説明

光記録再生装置

【課題】DRAW技術において、安定的に信号再生を行うことができる光記録再生装置を提供する。
【解決手段】ある実施形態による光記録再生装置は、光源から出射された光ビームを記録用ビームおよび再生用ビームを含む複数の光ビームに分離する光分岐素子と、記録用ビームおよび再生用ビームを光記録媒体の同一トラック上に集束する光学系と、光記録媒体から反射された再生用ビームを検出して電気信号を出力する受光素子を有する光検出器と、受光素子によって検出された信号を、光源から出射された光ビームの一部を検出することによって得られる記録変調成分を示す信号で除算することによって再生信号を生成する除算器124とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光テープ、光ディスク、光カードといった光記録媒体上に情報の記録および再生を行う光ピックアップおよび光記録再生装置に関する。特に、本発明は、光記録媒体にデータを記録しながら、記録されたデータの検証を行う装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、映像データ、写真データ等の高品位化、および多くの紙媒体の電子化などによりデジタルデータの量は急激に増大している。特に、ネットワーク上のサーバおよびストレージを使って各種アプリケーションやサービスを利用するクラウドコンピューティングと呼ばれる形態では、多くの利用者が様々なデータをネットワーク上のストレージに保存するため、そのデータ蓄積量は今後さらに膨大になると予想される。
【0003】
その一方で、データの保存義務についての法制化が進んでおり、これらの膨大なデータを保存する際の確実性および信頼性も要求される。
【0004】
このような大容量データを、光を用いて記録媒体に記録する装置において、記録の信頼性を高めるために、信号マークが光記録媒体に正しく形成されたかどうかを検証する動作(以降、これを「ベリファイ」と呼ぶ。)は必要不可欠である。
【0005】
追記型や書き換え型の光ディスクのような光記録媒体にデータを記録・再生する従来の記録再生装置では、記録媒体に欠陥などがあって記録できなかった場合などを想定し、書き込み後にデータの読み出しを行い、読み出したデータと記録データとを比較することにより、エラー検出を行っている。
【0006】
このベリファイは、全ての記録が終わった後に行うのではなく、一定の記録転送速度を保持しうる単位で行うことが多い。すなわち、記録再生装置は、光ディスクが一定量だけ回転するごとに記録動作を中断し、トラックジャンプして元の位置に戻り、記録した箇所の再生を行ってエラーチェックする。その後、再度トラックジャンプして別の領域へ移動し、次のデータの記録を行う、といった動作を繰り返し行う。このため、データの信頼性は確保できるが記録時間が長くなる。
【0007】
なお、記録後の読み出しによってエラーが検出された場合、記録した箇所を避けて別の領域に再記録を行う。光ディスクにおいては、セクタと呼ばれる領域単位毎にひとかたまりのデータとそのID情報とが記録されている。エラーが検出されたデータを含むセクタに記録されているデータは、別のセクタ(「交代セクタ」と呼ぶ。)に記録し直される。記録されたデータの訂正を行う従来の記録再生装置は、例えば特許文献1に開示されている。
【0008】
近年、データの大容量化と信頼性の向上への要求に対し、長期アーカイバル保存に適した記録再生装置として、光記録媒体をテープ状にした光テープに記録する装置や、複数の光ディスクドライブを組み合わせて同時にハンドリングするような装置が提案されている。このような大容量の記録再生装置においては、記録転送速度を十分大きくしながら、一方で、記録データの信頼性を維持することが要求される。
【0009】
しかし、テープ状メディア等のようにランダムアクセス性が低い記録媒体では、上述した従来の光ディスク装置のように時系列で記録と再生チェックの動作を繰り返す方式では記録速度を上げることは困難である。
【0010】
こうした要求に対し、記録動作とベリファイのための再生動作を同時に行うDRAW(Direct Read after Write)とよばれる技術が提案されている。DRAW技術を用いた従来の記録再生装置は、例えば特許文献2に開示されている。
【0011】
特許文献2に開示された装置は、光源から出射された光を回折格子によって記録用ビームと2つの再生用ビームとに分け、それらを記録媒体の同一トラック上に照射する。すなわち、記録用ビームによる光スポット(記録用スポット)と再生用ビームによる光スポット(再生用スポット)とを同時に同一トラック上に形成することにより、記録しながら記録後のデータを再生するDRAWを可能にしている。この技術を用いることにより、例えば光テープのように容量は大きいがランダムアクセス性に乏しいような装置や、複数の光ディスクドライブを組み合わせた装置などにおいても、連続して記録動作を続けながら同時にベリファイができる。このため、記録信頼性を確保しながら従来以上に記録転送速度の高いシステムが実現可能となる。
【0012】
記録用スポットによってデータの記録を実行中に、同じ光源から出ている再生用スポットを使って再生を行う記録再生装置において、安定的に再生するために、特許文献3では、LD変調回路から出力される記録信号に応じて再生信号出力のオートゲインコントロール(AGC)を行うことが提案されている。同様に、特許文献4では、マイクロプロセッサ(MPU)から出力される記録用光スポットの変調信号に対応して再生信号出力のゲイン切り替えを行うことが提案されている。
【0013】
さらに特許文献5では、記録媒体の欠陥などによるベリファイ信号のレベル変動を補正するために、トラック上の記録用光スポットの前後に2つの再生用光スポットを設け、2つの再生用光スポットからの反射光を用いてDRAWを行う装置が提案されている。この装置は、記録用光スポットに先行する第1の再生用光スポットからの反射光による再生信号をゲイン切換することによって記録変調成分が除去された信号を遅延回路で所定時間遅延させた信号と、記録用光スポットに後続する第2の光スポットからの反射光による再生信号をゲイン切換することによって記録変調成分が除去された信号とを除算あるいは減算する回路を持つ。この回路の出力を用いてベリファイすることにより、記録媒体の欠陥の影響を除去することが提案されている。なお、この際の遅延時間は、2つの再生用光スポットの間隔をd、光スポットの記録媒体に対する相対速度をvとしたとき、d/vに設定することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開昭59−113509号公報
【特許文献2】特開昭63−249941号公報
【特許文献3】特開平5−73913号公報
【特許文献4】特開平8−249660号公報
【特許文献5】特開平8−255345号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
特許文献2に開示された技術では、2つの再生用スポットからの反射光による信号の差分をとることによって再生信号が得られる。一方、特許文献3〜5に開示された技術では、記録用光スポットに後続する再生用光スポットからの反射光による信号を、光源に入力される記録変調信号で除算(ゲイン切換)することによって再生信号が得られる。しかし、これらの技術では、後述するように、信号品質の悪い再生信号しか得られないため、正確なベリファイ動作が困難であるという課題がある。
【0016】
また、これらの従来技術では、出射パワーや温度といった動作環境が変化した場合に、比較する信号間の遅延時間が変動するため、安定的に比較・相関動作を行うことができないという課題がある。
【0017】
さらに、複数の記録層を有する記録媒体にDRAWを適用した場合、記録・再生対象以外の記録層からの反射光の影響により、再生品質が劣化するという課題がある。
【0018】
そこで、本発明の一実施形態は、再生信号に重畳された記録変調成分を除去した時に、良好な再生信号が得られる光ピックアップおよび光記録再生装置を提供する。
【0019】
また、本発明の他の実施形態は、記録変調成分を示す信号と再生用ビームの強度を示す信号との間の遅延時間が変化しても、良好な予測波形を得ることにより、安定的な比較・相関動作を可能とする光ピックアップおよび光記録再生装置を提供する。
【0020】
本発明のさらに他の実施形態は、複数の記録層を有する記録媒体にDRAWを適用する際に、記録対象以外の記録層からの反射光の影響を緩和できる光ピックアップおよび光記録再生装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明のある実施形態における光記録再生装置は、光記録媒体のトラック上にデータを記録しながら、前記トラック上に記録されたデータを読み出すことができる。前記光記録再生装置は、光源と、記録すべきデータに応じて前記光源の出射パワーを変調させる光変調器と、前記光源から出射された光ビームを、記録用ビームおよび再生用ビームを含む複数の光ビームに分離する光分岐素子と、記録動作中、前記光記録媒体の同一箇所を前記再生用ビームに先行して前記記録用ビームで走査するように、前記記録用ビームおよび前記再生用ビームを前記光記録媒体の同一トラック上に集束するように構成された光学系と、前記光記録媒体から反射された前記再生用ビームを検出して電気信号を出力する受光素子を有する光検出器と、前記受光素子によって検出された信号を、前記光源から出射された前記光ビームの一部を検出することによって得られる前記光ビームの記録変調成分を示す信号で除算することによって再生信号を生成する除算器とを備える。
【0022】
ある実施形態において、前記光分岐素子は、回折格子である。
【0023】
ある実施形態において、前記光源から出射された前記光ビームの一部を検出することによって前記光ビームの前記記録変調成分を示す信号を出力する前光検出器をさらに備え、前記除算器は、前記受光素子の出力を、前記前光検出器の出力で除算することによって前記再生信号を生成する。
【0024】
ある実施形態において、前記受光素子を第1の受光素子とするとき、前記光検出器は、前記光分岐素子によって分岐され、前記光記録媒体によって反射された前記光ビームの一部を検出することによって前記光ビームの前記記録変調成分を示す信号を出力する第2の受光素子をさらに備え、前記除算器は、前記第1の受光素子の出力を、前記第2の受光素子の出力で除算することによって前記再生信号を生成する。
【0025】
ある実施形態において、前記再生用ビームを第1の再生用ビームとし、前記受光素子を第1の受光素子とするとき、前記光分岐素子は、前記光源から出射された前記光ビームを、前記記録用ビーム、前記第1の再生用ビーム、および第2の再生用ビームを含む複数の光ビームに分離し、前記光学系は、記録動作中、前記光記録媒体の同一箇所を、前記第1の再生用ビームに先行して前記記録用ビームで走査し、前記記録用ビームに先行して前記第2の再生用ビームで走査するように、前記記録用ビーム、前記第1の再生用ビーム、および前記第2の再生用ビームを、前記光記録媒体の同一トラック上に集束するように構成され、前記光検出器は、前記光記録媒体から反射された前記第2の再生用ビームを検出して電気信号を出力する第2の受光素子を有し、前記除算器は、前記第1の受光素子の出力を、前記第2の受光素子の出力で除算することによって前記再生信号を生成する。
【0026】
本発明の他の実施形態による光記録再生装置は、光記録媒体のトラック上にデータを記録しながら、前記トラック上に記録されたデータを読み出すことができる光記録再生装置であって、光源と、記録すべきデータに応じて前記光源の出射パワーを変調させる記録変調信号を前記光源に入力する光変調器と、前記光源から出射された光ビームを、記録用ビームおよび再生用ビームを含む複数の光ビームに分離する光分岐素子と、記録動作中、前記光記録媒体の同一箇所を前記再生用ビームに先行して前記記録用ビームで走査するように、前記記録用ビームおよび前記再生用ビームを前記光記録媒体の同一トラック上に集束するように構成された光学系と、前記光記録媒体から反射された前記再生用ビームを検出して電気信号を出力する受光素子を有する光検出器と、前記記録変調信号の波形、または前記記録変調信号によって変調された前記光ビームの記録変調成分を示す波形を遅延させるステップを含む処理によって予測再生波形を生成する波形予測部と、前記受光素子の出力に基づく波形を、前記予測再生波形と比較することによって前記データが正しく記録されたか否かを検証する比較部と、前記記録変調信号の波形または前記記録変調信号によって変調された前記光ビームの記録変調成分を示す波形に対する前記受光素子から出力される信号の波形の遅延時間を検出し、検出した前記遅延時間に基づいて前記波形予測部による遅延量を制御する遅延検出部と、を備える。
【0027】
ある実施形態において、前記波形予測部は、前記記録変調信号または前記記録変調成分を示す信号のレベルを変化させて出力するイコライザと、前記イコライザの出力を遅延させる遅延回路とを有し、前記遅延検出部は、検出した前記遅延時間に基づいて前記遅延回路による遅延量を変化させる。
【0028】
ある実施形態において、前記光記録再生装置は、温度センサーをさらに備え、前記遅延検出部は、前記温度センサーの出力に基づいて、前記遅延時間を検出する。
【0029】
ある実施形態において、前記受光素子は、前記光記録媒体のトラック方向に対応する方向に並んで配置された少なくとも2つの受光領域に分割されており、前記遅延検出部は、前記2つの受光領域の差動出力に基づいて、前記遅延時間を検出する。
【0030】
ある実施形態において、前記受光素子を第1の受光素子とするとき、前記光検出器は、前記光分岐素子によって分岐され、前記光記録媒体によって反射された前記光ビームの一部を検出することによって前記光ビームの前記記録変調成分を示す信号を出力する第2の受光素子であって、前記光記録媒体のトラック方向に対応する方向に並んで配置された少なくとも2つの受光領域に分割された第2の受光素子をさらに有し、前記遅延検出部は、前記2つの受光領域の差動出力に基づいて、前記遅延時間を検出する。
【0031】
ある実施形態において、前記再生用ビームを第1の再生用ビームとし、前記受光素子を第1の受光素子とするとき、前記光分岐素子は、前記光源から出射された前記光ビームを、前記記録用ビーム、前記第1の再生用ビーム、および第2の再生用ビームを含む複数の光ビームに分離し、前記光学系は、記録動作中、前記光記録媒体の同一箇所を、前記第1の再生用ビームに先行して前記記録用ビームで走査し、前記記録用ビームに先行して前記第2の再生用ビームで走査するように、前記記録用ビーム、前記第1の再生用ビーム、および前記第2の再生用ビームを、前記光記録媒体の同一トラック上に集束するように構成され、前記光検出器は、前記光記録媒体から反射された前記第2の再生用ビームを検出して電気信号を出力する第2の受光素子と、前記光記録媒体から反射された前記記録用ビームを検出して電気信号を出力する第3の受光素子とをさらに有し、前記第1の受光素子は、少なくとも第1の受光領域および第2の受光領域を含む2つの受光領域に分割されており、前記第2の受光素子は、少なくとも第3の受光領域および第4の受光領域を含む2つの受光領域に分割されており、前記第1の受光領域、前記第2の受光領域、前記第3の受光素子、前記第3の受光領域、および前記第4の受光領域は、この順で前記光記録媒体のトラック方向に対応する方向に配列されており、前記遅延検出部は、前記第1および前記第4の受光領域の加算信号と、前記第2および第3の受光領域の加算信号との間の差動信号に基づいて、前記遅延時間を検出する。
【0032】
ある実施形態において、前記光記録媒体に遅延量検出のためのテストデータが記録されている場合において、前記遅延検出部は、前記テストデータが記録されている箇所から反射された前記記録用ビームの信号と、前記テストデータが記録されている前記箇所から反射された前記再生用ビームの信号との時間差に基づいて、前記遅延時間を検出する。
【0033】
ある実施形態において、前記遅延検出部による前記遅延時間の検出の前に、前記記録用ビームによって前記光記録媒体に前記テストデータを記録させるように前記光変調器を制御する制御部をさらに備えている。
【0034】
ある実施形態において、前記遅延検出部による前記遅延時間の検出の際、前記テストデータを前記再生用ビームで照射するタイミングでは、前記記録用ビームを記録用パワーで出射しないように前記光変調器を制御する制御部をさらに備えている。
【0035】
本発明の他の実施形態による光記録再生装置は、複数の記録層を有する光記録媒体のトラック上にデータを記録しながら、前記トラック上に記録されたデータを読み出すことができる光記録再生装置であって、記録用ビームを出射する第1の光源と、再生用ビームを出射する第2の光源と、記録すべきデータに応じて前記第1の光源の出射パワーを変調させる光変調器と、記録動作中、前記光記録媒体の同一箇所を前記再生用ビームに先行して前記記録用ビームで走査するように、前記記録用ビームおよび前記再生用ビームを前記光記録媒体の同一トラック上に集束するように構成された光学系と、前記光記録媒体から反射された前記再生用ビームを検出して電気信号を出力する受光素子を有する光検出器と、前記受光素子から出力される信号を、前記第1の光源から出射され記録対象の記録層とは異なる記録層によって反射された前記記録用ビームの一部を検出することによって得られる信号に基づく信号で減算することにより、前記受光素子の出力から、前記記録対象の記録層とは異なる記録層からの迷光による変調成分を低減させる演算器とを備える。
【0036】
ある実施形態において、前記受光素子を第1の受光素子とするとき、前記光検出器は、記録対象の記録層とは異なる記録層によって反射された前記記録用ビームの一部を受け、前記記録対象の記録層から反射された前記再生用ビームを受けないように配置された第2の受光素子をさらに有し、前記演算器は、前記第1の受光素子から出力される信号を、前記第2の受光素子から出力される信号で減算する。
【0037】
ある実施形態において、前記受光素子を第1の受光素子と呼ぶとき、前記光検出器は、前記光記録媒体から反射された前記記録用ビームを検出して電気信号を出力する第2の受光素子をさらに有し、前記演算器は、前記第1の受光素子から出力される信号を、前記第2の受光素子から出力される信号のレベルを調整した信号で減算する。
【0038】
本発明の他の実施形態による光記録再生装置は、複数の記録層を有する光記録媒体のトラック上にデータを記録しながら、前記トラック上に記録されたデータを読み出すことができる光記録再生装置であって、記録用ビームを出射する第1の光源と、再生用ビームを出射する第2の光源と、記録すべきデータに応じて前記第1の光源の出射パワーを変調させる記録変調信号を前記第1の光源に入力する光変調器と、記録動作中、前記光記録媒体の同一箇所を前記再生用ビームに先行して前記記録用ビームで走査するように、前記記録用ビームおよび前記再生用ビームを前記光記録媒体の同一トラック上に集束するように構成された光学系と、前記光記録媒体から反射された前記再生用ビームを検出して電気信号を出力する受光素子を有する光検出器と、前記記録変調信号の波形、または前記記録変調信号によって変調された前記光ビームの記録変調成分を示す波形を遅延させるステップを含む処理によって予測再生波形を生成する波形予測部と、前記受光素子の出力に基づく波形を、前記予測再生波形と比較することによって前記データが正しく記録されたか否かを検証する比較部と、前記記録変調信号の波形または前記記録変調信号によって変調された前記光ビームの記録変調成分を示す波形に対する前記受光素子から出力される信号の波形の遅延時間を検出し、検出した前記遅延時間に基づいて前記波形予測部による遅延量を制御する遅延検出部とを備える。
【0039】
ある実施形態において、前記波形予測部は、前記記録変調信号または前記記録変調成分を示す信号のレベルを変化させて出力するイコライザと、前記イコライザの出力を遅延させる遅延回路とを有し、前記遅延検出部は、検出した前記遅延時間に基づいて前記遅延回路による遅延量を変化させる。
【0040】
ある実施形態において、前記光記録媒体に遅延量検出のためのテストデータが記録されている場合において、前記遅延検出部は、前記テストデータが記録されている箇所から反射された前記記録用ビームの信号と、前記テストデータが記録されている前記箇所から反射された前記再生用ビームの信号との時間差に基づいて、前記遅延時間を検出する。
【0041】
ある実施形態において、前記遅延検出部による前記遅延時間の検出の前に、前記テストデータは、前記記録用ビームによって前記光記録媒体に記録される。
【0042】
ある実施形態において、前記遅延検出部による前記遅延時間の検出の際、前記テストデータを前記再生用ビームで照射するタイミングでは、前記記録用ビームを記録用パワーで出射しないように前記光変調器を制御する制御部をさらに備えている。
【発明の効果】
【0043】
本発明の一実施形態によれば、再生スポットからの反射光による出力信号に混入している記録変調波形の影響を除去し、安定的にベリファイを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】実施形態1における光記録再生装置500の構成を示すブロック図である。
【図2】実施形態1における光ピックアップ501の光学構成を示す模式図である。
【図3】実施形態1における光記録媒体上のメインスポット300aおよび2つのサブスポット300b、300cの例を示す模式図である。
【図4】実施形態1における光検出器の構成を示す図である。
【図5】実施形態1におけるDRAW実行中の各種波形の例を示す図である。
【図6】実施形態1における再生信号検出の原理を示す図である。
【図7】実施形態1におけるDRAW実行中の各種波形の他の例を示す図である。
【図8】記録変調波形と再生スポットからの反射光の強度波形との間の時間差を示す図である。
【図9】波形予測および波形比較のための構成例を示すブロック図である。
【図10】実施形態2における光記録再生装置800の構成を示すブロック図である。
【図11】実施形態2における波形予測および波形比較のための構成を示すブロック図である。
【図12】実施形態2における波形予測および波形比較のための構成の他の例を示すブロック図である。
【図13】図12に示す構成例における各種信号波形の例を示す図である。
【図14】実施形態2における温度変化に対する遅延時間の変化の例を示す表である。
【図15】実施形態2において、遅延検出信号生成する光検出器の第1の構成例を示す図である。
【図16】実施形態2において、遅延検出信号生成する光検出器の第2の構成例を示す図である。
【図17】実施形態2において、遅延検出信号生成する光検出器の第3の構成例を示す図である。
【図18】実施形態2において、メインビームの信号とサブビームの信号との間の時間差を計測するための動作の例を示すフローチャートである。
【図19】実施形態2において、メインビームの信号とサブビームの信号との間の時間差を計測するための動作の他の例を示すフローチャートである。
【図20】実施形態3における光ピックアップ901の構成を示す図である。
【図21】実施形態3における光源210の内部構成を示す図である。
【図22】実施形態3における光記録媒体上に形成されるメインスポット300aおよびサブスポット300bの例を示す図である。
【図23】実施形態3におけるメインビームおよびサブビームの発光波形の例を示す図である。
【図24】実施形態3における光検出器の構成例を示す図である。
【図25】実施形態3におけるDRAW実行中の各種波形を示す図である。
【図26】実施形態3における光検出器の他の構成例を示す図である。
【図27】図26に示す光検出器を用いる場合の信号処理の回路構成を示す図である。
【図28】実施形態3における再生信号から他層迷光の影響を除去する動作を示すフローチャートである。
【図29】実施形態4における波形予測および波形比較のための構成例を示す図である。
【図30】実施形態4における遅延計測の動作の例を示すフローチャートである。
【図31】実施形態4における遅延計測の動作の他の例を示すフローチャートである。
【図32A】実施形態5における光テープ150の一部を模式的に拡大して示す斜視図である。
【図32B】実施形態5における光テープ150の一部を模式的に示す平面図である。
【図33A】実施形態5における光データストリーマ装置の構成例を示す図である。
【図33B】図2AのB−B線断面図である。
【図34】実施形態5における光データストリーマ装置の回路構成例を示す図である。
【図35】従来の光ピックアップの光学構成を簡略化した図である。
【図36】従来の光記録再生装置によって光記録媒体に形成された光スポットの例を示す図である。
【図37】従来の光記録再生装置における光検出器の構成を示す図である。
【図38】従来の光記録再生装置における再生信号の生成の原理を示す図である。
【図39】従来の他の光記録再生装置における再生信号の生成の原理を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
本発明の実施形態は、光記録媒体にデータを記録しながら、記録したデータを読み出すことによってデータが正しく記録されたか否かを検証する光記録再生装置およびそれに搭載される光ピックアップに関する。ここで、「光記録媒体」とは、光ビームの照射によって光学的に記録マークが形成され得る媒体を意味する。光記録媒体には、例えば、光ディスク、光テープ、光カードが含まれる。光ビームの照射は、光源と、この光源から出射された光ビームを光記録媒体にフォーカスさせる光学系とを含む「光ピックアップ」によって行われる。光ピックアップが光記録媒体に光ビームを照射すると、光記録媒体上の照射領域において、反射率等の光学特性が変化する。このようにして光学特性が変化した領域を「記録マーク」と称する。
【0046】
一般に、光記録媒体に記録されているデータは、比較的弱い一定強度の光ビームを光記録媒体に照射し、光記録媒体によって変調された反射光を検出することによって再生される。書き換え可能な光記録媒体では、グルーブおよびランドが形成された基材(ディスクまたは長尺フイルム)に、光学的にデータの記録/再生が可能な記録材料膜が蒸着等の方法によって堆積されている。書き換え可能な光記録媒体にデータを記録する場合は、記録すべきデータに応じて光パワーを変調したパルス状の光ビームを光記録媒体に照射し、記録材料膜の特性を局所的に変化させることによってデータの書き込みを行う。
【0047】
記録可能または書き換え可能な光記録媒体では、記録材料膜にデータを記録するとき、上述のように光パワーを変調した光ビームを記録材料膜に照射することより、結晶質の記録材料膜に非晶質の記録マークを形成する。この非晶質の記録マークは、記録用光ビームの照射を受けた記録材料膜の一部が融点以上の温度に上昇した後、急速に冷却されることによって形成される。光ビームを記録マークに照射するときの光パワーを低めに設定すると、光ビームが照射された記録マークの温度は融点を超えず、急冷後に結晶質に戻る(記録マークの消去)。このようにして、記録マークの書き換えを何度も行うことが可能になる。データを記録するときの光ビームのパワーが不適切であると、記録マークの形状が歪み、データを再生することが難しくなることがある。
【0048】
光記録媒体に対してデータの記録または再生を行うとき、光ビームが目標トラック上で常に所定の集束状態となる必要がある。このためには、「フォーカス制御」および「トラッキング制御」が必要となる。「フォーカス制御」とは、光ビームの焦点(集束点)の位置が常に目標トラック上に位置するように対物レンズの位置を記録媒体表面の法線方向に制御することである。一方、「トラッキング制御」とは、光ビームのスポットが所定のトラック上に位置するように対物レンズの位置をトラックに垂直な方向に制御することである。
【0049】
上述したフォーカス制御およびトラッキング制御を行うためには、光記録媒体から反射される光に基づいて、フォーカスずれおよびトラックずれを検知し、そのずれを縮小するように光スポットの位置を調整することが必要である。フォーカスずれおよびトラックずれの大きさは、光記録媒体からの反射光に基づいて生成される「フォーカスエラー(FE)信号」および「トラッキングエラー(TE)信号」によって示される。
【0050】
したがって、記録再生装置は、記録または再生動作中、フォーカスエラー信号およびトラッキングエラー信号を生成し、これらの信号に基づいてフォーカス制御およびサーボ制御を実行する。その上で、記録用光ビームを用いたデータの記録および再生用光ビームを用いたデータの再生を行う。
【0051】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。以下の説明において、同一または対応する要素には同一の参照符号を付している。
【0052】
(実施の形態1)
まず、本発明の第1の実施形態による光記録再生装置を説明する。本実施形態の具体的な構成および動作を説明する前に、本実施形態における光記録再生装置が解決する従来技術の課題を説明する。
【0053】
DRAW技術では、簡素で低コストの光ピックアップユニット(OPU)を実現するために、1つの光源から出射された光を分岐させて記録用ビームと再生用ビームとを形成する構成が有利である。特に、光テープのような記録媒体に複数の光ピックアップを用いてDRAWを行う記録再生装置では、小型化および低コスト化のため、回折格子やホログラム素子といった光分岐素子を用いて光源からの出射光を記録用ビームと再生用ビームとに分岐する構成が有効である。そのような構成では、記録用ビームのみならず再生用ビームにも記録変調成分が重畳してしまうため、再生用ビームの検出信号から再生信号を得るためには、記録変調成分を除去する必要がある。
【0054】
ここで、「記録変調成分」とは、光源から出射された光ビームの強度を示す信号に含まれる信号成分のうち、データ記録のために強度が変調された信号成分を意味する。記録変調成分は、記録すべきデータに応じて光源に入力される「記録変調信号」に応じた波形を示す。したがって、記録変調信号が例えばパルス状の信号である場合、光ビームの記録変調成分も同様のパルス状の波形を示す。
【0055】
再生用ビームに含まれる当該記録変調成分を除去するために、特許文献2では、回折格子によって分岐した2つの再生用ビームの検出信号を差動した信号が再生信号として生成される。しかし、このような方法で生成された再生信号は、以下に示すように、信号品質が悪く、正確なベリファイを行うことが困難である。
【0056】
図35は、特許文献2に開示された光ピックアップ2900の光学構成を簡略化した図である。この光ピックアップ2900は、光源2910、回折格子2911、ビームスプリッタ2903、波長板2904、集光レンズ2905、ミラー2906、対物レンズ2907、および光検出器2901を有している。光源2910を出射した光は回折格子2911によって主に0次光ビームと±1次光ビームとに回折される。回折によって生じた0次光ビームおよび±1次光ビームは、対物レンズ2907によって集光され、光記録媒体2908の同一トラック上に3つの集光スポット(メインスポットおよび2つのサブスポット)を形成する。2つのサブスポットによって信号が消去されたり、書き換えられたりすることがないように、±1次光ビームは0次光ビームよりも光量(強度)が十分に低く設定される。すなわち、そのように回折格子2911の回折効率が設計される。
【0057】
図36は、記録動作中に光記録媒体2908の記録面上に集光される光スポットの配置例を示す図である。0次光ビームによって形成されるメインスポット300aは記録用の光スポットであり、光記録媒体2908へのデータの記録に用いられる。一方、±1次光による2つのサブスポット300b、300cは、記録されたデータの再生を行うために利用される光スポットである。このため、以下の説明において、メインスポットを「記録スポット」と呼び、サブスポットを「再生スポット」と呼ぶことがある。
【0058】
記録動作中、メインスポット300aおよびサブスポット300b、300cは、同一トラック310上に形成され、光記録媒体2908に対して矢印aの方向に移動する。実際には、各光スポットは装置に対して固定されているが、光記録媒体2908のトラックが回転または移動することにより、各光スポットが光記録媒体2908に対して相対的に移動する。本明細書では、光記録媒体のトラック上をメインスポットが相対的に移動することを、「記録媒体を記録用ビームで走査する」と称する。同様に、記録媒体のトラック上をメインスポットに後続するサブスポットが相対的に移動することを、「記録媒体を再生用ビームで走査する」と称する。DRAWを行うとき、光記録媒体の同一箇所を再生用ビームに先行して記録用ビームで走査することになる。このとき、2つのサブスポットのうち、サブスポット300bは、メインスポット300aの後を走査するため、メインスポット300aによって記録された記録マークの影響を受け、反射光量が変調される。一方、サブスポット300cは、メインスポット300aの前を走査しているため、その反射光には記録マークの情報は含まれない。これらの光ビームの反射光は、図35に示す光学系を経て検出器2901によって検出される。
【0059】
図37は、光検出器2901の受光素子の配置を示す図である。4分割された受光素子161は0次光、すなわちメインスポット300aからの反射光330aを受光し、受光量に応じた電気信号を出力する。図35に示す検出レンズ2902によって与えられる非点収差量がデフォーカスにより変化することを利用してフォーカスエラー信号の検出が行われるとともに、プッシュプル法によるトラッキングエラー信号の検出が行われる。一方、受光素子162、163は、それぞれサブスポット300bからの反射光330b、およびサブスポット300cからの反射光330cを受光する。
【0060】
ここで、光源2910は、光記録媒体2908への記録マークの形成のため、光変調器2920から出力された記録変調信号によって駆動された光を出射する。同じ光源2910から出ている再生用ビームも当然この光変調の影響を受けている。そのため、±1次光によって形成される2つのサブスポット300b、300cのうち、メインスポット300aの後を走査するサブスポット300bからの反射光には、記録マークの反射率変化による変調成分と光変調器2920による光量変化の変調成分(記録変調成分)とが重畳される。もう一方のサブスポット300cは、記録スポット300aの前の未記録部を走査するため、その反射光には記録マークの反射率変化による変調成分は含まれず、記録変調成分のみが含まれる。このため、これら2つのサブビームの強度を示す信号を差動することにより、再生信号(すなわちベリファイのためのモニター信号)を得ることができる。
【0061】
図38は、特許文献2に開示されたDRAW技術における再生信号検出の原理を示す図である。図38に示すように、記録変調成分と記録マークによる成分とが重畳されたサブスポット300bからの反射光の検出信号Xから、記録変調成分のみが含まれるサブスポット300cからの反射光の検出信号Yを減算した信号X−Yが、再生信号として生成される。これにより、信号Xから記録変調成分が除去される。
【0062】
しかし、記録変調成分がHighレベルのときとLowレベルのときとでは、記録マークによる変調の程度が異なるため、再生信号X−Yは、記録変調成分のHighレベル部に対応する大きい振幅の部分とLowレベル部に対応する小さい振幅の部分とが混在することになる。すなわち、特許文献2のように差動によって記録変調成分を除去する方法では、大きい振幅の再生信号と小さい振幅の再生信号とが混在した極めて信号品質の悪い再生信号しか得られない。その結果、正確なベリファイ動作が困難となる。
【0063】
一方、記録変調成分を除去する他の方法として、特許文献3〜5に開示された方法がある。これらの方法では、記録変調成分と記録マーク成分とが重畳された再生ビームの信号を、光源に与えられる記録変調信号で除算することによって再生信号が生成される。しかし、このような方法でも、光源や素子の特性に起因する誤差や、信号処理の遅延の影響等により、良好な再生信号を得ることはできない。
【0064】
図39は、特許文献3〜5に開示されたDRAW技術における再生信号検出の原理を示す図である。図39に示すように、記録変調成分と記録マーク成分とが重畳された再生ビームの信号Xを、光源に与えられる記録変調信号Yで除算した信号X/Yが、再生信号として生成される。すなわち、記録変調信号Yを用いて再生ビームの信号Xのオートゲインコントロール(またはゲイン切換)が行われる。この方法によれば再生信号の振幅を概ね一定に保つことは可能である。しかし、記録変調信号に応答して光源が実際に出力する光ビームの強度を示す波形、および記録媒体から反射された再生用ビームを光検出器によって検出した波形には、それぞれの素子の応答特性や信号処理の遅延等に起因する誤差が含まれる。そのため、再生信号X/Yにも誤差が発生し、結果として正確なベリファイ動作が困難であるという課題が生じる。
【0065】
本願発明者らは、先行技術に内在する上記の課題を新たに見出した。本実施形態では、上記の課題を解決する新たな光ピックアップおよび記録再生装置を提案する。以下、本実施形態の構成および動作を説明する。
【0066】
<1.本実施の形態の構成>
<1.1 光記録再生装置の構成>
図1は、本実施の形態に係る光記録再生装置500の構成例を示すブロック図である。この光記録再生装置500は、例えばパーソナルコンピューター、光記録媒体プレーヤー、光記録媒体レコーダー等に搭載され得る。
【0067】
図1に示す光記録再生装置500は、光ピックアップ501と、光記録媒体1を回転させるスピンドルモータ503と、光ピックアップ501の位置を制御する移送モータ502と、記録すべきデータに応じて光ピックアップ501の光源の出力を変調させる光変調器(光源駆動回路)120と、これらの動作を制御するシステムコントローラ505と、不揮発性メモリ506とを備えている。光ピックアップ501は、光ビームを出射する光源と、光ビームを集光して光記録媒体1の記録層1a上に光スポットを形成する対物レンズ510と、対物レンズ510を駆動するアクチュエータと、光記録媒体1からの反射光を検出する光検出器とを備えている。光源は、典型的には半導体レーザーであるが、光ビームを出射するものであればどのような光源でもよい。
【0068】
光記録媒体1から光学的に読み出されるデータは、光ピックアップ501の光検出器が有する受光素子(図示せず)によって電気信号に変換され、システムコントローラ505に入力される。システムコントローラ505は、光ピックアップ501から得た電気信号に基づいて、フォーカスエラー信号およびトラッキングエラー信号を含むサーボ信号の生成、ならびに再生信号の波形等価、2値化スライス、同期データなどのアナログ信号処理を行う。
【0069】
システムコントローラ505は、生成したサーボ信号により、光ピックアップ501の光源から出射される光ビームによって光記録媒体1のトラック上に形成される光スポットを光記録媒体1に追従させる。システムコントローラ505は、対物レンズ510のフォーカス制御およびトラッキング制御、移送制御、スピンドルモータ制御などの一連の制御をデジタルサーボで実現する。システムコントローラ505の働きにより、対物レンズ510のアクチュエータ(図示せず)による駆動が行われるほか、光ピックアップ501を光記録媒体1の内周や外周へ移送させる移送モータ502の駆動や、光記録媒体1を回転させるスピンドルモータ503の駆動が適切に行われる。さらに、システムコントローラ505は、記録すべきデータに応じて光ピックアップ501の光源の出力を変調させるように、光変調器120を制御する。なお、システムコントローラ505および光変調器120は、例えば半導体ICで実現可能である。あるいは、半導体ICのようなハードウェアとソフトウェア(プログラム)との組み合わせにより実現され得る。
【0070】
不揮発性メモリ506には、システムコントローラ505によって実行されるソフトウェア及び各種パラメータ等のデータが記憶されている。不揮発性メモリ506には、光記録媒体1の記録層1a上の記録スポットからの反射光による信号と再生スポットで再生される信号との間の遅延量を示す情報が含まれている。この遅延量を示す情報に基づいて、システムコントローラ505は、予測再生信号を生成し、検出および演算によって実際に生成された再生信号と予測再生信号とを比較することによってデータの記録が正しく行われたか否かを判定する。
【0071】
なお、図1に示す構成では、光記録媒体1が光ディスクの場合を想定したが、光記録媒体1は、テープやカードの形状をなす光記録媒体でもかまわない。また、本実施形態では光ピックアップ501の数は1個であるが、複数の光ピックアップ501を用いて並列的にデータの記録・再生を行うように記録再生装置が構成されていてもよい。
【0072】
<1.2 光ピックアップの構成>
図2は、図1における光ピックアップ501の光学系の構成を示す図である。図2に示すように、光ピックアップ501は、光源110、回折格子111、ビームスプリッタ103、波長板104、集光レンズ105、ビームスプリッタ106、対物レンズ107、前光検出器112、検出レンズ102、および光検出器101を有している。光変調器120によって生成された記録変調信号に応じて光源110が出射した光は、回折格子111によって主に0次光ビームと±1次光ビームに回折される。0次光ビームおよび±1次光ビームは、対物レンズ107により集光されて光記録媒体1の同一トラック上に3つの集光スポット(メインスポットおよび2つのサブスポット)を形成する。なお、本実施形態では回折格子111を用いているが、入射光を記録用ビームおよび再生用ビームに分ける素子(本明細書において、「光分岐素子」と呼ぶ。)であればどのようなものを用いてもよい。例えば、テーパ状のミラーやプリズムを用いてもよい。その場合、表面反射光または透過光をメインビームとして使用し、テーパ角度のついた内面で反射した光をサブビームとして使用することが可能である。
【0073】
<2. 光記録再生装置の動作>
図3は、記録動作中に光記録媒体1の記録面上に集光される光スポットの配置例を表す図である。図3に示すように、本実施形態における光スポットの配置は、図36に示す配置と同様である。0次光ビームによって形成されるメインスポット300aは記録用の光スポットであり、光記録媒体1へのデータの記録に用いられる。一方、±1次光ビームによって形成される2つのサブスポット300b、300cは、記録されたデータの再生を行うために利用される光スポットである。
【0074】
記録動作中、メインスポット300aおよびサブスポット300b、300cは、同一トラック310上に形成され、光記録媒体1に対して矢印aの方向に相対的に移動する。DRAWを行うとき、光記録媒体1の同一箇所を再生用ビームに先行して記録用ビームで走査することになる。このとき、2つのサブスポットのうち、サブスポット300bは、メインスポット300aの後を走査するため、記録マークに応じて反射光量が変調される。一方、サブスポット300cは、メインスポット300aの前を走査しているため、その反射光には記録マークの情報は含まれない。これらの光ビームの各々は、光記録媒体1によって反射され、図2に示す光学系を経て光検出器101によって検出される。なお、光記録媒体1のトラックを逆方向に走行させる場合は、サブスポット300b、300cの役割は逆転する。
【0075】
図4は、光検出器101内の受光素子の配置を示す図である。光検出器101は、メイン受光素子121、第1サブ受光素子122、および第2サブ受光素子123を有している。図4において、4分割されたメイン受光素子121は、0次光、すなわちメインスポット300aからの反射光400aを受光する。一方、第1のサブ受光素子122および第2のサブ受光素子123は、第1のサブスポット300bからの反射光400bおよび第2のサブスポット300cからの反射光400cをそれぞれ受光する。
【0076】
各受光素子は、典型的にはフォトダイオードを有し、光電変換によって受光量に応じた電気信号を出力する。メイン受光素子121の4つの受光領域から出力される信号に基づいて、演算回路410、420により、トラッキングエラー信号およびフォーカスエラー信号がそれぞれ生成される。システムコントローラ505は、メイン受光素子121から出力される信号に基づいて生成されるトラッキングエラー信号(プッシュプル信号)を用いてトラッキング制御を行う。同様に、メイン受光素子121から出力される信号に基づいて生成されるフォーカスエラー信号に基づいて、フォーカス制御を行う。図4に示すフォーカスエラー信号は、図2に示す検出レンズ102によって与えられる非点収差量がデフォーカスにより変化することを利用している。
【0077】
本実施形態では、除算器124が設けられており、第1のサブ受光素子122の出力(X)を第2のサブ受光素子123の出力(Y)で除算することによって再生信号(X/Y)が生成される。このような処理により、従来よりも高品質の再生信号を得ることができる。
【0078】
なお、演算器410、420、および除算器124は、光検出器101の構成要素であってもよいし、システムコントローラ505の構成要素であってもよい。前者の場合、光検出器101は、トラッキングエラー信号、フォーカスエラー信号、および再生信号を生成し、それらの信号をシステムコントローラ505に送出する。後者の場合、光検出器101は、各受光素子から出力された信号をシステムコントローラ505に送出する。
【0079】
ここで光源110は、光変調器120によって生成された記録変調信号(LD駆動信号)に基づき、光記録媒体1への記録マーク形成のための強度変調された光を出射する。したがって、一つの光源110から出射され回折素子111により回折された0次光(記録ビーム)だけでなく±1次回折光も同様にこの強度変調の影響を受けている。
【0080】
図5は、ベリファイ動作の実行中における各種信号波形の例を示す図である。図5(a)は、光変調器120から光源110に与えられる記録変調信号の例を示している。図5(b)、(c)は、記録変調信号によって出射光が変調されたときの、第2のサブ受光素子123および第1のサブ受光素子122から出力される信号Y、Xの例をそれぞれ示している。ここで、比較の便宜のため、記録変調信号と第1のサブ受光素子122および第2のサブ受光素子123の出力信号X、Yとが同程度のレベルになるように描かれている。実際にはこれらの信号のレベルは異なるため、比較の際には別途増幅処理が行われ得る。図5(d)は、信号Xを信号Yで除算した信号、すなわち、除算器124からの出力信号を示している。図5には、比較例として、特許文献3〜5の方式によって生成される再生信号(e)、特許文献2の方式によって生成される再生信号(f)も併せて示されている。
【0081】
メインスポット300aの後を走査するサブスポット300bによる反射光を受光する第1のサブ受光素子122は、図5(c)に示すように、メインスポット300aによって新たに記録された記録マークによる反射率変化の成分と光変調による光量変化の成分とが重畳された信号を出力する。図5(c)に示す波形において、記録変調成分の山の途中から谷の途中にかけて存在する比較的小さい盛り上がり部分が記録マークによる変調成分である。一方、サブスポット300cは、記録スポット300aに先行して記録マークのない未記録部を走査するため、この反射光を受光する第2のサブ受光素子123は、図5(b)に示すように、記録マーク300aによる反射率変化の成分を含まず、光源110の光変調による光量変化の成分のみを含む信号を出力する。このことにより、第2のサブ受光素子123は、記録変調成分を検出する受光素子として利用することができる。
【0082】
図5(b)に示すように、第2のサブ受光素子123の出力Yは、図5(a)に示す記録変調信号と類似するパルス状波形を有するが、波形の立ち上がりおよび立下りに誤差が見られる。この誤差は、光源110や第2のサブ受光素子123の応答特性および信号処理の遅延等に起因していると考えられる。この誤差は、図5(c)に示す第1のサブ受光素子122の出力Xにも同様に見られる。このため、出力Xを出力Yで除算すれば、両者の誤差の影響がキャンセルされ、良好な再生信号が得られる。
【0083】
図5(e)に示す信号は、第1のサブ受光素子122の出力(c)を、記録変調信号(a)で除算した信号(c)/(a)であり、特許文献3〜5におけるゲインコントロールされた再生信号に相当する。この信号は、光源110や第1のサブ受光素子122の応答の影響による誤差のため、信号品質に課題がある。
【0084】
図5(f)に示す信号は、第1の受光素子122と第2の受光素子123との差動出力(c)−(b)であり、特許文献2における再生信号に相当する。この信号は、光源110の出射パワーに応じて記録マークから反射される光の強度にばらつきが発生するため、信号品質に課題がある。
【0085】
これに対して本実施形態の光記録再生装置では、図5(d)に示す信号(c)/(b)を再生信号として利用する。図6は、本実施形態の光記録再生装置の再生信号検出の原理を示す図である。図6に示すように、記録変調成分に加えて記録マークによる変調成分が重畳された第1のサブ受光素子122からの信号Xと、記録変調成分のみを含む第2のサブ受光素子123からの信号Yとから、X/Yを演算することにより、記録変調信号がオートゲインコントロールされた再生信号X/Yが得られる。このように、これら2つのサブスポット300b、300cからの反射光による信号を除算器124で除算することにより、図5(d)および図6に示すように、記録変調成分を除去した良好な再生信号を得ることができる。
【0086】
上記の例では、1つの記録マークを形成するために光源110からシングルパルス変調された光が出射される場合を想定したが、光源110から複数回のON/OFFを繰り返すマルチパルス変調された光が出射されるようにしてもよい。図7は、DRAWを実行する際に、1つの記録マークを形成する際にマルチパルス変調を行った場合の波形を示している。図5に示す例と同様に、第1のサブ受光素子122の出力を第2のサブ受光素子123の出力で除算して得られる図7(d)に示す波形(c)/(b)が再生信号として生成される。この信号は、第1のサブ受光素子122の出力波形(c)を記録変調信号(a)で除算した信号(c)/(a)の波形(図7(e))や、第1のサブ受光素子122の出力(c)から第2のサブ受光素子123の出力(b)を減算した信号(c)−(b)の波形(図7(f))よりも信号品質に優位性がある。
【0087】
以上のように、本実施形態の方式によれば、サブスポット300bからの反射光を検出する第1のサブ受光素子122の出力Xを、サブスポット300cからの反射光を検出する第2のサブ受光素子123の出力Yで除算した信号X/Yを用いて、記録媒体1上に記録された信号を検出する。このため、従来よりも信号検出の精度を高めることができる。出力Yは、光変調器120から光源110に与えられる記録変調信号(図5(a)、図7(a))とは異なり、光源120および光検出器101の応答特性を加味した記録変調信号であると言える。そのため、波形の立ち上がりおよび立ち下がりの誤差が出力Xのものと整合する。したがって、信号X/Yを再生信号とすれば、誤差の影響がキャンセルされるため、従来よりも高精度のベリファイが可能となる。
【0088】
なお、記録変調成分を検出する手段としては、第2のサブ受光素子123の出力の代わりに、図2に示す前光検出器112の出力を利用することも可能である。前光検出器112は、ビームスプリッタ106を透過した光ビームを検出し、受光量に応じた電気信号を出力する受光素子を有している。前光検出器112の出力も、第2のサブ受光素子123の出力と同様に、記録変調信号で実際に光変調された出射光の強度を示す。このため、第1のサブ受光素子122の出力を前光検出器112の出力で除算した信号を再生信号とすれば、上記と同様に信号検出の精度を高めることができる。この構成例では、必ずしも2つのサブビームを光記録媒体1の同一トラック上に集束させる必要はない。前光検出器112の出力を用いずに上記のように第2のサブ受光素子123の出力を用いる場合は、前光検出器112は設けられていなくてもよい。
【0089】
(実施の形態2)
次に、本発明の第2の実施の形態による光ピックアップおよび光記録再生装置を説明する。本実施形態における装置の基本構成は、実施形態1のものと同様であるが、信号処理のための構成が実施形態1とは異なっている。以下、実施形態1と異なる点を中心に説明し、重複する事項についての説明は省略する。
【0090】
本実施形態は、記録ビームによるデータの記録と再生ビームによる当該データの読出しとの間に生じる遅延時間が、動作環境の変化によって変動したとしても、安定した比較・相関動作を行うことができる光記録再生装置および光ピックアップに関する。まず、本実施形態が取り組む課題を説明する。
【0091】
図8は、記録ビームの強度波形(記録変調波形)と、記録スポットに後続する再生スポットからの反射光の強度波形との関係を示す図である。図8(a)は、記録スポットからの反射光の強度波形(記録変調波形)を示し、図8(c)は、記録スポットに後続する再生スポットからの反射光の強度波形を示している。また、図8(b)は、再生が期待される予測再生波形を示し、図8(d)は、図8(c)の波形から記録変調成分を除去した波形、すなわち実際の再生波形を示している。図8(b)、(c)、(d)の信号波形は、実際には記録媒体1に記録される有限の記録マークによる空間的MTF(Modulation Transfer Function)により、記録マークの大きさに応じて振幅や波形の立ち上がり方、立ち下がり方が異なるが、ここでは原理を説明するため、一定振幅で単一周波数の矩形波に簡略化して図示している。
【0092】
図8(b)に示す予測再生波形は、図8(a)の記録変調波形の信号レベルを調整した上で、一定時間Taだけ遅延させた波形である。この遅延時間Taは、記録ビームによって記録マークが形成されるタイミングと、再生ビームによって当該記録マークが読み出されるタイミングとの差異を考慮して決定される。例えば、特許文献5に開示されている方法に従えば、記録スポットと再生スポットとの間隔をd、各光スポットの光記録媒体1に対する相対速度をvとしたとき、Taはd/vに設定される。図8(b)に示す予測再生波形と、図8(d)に示す実際の再生波形とを比較することにより、記録マークが正しく形成されたかが検証される。
【0093】
しかし、予測再生波形を生成する際に設定される遅延時間Taと、実際の遅延時間Tbとの間にずれが生じていると、正しくベリファイを行うことができない。従来の構成では、この課題を解決することができず、ベリファイ性能に問題が生じる。
【0094】
図9は、図8に示す各波形を用いてベリファイを行うための構成例を示す図である。この構成例では、予測再生信号(b)を生成する波形予測部910と、再生スポットからの反射光を示す信号(c)から記録変調成分を除去した信号(d)を生成する記録変調除去部920と、信号(b)と信号(d)とを比較する比較部930とが設けられている。再生スポットからの反射光の信号(c)は、記録変調除去部920によって記録変調成分が除去され、信号(d)が出力される。一方、記録変調成分を示す信号(a)は、波形予測部910に含まれるイコライザ912および遅延回路914を通過することによって予測再生波形(b)になる。信号(b)および(d)は比較部930によって比較され、記録が適切に行われたか否かが検証される。
【0095】
しかしながら、光源110の典型例である半導体レーザーは、出射パワーや環境温度の変化により、出射光の波長変動が発生する。この波長変動により、回折格子111による回折角度が変化し、メインスポット300aとサブスポット300b、300cとの間隔が変化する。この間隔変化に伴い、実際の遅延時間Tbが変化し、予測再生信号(b)と記録変調成分を除去した実際の再生信号(d)との間に差異が生じる。このため、比較部930によって適切な比較・相関結果を求めることが困難であるという問題が生じる。
【0096】
回折格子111によって分離されたメインスポット300aとサブスポット300bとの間隔は、ほぼ波長の変化に比例して変化する。例えば光源110がある環境条件において波長405nmの青色レーザーを出射する光源であり、環境条件の変化により、波長が410nmまで変化したと仮定すると、スポット間隔は約1%増加する。すなわち、メインスポット300aとサブスポット300bとの間隔が100μmである場合、約1μm変化する。ブルーレイディスクと同じ密度で情報が光記録媒体1に記録される場合、1クロックは0.074μmの距離に相当するので、1μmの変動は約14クロックの変動に相当し、無視できないほど大きい。
【0097】
このように、サブスポット300bからの反射光による信号の波形(c)から記録変調の影響を除去した実際の再生波形(d)と、第1のサブ受光素子122で検出が期待される予測再生波形(b)との間には、遅延時間に誤差が生じ得る。このため、図9に示す比較部930によって適切な比較・相関を行うことが不可能な場合がある。
【0098】
そこで、本実施形態では、波形比較のための構成を改良することにより、上記の課題を解決する。以下、本実施形態における構成および動作を説明する。
【0099】
図10は、本実施形態における光記録再生装置800の全体構成の一例を示すブロック図である。この例では、図1に示す構成要素に加え、環境温度を計測する温度センサー130をさらに備えている。
【0100】
図11は、光記録再生装置800のシステムコントローラ805における波形予測および比較を行う機能ブロックを示す図である。システムコントローラ805は、イコライザ405および遅延回路402によって記録変調波形から予測再生波形を生成する波形予測部410と、第1のサブ受光素子122の出力から記録変調成分を除去して実際の再生波形を生成する記録変調除去部401と、実際の再生波形と予測再生波形とを比較する比較部403と、遅延時間を検出して遅延回路402における遅延量を調整する遅延検出部404とを有している。図11に示す構成は、図9に示す構成と比べ、遅延検出部404が追加されている点が異なっている。
【0101】
ここで、記録変調波形は、光源110から出射される光ビームに含まれる記録変調成分を示す波形であり、例えばメイン受光素子121の出力から得られる。記録変調波形は、他にも、第2のサブ受光素子123や前光検出器112の出力から得てもよい。あるいは、光変調器120から光源110に入力される記録変調信号に基づいて生成してもよい。ただし、記録変調信号から記録変調波形を生成する場合、実施形態1で述べた波形の誤差の影響が生じるおそれがある。
【0102】
本実施形態における記録変調除去部401は、図4に示す除算器124を含み、図4を参照しながら説明した方法によって記録変調成分を除去するが、必ずしもこの方法によらなくてもよい。例えば、特許文献2に開示されているように、第1のサブ受光素子122の出力から第2のサブ受光素子123の出力を差動してもよい。あるいは、特許文献3〜5に開示されているように、第1のサブ受光素子122の出力を記録変調信号で除算してもよい。特許文献2〜5に開示された方法を用いた場合、信号品質が劣化する恐れがあるが、本実施形態における遅延時間の最適化の効果を得ることはできる。
【0103】
図11に示すように、遅延検出部404を用いて遅延回路402による遅延量を適切に変化させることにより、適切な比較・相関(ベリファイ)が可能となる。
【0104】
なお、この比較・相関を行う前処理については、図11に示す構成の代わりに、図12に示す構成を採用してもよい。図12に示す構成例では、波形予測部501にて記録変調波形(a)と、記録変調波形から少なくともイコライザ405と遅延回路402とを経た波形(b)とを加算した波形(d)が生成される。この波形(d)と、第1のサブ受光素子122からの出力波形(c)とを比較することによってもベリファイを行うことが可能である。
【0105】
図11および図12に示す遅延検出部404は、光ピックアップ501周辺の環境温度変化を示す情報を用い、遅延量を変化させる。この環境温度変化は、図10に示す温度センサー130によって計測される。
【0106】
図13は、図12の各部の波形の例を示している。波形(a)は記録スポットの記録変調波形、波形(b)は再生スポットで再生されることが想定される記録(済)信号の再生波形(予測再生波形)、波形(c)はサブスポット300bからの反射光による実際の信号(第1のサブ受光素子122からの出力信号)の波形、波形(d)は記録変調波形と予測再生波形との合成波形(波形予測部501通過後の波形)を示している。
【0107】
図14は光源110が青色レーザーで、記録スポットと再生スポットとの間隔が100μm、データの記録密度がブルーレイディスクと同じ場合の、スポット間隔ならびに遅延時間の変化の例を示している。列の左から、青色レーザーの環境温度(℃)、その温度での青色レーザーの波長(nm)、その波長での記録スポットと再生スポットとの間隔(μm)、遅延時間(μs)、遅延時間(クロック)を示している。図示されるようなテーブルが、図10に示す不揮発性メモリ506に記録されている。
【0108】
本実施形態における光記録再生装置800は、図10に示すように、環境温度の変化を検出する温度センサー130をさらに備えている。温度センサー130が検出した温度情報は、システムコントローラ805内の遅延検出部404に伝えられる。遅延検出部404は、検出された温度の変化に応じて遅延回路402の遅延量を変化させる。温度の変化に応じて変化させるべき遅延量は、図10の不揮発性メモリ506内に記録されたテーブルに基づいて決定される。遅延検出部404は、温度センサー130が温度変化を検出したとき、当該テーブルに基づいて随時遅延量を変化させるように動作する。
【0109】
以上の構成により、本実施の形態では、温度が変化することにより遅延量が変化しても、遅延検出部404が遅延回路402に対して適切な遅延量を設定するので、図9に示す構成に比べて再生信号検出の精度を高めることができる。なお、不揮発性メモリ506に保持するテーブルは、図14に示す項目のうち、温度と遅延時間のみでもよい。不揮発性メモリ506に記録されるテーブルは、実際の制御ステップに対応したテーブルで有る方が望ましい。例えば、温度が5℃変化したら遅延時間を変更するように遅延検出部404を構成する場合、テーブルには5℃ごとの遅延時間の情報が規定されていることが好ましい。また、不揮発性メモリ506は、テーブルの代わりに、温度と遅延量との関係を規定した関数を示す情報を保持しても良い。また、遅延時間の初期値には、光ピックアップ装置ごとに最適な値を設定することが望ましい。
【0110】
以上の仕組みを用いることにより、温度が変化することによって記録スポットと再生スポットとの距離が変化しても、遅延検出部404が遅延回路402に対して適切な遅延量を設定することができる。その結果、再生信号検出の精度を高めることができる。
【0111】
なお、上記の例では温度センサー130を用いて環境温度の変化を検出するが、温度センサー130を用いることは必須ではない。例えば、以下に示すように、信号処理によって遅延時間の変化を直接検出し、その変化を相殺するように遅延時間を制御してもよい。以下、遅延時間の変化を検出する光検出器101のいくつかの構成例を説明する。
【0112】
図15は、温度センサー130を用いない場合における遅延検出信号を生成する光検出器101の第1の構成例を示す図である。本構成例における光検出器101は、メインビーム400aを受光するメイン受光素子131と、再生用のサブビーム400bを受光するサブ受光素子132と、サブ受光素子132に接続された差動アンプ135と、加算器134とを備えている。本構成例では、図4における第2のサブ受光素子123に相当する受光素子は設けられていない。
【0113】
図15に示すように、サブスポット300bからの反射光400bを受光するサブ受光素子132は、2つの受光領域に分割されている。これらの2つの受光領域は、光記録媒体1のトラックの方向に対応する方向(図15の上下方向)に並んで配置されている。これらの2つの受光領域からの差動アンプ135による差動出力(遅延検出信号)を用いて、遅延量を検出することが可能である。メインスポット300aに対し、サブスポット300bが近づく、あるいは遠ざかる方向(図15の上下方向)に移動すると、サブ受光素子132の差動出力のDC電圧が変化する。この電圧変化をモニターすることにより、温度変化をモニターするよりも遅延量の変化を直接精度良く検出できる。
【0114】
不揮発性メモリ506内には、遅延検出信号出力に応じた遅延量を決定する変換テーブルまたは遅延検出信号と遅延量との関係を規定する関数を示す情報を保持しておくことにより、適切な遅延量を設定することが可能である。
【0115】
図16は、遅延検出信号を検出する光検出器101の第2の構成例を示す図である。図16に示すように、第2のサブスポット300cからの反射光400cを受光する受光素子143からの差動出力を用いて遅延量を検出しても良い。受光素子143は、図15に示す受光素子132と同様、光記録媒体1のトラックの方向に対応する方向(図16の上下方向)に並んで配置された2つの受光領域に分割されている。これらの受光領域からの出力を差動アンプ145によって差動することにより、遅延検出信号が得られる。遅延量検出専用の受光素子143には記録マークによる変調成分が含まれないため、図16に示す構成は変動量検出に有利である。
【0116】
図17は、遅延検出信号を生成する光検出器101の第3の構成例を示す図である。図17に示すように、2つのサブスポット300b、300cからの反射光400b、400cをそれぞれ受光するサブ受光素子152、153の出力を組み合わせることによって遅延検出信号を生成してもよい。
【0117】
この例では、第1のサブ受光素子152は、トラック方向に対応する方向(図17の上下方向)に並んで配置された2つの受光領域152a、152bに分割され、第2のサブ受光素子153は、トラック方向に対応する方向に並んで配置された2つの受光領域153a、153bに分割されている。そして、第1のサブ受光素子152の受光領域152a、152b、メイン受光素子151、および第2のサブ受光素子153の受光領域153a、153bは、この順で、トラック方向に対応する方向に配列されている。メイン受光素子151から遠い側の受光領域152a、153bの組み合わせと、近い側の受光領域152b、153aの組み合わせとの間で、差動アンプ155による差動演算(152a+153b−152b−153a)が行われる。当該演算により、再生用のサブスポット300bからの反射光を示す信号に発生するその他のDC変動(例えば光記録媒体1の偏心に追従して対物レンズ510が移動することによって発生するDC変動など)の影響を低減した遅延検出信号が得られる。この構成例によれば、メインスポットとサブスポットとの距離の変化を安定して検出することが可能である。
【0118】
なお、図15〜17に示す例では、差動演算される受光素子は2つの受光領域に分割されているが、3つ以上の受光領域に分割されていてもよい。その場合、少なくとも2つの受光領域について、図15〜17に示す位置関係を満たすように構成されていればよい。
【0119】
次に、図15〜17に示す例において遅延量を計測する処理の手順を説明する。
【0120】
図18は、遅延量を計測する処理のフローチャートを示している。光記録媒体1には、前もって遅延量検出用データ(テストデータ)を記録しておく。記録しておくデータは、例えばアドレス情報のように、光記録媒体1を作成する時に形成されるデータであってもよいし、本実施形態の光記録再生装置800によって先立って記録されたデータでもかまわない。まず、メインビームの再生パワーで光源(レーザー)110を発光させる(S31)。次に、フォーカスサーボおよびトラッキングサーボをONにし、光記録媒体1に光スポットを追従させる(S32)。続いて、遅延検出用記録データが保存されている箇所をメインビームおよびサブビームで走査することにより、遅延検出用記録データをそれぞれ再生する(S33)。その後、メイン受光素子の出力とサブ受光素子の出力との間の遅延量をシステムコントローラ805の遅延検出部404によって検出・計測する(S34)。次に、遅延検出部404は、不揮発性メモリ506に予め記録されたテーブルまたは関数を参照し、遅延回路402に指示する遅延量を決定する(S35)。システムコントローラ805は、DRAWを実施する際に、この遅延量を用いることにより、品質の良い再生信号を検出可能である。
【0121】
なお、遅延量検出用データは、例えば光ディスクにおけるリードインエリアのように、光記録媒体1において最初に読み書きされるエリアに設定され得る。さらには、定期的に遅延量検出が可能なように、光記録媒体1上の記録再生領域に遅延量検出用データが複数設定され得る。あるいは、本実施形態の光ピックアップ自身を用いて遅延検出用データを予め記録しておき、メインスポットとサブスポットとの遅延量の検出を行う構成でも良い。
【0122】
図19は、遅延量計測の別のフローチャート例を示している。この例では、まず、メインビームの再生パワーで光源110を発光させる(S41)。次に、フォーカスサーボおよびトラッキングサーボをONにし、光記録媒体1に光スポットを追従させる(S42)。続いて、光源110の出射パワーをメインビームの記録パワーに設定し、メインスポットで遅延量検出用データを記録する(S43)。その後、メインビームのパワーを再生パワーに戻す(S44)。このとき、記録されるデータは、メインスポットとサブスポットとの間の遅延量よりも十分に短い時間に記録が終了する量に設定される。続いて、サブビームを用いて遅延量検出データを再生する(S45)。そして、メイン受光素子の出力とサブ受光素子の出力との間の遅延量をシステムコントローラ805の遅延検出部404によって検出・計測する(S46)。次に、遅延検出部404は、不揮発性メモリ506に予め記録されたテーブルまたは関数を参照し、遅延回路402に指示する遅延量を決定する(S47)。遅延量計測の精度を向上させるためには、複数回計測をしても良い。本フローを実施することで、記録と同時に遅延量を計測でき、記録したデータを再生するタイミングでは記録動作を止めて再生信号に影響しないように制御するため、遅延量計測の精度を良好に保つことができる。この例では、前もって不揮発メモリ506に保存された測定回数を示すデータを用いてシステムコントローラ805が当該回数だけ計測を実施するように構成してもよい。DRAWを実施する際に、計測された遅延量を用いることで品質の良い再生信号を検出可能である。
【0123】
(実施の形態3)
次に、本発明の第3の実施の形態における光ピックアップおよび光記録再生装置を説明する。本実施形態における光ピックアップおよび光記録再生装置は、複数の記録層を有する光記録媒体に対してDRAWを行う際の課題を解決することができる。本実施形態の光記録再生装置の全体構成は、図1に示すものと同様であるが、光ピックアップの構成およびシステムコントローラが実行する処理が実施形態1のものと異なる。以下、実施形態1と異なる点を中心に説明し、共通する事項についての説明は省略する。
【0124】
図20は、本実施形態における光記録再生装置における光ピックアップ901の光学構成を示す図である。図20に示すように、光ピックアップ901の光学系は、同じ波長のレーザーを2個搭載した2LD光源210、ビームスプリッタ203、波長板204、集光レンズ205、ビームスプリッタ206、対物レンズ207、検出レンズ202、および光検出器201を有している。
【0125】
図21は、本実施形態における2LD光源210の構成を模式的に示す図である。図21に示すように、2LD光源210は、記録用のメインビームを出射するメインレーザー210aおよび再生用のサブビームを出射するサブレーザー210bを有している。2個のレーザー210a、210bは、発光方向(同図において上下)に対して垂直方向(同図において左右)にずれて配置されている。それぞれのレーザーから出射した光は、対物レンズ207によって集光されて複数の記録層を持つ光記録媒体208の1つの記録層の同一トラック上に集光され、少なくとも2つの集光スポット(メインスポットとサブスポット)を形成する。
【0126】
図22は、光記録媒体208の1つの記録層上に集光された光スポットの配置例を表す図である。メインスポット300aとサブスポット300bは、同一トラック上に配置されるように光ピックアップ901の光学系が調整されており、記録再生動作中、光記録媒体208に対して矢印aの方向に各スポットが走査する。光源210から出射された各光ビームは、光記録媒体208で反射され、光学系を経て光検出器201に入射し、そこで各々光量検出される。
【0127】
図22において、メインスポット300aは記録用スポットであり、記録媒体208のトラックにデータの記録を行う。サブスポット300bは、記録スポットよりも光強度が十分低く、トラックに記録されたデータの再生を行うための再生用スポットである。
【0128】
図23は、2LD光源210に搭載された2個のレーザーの発光波形の例を表す図である。図23(a)はメインビームの発光波形、図23(b)はサブビームの発光波形を示している。本構成では、記録用のメインビームおよび再生用のサブビームは、それぞれ別々に発光することが可能なため、メインビームを用いて記録している最中(記録変調波形で発光中)においても、サブビームは一定の再生パワーで発光させ得る。このように、本実施形態では、光変調器220は、メインレーザー210aおよびサブレーザー210bを個別に駆動することが可能である。
【0129】
図24は、光検出器201における受光素子の配置を示す図である。同図において受光領域が4分割された受光素子213は、光記録媒体208の記録層上に形成されたメインスポット300aからの反射光を受光するように配置されている。図20に示す検出レンズ202によって与えられる非点収差量がデフォーカスにより変化することを利用してフォーカスエラー信号の検出が行われるとともに、プッシュプル法によるトラッキングエラー信号の検出が行われる。一方、受光素子214は、光記録媒体208の記録層上に形成されたサブスポット300bからの反射光を受光するように配置されている。
【0130】
前述のように、本実施形態における光記録媒体208は、複数の記録層を有している。そのため、光検出器213、214は、記録または再生中の記録層とは別の記録層(以下、「他層」と呼ぶ。)からの反射光(以下、「他層迷光」と呼ぶ。)も併せて受光する。サブスポット300bからの反射光を受光する光検出器214には、記録または再生の対象となる記録層からのサブビームの反射光に加え、他層からのサブビームの反射光(サブ他層迷光)、さらには他層からのメインビームの反射光(メイン他層迷光)が入射する。記録動作中のメインビームの発光パワーは、再生ビームの発光パワーに比べ、例えば10倍の強度である。そのため、記録対象の記録層からのサブビームの反射光に対するメインビームの他層迷光の影響は相対的に大きく、無視できない。一方、サブビームの他層迷光は、影響が小さいため、無視できる。
【0131】
よって、本実施形態では、メインビームの他層迷光のみを受光する受光素子215を用意する。受光素子214の出力から受光素子215の出力を減算することにより、前者からメインビームの多層迷光の成分を除去することができる。このため、受光素子215は、メインスポットからの反射光を検出する光検出器213を中心として、光検出器214と点対称の位置に設置されることが望ましい。
【0132】
図25は、複数の記録層を有している光記録媒体208にDRAWを実施している際中の各種信号波形を示している。図25(a)は光源210に与えられる記録変調信号(LD駆動信号)、図25(b)はメインスポット300aからの反射光の強度を示す信号(受光素子213の出力)、図25(c)はサブスポット300bからの反射光の強度を示す信号(受光素子214の出力)、図25(d)はサブビームの多層迷光の強度を示す信号(受光素子215の出力)を示している。受光素子214は、前述のように、再生中の記録層からのサブビームの反射光と、メインビームの他層迷光とを同時に受光している。受光素子215はメインビームの他層迷光のみを受光しており、その光量は、受光素子214が受光する他層迷光の光量とほぼ等しい。よって、図25(e)に示すように、受光素子214から出力されるサブビームの再生信号(c)から、他層迷光検出用受光素子215から出力される信号(d)を減算すれば、品質の良い再生信号を検出可能である。
【0133】
本実施形態では、図24に示す構成の代わりに、図26に示すように、メインスポット用受光素子213とサブスポット用受光素子214のみを用意してもよい。このような構成でも、事前にテスト記録によってメインビームの多層迷光の強度を計測しておけば、サブビーム用受光素子214からメインビームの多層迷光の成分を除去することが可能である。
【0134】
図27は、そのような構成における光検出器201の演算回路の構成例を示す図である。図示されるように、サブ受光素子214の出力から、メイン受光素子213の出力に係数Kを乗じた信号を減じることにより、メイン多層迷光の影響が除去された再生信号が得られる。以下、その手順の例を説明する。
【0135】
図28は、本構成例におけるサブビームの信号から、メインビームの他層迷光の影響を除去するための手順を示すフローチャートを示している。まず、DRAWの実施に先立ち、サブビーム用レーザー210bを発光させない状態でメインビーム用レーザー210aのみを記録パワーで発光させる(S1)。次に、フォーカスサーボおよびトラッキングサーボをONにして光記録媒体208に対物レンズを追従させる(S2)。その状態で、テスト記録を実施する(S3)。テスト記録するデータはどのようなデータでもよい。テスト記録中、受光素子213は、記録中の記録層からのメインビームの反射光とメインビームの他層迷光とを受光し、受光素子214は、メインビームの他層迷光のみを受光する。その際の受光素子213、214の出力を検出し、図27に示す再生信号がほぼ0(ゼロ)になるように、受光素子213からの出力の増幅率(K値)を調整する(S4)。調整が完了した後、テスト記録を終了する(S5)。このフロー終了後、サブビーム用レーザー210aとメインビーム用レーザー210bとを同時に発光させ、DRAWを実施すれば、メインビームの他層迷光の影響を除去した品質の良い再生信号を検出可能である。
【0136】
(実施の形態4)
次に、本発明の第4の実施形態を説明する。本実施形態は、複数の記録層を有する光記録媒体に対してDRAWを実行する場合に、記録変調波形と再生信号との間の遅延時間が変化しても、良好な予測波形を得ることにより、安定的な比較・相関動作を可能とする光ピックアップおよび光記録再生装置に関している。本実施形態における光ピックアップの構成は、実施形態3と同様であるが、システムコントローラ905で行われる処理が実施形態3のものとは異なっている。以下、実施形態3と異なる点を中心に説明し、共通する事項の説明は省略する。
【0137】
本実施の形態では、1つの光源から回折格子等の光分岐素子を用いて光スポットを複数生成する実施の形態1と異なり、メインスポット用レーザー210aとサブスポット用レーザー210bとが独立しているため、光源210の温度特性による波長変動の影響に起因してメインスポット300aとサブスポット300bとの距離が変化する問題は発生しない。しかし、DRAWの信頼性を高めるためには、メインスポット300aとサブスポット300bとの間のデータ再生の遅延量を、DRAWを実施する前に実測することが望ましい。そこで、本実施形態では、DRAWを実施する前に、メインビームによる信号とサブビームによる信号との間の遅延量を計測し、計測結果に基づく比較・相関動作を行うようにシステムコントローラ905が構成されている。
【0138】
図29は、本実施形態におけるシステムコントローラ905内の遅延計測のための機能ブロックを示す図である。システムコントローラ905は、イコライザ805および遅延回路802によってメイン受光素子213から予測再生波形を生成する波形予測部810と、サブ受光素子214から得られる実際の再生波形と予測再生波形とを比較する比較部803と、波形予測部810に含まれる遅延回路802における遅延時間を調整する遅延検出部804とを有している。
【0139】
以下、本実施形態における波形予測部810および遅延検出部804の処理について説明する。図30は、遅延量計測のフローチャートを示している。光記録媒体208には、前もって遅延量検出用データを記録しておく。記録しておくデータは、例えばアドレス情報のように、光記録媒体208を作成する時に形成されるデータであってもよいし、本実施形態の光記録再生装置によって先立って記録されたデータでもかまわない。まず、メインビームおよびサブビームを、いずれも再生パワーで発光させる(S11)。次に、フォーカスサーボおよびトラッキングサーボをONにし、光記録媒体208に光スポットを追従させる(S12)。続いて、遅延検出用記録データが保存されている箇所をメインビームおよびサブビームで走査することにより、遅延検出用記録データをそれぞれ再生する(S13)。その後、メインスポット用受光素子213の出力とサブスポット用受光素子214の出力との間の遅延量をシステムコントローラ905の遅延検出部804によって検出・計測する(S14)。次に、遅延検出部804は、不揮発性メモリ506に予め記録されたテーブルまたは関数を参照し、遅延回路802に指示する遅延量を決定する(S15)。システムコントローラ905は、DRAWを実施する際に、この遅延量を用いることにより、品質の良い再生信号を検出可能である。
【0140】
なお、遅延量検出用データは、例えば光ディスクにおけるリードインエリアのように、光記録媒体208において最初に読み書きされるエリアに設定されることが望ましい。さらには、定期的に遅延量検出が可能なように、光記録媒体208上の記録再生領域に遅延量検出用データが複数設定されることが望ましい。あるいは、本実施形態の光ピックアップ自身を用いて遅延検出用データをあらかじめ記録しておき、メインスポットとサブスポットとの遅延量の検出を行う構成でも良い。
【0141】
図31は、遅延量計測の他の手順の例を示すフローチャートの例を示している。この例では、まず、メインビームとサブビームを、いずれも再生パワーで発光させる(S21)。次に、フォーカスサーボおよびトラッキングサーボをONにし、光記録媒体208に光スポットを追従させる(S22)。続いて、メインレーザー210aのパワーを記録パワーに設定し、メインスポットで遅延量検出用データを記録する(S23)。その後、メインビームのパワーを再生パワーに戻す(S24)。このとき、記録されるデータは、メインスポットとサブスポットとの間の遅延量より十分に短い時間に記録が終了する量に設定される。続いて、サブビームを用いて遅延量検出データを再生する(S25)。そして、メインスポット用受光素子213の出力とサブスポット用受光素子214の出力との間の遅延量をシステムコントローラ505の遅延検出部804によって検出・計測する(S26)。遅延検出部804は、計測した結果に基づいて、遅延量を決定する(S27)。遅延量計測の精度を向上させるためには複数回計測をしても良い。前もって不揮発メモリ506に保存された測定回数のデータを用いてシステムコントローラ905が計測を実施する。本フローを実施することで、記録と同時に遅延量を計測でき、記録したデータを再生するタイミングでは記録動作を止めて再生信号に影響しないように制御するため、遅延量計測の精度を良好に保つことができる。DRAWを実施する際にこの遅延量を用いることで品質の良い再生信号を検出可能である。
【0142】
以上のように、本実施形態によれば、複数の記録層を有する光記録媒体208に2つの光源を用いてDRAWを実行する際に、メインビームの検出信号とサブビームの検出信号との間の遅延量を検出する。これにより、再生光の検出精度を高めることができる。
【0143】
(実施の形態5)
次に、本発明の第5の実施形態を説明する。本実施形態における光記録再生装置は、光記録媒体として光テープを用いる光データストリーマ装置である。光データストリーマ装置は、大量のデータのバックアップに使用され得る。光データストリーマ装置は、転送レートを上げ、短時間でバックアップを行うため、複数の光ピックアップを具備している。各光ピックアップは、上記の実施形態1〜4のいずれかに記載した構成および機能を有している。
【0144】
図32Aは、光テープ150の一部を模式的に拡大して示す斜視図である。光テープ150は、例えばベースフィルム704a、ベースフィルム704aの裏面に張り付けられたバックコート層704b、およびベースフィルム704aに支持されたインプリント層704cを含む。インプリント層704cの上面には、ランド704dおよびグルーブ704eが形成されている。図面には記載されていないが、インプリント層704cの上面を覆うように反射膜および記録材料膜が積層されている。光テープ150は、長尺方向Lに沿って延びており、例えば数百mの長さを有している。幅Wは、例えば数mmから数cmの範囲内に設定され得る。厚さは、数μmから数十μm程度であり得る。
【0145】
図32Aのスケールは、現実の光テープ150のサイズを忠実に反映してない。実際の光テープ150には、数百本またはそれ以上の本数のランド704dおよびグルーブ704eが形成され得る。ある実施形態では、データがランド704dおよびグルーブ704eの一方に記録される。データが記録されるランド704dまたはグルーブ704eを「トラック」と称する。トラックのピッチは、例えば0.2〜0.4μmの範囲に設定され得る。
【0146】
図32Bは、光テープ150の一部を模式的に示す平面図である。長尺方向Lに沿ってN(Nは典型的には100以上の整数)本のトラック0〜トラックNが形成されている。図32Bに示されるトラックの幾つかには矢印が記載されている。この矢印は、データの記録方向を模式的に示している。1つの光テープ150には、異なる方向にデータが記録され得る。
【0147】
図33Aは、本実施形態による光データストリーマ装置の構成例を示す図である。図33Bは、図33AのB−B線断面図である。本実施形態では、図33Aの上側が鉛直上方であり、下側が鉛直下方に対応している。このため、図33Bは、この光データストリーマ装置を鉛直上方から見た内部構成の配置例を示している。
【0148】
図33Aおよび図33Bは、光テープ150を収容するテープカートリッジ701が装填された状態を示している。テープカートリッジ701は着脱可能であり、図示される光データストリーマ装置には、同じ形状を有する複数のテープカートリッジ701から選択された1つが装填され得る。
【0149】
本実施形態の光データストリーマ装置は、筐体711と、筐体711の内部に設けられたシャーシ710と、光テープ150にデータを書き込むことができるように配置された複数のピックアップ部品60と、放熱板709とを備えている。複数のピックアップ部品60は光ピックアップアセンブリ600が備える位置決め機構によって位置決めされている。
【0150】
より詳細には、この光データストリーマ装置は、光テープ150を走行させるためのモータ706、707、ガイドポスト703、および巻取リール702を備えている。モータ707は、巻取リール702と機械的に結合しており、巻取リール702を回転させる。モータ706は、装填されたテープカートリッジ701の回転軸と機械的に結合し、テープカートリッジ701の外部に引き出されたテープ150をテープカートリッジ701内に巻き戻すように動作する。モータ706、707により、テープ150は、矢印で示す2つの方向のいずれにも走行することができる。
【0151】
光ピックアップアセンブリ600は、光テープ150の走行方向に沿って配列された複数のピックアップ部品60を有している。本実施形態における光ピックアップアセンブリ600は、上段および下段の各々に複数のピックアップ部品60を有している。筐体711内には、送風ファン708が設けられており、送風ファン708はモータ707に機械的に結合している。モータ707の回転に応じて送風ファン708も回転する。
【0152】
各ピックアップ部品60は、1個または複数の光ピックアップを内蔵する。個々の光ピックアップの構成については、実施形態1〜4のいずれかの構成を有している。ピックアップ部品60は、光ピックアップ用フレキシブル回路基板(FPC)712に接続されている。この光データストリーマ装置は、このフレキシブル回路基板712に接続された不図示の回路基板を備えており、この回路基板には、ピックアップ部品60やモータ706、707を制御するための回路要素が設けられている。なお、フレキシブル回路基板712には、通常であればピックアップ部品60および他の回路基板上に搭載されるような回路の一部が実装されていてもよい。
【0153】
次に図34を参照して、本実施形態における光データストリーマ装置の回路構成例を説明する。
【0154】
図示されている光データストリーマ装置は、光ピックアップアセンブリ600およびモータ706、707と電気的に接続された回路ブロックを備えている。
【0155】
図34に示す構成例では、光ピックアップアセンブリ600の出力がフロントエンド信号処理部1306を介してエンコーダ/デコーダ1308に送られる。エンコーダ/デコーダ1308は、データ読み出し時、光ピックアップアセンブリ600によって得られる信号に基づいて光テープ150に記録されているデータを復号する。データ書き込み時、エンコーダ/デコーダ1308はデータを符号化し、光テープ150に書き込むべき信号を生成し、光ピックアップアセンブリ600に送出する。
【0156】
フロントエンド信号処理部1306は、光ピックアップアセンブリ600の出力に基づいて再生信号を生成する一方、フォーカス誤差信号FEやトラッキング誤差信号TEを生成する。フォーカス誤差信号FEやトラッキング誤差信号TEは、サーボ制御部1310に送出される。
【0157】
サーボ制御部1310は、ドライバアンプ1304を介してモータ706、707を制御する一方、光ピックアップアセンブリ600内の各レンズアクチュエータを介して対物レンズの位置を制御する。エンコーダ/デコーダ1308およびサーボ制御部1310などの構成要素は、CPU1309によって制御される。図34に示される各ブロックは、例えば集積回路素子およびメモリなどの電子部品を回路基板上に搭載して実現することができる。
【0158】
本実施形態におけるフロントエンド信号処理部1306、エンコーダ/デコーダ1308、サーボ制御部1310、ドライバアンプ1304、およびCPU1309は、協働して実施形態1〜4におけるシステムコントローラに相当する機能を実現する。実施形態1〜4における再生信号の生成、波形比較、遅延時間の制御といった処理は、フロントエンド信号処理部1306が行う。
【0159】
本実施形態で使用され得る光テープ150の情報記録層の幅は、例えば約10mmである。この場合、例えば24個の光ピックアップによって、走行中の光テープ150の情報記録層の全幅に渡って、データの記録および再生が行われ得る。
【0160】
テープカートリッジ701が光データストリーマ装置に装填される前、光テープ150はテープカートリッジ701に、図示しないリールに巻かれた状態で収納されている。テープカートリッジ701が光データストリーマ装置に装填されると、光テープ150は複数のテープガイドポスト703に案内されて引き出され、巻取リール702に巻き取られる。各ピックアップ部品60は光テープ150に対し所定の位置に固定され、光テープ150に対して情報の記録再生を行う。本実施形態における光ピックアップの個数は24個である。このため、最大24個の光ピックアップによって同時にデータの記録再生を行うことが可能である。なお、1つの光データストリーマ装置が備える光ピックアップの個数は、24個に限定されず、この数よりも少なくても多くてもよい。
【0161】
送りモータ707は巻取リール702を回転駆動し、光テープ150を順方向に走行させるとともに、送風ファン708を駆動する。逆送りモータ706はテープカートリッジ701内の図示しないリールを回転駆動し、光テープ150を逆方向に駆動する。この際にも、光テープ150により巻取リール702も駆動されるため送風ファン708も駆動される。ピックアップ部品60は放熱板709と熱的に結合され、その発生する熱は放熱板709に伝達される。
【0162】
記録時または再生時、光テープ150は順送りモータ707、または逆送りモータ706により、順方向または逆方向に走行し、この間、各光ピックアップは光テープ150に対し同時に記録または再生を行うことができる。
【0163】
以上の構成により、本実施形態の光データストリーマ装置は、複数の光ピックアップを用いることにより、光テープ150への記録および検証動作を並列的に行うことができる。さらに、実施形態1〜4における光ピックアップおよび信号処理を組み合わせることにより、ベリファイに用いる信号の品質を向上させることができる。これにより、記録再生に要する時間を短縮しながら、精度の高いDRAWを実現できる、高品質な大容量情報記録システムを実現できる。
【0164】
以上、本発明の実施形態に係る光記録再生装置について、実施の形態1から5に基づいて説明したが、本発明は、これらの実施の形態に限定されるものではない。本発明の主旨を逸脱しない範囲でこれらの実施の形態に各種変形を施して得られる形態や、各実施の形態における構成要素を任意に組み合わせることで実現される形態も、本発明に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0165】
本発明の実施形態にかかる光記録再生装置は、これを複数個含む大容量情報記憶システム(たとえば光テープや光ディスクを用いたデータファイルシステム)にて光記録媒体の異なる領域、または異なる光記録媒体に同時に情報を正確に記録するのに用いられ得る。簡易な構成でコストメリットを有する記録再生装置として有用である。
【符号の説明】
【0166】
101、201 光検出器
102、202 検出レンズ
103 ビームスプリッタ
104、204 1/4波長板
105、205 集光レンズ
106、206 ビームスプリッタ
107、207 対物レンズ
1、108、208 光記録媒体
110 光源
111、211 回折格子
112、212 前光検出器
121、131、141、151、161、213 メインスポット用受光素子
122、132、142、152、162 第1のサブスポット用受光素子
123、143、153、163 第2のサブスポット用受光素子
124 除算器
134、154 加算器
135、145 差動アンプ
150 光テープ
152a、152b、153a、153b サブ受光素子の受光領域
164 再生信号検出用減算器
154 再生信号検出用加算機
155 遅延信号検出用加減算器
210 2LD光源
210a メインスポット用レーザー
210b サブスポット用レーザー
214 サブスポット用受光素子
215 他層迷光検出用受光素子
500、800 光学ドライブ装置
501 光ピックアップ
502 移送モータ
503 スピンドルモータ
505、805、905 システムコントローラ
506 不揮発性メモリ
401 記録変調除去部
402、802 遅延回路
403、803 比較部
404、804 遅延検出部
405、805 イコライザ
410、501、810 波形予測部
60 光ピックアップ
600 光ピックアップアセンブリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光記録媒体のトラック上にデータを記録しながら、前記トラック上に記録されたデータを読み出すことができる光記録再生装置であって、
光源と、
記録すべきデータに応じて前記光源の出射パワーを変調させる光変調器と、
前記光源から出射された光ビームを、記録用ビームおよび再生用ビームを含む複数の光ビームに分離する光分岐素子と、
記録動作中、前記光記録媒体の同一箇所を前記再生用ビームに先行して前記記録用ビームで走査するように、前記記録用ビームおよび前記再生用ビームを前記光記録媒体の同一トラック上に集束するように構成された光学系と、
前記光記録媒体から反射された前記再生用ビームを検出して電気信号を出力する受光素子を有する光検出器と、
前記受光素子によって検出された信号を、前記光源から出射された前記光ビームの一部を検出することによって得られる前記光ビームの記録変調成分を示す信号で除算することによって再生信号を生成する除算器と、
を備える光記録再生装置。
【請求項2】
前記光分岐素子は、回折格子である、請求項1に記載の光記録再生装置。
【請求項3】
前記光源から出射された前記光ビームの一部を検出することによって前記光ビームの前記記録変調成分を示す信号を出力する前光検出器をさらに備え、
前記除算器は、前記受光素子の出力を、前記前光検出器の出力で除算することによって前記再生信号を生成する、
請求項1に記載の光記録再生装置。
【請求項4】
前記受光素子を第1の受光素子とするとき、
前記光検出器は、前記光分岐素子によって分岐され、前記光記録媒体によって反射された前記光ビームの一部を検出することによって前記光ビームの前記記録変調成分を示す信号を出力する第2の受光素子をさらに備え、
前記除算器は、前記第1の受光素子の出力を、前記第2の受光素子の出力で除算することによって前記再生信号を生成する、
請求項1に記載の光記録再生装置。
【請求項5】
前記再生用ビームを第1の再生用ビームとし、前記受光素子を第1の受光素子とするとき、
前記光分岐素子は、前記光源から出射された前記光ビームを、前記記録用ビーム、前記第1の再生用ビーム、および第2の再生用ビームを含む複数の光ビームに分離し、
前記光学系は、記録動作中、前記光記録媒体の同一箇所を、前記第1の再生用ビームに先行して前記記録用ビームで走査し、前記記録用ビームに先行して前記第2の再生用ビームで走査するように、前記記録用ビーム、前記第1の再生用ビーム、および前記第2の再生用ビームを、前記光記録媒体の同一トラック上に集束するように構成され、
前記光検出器は、前記光記録媒体から反射された前記第2の再生用ビームを検出して電気信号を出力する第2の受光素子を有し、
前記除算器は、前記第1の受光素子の出力を、前記第2の受光素子の出力で除算することによって前記再生信号を生成する、
請求項1に記載の光記録再生装置。
【請求項6】
光記録媒体のトラック上にデータを記録しながら、前記トラック上に記録されたデータを読み出すことができる光記録再生装置であって、
光源と、
記録すべきデータに応じて前記光源の出射パワーを変調させる記録変調信号を前記光源に入力する光変調器と、
前記光源から出射された光ビームを、記録用ビームおよび再生用ビームを含む複数の光ビームに分離する光分岐素子と、
記録動作中、前記光記録媒体の同一箇所を前記再生用ビームに先行して前記記録用ビームで走査するように、前記記録用ビームおよび前記再生用ビームを前記光記録媒体の同一トラック上に集束するように構成された光学系と、
前記光記録媒体から反射された前記再生用ビームを検出して電気信号を出力する受光素子を有する光検出器と、
前記記録変調信号の波形、または前記記録変調信号によって変調された前記光ビームの記録変調成分を示す波形を遅延させるステップを含む処理によって予測再生波形を生成する波形予測部と、
前記受光素子の出力に基づく波形を、前記予測再生波形と比較することによって前記データが正しく記録されたか否かを検証する比較部と、
前記記録変調信号の波形または前記記録変調信号によって変調された前記光ビームの記録変調成分を示す波形に対する前記受光素子から出力される信号の波形の遅延時間を検出し、検出した前記遅延時間に基づいて前記波形予測部による遅延量を制御する遅延検出部と、
を備える光記録再生装置。
【請求項7】
前記波形予測部は、前記記録変調信号または前記記録変調成分を示す信号のレベルを変化させて出力するイコライザと、前記イコライザの出力を遅延させる遅延回路とを有し、
前記遅延検出部は、検出した前記遅延時間に基づいて前記遅延回路による遅延量を変化させる、
請求項6に記載の光記録再生装置。
【請求項8】
温度センサーをさらに備え、
前記遅延検出部は、前記温度センサーの出力に基づいて、前記遅延時間を検出する、
請求項6に記載の光記録再生装置。
【請求項9】
前記受光素子は、前記光記録媒体のトラック方向に対応する方向に並んで配置された少なくとも2つの受光領域に分割されており、
前記遅延検出部は、前記2つの受光領域の差動出力に基づいて、前記遅延時間を検出する、
請求項6に記載の光記録再生装置。
【請求項10】
前記受光素子を第1の受光素子とするとき、
前記光検出器は、前記光分岐素子によって分岐され、前記光記録媒体によって反射された前記光ビームの一部を検出することによって前記光ビームの前記記録変調成分を示す信号を出力する第2の受光素子であって、前記光記録媒体のトラック方向に対応する方向に並んで配置された少なくとも2つの受光領域に分割された第2の受光素子をさらに有し、
前記遅延検出部は、前記2つの受光領域の差動出力に基づいて、前記遅延時間を検出する、
請求項6に記載の光記録再生装置。
【請求項11】
前記再生用ビームを第1の再生用ビームとし、前記受光素子を第1の受光素子とするとき、
前記光分岐素子は、前記光源から出射された前記光ビームを、前記記録用ビーム、前記第1の再生用ビーム、および第2の再生用ビームを含む複数の光ビームに分離し、
前記光学系は、記録動作中、前記光記録媒体の同一箇所を、前記第1の再生用ビームに先行して前記記録用ビームで走査し、前記記録用ビームに先行して前記第2の再生用ビームで走査するように、前記記録用ビーム、前記第1の再生用ビーム、および前記第2の再生用ビームを、前記光記録媒体の同一トラック上に集束するように構成され、
前記光検出器は、前記光記録媒体から反射された前記第2の再生用ビームを検出して電気信号を出力する第2の受光素子と、前記光記録媒体から反射された前記記録用ビームを検出して電気信号を出力する第3の受光素子とをさらに有し、
前記第1の受光素子は、少なくとも第1の受光領域および第2の受光領域を含む2つの受光領域に分割されており、
前記第2の受光素子は、少なくとも第3の受光領域および第4の受光領域を含む2つの受光領域に分割されており、
前記第1の受光領域、前記第2の受光領域、前記第3の受光素子、前記第3の受光領域、および前記第4の受光領域は、この順で前記光記録媒体のトラック方向に対応する方向に配列されており、
前記遅延検出部は、前記第1および第4の受光領域の加算信号と、前記第2および第3の受光領域の加算信号との間の差動信号に基づいて、前記遅延時間を検出する、
請求項6に記載の光記録再生装置。
【請求項12】
前記光記録媒体に遅延量検出のためのテストデータが記録されている場合において、
前記遅延検出部は、前記テストデータが記録されている箇所から反射された前記記録用ビームの信号と、前記テストデータが記録されている前記箇所から反射された前記再生用ビームの信号との時間差に基づいて、前記遅延時間を検出する、
請求項6に記載の光記録再生装置。
【請求項13】
前記遅延検出部による前記遅延時間の検出の前に、前記記録用ビームによって前記光記録媒体に前記テストデータを記録させるように前記光変調器を制御する制御部をさらに備えている、請求項12に記載の光記録再生装置。
【請求項14】
前記遅延検出部による前記遅延時間の検出の際、前記テストデータを前記再生用ビームで照射するタイミングでは、前記記録用ビームを記録用パワーで出射しないように前記光変調器を制御する制御部をさらに備えている、請求項12に記載の光記録再生装置。
【請求項15】
複数の記録層を有する光記録媒体のトラック上にデータを記録しながら、前記トラック上に記録されたデータを読み出すことができる光記録再生装置であって、
記録用ビームを出射する第1の光源と、
再生用ビームを出射する第2の光源と、
記録すべきデータに応じて前記第1の光源の出射パワーを変調させる光変調器と、
記録動作中、前記光記録媒体の同一箇所を前記再生用ビームに先行して前記記録用ビームで走査するように、前記記録用ビームおよび前記再生用ビームを前記光記録媒体の同一トラック上に集束するように構成された光学系と、
前記光記録媒体から反射された前記再生用ビームを検出して電気信号を出力する受光素子を有する光検出器と、
前記受光素子から出力される信号を、前記第1の光源から出射され記録対象の記録層とは異なる記録層によって反射された前記記録用ビームの一部を検出することによって得られる信号に基づく信号で減算することにより、前記受光素子の出力から、前記記録対象の記録層とは異なる記録層からの迷光による変調成分を低減させる演算器と、
を備える光記録再生装置。
【請求項16】
前記受光素子を第1の受光素子とするとき、
前記光検出器は、記録対象の記録層とは異なる記録層によって反射された前記記録用ビームの一部を受け、前記記録対象の記録層から反射された前記再生用ビームを受けないように配置された第2の受光素子をさらに有し、
前記演算器は、前記第1の受光素子から出力される信号を、前記第2の受光素子から出力される信号で減算する、
請求項15に記載の光記録再生装置。
【請求項17】
前記受光素子を第1の受光素子と呼ぶとき、
前記光検出器は、前記光記録媒体から反射された前記記録用ビームを検出して電気信号を出力する第2の受光素子をさらに有し、
前記演算器は、前記第1の受光素子から出力される信号を、前記第2の受光素子から出力される信号のレベルを調整した信号で減算する、
請求項15に記載の光記録再生装置。
【請求項18】
複数の記録層を有する光記録媒体のトラック上にデータを記録しながら、前記トラック上に記録されたデータを読み出すことができる光記録再生装置であって、
記録用ビームを出射する第1の光源と、
再生用ビームを出射する第2の光源と、
記録すべきデータに応じて前記第1の光源の出射パワーを変調させる記録変調信号を前記第1の光源に入力する光変調器と、
記録動作中、前記光記録媒体の同一箇所を前記再生用ビームに先行して前記記録用ビームで走査するように、前記記録用ビームおよび前記再生用ビームを前記光記録媒体の同一トラック上に集束するように構成された光学系と、
前記光記録媒体から反射された前記再生用ビームを検出して電気信号を出力する受光素子を有する光検出器と、
前記記録変調信号の波形、または前記記録変調信号によって変調された前記光ビームの記録変調成分を示す波形を遅延させるステップを含む処理によって予測再生波形を生成する波形予測部と、
前記受光素子の出力に基づく波形を、前記予測再生波形と比較することによって前記データが正しく記録されたか否かを検証する比較部と、
前記記録変調信号の波形または前記記録変調信号によって変調された前記光ビームの記録変調成分を示す波形に対する前記受光素子から出力される信号の波形の遅延時間を検出し、検出した前記遅延時間に基づいて前記波形予測部による遅延量を制御する遅延検出部と、
を備える光記録再生装置。
【請求項19】
前記波形予測部は、前記記録変調信号または前記記録変調成分を示す信号のレベルを変化させて出力するイコライザと、前記イコライザの出力を遅延させる遅延回路とを有し、
前記遅延検出部は、検出した前記遅延時間に基づいて前記遅延回路による遅延量を変化させる、
請求項18に記載の光記録再生装置。
【請求項20】
前記光記録媒体に遅延量検出のためのテストデータが記録されている場合において、
前記遅延検出部は、前記テストデータが記録されている箇所から反射された前記記録用ビームの信号と、前記テストデータが記録されている前記箇所から反射された前記再生用ビームの信号との時間差に基づいて、前記遅延時間を検出する、
請求項18に記載の光記録再生装置。
【請求項21】
前記遅延検出部による前記遅延時間の検出の前に、前記テストデータは、前記記録用ビームによって前記光記録媒体に記録される、請求項18に記載の光記録再生装置。
【請求項22】
前記遅延検出部による前記遅延時間の検出の際、前記テストデータを前記再生用ビームで照射するタイミングでは、前記記録用ビームを記録用パワーで出射しないように前記光変調器を制御する制御部をさらに備えている、請求項18に記載の光記録再生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32A】
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【図32B】
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【図33A】
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【図33B】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【公開番号】特開2013−93088(P2013−93088A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−95007(P2012−95007)
【出願日】平成24年4月18日(2012.4.18)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】