説明

光記録媒体

【課題】記録層にオキソノール色素を用いた光記録媒体において、初期特性が良好な光記録媒体を提供する。
【解決手段】基板上に記録層を有する光記録媒体であって、前記記録層が、オキソノール色素とアゾ色素とを含有し、かつ前記アゾ色素の含有量が記録層中の全色素の1〜15質量%であることを特徴とする光記録媒体である。このように、オキソノール色素とともにアゾ色素を所定量使用することにより、光記録媒体の初期特性を改善することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高密度記録が可能な光記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、文字情報、画像情報、音声情報等を大量に記録・再生するための、レーザー光により一回限りの情報の記録が可能な追記型デジタル・ヴァサタイル・ディスク(所謂DVD−R)と称される光ディスクが提案されている。このDVD−Rは、照射されるレーザー光のトラッキングのための案内溝(プリグルーブ)のトラックピッチがCD−Rに比べて半分以下(0.74〜0.8μm)と狭く形成された透明な円盤状基板上に、色素からなる記録層、そして通常は該記録層の上に光反射層、そして更に必要により保護層を設けてなるディスクを二枚、或いは該ディスクと同じ形状の円盤状保護基板とを該記録層を内側にして接着剤で貼り合わせた構造を有している。DVD−Rへの情報の記録再生は、可視レーザー光(通常は、630〜680nmの範囲の波長のレーザー光)を照射することにより行われ、CD−Rより高密度の記録が可能であるとされている。
【0003】
最近、インターネット等のネットワークやハイビジョンTVが急速に普及している。また、HDTV(High Definition Television)の放映も間近にひかえて、画像情報を安価簡便に記録するための大容量の記録媒体の要求が高まっている。DVD−Rは、大容量の記録媒体としての地位をある程度までは確保されるものの、将来の要求に対応できる程の充分大きな記録容量を有しているとは言えない。そこで、DVD−Rよりも更に短波長のレーザー光を用いることによって記録密度を向上させ、より大きな記録容量を備えた光ディスクの開発が進められ、例えば波長405nmの青色レーザー光を用いたブルーレイディスクと称する光記録ディスクや、DVD±Rとほぼ同じ構成を有する追記型HD DVDが提案された(例えば、非特許文献1〜2参照。)。
【0004】
このような光記録媒体において、記録層の色素として、例えば、オキソノール色素を用い、青色(波長400〜430nm、488nm)又は青緑色(波長515nm)のレーザー光を照射することにより情報の記録再生を行う情報記録再生方法が提案されている。 オキソノール色素は屈折率が2を超え、1.9程度のフタロシアニンよりも好適に使用され得る。ところが、本発明者の検討では、オキソノール骨格色素を含む記録層では良好な初期特性を得られておらず、例えば、HD DVD構成の媒体では、PRSNR(Partial Response Signal to Noise Ratio)の値が20程度であり、改善の余地があった。
【非特許文献1】”ISOM2000”210〜211頁
【非特許文献2】「日経エレクトロニクス10月13日号」日経BP社,2003年10月13日発行,p126−134
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上の従来の問題点に鑑みなされたものであり、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、
本発明の目的は、記録層にオキソノール色素を用いた光記録媒体において、初期特性が良好な光記録媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決する手段は以下の通りである。即ち、
<1> 基板上に記録層を有する光記録媒体であって、前記記録層が、オキソノール色素とアゾ化合物とを含み、かつ前記アゾ化合物の含有量が記録層中の全色素の1〜15質量%であることを特徴とする光記録媒体である。
本発明において、オキソノール色素とは、アニオン性発色団を有するポリメチン色素と定義する。
【0007】
<2> 前記オキソノール色素が、下記一般式(1)で表されることを特徴とする前記<1>に記載の光記録媒体である。
【0008】
【化1】


[一般式(1)中、A、B、C及びDは、AとBのハメットのσp 値の合計及びCとDのハメットのσp 値の合計がそれぞれ0.6以上となる電子吸引性基であり、AとBもしくはCとDは連結して環を形成していてもよく、Rはメチン炭素上の置換基を表し、mは0乃至3の整数を表し、nは0乃至2m+1の整数を表し、nが2以上の整数のとき、複数個のRは互いに同一でも異なっていてもよく、また互いに連結して環を形成していてもよく、Yt+はt価のカチオンを表し、tは1乃至10の整数を表す。]
【0009】
<3> 前記アゾ色素が、下記一般式(2”)で表されるアゾ化合物と金属塩とから得られる金属キレート化合物であり、かつ最大吸収波長λmaxが、500nm<λmax<650nmであることを特徴とする請求項1または2に記載の光記録媒体。
一般式(2”)
A−N=N−B
[一般式(2”)中、Aは、カプラー成分から誘導される一価の基を表し、Bは、ジアゾニウム塩から誘導される一価の基を表す。]
【0010】
<4> 前記光記録媒体は350〜450nmの波長を持つレーザー光によって、記録再生が行われることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の光記録媒体。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、記録層にオキソノール色素を用いた光記録媒体において、初期特性が良好な光記録媒体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の光記録媒体は、基板上に記録層を有する光記録媒体であって、前記記録層が、オキソノール色素とアゾ化合物とを含み、かつ前記アゾ化合物の含有量が記録層中の全色素の1〜15質量%であることを特徴としている。
以下、まず、本発明の光記録媒体の各構成要素について説明する。
【0013】
本発明の光記録媒体の層構成としては、第1の基板上に、少なくとも記録層と、反射層とを順次有し、接着層を介して、第2の基板とを貼り合わせる構成、いわゆる「HD DVD」の構成や、基板上に、反射層、記録層、カバー層を有する構成、いわゆる「ブルーレイディスク」に好適に適用することができる。そして、いずれの場合でも、記録層はオキソノール色素とアゾ色素とを含有し、アゾ化合物の含有量が記録層中の全色素の1〜15質量%である。このように、オキソノール色素を単独で使用するのではなく、上記範囲の含有量のアゾ色素を併用することで初期特性を向上させることができる。
【0014】
以下に、本発明の光記録媒体の層構成における各層について説明する。まず、HD DVDの層構成について説明する。HD DVDの層構成は、第1の基板/記録層/反射層/保護層/接着層/第2の基板の構成であり、一部を省略しても、別の異なる層を追加してもかまわない。
【0015】
[第1の基板]
本発明の光記録媒体の第1の基板は、従来の光ディスクの基板として用いられている各種の材料から任意に選択することができる。
基板材料としては、例えば、ガラス、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル共重合体等の塩化ビニル系樹脂、エポキシ樹脂、アモルファスポリオレフィン及びポリエステルなどを挙げることができ、所望によりそれらを併用してもよい。上記材料の中では、耐湿性、寸法安定性及び価格などの点からポリカーボネートが好ましい。
第1の基板の厚さは、0.5〜0.8mmとすることが好ましく、0.55〜0.75mmとすることがより好ましい。
【0016】
本発明においては、第1の基板に形成されるプリグルーブは、高密度の記録を達成するために、トラックピッチが0.1〜0.6μmであり、かつ、溝深さが20〜200nmであることを必須とする。トラックピッチは0.33〜0.50μmの範囲であることがより好ましい。また、溝深さは、50〜130nmの範囲とすることが好ましく、70〜100nmの範囲とすることがより好ましい。
更に、第1の基板に形成されるプリグルーブの溝幅(半値幅)は、140〜260nmの範囲であることが好ましく、120〜250nmの範囲であることがより好ましい。
加えて、プリグルーブの溝傾斜角度は、20〜80°の範囲であることが好ましく、30〜70°の範囲であることがより好ましい。
【0017】
記録層が設けられる側の基板表面(プリグルーブが形成された面側)には、平面性の改善、接着力の向上及び記録層の変質防止の目的で、下塗層が設けられてもよい。
下塗層の材料としては例えば、ポリメチルメタクリレート、アクリル酸・メタクリル酸共重合体、スチレン・無水マレイン酸共重合体、ポリビニルアルコール、N−メチロールアクリルアミド、スチレン・ビニルトルエン共重合体、クロルスルホン化ポリエチレン、ニトロセルロース、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリオレフィン、ポリエステル、ポリイミド、酢酸ビニル・塩化ビニル共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート等の高分子物質;及びシランカップリング剤などの表面改質剤などを挙げることができる。下塗層は、上記物質を適当な溶剤に溶解又は分散して塗布液を調製した後、この塗布液をスピンコート、ディップコート、エクストルージョンコートなどの塗布法により基板表面に塗布することにより形成することができる。
下塗層の層厚は一般に0.005〜20μmの範囲にあり、好ましくは0.01〜10μmの範囲である。
【0018】
[中間層]
中間層は、記録層の保存性を高める、熱伝導率を調整することを目的として、基板と後述する反射層との間に設けられる。
中間層に用いられる材料としては、記録及び再生に用いられるレーザー光を透過する材料であり、上記の機能を発現し得るものであれば、特に、制限されるものではないが、例えば、ガスや水分の透過性の低い材料であり、誘電体であることが好ましい。
具体的には、Zn、Si、Ti、Te、Sn、Mo、Ge、Nb等の窒化物、酸化物、炭化物、硫化物からなる材料が好ましく、ZnS、MoO2、GeO2、TeO、SiO2、TiO2、ZnO、ZnS−SiO2、SnO2、ZnO−Ga23、NbO2が好ましく、SnO2、ZnO−Ga23、SiO2、がより好ましい。
【0019】
また、中間層は、真空蒸着、DCスパッタリング、RFスパッタリング、イオンプレーティングなどの真空成膜法により形成することができる。中でも、スパッタリングを用いることがより好ましい。
本発明における中間層の厚さは、記録ピット形成時の熱の拡散を制御するという観点から、1〜200nmの範囲であることが好ましく、5〜100nmの範囲であることがより好ましく、10〜40nmの範囲であることが更に好ましい。
【0020】
[記録層]
記録層は、記録及び再生に使用されるレーザー光を吸収し得る色素を含有する層であって、デジタル情報などの符号情報(コード化情報)が記録される。
本発明においては、記録層に含有される色素としては、既述の通り、オキソノール色素とアゾ化合物とが用いられ、他の色素を併用してもよい。併用可能な色素としては、シアニン色素、金属錯体系色素、フタロシアニン色素等が挙げられる。
【0021】
−オキソノール色素−
本発明において用いられるオキソノール色素について説明する。本発明において、オキソノール色素は、記録特性に優れる点で、下記一般式(1)で表されるオキソノール色素が特に好適に用いられる。
【0022】
【化2】


[一般式(1)中、A、B、C及びDは、AとBのハメットのσp 値の合計及びCとDのハメットのσp値の合計がそれぞれ0.6以上となる電子吸引性基であり、AとBもしくはCとDは連結して環を形成していてもよく、Rはメチン炭素上の置換基を表し、mは0乃至3の整数を表し、nは0乃至2m+1の整数を表し、nが2以上の整数のとき、複数個のRは互いに同一でも異なっていてもよく、また互いに連結して環を形成していてもよく、Yt+はt価のカチオンを表し、tは1乃至10の整数を表す。]
【0023】
一般式(1)はアニオンの局在位置の表記の違いによる複数の互変異性体を含むものであるが、特にA、B、C、Dのいずれかが−CO−E(Eは置換基)である場合、酸素原子上に負電荷を局在させて表記することが一般的である。例えばDが−CO−Eである場合、表記としては下記一般式(2)が一般的であり、このような表記のものも一般式(1)に含まれる。
【0024】
【化3】

【0025】
一般式(2)におけるA、B、C、R、m、n、Yt+、tの定義は一般式(1)と同一である。
【0026】
以下、上記一般式(1)で表されるオキソノール色素について説明する。一般式(1)において、A、B、CおよびDは、AとBのハメットの置換基定数σp値の合計及びCとDのハメットの置換基定数σp値の合計がそれぞれ0.6以上となる電子吸引性基を表す。A、B、CおよびDはそれぞれ同一でもよく、また異なっていてもよい。また、AとB、もしくはCとDは連結して環を形成していてもよい。A、B、C及びDで表される電子吸引性基のハメットの置換基定数σp値は、それぞれ独立に0.30〜0.85の範囲にあることが好ましく、更に好ましくは、0.35〜0.80の範囲である。
【0027】
ハメットの置換基定数σp値(以下、σp値という)は、例えばChem.Rev.91,165(1991)及びこれに引用されている参考文献に記載されており、記載されていないものについても同文献記載の方法によって求めることが可能である。AとB(CとD)が連結して環を形成している場合、A(C)のσp値は、−A−B−H(−C−10 D−H)基のσp 値を意味し、B(D)のσp 値は、−B−A−H(−D−C−H)基のσp値を意味する。この場合、両者は結合の方向が異なるためσp値は異なる。
【0028】
A、B、C及びDで表される電子吸引性基の好ましい具体例としては、シアノ基、ニトロ基、炭素原子数1乃至10のアシル基(例、アセチル、プロピオニル、ブチリル、ピバロイル、ベンゾイル)、炭素原子数2乃至12のアルコキシカルボニル基(例、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、デシルオキシカルボニル)、炭素原子数7乃至11のアリールオキシカルボニル基(例、フェノキシカルボニル)、炭素原子数1乃至10のカルバモイル基(例、メチルカルバモイル、エチルカルバモイル、フェニルカルバモイル)、炭素原子数1乃至10のアルキルスルホニル基(例、メタンスルホニル)、炭素原子数6乃至10のアリールスルホニル基(例、ベンゼンスルホニル)、炭素原子数1乃至10のアルコキシスルホニル基(例、メトキシスルホニル)、炭素原子数1乃至10のスルファモイル基(例、エチルスルファモイル、フェニルスルファモイル)、炭素原子数1乃至10のアルキルスルフィニル基(例、メタンスルフィニル、エタンスルフィニル)、炭素原子数6乃至10のアリールスルフィニル基(例、ベンゼンスルフィニル)、炭素原子数1乃至10のアルキルスルフェニル基(例、メタンスルフェニル、エタンスルフェニル)、炭素原子数6乃至10のアリールスルフェニル基(例、ベンゼンスルフェニル)、ハロゲン原子、炭素原子数2乃至10のアルキニル基(例、エチニル)、炭素原子数2乃至10のジアシルアミノ基(例、ジアセチルアミノ)、ホスホリル基、カルボキシル基、5員もしくは6員のヘテロ環基(例えば、2−ベンゾチアゾリル、2−ベンゾオキサゾリル、3−ピリジル、5−(1H)−テトラゾリル、4−ピリミジル)を挙げることができる。
【0029】
一般式(1)において、Rで表されるメチン炭素上の置換基としては、例えば以下に記載のものを挙げることができる。炭素原子数1〜20の鎖状又は環状のアルキル基(例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル)、炭素原子数6〜18の置換又は無置換のアリール基(例えば、フェニル、クロロフェニル、アニシル、トルイル、2,4−ジ−t−アミル、1−ナフチル)、アルケニル基(例えば、ビニル、2−メチルビニル)、アルキニル基(例えば、エチニル、2−メチルエチニル、2−フェニルエチニル)、ハロゲン原子(例えば、F、Cl、Br、I)、シアノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アシル基(例えば、アセチル、ベンゾイル、サリチロイル、ピバロイル)、アルコキシ基(例えば、メトキシ、ブトキシ、シクロヘキシルオキシ)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ、1−ナフトキシ)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ、ブチルチオ、ベンジルチオ、3−メトキシプロピルチオ)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ、4−クロロフェニルチオ)、
【0030】
アルキルスルホニル基(例えば、メタンスルホニル、ブタンスルホニル)、アリールスルホニル基(例えば、ベンゼンスルホニル、パラトルエンスルホニル)、炭素原子数1〜10のカルバモイル基、炭素原子数1〜10のアミド基、炭素原子数2〜12のイミド基、炭素原子数2〜10のアシルオキシ基、炭素原子数2〜10のアルコキシカルボニル基、ヘテロ環基(例えば、ピリジル、チエニル、フリル、チアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリルなどの芳香族ヘテロ環、ピロリジン環、ピペリジン環、モルホリン環、ピラン環、チオピラン環、ジオキサン環、ジチオラン環などの脂肪族ヘテロ環)である。
【0031】
Rとして好ましいものは、ハロゲン原子、炭素原子数1乃至8の鎖状又は環状のアルキル基、炭素原子数6乃至10のアリール基、炭素原子数1乃至8のアルコキシ基、炭素原子数6乃至10のアリールオキシ基、炭素原子数3乃至10のヘテロ環基であり、特に塩素原子、炭素原子数1乃至4のアルキル基(例:メチル、エチル、イソプロピル)、フェニル、炭素原子数1乃至4のアルコキシ基(例:メトキシ、エトキシ)、フェノキシ、炭素原子数4乃至8の含窒素ヘテロ環基(例:4−ピリジル、ベンゾオキサゾール−2−イル、ベンゾチアゾール−2−イル)が好ましい。
【0032】
nは0乃至2m+1の整数を表すが、nが2以上の整数のとき、複数個のRは互いに同一でも異なっていてもよく、また互いに連結して環を形成してもよい。このとき環員数は4乃至8が好ましく、特に5又は6が好ましく、環の構成原子は炭素原子、酸素原子又は窒素原子が好ましく、特に炭素原子が好ましい。
【0033】
A、B、C、D及びRは更に置換基を有していてもよく、置換基の例としては、一般式(1)におけるRで表される一価の置換基の例として先に挙げたものと同様のものを挙げることができる。
【0034】
光ディスクに用いられる色素としては熱分解性の観点からAとB、またはCとDが連結して環を形成することが好ましく、そのような環の例として以下のようなものが挙げられる。なお、例示中、R、R及びRは各々独立に、水素原子または置換基を表す。
【0035】
【化4】

【0036】
【化5】

【0037】
【化6】

【0038】
【化7】

【0039】
好ましい環は、(8)、(9)、(10)、(11)、(12)、(13)、(14)、(16)、(17),(36)、(39)、(41)、(54)、(57)及び(61)で示されるものである。更に好ましくは、(8)、(9)、(10)、(13)、(14)、(16)、(17)、(57)及び(61)で示されるものである。最も好ましくは、(9)、(10)、(13)、(17)、(57)及び(61)で示されるものである。
【0040】
、R及びRで表される置換基は、それぞれ前記Rで表される置換基として挙げたものと同義である。またR、R及びRはそれぞれ互いに連結して炭素環又は複素環を形成してもよい。炭素環としては、例えば、シクロヘキシル環、シクロペンチル環、シクロヘキセン環、及びベンゼン環などの飽和または不飽和の4〜7員の炭素環を挙げることができる。また複素環としては、例えば、ピペリジン環、ピペラジン環、モルホリン環、テトラヒドロフラン環、フラン環、チオフェン環、ピリジン環、及びピラジン環などの飽和または不飽和の4〜7員の複素環を挙げることができる。これらの炭素環または複素環は更に置換されていてもよい。更に置換し得る基としては、前記Rで表される置換基として挙げたものと同義である。
【0041】
一般式(1)において、mは0乃至3の整数であるが、このmの値によって該オキソノール色素の吸収波長が大きく変化する。記録再生に用いるレーザの発振波長に応じて最適な吸収波長の色素を設計する必要があるが、この点においてmの値の選択は重要である。録再生に用いるレーザの中心発振波長が780nmの場合(CD−R記録用の半導体レーザ)、一般式(1)においてmは2又は3が好ましく、中心発振波長が635nm又は650nmの場合(DVD−R記録用の半導体レーザ)、mは1又は2が好ましく、中心発振波長が550nm以下の場合(例えば、中心発振波長405nmの青紫色半導体レーザ)は、mは0又は1が好ましい。
【0042】
一般式(1)において、Yt+ で表されるt価のカチオンは、無機又は有機の何れのカチオンでもよく、無機のカチオンとしては、例えば、水素イオン、金属イオン、アンモニウムイオン(NH4+)を挙げることができ、好ましくは金属イオンであり、特にアルカリ金属イオン(例:Li+、Na+、K+)又は遷移金属イオン(例:Cu2+、Co2+)が好ましい。また、遷移金属イオンの場合、有機リガンドが配位しているものでもよい。
【0043】
t+で表されるt価の有機のカチオンとしては、オニウムイオンが好ましく、下記一般式(3)で表されるものが特に好ましい。これらの化合物は、対応するジピリジルと目的の置換基を持つハロゲン化物とのメンシュトキン反応(例えば、特開昭61−148162号公報参照)、あるいは特開昭51−16675号公報および特開平1−96171号公報に記載の方法に準ずるアリール化反応により容易に得ることができる。
【0044】
【化8】


[一般式(3)中、R31およびR32はそれぞれ独立にアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基又はヘテロ環基を表し、R33は置換基を表し、sは0乃至8の整数を表し、sが2以上の整数のとき、複数個のR33はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、また互いに連結して環を形成していてもよい。]
【0045】
一般式(3)において、R31もしくはR32で表されるアルキル基は、炭素原子数1〜18 が好ましく、更に炭素数1〜8が好ましく、鎖状、分岐又は環状であってもよく、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、s−ブチル、イソアミル、n−ヘキシル、シクロヘキシル、2−エチルヘキシル、n−オクチルを挙げることができる。
【0046】
一般式(3)において、R31もしくはR32で表されるアルケニル基は、炭素数2〜18が好ましく、更に炭素数2〜8が好ましく、例えばビニル、2−プロペニル、2−メチルプロペニル、1,3−ブタジエニルを挙げることができる。
【0047】
一般式(3)において、R31もしくはR32で表されるアルキニル基は、炭素数2〜18が好ましく、更に炭素数2〜8が好ましく、例えばエチニル、プロピニル、3,3−ジメチルブチニルを挙げることができる。
【0048】
一般式(3)において、R31もしくはR32で表されるアリール基は、炭素数6〜18が好ましく、更に炭素数6〜10が好ましく、例えばフェニル、1−ナフチル、2−ナフチルを挙げることができる。
【0049】
一般式(3)において、R31もしくはR32で表されるヘテロ環基は、炭素数4〜7の飽和又は不飽和のヘテロ環基が好ましく、含有されるヘテロ原子としては窒素原子、酸素原子、硫黄原子が好ましく、例えば4−ピリジル、2−ピリジル、2−ピラジル、2−ピリミジル、4−ピリミジル、2−イミダゾリル、2−フリル、2−チオフェニル、2−ベンゾオキサゾリル、2−ベンゾチオキサゾリルを挙げることができる。
【0050】
一般式(3)のR31およびR32は更に置換基を有していてもよく、置換基としては一般式(I)のRを表す置換基として例示したものと同様のものを挙げることができる。
【0051】
一般式(3)においてR33で表される置換基は、一般式(2)のRと同義であり、好ましくは炭素数1〜18のアルキル基であり、より好ましくは炭素数1〜8の無置換アルキル基である。
【0052】
一般式(3)において、sは0乃至8の整数を表すが、sは0〜4が好ましく、更に0〜2であることが好ましく、特に0が好ましい。sが2以上の整数のとき、複数個のR33はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、また互いに連結して環を形成していてもよい。また、一般式(3)において二つのピリジン環は、何れの位置で連結していてもよいが、ピリジン環の2位もしくは4位で連結するのが好ましく、特に両ピリジン環の4位同士で連結するのが好ましい。
【0053】
一般式(1)で表されるオキソノール色素は、任意の位置で結合して多量体を形成していてもよく、この場合の各単位は互いに同一でも異なっていてもよく、またポリスチレン、ポリメタクリレート、ポリビニルアルコール、セルロース等のポリマー鎖に結合していてもよい。
【0054】
本発明に用いられる一般式(1)で表されるオキソノール色素の具体例としては、特開昭63−209995号公報、特開平10−297103号公報、同11−78106号公報、同11−348420公報、特開2000−52658公報、特願平11−78106号公報に記載されたオキソノール色素の具体例を挙げることができる。その一部の化合物を以下に例示する。
【0055】
【化9】

【0056】
【化10】

【0057】
本発明において、記録層には、以上のオキソノールに加え、アゾ色素が所定量添加される。以下にアゾ色素について説明する。
【0058】
本発明において使用するアゾ色素は、下記一般式(2”)で示されるアゾ化合物と金属塩とから得られる金属キレート化合物であることが好ましい。
一般式(2”)
A−N=N−B
[一般式(2”)中、Aは、カプラー成分から誘導される一価の基を表し、Bは、ジアゾニウム塩から誘導される一価の基を表す。]
以下に、アゾ化合物及び金属塩それぞれについて説明する。
【0059】
−アゾ化合物−
アゾ化合物は、アリールもしくは、ヘテロアリールジアゾニウム塩(ジアゾ成分)と、そのジアゾニウム塩とアゾカップリング反応して色素を生成する酸性の水素原子を有した化合物(カプラー成分)を反応させて合成する化合物である。本発明に用いるアゾ化合物は、好ましくは、下記一般式(2”)で表される構造の化合物である。
一般式(2”)
A−N=N−B
[一般式(2”)中、Aは、カプラー成分から誘導される一価の基を表し、Bは、ジアゾニウム塩から誘導される一価の基を表す。]
【0060】
前記一般式(2”)で表される構造のアゾ化合物は、下記一般式(A)で表される化合物であることが好ましい。
【0061】
【化11】


[一般式(A)中、Aはそれが結合している炭素原子および窒素原子と一緒になって複素環を形成する残基を表わし、Xは水素原子、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子を表わし、Yは炭素数1〜6の鎖状または分岐のアルキル基を表わし、R、Rはそれぞれ独立に置換基を有してもよいアルキル基を表し、RとRとが結合して環を形成していてもよい。]
【0062】
また、前記一般式(2”)で表される構造のアゾ化合物は、下記一般式(4”)で表される化合物であることが好ましい。
【0063】
【化12】


[A、Bは、各々独立に、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素環、置換もしくは無置換の芳香族ヘテロ環を形成する原子団を表す。Gは、金属イオンに配位する能力をもつ一価の基を表す。]
【0064】
一般式(2”)及び(4”)で表される構造のアゾ化合物について説明する。Aは、ジアゾニウム塩とアゾカップリング反応して色素を生成する酸性の水素原子を有した化合物(カプラー成分)の残基、即ちカプラー成分から誘導される一価の基である。Aは、好ましくは、置換もしくは無置換のアリール基、窒素原子を含む炭素数1〜20の5員または窒素原子を含む炭素数2〜20の6員のヘテロ環基が好ましい。一般式(4”)で表される構造のアゾ化合物では、Aは結合している炭素原子とともに、芳香族炭化水素環または、芳香族ヘテロ環を形成する原子団を表し、Aで形成される環としては、置換基を有する芳香族炭化水素環(好ましくは置換を有するベンゼン環)、窒素原子を含む炭素数1〜20の5員または窒素原子を含む炭素数2〜20の6員のヘテロ環が好ましく、置換基を有する芳香族炭化水素環(好ましくは置換を有するベンゼン環)がより好ましい。
置換基A又はでA形成される構造の例を下記に示す。
【0065】
【化13】

【0066】
11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R20、R21、R22は、各々独立に、水素原子または、1価の置換基である。
【0067】
上記の環構造の中で、好ましいものは、式(IV)、(V)、(VI)である。
上記一般式中でR11、R13は好ましくは、炭素数1〜20の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素数6〜20の置換もしくは無置換のアリール基、シアノ基、炭素数1〜20の置換もしくは無置換のアルコシキカルボニル基、または炭素数2〜20の置換もしくは無置換のアミノカルボニル基である。R14は、好ましくはシアノ基、炭素数1〜20の置換もしくは無置換のアルコキシカルボニル基、炭素数6〜20の置換もしくは無置換のアリールオキシ基、または炭素数2〜20の置換もしくは無置換のアミノカルボニル基である。R15は、炭素数1〜20の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、または炭素数1〜20の置換もしくは無置換のアミノカルボニルアミノ基である。
特に好ましくは、R13はシアノ基であり、R14は炭素数1〜20のアルコキシカルボニル基であり、R15は炭素数1〜20の置換もしくは無置換のアルキル基、または炭素数6〜20の置換もしくは無置換のアリール基である。
【0068】
Bは、ジアゾニウム塩から誘導される一価の基、好ましくは置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のへテロ環基を表わす。つまり、Bはジアゾ成分である。ジアゾ成分とは、アミノ基を置換基として有するヘテロ環化合物または、ベンゼン誘導体をジアゾ化合物(ジアゾニウム塩)に変換し、カプラーとのジアゾカップリング反応により導入できる部分構造のことであり、アゾ色素の分野では頻繁に使用される概念である。言い換えれば、ジアゾ化反応が可能であるアミノ置換されたヘテロ環化合物または、ベンゼン誘導体のアミノ基を取り去り一価の基とした置換基である。BはBによって形成される環の場合が好ましい。Bは、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素環、置換もしくは無置換の芳香族ヘテロ環を形成する原子団を表す。Bによって形成される環としては、置換基を有する芳香族炭化水素環(好ましくは置換を有するベンゼン環)、窒素原子を含む炭素数1〜20の5員または窒素原子を含む炭素数2〜20の6員のヘテロ環が好ましく、窒素原子を含む炭素数1〜20の5員または窒素原子を含む炭素数2〜20の6員のヘテロ環がより好ましく、窒素原子を含む炭素数1〜20の5員のヘテロ環が更に好ましい。
A及びBの一価のヘテロ環基の例として以下の(AB−1)〜(AB−25)を挙げることができる。
【0069】
【化14】

【0070】
【化15】

【0071】
式中、R21〜R50は、各々独立に、水素原子、または1価の置換基である。置換基の例は、R、R、Rの説明で述べたものである。
(AB−1)〜(AB−25)中において、
b,cは、0から6の整数である。
a,p,q,rは、0から4の整数である。
d,e,f,g,t,uは、0から3の整数である。
h,i,j,k,l、oは、0から2の整数である。
a〜uが2以上のとき、2つ以上存在するR21〜R50で表される置換基は、同じでも異なっても良い。
Bの構造の中で好ましくは、以下の(a)−1、(a)−2、(b)〜(l)の構造である。
【0072】
【化16】

【0073】
式中、R11、R12、R13、R14、R15、R61〜R66、R71、R72は、各々独立に、水素原子、または置換基である。置換基の例は、R、R、Rの説明で述べたものである。
Gは、金属イオンに配位する能力をもつ一価の基を表す。Gの例としては、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基(アルキルアミノ基を含む)、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキルもしくはアリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、スルファモイル基、スルホ基、アルキル及びアリールスルフィニル基、カルバモイル基、アリール及びヘテロ環アゾ基、ホスフィノ基、ホスフィニル基が挙げられる。Gとして好ましくは、アルキルスルホニルアミノ基である。
【0074】
本発明に係わるアゾ色素は、金属イオンと配位して、アゾ金属キレート色素となったものも好ましい。特に、耐光性はキレート色素の方が優れており、好ましい。金属キレート色素として用いられる金属イオンは、Ni、Cu、Zn、Al、Ti、Fe、B、Cr、Coが好ましい。その中でも、Ni、Co、Alが更に好ましい。
キレート構造をとる場合、中心金属に対して配位子が不足して安定な錯体を形成できないときは、一般式(2”)の色素以外の分子を配位子として加えて安定なキレート色素とすることも好ましい。別に加える配位子は、窒素、酸素、硫黄原子を含有する化合物が好ましい。その中でも、アミン化合物(アニリンを含む)、窒素原子を少なくとも1つ以上含有するヘテロ環化合物が好ましい。5員または6員の炭素数3〜20のアミン化合物が最も好ましい。
本発明に用いるアゾ色素の具体例を挙げる。本発明は、この具体例によって、制限されるものではない。
【0075】
【化17】

【0076】
【化18】

【0077】
アゾ色素の合成法については、特開平3−268994号、特開平361088号、特開平7−161069号、特開平7−251567号、特開平10−204070号、特開平11−12483号、特開平11−166125号、特開2001−199169号、特開2001−152040号、特開2002−114922号記載されている。
本発明に係わる上記一般式(1’)で示される色素化合物は、アモルファス膜の光学特性上、記録レーザー波長における複素屈折率の係数n(実部:屈性率)、k(虚部:消衰係数)が、好ましくは、2.0≦n≦3.0、0.00≦k≦0.20である。更に好ましくは、2.1≦n≦2.7、0.00≦k≦0.10である。最も好ましくは、2.15≦n≦2.50、0.00≦k≦0.05である。
本発明に係わるアゾ色素化合物は、熱分解温度が100℃〜350℃の範囲にあるものが好ましい。更には、150℃〜300℃の範囲にあるものが好ましい。更には、200℃から300℃の範囲にあるものが好ましい。
【0078】
本発明に係るアゾ色素、すなわち前記一般式(A)で示されるアゾ化合物と金属塩とから得られる金属キレート化合物は、最大吸収波長λmaxが、550nm<λmax<650nmであることが好ましく、 560 nm<λmax< 640 nmであることがより好ましい。
【0079】
本発明において、記録層におけるアゾ色素の含有量は、記録層中の全色素の1〜15質量%であり、5〜15質量%であることが好ましい。当該アゾ色素の含有量が1質量%未満では、特性改善効果がみられず、15質量%を超えると特性が悪化する。
【0080】
記録層は、さらに記録層の耐光性を向上させるために、種々の褪色防止剤を含有することができる。褪色防止剤としては、有機酸化剤や一重項酸素クエンチャーを挙げることができる。褪色防止剤として用いられる有機酸化剤としては、特開平10−151861号に記載されている化合物が好ましい。一重項酸素クエンチャーとしては、既に公知の特許明細書等の刊行物に記載のものを利用することができる。その具体例としては、特開昭58−175693号、同59−81194号、同60−18387号、同60−19586号、同60−19587号、同60−35054号、同60−36190号、同60−36191号、同60−44554号、同60−44555号、同60−44389号、同60−44390号、同60−54892号、同60−47069号、同63−209995号、特開平4−25492号、特公平1−38680号、及び同6−26028号等の各公報、ドイツ特許350399号明細書、そして日本化学学会誌1992年10月号第1141頁などに記載のものを挙げることができる。
【0081】
好ましい一重項酸素クエンチャーの例としては、下記の一般式(4)で表わされる化合物を挙げることができる。
【0082】
【化19】


[但し、R41は置換基を有していてもよいアルキル基を表わし、Q-はアニオンを表わす。]
【0083】
一般式(4)において、R41は置換されていてもよい炭素数1〜8のアルキル基が一般的であり、無置換の炭素数1〜6のアルキル基が好ましい。アルキル基の置換基としては、ハロゲン原子(例、F,Cl)、アルコキシ基(例、メトキシ、エトキシ)、アルキルチオ基(例、メチルチオ、エチルチオ)、アシル基(例、アセチル、プロピオニル)、アシルオキシ基(例、アセトキシ、プロピオニルオキシ)、ヒドロキシ基、アルコキシカルボニル基(例、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル)、アルケニル基(例、ビニル)、アリール基(例、フェニル、ナフチル)を挙げることができる。これらの中で、ハロゲン原子、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルコキシカルボニル基が好ましい。Q-のアニオンの例としては、ClO4-、AsF6-、BF4-、及びSbF6-が好ましい。
【0084】
記録層の形成は、蒸着、スパッタリング、CVD、又は溶剤塗布等の方法によって行うことができるが、溶剤塗布が好ましい。
記録層を溶剤塗布により形成する方法としては、まず、色素等の記録物質を、結合剤等と共に適当な溶剤に溶解して塗布液を調製し、次いで、この塗布液を基板上に塗布して塗膜を形成した後、乾燥する方法がある。
塗布液中の記録物質(上記の色素、化合物)の濃度は、一般に0.01〜15質量%の範囲であり、好ましくは0.1〜10質量%の範囲、より好ましくは0.5〜5質量%の範囲、最も好ましくは0.5〜3質量%の範囲である。
【0085】
塗布液の溶剤としては、酢酸ブチル、乳酸エチル、セロソルブアセテートなどのエステル;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトンなどのケトン;ジクロルメタン、1,2−ジクロルエタン、クロロホルムなどの塩素化炭化水素;ジメチルホルムアミドなどのアミド;メチルシクロヘキサンなどの炭化水素;ジブチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル;エタノール、n−プロパノール、イソプロバノール、n−ブタノール、ジアセトンアルコールなどのアルコール;2,2,3,3−テトラフルオロプロパノールなどのフッ素系溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのグリコールエーテル類などを挙げることができる。
上記溶剤は使用する色素の溶解性を考慮して単独で、或いは二種以上を組み合わせて使用することができる。塗布液中には更に酸化防止剤、UV吸収剤、可塑剤、潤滑剤など各種の添加剤を目的に応じて添加してもよい。
【0086】
結合剤を使用する場合、該結合剤の例としては、ゼラチン、セルロース誘導体、デキストラン、ロジン、ゴムなどの天然有機高分子物質;及びポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリイソブチレン等の炭化水素系樹脂;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル・ポリ酢酸ビニル共重合体等のビニル系樹脂;ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル等のアクリル樹脂;ポリビニルアルコール、塩素化ポリエチレン、エポキシ樹脂、ブナラール樹脂、ゴム誘導体、フェノール・ホルムアルデヒド樹脂等の熱硬化性樹脂の初期縮合物などの合成有機高分子を挙げることができる。
【0087】
記録層の材料として結合剤を併用する場合、結合剤の使用量は、一般に色素の質量の0.01倍量〜50倍量の範囲にあり、好ましくは0.1倍量〜5倍量の範囲にある。
【0088】
前記溶剤塗布の塗布方法としては、スプレー法、スピンコート法、ディップ法、ロールコート法、ブレードコート法、ドクターロール法、スクリーン印刷法などを挙げることができる。
記録層の層厚は一般に10〜150nmの範囲とすることが好ましく、15〜140nmの範囲とすることがより好ましく、20〜130nmの範囲とすることがさらに好ましい。
なお、記録層は単層でも重層でもよい。
【0089】
記録層には、該記録層の耐光性を向上させるために、種々の褪色防止剤を含有させることができる。褪色防止剤としては、一般的に、一重項酸素クエンチャーが用いられる。一重項酸素クエンチャーとしては、既に公知の特許明細書等の刊行物に記載のものを利用することができる。その具体例としては、特開昭58−175693号、同59−31194号、同60−18387号、同60−19586号、同60−19587号、同60−35054号、同60−36190号、同60−36191号、同60−44554号、同60−44555号、同60−44389号、同60−44390号、同60−54892号、同60−47069号、同68−209995号、特開平4−25492号、特公平1−38680号、及び同6−26028号等の各公報、ドイツ特許350399号明細書、そして日本化学会誌1992年10月号第1141頁などに記載のものを挙げることができる。
【0090】
前記一重項酸素クエンチャーなどの褪色防止剤の使用量は、通常、色素の質量の0.1〜50質量%の範囲であり、好ましくは、0.5〜45質量%の範囲、更に好ましくは、3〜40質量%の範囲、特に好ましくは5〜25質量%の範囲である。
【0091】
[反射層]
情報の再生時における反射率の向上の目的で、記録層に隣接して反射層が設けられる。反射層の材料である光反射性物質はレーザー光に対する反射率が高い物質であり、その例としては、Mg、Se、Y、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Re、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Ir、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Si、Ge、Te、Pb、Po、Sn、Biなどの金属及び半金属或いはステンレス鋼を挙げることができる。これらの物質は単独で用いてもよいし、或いは二種以上の組合せで、又は合金として用いてもよい。これらのうちで好ましいものは、Cr、Ni、Pt、Cu、Ag、Au、Al及びステンレス鋼である。特に好ましくは、Au金属、Ag金属、Al金属或いはこれらの合金であり、最も好ましくは、Ag金属、Al金属或いはそれらの合金である。
反射層は、例えば、上記光反射性物質を蒸着、スパッタリング又はイオンプレーティングすることにより基板若しくは記録層の上に形成することができる。
反射層の層厚は、一般的には10〜300nmの範囲にあり、50〜200nmの範囲にあることが好ましい。
【0092】
[接着層]
接着層は、上記反射層と、第2の基板とを貼り合わせるために形成される。
接着層を構成する材料としては、光硬化性樹脂が好ましく、中でも、ディスクの反りを防止するため、硬化収縮率の小さいものが好ましい。このような光硬化性樹脂としては、例えば、大日本インキ化学工業(株)製の「SD−640」、「SD−661」等のUV硬化性樹脂(UV硬化性接着剤)を挙げることができる。
また、接着層の厚さは、弾力性を持たせるため、1〜1000μmの範囲が好ましく、5〜500μmの範囲がより好ましく、10〜100μmの範囲が特に好ましい。
【0093】
[第2の基板]
第2の基板には、プリグルーブが形成されていない点以外は、第1の基板と同じ材質で、同じ形状のものを使用することができる。
また、第2の基板にも第1の基板と同様のプリグルーブが形成され、また、貼り合わせ面に、記録層が形成されていてもよい。更に、第2の基板と記録層との間に中間層が設けられてもよいし、記録層の基板とは反対の面に反射層が設けられてもよい。なお、第2の基板側に設けられる、中間層、記録層、及び反射層も、上述の各層と同様である。このように、第2の基板側に記録層が形成されている積層体と、上述のように、第1の基板上に、中間層、記録層、及び反射層がこの順に形成されている積層体と、を両基板を外側にして接着層により貼り合せることにより、両面で情報の記録及び再生が可能な光記録媒体を得ることができる。
【0094】
[保護層]
本発明の光記録媒体では、記録層を物理的及び化学的に保護する目的で、該記録層に隣接して保護層が設けられることある。なお、第2の基板側にも記録層が形成されている場合にも、当該記録層に隣接して保護層を設けてもよい。
【0095】
保護層に用いられる材料の例としては、ZnS、ZnS−SiO2、SiO、SiO2、MgF2、SnO2、Si34等の無機物質、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、UV硬化性樹脂等の有機物質を挙げることができる。保護層は、例えば、プラスチックの押出加工で得られたフィルムを接着剤を介して反射層上にラミネートすることにより形成することができる。或いは真空蒸着、スパッタリング、塗布等の方法により設けられてもよい。
【0096】
また、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂の場合には、これらを適当な溶剤に溶解して塗布液を調製した後、この塗布液を塗布し、乾燥することによっても形成することができる。UV硬化性樹脂の場合には、この塗布液を塗布し、UV光を照射して硬化させることによっても形成することができる。これらの塗布液中には、更に帯電防止剤、酸化防止剤、UV吸収剤等の各種添加剤を目的に応じて添加してもよい。保護層の層厚は一般には0.1μm〜1mmの範囲にある。
【0097】
次に、ブルーレイディスクの層構成について説明する。ブルーレイディスクの層構成は、既述のように、基板/記録層/中間層/粘着剤層/カバー層の構成であり、別の異なる層を追加してもかまわない。以下に、各層について説明する。
【0098】
<基板>
基板としては、既述のHD DVDの第1の基板で説明した材料と同様の材料を使用することができる。基板の厚さは、0.5〜1.4mmとすることが好ましい。
【0099】
基板には、トラッキング用の案内溝またはアドレス信号等の情報を表わす凹凸(プレグルーブ)が形成される。プレグルーブのトラックピッチは、250〜400nmである。また、プレグルーブの深さ(溝深さ)は、10〜150nmの範囲であり、好ましくは15〜100nmであり、さらに好ましくは20〜80nmであり、最も好ましくは20〜60nmである。
【0100】
なお、後述する反射層が設けられる側の基板表面には、平面性の改善、接着力の向上の目的で、下塗層を形成することが好ましい。
該下塗層の材料としては、例えば、ポリメチルメタクリレート、アクリル酸・メタクリル酸共重合体、スチレン・無水マレイン酸共重合体、ポリビニルアルコール、N−メチロールアクリルアミド、スチレン・ビニルトルエン共重合体、クロルスルホン化ポリエチレン、ニトロセルロース、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリオレフィン、ポリエステル、ポリイミド、酢酸ビニル・塩化ビニル共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート等の高分子物質;シランカップリング剤等の表面改質剤;を挙げることができる。
下塗層は、上記材料を適当な溶剤に溶解または分散して塗布液を調製した後、この塗布液をスピンコート、ディップコート、エクストルージョンコート等の塗布法により基板表面に塗布することにより形成することができる。下塗層の層厚は、一般に0.005〜20μmの範囲にあり、好ましくは0.01〜10μmの範囲である。
【0101】
<反射層>
反射層は、既述おHD DVDの反射層で説明した材料と同様の材料を使用することができ、同様の手法で形成することができる。
【0102】
反射層の層厚は、一般的には10〜300nmの範囲とし、50〜200nmの範囲とすることが好ましい。
以上の反射層は、以下の記録層の反射率が十分大きい場合には必ずしも必要ではい。
【0103】
<記録層>
記録層は、既述のHD DVDと同様の色素を使用し、同様の手法で形成することができる。記録層の層厚は、一般に10〜300nmの範囲にあり、好ましくは15〜200nmの範囲にあり、より好ましくは20〜150nmの範囲にある。
【0104】
ブルーレイディスクにおいては、既述の中間層上に、後述するカバーシートが、以下に示す粘着剤層又は接着剤層を介して貼り合わせられる。なお、カバーシートと粘着剤層又は接着剤層とでカバー層となす。
【0105】
<粘着剤層>
粘着剤層は、後述する光透過層を接着するために形成される層であり、従来公知のものを広く使用することができる。粘着剤としては、アクリル系粘着剤や、天然ゴム、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体(SIS)、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体(SBS)等のゴム系粘着剤を適宜選択して用いることができる。当該粘着剤は、光透過層の貼り合わせ面に予め塗布されていることが好ましい。粘着剤層の層厚は1〜50μm、特に好ましくは2〜45μmの範囲である。
【0106】
<接着剤層>
接着剤層は、粘着剤層と同様に、後述する光透過層を接着するために形成される層である。接着層を構成する材料としては、光硬化性樹脂、2液硬化型接着剤など挙げられ、中でも、光硬化性樹脂が好ましく、ディスクの反りを防止するため、硬化収縮率の小さいものが好ましい。このような光硬化性樹脂としては、例えば、大日本インキ化学工業(株)製の「SD−640」、「SD−661」、等のUV硬化性樹脂(UV硬化性接着剤)を挙げることができる。また、接着層の厚さは、1〜50μmの範囲が好ましく、2〜40μmの範囲がより好ましく、3〜35μmの範囲が特に好ましい。ブルーレイディスクにおいては、接着剤層を記録再生光が透過することから、厚さを薄くして接着剤層の厚みムラを低減することにより、記録特性の均一性が向上する。
【0107】
接着層を形成する材料の他の例を挙げる。該材料は、放射線照射により硬化可能な樹脂であって、分子中に2個以上の放射線官能性の2重結合を有する樹脂であり、アクリル酸エステル類、アクリルアミド類、メタクリル酸エステル類、メタクリル酸アミド類、アリル化合物、ビニルエーテル類、ビニルエステル類などがあげられる。好ましくは2官能以上のアクリレート化合物、メタクリレート化合物である。
【0108】
2官能の具体例としては、エチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ブタンジオールジアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、ブタンジオールジメタクリレート、ヘキサンジオールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリプロピレングリコールジメタクリレートなどに代表される脂肪族ジオールにアクリル酸、メタクリル酸を付加させたものを用いることができる。
【0109】
また、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのポリエーテルポリオールにアクリル酸、メタクリル酸を付加したポリエーテルアクリレート、ポリエーテルメタクリレートや公知の二塩基酸、グリコールから得られたポリエステルポリオールにアクリル酸、メタクリル酸を付加させたポリエステルアクリレート、ポリエステルメタクリレートも用いることができる。
さらに、公知のポリオール、ジオールとポリイソシアネートを反応させたポリウレタンにアクリル酸、メタクリル酸を付加させたポリウレタンアクリレート、ポリウレタンメタクリレートを用いてもよい。
【0110】
また、ビスフェノールA、ビスフェノールF、水素化ビスフェノールA、水素化ビスフェノールFやこれらのアルキレンオキサイド付加物にアクリル酸、メタクリル酸を付加させたものやイソシアヌル酸アルキレンオキサイド変性ジアクリレート、イソシアヌル酸アルキレンオキサイド変性ジメタアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジメタクリレートなどの環状構造を有するものも用いることができる。
【0111】
前記放射線としては、電子線および紫外線を使用することができる。紫外線を使用する場合には以下の化合物に光重合開始剤を添加することが必要となる。光重合開始剤として芳香族ケトンが使用される。芳香族ケトンは、特に限定されないが、紫外線照射光源として通常使用される水銀灯の輝線スペクトルを生ずる、254,313,865nmの波長において吸光係数の比較的大なるものが好ましい。その代表例としては、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルメチルケタール、ベンジルエチルケタール、ベンゾインイソブチルケトン、ヒドロキシジメチルフェニルケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、Michler’sケトンなどがあり、種々の芳香族ケトンが使用できる。また、紫外線硬化型接着剤としてあらかじめ光開始剤を添加したものが市販しており、それを使用してもかまわない。紫外線光源としては、水銀灯が用いられる。水銀灯は20〜200W/cmのランプを用い速度0.3m/分〜20m/分で使用される。基体と水銀灯との距離は一般に1〜30cmであることが好ましい。
【0112】
電子線加速器としてはスキャニング方式、ダブルスキャニング方式あるいはカーテンビーム方式が採用できるが、好ましいのは比較的安価で大出力が得られるカーテンビーム方式である。電子線特性としては、加速電圧が100〜1000kV、好ましくは150〜300kVであり、吸収線量として0.5〜20Mrad、好ましくは1〜10Mradである。加速電圧が10kV以下の場合は、エネルギーの透過量が不足し1000kVを超えると重合に使われるエネルギー効率が低下しコスト的に好ましくない。
【0113】
<カバーシート>
カバーシートを形成する材質としては、透明な材質であれば特に限定されないが、材質としては、ポリカーボネート、三酢酸セルロース、アクリル系ポリマーであることが好ましい。また、23℃50%RHでの吸湿率が5%以下の材質であることが好ましい。更に、カバーシートは、表面粗さが5nm以下であることが好ましく、複屈折率が10nm以下であることが好ましい。
なお、「透明」とは、記録再生するレーザー光に対して、該光を透過する(透過率:80%以上)ほどに透明であることを意味する。
カバーシートの厚みは、好ましくは0.01〜0.2mmの範囲であり、より好ましくは0.03〜0.1mmの範囲であり、さらに好ましくは0.05〜0.095mmの範囲である。
【0114】
上記粘着剤層を用いてカバーシートを、中間層上に貼り付ける方法としては、カバーシート上に粘着剤を塗布し、溶剤を乾燥させた後、該粘着剤を介して中間層上にカバーシートを載せてローラーにより圧力をかけてカバーシートを貼り合わせる方法が挙げられる。
【0115】
粘着剤の塗布温度としては、粘度制御のため、23〜50℃の範囲であることが好ましく、24〜40℃の範囲であることがより好ましく、25〜37℃の範囲であることがさらに好ましい。塗布後、好ましくは50〜300℃、より好ましくは80〜200℃、更に好ましくは100〜150℃で乾燥させる。また、カバーシートを貼り合わせる時の温度としては、0〜100℃の範囲であることが好ましく、15〜50℃の範囲であることがより好ましい。
【0116】
また、使用する粘着剤に対し、離型性をもった離型フィルム上に粘着剤を塗布して溶剤を乾燥した後、カバーシートを貼り合わせ、さらに、離型フィルムを剥離してカバーシート上に粘着剤を設けた後に、バリア層上に貼り合わせることにより、カバーシートを貼付することもできる。特に、粘着剤に含有する溶剤がカバーシートを溶かす場合には、この方法が望ましい。
【0117】
離型フィルム上に粘着剤層が設けられたカバーシートを使用する場合には、基材として用いられるフィルムは粘着剤に含まれる溶剤に不溶であれば、特に制限されるものでなく、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、塩化ビニル等のプラスチックフィルムや、クラフト紙、上質紙、クレコート紙、和紙等の紙、レーヨン、ポリエステル等の不織布、ポリエステル、ナイロン、アクリル等の合成繊維よりなる織布、アルミニウム、銅、ステンレス鋼等の金属箔が用いられるが、フィルム上に離型剤層を連続的に薄く均一に塗布する点からは、プラスチックフィルムが好ましい。
また、使用される離型剤としては、シリコーン系離型剤や長鎖アルキル系離型剤等の従来から使用されている各種離型剤を適宜選択して用いることができる。
【0118】
<表面コート層>
本発明の光記録媒体においては、前記カバー層上に表面コート層を設けてもよい。表面コート層は、前述のように、カバー層上に設けられることにより、カバー層の剥離を防止する機能を有する。表面コート層の材料としては、紫外線硬化樹脂、電子線硬化樹脂などの光硬化性樹脂、湿度硬化性樹脂などが挙げられる。中でも、硬化収縮率が15%以下(好ましくは12%以下)で、硬度が鉛筆硬度でH以上(好ましくは2H以上)で、記録波長領域のレーザー光に対する透過率が70%以上(好ましくは75%以上)である材料であることが好ましい。
【0119】
表面コート層は、例えば、紫外線硬化樹脂を用いる場合、基板の内周部に紫外線硬化樹脂を塗布し、該基板を高速で回転させて外周側に延展させた後、紫外線を照射させて形成することができる。
【0120】
表面コート層の層厚としては、0.1〜50μmとすることが好ましく、0.5〜40μmとすることがより好ましく、1〜30μmとすることがさらに好ましい。
【0121】
[記録方法]
本発明の光記録媒体への情報(デジタル情報)の記録方法について説明する。
本発明の光記録媒体への情報の記録には、少なくとも、レーザー光を射出するレーザーピックアップと、光記録媒体を回転させる回転機構と、を有する記録装置を用いる。まず、回転機構を用いて、未記録の光記録媒体を所定の記録線速度にて回転させながら、レーザーピックアップからレーザー光を照射する。この照射光により、記録層中の色素がその光を吸収して局所的に温度上昇し、例えば、ピットが生成してその光学特性が変わることにより情報が記録される。
なお、記録された情報の再生は、回転させた状態の光記録媒体の記録層に向けてレーザーピックアップからレーザー光を照射して行う。
【0122】
レーザー光の記録波形は、1つのピットの形成する際には、パルス列でも1パルスでもかまわない。実際に記録しようとする長さ(ピットの長さ)に対する割合が重要である。
レーザー光のパルス幅としては、実際に記録しようとする長さに対して20〜95%の範囲が好ましく、30〜90%の範囲がより好ましく、35〜85%の範囲が更に好ましい。ここで、記録波形がパルス列の場合には、その和が上記の範囲にあることを指す。
【0123】
レーザー光のパワーとしては、記録線速度によって異なるが、記録線速度が6.61m/sの場合、1〜15mWの範囲が好ましく、2〜12mWの範囲がより好ましく、3〜10mWの範囲が更に好ましい。また、記録線速度が2倍になった場合には、レーザー光のパワーの好ましい範囲は、それぞれ21/2倍となる。
【0124】
また、記録密度を高めるために、ピックアップに使用される対物レンズのNAは0.55以上が好ましく、0.60以上がより好ましい。
本発明においては、記録及び再生の光源として、350〜450nmの範囲の発振波長を有する半導体レーザーを用いることができる。
【実施例】
【0125】
次に、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0126】
[実施例1]
帝人化成(株)社製ポリカーボネート樹脂(MD1500)を用いて射出成形により厚さ0.6mmの基板を成形した。基板の溝トラックピッチは400nm、溝深さは90nm、溝幅は180nmであった。
【0127】
TFP(2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノール)14.8gに対し、下記構造式で表されるオキソノール色素を0.09gと下記構造式で表されるアゾ色素を0.01g秤量して溶解させた。該液に超音波2h照射して色素を溶解させた後、23℃50%の環境に0.5h以上静置し、0.2μmのフィルターで濾過し記録層形成用塗布液を調製した。この記録層形成用塗布液を用いて、スピンコート法で基板上に厚さ40nmの記録層を形成した。
【0128】
【化20】

【0129】
【化21】

【0130】
記録層形成後、80℃のクリーンオーブン中で1時間加熱処理した。加熱処理後の試料に、Ag:98.4部、Nd:0.7部、Cu:0.9部からなるターゲットを用いて、DCスパッタ法により反射層を100nmの厚みで成膜した。投入電力は2kW、Ar流量は5sccmで行った。
【0131】
反射層を成膜した後、厚み0.6mmのポリカーボネート基板を大日本インキ化学工業(株)製のUV硬化性樹脂(SD−640)を用いて貼り合せて光記録媒体を作製した。
【0132】
[評価]
作製した光記録媒体を、波長:405nm、NA=0.65のレーザー光学系を搭載したODU−1000(パルステック工業社製)にセットして、ランダム信号(2T〜11T)を10mWで記録、0.5mWのパワーで再生してPRSNRを評価した。この時、線速は6.61m/sで、記録時のレーザーの発光パターンを最適化して行い、PRSNR、11T信号のHiレベル(I11H)、Loレベル(I11L)を測定した。結果を表1に示す。尚、表1において、I11=I11H−I11Lである。
なお、表1において、PRSNRの数値に基づき以下の判定基準に従い判定した。
−判定基準−
○:31以上
○△:21〜30
△:20未満
×:測定不可
【0133】
[実施例2]
TFP14.8gに対し、前記オキソノール色素を0.095gと、前記アゾ色素を0.005g秤量して溶解させて記録層形成用塗布液を調製し、それを用いて記録層を形成したこと以外は実施例1と同様にして光記録媒体を作製し、同様に評価した。
【0134】
[比較例1]
TFP14.8gに対し、前記オキソノール色素を0.1g秤量して溶解させて記録層形成用塗布液を調製し、それを用いて記録層を形成したこと以外は実施例1と同様にして光記録媒体を作製し、同様に評価した。
【0135】
[比較例2]
TFP14.8gに対し、前記オキソノール色素を0.08gと、前記アゾ色素を0.02g秤量して溶解させて記録層形成用塗布液を調製し、それを用いて記録層を形成したこと以外は実施例1と同様にして光記録媒体を作製し、同様に評価した。
【0136】
【表1】

【0137】
表1の結果から、実施例1〜2の光記録媒体は、PRSNR値において良好な結果が得られたのに対し、オキソノール色素を単独で用いた比較例1ではPRSNR値が小さく、オキソノール色素とアゾ色素とを併用したがアゾ色素の添加量が20%の比較例2では測定が不可能であった。すなわち、オキソノール色素と所定量のアゾ色素とを併用することにより、PRSNRが良好な光記録媒体が得られることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に記録層を有する光記録媒体であって、
前記記録層が、オキソノール色素とアゾ色素とを含み、かつ前記アゾ色素の含有量が記録層中の全色素の1〜15質量%であることを特徴とする光記録媒体。
【請求項2】
前記オキソノール色素が、下記一般式(1)で表されることを特徴とする請求項1に記載の光記録媒体。
【化1】


[一般式(1)中、A、B、C及びDは、AとBのハメットのσp 値の合計及びCとDのハメットのσp 値の合計がそれぞれ0.6以上となる電子吸引性基であり、AとBもしくはCとDは連結して環を形成していてもよく、Rはメチン炭素上の置換基を表し、mは0乃至3の整数を表し、nは0乃至2m+1の整数を表し、nが2以上の整数のとき、複数個のRは互いに同一でも異なっていてもよく、また互いに連結して環を形成していてもよく、Yt+はt価のカチオンを表し、tは1乃至10の整数を表す。]
【請求項3】
前記アゾ色素が、下記一般式(2”)で表されるアゾ化合物と金属塩とから得られる金属キレート化合物であり、かつ最大吸収波長λmaxが、500nm<λmax<650nmであることを特徴とする請求項1または2に記載の光記録媒体。
一般式(2”)
A−N=N−B
[一般式(2”)中、Aは、カプラー成分から誘導される一価の基を表し、Bは、ジアゾニウム塩から誘導される一価の基を表す。]
【請求項4】
前記光記録媒体は350〜450nmの波長を持つレーザー光によって、記録再生が行われることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の光記録媒体。

【公開番号】特開2007−175968(P2007−175968A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−375881(P2005−375881)
【出願日】平成17年12月27日(2005.12.27)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】