説明

光記録媒体とその製造方法

【課題】 高温・高湿下での保存信頼性が高く、高温動作が安定し、機械特性良好で、生産性の高い、高速・高密度の光記録が可能な光記録媒体の提供。
【解決手段】 基板上に少なくとも下部保護層、光記録層、上部保護層、中間層、Agを95原子%以上含有する光反射層を有し、該中間層が、Ti、Nb、Taから選ばれる少なくとも1種の元素の炭化物を含むか、又はTi、Nb、Taから選ばれる少なくとも1種の元素(M)と、炭素(C)と、酸素(O)を含み、最小記録マークの記録時間が34ns以下でも記録可能であるか、チャンネルビット長の記録時間が11ns以下でも記録可能であるか、或いは、記録線速度が11m/s以上でも記録可能である光記録媒体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はレーザー光を照射することにより、情報の記録が可能であるMO、PD、CD−R、CD−RW、DVD−R、DVD−RW、DVD+R、DVD+RW、DVD−RAM、Blu−ray等の高速記録に利用できる光記録媒体に関する。特に、DVD−ROMと同等以上の大容量の高密度な光記録媒体に関する。更には、二層以上の多層記録層を有する超大容量の光記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、光記録媒体の基本層構成は一回記録型と書き換え型に分けられる。一回記録型の光記録媒体では、基板/色素記録層/光反射層という層構造を有する。一方、書き換え型の光記録媒体では、基板/下部保護層/光記録層/上部保護層/光反射層という層構造を有する。更に、必要に応じて、下部保護層と光記録層の間、光記録層と上部保護層の間、上部保護層と光反射層の間に中間層が形成される。
これらの光記録媒体では、より多くの情報をより速く記録できるようにするため、更なる記録の高密度化や高線速度化が期待されており、その解決策として、Ag系光反射層の採用が検討されている。
<Ag系光反射層の従来技術>
Agを光記録媒体の光反射層として利用すると、以下のようなメリットが期待される。(1)広い波長領域でのディスク反射率の増大による再生能力の向上
(2)Agの光学特性に起因する信号振幅の増大による再生能力の向上
(3)相変化型光記録媒体の光反射層の場合、より冷却速度の速い層構造によるオーバー
ライト性能の向上
(4)相変化型光記録媒体の光反射層の場合、より冷却速度の速い層構造による記録可能
線速度範囲の拡大
(5)高いスパッタ効率による生産性の向上
(6)スパッタ製膜時間の短縮による熱応力の低減(ディスク機械特性の改善)
これらAgのメリットを確保するためには、Ag固有の物性を効果的に発現させるために、95原子%以上のAgを含有する光反射層を用いることが望ましい。更には、97原子%以上のAgを含有する光反射層を用いることが望ましい。
【0003】
一方、Agを光記録媒体の光反射層として利用する場合には、以下のような課題があった。
(1)高温高湿下で腐食し易い。
(2)硫黄や塩素によって腐食し易い。
(3)下地との膜密着力が小さい。
(4)高温高湿下でAgの結晶粒径が増大する。
(5)結晶粒径が大きくなり易く、高密度記録の際には再生信号のノイズとなる。
(6)生産プロセスの変動に対する光記録媒体の特性への影響が大きい。
Agの腐食を抑制する方法としては、Agの合金化が行われており、AgCu(特許文献1)、AgMg(特許文献2)、AgOM(M:Sb、Pd、Pt)(特許文献3)、AgPdCu(特許文献4)、AgIn、AgV、AgNb(特許文献5)などが知られている。また、特許文献6には、熱伝導率をコントロールするために、AgにTi、V、Fe、Co、Ni、Zn、Zr、Nb、Mo、Rh、Pd、Sn、Sb、Te、Ta、W、Ir、Pt、Pb、Bi、Cを含有させることが開示されている。
【0004】
しかし、これらの材料系を実際に光反射層に用いて、DVD+Rディスク、DVD+RWディスクを作製し、これらの光記録媒体の80℃85%RHでのアーカイバル高温保存信頼性を評価したところ、300時間の保存でエラーの急増が認められ、充分な保存信頼性が得られなかった。
反射層の腐食を抑える手段としては、従来から、反射層表面に紫外線硬化樹脂層を形成することが行われている。例えば、特許文献7には、樹脂のガラス転移温度を45℃以上にすることで、樹脂の吸水による皺が無くなり、Al反射層の腐食を回避できることが開示されている。しかし本発明者等の実験では、上記公報に開示されたガラス転移温度80℃の樹脂を用いても、Ag系光反射層の場合には腐食或いは再生エラーの増大を生じた。
【0005】
<誘電体層の従来技術>
光記録媒体、特に相変化型光記録媒体に用いられる無機保護層(誘電体層)としては、以下に述べるような技術が知られている。
特許文献8には、光記録層の加熱に伴う熱変形或いは蒸発を防止するために、上部保護層として種々の金属又は半金属の酸化物、硫化物、セレン化物、弗化物を用いることが開示されており、上部保護層の機械的強度及び耐候性を確保するためにメタクリル樹脂等の有機物保護層を積層することも開示されている。
特許文献9には、光記録層の拡散防止のための下部保護層・上部保護層形成、光学的エンハンス効果のための光反射層形成による、基板/下部保護層/光記録層/上部保護層/光反射層という相変化型光記録媒体の基本構成が開示されている。また、上部保護層として種々の金属又は半金属の酸化物、硫化物、セレン化物、弗化物、窒化物、或いはCを用い、厚さを1〜50nmとすることが開示されており、更に下部保護層として、上部保護層と同様の材料を用いることも開示されている。
特許文献10には、高感度、長寿命を目的として、上部保護層に種々の金属又は半金属の酸化物、弗化物、窒化物を用いることが開示されている。
特許文献11には、下部保護層にGeOxを用いることが開示されており、光記録層に比べて屈折率を小さくし、光学的干渉効果を利用して感度向上及び基板への熱ダメージ低減を図ることが記載されている。
【0006】
特許文献12には、下部・上部保護層に要求される特性として、1)使用波長領域で透明であること、2)融点が比較的高いこと、3)クラックを生じないことを挙げ、この要求に適した下部・上部保護層として、従来のGeOやSiOに代えて、2000℃程度の耐熱性を確保でき、基板よりも屈折率を大きくして光学干渉効果による吸収率向上を図ることができるZnS、ZnSe、ZnTeを用いることが提案されている。
特許文献13〜14には、下部・上部保護層に要求される特性として、1)使用波長領域で透明であること、2)融点が動作する温度より高いこと、3)機械的強度が高いこと、4)化学的に安定なこと、5)適当な熱定数(熱伝導率、比熱)を持っていることを挙げ、これらの要求を満たす下部保護層・上部保護層として、ZnS、ZnSe、ZnTe等の結晶質カルコゲン化物とSiO、GeO、SnO、In、TeO等のガラス物質の混合物を用いることが提案されており、ガラス物質が20モル%前後で記録パワーが低減し、その結果として熱ダメージが低減することでオーバーライト性能が向上するとしている。
特許文献15には、下部・上部保護層にZnSとSiOx(x=1〜1.8)の混合物を用いることが開示されており、ZnSとSiOの混合物に比べて、熱伝導率の低減による感度の向上、及びSi/SiOの粒界緩和による内部応力低減に基く耐熱衝撃性が改善されオーバーライト性能の向上が図られるとしている。
特許文献16には、記録層の両側の層が、熱伝導率の小さいZrOやSiOの保護層と熱伝導率の大きい保護層の組み合わせである場合にトラッキングノイズ低減に効果的であることが開示されている。
【0007】
特許文献17には、ZnS−SiO系の保護層の80℃95%RHの高温高湿信頼性の改善、及び記録層により近い熱膨張係数とすることによる耐熱性の確保を目的として、ZnS、ZnSe、CdS、CdSe、InS群とTa、CuO、WO、MoO、CeO、La、SiO群の混合物からなる保護層が提案されている。
特許文献18には、高温高湿度信頼性の確保、オーバーライト性能の向上、記録感度の向上を目的として、下部保護層にZnS・SiO(25モル%未満)、上部保護層にZnS・SiO(25モル%以上)を用いることが提案されている。
特許文献19には、オーバーライト特性の向上を目的として、上部保護層にAl、Ta、AlN、Si、ZnS、反射層にAu、Ag、Alを用い、上部保護層と反射層の膜厚最適化による急冷構造が提案されている。
特許文献20には、光記録媒体の急冷構造を実現するために、上部保護層に熱伝導率の大きいBN、AlN、SiCを用いることが提案されている。
特許文献21には、上部保護層に熱伝導率の大きいTa酸化物、Ta窒化物を用い、光反射層に熱伝導率の大きいAgを用いることが提案されている。
特許文献22には、光記録層の両面にSiO、Al、MgOのバリヤ層を形成し、光記録層と下部保護層及び上部保護層との化学反応、合金化による変質を抑制することでオーバーライト性能の向上を図ることが提案されている。
【0008】
以上のように、これまで多くの下部・上部保護層用の材料開発、層構成の開発が行われてきた。その結果、光記録層一層タイプの相変化型光記録媒体の実用的な層構成として、基板/下部保護層/光記録層/上部保護層/光反射層/樹脂層の急冷構造が採用されており、必要に応じて、下部保護層と光記録層の間、光記録層と上部保護層の間、上部保護層と光反射層の間に中間層が設けられている。実用的な各層の厚さは、下部保護層が50〜120nm、記録層が10〜20nm、上部保護層が7〜40nm、光反射層の厚さが120〜200nm、中間層が2〜8nmである。実用化されている各層の材料としては、下部・上部保護層がZnS・SiO(20モル%)、記録層がGeSbTe、AgInSbTe、GeInSbTe、反射層がAlTi、AlTa、Ag、AgPdCu、AgNdCu、中間層がGeN、GeCr、Si、SiC、Ta、Alが知られている。
【0009】
<バリア層(中間層)の従来技術>
一般に、相変化型光記録媒体の下部・上部保護層は、ZnS・SiO(20モル%)膜が用いられている。この材料は、熱膨張係数、光学定数、弾性率が、相変化型光記録媒体に適している。しかし、相変化型光記録媒体の高速記録のためにAg系光反射層を用いる場合、ZnS・SiO上に直接Ag系光反射層を形成すると、AgとZnS・SiOのSとが反応して反射層の腐食を生じることが知られている。
その対策として、特許文献23には、相変化型光記録媒体の保護層中の硫黄原子とAg系光反射層との化学反応を防止するため、Ta、Ni、Co、Cr、Si、W、Vなどの金属、半導体、それらの酸化物、窒化物、炭化物、非晶質カーボンなどを用いた中間層を設けることが開示されており、膜厚は、1〜100nm、好ましくは5〜50nmとすることが記載されている。しかし、金属以外に具体的に例示された物質は、酸化ケイ素、窒化ケイ素、炭化ケイ素、酸化タンタル、酸化セリウム、酸化ランタン、酸化イットリウムであり、実施例はTa(膜厚10〜50nm)のみである。これらのうち、炭化ケイ素(SiC)は本願明細書中で比較例として挙げている物質である上に、本発明で用いるTi、Nb、Taの炭化物や炭素と酸素を含む物質については全く例示されていない。しかも本発明の重要課題であるAg系光反射層と隣接層との密着力の改善に関する記載は見当たらない。
【0010】
更に、本発明者等が、上記例示物質を中間層として相変化型光記録媒体を作製したところ、中間層膜厚10〜50nmでは信号特性の中間層膜厚依存性が大きく、実用的な信号品質は得られなかった。また、温度の昇降速度10℃/時間で、25℃95%RH12時間と40℃95%RH12時間との間での6回のヒートサイクル試験では、Ag系光反射層が中間層から剥離するという問題も発生した。
即ち、本発明者等の検討結果では、中間層の形成により、保護層の硫黄とAgとの反応は抑制されるものの、中間層とAg系光反射層の密着力は充分でなく、両層の膜密着力が高湿度や結露によって低下することが分った。これは、化学的に不活性な中間層を設けて相互拡散を抑制することによりAg系光反射層の腐蝕を抑制した結果、中間層とAg系光反射層の膜密着力、特に湿度による膜密着力の低下を抑えることが出来なくなったためと考えられる。
また、本発明者らは、信号特性を確保するために、上記例示金属又は例示物質を4nm以下の薄膜で利用することを検討したが、Ti、Nb、Taなどの金属ではスパッタ速度が速すぎてしまい膜厚の制御が困難であり生産に向かなかった。一方、Ti酸化物、Nb酸化物、Ta酸化物などでは、スパッタ速度が遅すぎてしまい、生産性がよくなかった。また、Ti酸化物、Nb酸化物、Ta酸化物などの誘電体は、DCスパッタができないため設備コストがかかってしまい、生産に不適であった。更に、Ta及びTa酸化物は材料コストがかかり、市場競争力に劣った。
【0011】
特許文献24には、反射層材料の硫化を防止する目的で、誘電体層と反射層の間に元素α(αはSn、In、Zr、Si、Cr、Al、Ta、V、Nb、Mo、W、Ti、Mg、Geのうち少なくとも1元素)の窒化物、酸化物、炭化物、或いは窒酸化物を含むバリア層を設けることが提案されている。しかしながら、具体的に例示された物質はGe−Cr−Nのみであり、本発明で用いるTi、Nb、Taの炭化物又は炭素と酸素を含む物質が選択的に優れた効果を奏することについては記載も示唆もされていない。しかも本発明の重要課題であるAg系光反射層と隣接層との密着力の改善に関する記載は見当たらない。
特許文献25〜27には、Ag又はAg合金からなる光反射層の硫化防止層、即ち中間層として、GeN、GeCrN、SiCを用いることが開示されている。
また、本出願人の先願に係る特許文献27には、中間層として、種々の金属又は半金属の窒化物、酸化物、炭化物が開示されており、中間層の膜厚は10nmが好ましいと記載されている。しかしながら、本発明者等の検討結果によると、中間層の膜厚が10nmでは厚すぎて、初期信号特性及び95%RH高湿度下での信頼性が充分でなかった。
【0012】
また、特許文献28には、反射放熱層と接触する上部保護層として、AlN、SiNx、SiAlN、TiN、BN、TaN、Al、MgO、SiO、TiO、B、CeO、CaO、Ta、ZnO、In、SnO、WC、MoC、TiC、SiCを用いること、該上部保護層を多層としてもよいこと、上部保護層の合計膜厚を7〜60nm、好ましくは10〜30nmとすることなどが開示されている。同じく本出願人の先願に係る特願2003−356483(特許文献29参照)では、Ag系光反射層とZnS・SiOの間に、Ti、Zr、V、Nb、Ta、Cr、Mo、Wから選ばれる金属の炭化物と酸化物の混合物からなる層を形成することで、Ag系光反射層の腐食を抑制することが開示されており、実際に、2.4倍速のDVD+RWディスクにおける中間層としては効果的であることが確認されている。
しかしながら、4倍速のDVD+RWディスクに、同様の中間層を利用した場合、同様の効果が得られなかった。本発明者らの解析では、記録線速度の増大に伴い、記録層の結晶化処理(初期化)の高速・高パワー初期化が必要になるが、この過酷な初期化条件に耐えるにはAg系光反射層と中間層の膜密着力が不十分であることが分った。また、生産上の各種プロセス変動に対するこれらの膜密着力の変動が大きいためと考えられた。更には、高速記録のために、短時間に高パワーでの記録が行われた結果、光記録媒体の熱ストレスが大きくなり、保存信頼性に影響することが考えられた。
【0013】
また、ZnS・SiO膜とAg又はAg合金光反射膜との間の中間層の製膜条件が、AgとSの反応性に大きく影響することが分った。特にスパッタ製膜中の残存酸素や水蒸気による膜質の劣化に起因するパシベーション能力の低下が問題であり、中間層製膜時の残存酸素分圧が大きいと、Ag又はAg合金光反射膜を腐食することが分った。このように、中間層のパシベーション能力は、その製膜条件に左右されてしまい、製造プロセスの厳格な管理が必要であるが、現実には完璧な管理は容易ではなかった。
更には、基板成型プロセスからスパッタ製膜プロセスまでの時間が5分以上かかるとAg系光反射層と中間層との密着力が低下した。同様に、相変化型光記録媒体において、スパッタ製膜プロセスから初期化プロセス(記録層の結晶化処理)までの時間が2日以上かかるとAg系光反射層と中間層の密着力が低下した。
以上述べたように、実際の生産において、DVD4倍速以上等の高速で良好に高密度記録できる相変化型光記録媒体を安定に製造するためには、従来の光記録媒体の材料や層構造では対応できなくなってきており、より確実な対策が望まれている。
【0014】
【特許文献1】特開昭57−186244号公報
【特許文献2】特開平7−3363号公報
【特許文献3】特開平9−156224号公報
【特許文献4】特開2000−285517号公報
【特許文献5】特開平6−243509号公報
【特許文献6】特許2749080号公報
【特許文献7】特開2001−222842号公報
【特許文献8】特公昭52−2783号公報
【特許文献9】特公平4−61791号公報
【特許文献10】特開昭60−179953号公報
【特許文献11】特公平5−45434号公報
【特許文献12】特公平6−87320号公報
【特許文献13】特公平4−74785号公報
【特許文献14】特公平6−90808号公報
【特許文献15】特公平7−114031号公報
【特許文献16】特許第2511964号公報
【特許文献17】特許第2915112号公報
【特許文献18】特許第2788395号公報
【特許文献19】特開平5−62244号公報
【特許文献20】特開平5−151619号公報
【特許文献21】特開2002−352472号公報
【特許文献22】特公平8−27980号公報
【特許文献23】特開平11−238253号公報
【特許文献24】特開2002−74746号公報
【特許文献25】国際公開97−34928号パンフレット
【特許文献26】特開平10−275360号公報
【特許文献27】特開2002−203338号公報
【特許文献28】特開2000−331378号公報
【特許文献29】特開2004−185794号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、高温・高湿下での保存信頼性が高く、高温動作が安定し、機械特性良好で、生産性の高い、高速・高密度の光記録が可能な光記録媒体の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題は、次の1)〜20)の発明(以下、本発明1〜20という)によって解決される。
1) 基板上に少なくとも下部保護層、光記録層、上部保護層、中間層、Agを95原子%以上含有する光反射層を有し、該中間層が、Ti、Nb、Taから選ばれる少なくとも1種の元素の炭化物を含み、最小記録マークの記録時間が34ns以下でも記録可能であることを特徴とする光記録媒体。
2) 基板上に少なくとも下部保護層、光記録層、上部保護層、中間層、Agを95原子%以上含有する光反射層を有し、該中間層が、Ti、Nb、Taから選ばれる少なくとも1種の元素の炭化物を含み、チャンネルビット長の記録時間が11ns以下でも記録可能であることを特徴とする光記録媒体。
3) 基板上に少なくとも下部保護層、光記録層、上部保護層、中間層、Agを95原子%以上含有する光反射層を有し、該中間層が、Ti、Nb、Taから選ばれる少なくとも1種の元素の炭化物を含み、記録線速度が11m/s以上でも記録可能であることを特徴とする光記録媒体。
4) 基板上に少なくとも下部保護層、光記録層、上部保護層、中間層、Agを95原子%以上含有する光反射層を有し、該中間層が、Ti、Nb、Taから選ばれる少なくとも1種の元素(M)と、炭素(C)と、酸素(O)を含み、最小記録マークの記録時間が34ns以下でも記録可能であることを特徴とする光記録媒体。
5) 基板上に少なくとも下部保護層、光記録層、上部保護層、中間層、Agを95原子%以上含有する光反射層を有し、該中間層が、Ti、Nb、Taから選ばれる少なくとも1種の元素(M)と、炭素(C)と、酸素(O)を含み、チャンネルビット長の記録時間が11ns以下でも記録可能であることを特徴とする光記録媒体。
6) 基板上に少なくとも下部保護層、光記録層、上部保護層、中間層、Agを95原子%以上含有する光反射層を有し、該中間層が、Ti、Nb、Taから選ばれる少なくとも1種の元素(M)と、炭素(C)と、酸素(O)を含み、記録線速度が11m/s以上でも記録可能であることを特徴とする光記録媒体。
7) MがTi、Nb、Taから選ばれる何れか1種のみであることを特徴とする1)〜6)の何れかに記載の光記録媒体。
8) 中間層が、Mと炭素の化学結合及び/又はMと酸素の化学結合を含むことを特徴とする1)〜7)の何れかに記載の光記録媒体。
9) 中間層がTi、C、Oを含み、Ti、C、Oの組成比をそれぞれα、β、γ(原子%)として、次の関係を満たすことを特徴とする1)〜8)の何れかに記載の光記録媒体。
37≦α≦48
12≦β≦45
7≦γ≦51
α+β+γ=100
10) 中間層がNb、C、Oを含み、Nb、C、Oの組成比をそれぞれα、β、γ(原子%)として、次の関係を満たすことを特徴とする1)〜8)の何れかに記載の光記録媒体。
33≦α≦47
9≦β≦43
10≦γ≦58
α+β+γ=100
11) 中間層がTa、C、Oを含み、Ta、C、Oの組成比をそれぞれα、β、γ(原子%)として、次の関係を満たすことを特徴とする1)〜8)の何れかに記載の光記録媒体。
32≦α≦47
9≦β≦43
10≦γ≦59
α+β+γ=100
12) 中間層の膜厚が、1〜9nmであることを特徴とする1)〜11)の何れかに記載の光記録媒体。
13) 上部保護層の主成分が、ZnSとSiOであることを特徴とする1)〜12)の何れかに記載の光記録媒体。
14) 記録層の主成分が、組成式AgαGeβInγSbδTeε(α、β、γ、δ、εは原子%)で表される合金であり、0≦α≦5、0≦β≦5、2≦γ≦10、60≦δ≦90、15≦ε≦30、α+β+γ+δ+ε=100を満たすことを特徴とする1)〜13)の何れかに記載の光記録媒体。
15) 記録層の主成分が、組成式Xα′Geβ′Sbγ′Snσ′ε′(α′、β′、γ′、δ′、ε′は原子%)で表される合金であり、XはGa及び/又はIn、ZはBi及び/又はTe、2≦α′≦20、2≦β′≦20、60≦γ′≦90、5≦δ′≦25、0≦ε′≦10、α′+β′+γ′+δ′+ε′=100を満たすことを特徴とする1)〜13)の何れかに記載の光記録媒体。
16) 半導体レーザーによる光記録層の再結晶化により再利用が可能であることを特徴とする1)〜15)の何れかに記載の光記録媒体。
17) 1)〜16)の何れかに記載の光記録媒体の製造過程における抜き取り検査として、初期結晶化前のディスクを高温高湿環境下に保管し、その後、初期結晶化プロセスを行ったときのディスク外観、又はエラー数や欠陥率等を検査することにより、製造されたディスクの品質又は製造プロセスの良否を評価することを特徴とする光記録媒体の製造方法。
18) TiCとTiOからなり、Ti、C、Oの組成比をそれぞれα、β、γ(原子%)として、次の関係を満たすことを特徴とするスパッタリングターゲット。
37≦α≦48
12≦β≦45
7≦γ≦51
α+β+γ=100
19) NbCとNbからなり、Nb、C、Oの組成比をそれぞれα、β、γ(原子%)として、次の関係を満たすことを特徴とするスパッタリングターゲット。
33≦α≦47
9≦β≦43
10≦γ≦58
α+β+γ=100
20) TaCと、Taからなり、Ta、C、Oの組成比をそれぞれα、β、γ(原子%)として、次の関係を満たすことを特徴とするスパッタリングターゲット。
32≦α≦47
9≦β≦43
10≦γ≦59
α+β+γ=100
【0017】
以下、上記本発明について詳しく説明する。
これまでのAg系光反射層を有する光記録媒体について鋭意検討した結果、次の(a)〜(d)に起因するものが主だった課題であることが分った。
(a)Ag系光反射層とそれを形成する層との密着力
(b)Ag系光反射層の耐候性
(c)Ag系光反射層の結晶粒の凝集
(d)Ag系光反射層の結晶粒径
上記(a)の具体的な課題は、DVD+Rなどの色素を記録層とした光記録媒体の場合、Ag系光反射膜と色素の密着力が充分でなく、光記録によって熱ダメージを受けた記録マーク部分が変質してしまい保存寿命が短くなることである。この現象は、CD−R、CD−RWでCD10倍速(記録線速度12m/s)以上、DVD+R、DVD+RWでDVD3倍速(10.5m/s)以上の高速記録用の光記録媒体で顕著であった。このような高速記録用光記録媒体では、ディスク上で20mW/μm以上の光記録パワーが必要になり、Ag系光反射層と下地層との密着力が低下してしまうことが分った。
【0018】
CD−RW、DVD+RWなどの相変化型光記録媒体の場合、Ag系光反射膜と上部保護層或いは上部保護層上の中間層との密着力が充分でなく、スパッタ製膜後の非晶質記録層を結晶化処理(初期化)や光記録によって熱ダメージを受けた部分が変質してしまい保存寿命が短くなった。特に、11m/s以上の高速記録用の光記録媒体では、高速かつ高パワーの初期化条件が必要になり、Ag系光反射層と下地層との密着力が低下してしまうことが分った。その結果、光記録媒体を、再度、全面初期化する場合に、Ag系光反射層と下地層の膜はがれを生じることがあった。これは、使用済み相変化型光記録媒体を再初期化して利用する際の障害にもなった。
一般にCDで用いられるEFM(Eight−to−Fourteen Modulation,8−14)変調方式のように、PWM(Pulse Width Modulation)記録(マークエッジ記録)方式による光記録を行なう場合には、図1に示したような記録パワーPwとボトムパワーPbの組み合わせからなるマルチパルスを含む発光波形、具体的には特開平9−138947号公報、特開2001−250230号公報、特開2002−288828号公報に記載されているような発光波形が用いられている。
【0019】
表1に、記録型DVDの記録線速度と最小マークを記録する時間、チャンネルビット長を記録する時間、1/2チャンネルビット長を記録する時間(≒マルチパルスの最小発光パルス時間)と、実際の発光波形の矩形性を示した。記録型DVDの場合、最小マーク長、チャンネルビット長は、0.4μm、0.133μmに対応し、最小マーク長は約3倍のチャンネルビット長に対応し、最も大きいマークは14倍のチャンネルビット長に対応している。
実際の高速光記録では、発光の際、2ns程度の立ち上がり時間及び立ち下がり時間を要する。従って、発光パルス時間が短くなる高速記録では、発光時間に占める発光の立ち上がり時間及び立ち下がり時間が相対的に大きくなるため矩形の発光波形が得られなくなる。発光時間に占める立ち上がり時間の割合が1/3以上になると、記録層の急冷が不十分になり、より大きな記録パワーが必要となる。その結果、光記録媒体に必要以上の熱ダメージや熱ストレスを生じてしまい、Ag系光反射層とその下地層の膜密着力が低下することが分った。
【0020】
更に、発光時間に占める立ち上がり時間の割合が1/2以上になると、サイン波のような発光波形になってしまい、記録層の急冷ができなくなり、光記録ができなくなる。
表1に示すように、最小発光パルス時間が、1/2チャンネルビット長の走査時間に対応する記録型DVDでは、11.7m/s以上の記録線速度では1/2チャンネルビット長の記録時間が6ns以下になるため発光波形の矩形性が不十分となる。19.8m/s以上の記録線速度では矩形性が得られないため、最小発光パルス時間が、1/2チャンネルビット長の走査時間に対応する光記録ができなくなる。その場合には、最小発光パルス時間が、チャンネルビット長の走査時間に対応する光記録が用いられることになる。DVD8倍速(28m/s)の光記録では、チャンネルビット長が5nsとなり、発光の立ち上がり時間の占める割合が限界となる。その結果、DVD8倍速以上の記録では、最小マーク長の走査時間に対応する光記録が用いられることになる。
【0021】
また、高速光記録を行う相変化型光記録媒体の場合、高速の初期化が良好なジッターを獲得するために有効である。具体的には、相変化型光記録媒体の最高記録線速度の70%以上の線速度で初期化することが効果的である。この際、高速化のため、より高い初期化パワーが要求され、相変化型光記録媒体への熱ストレスが大きくなり、Ag系光反射層と中間層の膜密着力低下を生じる。
以上のように、高速記録対応の媒体ほど熱ダメージや熱ストレスを受けるため、Ag系光反射層とその下地層との密着力が必要になることが分った。特に表1から分るように、(1)最小記録マークの記録時間が34ns以下、(2)チャンネルビット長の記録時間が11ns以下、(3)記録線速度が11m/s以上の光記録媒体において、過度の記録パワーが必要になり、Ag系光反射層とその下地との密着力が必要になる。
【0022】
【表1】

【0023】
上記(b)の具体的な課題は、Ag系光反射層の材料特性そのものに関わる本質的なものであり、光記録媒体の使用環境及び保管環境に存在するHS、Cl等の腐食性ガス、水蒸気等の腐食推進ガスとの化学反応によって保存寿命が短くなることである。
上記(c)の具体的な課題は、光記録媒体への水分の浸入によって、Ag原子(イオン)が凝集することで、微小空隙が発生することである。その微小空隙が、微小な記録マークの形状に影響を与えるような場合に問題となる。
上記(d)の具体的な課題は、Ag系光反射層を構成する結晶の粒界が、光記録及び再生の際に信号のノイズを発生し、光記録媒体の光記録再生性能を低下させてしまうことである。
上記(c)及び(d)は、405nm程度の青色の波長を利用した高密度な光記録を実現する場合に顕著な問題となる。
【0024】
更には、これらAg系光反射層の課題を解決し、生産プロセスの各種変動を吸収して安定に大量生産することは容易でない。
本発明者らの検討の結果、上記課題に加えて、更に生産プロセスの課題として、次の(e)〜(k)が抽出された。
(e)基板の吸着水分量(好ましくは基板1枚あたり0.1g以下)
(f)基板温度(好ましくは50℃以下)
(g)Ag系光反射層のスパッタ条件(好ましくは残存水蒸気量5×10−5mbar
以下)
(h)Ag系光反射層が形成される層のスパッタ条件(好ましくは残存水蒸気量5×
10−5mbar以下)
(i)相変化型光記録媒体の場合、基板成型プロセス後、真空成膜プロセスに移行する
までの搬送時間(大気中の水分が基板に吸着する時間)(好ましくは3分以内)
(j)真空成膜装置にディスクを出し入れするロードロック部の排気時間(基板に吸着
している水分を除去する時間)(好ましくは2秒以上)
(k)相変化型光記録媒体の場合、Ag系光反射層製膜後から光記録層の結晶初期化ま
での時間(好ましくは48時間以下)
【0025】
しかし、基板の材料としてポリカーボネートのような樹脂を使用する場合、基板に吸着される水分量を制御することは容易ではない。特に、大量生産を行う工場では、製造ラインのディスク搬送における一時的な停止・滞留による搬送時間の延長や、真空成膜装置の突発的な排気効率の低下、工場内環境(温度、湿度)のバラツキなどを排除することは非常に困難である。また、実際には、上記生産プロセスの要因は複雑に絡み合っていると考えられるが、(k)の時間が長いほど、初期結晶化プロセス直後にスパッタ膜の変色や浮き、剥がれ等の欠陥が発生し易いことが分かった。但し、本発明の媒体を得るのに、必ずしもこれらの生産プロセスを上記の好ましい条件で行う必要はないが、上記条件で行うことが望ましい。
表2に、上記(i)(j)(k)について検討した結果を示す。対象とした光記録媒体は後述する実施例1と同じ層構成の媒体である。表中の「24H加速後」とは、加速試験として80℃85%RHの高温高湿下に24時間保管した後のことを意味する。
【0026】
【表2】

【0027】
Agの粒径をより小さくするには、Agの凝集を防止するような条件で製膜することが重要となる。具体的には、光反射膜形成過程において、膜表面へのAg原子又はクラスターの入射頻度と、その他の原子、分子、イオン又はクラスター等の入射頻度を制御することで可能となる。より具体的には、スパッタ製膜中の共存ガス(Ar、N、Oなど)の流量を大きくして膜表面への共存ガス入射頻度を大きくすることが効果的である。また排気速度を小さくし製膜圧力を上げて製膜することにより、共存ガスの膜表面への入射頻度を大きくすることも効果的である。また、Agの膜表面への入射頻度を小さくする方法として、製膜速度を小さくするため製膜スパッタ電力を低下させることが効果的である。更には、Ag系光反射膜の製膜の際の基板温度を下げることも効果的である。実際の製膜時には、これら諸条件を調整してAg粒子の大きさを制御することができる。
【0028】
Ag粒子の微細化には、Mg、Al、Si、Ca、Ti、Cr、Cu、Zn、Y、Ce、Nd、Gd、Tb、Dy、Nb、Mo、Pd、In、Sn、Ta、W、Ptなどの異物を共存させて製膜することも効果的である。Ag粒子が成長する際、粒界を構成する部分にはこれらの添加物が多く含まれる。従って、これらの添加物の存在によって、Ag粒子の微細化が可能となる。これらの金属の種類の選択及び添加量は、Ag系光反射膜のスパッタ条件にも影響される。添加物を多く入れれば、Ag粒子の微細化は容易になるが、Agに期待される物性である高反射率、高熱伝導率が損なわれる。添加物を少なくした場合には、Agに期待される物性は確保されるものの、製膜条件に厳格な管理が要求される。このように添加物の種類や量とAg系光反射膜の製膜条件が重要である。
Agと合金化し易いCu、Pd、Ptであれば、Agの物性を維持したまま微細化が図れる。しかし、Agと合金を形成し易いため、粒径の微細化には製膜条件の管理が重要になる。一方、Mg、Al、Si、Ca、Ti、Cr、Zn、Nb、Mo、In、Sn、Ta、Wなどは、添加量が多いとAgの物性を大きく損なうが、製膜時に共存ガスを吸着しやすく粒界形成に有効に働き、Ag結晶粒子の粗大化を抑制し、Ag結晶粒子の微細化に効果的である。また、Y、Ce、Nd、Gd、Tb、Dy、Zr、Hf、In、Snなどの添加物は、Agの原子半径より大きい原子半径であり、Ag粒子の結晶成長の抑制が可能となるので、Agの結晶粒径を微細化できる。
【0029】
本発明者らの検討結果から、Ag系光反射膜の粒界ノイズが記録再生信号に与える影響を無視できるレベルは、最小記録マークの1/3以下であった。この点について考察した結果、最小記録マークの1/3は、記録するマークのチャンネルビットに対応していることが分った。チャンネルビットとは、光記録する際の情報の「0」、「1」に対応した最小単位のことであり、DVD−ROMでは、0.133μmに対応するものである。つまり、DVD−R、DVD−RW、DVD+R、DVD+RWでは、記録トラック方向における光反射層の平均的な結晶粒子の長さLagは、マークの1ビット長Lbi(=0.133μm)以下が効果的である。即ちAg系光反射層の結晶粒径は、チャンネルビット長以下、結晶粒径のバラツキを考慮すると、チャンネルビット長の2/3以下が望ましい。
また、光記録媒体に存在する案内溝が蛇行している場合、その蛇行(ウオブル)周期に比べて充分小さい粒径であることも重要である。光記録装置が光記録媒体の案内溝の蛇行を正確に読み取るためには、Ag粒子の粒界をノイズとして読み取った場合、光記録媒体の正しいアドレスが読み取れなくなってしまう。特に、DVD−R、DVD−RW等のピットを伴う案内溝を有する光記録媒体では尚更読み取りが困難となってしまう。
Ag系光反射膜の結晶粒径と案内溝のウオブルとの関係では、1蛇行周期の1/10以下のAg系結晶粒径であることが望ましい。1蛇行のなかで、1/10の部分にノイズが入ったとしてもその蛇行の情報は補完できるためである。更に望ましくは、1蛇行周期の1/20以下のAg系結晶粒径であることが望ましい。1蛇行のなかで、1/20の部分にノイズが入ったとしてもその蛇行の情報にとって、そのノイズは無視できるためである。また、ピットを伴う場合には、ピット間隔の1/10以下、更には1/20以下のAg結晶粒径とすることが望ましい。
【0030】
本発明者らの実験結果から、基板表面に吸着する水分がAg系光反射層とAg系光反射層が形成される層の密着力に少なからず影響することが分っており、Ag系光反射層が形成される中間層のパシベーション能力の向上が、Ag系光反射膜と中間層との密着力向上も図れることが分っている。
本発明者らは、Ag系光反射層との密着力を確保し、かつZnS・SiOとAgとの反応を防止するパシベーション能力を同時に満たす中間層としては、次の(1)(2)の物質を含むことが効果的であると考えた。
(1)パシベーション能力を確保するために原子のパッキングが密となる侵入型化合物を形成できる物質(侵入型化合物とは、金属の結晶格子又は原子格子の隙間に、他の小さな非金属元素の原子が侵入してできる化合物のことである。)
(2)密着力を確保するためにAg系光反射層と中間層の濡れ性を確保できる物質
そこで、本発明者らは、パシベーション能力を確保するために侵入型化合物を形成できるTi、Zr、Nb、Taの炭化物ターゲットと、Ag系光反射層との濡れ性を確保するためにそれらの金属酸化物からなるターゲットから製膜した中間層について検討した。
【0031】
検討した光記録媒体の層構成は、案内溝付情報基板/下部保護層/界面層/光記録層/上部保護層/中間層/光反射層/紫外線硬化樹脂/接着層/カバー基板とした。
案内溝付情報基板は、溝幅0.25μm、溝深さ27nm、ウオブル溝の周期4.26μmの案内溝を有する厚さ0.6mmのポリカーボネート基板を射出成型して準備した。下部保護層、界面層、光記録層、上部保護層、中間層、光反射層は、順次スパッタリング法により積層した。下部保護層には厚さ55nmの(ZnS)80(SiO20(モル%)、界面層には厚さ4nmのSiO、光記録層には厚さ11nmのGeGaSb68Sn18、上部保護層には厚さ11nmの(ZnS)80(SiO20(モル%)、光反射層には厚さ140nmの純銀を用いた。中間層は厚さ6nmとし、後述する材料を用いた。下部保護層、界面層、上部保護層は、RFスパッタリング法により作製し、光記録層、光反射層は、DCスパッタリング法により作製した。
中間層は、炭化物と酸化物からなる焼結ターゲットのDC或いはRFスパッタリングで作製した。炭化物は、SiC、TiC、ZrC、NbC、TaCを検討した。酸化物は、SiO、TiO、ZrO、Nb、Taを検討した。
次いで、光反射層上に、室温粘度120cps、硬化後のガラス転移温度149℃となる紫外線硬化型樹脂(大日本インキ化学工業社製、SD318)をスピンコートして樹脂保護層を形成し、相変化型光記録媒体の単板ディスクを作成した。
次いで、ポリカーボネート製の貼り合わせ基板を、室温粘度450cps、硬化後のガラス転移温度が75℃となる紫外線硬化型接着剤(日本化薬社製、DVD003)で貼り合わせて、相変化型光記録媒体を得た。
【0032】
続いて、大口径LD(ビーム径75μm×1μm)を有する日立コンピュータ機器社製初期化装置を用いて、ディスクの最高記録線速度の70%の線速度、電力1600mW、送り45μm/rで、内周から外周に向けて、線速度一定で光記録層を全面結晶化した。
光記録媒体の製造変動耐久性は、次の(1)〜(3)について評価した。
(1)DCスパッタ可能性
(2)中間層製膜時の空気リーク耐久性
(3)初期化耐久性
それぞれの耐久性評価プロセス条件は、次の(1)〜(3)とした。
(1)DCスパッタでの製膜可否
(2)1×10−4mbarの空気リークで中間層を作製したディスクに光記録した信号の80℃85%RH24時間保存後のエラー(PIエラー増加率50%増でNG)
(3)80℃85%RH24時間の加速劣化後に初期化したディスクの欠陥率(1×10−4以上でNG)
光記録媒体の記録特性は、記録後のジッターが最小となる記録パワーでの「グルーブ反射率(%)」及び「感度(記録パワー:mW)」とした。
光記録は、前述した図1に示すPwとPbの組み合わせからなるマルチパルスを含む、特開平9−138947、特開平2001−250230、特開2002−288828に記載されているような発光波形を用いた。記録フォーマットは、DVD再生互換可能なものとした。
【0033】
表3〜7に、SiC−SiO系、ZrC−ZrO系、TiC−TiO系、NbC−Nb系、TaC−Ta系の炭化物と酸化物からなる種々の組成比の焼結ターゲットを用いてスパッタリングにより作製した中間層を持つ8倍速のDVD+RWディスクの製造プロセスマージンと記録特性を示す。
表3から分るように、SiC−SiO系の中間層を用いる場合、中間層作製の際の空気リークに対する耐久性がなく、かつ初期化前の放置時間マージンがなく、生産プロセスマージンが小さかった。
また、表4から分るように、ZrC−ZrO系の中間層を用いる場合、中間層作製の際の空気リークに対する耐久性はあるものの、初期化前の放置時間マージンがなく、生産プロセスマージンが小さかった。
これに対し、表5〜7から分るように、TiC−TiO系、NbC−Nb系、TaC−Ta系の中間層を用いる場合、中間層作製の際の空気リークに対する耐久性があり、かつ初期化前の放置時間マージンも充分であり、生産プロセスマージンが大きい結果であった。しかし、炭化物単独の中間層では、酸化物を加えたものに比べて反射率が低くなるので、記録特性のマージンを確保するためには酸化物を加えることが好ましい。
以上の結果は、SiCが、他の各炭化物に比べて、その安定性が劣るために、リーク耐久性、初期化プロセスマージンが狭いと考えられる。つまり、SiCの生成エンタルピーは他の炭化物に比べて著しく小さい結果に起因すると考えられる。また、ZrC−ZrO系は、ZrCのパシベーション能力が他の炭化物に比べて劣ることが原因と考えられる。これは、侵入型の金属化合物を形成するうえで、Zrの共有結合半径1.45Åに比べて、他の金属の共有結合半径Ti:1.32Å、Nb:1.34Å、Ta:1.34Åの方が小さいために、炭素とのパッキングが良好であり、パシベーション能力が高かったと考えられる。
【0034】
また、TiC−TiO系では、ターゲットに含まれるTi、C、Oの組成比をそれぞれα、β、γ(原子%)として、37≦α≦48、12≦β≦45、7≦γ≦51、α+β+γ=100のとき、NbC−Nb系では、ターゲットに含まれるNb、C、Oの組成比をそれぞれα、β、γ(原子%)として、33≦α≦47、9≦β≦43、10≦γ≦58、α+β+γ=100のとき、TaC−Ta系では、ターゲットに含まれるTa、C、Oの組成比をそれぞれα、β、γ(原子%)として、32≦α≦47、9≦β≦43、10≦γ≦59、α+β+γ=100のとき、DCスパッタが可能であり、生産の安定性に優れる。なお、中間層の組成比は、通常の場合、ターゲットの組成比と殆ど同一である。
以上、一種類の金属を単独で用いた系についての結果を示したが、Ti−Nb−O−C、Ti−Ta−O−C、Nb−Ta−O−C等の複数の金属を用いた系でも同様の効果が確認されている。しかし、一種類の金属を用いた場合の方が、金属の酸化還元反応を完全に抑えられることから効果的である。
また中間層は上記特定の金属の炭化物或いは炭素と酸素を含有する材料のみからなることが好ましいが、物性に悪影響を与えない限り、1重量%未満程度の不純物を含んでいても構わない。
本発明では、以上のような中間層を設けることにより、例えばDVD+RWの4X(14m/s)以上、更には8X(28m/s)の記録線速に対応可能な光記録媒体を提供できる。
【0035】
中間層の膜厚は1〜9nmが効果的である。好ましくは2〜8nmであり、更に好ましくは3〜7nmである。1nm未満の場合、バリア層としての効果が認められなかった。これは膜が島状構造を形成しているためと考えられる。一方、9nmを超えると、記録特性、特に反射率の低下が著しかった。
本発明の光記録媒体の中間層について種々の方法で分析を行った。オージェ電子分光分析により分析すると、TiC−TiO系では、Ti、C、Oの存在が確認された。また、X線光電子分光分析では、Ti−O、Ti−Cの結合が確認された。断面TEM分析による電子線回折では、明確な結晶性は確認できなかった。また、酸化物、炭化物といった混合相構造といったものも確認できなかった。化学組成はターゲット組成に近いが、C、Oの共存によって、CO或いはCOとして中間層から幾分抜け、金属richとなっていた。NbC−Nb系、TaC−Ta系の中間層においても同様の結果であった。
【0036】
【表3】

【表4】

【表5】

【表6】

【表7】

【0037】
本発明の層構成例を図2に示す。
図2は、本発明のDVD系相変化型光記録媒体の一例であり、情報基板上に、下部保護層、光記録層、上部保護層、Ag系光反射層、樹脂層及び/又は接着層、カバー基板が、この順に形成されている。性能向上のために、必要に応じて、第1界面層、第2界面層、中間層、印刷層が形成される。また、カバー基板側に逆順で、同様の相変化型光記録媒体を設け、二層型とすることもできる。
本発明は、これらの層構成に限らず、Ag系光記録層を有する種々の光記録媒体に適用される。
【0038】
基板の材料は、通常ガラス、セラミックス、又は樹脂であり、樹脂基板が成型性、コストの点で好適である。樹脂の例としてはポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、ABS樹脂、ウレタン樹脂などが挙げられるが、成型性、光学特性、コストの点で優れるポリカーボネート樹脂、アクリル系樹脂が好ましい。
但し、本発明の光記録媒体をDVD+Rに応用する場合には、以下のような特定の条件が付与されることが望ましい。即ち、基板に形成される案内溝の幅が0.10〜0.40μm、好適には0.15〜0.35μm、案内溝の深さが120〜200nm、好適には140〜180nmとなっていることである。案内溝の蛇行の周期は、1周期が4.3μmとなる。基板の厚さは0.55〜0.65mmが好適であり、貼り合わせ後のディスクの厚さは、1.1〜1.3mmが好適である。これらの基板溝によって、DVD−ROMドライブでの再生互換性が向上する。
また、本発明の光記録媒体をDVD+RWに応用する場合には、以下のような特定の条件が付与されることが望ましい。即ち、基板に形成される案内溝の幅が0.10〜0.40μm、好適には0.15〜0.35μm、案内溝の深さが15〜45nm、好適には20〜40nmとなっていることである。案内溝の蛇行の周期は、1周期が4.3μmとなる。基板の厚さは0.55〜0.65mmが好適であり、貼り合わせ後のディスクの厚さは、1.1〜1.3mmが好適である。これらの基板溝によって、DVD−ROMドライブでの再生互換性が向上する。
【0039】
相変化型光記録媒体の下部又は上部保護層の材料としては、SiO、SiO、ZnO、SnO、Al、TiO、In、MgO、ZrOなどの酸化物;Si、AlN、TiN、BN、ZrNなどの窒化物;ZnS、TaSなどの硫化物;SiC、TaC、BC、WC、TiC、ZrCなどの炭化物;ダイヤモンド状カーボン;或いはそれらの混合物が挙げられる。中でも(ZnS)85(SiO15、(ZnS)80(SiO20、(ZnS)75(SiO25(何れもモル%)などのZnSとSiOを含んだ物質が好ましく、特に熱膨張変化、高温・室温変化の熱ダメージを伴う相変化型光記録層と基板の間に位置する下部保護層としては、光学定数、熱膨張係数、弾性率が最適化されている(ZnS)80(SiO20(モル%)が望ましい。
下部保護層の膜厚は、反射率、変調度、記録感度に大きく影響するので、下部保護層の膜厚に対して、ディスク反射率が極小値となる膜厚とすることが望ましい。この膜厚領域では記録感度が良好であり、熱ダメージのより小さいパワーで記録が可能になり、オーバーライト性能の向上が図られる。DVDの記録再生波長において良好な信号特性を得るためには、下部保護層に(ZnS)80(SiO20(モル%)を用いた場合、45〜65nmとすることが好適である。45nmより薄いと、基板への熱ダメージが大きくなり、溝形状の変形が起こる。また、65nmより厚いと、ディスク反射率が高くなり、感度が低下する。
【0040】
更に、相変化型光記録媒体の硫黄フリー上部保護層としては、クラックの発生を抑制することが効果的である酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化錫、酸化ニオブ、窒化珪素、窒化アルミニウムなどの光記録媒体の製造に適したスパッタ速度を有する材料が望ましい。本発明では、これら好適な材料を主成分として用いるが、ここでいう主成分とは50モル%を超えることを意味する。本発明で用いる材料としては、膜の柔軟性という点で2価の結合回転自由度の高い酸素によるネットワークが可能なSi、Al、Ti、Zn、Zr、Mo、Ta、Nb、Wの酸化物の添加が好ましい。しかし、これらの上部保護層材料においても、厚膜化すると、膜自身の内部応力や光記録層及びAg又はAg合金反射層との間の熱応力によってクラックを発生し易い。
また、上部保護層を多層化することによって、上部保護層の界面を形成し、熱伝導を妨げて熱蓄積構造とすることで、光記録の感度向上を図ることができる。
上部保護層の膜厚は、4〜24nmが好適である。4nmより薄いと、上部保護層の機能である蓄熱が充分にできなくなり、現存の半導体レーザーでの記録が困難になる。また24nmより厚くなると、先に述べたようにクラックを発生する。より望ましい上部保護層の膜厚は、8〜20nmである。
【0041】
また、相変化型光記録媒体は、下部保護層/光記録層/上部保護層/光反射層がスパッタリングによる連続製膜によって製造されている。その際、最も製膜時間を必要とするのは、他の層に比べて膜厚が大きい下部保護層又は光反射層の製膜である。従って、ロスなく効率的に、上部保護層を作製するためには、上部保護層は、下部保護層又は光反射層の製膜時間と同等か或いはそれよりも短い製膜時間で、所定の膜厚が形成できるような製膜条件が望まれる。下部保護層にZnS・SiO、反射層にAg又はAg合金を用い、スパッタ時間7秒以下を目標とすると、上部保護層の製膜速度は1nm/s以上、好ましくは3nm/s以上が必要である。
一方、4〜24nmの極力薄い膜を形成しようとした場合、あまり製膜速度が大きいと、スパッタリング製膜におけるプラズマの発生の立ち上がり時間の閉める割合が大きくなり、ディスク毎の膜厚バラツキが大きくなり、ディスク特性としては感度のバラツキを大きくしてしまう。ディスク毎の上部保護層の膜厚バラツキを小さくするためには、限界製膜速度は10nm/s以下、好ましくは8nm/s以下である。
更に、相変化型光記録媒体の製造プロセスにおける初期化条件、特にパワーマージンを確保するためには、上部保護層とAg又はAg合金を主成分とする光反射層との界面に、Ag−O結合が形成されていることが効果的であった。Ag−O結合はXPS(X線光電子分光分析)などの分析方法で確認された。AlN、Siを上部保護層に用いた場合でも、基板からの脱ガスや残像ガスから酸素が供給されるため、Ag−O結合の形成が確認された。しかし、上部保護層に酸化物を用いた場合に比べてAg−O結合量が相対的に少なく、初期化の際のパワーマージンが小さくなる傾向にあった。
【0042】
相変化型光記録層材料は、Sbを60〜90原子%含む相変化物質が好適である。例えば、Sbを60〜90原子%含むInSb、GaSb、GeSb、GeSbSn、GaGeSb、GeSbTe、GaGeSbSn、AgInSbTe、GeInSbTe、GeGaSbTeなどが挙げられる。具体例としては、DVDの4Xに対応可能な本発明14の物質や、DVDの8Xに対応可能な本発明15の物質などが挙げられる。
これらの相変化物質でDVD+RW媒体を作製した場合の、Sb組成比とDVD互換或いはCD互換を可能とする最小記録マークを記録できる時間の関係から、記録層のSb量が60原子%以上の場合に記録時間を短くできることが分っている。即ち、記録消去の際の光記録層の溶融時間を短くすることができ、光記録層及び上部保護層の熱ダメージを低減できる。また、Sb量が60原子%以上の場合には、光記録媒体の溶融初期結晶化も高速でできるため熱ダメージが低減される。更に、Sb量70原子%以上では、初期化線速度を10m/s以上にすることが可能であり、熱ダメージをより低減することができる。しかし、Sbが90原子%を超えると、種々の元素を添加したとしてもマークの高温高湿度信頼性に劣るため好ましくない。
相変化型光記録層の厚さは8〜14nmが望ましい。8nmより薄いと80℃85%RHの高温高湿での記録マークの結晶化が早くなり寿命が問題となる。一方、14nmを超えると、光記録消去の際に熱の発生が大きくなり、上部保護層への熱ダメージが顕著になり、上部保護層のクラック発生を誘発してしまう。
【0043】
相変化型光記録媒体の下部保護層、光記録層、上部保護層、Ag又はAg合金からなる光反射層の作製方法としては、プラズマCVD、プラズマ処理、イオンプレーティング、光CVDなどが利用できるが、光記録媒体の製造で汎用されているスパッタが有効である。その代表的作製条件は、圧力10−2〜10−4mbar、スパッタ電力0.1〜5.0kW/200mmφ、製膜速度0.1〜50nm/sである。
色素記録層としては、従来より知られているシアニン色素、アゾ色素、フタロシアニン色素、スクアリリウム色素等が利用される。金属錯体の場合に効果的なのは、Ag系光記録媒体とのマッチングとして、本発明にあるようにTi、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、Wから選ばれる元素を含むことが効果的である。
樹脂保護層としては、スピンコート法で作製した紫外線硬化型樹脂が好適である。厚さは3〜15μmが適当である。3μmより薄いと、オーバーコート層上に印刷層を設ける場合にエラーの増大が認められることがある。一方、15μmより厚くすると、内部応力が大きくなってしまい、ディスクの機械特性に大きく影響してしまう。
ハードコート層を設ける場合には、スピンコート法で作製した紫外線硬化型樹脂が一般的である。その厚さは、2〜6μmが適当である。2μmより薄くすると、十分な耐擦傷性が得られない。6μmより厚くすると、内部応力が大きくなってしまい、ディスクの機械特性に大きく影響してしまう。その硬度は、布で擦っても大きな傷が付かない鉛筆硬度H以上とする必要がある。必要に応じて導電性の材料を混入させ、帯電防止を図って埃等の付着を防止することも効果的である。
【0044】
印刷層は、耐擦傷性の確保、ブランド名などのレーベル印刷、インクジェットプリンタに対するインク受容層の形成などを目的としており、紫外線硬化型樹脂をスクリーン印刷法で形成するのが好適である。その厚さは、3〜50μmが適当である。3μmより薄いと、層形成時にムラが生じてしまうし、50μmより厚くすると、内部応力が大きくなってしまい、ディスクの機械特性に大きく影響してしまう。
接着層には、紫外線硬化型樹脂、ホットメルト接着剤、シリコーン樹脂などの接着剤を用いることができる。これらの材料は、オーバーコート層又は印刷層上に、材料に応じてスピンコート、ロールコート、スクリーン印刷法などの方法により塗布し、紫外線照射、加熱、加圧等の処理を行なって反対面のディスクと貼り合わせる。反対面のディスクは、同様の単板ディスクでも透明基板のみでも良く、反対面ディスクの貼り合わせ面については、接着層の材料を塗布してもしなくても良い。また、接着層としては、粘着シートを用いることもできる。
接着層の膜厚は特に制限されるものではないが、材料の塗布性、硬化性、ディスクの機械特性の影響を考慮すると、5〜100μm、好適には7〜80μmである。接着面の範囲は特に制限されるものではないが、DVD及び/又はCD互換が可能な書き換え型ディスクに応用する場合、高速記録を可能とするには、接着強度を確保するために、内周端の位置がφ15〜40mm、好適にはφ15〜30mmであることが望ましい。
【発明の効果】
【0045】
本発明によれば、高温・高湿下での保存信頼性が高く、高温動作が安定し、機械特性良好で、生産性の高い、高速・高密度の光記録が可能な光記録媒体を提供できる。
【実施例】
【0046】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0047】
実施例1〜3、比較例1〜2
溝幅0.25μm、溝深さ27nm、ウオブル溝の周期4.26μmの案内溝を有する厚さ0.6mmのポリカーボネート基板を射出成型し、その上に、下部保護層、界面層、光記録層、上部保護層、中間層、光反射層を順次スパッタリング法により積層した。このとき、基板に吸着される水分を考慮して、成型後からスパッタ装置に投入されるまでの時間が3分以内になるように管理した。
下部保護層には厚さ55nmの(ZnS)80(SiO20(モル%)、界面層には厚さ3nmのZrO(3モル%Y)−TiO(80:20モル%)、光記録層には厚さ12nmのAgGeInSb72Te21、上部保護層には厚さ11nmの(ZnS)80(SiO20(モル%)、中間層には厚さ4nm又は9nmのTiC(実施例1)、NbC(実施例2)、TaC(実施例3)、ZrC(比較例1)、SiC(比較例2)、光反射層には厚さ140nmのAgを用いた。
その結果、ポリカーボネート基板/(ZnS)80(SiO20(モル%):55nm/ZrO(3モル%Y)−TiO(80:20モル%):3nm/AgGeInSb72Te21:12nm/(ZnS)80(SiO20(モル%):11nm/TiC(実施例1)、NbC(実施例2)、TaC(実施例3)、ZrC(比較例1)、SiC(比較例2):4nm又は9nm/Ag:140nm、という層構成を形成した。
中間層に用いた化合物のうち、TiC、NiC、TaC、ZrCは浸入型化合物であり、SiCは共有結合型化合物である。また、ZrCは金属と炭素の原子半径比(炭素/金属)が0.50以下である。
中間層の製膜条件は、圧力5.5×10−3mbar、スパッタ速度2nm/sとし、比較的製膜速度を小さく抑え、基板吸着ガスの膜表面への入射頻度を増大させた。
次いで、光反射層上に、室温粘度120cps、硬化後のガラス転移温度149℃となる紫外線硬化型樹脂(大日本インキ化学工業社製、SD318)をスピンコートして樹脂保護層を形成し、相変化型光記録媒体の単板ディスクを作成した。
次いで、ポリカーボネート製の貼り合わせ基板を、室温粘度450cps、硬化後のガラス転移温度が75℃となる紫外線硬化型接着剤(日本化薬社製、DVD003)で貼り合わせて、相変化型光ディスクを得た。
【0048】
続いて、大口径LD(ビーム径75μm×1μm)を有する日立コンピュータ機器社製初期化装置を用いて、線速度10m/s、電力1200mW、送り37μm/rで、内周から外周に向けて、線速度一定で光記録層を全面結晶化した。
そして、成膜プロセスから初期結晶化プロセスに移行するまでの時間と、初期結晶化プロセス直後のディスクの、スパッタ膜の変色や浮き、剥がれ等の欠陥の発生状況を調べた。結果を表8に示す。なお、表中の「24H加速後」「96H加速後」とは、加速試験として80℃85%RHの高温高湿下に24時間又は96時間保管した後のことを意味する。
表から分るように、実施例1〜3のディスクでは、スパッタ膜の変色や浮き、剥がれ等の欠陥の発生は観察されなかった。これに対し、ZrCを使用した比較例1のディスクでは、24時間の加速試験後の初期結晶化プロセスでスパッタ膜の浮きが確認された。また、SiCを使用した比較例2のディスクでは、通常環境で11日後のスパッタ膜の初期結晶化プロセスで、記録面に黒いシミ状の斑点(スパッタ膜の変色)が観察された。更に、剥離分解テストを行ったところ、黒いシミ状の斑点部分では反射層との密着性が著しく低下している様子であった。
【0049】
【表8】

【0050】
実施例4〜6、比較例3〜4
中間層のターゲット材料をTiC−TiO(70:30モル%、実施例4)、NbC−Nb(70:30モル%、実施例5)、TaC−Ta(70:30モル%、実施例6)、ZrC−ZrO(70:30モル%、比較例3)、SiC−SiO(70:30モル%、比較例4)に変え、中間層の膜厚を2nm、4nm、8nmに変えた点以外は、実施例1と同様にして相変化型光ディスクを作製し、初期結晶化した。
そして、成膜プロセスから初期結晶化プロセスに移行するまでの時間と、初期結晶化プロセス直後のディスクの、スパッタ膜の変色や浮き、剥がれ等の欠陥の発生状況を調べた。結果を表9に示す。また、成膜プロセス後、通常のタイミング(約24時間後)で初期結晶化を行ったディスクについて、高温高湿下で保存したときのディスクの欠陥率の推移を調べた。結果を表10及び図3に示す。なお、表中の「48H〜300H加速後」とは、加速試験として80℃85%RHの高温高湿下に48〜300時間保管した後のことを意味する。また、表10及び図3中の「E−06」などは「1×10−6」などを意味する。
表9から分るように、実施例4〜6のディスクでは、スパッタ膜の変色や浮き、剥がれ等の欠陥の発生は観察されなかった。これに対し、ZrC+ZrOを使用した比較例3のディスクでは、48時間の加速試験後の初期結晶化プロセスでスパッタ膜の浮きが確認された。またSiC+SiOを使用した比較例4のディスクでは、スパッタプロセス直後のスパッタ膜の初期結晶化プロセスで、記録面に黒いシミ状の斑点(スパッタ膜の変色)が観察された。更に、剥離分解テストを行ったところ、黒いシミ状の斑点部分では反射層との密着性が著しく低下している様子であった。
また、表10及び図3から分るように、ZrC+ZrOを使用した比較例3のディスクは、他のディスクに比べて欠陥率が高く、かつ中間層の膜厚が厚いほど欠陥率の増加が顕著であった。
【0051】
【表9】

【表10】

【0052】
実施例7〜8
溝幅0.25μm、溝深さ27nm、ウオブル溝の周期4.26μmの案内溝を有する厚さ0.6mmのポリカーボネート基板を射出成型し、10分間の室温放置後、その上に、下部保護層、界面層、光記録層、上部保護層、中間層、光反射層を順次スパッタリング法により積層した。下部保護層には厚さ55nmの(ZnS)80(SiO20(モル%)、界面層には厚さ4nmのSiO、光記録層には厚さ11nmのGeGaSb68Sn18、上部保護層には厚さ8nmの(ZnS)80(SiO20(モル%)、中間層には厚さ6nmのTi453322(実施例7)、Ti442630(実施例8)、光反射層には厚さ140nmのCuを0.5重量%含む純度99.5重量%のAgを用いた。
その結果、ポリカーボネート基板/(ZnS)80(SiO20(モル%):55nm/SiO:4nm/GeGaSb68Sn18:11nm/(ZnS)80(SiO20(モル%):8nm/Ti453322(実施例7)、Ti442630(実施例8):4nm/Cuを0.5重量%含む純度99.5重量%のAg:140nm、という層構成を形成した。
中間層の製膜条件は、圧力5.5×10−3mbar、スパッタ速度2nm/sとし、比較的製膜速度を小さく抑え、基板吸着ガスの膜表面への入射頻度を増大させた。
次いで、光反射層上に、室温粘度120cps、硬化後のガラス転移温度149℃となる紫外線硬化型樹脂(大日本インキ化学工業社製、SD318)をスピンコートして樹脂保護層を形成し、相変化型光記録媒体の単板ディスクを作成した。
次いで、ポリカーボネート製の貼り合わせ基板を、室温粘度450cps、硬化後のガラス転移温度が75℃となる紫外線硬化型接着剤(日本化薬社製、DVD003)で貼り合わせて、相変化型光記録媒体を得、更に80℃85%RHに24時間放置した。
続いて、大口径LD(ビーム径75μm×1μm)を有する日立コンピュータ機器社製初期化装置を用いて、線速度20m/s、電力1600mW、送り45μm/rで、内周から外周に向けて、線速度一定で光記録層を全面結晶化した。初期化によってAgが剥離することはなかった。また、界面をXPSによって分析すると、Ti−O及びTi−Cと推察されるスペクトルが得られた。
【0053】
次に、得られた相変化型光記録媒体に対し、パルステック社製の記録再生評価装置DDU1000を用いて、記録線速度28m/s、波長657nm、NA0.65、記録パワー32〜38mWで、DVD−ROM再生可能なフォーマットでオーバーライト(DOW)した。その結果、実施例7、実施例8の何れの媒体も、2000回以上のオーバーライトでもジッター9%以下と良好であった。
次に、記録済みのこれらの相変化型光記録媒体を、80℃85%RHで所定の時間保存した結果、300時間保存後も劣化は認められなかった。また、これらの記録済み相変化型光記録媒体をTEM観察した結果、中間層の電子線回折は、非晶質を示すハローパターンであった。SEMによる光反射層表面の観察から、Ag結晶粒子の平均的な大きさは、0.12μmであり、80℃85%RH300時間保存後も0.12μmであり、信頼性が良好であった。その結果、ノイズの小さな再生信号が獲得でき、エラーの増大も認められなかった。
更に、記録済みの上記光記録媒体を、上記日立コンピュータ機器社製初期化装置を用いて、線速度20m/s、電力1600mW、送り45μm/rで、内周から外周に向けて、線速度一定で光記録層を全面再初期化した。再初期化後の光記録媒体も同様に、DVD−ROM再生可能なフォーマットでオーバーライト(DOW)可能であり、リサイクル可能であることが確認された。
【0054】
実施例9
溝幅0.25μm、溝深さ27nm、ウオブル溝の周期4.26μmの案内溝を有する厚さ0.6mmのポリカーボネート基板を射出成型し、10分間の室温放置後、その上に、下部保護層、界面層、光記録層、上部保護層、中間層、光反射層を順次スパッタリング法により積層した。下部保護層には厚さ55nmの(ZnS)80(SiO20(モル%)、界面層には厚さ4nmの(ZrO80(TiO20(モル%)、光記録層には厚さ11nmのAgGeInSb72Te21、上部保護層には厚さ12nmの(ZnS)80(SiO20(モル%)、中間層には厚6nmのTi22Nb222036、光反射層には厚さ140nmのCu−0.5重量%−純度99.5重量%のAgの光反射層を用いた。
その結果、ポリカーボネート基板/(ZnS)80(SiO20(モル%):55nm/(ZrO80(TiO20(モル%):4nm/AgGeInSb72Te21:11nm/(ZnS)80(SiO20(モル%):12nm/Ti22Nb222036:6nm/Cu−0.5重量%−純度99.5重量%のAg:140nmという層構成を形成した。
中間層の製膜条件は、圧力5.5×10−3mbar、スパッタ速度2nm/sとし、比較的製膜速度を小さく抑え、基板吸着ガスの膜表面への入射頻度を増大させた。
次いで、光反射層上に、室温粘度120cps、硬化後のガラス転移温度149℃となる紫外線硬化型樹脂(大日本インキ化学工業社製、SD318)をスピンコートして樹脂保護層を形成し、相変化型光記録媒体の単板ディスクを作成した。
次いで、ポリカーボネート製の貼り合わせ基板を、室温粘度450cps、硬化後のガラス転移温度が75℃となる紫外線硬化型接着剤(日本化薬社製、DVD003)で貼り合わせて、相変化型光記録媒体を得、更に80℃85%RHに24時間放置した。
続いて、大口径LD(ビーム径75μm×1μm)を有する日立コンピュータ機器社製初期化装置を用いて、線速度11m/s、電力1200mW、送り36μm/rで、内周から外周に向けて、線速度一定で光記録層を全面結晶化した。初期化によって、Agが剥離することはなかった。また、界面をXPSによって分析すると、Ti−O、Ti−C、Nb−C、Nb−Oと推察されるスペクトルが得られた。
【0055】
次に、得られた相変化型光記録媒体に対し、パルステック社製の記録再生評価装置DDU1000を用いて、記録線速度14m/s、波長657nm、NA0.65、記録パワー17〜22mWで、DVD−ROM再生可能なフォーマットでオーバーライト(DOW)した。その結果、2000回以上のオーバーライトでもジッター9%以下と良好であった。
次に、記録済みの相変化型光記録媒体を、80℃85%RHで所定の時間保存した結果、300時間保存後も劣化は認められなかった。また、この記録済みの相変化型光記録媒体をTEM観察した結果、中間層の電子線回折は非晶質を示すハローパターンであった。SEMによる光反射層表面の観察から、Ag結晶粒子の平均的な大きさは、0.12μmであり、80℃85%RH300時間保存後も0.12μmであり、信頼性が良好であった。その結果、ノイズの小さな再生信号が獲得でき、エラーの増大も認められなかった。
更に、記録済みの上記光記録媒体を、上記日立コンピュータ機器社製初期化装置を用いて、線速度10m/s、電力1200mW、送り36μm/rで、内周から外周に向けて、線速度一定で光記録層を全面再初期化した。再初期化後の光記録媒体も同様に、DVD−ROM再生可能なフォーマットでオーバーライト(DOW)可能であり、リサイクル可能であることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】光記録媒体の発光パターンの一例を示す図。
【図2】本発明の光記録媒体の層構成例を示す図。
【図3】実施例4〜6、比較例3〜4の光ディスクについて、高温高湿下でのディスク欠陥率の推移を調べた結果を示す図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に少なくとも下部保護層、光記録層、上部保護層、中間層、Agを95原子%以上含有する光反射層を有し、該中間層が、Ti、Nb、Taから選ばれる少なくとも1種の元素の炭化物を含み、最小記録マークの記録時間が34ns以下でも記録可能であることを特徴とする光記録媒体。
【請求項2】
基板上に少なくとも下部保護層、光記録層、上部保護層、中間層、Agを95原子%以上含有する光反射層を有し、該中間層が、Ti、Nb、Taから選ばれる少なくとも1種の元素の炭化物を含み、チャンネルビット長の記録時間が11ns以下でも記録可能であることを特徴とする光記録媒体。
【請求項3】
基板上に少なくとも下部保護層、光記録層、上部保護層、中間層、Agを95原子%以上含有する光反射層を有し、該中間層が、Ti、Nb、Taから選ばれる少なくとも1種の元素の炭化物を含み、記録線速度が11m/s以上でも記録可能であることを特徴とする光記録媒体。
【請求項4】
基板上に少なくとも下部保護層、光記録層、上部保護層、中間層、Agを95原子%以上含有する光反射層を有し、該中間層が、Ti、Nb、Taから選ばれる少なくとも1種の元素(M)と、炭素(C)と、酸素(O)を含み、最小記録マークの記録時間が34ns以下でも記録可能であることを特徴とする光記録媒体。
【請求項5】
基板上に少なくとも下部保護層、光記録層、上部保護層、中間層、Agを95原子%以上含有する光反射層を有し、該中間層が、Ti、Nb、Taから選ばれる少なくとも1種の元素(M)と、炭素(C)と、酸素(O)を含み、チャンネルビット長の記録時間が11ns以下でも記録可能であることを特徴とする光記録媒体。
【請求項6】
基板上に少なくとも下部保護層、光記録層、上部保護層、中間層、Agを95原子%以上含有する光反射層を有し、該中間層が、Ti、Nb、Taから選ばれる少なくとも1種の元素(M)と、炭素(C)と、酸素(O)を含み、記録線速度が11m/s以上でも記録可能であることを特徴とする光記録媒体。
【請求項7】
MがTi、Nb、Taから選ばれる何れか1種のみであることを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の光記録媒体。
【請求項8】
中間層が、Mと炭素の化学結合及び/又はMと酸素の化学結合を含むことを特徴とする請求項1〜7の何れかに記載の光記録媒体。
【請求項9】
中間層がTi、C、Oを含み、Ti、C、Oの組成比をそれぞれα、β、γ(原子%)として、次の関係を満たすことを特徴とする請求項1〜8の何れかに記載の光記録媒体。
37≦α≦48
12≦β≦45
7≦γ≦51
α+β+γ=100
【請求項10】
中間層がNb、C、Oを含み、Nb、C、Oの組成比をそれぞれα、β、γ(原子%)として、次の関係を満たすことを特徴とする請求項1〜8の何れかに記載の光記録媒体。
33≦α≦47
9≦β≦43
10≦γ≦58
α+β+γ=100
【請求項11】
中間層がTa、C、Oを含み、Ta、C、Oの組成比をそれぞれα、β、γ(原子%)として、次の関係を満たすことを特徴とする請求項1〜8の何れかに記載の光記録媒体。
32≦α≦47
9≦β≦43
10≦γ≦59
α+β+γ=100
【請求項12】
中間層の膜厚が、1〜9nmであることを特徴とする請求項1〜11の何れかに記載の光記録媒体。
【請求項13】
上部保護層の主成分が、ZnSとSiOであることを特徴とする請求項1〜12の何れかに記載の光記録媒体。
【請求項14】
記録層の主成分が、組成式AgαGeβInγSbδTeε(α、β、γ、δ、εは原子%)で表される合金であり、0≦α≦5、0≦β≦5、2≦γ≦10、60≦δ≦90、15≦ε≦30、α+β+γ+δ+ε=100を満たすことを特徴とする請求項1〜13の何れかに記載の光記録媒体。
【請求項15】
記録層の主成分が、組成式Xα′Geβ′Sbγ′Snσ′ε′(α′、β′、γ′、δ′、ε′は原子%)で表される合金であり、XはGa及び/又はIn、ZはBi及び/又はTe、2≦α′≦20、2≦β′≦20、60≦γ′≦90、5≦δ′≦25、0≦ε′≦10、α′+β′+γ′+δ′+ε′=100を満たすことを特徴とする請求項1〜13の何れかに記載の光記録媒体。
【請求項16】
半導体レーザーによる光記録層の再結晶化により再利用が可能であることを特徴とする請求項1〜15の何れかに記載の光記録媒体。
【請求項17】
請求項1〜16の何れかに記載の光記録媒体の製造過程における抜き取り検査として、初期結晶化前のディスクを高温高湿環境下に保管し、その後、初期結晶化プロセスを行ったときのディスク外観、又はエラー数や欠陥率等を検査することにより、製造されたディスクの品質又は製造プロセスの良否を評価することを特徴とする光記録媒体の製造方法。
【請求項18】
TiCとTiOからなり、Ti、C、Oの組成比をそれぞれα、β、γ(原子%)として、次の関係を満たすことを特徴とするスパッタリングターゲット。
37≦α≦48
12≦β≦45
7≦γ≦51
α+β+γ=100
【請求項19】
NbCとNbからなり、Nb、C、Oの組成比をそれぞれα、β、γ(原子%)として、次の関係を満たすことを特徴とするスパッタリングターゲット。
33≦α≦47
9≦β≦43
10≦γ≦58
α+β+γ=100
【請求項20】
TaCと、Taからなり、Ta、C、Oの組成比をそれぞれα、β、γ(原子%)として、次の関係を満たすことを特徴とするスパッタリングターゲット。
32≦α≦47
9≦β≦43
10≦γ≦59
α+β+γ=100

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−4588(P2006−4588A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−344215(P2004−344215)
【出願日】平成16年11月29日(2004.11.29)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】