄片状担体を、金属酸化物、金属酸化物水和物、金属亜酸化物、金属フッ化物、金属窒化物、金属オキシナイトライドまたはそれらの物質の混合物の1つ以上の層で被覆したものを基材として使用するのが特に有利である。
【0027】
この金属酸化物、金属酸化物水和物、金属亜酸化物、金属フッ化物、金属窒化物、金属オキシナイトライドの層またはそれらの物質の混合物は低い屈折率(屈折率<1.8)または高い屈折率(屈折率≧1.8)をとりうる。適切な金属酸化物および金属酸化物水和物は、層状に塗布できるこの種の一般的な化合物すべてであり、例えば、酸化アルミニウム、酸化アルミニウム水和物、酸化ケイ素、酸化ケイ素水和物、酸化鉄、酸化鉄水和物、酸化スズ、酸化セリウム、酸化亜鉛、 酸化ジルコニウム、酸化クロム、酸化チタン、特に二酸化チタン、二酸化チタン水和物など、およびこれらの混合相、例えばイルメナイトまたは擬板チタン石のようなものが挙げられる。使用可能な金属亜酸化物としては、例えば亜酸化チタンが挙げられる。適切な金属フッ化物としては、例えばフッ化マグネシウムが挙げられる。使用可能な金属窒化物または金属オキシナイトライドとしては、金属チタン、ジルコニウムおよび/またはタンタルの窒化物またはオキシナイトライドが挙げられる。薄片状支持材は好ましくは金属酸化物、金属フッ化物および/または金属酸化物水和物の層、また特に非常に好ましくは金属酸化物および金属酸化物水和物の層で被覆されている。上に掲げた材料が低屈折率材料として適切であること、また高屈折率材料として適切であることは当業者に公知である。好ましい高屈折率材料が例えばTiO2である一方、低屈折率材料としては好ましくはSiO2が使用される。
【0028】
薄片状支持材に塗布される二酸化チタン層はまた、特に支持材の両面または全面に塗布される場合、それぞれについて前記二酸化チタン層の異なった厚みを選択すれば、こうして調製された干渉顔料の異なった干渉色が得られる。しかしながら、例えば、カラーフロップ効果は、所望ならば干渉顔料の多層構造によってより良好に達成されるが、この場合屈折率の高い層と低い層が好ましくは交互に薄片状支持材上にあり、高屈折率層が一般に顔料の最外層を形成している。
【0029】
とはいえ、本発明における干渉顔料の干渉効果は、干渉顔料の光触媒効果の他に干渉色効果が望まれた場合のみ、その効果が発揮されるものである。それゆえ、干渉顔料のそれ自体公知である干渉効果についてはここではこれ以上言及しない。加えて、もしその必要があれば、支持材上の単層または多層の塗膜の層の厚さとして特定の値を選択することで顔料の干渉特性を事実上完全になくすことも可能である。
【0030】
その代わり、本発明の実現可能性のためには、干渉顔料が、前述した基材から選択された薄片状の基材上に塗布された二酸化チタンの層を有することが重要である。
【0031】
特定の色彩効果を生み出すには、上記様々な基材の混合物を使用することも有利でありうる。ここでは基材そのものを混合した後に続いてTiO2で被覆しても、あるいは異なる基材の各々をTiO2で被覆した後に続いて混合してもよい。
【0032】
前記二酸化チタン層は、好ましくは完全にあるいは実質的に完全に温度変化に対して安定な基材を覆っている。
【0033】
前記二酸化チタン層の厚さは一般的に1〜400nm、好ましくは5〜250nmそして特に10〜200nmである。
【0034】
もし他の金属酸化物層等が前記薄片状支持材の上にすでにある場合は、これらの層も薄片状支持材の両面に塗布されているか、もしくは完全に覆っているかのいずれかが好ましい。これらの層の厚さは、それらの屈折率にかかわりなく、一般に2〜350nmであり、所望の色彩効果によって選択される。
【0035】
上述の注釈によれば、前記二酸化チタンの層は一般に干渉顔料の最外層または干渉顔料の最外部の無機層である。
【0036】
本発明の目的のためには、二酸化チタンは結晶形態の純粋な二酸化チタンと、様々な割合の水を含む二酸化チタン水和物の双方を意味する。これは、湿式化学法による干渉顔料製造方法においてとりわけ一般的なのが、酸化チタン水和物を特に無機金属塩の加水分解により薄片状の基材上に沈殿させ、続いて焼成工程によって本質的に二酸化チタンへと変換させる方法であることによる。結晶二酸化チタンへの変換が不十分な場合もここに含むことを意図している。
【0037】
前記干渉顔料中の前記二酸化チタンは、好ましくはルチル型であり、あるいは少なくとも主に、すなわちTiO2の全量に対するルチル型の割合が50重量%より多く、好ましくは60重量%より多く、特に70重量%より多い。
【0038】
しかしながら、前記二酸化チタンはアナターゼ型であっても、または少なくとも主にアナターゼ型からなっていてもよい。
【0039】
天然雲母の基層と、その上に位置するアナターゼまたはルチル型、あるいはアナターゼとルチル型の混合である二酸化チタンの層からなる干渉顔料を使用するのが好ましい。ここで基材は少なくとも1つの面、しかし好ましくは両方の面が前記二酸化チタン層で被覆され、特に完全にもしくは少なくとも実質的に完全に前記二酸化チタン層で覆われている。
【0040】
この種の顔料は、例えばイリオディン(登録商標)100およびイリオディン(登録商標)103の名称でメルク社から製品として市販されている。これらは透明であり、銀色の感じを持つ塗膜を提供する。前記二酸化チタン層の厚みを変えることで他の色を出すことも可能である。
【0041】
本発明の特に好ましい実施形態では、天然雲母と、その上に位置するルチル型二酸化チタンの層からなる干渉顔料が使用される。
【0042】
公知の従来技術では、高い光触媒活性をもつといわれる純粋なアナターゼ型または少なくとも主にアナターゼ型の微粒子状の二酸化チタンが使用されているが、これに反して、驚くべきことに、本発明の二酸化チタン層を有する干渉顔料を使用することで、その表面にある二酸化チタンが完全にあるいは支配的に、もしくは高い割合でルチル型であったとしても、干渉顔料が十分に高い光触媒活性を有することが見出された。焼成した干渉顔料が一般に用いられるため、顔料調製中に高い割合でルチル型が形成されるのは避けられない。これはルチル型の形成が一般に700〜750℃で始まり、干渉顔料は標準的には800℃より高い温度で、特に900℃より高い温度で、好ましくは950℃より高い温度で焼成されるからである。
【0043】
この干渉顔料の光触媒活性は、そのサイズおよび上にあるTiO2層の小ささを考えてもむしろ驚くべきものである。なぜならばこの点における優れた効果は、文献の記載からは細かく分割された、特にナノスケールのTiO2粒子と関連するとされているからである。従って、デグサ社のナノ粒子状の製品エアロキサイド(登録商標)TiO2P25はアナターゼ/ルチル比が80:20であるが、その良好な光触媒活性については従来技術において公知である。
【0044】
前記二酸化チタン層は、有機または無機金属塩からの湿式化学法、ゾル・ゲル法、CVDおよび/またはPVD法により薄片状の基材に塗布することができる。
【0045】
塗布は好ましくは湿式化学法、特に無機出発物質を用いた湿式化学法により行われる。
【0046】
前記方法は、前記二酸化チタン層の下にあり、また支持材とともに薄片状基材を形成する単層または複層の支持材へ塗布にも用いられる。それらの組成については既に述べた通りである。この種の方法自体は公知であり、従来技術において詳細に述べられてきた。
【0047】
金属酸化物層は好ましくは真珠光沢顔料の塗布のために開発されたコーティング法により行なわれるが、この方法は、例えばDE1467468、DE1959998、DE2009566、DE2214545、DE2215191、DE2244298、DE2313331、DE1522572、DE3137808、DE3137809、DE3151343、DE3151354、DE3151355、DE3211602、DE3235017に、あるいは当業者に公知である他の特許文献および他の刊行物に記載されている。
【0048】
液状塗料の場合、基材粒子を水中に懸濁させて、1種以上の加水分解型の、特に無機の金属塩(前記二酸化チタン層の塗布のためには例えば適切な無機チタン塩、例えば四塩化チタン)と、加水分解に適しかつ、金属酸化物または金属酸化物水和物が2次沈殿を起こすことなく直接薄片上に沈殿するように選択されたpHで混合される。このpHは通常塩基および/または酸の同時測定添加により一定に保たれる。顔料を続いて分離し、洗浄し、一般的に50〜150℃で6〜18時間乾燥し、0.5〜3時間焼成されるが、ここで焼成温度は各々の場合に存在する塗膜に対して最適化することができる。一般的に、焼成温度は500℃と1200℃の間、好ましくは600℃と1000℃の間、特に750℃と950℃の間である。
【0049】
所望により、顔料は各々の塗膜の塗布後に分離し、乾燥および所望により焼成した上でさらなる層を沈殿させるために再懸濁させることができる。
【0050】
SiO2層を基材に塗布する場合、これらは一般的に適切なpHのもとでカリウムもしくはナトリウムの水ガラス溶液を添加することで沈殿する。しかしながら、ここでは他の塗布方法も同様に適切であり、例えば有機ケイ素化合物からの塗布またはゾル・ゲル法による塗布などが挙げられる。
【0051】
さらに、気相塗布法を用いて流動層反応器中で塗布を行うこともでき、ここでは欧州特許EP0045851およびEP0106235において真珠光沢顔料の調製方法として提案されているものをそれぞれ用いることができる。
【0052】
本発明によれば、基材が前記さまざまな材料で被覆され、前記二酸化チタンの層ができ上がった顔料の最外層または最外部の無機被覆になるようにした干渉顔料が用いられる。
【0053】
本発明の単層からなる光触媒活性をもつ塗膜については、使用される干渉顔料は、干渉顔料のいわゆる葉状効果、すなわち塗膜の表面におけるその浮遊と顔料薄片の平行配向が、まだ乾燥もしくは硬化していない塗料中で起こりうるように有利に表面修飾されているべきである。干渉顔料の薄片状形態は、滑らかで実質上平らな塗膜の表面形成をもたらし、塗料中の干渉顔料が比較的低濃度であるとしても総表面積に対して高い割合の領域が干渉顔料で被覆され、それにより表面において事実上完全な光触媒活性をもつTiO2層を有している。
【0054】
この葉状効果は、前記薄片状干渉顔料が周囲の媒質中で高い表面張力を有しているときのみ起きる。この高い表面張力は様々な表面修飾剤により発生させることができる。表面修飾剤の種類は顔料の周囲の媒質(バインダー、溶媒および/または添加剤ならびにさらなる添加剤)に依存する。したがって、疎水性効果を有する表面修飾剤が親水性媒質中で使用される傾向があるのに対し、親水性効果を有する表面修飾剤は疎水性媒質中で使用される傾向がある。
【0055】
本発明による光触媒活性をもつ塗膜が好ましくは従来のコーティング法で主に親水性、すなわち水を引きつける性質をもつ媒質で使用することを目的としているため、使用される表面修飾剤は好ましくは疎水性、すなわち水をはねつける作用を有する物質である。
【0056】
これらの物質は干渉顔料の表面上に存在する反応基(例えばOH基)と結合または反応する1つ以上の官能基を含む。さらに、これらは疎水基を少なくとも1つ含む。
【0057】
特に、加水分解性シラン、カルボン酸、カルボン酸ハロゲン化物、カルボン酸エステルおよびカルボン酸無水物が、本発明で使用される干渉顔料の表面修飾にとって適切であることが判明している。
【0058】
特に好ましいのは、疎水基として長鎖脂肪族炭化水素基を含み、フッ素原子を含んでいてもよい、カルボン酸、カルボン酸ハロゲン化物、カルボン酸エステルおよびカルボン酸無水物を使用することである。3〜30個の炭素原子を有するアルキル基、および特に12個以上の炭素原子を有する脂肪酸基がここでは好ましい。ステアリン酸、ヘプタデカフルオロノナン酸、ヘプタフルオロブチリルクロリド、塩化ヘキサノイル、メチルヘキサノエート、メチルパーフルオロヘプタノエート、パーフルオロ無水オクタン酸または無水ヘキサン酸が具体例として挙げられる。特に好ましいのはステアリン酸を使用することである。
【0059】
使用される加水分解性シランは非加水分解性の疎水基を少なくとも1つ含むものである。ここでも、使用される疎水基は好ましくは長鎖脂肪族炭化水素基であり、フッ素原子を含んでいてもよい、しかしこれらに限定されるものではない。ヘキサデシルトリメトキシシラン、ヘキサデシルトリエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ドデシルトリエトキシシランおよびプロピルトリメトキシシランが具体例として挙げられ、そのうちメチルトリエトキシシランおよびヘキサデシルトリエトキシシランが好ましい。
【0060】
凝集していない状態で干渉顔料の表面に化学的に結合する少量のポリマー粒子も、干渉顔料の表面修飾のために用いることが可能である。これらのポリマー粒子は好ましくはカルボン酸タイプのエチレン結合をもつ不飽和樹脂のコロイド状の細かく砕かれた粒子である。これらは一般的に干渉顔料に対する割合で0.1〜20重量%存在し、大きさは一般的に1000nm以下で分子量は10,000〜3,000,000である。このポリマー粒子は、構成モノマーとして、エチレン結合をもつ不飽和のカルボン酸塩、エチレン結合をもつ不飽和のカルボン酸またはこの種のカルボキシレートを含む1種以上の要素を含み、一般的にこれらのモノマーのホモポリマーまたはこれらの化合物と他のエチレン結合をもつ不飽和のモノマーとのコポリマーである。適切なモノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸およびその無水物、フマル酸ならびにクロトン酸が挙げられるが、その他に芳香族カルボン酸など、およびそれらの塩およびエステルなども挙げられる。
【0061】
このように表面修飾されている干渉顔料は、特に有機媒体中で使用するのに適し、例えば印刷用インクおよび塗料中で頻繁に使用される。これらは、例えば、様々な種類のポリエステルアクリレート樹脂、ポリウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、アクリルメラミン樹脂および芳香族溶媒、様々な種類の天然油脂である。これらの媒質中では、特に非常に多種多様な印刷およびコーティングの方法で使用される場合、この表面修飾されている干渉顔料は好ましくはまだ湿っている被覆の表面に平行に配向する、すなわち前記葉状効果を示す。
【0062】
本発明の特に好ましい実施形態では、光触媒活性をもつ塗膜はさらに赤外線吸収材料を含む。この材料は好ましくは微粒子状の形態である。ここで粒子の平均粒径は広い範囲内で変えることができ、いかなる場合にも塗膜の層の厚さまたは他の要求に合わせることができる。一般に、赤外線吸収材料の平均粒径は0.001〜100μm、好ましくは0.01〜50μmそして特に0.01〜30μmである。
【0063】
赤外線吸収材料は好ましくは以下の化合物から選択される:LaB6、CeB6、SmB6、YB6、Mo25、SiB6、SiB4、ZrB2、TiB2、VB2、CrB2、アンチモンをドープした酸化スズ、カーボンブラック、グラファイトまたはB4C、あるいはこれらの化合物の2種以上の混合物。特に好ましいのはLaB6およびアンチモンをドープした酸化スズである。これらの材料は市販され自由に入手できる。したがって、例えば、六ホウ化ランタンはシュタルク社(ゴスラー)から発売され、また、アンチモンをドープした酸化スズはミナテック(登録商標)A‐IR230の商品名でメルク社(ダルムシュタット)から販売されている。
【0064】
自然界で知られていることであるが、植物、例えば樹木の北側は、例えば、地衣類やコケのようなものの増殖により、比較的温暖な東、南および西側に比べてより広い部分が覆われている。似たような影響が、厳しい気象条件に曝される建造物およびあらゆる屋外設置物においても観察される。本発明による塗膜中の赤外線吸収材料は太陽光の成分である熱放射を吸収することで塗膜の平均温度を上昇させることを担保する。これにより表面がコケまたは他の増殖により覆われる傾向は少なくなり、さらに使用されている干渉顔料の光触媒活性は、比較的寒冷な屋外設置物の北側においてさえも十分に高く、それにより表面上における有機物質ひいてはコケ、藻類または他の増殖に対する長期保護もしくは堆積の大幅な抑制をもたらす。
【0065】
本発明の光触媒活性をもつ塗膜は単層または多層を有する。塗膜の層全体の厚さは一般的に約0.1μm〜約1000μmもの広い範囲で変化させることができ、好ましくは0.5〜100μmそして特に0.6〜20μmの範囲である。層厚さが1000μmを超える領域でも一般的には同様に適切であるが、このように層厚さを増しても前記層厚さ領域と比べて効果が増大しないため不経済である。
【0066】
塗膜が単層の場合、干渉顔料は好ましくは塗膜の表面に位置する。単層の塗布においてこれを実現するには、この場合の干渉顔料は理想的には前記有機表面修飾のうち1つを有する。これにより顔料は塗料中に均質には分布せず、塗料がまだ湿潤した状態において塗布した層の表面に浮かび、表面に平行に配向する。このようにして、塗料中の干渉顔料が比較的低濃度であっても塗膜の表面の大部分が干渉顔料で被覆されるような滑らかな表面の形成が行われる。これに対して、干渉顔料の色彩効果が前面に出てくる従来の塗膜においては、より均一な色彩効果のために塗料中の干渉顔料が均一に分布することが一般に望まれる。
【0067】
他の塗料の固形材料、すなわち、例えば前記赤外線吸収材料が存在する場合、またはバインダーおよびいかなる補助剤および添加剤が存在する場合もそれらについては、対照的に好ましくは単層被覆中で均一な分布をもつ。
【0068】
本発明の光触媒活性をもつ塗膜が多層構造を有する場合、干渉顔料は少なくともこの多層被覆の最上部の、最外層に位置する。
【0069】
第一の実施形態においては、干渉顔料は、単層被覆についての記載と同様に最外層の表面に位置する。下位の層は最外層と同じ原料からなっていても異なっていてもよい。
【0070】
好ましい第2の実施形態においてはこのような干渉顔料が最上部の層を形成する。この目的のために、前記干渉顔料は、バインダーを含み、さらに溶媒、赤外線吸収材料、前記光触媒活性をもつ干渉顔料および所望によりさらなる補助剤および/または添加剤を含んでもよい下塗層に、事実上完全に干渉顔料からなるそれ自身の層を形成することができるように、その表面がまだ湿潤した状態の時にいわゆるブロンズィング法を用いて塗布される。下塗層の乾燥または硬化の後、2層構造が形成されるが、その外側の層は本質的に干渉顔料からなる。さらに所望により異なる組成の追加の層を、下塗層の下で処理される表面の上に設けてもよい。事実上完全に干渉顔料からなる最外層の層厚は顔料の厚さに依存するものの、ここではナノメートル領域内に保つことが可能である。一般に、この層により形成される全層厚さは割合から約0.1〜約20μmである。
【0071】
光触媒活性をもつ干渉顔料を、ブロンズィング法で事実上純粋な顔料層へと塗布するのでなく、代わりに塗料の中に混合する場合、単層被覆または多層被覆の少なくとも最外層は、塗膜の乾燥重量に対して1〜80重量%、特に5〜50重量%の干渉顔料を含む。
【0072】
赤外線吸収材料が単層あるいは多層被覆中に存在する場合、それらは単層被覆または多層被覆中の少なくとも1つのバインダーを含む層の中に、それぞれの層の乾燥重量に対して1〜80重量%、特に5〜50重量%存在する。
【0073】
本発明は光触媒活性をもつ塗膜の製造方法にも関する。
【0074】
第一の実施形態は、表面を光触媒活性物質としての、二酸化チタンの層および1種以上の適切なバインダーさらに所望により溶媒および/またはさらなる補助剤および/または添加剤で被覆されている薄片状の基材を基礎とする干渉顔料を含む塗料で覆い、このように塗布された塗膜を放置して乾燥させおよび/または硬化させる方法に関する。
【0075】
この方法を用いて、単層のみならず多層被覆をも製造することができる。ここでは、少なくとも多層系の最外層または単層被覆を製造するために用いられる塗料中の光触媒活性をもつ干渉顔料にとっては、まだ湿潤した塗料の表面に浮遊して堆積し、その後塗膜を放置して乾燥させおよび/または硬化させる前に表面に実質的に平行に配向することができるように、前記のように表面修飾されているのが有利である。
【0076】
外側に光触媒活性をもつ干渉顔料の外表面に位置する表面修飾剤は、続いて適切な機械的もしくは化学的手段を用いて除去してもよいが、干渉顔料の光触媒作用を利用してもよく、この表面修飾剤が有機性のものであれば干渉顔料の光触媒活性により少しずつ分解され、これにより干渉顔料の光触媒活性が、外部から作用する有機物質を抑制することをも可能にする。表面修飾剤を前もって除去しておけば、外部から作用する有機物質を抑制する光触媒活性はより迅速に有効化する。
【0077】
特に好ましい実施形態では、塗料はさらに赤外線吸収材料、特に既に前に述べた材料を含む。
【0078】
第二の実施形態では、この光触媒活性をもつ塗膜の製造方法は、表面が1種以上の適切なバインダーさらに所望により溶媒および/またはさらなる補助剤および添加剤からなる塗料で覆われ、このようにして得られた塗膜が、湿潤状態でブロンズィング法により、二酸化チタンの層で被覆されている薄片状の基材を基礎とする干渉顔料で被覆され、さらに続いて放置して乾燥および/または硬化させる方法である。
【0079】
この干渉顔料はバインダーを含んだ基層に適切な方法で、例えば粉末、ダストとして、またはブラシを用いて塗布される。この方法では、事実上完全に干渉顔料からなる層が、バインダーを含んだ層の表面に平らに平行に並んで表面に形成される。バインダーの接着作用によりこれらの干渉顔料の塗膜の表面への接着が起こる。溶媒が蒸発乾燥し、および/またはバインダーが硬化することにより、耐久性のある2層塗膜が得られる。ここで用いるバインダーは基材のタイプに合ったものにする必要がある。従来の塗膜バインダー、油ワニスまたは接着剤が様々な用途のためのバインダーとして使用できるのに対し、水ガラス溶液は例えば、ガラスおよびガラスセラミックのような基材のための適切なバインダーを代表する。
【0080】
第二の実施形態で使用される顔料は表面修飾を有する必要はない。したがってこのような塗膜は化学的もしくは機械的前処理を必要とせずに、外部作用する有機物質を抑制する活性を最初から増大して持っている。しかしながらいずれの場合も、塗膜の光触媒活性は紫外線による初期活性化を行なうことで増大させることができる。
【0081】
既に前述したように、被覆プロセスの第二の実施形態における塗料はさらに二酸化チタンの層で被覆されている薄片状の基材を基礎とする干渉顔料をさらに含む。
【0082】
しかしながら、この塗料は、前記光触媒活性をもつ干渉顔料が同様に存在するか否かにかかわりなく、好ましくは赤外線吸収材料をさらに含む。
【0083】
使用される光触媒活性をもつ干渉顔料は、両側、特に全側面が二酸化チタンの層で被覆された薄片状の基材である。これらの顔料については既に前で詳しく述べた。
【0084】
処理される表面は、従来の塗布技術、すなわち、例えば、刷毛塗り、ナイフコーティング、ローラーコーティング、噴霧、ドローイング、スピンコーティング、流し塗りまたは浸漬コーティングを用いて本発明の方法で被覆される。
【0085】
これらの塗布技術は当業者によく知られたものであり、従ってここでこれ以上議論するには及ばない。実際には、前記塗布技術は、印刷法、ローラー塗布法、スピンコーティング法、噴霧法、 逆ローラーコーティング法によって、カーテン式塗布または他の一般的な塗布技術によって行なわれる。
【0086】
それぞれの塗料を塗布した後、得られた層は5℃〜180℃の温度範囲で、好ましくは10℃〜40℃の範囲で放置して乾燥させおよび/または硬化させる。
【0087】
層の乾燥または硬化は従来の補助剤、例えば紫外線または赤外線照射または自己硬化二成分系などによって促進される。
【0088】
本発明の被覆された表面は、光の影響、特に人工光や紫外線を含む自然光、および水の影響に曝されるものであり、コケ、藻類または他の増殖あるいは他の有機物質による汚染に対する長期保護が与えられる表面である。
【0089】
これらの表面の材料組成物はここでは二次的な役割を果たす。この表面には、例えば、 金属、プラスチック、木、紙、建築材料、ガラス、セラミック、酸化物セラミック、ガラスセラミック、繊維または複合材料など、最も重要な材料として列挙されるものが含まれうる。
【0090】
この種の表面としては、例えば建造物、移動および運送手段、スポーツおよびレジャーの設備、庭園設備、遊歩道および道路などの外表面が挙げられるが、これらは単に具体例として挙げたものに過ぎない。
【0091】
本発明により塗布された塗膜は耐久性があり、また長期間すなわち2、3ヶ月から数年にわたって光触媒活性をもち、これは対象物に有機汚染に対する長期保護が与えられることを意味する。本発明の塗膜とともに供給される表面は、したがってそれ自身の光触媒活性を実現するものである。
【0092】
本発明はさらに、1種以上のバインダーと、光触媒活性物質としての二酸化チタンの層で被覆されている薄片状の基材を基礎とする干渉顔料と、所望により溶媒および所望によりさらなる補助剤および/または添加剤とを含む、光触媒活性をもつ塗料に関する。
【0093】
本発明の塗料は好ましくはさらに赤外線吸収材料、特に好ましくは微粒子状の形態のものを含む。
【0094】
ここで干渉顔料は前述のように表面修飾されている形態で使用されるのが有利である。
【0095】
光触媒活性をもつ干渉顔料は一般に塗料中に、塗料の固形分に対して1〜80重量%、特に5〜50重量%存在する。
【0096】
赤外線吸収材料が塗料中に存在する場合、一般に塗料の固形分に対して1〜80重量%、特に5〜50重量%存在する。
【0097】
ここで適切なバインダー、溶媒、補助剤および添加剤は、様々な公知のコーティング法で通常用いられる材料である。
【0098】
したがって、使用可能なバインダーは、例えば、有機ポリマー、好ましくは透明有機ポリマーである。この目的のために適切なものとしては、例えばポリスチレン、ポリ塩化ビニル並びにこれらのコポリマーおよびグラフトポリマー、ポリ塩化ビニリデンとポリフッ化ビニリデン、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリアクリレートおよびポリビニルエステル、熱可塑性ポリウレタン、セルロースエステル、既に前述したポリエステル‐アクリレート樹脂、ポリウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレートおよびアクリル-メラミン樹脂などが挙げられる。これらは個別にあるいは適切な混合物として用いられる。
【0099】
使用できる無機バインダーは原則的にセメント、粘土またはガラス原料(フリット)のような建築材料である。しかしながら、これらは好ましくは多層系の低い層で使用される。さらなる適切な無機バインダーは既に前述した通り水ガラスであり、これは好ましくはガラスおよびガラスセラミックの基材上で使用される。
【0100】
使用される溶媒は好ましくは水および水混和性溶媒、例えばエタノールやエトキシプロパノールなどである。しかしながら、種々の応用分野、例えば特定の印刷法においては、芳香族溶媒、脂肪、油などを用いることもできる。
【0101】
適切な補助剤および添加剤としては、フィラー、紫外線安定剤、抑制剤、防炎剤、潤滑油、可塑剤、分散剤、着色剤などとして従来から一般的に使用された原料が挙げられる。これらの使用は、使用方法の性質または処理される表面の性質もしくは材質に、あるいはさらに望まれる効果(例えば着色)に相当依存する。当業者はこの点において適切な選択を行うことができる。
【0102】
本発明で光触媒活性物質として使用される干渉顔料は、もし必要であれば光触媒活性に加えて干渉色をも有するように調製することも可能であるという利点を有する。使用されるコーティング材および層の厚さによってこれらは所望により広範囲で変化させることができる。したがって、金色または銀色のきらめき顔料に加え、さまざまなグラデーションの赤、青または緑のような澄んだ色にすることも可能であり、幅広い色スペクトルを実現することが可能である。塗料中の干渉顔料の割合または最外部の顔料層中の純顔料の量によって異なるが、使用される干渉顔料単独またはそれと有色鉱物、金属酸化物もしくは通常使用される他の着色剤との混合物のいずれもが、それらによって製造された塗膜の非常に多種多様な色彩効果の達成を可能にしている。これらは純色の範囲を超えて、きらめき真珠光沢効果またはいわゆるカラーフロップ効果をももたらすことができる。
【0103】
前述のメルク社の干渉顔料イリオディン(登録商標)100およびイリオディン(登録商標)103は、塗膜中で相対的に多量に用いることで銀白色の真珠光沢色を呈する。
【0104】
本発明は、光触媒活性をもつ塗膜、特に天候に強く影響される屋外の表面のための塗膜であって、こうした表面へのコケ、藻類または他の増殖に対して適切な活性による長期保護を与えるもので、従来の塗布方法を活用して製造することができ、市場ですぐに安く入手できる原料を含み、さらに対応する顔料が場合によっては適切で消費が認可されたものであるために、ナノ材料の場合に時折懸念される健康リスクが起こらないような塗膜を提供する。
【0105】
本発明の塗膜は好ましくは市販の干渉顔料を光触媒構成要素として含み、それにより特にあらゆる種類の屋外の表面における望ましくない増殖を防止する安価で効果的な解決方法を示す。
【0106】
本発明は以下実施例を参照しながら説明されるが、これらは限定するものと見なされるべきではない。発明の詳細な説明中に詳しい記載のない実施態様についても特許請求の範囲によって明らかにされている。
【実施例】
【0107】
実施例1
干渉顔料[イリオディン(登録商標)103、雲母上のTiO2(ルチル)、メルク社(ダルムシュタット)製]960gにステアリン酸40gを、5Lの二重壁ステンレススチール容器中で塗布する。このように塗布した顔料15gを水性スクリーン印刷用ワニス(アクア‐ジェット093、Proell社(ヴァイセンブルク)製)85gに加え、印刷に必要な粘度に調整する。得られたスクリーン印刷インクを、アクリル樹脂の表面層を有する木材−繊維複合材料を含む被覆材料の表面全体に、77Tスクリーンを取り付けたアトマースクリーン印刷機を用いて塗布する。印刷インクは常温で乾燥させる。乾燥段階において、顔料粒子は印刷領域の表面で配向する。印刷された領域は銀白色を呈する。
【0108】
実施例2
干渉顔料[イリオディン(登録商標)103、雲母上のTiO2(ルチル)、メルク社(ダルムシュタット)製]960gにステアリン酸40gを、5Lの二重壁ステンレススチール容器中で塗布する。このように塗布した顔料15gを、溶媒を含んだスクリーン印刷ワニス(MZ‐093、Proell社(ヴァイセンブルク)製)85gに加え、印刷に必要な粘度に調整する。得られたスクリーン印刷インクを、アクリル樹脂の表面層を有する木材−繊維複合材料を含む被覆材料の表面全体に、77Tスクリーンを取り付けたアトマースクリーン印刷機を用いて塗布する。印刷インクは常温で乾燥させる。乾燥段階において、顔料粒子は印刷領域の表面で配向する。印刷された領域は銀白色を呈する。
【0109】
耐候性実験
実施例1および2で製造した被覆材料を、対照物として同一の構造だが表面被覆を受けていないため茶色である被覆材料とともに、戸外の陰の領域で湿潤環境に置く。2ヶ月後、これらの被覆材料を目視で評価する。被覆されていない材料は少なからざる領域が“コケ増殖”の始まりによって緑色を呈するのに対し、本発明により被覆された実施例1および2の被覆材料には全く色の変化が起きなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄片状の基材を基礎とし、二酸化チタンの層で被覆された干渉顔料を光触媒活性物質として含む、光触媒活性をもつ塗膜。
【請求項2】
赤外線吸収材料をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の塗膜。
【請求項3】
前記基材が両面において二酸化チタンの層で被覆され、とりわけ実質的に二酸化チタンの層で覆われていることを特徴とする請求項1または2に記載の塗膜。
【請求項4】
前記基材が、薄片状の天然もしくは合成雲母、カオリン、タルク、他のフィロケイ酸塩、SiO2、ガラス、ホウケイ酸塩、Al23、金属酸化物、金属からなるか、あるいは金属酸化物、金属酸化物水和物、金属亜酸化物、金属フッ化物、金属窒化物、金属オキシナイトライドまたはそれらの物質の混合物の1つ以上の層で被覆された薄片状の天然もしくは合成雲母、カオリン、タルク、他のフィロケイ酸塩、SiO2、ガラス、ホウケイ酸塩、Al23、金属酸化物または金属からなることを特徴とする請求項1〜3の少なくとも1項に記載の塗膜。
【請求項5】
前記二酸化チタンの層が干渉顔料の最外層または最外部の無機層に相当することを特徴とする請求項1〜4の少なくとも1項に記載の塗膜。
【請求項6】
前記二酸化チタンが主にルチル型であることを特徴とする請求項1〜5の少なくとも1項に記載の塗膜。
【請求項7】
前記干渉顔料が、天然雲母と、その上に位置するアナターゼまたはルチル型、あるいはアナターゼとルチル型の混合である二酸化チタンの層とからなることを特徴とする請求項1〜6の少なくとも1項に記載の塗膜。
【請求項8】
前記干渉顔料が、光触媒活性を有し、干渉色をもつことを特徴とする請求項1〜7の少なくとも1項に記載の塗膜。
【請求項9】
前記使用される赤外線吸収材料が粒子状材料であることを特徴とする請求項1〜8の少なくとも1項に記載の塗膜。
【請求項10】
前記使用される赤外線吸収材料が、LaB6、CeB6、SmB6、YB6、Mo25、SiB6、SiB4、ZrB2、TiB2、VB2、CrB2、アンチモンをドープした酸化スズ、カーボンブラック、グラファイトまたはB4C、あるいはこれらの化合物の2種以上の混合物であることを特徴とする請求項1〜9の少なくとも1項に記載の塗膜。
【請求項11】
単層または多層の構造をもつことを特徴とする請求項1〜10の少なくとも1項に記載の塗膜。
【請求項12】
前記干渉顔料が多層被覆の最外層、または単層被覆の表面に位置することを特徴とする請求項1〜11の少なくとも1項に記載の塗膜。
【請求項13】
前記多層被覆の最外層が本質的に干渉顔料からなることを特徴とする請求項1〜12の少なくとも1項に記載の塗膜。
【請求項14】
前記単層被覆または多層被覆の少なくとも最外層が、塗膜の乾燥重量に対して1〜80重量%の干渉顔料を含むことを特徴とする請求項1〜13の少なくとも1項に記載の塗膜。
【請求項15】
前記単層被覆、または多層被覆の少なくとも1つのバインダーを含む層が、それぞれの層の乾燥重量に対して1〜80重量%の赤外線吸収材料を含むことを特徴とする請求項1〜14の少なくとも1項に記載の塗膜。
【請求項16】
表面を光触媒活性物質としての、二酸化チタンの層および1種以上の適切なバインダーさらに所望により溶媒および/またはさらなる補助剤および/または添加剤で被覆されている薄片状の基材を基礎とする干渉顔料を含む塗料で覆い、このようにして得られた塗膜を放置して乾燥させおよび/または硬化させることを特徴とする請求項1〜15の少なくとも1項に記載の光触媒活性をもつ塗膜の製造方法。
【請求項17】
前記干渉顔料が表面修飾されていることを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記塗料がさらに赤外線吸収材料を含むことを特徴とする請求項16または17に記載の方法。
【請求項19】
表面が1種以上の適切なバインダーさらに所望により溶媒および/またはさらなる補助剤および/または添加剤からなる塗料で覆われ、このようにして得られた塗膜が、湿潤状態でブロンズィング法により、二酸化チタンの層で被覆されている薄片状の基材を基礎とする干渉顔料で被覆され、さらに続いて放置して乾燥および/または硬化させることを特徴とする請求項1〜15の少なくとも1項に記載の光触媒活性をもつ塗膜の製造方法。
【請求項20】
前記塗料がさらに二酸化チタンの層で被覆されている薄片状の基材を基礎とする干渉顔料を含むことを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記塗料がさらに赤外線吸収材料を含むことを特徴とする請求項19または20に記載の方法。
【請求項22】
前記使用される干渉顔料が両面において二酸化チタンの層で被覆されている、特に二酸化チタンの層で覆われている基材であることを特徴とする請求項16〜21の少なくとも1項に記載の方法。
【請求項23】
前記表面が、刷毛塗り、ナイフコーティング、ローラーコーティング、噴霧、ドローイング、スピンコーティング、流し塗りまたは浸漬コーティングにより前記塗料で被覆されることを特徴とする請求項16〜22の少なくとも1項に記載の方法。
【請求項24】
前記塗布が印刷法、ローラー塗布法、スピンコーティング法、噴霧法、逆ローラーコーティング法を用いて、またはカーテン式塗布を用いて行われることを特徴とする請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記塗料の乾燥および/または硬化が5℃〜180℃の温度範囲で行われることを特徴とする請求項16〜24の少なくとも1項に記載の方法。
【請求項26】
前記表面が紫外線成分を含む光および水の影響に曝されるものであり、コケ、藻類または他の増殖あるいは他の有機物質による汚染に対する長期保護が与えられることを特徴とする請求項16〜25の少なくとも1項に記載の方法。
【請求項27】
前記表面が金属、プラスチック、木、紙、建築材料、ガラス、セラミック、酸化物セラミック、ガラスセラミック、繊維または複合材料からなることを特徴とする請求項16〜26の少なくとも1項に記載の方法。
【請求項28】
前記表面が建造物、移動および運送手段、スポーツまたはレジャーの設備、庭園設備、遊歩道または道路の表面であることを特徴とする請求項16〜27の少なくとも1項に記載の方法。
【請求項29】
少なくともバインダーと、光触媒活性物質としての二酸化チタンの層で被覆されている薄片状の基材を基礎とする干渉顔料と、所望により溶媒および所望によりさらなる補助剤および/または添加剤とを含む、光触媒活性をもつ塗料。
【請求項30】
赤外線吸収材料をさらに含むことを特徴とする請求項29に記載の塗料。
【請求項31】
請求項1〜15の少なくとも1項に記載の塗膜を有する光触媒活性をもつ表面。
【請求項32】
紫外線成分を含む光および水の外部影響に曝される請求項31に記載の表面を有する建造物、移動および運送手段、スポーツまたはレジャーの設備、庭園設備、遊歩道または道路。

【公表番号】特表2010−504190(P2010−504190A)
【公表日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−528612(P2009−528612)
【出願日】平成19年8月24日(2007.8.24)
【国際出願番号】PCT/EP2007/007439
【国際公開番号】WO2008/034510
【国際公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(591032596)メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (1,043)
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D−64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
【Fターム(参考)】