説明

光触媒組成物

【課題】本発明の課題は、特に光触媒活性と耐候性を両立し、防汚性、透明性等に優れた光触媒体を与える組成物を提供することである。
【解決手段】粒子径が1以上100nm以下の光触媒粒子(a1)と、粒子径が1以上100nm以下の酸化珪素(a2)と、屈折率が2.0以上2.5以下の金属酸化物(a3){ただし光触媒粒子(a1)を除く}と、重合体エマルジョン粒子(B)を水中に分散させて含む光触媒組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
光触媒活性と耐候性を両立し、防汚性、透明性等に優れた光触媒体を与える光触媒組成物に関する。本発明の光触媒組成物は、特に建築外装、自動車、ディスプレイ、レンズのコーティングとして有用である。
【背景技術】
【0002】
光触媒とは、光照射によって他の物質の反応(例えば酸化、還元反応)を進行させる物質のことをいう。言い換えれば、伝導帯と価電子帯との間のエネルギーギャップよりも大きなエネルギー(すなわち短い波長)を有する光(励起光)を照射した際に、価電子帯中の電子の励起(光励起)が生じて、伝導電子と正孔とを生成しうる物質である。このとき、伝導帯に生成した電子の還元力及び/又は価電子帯に生成した正孔の酸化力を利用して、種々の化学反応を行うことができる。
【0003】
また、光触媒活性とは、光照射によって酸化、還元反応を進行させる活性をいう。光触媒は、この光触媒活性を有することにより、有機物質の分解作用や表面の親水化作用を示すことが知られている。かかる作用に基づいて、光触媒は環境浄化や防汚、防曇等の分野に応用されている。例えば、特許文献1では、光触媒粒子を含有する表層部を備え、降雨により自己清浄化(セルフクリーニング)される表面を有する屋外表示板、及びその清浄化方法が提案されている。特許文献1によると、光触媒を含有する表面層を備えることにより、光触媒の光励起に応じて、表層部の表面は親水性を呈する。そのため、屋外表示板の表面が降雨にさらされた時に付着堆積物及び/又は汚染物が雨滴により洗い流されることが可能となる、とされている。
【0004】
ところで、光触媒を環境浄化や防汚、防曇等の分野へ応用させる場合、基体への光触媒の固定化技術が非常に重要な役割を担う。この固定化技術では、(ア)光触媒活性を損なわずに基体へ強固に固定化するとともに、(イ)光触媒作用で基体及びそのコーティングが劣化しない安定性を付与する必要がある。
【0005】
このような必要性を満足する光触媒の固定化を意図して、基体とその上に設けられた光触媒を含有する表層部との間に保護層を介在させる方法が提案されている。例えば、特許文献2では、基材フィルムの一方の面に所定の厚みを有するケイ素酸化物又はアルミニウム酸化物からなる蒸着層を設け、その上に酸化チタンを主成分とする光触媒層を設けた多層光触媒フィルムが提案されている。あるいは、特許文献3では、光触媒を樹脂塗料中に混合し、この樹脂塗料を基材へコーティングする方法も提案されている。さらには、例えば特許文献4に開示されているように、光触媒粒子表面に光触媒では分解困難な無機物を担持する方法も提案されている。
【0006】
WO2007/069596、特開2009−221362号公報において、さらに耐汚染性、耐候性に優れた光触媒が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−230810号公報
【特許文献2】特開平11−348172号公報
【特許文献3】特開2002−154915号公報
【特許文献4】特開2005−170687号公報
【特許文献5】特開WO2007/069596
【特許文献6】特開2009−221362号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、特に光触媒活性と耐候性を両立し、防汚性、透明性等に優れた光触媒体を与える組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明に到達した。
すなわち、本発明は以下の通りである。
【0010】
1.粒子径が1以上100nm以下の光触媒粒子(a1)と、粒子径が1以上100nm以下の酸化珪素(a2)と、屈折率が1.8以上2.5以下の金属酸化物(a3){ただし光触媒粒子(a1)を除く}と、重合体エマルジョン粒子(B)を水中に分散させて含む光触媒組成物。
【0011】
2.屈折率が1.8以上2.5以下の金属酸化物(a3)として、酸化ジルコニウムを含んでいる発明1に記載の光触媒組成物。
【0012】
3.前記酸化ジルコニウムが酸化ジルコニウム−酸化イットリウム混合物コロイドである、発明2に記載の組成物。
【0013】
4.前記重合体エマルジョン粒子(B)が、水及び乳化剤の存在下に加水分解性珪素化合物(b1)及び、ビニル単量体(b2)を重合して得られたものであり、粒子径が10〜800nmである、発明1〜3に記載の組成物。
【0014】
5.光触媒粒子(a1)が酸化チタンである、発明1〜4に記載の組成物。
【0015】
6.発明1〜5のいずれか一項に記載の組成物を基材上に形成してなることを特徴とする光触媒体。
【0016】
7.発明6に記載の光触媒体を外装に用いたことを特徴とする建築物。
【0017】
8.発明6に記載の光触媒体を外装に用いたことを特徴とする住宅。
【発明の効果】
【0018】
光触媒活性と耐候性を両立し、防汚性、透明性等に優れた光触媒体を、特殊な装置を用いずに、簡単に、少ない環境負荷で、かつ簡便に形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は粒子径が1以上100nm以下の光触媒粒子(a1)と、粒子径が1以上100nm以下の酸化珪素(a2)と、屈折率が1.8以上2.5以下の金属酸化物(a3){ただし光触媒粒子(a1)を除く}と、重合体エマルジョン粒子(B)を水中に分散させて含む光触媒組成物である。
【0020】
本発明に用いる光触媒粒子(a1)の例としては、例えば、TiO、ZnO、SrTiO、BaTiO、BaTiO、BaTi、KNbO、Nb、Fe、Ta、KTaSi、WO、SnO、Bi、BiVO、NiO、CuO、RuO、CeO等、さらにはTi、Nb、Ta、及びVから選ばれた少なくとも1種の元素を有する層状酸化物(例えば特開昭62−74452号公報、特開平2−172535号公報、特開平7−24329号公報、特開平8−89799号公報、特開平8−89800号公報、特開平8−89804号公報、特開平8−198061号公報、特開平9−248465号公報、特開平10−99694号公報、特開平10−244165号公報等参照)を挙げることができる。
【0021】
これらの光触媒の中でTiO(酸化チタン)は無害であり、化学的安定性にも優れるため好ましい。酸化チタンとしては、アナターゼ、ルチル、ブルッカイトのいずれも使用できる。その中でも、ルチル型酸化チタンを用いると、活性と耐候性の制御が可能となるため好ましい。
【0022】
本発明は酸化珪素(a2)の配合により、耐候性、親水性に優れた光触媒体を得ることが可能となる。特に、重合体エマルジョン粒子(B)と相互作用すると、耐候性、耐薬品性、光学特性、更には防汚性、防曇性、帯電防止性等にさらに優れた光触媒体を形成することが可能となる。
【0023】
ここで、上記酸化珪素(a2)と重合体エマルジョン粒子(B)との相互作用の例としては、例えば酸化珪素(a2)が有する水酸基と重合体エマルジョン粒子(B)を構成する加水分解性金属化合物(b1)の重合生成物との縮合(化学結合)や、重合体エマルジョン粒子(B)の一部を構成する2級及び/又は3級アミド基等との結合(水素結合)等を例示することができる。
【0024】
酸化珪素(a2)の状態としては、特に制限はないが、水及び/又は親水性有機溶媒中に分散していると取り扱い容易で好ましい。ここで、酸化珪素(a2)は親水性有機溶媒としては、例えばエチレングリコール、ブチルセロソルブ、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、エタノール、メタノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド等のアミド類、ジメチルスルホキシド、ニトロベンゼン等、さらにはこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
酸化珪素(a2)の粒子径は透明性の面から50nm以下である事が好ましい。
【0025】
屈折率が1.8以上2.5以下の金属酸化物を配合することで塗膜の屈折率を制御することが可能となる他、紫外線遮蔽効果により耐候性が向上する。このような金属酸化物の例としては、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化クロム、酸化カドミウム、酸化鉄、酸化銅、酸化セリウム、酸化スズ等がある。
【0026】
そのなかでも酸化ジルコニウムが好ましい。酸化ジルコニウムの状態としては、特に制限はないが、水分散体が取り扱い上好ましい。中でも、pH8〜11の水分散体が配合安定性の面から好ましい。その粒子径は透明性の面から100nm以下であることが必要であり、好ましくは、50nm以下、より好ましくは30nm以下である
特に、酸化ジルコニウムを酸化イットリウムで安定化した、酸化ジルコニウム−酸化イットリウム混合物コロイドを用いた組成物から得られる、光触媒体は特に高い透明性をもち、下地の意匠性を阻害しないので好ましい。その混合比は、酸化ジルコニウムの質量/酸化イットリウムの質量=20/1〜1/1である事が好ましい。
【0027】
酸化ジルコニウムとしては、日産化学工業(株)製のナノユースZR−30BS(商品名)、ZR−30BH(商品名)、ZR−30BF(商品名)、ZR−30AH(商品名)、ZR−30AL(商品名)、第一希土化学(株)製のZSL−10A(商品名)、ZSL−10T(商品名)、ZSL−20N(商品名)等を挙げることができる。
【0028】
光触媒粒子(a1)の配合量は、組成物の全質量{光触媒粒子(a1)、酸化珪素(a2)、金属酸化物(a3)、重合体エマルジョン粒子(B)の質量合計}に対して、1〜25質量%の範囲が活性と耐候性、透明性の面から好ましい。同様に、酸化珪素(a2)の配合量は組成物の全質量に対して10〜75質量%が親水性、耐候性の面から好ましく、金属酸化物(a3)は組成物の全質量に対して1〜25質量%が耐候性、透明性、屈折率の制御上好ましい。
【0029】
本発明の光触媒組成物に用いる重合体エマルジョン粒子(B)としては、種々公知のものを用いることが可能である。
例えば、アクリルエマルジョン、スチレン−ブタジエンエマルジョン、PTFEエマルジョン、等を例示することが可能である。
【0030】
本実施形態において、重合体エマルジョン粒子(B)は、乳化重合等の方法で得られた重合体粒子を用いることができる。重合体エマルジョン粒子を構成するポリマーとしては、水性媒体中でのラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合などによって得られる従来公知のポリ(メタ)アクリレート系、ポリビニルアセテート系、酢酸ビニル−アクリル系、エチレン酢酸ビニル系、シリコーン系、ポリブタジエン系、スチレンブタジエン系、NBR系、ポリ塩化ビニル系、塩素化ポリプロピレン系、ポリエチレン系、ポリスチレン系、塩化ビニリデン系、ポリスチレン−(メタ)アクリレート系、スチレン−無水マレイン酸系に代表される単重合体又は共重合体、シリコーン変性アクリル系、フッ素−アクリル系、アクリル−シリコン系、エポキシ−アクリル系に代表される変性共重合体が挙げられる。これらは水分散体の状態にあり、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。その好ましい例としては、アクリル樹脂エマルジョン、アクリル−シリコン樹脂エマルジョンなどがある。重合体エマルジョン粒子は、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル等の単量体の乳化重合等で得ることができる。
【0031】
なかでも、水及び乳化剤の存在下に加水分解性珪素化合物(b1)及び、ビニル単量体(b2)を重合して得られる粒子径が10〜800nmである重合体エマルジョン粒子(B)を用いて得られる光触媒組成物からは、特に耐候性、透明性、柔軟性の高い光触媒体を得ることが可能であり、特に好ましい。
【0032】
本発明の重合体エマルジョン粒子(B)を製造するのに用いる上記加水分解性珪素化合物(b1)としては、下記式(1)で表される化合物やその縮合生成物、シランカップリング剤を例示することができる。
【0033】
SiWxRy (1)
(式中、Wは炭素数1〜20のアルコキシ基、水酸基、炭素数1〜20のアセトキシ基、ハロゲン原子、水素原子、炭素数1〜20のオキシム基、エノキシ基、アミノキシ基、及びアミド基から選ばれた少なくとも1種の基を表す。Rは、直鎖状又は分岐状の炭素数が1〜30個のアルキル基、炭素数5〜20のシクロアルキル基、及び置換されていないか又は炭素数1〜20のアルキル基若しくは炭素数1〜20のアルコキシ基若しくはハロゲン原子で置換されている炭素数6〜20のアリール基から選ばれる少なくとも1種の炭化水素基を表す。xは1以上4以下の整数であり、yは0以上3以下の整数である。また、x+y=4である。)
【0034】
ここでシランカップリング剤とは、ビニル重合性基、エポキシ基、アミノ基、メタクリル基、メルカプト基、イソシアネート基等の有機物と反応性を有する官能基が分子内に存在する、加水分解性珪素化合物(b1)を表す。
【0035】
上記珪素アルコキシド及びシランカップリング剤の具体例としては、例えばテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン等のテトラアルコキシシラン類;メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリエトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、n−ブチルトリエトキシシラン、n−ペンチルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−ヘプチルトリメトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、3,3,3−トリフロロプロピルトリメトキシシラン、3,3,3−トリフロロプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−ヒドロキシエチルトリメトキシシラン、2−ヒドロキシエチルトリエトキシシラン、2−ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、2−ヒドロキシプロピルトリエトキシシラン、3−ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、3−ヒドロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアナートプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアナートプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリn−プロポキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリイソプロポキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン等のトリアルコキシシラン類;ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジ−n−プロピルジメトキシシラン、ジ−n−プロピルジエトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、ジイソプロピルジエトキシシラン、ジ−n−ブチルジメトキシシラン、ジ−n−ブチルジエトキシシラン、ジ−n−ペンチルジメトキシシラン、ジ−n−ペンチルジエトキシシラン、ジ−n−ヘキシルジメトキシシラン、ジ−n−ヘキシルジエトキシシラン、ジ−n−ヘプチルジメトキシシラン、ジ−n−ヘプチルジエトキシシラン、ジ−n−オクチルジメトキシシラン、ジ−n−オクチルジエトキシシラン、ジ−n−シクロヘキシルジメトキシシラン、ジ−n−シクロヘキシルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン等のジアルコキシシラン類;トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン等のモノアルコキシシラン類等を挙げることができる。また、これらの珪素アルコキシドやシランカップリング剤は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0036】
上記珪素アルコキシドやシランカップリング剤が縮合生成物として使用されるとき、該縮合生成物のポリスチレン換算重量平均分子量は、好ましくは200〜5000、さらに好ましくは300〜1000である。
【0037】
上記珪素アルコキシドの中では、フェニル基を有する珪素アルコキシド、例えばフェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン等が、水及び乳化剤の存在下における重合安定性に優れるため非常に好ましい。
【0038】
本発明に用いることができる加水分解性珪素化合物(b1)の中で、3−(メタ)アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリn−プロポキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、2−トリメトキシシリルエチルビニルエーテル等のビニル重合性基を有するシランカップリング剤や、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン等のチオール基を有するシランカップリング剤は、ビニル単量体(b2)との共重合又は連鎖移動反応により化学結合を生成することが可能である。このため、ビニル重合性基やチオール基を有するシランカップリング剤を、単独で又は上述した珪素アルコキシド、シランカップリング剤、及びそれらの縮合生成物と混合若しくは複合化させて用いた場合、本発明の重合体エマルジョン粒子(B)を構成する加水分解性珪素化合物(b1)の重合生成物とビニル単量体(b2)の重合生成物は、化学結合により複合化できる。この様な重合体エマルジョン粒子(B)を含有する光触媒組成物は、耐候性、耐薬品性、光学特性、強度等に優れた光触媒体を形成することができるため、非常に好ましい。
【0039】
ビニル単量体(b2)としては、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル類の他、カルボキシル基含有ビニル単量体、水酸基含有ビニル系単量体、エポキシ基含有ビニル単量体、カルボニル基含有ビニル単量体、アニオン型ビニル単量体のような官能基を含有する単量体等を挙げることができる。
【0040】
上記(メタ)アクリル酸エステルの例としては、アルキル部の炭素数が1〜50の(メタ)アクリル酸アルキルエステル、エチレンオキシド基の数が1〜100個の(ポリ)オキシエチレンジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。(メタ)アクリル酸エステルの具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸メチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ドデシル等が挙げられる。(ポリ)オキシエチレンジ(メタ)アクリレートの具体例としては、ジ(メタ)アクリル酸エチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸ジエチレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸ジエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸テトラエチレングリコール等が挙げられる。
【0041】
なお、本明細書中で、(メタ)アクリルとはメタアクリル又はアクリルを簡便に表記したものである。
【0042】
上記カルボキシル基含有ビニル単量体としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸、無水マレイン酸、又はイタコン酸、マレイン酸、フマール酸などの2塩基酸のハーフエステル等である。カルボン酸基含有のビニル単量体を用いることによって、重合体エマルジョン粒子(B)にカルボキシル基を導入することができ、エマルジョンとしての安定性を向上させ、外部からの分散破壊作用に抵抗力を持たせることが可能となる。この際、導入したカルボキシル基は、一部又は全部を、アンモニアやトリエチルアミン、ジメチルエタノールアミン等のアミン類やNaOH、KOH等の塩基で中和することもできる。
【0043】
カルボキシル基含有ビニル単量体の使用量は、1種又は2種以上の混合物として、全ビニル単量体中において0〜50質量%であることが耐水性の面から好ましい。
【0044】
また、上記水酸基含有ビニル単量体としては、例えば2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピリ(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピリ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステルや、ジ−2−ヒドロキシエチルフマレート、モノ−2−ヒドロキシエチルモノブチルフマレート、アリルアルコールやエチレンオキシド基の数が1〜100個の(ポリ)オキシエチレンモノ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド基の数が1〜100個の(ポリ)オキシプロピレンモノ(メタ)アクリレート、さらには、「プラクセルFM、FAモノマー」(ダイセル化学(株)製の、カプロラクトン付加モノマーの商品名)や、その他のα,β−エチレン性不飽和カルボン酸のヒドロキシアルキルエステル類などを挙げることができる。上記(ポリ)オキシエチレン(メタ)アクリレートの具体例としては、(メタ)アクリル酸エチレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸エチレングリコール、(メタ)アクリル酸ジエチレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸ジエチレングリコール、(メタ)アクリル酸テトラエチレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸テトラエチレングリコール等が挙げられる。また、(ポリ)オキシプロピレン(メタ)アクリレートの具体例としては、(メタ)アクリル酸プロピレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸プロピレングリコール、(メタ)アクリル酸ジプロピレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸ジプロピレングリコール、(メタ)アクリル酸テトラプロピレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸テトラプロピレングリコール等が挙げられる。
【0045】
上述した水酸基含有ビニル単量体の使用量は、1種又は2種以上の混合物として、全ビニル単量体中において、好ましくは0〜80質量%、より好ましくは0.1〜50質量%である。
【0046】
また、上記グリシジル基含有ビニル単量体としては、例えばグリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル、アリルジメチルグリシジルエーテル等を挙げることができる。
【0047】
グリシジル基含有ビニル単量体や、カルボニル基含有ビニル単量体を使用すると、重合体エマルジョン粒子(B)が反応性を有し、ヒドラジン誘導体やカルボン酸誘導体、イソシアネート誘導体等により架橋させて耐溶剤性等の優れた光触媒体の形成が可能となる。グリシジル基含有ビニル単量体や、カルボニル基含有ビニル単量体の使用量は、全ビニル単量体中において好ましくは0〜50質量%である。
【0048】
ビニル単量体(b2)として、2級及び/又は3級アミド基を有するビニル単量体(b3)を少なくとも1種用いることが好ましい。
【0049】
2級及び/又は3級アミド基を有するビニル単量体(b3)の例としては、N−アルキル又はN−アルキレン置換(メタ)アクリルアミドを例示することができ、具体的には、例えばN−メチルアクリルアミド、N−メチルメタアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−エチルメタアクリルアミド、N−メチル−N−エチルアクリルアミド、N−メチル−N−エチルメタアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−n−プロピルアクリルアミド、N−イソプロピルメタアクリルアミド、N−n−プロピルメタアクリルアミド、N−メチル−N−n−プロピルアクリルアミド、N−メチル−N−イソプロピルアクリルアミド、N−アクリロイルピロリジン、N−メタクリロイルピロリジン、N−アクリロイルピペリジン、N−メタクリロイルピペリジン、N−アクリロイルヘキサヒドロアゼピン、N−アクリロイルモルホリン、N−メタクリロイルモルホリン、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、N,N’−メチレンビスメタクリルアミド、N−ビニルアセトアミド、ダイアセトンアクリルアミド、ダイアセトンメタアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタアクリルアミド等を挙げることができる。
【0050】
上記2級及び/又は3級アミド基を有するビニル単量体(b3)の中で、3級アミド基を有するビニル単量体を用いることが好ましい。特にN,N−ジエチルアクリルアミドは、水及び乳化剤の存在下における重合安定性に非常に優れるとともに、上述した加水分解性珪素化合物(b1)の重合生成物の水酸基や金属酸化物(A)の水酸基と強固な水素結合を形成することが可能であるため、非常に好ましい。
【0051】
上記2級及び/又は3級アミド基を有するビニル単量体(b3)の使用量は、得られる重合体エマルジョン粒子(B)に対する質量比[(b3)/(B)]として0.1以上0.5以下であることが好ましく、また金属酸化物(A)との質量比(b3)/(A)が0.1以上1.0以下であることが好ましい。
【0052】
上記以外のビニル単量体(b2)の具体例としては、例えば(メタ)アクリルアミド、エチレン、プロピレン、イソブチレン等のオレフィン類、ブタジエン等のジエン類、塩化ビニル、塩化ビニリデンフッ化ビニル、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン等のハロオレフィン類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、n−酪酸ビニル、安息香酸ビニル、p−t−ブチル安息香酸ビニル、ピバリン酸ビニル、2−エチルヘキサン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、ラウリン酸ビニル等のカルボン酸ビニルエステル類、酢酸イソプロペニル、プロピオン酸イソプロペニル等のカルボン酸イソプロペニルエステル類、エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル等のビニルエーテル類、スチレン、ビニルトルエン等の芳香族ビニル化合物、酢酸アリル、安息香酸アリル等のアリルエステル類、アリルエチルエーテル、アリルフェニルエーテル等のアリルエーテル類、さらに4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6,−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6,−ペンタメチルピペリジン、パーフルオロメチル(メタ)アクリレート、パーフルオロプロピル(メタ)アクリレート、パーフルオロプロピロメチル(メタ)アクリレート、ビニルピロリドン、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アリル等やそれらの併用が挙げられる。
【0053】
本発明においては、ビニル単量体(b2)の重合生成物の分子量を制御する目的で、連鎖移動剤を使用してもよい。
【0054】
かかる連鎖移動剤の一例としては、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタンのようなアルキルメルカプタン類;ベンジルメルカプタン、ドデシルベンジルメルカプタンのような芳香族メルカプタン類;チオリンゴ酸のようなチオカルボン酸又はそれらの塩若しくはそれらのアルキルエステル類、又はポリチオール類、ジイソプロピルキサントゲンジスルフィド、ジ(メチレントリメチロールプロパン)キサントゲンジスルフィド及びチオグリコール、さらにはα−メチルスチレンのダイマー等のアリル化合物等を挙げることができる。
【0055】
これら連鎖移動剤の使用量は、全ビニル単量体に対して好ましくは0.001〜30質量%、さらに好ましくは0.05〜10質量%の範囲で用いることができる。
【0056】
加水分解性珪素化合物(b1)に対するビニル単量体(b2)の質量比(b2)/(b1)は、5/95〜95/5、好ましくは10/90〜90/10である。
【0057】
本発明において、加水分解性珪素化合物(b1)としてビニル重合性基を有するシランカップリング剤を用いることが耐候性の面から特に好ましく、その配合量は重合体エマルジョン粒子(B)100質量部に対して0.01以上20質量部以下であることが重合安定性の面から好ましい。さらに好ましくは、0.1以上10質量部以下である。
【0058】
また、ビニル重合性基を有するシランカップリング剤の配合量は、ビニル単量体(b2)100質量部に対して0.1以上100質量部以下であることが重合安定性の面から好ましい。
【0059】
本発明においては、上述した加水分解性珪素化合物(b1)に環状シロキサンオリゴマーを併用して用いることが可能である。環状シロキサンオリゴマーの併用により、本発明の光触媒組成物からは、柔軟性等に優れた光触媒体を形成することができる。
【0060】
上記環状シロキサンオリゴマーとしては、下記式(2)で表される化合物を例示することができる。
【0061】
(R’SiO)m (2)
(式中、R’は、水素原子、直鎖状又は分岐状の炭素数が1〜30個のアルキル基、炭素数5〜20のシクロアルキル基、及び置換されていないか又は炭素数1〜20のアルキル基若しくは炭素数1〜20のアルコキシ基若しくはハロゲン原子で置換されている炭素数6〜20のアリール基から選ばれる少なくとも1種を表す。mは2≦m≦20の整数である。)
【0062】
上記環状シロキサンオリゴマーの中で、反応性等の点からオクタメチルシクロテトラシロキサン等の環状ジメチルシロキサンオリゴマーが好ましい。
【0063】
また、本発明において、上述した加水分解性珪素化合物(b1)にチタンアルコキシド、ジルコニウムアルコキシド、及びそれらの縮合生成物、又は、それらのキレート化物を併用して用いることもできる。これらの化合物の併用により、本発明の光触媒組成物からは、耐水性、硬度等に優れた光触媒体を形成することができる。
【0064】
上記チタンアルコキシドの具体例としては、例えば、テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラ−n−プロポキシチタン、テトラ−n−ブトキシチタン、テトラ−sec−ブトキシチタン、テトラ−tert−ブトキシチタン等が挙げられる。
【0065】
上記チタンアルコキシドが縮合生成物として使用されるとき、該縮合生成物のポリスチレン換算重量平均分子量は、好ましくは200〜5000、さらに好ましくは300〜1000である。
【0066】
また、上記ジルコニウムアルコキシドの具体例としては、テトラメトキシジルコニウム、テトラエトキシジルコニウム、テトライソプロポキシジルコニウム、テトラ−n−プロポキシジルコニウム、テトラ−n−ブトキシジルコニウム、テトラ−sec−ブトキシジルコニウム、テトラ−tert−ブトキシジルコニウム等が挙げられる。
【0067】
上記ジルコニウムアルコキシドが縮合生成物として使用されるとき、該縮合生成物のポリスチレン換算重量平均分子量は、好ましくは200〜5000、さらに好ましくは300〜1000である。
【0068】
また、遊離の金属化合物に配位させてキレート化物を形成するのに好ましいキレート化剤としては、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類;アセチルアセトン;アセト酢酸エチルなどであって分子量1万以下のものを例示することができる。これらのキレート化剤を用いることにより、加水分解性金属化合物(b1)の重合速度を制御することができ、水及び乳化剤の存在下における重合安定性を優れたものにするため非常に好ましい。この際、キレート化剤は、これを配位させる遊離の金属化合物の金属原子1モル当たり、0.1モル〜2モルの割合で用いると効果が大きく好ましい。
【0069】
本発明において、重合体エマルジョン粒子(B)の合成に用いることができる乳化剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルスルホン酸、アルキルスルホコハク酸、ポリオキシエチレンアルキル硫酸、ポリオキシエチレンアルキルアリール硫酸、ポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテルスルホン酸等の酸性乳化剤、酸性乳化剤のアルカリ金属(Li、Na、K等)塩、酸性乳化剤のアンモニウム塩、脂肪酸石鹸等のアニオン性界面活性剤や、例えばアルキルトリメチルアンモニウムブロミド、アルキルピリジニウムブロミド、イミダゾリニウムラウレート等の四級アンモニウム塩、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩型のカチオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンオキシプロピレンブロックコポリマー、ポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテル等のノニオン型界面活性剤やラジカル重合性の二重結合を有する反応性乳化剤等を例示することができる。
【0070】
これらの乳化剤の中で、ラジカル重合性の二重結合を有する反応性乳化剤を選択すると、本発明の重合体エマルジョン粒子(B)の水分散安定性が非常に良好になると共に、該重合体エマルジョン粒子(B)を含有する本発明の光触媒組成物からは、耐水性、耐薬品性、光学特性、強度等に優れた光触媒体を形成することができるため、非常に好ましい。
【0071】
上記ラジカル重合性の二重結合を有する反応性乳化剤としては、例えばスルホン酸基又はスルホネート基を有するビニル単量体、硫酸エステル基を有するビニル単量体やそれらのアルカリ金属塩、アンモニウム塩、ポリオキシエチレン等のノニオン基を有するビニル単量体、4級アンモニウム塩を有するビニル単量体等を挙げることができる。
【0072】
上記反応性乳化剤の具体例として、スルホン酸基又はスルホネート基を有するビニル単量体の塩を例にとると、ラジカル重合性の二重結合を有し、かつスルホン酸基のアンモニウム塩、ナトリウム塩又はカリウム塩である基により一部が置換された、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜4のアルキルエーテル基、炭素数2〜4のポリアルキルエーテル基、炭素数6又は10のアリール基及びコハク酸基からなる群から選ばれる置換基を有する化合物であるか、スルホン酸基のアンモニウム塩、ナトリウム塩又はカリウム塩である基が結合しているビニル基を有するビニルスルホネート化合物である。硫酸エステル基を有するビニル単量体は、ラジカル重合性の二重結合を有し、かつ硫酸エステル基のアンモニウム塩、ナトリウム塩又はカリウム塩である基により一部が置換された、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜4のアルキルエーテル基、炭素数2〜4のポリアルキルエーテル基及び炭素数6又は10のアリール基からなる群から選ばれる置換基を有する化合物である。
【0073】
上記スルホン酸基のアンモニウム塩、ナトリウム塩又はカリウム塩である基により一部が置換されたコハク酸基を有する化合物の具体例としては、アリルスルホコハク酸塩が挙げられる。これらの具体例として、例えば、エレミノールJS−2(商品名)(三洋化成(株)製)、ラテムルS−120(商品名)、S−180A(商品名)又はS−180(商品名)(花王(株)製)等を挙げることができる。
【0074】
また、上記スルホン酸基のアンモニウム塩、ナトリウム塩又はカリウム塩である基により一部が置換された、炭素数2〜4のアルキルエーテル基又は炭素数2〜4のポリアルキルエーテル基を有する化合物の具体例として、例えばアクアロンHS−10又はKH−1025(商品名)(第一工業製薬(株)製)、アデカリアソープSE−1025N(商品名)又はSR−1025(商品名)(旭電化工業(株)製)等を挙げることができる。
【0075】
その他、スルホネート基により一部が置換されたアリール基を有する化合物の具体例として、p−スチレンスルホン酸のアンモニウム塩、ナトリウム塩及びカリウム塩等が挙げられる。
【0076】
上記スルホン酸基のアンモニウム塩、ナトリウム塩又はカリウム塩である基が結合しているビニル基を有するビニルスルホネート化合物として例えば、2−スルホエチルアクリレート等のアルキルスルホン酸(メタ)アクリレートやメチルプロパンスルホン酸(メタ)アクリルアミド、アリルスルホン酸等のアンモニウム塩、ナトリウム塩及びカリウム塩が挙げられる。
【0077】
また、上記の硫酸エステル基のアンモニウム塩、ナトリウム塩又はカリウム塩により一部が置換された炭素数2〜4のアルキルエーテル基又は炭素数2〜4のポリアルキエーテル基を有する化合物としては、例えばスルホネート基により一部が置換されたアルキルエーテル基を有する化合物等がある。
【0078】
また、ノニオン基を有するビニル単量体の具体例としては、α−〔1−〔(アリルオキシ)メチル〕−2−(ノニルフェノキシ)エチル〕−ω−ヒドロキシポリオキシエチレン(商品名:アデカリアソープNE−20、NE−30、NE−40等、旭電化工業(株)製)、ポリオキシエチレンアルキルプロペニルフェニルエーテル(商品名:アクアロンRN−10、RN−20、RN−30、RN−50等、第一製薬工業(株)製)等を挙げることができる。
【0079】
上記乳化剤の使用量としては、重合体エマルジョン粒子(B)100質量部に対して、20質量部以下となる範囲内が適切であり、なかでも、0.001〜10質量部となる範囲内が好ましい。
【0080】
また、上記乳化剤以外に、本発明の重合体エマルジョン粒子(B)の水分散安定性を向上させる目的で分散安定剤を使用することもできる。該分散安定剤としては、ポリカルボン酸及びスルホン酸塩からなる群から選ばれる各種の水溶性オリゴマー類や、ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロース、澱粉、マレイン化ポリブタジエン、マレイン化アルキッド樹脂、ポリアクリル酸(塩)、ポリアクリルアミド、水溶性又は水分散性アクリル樹脂などの合成又は天然の水溶性又は水分散性の各種の水溶性高分子物質が挙げられ、これらの1種又は2種以上の混合物を使用することができる。
【0081】
これらの分散安定剤を使用する場合、その使用量としては、重合体エマルジョン粒子(B)100質量部に対して、10質量部以下となる範囲内が適切であり、なかでも、0.001〜5質量部となる範囲内が好ましい。
【0082】
本発明において、加水分解性珪素化合物(b1)及びビニル単量体(b2)の重合は、重合触媒存在下で実施するのが好ましい。
【0083】
ここで、加水分解性珪素化合物(b1)の重合触媒としては、塩酸、フッ酸等のハロゲン化水素類、酢酸、トリクロル酢酸、トリフルオロ酢酸、乳酸等のカルボン酸類、硫酸、p−トルエンスルホン酸等のスルホン酸類、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルスルホン酸、アルキルスルホコハク酸、ポリオキシエチレンアルキル硫酸、ポリオキシエチレンアルキルアリール硫酸、ポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテルスルホン酸等の酸性乳化剤類、酸性又は弱酸性の無機塩、フタル酸、リン酸、硝酸のような酸性化合物類;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメチラート、酢酸ナトリウム、テトラメチルアンモニウムクロリド、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、トリブチルアミン、ジアザビシクロウンデセン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、エタノールアミン類、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)−アミノプロピルトリメトキシシランのような塩基性化合物類;ジブチル錫オクチレート、ジブチル錫ジラウレートのような錫化合物等を挙げることができる。
【0084】
これらの中で、加水分解性珪素化合物(b1)の重合触媒としては、重合触媒のみならず乳化剤としての作用を有する酸性乳化剤類、特に炭素数が5〜30のアルキルベンゼンスルホン酸(ドデシルベンゼンスルホン酸等)が非常に好ましい。
【0085】
一方、ビニル単量体(b2)の重合触媒としては、熱又は還元性物質などによってラジカル分解してビニル単量体の付加重合を起こさせるラジカル重合触媒が好適であり、水溶性又は油溶性の過硫酸塩、過酸化物、アゾビス化合物等が使用される。その例としては、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素、t−ブチルヒドロパーオキシド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、2,2−アゾビスイソブチロニトリル、2,2−アゾビス(2−ジアミノプロパン)ヒドロクロリド、2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等があり、その量としては全ビニル単量体100質量部に対して、0.001〜5質量部の配合が好ましい。なお、重合速度の促進、及び70℃以下での低温の重合を望むときには、例えば重亜硫酸ナトリウム、塩化第一鉄、アスコルビン酸塩、ロンガリット等の還元剤をラジカル重合触媒と組み合わせて用いると有利である。
【0086】
上述したように、本発明の光触媒組成物に用いる重合体エマルジョン粒子(B)は、水及び乳化剤の存在下に加水分解性珪素化合物(b1)及びビニル単量体(b2)を、好ましくは重合触媒存在下で重合することにより得ることができる。
【0087】
ここで、加水分解性珪素化合物(b1)及びビニル単量体(b2)の重合は、別々に実施することも可能であるが、同時に実施することにより水素結合等によるミクロな有機・無機複合化が達成できるので好ましい。
【0088】
また、本発明において、重合体エマルジョン粒子(B)の粒子径が10〜800nmであることが重要である。粒子径をこの様な範囲に調整し、粒子径が100nm以下の金属酸化物(A)と組み合わせて光触媒組成物とすることにより、はじめて耐候性、耐薬品性、光学特性、更には防汚性、防曇性、帯電防止性等に優れた光触媒体を形成することが可能となる。また、重合体エマルジョン粒子(B)の粒子径は50〜300nmであると、得られる塗膜の透明性が向上しより好ましい。
【0089】
このような粒子径の重合体エマルジョン粒子(B)を得る方法として、乳化剤がミセルを形成するのに十分な量の水の存在下に加水分解性金属化合物(b1)及びビニル単量体(b2)を重合する、いわゆる乳化重合が最も適した方法である。
【0090】
乳化重合のやり方としては、例えば、加水分解性珪素化合物(b1)及びビニル単量体(b2)は、そのまま、又は乳化した状態で、一括で若しくは分割で、又は連続的に反応容器中に滴下し、前記重合触媒の存在下で、好ましくは大気圧から必要により10MPaの圧力下で、約30〜150℃の反応温度で重合させればよい。場合によっては、これ以上の圧力で、又はこれ以下の温度条件で重合を行っても差し支えない。加水分解性珪素化合物(b1)及び全ビニル単量体量の総量と水との比率は最終固形分量が0.1〜70質量%、好ましくは1〜55質量%の範囲になるように設定するのが好ましい。また、乳化重合をするにあたり粒子径を成長又は制御させるために、予め水相中にエマルジョン粒子を存在させて重合させるシード重合法によってもよい。重合反応は、系中のpHが好ましくは1.0〜10.0、より好ましくは1.0〜6.0の範囲で進行させればよい。pHは、燐酸二ナトリウムやボラックス、又は、炭酸水素ナトリウム、アンモニアなどのpH緩衝剤を用いて調節することが可能である。
【0091】
また、本発明の重合体エマルジョン粒子(B)を得る方法として、加水分解性珪素化合物(b1)を重合させるのに必要な水及び乳化剤の存在下に、加水分解性金属化合物(b1)及びビニル単量体(b2)を、必要により溶剤存在下で重合した後、重合生成物がエマルジョンとなるまで水を添加する手法も適用できるが、上述した乳化重合方法と比べ、得られる重合体エマルジョン粒子(B)の粒子径制御が困難である。
【0092】
本発明において、重合体エマルジョン粒子(B)が2層以上の層から形成されるコア/シェル構造であると、該重合体エマルジョン粒子(B)を含有する光触媒組成物から機械的物性(強度と柔軟性のバランス等)に優れた光触媒体を形成することが可能となり好ましい。特に、その最内層の、加水分解性珪素化合物(b1)に対するビニル単量体(b2)の質量比(b2)/(b1)が1.0以下であり、かつ最外層の質量比(b2)/(b1)が0.1以上5.0以下であると、得られる複合体は耐候性、機械的物性が共に特に良好であり好ましい。
【0093】
上記コア/シェル構造の重合体エマルジョン粒子(B)を製造する方法として、多段乳化重合が非常に有用である。
【0094】
ここで、多段乳化重合とは、2種類以上の異なった組成の加水分解性珪素化合物(b1)やビニル単量体(b2)を調製し、これらを別々の段階に分けて重合することを意味する。
【0095】
以下に、多段乳化重合の中で最も単純で有用な2段乳化重合による重合体エマルジョン粒子(B)の合成を例に、本発明の多段乳化重合による重合体エマルジョン粒子(B)の合成について説明する。
【0096】
本発明において、2段乳化重合による重合体エマルジョン粒子(B)の合成として、例えば水及び乳化剤の存在下にビニル単量体(b2)及び/又は加水分解性珪素化合物(b1)を重合して得られるシード粒子の存在下に、加水分解性珪素化合物(b1)ビニル単量体(b2)を重合する方法を例示できる。
【0097】
上記2段乳化重合による重合体エマルジョン粒子(B)の合成は、第1系列(ビニル単量体(b2)及び/又は加水分解性金属化合物(b1))を供給して乳化重合する第1段の重合と、第1段に引き続き、第2系列(加水分解性金属化合物(b1)及びビニル単量体(b2))を供給し、水性媒体中において乳化重合する第2段の重合からなる2段階の重合工程により行われる。この際、第1系列中の固形分質量(M1)と第2系列中の固形分質量(M2)の質量比は、好ましくは(M1)/(M2)=9/1〜1/9、より好ましくは8/2〜2/8である。
【0098】
本発明において、好ましいコア/シェル構造の重合体の特徴は、第1段の重合で得られたシード粒子の粒子径が、粒径分布(体積平均粒子径/数平均粒子径)の大きな変化なしに(好ましくは単分散の状態で)、第2段の重合によって大きくなる(粒子径の増大)ことを挙げることができる。
【0099】
また、コア/シェル構造の確認は、例えば、透過型電子顕微鏡等による形態観察や粘弾性測定による解析等により実施することが可能である。
【0100】
重合体エマルジョン粒子(B)を、水及び乳化剤の存在下に加水分解性珪素化合物(b1)を重合して得られるシード粒子の存在下に加水分解性珪素化合物(b1)及びビニル単量体(b2)を重合した場合は重合安定性に優れており好ましい。
【0101】
また、上述したコア/シェル構造の重合体エマルジョン粒子(B)において、コア相のガラス転移温度(Tg)が0℃以下、すなわち上記シード粒子のガラス転移温度が0℃以下のものは、それを含有する光触媒組成物からは室温における柔軟性に優れ、割れ等が生じにくい光触媒体を形成することが可能となり、好ましい。
【0102】
本発明において、3段以上の多段乳化重合を実施する場合は、上述した2段重合による重合体エマルジョン粒子(B)の合成例を参考に、重合する系列の数を増加させればよい。
【0103】
また、本発明の光触媒組成物には、水素結合等による金属酸化物(A)と重合体エマルジョン粒子(B)の相互作用を制御する目的で、アルコール類を添加することもできる。アルコールの添加により、貯蔵安定性等が非常に向上する。
【0104】
上記アルコール類としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、変性エタノール、グリセリン、アルキル鎖の炭素数が3〜8のモノアルキルモノグリセリルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル又はジないしテトラエチレングリコールモノフェニルエーテルが好ましい。これらの中で、エタノールが環境上最も好ましい。
【0105】
本発明の光触媒体には、紫外線吸収剤として、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤からなる群から選ばれる少なくとも1種、光安定剤として、ヒンダードアミン系光安定剤からなる群から選ばれる少なくとも1種を用いることができる。紫外線吸収剤及び/又は光安定剤は、重合体エマルジョン粒子(B)の質量に対して0.1質量%〜5質量%用いることが好ましい。また、紫外線吸収剤として、分子内にラジカル重合性の二重結合を有するラジカル重合性紫外線吸収剤、光安定剤として、分子内にラジカル重合性の二重結合を有するラジカル重合性光安定剤を用いることもできる。また、紫外線吸収剤と光安定剤を併用した方が、耐候性に優れるため好ましい。
【0106】
これらの紫外線吸収剤、光安定剤は、金属酸化物(A)と重合体エマルジョン粒子(B)と単に配合することも可能であるし、重合体エマルジョン粒子(B)を合成する際に共存させることも可能である。
【0107】
本発明において使用できるベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、具体的には、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−ドデシルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ベンジルオキシベンゾフェノン、ビス(5−ベンゾイル−4−ヒドロキシ−2−メトキシフェニル)メタン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、4−ドデシルオキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−2’−カルボキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ステアリルオキシベンゾフェノンなどがある。ラジカル重合性ベンゾフェノン系紫外線吸収剤として具体的には、2−ヒドロキシ−4−アクリロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メタクリロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−5−アクリロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−5−メタクリロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(アクリロキシ−エトキシ)ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(メタクリロキシ−エトキシ)ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(メタクリロキシ−ジエトキシ)ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(アクリロキシ−トリエトキシ)ベンゾフェノンなどがある。
【0108】
本発明において使用できるベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤として具体的には、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−3’,5’−ビス(α,α’−ジメチルベンジル)フェニル〕ベンゾトリアゾール)、メチル−3−〔3−tert−ブチル−5−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシフェニル〕プロピオネートとポリエチレングリコール(分子量300)との縮合物(日本チバガイギー(株)製、商品名:TINUVIN1130)、イソオクチル−3−〔3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル〕プロピオネート(日本チバガイギー(株)製、商品名:TINUVIN384)、2−(3−ドデシル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール(日本チバガイギー(株)製、商品名:TINUVIN571)、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−4’−オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−3’−(3”,4”,5”,6”−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5’−メチルフェニル〕ベンゾトリアゾール、2,2−メチレンビス〔4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール〕、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール(日本チバガイギー(株)製、商品名:TINUVIN900)などがある。ラジカル重合性ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤として具体的には、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール(大塚化学(株)製、商品名:RUVA−93)、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロキシエチル−3−tert−ブチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリリルオキシプロピル−3−tert−ブチルフェニル)−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、3−メタクリロイル−2−ヒドロキシプロピル−3−〔3’−(2”−ベンゾトリアゾリル)−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチル〕フェニルプロピオネート(日本チバガイギー(株)製、商品名:CGL−104)などがある。
【0109】
本発明において使用できるトリアジン系紫外線吸収剤として具体的には、TINUVIN400(商品名、日本チバガイギー(株)製)などがある。
【0110】
本発明において使用できる紫外線吸収剤としては、紫外線吸収能の高いベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤が好ましい。
【0111】
本発明において使用できるヒンダードアミン系光安定剤として具体的には、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)サクシネート、ビス(2,2,6,6−テトラメチルピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)2−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−ブチルマロネート、1−〔2−〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピニルオキシ〕エチル〕−4−〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピニルオキシ〕−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケートとメチル−1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル−セバケートの混合物(日本チバガイギー(株)製、商品名:TINUVIN292)、ビス(1−オクトキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、TINUVIN123(商品名、日本チバガイギー(株)製)などがある。ラジカル重合性ヒンダードアミン系光安定剤として具体的には、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルメタクリレート、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルアクリレート、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレート、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルアクリレート、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−イミノピペリジルメタクリレート、2,2,6,6,−テトラメチル−4−イミノピペリジルメタクリレート、4−シアノ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレート、4−シアノ−1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルメタクリレートなどがある。
【0112】
本発明において使用できるヒンダードアミン系光安定剤としては、塩基性が低いものが好ましく、具体的には塩基定数(pKb)が8以上のものが好ましい。
【0113】
本発明の機能性複合体を得るのに用いられる基材としては、特に限定はされず、例えば本発明で開示した用途に使用される基材は全て用いることができる。
【0114】
本発明の機能性複合体を得るのに用いられる基材の具体例としては、例えば合成樹脂、天然樹脂等の有機基材や、金属、セラミックス、ガラス、石、セメント、コンクリート等の無機基材や、それらの組み合わせ等を挙げることができる。
【0115】
本発明の機能性複合体は、例えば上記光触媒組成物を基材に塗布し、乾燥した後、所望により好ましくは20℃〜500℃、より好ましくは40℃〜250℃での熱処理や紫外線照射等を行い、基材上に光触媒皮膜を形成することにより得ることができる。上記塗布方法としては、例えばスプレー吹き付け法、フローコーティング法、ロールコート法、刷毛塗り法、ディップコーティング法、スピンコーティング法、スクリーン印刷法、キャスティング法、グラビア印刷法、フレキソ印刷法等が挙げられる。
【0116】
本発明の光触媒体を基材上に皮膜状として形成させる場合、該皮膜の厚みは0.05〜100μm、好ましくは0.1〜10μmであることが好ましい。
【0117】
なお、本明細書では、皮膜という表現を使用しているが、必ずしも連続膜である必要はなく、不連続膜、島状分散膜等の態様であっても構わない。
【0118】
本発明の機能性複合体の製造方法は、基材上に本発明の光触媒体皮膜を形成する場合に限定されない。基材と本発明の光触媒体を同時に成形、例えば、一体成形してもよい。また、本発明の光触媒体を成形後、基材の成形を行ってもよい。また、本発明の光触媒体と基材を個別に成形後、接着、融着等により機能性複合体としてもよい。
【0119】
本発明の光触媒組成物の防汚技術分野への応用例としては、例えば建材、建物外装、建物内装、窓枠、窓ガラス、構造部材、住宅等建築設備、特に便器、浴槽、洗面台、照明器具、照明カバー、台所用品、食器、食器洗浄器、食器乾燥器、流し、調理レンジ、キッチンフード、換気扇等が挙げられる。従って本発明は、上記機能性複合体を外装に用いた建築物にも関する。本発明の光触媒組成物又は機能性複合体は、また、乗物の外装及び塗装、用途によってはその内装にも使用でき、車両用照明灯のカバー、窓ガラス、計器、表示盤等透明性が要求される部材での使用に効果があり、また、機械装置や物品の外装、防塵カバー及び塗装、表示機器、そのカバー、交通標識、各種表示装置、広告塔等の表示物、道路用、鉄道用等の遮音壁、橋梁、ガードレールの外装及び塗装、トンネル内装及び塗装、碍子、太陽電池カバー、太陽熱温水器集熱カバー等外部で使用される電子、電気機器の外装部、特に透明部材、ビニールハウス、温室等の外装、特に透明部材、また、室内にあっても汚染のおそれのある環境、たとえば医療用や体育用の施設、装置等にも用いることができる。
【実施例】
【0120】
以下の実施例、参考例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
【0121】
実施例、参考例及び比較例中において、各種の物性は下記の方法で測定した。
1.数平均粒子径
試料中の固形分含有量が1〜20質量%となるよう適宜溶媒を加えて希釈し、湿式粒度分析計(日本国日機装製マイクロトラックUPA−9230)を用いて測定した。
2.色差
色差ΔEをBYK Gardrer製カラーガイドを用いて測定した。
3.水接触角
皮膜の表面に脱イオン水の滴を乗せ、20℃で1分間放置した後、日本国協和界面科学製CA−X150型接触角計を用いて測定した。
4.耐光性
日本国オーク製作所製の紫外線照射装置(商品名「HandyUV300」)を用いて高圧水銀灯の光を光触媒塗膜に照射した。照射を開始してから15時間経過後と照射前の色差を測定して耐光性の指標とした。
5.光触媒活性
JIS R 1703−2に準拠して光触媒塗膜の湿式分解性能試験を実施し、波長664nmの吸光度から分解指数を求めた。このとき、メチレンブルーとして、和光純薬工業社製のメチレンブルー三水和物を用いた。吸光度の測定には、日本国日本分光社製紫外・可視分光光度計(商品名「V−550」)を用いた。
【0122】
[参考例]
重合体エマルジョン粒子(B)水分散体の合成
【0123】
[参考例1]
重合体エマルジョン粒子(B−1)の水分散体の合成
還流冷却器、滴下槽、温度計及び撹拌装置を有する反応器に、イオン交換水500g、ドデシルベンゼンスルホン酸1.5gを投入した後、撹拌下で温度を80℃に加温した。これに、ジメチルジメトキシシラン60g、及びフェニルトリメトキシシラン40gの混合液を反応容器中の温度を80℃に保った状態で約2時間かけて滴下し、その後、反応容器中の温度が80℃の状態で約1時間撹拌を続行した。次にアクリル酸ブチル50g、フェニルトリメトキシシラン70g、テトラエトキシシラン110g、及び3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン5gの混合液とジエチルアクリルアミド80g、アクリル酸3g、反応性乳化剤(商品名「アデカリアソープSR−1025」、旭電化(株)製、固形分25%水溶液)8g、過硫酸アンモニウムの2質量%水溶液40g、及びイオン交換水1000gの混合液を、反応容器中の温度を80℃に保った状態で約2時間かけて同時に滴下した。さらに反応容器中の温度が80℃の状態で約2時間撹拌を続行した後、室温まで冷却し、100メッシュの金網で濾過した後、イオン交換水で固形分を10.0質量%に調整し、数平均粒子径110nmの重合体エマルジョン粒子(B−1)の水分散体を得た。
【0124】
[参考例2]
重合体エマルジョン粒子(B−2)の水分散体の合成
攪拌機、還流冷却器、滴下槽及び温度計を取り付けた反応器に、イオン交換水609質量部、エチレン性不飽和単量体と共重合可能な二重結合を分子中に有するスルホコハク酸ジエステルアンモニウム塩(商品名「ラテムルS−180A」、花王(株)製)の25%水溶液10質量部、メタクリル酸シクロヘキシル26質量部、メタクリル酸n−ブチル8質量部、メタクリル酸メチル14質量部、アクリル酸ブチル2.5質量部、メタクリル酸0.8質量部、アクリル酸0.8質量部、及びアクリルアミド0.4質量部を投入し、反応容器中の温度を80℃に上げてから、過硫酸アンモニウムの2%水溶液5質量部、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン1質量部、メチルトリメトキシシラン75質
量部、及びジメチルジメトキシシラン20質量部を反応容器中へ投入した。重合開始による発熱が確認されてから反応容器中の温度を85℃にして30分間保った。次に、反応容器中の温度を80℃に保持した状態で、イオン交換水45質量部、エチレン性不飽和単量体と共重合可能な二重結合を分子中に有するスルホコハク酸ジエステルアンモニウム塩(商品名「ラテムルS−180A」、花王(株)製)の25%水溶液10質量部、メタクリル酸シクロヘキシル26質量部、メタクリル酸n−ブチル10質量部、メタクリル酸メチル12質量部、アクリル酸ブチル2.5質量部、メタクリル酸0.8質量部、アクリル酸0.8質量部、アクリルアミド0.4質量部、及び過硫酸アンモニウムの2%水溶液5質量部からなる混合液と、メチルトリメトキシシラン40質量部、及びジメチルジメトキシシラン24質量部からなる混合液とを反応容器中へ別々の滴下槽より30分かけて注入し、さらに80℃で2時間保持した。次に、反応容器中の温度を80℃に保持した状態で、イオン交換水130質量部、エチレン性不飽和単量体と共重合可能な二重結合を分子中に有するスルホコハク酸ジエステルアンモニウム塩(商品名「ラテムルS−180A」、花王(株)製)の25%水溶液50質量部、ポリオキシエチレンラウリルエーテル(商品名「エマルゲン130K」、花王(株)製)の20%水溶液7質量部、メタクリル酸シクロヘキシル100質量部、メタクリル酸n−ブチル60質量部、メタクリル酸メチル4質量部、アクリル酸ブチル79質量部、メタクリル酸4質量部、及び過硫酸アンモニウムの2%水溶液12質量部からなる混合液と、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン2質量部、メチルトリメトキシシラン160質量部、及びジメチルジメトキシシラン78質量部からなる混合液とを反応容器中へ別々の滴下槽より2時間かけて注入し、さらに80℃で1.5時間保持した。室温まで冷却後、反応容器中の液の水素イオン濃度を測定したところpH2.8であった。25%アンモニア水溶液を反応容器中に添加して液のpHを8に調整した後、100メッシュの金網で濾過した。イオン交換水で固形分を10.0質量%に調整し、数平均粒子径126nmの重合体エマルジョン粒子(B−2)の水分散体を得た。
【0125】
[参考例3]
還流冷却器、滴下槽、温度計及び撹拌装置を有する反応器に、イオン交換水400g、10質量%のドデシルベンゼンスルホン酸水溶液2.57gを投入した後、撹拌下で温度を80℃に加温した。この反応器中に、ジメチルジメトキシシラン54.5g、フェニルトリメトキシシラン34.4g及びメチルトリメトキシシラン1.0gの混合液と、過硫酸アンモニウムの2質量%水溶液15.0gとを、反応器中の温度を80℃に保った状態で約2時間かけて同時に滴下した。その後、反応器中の温度を80℃に維持した状態で約1時間撹拌を続行した。次に、アクリル酸ブチル12.3g、フェニルトリメトキシシラン13。5g、テトラエトキシシラン31.4g及び3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン1.2gの混合液と、ジエチルアクリルアミド24.6g、アクリル酸1g、反応性乳化剤(商品名「アデカリアソープSR−1025」、旭電化(株)製、固形分25%水溶液)1.2g、反応性乳化剤(商品名「アクアロンKH−1025」、第一工業製薬(株)製、固形分25%水溶液)0.7g、過硫酸アンモニウムの2質量%水溶液8.5g及びイオン交換水255gの混合液とを、反応器中の温度を80℃に保った状態で約2時間かけて同時に滴下した。さらに、反応器中の温度を80℃に維持した状態で約2時間撹拌を続行した。その後、反応器中の液を室温まで冷却し、100メッシュの金網で濾過して、固形分12.8質量%の重合体エマルジョン水分散体を得た。そして、イオン交換水で固形分が10.0質量%となるように調整して重合体エマルジョン水分散体(B−3)を得た。重合体エマルジョン粒子の数平均粒子径は180nmであった。
【0126】
[実施例1]
参考例1で合成した重合体エマルジョン粒子(B−1)水分散体100gに、数平均粒子径12nmの水分散コロイダルシリカ(商品名「スノーテックスO」、日産化学工業(株)製、固形分20%)50g、数平均粒子径30nmの固形分10.0%に調整したルチル型酸化チタンゾル60g及び数平均粒子径4nmの水分散体コロイダルジルコニア(商品名「ナノユースZR−30BF」、日産化学工業(株)製、固形分30%、屈折率2.4)13.3gを混合して光触媒組成物を得た。
この光触媒組成物を黒色ガラス板上に膜厚3μになるようにスプレー塗装し、70℃で10分間焼き付けることでサンプルを得ることができた。塗装前後の色差ΔEは4.2、水接触角は5.7°であった。光触媒活性は14.2であり、耐光性試験前後の色差ΔE2.7であった。
【0127】
[実施例2]
実施例1のコロイダルジルコニアを酸化ジルコニウム−酸化イットリウム混合物コロイドジルコニア(酸化ジルコニウムの質量/酸化イットリウムの質量=9/1、固形分30%、屈折率2.4)6.6gに変更した以外は実施例1と同様に試験を実施した。
この光触媒組成物を黒色ガラス板上に膜厚3μになるようにスプレー塗装し、70℃で10分間焼き付けることでサンプルを得ることができた。塗装前後の色差ΔEは3.7、水接触角は5.3°であった。光触媒活性は14.7であり、耐光性試験前後の色差ΔE1.3であった。
【0128】
[実施例3]
実施例1のコロイダルジルコニアを酸化ジルコニウム−酸化イットリウム混合物コロイドジルコニア(酸化ジルコニウムの質量/酸化イットリウムの質量=9/1、固形分30%、屈折率2.4)13.3gに変更した以外は実施例1と同様に試験を実施した。
この光触媒組成物を黒色ガラス板上に膜厚3μになるようにスプレー塗装し、70℃で10分間焼き付けることでサンプルを得ることができた。塗装前後の色差ΔEは3.8、水接触角は5.5°であった。光触媒活性は14.8であり、耐光性試験前後の色差ΔE1.3であった。
【0129】
[実施例4]
実施例1のコロイダルジルコニアを酸化ジルコニウム−酸化イットリウム混合物コロイドジルコニア(酸化ジルコニウムの質量/酸化イットリウムの質量=9/1、固形分30%、屈折率2.4)19.8gに変更した以外は実施例1と同様に試験を実施した。
この光触媒組成物を黒色ガラス板上に膜厚3μになるようにスプレー塗装し、70℃で10分間焼き付けることでサンプルを得ることができた。塗装前後の色差ΔEは3.6、水接触角は5.6°であった。光触媒活性は14.4であり、耐光性試験前後の色差ΔE1.2であった。
【0130】
[実施例5]
実施例1のコロイダルジルコニアを酸化セリウムゾル(商品名「ナノユースCE−20B」、日産化学工業(株)製、固形分20%、屈折率2.2)20.0gに変更した以外は実施例1と同様に試験を実施した。
この光触媒組成物を黒色ガラス板上に膜厚3μになるようにスプレー塗装し、70℃で10分間焼き付けることでサンプルを得ることができた。塗装前後の色差ΔEは4.4、水接触角は7.8°であった。光触媒活性は14.4であり、耐光性試験前後の色差ΔE2.9であった。
【0131】
[実施例6]
実施例1のコロイダルジルコニアを酸化スズゾル(商品名「セルナックスCX−301H」、日産化学工業(株)製、固形分30%、屈折率2.0)13.3gに変更した以外は実施例1と同様に試験を実施した。
この光触媒組成物を黒色ガラス板上に膜厚3μになるようにスプレー塗装し、70℃で10分間焼き付けることでサンプルを得ることができた。塗装前後の色差ΔEは4.1、水接触角は8.9°であった。光触媒活性は13.7であり、耐光性試験前後の色差ΔE3.2であった。
【0132】
[実施例7]
実施例1のルチル型酸化チタンゾルを数平均粒子径20nmの固形分10.0%に調整したアナターゼ型酸化チタンゾル60gに変更した以外は実施例1と同様に試験を実施した。
この光触媒組成物を黒色ガラス板上に膜厚3μになるようにスプレー塗装し、70℃で10分間焼き付けることでサンプルを得ることができた。塗装前後の色差ΔEは4.4、水接触角は5.6°であった。光触媒活性は17.8であり、耐光性試験前後の色差ΔE5.5であった。
【0133】
[実施例8]
実施例1の重合体エマルジョン粒子(B−1)を参考例2で合成した重合体エマルジョン粒子(B−2)水分散体100gに変更した以外は実施例1と同様に試験を実施した。
この光触媒組成物を黒色ガラス板上に膜厚3μになるようにスプレー塗装し、70℃で10分間焼き付けることでサンプルを得ることができた。塗装前後の色差ΔEは4.5、水接触角は8.5°であった。光触媒活性は14.3であり、耐光性試験前後の色差ΔE3.5であった。
【0134】
[比較例1]
参考例1で合成した重合体エマルジョン粒子(B−1)水分散体100gに、数平均粒子径12nmの水分散コロイダルシリカ(商品名「スノーテックスO」、日産化学工業(株)製、固形分20%)50g、数平均粒子径30nmの固形分10.0%に調整したルチル型酸化チタンゾル60gを混合して光触媒組成物を得た。
この光触媒組成物を黒色ガラス板上に膜厚3μになるようにスプレー塗装し、70℃で10分間焼き付けることでサンプルを得ることができた。塗装前後の色差ΔEは7.8、水接触角は6.3°であった。光触媒活性は14.2であり、耐光性試験前後の色差ΔE9.1であった。
【0135】
[比較例2]
参考例3で合成した重合体エマルジョン粒子(B−3)水分散体100gに、数平均粒子径12nmの水分散コロイダルシリカ(商品名「スノーテックスO」、日産化学工業(株)製、固形分20%)50g、数平均粒子径30nmの固形分10.0%に調整したルチル型酸化チタンゾル65g、数平均粒子径20nmの固形分10.0%に調整したアナターゼ型酸化チタンゾル7gを混合して光触媒組成物を得た。
この光触媒組成物を黒色ガラス板上に膜厚3μになるようにスプレー塗装し、70℃で10分間焼き付けることでサンプルを得ることができた。塗装前後の色差ΔEは8.8、水接触角は5.9°であった。光触媒活性は18.7であり、耐光性試験前後の色差ΔE10.2であった。
【産業上の利用可能性】
【0136】
本発明によって提供される、高いレベルでの耐候性、耐汚染性、透明性を発現する光触媒体は、建築外装、外装表示用途、自動車、ディスプレイ、レンズ等のコーティング剤として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子径が1以上100nm以下の光触媒粒子(a1)と、粒子径が1以上100nm以下の酸化珪素(a2)と、屈折率が1.8以上2.5以下の金属酸化物(a3){ただし光触媒粒子(a1)を除く}と、重合体エマルジョン粒子(B)を水中に分散させて含む光触媒組成物。
【請求項2】
屈折率が1.8以上2.5以下の金属酸化物(a3)として、酸化ジルコニウムを含んでいる請求項1に記載の光触媒組成物。
【請求項3】
金属酸化物(a3)が酸化ジルコニウム−酸化イットリウム混合物コロイドである、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記重合体エマルジョン粒子(B)が、水及び乳化剤の存在下に加水分解性珪素化合物(b1)及び、ビニル単量体(b2)を重合して得られたものであり、粒子径が10〜800nmである、請求項1〜3に記載の組成物。
【請求項5】
光触媒粒子(a1)が酸化チタンである、請求項1〜4に記載の組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物を基材上に形成してなることを特徴とする光触媒体。
【請求項7】
請求項6に記載の光触媒体を外装に用いたことを特徴とする建築物。
【請求項8】
請求項6に記載の光触媒体を外装に用いたことを特徴とする住宅。

【公開番号】特開2012−86104(P2012−86104A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−232229(P2010−232229)
【出願日】平成22年10月15日(2010.10.15)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】