説明

光触媒液体組成物

【課題】
本発明は、光照射下での変色が抑制され、優れた光触媒活性を有する布帛を得るための塗布液を提供する。
【解決手段】
光触媒材料を含むコアと該コアの少なくとも一部を被覆する層とを有する光触媒粒子を含有し、光触媒活性を付与するため布帛基材に塗布される塗布液であって、該光触媒粒子の平均粒径が0.5−10μmの範囲にあり、該コアの光触媒材料と比較して該被覆層の材料の光触媒活性が低い上記の塗布液を用いることにより、変色が抑制され優れた光触媒活性を有する布帛が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光触媒活性を付与するため布帛基材に塗布される液体組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、布帛に消臭性、抗菌性、防汚性を付与するため、布帛基材への光触媒の塗布が検討されている(例えば、特許文献1及び2を参照)。光触媒活性を有する布帛は、それ自体優れた特性を示すだけでなく、屋内で使用される場合、屋内環境の浄化にも役立つという利点がある。
【0003】
布帛基材に塗布する光触媒としては、酸化チタンが知られている。酸化チタンは優れた光触媒材料であるが、布帛に塗布する場合には以下の様な問題が生じる。まず、光照射下において酸化チタンが繊維加工剤、防炎剤、バインダー、布帛基材等を酸化分解し、布帛が黄変することがある。さらに、この分解過程において悪臭成分が生じ、消臭という光触媒の目的の達成を阻害する場合がある。それに加え、この望ましくない副反応により、触媒活性が低下することもある。
【0004】
光触媒の副反応を防止するため、メラミン樹脂の保護層で被覆された布帛基材を使用することも報告されている(特許文献2を参照)。しかし、広い範囲の布帛基材に光触媒活性を付与できる方法が依然として求められている。
【0005】
光触媒粒子の形状に関し、通常の用途では粒径が小さいほど触媒活性が高いとされているため、布帛用途にも粒径の小さい粒子が検討されてきた。例えば特許文献1では、粒径が50nm以下の酸化チタンが用いられている。しかし、これら従来の布帛の光触媒活性は必ずしも充分なものとはいえず、さらなる改良が望まれている。
【0006】
以上の様に、光照射下での布帛の変色を抑制し、布帛としての光触媒活性を更に改善することが求められている。
【特許文献1】特開平11−323726号公報
【特許文献2】特開2000−328438号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記の事情に鑑みなされたものであり、光触媒活性を付与するために布帛基材に塗布される液体組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らはこれらの課題を解決すべく鋭意検討を進めた結果、光触媒材料を含むコアと該コアの少なくとも一部を被覆する層とを有し、平均粒径が0.5−10μmの光触媒粒子を用いることにより、布帛の変色を抑制すると共に優れた光触媒活性を付与できることを見出し、本発明を完成させた。本発明で用いられる光触媒粒子は、布帛に適した特定範囲の平均粒径を有するため優れた触媒活性を実現し、被覆層によって望ましくない副反応が抑制されるという特徴を有する。
【0009】
即ち、本発明は、以下のものを提供する。
(1) 光触媒材料を含むコアと該コアの少なくとも一部を被覆する層とを有する光触媒粒子を含有し、光触媒活性を付与するため布帛基材に塗布される液体組成物であって、該光触媒粒子の平均粒径が0.5−10μmの範囲にあり、該コアの光触媒材料と比較して該被覆層の材料の光触媒活性が低い、上記の液体組成物。
(2) コアが酸化チタンを含む(1)に記載の液体組成物。
(3) 被覆層がシリカ、リン酸カルシウム、ポリシロキサン、又はそれらの組み合わせを含む、(1)又は(2)に記載の液体組成物。
(4) バインダーをさらに含む(1)−(3)の何れかに記載の液体組成物。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の液体組成物は、光触媒粒子を含有する。該光触媒粒子は、光触媒材料を含むコアと該コアの少なくとも一部を被覆する層とを有する光触媒粒子を含有し、該コアの光触媒材料と比較して該被覆層の材料の光触媒活性は低い。この被覆層が存在することにより、コアによる繊維加工剤、防炎剤、バインダー、布帛基材等を酸化分解することを防止できる。
【0011】
コアの光触媒材料に制限はなく、酸化チタン、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、酸化亜鉛、酸化タングステン、酸化鉄、酸化インジウム、及び硫化亜鉛が挙げられる。これらを単独で用いてもよく、組み合わせて用いてもよい。その中でも酸化チタンが好ましい。酸化チタンの結晶構造に制限はなく、アナターゼ型、ルチル型、ブルッカイト型、非晶質の何れであってもよいが、活性の強いアナターゼ型が好ましい。これらは、より強く電子による還元性の性質を付与するために白金、金、パラジウム、銀、銅、亜鉛、ロジウムなどの金属微粒子の被覆処理や、或いはより強く正孔による酸化性の性質を付与するために酸化ルテニウム等の金属酸化物被覆処理などを行ってあってもよく、可視光応答型光触材料でもよい。ここで光触媒材料とは、紫外光・可視光等の光照射により有機物分解活性または超親水性を示す材料をいう。光照射下での光触媒分解活性は、実施例に記載のアセトアルデヒド分解試験及びメチレンブルー分解試験によって評価できる。ただし、光触媒反応の対象はこれらの化合物に限定されるものではない。
【0012】
被覆層の材料は、コアによる副反応を抑制し、かつ目的物の分解を阻害しない材料であれば特に制限はなく、該材料単独で光触媒活性を測定した場合にコアの光触媒材料よりも活性が低ければよく、光触媒活性がないものが好ましい。被覆層の材料の例としては、シリカ、リン酸カルシウム、ポリシロキサン、アパタイト、アルミナ、ジルコニアが挙げられる。これらを単独で用いてもよく、組み合わせて用いてもよい。その中でも、シリカが好ましい。被覆の形態に特に制限はなく、コアの全体を被覆してもよく、一部を被覆してもよい。コアの一次粒子を被覆してもよく、二次粒子を被覆してもよい。
【0013】
このような被覆層を有する光触媒粒子としては、例えば特開2002-159865号公報に記載されているシリカ被覆酸化チタンがある。
液体組成物における好ましい被覆光触媒粒子の平均粒径は、布帛を構成する繊維の太さ及び繊維同士の間隔に依存するが、通常該光触媒粒子の平均粒径は0.5μm以上、好ましくは0.8μm以上、さらに好ましくは1.0μm以上であり、10μm以下、好ましくは5μm、さらに好ましくは1.5μm以下である。平均粒径が当該範囲未満である場合には、粒子が繊維間の間隙に遍在して布帛表面に均一に分布しないため、布帛としての触媒活性が低下することがある。平均粒径が当該範囲を超えると、比表面積が低下するため、単位触媒重量あたりの触媒活性が低下しやすく、また白く着色してくるので製品の意匠性を低下させる。
この被覆光触媒粒子の平均粒径は、液体組成物における平均粒径であり、一次粒子で存在していれば一次粒子の平均粒子径のであり、製造方法によっては一次粒子が凝集してニ次粒子を形成しているときもありその場合はそのニ次粒子の平均粒子径のことである。
【0014】
本明細書において、平均粒径として、動的光散乱法によって得られる値を用いる。動的光散乱法の測定条件は、実施例に記載の通りである。
本発明の液体組成物は、バインダーをさらに含んでもよい。バインダーとしては、シリカのような無機バインダー物、繊維加工剤のような有機バインダーがあるが、有機バインダーが好ましく、特に繊維加工剤が好ましい。繊維加工剤とは、繊維布帛の柔軟性、硬度、光沢、吸水性等の特性に影響を及ぼす剤を指し、硬仕上剤が含まれる。硬仕上剤として、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、メラミン系樹脂、尿素系樹脂、塩化ビニル系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂、ポリエステル系樹脂、デンプンのような水溶性樹脂が挙げられる。ポリエステル系樹脂の硬仕上剤の例として、ペスレジン2000及びTKセット413として高松油脂株式会社から購入できる硬仕上剤が挙げられる。
【0015】
本発明の液体組成物は、分散剤をさらに含んでもよい。液体組成物における光触媒粒子の分散性を改善するためには、分散剤を含むことが好ましい。分散剤としては、ポリカルボン酸系分散剤(例えば、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、スチレン−無水マレイン酸共重合体);スルホン酸系分散剤(例えば、リグニンスルホン酸、及びナフタレンスルホン酸);アルコール系分散剤(例えば、ポリビニルアルコール);アミノ酸系分散剤;ノニオン系分散剤;等が挙げられる。
【0016】
本発明の液体組成物は、必要に応じて安定化剤、pH調整剤、増粘剤、脱泡剤等の各種公知の成分をさらに含んでもよい。
該液体組成物は、前述の各成分を溶媒に混合することによって得られる。ここで溶媒は水、有機溶媒、及びこれらの混合物の何れでもよく、水が好ましい。混合には、任意の公知の混合手段を用いることができる。例えば、ボールミル、ダイノーミルが挙げられる。液体組成物における光触媒粒子の割合は、塗布方法に応じて選択される。一般には、液体組成物の総重量に対する光触媒粒子の重量は0.1wt%以上、好ましくは0.5wt%以上であり、20wt%以下、好ましくは10wt%以下である。液体組成物は、光触媒粒子が沈降しない懸濁液又は分散液の形態にあることが好ましい。
【0017】
本発明の液体組成物が塗布される布帛基材に特に制限はなく、ポリエステル、ナイロン、アクリル、レーヨン等の合成繊維;綿、麻等の天然繊維;不織布;布帛様壁紙;が挙げられる。カーテン、壁紙、ロールスクリーン等の防炎性が要求される用途では、塗布の前に予め防炎加工を行うことが好ましい。あるいは、難燃性繊維の布帛基材を用いてもよい。防炎加工には、ハロゲン系防炎剤を含む任意の防炎剤を用いることができる。
【0018】
布帛基材への塗布には、各種公知の塗布方法を用いることができる。例えば、噴霧塗布法、浸漬法、グラビアコーティング、ロールコーティング、パッド法が挙げられる。塗布した後、さらに乾燥することにより、光触媒活性を有する布帛が得られる。
【0019】
本発明は、前述の光触媒粒子が付着した布帛にも関する。付着方法に制限はなく、本発明の液体組成物を布帛基材に塗布し乾燥することによって得ることも出来る。ここで付着とは、光触媒粒子が直接布帛と接触する場合;バインダー等のその他の成分を介して接触する場合;バインダー及び光触媒粒子を含む層が布帛を覆う場合;を含む。前述の繊維加工剤がバインダーとして作用してもよい。
【0020】
光触媒粒子が付着した布帛は、インテリアファブリック、家具の部材、寝具の部材、寝具や家具のカバー、敷物を含む様々な用途に用いることができる。例えば、本発明の布帛として、ロールスクリーン、壁布(壁布様壁紙が含まれる)、カーテン、テーブルクロスなどのインテリア;椅子の座面及び背もたれの布地、ソファー生地、クッション生地などの家具部材;布団カバー、枕カバー、ベッドカバー、家電カバー、ソファーカバー、クッションカバー、ピアノカバーなどのカバー;カーペット、ラグ、マット等の敷物;が挙げられる。
【実施例】
【0021】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
酸化チタン粉末(テイカ社製のTKP−101、アナターゼ型、シリカ被覆品)をボールミルを用いて水に分散させ、酸化チタン濃度が20.0wt%である水分散液を得た。この分散液を用いて動的光散乱法により酸化チタン粒子の平均粒径を測定したところ、平均粒径は1μmであった。粒径の測定は、Malvern社製の機種Malvern HPPS,型名HPP5001を用いて行った。測定温度は25℃であった。
【0022】
この酸化チタン水分散液と繊維加工剤(PET系硬仕上剤)とを混合し、液体組成物を得た。液体組成物における酸化チタン濃度は2.0wt%であった。この液体組成物を、塗布液として用いた。この塗布液を、ハロゲン系防炎剤(ヘキサブロモシクロデカン(HBCD))により予め防炎加工を施したポリエステル白色布に塗布し、さらに乾燥して、酸化チタンを含むポリエステル布帛を得た。塗布量は40g/m2とした。
[実施例2]
塗布液の酸化チタン濃度を4.0wt%とした点を除き、実施例1と同様にして、酸化チタンを含むポリエステル布帛を得た。
[比較例1]
シリカ被覆酸化チタンの水分散液に代えて中性チタニアゾル(石原産業社製、酸化チタンとして平均粒径100nmの未被覆酸化チタンを含有、酸化チタン濃度20.1wt%、pH=7.9)を用いた点を除き、実施例1と同様にして酸化チタンを含むポリエステル布帛を得た。平均粒径の測定は、実施例1と同様にして行った。
[比較例2]
塗布液の酸化チタン濃度を4.0wt%とした点を除き、比較例1と同様にして酸化チタンを含むポリエステル布帛を得た。
[比較例3]
シリカ被覆酸化チタンの水分散液に代えて酸化チタン粉末(石原産業(株))を水にボールミルを用いて水に分散させたもの(酸化チタン濃度20.0wt%、平均粒径1μm)を用いた点を除き、実施例1と同様にして酸化チタンを含むポリエステル布帛を得た。平均粒径の測定は、実施例1と同様にして行った。
[評価例1 (黄変試験)]
実施例1、2、比較例1−3の布帛サンプルについて、黄変試験を行った。黄変試験は、各サンプルに紫外線としてブラックライトを照射し、黄色度の経時変化を測定することによって行った。黄色度(YI)は、X,Y,Z測色値により算出した。測定条件は以下の通りである。
【0023】
光源: FL15BLB-A(東芝ライテック(株))
照射強度: 1.0mW/cm2
紫外線強度計: UVR-2((株)TOPCON)、受光部UD-36
測色計: Z-1001 DP(日本電色工業(株))
比較のため、塗布を行わなかったポリエステル布帛基材(加工前布)についても試験を行った。結果を図1及び2に示す。
【0024】
図1からわかるように、平均粒径1μmのシリカ被覆酸化チタンを付着させた実施例1及び2の布帛に紫外線を照射すると、初期に黄色度が一時的に増加するものの、その後は安定し、100時間以上照射を続けてもYIが10以下に保持された。それに対し、比較例3の未被覆酸化チタン(平均粒径は実施例1及び2と同様に1μmである)の場合、照射時間が長くなるにつれて黄変が進行し、50時間以上の照射ではYIが20を超えた(図2)。これらの結果は、酸化チタンを被覆することによって黄変を抑制されたことを示す。平均粒径が100nmの場合にも(比較例1及び2)、比較例3と同様に黄変が観測された。
[評価例2(アセトアルデヒド分解試験)]
実施例及び比較例の布帛について、アセトアルデヒド分解試験を行った。試験方法は以下の通りである。
【0025】
ガラス容器の底にスペーサを設置し、その上にサンプルを静置した。スペーサは、サンプルと底の間に隙間を生じさせ、サンプルをアセトアルデヒドと充分に接触させるために用いた。次に、ガラス容器の底面から紫外線を照射できるよう、ガラス容器をブラックライトの上方に設置した。ガラス容器をアスピレータで減圧し、所定量のアセトアルデヒドガスをシリンジにより注入した後、大気圧に戻した。
【0026】
一般に、注入したアセトアルデヒドの一部がサンプルや容器壁面に吸着するため、注入直後ではアセトアルデヒドの気相濃度が大きく減少する。そこで、アセトアルデヒド濃度の減少が収束するまで放置した。この間、定期的に容器内のガスを採取し、ガスクロマトグラフィーによりアセトアルデヒド濃度をモニターした。
【0027】
アセトアルデヒド濃度の変動が収まった後、紫外線照射を開始し、アセトアルデヒド濃度の経時変化をガスクロマトグラフィーにより測定した。詳細な測定条件は以下の通りである。
【0028】
試験容器: 4Lガラス容器バッチ式
光源: FL15BLB-A(東芝ライテック(株))
照射強度: 1.0mW/cm2
紫外線強度計: UVR-2((株)TOPCON)、受光部UD-36
サンプル面積: 50cm2(5cm×10cm)
ガスクロマトグラフ: GC-14B((株)島津製作所)
結果を図3及び4に示す。実施例1及び2の布帛ではアセトアルデヒドが急速に分解し、照射開始から24時間の間の濃度減少が140ppmを超え、残存濃度が0−10ppmまで低下した。それに対し、比較例1及び2の布帛では、アセトアルデヒド濃度の減少はブランクと同程度であり、有意な光触媒活性が見られなかった。比較例3の布帛の光触媒活性は比較例1及び2より高いものの、実施例1及び2には及ばなかった。
[評価例3 (湿式メチレンブルー分解試験)]
実施例及び比較例1−3のサンプルについて、湿式メチレンブルー分解試験を行った。試験は、光触媒製品フォーラムの「光触媒製品における湿式分解性能試験方法」に準拠し、40mmφのサンプルを試験セルの底に沈めて行った。測定条件は以下の通りである。
【0029】
試験セルサイズ: 40mmφ×30mm
仕込メチレンブルー水溶液量: 35ml
吸着用メチレンブルー水溶液量濃度: 0.025mmol/l
吸着時間: 24hr
試験用メチレンブルー水溶液量濃度: 0.010mmol/l
光源: FL15BLB-A(東芝ライテック(株))
照射強度: 1.0mW/cm2
紫外線強度計: UVR-2((株)TOPCON)、受光部UD-36
吸光度測定: 自記分光光度計、U-4000((株)日立製作所)
測定セル: 標準セル
結果を以下の表に示す。
【0030】
【表1】

【0031】
実施例1及び2の布帛のメチレンブルー活性示数は比較例1−3の示数より高く、本発明の布帛が高い酸化分解能力を有していることがわかる。
[SEM観察及びEPMA測定]
実施例及び比較例のサンプルについて、SEM観察及びEPMA測定を行い、酸化チタン粒子の分布を調べた(図5−9)。SEM像に示した白いバーが20μmに該当する。図5−9のEPMAマップ(右)は、SEM像(左)と同一の領域に対応し、Ti原子が検出された位置を白く表示した。SEM像とEPMAマップの結果を比較すると、SEM像で観察される粒子が、布帛に付着した酸化チタンに対応することがわかる。
【0032】
平均粒径1μmの酸化チタン粒子を用いた実施例1(図5)、実施例2(図6)、及び比較例3(図9)の布帛では、粒子が繊維の隙間だけでなく布帛表面に広く分布している。それに対し、平均粒径100nmの酸化チタン粒子を用いた比較例1(図7)及び比較例2(図8)では、粒子が繊維の隙間に集中し、布帛表面には疎らに分布している。比較例1及び比較例2では繊維加工剤層の内部に埋もれた光触媒による繊維加工剤等の分解により黄変するが、繊維加工剤層の内部に光触媒は埋もれているので繊維加工剤層の外部からくる有機物の分解活性は弱くなっていると考えられる。酸化チタン粒子の分布形態は光触媒活性(評価例2及び3)と相関があることから、酸化チタン粒子の平均粒径を制御して粒子の遍在を防止し、分解対象ガスと接触する頻度を高めることによって、高い触媒活性が実現されたと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
平均粒径が0.5−10μmの被覆光触媒粒子を布帛基材に付着させることにより、布帛に優れた光触媒活性を付与するとともに、黄変を抑制することができる。この布帛は、高い光触媒活性及び変色の抑制が求められる各種の用途に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】図1は、実施例1及び2の布帛について行った黄変試験の結果を示す。
【図2】図2は、比較例1−3の布帛について行った黄変試験の結果を示す。
【図3】図3は、実施例1及び2の布帛について行ったアセトアルデヒド分解試験の結果を示す。
【図4】図4は、比較例1−3の布帛について行ったアセトアルデヒド分解試験の結果を示す。
【図5】図5は、実施例1の布帛のSEM像(左)及び同一領域のEPMA測定の結果(右)を示す。SEM像中の白いバーが20μmに対応する。
【図6】図6は、実施例2の布帛のSEM像(左)及び同一領域のEPMA測定の結果(右)を示す。SEM像中の白いバーが20μmに対応する。
【図7】図7は、比較例1の布帛のSEM像(左)及び同一領域のEPMA測定の結果(右)を示す。SEM像中の白いバーが20μmに対応する。
【図8】図8は、比較例2の布帛のSEM像(左)及び同一領域のEPMA測定の結果(右)を示す。SEM像中の白いバーが20μmに対応する。
【図9】図9は、比較例3の布帛のSEM像(左)及び同一領域のEPMA測定の結果(右)を示す。SEM像中の白いバーが20μmに対応する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光触媒材料を含むコアと該コアの少なくとも一部を被覆する層とを有する光触媒粒子を含有し、光触媒活性を付与するため布帛基材に塗布される液体組成物であって、
該光触媒粒子の平均粒径が0.5−10μmの範囲にあり、
該コアの光触媒材料と比較して該被覆層の材料の光触媒活性が低い、
上記の液体組成物。
【請求項2】
コアが酸化チタンを含む請求項1に記載の液体組成物。
【請求項3】
被覆層がシリカ、リン酸カルシウム、ポリシロキサン、又はそれらの組み合わせを含む、請求項1又は2に記載の液体組成物。
【請求項4】
バインダーをさらに含む請求項1−3の何れかに記載の液体組成物。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−233343(P2006−233343A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−45613(P2005−45613)
【出願日】平成17年2月22日(2005.2.22)
【出願人】(000004307)日本曹達株式会社 (434)
【Fターム(参考)】