説明

光触媒

【課題】特に可視光照射下において、抗菌活性が向上して殺菌速度に優れるとともに、有害ガス分解速度に優れる光触媒を提供する。
【解決手段】第一の触媒成分と第二の触媒成分とを含んでなる光触媒であって、前記第一の触媒成分は、第一の酸化チタン化合物に対し、該第一の酸化チタン化合物を構成するチタン原子の含有量を100質量部とした場合に、抗菌活性金属種を金属原子換算で2.8〜15質量部担持してなるものであり、前記第二の触媒成分は、第二の酸化チタン化合物に対し、該第二の酸化チタン化合物を構成するチタン原子の含有量を100質量部とした場合に、抗菌活性金属種を金属原子換算で0〜1.5質量部担持してなるものであることを特徴とする光触媒である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
酸化チタンは、白色顔料として古くから利用されており、近年は化粧品などの紫外線遮蔽材料、光触媒、コンデンサ、サーミスタの構成材料あるいはチタン酸バリウムの原料等電子材料に用いられる焼結材料に広く利用され、特にここ数年、光触媒としての利用が盛んに試みられ、光触媒反応の用途開発が盛んに行われるようになっている。
【0003】
この酸化チタン光触媒の用途は非常に多岐に亘っており、水の分解による水素の発生、酸化還元反応を利用した有機化合物の合成、排ガス処理、空気清浄、防臭、殺菌、抗菌、水処理、照明機器等の汚れ防止等、数多くの用途開発が行われている。
【0004】
しかしながら、酸化チタンは、可視光付近の波長領域において大きな屈折率を示すため、可視光領域では殆ど光吸収を生じない。屋内での蛍光灯などの下での利用を考えると、蛍光灯の光はスペクトルのほとんどが400nm以上の可視光波であり、光触媒として十分な特性を発現することができないことから、可視光領域での触媒活性を発現させることができる、より利用性の高い光触媒の開発が望まれている。
【0005】
特に、高齢化社会を迎えるにあたって、抵抗力の弱い高齢者を考慮した施設内での抗菌需要、または病院内における院内感染防止のための抗菌需要は大きくなってきている。また、地球環境保全の見地から、低毒性で安全性の高い、環境対応型の抗菌材料が求められるようになっている。
【0006】
加えて、建築物の気密性の向上が進むにつれて、換気性が低下する構造物が増加しているため、室内大気の汚染度上昇が問題になりつつあり、上述の高齢者施設・病院に加えてホテル・トイレなどの公共施設における空気清浄度の向上や悪臭の消去に対する需要も年々増加している。
【0007】
これらの需要に対して、従来の技術においては、殺菌力の強い有機系殺菌剤または無機系殺菌剤を配合した塗料を室内の壁等に塗布したり、あるいは、VOC(揮発性有機化合物)ガスや悪臭ガスの吸着能を持った担体へこれらの殺菌剤を担持したものを配合した塗料が使用される場合があった。
【0008】
しかし、有機系殺菌剤は、毒性が高く安全性に問題があり、また無機系殺菌剤は、殺菌成分に対する耐性菌の発生により効果がなくなるという問題がある。さらにこれらの従来型抗菌剤によって殺菌が行われた場合でも、その細菌の持つ毒素や細菌の死骸が残留する、という問題は解決できない。また、VOCガスに対する担体吸着能は、その効果に限度がある。
【0009】
一方、純粋な酸化チタンは、紫外光照射下における光触媒効果によって、抗菌作用や、空気清浄作用、消臭作用を発現するが、上記高齢者施設、病院、ホテル、トイレ等の高い需要が期待される使用環境は、そのほとんどが紫外光の少ない室内環境であるため、従来の酸化チタンでは期待する効果を発現することができない。
【0010】
そこで、本出願人は、室内の蛍光灯の光でも光触媒としての触媒活性を発現することができる、利用性の高い酸化チタン光触媒の開発を行ってきた。
【0011】
例えば、本出願人は、硫黄原子がチタンサイトに導入された 硫黄原子導入酸化チタンに鉄化合物等の金属種を含有させた酸化チタン化合物(以下、適宜「鉄化合物含有硫黄原子導入酸化チタン化合物」と表記)を提案している(特許文献1参照)。
【0012】
この鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物を、室内建材や壁に塗布し、またはコーティングした場合には、蛍光灯照射下においても、抗菌作用、空気清浄作用、消臭作用を発現し、また細菌の持つ毒素や細菌の死骸をも分解することができ、かつその効果は物理的な剥離がないかぎり持続することが可能である。
【0013】
しかしながら、上記抗菌、消臭、空気清浄化という目的の下においては、可能な限り早く効果が発現することが求められ、従来よりもさらに優れた殺菌速度、有害ガス分解速度を達成し得るものが求められるようになっており、さらに、上記殺菌速度および有害ガス分解速度に優れるとともに、抗菌、消臭、空気清浄化効果を高いレベルで発揮し得る光触媒が求められるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】国際公開2008/081957号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
このような状況下、本発明は、特に可視光照射下において、抗菌活性が向上して殺菌速度に優れるとともに、有害ガス分解速度に優れる光触媒を提供することを目的とするものである。
【0016】
上記技術課題を解決すべく、本発明者が鋭意検討を行ったところ、鉄化合物含有硫黄原子導入酸化チタン化合物等の酸化チタン化合物に対して、銅化合物や銀化合物などの抗菌活性金属種(抗菌活性金属化合物)を所定量担持することによって、活性金属種の抗菌効果と酸化チタン化合物の光触媒効果との相乗効果より、その殺菌速度が著しく向上することを見出した。しかしながら、上記抗菌活性金属種の担持量があるレベル以上になると酸化チタン化合物の表面が抗菌活性金属種で被覆される面積が増大し、この抗菌活性金属種によって可視光線が吸収されてしまうため、酸化チタン化合物による光触媒効果が減少し、例えば有害ガス分解速度が低下することを見出した。
上記知見を基に、本発明者等がさらに検討を行ったところ、酸化チタン化合物に対する抗菌活性金属種の担持量がそれぞれ異なる第一の触媒成分と第二の触媒成分とを含んでなる光触媒により、上記技術課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0017】
すなわち、本発明は、
(1)第一の触媒成分と第二の触媒成分とを含んでなる光触媒であって、
前記第一の触媒成分は、第一の酸化チタン化合物に対し、該第一の酸化チタン化合物を構成するチタン原子の含有量を100質量部とした場合に、抗菌活性金属種を金属原子換算で2.8〜15質量部担持してなるものであり、
前記第二の触媒成分は、第二の酸化チタン化合物に対し、該第二の酸化チタン化合物を構成するチタン原子の含有量を100質量部とした場合に、抗菌活性金属種を金属原子換算で0〜1.5質量部担持してなるものである
ことを特徴とする光触媒、
(2)前記第一の酸化チタン化合物および第二の酸化チタン化合物の合計含有量を100質量%とした場合に、
前記第一の酸化チタン化合物の含有量が7.5〜72質量%であり、
前記第二の酸化チタン化合物の含有量が28〜92.5質量%である
上記(1)に記載の光触媒、
(3)前記第一の酸化チタン化合物および第二の酸化チタン化合物を構成するチタン原子の総量を100質量部とした場合に、前記第一の酸化チタン化合物および第二の酸化チタン化合物に担持される抗菌活性金属種の総量が10質量部以下である上記(1)または(2)に記載の光触媒、
(4)前記第一の酸化チタン化合物または第二の酸化チタン化合物が、硫黄原子導入酸化チタン、窒素原子導入酸化チタン、鉄化合物を含有する硫黄原子導入酸化チタンまたは鉄化合物を含有する窒素導入酸化チタンである上記(1)〜(3)のいずれかに記載の光触媒、および
(5)前記第一の触媒成分または第二の触媒成分において、抗菌活性金属種が、銅化合物、銀化合物および金属銀から選ばれる少なくとも1種である上記(1)〜(4)のいずれかに記載の光触媒、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明の光触媒は、抗菌活性金属種の担持量の異なる第一の触媒成分と第二の触媒成分を含んでなるものであることから、細菌やウイルスの構成物を分解する作用(酸化チタンの光触媒作用)と細菌の代謝機能を阻害する作用(主として活性金属種の抗菌作用)とが相乗効果として効率よく機能するため、抗菌活性金属化合物を均一に担持させた光触媒に比較して、特に可視光照射下において、抗菌活性が向上して細菌をより短時間で完全殺菌することができるとともに、有害ガス分解性能(酸化チタンの光触媒作用)も大きく損なわれることなく、機能させ得ると考えられる。
このため、本発明によれば、特に可視光照射下において、抗菌活性が向上して殺菌速度に優れるとともに、有害ガス分解速度に優れる光触媒を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施例および比較例で得られた光触媒の抗菌性能評価結果を示す図である。
【図2】本発明の実施例および比較例で得られた光触媒の有害ガス分解性能評価結果を示す図である。
【図3】本発明の実施例および比較例で得られた光触媒の抗菌性能評価結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の光触媒は、第一の触媒成分と第二の触媒成分とを含んでなる光触媒であって、前記第一の触媒成分は、第一の酸化チタン化合物に対し、該第一の酸化チタン化合物を構成するチタン原子の含有量を100質量部とした場合に、抗菌活性金属種を金属原子換算で2.8〜15質量部担持してなるものであり、前記第二の触媒成分は、第二の酸化チタン化合物に対し、該第二の酸化チタン化合物を構成するチタン原子の含有量を100質量部とした場合に、抗菌活性金属種を金属原子換算で0〜1.5質量部担持してなるものであることを特徴とするものである。
【0021】
(酸化チタン化合物)
本発明の光触媒は、第一の触媒成分および第二の触媒成分とを含んでなるものであり、第一の触媒成分および第二の触媒成分は、それぞれ、第一の酸化チタン化合物および第二の酸化チタン化合物を含むものである。
本発明において、第一の酸化チタン化合物および第二の酸化チタン化合物は、同一であっても異なっていてもよい。
【0022】
本発明において、第一の酸化チタン化合物または第二の酸化チタン化合物として、具体的には、ルチル型酸化チタン、アナターゼ型酸化チタン、ブルッカイト型酸化チタン等の酸化チタン、硫黄原子導入酸化チタン、窒素原子導入酸化チタン、炭素原子導入酸化チタン、リン原子導入酸化チタン等を挙げることができ、また、上記酸化チタン、硫黄原子導入酸化チタン、窒素原子導入酸化チタン、炭素原子導入酸化チタン、リン原子導入酸化チタンにおいて、さらに、FeやFe等の鉄化合物や、WO、V、Bi、Nb、ZnO、ZrO、PtO、PdO、In、PbO、FeTiO、SrTiO、BaTiO、CaTiO、KTaO、SnO、MnO、Cr、Co、Y、Mo等の金属化合物や、Cr、V、Cu、 Fe、Mg、Ag、Pd、Ni、MnおよびPtからなる群から選択される1種以上の金属のイオンを含有させたものでもよい。これ等の酸化チタン化合物のうち、硫黄原子導入酸化チタン、窒素原子導入酸化チタン、鉄化合物を含有する硫黄原子導入酸化チタンまたは鉄化合物を含有する窒素導入酸化チタンが好ましい。
【0023】
(酸化チタン)
第一の酸化チタン化合物または第二の酸化チタン化合物がルチル型酸化チタンやアナターゼ型酸化チタン等の酸化チタンである場合、本出願書類において、ルチル型酸化チタンとは、以下に記述する式においてルチル化率が90%以上である酸化チタンを意味し、アナターゼ酸化チタンとは、以下に記述する式においてルチル化率が10%以下である酸化チタンを意味するものとする。
【0024】
また、本出願書類において、ルチル化率は、ASTM D3720−84の方法に従いX線回折測定を行い、ルチル型結晶酸化チタンの最強回折線(面指数110)のピーク面積(Ir)と、アナターゼ型結晶酸化チタンの最強回折線(面指数101)のピーク面積(Ia)を求め、次式により算出して求めたものを意味する。
ルチル化率(%)=100−100/(1+1.2×Ir/Ia)
式中、上記ピーク面積(Ir)及びピーク面積(Ia)は、X線回折スペクトルの該当回折線におけるベースラインから突出した部分の面積を指し、その算出は公知の方法で行えばよく、例えば、コンピュータ計算、近似三角形化などの手法を用いることができる。
【0025】
第一の酸化チタン化合物または第二の酸化チタン化合物がルチル型酸化チタンやアナターゼ型酸化チタン等の酸化チタンである場合、ルチル型酸化チタンやアナターゼ型酸化チタンを作製する方法としては、
(1)チタン塩を塩化物イオンの存在下でアルカリ化合物と反応させまたはチタン塩を加水分解反応する方法や、
(2)塩化チタンガスを、気相中で酸化または加水分解反応する方法
を挙げることができる。
【0026】
上記(1)チタン塩を塩化物イオンの存在下でアルカリ化合物と反応させまたはチタン塩を加水分解反応する方法で酸化チタンを作製する場合、チタン塩としては、例えば、チタンアルコキシド等の有機金属化合物、あるいは、四塩化チタン、三塩化チタン等のチタン塩化物や、硫酸チタニル、硫酸チタン等の硫酸塩のような無機塩が挙げられる。これらのうち、取り扱い性や経済性を考慮すると、チタン塩としては、四塩化チタン、硫酸チタニル、硫酸チタンが好ましい。
【0027】
チタン塩をアルカリ化合物と反応させて酸化チタンを作製する場合、チタン塩のアルカリ反応を行う方法としては、チタン塩を水に溶解させた水溶液を調製し、この水溶液を撹拌しながら、アルカリを混合して、上記チタン塩とアルカリとを接触させる方法が挙げられる。
【0028】
具体的には、例えば、
(アルカリ反応法1)チタン塩の水溶液に対して、アルカリの水溶液を滴下し、両者を接触させる方法、
(アルカリ反応法2)アルカリの水溶液に対して、チタン塩の水溶液を滴下し、両者を接触させる方法、
(アルカリ反応法3)反応容器にpHを調整した水を入れておき、その中に、チタン塩の水溶液とアルカリの水溶液とを滴下し、両者を接触させる方法、
を挙げることができる。
【0029】
上記アルカリは特に制限されず、例えば、アンモニア、アンモニア水等を挙げることができる。これらのうち、アンモニア又はアンモニア水は、金属成分を含有しないものであることから、得られる酸化チタンの可視光領域における光触媒活性を制御する上で好ましい。
上記アルカリ反応法1〜アルカリ反応法3において、反応温度は、−5〜80℃が好ましく、0〜60℃がより好ましい。反応温度が0℃未満だと反応が起こり難くなり、また、60℃を超えると、平均粒径が小さく且つ比表面積が大きいアルカリ反応物を得難くなる。
【0030】
得られる酸化チタンのルチル化率は、上記の塩化チタン水溶液の加水分解またはアルカリによる中和の時間または速度によって制御することができる。例えば四塩化チタン水溶液をアンモニア水などで中和する場合、短時間で中和するとアナターゼリッチのルチル化率の低い酸化チタンが得られ、また中和反応の速度を遅くするとルチル化率の高い酸化チタンを得ることができる。また、塩化チタン水溶液を中和あるいは加水分解する際の反応系のpHによっても得られる酸化チタンのルチル化率を制御することができ、例えば酸化チタン粉末が析出した後、低pH雰囲気で熟成反応するとルチル化率が向上しルチル型とアナターゼ型の混合結晶を得ることができる。
【0031】
次いで、アルカリ反応法1〜アルカリ反応法3でチタン塩とアルカリとを接触させて得られたスラリーを、必要に応じてデカンテ−ションや固液分離の後、再度純水を加えて分散する方法を繰り返して、反応物を洗浄し、最終的にろ過、遠心分離等の方法により生成した反応物を分離することにより、あるいは、溶媒を蒸発除去することにより、固形状の反応物を得ることができ、得られた反応物を必要に応じ洗浄、 乾燥または加熱処理することにより、酸化チタンを得ることができる。
【0032】
上記乾燥または加熱処理の際、処理温度は、通常50〜150℃であり、乾燥雰囲気は、空気、酸素ガスのような酸化性雰囲気や、窒素ガス、アルゴンガスのような不活性ガス雰囲気や、真空雰囲気等が挙げられる。また、乾燥または加熱処理時間は、処理温度により適宜調整されるが、1時間〜24時間が好ましい。また、ルチル化率は、加熱処理温度でも制御することができる。処理温度を高温とするとルチル型、低温であるとアナターゼ型が生成しやすい。
【0033】
アルカリ反応法3による酸化チタンの製造方法の一例としては、例えば、反応容器にpHを3.0〜4.5に調整した水を入れておき、その中に四塩化チタン水溶液とアルカリ水溶液とを、pH3.0〜5.0、温度5℃〜60℃を維持するように1.5〜7.5時間かけて滴下、反応させたのち、得られたスラリーをデカンテーション法等によって導電率が500〜2000mS/mになるまで純水で洗浄し、これを乾燥または加熱処理することによって製造することができる。上記乾燥または加熱処理は、通常、空気、酸素ガスのような酸化性ガスの雰囲気下や、窒素ガス、アルゴンガスのような不活性ガスの雰囲気下で、50〜450℃の温度下、1時間〜24時間処理することにより行うことができる。
【0034】
このように、本発明において、第一の酸化チタン化合物または第二の酸化チタン化合物として、チタン塩をアルカリ化合物と反応させてなる酸化チタンを用いる場合、酸化チタンの作製時に、チタン塩の反応条件(pH、温度、アルカリ化合物の添加速度など)や反応物の加熱処理条件(加熱処理温度、加熱処理時間等)を適宜選択することにより、結晶形態を制御することができる。
【0035】
また、第一の酸化チタン化合物または第二の酸化チタン化合物として、チタン塩を加水分解反応させてなる酸化チタンを用いる場合、酸化チタンは、上記チタン塩の溶液、例えば、チタンアルコキシド等の有機金属化合物や、四塩化チタン、三塩化チタン等のチタン塩化物や、硫酸チタニル、硫酸チタン等の硫酸塩をはじめとする無機塩の溶液に、水を加え、必要に応じ加温する方法を挙げることができる。例えば、チタンアルコキシド等の有機金属化合物の有機溶媒の溶液に、水を加え、チタン有機金属化合物を加水分解する方法や、四塩化チタン、三塩化チタン等のチタン塩化物や、硫酸チタニル、硫酸チタン等の硫酸塩のような無機塩の水溶液を加温または加圧することにより作製することができる。
【0036】
このように、本発明において、第一の酸化チタン化合物または第二の酸化チタン化合物として、チタン塩を加水分解反応させてなる酸化チタンを用いる場合、酸化チタンの作製時に、チタン塩の加水分解条件(pH、加水分解速度、加水分解温度など)、スラリーからの固形物の分離、あるいは、固形物を得るために必要に応じて実施する洗浄、乾燥などの処理条件、反応物の加熱処理条件(加熱処理温度、加熱処理時間等)を適宜選択することにより、所望の酸化チタンを得ることができる。
【0037】
また、上記(2)塩化チタンガスを、気相中で酸化または加水分解する方法で酸化チタンを作製する場合、具体的には、
(気相法1)四塩化チタンガスと、酸素ガスとを接触させ反応させる方法、
(気相法2)四塩化チタンガスと、酸素ガス及び水素ガスとを接触させ反応させる方法、
(気相法3)四塩化チタンガスと、水蒸気とを接触させ反応させる方法、あるいは、
(気相法4)四塩化チタンガスと、水素ガス、酸素ガス及び水蒸気とを接触させ反応させて、四塩化チタンを気相状態で加水分解又は酸化させる方法
を挙げることができる。
【0038】
上記気相法1〜気相法4の酸化チタンの製造方法では、四塩化チタンガスを反応部に供給し、該反応部で、酸素ガスと接触させるか、酸素ガスおよび水素ガスと接触させるか、水蒸気と接触させるか、または水素ガス、酸素ガスおよび水蒸気と接触させるが、上記反応部への四塩化チタンガスの供給量に対し、酸素および水蒸気の総供給量を、四塩化チタンを全て酸化する化学当量以上とすることが望ましい。
特に、水蒸気の供給量が、四塩化チタンを全て酸化する化学当量以上であると、酸化チタンの生成反応が均一に行われるため、生成する酸化チタンの結晶制御がし易くなり、高比表面積でルチル化率(ルチル含有率)の高いルチル型の酸化チタン粉末や、高比表面積でアナターゼ型の酸化チタン粉末を得易くなる。ここで、四塩化チタンを全て酸化する化学当量とは、四塩化チタンを酸素または水蒸気で反応させる場合の酸素または水蒸気の化学当量を意味し、酸素の場合、四塩化チタン(TiCl)ガス1モルに対して酸素(O)ガスが1モル、水蒸気の場合、四塩化チタンガス1モルに対して水蒸気(HO)が2モルである。
【0039】
また、各供給ガスの予熱温度及び反応温度を制御することによって、生成する酸化チタンのルチル化率(ルチル含有率)を制御することができる。ルチル化率10%以下のようにルチル化率の低いアナターゼ型酸化チタン粉末を製造する場合、予熱温度は500〜800℃で、反応温度は550〜800℃である。一方、ルチル化率90%以上のようにルチル化率の高いルチル型酸化チタン粉末を製造する場合、予熱温度は800〜900℃で、反応温度は850〜900℃である。
【0040】
本発明において、第一の酸化チタン化合物または第二の酸化チタン化合物がブルッカイト型酸化チタンである場合、ブルッカイト型酸化チタンを含む酸化チタン化合物の製造方法は、例えば特開平11−43327号公報に記載されている。例えば、四塩化チタン、チタンアルコキシド化合物等のチタン化合物を加水分解し、アルコールを少量含む水分散酸化チタンゾルを得、これにHCl等を加え、塩素イオン濃度を50〜10,000ppmの範囲とすることも可能である。上記チタン化合物としては加水分解により塩化水素が生成する四塩化チタンを用いることが好ましい。また、四塩化チタンを加水分解する際、加水分解において生成する塩化水素は反応槽からの逸出を防止しながら行うことが好ましい。
【0041】
(硫黄原子導入酸化チタン)
本発明において、第一の酸化チタン化合物または第二の酸化チタン化合物は、硫黄原子導入酸化チタンであってもよく、硫黄原子導入酸化チタンとしては、酸化チタンのチタンサイトの一部に硫黄原子が導入されてなるものが好ましい。
【0042】
硫黄原子導入酸化チタンは、種々の方法により作製することができ、具体的には、
(硫黄原子導入酸化チタンの製法1)酸化チタンと硫黄化合物との混合物を焼成する方法、
(硫黄原子導入酸化チタンの製法2)チタンアルコキシドなどのチタン塩とチオ尿素類などの硫黄化合物とを混合焼成する方法(例えば、特開2004−143032公報に記載の方法)、
(硫黄原子導入酸化チタンの製法3)硫酸チタンアンモニウムを焼成する方法、
(硫黄原子導入酸化チタンの製法4)チオ尿素類などの硫黄化合物を含むチタン塩水溶液を、中和または加水分解し、次いで、得られた中和物または加水分解物を焼成する方法、
などを挙げることができる。
【0043】
上記硫黄原子導入酸化チタンの製法1〜硫黄原子導入酸化チタンの製法4のうち、硫黄原子導入酸化チタンの製法1について詳述する。
上記硫黄原子導入酸化チタンの製法1においては、先ず、酸化チタンと硫黄化合物との混合物を作製する。
酸化チタンとしては、上述した種々の酸化チタンを挙げることができ、上記チタン塩とアルカリ化合物との中和反応により得られる酸化チタンや、チタン塩の加水分解により得られる酸化チタンが好ましく、比表面積が100〜450m/gで、X線回折分析によるアナターゼの(101)面の回折ピークの半値幅が2θ=1.0°以上、好ましくは1.5°以上であり、結晶構造がアナターゼ型である酸化チタン、または水酸化チタンが好ましい。
【0044】
酸化チタンと混合する硫黄化合物としては、有機硫黄化合物が好ましく、特にチオ尿素類が好ましい。
例えば、1‐アセチル−2−チオ尿素(CHCONHCSNH)、アミジノチオ尿素(CS)、チオ尿素(HNCSNH)、1−(1−ナフチル)−2−チオ尿素(C1110S)、フェニルエチルチオ尿素(C12S)、マロニルチオ尿素(CS)、N−メチルチオ尿素(CS)、二酸化チオ尿素(HNC(NH)SOH)などを用いることができる。
【0045】
硫黄原子を酸化チタンのチタンサイトへ導入してなる硫黄原子導入酸化チタンを作製するためには、酸化チタンと反応させる硫黄化合物として、熱により分解しその分解過程でSOガスやSOガスを生じ得る、分子中に硫黄原子を有する硫黄化合物が好ましく、常温で固体または液体である硫黄化合物がより好ましく、これらの硫黄化合物として、例えば、含硫黄有機化合物、含硫黄無機化合物、金属硫化物、硫黄などを挙げることができ、具体的には、チオ尿素、チオ尿素の誘導体、硫酸塩などを挙げることができる。これらのうち、特に、環状、非環状のチオ尿素類、中でもチオ尿素が、400〜500℃で完全に分解し、得られる酸化チタン化合物中に残存しないため好ましい。
【0046】
酸化チタンと硫黄化合物とを混合する方法としては、特に制限されず、例えば、
(硫黄化合物の混合法1)酸化チタン粉末に対して、硫黄化合物粉末を撹拌混合法などによって乾式で混合する方法、
(硫黄化合物の混合法2)硫黄化合物粉末が溶解した液中に酸化チタンを分散させた後、溶媒除去する方法、
(硫黄化合物の混合法3)酸化チタンを水に分散させたスラリーに、硫黄化合物粉末が溶解した水溶液を添加撹拌し、これをデカンテーション法などによって水で洗浄した後溶媒除去を行う方法、
(硫黄化合物の混合法4)酸化チタンの流動層中に、硫黄化合物粉末が溶解したスラリーを噴霧した後、乾燥する方法、
(硫黄化合物の混合法5)酸化チタンの流動層に、硫黄化合物粉末を気相蒸着法により担持する方法、
などを挙げることができる。
これらの混合方法のうち、酸化チタンと硫黄化合物とを乾式で混合する硫黄化合物の混合法1が、操作性の点から好ましい。
【0047】
硫黄化合物の混合量は、酸化チタンに含まれる全チタン原子の量を100質量部とした場合に、硫黄原子換算量で0.5〜120質量部であることが好ましく、2〜80質量部であることがより好ましく、3〜50質量部であることがさらに好ましい。
【0048】
硫黄化合物の混合量が、酸化チタン中に含まれる全チタン原子の量を100質量部とした場合に、硫黄原子換算量で0.5〜120質量部であることにより、可視光領域での光触媒活性が良好な硫黄原子導入酸化チタンを供し易くなる。特に、硫黄化合物の混合量を上記範囲とすることにより、酸化チタン中に含まれる全チタン原子の量を100質量部とした場合に、酸化チタンのチタンサイトの一部が、0.005〜0.20質量部の硫黄原子で置換されてなる、可視光領域での光触媒活性が良好な硫黄原子導入酸化チタンを得やすくなり、さらに後述するように可視光領域での光触媒活性が良好な鉄化合物を含有する硫黄原子導入酸化チタンの原料として供することができる。
【0049】
酸化チタンと硫黄化合物との混合物の焼成は、焼成用容器に、酸化チタンと硫黄化合物との混合物を投入し、蓋をした状態で行うことが好ましい。上記混合物の焼成は、完全開放だと、硫黄化合物から発生するガスの滞留が起こらないため、若干蓋をずらして隙間を開けた状態で行うことが好ましい。上記混合物が焼成され、発生する熱によって硫黄化合物が分解されると、分解過程でSOガスが発生し、SOガス中の硫黄原子が、酸化チタン中に取り込まれ、酸化チタンのチタン原子の一部と置換されると考えられる。そのため、硫黄化合物の分解により生じるSOガスを雰囲気に滞留させつつ、混合物を焼成することが好ましい。
【0050】
上記焼成は、空気等の酸素含有ガスの存在下で行うことが好ましい。上記酸素含有ガスの供給流量を適宜調節することによって、硫黄化合物の完全分解を促すとともに、酸化チタン中に含まれる全チタン原子の量を100質量部とした場合に、酸化チタンのチタンサイトの一部が、0.005〜0.20質量部の硫黄原子で置換されてなる酸化チタンを得ることができる。
【0051】
上記混合物の焼成温度は、300〜600℃であることが好ましく、400〜500℃であることがより好ましい。酸化チタンと硫黄化合物との混合物を焼成する際の焼成温度が300〜600℃の範囲内にあると、得られる金属酸化物含有酸化チタン化合物の可視光領域での光触媒活性が向上する。上記混合物の焼成時間は、0.5〜10時間であることが好ましく、1〜5時間であることがより好ましい。
【0052】
また、焼成後は、焼成物の表面に付着した成分を除去するために、水洗することが好ましい。さらに好ましくは、水酸化ナトリウム、アンモニア水などのアルカリを用いて焼成物の表面を洗浄すると洗浄効率が良く、さらに高い活性が得られる場合があるため、必要に応じて処理することが好ましい。
【0053】
得られる硫黄原子導入酸化チタンは、酸化チタンに含まれる全チタン原子の量を100質量部とした場合に、酸化チタンのチタンサイトの一部が0.005〜0.20質量部の硫黄原子で置換されてなるものが好ましく、酸化チタンのチタンサイトの一部が0.01〜0.10質量部の硫黄原子で置換されてなるものがより好ましい。酸化チタンのチタンサイトに対する硫黄原子の導入量が上記範囲内にあることにより、硫黄原子導入酸化チタンの可視光領域における光触媒活性を高めることができ、後述する鉄化合物を含有する硫黄原子導入酸化チタンの原料として用いたときに可視光領域における光触媒活性を高めることができる。
【0054】
酸化チタンのチタンサイトの一部が硫黄原子に置換されていることの確認は、X線光電子分光法(XPS)分析により行うことができる。酸化チタンのチタンサイトの一部が硫黄原子に置換されている場合、S4+に由来する169eV付近の特性ピークが確認される。
【0055】
硫黄原子導入酸化チタンは、比表面積が50〜120m/gであることが好ましく、60〜95m/gであることがより好ましく、X線回折分析による硫黄原子導入酸化チタンを構成するアナターゼ型結晶の(101)面の回折ピークの半値幅が1.40°以下、好ましくは0.20〜0.90°であり、かつ結晶構造がアナターゼ型であることが好ましい。比表面積および半値幅が上記範囲内にあることにより、得られる金属酸化物含有酸化チタン化合物の可視光領域における光触媒活性を高めることができる。
【0056】
(窒素原子導入酸化チタン)
本発明において、第一の酸化チタン化合物または第二の酸化チタン化合物は、窒素原子導入酸化チタンであってもよい。
第一の酸化チタン化合物または第二の酸化チタン化合物として、窒素原子導入酸化チタンを用いる場合、窒素原子導入酸化チタンとしては、X線回折分析による(101)面の回折ピークの半値幅が1.40°以下であるものであれば特に制限されないが、X線回折分析による(101)面の回折ピークの半値幅が1.40°以下である、酸化チタンの酸素サイトの一部に窒素原子が導入されてなるものが好ましい。この窒素原子導入酸化チタンも種々の方法で作製することができ、具体的には、上記硫黄原子導入酸化チタンの製法1において、硫黄化合物に代えて窒素化合物を用いた、酸化チタンと窒素化合物との混合物を焼成する方法を挙げることができる。
【0057】
窒素化合物と混合する酸化チタンとしては、上記硫黄化合物と混合する酸化チタンと同様のものを挙げることができる。また、酸化チタンに代えて、酸化チタンの前駆体を用いてもよく、酸化チタンの前駆体としては、例えば、硫酸チタニル、硫酸チタン、塩化チタン、有機チタン化合物等を挙げることができる。
【0058】
有機チタン化合物としては、チタンのアルコキシドやアセチルアセトネート等を挙げることができ、例えば、テトライソプロポキシチタン、チタニウムブトキシド、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ブチルチタネート、テトラオクチルチタネート、チタンキレート、チタンアセチルアセトネート、チタンオクチレングリコレート、チタンテトラアセチルアセトナート、チタンエチルアセトアセテート、チタンアシレート、ポリヒドロキシチタンステアレート、チタンラクテート、チタントリエタノールアミネートテトラ−i−プロポキシチタニウム、ジ−i−プロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタニウム、ジ−i−プロポキシ・ビス(アセチルアセテート)チタニウム、ジ−i−プロポキシ・ビス(アセチルアセトン)チタニウム等が挙げられる。
【0059】
酸化チタンと混合する窒素化合物としては、尿素、二酸化尿素、二酸化チオ尿素、メラミン、グアニジン、シアヌル酸、ビウレット、ウラシル等を挙げることができる。
酸化チタンと窒素化合物とを混合する方法としては、特に制限されず、例えば、硫黄化合物に代えて窒素化合物を用いる点を除けば上記硫黄化合物の混合法1〜5と同様の方法を採用することができ、酸化チタンと窒素化合物とを乾式で混合する方法が、操作性の点から好ましい。
【0060】
窒素化合物の混合量は、酸化チタンに含まれる全チタン原子の量を100質量部とした場合に、窒素原子換算量で0.5〜120質量部であることが好ましく、1〜100質量部であることがより好ましい。
【0061】
酸化チタンと窒素化合物との混合物を焼成する方法としては、硫黄化合物に代えて窒素化合物を用いることを除けば上記酸化チタンと硫黄化合物との混合物を焼成する方法と同様の方法を挙げることができ、その焼成温度は、200〜500℃であることが好ましい。上記焼成温度が200〜500℃の範囲内にあると、可視光領域での光触媒活性を向上させた窒素原子導入酸化チタンを得やすくなり、また、後述する鉄化合物を担持したときにさらに可視光領域での光触媒活性を向上させることができる。上記混合物の焼成時間は、0.5〜10時間であることが好ましい。
【0062】
また、加熱処理後、硫酸、塩酸、硝酸など酸や水酸化ナトリウム、アンモニア水などのアルカリや高温水蒸気を用いて表面の反応残留物を洗浄すると、さらに高い活性が得られる場合があるため必要に応じて処理することが好ましい。
【0063】
本発明において、第一の酸化チタン化合物または第二の酸化チタン化合物が窒素原子導入酸化チタンである場合、X線光電子分光法(XPS)による測定スペクトルにおいて395eV〜397eV付近にピークが確認できるものが可視光照射下において高い光触媒活性を呈し、好適である。上記窒素原子導入酸化チタンは、酸化チタンのチタン原子と窒素原子とが化学的な結合を有していると考えられ、酸化チタンの酸素原子の一部が窒素原子に置換された構造を有していると考えられる。
【0064】
(炭素原子導入酸化チタン)
本発明において、第一の酸化チタン化合物または第二の酸化チタン化合物は、炭素原子導入酸化チタンであってもよい。第一の酸化チタン化合物または第二の酸化チタン化合物が炭素原子導入酸化チタンである場合、炭素原子導入酸化チタンとしては、X線回折分析による(101)面の回折ピークの半値幅が1.40°以下であるものであれば特に制限されない。
【0065】
上記炭素原子導入酸化チタンは、例えば炭化チタンを酸化雰囲気中で加熱処理することにより得ることができる。この場合、加熱処理温度は、300℃〜700℃が好ましく、450℃〜600℃がより好ましい。
また、上述した酸化チタンまたは酸化チタンの前駆体を反応容器に入れ、真空度を大気圧より低くした状態でメタンなど炭素含有ガスを封入し電磁波を照射することによって、炭素原子を導入した酸化チタンを作製することもできる。このとき、反応容器内の圧力としては、0.1−10Torrの範囲が好ましく、0.5−5Torrの範囲がより好ましい。また、電磁波の周波数は、例えば2.45GHzを使用すると取り扱いが比較的容易である。また反応容器内には、水素やアンモニアガスなどの還元性のガスを同時に封入すると、この割合によって製作時間が調整できる。
その他、TiC化合物と酸化チタン前駆体との混合物を100〜1000℃で加熱結晶化するによっても、炭素原子を導入した酸化チタンを得ることができる。
【0066】
(リン原子導入酸化チタン)
本発明において、第一の酸化チタン化合物または第二の酸化チタン化合物は、リン原子導入酸化チタンであってもよい。第一の酸化チタン化合物または第二の酸化チタン化合物として、リン原子導入酸化チタンを用いる場合、リン原子導入酸化チタンとしては、X線回折分析による(101)面の回折ピークの半値幅が1.40°以下であるものであれば特に制限されない。このリン原子導入酸化チタンは、例えば、リン化合物ガスを含む雰囲気下、上述した酸化チタンあるいは酸化チタンの前駆体を熱処理する方法、TiP化合物と上述した酸化チタンの前駆体との混合物を100〜1000℃で加熱結晶化する方法、リンを含む酸化チタン前駆体を中和、加水分解または熱分解する方法により作製することができる。
【0067】
(鉄化合物等を含有する酸化チタン)
本発明において、第一の酸化チタン化合物または第二の酸化チタン化合物としては、上記酸化チタン、硫黄原子導入酸化チタン、窒素原子導入酸化チタン、炭素原子導入酸化チタン、リン原子導入酸化チタンにおいて、さらに、FeやFe等の鉄化合物や、WO、V、Bi、Nb、ZnO、ZrO、PtO、PdO、In、PbO、FeTiO、SrTiO、BaTiO、CaTiO、KTaO、SnO、MnO、Cr、Co、Y、Mo等の金属化合物や、Cr、V、Cu、 Fe、Mg、Ag、Pd、Ni、MnおよびPtからなる群から選択される1種以上の金属のイオンを含有するものでもよく、これ等の酸化チタン化合物のうち、鉄化合物を含有する硫黄原子導入酸化チタンまたは鉄化合物を含有する窒素原子導入酸化チタンであることが好ましい。第一の酸化チタン化合物または第二の酸化チタン化合物が、上記鉄化合物、金属化合物、金属イオンから選択される一種以上を含有することにより、酸化チタンの光触媒活性を向上させることができる。
【0068】
酸化チタン、硫黄原子導入酸化チタン、窒素原子導入酸化チタン、炭素原子導入酸化チタン、リン原子導入酸化チタンが、上記鉄化合物等の金属化合物や金属イオンを含有する態様は特に制限されないが、上記酸化チタン等の表面に上記鉄化合物等の金属化合物や金属イオンが担持されてなるものであることが好ましい。
【0069】
第一の酸化チタン化合物または第二の酸化チタン化合物が、上記鉄化合物等の金属化合物や金属イオンを含有するものである場合、これ等の酸化チタン化合物を製造する方法は特に制限されず、例えば、
(金属化合物または金属イオンの導入方法1)酸化チタン、硫黄原子導入酸化チタン、窒素原子導入酸化チタン、炭素原子導入酸化チタンまたはリン原子導入酸化チタンと金属化合物とを水性媒体中で混合してスラリー化し、得られたスラリーにアルカリを添加してスラリーのpHを調整する方法、
(金属化合物または金属イオンの導入方法2)酸化チタン、硫黄原子導入酸化チタン、窒素原子導入酸化チタン、炭素原子導入酸化チタンまたはリン原子導入酸化チタンと金属化合物とを水性媒体中で混合してスラリー化し、得られたスラリーに水素化ホウ素ナトリウムを添加する方法、
(金属化合物または金属イオンの導入方法3)酸化チタン、硫黄原子導入酸化チタン、窒素原子導入酸化チタン、炭素原子導入酸化チタンまたはリン原子導入酸化チタンを液中に分散させた後、金属化合物が溶解した液を添加し、溶媒除去し、酸化雰囲気、還元雰囲気、不活性雰囲気にて乾燥する方法、
(金属化合物または金属イオンの導入方法4)酸化チタン、硫黄原子導入酸化チタン、窒素原子導入酸化チタン、炭素原子導入酸化チタンまたはリン原子導入酸化チタンの流動層中に金属化合物を溶解した液を噴霧し、乾燥する方法、
(金属化合物または金属イオンの導入方法5)酸化チタン、硫黄原子導入酸化チタン、窒素原子導入酸化チタン、炭素原子導入酸化チタンまたはリン原子導入酸化チタンの流動層に、金属または金属酸化物を気相蒸着法により担持する方法、
(金属化合物または金属イオンの導入方法6)酸化チタン、硫黄原子導入酸化チタン、窒素原子導入酸化チタン、炭素原子導入酸化チタンまたはリン原子導入酸化チタンを作製した後、硫黄化合物または窒素化合物等とを混合する際に、同時に金属化合物を混合し、焼成する方法
等を挙げることができる。
【0070】
上記「金属化合物または金属イオンの導入方法6」で用いる金属化合物としては、鉄の酸化物、鉄の水酸化物、鉄の塩化物、硫酸塩、硝酸塩等の無機塩の形態を有する鉄化合物や、有機鉄化合物等が好ましい。
具体的には、Fe、Fe、FeO(OH)、FeCl、FeCl、FeSO、Fe(SO、Fe(NO、FeI、FeI、クエン酸鉄、硫酸アンモニウム鉄、硫酸第二鉄アンモニウム、クエン酸アンモニウム鉄、硫化鉄、リン酸鉄、蓚酸アンモニウム鉄、蓚酸鉄、2−エチルヘキサン酸鉄、ナフテン酸鉄、鉄アセチルアセトネート、鉄メトキシド、鉄エトキシド、鉄i−プロポキシド、ビス(シクロペンタジエニル)鉄、ビス(エチルシクロペンタジエニル)鉄、酢酸鉄、酒石酸鉄、フマル酸鉄などが挙げられる。これ等の鉄化合物のうち、特に硫酸鉄(II)七水和物、蓚酸鉄(II)二水和物が、潮解性が無く乾式での混合性が良好で、かつ優れた光触媒特性の向上を発現させる点において好ましい。また、硫酸鉄(II)七水和物は、食品添加物としても広く流通しているため、安全性、安定性および廉価性の面において、他の鉄化合物よりも優れていることから、工業的な有用性が高い。
【0071】
本発明において、第一の触媒成分は、第一の酸化チタン化合物に対し、該第一の酸化チタン化合物を構成するチタン原子の含有量を100質量部とした場合に、抗菌活性金属種を金属原子換算で2.8〜15質量部担持してなるものであり、第二の触媒成分は、第二の酸化チタン化合物に対し、該第二の酸化チタン化合物を構成するチタン原子の含有量を100質量部とした場合に、抗菌活性金属種を金属原子換算で0〜1.5質量部担持してなるものである。
【0072】
本発明において、第一の酸化チタン化合物および第二の酸化チタン化合物に担持される抗菌活性金属種は、同一のものであってもよいし異なっていてもよい。
本発明において、抗菌活性金属種としては、CuOやCuO等の銅酸化物、Cu(OH)等の銅水酸化物、CuCl・3Cu(OH)等の銅塩基性塩、またはCu原子とO(酸素)原子、H(水素)原子、N(窒素)原子、S(硫黄)原子、Cl(塩素)原子から選ばれる一以上の原子からなる化合物等の銅化合物や、金属銀や、AgO、AgCl、AgI、硫化銀、酢酸銀、硝酸銀、硫酸銀や有機銀化合物等の銀化合物から選ばれる一種以上を挙げることができ、これ等の抗菌性活性金属種を構成する金属のイオンが担持されたものでもよい。
【0073】
第一の酸化チタン化合物や第二の酸化チタン化合物に対して抗菌活性金属種を担持する方法としては、例えば、
(担持法1)第一の酸化チタン化合物または第二の酸化チタン化合物と抗菌活性金属種とを水性媒体中で混合してスラリー化し、得られたスラリーにアルカリを添加してスラリーのpHを調整する方法、
(担持法2)第一の酸化チタン化合物または第二の酸化チタン化合物と抗菌活性金属種とを水性媒体中で混合してスラリー化し、得られたスラリーに水素化ホウ素ナトリウムを添加する方法、
(担持法3)第一の酸化チタン化合物または第二の酸化チタン化合物を液中に分散させた後、抗菌活性金属種が溶解した液を添加し、溶媒除去し、酸化雰囲気、還元雰囲気、不活性雰囲気にて乾燥する方法、
(担持法4)第一の酸化チタン化合物または第二の酸化チタン化合物の流動層中に抗菌活性金属種を溶解した液を噴霧し、乾燥する方法、
(担持法5)第一の酸化チタン化合物または第二の酸化チタン化合物の流動層に、抗菌活性金属種または抗菌活性金属種を構成する金属を気相蒸着法により担持する方法、
(担持法6)酸化チタンを作製した後、該酸化チタンと、硫黄化合物または窒素化合物等とを混合する際、同時に抗菌活性金属種を混合し、焼成する方法
などを挙げることができる。
上記担持法1〜担持法6のうち、担持法1が、金属化合物を安定かつ均一に担持することができるため好ましい。
【0074】
以下、抗菌活性金属種が銅化合物である場合を例にとって、担持法1について詳説する。
酸化チタン化合物と銅化合物とを混合する水性媒体としては、水または水を主成分とし水溶性有機溶媒を含んでなるものを挙げることができ、水であることが好ましい。
【0075】
酸化チタン化合物と銅化合物とを水性媒体中で混合してなるスラリーのpHは、通常、1.5〜3.5の範囲にあるが、このスラリーにアンモニア水溶液等を添加して、pHを6〜9に調整することが好ましい。
上記pH調整によって、スラリー中の銅化合物または銅イオンが、担体である第一の酸化チタン化合物または第二の酸化チタン化合物の表面に析出して付着する。
【0076】
その後、デカンテーション法などの方法によって、スラリーの導電率が50mS/m以下になるまで純水で洗浄した後、乾燥することによって、目的とする銅化合物が担持された酸化チタン化合物を得ることができる。
【0077】
また、上記銅化合物に代えて銀化合物を用いる場合も同様の方法により担持すればよく、上記担持法2〜担持法5により担持することが好ましく、担持法2により担持することがより好ましい。
担持法2で、第一の酸化チタン化合物または第二の酸化チタン化合物と銀化合物とを接触させ、水素化ホウ素ナトリウム等の還元剤で還元処理した場合、その後、上記担持法1と同様にして、デカンテーション法などによって洗浄し、次いで乾燥処理することが好ましい。
【0078】
このようにして、第一の触媒成分または第二の触媒成分を得ることができる。
【0079】
本発明において、第一の触媒成分は、第一の酸化チタン化合物に対し、該第一の酸化チタン化合物を構成するチタン原子の含有量を100質量部とした場合に、抗菌活性金属種を金属原子換算で2.8〜15質量部担持してなるものであり、3.5〜10質量部担持してなるものであることが好ましく、4.8〜10質量部担持してなるものであることがより好ましく、4.8〜7質量部担持してなるものがさらに好ましい。
【0080】
本発明において、第二の触媒成分は、第二の酸化チタン化合物に対し、該第二の酸化チタン化合物を構成するチタン原子の含有量を100質量部とした場合に、抗菌活性金属種を金属原子換算で0〜1.5質量部担持してなるものであり、0〜1.0質量部担持してなるものであることが好ましく、0〜0.5質量部担持してなるものであることがより好ましい。
【0081】
また、本発明において、第二の酸化チタン化合物を構成するチタン原子の含有量を100質量部とした場合における、第二の酸化チタン化合物に担持される抗菌活性金属種の金属原子換算量(質量部)は、第一の酸化チタン化合物を構成するチタン原子の含有量を100質量部とした場合における、第一の酸化チタン化合物に担持される抗菌活性金属種の金属原子換算量(質量部)よりも、1.3〜15質量部少ないことが好ましい。
【0082】
本発明において、第一の触媒成分および第二の触媒成分における抗菌活性金属種の担持量が上記範囲内にあることにより、細菌やウィルスの構成物を分解する酸化チタンの光触媒作用と細菌の代謝機能を阻害する作用とが効率よく機能して、殺菌速度および有害ガスの分解速度に優れた光触媒を提供し易くなる。
【0083】
本発明において、光触媒を構成する第一の酸化チタン化合物および第二の酸化チタン化合物の合計含有量を100質量%とした場合に、第一の酸化チタン化合物の含有量は7.5〜72質量%であることが好ましく、20〜45質量%であることがより好ましく、10〜45質量%であることがさらに好ましい。
また、本発明において、光触媒を構成する第一の酸化チタン化合物および第二の酸化チタン化合物の合計含有量を100質量%とした場合に、第二の酸化チタン化合物の含有量が28〜92.5質量%であることが好ましく、55〜90質量%あることがより好ましく、55〜80質量%であることがさらに好ましい。
本発明において、第一の酸化チタン化合物および第二の酸化チタン化合物の含有割合(第一の触媒成分および第二の触媒成分の含有割合)が上記範囲内にあることにより、光触媒活性、抗菌性能に優れた光触媒を提供し易くなる。
【0084】
本発明において、上記第一の酸化チタン化合物および第二の酸化チタン化合物を構成するチタン原子の総量を100質量部とした場合に、第一の酸化チタン化合物および第二の酸化チタン化合物に担持される抗菌活性金属種を構成する金属原子の総量が10質量部以下であることが好ましく、0.5質量部〜7質量部であることがより好ましく、2質量部〜7質量部であることがさらに好ましい。
抗菌活性金属種の担持量が上記範囲内にあることにより、光触媒活性、抗菌性能に優れた光触媒を提供し易くなる。
【0085】
本発明の光触媒は、レーザー光散乱回折法粒度測定機を用いて測定したときの、平均粒子径D50(体積積算粒度分布における積算粒度で50%の粒径)が500nm以下であるものが好ましく、300nm以下であるものがより好ましい。
【0086】
本発明の光触媒は、上記第一の触媒成分と第二の触媒成分とを混合することにより作製することができる。
本発明の光触媒を製造する方法において、第一の触媒成分と第二の触媒成分とを混合する手段としては、通常の攪拌羽根を有する攪拌機や、Vミキサー、コーンミキサー等の攪拌機を用いることができる。
【0087】
また、本発明の光触媒を製造する方法においては、上記混合物をさらに解砕することが好ましい。上記解砕は、衝撃作用、せん断作用や摩砕作用を利用した解砕装置を用いて行うことが好ましい。衝撃作用、せん断作用や摩砕作用を利用した解砕装置としては、具体的には、高速回転粉砕機、ジェットミル、ビーズミル、ハンマーミル、振動ミル、流星型ボールミルや、ホモジナイザー等の乳化・分散機等からなる解砕装置を挙げることができる。
【0088】
解砕装置として高速回転粉砕機を用いる場合、高速回転粉砕機は、ピン、ブレードなどを高速回転させ、衝撃又はせん断作用により、粉体の粉砕を行う装置である。高速回転粉砕機としては、例えば、ピンミルなどが挙げられる。
解砕機として高速回転粉砕機を用いる場合、ピンやブレードの回転時における周速は100〜200m/秒であることが好ましく、150〜200m/秒であることがより好ましい。また、高速回転粉砕機に対する被処理物の供給量は、200kg/h以下であることが好ましく、30〜200kg/hであることがより好ましく、30〜100kg/hであることがさらに好ましい。高速回転粉砕機に対する被処理物の供給量が200kg/hを超えると、十分な解砕処理が困難となる。また、同供給量が30kg/h未満であると、効率的な粉砕処理を行い難くなる。なお、被処理物が高速回転粉砕機内を循環するタイプの粉砕機では、解砕機内で処理される時間(粉砕時間)は1分以上であることが好ましい。
【0089】
ジェットミルは、高圧でノズルから噴射する空気などの気体に粉体を巻き込み、粒子相互又は粒子と衝撃板との衝突により、粉体の粉砕を行う装置である。
解砕装置としてジェットミルを用いる場合、処理圧力(ノズルから噴射するガス圧力)は、0.5〜1.0MPaであることが好ましい。ジェットミルに対する被処理物の供給量は、300kg/h以下であることが好ましく、10〜300kg/hであることがより好ましく、10〜100kg/hであることがさらに好ましい。ジェットミルに対するに被処理物の供給量が300kg/hを超えると、十分な解砕処理が困難となる。また、同供給量が10kg/h未満であると、効率的な粉砕処理を行い難くなる。
【0090】
解砕装置としてビーズミルを用いる場合、回転部の周速度は4〜10m/sであることが好ましい。
【0091】
解砕装置としてホモジナイザー等の乳化・分散機等を用いる場合、回転部の回転数は3000〜10000min−1であることが好ましく、5000〜8000min−1であることがより好ましい。
【0092】
上記解砕処理は、複数の解砕機を順次用いて行ってもよい。
上記解砕処理は、被処理物を水や有機溶媒等の溶媒に分散した状態で行ってもよいし、被処理物を乾式(粉末状)のまま行ってもよい。被処理物を溶媒に分散した状態で解砕した場合、解砕後に、適宜溶媒を分離することが好ましい。
上記解砕処理は、レーザー光散乱回折法粒度測定機を用いて測定したときの、平均粒子径D50(体積積算粒度分布における積算粒度で50%の粒径)が500nm以下となるように行うことが好ましく、300nm以下となるように行うことがより好ましい。
【0093】
本発明の光触媒は、抗菌活性金属種の担持量の異なる第一の触媒成分と第二の触媒成分を含んでなるものであることから、細菌やウイルスの構成物を分解する作用(酸化チタンの光触媒作用)と細菌の代謝機能を阻害する作用(主として活性金属種の抗菌作用)とが相乗効果として効率よく機能し、抗菌活性金属化合物を均一に担持させた光触媒に比較して、特に可視光照射下において、抗菌活性が向上して細菌をより短時間で完全殺菌することができるとともに、有害ガス分解性能(酸化チタンの光触媒作用)を大きく損なうことなく機能させ得ると考えられる。このため、本発明によれば、特に可視光照射下において、抗菌活性が向上して殺菌速度に優れるとともに、有害ガス分解速度に優れる光触媒を提供することができる。
【実施例】
【0094】
次に、実施例および比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、以下の例により何ら制限されるものではない。
なお、以下の実施例および比較例において、結晶型の特定、比表面積の測定、硫黄含有量の測定、光触媒性能試験(抗菌性能(黄色ぶどう球菌に対する抗菌力)、有害ガス分解性能(アセトアルデヒドガスの分解能力))は、以下の方法により行った。
【0095】
<結晶型の特定方法>
下記の装置を用い、以下の条件にて、結晶型を特定した。
X線回折装置 RINT/Ultima+(株式会社リガク製)
X線管球 Cu
管電圧・管電流 40kV、20mA
スリット DS-SS:1度、RS:0.3mm
スキャンスピード 5°/min.
測定範囲 20°〜40°
モノクロメータ グラファイト
測定間隔 0.02度
計数方法 定時計数法
また、得られた酸化チタン、酸化チタン化合物または活性金属担持酸化チタン化合物において、これ等の各化合物を構成する、ルチル型結晶酸化チタンのX線回折パターンにおける最強干渉線(面指数110)のピーク面積(Ir)と、上記酸化チタン化合物を構成する、アナターゼ型酸化チタン粉末のX線回折パターンにおける最強干渉線(面指数101)のピーク面積(Id)とを求め、以下の式でルチル化率を算出し、ルチル化率が10%以下であるものをアナターゼ型とした。
ルチル化率(%)=100−100/(1+1.2×Ir/Id)
【0096】
<比表面積の測定>
BET法により測定した。前処理の脱気条件は110℃、30分とした。
【0097】
<硫黄含有量の測定>
硫黄分の含有量は、ICP発光分光法(測定装置:エスアイアイ・ナノテクノロジ−株式会社製 SPS−3100)で測定した。
【0098】
<平均粒径の評価>
粒度分布(平均粒径D50(体積積算粒度分布における積算粒度で50%の粒径)は、粒度分布測定装置 LA-920(株式会社堀場製作所製)を用い、ヘキサメタリン酸ナトリウム0.2%水溶液に測定試料を投入し、LA-920内蔵の超音波分散装置(出力30W-レンジ5)にて、3分間分散処理した上で測定した。
【0099】
<抗菌性能(黄色ぶどう球菌に対する抗菌力)評価試験方法>
試験菌(黄色ぶどう球菌)を普通寒天培地に接種し、35℃、24時間培養した後、生理食塩水を用いて、菌数が約10,000,000個/mLとなるように作製したものを試験菌液とした。また、精製水を用いて、各光触媒の濃度が10mg/mLになるように作製したものを試験試料液とした。
上記試験試料液10mLをL字試験管にそれぞれ入れた後、上記試験菌液1mLを接種し、25℃で光照射下および暗所で振とう培養し、所定の培養時間の生菌数を、希釈培養法を用いて測定した。なお、光照射は、蛍光灯に紫外線カットフィルター(富士フイルム(株)製「UVガード」)を装着して410nm以下の波長光をカットした完全可視光下の照度1800Lxで行った。
光照射時間として1.5時間、3時間、4時間、5時間、7時間、9時間、11時間について行い、各時間の生菌数を評価し、生菌数の検出限界として10(cfu/mL)以下になった時点を、完全殺菌(完了)時間とした。なお、試験試料液10mLに試験菌液1mLを接種したときの初期生菌数は、220000(cfu/mL)であった。
【0100】
<有害ガス分解性能(アセトアルデヒドガスの分解能力)評価試験方法>
各測定試料0.10gを直径100mmのシャ−レ内に入れて分散し、これを容量約0.5Lのテドラ−バッグに入れたのち、紫外線ライトを85時間照射して、粉末表面の初期付着有機物を分解した。このテドラ−バッグ内のガスを排気した後、アセトアルデヒドガス濃度25ppmのガス0.3Lをテドラ−バッグに封入した。これを暗所に5時間静置し、粉末に対するガスの暗所吸着をさせたのち、テドラ−バッグ内のアセトアルデヒド濃度と二酸化炭素濃度を測定し、初期濃度とした。その後テドラ−バッグの外側から蛍光灯の照射を開始し、アセトアルデヒド濃度と二酸化炭素濃度を20分毎に測定した。
蛍光灯の照射条件として、光源は18W蛍光管(パナソニック電工株式会社製、FL20SS・ENW/18X)に紫外線カットフィルタ−(富士フイルム株式会社製「UVガード」)を装着したものを用い、波長410nm以下の紫外光を含む光線をカットした。また、シャ−レ上面における照度が6000Lxになるように蛍光管からの距離を調節した。また、アセトアルデヒドガス濃度および二酸化炭素ガス濃度の測定は、ガスモニタ装置(INNOVA社製、光音響ガスモニタ)を使用して行った。
25ppmのアセトアルデヒドを完全に分解すると、これの2倍の50ppmの二酸化炭素を発生し、それ以上の二酸化炭素は発生しなくなる。よって、測定される二酸化炭素の濃度を初期濃度から差し引いた値が、50ppmに達して安定したときまでの光照射時間を、アセトアルデヒド完全分解時間として、評価した。
【0101】
(実施例1)
(1)酸化チタンの調製
以下の方法により、酸化チタン粉末を製造した。
攪拌機を備えた貯槽中に、出発液として、四塩化チタン水溶液(チタン濃度:5.7質量%)を用いて、pH3.8±0.5に調整した容量19L、液温10℃の酸性水溶液を用意した。
上記貯槽中に、撹拌機により撹拌しながら、四塩化チタン水溶液(チタン濃度:5.75質量%)とアンモニア水溶液(アンモニア濃度:5.75質量%)とを、それぞれ、添加流量が約89g/分および約81g/分となるように連続して5時間をかけて添加、反応させることにより、酸化チタン含有スラリーを生成した。このとき、四塩化チタン水溶液およびアンモニア水溶液を添加した反応液の温度が 5〜25℃を維持するようにした。また5時間の添加中は、反応液のpHが3.8±0.5の範囲になるように、各液の流量を適宜調節した。
添加終了後、1時間撹拌を続けたのち、アンモニア濃度5.8%のアンモニア水溶液を添加して、スラリーのpHが5になるように調整した。このスラリーを静置して固形分を沈降させ上澄みを抜き取ったのち、再び10〜30℃の純水を加えて撹拌するというデカンテーションによる洗浄操作を、上澄みの導電率が500〜2000mS/mになるまで繰り返した。上記洗浄後のスラリーをろ過して得たケーキをチタン製バットに入れ、乾燥機にて110℃で24時間乾燥したのち、これを解砕して酸化チタン粉末を得た。
得られた粉末の塩素濃度は0.45質量%、比表面積は355m/g、X線回折の結果、アナターゼ型酸化チタンの(101)のピークの半値幅2θが2.1°であり、ルチル化率は0%であった。
【0102】
(2)鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物(鉄化合物を含有する硫黄原子導入酸化チタン化合物)の調製
上記(1)で得た酸化チタン粉末に、チオ尿素(特級)(関東化学(株)製)とシュウ酸鉄(II)二水和物とを添加、混合することにより、酸化チタンとチオ尿素とシュウ酸鉄の混合物を得た。このとき、チオ尿素の混合量は、酸化チタン中に含まれる全チタン原子の量を100質量部としたときに、チオ尿素を構成する硫黄原子換算で、6.8質量部となるように調整した。また、シュウ酸鉄(II)二水和物の混合量は、酸化チタン中に含まれる全チタン原子の量を100質量部としたときに、シュウ酸鉄を構成する鉄原子換算で、0.05質量部となるように([Fe原子/Ti原子]が百分率で0.05質量%になるように)調整した。
具体的には、上記酸化チタン粉末120gとチオ尿素粉末11.8g、シュウ酸鉄(II)二水和物0.12gとを秤量し、これらを乳鉢で乾式粉砕混合した。
この混合物をチタン製の容器に装入し、通気口付きの上フタを乗せた後、電気炉に装填し、460℃まで加熱昇温した。昇温中は該炉内へ5〜100mL/minの流量で大気が流入するように炉内への吸気流量を調整した。460℃に達してからは、炉内への吸気流量を250〜2000mL/minに調節し、460℃で1時間保持焼成したのち室温まで冷却し、炉から取り出して焼成物(鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物)を得た。
【0103】
(3)抗菌活性金属(銅)化合物を担持した鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物のスラリーの調製
上記(2)で得られた焼成物7.5gを分取し、これを190gの純水中へ投入し、撹拌して焼成物の縣濁スラリーとした。一方、0.81gの塩化銅(II)二水和物を7gの純水へ溶解させた塩化銅水溶液を調製し、これを、上記焼成物の縣濁スラリーへ投入して30分間撹拌した。撹拌中のスラリーのpHは2.6であった。その後この撹拌中のスラリーへ、2.8%のアンモニア水溶液を、約1時間をかけてスラリーのpHが7.2〜8.0になるまで少量ずつ滴下添加し、焼成物粒子の表面に銅化合物を析出させ、担持した。その後、純水を使ったデカンテーションを2回繰り返して固形物を洗浄することによって、銅化合物を担持した鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物のスラリーを得た。
なお、このスラリーの固形分である銅化合物を担持した鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物を構成する全チタン原子の質量を100質量部とした場合、同化合物に含有される鉄化合物は、鉄原子換算で0.05質量部であり([Fe原子/Ti原子]が百分率で0.05質量%であり)、また、担持された銅化合物は、銅原子換算で 6.7質量部である([Cu原子/Ti原子]が百分率で6.7質量%である)。
【0104】
(4)抗菌活性金属(銅)化合物を担持した鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物(第一の触媒成分)と鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物(第二の触媒成分)との混合
上記(3)で得られた銅化合物を担持した鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物を第一の触媒成分とし、上記(2)で得られた鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物を第二の触媒成分として、第一の触媒成分と第二の触媒成分とを混合することにより、目的とする光触媒を調製した。
具体的には、(2)で得られた鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物92.5gを分取し、これを上記(3)で得られた銅化合物を担持した鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物のスラリーへ、純水2310gとともに投入し混合した。さらにこの混合スラリーのpHが7.5〜8.0を維持するようにアンモニア水溶液を添加しながら純水によるデカンテーションを繰り返して、スラリーの導電率が50mS/m以下になるまで固形分を洗浄した。最終的に1000gのスラリーとなるように上澄みの抜き取り量を調節した後、この混合スラリーを分散機(商品名;T.K.ホモミクサ−(特殊機化工業(株)製))により5000rpmで1時間分散処理することによって、平均粒径が310nmである第一の触媒成分と第二の触媒成分とが混合されてなるスラリー状の光触媒を得た。
上記スラリーを乾燥したのち粉砕して、粉末状の光触媒を得た。
【0105】
得られた光触媒において、銅化合物を担持した鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物を構成する酸化チタン化合物(第一の酸化チタン化合物)および鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物を構成する酸化チタン化合物(第二の酸化チタン化合物)の合計含有量を100質量%とした場合、第一の酸化チタン化合物の含有量は7.5質量%であり、第二の酸化チタン化合物の含有量は92.5質量%であった。また、上記第一の酸化チタン化合物および第二の酸化チタン化合物を構成するチタン原子の総量を100質量部とした場合に、前記第一の酸化チタン化合物および第二の酸化チタン化合物に担持される抗菌活性金属種を構成する金属原子の総量は0.5質量部であった。
また、上記光触媒は、硫黄分含有量が0.40質量%で、比表面積が71m/gで、X線回折分析による(101)のピークの半値幅が0.48°で、アナターゼ主体の結晶(ルチル化率:0%)であった。さらに、上記粉末状の光触媒をX線光電子分光法(XPS)で分析したところ、S4+に由来する169eV付近の特性ピークが観察されたことから、酸化チタンを構成するチタンサイトの一部に硫黄原子が導入されていることが確認できた。
上記粉末状の光触媒を用いて、上述した方法により、抗菌性能を評価したところ完全殺菌時間は7時間であり、また、上述した方法により、有害ガス(アセトアルデヒドガス)の分解性能を評価したところ、完全分解時間は14時間であった。
【0106】
(実施例2)
(1)実施例1(1)と同様の方法で酸化チタンを調製した。
(2)実施例1(2)と同様の方法で鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物を調製した。
(3)抗菌活性金属(銅)化合物を担持した鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物のスラリーの調製
上記(2)で得られた鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物22.4gを分取し、これを560gの純水中へ投入し、撹拌して縣濁スラリーとした。一方、2.42gの塩化銅(II)二水和物を 22gの純水へ溶解させた塩化銅水溶液を調製し、これを、上記焼成物の縣濁スラリーへ投入して30分間撹拌した。撹拌中のスラリーのpHは2.6であった。その後この撹拌中のスラリーへ、2.8%のアンモニア水溶液を約1時間をかけてスラリーのpHが7.2〜8.0になるまで少量ずつ滴下添加し、粒子の表面に銅化合物を析出させ、担持した。その後、純水を使ったデカンテーションを2回繰り返して固形物を洗浄することによって、銅化合物を担持した鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物のスラリーを得た。
なお、このスラリーの固形分である銅化合物を担持した鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物を構成する全チタン原子の質量を100質量部とした場合、同化合物に含有される鉄化合物は、鉄原子換算で0.05質量部であり([Fe原子/Ti原子]が百分率で0.05質量%であり)、また、担持された銅化合物は、銅原子換算で 6.7質量部である([Cu原子/Ti原子]が百分率で6.7質量%である)。
【0107】
(4)抗菌活性金属(銅)化合物を担持した鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物(第一の触媒成分)と鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物(第二の触媒成分)との混合
上記(3)で得られた銅化合物を担持した鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物を第一の触媒成分とし、上記(2)で得られた鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物を第二の触媒成分として、第一の触媒成分と第二の触媒成分とを混合することにより、目的とする光触媒を調製した。
具体的には、上記(2)で得られた鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物77.6gを分取し、これを上記(3)で得られた銅化合物を担持した鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物のスラリーへ、純水1940gとともに投入し混合した。さらにこの混合スラリーのpHが7.5〜8.0を維持するようにアンモニア水溶液を添加しながら純水によるデカンテーションを繰り返して、スラリーの導電率が50mS/m以下になるまで固形分を洗浄した。最終的に1000gのスラリーとなるように上澄みの抜き取り量を調節した後、この混合スラリーを分散機(商品名;T.K.ホモミクサ−(特殊機化工業(株)製))により5000rpmで1時間分散処理することによって、平均粒径が350nmである第一の触媒成分と第二の触媒成分とが混合されてなるスラリー状の光触媒を得た。
【0108】
上記スラリーを乾燥したのち粉砕して、粉末状の光触媒を得た。
得られた光触媒において、銅化合物を担持した鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物を構成する酸化チタン化合物(第一の酸化チタン化合物)および鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物を構成する酸化チタン化合物(第二の酸化チタン化合物)の合計含有量を100質量%とした場合、第一の酸化チタン化合物の含有量は22.4質量%であり、第二の酸化チタン化合物の含有量は77.6質量%であった。また、上記第一の酸化チタン化合物および第二の酸化チタン化合物を構成するチタン原子の総量を100質量部とした場合に、前記第一の酸化チタン化合物および第二の酸化チタン化合物に担持される抗菌活性金属種を構成する金属原子の総量は1.5質量部であった。
また、上記光触媒は、硫黄分含有量が0.45質量%で、比表面積が68m/gで、X線回折分析による(101)のピークの半値幅が0.48°で、アナターゼ主体の結晶(ルチル化率:0%)であった。さらに、上記粉末状の光触媒をX線光電子分光法(XPS)で分析したところ、S4+に由来する169eV付近の特性ピークが観察されたことから、酸化チタンを構成するチタンサイトの一部に硫黄原子が導入されていることが確認できた。
上記粉末状の光触媒を用いて、上述した方法により、抗菌性能を評価したところ完全殺菌時間は5時間であり、また、上述した方法により、有害ガス(アセトアルデヒドガス)の分解性能を評価したところ、完全分解時間は16時間であった。
【0109】
(実施例3)
(1)実施例1(1)と同様の方法で酸化チタンを調製した。
(2)実施例1(2)と同様の方法で鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物を調製した。
【0110】
(3)抗菌活性金属(銅)化合物を担持した鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物のスラリーの調製
上記(2)で得られた鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物41.8gを分取し、これを1045gの純水中へ投入し、撹拌して縣濁スラリーとした。一方、4.51gの塩化銅(II)二水和物を40gの純水へ溶解させた塩化銅水溶液を調製し、これを、上記焼成物の縣濁スラリーへ投入して30分間撹拌した。撹拌中のスラリーのpHは2.5であった。その後この撹拌中のスラリーへ、2.8%のアンモニア水溶液を、約1時間をかけてスラリーのpHが7.2〜8.0になるまで少量ずつ滴下添加し、粒子の表面に銅化合物を析出させ、担持した。その後、純水を使ったデカンテーションを2回繰り返して固形物を洗浄することによって、銅化合物を担持した鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物のスラリーを得た。
なお、このスラリーの固形分である銅化合物を担持した鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物を構成する全チタン原子の質量を100質量部とした場合、同化合物に含有される鉄化合物は、鉄原子換算で0.05質量部であり([Fe原子/Ti原子]が百分率で0.05質量%であり)、また、担持された銅化合物は、銅原子換算で 6.7質量部である([Cu原子/Ti原子]が百分率で6.7質量%である)。
【0111】
(4)抗菌活性金属(銅)化合物を担持した鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物(第一の触媒成分)と鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物(第二の触媒成分)との混合
上記(3)で得られた銅化合物を担持した鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物を第一の触媒成分とし、上記(2)で得られた鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物を第二の触媒成分として、第一の触媒成分と第二の触媒成分とを混合することにより、目的とする光触媒を調製した。
具体的には、上記(2)で得られた鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物58.2gを分取し、これを上記(3)で得られた銅化合物を担持した鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物のスラリーへ、純水1455gとともに投入し混合した。さらにこの混合スラリーのpHが7.5〜8.0を維持するようにアンモニア水溶液を添加しながら純水によるデカンテーションを繰り返して、スラリーの導電率が50mS/m以下になるまで固形分を洗浄した。最終的に1000gのスラリーとなるように上澄みの抜き取り量を調節した後、この混合スラリーを分散機(商品名;T.K.ホモミクサ−(特殊機化工業(株)製))により5000rpmで1時間分散処理することによって、平均粒径が340nmである第一の触媒成分と第二の触媒成分とが混合されてなるスラリー状の光触媒を得た。
上記スラリーを乾燥したのち粉砕して、粉末状の光触媒を得た。
【0112】
得られた光触媒において、銅化合物を担持した鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物を構成する酸化チタン化合物(第一の酸化チタン化合物)および鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物を構成する酸化チタン化合物(第二の酸化チタン化合物)の合計含有量を100質量%とした場合、第一の酸化チタン化合物の含有量は41.8質量%であり、第二の酸化チタン化合物の含有量は58.2質量%であった。また、上記第一の酸化チタン化合物および第二の酸化チタン化合物を構成するチタン原子の総量を100質量部とした場合に、前記第一の酸化チタン化合物および第二の酸化チタン化合物に担持される抗菌活性金属種を構成する金属原子の総量は2.8質量部であった。
また、上記光触媒は、硫黄分含有量が0.53質量%で、比表面積が67m/gで、X線回折分析による(101)のピークの半値幅が0.48°で、アナターゼ主体の結晶(ルチル化率:0%)であった。さらに、上記粉末状の光触媒をX線光電子分光法(XPS)で分析したところ、S4+に由来する169eV付近の特性ピークが観察されたことから、酸化チタンを構成するチタンサイトの一部に硫黄原子が導入されていることが確認できた。
上記粉末状の光触媒を用いて、上述した方法により、抗菌性能を評価したところ完全殺菌時間は3時間であり、また、上述した方法により、有害ガス(アセトアルデヒドガス)の分解性能を評価したところ、完全分解時間は23時間であった。
【0113】
(実施例4)
(1)実施例1(1)と同様の方法で酸化チタンを調製した。
(2)実施例1(2)と同様の方法で鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物を調製した。
【0114】
(3)抗菌活性金属(銅)化合物を担持した鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物のスラリーの調製
上記(2)で得られた鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物71.6gを分取し、これを1790gの純水中へ投入し、撹拌して縣濁スラリーとした。一方、7.72gの塩化銅(II)二水和物を70gの純水へ溶解させた塩化銅水溶液を調製し、これを、上記焼成物の縣濁スラリーへ投入して30分間撹拌した。撹拌中のスラリーのpHは2.5であった。その後この撹拌中のスラリーへ、2.8%のアンモニア水溶液を、約1時間をかけてスラリーのpHが7.2〜8.0になるまで少量ずつ滴下添加し、粒子の表面に銅化合物を析出させ、担持した。その後、純水を使ったデカンテーションを2回繰り返して固形物を洗浄することによって、銅化合物を担持した鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物のスラリーを得た。
なお、このスラリーの固形分である銅化合物を担持した鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物を構成する全チタン原子の質量を100質量部とした場合、同化合物に含有される鉄化合物は、鉄原子換算で0.05質量部であり([Fe原子/Ti原子]が百分率で0.05質量%であり)、また、担持された銅化合物は、銅原子換算で 6.7質量部である([Cu原子/Ti原子]が百分率で6.7質量%である)。
【0115】
(4)抗菌活性金属(銅)化合物を担持した鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物(第一の触媒成分)と鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物(第二の触媒成分)との混合
上記(3)で得られた銅化合物を担持した鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物を第一の触媒成分とし、上記(2)で得られた鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物を第二の触媒成分として、第一の触媒成分と第二の触媒成分とを混合することにより、目的とする光触媒を調製した。
具体的には、上記(2)で得られた鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物28.4gを分取し、これを上記(3)で得られた銅化合物を担持した鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物のスラリーへ、純水710gとともに投入し混合した。さらにこの混合スラリーのpHが7.5〜8.0を維持するようにアンモニア水溶液を添加しながら純水によるデカンテーションを繰り返して、スラリーの導電率が50mS/m以下になるまで固形分を洗浄した。最終的に1000gのスラリーとなるように上澄みの抜き取り量を調節した後、この混合スラリーを分散機(商品名;T.K.ホモミクサ−(特殊機化工業(株)製))により5000rpmで1時間分散処理することによって、平均粒径が370nmである第一の触媒成分と第二の触媒成分とが混合されてなるスラリー状の光触媒を得た。
上記スラリーを乾燥したのち粉砕して、粉末状の光触媒を得た。
【0116】
得られた光触媒において、銅化合物を担持した鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物を構成する酸化チタン化合物(第一の酸化チタン化合物)および鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物を構成する酸化チタン化合物(第二の酸化チタン化合物)の合計含有量を100質量%とした場合、第一の酸化チタン化合物の含有量は71.6質量%であり、第二の酸化チタン化合物の含有量は28.4質量%であった。また、上記第一の酸化チタン化合物および第二の酸化チタン化合物を構成するチタン原子の総量を100質量部とした場合に、前記第一の酸化チタン化合物および第二の酸化チタン化合物に担持される抗菌活性金属種を構成する金属原子の総量は4.8質量部であった。
また、上記光触媒は、硫黄分含有量が0.56質量%で、比表面積が66m/gで、X線回折分析による(101)のピークの半値幅が0.49°で、アナターゼ主体の結晶(ルチル化率:0%)であった。さらに、上記粉末状の光触媒をX線光電子分光法(XPS)で分析したところ、S4+に由来する169eV付近の特性ピークが観察されたことから、酸化チタンを構成するチタンサイトの一部に硫黄原子が導入されていることが確認できた。
上記粉末状の光触媒を用いて、上述した方法により、抗菌性能を評価したところ完全殺菌時間は4時間であり、また、上述した方法により、有害ガス(アセトアルデヒドガス)の分解性能を評価したところ、完全分解時間は36時間であった。
【0117】
(実施例5)
(1)実施例1(1)と同様の方法で酸化チタンを調製した。
(2)実施例1(2)と同様の方法で鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物を調製した。
【0118】
(3)抗菌活性金属(銅)化合物を担持した鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物のスラリーの調製
上記(2)で得られた鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物10.0gを分取し、これを250gの純水中へ投入し、撹拌して縣濁スラリーとした。一方、2.42gの塩化銅(II)二水和物を22gの純水へ溶解させた塩化銅水溶液を調製し、これを、上記焼成物の縣濁スラリーへ投入して30分間撹拌した。撹拌中のスラリーのpHは2.6であった。その後この撹拌中のスラリーへ、2.8%のアンモニア水溶液を、約1時間をかけてスラリーのpHが7.2〜8.0になるまで少量ずつ滴下添加し、粒子の表面に銅化合物を析出させ、担持した。その後、純水を使ったデカンテーションを2回繰り返して固形物を洗浄することによって、銅化合物を担持した鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物のスラリーを得た。
なお、このスラリーの固形分である銅化合物を担持した鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物を構成する全チタン原子の質量を100質量部とした場合、同化合物に含有される鉄化合物は、鉄原子換算で0.05質量部であり([Fe原子/Ti原子]が百分率で0.05質量%であり)、また、担持された銅化合物は、銅原子換算で15.0質量部である([Cu原子/Ti原子]が百分率で15.0質量%である)。
【0119】
(4)抗菌活性金属(銅)化合物を担持した鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物(第一の触媒成分)と鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物(第二の触媒成分)との混合
上記(3)で得られた銅化合物を担持した鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物を第一の触媒成分とし、上記(2)で得られた鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物を第二の触媒成分として、第一の触媒成分と第二の触媒成分とを混合することにより、目的とする光触媒を調製した。
具体的には、上記(2)で得られた鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物90gを分取し、これを上記(3)で得られた銅化合物を担持した鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物のスラリーへ、純水2250gとともに投入し混合した。さらにこの混合スラリーのpHが7.5〜8.0を維持するようにアンモニア水溶液を添加しながら純水によるデカンテーションを繰り返して、スラリーの導電率が50mS/m以下になるまで固形分を洗浄した。最終的に1000gのスラリーとなるように上澄みの抜き取り量を調節した後、この混合スラリーを分散機(商品名;T.K.ホモミクサ−(特殊機化工業(株)製))により5000rpmで1時間分散処理することによって、平均粒径が350nmである第一の触媒成分と第二の触媒成分とが混合されてなるスラリー状の光触媒を得た。
上記スラリーを乾燥したのち粉砕して、粉末状の光触媒を得た。
【0120】
得られた光触媒において、銅化合物を担持した鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物を構成する酸化チタン化合物(第一の酸化チタン化合物)および鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物を構成する酸化チタン化合物(第二の酸化チタン化合物)の合計含有量を100質量%とした場合、第一の酸化チタン化合物の含有量は10.0質量%であり、第二の酸化チタン化合物の含有量は90.0質量%であった。また、上記第一の酸化チタン化合物および第二の酸化チタン化合物を構成するチタン原子の総量を100質量部とした場合に、前記第一の酸化チタン化合物および第二の酸化チタン化合物に担持される抗菌活性金属種を構成する金属原子の総量は1.5質量部であった。
また、上記光触媒は、硫黄分含有量が0.48質量%で、比表面積が70m/gで、X線回折分析による(101)のピークの半値幅が0.48°で、アナターゼ主体の結晶(ルチル化率:0%)であった。さらに、上記粉末状の光触媒をX線光電子分光法(XPS)で分析したところ、S4+に由来する169eV付近の特性ピークが観察されたことから、酸化チタンを構成するチタンサイトの一部に硫黄原子が導入されていることが確認できた。
上記粉末状の光触媒を用いて、上述した方法により、抗菌性能を評価したところ完全殺菌時間は7時間であり、また、上述した方法により、有害ガス(アセトアルデヒドガス)の分解性能を評価したところ、完全分解時間は18時間であった。
【0121】
(実施例6)
(1)実施例1(1)と同様の方法で酸化チタンを調製した。
(2)実施例1(2)と同様の方法で鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物を調製した。
【0122】
(3)抗菌活性金属(銅)化合物を担持した鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物のスラリーの調製
上記(2)で得られた鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物18.7gを分取し、これを470gの純水中へ投入し、撹拌して縣濁スラリーとした。一方、4.52gの塩化銅(II)二水和物を40gの純水へ溶解させた塩化銅水溶液を調製し、これを、上記焼成物の縣濁スラリーへ投入して30分間撹拌した。撹拌中のスラリーのpHは2.5であった。その後この撹拌中のスラリーへ、2.8%のアンモニア水溶液を、約1時間をかけてスラリーのpHが7.2〜8.0になるまで少量ずつ滴下添加し、粒子の表面に銅化合物を析出させ、担持した。その後、純水を使ったデカンテーションを2回繰り返して固形物を洗浄することによって、銅化合物を担持した鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物のスラリーを得た。
なお、このスラリーの固形分である銅化合物を担持した鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物を構成する全チタン原子の質量を100質量部とした場合、同化合物に含有される鉄化合物は、鉄原子換算で0.05質量部であり([Fe原子/Ti原子]が百分率で0.05質量%であり)、また、担持された銅化合物は、銅原子換算で15.0質量部である([Cu原子/Ti原子]が百分率で15.0質量%である)。
【0123】
(4)抗菌活性金属(銅)化合物を担持した鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物(第一の触媒成分)と鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物(第二の触媒成分)との混合
上記(3)で得られた銅化合物を担持した鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物を第一の触媒成分とし、上記(2)で得られた鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物を第二の触媒成分として、第一の触媒成分と第二の触媒成分とを混合することにより、目的とする光触媒を調製した。
具体的には、上記(2)で得られた鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物81.3gを分取し、これを上記(3)で得られた銅化合物を担持した鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物のスラリーへ、純水2030gとともに投入し混合した。さらにこの混合スラリーのpHが7.5〜8.0を維持するようにアンモニア水溶液を添加しながら純水によるデカンテーションを繰り返して、スラリーの導電率が50mS/m以下になるまで固形分を洗浄した。最終的に1000gのスラリーとなるように上澄みの抜き取り量を調節した後、この混合スラリーを分散機(商品名;T.K.ホモミクサ−(特殊機化工業(株)製))により5000rpmで1時間分散処理することによって、平均粒径が390nmである第一の触媒成分と第二の触媒成分とが混合されてなるスラリー状の光触媒を得た。
上記スラリーを乾燥したのち粉砕して、粉末状の光触媒を得た。
【0124】
得られた光触媒において、銅化合物を担持した鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物を構成する酸化チタン化合物(第一の酸化チタン化合物)および鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物を構成する酸化チタン化合物(第二の酸化チタン化合物)の合計含有量を100質量%とした場合、第一の酸化チタン化合物の含有量は18.7質量%であり、第二の酸化チタン化合物の含有量は81.3質量%であった。また、上記第一の酸化チタン化合物および第二の酸化チタン化合物を構成するチタン原子の総量を100質量部とした場合に、前記第一の酸化チタン化合物および第二の酸化チタン化合物に担持される抗菌活性金属種を構成する金属原子の総量は2.8質量部であった。
また、上記光触媒は、硫黄分含有量が0.53質量%で、比表面積が67m/gで、X線回折分析による(101)のピークの半値幅が0.49°で、アナターゼ主体の結晶(ルチル化率:0%)であった。さらに、上記粉末状の光触媒をX線光電子分光法(XPS)で分析したところ、S4+に由来する169eV付近の特性ピークが観察されたことから、酸化チタンを構成するチタンサイトの一部に硫黄原子が導入されていることが確認できた。
上記粉末状の光触媒を用いて、上述した方法により、抗菌性能を評価したところ完全殺菌時間は5時間であり、また、上述した方法により、有害ガス(アセトアルデヒドガス)の分解性能を評価したところ、完全分解時間は24時間であった。
【0125】
(実施例7)
(1)実施例1(1)と同様の方法で酸化チタンを調製した。
(2)実施例1(2)と同様の方法で鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物を調製した。
【0126】
(3)抗菌活性金属(銅)化合物を担持した鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物のスラリーの調製
上記(2)で得られた鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物32gを分取し、これを800gの純水中へ投入し、撹拌して縣濁スラリーとした。一方、7.73gの塩化銅(II)二水和物を70gの純水へ溶解させた塩化銅水溶液を調製し、これを、上記焼成物の縣濁スラリーへ投入して30分間撹拌した。撹拌中のスラリーのpHは2.5であった。その後この撹拌中のスラリーへ、2.8%のアンモニア水溶液を、約1時間をかけてスラリーのpHが7.2〜8.0になるまで少量ずつ滴下添加し、粒子の表面に銅化合物を析出させ、担持した。その後、純水を使ったデカンテーションを2回繰り返して固形物を洗浄することによって、銅化合物を担持した鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物のスラリーを得た。
なお、このスラリーの固形分である銅化合物を担持した鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物を構成する全チタン原子の質量を100質量部とした場合、同化合物に含有される鉄化合物は、鉄原子換算で0.05質量部であり([Fe原子/Ti原子]が百分率で0.05質量%であり)、また、担持された銅化合物は、銅原子換算で15.0質量部である([Cu原子/Ti原子]が百分率で15.0質量%である)。
【0127】
(4)抗菌活性金属(銅)化合物を担持した鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物(第一の触媒成分)と鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物(第二の触媒成分)との混合
上記(3)で得られた銅化合物を担持した鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物を第一の触媒成分とし、上記(2)で得られた鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物を第二の触媒成分として、第一の触媒成分と第二の触媒成分とを混合することにより、目的とする光触媒を調製した。
具体的には、上記(2)で得られた鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物68gを分取し、これを上記(3)で得られた銅化合物を担持した鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物のスラリーへ、純水1700gとともに投入し混合した。さらにこの混合スラリーのpHが7.5〜8.0を維持するようにアンモニア水溶液を添加しながら純水によるデカンテーションを繰り返して、スラリーの導電率が50mS/m以下になるまで固形分を洗浄した。最終的に1000gのスラリーとなるように上澄みの抜き取り量を調節した後、この混合スラリーを分散機(商品名;T.K.ホモミクサ−(特殊機化工業(株)製))により5000rpmで1時間分散処理することによって、平均粒径が350nmである第一の触媒成分と第二の触媒成分とが混合されてなるスラリー状の光触媒を得た。
上記スラリーを乾燥したのち粉砕して、粉末状の光触媒を得た。
【0128】
得られた光触媒において、銅化合物を担持した鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物を構成する酸化チタン化合物(第一の酸化チタン化合物)および鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物を構成する酸化チタン化合物(第二の酸化チタン化合物)の合計含有量を100質量%とした場合、第一の酸化チタン化合物の含有量は32.0質量%であり、第二の酸化チタン化合物の含有量は68.0質量%であった。また、上記第一の酸化チタン化合物および第二の酸化チタン化合物を構成するチタン原子の総量を100質量部とした場合に、前記第一の酸化チタン化合物および第二の酸化チタン化合物に担持される抗菌活性金属種を構成する金属原子の総量は4.8質量部であった。
また、上記光触媒は、硫黄分含有量が0.58質量%で、比表面積が65m/gで、X線回折分析による(101)のピークの半値幅が0.48°で、アナターゼ主体の結晶(ルチル化率:0%)であった。さらに、上記粉末状の光触媒をX線光電子分光法(XPS)で分析したところ、S4+に由来する169eV付近の特性ピークが観察されたことから、酸化チタンを構成するチタンサイトの一部に硫黄原子が導入されていることが確認できた。
上記粉末状の光触媒を用いて、上述した方法により、抗菌性能を評価したところ完全殺菌時間は3時間であり、また、上述した方法により、有害ガス(アセトアルデヒドガス)の分解性能を評価したところ、完全分解時間は28時間であった。
【0129】
(実施例8)
(1)実施例1(1)と同様の方法で酸化チタンを調製した。
(2)実施例1(2)と同様の方法で鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物を調製した。
【0130】
(3)抗菌活性金属(銅)化合物を担持した鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物のスラリーの調製
上記(2)で得られた鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物44.7gを分取し、これを1120gの純水中へ投入し、撹拌して縣濁スラリーとした。一方、10.8gの塩化銅(II)二水和物を100gの純水へ溶解させた塩化銅水溶液を調製し、これを、上記焼成物の縣濁スラリーへ投入して30分間撹拌した。撹拌中のスラリーのpHは2.6であった。その後この撹拌中のスラリーへ、2.8%のアンモニア水溶液を、約1時間をかけてスラリーのpHが7.2〜8.0になるまで少量ずつ滴下添加し、粒子の表面に銅化合物を析出させ、担持した。その後、純水を使ったデカンテーションを2回繰り返して固形物を洗浄することによって、銅化合物を担持した鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物のスラリーを得た。
なお、このスラリーの固形分である銅化合物を担持した鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物を構成する全チタン原子の質量を100質量部とした場合、同化合物に含有される鉄化合物は、鉄原子換算で0.05質量部であり([Fe原子/Ti原子]が百分率で0.05質量%であり)、また、担持された銅化合物は、銅原子換算で15.0質量部である([Cu原子/Ti原子]が百分率で15.0質量%である)。
【0131】
(4)抗菌活性金属(銅)化合物を担持した鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物(第一の触媒成分)と鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物(第二の触媒成分)との混合
上記(3)で得られた銅化合物を担持した鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物を第一の触媒成分とし、上記(2)で得られた鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物を第二の触媒成分として、第一の触媒成分と第二の触媒成分とを混合することにより、目的とする光触媒を調製した。
具体的には、上記(2)で得られた鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物55.3gを分取し、これを上記(3)で得られた銅化合物を担持した鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物のスラリーへ、純水1380gとともに投入し混合した。さらにこの混合スラリーのpHが7.5〜8.0を維持するようにアンモニア水溶液を添加しながら純水によるデカンテーションを繰り返して、スラリーの導電率が50mS/m以下になるまで固形分を洗浄した。最終的に1000gのスラリーとなるように上澄みの抜き取り量を調節した後、この混合スラリーを分散機(商品名;T.K.ホモミクサ−(特殊機化工業(株)製))により5000rpmで1時間分散処理することによって、平均粒径が390nmである第一の触媒成分と第二の触媒成分とが混合されてなるスラリー状の光触媒を得た。
上記スラリーを乾燥したのち粉砕して、粉末状の光触媒を得た。
【0132】
得られた光触媒において、銅化合物を担持した鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物を構成する酸化チタン化合物(第一の酸化チタン化合物)および鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物を構成する酸化チタン化合物(第二の酸化チタン化合物)の合計含有量を100質量%とした場合、第一の酸化チタン化合物の含有量は44.7質量%であり、第二の酸化チタン化合物の含有量は55.3質量%であった。また、上記第一の酸化チタン化合物および第二の酸化チタン化合物を構成するチタン原子の総量を100質量部とした場合に、前記第一の酸化チタン化合物および第二の酸化チタン化合物に担持される抗菌活性金属種を構成する金属原子の総量は6.7質量部であった。
また、上記光触媒は、硫黄分含有量が0.58質量%で、比表面積が64m/gで、X線回折分析による(101)のピークの半値幅が0.48°で、アナターゼ主体の結晶(ルチル化率:0%)であった。さらに、上記粉末状の光触媒をX線光電子分光法(XPS)で分析したところ、S4+に由来する169eV付近の特性ピークが観察されたことから、酸化チタンを構成するチタンサイトの一部に硫黄原子が導入されていることが確認できた。
上記粉末状の光触媒を用いて、上述した方法により、抗菌性能を評価したところ完全殺菌時間は3時間であり、また、上述した方法により、有害ガス(アセトアルデヒドガス)の分解性能を評価したところ、完全分解時間は41時間であった。
【0133】
(実施例9)
(1)実施例1(1)と同様の方法で酸化チタンを調製した。
(2)実施例1(2)と同様の方法で鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物を調製した。
【0134】
(3)抗菌活性金属(銅)化合物を担持した鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物のスラリーの調製
上記(2)で得られた鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物66.7gを分取し、これを1670gの純水中へ投入し、撹拌して縣濁スラリーとした。一方、16.1gの塩化銅(II)二水和物を145gの純水へ溶解させた塩化銅水溶液を調製し、これを、上記焼成物の縣濁スラリーへ投入して30分間撹拌した。撹拌中のスラリーのpHは2.5であった。その後この撹拌中のスラリーへ、2.8%のアンモニア水溶液を、約1時間をかけてスラリーのpHが7.2〜8.0になるまで少量ずつ滴下添加し、粒子の表面に銅化合物を析出させ、担持した。その後、純水を使ったデカンテーションを2回繰り返して固形物を洗浄することによって、銅化合物を担持した鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物のスラリーを得た。
なお、このスラリーの固形分である銅化合物を担持した鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物を構成する全チタン原子の質量を100質量部とした場合、同化合物に含有される鉄化合物は、鉄原子換算で0.05質量部であり([Fe原子/Ti原子]が百分率で0.05質量%であり)、また、担持された銅化合物は、銅原子換算で15.0質量部である([Cu原子/Ti原子]が百分率で15.0質量%である)。
【0135】
(4)抗菌活性金属(銅)化合物を担持した鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物(第一の触媒成分)と鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物(第二の触媒成分)との混合
上記(3)で得られた銅化合物を担持した鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物を第一の触媒成分とし、上記(2)で得られた鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物を第二の触媒成分として、第一の触媒成分と第二の触媒成分とを混合することにより、目的とする光触媒を調製した。
具体的には、上記(2)で得られた鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物33.3gを分取し、これを上記(3)で得られた銅化合物を担持した鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物のスラリーへ、純水830gとともに投入し混合した。さらにこの混合スラリーのpHが7.5〜8.0を維持するようにアンモニア水溶液を添加しながら純水によるデカンテーションを繰り返して、スラリーの導電率が50mS/m以下になるまで固形分を洗浄した。最終的に1000gのスラリーとなるように上澄みの抜き取り量を調節した後、この混合スラリーを分散機(商品名;T.K.ホモミクサ−(特殊機化工業(株)製))により5000rpmで1時間分散処理することによって、平均粒径が380nmである第一の触媒成分と第二の触媒成分とが混合されてなるスラリー状の光触媒を得た。
上記スラリーを乾燥したのち粉砕して、粉末状の光触媒を得た。
【0136】
得られた光触媒において、銅化合物を担持した鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物を構成する酸化チタン化合物(第一の酸化チタン化合物)および鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物を構成する酸化チタン化合物(第二の酸化チタン化合物)の合計含有量を100質量%とした場合、第一の酸化チタン化合物の含有量は66.7質量%であり、第二の酸化チタン化合物の含有量は33.3質量%であった。また、上記第一の酸化チタン化合物および第二の酸化チタン化合物を構成するチタン原子の総量を100質量部とした場合に、前記第一の酸化チタン化合物および第二の酸化チタン化合物に担持される抗菌活性金属種を構成する金属原子の総量は10.0質量部であった。
また、上記光触媒は、硫黄分含有量が0.67質量%で、比表面積が61m/gで、X線回折分析による(101)のピークの半値幅が0.48°で、アナターゼ主体の結晶(ルチル化率:0%)であった。さらに、上記粉末状の光触媒をX線光電子分光法(XPS)で分析したところ、S4+に由来する169eV付近の特性ピークが観察されたことから、酸化チタンを構成するチタンサイトの一部に硫黄原子が導入されていることが確認できた。
上記粉末状の光触媒を用いて、上述した方法により、抗菌性能を評価したところ完全殺菌時間は4時間であり、また、上述した方法により、有害ガス(アセトアルデヒドガス)の分解性能を評価したところ、完全分解時間は49時間であった。
【0137】
(実施例10)
(1)実施例1(1)と同様の方法で酸化チタンを調製した。
(2)実施例1(2)と同様の方法で鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物を調製した。
【0138】
(3)抗菌活性金属(銅)化合物を担持した鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物のスラリーの調製
上記(2)で得られた鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物53.6gを分取し、これを1340gの純水中へ投入し、撹拌して縣濁スラリーとした。一方、2.42gの塩化銅(II)二水和物を22gの純水へ溶解させた塩化銅水溶液を調製し、これを、上記焼成物の縣濁スラリーへ投入して30分間撹拌した。撹拌中のスラリーのpHは2.7であった。その後この撹拌中のスラリーへ、2.8%のアンモニア水溶液を、約1時間をかけてスラリーのpHが7.2〜8.0になるまで少量ずつ滴下添加し、粒子の表面に銅化合物を析出させ、担持した。その後、純水を使ったデカンテーションを2回繰り返して固形物を洗浄することによって、銅化合物を担持した鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物のスラリーを得た。
なお、このスラリーの固形分である銅化合物を担持した鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物を構成する全チタン原子の質量を100質量部とした場合、同化合物に含有される鉄化合物は、鉄原子換算で0.05質量部であり([Fe原子/Ti原子]が百分率で0.05質量%であり)、また、担持された銅化合物は、銅原子換算で2.8質量部である([Cu原子/Ti原子]が百分率で2.8質量%である)。
【0139】
(4)抗菌活性金属(銅)化合物を担持した鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物(第一の触媒成分)と鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物(第二の触媒成分)との混合
上記(3)で得られた銅化合物を担持した鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物を第一の触媒成分とし、上記(2)で得られた鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物を第二の触媒成分として、第一の触媒成分と第二の触媒成分とを混合することにより、目的とする光触媒を調製した。
具体的には、上記(2)で得られた鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物46.4gを分取し、これを上記(3)で得られた銅化合物を担持した鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物のスラリーへ、純水1160gとともに投入し混合した。さらにこの混合スラリーのpHが7.5〜8.0を維持するようにアンモニア水溶液を添加しながら純水によるデカンテーションを繰り返して、スラリーの導電率が50mS/m以下になるまで固形分を洗浄した。最終的に1000gのスラリーとなるように上澄みの抜き取り量を調節した後、この混合スラリーを分散機(商品名;T.K.ホモミクサ−(特殊機化工業(株)製))により5000rpmで1時間分散処理することによって、平均粒径が350nmである第一の触媒成分と第二の触媒成分とが混合されてなるスラリー状の光触媒を得た。
上記スラリーを乾燥したのち粉砕して、粉末状の光触媒を得た。
【0140】
得られた光触媒において、銅化合物を担持した鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物を構成する酸化チタン化合物(第一の酸化チタン化合物)および鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物を構成する酸化チタン化合物(第二の酸化チタン化合物)の合計含有量を100質量%とした場合、第一の酸化チタン化合物の含有量は53.6質量%であり、第二の酸化チタン化合物の含有量は46.4質量%であった。また、上記第一の酸化チタン化合物および第二の酸化チタン化合物を構成するチタン原子の総量を100質量部とした場合に、前記第一の酸化チタン化合物および第二の酸化チタン化合物に担持される抗菌活性金属種を構成する金属原子の総量は1.5質量部であった。
また、上記光触媒は、硫黄分含有量が0.43質量%で、比表面積が72m/gで、X線回折分析による(101)のピークの半値幅が0.48°で、アナターゼ主体の結晶(ルチル化率:0%)であった。さらに、上記粉末状の光触媒をX線光電子分光法(XPS)で分析したところ、S4+に由来する169eV付近の特性ピークが観察されたことから、酸化チタンを構成するチタンサイトの一部に硫黄原子が導入されていることが確認できた。
上記粉末状の光触媒を用いて、上述した方法により、抗菌性能を評価したところ完全殺菌時間は5時間であり、また、上述した方法により、有害ガス(アセトアルデヒドガス)の分解性能を評価したところ、完全分解時間は21時間であった。
【0141】
(実施例11)
(1)実施例1(1)と同様の方法で酸化チタンを調製した。
(2)実施例1(2)と同様の方法で鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物を調製した。
【0142】
(3)抗菌活性金属(銅)化合物を担持した鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物のスラリーの調製
上記(2)で得られた鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物10gを分取し、これを250gの純水中へ投入し、撹拌して縣濁スラリーとした。一方、0.45gの塩化銅(II)二水和物を4gの純水へ溶解させた塩化銅水溶液を調製し、これを、上記焼成物の縣濁スラリーへ投入して30分間撹拌した。撹拌中のスラリーのpHは2.7であった。その後この撹拌中のスラリーへ、2.8%のアンモニア水溶液を、約1時間をかけてスラリーのpHが7.2〜8.0になるまで少量ずつ滴下添加し、粒子の表面に銅化合物を析出させ、担持した。その後、純水を使ったデカンテーションを2回繰り返して固形物を洗浄することによって、銅化合物を担持した鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物のスラリーを得た。
なお、このスラリーの固形分である銅化合物を担持した鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物を構成する全チタン原子の質量を100質量部とした場合、同化合物に含有される鉄化合物は、鉄原子換算で0.05質量部であり([Fe原子/Ti原子]が百分率で0.05質量%であり)、また、担持された銅化合物は、銅原子換算で2.8質量部である([Cu原子/Ti原子]が百分率で2.8質量%である)。
【0143】
(4)抗菌活性金属(銅)化合物を担持した硫黄原子導入酸化チタン化合物のスラリーの調製
実施例1(2)において シュウ酸鉄(II)二水和物を添加しなかったこと以外の条件は同様にして、焼成物(硫黄原子導入酸化チタン化合物)を得た。
上記硫黄原子導入酸化チタン化合物90gを分取し、これを2250gの純水中へ投入し、撹拌して硫黄原子導入酸化チタン化合物の縣濁スラリーとした。一方、2.17gの塩化銅(II)二水和物を 20gの純水へ溶解させた塩化銅水溶液を調製し、これを、上記焼成物の縣濁スラリーへ投入して30分間撹拌した。撹拌中のスラリーのpHは2.9であった。その後この撹拌中のスラリーへ、2.8%のアンモニア水溶液を、約1時間をかけてスラリーのpHが7.2〜8.0になるまで少量ずつ滴下添加し、焼成物粒子の表面に銅化合物を析出させ、担持した。その後、純水を使ったデカンテーションを2回繰り返して固形物を洗浄することによって、銅化合物を担持した硫黄原子導入酸化チタン化合物のスラリーを得た。
なお、このスラリーの固形分である銅化合物を担持した硫黄原子導入酸化チタン化合物を構成する全チタン原子の質量を100質量部とした場合、同化合物に含有される鉄化合物は、鉄原子換算で0質量部であり([Fe原子/Ti原子]が百分率で0質量%であり)、また、担持された銅化合物は、銅原子換算で1.5質量部である([Cu原子/Ti原子]が百分率で1.5質量%である)。
【0144】
(5)抗菌活性金属(銅)化合物を担持した鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物(第一の触媒成分)と 抗菌活性金属(銅)化合物を担持した硫黄原子導入酸化チタン化合物(第二の触媒成分)との混合
上記(3)で得られた銅化合物を担持した鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物を第一の触媒成分とし、上記(4)で得られた銅化合物を担持した硫黄原子導入酸化チタン化合物を第二の触媒成分として、第一の触媒成分と第二の触媒成分とを混合することにより、目的とする光触媒を調製した。
具体的には、上記(3)で得られたスラリー全量と、上記(4)で得られたスラリー全量とを混合し、さらにこの混合スラリーのpHが7.5〜8.0を維持するようにアンモニア水溶液を添加しながら純水によるデカンテーションを繰り返して、スラリーの導電率が50mS/m以下になるまで固形分を洗浄した。最終的に1000gのスラリーとなるように上澄みの抜き取り量を調節した後、この混合スラリーを分散機(商品名;T.K.ホモミクサ−(特殊機化工業(株)製))により5000rpmで1時間分散処理することによって、平均粒径が370nmである第一の触媒成分と第二の触媒成分とが混合されてなるスラリー状の光触媒を得た。
上記スラリーを乾燥したのち粉砕して、粉末状の光触媒を得た。
【0145】
得られた光触媒において、銅化合物を担持した鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物を構成する酸化チタン化合物(第一の酸化チタン化合物)および銅化合物を担持した硫黄原子導入酸化チタン化合物を構成する酸化チタン化合物(第二の酸化チタン化合物)の合計含有量を100質量%とした場合、第一の酸化チタン化合物の含有量は10.0質量%であり、第二の酸化チタン化合物の含有量は90.0質量%であった。また、上記第一の酸化チタン化合物および第二の酸化チタン化合物を構成するチタン原子の総量を100質量部とした場合に、前記第一の酸化チタン化合物および第二の酸化チタン化合物に担持される抗菌活性金属種を構成する金属原子の総量は1.63質量部であった。
また、上記光触媒は、硫黄分含有量が0.45質量%で、比表面積が68m/gで、X線回折分析による(101)のピークの半値幅が0.48°で、アナターゼ主体の結晶(ルチル化率:0%)であった。さらに、上記粉末状の光触媒をX線光電子分光法(XPS)で分析したところ、S4+に由来する169eV付近の特性ピークが観察されたことから、酸化チタンを構成するチタンサイトの一部に硫黄原子が導入されていることが確認できた。
上記粉末状の光触媒を用いて、上述した方法により、抗菌性能を評価したところ完全殺菌時間は4時間であり、また、上述した方法により、有害ガス(アセトアルデヒドガス)の分解性能を評価したところ、完全分解時間は18時間であった。
【0146】
(実施例12)
(1)実施例1(1)と同様の方法で酸化チタンを調製した。
(2)鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物(鉄化合物を含有した硫黄原子導入酸化チタン化合物)の調製
上記(1)で得られた酸化チタン粉末に、チオ尿素(特級)(関東化学(株)製)と シュウ酸鉄(II)二水和物とを添加、混合することにより、酸化チタンとチオ尿素とシュウ酸鉄の混合物を得た。このとき、チオ尿素の混合量は、酸化チタン中に含まれる全チタン原子の量を100質量部としたときに、チオ尿素を構成する硫黄原子換算で、6.8質量部となるように調整した。また、シュウ酸鉄(II)二水和物の混合量は、酸化チタン中に含まれる全チタン原子の量を100質量部としたときに、シュウ酸鉄を構成する鉄原子換算で、0.10質量部となるように調整した。
具体的には、上記酸化チタン粉末120gとチオ尿素粉末11.8g、シュウ酸鉄(II)二水和物0.23gとを秤量し、これらを乳鉢で乾式粉砕混合した。
この混合物をチタン製の容器に装入し、通気口付きの上フタを乗せた後、電気炉に装填し、460℃まで加熱昇温した。昇温中は該炉内へ5〜100mL/minの流量で大気が流入するように炉内への吸気流量を調整した。460℃に達してからは、炉内への吸気流量を250〜2000mL/minに調節し、460℃で1時間保持焼成したのち室温まで冷却し、炉から取り出して焼成物(鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物)を得た。
【0147】
(3)抗菌活性金属(銅)化合物を担持した鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物のスラリーの調製
上記(2)で得られた鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物41.8gを分取し、これを1045gの純水中へ投入し、撹拌して縣濁スラリーとした。一方、4.51gの塩化銅(II)二水和物を40gの純水へ溶解させた塩化銅水溶液を調製し、これを、上記焼成物の縣濁スラリーへ投入して30分間撹拌した。撹拌中のスラリーのpHは2.5であった。その後この撹拌中のスラリーへ、2.8%のアンモニア水溶液を、約1時間をかけてスラリーのpHが7.2〜8.0になるまで少量ずつ滴下添加し、粒子の表面に銅化合物を析出させ、担持した。その後、純水を使ったデカンテーションを2回繰り返して固形物を洗浄することによって、銅化合物を担持した鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物のスラリーを得た。
なお、このスラリーの固形分である銅化合物を担持した鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物を構成する全チタン原子の質量を100質量部とした場合、同化合物に含有される鉄化合物は、鉄原子換算で0.10質量部であり([Fe原子/Ti原子]が百分率で0.10質量%であり)、また、担持された銅化合物は、銅原子換算で6.7質量部である([Cu原子/Ti原子]が百分率で6.7質量%である)。
【0148】
(4)抗菌活性金属(銅)化合物を担持した鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物(第一の触媒成分)と鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物(第二の触媒成分)との混合
上記(3)で得られた銅化合物を担持した鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物を第一の触媒成分とし、上記(2)で得られた鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物を第二の触媒成分として、第一の触媒成分と第二の触媒成分とを混合することにより、目的とする光触媒を調製した。
具体的には、上記(2)で得られた鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物58.2gを分取し、これを上記(3)で得られた銅化合物を担持した鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物のスラリーへ、純水1455gとともに投入し混合した。さらにこの混合スラリーのpHが7.5〜8.0を維持するようにアンモニア水溶液を添加しながら純水によるデカンテーションを繰り返して、スラリーの導電率が50mS/m以下になるまで固形分を洗浄した。最終的に1000gのスラリーとなるように上澄みの抜き取り量を調節した後、この混合スラリーを分散機(商品名;T.K.ホモミクサ−(特殊機化工業(株)製))により5000rpmで1時間分散処理することによって、平均粒径が330nmである第一の触媒成分と第二の触媒成分とが混合されてなるスラリー状の光触媒を得た。
上記スラリーを乾燥したのち粉砕して、粉末状の光触媒を得た。
【0149】
得られた光触媒において、銅化合物を担持した鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物を構成する酸化チタン化合物(第一の酸化チタン化合物)および鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物を構成する酸化チタン化合物(第二の酸化チタン化合物)の合計含有量を100質量%とした場合、第一の酸化チタン化合物の含有量は41.8質量%であり、第二の酸化チタン化合物の含有量は58.2質量%であった。また、上記第一の酸化チタン化合物および第二の酸化チタン化合物を構成するチタン原子の総量を100質量部とした場合に、前記第一の酸化チタン化合物および第二の酸化チタン化合物に担持される抗菌活性金属種を構成する金属原子の総量は2.8質量部であった。
また、上記光触媒は、硫黄分含有量が0.48質量%で、比表面積が70m/gで、X線回折分析による(101)のピークの半値幅が0.48°で、アナターゼ主体の結晶(ルチル化率:0%)であった。さらに、上記粉末状の光触媒をX線光電子分光法(XPS)で分析したところ、S4+に由来する169eV付近の特性ピークが観察されたことから、酸化チタンを構成するチタンサイトの一部に硫黄原子が導入されていることが確認できた。
上記粉末状の光触媒を用いて、上述した方法により、抗菌性能を評価したところ完全殺菌時間は3時間であり、また、上述した方法により、有害ガス(アセトアルデヒドガス)の分解性能を評価したところ、完全分解時間は24時間であった。
【0150】
(実施例13)
(1)実施例1(1)と同様の方法で酸化チタンを調製した。
(2)鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物(鉄化合物を含有した硫黄原子導入酸化チタン化合物)の調製
上記(1)で得られた酸化チタン粉末に、チオ尿素(特級)(関東化学(株)製)とシュウ酸鉄(II)二水和物とを添加、混合することにより、酸化チタンとチオ尿素とシュウ酸鉄の混合物を得た。このとき、チオ尿素の混合量は、酸化チタン中に含まれる全チタン原子の量を100質量部としたときに、チオ尿素を構成する硫黄原子換算で、6.8質量部となるように調整した。また、シュウ酸鉄(II)二水和物の混合量は、酸化チタン中に含まれる全チタン原子の量を100質量部としたときに、シュウ酸鉄を構成する鉄原子換算で、0.25質量部となるように調整した。
具体的には、上記酸化チタン粉末120gとチオ尿素粉末11.8g、シュウ酸鉄(II)二水和物0.58gとを秤量し、これらを乳鉢で乾式粉砕混合した。
この混合物をチタン製の容器に装入し、通気口付きの上フタを乗せた後、電気炉に装填し、460℃まで加熱昇温した。昇温中は該炉内へ 5〜100mL/minの流量で大気が流入するように炉内への吸気流量を調整した。460℃に達してからは、炉内への吸気流量を250〜2000mL/minに調節し、460℃で1時間保持焼成したのち室温まで冷却し、炉から取り出して焼成物(鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物)を得た。
【0151】
(3)抗菌活性金属(銅)化合物を担持した鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物のスラリーの調製
上記(2)で得られた鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物41.8gを分取し、これを1045gの純水中へ投入し、撹拌して縣濁スラリーとした。一方、4.51gの塩化銅(II)二水和物を40gの純水へ溶解させた塩化銅水溶液を調製し、これを、上記焼成物の縣濁スラリーへ投入して30分間撹拌した。撹拌中のスラリーのpHは2.5であった。その後この撹拌中のスラリーへ、2.8%のアンモニア水溶液を、約1時間をかけてスラリーのpHが7.2〜8.0になるまで少量ずつ滴下添加し、粒子の表面に銅化合物を析出させ、担持した。その後、純水を使ったデカンテーションを2回繰り返して固形物を洗浄することによって、銅化合物を担持した鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物のスラリーを得た。
なお、このスラリーの固形分である銅化合物を担持した鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物を構成する全チタン原子の質量を100質量部とした場合、同化合物に含有される鉄化合物は、鉄原子換算で0.25質量部であり([Fe原子/Ti原子]が百分率で0.25質量%であり)、また、担持された銅化合物は、銅原子換算で6.7質量部である([Cu原子/Ti原子]が百分率で6.7質量%である)。
【0152】
(4)抗菌活性金属(銅)化合物を担持した鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物(第一の触媒成分)と鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物(第二の触媒成分)との混合
上記(3)で得られた銅化合物を担持した鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物を第一の触媒成分とし、上記(2)で得られた鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物を第二の触媒成分として、第一の触媒成分と第二の触媒成分とを混合することにより、目的とする光触媒を調製した。
具体的には、上記(2)で得られた鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物58.2gを分取し、これを上記(3)で得られた銅化合物を担持した鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物のスラリーへ、純水1455gとともに投入し混合した。さらにこの混合スラリーのpHが7.5〜8.0を維持するようにアンモニア水溶液を添加しながら純水によるデカンテーションを繰り返して、スラリーの導電率が50mS/m以下になるまで固形分を洗浄した。最終的に1000gのスラリーとなるように上澄みの抜き取り量を調節した後、この混合スラリーを分散機(商品名;T.K.ホモミクサ−(特殊機化工業(株)製))により5000rpmで1時間分散処理することによって、平均粒径が350nmである第一の触媒成分と第二の触媒成分とが混合されてなるスラリー状の光触媒を得た。
上記スラリーを乾燥したのち粉砕して、粉末状の光触媒を得た。
【0153】
得られた光触媒において、銅化合物を担持した鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物を構成する酸化チタン化合物(第一の酸化チタン化合物)および鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物を構成する酸化チタン化合物(第二の酸化チタン化合物)の合計含有量を100質量%とした場合、第一の酸化チタン化合物の含有量は41.8質量%であり、第二の酸化チタン化合物の含有量は58.2質量%であった。また、上記第一の酸化チタン化合物および第二の酸化チタン化合物を構成するチタン原子の総量を100質量部とした場合に、前記第一の酸化チタン化合物および第二の酸化チタン化合物に担持される抗菌活性金属種を構成する金属原子の総量は2.8質量部であった。
また、上記光触媒は、硫黄分含有量が0.52質量%で、比表面積が68m/gで、X線回折分析による(101)のピークの半値幅が0.48°で、アナターゼ主体の結晶(ルチル化率:0%)であった。さらに、上記粉末状の光触媒をX線光電子分光法(XPS)で分析したところ、S4+に由来する169eV付近の特性ピークが観察されたことから、酸化チタンを構成するチタンサイトの一部に硫黄原子が導入されていることが確認できた。
上記粉末状の光触媒を用いて、上述した方法により、抗菌性能を評価したところ完全殺菌時間は3時間であり、また、上述した方法により、有害ガス(アセトアルデヒドガス)の分解性能を評価したところ、完全分解時間は29時間であった。
実施例1〜実施例13で得られた結果を、表1〜表3に記載する。
【0154】
【表1】

【0155】
【表2】

【0156】
【表3】

【0157】
(比較例1)
(1)実施例1(1)と同様の方法で酸化チタンを調製した。
(2)実施例1(2)と同様の方法で鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物を調製した。
(3)抗菌活性金属(銅)化合物を担持した鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物スラリーの調製
上記(2)で得られた鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物100gを分取し、これを2500gの純水中へ投入し、撹拌して焼成物の縣濁スラリーとした。一方、0.81gの塩化銅(II)二水和物を7gの純水へ溶解させた塩化銅水溶液を調製し、これを、上記焼成物の縣濁スラリーへ投入して30分間撹拌した。撹拌中のスラリーのpHは2.6であった。その後この撹拌中のスラリーへ、2.8%のアンモニア水溶液を、約1時間をかけてスラリーのpHが7.2〜8.0になるまで少量ずつ滴下添加し、粒子の表面に銅化合物を析出させ、担持した。その後、純水を使ったデカンテーションを繰り返してスラリーの導電率が50mS/m以下になるまで固形分を洗浄した。最終的に1000gのスラリーとなるように上澄みの抜き取り量を調節した後、この混合スラリーを分散機(商品名;T.K.ホモミクサ−(特殊機化工業(株)製))により5000rpmで1時間分散処理することによって、平均粒径350nmの銅化合物を担持した鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物のスラリーを得た。
なお、このスラリーの固形分である銅化合物を担持した鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物を構成する全チタン原子の質量を100質量部とした場合、同化合物に含有される鉄化合物は、鉄原子換算で0.05質量部であり([Fe原子/Ti原子]が百分率で0.05質量%であり)、また、担持された銅化合物は、銅原子換算で0.5質量部である([Cu原子/Ti原子]が百分率で0.5質量%である)。
上記スラリーを乾燥したのち粉砕して、粉末状の光触媒を得た。
上記光触媒は、硫黄分含有量が0.41質量%で、比表面積が71m/gで、X線回折分析による(101)のピークの半値幅が0.48°で、アナターゼ主体の結晶(ルチル化率:0%)であった。さらに、上記粉末状の光触媒をX線光電子分光法(XPS)で分析したところ、S4+に由来する169eV付近の特性ピークが観察されたことから、酸化チタンを構成するチタンサイトの一部に硫黄原子が導入されていることが確認できた。
上記粉末状の光触媒を用いて、上述した方法により、抗菌性能を評価したところ完全殺菌時間は11時間であり、また、上述した方法により、有害ガス(アセトアルデヒドガス)の分解性能を評価したところ、完全分解時間は24時間であった。
【0158】
(比較例2)
(1)実施例1(1)と同様の方法で酸化チタンを調製した。
(2)実施例1(2)と同様の方法で鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物を調製した。
(3)抗菌活性金属(銅)化合物を担持した鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物スラリーの調製
比較例1(3)において添加する銅化合物条件について、0.81gの塩化銅(II)二水和物を7gの純水へ溶解させた塩化銅水溶液に代えて2.42gの塩化銅(II)二水和物を22gの純水へ溶解させた塩化銅水溶液を調製し、これを、縣濁スラリーへ投入したこと以外は、比較例1(3)と同様にして平均粒径370nmの銅化合物を担持した鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物のスラリーを得た。
なお、このスラリーの固形分である銅化合物を担持した鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物を構成する全チタン原子の質量を100質量部とした場合、同化合物に含有される鉄化合物は、鉄原子換算で0.05質量部であり([Fe原子/Ti原子]が百分率で0.05質量%であり)、また、担持された銅化合物は、銅原子換算で1.5質量部である([Cu原子/Ti原子]が百分率で1.5質量%である)。
上記スラリーを乾燥したのち粉砕して、粉末状の光触媒を得た。
上記光触媒は、硫黄分含有量が0.44質量%で、比表面積が67m/gで、X線回折分析による(101)のピークの半値幅が0.48°で、アナターゼ主体の結晶(ルチル化率:0%)であった。さらに、上記粉末状の光触媒をX線光電子分光法(XPS)で分析したところ、S4+に由来する169eV付近の特性ピークが観察されたことから、酸化チタンを構成するチタンサイトの一部に硫黄原子が導入されていることが確認できた。
上記粉末状の光触媒を用いて、上述した方法により、抗菌性能を評価したところ完全殺菌時間は9時間であり、また、上述した方法により、有害ガス(アセトアルデヒドガス)の分解性能を評価したところ、完全分解時間は31時間であった。
【0159】
(比較例3)
(1)実施例1(1)と同様の方法で酸化チタンを調製した。
(2)実施例1(2)と同様の方法で鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物を調製した。
(3)抗菌活性金属(銅)化合物を担持した鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物スラリーの調製
比較例1(3)において添加する銅化合物条件について、0.81gの塩化銅(II)二水和物を7gの純水へ溶解させた塩化銅水溶液に代えて4.51gの塩化銅(II)二水和物を40gの純水へ溶解させた塩化銅水溶液を調製し、これを、縣濁スラリーへ投入したこと以外は、比較例1(3)と同様にして平均粒径350nmの銅化合物を担持した鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物のスラリーを得た。
なお、このスラリーの固形分である銅化合物を担持した鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物を構成する全チタン原子の質量を100質量部とした場合、同化合物に含有される鉄化合物は、鉄原子換算で0.05質量部であり([Fe原子/Ti原子]が百分率で0.05質量%であり)、また、担持された銅化合物は、銅原子換算で2.8質量部である([Cu原子/Ti原子]が百分率で2.8質量%である)。
上記スラリーを乾燥したのち粉砕して、粉末状の光触媒を得た。
上記光触媒は、硫黄分含有量が0.52質量%で、比表面積が66m/gで、X線回折分析による(101)のピークの半値幅が0.48°で、アナターゼ主体の結晶(ルチル化率:0%)であった。さらに、上記粉末状の光触媒をX線光電子分光法(XPS)で分析したところ、S4+に由来する169eV付近の特性ピークが観察されたことから、酸化チタンを構成するチタンサイトの一部に硫黄原子が導入されていることが確認できた。
上記粉末状の光触媒を用いて、上述した方法により、抗菌性能を評価したところ完全殺菌時間は7時間であり、また、上述した方法により、有害ガス(アセトアルデヒドガス)の分解性能を評価したところ、完全分解時間は46時間であった。
【0160】
(比較例4)
(1)実施例1(1)と同様の方法で酸化チタンを調製した。
(2)実施例1(2)と同様の方法で鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物を調製した。
(3)抗菌活性金属(銅)化合物を担持した鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物スラリーの調製
比較例1(3)において添加する銅化合物条件について、0.81gの塩化銅(II)二水和物を7gの純水へ溶解させた塩化銅水溶液に代えて7.73gの塩化銅(II)二水和物を70gの純水へ溶解させた塩化銅水溶液を調製し、これを、縣濁スラリーへ投入したこと以外は、比較例1(3)と同様にして平均粒径390nmの銅化合物を担持した鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物のスラリーを得た。
なお、このスラリーの固形分である銅化合物を担持した鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物を構成する全チタン原子の質量を100質量部とした場合、同化合物に含有される鉄化合物は、鉄原子換算で0.05質量部であり([Fe原子/Ti原子]が百分率で0.05質量%であり)、また、担持された銅化合物は、銅原子換算で4.8質量部である([Cu原子/Ti原子]が百分率で4.8質量%である)。
上記スラリーを乾燥したのち粉砕して、粉末状の光触媒を得た。
上記光触媒は、硫黄分含有量が0.56質量%で、比表面積が62m/gで、X線回折分析による(101)のピークの半値幅が0.48°で、アナターゼ主体の結晶(ルチル化率:0%)であった。さらに、上記粉末状の光触媒をX線光電子分光法(XPS)で分析したところ、S4+に由来する169eV付近の特性ピークが観察されたことから、酸化チタンを構成するチタンサイトの一部に硫黄原子が導入されていることが確認できた。
上記粉末状の光触媒を用いて、上述した方法により、抗菌性能を評価したところ完全殺菌時間は5時間であり、また、上述した方法により、有害ガス(アセトアルデヒドガス)の分解性能を評価したところ、完全分解時間は52時間であった。
【0161】
(比較例5)
(1)実施例1(1)と同様の方法で酸化チタンを調製した。
(2)実施例1(2)と同様の方法で鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物を調製した。
(3)抗菌活性金属(銅)化合物を担持した鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物スラリーの調製
比較例1(3)において添加する銅化合物条件について、0.81gの塩化銅(II)二水和物を7gの純水へ溶解させた塩化銅水溶液に代えて10.8gの塩化銅(II)二水和物を100gの純水へ溶解させた塩化銅水溶液を調製し、これを、縣濁スラリーへ投入したこと以外は、比較例1(3)と同様にして平均粒径370nmの銅化合物を担持した鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物のスラリーを得た。
なお、このスラリーの固形分である銅化合物を担持した鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物を構成する全チタン原子の質量を100質量部とした場合、同化合物に含有される鉄化合物は、鉄原子換算で0.05質量部であり([Fe原子/Ti原子]が百分率で0.05質量%であり)、また、担持された銅化合物は、銅原子換算で6.7質量部である([Cu原子/Ti原子]が百分率で6.7質量%である)。
上記スラリーを乾燥したのち粉砕して、粉末状の光触媒を得た。
上記光触媒は、硫黄分含有量が0.67質量%で、比表面積が59m/gで、X線回折分析による(101)のピークの半値幅が0.48°で、アナターゼ主体の結晶(ルチル化率:0%)であった。さらに、上記粉末状の光触媒をX線光電子分光法(XPS)で分析したところ、S4+に由来する169eV付近の特性ピークが観察されたことから、酸化チタンを構成するチタンサイトの一部に硫黄原子が導入されていることが確認できた。
上記粉末状の光触媒を用いて、上述した方法により、抗菌性能を評価したところ完全殺菌時間は5時間であり、また、上述した方法により、有害ガス(アセトアルデヒドガス)の分解性能を評価したところ、完全分解時間は67時間であった。
【0162】
(比較例6)
(1)実施例1(1)と同様の方法で酸化チタンを調製した。
(2)実施例1(2)と同様の方法で鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物を調製した。
(3)抗菌活性金属(銅)化合物を担持した鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物スラリーの調製
比較例1(3)において添加する銅化合物条件について、0.81gの塩化銅(II)二水和物を7gの純水へ溶解させた塩化銅水溶液に代えて16.1gの塩化銅(II)二水和物を145gの純水へ溶解させた塩化銅水溶液を調製し、これを、縣濁スラリーへ投入したこと以外は、比較例1(3)と同様にして平均粒径370nmの銅化合物を担持した鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物のスラリーを得た。
なお、このスラリーの固形分である銅化合物を担持した鉄含有硫黄原子導入酸化チタン化合物を構成する全チタン原子の質量を100質量部とした場合、同化合物に含有される鉄化合物は、鉄原子換算で0.05質量部であり([Fe原子/Ti原子]が百分率で0.05質量%であり)、また、担持された銅化合物は、銅原子換算で10.0質量部である([Cu原子/Ti原子]が百分率で10.0質量%である)。
上記スラリーを乾燥したのち粉砕して、粉末状の光触媒を得た。
上記光触媒は、硫黄分含有量が0.80質量%で、比表面積が55m/gで、X線回折分析による(101)のピークの半値幅が0.48°で、アナターゼ主体の結晶(ルチル化率:0%)であった。さらに、上記粉末状の光触媒をX線光電子分光法(XPS)で分析したところ、S4+に由来する169eV付近の特性ピークが観察されたことから、酸化チタンを構成するチタンサイトの一部に硫黄原子が導入されていることが確認できた。
上記粉末状の光触媒を用いて、上述した方法により、抗菌性能を評価したところ完全殺菌時間は7時間であり、また、上述した方法により、有害ガス(アセトアルデヒドガス)の分解性能を評価したところ、完全分解時間は120時間以上であった。
比較例1〜比較例6で得られた結果を、表4に記載する。
【0163】
【表4】

【0164】
実施例1〜実施例9および比較例1〜比較例6で得られた結果に基づき、抗菌性能評価試験結果をまとめたものを図1に、有害ガス分解性能(アセトアルデヒドガス分解能力)評価試験結果をまとめたものを図2に示す。
図1は、光触媒を構成するチタン原子の総量を100質量部とした場合に担持される抗菌性活性金属種を構成する金属原子の総質量部の割合((Cu原子/Ti原子)の質量百分率)に対する、完全殺菌時間をプロットしたものである。
図2は、光触媒を構成するチタン原子の総量を100質量部とした場合に担持される抗菌性活性金属種を構成する金属原子の総質量部の割合((Cu原子/Ti原子)の質量百分率)に対する、アセトアルデヒド完全分解時間をプロットしたものである。
【0165】
<抗菌性評価比較試験>
実施例3および比較例3で得られた光触媒を用い、上記抗菌性能(黄色ぶどう球菌に対する抗菌力)評価試験と同様にして、1800Lxの光照射下に代えて暗所下における抗菌性を評価した。
また、生理食塩水をブランク(コントロール)試料として、同様に試験を行った。
表5および図3に、抗菌性能評価試験中の時間推移に対する、光照射下と暗所下との生菌数の変化を示す。表5および図3においては、1800Lxの光照射下における抗菌性評価結果も表記する。
【0166】
【表5】

【0167】
図1より、実施例1〜実施例9で得られた光触媒は、抗菌活性金属種の担持量の異なる第一の触媒成分と第二の触媒成分を含んでなるものであることから、比較例1〜比較例6で得られた抗菌活性金属化合物を均一に担持させた光触媒に比較して、抗菌活性が向上し細菌をより短時間で完全殺菌できることが分かる。
この要因は、光触媒が、第一の触媒成分と第二の触媒成分を含んでなるものであることにより、細菌やウイルスの構成物を分解する作用(酸化チタンの光触媒作用)と細菌の代謝機能を阻害する作用(主として活性金属種の抗菌作用)とが相乗効果として効率よく機能するためと考えられる。このことは、図3において、比較例3で得られた光触媒は1,800Lxの光照射下と暗所下での生菌数の減り方にあまり差はないが(酸化チタンの光触媒作用による寄与が低いが)、実施例3で得られた光触媒は暗所下に対して1,800Lxの光照射下の方が著しく短時間で生菌数が減少した(酸化チタンの光触媒作用による寄与が大きい)ことからも、説明することができる。
また、図2より、実施例1〜実施例9で得られた光触媒は、比較例1〜比較例6で得られた光触媒に比較して、抗菌性活性金属の担持量が同一であれば、より短時間でアセトアルデヒドガスを完全分解できることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0168】
本発明によれば、特に可視光照射下において、抗菌活性が向上して殺菌速度に優れるとともに、有害ガス分解速度に優れる光触媒を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の触媒成分と第二の触媒成分とを含んでなる光触媒であって、
前記第一の触媒成分は、第一の酸化チタン化合物に対し、該第一の酸化チタン化合物を構成するチタン原子の含有量を100質量部とした場合に、抗菌活性金属種を金属原子換算で2.8〜15質量部担持してなるものであり、
前記第二の触媒成分は、第二の酸化チタン化合物に対し、該第二の酸化チタン化合物を構成するチタン原子の含有量を100質量部とした場合に、抗菌活性金属種を金属原子換算で0〜1.5質量部担持してなるものである
ことを特徴とする光触媒。
【請求項2】
前記第一の酸化チタン化合物および第二の酸化チタン化合物の合計含有量を100質量%とした場合に、
前記第一の酸化チタン化合物の含有量が7.5〜72質量%であり、
前記第二の酸化チタン化合物の含有量が28〜92.5質量%である
請求項1に記載の光触媒。
【請求項3】
前記第一の酸化チタン化合物および第二の酸化チタン化合物を構成するチタン原子の総量を100質量部とした場合に、前記第一の酸化チタン化合物および第二の酸化チタン化合物に担持される抗菌活性金属種を構成する金属原子の総量が10質量部以下である請求項1または請求項2に記載の光触媒。
【請求項4】
前記第一の酸化チタン化合物または第二の酸化チタン化合物が、硫黄原子導入酸化チタン、窒素原子導入酸化チタン、鉄化合物を含有する硫黄原子導入酸化チタンまたは鉄化合物を含有する窒素原子導入酸化チタンである請求項1〜請求項3のいずれかに記載の光触媒。
【請求項5】
前記第一の触媒成分または第二の触媒成分において、抗菌活性金属種が、銅化合物、銀化合物および金属銀から選ばれる少なくとも1種である請求項1〜請求項4のいずれかに記載の光触媒。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−96152(P2012−96152A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−245256(P2010−245256)
【出願日】平成22年11月1日(2010.11.1)
【出願人】(390007227)東邦チタニウム株式会社 (191)
【Fターム(参考)】