説明

光記録媒体及びその製造方法、スパッタリングターゲット、並びに光記録媒体の使用方法及び光記録装置

【課題】 高密度化と、記録線速度がDVD8倍速以上の高線速化に対応でき、繰り返し特性と保存性に優れた光記録媒体等の提供。
【解決手段】 基板上に少なくとも記録層を有してなり、該記録層が、レーザー光走行方向長さが0.4μm以下の前記非晶質マークを記録可能であると共に、前記記録層が、次式、InαSbβ(ただし、α及びβは、それぞれの元素の原子組成比率を表し、0.73≦β/(α+β)≦0.90であり、かつα+β=100である)で表される組成を含有する光記録媒体、又は、前記記録層が、次式、MγInαSbβ(ただし、Mは、In、及びSb以外の元素、並びに該元素の混合物から選択される少なくとも1種の元素を表す。α、β、及びγは、それぞれの元素の原子組成比率を表し、0.73≦β/(α+β)≦0.90、α>γ>0であり、かつα+β+γ=100である)で表される組成を含有する光記録媒体である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザー光を照射することにより記録層を構成する材料に光学的な変化を生じさせて情報の記録、再生を行い、かつ書換えが可能な光記録媒体(以下、「相変化型光情報記録媒体」、「光記録媒体」、「光情報記録媒体」、「情報記録媒体」と称することがある)及び該光記録媒体を製造するためのスパッタリングターゲット、並びに光記録媒体の使用方法及び光記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光記録媒体の高速記録の需要が高まっている。特にディスク状の光記録媒体の場合、回転速度を高くすることで記録及び再生速度を上げることが可能なため、高速化が進んでいる。光記録媒体の中でも記録時に照射する光の強度変調のみで記録が可能であるものは、その記録機構の単純さから、媒体と記録装置の低価格化が可能である。また同時に、再生も強度変調された光を用いているため、再生専用装置との高い互換性が確保できることから普及が進み、近年の電子情報の大容量化により、更に高密度化及び高速記録化の需要が高くなっている。
【0003】
このような光記録媒体のうち、多数回の書換えが可能であることから記録層に相変化材料を用いたものが主流となってきている。記録層に相変化材料を用いた光記録媒体の場合、照射する光ビームの強度変調により、記録層材料を急冷状態と徐冷状態を作ることによって記録を行う。溶融後、急冷状態になると、記録層材料は非晶質(アモルファス)となり、徐冷状態になると結晶となる。非晶質と結晶では光学的な物性が異なるため、情報を記録及び再生することができる。
即ち、相変化型の光記録媒体は基板上の記録層薄膜にレーザー光を照射して記録層を加熱し、記録層構造を結晶と非晶質間で相変化させることにより、ディスク反射率を変えて情報を繰り返し記録するものである。通常は未記録状態を高反射率の結晶相とし、これに低反射率の非晶質相からなるマークと高反射率の結晶相からなるスペースを形成することにより情報を記録する。
【0004】
記録は周知のようにパルス分割され、3値に強度変調された記録光を光記録媒体に照射することにより行う。例えば、マークとスペースからなるデータを繰返し記録するための波形発光パターン(記録ストラテジー)としては、図6に示すようなDVD+RW等で使用されているものがある。非晶質からなるマークはピークパワー(Pp=Pw)光とバイアスパワー(Pb)光との交互繰返しによるパルス照射によって形成され、結晶からなるスペースはこれらの中間レベルのイレースパワー(Pe)光を連続的に照射することにより形成される。
ピークパワー光とバイアスパワー光とからなるパルス列が照射されると、記録層は溶融と急冷を繰返し非晶質マークが形成される。消去パワー光が照射されると記録層は溶融後徐冷、或いは、固相状態のままアニールされて結晶化し、スペースが形成される。
非晶質マークを形成するためには、上述したように、記録層を一旦溶融させる必要がある。高速記録時には、ピークパワー光が照射される時間が短くなるため、より高いパワーが必要となる。しかし、LD(レーザダイオード)にも出力パワーの限界があるためパワー不足となり、良好な非晶質マークが形成できない場合がある。そこで、高速で記録するための記録層材料には、より融点が低いことが望まれる。
【0005】
記録層材料については、これまで種々提案されているが、CD−RW、DVD+RW、DVD‐RW、DVD−RAM等として実用化されているものとしては、大きく分けて、Ag−In−Sb−Te系とGe−Sb−Te系とがある。前記Ag−In−Sb−Te系はSb−Te二元系のSbを63〜83原子%含有する固溶体であるδ相にAg、Inを添加したものである。一方、前記Ge−Sb−Te系は、GeTeとSbTeの2種類の化合物を種々の割合で混合したものであり、代表的な組成に、GeTe:SbTe=2:1の割合で混合したGeSbTeがある。両者とも更に別な元素を添加する等の改良が行われ、幅広い線速に対応して使用されている。
高速記録には結晶成長速度の速いSb−Teδ相を使用する方が有利であり、また、融点の観点からもGeTe−SbTe擬二元系は600℃以上であるのに対し、Sb−Teδ相は約550℃程度と低く、より有利である。
【0006】
前記Sb−Teδ相に種々の元素を添加した系では、一般的にSbの組成比を多くすることにより結晶化速度を速くすることが可能であり、高速記録に対応させることができる。このSb−Teδ相の欠点としては結晶化温度が120〜130℃程度と低いことが挙げられる。そのため、Ag、In、Ge等を添加して結晶化温度を160〜180℃まで高くし、非晶質マークの安定性を向上させることが必要となる。これによりDVD4倍速相当程度までの高速記録に適した記録層を形成することができる。しかし、更に高速化を目指し、DVD8倍速相当以上の高速記録に適応させるためには、Sbの割合を多くして結晶化速度を向上させる必要がある。しかし、Sbの割合を多くすると初期化が困難になる傾向があり、初期化後に反射率むらを生じてしまい、ノイズ量が増大するため、低ジッターでの良好な記録ができなくなってしまう。また、Sbの割合を増やすと結晶化温度が更に低下するため添加物の量を増やさざるを得ないが、単純に添加物の量を多くするとやはり初期化が困難になり、初期化後のノイズ量の増大等を招き、低ジッターでの良好な記録ができなくなってしまう。したがって、前記Sb−Teδ相を基本とした系ではDVD8倍速相当以上の高速記録に適した結晶化速度、初期化の容易性、及び非晶質マークの保存安定性を満たす記録層を得ることは困難である。
【0007】
そこで、結晶化速度が速く、非晶質マークの安定性にも優れるSb−Teδ相系に代わる材料系として、Ga−Sb系、Ge−Sb系等が提案されている。前記Ga−Sb系、及びGe−Sb系ともSbが80原子%を超えるようなSbリッチな組成で共晶点を持ち、各々の共晶点近傍の組成を中心に高速記録材料として用いることができ、Sb−Teδ相系同様、Sbの割合を高くすると結晶化速度を速くすることができる。結晶化温度は180℃程度と高いため、他の元素を添加しなくとも非晶質マークの安定性には優れている。しかし、これらの共晶点は590℃前後であり、Sb−Teδ相系より高く、記録時のパワーが不足してしまう恐れがある。
【0008】
一方、In−Sb、又は(In−Sb)+M(ただし、MはIn、及びSb以外の元素を表す)を主成分とする相変化記録層を用いた光記録媒体に関する提案としては、以下の特許文献1〜4、及び非特許文献1などが挙げられる。
特許文献1では、一般式(In1−xSb1−y〔但し、55≦x≦80、0≦y≦20、MはAu、Ag、Cu、Pd、Pt、Ti、Al、Si、Ge、Ga、Sn、Te、Se、Biから選ばれた少なくとも一種である〕で表される記録材料を用いており、記録は、溶融状態を急冷した場合に得られる擬安定相であるπ相と、徐冷することによって得られるInSbとSbの混相(平衡相)とで反射率が異なることを利用している。しかし、この提案では、平衡相である混相を得るには一般的に長時間を有する。また、この提案では、レーザーの出力を変えて走査することにより書き込み及び消去が繰り返し行えるとしているものの、レーザーの走査速度については何も考慮されていない。したがってDVDのようにレーザーが1箇所に照射される時間が数十〜数百ns程度であるような条件下で平衡相を得ることは非常に困難であり、この提案を近年使用されているCD−RW、DVD+RW、DVD−RW等の相変化型光記録媒体に適用することはできない。更に、この提案はその出願時(昭和59年)の技術水準からみてDVDを対象とするものではなく、また長さが0.4μm以下の微小な非晶質マークを形成できるような層構成や記録方法は考慮されておらず、当然ながらDVDの8倍速相当以上の高速記録への対応については開示も示唆もされていない。
【0009】
また、特許文献2では、In20〜60原子%とSb40〜80原子%の合金の微結晶からなる記録薄膜に、異なる条件の光エネルギーを照射して2つの安定状態を選択的に生起させることにより、情報を記録、消去している。前記記録薄膜は、更にAg、In、Ge、Teなどから選ばれる1種以上の元素を全体の20原子%以下添加してもよい。この特許文献2では、2つの安定状態は両方とも結晶質であるが光学的特性が異なる。その要因としては、In50Sb50とSbが析出し、加熱冷却過程の差異によりその割合が異なることによるとしている。その他の要因として、結晶粒の大きさが異なること、薄膜の形状変化、異なる結晶相の生成等も挙げている。しかし、それらの要因により光学的差異が生じ、反射率変化が生じるとしても、その反射率差は小さく、CD−RW、DVD+RW、DVD−RW等の相変化記録媒体に使用されているような結晶−晶質間の相転移を利用した場合と比較して、C/Nが格段に低く、実用には適さない。
【0010】
また、特許文献3では、In又はGaを33〜44原子%、Sbを51〜62原子%、及びTeを2〜9原子%とした記録材料を用い、非晶質と結晶との相転移を利用して記録している。そして信号強度や非晶質相の安定性は充分であり、高速で記録消去が可能であるとしている。しかし、ここで対象としている記録線速は1〜15m/s程度であり、DVDの8倍速(約28m/s)以上の高速記録では結晶化速度が不足するため、非晶質マークの消し残りが生じてしまうという問題がある。
また、非特許文献1では、一般式:In(Sb72Te28100−x〔ただし、xは3.9〜45原子%である〕で表される記録材料を用い、非晶質と結晶の相転移を利用して記録することが開示されている。しかし、この非特許文献1において検討されている記録線速は、2〜6m/sであり、DVDの8倍速(約28m/s)以上の高速記録では結晶化速度が不足するため、非晶質マークの消し残りが生じてしまうという問題がある。
【0011】
また、特許文献4には、M(SbTe1−Z1−W(ただし、0≦w<0.3、0.5<z<0.9、MはIn、Ga、Zn、Ge、Sn、Si、Cu、Au、Ag、Pd、Pt、Cr、Co、O、S、Seからなる群から選ばれる少なくとも1種)合金薄膜を記録層に用いたCD−E媒体が提案されている。しかし、この提案は、DVDを対象とするものではなく、DVDの8倍速相当以上(約28m/s以上)の高速記録への対応については開示も示唆もされていない。
【0012】
また、In−Sb系も、Sb−Teδ相系、Ga−Sb系、及びGe−Sb系等と同様に、Sbの割合を高くすると結晶化速度は速くなる傾向がある。従って、特許文献3及び非特許文献1に開示されている組成よりもSbの割合を多くすることにより、DVD8倍速相当以上の高速繰り返し記録にも耐え得る結晶化速度を有することが可能である。また、融点は、共晶組成よりもSbの組成比を多くした場合でも、490℃前後(スパッタにより成膜した薄膜をDSCで測定した値)と共晶点と類似であった。また、結晶化温度は180〜200℃程度と高く、他の元素を添加しなくとも非晶質マークの安定性に優れていた。しかし、In−Sb系において特許文献3及び非特許文献1に開示されている組成よりもSbの割合を多くすると、非晶質の安定性には優れるものの、結晶の安定性が悪いという欠点がある。ここで、図7は、共晶組成に近い組成のIn−Sb系(In35Sb65)について80℃にて100時間の保存試験を行った場合の未記録部(結晶部)の反射率低下の様子を示したものである。図7(A)は保存前、図7(B)は保存後であるが、反射率は29%〜18%と、10%以上も低下しており、反射率が規格を満たさなくなる恐れがあると共に、反射率が低下してしまった状態で記録を行うと、ジッターが著しく悪く、良好な記録が行えないという問題がある。
【0013】
また、特許文献3には、「Q(In又はGa)の含有量が34原子%以下になると、この記録素子は不安定になる」という記載があり、これは、結晶相が不安定であることを意味すると考えられ、これによりIn量を少なくした系については記録層として使用できないものとされていた。しかし、図8に示すように、In量を更に少なくする(即ち、Sb量を多くする)と保存後の反射率の低下量を低く抑えることができる。また、反射率の低下量が比較的低い場合でも、保存試験後に、初期化直後の記録条件と同じ条件で記録してシェルフ特性を評価したところ、ジッターが増大してしまう。更に、程度に差があるとはいえ、Sb量を多くして反射率の低下量を低減した場合でも結晶状態に何らかの変化が生じてしまっているため、初期化直後と同じ条件では良好な記録ができないという問題がある。
【0014】
したがって低融点で結晶化速度が速く、初期化後の反射率むらも少なく、非晶質マークの安定性に優れ、かつ結晶の安定性にも優れた記録層材料を用いることにより、DVDの8倍速相当以上(約28m/s以上)の高速記録に適した光記録媒体及びその関連技術としては、未だ十分満足できるものは得られておらず、その速やかな提供が望まれているのが現状である。
【0015】
【特許文献1】特公平3−52651号公報
【特許文献2】特公平4−1933号公報
【特許文献3】特許第2952287号公報
【特許文献4】特開2001−236690号公報
【非特許文献1】K.Daly−Flynn and D.Strand:Jpm.J.Appl.Phys.Vol42(2003)pp.795−799
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、前記従来における問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、第1に、高密度化と、記録線速度が少なくともDVD8倍速相当以上(約28m/s以上)の高線速化に対応でき、繰返し特性と保存特性に優れた光記録媒体及び該光記録媒体を製造するためのスパッタリングターゲット、並びに光記録媒体の使用方法及び光記録装置を提供することを目的とする。
また、本発明は、第2に、低融点で結晶化速度が速く、初期化後の反射率むらも少なく、非晶質マークの安定性に優れ、かつ結晶の安定性にも優れた記録層材料を用いることにより、DVDの8倍速相当以上(約28m/s以上)の高速記録に適した光記録媒体及び該光記録媒体を製造するためのスパッタリングターゲット、並びに光記録媒体の使用方法及び光記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前記課題を解決するため本発明者らが鋭意検討を重ねた結果、記録層材料の融点が高すぎると記録時のパワーが不足してしまう恐れがある。また、高い融点を示す材料は初期化後に反射率のむらが生じ易い傾向があり、しかも初期化後のノイズ量の増大等を招き、低ジッターでの良好な記録ができなくなってしまい、その理由は明確ではないが、単に初期化のパワーを高くするだけではむらは解消されない。このことからも融点は低い方が有利であるということを知見した。
また、本発明者らは、Sbが68原子%の組成で約490℃という低い共晶点を持つIn−Sb系材料に注目して更に検討を進めた結果、In−Sb系材料は結晶化速度も速く、初期化による反射率むらも生じ難く、非晶質マークの安定性にも優れている記録層材料であることを知見した。
【0018】
本発明は、本発明者らによる前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 基板と、該基板上に少なくとも記録層を有してなり、該記録層におけるレーザー光の照射による結晶質部と非晶質マークとの可逆的な相変化を利用して情報の記録、再生、消去及び書換えの少なくともいずれかを行う光記録媒体であって、レーザー光走行方向長さが0.4μm以下の前記非晶質マークを記録可能であると共に、前記記録層が、次式、InαSbβ(ただし、α及びβは、それぞれの元素の原子組成比率を表し、0.73≦β/(α+β)≦0.90であり、かつα+β=100である)で表される組成を含有することを特徴とする光記録媒体である。
該<1>に記載の光記録媒体においては、前記記録層が、上記組成からなるので、保存安定性に優れ、DVD−ROMと同容量で記録線速がDVDの8倍速以上(約28m/s以上)の記録線速で繰返し記録が可能な光記録媒体が得られる。
【0019】
<2> 基板と、該基板上に少なくとも記録層を有してなり、該記録層におけるレーザー光の照射による結晶質部と非晶質マークとの可逆的な相変化を利用して情報の記録、再生、消去及び書換えの少なくともいずれかを行う光記録媒体であって、レーザー光走行方向長さが0.4μm以下の前記非晶質マークを記録可能であると共に、前記記録層が、次式、MγInαSbβ(ただし、Mは、In、及びSb以外の元素、並びに該元素の混合物から選択される少なくとも1種の元素を表す。α、β、及びγは、それぞれの元素の原子組成比率を表し、0.73≦β/(α+β)≦0.90、α>γ>0であり、かつα+β+γ=100である)で表される組成を含有することを特徴とする光記録媒体である。
該<2>に記載の光記録媒体においては、前記記録層が、上記組成からなるので、低融点で結晶化速度が速く、初期化後の反射率むらも少なく、非晶質マークの安定性に優れ、かつ結晶部の安定性にも優れた記録層材料を用いることにより、DVDの8倍速相当以上(約28m/s以上)の高速記録で繰返し記録が可能な光記録媒体が得られる。
【0020】
<3> 28m/s以上の線速で繰り返し記録が可能である前記<1>から<2>のいずれかに記載の光記録媒体である。
<4> 記録層におけるMが、Ge、Te、O、S、Se、Al、Ag、Mn、Cu、Au及びNから選択される少なくとも1種の元素である前記<2>から<3>のいずれかに記載の光記録媒体である。
<5> MがGeであり、かつ0.2≦γ≦15である前記<2>から<4>のいずれかに記載の光記録媒体である。
<6> MがTeであり、かつ1≦γ≦15である前記<2>から<4>のいずれかに記載の光記録媒体である。
<7> 記録層は、昇温速度10℃/分での結晶化温度が150〜250℃である前記<1>から<6>のいずれかに記載の光記録媒体である。
<8> 記録層の膜厚が、8〜22nmである前記<1>から<7>のいずれかに記載の光記録媒体である。
<9> 光記録媒体が、基板と、該基板上に少なくとも第1保護層、記録層、第2保護層、及び反射層をこの順及び逆順のいずれかに有する前記<1>から<8>のいずれかに記載の光記録媒体である。
<10> 記録層と第1保護層との間、及び記録層と第2保護層との間の少なくともいずれかに、酸化物を含有する界面層を有する前記<9>に記載の光記録媒体である。
<11> 酸化物が、ZrO、TiO、SiO、Al、Ta、Y、MgO、CaO、Nb、及び希土類酸化物から選択される少なくとも1種である前記<10>に記載の光記録媒体である。
<12> 界面層の膜厚が、1〜20nmである前記<10>から<11>のいずれかに記載の光記録媒体である。
<13> 記録層の少なくとも一部に接して結晶化促進層を有する前記<1>から<12>のいずれかに記載の光記録媒体である。
<14> 結晶化促進層が、Bi、Sb、Te、及びInから選択される少なくとも1種を含有する前記<13>に記載の光記録媒体である。
<15> 結晶化促進層の膜厚が、0.2〜10nmである前記<13>から<14>のいずれかに記載の光記録媒体である。
【0021】
<16> 反射層が、Ag及びAg合金のいずれかを含有する前記<9>から<15>のいずれかに記載の光記録媒体である。
<17> 第2保護層が、ZnSとSiOとの混合物を含有する前記<9>から<16>のいずれかに記載の光記録媒体である。
<18> 第2保護層と反射層との間に硫黄を含まない第3保護層を有し、該第3保護層がSiC及びSiの少なくともいずれかを含有する前記<9>から<17>のいずれかに記載の光記録媒体である。
<19> 第3保護層の膜厚が、2〜10nmである前記<18>に記載の光記録媒体である。
前記<16>から<19>のいずれかに記載の光記録媒体においては、前記反射層をAg及びAg合金のいずれかで形成し、前記第2保護層をZnSとSiOとの混合物で形成し、かつ該第2保護層と前記反射層との間に硫黄を含まない第3保護層を設けたことによって、Agの硫化による腐蝕を防ぎ、光記録媒体の信頼性を確保することができる。
【0022】
<20> 次式、InαSbβ(ただし、α及びβは、それぞれの元素の原子組成比率を表し、0.73≦β/(α+β)≦0.90であり、かつα+β=100である)で表される組成を含有してなり、かつ記録層の製造に用いられることを特徴とするスパッタリングターゲットである。
<21> 次式、MγInαSbβ(ただし、Mは、In、及びSb以外の元素、並びに該元素の混合物から選択される少なくとも1種の元素を表す。α、β、及びγは、それぞれの元素の原子組成比率を表し、0.73≦β/(α+β)≦0.90、α>γ>0であり、かつα+β+γ=100である)で表される組成を含有してなり、かつ記録層の製造に用いられることを特徴とするスパッタリングターゲットである。
<22> Mが、Ge、Te、O、S、Se、Al、Ag、Mn、Cu、Au及びNから選択される少なくとも1種の元素である前記<21>に記載のスパッタリングターゲットである。
<23> MがGeであり、かつ0.2≦γ≦15である前記<21>から<22>のいずれかに記載のスパッタリングターゲットである。
<24> MがTeであり、かつ1≦γ≦15である前記<21>から<22>のいずれかに記載のスパッタリングターゲットである。
前記<20>から<24>のいずれかに記載のスパッタリングターゲットにおいては、前記記録層の形成を所定組成の合金ターゲットを使用したスパッタ法を用いて行うことによって、所望の記録層組成を得ることができ、DVDの1倍速〜16倍速以上の広い範囲の記録スピードに対応する光記録媒体を安定して提供できる。
【0023】
<25> 基板と、該基板上に少なくとも第1保護層、記録層、第2保護層、及び反射層をこの順及び逆順のいずれかに有してなる光記録媒体の製造方法であって、
前記<20>から<24>のいずれかに記載のスパッタリングターゲットを用いてスパッタリング法により記録層を成膜する記録層形成工程を含むことを特徴とする光記録媒体の製造方法である。
<26> 記録層の少なくとも一部に接するように結晶化促進層を成膜する結晶化促進層形成工程を含む前記<25>に記載の光記録媒体の製造方法である。
<27> 光記録媒体をレーザー光により加熱処理する初期結晶化工程を含む前記<25>から<26>のいずれかに記載の光記録媒体の製造方法である。
<28> 加熱処理が、レーザー光による溶融初期結晶化及び固相初期化のいずれかである前記<27>に記載の光記録媒体の製造方法である。
【0024】
<29> 前記<1>から<19>のいずれかに記載の光記録媒体における第1保護層側からレーザー光を照射して情報の記録、再生、消去及び書換えの少なくともいずれかを行うことを特徴とする光記録媒体の使用方法である。
<30> 非晶質マークのレーザー光走行方向長さが、記録基本クロック周期Tのn倍(ただし、nは自然数を表す)であるnTで表されるマーク長記録方式により情報の記録を行う前記<29>に記載の光記録媒体の使用方法である。
<31> 相対的に高いパワー値のピークパワー光と、相対的に低いパワー値のバイアスパワー光との繰り返しによる(n/2)+1である整数個のパルス照射により長さnTの結晶部を形成する前記<29>から<30>のいずれかに記載の光記録媒体の使用方法である。
前記<29>から<31>のいずれかに記載の本発明の光記録媒体の使用方法では、前記本発明の光記録媒体に対し、レーザー光を照射することにより情報の記録、再生、消去及び書換えの少なくともいずれかを行う。その結果、安定かつ確実に情報の記録、再生、消去及び書換えのいずれかを効率よく行うことができる。
【0025】
<35> 光記録媒体に光源から光を照射して該光記録媒体に情報の記録、再生、消去及び書換えの少なくともいずれかを行う光記録装置において、前記光記録媒体が、前記<1>から<19>のいずれかに記載の光記録媒体であることを特徴とする光記録装置である。
本発明の光記録装置は、前記光記録媒体に光源からレーザー光を照射して該光記録媒体に情報の記録、再生、消去及び書換えの少なくともいずれかを行う光記録装置において、前記光記録媒体として本発明の光記録媒体を用いる。該本発明の光記録装置においては、安定かつ確実に情報の記録、再生、消去及び書換えの少なくともいずれかを行うことができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によると、従来における前記問題を解決することができ、記録層の記録材料、及び層構成を特有のものにすることによって、DVD−ROMと同容量以上でDVD8倍速以上(約28m/s以上)の高密度記録が可能であり、更に16倍以上(約56m/s以上)までをカバーでき、繰返し特性及び保存特性に優れた光記録媒体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
(光記録媒体)
本発明の光記録媒体は、基板と、該基板上に少なくとも記録層を有してなり、該記録層におけるレーザー光の照射による結晶質部と非晶質マークとの可逆的な相変化を利用して情報の記録、再生、消去及び書換えの少なくともいずれかを行う光記録媒体であって、レーザー光走行方向長さが0.4μm以下の前記非晶質マークを記録可能であり、第1形態では、前記記録層が、次式、InαSbβ(ただし、α及びβは、それぞれの元素の原子組成比率を表し、0.73≦β/(α+β)≦0.90であり、かつα+β=100である)で表される組成を含有してなる。また、第2形態では、前記記録層が、次式、MγInαSbβ(ただし、Mは、In、及びSb以外の元素、並びに該元素の混合物から選択される少なくとも1種の元素を表す。α、β、及びγは、それぞれの元素の原子組成比率を表し、0.73≦β/(α+β)≦0.90、α>γ>0であり、かつα+β+γ=100である)で表される組成を含有してなる。
【0028】
この場合、前記光記録媒体は、基板と、該基板上に少なくとも第1保護層、記録層、第2保護層、及び反射層をこの順及び逆順のいずれかに有することが好ましく、第1保護層側からレーザー光を照射して記録層の結晶相と非晶相の可逆的な相変化を生じさせ、その光学的な変化を利用して情報の記録、再生、消去及び書換えの少なくともいずれかを行うものである。
【0029】
前記第1形態における記録層は、次式、InαSbβ(ただし、α及びβは、それぞれの元素の原子組成比率を表し、0.73≦β/(α+β)≦0.90であり、かつα+β=100である)で表される組成を含有してなる。
上記組成を有するInSb系材料は、結晶化速度が大きい上、記録感度が高い。このため、良好な高線速記録特性を示す。
前記InSbの共晶組成はIn32Sb68付近であるが、共晶組成を中心にして、InとSb量の和に対するSb量の割合β/(α+β)がSb側に増すにつれて結晶化速度が増すことがわかった。
前記β/(α+β)の範囲は、0.73≦β/(α+β)≦0.90であり、0.80≦β/(α+β)≦0.90がより好ましい。前記β/(α+β)が0.73未満であると、結晶化速度が不足し、8倍速以上の線速下でのオーバーライトが難しくなることがある。また、β/(α+β)が0.90を超えると、アモルファスの安定性が悪く、記録済みのデータの保存信頼性が低下することがある。前記β/(α+β)の範囲を0.80<β/(α+β)として、結晶化速度に余裕を持たせることでメディア設計上のマージンが広がる。例えば、光記録媒体を構成する際に、記録層の膜厚や、他の層の材料、膜厚のマージンが広がる。
【0030】
前記第2形態における記録層は、次式、MγInαSbβ(ただし、Mは、In、及びSb以外の元素、並びに該元素の混合物から選択される少なくとも1種の元素を表す。α、β、及びγは、それぞれの元素の原子組成比率を表し、0.73≦β/(α+β)≦0.90、α>γ>0であり、かつα+β+γ=100である)で表される組成を含有してなる。
【0031】
このIn-Sb−Mの三元系組成式を満たす範囲を図19に図示する。図19のA、B、C、及びDの4本の直線で囲まれた領域(斜線の領域)となる。但し、直線A上及び直線D上は含まない。
図9にIn−Sbの組成比に対する転移線速の値を示した。ここで、前記転移線速とは、結晶化速度の代用特性として用いている値で、転移線速が速い程、結晶化速度が速いことを示す。
転移線速を決めるためには、通常の記録及び再生に用いる評価機を用い、光記録媒体を一定線速で回転させ、記録層が溶融し得る程度のレーザー光を照射した後の反射率を計測する。溶融した記録層は図10に示すように周囲の初期結晶との境界から再結晶化する。線速が遅い場合は徐冷状態となるため、図10(A)に示すように、全て再結晶化し反射率は高い値を示す。線速が速くなるに従い急冷状態となるため、トラック中心部まで再結晶化できなくなる。図10(B)に示すように、一部非晶質が形成され、反射率は低下する。このときの反射率が低下し始める線速を転移線速と呼んでいる。
したがって前記記録層の結晶化速度が速い程、再結晶化速度が速く、より急冷にしても全て再結晶化してしまうため転移線速は速くなる。
【0032】
前記転移線速は、レーザーパワーや媒体の層構成によっても異なってくるため、記録可能な線速を一義的に決めるものではないが、記録可能線速を判断するための一つの目安として用いることができる。図9に示した転移線速の値は、厚さ0.6mmのポリカーボネート樹脂基板上にZnS−SiOを厚さ81nm、記録層であるIn−Sbを厚さ16nm、ZnS−SiOを厚さ14nm、SiCを厚さ4nm、Agを厚さ140nm、順次スパッタにより積層し、大口径LDにより初期結晶化した媒体に対して、波長660nm、NA=0.65のピックアップヘッドを用い、盤面パワー15mWの連続光を照射することにより決めた値である。DVD8倍速以上の繰り返し記録を行うためには、この条件で決めた転移線速の値が少なくとも25m/s以上である必要がある。したがってIn−Sbに占めるSbの割合、β/(α+β)は0.73以上であり、0.8以上が好ましい。前記β/(α+β)が0.73未満であると、結晶化速度が遅いため、DVD8倍速相当以上での繰り返し記録の際、非晶質マークの消し残りが生じてしまうことがある。
また、前記β/(α+β)が0.8を超えるものについては、転移線速は速すぎて求めることができなかったが、レーザーをパルス状に照射することにより非晶質マークが形成できることは確認しており、記録は可能である。しかし、前記β/(α+β)が0.90より多くなると、結晶化温度が急激に低下してしまい非晶質の安定性が劣化してしまう。保存試験においても、非晶質マークが一部結晶化し、マーク部の反射率が初期より上昇してしまっていることが観察された。これを防ぐために結晶化速度を上げるような元素を添加すると、初期化による反射率むらが生じてしまうなどの不具合が生じ、良好な記録ができなくなってしまう。従って、β/(α+β)は0.90以下であり、0.85以下が好ましい。
【0033】
更に、前記第2形態における記録層は、In−Sbの二元系のみでは、非結晶状態、あるいは、結晶状態の保存安定性が悪く、アーカイバル特性(記録済みのデータの保存信頼性)、及びシェルフ特性(保存後に新たにデータを記録する場合の特性)の劣化を招く場合がある。そこで、本発明では、上記組成範囲にあるIn−Sbに更にGe、Te、O、S、Se、Al、Ag、Mn、Cu、Au及びNから選択される少なくとも1種の元素を添加する。
前記Geを添加した場合には、主として非晶質相を安定化する効果が得られ、アーカイバル特性が向上する。Geの添加量は0.2原子%以上が好ましく、1原子%以上がより好ましい。また、15原子%以下が好ましく、10原子%以下がより好ましく、4原子%以下が特に好ましい。これは、添加量が多すぎると結晶化速度が遅くなってしまうためである。
【0034】
また、周期律表の16族に属するO、S、Se、及びTeから選択される1種以上の元素Mを添加した場合には、主として結晶相を安定化する効果が得られ、シェルフ特性が向上する。これは種々の添加元素を調べた結果、これらの元素に反射率の低下抑制効果があることが分ったためである。Mの中でもTeを添加した場合は、特に繰り返し記録特性が良かった。
図11にTeを添加した場合の80℃にて100時間保存後の反射率低下量を示した。In35Sb65に添加した場合と、In21Sb79に添加した場合について示した。どちらの場合もTeを添加することにより反射率低下が抑制されていることが分る。また、保存試験後に未記録部に記録可能かどうかのシェルフ特性を評価したところ、Teを添加した場合には殆ど劣化は見られなかった。
Teの添加による反射率の低下抑制に代表される結晶相の安定化効果を得るためには、1原子%以上が好ましく、2.5原子%以上がより好ましい。Te添加量が増えると共に結晶相の安定化効果も高まるが、結晶化速度が低下してしまう。そこで、DVD8倍速相当以上で繰り返し記録を行うのに十分な結晶化速度を得るためには、Te量は15原子%以下が好ましく、12原子%以下がより好ましい。
In−Sb−Teの三元系組成式を満たす範囲を図示すると、図20のB、C、D、E、Fの5本の直線で囲まれた領域(黒色の領域)となる。但し、直線D上は含まない。
【0035】
Ag、Au、Cu、又はNを添加すると、記録感度を向上させる効果があり、より低いパワーでの記録が可能となる。Ag、Au、Cu、又はNの添加量は0.2原子%以上が好ましく、0.5原子%以上がより好ましい。また、5原子%以下が好ましく、4原子%以下がより好ましい。これは、Ag、Au、Cu、又はNの添加量が多すぎると、結晶化速度が遅くなってしまうことがあり、また、非晶質の安定性が損なわれることがあるからである。
Al、又はMnを添加した場合には、主として非晶質を安定化する効果が得られ、アーカイバル特性を向上させることができる。これは、Geと類似の効果であるが、同量の添加ではGeに比較するとアーカイバル特性を向上させる効果は少ないものの、結晶化速度を遅くする作用も少ない。従って、Geより添加量を多くした場合でも高速繰り返し記録特性に悪影響を及ぼさない。Al、又はMnの添加量は1原子%以上が好ましく、2原子%以上がより好ましく、非晶質を安定化する効果も得られる。また、15原子%以下が好ましく、12原子%以下がより好ましく、DVD8倍速相当以上の結晶化速度を得ることができる。
【0036】
また、前記第2形態の記録層においては、InとMの量の関係をα>γとすること、即ち、Mの量がIn量より多くならないように注意する必要がある。Mの量の方がIn量より多くなってしまうと母相がIn−SbからSb−Mへと変化してしまい、例えば、MがGeの場合には、融点が592℃、Teの場合には、融点が約550℃と高くなり、高速記録時のLDのパワー不足や初期化による反射率むらの発生を招いてしまうからである。
これらの添加元素Mは、単独で添加しても、目的に応じて何種かを同時に添加してもよい。
【0037】
前記記録層の昇温速度10℃/分での結晶化温度は150〜250℃が好ましく、160〜220℃がより好ましい。前記結晶化温度範囲においては、非晶質マークの安定性を確保することができ、十分な保存信頼性を確保することができる。
【0038】
前記記録層の形成方法としては、各種気相成長法、例えば、真空蒸着法、スパッタ法、プラズマCVD法、光CVD法、イオンプレーティング法、電子ビーム蒸着法などが用いられる。これらの中でも、スパッタ法が、量産性、膜質等に優れている。
前記記録層の膜厚は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、8〜22nmが好ましく、10〜18nmがより好ましい。前記記録層の膜厚が前記範囲を外れると、記録感度の低下や繰り返し特性の低下を招くことがある。
【0039】
本発明においては、前記記録層の記録材料がInSb系材料であって、前記記録層と第1保護層との間、及び記録層と第2保護層との間の少なくともいずれかに、酸化物を含有する界面層を有することが良好な高速オーバーライト特性が得られる点で好ましい。
【0040】
InSb系自体、結晶化速度が大きい上、記録感度が高い。このため、良好な高線速記録特性を示す。しかしながら、高速でのオーバーライト、変調度、保存信頼性、初期化の問題、これら全てを満たすことは難しかった。特に、高速でのオーバーライトに問題がある。
このため、繰り返し記録耐久性を向上させるためには、非晶質結晶間の相転移を繰り返し速やかに行う必要がある。繰り返し記録によりジッターが上昇してしまう場合、マーク間、及び、短いマークの反射率が低下する現象がみられる。これは、繰り返し記録の際、消去、即ち、結晶化がうまく行われず、一部初期の結晶状態に戻らない反射率が低い部分が蓄積されていったためと推測される。本発明の構成にすることにより、繰り返し記録によってもマーク間や短マークの反射率の低下はみられなくなり、ジッターの上昇は抑えられる。これは、酸化物からなる界面層に核形成促進効果があり、比較的低温における結晶化を促進しているためと推測される。
【0041】
前記結晶化は、結晶核の生成と結晶成長との2つのプロセスを経て進行する。図2に非晶質マークにレーザーが照射され、結晶部との界面から結晶成長が進行し、結晶化していく様子を模式的に示した。
【0042】
図3には、温度と結晶成長速度の関係を示した。図3からわかるように結晶成長が高速で進行するのは融点直下の特定の温度範囲である。従って、マークの端が結晶成長が高速で進行できる温度に達しなかった場合には結晶成長の進行が遅いために消し残りが生じてしまう。ビームが照射されたとき、結晶成長が高速で進行する温度以上になる領域がマークの幅に対して十分大きければ、マークの端から高速に結晶化が進行するが、マークの幅と同程度であれば、マークの太さが均一ではなく一部太くなってしまっている場合や、記録ビームのトラッキングが中心部から少しずれてしまった場合はマークの端が全て結晶成長が高速に進行する温度にはならないことがあるため、消し残りが生じてしまうことになる。
【0043】
前記記録層に接して酸化物からなる界面層を設けた場合には、結晶核が生成されるためにマークの端の温度が低めで結晶成長速度が十分速くない場合でもマーク内部に結晶核が生成され、結晶核からの結晶成長により結晶化が進行するため、消し残りが生じにくくなり、繰り返し記録耐久性が向上していると推測される。
【0044】
前記界面層における酸化物としては、ZrO、TiO、SiO、Al、Ta、Y、MgO、CaO、Nb、及び希土類酸化物から選択される少なくとも1種が好ましい。これらの中でも、ZrO、TiO、SiO、Al、Taを主成分としたもの、或いはそれらの混合物である。そして、これらに加えて、Y、MgO、CaO、Nb、希土類酸化物から選ばれる1種以上の酸化物を含むものである。ここで、主成分とは、40%mol以上含まれていることを指す。
前記酸化物からなる界面層の膜厚は、1〜20nmが好ましい。1nmより薄いと効果が明確でなく、20nmより厚くなるとオーバーライト特性が低下してしまう。
【0045】
また、本発明においては、前記記録層の記録材料がInSb系材料であって、該記録層の少なくとも一部に接して結晶化促進層を有することが好ましい。
InSb系材料は、結晶化速度が大きい上、記録感度が高い。このため、良好な高線速記録特性を示す。しかしながら、高速でのオーバーライト、変調度、保存信頼性、初期化の問題、これら全てを満たすことは難しかった。特に、保存信頼性、具体的には保存試験における結晶状態の反射率低下にも問題がある。
【0046】
前記結晶化促進層は、通常スパッタ法によって形成され、成膜中に多数の結晶核が生じている。そのため、結晶化促進層は、記録層を構成する合金の結晶化エネルギを低下させて、記録層の結晶化を容易にする機能を有する。
結晶化促進層を設けることにより反射率低下が低減する理由は定かではないが、記録層の結晶化が容易となることで初期化時に記録層の安定な結晶が形成され、それが記録後の結晶状態にも引き継がれるためではないかと考えられる。
【0047】
なお、結晶化促進層の少なくとも一部に接して非晶質状態で成膜される記録層は、場合によっては、成膜工程後には結晶化している。こうした場合には、光記録媒体の製造工程の最後に、記録層を結晶化するために行われる、いわゆる初期化工程(通常、レーザー工程による加熱工程)を実施することなく記録が可能である。また仮に、成膜工程後には結晶化していない場合でも、成膜中に生成した結晶核の存在により、加熱処理を行うことによって初期化工程を容易に行える。
前記初期化工程は、通常ディスクを回転させると同時に、半導体レーザーを半径方向に送ることによるレーザーアニール結晶化により行うことが好ましい。
【0048】
前記結晶化促進層は、Bi、Sb、Te、Inから選ばれる少なくとも1種からなることが好ましく、中でもBi、Sbから選ばれる少なくとも1種が好ましい。これらは、多元系の金属間化合物、合金、混合物であってもよい。
【0049】
これらの材料が結晶化促進層として機能する理由は定かではないが、長周期の元素で原子半径が大きく、また金属性が高いため、成膜中に結晶核を形成し易いためであると考えられる。
本発明においては、結晶化促進層は記録層の全面に接して設けてもよく、一部分に接して設けてもよい。また、結晶化促進層は記録層との間に別の層があって全く接していない場合であっても、その別の層が結晶化していれば結晶化促進層としての効果を有する。結晶化促進層は第1の保護層と記録層との間に設けてもよく、また、記録層と第2の保護層との間に設けてもよく、さらにその両方に設けてもよい。結晶化促進作用の効果的な発揮及びスループットの向上の観点から、第1の保護層と記録層との間に設けることが望ましい。また、結晶化促進層は連続膜であってもよく、島状の不連続膜であってもよく、共に所望の結晶化促進効果が得られる。結晶化促進層は、スパッタリング、蒸着などの真空成膜法で形成される。
前記結晶化促進層の膜厚は、前記記録層膜厚の1/100以上が好ましく、1/50以上がより好ましく、1/25以上が更に好ましい。
前記結晶化促進層の膜厚は0.2〜10nmが好ましく、0.5〜2nmがさらに好ましい。前記膜厚が0.2nm未満であると、結晶化促進層の効果が不十分となることがあり、10nmを超えると、オーバーライト特性が低下してしまうことがある。
【0050】
次に,本発明の光記録媒体の層構成について図面に基づいて説明する。
ここで、図1は、本発明の光記録媒体の一実施形態を説明するための断面図であり、基板1上に第1保護層2、記録層3、第2保護層4、第3保護層、及び反射層6がこの順に形成され、必要に応じて反射層上にスピンコートにより紫外線(UV)硬化樹脂からなる保護層が形成されていてもよく、更に必要に応じて保護層上に、光記録媒体の更なる補強或いは保護のために、別の基板を貼り合わせてもよい。
また、図4は、本発明の光記録媒体の他の構成例を示すもので、基板1上に第1保護層2、界面層7、記録層3、第2保護層4、第3保護層5、反射層6が設けられている。なお、第3保護層5は必ずしも設ける必要はない。
また、図5は、本発明の光記録媒体の更に他の構成例を示すもので、基板1上に第1保護層2、結晶化促進層8、記録層3、第2保護層4、第3保護層5、及び反射層6が設けられている。なお、第3保護層5は必ずしも設ける必要はない。
以下、本発明の光記録媒体の各層について説明する。なお、記録層、界面層、及び結晶化促進層については、上述したとおりである。
【0051】
−基板−
前記基板としては、例えば、表面にトラッキング用の案内溝を有し、直径12cm、厚さ0.6mmのディスク状で、加工性、光学特性に優れたポリカーボネート基板が好適である。トラッキング用の案内溝は、ピッチ0.74±0.03μm、溝深さ22〜40nm、溝幅0.2〜0.4μm範囲内の蛇行溝であることが好ましい。特に溝を深くすることにより、光記録媒体の反射率が下がり変調度を大きくすることができる。
【0052】
前記基板の材料としては、通常、ガラス、セラミックス、樹脂、などが用いられるが、成形性、コストの点から、樹脂製基板が好適である。前記樹脂としては、例えば、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、ABS樹脂、ウレタン樹脂などが挙げられる。成形性、光学特性、コストの点から、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂が好ましい。
【0053】
−第1保護層及び第2保護層−
前記第1保護層2及び第2保護層4は、前記記録層3の劣化変質を防ぎ、記録層3の接着強度を高め、かつ記録特性を高めるなどの作用効果を有し、例えば、SiO、SiO、ZnO、SnO、Al、TiO、In、MgO、ZrOなどの金属酸化物、Si、AlN、TiN、BN、ZrNなどの窒化物、ZnS、In、TaSなどの硫化物、SiC、TaC、BC、WC、TiC、ZrCなどの炭化物やダイヤモンド状カーボン或いは、それらの混合物が挙げられる。これらの中でも、ZnSとSiOの混合物、TaとSiOとの混合物が好ましい。前記ZnSとSiOの混合物は、耐熱性、低熱伝導率性、化学的安定性に優れており、膜の残留応力が小さく、記録/消去の繰り返しによっても記録感度、消去比などの特性劣化が起きにくく、記録層との密着性にも優れている点で好ましい。
【0054】
前記第2保護層は、記録時にレーザー光照射により記録層に加わった熱をこもらせて蓄熱する一方で、反射層に伝熱し、熱を逃がす役割を担うものであり、繰り返しオーバーライト特性を左右する。この点から、ZnSとSiOの混合物を用いることが好ましい。
【0055】
前記第1保護層2、及び第2保護層4の層形成方法としては、各種気相成長法、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、プラズマCVD法、光CVD法、イオンプレーティング法、電子ビーム蒸着法などが用いられる。これらの中でも、スパッタリング法が、量産性、膜質等に優れている。
【0056】
前記第1保護層2の厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、50〜250nmが好ましく、75〜200nmがより好ましい。前記厚みが50nm未満であると、耐環境性保護機能の低下、耐熱性の低下、及び蓄熱性の低下することがあり、250nmを超えると、スパッタリング法による成膜過程において膜温度の上昇により膜剥離やクラックが生じたり、記録時の感度の低下が生じることがある。
前記第2保護層4の厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、10〜100nmが好ましく、15〜50nmがより好ましい。前記厚みが10nm未満であると、耐熱性が低下してしまうことがあり、100nmを超えると、記録感度の低下、温度上昇による膜剥離、変形、放熱性の低下により繰り返しオーバーライト特性が悪くなることがある。
【0057】
−反射層−
前記反射層は光反射層としての役割を果たす一方で、記録時にレーザー光照射により記録層に加わった熱を逃がす放熱層としての役割も担っている。非晶質マークの形成は,放熱による冷却速度により大きく左右されるため,反射層の選択は高線速対応媒体では特に重要である。
【0058】
前記反射層6は、例えば、Al、Au、Ag、Cu、Taなどの金属材料、又はそれらの合金などを用いることができる。また、これら金属材料への添加元素として、Cr、Ti、Si、Cu、Ag、Pd、Taなどが使用できる。これらの中でも、Ag及びAg合金のいずれかを含有することが好ましい。それは、前記光記録媒体を構成する反射層は通常、記録時に発生する熱の冷却速度を調整する熱伝導性の観点と、干渉効果を利用して再生信号のコントラストを改善する光学的な観点から、高熱伝導率/高反射率の金属が望ましく、純Ag又はAg合金はAgの熱伝導率が427W/m・Kと極めて高く、記録時に記録層が高温に達した後直ぐに、アモルファスマーク形成に適した急冷構造を実現できるからである。
なお、このように高熱伝導率性を考慮すると純銀が最良であるが、耐食性を考慮しCuを添加してもよい。この場合Agの特性を損なわないためには銅の添加量範囲は0.1〜10原子%程度が好ましく、特に0.5〜3原子%が好適である。過剰の添加は逆にAgの耐食性を劣化させてしまう。
【0059】
前記反射層6は、各種気相成長法、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、プラズマCVD法、光CVD法、イオンプレーティング法、電子ビーム蒸着法などによって形成できる。なかでも、スパッタリング法が、量産性、膜質等に優れている。
前記反射層の膜厚は100〜300nmが好ましい。反射層の放熱能力は基本的には層の厚さに比例するので、100nm未満であると、冷却速度が低下するため好ましくない。一方、300nmより厚くなると、材料コストの増大を招くので好ましくない。
【0060】
なお、前記反射層上には、必要に応じて樹脂保護層を設けることができる。該樹脂保護層は、工程内及び製品となった時点で記録層を保護する作用効果を有し、通常、紫外線硬化性の樹脂により形成する。前記樹脂保護層の膜厚は2〜5μmが好ましい。
【0061】
−第3保護層−
前記保護層と前記反射層との間に、硫黄を含まない第3保護層5をバリア層として設けることが好ましい。
第3保護層5の材料としては、例えば、Si、SiC、SiN、GeN、ZrO、などが挙げられ、これらの中でも、Si又はSiCがバリア性が特に高い点で好ましい。
純Ag又はAg合金を反射層に用いると、ZnSとSiOの混合物のような硫黄を含む保護層を用いた場合、硫黄がAgへ拡散しディスク欠陥となる不具合が生じてしまう(Agの硫化反応)。従って、このような反応を防止する第3保護層としては、(1)Agの硫化反応を防ぐ、バリア能力があること、(2)レーザー光に対して光学的に透明であること、(3)アモルファスマーク形成のため、熱伝導率が低いこと、(4)保護層や反射層と密着性がよいこと、(5)形成が容易であること、などの観点から適切な材料を選定することが望ましく、上記要件を満たすSi又はSiCを主成分とする材料が第3保護層の構成材料としては好ましい。
【0062】
前記第3保護層の膜厚は、2〜20nmが好ましく、2〜10nmがより好ましい。前記膜厚が2nm未満であると,バリア層として機能しなくなることがあり、20nmを超えると、変調度の低下を招くおそれがある。
【0063】
なお、情報信号が書き込まれる基板1と貼り合せ用基板とを貼り合わせるための接着層は、ベースフィルムの両側に粘着剤を塗布した両面粘着性のシート、熱硬化性樹脂又は紫外線硬化樹脂により形成する。前記接着層の膜厚は、通常50μm程度である。
前記貼り合せ用基板(ダミー基板)は、接着層として粘着性シート又は熱硬化性樹脂を用いる場合は、透明である必要はないが、接着層に紫外線硬化樹脂用いる場合は紫外線を透過する透明基板とする。前記貼り合せ用基板の厚みは、通常、情報信号を書き込む透明基板1と同じ0.6mmのものが用いられている。
【0064】
(スパッタリングターゲット)
本発明のスパッタリングターゲットは、記録層の製造に用いられ、第1形態では、次式、InαSbβ(ただし、α及びβは、それぞれの元素の原子組成比率を表し、0.73≦β/(α+β)≦0.90であり、かつα+β=100である)で表される組成を含有してなる。
前記β/(α+β)の範囲は、0.73≦β/(α+β)≦0.90であり、0.80≦β/(α+β)≦0.90がより好ましい。
【0065】
また、本発明のスパッタリングターゲットは、記録層の製造に用いられ、第2形態では、次式、MγInαSbβ(ただし、Mは、In、及びSb以外の元素、並びに該元素の混合物から選択される少なくとも1種の元素を表す。α、β、及びγは、それぞれの元素の原子組成比率を表し、0.73≦β/(α+β)≦0.90、α>γ>0であり、かつα+β+γ=100である)で表される組成を含有してなる。
Mは、Ge、Te、O、S、Se、Al、Ag、Mn、Cu、Au及びNから選択される少なくとも1種の元素であることが好ましい。また、MがGeであり、かつ0.2≦γ≦15である態様がより好ましく、MがTeであり、かつ1≦γ≦15である態様がより好ましい。
【0066】
前記スパッタリングターゲットの作製方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、予め所定の仕込み量を秤量し、ガラスアンプル中で加熱溶融する。その後、これを取り出して粉砕機により粉砕し、得られた粉末を加熱焼結することによって、円盤状のスパッタリングターゲットを得ることができる。
【0067】
本発明によれば、DVD−ROMと同容量で記録線速が8倍速以上(約28m/s以上)の高線速度においても記録感度が良好であり、繰返し記録が可能であると共に、保存信頼性にも優れた光記録媒体を提供できる。
また、本発明によれば、DVD−ROMと同容量で幅広い記録線速領域で繰返し記録特性が良好な光記録媒体及び該光記録媒体を製造するためのスパッタリングターゲットを提供できる。
【0068】
(光記録媒体の製造方法)
本発明の光記録媒体の製造方法は、基板と、該基板上に少なくとも第1保護層、記録層、第2保護層、及び反射層をこの順及び逆順のいずれかに有してなる光記録媒体の製造方法であって、記録層形成工程を含んでなり、結晶化促進層形成工程、初期結晶化工程、更に必要に応じてその他の工程を含んでなる。
【0069】
−記録層形成工程−
前記記録層形成工程は、本発明の前記スパッタリングターゲットを用いてスパッタリング法により記録層を成膜する工程である。
前記スパッタリング法としては、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、成膜ガスとしてArガスを用い、投入電圧1〜5kW、成膜ガス流量は10〜40sccmが好ましい。スパッタリング中のチャンバー内のArガス圧が、7.0×10−3mTorr(mbar)以下が好ましい。
【0070】
−結晶化促進層形成工程−
前記結晶化促進層形成工程は、前記記録層の少なくとも一部に接するように結晶化促進層を成膜する工程である。
前記結晶化促進層の成膜方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、各種気相成長法、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、プラズマCVD法、光CVD法、イオンプレーティング法、電子ビーム蒸着法などによって形成できる。これらの中でも、スパッタリング法が、量産性、膜質等に優れている。
【0071】
−初期結晶化工程−
前記初期結晶化工程は、光記録媒体をレーザー光により加熱処理する工程である。
前記加熱処理としては、レーザー光による溶融初期結晶化及び固相初期化のいずれかが好ましい。
前記初期結晶化工程は、具体的には、光記録媒体を所定の線速度、又は、所定の定角速度にて回転させながら、基板側から対物レンズを介して半導体レーザー等の記録用の光を照射する。この照射光により、記録層がその光を吸収して局所的に温度上昇し、例えば、ピットが生成してその光学特性を変えることにより情報が記録される。上記のように記録された情報の再生は、光記録媒体を所定の線速度で回転させながらレーザー光を第1保護層側から照射して、その反射光を検出することにより行うことができる。
【0072】
(光記録媒体の使用方法)
本発明の光記録媒体の使用方法は、前記本発明の光記録媒体における第1保護層側からレーザー光を照射して情報の記録、再生、消去及び書換えの少なくともいずれかを行うものである。
この場合、前記光記録媒体の記録線速度は、28m/s以上が好ましい。
具体的には、光記録媒体を所定の線速度にて回転させながら、基板側から対物レンズを介して半導体レーザ(例えば、600〜720nmの発振波長)等の記録用の光を照射する。この照射光により、記録層がその光を吸収して局所的に温度上昇し、例えば、ピットが生成してその光学特性を変えることにより情報が記録される。上記のように記録された情報の再生は、光記録媒体を所定の線速度で回転させながらレーザ光を基板側から照射して、その反射光を検出することにより行うことができる。
【0073】
次に、高速仕様の光記録媒体に対する光記録方法、特にその記録ストラテジーの一例について図12を参照しつつ説明する。
ここで、PWM(Pulse Width Modulation)を光記録媒体6に応用した記録マーク長、マーク間長変調方式で情報を記録するものとする。この記録方式では、記録マークの長さとマーク間の長さとを、基本クロック周期Tを単位として制御することにより情報を記録することができる。この記録方式は、光記録媒体の記録方法の一つであるマーク位置変調方式よりも記録密度を高くすることが可能なため高密度化できることが特徴であり、CD、DD(Double Density)CDで採用されるEFM、DVDで採用されるEFM+などの変調方式に採用されている。なお、記録マーク長、マーク間長変調方式は記録マーク長とマーク間長(以下、「スペース長」と称することがある)を正確に制御することが重要である。これらの変調方式では記録マーク長、スペース長共に基本クロック周期Tに対してnT(ただし、nは3以上の自然数を表す)のレーザー光走行方向長さ(時間的長さ)とする。したがってレーザー光走行長さは0.4μm以下である。
【0074】
この例では、ピークパワーPp(=Pw)、消去パワーPe、バイアスパワーPbの3値を用いる記録ストラテジーに関しても、高速仕様として、充分な加熱と冷却を行えるようにパルス数を減らす方式、即ち、ピークパワーPp光とバイアスパワーPb光との繰返しによるn/2+1以下の整数個のパルス照射により長さnTの非晶質マークを形成し、消去パワーPe光の照射により非晶質マーク間の長さnTの結晶スペースを形成する方式により記録を行う。EFM+変調方式に従って形成される最小マークである長さ0.4μmの3Tは1パルス又は2パルスで形成される。ピークパワーPp、消去パワーPe、バイアスパワーPbの値及び各々の照射時間を適切に設定することにより、所定の長さのマークを精度良く記録することができる。パルスの数は主に記録線速によって決まり、記録線速が速い程パルスの数を減らした方がよい。
このような高速仕様条件下に、非晶質マークの形成から結晶スペースの形成への移行時には、ピークパワー光からボトムパワー光を経て消去パワー光へ変調するか、或いは、ピークパワー光から直接消去パワー光へ変調し、該消去パワー光への変調開始後、基本クロック周期T以内に、消去パワーより高くピークパワーより低い高消去パワー光Pe(h)を少なくとも1パルス照射する記録ストラテジを用いるようにしてもよい。図12には、ピークパワー光からボトムパワー光を経て消去パワー光へ変調する場合の例を示した。
【0075】
このときの消去パワー光は、記録線速で照射したときに必ずしも前に記録したマークを全て消去する必要はない。図13に示すように、記録マークは、全て均一な太さではなく、部分的に太くなってしまうことが多い。特に、図13のようにマークの後端部が太くなっている場合がしばしば見られる。In−Sb−Mを主成分とした記録層のように、結晶相との界面からの結晶成長によって結晶化が進行する場合には、結晶相との界面の温度が重要である。図3には、結晶成長速度と温度の関係を示した。結晶成長速度は一般的に融点直下の温度で最大となり、温度が低い場合には結晶成長は殆ど起こらない。結晶相との界面が、結晶成長が速く進行できる温度、即ち、融点近傍まで上がっていないと、非晶質マークが全て結晶化できずに残ってしまう。この様子を図14に示した。
【0076】
図14(A)には、非晶質マークにある消去パワーを一定線速で照射した時に結晶化する様子を模式的に示した。高速で結晶成長が進行する温度以上になっている領域を薄いグレーで示した。非晶質と結晶との界面がこの領域に入っていれば、高速で結晶化するため中心部まで結晶化できるが、非晶質マークが部分的に太くなって一部がこの領域からはみ出してしまった場合には、結晶成長速度が遅く、図14(B)のような形に非晶質マークが残ってしまう。このような消し残りを防ぐためには、消去パワー光のレベルを高くして高速で結晶成長が進行する温度領域を広くする必要がある。即ち、部分的に太くなってしまった非晶質マークを全て消去するためには、消去パワーも高めに設定せざるをえない。しかし、記録速度が高速になってくると、消去パワーを高めに設定すると特にマーク先頭のジッターが高くなってしまうという問題を生じる。これは、高速であるため、スペース形成のための消去パワー光の照射により温度が定常状態になる前に非晶質マーク形成のためのピークパワー光が照射されることになってしまい、最初のピークパワー光が照射されるときの温度にばらつきが生じるため、マーク先頭部の位置もばらついてしまうためであると考えられる。最初のピークパワー光が照射されるときの温度のばらつきは消去パワーが高い程大きくなってしまうため、マーク先頭のジッターが大きくなってしまう。また、消去パワーが高い場合には、媒体にかかる熱による負荷も大きくなってしまうので、繰り返し記録による膜質の劣化も進行し易くなり、繰り返し記録耐久性が劣化してしまう。
【0077】
しかし、消去パワー光は必ずしもマーク全てが消去される程高く設定する必要はない。高消去パワー光をパルス照射することにより、部分的に太くなっているマークも消去され、かつ、熱による負荷も小さいため繰り返し記録耐久性に及ぼす影響も少なく、良好な繰り返し記録を達成できる。高消去パワー光のパルス照射のタイミングとしては、消去パワー光の照射が開始されてから1T以内に開始する。これにより、上書き時に前のマークの消去が良好に行えるばかりでなく、初回記録の場合でもマーク後端のジッターが低減できる効果がある。
高消去パワーの1パルス当りの照射時間は0.2T以上、2T以下とする。0.2Tより短いと充分昇温されないため、部分的に太くなっているようなマークを消去する効果は期待できない。また2Tより長いと、消去パワーの値を全て高消去パワーにするのと類似になってしまい、マーク先頭のジッターが高くなってしまったり、繰り返し記録耐久性が劣化してしまうことがある。
【0078】
また、長いスペースを形成する途中に部分的に太くなっている部分がある場合などには、高消去パワーパルスがスペース形成の最初に照射されるだけでは消去しきれないことがある。この場合には、例えば、スペース長が3T以上増加する度に高消去パワーのパルスの数を一つ増やすようにする。スペース長が3T増加する毎に1つ増やすようにしても良いし、4T又は5T増加する毎に1つ増やしても良く、それらを組合わせてもよい。高消去パワーのパルスの増やし方は、記録線速と前に記録されていたマークの形状がどういう特徴を持っているかによって変わってくる。ただし、3T〜5Tスペースの形成には、1パルスで充分であるし、パルスの数が必要以上に多いと繰り返し記録耐久性の劣化を招くので、注意が必要である。
高消去パワーのレベルは消去パワーの1.1倍以上、2倍以下とする。1.1倍より低いと充分昇温されないため、部分的に太くなっているようなマークを消去する効果は期待できない。また、2倍より高いと、温度が上がり過ぎて、マーク長の制御が難しくなりジッターが悪くなってしまったり、必要以上に温度が上がり過ぎることにより繰り返し記録耐久性の劣化を招いてしまう。なお、このとき、消去パワーの2倍以下であっても、ピークパワーを超えてはならない。
【0079】
(光記録装置)
本発明の光記録装置は、光記録媒体に光源からレーザー光を照射して該光記録媒体に情報を記録する光記録装置において、前記光記録媒体として本発明の前記光記録媒体を用いたものである。
前記光記録装置は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、レーザー光を出射する半導体レーザー等の光源であるレーザー光源と、レーザー光源から出射されたレーザー光をスピンドルに装着された光記録媒体に集光する集光レンズ、レーザー光源から出射されたレーザー光を集光レンズとレーザー光検出器とに導く光学素子、レーザー光の反射光を検出するレーザー光検出器を備え、更に必要に応じてその他の手段を有してなる。
【0080】
前記光記録装置は、レーザー光源から出射されたレーザー光を光学素子により集光レンズに導き、該集光レンズによりレーザー光を光記録媒体に集光照射して該光記録媒体に記録を行う。このとき、光記録装置は、レーザー光の反射光をレーザー光検出器に導き、レーザー光検出器のレーザー光の検出量に基づきレーザー光源の光量を制御する。
前記レーザー光検出器は、検出したレーザー光の検出量を電圧又は電流に変換し検出量信号として出力する。
前記その他の手段としては、制御手段等が挙げられる。前記制御手段としては、前記各手段の動きを制御することができる限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、強度変調したレーザー光を照射及び走査するためのシークエンサー、コンピュータ等の機器が挙げられる。
【実施例】
【0081】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0082】
(実施例1)
−光記録媒体の作製−
直径12cm、厚さ0.6mm、トラックピッチ0.74μmのグルーブ付きポリカーボネート樹脂製基板を用意し、該基板を高温で脱水処理した。
まず、(ZnS)80(SiO20の組成(モル%)からなるスパッタリングターゲットを用い、前記基板上に膜厚が65nmとなるようにスパッタリング法により第1保護層を成膜した。
次に、In17Sb83の組成(原子%)からなるスパッタリングターゲットを用い、アルゴンガス圧3×10−3torr、RFパワー300mWでスパッタリング法により、前記第1保護層上に膜厚が16nmとなるように記録層を成膜した。
次に、(ZnS)80(SiO20の組成(モル%)からなるスパッタリングターゲットを用い、前記録層上に膜厚が10nmとなるようにスパッタリング法により第2保護層を成膜した。
次に、SiCからなるスパッタリングターゲットを用い、第2保護層上に膜厚が4nmとなるようにスパッタリング法により第3保護層を成膜した。
次に、純銀からなるスパッタリングターゲットを用い、前記第3保護層上に膜厚が120nmとなるようにスパッタリング法により反射放熱層を成膜した。
次に、スピナーによってアクリル系硬化樹脂を前記反射層上に、膜厚が5〜10μmになるように塗布した後、紫外線硬化させて有機保護層を形成した。
最後に、前記有機保護層上に、直径12cm、厚さ0.6mmのポリカーボネート樹脂製基板を接着剤を用いて貼り合せた。以上により、実施例1の光記録媒体を作製した。
【0083】
<初期化>
得られた光記録媒体について、波長820nmの大口径半導体レーザー(LD)ビーム照射により記録層の初期結晶化を行った。
【0084】
<評価>
記録再生には、波長656nm、NA0.65のピックアップを用いた。記録はパルス変調法を用い、記録データはEFM+変調方式により、各記録層に応じた最適記録線速、最適記録パワーで記録した。記録ストラテジーもジッターが最小となるように各々最適化して使用した。再生は全てパワー0.7mW、線速3.5m/sで行い、data to clock ジッター、及び反射率を測定した。
その結果、記録ビット長(記録密度)0.267μm/bitで記録可能な線速範囲は3.5〜57m/sという広い範囲であった。
【0085】
(実施例2)
−光記録媒体の作製−
実施例1において、記録層の組成を(In0.13Sb0.8795Geに変えた以外は、実施例1と同様にして、実施例2の光記録媒体を作製した。
この光記録媒体に対し、実施例1と同じシステムを用いて記録を行ったところ、記録可能な線速範囲は3.5〜55m/sという広い範囲であった。
【0086】
更に、実施例1の媒体と一緒に高温高湿(80℃、85%RH)下の保存信頼性試験を行った結果、記録マークのジッター特性の上昇が、実施例1の媒体では300時間経過後に増加率5%であったのに対し、実施例2の媒体では増加率1%以下であり、Geの添加は保存信頼性向上に効果があることが分った。
また、Geの添加量は、1原子%以下では効果がなく、更に添加量の増加に伴い記録可能な線速範囲が低くなってしまうことも同時に確認された。
目標とする線速範囲にもよるが、Geの添加量は原子比で0.1(10原子%)以下、好ましくは0.07(7原子%)以下がよい。
【0087】
(実施例3)
−光記録媒体の作製−
実施例1において、記録層の組成を(In0.12Sb0.8890GeAlに変えた以外は、実施例1と同様にして、実施例3の光記録媒体を作製した。
この光記録媒体に対し、実施例1と同じシステムを用いて記録を行ったところ、記録可能な線速範囲は3.5〜58m/sという広い範囲であった。
実施例2の媒体よりも記録可能な線速範囲が広くなり、Alの添加は記録線速向上に効果があることが確認された。また、Alの代わりにMnを添加しても同様な効果が得られた。
これらの元素の添加量は、目的とする線速にもよるが、あまり多く添加すると、連続再生の際にマークの結晶化がパワーの低い再生光でも起こってしまうため、原子比で0.15(15原子%)以下、好ましくは0.1(10原子%)以下がよい。
【0088】
(実施例4)
−光記録媒体の作製−
実施例1において、記録層の組成を(In0.12Sb0.8890GeAgに変えた以外は、実施例1と同様にして、実施例4の光記録媒体を作製した。
この光記録媒体に対し、実施例1と同じシステムを用いて記録を行ったところ、記録可能な線速範囲は3.5〜54m/sであったが、実施例2の光記録媒体よりも記録用レーザー光のパワーが約10%小さい場合でも同等の変調度を得ることが可能となった。また、Agの代りにCu、Au又はNを添加しても同等の効果が得られた。
しかしこれらの元素の添加量は、目的とする線速にもよるが、あまり多く添加すると記録可能な線速範囲が狭くなってしまうため、原子比で0.05(5原子%)以下が好ましく、0.04(4原子%)以下がより好ましい。
【0089】
(実施例5)
−光記録媒体の作製−
実施例1において、記録層の組成をIn25Sb75に変えた以外は、実施例1と同様にして、実施例5の光記録媒体を作製した。
この光記録媒体に対し、実施例1と同じシステムを用いて記録を行ったところ、記録可能な線速範囲は3.5〜54m/sであった。ただ、多数の光記録媒体を作製し特性の再現性を確認したところ、一部のメディアでは、8倍速までしか記録することができなかった。
これは、記録層の結晶化速度に余裕がないため、第1保護層、記録層、第2保護層、及び反射放熱層等の膜厚変動によって生じる光記録媒体の特性変化により、高速記録特性が不十分になったためと考えられる。
【0090】
(実施例6)
−光記録媒体の作製−
実施例1において、記録層の組成をIn22Sb78に変えた以外は、実施例1と同様にして、実施例6の光記録媒体を作製した。
この光記録媒体に対し、実施例1と同じシステムを用いて記録を行ったところ、記録可能な線速範囲は3.5〜54m/sであった。ただし、多数の光記録媒体を作製し特性の再現性を確認したところ、一部のメディアでは、8倍速までしか記録することができなかった。
これは、記録層の結晶化速度に余裕がないため、第1保護層、記録層、第2保護層、及び反射放熱層等の膜厚変動によって生じる光記録媒体の特性変化により、高速記録特性が不十分になったためと考えられる。
【0091】
(比較例1)
−光記録媒体の作製−
実施例1において、記録層の組成をIn30Sb70に変えた以外は、実施例1と同様にして、比較例1の光記録媒体を作製した。
この光記録媒体に対し、実施例1と同じシステムを用いて記録を行ったところ、記録可能な線速範囲は3.5〜28m/sであり、8倍速までしか記録することができなかった。
これは、InとSb量の和に対するSb量の割合β/(α+β)が、0.73≦β/(α+β)≦0.90、の範囲からはずれているため、十分な結晶化速度が得られなかったためである。
【0092】
(比較例2)
−光記録媒体の作製−
実施例1において、記録層の組成をInSb92に変えた以外は、実施例1と同様にして、比較例2の光記録媒体を作製した。
得られた光記録媒体について、実施例1と同様の方法で初期化を行った。しかし、オシロスコープでRF信号を観察したところ反射率むらが大きかったので、初期化する際の線速、パワー、及び送り幅を種々変えて行ってみたが、反射率むらを改善できる条件を見つけることができなかった。また、記録も試みたが、種々の線速で記録してみても、ジッターを20%以下とすることはできなかった。
【0093】
【表1】

【0094】
(実施例7)
−光記録媒体の作製−
直径12cm、厚さ0.6mm、トラックピッチ0.74μmのグルーブ付きポリカーボネート樹脂製基板を用意し、該基板を高温で脱水処理した。
まず、(ZnS)80(SiO20の組成(モル%)からなるスパッタリングターゲットを用い、前記基板上に膜厚が65nmとなるようにスパッタリング法により第1保護層を成膜した。
次に、ZrOとYとTiOとの混合物(ZrO/Y[モル比:97/3](80mol%)−TiO(20mol%))からなるスパッタリングターゲットを用い、前記第1保護層上に膜厚が3nmとなるようにスパッタリング法により界面層を成膜した。
次に、In18Sb82の組成(原子%)からなるスパッタリングターゲットを用い、アルゴンガス圧3×10−3torr、RFパワー300mWでスパッタリング法により、前記界面層上に膜厚が16nmとなるように記録層を成膜した。
次に、(ZnS)80(SiO20の組成(モル%)からなるスパッタリングターゲットを用い、前記記録層上に膜厚が10nmとなるようにスパッタリング法により第2保護層を成膜した。
次に、SiCからなるスパッタリングターゲットを用い、第2保護層上に膜厚が4nmとなるようにスパッタリング法により第3保護層を成膜した。
次に、純銀からなるスパッタリングターゲットを用い、前記第3保護層上に膜厚が120nmとなるようにスパッタリング法により反射放熱層を成膜した。
次に、スピナーによってアクリル系硬化樹脂を前記反射層上に、膜厚が5〜10μmになるように塗布した後、紫外線硬化させて有機保護層を形成した。
最後に、前記有機保護層上に、直径12cm、厚さ0.6mmのポリカーボネート樹脂製基板を接着剤を用いて貼り合せた。以上により、実施例7の光記録媒体を作製した。
【0095】
<初期化>
得られた光記録媒体について、波長820nmの大口径半導体レーザー(LD)ビーム照射により記録層の初期結晶化を行った。
【0096】
<評価>
記録再生には、波長656nm、NA0.65のピックアップを用いた。記録はパルス変調法を用い、記録データはEFM+変調方式により、各記録層に応じた最適記録線速、最適記録パワーで記録した。記録ストラテジーもジッターが最小となるように各々最適化して使用した。再生は全てパワー0.7mW、線速3.5m/sで行い、data to clock ジッター、及び反射率を測定した。
その結果、記録ビット長(記録密度)0.267μm/bitで記録可能な線速範囲は3.5〜57m/sという広い範囲であり、1000回繰り返し記録後のジッター増加率は1%以内であった。
【0097】
(実施例8)
−光記録媒体の作製−
実施例7において、記録層の組成を(In0.14Sb0.8695Geに変えた以外は、実施例7と同様にして、実施例8の光記録媒体を作製した。
この光記録媒体に対し、実施例7と同じシステムを用いて記録を行ったところ、記録可能な線速範囲は3.5〜55m/sという広い範囲であった。
【0098】
更に、実施例7の媒体と一緒に高温高湿(80℃、85%RH)下の保存信頼性試験を行った結果、記録マークのジッター特性の上昇が、実施例7の媒体では300時間経過後に増加率2%であったのに対し、実施例8の媒体では増加率1%以下であり、Geの添加は保存信頼性向上に効果があることが分った。
Geの添加量は、1原子%以下では効果がなく、更に添加量の増加に伴い記録可能な線速範囲が低くなってしまうことも同時に確認された。
目標とする線速範囲にもよるが、Geの添加量は原子比で0.1(10原子%)以下、好ましくは0.07(7原子%)以下がよい。
【0099】
(実施例9)
−光記録媒体の作製−
実施例8において、界面層の組成をAlに変えた以外は、実施例8と同様にして、実施例9の光記録媒体を作製した。
この光記録媒体に対し、実施例8と同じシステムを用いて記録を行い、高温高湿(80℃、85%RH)下の保存信頼性試験を行ったところ、記録可能な線速範囲、保存信頼性ともに実施例8と同等であった。
【0100】
(実施例10)
−光記録媒体の作製−
実施例7において、記録層の組成を(In0.14Sb0.8690GeAlに変えた以外は、実施例7と同様にして、実施例10の光記録媒体を作製した。
この光記録媒体に対し、実施例7と同じシステムを用いて記録を行ったところ、記録可能な線速範囲は3.5〜58m/sという広い範囲であった。
実施例8の光記録媒体よりも記録可能な線速範囲が広くなり、Alの添加は記録線速向上に効果があることが確認された。また、Alの代わりにMnを添加しても同様な効果が得られた。
これらの元素の添加量は、目的とする線速にもよるが、あまり多く添加すると、連続再生の際にマークの結晶化がパワーの低い再生光でも起こってしまうため、原子比で0.15(15原子%)以下が好ましく、0.1(10原子%)以下がより好ましい。
【0101】
(実施例11)
−光記録媒体の作製−
直径12cm、厚さ0.6mm、トラックピッチ0.74μmのグルーブ付きポリカーボネート樹脂製基板を用意し、該基板を高温で脱水処理した。
まず、(ZnS)80(SiO20の組成(モル%)からなるスパッタリングターゲットを用い、前記基板上に膜厚が65nmとなるようにスパッタリング法により第1保護層を成膜した。
次に、Sbからなるスパッタリングターゲットを用い、前記第1保護層上に膜厚が1nmとなるようにスパッタリング法により結晶化促進層を成膜した。
次に、In19Sb81の組成(原子%)からなるスパッタリングターゲットを用い、アルゴンガス圧3×10−3torr、RFパワー300mWでスパッタリング法により、前記結晶化促進層上に膜厚が16nmとなるように記録層を成膜した。
次に、(ZnS)80(SiO20の組成(モル%)からなるスパッタリングターゲットを用い、前記記録層上に膜厚が10nmとなるようにスパッタリング法により第2保護層を成膜した。
次に、SiCからなるスパッタリングターゲットを用い、第2保護層上に膜厚が4nmとなるようにスパッタリング法により第3保護層を成膜した。
次に、純銀からなるスパッタリングターゲットを用い、前記第3保護層上に膜厚が120nmとなるようにスパッタリング法により反射放熱層を成膜した。
次に、スピナーによってアクリル系硬化樹脂を前記反射層上に、膜厚が5〜10μmになるように塗布した後、紫外線硬化させて有機保護層を形成した。
最後に、前記有機保護層上に、直径12cm、厚さ0.6mmのポリカーボネート樹脂製基板を接着剤を用いて貼り合せた。以上により、実施例11の光記録媒体を作製した。
【0102】
<初期化>
得られた光記録媒体について、波長820nmの大口径半導体レーザー(LD)ビーム照射により記録層の初期結晶化を行った。
【0103】
<評価>
記録再生には、波長656nm、NA0.65のピックアップを用いた。記録はパルス変調法を用い、記録データはEFM+変調方式により、各記録層に応じた最適記録線速、最適記録パワーで記録した。記録ストラテジーもジッターが最小となるように各々最適化して使用した。再生は全てパワー0.7mW、線速3.5m/sで行い、data to clock ジッター、及び反射率を測定した。
その結果、記録ビット長(記録密度)0.267μm/bitで記録可能な線速範囲は3.5〜55m/sという広い範囲であり、1000回繰り返し記録後のジッター増加率は1%以内であった。
更に高温高湿(80℃、85%RH)下の保存信頼性試験を行った結果、記録マークのジッター特性の上昇は、増加率2%であり、結晶状態の反射率の低下は1%未満であった。
【0104】
(実施例12)
−光記録媒体の作製−
実施例11において、結晶化促進層の組成をBiに変えた以外は、実施例11と同様にして、実施例12の光記録媒体を作製した。なお、後述する理由により初期化は行わなかった。
この光記録媒体に対し、実施例11と同じシステムを用いて記録を行ったところ、記録可能な線速範囲は3.5〜55m/sという広い範囲であった。
更に高温高湿(80℃、85%RH)下の保存信頼性試験を行った結果、記録マークのジッター特性の上昇は、増加率2%であり、結晶状態の反射率の低下は1%未満であった。
なお、実施例12の場合は、実施例11の場合とは異なり、記録層は、成膜工程後に結晶化していた。このため、初期化を行うことなく記録することが可能であった。
【0105】
(実施例13)
−光記録媒体の作製−
実施例11において、結晶化促進層の組成をBiSbに変えた以外は、実施例11と同様にして、実施例13の光記録媒体を作製した。
この光記録媒体に対し、実施例11と同じシステムを用いて記録を行ったところ、記録可能な線速範囲は3.5〜55m/sという広い範囲であった。
更に高温高湿(80℃、85%RH)下の保存信頼性試験を行った結果、記録マークのジッター特性の上昇は、増加率2%であり、結晶状態の反射率の低下は1%未満であった。
【0106】
(実施例14)
−光記録媒体の作製−
実施例11において、記録層の組成を(In0.15Sb0.8595Geに変えた以外は、実施例11と同様にして、実施例14の光記録媒体を作製した。
この光記録媒体に対し、実施例11と同じシステムを用いて記録を行ったところ、記録可能な線速範囲は3.5〜54m/sという広い範囲であった。
【0107】
更に、実施例11の光記録媒体と一緒に高温高湿(80℃、85%RH)下の保存信頼性試験を行った結果、記録マークのジッター特性の上昇が、実施例11の光記録媒体では300時間経過後に増加率2%であったのに対し、実施例14の光記録媒体では増加率1%以下であり、Geの添加は保存信頼性向上に効果があることが分った。
Geの添加量は、1原子%以下では効果がなく、更に添加量の増加に伴い記録可能な線速範囲が低くなってしまうことも同時に確認された。
目標とする線速範囲にもよるが、Geの添加量は原子比で0.1(10原子%)以下が好ましく、0.07(7原子%)以下がより好ましい。
【0108】
(実施例15)
−光記録媒体の作製−
直径12cm、厚さ0.6mm、トラックピッチ0.74μmのグルーブ付きポリカーボネート樹脂製基板を用意し、該基板を高温で脱水処理した。
まず、(ZnS)80(SiO20の組成(モル%)からなるスパッタリングターゲットを用い、前記基板上に膜厚が60nmとなるようにスパッタリング法により第1保護層を成膜した。
次に、記録層としてIn19Sb76Teの組成(原子%)からなるスパッタリングターゲットを用い、アルゴンガス圧3×10−3torr、RFパワー300mWでスパッタリング法により、前記第1保護層上に膜厚が14nmとなるように記録層を成膜した。
次に、(ZnS)80(SiO20の組成(モル%)からなるスパッタリングターゲットを用い、前記記録層上に膜厚が10nmとなるようにスパッタリング法により第2保護層を成膜した。
次に、SiCからなるスパッタリングターゲットを用い、第2保護層上に膜厚が4nmとなるようにスパッタリング法により第3保護層を成膜した。
次に、純銀からなるスパッタリングターゲットを用い、前記第3保護層上に膜厚が140nmとなるようにスパッタリング法により反射放熱層を成膜した。
次に、スピナーによってアクリル系硬化樹脂を前記反射層上に、膜厚が5〜10μmになるように塗布した後、紫外線硬化させて有機保護層を形成した。
最後に、前記有機保護層上に、直径12cm、厚さ0.6mmのポリカーボネート樹脂製基板を接着剤で貼り合せた。以上により、実施例15の光記録媒体を作製した。
【0109】
<初期化>
得られた光記録媒体について、波長820nmの大口径半導体レーザー(LD)ビーム照射により記録層の初期結晶化を行った。
【0110】
<評価>
得られた光記録媒体に対し、波長660nm、NA0.65のピックアップヘッドを用いてEFM+変調方式で記録ビット長0.267μm/bitのランダムパターンをDVD10倍速に相当する35m/sで繰り返し記録した。このときの記録ストラテジーとしては、非晶質マークを形成する時のピークパワーとバイアスパワーからなるパルスの数について、3Tを1パルスとし、4T以上はマーク長が2T増える毎にパルスの数を1つずつ増やす方式を用いた。高消去パワーPe(h)のパルスは用いなかった。
図12にDC(データ ツー クロック)ジッターのパワーマージンを示す。消去パワーのピークパワーに対する比εは0.23とした。ピークパワー34〜36mW程度で比較的良好な記録特性が得られた。なお、DOW0、DOW1、DOW10、及びDOW1000は、それぞれダイレクト オーバー ライト0回、1回、10回、及び1000回の意味である。
また、この光記録媒体を80℃で300時間保存し、記録済みの非晶質の安定性(アーカイバル特性)、及び結晶の安定性(シェルフ特性)を調べたところ、アーカイバル特性、シェルフ特性共にジッターの上昇は1%以下と良好であった。反射率低下量も3%程度であり、実用上問題ないことが確認できた。
【0111】
(実施例16)
−光記録媒体の作製−
実施例15と同じ光記録媒体について、高消去パワーPe(h)を用いたストラテジーで記録を行った。このとき、消去パワーのピークパワーに対する比εは0.21とし、高消去パワーは消去パワーに1.5mW加算したパワーとし、消去パワーに変調されると同時に4ns照射した。図13にDCジッターのパワーマージンを示すが、実施例1の場合よりも全体的にジッターが低下し、特に繰り返し記録特性が改善されていることが分る。
【0112】
(実施例17)
−光記録媒体の作製−
実施例15において、記録層の組成をAgIn19Sb76Teに変えた以外は、実施例15と同様にして、実施例17の光記録媒体を作製した。
得られた光記録媒体について、実施例16と同様にして、記録を行った。初期化後にオシロスコープでRF信号を観察したところ、実施例15の場合より反射率むらが少なくなっていた。
図14にDCジッターのパワーマージンを示すが、実施例16に比較して、特に初回記録のジッターが良かった。
また、この光記録媒体を80℃にて300時間保存し、記録済みの非晶質の安定性(アーカイバル特性)、及び、結晶の安定性(シェルフ特性)を調べたところ、アーカイバル特性、シェルフ特性共にジッターの上昇は1%以下と良好であった。反射率低下量は2.5%程度であり、実用上問題ないことが確認できた。
【0113】
(実施例18)
−光記録媒体の作製−
実施例15において、記録層の組成をGeIn18Sb76Teに変えた以外は、実施例15と同様にして、実施例18の光記録媒体を作製した。
得られた光記録媒体について、実施例16と同様の方法で記録を行った。初期化後の反射率むらは実施例15と同程度であった。
図15にDCジッターのパワーマージンを示すが、実施例16と同程度の記録ができていることが分る。
また、この光記録媒体を80℃にて300時間保存し、記録済みの非晶質の安定性(アーカイバル特性)、及び、結晶の安定性(シェルフ特性)を調べたところ、アーカイバルのジッター上昇は0.5%以下に抑えられていた。シェルフ特性は、ジッターの上昇が1%以下、反射率低下量が3.5%程度であり、実用上問題ないことが確認できた。
【0114】
(比較例3)
−光記録媒体の作製−
実施例15において、記録層の組成をIn30Sb70に変えた以外は、実施例15と同様にして、比較例3の光記録媒体を作製した。
得られた比較例3の光記録媒体について、実施例16と同様の方法で初期化を行った。初期化後の反射率むらは実施例15と同程度であり、ジッターのパワーマージンは実施例16と同程度であった。
また、この光記録媒体を80℃にて300時間保存し、記録済みの非晶質の安定性(アーカイバル特性)、及び、結晶の安定性(シェルフ特性)を調べたところ、アーカイバルのジッター上昇は4%程度もあり、シェルフのジッター上昇は10%以上と測定不能な程であった。反射率低下も9%あったので、念のため保存試験後のマーク形状をTEMにより観察したところ、保存試験前と殆ど変化なく、非晶質自体は安定であることが確認できた。従って、アーカイバルのジッター上昇は非晶質マークの一部が結晶化したことによるものではなく、結晶相が変質し反射率が大きく変化したことによるものと推測される。
【0115】
(比較例4)
−光記録媒体の作製−
実施例15において、記録層の組成をInSb80Te15に変えた以外は、実施例15と同様にして、比較例4の光記録媒体を作製した。
得られた比較例4の光記録媒体について、実施例16と同様の方法で初期化を行った。しかし、オシロスコープでRF信号を観察したところ反射率むらが大きかったので、初期化する際の線速、パワー、送り幅を種々変えて行ってみたが、反射率むらを改善できる条件を見つけることができなかった。記録も試みたが、種々の線速で記録してみても、ジッターは15〜16%程度までしか下げることができなかった。
【産業上の利用可能性】
【0116】
本発明の光記録媒体は、DVD−ROMと同容量で記録線速がDVD8倍速以上(記録線速度=約28m/sec以上)であっても信頼性の高い記録が可能であり、各種光記録媒体、特にDVD−RAM、DVD−RW、DVD+RW等のDVD系光記録媒体に幅広く用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1】図1は、本発明の光記録媒体の層構成の一例を示す模式図である。
【図2】図2は、光記録媒体の記録層における非晶質マークにレーザーが照射されたときの結晶化の模式図である。
【図3】図3は、光記録媒体の記録層の温度と結晶成長速度との関係を示すグラフである。
【図4】図4は、本発明の光記録媒体の他の層構成の一例を示す模式図である。
【図5】図5は、本発明の光記録媒体の別の層構成の一例を示す模式図である。
【図6】図6は、DVD+RW等で使用されている波形発光パターン(記録ストラテジー)を示す図である。
【図7】図7は、共晶点に近い組成のIn−Sb系について80℃にて100時間の保存試験を行った場合の未記録部(結晶部)の反射率低下の様子を示し、図7(A)は保存前、図7(B)は保存後である。
【図8】図8は、In−Sb系において、In量を少なくした場合の保存後の反射率低下量を示す図である。
【図9】図9は、In−Sbの組成比に対する転移線速の値を示す図である。
【図10】図10は、転移線速を説明するための図であり、図10(A)は溶融後、全て再結晶化した状態を示し、図10(B)は溶融後、全て再結晶化しきれず、非晶質が形成された状態を表す。
【図11】図11は、InSbにTeを添加した場合の80℃にて100時間保存後の反射率低下量を示す図である。
【図12】図12は、本発明の光記録媒体に対する光情報記録方法、特にその記録ストラテジーの一例を示す図である。
【図13】図13は、図12の記録ストラテジーで記録した場合の記録マークを示す図である。
【図14】図14は、非晶質マークが全て結晶化できずに残ってしまう様子を示す図であり、図14(A)は非晶質マークにある消去パワーを一定線速で照射した時に結晶化する様子を示し、図14(B)は非晶質マークの結晶化できずに残った部分の形を模式的に示す。
【図15】図15は、実施例15における光記録媒体のDCジッターのパワーマージンを示す図である。
【図16】図16は、実施例16における光記録媒体のDCジッターのパワーマージンを示す図である。
【図17】図17は、実施例17における光記録媒体のDCジッターのパワーマージンを示す図である。
【図18】図18は、実施例18における光記録媒体のDCジッターのパワーマージンを示す図である。
【図19】図19は、In−Sb−Mの三元系組成式を満たす範囲を示す図である。
【図20】図20は、In−Sb−Teの三元系組成式を満たす範囲を示す図である。
【符号の説明】
【0118】
1 基板
2 第1保護層
3 記録層
4 第2保護層
5 第3保護層
6 反射層
7 界面層
8 結晶化促進層
T 基本クロック周期
Pw=Pp ピークパワー
Pb バイアスパワー
Pe イレースパワー
Pe(h) 高消去パワー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、該基板上に少なくとも記録層を有してなり、該記録層におけるレーザー光の照射による結晶質部と非晶質マークとの可逆的な相変化を利用して情報の記録、再生、消去及び書換えの少なくともいずれかを行う光記録媒体であって、レーザー光走行方向長さが0.4μm以下の前記非晶質マークを記録可能であると共に、前記記録層が、次式、InαSbβ(ただし、α及びβは、それぞれの元素の原子組成比率を表し、0.73≦β/(α+β)≦0.90であり、かつα+β=100である)で表される組成を含有することを特徴とする光記録媒体。
【請求項2】
基板と、該基板上に少なくとも記録層を有してなり、該記録層におけるレーザー光の照射による結晶質部と非晶質マークとの可逆的な相変化を利用して情報の記録、再生、消去及び書換えの少なくともいずれかを行う光記録媒体であって、レーザー光走行方向長さが0.4μm以下の前記非晶質マークを記録可能であると共に、前記記録層が、次式、MγInαSbβ(ただし、Mは、In、及びSb以外の元素、並びに該元素の混合物から選択される少なくとも1種の元素を表す。α、β、及びγは、それぞれの元素の原子組成比率を表し、0.73≦β/(α+β)≦0.90、α>γ>0であり、かつα+β+γ=100である)で表される組成を含有することを特徴とする光記録媒体。
【請求項3】
28m/s以上の線速で繰り返し記録が可能である請求項1から2のいずれかに記載の光記録媒体。
【請求項4】
記録層におけるMが、Ge、Te、O、S、Se、Al、Ag、Mn、Cu、Au及びNから選択される少なくとも1種の元素である請求項2から3のいずれかに記載の光記録媒体。
【請求項5】
MがGeであり、かつ0.2≦γ≦15である請求項2から4のいずれかに記載の光記録媒体。
【請求項6】
MがTeであり、かつ1≦γ≦15である請求項2から4のいずれかに記載の光記録媒体。
【請求項7】
記録層は、昇温速度10℃/分での結晶化温度が150〜250℃である請求項1から6のいずれかに記載の光記録媒体。
【請求項8】
記録層の膜厚が、8〜22nmである請求項1から7のいずれかに記載の光記録媒体。
【請求項9】
光記録媒体が、基板と、該基板上に少なくとも第1保護層、記録層、第2保護層、及び反射層をこの順及び逆順のいずれかに有する請求項1から8のいずれかに記載の光記録媒体。
【請求項10】
記録層と第1保護層との間、及び記録層と第2保護層との間の少なくともいずれかに、酸化物を含有する界面層を有する請求項9に記載の光記録媒体。
【請求項11】
酸化物が、ZrO、TiO、SiO、Al、Ta、Y、MgO、CaO、Nb、及び希土類酸化物から選択される少なくとも1種である請求項10に記載の光記録媒体。
【請求項12】
界面層の膜厚が、1〜20nmである請求項10から11のいずれかに記載の光記録媒体。
【請求項13】
記録層の少なくとも一部に接して結晶化促進層を有する請求項1から12のいずれかに記載の光記録媒体。
【請求項14】
結晶化促進層が、Bi、Sb、Te、及びInから選択される少なくとも1種を含有する請求項13に記載の光記録媒体。
【請求項15】
結晶化促進層の膜厚が、0.2〜10nmである請求項13から14のいずれかに記載の光記録媒体。
【請求項16】
反射層が、Ag及びAg合金のいずれかを含有する請求項9から15のいずれかに記載の光記録媒体。
【請求項17】
第2保護層が、ZnSとSiOとの混合物を含有する請求項9から16のいずれかに記載の光記録媒体。
【請求項18】
第2保護層と反射層との間に硫黄を含まない第3保護層を有し、該第3保護層がSiC及びSiの少なくともいずれかを含有する請求項9から17のいずれかに記載の光記録媒体。
【請求項19】
第3保護層の膜厚が、2〜10nmである請求項18に記載の光記録媒体。
【請求項20】
次式、InαSbβ(ただし、α及びβは、それぞれの元素の原子組成比率を表し、0.73≦β/(α+β)≦0.90であり、かつα+β=100である)で表される組成を含有してなり、かつ記録層の製造に用いられることを特徴とするスパッタリングターゲット。
【請求項21】
次式、MγInαSbβ(ただし、Mは、In、及びSb以外の元素、並びに該元素の混合物から選択される少なくとも1種の元素を表す。α、β、及びγは、それぞれの元素の原子組成比率を表し、0.73≦β/(α+β)≦0.90、α>γ>0であり、かつα+β+γ=100である)で表される組成を含有してなり、かつ記録層の製造に用いられることを特徴とするスパッタリングターゲット。
【請求項22】
Mが、Ge、Te、O、S、Se、Al、Ag、Mn、Cu、Au及びNから選択される少なくとも1種の元素である請求項21に記載のスパッタリングターゲット。
【請求項23】
MがGeであり、かつ0.2≦γ≦15である請求項21から22のいずれかに記載のスパッタリングターゲット。
【請求項24】
MがTeであり、かつ1≦γ≦15である請求項21から22のいずれかに記載のスパッタリングターゲット。
【請求項25】
基板と、該基板上に少なくとも第1保護層、記録層、第2保護層、及び反射層をこの順及び逆順のいずれかに有してなる光記録媒体の製造方法であって、
請求項20から24のいずれかに記載のスパッタリングターゲットを用いてスパッタリング法により記録層を成膜する記録層形成工程を含むことを特徴とする光記録媒体の製造方法。
【請求項26】
記録層の少なくとも一部に接するように結晶化促進層を成膜する結晶化促進層形成工程を含む請求項25に記載の光記録媒体の製造方法。
【請求項27】
光記録媒体をレーザー光により加熱処理する初期結晶化工程を含む請求項25から26のいずれかに記載の光記録媒体の製造方法。
【請求項28】
加熱処理が、レーザー光による溶融初期結晶化及び固相初期化のいずれかである請求項27に記載の光記録媒体の製造方法。
【請求項29】
請求項1から19のいずれかに記載の光記録媒体における第1保護層側からレーザー光を照射して情報の記録、再生、消去及び書換えの少なくともいずれかを行うことを特徴とする光記録媒体の使用方法。
【請求項30】
非晶質マークのレーザー光走行方向長さが、記録基本クロック周期Tのn倍(ただし、nは自然数を表す)であるnTで表されるマーク長記録方式により情報の記録を行う請求項29に記載の光記録媒体の使用方法。
【請求項31】
相対的に高いパワー値のピークパワー光と、相対的に低いパワー値のバイアスパワー光との繰り返しによる(n/2)+1である整数個のパルス照射により長さnTの結晶部を形成する請求項29から30のいずれかに記載の光記録媒体の使用方法。
【請求項32】
光記録媒体に光源から光を照射して該光記録媒体に情報の記録、再生、消去及び書換えの少なくともいずれかを行う光記録装置において、前記光記録媒体が、請求項1から19のいずれかに記載の光記録媒体であることを特徴とする光記録装置。

【図1】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図10】
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【図14】
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【図19】
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【図20】
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【図2】
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【図3】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2006−44215(P2006−44215A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−310172(P2004−310172)
【出願日】平成16年10月25日(2004.10.25)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】