説明

光触媒粒子含有多層延伸物

【課題】樹脂と光触媒粒子を組み合わせた製品において、光触媒粒子の光触媒効果を向上させることができる技術を提供する。
【解決手段】光触媒粒子14を含有しない樹脂層(A’)11と、光触媒粒子15を含有し、かつ前記樹脂層(A’)11よりも限界延伸倍率が小さい樹脂層(B’)12、13とを有する積層体14を延伸して得られる光触媒粒子含有多層延伸物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光触媒粒子含有多層延伸物、並びにこれを用いた多層延伸フィルム、多層延伸フラットヤーン及び多層延伸芯鞘繊維に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光触媒酸化チタン粒子等の光触媒粒子を樹脂中に練り込むことによって抗菌、消臭、防汚などの機能を付与した樹脂フィルム、シート、フラットヤーンなどが提案されている。
これらの技術分野においては、光触媒粒子を樹脂の表面に露出させて光触媒粒子の効果をより高めるために色々な加工技術が提案されている。例えば光触媒粒子を練り込んだ樹脂を延伸することによって光触媒粒子を露出させる方法、特定の表面処理を行って光触媒粒子を露出させる方法、あるいは粘度の異なる樹脂を組み合わせて用いることによって光触媒粒子を露出させる方法などが提案されている(特許文献1〜6参照)。
また、光触媒粒子自体の工夫としては、大粒径粒子に小粒径粒子を担持させる方法などが提案されている(特許文献7〜8参照)。
【特許文献1】特開平10−230134号公報
【特許文献2】特開平10−330507号公報
【特許文献3】特開2002−339477号公報
【特許文献4】特開2005−97608号公報
【特許文献5】特開2004−113901号公報
【特許文献6】特開平11−104414号公報
【特許文献7】特開2004−230378号公報
【特許文献8】特開2004−231952号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、光触媒酸化チタン粒子等の光触媒粒子は、顔料用酸化チタン等に比べて小さい粒径を有する。そのため、粒子を練りこむと樹脂中に埋没し、樹脂の表面に光触媒粒子を効率よく露出させることは難しい。そして、従来提案されている延伸や表面処理等の方法では光触媒粒子の効果を充分に発揮させることはできない。
【0004】
そこで、本発明においては、樹脂と光触媒粒子を組み合わせた製品において、光触媒粒子の光触媒効果を向上させることができる技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するために、本発明においては以下の手段を提案する。
第1の態様は、光触媒粒子を含有しない樹脂層(A’)と、光触媒粒子を含有し、かつ前記樹脂層(A’)よりも限界延伸倍率が小さい樹脂層(B’)とを有する積層体を延伸して得られることを特徴とする光触媒粒子含有多層延伸物である。
本発明の光触媒粒子含有多層延伸物においては、樹脂層(A’)の厚さが樹脂層(B’)の厚さより大きいことが好ましい。
また、樹脂層(B’)の限界延伸率に対する樹脂層(A’)の限界延伸倍率の比が1.5以上であることが好ましい。
また、前記積層体は、樹脂層(B’)、樹脂層(A’)、樹脂層(B’)の順に積層されてなるものであることが好ましい。
また、樹脂層(A’)は、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、チーグラー触媒系高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエステルからなる群から選ばれる1種以上を含むことが好ましい。
また、樹脂層(B’)は、2種以上の樹脂を含み、これら2種以上の樹脂は互いに非相溶性であることが好ましい。
また、樹脂層(B’)は、長鎖分岐を有する樹脂を含むことが好ましい。
また、光触媒粒子は、二酸化チタン粒子を含むことが好ましい。
また、樹脂層(B’)は、低密度ポリエチレン(LDPE)、クロム触媒系高密度ポリエチレン、長鎖分岐を導入したポリプロピレン、長鎖分岐を導入したポリブチレンサクシネート、及び長鎖分岐を導入したポリブチレンサクシネートアジペートからなる群から選ばれる1種以上を含むことが好ましい。
第2の態様は、本発明の光触媒粒子含有多層延伸物からなる多層延伸フィルムである。
第3の態様は、本発明の光触媒粒子含有多層延伸物からなる多層延伸フラットヤーンである。
第4の態様は、本発明の光触媒粒子含有多層延伸物からなる芯鞘構造の多層延伸芯鞘繊維であって、表面が樹脂層(B’)を延伸して得られる樹脂層(B)から構成されている多層延伸芯鞘繊維である。
【0006】
なお、本特許請求の範囲及び明細書において、「光触媒粒子含有多層延伸物」とは少なくとも樹脂層(A’)と樹脂層(B’)を積層した積層体を延伸した後のものを示し、フィルム、フラットヤーン、芯鞘繊維等の種種の形態のものを包括する概念とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明においては、樹脂と光触媒粒子を組み合わせた製品において、光触媒粒子の光触媒効果を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の光触媒粒子含有多層延伸物は、光触媒粒子を含有しない樹脂層(A’)と、光触媒粒子を含有し、かつ前記樹脂層(A’)よりも限界延伸倍率が小さい樹脂層(B’)とを有する積層体を延伸して得られるものである。すなわち、光触媒粒子含有多層延伸物は、樹脂(A’)が延伸されてなる光触媒粒子を含有しない樹脂層(A)と、樹脂(B’)が延伸されてなる光触媒粒子を含有する樹脂層(B)とを有する。
「限界延伸倍率」とは「樹脂層の延伸されやすさ」を示す指標である。
【0009】
図1は本発明の光触媒粒子含有多層延伸物の一例を示した断面図であり、図1(a)は延伸前の積層体を示し、図1(b)は延伸後の光触媒粒子含有多層延伸物を示している。
図1(a)において、符号11は樹脂層(A’)であり、延伸した後に樹脂層(A)21となるものである。この例において、樹脂層(A’)11はフィルム状であり、その両面上に、延伸した後に樹脂層(B)22、23となる樹脂層(B’)12と樹脂層(B’)13がそれぞれ積層されて、この積層体(未延伸フィルム)14が構成されている。積層体14はインフレーション法、Tダイ法等によって製造することができる。
樹脂層(A’)11には光触媒粒子が混合されておらず、樹脂層(B’)12、13には光触媒粒子15が配合されている。
【0010】
そして、この積層体14を延伸すると、樹脂層(A’)11は、その限界延伸倍率が樹脂層(B’)12、樹脂層(B’)13の限界延伸倍率よりも大きいため、樹脂層(A’)11は大きく引き延ばされるが、樹脂層(B’)12と樹脂層(B’)13は樹脂層(A’)11の延伸に追従することができない。
そのため、樹脂層(A’)11の延伸に伴い、これに追従できない樹脂層(B’)12と樹脂層(B’)13の表面に応力がかかり、樹脂層(B’)12、13の限界延伸倍率を超えて延伸すると、樹脂層(B’)12、13のみの表面が引き裂かれて光触媒粒子15が露出する。その結果、図1(b)に示す様に、延伸された樹脂層(A)21の両面側において、光触媒粒子15が、積層体14のときよりも多く表面に露出した樹脂層(B)22、23がそれぞれ積層されてなる光触媒粒子含有多層延伸物24が得られる。
【0011】
光触媒粒子含有多層延伸物24は、光触媒粒子15を効率的に露出させるために、樹脂層(B’)の限界延伸倍率以上、樹脂層(A’)の限界延伸倍率未満で延伸することが好ましい。光触媒粒子含有多層延伸物24の延伸倍率は、積層体14に対して好ましくは2倍以上、さらに好ましくは2.5倍以上である。上限値は特に限定しないが、延伸切れを防ぐ点から実質的には6倍以下、好ましくは5倍以下、特に好ましくは4倍以下である。
延伸条件(温度条件)は積層体14の構成材料や厚さによって適宜調整することができる。例えば、ポリエチレンならば50℃〜100℃、ポリプロピレンならば90℃〜150℃、ポリブチレンサクシネートおよび/又はポリブチレンサクシネートアジペートならば50℃〜100℃などである。
この様に積層体(未延伸フィルム)14を延伸することにより、延伸時に効率よく光触媒粒子15を表面に露出させることができるので、光触媒粒子含有多層延伸物24においては、光触媒粒子15の効果を充分に発揮させることができる。
【0012】
多層延伸フィルムや多層延伸フラットヤーンは、この光触媒粒子含有多層延伸物24をそのまま、あるいは所定のサイズに切断することによって製造することができる。
多層延伸芯鞘繊維は、例えば図2に示す様に、芯となる断面円形の光触媒粒子15を含まない樹脂層(A’)31の上に、鞘となる光触媒粒子15を含む樹脂層(B’)32を積層した積層体34を延伸することによって、樹脂層(A’)31と樹脂層(B’)32の限界延伸倍率の差を利用して光触媒粒子15を樹脂層(B’)32の表面に露出させることによって得られる。
【0013】
「限界延伸倍率」は、具体的には図3に示した短区間延伸装置を用いて測定することができる。
この装置は低速ロール41と高速ロール43の回転速度の差によって、これら低速ロール41と高速ロール43との間の試料50を引き延ばすものである。
低速ロール41と、高速ロール43とのギャップ間隔は5mmである。
【0014】
樹脂層(A’)の限界延伸倍率を測定する際には、樹脂層(A’)を構成する材料と同じ材料からなり、かつ樹脂層(A’)と同じ厚さのフィルムを試料50とする。同じ種類の樹脂であっても層の厚さによって限界延伸倍率の値が異なるためである。
これを、図3に示す装置に供給し、80℃の温度条件下において、低速ロール41と高速ロール43とを異なる速度で回転させることによって延伸する。
はじめは低速ロール41を速度3m/minにて回転させ、高速ロール43を速度3m/minにて回転させる。ついで高速ロール43の回転速度を1.5m/minずつ上昇させ、延伸倍率を1.5倍、2倍、2.5倍と0.5倍ずつ上昇させる。そして、試料50が延伸切れを生じたり裂けたりするまで実験を行う。そして、この延伸切れ等が生じる直前の試料50の延伸倍率を「限界延伸倍率」とする。
【0015】
樹脂層(B’)の限界延伸倍率を測定する際も同様にして試料50を作製して限界延伸倍率を測定することができる。試料50は樹脂層(B’)と同じ材料から構成する。すなわち、光触媒粒子15を含む樹脂から試料50を製造する。試料50の厚さは、図1(a)に示す延伸前の樹脂層(B’)と同じ厚さとする。
【0016】
多層延伸芯鞘繊維を製造する場合は、樹脂層(A’)31の直径と同じ厚さのフィルム状の試料50を作製して限界延伸倍率を測定する。樹脂層(B’)32については、樹脂層(B’)32の内周から外周までの距離と同じ厚さのフィルム状の試料50を作製して限界延伸倍率を測定する。
【0017】
本発明においては、樹脂層(B’)の限界延伸倍率は、樹脂層(A’)の限界延伸倍率よりも小さいことが必要である。また、樹脂層(B’)の限界延伸倍率と、樹脂層(A’)の限界延伸倍率の差が大きいほど光触媒粒子を露出させる効果が向上する。製造性の点から好ましくは限界延伸倍率の差(「樹脂層(A’)の限界延伸倍率」−「樹脂層(B’)の限界延伸倍率」)が0.5以上、より好ましくは1以上あることが好ましい。
【0018】
樹脂層(A’)の厚さと、樹脂層(B’)の厚さ[樹脂層(B’)が2層以上ある場合は1層ずつの厚さ]の比率は、成膜性の点から実用的には1:2〜30:1程度の範囲で設定できる。
そして、樹脂層(B’)の厚さが薄いほど、光触媒粒子が表面に露出しやすく、また積層体(未延伸フィルム)全体の延伸性の点からも好ましい。
限界延伸倍率は、樹脂層を構成する樹脂の種類や、延伸前の樹脂層の厚さによって異なる。
【0019】
ここで、本特許請求の範囲及び明細書において、多層延伸フィルムや多層延伸フラットヤーンの場合、「樹脂層(A’)の厚さ」及び「樹脂層(B’)の厚さ」とは、未延伸の樹脂層の厚さを示す。多層延伸芯鞘繊維の場合、「樹脂層の厚さ」とは、未延伸の円柱状体の中心に配置される断面円形の樹脂層については、その直径を示すものとする。そして、中心の樹脂層の外側に配置されるドーナッツ状の樹脂層については、その内周と外周との間の距離を示すものとする。
【0020】
本発明の光触媒粒子含有多層延伸物は、樹脂層(B’)、樹脂層(A’)、樹脂層(B’)の順に積層された積層体を延伸して得られるものであることが好ましい。樹脂層(A’)の両面に樹脂層(B’)が設けられていることにより、光触媒粒子含有多層延伸物の表面全体に光触媒粒子が露出し、光触媒粒子による作用を向上させることができるためである。
【0021】
樹脂層(A’)を構成する樹脂としては熱可塑性樹脂の中から引張伸度が大きく、延伸しやすいものを選択して用いることが好ましい。
樹脂層(A’)は、LLDPE、チーグラー触媒系高密度ポリエチレン(チーグラー系触媒を用いて得られる高密度ポリエチレン)、PP、ポリエステルからなる群から選ばれる1種以上を含むことが好ましい。これらの材料は延伸しやすい材料であり、樹脂層(A’)の限界延伸倍率を樹脂層(B’)の限界延伸倍率よりも大きくすることが容易だからである。
ポリエステルとしては、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペートが好ましい。
これらの中でも、LLDPE、ポリブチレンサクシネートアジペートが好ましい。
また、これらのMFR(メルトフローレート;JIS K7210)は0.01〜50(g/10分)であることが好ましく、さらに好ましくは0.1〜20(g/10分)である。MFRが下限値以上であることにより、例えば押出成形時のモーター負荷を適当な大きさとすることができ、好ましい。またMFRが上限値以下であることにより、流れ性を適度に制御して、シート状やフィルム状に成形しやすくなるため、好ましい。
MFRの測定条件は、ポリエチレン、ポリブテン−1は温度:190℃、荷重:2.16kg;PPは温度:230℃、荷重:2.16kgである。その他の樹脂もJISに従い測定する。
樹脂層(A’)は1種または2種以上の樹脂を用いて構成することができる。
【0022】
樹脂層(B’)を構成する樹脂としては熱可塑性樹脂の中から引張伸度が小さく、延伸しにくいものを選択して用いることが好ましい。
【0023】
樹脂層(B’)は、長鎖分岐を有する樹脂を含むことが好ましい。
ここで、「長鎖分岐を有する樹脂」とは、LDPE、クロム触媒系高密度ポリエチレン(クロム触媒を用いて得られる高密度ポリエチレン)の様に、その製造方法によって長鎖分岐を有する構造となっているものや、ポリマーの側鎖に他の構成単位を誘導するモノマーやオリゴマーを反応させることによって長鎖分岐を生じさせたもの等を包含する概念とする。
長鎖分岐とは、重合体の主鎖から伸びる、炭素数100以上、好ましくは500以上、実質的には主鎖と同程度の鎖状の有機基(炭素を含む基を示す)を示す。この様な分岐を有することにより、限界延伸倍率が小さくなり、光触媒粒子を露出させやすくなる。鎖状の有機基は炭化水素基が好ましい。
長鎖分岐を有する樹脂として好適なものとしては、LDPE、クロム系高密度ポリエチレン、長鎖分岐を導入したポリプロピレン、長鎖分岐を導入したポリブチレンサクシネート、及び長鎖分岐を導入したポリブチレンサクシネートアジペート等が挙げられる。
長鎖分岐を導入したポリプロピレンは、ポリプロピレンに、高エネルギー線を照射することによって得ることができる。高エネルギー線とは、例えば、電子線、ガンマ線などである。
長鎖分岐を導入したポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペートは、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペートと、多官能モノマー、例えば、多官能のイソシアネートや、多価アルコールなどを反応させることにより、得ることができる。
【0024】
樹脂層(B’)は、1種または2種以上の樹脂を混合して用いることができる。
例えば樹脂層(A’)に好適な樹脂として挙げたLLDPE、チーグラー触媒系高密度ポリエチレン、PP、ポリエステル等を用いることができる。また、ポリブテン−1も好ましい。
【0025】
また、樹脂層(B’)においては、互いに非相溶性である2種以上の樹脂を混合して用いることが好ましい。2種以上の樹脂が非相溶性であることにより、これらを溶融混合しても樹脂層(B’)を構成する樹脂どうしは充分に混ざり合わず、均一な層を構成しにくい。そのため、積層体(未延伸フィルム)を延伸する際に、樹脂層(B’)を構成する非相溶性の樹脂どうしの間に亀裂等が生じやすくなる。そのため、光触媒粒子を効率よく露出させることができる。
例えば単独では限界延伸倍率が大きい樹脂どうしであっても、非相溶性の樹脂どうしを混合することによって、樹脂層(B’)が裂けやすくなるので、限界延伸倍率を小さくすることができる。
【0026】
相溶性は、混合物のガラス転移点や融点で判断することができる。
例えば、融点やガラス転移点の異なる2つの樹脂を混合した場合に、混合物の融点やガラス転移点が、その測定結果を表すチャートにおいて、混合前の各樹脂の融点やガラス転移点の間に単一のピークとして表れる場合に相溶、混合物の融点やガラス転移点が、混合前の各樹脂の融点やガラス転移点のピークのまま表れる場合に非相溶と判断できる。
ここでいう融点やガラス転移点は、一般的に求められるものであり、例えば融点であればDSC法(Differential Scanning Calorimetry)、ガラス転移点であれば動的粘弾性測定などの測定方法が挙げられる。
【0027】
非相溶性の樹脂どうしは、混合比に特に限定は無いが、一般的には1:9〜9:1(質量比)となるように混合して用いるのが好ましい。
非相溶の樹脂の組み合わせとしては、ポリエチレンとポリプロピレン、ポリエチレンとポリエステル、ポリプロピレンとポリエステル、ポリエチレンとポリブテン−1、ポリエステルどうしであれば、例えば、ポリブチレンサクシネートとポリ乳酸などが好ましい。
【0028】
樹脂層(B’)を構成する樹脂のMFRは、0.01〜50(g/10分)が好ましく、さらに好ましくは0.1〜20(g/10分)である。MFRが下限値以上であることにより、例えば押出成形時のモーター負荷を適度な範囲におさえることができる。また、MFRが上限値以下であると、流れ性が適度で、シート状やフィルム状に成形しやすい。
【0029】
光触媒粒子としては、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化鉛、酸化第二鉄、三酸化ビスマス、三酸化タングステン、チタン酸ストロンチウム等が挙げられ、二酸化チタンが好ましい。二酸化チタンはアパタイト、シリカ等で被覆等の処理がされたものも使用できる。
光触媒粒子の平均粒子径、BET(Brunauer,Emmett,Teller)比表面積から換算した粒径で0.02〜0.5μm、好ましくは0.05〜0.2μmである。樹脂層(B’)の光触媒粒子の配合量は0.5質量%〜50質量%、好ましくは2質量%〜10質量%である。光触媒粒子の配合量が下限値以上であることにより、光触媒効果を向上させることができる。上限値以下であることにより、経済的に有利であり、加工性も向上する。
【0030】
また、樹脂層(A’)と樹脂層(B’)には、それぞれ、この他各種の添加剤、充填剤を配合することもできる。例えば、酸化防止剤、安定剤、耐候剤、滑剤、スリップ剤、帯電防止剤、可塑剤、紫外線吸収剤、ブロッキング防止剤、難燃剤など、一般に用いられている樹脂添加剤、充填剤が例示できる。
【0031】
この様に、本発明においては、樹脂と光触媒粒子を組み合わせた製品において、光触媒粒子を表面に露出させることができるので、光触媒粒子の光触媒効果を向上させることができる。
【実施例】
【0032】
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
表1に示す材料を用いて、直径200mmの丸ダイを用い、押出温度180℃、ブロー比1.5、速度10m/minの条件で、インフレーション法により、厚さ110μmの樹脂層(A’)の両面に、厚さ20μmの樹脂層(B’)がそれぞれ積層された厚さ150μmのフィルム状の積層体(三層構造)を製造した。表1には樹脂層(A’)と樹脂層(B’)の限界延伸倍率をそれぞれ記載した。
そして、この積層体を、図3に示す短区間延伸装置を用いて、80℃で3倍延伸して厚さ50μmの光触媒粒子含有多層延伸物(多層延伸フィルム)を得た。
これを試料として、以下の評価を行った。
【0033】
(実施例2)
表1に示す材料を用いて、温度240℃、引取速度5m/minの条件で、Tダイ法により、厚さ170μmの樹脂層(A’)の片面に厚さ30μmの樹脂層(B’)が積層された厚さ200μmのフィルム状の積層体(二層構造)を製造した。表1には樹脂層(A’)と樹脂層(B’)の限界延伸倍率をそれぞれ記載した。
そして、この積層体を、図3に示す短区間延伸装置を用いて、80℃で5倍延伸して厚さ40μmの光触媒粒子含有多層延伸物(多層延伸フィルム)を得た。
これを試料として、以下の評価を行った。
【0034】
(実施例3)
表1に示す材料を用いて、実施例1と同様の条件で、インフレーション法により、厚さ50μmの樹脂層(A’)の両面に、厚さ10μmの樹脂層(B’)がそれぞれ積層された厚さ70μmのフィルム状の積層体(三層構造)を製造した。表1には樹脂層(A’)と樹脂層(B’)の限界延伸倍率をそれぞれ記載した。
そして、この積層体を、図3に示す短区間延伸装置を用いて、80℃で2.8倍延伸して厚さ25μmの光触媒粒子含有多層延伸物(多層延伸フィルム)を得た。
これを試料として、以下の評価を行った。
【0035】
(比較例1)
表2に示す材料を用いて、実施例1と同様の条件で、インフレーション法により、厚さ150μmの単層の積層体を製造した。そして、図3に示す短区間延伸装置を用いて、80℃で3倍延伸して厚さ50μmの延伸フィルム)を得た。
これを試料として、以下の評価を行った。
【0036】
(比較例2)
実施例1の積層体(未延伸フィルム)を試料とし、以下の評価を行った。
【0037】
【表1】

【0038】
【表2】

【0039】
[評価]
10cm×10cmのサイズに切断した試料を、メチレンブルー水溶液(90cc)中に試料を浸漬し、ブラックライトを照射し、波長664nmの吸光度の変化を測定した。
メチレンブルー濃度の初期吸光度50%であった。ブラックライト照射量は1mW/cmとした。
結果を表3に示した。
【0040】
【表3】

【0041】
表3に示した結果から明らかな様に、本発明に係る実施例の光触媒粒子含有多層延伸物は吸光度が速やかに小さくなり、光触媒粒子の作用によってメチレンブルーが速やか分解されることがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】図1は本発明の光触媒粒子含有多層延伸物の一例を示した断面図であり、図1(a)は延伸前の積層体を示した断面図、図1(b)は延伸後の光触媒粒子含有多層延伸物を示した断面図である。
【図2】多層延伸芯鞘繊維の製造に用いる積層体の断面図である。
【図3】「限界延伸倍率」を測定する短区間延伸装置の概略構成図である。
【符号の説明】
【0043】
11 樹脂層(A’)
12、13 樹脂層(B’)
14 積層体(未延伸フィルム)
15 光触媒粒子
21 樹脂層(A)
22、23 樹脂層(B)
24 光触媒粒子含有多層延伸物
31 樹脂層(A’)
32 樹脂層(B’)
34 積層体


【特許請求の範囲】
【請求項1】
光触媒粒子を含有しない樹脂層(A’)と、光触媒粒子を含有し、かつ前記樹脂層(A’)よりも限界延伸倍率が小さい樹脂層(B’)とを有する積層体を延伸して得られることを特徴とする光触媒粒子含有多層延伸物。
【請求項2】
樹脂層(A’)の厚さが樹脂層(B’)の厚さより大きい請求項1記載の光触媒粒子含有多層延伸物。
【請求項3】
樹脂層(B’)の限界延伸率に対する樹脂層(A’)の限界延伸倍率の比が1.5以上である請求項1または2に記載の光触媒粒子含有多層延伸物。
【請求項4】
前記積層体は、樹脂層(B’)、樹脂層(A’)、樹脂層(B’)の順に積層されてなる請求項1〜3のいずれかに記載の光触媒粒子含有多層延伸物。
【請求項5】
樹脂層(A’)は、直鎖状低、密度ポリエチレン(LLDPE)、チーグラー触媒系高密度ポリエチレン、ポリプロピレン(PP)、ポリエステルからなる群から選ばれる1種以上を含む請求項1〜4のいずれかに記載の光触媒粒子含有多層延伸物。
【請求項6】
樹脂層(B’)は、2種以上の樹脂を含み、これら2種以上の樹脂は互いに非相溶性である請求項1〜5のいずれかに記載の光触媒粒子含有多層延伸物。
【請求項7】
樹脂層(B’)は、長鎖分岐を有する樹脂を含む請求項1〜6のいずれかに記載の光触媒粒子含有多層延伸物。
【請求項8】
光触媒粒子は、二酸化チタン粒子を含む請求項1〜7のいずれかに記載の光触媒粒子含有多層延伸物。
【請求項9】
樹脂層(B’)は、低、密度ポリエチレン(LDPE)、クロム触媒系高密度ポリエチレン、長鎖分岐を導入したポリプロピレン、長鎖分岐を導入したポリブチレンサクシネート、及び長鎖分岐を導入したポリブチレンサクシネートアジペートからなる群から選ばれる1種以上を含む請求項1〜8のいずれかに記載の光触媒粒子含有多層延伸物。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の光触媒粒子含有多層延伸物からなる多層延伸フィルム。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれかに記載の光触媒粒子含有多層延伸物からなる多層延伸フラットヤーン。
【請求項12】
請求項1〜9のいずれかに記載の光触媒粒子含有多層延伸物からなる芯鞘構造の多層延伸芯鞘繊維であって、表面が樹脂層(B’)を延伸して得られる樹脂層(B)から構成されている多層延伸芯鞘繊維。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−237593(P2007−237593A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−64146(P2006−64146)
【出願日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【出願人】(000206163)平成ポリマー株式会社 (7)
【Fターム(参考)】