説明

光記録媒体の製造方法および光記録媒体

【課題】 低コストで、かつ、高い生産性をもって、ハードコート層を備え、かつ、反射層の変質や腐食が効果的に抑制された光記録媒体を製造することができる光記録媒体の製造方法、および、低コストで、優れた光学的特性を有するハードコート層を備えた光記録媒体を提供する。
【解決手段】 光透過性を有する基板のレーザビームが入射すべき面に、低揮発性の反応開始剤を含む紫外線硬化性樹脂組成物を塗布して塗膜を形成し、前記塗膜に紫外線を照射して前記塗膜を硬化させてハードコート層を形成し、前記ハードコート層に対して、前記基板の反対側の面に、気相成長法によってAgからなる材料で反射層を形成することを特徴とする光記録媒体の製造方法、および、基板のレーザビームが入射すべき面に低揮発性の反応開始剤またはその分解物が含まれているハードコート層を備えた光記録媒体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光記録媒体の製造方法および光記録媒体に関するものであり、さらに詳細には、低コストで、かつ、高い生産性をもって、ハードコート層を備え、かつ、反射層の変質や腐食が効果的に抑制された光記録媒体を製造することができる光記録媒体の製造方法、および、低コストで、優れた光学的特性を有するハードコート層を備えた光記録媒体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、大容量のデジタルデータを記録するための記録媒体として、CDやDVDに代表される光記録媒体が広く用いられている。
【0003】
DVDは、記録・再生のために照射するレーザビームとして、CDよりも波長が短いレーザビームを用いるとともに、記録光学系および再生光学系の対物レンズとして、CDの記録および再生に用いる対物レンズよりも開口数の大きい対物レンズを用いることによって、大容量のデータを、高密度に記録し、再生することができるように構成されている。
【0004】
このようなDVDにおいては、照射するレーザビームの波長が短く、対物レンズの開口数が大きいほど、ディスクの反りによって、コマ収差が発生しやすく、データの記録および再生精度が低下する傾向がある。
【0005】
したがって、ディスクの反りに対するマージンを増大させ、データの記録および再生精度の低下を防止するために、光透過性を有する基板は、CDの基板の厚さの約半分の約0.6mmの厚さに形成され、DVDは、この基板と、約0.6mmの厚さを有するダミー基板と、これらの間に記録層や反射層などを備えた1.2mmの厚さを有するディスク構造を有している。
【0006】
また、DVDにおいては、光透過性を有する基板の表面に傷がついたときは、CDの場合に比して、より悪影響が大きくなる。したがって、基板の表面に、傷がつくことを防止するために、基板の表面に、基板の材料よりも硬く、傷が付きにくいハードコート層を形成したDVDが提案されている。
【0007】
このような基板の表面にハードコート層が形成されたDVDは、たとえば、基板のレーザビームが入射すべき面に、高い表面硬度を有するハードコート層を形成し、次いで、ハードコート層に対して、基板の反対側の面に、記録層や反射層などを、たとえば、気相成長法によって形成して、ハードコート層と、基板と、記録層や反射層などとを備えた積層体を作製し、この積層体とダミー基板との間に、紫外線硬化性樹脂を含む接着剤組成物を介在させて、スピンコーティング装置によって、接着剤組成物を、積層体とダミー基板の間で展開させ、さらに、紫外線を照射して、接着剤組成物を硬化させることによって、製造されることが、基板を成形後にハードコート層を設けるため、基板のレーザビームが入射すべき面に異物などが付着することが少なくなり、高い歩留が得られる点で好ましく、このようなDVDの製造方法が実用化されつつある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、このような製造方法において、反射層をAgからなる材料を用いて形成した場合には、反射層が容易に変質され、腐食されて、光記録媒体に記録したデータを再生したときの再生信号のジッタが悪化し、また、再生信号のエラーレート(PIエラー)が劣化してしまい、光記録媒体の光学的特性が著しく低下するという問題があった。
【0009】
かかる問題は、ハードコート層を形成した後に、ハードコート層をアニール処理することなどによって解決することができるが、一旦、形成されたハードコート層をアニール処理する場合などには、生産性が高いインライン製造や生産ラインを一本化することが困難であり、したがって、光記録媒体の製造工程数の増加に伴って、光記録媒体の製造コストが高くなるだけでなく、生産性が著しく悪化してしまう。
【0010】
また、反射層が容易に変質され、腐食されるという問題は、Agを主成分として含む優れた耐食性を有する合金材料を用いて、反射層を形成することによって解決することができるが、このような合金材料は非常に高価であるため、光記録媒体の製造コストが高くなってしまうという問題があった。
【0011】
したがって、本発明の目的は、低コストで、かつ、高い生産性をもって、ハードコート層を備え、かつ、反射層の変質や腐食が効果的に抑制された光記録媒体を製造することができる光記録媒体の製造方法を提供することにある。
【0012】
また、本発明の別の目的は、低コストで、優れた光学的特性を有するハードコート層を備えた光記録媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、本発明のかかる目的を達成するため、鋭意研究を重ねた結果、基板のレーザビームが入射すべき面に、ハードコート層を形成し、次いで、ハードコート層に対して、基板の反対側の面に、気相成長法によって、高真空中で、記録層や反射層などを形成する際に、ハードコート層を形成するために用いられた紫外線硬化性樹脂組成物に含まれた反応開始剤やその分解物などが、ガス化して、形成されつつある記録層や反射層に取り込まれ、あるいは、形成された記録層表面や反射層表面に吸着または接触することによって、Agからなる材料によって形成された反射層に悪影響を与え、その結果、反射層が変質され、腐食されやすいことを見出した。
【0014】
本発明者はかかる知見に基づいて、さらに研究を重ねた結果、基板のレーザビームが入射すべき面に、低揮発性の反応開始剤を含む紫外線硬化性樹脂組成物によって、ハードコート層を形成し、次いで、ハードコート層に対して、基板の反対側の面に、気相成長法によって、高真空中で、記録層や反射層などを形成した場合には、反射層を形成するための材料として安価なAgを用いても、反射層が変質し、腐食することを効果的に防止して、ハードコート層を備えた光記録媒体を製造することが可能になり、また、単に、紫外線硬化性樹脂組成物によって、ハードコート層を形成するだけで、一旦、形成したハードコート層をアニール処理などする必要がないから、生産性が高いインライン製造や生産ラインを一本化することが容易になり、したがって、低コストで、かつ、高い生産性をもって、ハードコート層を備え、かつ、反射層の変質や腐食が効果的に抑制された光記録媒体を製造し得ることを見出した。
【0015】
本発明はかかる知見に基づくものであり、本発明によれば、本発明の前記目的は、光透過性を有する基板のレーザビームが入射すべき面に、低揮発性の反応開始剤を含む紫外線硬化性樹脂組成物を、塗布して、塗膜を形成し、前記塗膜に紫外線を照射して、前記塗膜を硬化させて、ハードコート層を形成し、前記ハードコート層に対して、前記基板の反対側の面に、気相成長法によって、Agからなる材料で、反射層を形成することを特徴とする光記録媒体の製造方法によって達成される。
【0016】
本明細書において、「Agからなる材料」とは、Agのみからなる材料に加えて、不可避的な不純物を除いてAgからなる材料を含んでいる。
【0017】
本発明において、ハードコート層を形成するための紫外線硬化性樹脂組成物は、紫外線硬化性オリゴマーまたは紫外線硬化性モノマー、および、低揮発性の反応開始剤を含んでいる。
【0018】
この紫外線硬化性樹脂組成物は、紫外線が照射されて、硬化されると、その後に、気相成長法によって、真空中で、記録層や反射層などを形成する際に、高真空中でも、紫外線硬化性樹脂組成物に含まれた反応開始剤またはその分解物のガスなどを発生することが少ないから、この紫外線硬化性樹脂組成物によって、ハードコート層を形成した場合には、その後に、Agからなる材料によって反射層を形成しても、反射層が変質し、腐食することを効果的に抑制することができる。
【0019】
したがって、この紫外線硬化性樹脂組成物を用いて、ハードコート層を形成した場合には、その後に、安価なAgからなる材料によって反射層を形成することが可能になるとともに、反射層が変質し、腐食することを効果的に抑制することができるため、初期からより高品位の電気信号(ノイズ成分が少ない)が得られ、このハードコート層を備えた光記録媒体を長い期間にわたって保存することもできるから、優れた光学的特性を有するハードコート層を備えた光記録媒体を製造することが可能になる。
【0020】
また、この紫外線硬化性樹脂組成物を用いて、ハードコート層を形成した場合には、単に、紫外線硬化性樹脂組成物によってハードコート層を形成するだけで、形成したハードコート層をアニール処理などする必要がないから、生産性が高いインライン製造や生産ラインを一本化することが容易になり、したがって、低コストで、かつ、高い生産性をもって、反射層が変質し、腐食することが効果的に抑制された光記録媒体を製造することが可能になる。
【0021】
本発明において、反射層を形成するために用いられる気相成長法は、真空中で行われるものであれば、とくに限定されるものではないが、たとえば、真空蒸着法、スパッタリング法などが挙げられ、スパッタリング法によって、反射層が形成されることが好ましい。
【0022】
本発明において、紫外線硬化性樹脂組成物に含まれている反応開始剤は、反応開始剤自体、または、紫外線が照射されることによって、分解された反応開始剤の分解物や変性物などが、低揮発性を有しているものであれば、とくに限定されるものではなく、たとえば、紫外線が照射されて紫外線硬化性樹脂組成物が硬化する際に、反応開始剤またはその分解物が、紫外線硬化性オリゴマーまたは紫外線硬化性モノマーと共重合し、紫外線硬化性オリゴマーまたは紫外線硬化性モノマーとともに、ハードコート層を形成することが可能になるように、少なくとも1つのラジカル反応性基を有する共重合可能な反応開始剤、または、分子量が比較的大きく、その揮発性を低下させた高分子量の反応開始剤などが挙げられる。
【0023】
本発明において、少なくとも1つのラジカル反応性基を有する共重合可能な反応開始剤としては、反応開始剤が少なくとも1つのラジカル反応性基を有していれば、とくに限定されるものではない。反応開始剤が少なくとも1つのラジカル反応性基を有している場合には、紫外線硬化性樹脂組成物が硬化する際に、反応開始剤またはその分解物が、紫外線硬化性オリゴマーまたは紫外線硬化性モノマーと共重合し、これらとともに、ハードコート層を形成しうるから、反応開始剤またはその分解物のガスなどが発生することを効果的に抑制することが可能になる。
【0024】
本明細書において、ラジカル反応性基は、紫外線を照射することによって、ラジカル重合反応しうる基であれば、とくに限定されるものではないが、エチレン性不飽和結合であることが好ましく、CH=C(R)−基(ここに、Rは、水素原子またはメチル基である。)、あるいは、CH=C(R)−COO−基(ここに、Rは、水素原子またはメチル基である。)であることがとくに好ましい。
【0025】
本発明において、共重合可能な反応開始剤として、2つ以上のラジカル反応性基を有している反応開始剤を用いることもできる。2つ以上のラジカル反応性基を有している反応開始剤を用いる場合には、反応開始剤またはその分解物が、紫外線硬化性オリゴマーまたは紫外線硬化性モノマーと共重合しやすくなり、反応開始剤またはその分解物のガスなどを発生することを効果的に抑制することが可能になる。
【0026】
このような2つ以上のラジカル反応性基を有している反応開始剤としては、紫外線が照射されて反応開始剤が解裂または分解した場合に、発生するそれぞれの分解物などに少なくとも1つのラジカル反応性基を有するように、反応開始剤が2つ以上のラジカル反応性基を有していることが好ましい。それぞれの分解物などに少なくとも1つのラジカル反応性基を有している場合には、それぞれの分解物などを紫外線硬化性オリゴマーまたは紫外線硬化性モノマーと共重合させることができ、これらのガスなどを発生することを、より一層、効果的に抑制することが可能になる。
【0027】
本発明において、高分子量の反応開始剤としては、反応開始剤が高分子量を有しているものであれば、とくに限定されるものではないが、たとえば、上述の共重合可能な反応開始剤の分子中に有する少なくとも1つのラジカル反応性基を、ラジカル重合させて、オリゴマーまたはポリマーとした反応開始剤が好ましい。反応開始剤が、オリゴマーまたはポリマーとされた場合には、反応開始剤自体の揮発性が低下し、また、その分解物なども高分子量となるため、これらのガスなどを発生することを効果的に抑制することが可能になる。
【0028】
本明細書において、オリゴマーまたはポリマーとされた反応開始剤の数平均分子量は、とくに限定されるものではないが、たとえば、2000以上、好ましくは、3000以上であることが好ましい。
【0029】
また、本発明者のさらなる研究によれば、紫外線が照射されて反応開始剤が解裂または分解した分解物などがベンゾイルラジカル部分を含んでいる場合には、反射層が変質され、腐食されやくなることが見出されている。
【0030】
したがって、本発明においては、上述した反応開始剤のなかでも、紫外線が照射されて、解裂または分解したときに、ベンゾイルラジカルを発生する部分に、ラジカル反応性基の少なくとも1つを有していること、または、ベンゾイルラジカルを発生する部分が、オリゴマーまたはポリマーの主鎖に結合していることがより好ましい。紫外線が照射されて、解裂または分解したときに、ベンゾイルラジカルを発生する部分に、ラジカル反応性基の少なくとも1つを有している場合には、ベンゾイルラジカルを発生しても、ベンゾイルラジカルを発生する部分が、紫外線硬化性オリゴマーまたは紫外線硬化性モノマーと共重合し、これらとともに、ハードコート層を形成するから、または、ベンゾイルラジカルを発生する部分が、オリゴマーまたはポリマーの主鎖に結合している場合には、高分子量であって低揮発性を有しているから、ベンゾイルラジカルを発生する部分のガスなどが発生することを、より一層、効果的に抑制することが可能になる。
【0031】
また、本発明者の研究によれば、紫外線が照射されて反応開始剤が解裂または分解したときに、発生するガスなどが、構成原子として、イオウ原子および塩素原子を含んでいる場合には、Agからなる材料によって形成された反射層が変質され、腐食されやすいことが見出されている。
【0032】
したがって、本発明においては、上述した反応開始剤のなかでも、紫外線が照射されて、反応開始剤が、解裂または分解したときに、ラジカル反応性基を有する部分以外の部分、または、オリゴマーまたはポリマーの主鎖に結合している部分以外の部分に、構成原子として、イオウ原子および塩素原子を含んでいないことがさらに好ましい。紫外線が照射されて、反応開始剤が、解裂または分解したときに、ラジカル反応性基を有する部分以外の部分、または、オリゴマーまたはポリマーの主鎖に結合している部分以外の部分に、構成原子として、イオウ原子および塩素原子を含んでいない場合には、この部分がガス化したとしても、Agからなる材料によって形成された反射層に、大きな悪影響を与えることが少なく、したがって、反射層が変質され、腐食されることを確実に防止することが可能になる。
【0033】
本発明において、反応開始剤の含有量は、とくに限定されるものではないが、たとえば、紫外線硬化性樹脂組成物の総質量に対して、0.3質量%ないし7質量%程度であることが好ましく、0.5質量%ないし5質量%程度であることがより好ましい。反応開始剤の含有量が、0.3質量%未満であると、紫外線硬化性樹脂組成物を充分に硬化させることが困難であり、7質量%を超えていると、反応開始剤自身が不純物として働きハードコート層の特性、とくに表面硬度を低下させてしまうおそれがあり、また、反応開始剤やその分解物などに由来するガスが増えるため、記録層や反射層に悪影響を与え、その結果的、光記録媒体の光学的特性が著しく低下してしまうおそれがある。
【0034】
本発明において、低揮発性の反応開始剤を含む紫外線硬化性樹脂組成物は、基板のレーザビームが入射すべき面に、塗布されて、ハードコート層とされるため、紫外線硬化性樹脂組成物は、ハードコート層とされたときに、650nm程度の波長を有するレーザビームに対して、高い光透過率を有していることが必要である。
【0035】
本発明において、紫外線硬化性樹脂組成物は、紫外線硬化性オリゴマーまたは紫外線硬化性モノマーおよび低揮発性の反応開始剤を含んでいればよく、これらに加えて、所望により、増感剤、光開始助剤などを添加してもよい。紫外線硬化性樹脂組成物が、さらに、増感剤、光開始助剤などを含んでいる場合には、紫外線硬化性樹脂組成物の硬化性を向上させることができ、より一層、高い表面硬度を有するハードコート層を形成することが可能になる。
【0036】
また、紫外線硬化性樹脂組成物は、ハードコート層の特性を向上させるための無機微粒子、撥水性、撥油性および潤滑性に優れた表面を形成するためのシリコーン系化合物またはフッ素系化合物、有機フィラー、重合禁止剤、酸化防止剤、光安定剤、消泡剤、レベリング剤、顔料、帯電防止剤などの添加剤を含んでいてもよい。紫外線硬化性樹脂組成物が、これらの添加剤を含んでいる場合には、ハードコート層の表面硬度が、より一層、高くなり、また、ハードコート層表面のスリップ性が向上して、ハードコート層表面が傷つきにくくなり、さらに、ハードコート層表面にゴミなどが付着しにくくなる。
【0037】
本発明において、低揮発性の反応開始剤を含む紫外線硬化性樹脂組成物によって、ハードコート層を形成する方法は、とくに限定されるものではないが、たとえば、基板のレーザビームが入射すべき面に、低揮発性の反応開始剤を含む紫外線硬化性樹脂組成物を、塗布して、塗膜を形成し、塗膜に紫外線を照射して、塗膜を硬化させて、ハードコート層を形成する方法、あるいは、低揮発性の反応開始剤を含む紫外線硬化性樹脂組成物によって、成形された樹脂フィルムを、基板のレーザビームが入射すべき面に、接着剤によって、貼り合わせて、ハードコート層を形成する方法などが挙げられる。
【0038】
本発明においては、ハードコート層が、基板のレーザビームが入射すべき面に、低揮発性の反応開始剤を含む紫外線硬化性樹脂組成物を、塗布して、塗膜を形成し、塗膜に紫外線を照射して、塗膜を硬化させて、形成されることが、生産性が高く、好ましい。このようにしてハードコート層を形成する場合には、紫外線硬化性樹脂組成物は、スピンコーティング法によって、塗布されることが好ましいが、その塗布方法は、とくに限定されるものではない。
【0039】
基板のレーザビームが入射すべき面に、紫外線硬化性樹脂組成物を、塗布して、塗膜を形成し、塗膜に紫外線を照射して、塗膜を硬化させて、ハードコート層を形成する際に、紫外線を照射する際の雰囲気は、とくに限定されるものではないが、窒素ガス、希ガス、二酸化炭素ガスなどの不活性ガス雰囲気中で、紫外線を照射することが好ましい。不活性ガス雰囲気中で、紫外線を照射する場合には、紫外線硬化性樹脂組成物を硬化させる際に、酸素阻害を防止することができるため、ハードコート層表面の架橋密度を向上させることができ、したがって、高い表面硬度を有するハードコート層を形成することが可能になる。
【0040】
基板のレーザビームが入射すべき面に、紫外線硬化性樹脂組成物を塗布して、塗膜を形成し、前記塗膜に紫外線を照射して、前記塗膜を硬化させて、ハードコート層を形成する際に、紫外線の照射量などは、紫外線硬化性樹脂組成物が硬化するのに十分な量の紫外線が照射されれば、とくに限定されるものではないが、たとえば、高圧水銀灯などを用いて、照度700mW/cm以上、照射量1.0J/cm以上の照射条件で、紫外線を照射することが好ましい。この照射条件で、紫外線を照射する場合には、反応開始剤を速やかに分解して、ラジカルを効率的に発生させることができるため、ハードコート層表面の架橋密度を向上させることができ、したがって、高い表面硬度を有するハードコート層を形成することが可能になる。
【0041】
本発明の光記録媒体の製造方法によって製造可能な光記録媒体は、基板の表面にプリピットが形成された再生専用型(ROM型)のDVDとして構成されていてもよく、また、基板と反射層との間に、さらに、記録層を備えたDVDとして構成されていてもよい。記録層は、とくに限定されるものではなく、有機色素や無機材料などを含む一層または二層以上の追記型の記録層として構成されていても、相変化材料を含む書き換え型の記録層として構成されていてもよい。
【0042】
また、本発明の別の目的は、少なくとも、光透過性を有する基板と、ダミー基板と、前記基板と前記ダミー基板との間に、Agからなる材料によって形成された反射層と、前記反射層と前記ダミー基板との間に設けられた接着層と、前記基板のレーザビームが入射すべき面に、紫外線硬化性樹脂組成物に含まれた低揮発性の反応開始剤またはその分解物などが含まれているハードコート層とを備えた光記録媒体によって達成される。
【0043】
本発明において、ハードコート層に、低揮発性の反応開始剤またはその分解物などが含まれていることは、高真空中に、ハードコート層を放置して、ハードコート層からガス化した成分を捕捉し、または、ハードコート層を溶剤中に浸漬し、ハードコート層から溶出した成分を抽出し、これらの成分を、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)や高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で、容易に確認することができる。
【0044】
本発明者の研究によれば、ハードコート層に、低揮発性の反応開始剤またはその分解物などが含まれており、これらは、ハードコート層を形成し、または、揮発性が低いから、ハードコート層から反応開始剤またはその分解物のガスなどを発生することが少なく、したがって、反射層が変質され、腐食されることがなく、反射層を形成するための材料として安価なAgからなる材料を用いても、反射層が変質し、腐食することを効果的に抑制することができるから、光記録媒体に記録したデータを再生したときの再生信号のジッタが悪化し、また、再生信号のエラーレート(PIエラー)が劣化することを効果的に防止することが可能になる。
【0045】
本発明において、光記録媒体は、前記基板の表面にプリピットが形成された再生専用型(ROM型)のDVDとして構成されていてもよく、また、前記基板と前記反射層との間に記録層を、さらに、備えたDVDとして構成されていてもよい。記録層は、とくに限定されるものではなく、有機色素や無機材料などを含む一層または二層以上の追記型の記録層として構成されていても、相変化材料を含む書き換え型の記録層として構成されていてもよい。
【0046】
本発明において、前記光記録媒体は、さらに、前記反射層と前記接着層の間に、保護層を備えていることが好ましい。
【発明の効果】
【0047】
本発明によれば、低コストで、かつ、高い生産性をもって、ハードコート層を備え、かつ、反射層の変質や腐食が効果的に抑制された光記録媒体を製造することができる光記録媒体の製造方法を提供することが可能になる。
【0048】
また、本発明によれば、低コストで、優れた光学的特性を有するハードコート層を備えた光記録媒体を提供することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0049】
本発明において、ハードコート層を形成するための紫外線硬化性樹脂組成物は、紫外線硬化性オリゴマーまたは紫外線硬化性モノマー、ならびに、低揮発性の反応開始剤を含んでいる。
【0050】
この紫外線硬化性樹脂組成物は、反応開始剤またはその分解物のガスなどを発生することが少ないから、この紫外線硬化性樹脂組成物によってハードコート層を形成した場合には、その後に、Agからなる材料によって反射層を形成しても、反射層が変質し、腐食することを効果的に抑制することができる。
【0051】
したがって、この紫外線硬化性樹脂組成物を用いて、ハードコート層を形成した場合には、その後に、安価なAgからなる材料によって反射層を形成することが可能になるとともに、反射層が変質し、腐食することを効果的に抑制することができるため、初期からより高品位の電気信号(ノイズ成分が少ない)が得られ、このハードコート層を備えた光記録媒体を長い期間にわたって保存することもできるから、優れた光学的特性を有するハードコート層を備えた光記録媒体を製造することが可能になる。
【0052】
本発明において、低揮発性の反応開始剤を含む紫外線硬化性樹脂組成物は、基板のレーザビームが入射すべき面に、塗布されて、ハードコート層とされるため、紫外線硬化性樹脂組成物は、ハードコート層とされたときに、650nm程度の波長を有するレーザビームに対して、高い光透過率を有していることが必要である。
【0053】
本発明において、紫外線硬化性樹脂組成物に含まれている反応開始剤は、反応開始剤自体、または、紫外線が照射されることによって、分解された反応開始剤の分解物や変性物などが、低揮発性を有しているものであれば、とくに限定されるものではなく、たとえば、紫外線が照射されて紫外線硬化性樹脂組成物が硬化する際に、反応開始剤またはその分解物が、紫外線硬化性オリゴマーまたは紫外線硬化性モノマーと共重合し、紫外線硬化性オリゴマーまたは紫外線硬化性モノマーとともに、ハードコート層を形成することが可能になるように、少なくとも1つのラジカル反応性基を有する共重合可能な反応開始剤、または、分子量が比較的大きく、その揮発性を低下させた高分子量の反応開始剤などが挙げられる。
【0054】
本発明において、少なくとも1つのラジカル反応性基を有する共重合可能な反応開始剤としては、反応開始剤が少なくとも1つのラジカル反応性基を有していれば、とくに限定されるものではない。この場合には、反応開始剤またはその分解物のガスなどが発生することを効果的に抑制することが可能になる。
【0055】
このような共重合可能な反応開始剤としては、たとえば、4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパン、アクリル化ベンゾフェノン(たとえば、ダイセルUCB株式会社製、商品名「EB P36」)などが挙げられる。
【0056】
このような少なくとも1つのラジカル反応性基を有している反応開始剤は、市販品を用いてもよく、また、通常の方法により、適宜製造してもよい。たとえば、4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトンは、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン(たとえば、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製、商品名:「イルガキュア2959」)の4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル基のヒドロキシ基と、アクリル酸クロライドなどを選択的に反応させることによって、製造することができる。
【0057】
本発明において、共重合可能な反応開始剤として、2つ以上のラジカル反応性基を有している反応開始剤を用いることもできる。この場合には、反応開始剤またはその分解物のガスなどを発生することを効果的に抑制することが可能になる。
【0058】
このような2つ以上のラジカル反応性基を有している反応開始剤としては、紫外線が照射されて反応開始剤が解裂または分解した場合に、発生するそれぞれの分解物などに少なくとも1つのラジカル反応性基を有するように、反応開始剤が2つ以上のラジカル反応性基を有していることが好ましい。この場合には、それぞれの分解物などを紫外線硬化性オリゴマーまたは紫外線硬化性モノマーと共重合させることができ、これらのガスなどを発生することを、より一層、効果的に抑制することが可能になる。
【0059】
また、本発明において、高分子量の反応開始剤としては、反応開始剤が高分子量を有しているものであれば、とくに限定されるものではないが、たとえば、上述の共重合可能な反応開始剤の分子中に有する少なくとも1つのラジカル反応性基を、ラジカル重合させて、オリゴマーまたはポリマーとした反応開始剤が好ましい。この場合には、反応開始剤またはその分解物のガスなどが発生することを効果的に抑制することが可能になる。
【0060】
このような高分子量の反応開始剤としては、たとえば、上述の共重合可能な反応開始剤を重合させた反応開始剤が挙げられ、より具体的には、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパンを重合させた2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパンのオリゴマー(たとえば、日本シイベルヘグナー株式会社製、商品名「KIP150」)などが挙げられる。
【0061】
このような高分子量の反応開始剤は、市販品を用いてもよく、また、通常の方法により、上述の共重合可能な反応開始剤を適宜重合させて製造してもよい。
【0062】
また、本発明者のさらなる研究によれば、紫外線が照射されて反応開始剤が解裂または分解した分解物などがベンゾイルラジカル部分を含んでいる場合には、反射層が変質され、腐食されやくなることが見出されている。
【0063】
したがって、本発明においては、上述した反応開始剤のなかでも、紫外線が照射されて、解裂または分解したときに、ベンゾイルラジカルを発生する部分に、ラジカル反応性基の少なくとも1つを有していること、または、ベンゾイルラジカルを発生する部分が、オリゴマーまたはポリマーの主鎖に結合していることがより好ましい。これらの場合には、ベンゾイルラジカルを発生する部分のガスなどが発生することを、より一層、効果的に抑制することが可能になる。
【0064】
また、本発明者の研究によれば、紫外線が照射されて反応開始剤が解裂または分解したときに、発生するガスなどが、構成原子として、イオウ原子および塩素原子を含んでいる場合には、Agからなる材料によって形成された反射層が変質され、腐食されやすいことが見出されている。
【0065】
したがって、本発明においては、上述した反応開始剤のなかでも、紫外線が照射されて、反応開始剤が、解裂または分解したときに、ラジカル反応性基を有する部分以外の部分、または、オリゴマーまたはポリマーの主鎖に結合している部分以外の部分に、構成原子として、イオウ原子および塩素原子を含んでいないことがさらに好ましい。この場合には、反射層が変質され、腐食されることを確実に防止することが可能になる。
【0066】
本発明において、反応開始剤は、一種単独で用いてもよいし、二種以上を混合して用いてもよい。
【0067】
本発明において、反応開始剤の含有量は、とくに限定されるものではないが、たとえば、紫外線硬化性樹脂組成物の総質量に対して、0.3質量%ないし7質量%程度であることが好ましく、0.5質量%ないし5質量%程度であることがより好ましい。反応開始剤の含有量が、0.3質量%未満であると、紫外線硬化性樹脂組成物を充分に硬化させることが困難であり、7質量%を超えていると、反応開始剤自身が不純物として働きハードコート層の特性、とくに表面硬度を低下させてしまうおそれがあり、また、反応開始剤やその分解物などに由来するガスが増えるため、記録層や反射層に悪影響を与え、その結果的、光記録媒体の光学的特性が著しく低下してしまうおそれがある。
【0068】
紫外線硬化性樹脂組成物に含まれている紫外線硬化性オリゴマーまたは紫外線硬化性モノマーは、650nm程度の波長を有するレーザビームに対して、高い光透過率を有し、(メタ)アクリロイル基、ビニル基およびアリル基からなる群から選ばれる少なくとも1つの重合性基を有しているオリゴマーまたはモノマーであれば、とくに限定されるものではない。紫外線硬化性オリゴマーまたは紫外線硬化性モノマーは、一種単独で用いてもよいし、二種以上を混合して用いてもよい。
【0069】
本発明において、紫外線硬化性樹脂組成物がさらに増感剤を含んでいることが好ましい。紫外線硬化性樹脂組成物がさらに増感剤を含んでいる場合には、紫外線硬化性樹脂組成物の硬化性を向上させることができ、より一層、高い表面硬度を有するハードコート層を形成することが可能になる。
【0070】
本発明において、増感剤は、とくに限定されるものではないが、構成原子として、イオウ原子および塩素原子を含んでいないことがより好ましい。構成原子として、イオウ原子および塩素原子を含んでいない増感剤を用いる場合には、Agからなる反射層の変質や腐食を防止することができる。このような増感剤の具体例としては、たとえば、カンファーキノン、3−クマリン、アンスラキノン、トリベンジルアミン、N−エチルモルホリン、α−ナフチル、アセナフセン、P,P’−ジメトキシベンジルなどを挙げることができる。
【0071】
増感剤の含有量は、とくに限定されるものではないが、100質量部の反応開始剤に対して、0.5質量部ないし50質量部であることが好ましく、5質量部ないし10質量部であることがより好ましい。増感剤の含有量が、0.5質量部未満であると、増感剤を含ませた効果が充分に発揮されず、50質量部を超えていると、形成されるハードコート層が着色する場合がある。
【0072】
また、本発明において、紫外線硬化性樹脂組成物が、さらに、光開始助剤を含んでいることがより好ましい。紫外線硬化性樹脂組成物が、さらに、光開始助剤を含んでいる場合には、より一層、高い表面硬度を有するハードコート層を形成することが可能になる。
【0073】
本発明において、光開始助剤は、とくに限定されるものではないが、脂肪族アミン、芳香族アミンなどが好ましく用いられる。このような光開始助剤の具体例としては、たとえば、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリプロパノールアミン、4,4’−ジメチルアミノベンゾフェノン、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン、2−ジメチルアミノエチル安息香酸、2−ジメチルアミノエチル安息香酸エチルなどを挙げることができる。
【0074】
光開始助剤の含有量は、とくに限定されるものではないが、100質量部の反応開始剤に対して、0.5質量部ないし50質量部であることが好ましく、5質量部ないし10質量部であることがより好ましい。光開始助剤の含有量が、0.5質量部未満であると、光開始助剤を含ませた効果が充分に発揮されず、50質量部を超えていると、反射層を形成する際に、ガス化して、反射層に悪影響を与えることがある。
【0075】
本発明において、紫外線硬化性樹脂組成物は、紫外線硬化性オリゴマーまたは紫外線硬化性モノマーおよび低揮発性の反応開始剤を含んでいればよく、これらに加えて、所望により、ハードコート層の特性を向上させるための無機微粒子、撥水性、撥油性および潤滑性に優れた表面を形成するためのシリコーン系化合物またはフッ素系化合物、有機フィラー、重合禁止剤、酸化防止剤、光安定剤、消泡剤、レベリング剤、顔料、帯電防止剤などの添加剤を含んでいてもよい。紫外線硬化性樹脂組成物が、これらの添加剤を含んでいる場合には、ハードコート層の表面硬度が、より一層、高くなり、また、ハードコート層表面のスリップ性が向上して、ハードコート層表面が傷つきにくくなり、さらに、ハードコート層表面にゴミなどが付着しにくくなる。
【0076】
紫外線硬化性樹脂組成物は、紫外線硬化性オリゴマーまたは紫外線硬化性モノマーと、低揮発性の反応開始剤と、所望により、増感剤、光開始助剤などの添加剤とを、常温(約20℃)ないし80℃の温度で、均一になるまで混合して、調製される。
【0077】
以下、添付図面に基づいて、本発明の好ましい実施態様につき、詳細に説明を加える。
【0078】
図1は、本発明の好ましい実施態様にかかる光記録媒体の製造方法によって、製造された光記録媒体の一部切り欠き略斜視図であり、図2は、図1において、Aで示された部分の略拡大断面図である。
【0079】
図1に示されるように、光記録媒体10は、円盤状に形成され、120mmの外径と、約1.2mmの厚さを有している。
【0080】
図2に示されるように、光記録媒体10は、再生専用型(ROM型)の光記録媒体として構成され、ハードコート層11と、光透過性を有する基板12と、反射層13と、保護層14と、接着層15と、ダミー基板16とを、この順に備えている。本実施態様においては、ハードコート層11、基板12、反射層13、保護層14によって、積層体20が構成されている。
【0081】
本実施態様においては、レーザビームLは、ハードコート層11および基板12に照射され、ハードコート層11の表面によって、光入射面11aが構成されている。
【0082】
ハードコート層11は、基板12の表面に、傷がつくことを防止する機能を有しており、0.5μmないし5μmの厚さを有するように形成されることが好ましい。ハードコート層11の厚さが、0.5μm未満であると、ハードコート層11としての機能を十分に発揮することができず、一方、5μmを超えていると、紫外線硬化性樹脂組成物を硬化してハードコート層11を形成する際に、この組成物が硬化収縮することによって、光記録媒体10に反りが発生してしまう場合がある。
【0083】
本実施態様において、ハードコート層11は、低揮発性の反応開始剤を含む紫外線硬化性樹脂組成物によって、形成されている。したがって、ハードコート層11の形成後に、Agからなる材料によって、高真空中で、反射層13を形成する場合に、ハードコート層11から、反応開始剤またはその分解物のガスなどを発生することが少ないから、この紫外線硬化性樹脂組成物によってハードコート層11を形成した場合には、その後に、Agからなる材料によって反射層13を形成しても、反射層13が変質し、腐食することを効果的に抑制することができる。
【0084】
基板12は、光記録媒体10の機械的強度を確保する機能を有し、約0.6mmの厚さを有している。ハードコート層11に対して、基板12の反対側の表面には、データが記録されたプリピット(図示しない)が形成されている。基板11を形成するための材料としては、レーザビームLの波長領域において光透過率が十分に高い材料であれば、とくに限定されるものではなく、たとえば、ポリカーボネート樹脂によって、形成される。
【0085】
反射層13は、基板12を介して、入射したレーザビームLを反射し、再び、基板12から出射させる機能を有するとともに、さらに、多重干渉効果により再生信号(C/N比)を高める機能を有している。反射層13は、Agからなる材料によって、形成されている。反射層13の厚さは、とくに限定されるものではないが、20nmないし200nmであることが好ましい。
【0086】
保護層14は、反射層13を物理的および化学的に保護する機能を有している。保護層14を形成するための材料としては、反射層13を物理的および化学的に保護することができれば、とくに限定されるものではなく、たとえば、アクリル系の紫外線硬化型樹脂によって、形成される。
【0087】
接着層15は、ハードコート層11と、基板12と、反射層13と、保護層14とからなる積層体20と、ダミー基板16とを接着するための層であり、たとえば、紫外線硬化性樹脂を含む接着剤組成物によって、形成される。
【0088】
ダミー基板16は、光記録媒体10に求められる厚さ(約1.2mm)を確保するための支持体として、機能し、約0.6mmの厚さを有している。ダミー基板16を形成するための材料は、とくに限定されるものではないが、たとえば、ポリカーボネート樹脂によって、形成される。
【0089】
本実施態様によれば、以上のような構成を有する光記録媒体10は、以下のようにして製造される。
【0090】
まず、スタンパを用いて、表面に、プリピットを有する基板12が、射出成形によって作製される。また、同様にして、表面に、プリピットが形成されていないダミー基板16が、射出成型法によって、作製される。
【0091】
次いで、プリピットが形成された基板12のレーザビームが入射すべき面(プリピットが形成されていない表面)上に、ハードコート層11が形成される。
【0092】
本実施態様においては、ハードコート層11は、基板12のレーザビームが入射すべき面に、低揮発性の反応開始剤を含む紫外線硬化性樹脂組成物を、塗布して、塗膜を形成し、塗膜に紫外線を照射して、塗膜を硬化させて、形成される。
【0093】
すなわち、ハードコート層11を形成するにあたっては、まず、紫外線硬化性オリゴマーまたは紫外線硬化性モノマー、および、低揮発性の反応開始剤を含む紫外線硬化性樹脂組成物が調製される。
【0094】
必要に応じて、この紫外線硬化性樹脂組成物の溶液が調製される。紫外線硬化性樹脂組成物の溶液を調製するために用いられる溶剤は、とくに限定されるものではなく、たとえば、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ブチル、イソプロピルアルコールなどが用いられる。
【0095】
紫外線硬化性樹脂組成物または紫外線硬化性樹脂組成物の溶液の塗布方法は、とくに限定されるものではなく、スピンコーティング法、ディップコーティング法、グラビアコーティング法などを用いることができるが、作業性に優れる点で、スピンコーティング法が、好ましく使用される。
【0096】
紫外線硬化性樹脂組成物の塗布量は、とくに限定されるものではないが、所望の厚さを有するハードコート層11が形成されるように、紫外線硬化性樹脂組成物の塗布量を決定することが好ましい。
【0097】
本実施態様において、紫外線硬化性樹脂組成物が溶剤を含んでいる場合には、紫外線硬化性樹脂組成物を塗布して、塗膜を形成した後に、紫外線硬化性樹脂組成物を加熱して、溶剤を除去し、次いで、紫外線を照射して、塗膜を硬化させ、ハードコート層11を形成することが好ましい。このときの乾燥条件は、紫外線硬化性樹脂組成物の溶液に含まれた溶剤を除去することができる条件であれば、とくに限定されるものではなく、たとえば、温度40℃以上、80℃以下で加熱されることが好ましい。
【0098】
本実施態様において、塗膜に紫外線を照射する際の雰囲気は、とくに限定されるものではないが、窒素ガス、希ガス、二酸化炭素ガスなどの不活性ガス雰囲気中で、紫外線を照射することが好ましい。不活性ガス雰囲気中で、紫外線を照射する場合には、高い表面硬度を有するハードコート層11を形成することが可能になる。
【0099】
また、紫外線の照射量などは、紫外線硬化性樹脂組成物が硬化するのに十分な量の紫外線が照射されれば、とくに限定されるものではないが、たとえば、高圧水銀灯などを用いて、照度700mW/cm以上、照射量1.0J/cm以上の照射条件で、塗膜に、紫外線を照射することが好ましい。この照射条件で、塗膜に紫外線を照射する場合には、高い表面硬度を有するハードコート層11を形成することが可能になる。
【0100】
このようにして、基板12のレーザビームが入射すべき面に、ハードコート層11が形成される。
【0101】
本実施態様においては、この紫外線硬化性樹脂組成物によって、単に、ハードコート層11を形成するだけで、形成したハードコート層11をアニール処理などする必要がないから、生産性が高いインライン製造や生産ラインを一本化することが容易になり、したがって、低コストで、かつ、高い生産性をもって、光記録媒体10を製造することが可能になる。
【0102】
次いで、ハードコート層11に対して、基板12の反対側の面に、Agからなる材料を用いて、気相成長法によって、反射層13が形成される。気相成長法としては、真空中で行われるものであれば、とくに限定されるものではないが、たとえば、真空蒸着法、スパッタリング法などが挙げられるが、スパッタリング法によって、反射層13が形成されることが好ましい。
【0103】
本実施態様において、紫外線硬化性樹脂組成物は、低揮発性の反応開始剤を含んでいるため、この紫外線硬化性樹脂組成物を用いて、ハードコート層11を形成した後に、気相成長法によって、真空中で、記録層や反射層などを形成する際に、高真空中でも、紫外線硬化性樹脂組成物に含まれた反応開始剤またはその分解物のガスなどを発生することが少ないから、この紫外線硬化性樹脂組成物によってハードコート層11を形成した場合には、その後に、Agからなる材料によって反射層13を形成しても、反射層13が変質し、腐食することが効果的に抑制することができる。
【0104】
したがって、この紫外線硬化性樹脂組成物を用いて、ハードコート層11を形成した場合には、その後に、安価なAgからなる材料によって反射層13を形成することが可能になるとともに、反射層13が変質し、腐食することを効果的に抑制することができるため、初期からより高品位の電気信号(ノイズ成分が少ない)が得られ、このハードコート層11を備えた光記録媒体10を長い期間にわたって保存することもできるから、優れた光学的特性を有するハードコート層11を備えた光記録媒体10を製造することが可能になる。
【0105】
次いで、反射層13上に、紫外線硬化型アクリル樹脂によって、塗膜を形成し、塗膜に紫外線を照射して、硬化させ、保護層14が形成される。
【0106】
このようにして、ハードコート層11と、基板12と、反射層13と、保護層14とを備えた積層体20が作製される。
【0107】
次いで、保護層14上に、紫外線硬化性樹脂を含む接着剤組成物によって、塗膜が形成され、塗膜の表面に、ダミー基板16を貼り合わせ、ダミー基板16側から紫外線を照射して、塗膜を硬化させて、接着層15が形成され、光記録媒体10が作製される。
【0108】
以上のように構成された光記録媒体10においては、光入射面11aに、たとえば、650nm程度の波長を有するレーザビームLが照射されて、データが再生される。
【実施例】
【0109】
以下、本発明の効果をより明瞭なものとするため、実施例を掲げる。
【0110】
まず、射出成型法により、約0.6mmの厚さと、約120mmの外径を有し、表面にプリピットが形成されたポリカーボネート樹脂からなるディスク状の基板を作製した。
【0111】
次いで、同様にして、射出成型法により、約0.6mmの厚さと、約120mmの外径を有し、表面にプリピットが形成されていないポリカーボネート樹脂からなるディスク状のダミー基板を作製した。
【0112】
次いで、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製、商品名:「イルガキュア2959」)とアクリル酸クロライドとを、定法にしたがって、反応させて、4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトンを得た。
【0113】
次いで、プロピレングリコールモノメチルエーテル(溶剤)60質量部に、ジペンタエリスルトールヘキサアクリレート(紫外線硬化性モノマー、日本化薬株式会社製:商品名「DPHA」)35質量部、テトラヒドロフルフリルアクリレート(紫外線硬化性モノマー、共栄社油脂株式会社製:商品名「THF−A」)5質量部、および、4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン(反応開始剤、製造品)2.1質量部(紫外線硬化性樹脂組成物の総質量42.1質量部に対して、5質量%)を加えて混合し、紫外線硬化性樹脂組成物の溶液を調製した。
【0114】
さらに、基板を、スピンコーティング装置にセットし、2gの紫外線硬化性樹脂組成物の溶液を、基板の中心孔近傍に吐出して、基板を、所定速度で、回転させて、紫外線硬化性樹脂組成物の溶液を基板の表面に展開し、塗膜を形成した。
【0115】
次いで、形成した塗膜を、温度80℃で、3分時間にわたって、加熱し、乾燥させた。
【0116】
こうして得られた塗膜に、空気中、25℃で、紫外線を、照度500mW/cm、照射量0.7J/cmとなるように、照射して、塗膜を硬化させ、3μmの厚さを有するハードコート層を形成した。
【0117】
次いで、ハードコート層が形成された基板をスパッタリング装置にセットし、プリピットが形成された表面に、アルゴンガス雰囲気中で、Agからなるターゲットを用いたスパッタリング法によって、100nmの厚さを有する反射層を形成した。
【0118】
次いで、ハードコート層および反射層が形成された基板を再び、スピンコーティング装置にセットし、反射膜上に、紫外線硬化型アクリル樹脂を吐出して、基板を、所定速度で、回転させて、紫外線硬化性樹脂組成物の溶液を反射層の表面に展開し、塗膜を形成し、塗膜に紫外線を照射して、硬化させ、保護層を形成した。
【0119】
さらに、保護層上に、紫外線硬化性樹脂を含む接着剤組成物を滴下して、塗膜を形成し、塗膜の表面に、ダミー基板を貼り合わせ、ダミー基板側から紫外線を照射して、塗膜を硬化させて、接着層を形成した。
【0120】
こうして、光記録媒体サンプル#1を作製した。
【0121】
次いで、4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトンに代えて、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパンを用いた点を除き、光記録媒体サンプル#1と同様にして、光記録媒体サンプル#2を作製した。
【0122】
次いで、4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトンに代えて、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパンのオリゴマー(反応開始剤、日本シイベルヘグナー株式会社製、商品名:「KIP−150」)を用いた点を除き、光記録媒体サンプル#1と同様にして、光記録媒体サンプル#3を作製した。
【0123】
次いで、紫外線硬化性樹脂組成物の溶液を塗布して得られた塗膜に、高圧水銀灯を用いて、窒素ガス雰囲気中、25℃で、紫外線を、照度700mW/cm、照射量1.0J/cmとなるように、照射した点を除き、光記録媒体サンプル#1と同様にして、光記録媒体サンプル#4を作製した。
【0124】
次いで、4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトンに代えて、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン(反応開始剤、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製、商品名:「イルガキュア907」)を用いた点を除き、光記録媒体サンプル#1と同様にして、光記録媒体比較サンプル#1を作製した。
【0125】
次いで、4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトンに代えて、4−フェノキシジクロロアセトフェノンを用いた点を除き、光記録媒体サンプル#1と同様にして、光記録媒体比較サンプル#2を作製した。
【0126】
次いで、4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトンに代えて、チオキサントン(反応開始剤、日本曹達株式会社製、商品名:「TX」)を用いた点を除き、光記録媒体サンプル#1と同様にして、光記録媒体比較サンプル#3を作製した。
【0127】
次いで、4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトンに代えて、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−1−オン(反応開始剤、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製、商品名:「イルガキュア907」)を用い、さらに、Agからなるターゲットに代えて、98原子%のAg、1原子%のPdおよび1原子%のCuを主成分とする合金からなるターゲットを用いた点を除き、光記録媒体サンプル#1と同様にして、光記録媒体比較サンプル#4を作製した。
【0128】
こうして得られた光記録媒体サンプル#1ないし#4および光記録媒体比較サンプル#1ないし#4を、80℃、85RH%の環境下に、50時間にわたって、保存し、高温高湿保存試験を行い、高温高湿保存試験の前後における反射層の状態を、ハードコート層および基板を介して、目視で確認した。その結果、光記録媒体サンプル#1ないし#4および光記録媒体比較サンプル#4においては、いずれも、高温高湿保存試験の前後において、反射層が変質され、または、腐食されていることを確認できなかったのに対し、光記録媒体比較サンプル#1ないし#3においては、いずれも、高温高湿保存試験の前後において、反射膜が変色しており、高温高湿保存試験によって、反射層が変質され、または、腐食されていることを確認できた。
【0129】
なお、光記録媒体サンプル#1ないし#4および光記録媒体比較サンプル#4は、いずれも、高温高湿保存試験を行っても、再生信号のジッタが悪化し、再生信号のエラーレート(PIエラー)が劣化することは確認できなかったのに対し、光記録媒体比較サンプル#1ないし#3は、いずれも、高温高湿保存試験を行った後は、再生信号のジッタが悪化し、再生信号のエラーレート(PIエラー)も劣化していたことが確認できた。
【0130】
また、光記録媒体サンプル#1ないし#4および光記録媒体比較サンプル#1ないし#4のハードコート層の表面硬度を、JIS−K7204:1999に準拠して、摩耗輪試験したところ、光記録媒体サンプル#1ないし#3は、いずれにおいても、光記録媒体比較サンプル#1ないし#4と同等の硬度を有しており、光記録媒体サンプル#4は、光記録媒体比較サンプル#1ないし#4よりも高い表面硬度を有していた。
【0131】
本発明は、以上の実施態様に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0132】
たとえば、前記実施態様においては、基板11およびダミー基板16を、スタンパを用いて、射出成形によって、形成しているが、2P法などの他の方法によって、基板11およびダミー基板16を作製してもよい。
【0133】
さらに、前記実施態様においては、光記録媒体10は、再生専用型(ROM型)の光記録媒体として構成されているが、光記録媒体10が、ROM型の光記録媒体として構成されていることは必ずしも必要でなく、有機色素や無機材料などを含む一層または二層以上の追記型の記録層が、基板の表面上に形成されて追記型の光記録媒体として構成されても、相変化材料を含む書き換え型の記録層が、基板の表面上に形成されて書き換え型の光記録媒体として、構成されていてもよい。
【0134】
また、前記実施態様においては、光記録媒体10は、データが記録されたプリピット(図示しない)が予め形成された基板12の表面と、反射層13とをよって形成された一層の情報層を備えているが、光記録媒体が一層の情報層を備えていることは必ずしも必要でなく、光記録媒体が2以上の情報層を備えていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0135】
【図1】図1は、本発明の好ましい実施態様にかかる光記録媒体の製造方法によって、製造された光記録媒体の一部切り欠き略斜視図である。
【図2】図2は、図1において、Aで示された部分の略拡大断面図である。
【符号の説明】
【0136】
10 光記録媒体
11 ハードコート層
12 基板
13 反射層
14 保護層
15 接着層
16 ダミー基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光透過性を有する基板のレーザビームが入射すべき面に、低揮発性の反応開始剤を含む紫外線硬化性樹脂組成物を、塗布して、塗膜を形成し、前記塗膜に紫外線を照射して、前記塗膜を硬化させて、ハードコート層を形成し、前記ハードコート層に対して、前記基板の反対側の面に、気相成長法によって、Agからなる材料で、反射層を形成することを特徴とする光記録媒体の製造方法。
【請求項2】
前記低揮発性の反応開始剤が、少なくとも1つのラジカル反応性基を有する共重合可能な反応開始剤、または、高分子量の反応開始剤であることを特徴とする請求項1に記載の光記録媒体の製造方法。
【請求項3】
前記共重合可能な反応開始剤が、紫外線が照射されて、解裂または分解したときに、前記ラジカル反応性基を有している部分以外の部分に、構成原子として、イオウ原子および塩素原子を含んでいないことを特徴とする請求項2に記載の光記録媒体の製造方法。
【請求項4】
前記高分子量の反応開始剤が、紫外線が照射されて、解裂または分解したときに、オリゴマーまたはポリマーの主鎖に結合している部分以外の部分に、構成原子として、イオウ原子および塩素原子を含んでいないことを特徴とする請求項2に記載の光記録媒体の製造方法。
【請求項5】
少なくとも、光透過性を有する基板と、ダミー基板と、前記基板と前記ダミー基板との間に、Agからなる材料によって形成された反射層と、前記反射層と前記ダミー基板との間に設けられた接着層と、前記基板のレーザビームが入射すべき面に、紫外線硬化性樹脂組成物に含まれた低揮発性の反応開始剤またはその分解物が含まれているハードコート層とを備えた光記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−53997(P2006−53997A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−235026(P2004−235026)
【出願日】平成16年8月12日(2004.8.12)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】