説明

光触媒脱臭装置

【課題】面光源によって光触媒シートの全面で効果的に光触媒を励起させて脱臭性能を長期間維持でき、コンパクト化と長寿命化が図れる光触媒脱臭装置を提供する。
【解決手段】本発明は、通風路の途中に配置される、光触媒粒子61B,62Bがガラス繊維6A間に機械的に担持された通気可能な光触媒シート61,62と、光触媒シートの通気方向の上流側にて通気方向を遮るように配置され、かつ、光触媒シートに対向する面側に適数個のLEDチップ3が実装されると共に各LEDチップ間の基板面に適数個の通風孔4が形成された面光源基板5とを備え、通風孔から流入する空気が光触媒シートの全面を均等に通過するようにした光触媒脱臭装置1である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光触媒を利用して空気中の臭気成分や有機ガス分子を分解することにより、脱臭を行う光触媒脱臭装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、居住空間や車内などの所謂、準閉鎖空間における空気の清浄化改善の要望が高まっており、食物から発生し、あるいはタバコ副流煙として発生するアンモニアや、建材などから発生するVOC(揮発性有機物質。例えば、アセトアルデヒド)などを除去する脱臭装置が特に望まれている。
【0003】
従来、この種の脱臭装置として、特許第4388734号公報(特許文献1)に記載されたものが知られている。この従来の光触媒脱臭装置は、枠型のホルダー内にボロンを含有しないシート状のガラス繊維成形品に光触媒を担持させた通気性光触媒体の複数枚を、気流の通過方向に互いに離間状態で配置し、光源ランプを通気性光触媒体の側方に対置した構成である。そして、ガラス繊維成形品に担持させる光触媒には、ルチル型、アナタース型、あるいはその共存型の酸化チタンを用い、光源ランプには紫外線(UV)ランプ、水銀灯、蛍光灯を用いている。さらに、ガラス繊維成形品には、通気性を良くするためにクロス状のものを用いている。このような従来の光触媒脱臭装置によれば、長寿命でメンテナンス性に優れたものであり、空気清浄が可能である。
【0004】
しかしながら、従来の光触媒脱臭装置では、特に光源に管ランプを採用しているために、光源ユニットに大きなスペースを割く必要があること、体積が大きくなるために多数本を緻密に配列できず、ガラス繊維成形品の全面に一様な照度で光を照射させることができない、電力消費量が大きくなる、コンパクト化が困難である等の問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4388734号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来技術の課題に鑑みてなされたもので、光触媒の励起光源にLED面光源を採用し、ガラス繊維製の光触媒シートを採用することで、面光源からの光が光触媒シートの全面に影を作ることなく照射でき、光触媒シートの全面で効果的に光触媒を励起させて脱臭性能を長期間維持でき、さらにコンパクト化と長寿命化が図れる光触媒脱臭装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、通風路の途中に配置される光触媒粒子がガラス繊維間に機械的に担持された通気可能な光触媒シートと、前記光触媒シートの通気方向の上流側にて通気方向を遮るように配置され、かつ、前記光触媒シートに対向する面側に適数個のLEDチップが実装されると共に各LEDチップ間の基板面に適数個の通風孔が形成された面光源基板とを備え、前記通風孔から流入する空気が前記光触媒シートを通過するようにした光触媒脱臭装置を特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、励起光源からの光が光触媒ユニットの全面に影を作ることなく照射でき、光触媒シートの全面で効果的に光触媒を励起させて脱臭性能を長期間維持でき、同時に、通過する空気の流れを緩やかな流れにして光触媒シートとの接触時間を長くしてこの面からも光触媒シートの全面で効果的に脱臭でき、コンパクト化と長寿命化が図れる光触媒脱臭装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1の実施の形態の光触媒脱臭装置を搭載した冷蔵庫の一部破断断面図。
【図2】本発明の第1の実施の形態の光触媒脱臭装置の一部破断した斜視図。
【図3】本発明の第1の実施の形態の光触媒脱臭装置の一部省略した断面図。
【図4】本発明の第1の実施の形態の光触媒脱臭装置に用いる光触媒シートの正面図及び平面図。
【図5】本発明の第1の実施の形態の光触媒脱臭装置に用いる面光源基板の正面図。
【図6】上記面光源基板の一部破断した拡大図。
【図7】上記面光源基板におけるLED実装部分の拡大図。
【図8】上記面光源基板におけるLED点灯回路の等価回路図。
【図9】本発明の第1の実施の形態の光触媒脱臭装置に用いる光触媒シート内のガラス繊維織物の拡大図。
【図10】本発明の第1の実施の形態の光触媒脱臭装置に用いる光触媒シート内のガラス繊維による光触媒粒子の担持状態の顕微鏡写真。
【図11】本発明の実施例1の光触媒脱臭装置のアセトアルデヒド分解性能を比較例1と対比して示すグラフ。
【図12】本発明の実施例1の光触媒脱臭装置のアンモニア分解性能を比較例1と対比して示すグラフ。
【図13】本発明の実施例1の光触媒脱臭装置の照度維持時間特性をと比較例1,2と対比して示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて詳説する。
【0011】
[第1の実施の形態]
本発明の1つの実施の形態の光触媒脱臭装置1は、図1に示すように冷蔵庫100の庫内に脱臭のために設置する装置である。冷蔵庫100の庫内では、冷却ファン101にて冷気102は低風速、例えば0.2m/秒〜3m/秒の風速にて庫内を循環する。本実施の形態の光触媒脱臭装置1は、このような低風速下で空気の流れを阻害せず、光触媒により庫内空気を脱臭するために冷気通路103に設置して用いられる。
【0012】
図2〜図4に示すように、本実施の形態の光触媒脱臭装置1は、担持された光触媒の粒子を励起するための多数のLEDチップ3が実装され、また、多数の通風孔4が形成された面光源基板5、それと略平行に配置された複数種、複数枚の光触媒シート61,62、及び面光源基板5と対向し略平行に配置された、同じく多数の通風孔4を設けた対向基板7、そして、これらの板材の位置を保持し、形状を保持し補強する枠体で成る筐体8、そして天板9から一体的なユニットに構成されている。本実施の形態のユニットにあって、光触媒シート61,62は合計で3枚、装着されている。光触媒シート61が2枚、光触媒シート62が1枚である。前述の対向基板7は、脱臭性能向上のため、LEDチップ3を実装した面光源基板5と同じものであってもよい。
【0013】
筺体8の材料は、紫外線に対する高い耐候性と基質ガスに対する変色が少ない観点から、アクリル樹脂(ポリメタクリル酸メチル樹脂)でもよいし、さらにはアクリル樹脂であっても発臭を抑えた、重合度を10,000〜15,000程度に高めた材料でもよい。また比較的コストが安価で成型性の良好なABS樹脂(アクリルニトリル−ブタジエン−スチレン共重合合成樹脂)でもよいし、強度向上のためABS樹脂にガラス繊維を混錬させコンパウンドとした強化ABS樹脂を使用してもよい。上記材料は、金型を用い所定の形状になるよう成型される。
【0014】
図5〜図8に示すように、面光源基板5は、設置場所の環境に合わせ適切な分布密度で分布するように通風孔4が多数個を形成されているガラスエポキシ基板上に広面積にプラス、マイナスの電極パターンP+,P−をプリントし、例えば、紫外線波長λ=405nm、光量Po=6.2mW(順方向電流30mA)のLEDチップ3を2列に適数個(実施の形態では18個)実装したものである。
【0015】
この面光源基板5は、次のようにして作成している。図5、図6に示すように、設置場所の環境に合わせ適切な分布密度で分布するように通風孔4が多数個形成されたガラスエポキシ基板51上にプラス、マイナスの電極パターンP+,P−を広面積に、それぞれが基板面積のほぼ半分の面積を占めるようにプリントして形成し、プラス電極パターンP+とマイナス電極パターンP−との境界部分には電気絶縁のためにレジストパターンRsを形成している。そして、LEDチップ3を用意し、マウンターでガラスエポキシ基板51のプラス電極パターンP+の所定の箇所に、脱臭性能で選択される所定個数(実施の形態では最大脱臭性能は2列に18個になる)配置した後、低融点リフロー炉で240℃、10秒で基板51に融着させている。図7に示すように、融着後の基板51上のLEDチップ3の基板電極パターンP+,P−への結線は、ワイヤーボンダー機にてアノード側とカソード側の2本を25μmの金線52,53で行っている。LEDチップ3のカソード側をマイナス電極パターンP−に接続するためのワイヤ52は、レジストRsの幅狭なブリッジ部54をまたぐようにして接続している。
【0016】
結線後の基板51は、LEDチップ3のP−Nジャンクション保護のため、常温液体ガラスでLEDチップ3ヘポッディングを行い、面光源基板5としている。図6、図7におけるだ円環55は樹脂の流れ出しを防ぐ堰堤である。この常温液体ガラスを利用することにより、アンモニアガスを透過させてしまうシリコン樹脂を使用した場合よりもLEDチップ3を長期にわたり保護することができる。また、UVに曝されることで劣化しやすいエポキシ樹脂を使用した場合よりも、やはりLEDチップ3を長期にわたり保護することができる。また、面光源基板5において、端部の隅に形成した小孔は、プラス電極パターンP+、マイナス電極パターンP−それぞれを電源に接続するリード線のためのリード線接続孔56+,56−である。
【0017】
本実施の形態における面光源基板5の多数個のLEDチップ3の等価回路は、図8に示すように多数個のLEDチップ3が並列接続された形である。これにより、低い電圧で全LEDチップ3を点灯させることができ、発熱を抑えることができる。
【0018】
面光源基板5上のLEDチップ3の搭載個数は、LED1個あたりの光量Poと、光触媒シート61,62の面積と、光触媒シート61,62とLED発光面間距離とから割り出して、複数の光触媒シート61,62上での光照射強度が1mW/cm以上となるよう設計し、10個〜20個とするのが好ましい。
【0019】
光触媒シート61のガラス繊維6A間に担持させる光触媒粒子61Bは、窒素をドーピングし可視光域(紫色、λ=400〜450nm)で触媒活性が知られている市販の可視光型光触媒材料(平均粒度は約40μm)である。また、光触媒シート62のガラス繊維6A間に担持させる光触媒粒子62Bは、酸化タングステン可視光型光触媒材料(平均粒度は約130μm)である。
【0020】
ガラス繊維6Aによる担持は、2種類それぞれの光触媒粒子61B,62Bについて、純水に燐酸を加えpH(水素イオン濃度)を2〜7に調整したアルコール系水溶液に上記光触媒材料を加えた分散溶液にガラス繊維6Aを10分間浸漬し、その後100℃で2時間乾燥することにより行う。こうして、2種類それぞれの光触媒粒子61B,62Bがガラス繊維間に担持された2種類のガラス繊維織物61A,62Aを得ている。
【0021】
上記プロセスで得られた光触媒粒子61B,62Bを担持したガラス繊維織物61A,62Aそれぞれの端部を、形状の安定性を付与する目的で、耐光性の高い樹脂からなるフレーム6Cで押さえ、光触媒シート61,62それぞれとしている。
【0022】
そして、図2に示すように、酸化チタン(TiO)光触媒粒子61Bを担持した光触媒シート61の2枚を筺体8のガス導入側Inに、酸化タングステン(WO)光触媒粒子62Bを担持した光触媒シート62の1枚を筺体8のガス導入側Outに嵌め込み、さらにそれらの両側において、予め作製しておいた面光源基板5、対向基板7を筺体8に嵌め込み、天板9を閉じて一体的なユニットに構成して光脱臭装置1としている。
【0023】
尚、本実施例では純水を使用した場合を説明したが、光触媒材料の微粒子の分散性を改良するため、分散材(界面活性剤)を0.1wt%から数wt%(光触媒材料に対する重量比)を水に混ぜてもよいし、臭気ガス吸着特性を改良するため吸着剤を混ぜてもよい。また、基質ガスの分解は、光により励起された光触媒微粒子上で行われることから、送風手段があっても本発明の本質はいささかも損なわれない。
【0024】
ガラス繊維織物61A,62Aの光触媒粒子61B,62Bの目付け量は、ガラス繊維6Aから光触媒粒子の脱落性と脱臭性能の確保の観点から、200〜500g/mとなるよう行う。図9にガラス繊維6Aの顕微鏡写真、図10にガラス繊維織物61Aにおけるガラス繊維6Aに対する光触媒である酸化チタン粒子61Bが担持されている状態の顕微鏡写真を示す。ガラス繊維織物62Aについても、そのガラス繊維6Aに対する酸化タングステン光触媒粒子62Bの担持状態は同様である。尚、ガラス繊維織物61A,62Aについては、図9の顕微鏡写真に示すように、縦糸のガラス繊維6Aは整然と束ねてあるが、横糸のガラス繊維6Aはほぐして不揃いな並びにしている。これにより、光触媒粒子61B,62Bをガラス繊維6A間に担持しやすくし、この結果、光触媒粒子は、ガラス繊維間から脱落しにくく機械的に担持されている。また、縦糸と横糸は逆にしてもよい。
【0025】
ガラス繊維織物61A,62Aに用いるガラス繊維6Aは、直径が約2〜10μmでSiO成分が50%以上(より好ましくは60%以上)のものが好適で、ガラス繊維織物としては、ガラス繊維6Aの密度が、例えば、縦が20本のもと糸、横の密度が18本のもと糸を使用して縦横に織ってガラス繊維織物としている。
【0026】
このガラス繊維織物61A,62Aについては、開口率が30%以下になると圧力損失が増大し、機械的に担持させているだけの光触媒粒子が脱落して急激に脱臭性能が低下するので、開口率は30%以上が好ましい。また、開口率が60%を超えるようになると、光触媒の絶対的な存在量が激減して効果的な脱臭効果が得られなくなる。
【0027】
上記構成の光触媒脱臭装置1は、図1に示したように例えば、冷蔵庫100内の空気通路103に設置して使用し、多数個の配列されたLEDチップ3を点灯させて面光源基板5の全面で面発光させ、その光にてガラス繊維織物61A,62Aに担持されている光触媒粒子61B,62Bを励起させ、空気中に含有される臭気物質を分解して脱臭する。
【0028】
本実施の形態の光触媒脱臭装置1によれば、光触媒シート61,62に採用した光透過性のガラス繊維織物61A,62Aにそのガラス繊維6A間に光触媒粒子61B,62Bを担持させ、多数のLEDチップ3が発光した光を照射して光触媒粒子61B,62Bを励起させて臭気物質を分解させるものであるので、ガラス繊維織物61A,62Aの光透過性の故にLEDチップ3の光を光触媒シート61,62の全面、表裏両面に到達させて光触媒に照射して励起させることができ、効果的に脱臭できる。また、光源が多数個のLEDチップ3の配列された面光源基板5であるために、LEDチップ3の長寿命特性により長期間連続使用できる利点もある。
【0029】
また、光触媒シート61,62の開口率を30%〜60%とすることで、圧力損失を抑えることができる。また、光触媒シート61,62のガラス繊維6Aを、SiOを50%以上の成分比とする素材で成るものとしたことにより、光透過性が良好であり、上記のように光触媒シート61,62の全面、表裏両面に到達させて光触媒に照射して励起させることができ、効果的に脱臭できる。
【0030】
また、光触媒シート61,62のガラス繊維6Aの直径を10μm以上とすれば光触媒のガラス繊維からの脱落が顕著となり光触媒による分解性能が低下するが、10μm以下とすることでガラス繊維6A間に光触媒の粒子を密度高く効果的に安定して担持させることができて、大きな光触媒作用が得られる。
【0031】
本実施の形態の光触媒脱臭装置は、風速0.2m〜3m/秒の低風速下で使用するものであるが、このような低風速下では、ガラス繊維6A間に光触媒粒子61B,62Bを単に機械的に担持させた状態でも粒子を空気の流れによって脱落させることなく使用でき、この面からも長期間連続使用が可能となる。
【0032】
また、本実施の形態によれば、ガラス繊維6A間に光触媒粒子61B,62Bを機械的に担持させるだけであり、粘着あるいは接着させるための薬剤を用いることなく光触媒シート61,62のガラス繊維6Aに光触媒粒子61B,62Bを担持させることができ、製造コストの低下も図れる。
【0033】
さらに、本実施の形態の光触媒脱臭装置1では、基質ガスがアンモニアのような弱アルカリ性ガスとアセトアルデヒドのような中性ガス並びにNOXのような酸性ガスから構成される混合ガスを分解する場合、酸化チタン(アナタースを主相)光触媒微粒子61Bをガラス繊維織物61Aに担持した光触媒シート61を当該光触媒脱臭装置1のガス導入側に設置することによって、まず弱アルカリ成分となるアンモニアが酸化チタン(TiO)によって吸着・分解する。十分にアンモニア濃度が低下した状況下で、第2層となる酸化タングステン(WO)を主成分とした光触媒微粒子62Bをガラス繊維織物62Aに担持した光触媒シート62を光触媒脱臭装置1の排出側に設置することによって、残留中性ガスを除去する。酸性ガスの場合は、どちらの光触媒微粒子61B,62Bの触媒活性を損なうものではなく除去される。
【0034】
これにより、本実施の形態の光触媒脱臭装置1では、酸化電位が深く、したがって酸化分解能力が高いけれども、弱アルカリ環境下で使用すると触媒活性が低下する酸化タングステン光触媒の課題が解決でき、その酸化分解能力を活用できる。
【0035】
また、LEDチップ3の封止材料の中をガスが浸透する場合を考えると、概して封止材料の分子間骨格間で形成される自由体積の存在により、ガスが封止材料中を浸透することが考えられているが、この封止材料に常温液体ガラスとすることにより、基質ガス中の水分やアンモニアの浸入をほぼ完全に防ぐことができる。
【0036】
加えて、本実施の形態の場合、面光源基板5にはLED3を多数実装し、かつ多数個の通風孔4を全面にわたって均一な分布になるように形成しているので、ファンにて送り込まれる空気流により面光源基板5が振動しない剛性を持ち、かつ、送り込まれる空気流を面光源基板5のほぼ全面に広げ、緩やかな流速にして光触媒シート61,62側に送り込むことができる。そして内部の空気の流速を緩やかにできるので、光触媒シート61,62に速い流速の空気が流れ込むことがなく、光触媒シート61,62に振動が発生するのを防ぐことができ、光触媒シート61,62の脱落やそれが機械的に担持している光触媒粒子の脱落を防ぐことができ、この点で装置の信頼性を長期にわたり維持できる。また面光源基板5にて空気の流れを全面に広げ、かつ、緩やかな流れとすることができるので、面光源基板5とその下流側の光触媒シート61,62との距離を短くでき、この結果として、LEDチップ3から出る明るい光を光触媒シート61,62の全面に一様な、しかも高い照度で照射でき、高い脱臭性能が発揮できる。同時に、面光源基板5と光触媒シート61,62との間隔を短くできるので、装置全体としてコンパクト化が図れる。
【実施例】
【0037】
実施例として、光触媒シート61の面積50cm、光触媒には酸化チタン粒子(アナタース型80%、ルチル型20%)を1g担持させ、光触媒シート62の面積50cm、光触媒には酸化タングステン粒子を1g担持させ、これら2枚の光触媒シート61,62を空気入口側、出口側に配置し、紫外線発光のLEDチップ3による光の照射強度2mW/cmとした光触媒脱臭装置1を用いた。さらに、実施例では、LEDチップ3の封止材には、常温液体ガラスを用いた。
【0038】
比較例1として、実施例とは逆に、酸化タングステン光触媒シート62を入口側に、酸化チタン光触媒シート61を出口側に配置した光触媒脱臭装置を用いた。
【0039】
そして、初期濃度30ppmのアルデヒドと初期濃度20ppmのアンモニアが存在する冷蔵庫内で脱臭性能試験を行った。図11、図12のグラフに示すように、比較例の光触媒脱臭装置による脱臭性能と比べると、本実施例の光触媒脱臭装置の方が約20ポイント程度アンモニアの分解性能が高いことが確認できた。
【0040】
また、比較例2として、面光源基板5として、LEDチップ3に封止材としてビスフェノール型エポキシ樹脂を塗布、乾燥させたもの、比較例3として、LEDチップ3に封止材としてフェニール系シリコン樹脂を塗布、乾燥させたものについて、実施例の面光源基板5と照射時間−照度維持特性について比較した。結果は図13のグラフの通りであり、比較例2,3の面光源基板は1000時間、2000時間までに相対照度がほとんど0に低下したのに対して、実施例に用いた面光源基板5では3000時間までほとんど相対照度が低下しないことが確認できた。
【0041】
[第2の実施の形態]
ガラス繊維織物61A,62Aに、例えば、直径1μm以下の孔の多孔質ガラス繊維を用い、かつ、この多孔質ガラス繊維を図9、図10のように整然と束ねた縦糸群と、多孔質ガラス繊維を乱雑に束ねた横糸群とから成る織物を採用することができる。尚、縦糸と横糸とは逆にしてもよい。また、面光源基板5は第1の実施の形態と共通で、図2〜図8で説明したものである。
【0042】
この場合、光触媒微粒子61B,62Bへのガラス密着力がさらに向上する。これはガラス繊維を乱雑に束ねた縦糸群の存在により、乱れたガラス繊維が元の直線状の形状に戻ろうとする力が働き、この復元力が光触媒粒子を抑えることに作用すると思われる。また、一般的に光触媒材料の触媒活性が光触媒粒子の粒度の減少と共に高まることが知られているが、ガラス繊維を直径1μm以下の孔を持つ多孔質ガラスとすることにより、触媒活性の高い1μm以下の光触媒粒子61B(62B)をガラス繊維6Aに存在する直径1μm以下の孔にトラップすることができて、長期間脱落することになく担持でき、光触媒能力を長期間にわたり維持できる。このため、この実施の形態の光触媒脱臭装置は、図1に示したような冷蔵庫に使用できるだけでなく、例えば風速の高い5m/秒の大型空調機にも適用が可能である。
【0043】
[その他の実施の形態]
第1,2の実施の形態の光触媒脱臭装置1では、光触媒シート61を2枚、光触媒シート62を1枚用い、片側の面光源基板5から光を照射する構成にしたが、これに限られるものでない。対向基板7にも面光源基板を用いることにより、光触媒シート61,62に対してそれらの表裏両側から光を照射する構成にすることができる。また、光触媒シート61,62の使用枚数は、それぞれを少なくとも1枚ずつ用いればよいのであって、光触媒シート61,62を2枚ずつ用いたり、光触媒シート61を3枚、光触媒シート62を2枚以上用いたりすることも可能である。さらに、光触媒シートとして2種類のものを採用したが、例えば、光触媒シート61だけを2枚、あるいは3枚採用することも可能である。
【0044】
加えて、上記実施の形態では、光触媒シート61,62に縦糸又は横糸の一方は繊維を整然と揃え、その他方は繊維をばらばらにしたものを用いたが、縦糸、横糸ともに繊維がそろったガラス繊維を用いることも可能である。
【符号の説明】
【0045】
1 光触媒脱臭装置
3 LEDチップ
4 通風孔
5 面光源基板
6A ガラス繊維
61,62 光触媒シート
61A,62A ガラス繊維織物
61B 酸化チタン(TiO)を主成分とする光触媒粒子
62B 酸化タングステン(WO)を主成分とする光触媒粒子
6C フレーム
7 対向基板
8 筐体
9 天板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通風路の途中に配置される、光触媒粒子がガラス繊維間に機械的に担持された通気可能な光触媒シートと、
前記光触媒シートの通気方向の上流側にて通気方向を遮るように配置され、かつ、前記光触媒シートに対向する面側に適数個のLEDチップが実装されると共に各LEDチップ間の基板面に適数個の通風孔が形成された面光源基板とを備え、
前記通風孔から流入する空気が前記光触媒シートを通過するようにした光触媒脱臭装置。
【請求項2】
前記LEDチップは、常温液体ガラスにて前記基板上に封止したことを特徴とする請求項1に記載の光触媒脱臭装置。
【請求項3】
基板の一側面にプラス電極パターンとマイナス電極パターンとをそれらの間をレジストにて絶縁するようにして形成し、多数の箇所で、かつ、一様な面分布になるような適当な箇所に、前記プラス電極パターンとマイナス電極パターンとが細いレジストにて対向するブリッジ部分を形成し、前記ブリッジ部分それぞれにおいて、前記プラス電極パターン上のLEDチップを実装し、前記LEDチップのカソードと前記ブリッジ部を超えて対向するマイナス電極パターンとの間にワイヤをボンディングし、前記LEDチップのアノードとプラス電極パターンとの間にもワイヤをボンディングし、前記基板の多数の箇所で、かつ、一様な面分布となるような箇所に通風孔を形成して前記面光源基板としたことを特徴とする請求項1又は2に記載の光触媒脱臭装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−152452(P2012−152452A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−15324(P2011−15324)
【出願日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【出願人】(591244292)株式会社 パールライティング (36)
【Fターム(参考)】