説明

光記録媒体

【課題】優れた記録再生特性を示す光記録媒体を提供する。
【解決手段】記録層を複数有する多層型の光記録媒体において、ニオブ窒化物及びマンガン窒化物から選ばれる少なくとも1種の材料を主成分とする記録層を設け、透過型記録再生機能層が半透明反射層を有さない。基板上に少なくとも第1保護層、記録層、第2保護層、及び光透過層をこの順序で順次積層され、光透過層側からレーザー光が入射される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光記録媒体に関する。特に多層追記型光記録媒体における半透明な記録再生機能層に用いることができる記録材料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報量の増大に伴い、ますます高容量の光記録媒体が望まれている。高容量化の最も効率的な方法として、別個の情報を記録可能な複数の記録層を光記録媒体の厚み方向に積み重ねることにより、光記録媒体の面記録密度を増加させることのできる多層化技術が挙げられる。つまり、1つの記録層とその記録層に記録再生を行うために必要とされる反射層、保護層等の集合(以下、この集合を「記録再生機能層」という。)を、光学的に分離できる程度に距離を離して複数積み重ねることにより多層型の光記録媒体とし、記録容量を大幅に増やす技術である。
【0003】
多層型の光記録媒体のレーザー光の入射側から最も遠い記録再生機能層(以下、「最外記録再生機能層」という。)では、一般的に、透過率を大きくする必要が無いため、一層型の光記録媒体と同様な光記録媒体の設計が可能である。
【0004】
その一方で最外記録再生機能層以外の記録再生機能層(以下、「透過型記録再生機能層」という。)においては、自身よりもレーザー光の入射側から遠い記録再生機能層に所定の強度のレーザー光を到達させる必要があるため、一定以上の透過率が必要とされ、入射レーザー光の一部しか信号の記録再生に使用できない。また、自身のレーザー光入射側にも記録再生機能層が存在する場合は、やはり入射光の一部しか信号の記録再生に使用できないことになる。したがって、多層型の光記録媒体における各記録再生機能層は、一層型の光記録媒体と比較して、得られる信号強度が著しく小さくなってしまう。そのため、多層型の光記録媒体の再生系は信号強度の小さい場合に対応できることが必要であり、そのような再生技術が近年多く開発されている。
【0005】
一方、1回のみの記録が可能な追記型の光記録媒体の無機系記録材料の記録原理としては、相変化型、分解型、2層の合金化型などによる光学的変化を用いる方法が知られているが、高密度記録媒体として知られる青色レーザーを用いた一層型の追記型光記録媒体は、分解型の無機系記録材料により実用化されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−018981
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
多層型の光記録媒体では、前述の通り、透過型記録再生機能層には所定の透過率が必要となる。また、多層化が進むほど、即ち、記録再生機能層の数が増すほど、各記録再生機能層の透過率を更に大きくする必要が生じ、必然的に反射率、再生信号強度は小さくなるため、現存の記録材料の特性では必ずしも十分ではなくなってきている。特に、熱的制御に効果的であり、反射率の増大に大きな役割を果たす反射層を設ける光学的な余裕がなくなり、優れたジッタ特性等が得られなくなる傾向にあるので、反射層を設けなくても優れた記録再生特性を有する記録材料を見出すことが求められている。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、優れた記録再生特性を示す光記録媒体を提供することを目的とする。また、良好な記録再生特性を有する記録材料を用いて、記録層を複数有する多層型の光記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の要旨は、ニオブ窒化物及びマンガン窒化物から選ばれる少なくとも1種の材料を主成分とする記録層を設けたことを特徴とする光記録媒体に存する。
【0010】
ここで、反射層を有さないことが好ましい。
また、記録層を複数有する多層型の光記録媒体において、透過型記録再生機能層の記録層に、前記記録層を用いることが好ましい。
また、前記透過型記録再生機能層が半透明反射層を有さないことが好ましい。
また、誘電体材料からなる保護層を更に有することが好ましい。
また、前記記録層の両側に、前記保護層を設けることが好ましい。
また、前記保護層が、SnO、ZnO、In、SiO、ZnSの少なくともいずれか一つを含有することが好ましい。
【0011】
さらに、基板上に少なくとも第1保護層、前記記録層、第2保護層、及び光透過層をこの順序で順次積層され、光透過層側からレーザー光を入射されることが好ましい。
また、前記基板と前記第1保護層の間に、少なくとも第3保護層、第2記録層、第4保護層、及び放射線硬化樹脂材料からなる中間層をこの順で更に積層されることが好ましい。
また、前記第1保護層及び前記第2保護層が、誘電体材料からなることが好ましい。
また、前記第1保護層及び前記第2保護層が、SnO、ZnO、In、SiO、ZnSの少なくともいずれか一つを含有することが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、特に多層型の光記録媒体において、透過型記録再生機能層におけるジッタ特性に優れた光記録媒体を得ることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の単層型の追記型光記録媒体の層構成を模式的に表す断面図である。
【図2】本発明の多層型の追記型光記録媒体の層構成を模式的に表す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[1.基本概念]
本発明の光記録媒体は、ニオブ窒化物(以下、Nb−Nと記載)及びマンガン窒化物(以下、Mn−Nと記載)から選ばれる少なくとも1種の材料を主成分とする記録層を設けたことを特徴とする。
【0015】
本発明者等は、新たな無機系記録材料を探索する上で、比較的透過率の高い金属窒化物に着目し、検討を行った。光記録媒体の記録材料として用いるためには、記録再生用のレーザー光の照射により到達する温度において、何らかの化学反応もしくは相変化を起こすことにより光学的性質が変化することが必要である。特許文献1においては、このような材料として、融点もしくは分解温度が1200℃以下であることが必要であるとしており、融点もしくは分解温度が1500℃以上の材料は、それ単独では記録層材料として適さないことが示唆されている。
【0016】
しかしながら、本発明者等は、光記録媒体の記録再生用レーザー光の照射による到達温度は、微視的には1500℃以上の高温になっている可能性があり、1500℃以上の高融点の材料でも優れた記録再生特性を示す可能性があると考え、高融点の金属窒化物を中心に、光記録媒体の記録層材料としての適性を検討した。
【0017】
この結果、2500℃以上の高い融点を持つ金属窒化物材料、例えば、窒化タンタル、窒化チタン、窒化ジルコニウム等でも、記録再生用のレーザー光による記録再生が可能であり、何らかの光学的変化が発生していることが判明した。そこで、融点にこだわらずに鋭意記録層材料を探索したところ、特に優れた記録再生特性を示す材料として、Nb−N、及びMn−Nを見出し、本発明を完成させた。
【0018】
本発明における光記録媒体は、Nb−N及びMn−Nから選ばれる少なくとも1種の材料を主成分とする記録層を設けたことを特徴とする。Nb−NおよびMn−Nは、記録層中において、必ずしも化学量論的組成で存在する必要はなく、記録層中のNb原子数とN原子数の比、及びMn原子数とN原子数の比は、1:1からずれていても構わない。しかしながら、高透過率を実現するためにはNb及びMnの窒化が進んでいるほど好ましい。従って、記録層中のN原子数に対するNb原子数の比、及びN原子数に対するMn原子数の比は、4以下が好ましく、更に好ましくは2以下、特に好ましくは1.5以下である。
また、記録層中の全原子数に対する窒素原子数の割合は、10原子%以上が好ましく、更に好ましくは20原子%以上である。
【0019】
本発明の記録層には、Nb−N及びMn−N以外の金属、酸素等を混合してもよいが、Nb−N及びMn−Nが主成分であることが必要である。本発明における「主成分」は、記録層中の窒素を除いた元素の比率で定義する。上述の通り、実際の記録層中ではNb及びMnと窒素の原子数比は化学量論的組成からずれる可能性があり、他の金属や酸素等が含まれている場合、Nb−NもしくはMn−Nの含有率のみを切り分けることが困難であるためである。すなわちNb−Nの場合における「主成分」とは、記録層中の窒素を除いた全元素中のNbの含有率が60原子%を超える割合で含有する場合を指し、70原子%以上が好ましく、80原子%以上がより好ましい。また、Mn−Nの場合における「主成分」とは、記録層中の窒素を除いた全元素中のMnの含有率が50原子%を超える割合で含有する場合を指し、60原子%以上が好ましく、70原子%以上がより好ましい。
【0020】
本発明の記録層は、後述する通りスパッタリングによって形成されることが好ましい。この際、スパッタチャンバー内の残留酸素の影響等により、Nb−N、Mn−Nといった窒化物の成膜時に不可避的に酸素が取り込まれやすく、Nb(もしくはMn)、窒素及び酸素が混合した状態となる傾向にあるが、主成分としてNb−N及び/又はMn−Nが含有されることで、優れた記録再生特性を得ることが可能である。
【0021】
また、記録層が2層以上からなる場合は、記録層を構成する少なくとも1層がNb−NまたはMn−Nを主成分とする層であれば良い。特に、記録再生用のレーザー光の入射側から最も遠い記録再生機能層である最外記録再生機能層以外の記録再生機能層である、透過型記録再生機能層の記録層がNb−NまたはMn−Nを主成分とすることが好ましい。
【0022】
Nb−NまたはMn−Nを主成分とする記録層を用いることにより優れた記録再生特性を示す光記録媒体が得られる理由は必ずしも明らかではないが、本発明者らは、以下のように推測している。
【0023】
多くの金属窒化物を検討する中で、より融点の低い材料において、特に記録レーザーパワーが高い場合に、再生波形に歪が生じる傾向にあることが判明した。おそらく、光記録媒体に形成される一つの記録マーク内において、反射率が一定とならずに変化してしまうことにより、再生波形が歪んでしまうものと考えられる。光学計算の結果、記録層界面で膜が剥離し、空気等(屈折率1程度)の層が加わるとすると、空気の層が薄いときには反射率が下がり空気の層が厚くなると反射率が上がると思われることがわかった。したがって、再生波形が歪むという前記現象は、記録時の温度上昇で記録層界面がダメージを受け、記録膜が剥がれ、界面に空隙が生じたときに得られる波形であると考えられる。そして、Nb−NやMn−Nは、比較的高融点であること等の理由から、記録膜が剥がれにくい構造をとるような変化をするために良好な記録再生特性が得られるものと考えている。
【0024】
また、透過型記録再生機能層においては、透過率を高めるために反射層を設けないことが好ましいが、反射層には記録時に記録層からの放熱を促進する機能があるため、反射層を設けない場合は記録層がより高温になることが予想される。本願発明の記録層は、上述の通り高温で記録膜が剥がれにくい特性を持つと考えられるため、記録層を複数有する多層型の光記録媒体における、反射層を有さない透過型記録再生機能層の記録層としても適していると考えられる。
【0025】
以下、本発明の好ましい態様である追記型光記録媒体を例にとり、本発明の各実施形態についてより詳細に説明する。当然ながら、本発明に用いられる光記録媒体は、下記の追記型光記録媒体の態様に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で任意に変更して実施することができる。
【0026】
[2.第1実施形態]
(A)単層型の追記型光記録媒体について
図1は本発明の一実施形態に係る単層型の追記型光記録媒体101の一例を示す拡大断面図である。図1に示すように、この追記型光記録媒体101は基板1上に第1保護層2、記録層3、レーザー光入射側の第2保護層4、光透過層5をこの順序で順次積層して構成されており、光透過層5側からレーザー光を入射して記録及び再生を行うものである。
【0027】
層構成は図1の構成に限定する必要はない。例えば、第1保護層と基板の間に反射層を設けてもよいし、各層の界面に、必要に応じて界面層を設けることも可能である。また、各層それぞれの機能を向上させるため、異なる材料からなる複数の層を積層させることにより、各層を構成してもよい。
以下、各層について詳しく説明する。
【0028】
(1)基板1について
本発明の追記型光記録媒体101に用いられる基板としては、ポリカーボネート、アクリル、ポリオレフィンなどの樹脂;ガラス;アルミニウム等の金属;を用いることができる。通常、基板には深さ10〜250nm程度の案内溝が設けられているので、案内溝を成形によって形成できる樹脂製の基板が好ましい。
【0029】
このような基板の厚さは、用途に応じて適宜決定されるものであり、通常下限が0.3mm以上、好ましくは0.5mm以上であり、上限が通常3mm以下、好ましくは2mm以下である。
【0030】
(2)第1保護層2及び第2保護層4について
本発明の光記録媒体において、保護層は必ずしも設ける必要は無いが、以下の役割があるため、適当な保護層を設けることが好ましい。
【0031】
第1保護層2及び第2保護層4は、通常、以下の3つの役割を有する。すなわち、記録層での記録時に発生する熱が基板などの他の層に拡散するのを防止する役割、光記録媒体の反射率を光干渉効果により制御する役割、及び、高温・高湿環境下での水分を遮断するバリア層としての役割である。
【0032】
第1保護層2及び第2保護層4を形成する材料としては、高透過率であることが前提であるため、通常、誘電体材料を挙げることができる。誘電体材料としては、例えば、Sc、Y、Ce、La、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Zn、Al、Cr、In、Si、Ge、Sn、Sb、及びTe等の酸化物;Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Zn、B、Al、Ga、In、Si、Ge、Sn、Sb、及びPb等の窒化物;Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Zn、B、Al、Ga、In、及びSi等の炭化物;を挙げることができる。さらに、これら酸化物、窒化物及び炭化物の混合物を挙げることができる。また、誘電体材料としては、Zn、Y、Cd、Ga、In、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、及びBi等の硫化物、セレン化物もしくはテルル化物、Mg、Ca等のフッ化物、又はこれらの混合物を挙げることができる。
【0033】
これら材料の中でも、SnO、ZnO、In、SiO、ZnS、TiO、SiON等が、高透過率、高成膜速度、低膜応力、温度変化による体積変化率の小ささ及び優れた耐候性から広く利用される。
更に好ましくは、上記材料の混合物である、SnO−ZnO−In−SiO及びZnS−SiOである。
【0034】
保護層の膜厚は、光記録媒体中で保護層が用いられる位置によりその膜厚が異なるが、一般的には保護層の膜厚は、保護層として機能するために2nm以上が好ましい。一方、保護層を構成する誘電体自体の内部応力や接している膜との弾性特性の差を小さくし、クラックが発生しにくくするためには、膜厚を100nm以下とするのが好ましい。一般に、保護層を構成する材料は成膜レートが小さく成膜時間が長い。成膜時間を短くして製造時間を短縮することによりコストを削減するためには、保護層膜厚を80nm以下に抑えるのが好ましい。保護層の膜厚は、より好ましくは60nm以下とする。
【0035】
図1におけるレーザー光入射側の第2保護層4の膜厚は、通常2nm以上、好ましくは5nm以上、より好ましくは10nm以上である。上記範囲とすれば、基板や記録層の熱による変形を抑制する効果が十分となり、保護層の役目を十分果たすようになる。一方、レーザー光入射側の第2保護層4の膜厚は、通常100nm以下、好ましくは80nm以下、より好ましくは60nm以下である。膜厚が過度に厚すぎると膜自体の内部応力によりクラックが発生しやすくなり生産性も劣ることとなる。上記範囲とすればクラックの発生を防ぎ、生産性も良好に保つことができるようになる。
【0036】
一方、図1における基板側の第1保護層2の膜厚は、通常2nm以上、好ましくは5nm以上、より好ましくは10nm以上とする。この範囲とすれば、記録層の過度の変形を有効に抑制できるようになる。一方、基板側の第1保護層2の膜厚は、通常100nm以下、好ましくは80nm以下である。この範囲とすれば、記録層に対する冷却効果が得られ、記録マーク長の制御性を確保できるようになる。
【0037】
また、第1保護層2及び第2保護層4はいずれも、異なる材料を複数積層させた構成をとってもよい。異なる材料を積層させることで、保護層としての機能をより向上させることができる可能性があるためである。
【0038】
保護層は通常スパッタリング法で形成されるが、ターゲットそのものの不純物量や成膜時に混入する水分や酸素量も含めて、全不純物量を2原子%未満とするのが好ましい。このために保護層をスパッタリング法によって形成する際、プロセスチャンバの到達真空度は1×10−3Pa未満とすることが望ましい。
【0039】
(3)記録層3について
記録層3は、前述の通り、Nb−N及びMn−Nから選ばれる少なくとも1種の材料を主成分とする。
記録層3の膜厚は、用途、望まれる特性に応じて適宜決定されるものである。記録層3の膜厚は、通常2nm以上、好ましくは4nm以上、更に好ましくは6nm以上とする。この範囲とすることにより、入射したレーザー光の吸収が大きくなり感度が良好となる上、記録信号の振幅も十分にとれるようになる。一方、記録層の膜厚は、通常40nm以下、好ましくは20nm以下、より好ましくは15nm以下とする。この範囲とすることにより、記録層での吸収が大きくなりすぎて反射率及び透過率が低下しにくく、ジッタ特性も良好となる傾向にある。
【0040】
記録層3は、スパッタリング法によって形成することが好ましい。複数の元素から成る記録層を形成する場合は、合金ターゲットを用いても、複数の単体のターゲットから同時に放電させるコスパッタリング法により形成してもよい。また、窒素や酸素といったガス元素を含有させる場合は、ターゲットに含有させておいてもよいし、一般的なスパッタガスであるAr等に、窒素あるいは酸素等を混合させ、反応性スパッタリング法を用いて記録層3に含有させても良い。
【0041】
(4)光透過層5について
本発明の光記録媒体において、光透過層5は必ずしも設ける必要は無いが、以下の役割があるため、適当な光透過層5を設けることが好ましい。
光透過層5は、記録層3等のスパッタ膜を水分や塵埃から保護する役割を有する。また、記録再生用レーザー光に対して透明で複屈折の少ない材料が選ばれ、通常は、プラスチック板(シートと呼ぶ)を接着剤で貼り合せるか、放射線硬化性樹脂もしくは熱硬化性樹脂等を塗布後、放射線、または熱等で硬化させることにより形成する。光透過層5は、記録再生光の波長λに対して透過率70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましい。
【0042】
シート材として用いられるプラスチックは、ポリカーボネート、ポリオレフィン、アク
リル、三酢酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート等である。接着には、光、放射線
硬化、熱硬化樹脂や、感圧性の接着剤が用いられる。感圧性接着剤としては、また、アク
リル系、メタクリレート系、ゴム系、シリコン系、ウレタン系の各ポリマーからなる粘着
剤を使用できる。
【0043】
塗布法によって光透過層5を形成する場合には、スピンコート法、ディップ法等が用いられるが、特に、ディスク状の光記録媒体に対してはスピンコート法を用いることが多い。塗布による光透過層5の材料としては、ウレタン、エポキシ、アクリル系の樹脂等を用い、塗布後、紫外線、電子線、放射線を照射し、ラジカル重合もしくは、カチオン重合を促進して硬化する。
【0044】
前記光透過層5材料としては、透明性、耐久性の観点から、アクリル系、メタクリレート系のオリゴマーおよび/またはモノマーからなる組成物が好ましい。より具体的には、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレートオリゴマー、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、iso−オクチルアクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等の単官能(メタ)アクリレートモノマーの1種または2種以上が均一に混合された組成物が好ましい。オリゴマーの分子量調整、モノマーの種類および混合量の調整により、ガラス転移温度Tg、タック性能(低い圧力で接触させたときに直ちに形成される接着力)、剥離強度、せん断保持力等の物性を制御することができる。
【0045】
また、光透過層5には、さらにその入射光側表面に耐擦傷性、耐指紋付着性といった機能を付与するために、表面に厚さ0.1μm〜50μm程度のハードコート層を別途設けることもある。光透過層5の厚みは、記録再生光ビームの波長λや対物レンズ28のNA(開口数)にもよるが、0.01mm以上が好ましく、0.05mm以上がさらに好ましく、また、0.3mm以下が好ましく、0.15mm以下がより好ましい。接着層やハードコート層等の厚みを含む全体の厚みが、光学的に許容される厚み範囲となるようにするのが好ましい。たとえば、いわゆるブルーレイディスクでは、75μm±3μm程度以下に制御するのが好ましい。
【0046】
(5)その他の層について
単層型の光記録媒体においては、記録再生機能層としての透過率を高くする必要が無いため、図1における基板1と第1保護層2の間に反射層を設けることが好ましい。高い反射率を実現できるからである。
【0047】
反射層とは、記録再生光の波長(以下、λと記載することがある)に対する反射率が高く、記録再生光の波長に対して70%以上の反射率を有するものを指す。一般に、記録再生光として用いられる可視光の波長範囲で高反射率を示すものとして、Au、Ag、Al及びこれらを主成分とする合金が挙げられる。この中でも、波長λ=350〜450nmでの反射率が高く、吸収が小さいAgを主成分とする合金が好ましい。Agを主成分として、Au、Cu、希土類元素(特に、Nd、Eu)、Nb、Ta、V、Mo、Mn、Mg、Cr、Bi、Al、Si、Ge等を0.01原子%〜10原子%加えることで、水分、酸素、硫黄等に対する耐食性が高めることができ好ましい。
【0048】
反射層の膜厚は、好ましくは40nm以上、さらに好ましくは60nm以上、また好ましくは120nm以下、さらに好ましくは100nm以下である。膜厚が厚いほど安定した高い反射率が得られるが、生産性と記録再生特性のバランスを鑑みると、上記範囲が適当である。
反射層は、スパッタリング法、イオンプレーティング法や、電子ビーム蒸着法など公知の方法で形成することができるが、スパッタリング法で形成するのが好ましい。
【0049】
[3.第2実施形態]
(B)多層型の追記型光記録媒体について
次に、本発明の特に好ましい態様である多層型の追記型光記録媒体を例にとり、本発明をより詳細に説明する。
【0050】
先に述べたとおり、記録再生用のレーザー光の入射側から最も遠い記録再生機能層である最外記録再生機能層では、透過率を大きくする必要が無いが、最外記録再生機能層以外の記録再生機能層である透過型記録再生機能層においては、一定以上の透過率が必要とされる。記録再生用レーザー光における透過型記録再生機能層の透過率は、記録再生機能層の数にもよるが、少なくとも40%以上、好ましくは50%以上、更に好ましくは60%以上あることが望ましい。
【0051】
多層型の光記録媒体の透過型記録再生機能層には、上記の高透過率が要求されるため、記録層自身が高透過率であることが必要である。更に、記録再生機能層としても高透過率を有する必要があるため、反射層を有さずとも優れた記録再生特性を実現することが求められる。本発明の記録層は、反射層が無くとも優れた記録再生特性を得られるため、特に多層型光記録媒体の透過型記録再生機能層に好適に用いることができる。
【0052】
図2は本発明を用いることができる2層型の追記型光記録媒体102の一例を示す拡大断面図である。最外記録再生機能層17は、図1に示した単層型の光記録媒体の構成から、基板と光透過層を除いた構成を用いればよい。
【0053】
図2に示すように、この2層型の追記型光記録媒体102は、基板11上に最外記録再生機能層17を設け、中間層18を介して第1保護層12、記録層13、レーザー光入射側の第2保護層14、光透過層15をこの順序で順次積層して構成されており、光透過層15側からレーザー光を入射して記録及び再生を行うものである。
【0054】
層構成は図2の構成に限定する必要はない。例えば、最外記録再生機能層17と基板11の間に反射層を設けてもよいし、各層の界面に、必要に応じて界面層を設けることも可能である。また、各層それぞれの機能を向上させるため、異なる材料からなる複数の層を積層させることにより、各層を構成してもよい。また、本実施例においては、記録再生機能層を二つ備える光記録媒体について説明したが、記録再生機能層を三つ以上備えるものであっても良い。
以下、各層について詳しく説明する。
【0055】
(1)基板11について
本発明の2層型の追記型光記録媒体102に用いられる基板11は、単層型の追記型光記録媒体101の基板1と同様である。
【0056】
(2)第1保護層12及び第2保護層14について
本発明の2層型の追記型光記録媒体102に用いられる第1保護層12及び第2保護層14は、膜厚以外の点については単層型の追記型光記録媒体101の第1保護層2及び第2保護層4と同様である。
第1保護層12及び第2保護層14の膜厚については、上述した保護層の役割を果たすため、通常2nm以上、好ましくは5nm以上、更に好ましくは10nm以上であり、通常100nm以下、好ましくは80nm以下、更に好ましくは60nm以下である。
【0057】
(3)記録層13について
本発明の2層型の追記型光記録媒体102に用いられる記録層13は、単層型の追記型光記録媒体101の記録層3と同様である。
【0058】
(4)光透過層15について
本発明の2層型の追記型光記録媒体102に用いられる光透過層15は、単層型の追記型光記録媒体101の光透過層5と同様である。
【0059】
(5)最外記録再生機能層17について
本発明の2層型の追記型光記録媒体102に用いられる最外記録再生機能層17は、上述したとおり、基板側から、第3保護層、第2記録層、第4保護層をこの順序で順次積層して構成されているものである。
第3保護層、及び第4保護層は、それぞれ単層型の追記型光記録媒体の第1保護層2、及び第2保護層4と同様である。
【0060】
第2記録層は、単層型の追記型光記録媒体の記録層3と同様に、Nb−N及びMn−Nから選ばれる少なくとも1種の材料を主成分として設けられたものであってもよく、記録再生用のレーザー光の照射により到達する温度において、何らかの化学反応もしくは相変化を起こすことにより光学的性質が変化する材料を適宜主成分として設けられたものであってもよい。ただし、記録再生機能層が三つ以上ある場合において、透過型記録再生機能層に含まれる第2記録層は、単層型の追記型光記録媒体の記録層3と同様に、Nb−N及びMn−Nから選ばれる少なくとも1種の材料を主成分として設けられたものであることが好ましい。
【0061】
(6)中間層18について
多層型の光記録媒体においては、積層された異なる記録再生機能層に独立にレーザー光を照射し記録再生を行う必要があるため、各記録再生機能層を光学的に分離する必要がある。そのため、各記録再生機能層の間に中間層18を設けることが一般的である。中間層18には、上記の機能を果たすために、記録再生用のレーザー光に対し十分な透過率を有し、一定以上の膜厚を有することが求められる。また、光記録媒体全体の反りを抑制するために、比較的柔らかく収縮率が小さい材料を用いることが望まれる。これらの要求を満たす材料として、放射線硬化樹脂材料が好適に用いられている。放射線硬化性樹脂としては、電子線や紫外線の照射で硬化する材料を挙げることができるが、工業生産性を考慮すると、紫外線硬化性樹脂を用いることが好ましい。
【0062】
上記観点から、中間層18に用いる樹脂の記録再生用レーザー光の波長における透過率は通常90%以上、好ましくは95%以上である。
また、中間層18に用いる樹脂の25℃における弾性率は、通常1500MPa以下、好ましくは500MPa以下である。また、中間層18に用いる樹脂の収縮率は、通常8%以下、好ましくは4%以下である。中間層18に用いる樹脂の弾性率及び収縮率を上記範囲とすれば、光記録媒体の反りを効果的に抑制することができる。
【0063】
また、図示していないが、本実施の形態において、中間層18は単層構造であっても、複数層を積層した構造であってもよい。複数層を積層した構造として、それぞれの層に用いる樹脂の種類を適宜制御することにより、中間層全体の弾性率や収縮率を精密に制御して、光記録媒体の反りをより低減しやすくなる利点が発揮される。
【0064】
中間層18の膜厚は、通常10μm以上、好ましくは15μm以上である。一方、中間層の膜厚は、通常50μm以下、好ましくは30μm以下である。このような範囲とすることで、記録再生に必要な各記録再生機能層の光学的分離状態を実現し、反りの小さな光記録媒体の実現が可能である。
【0065】
紫外線硬化性樹脂は、通常、そのまま若しくは適当な溶剤に溶解して塗布液を調製する。その後、この塗布液を塗布し、紫外光を照射して硬化させることによって、中間層18を形成することができる。上記材料は単独または混合して用いても良い。
【0066】
塗布方法としては、スピンコート法やキャスト法等の塗布法等の方法が用いられ、この中でもスピンコート法が好ましい。高粘度の樹脂を用いた中間層18は、スクリーン印刷等によっても塗布形成できる。紫外線硬化性樹脂は、20℃〜40℃において液状であるものを用いると、生産性の観点から、溶媒を用いることなく塗布しやすくなるので好ましい。また、塗布液の粘度は20MPa・s〜1500MPa・sとなるように調製するのが好ましい。より好ましくは、塗布液の粘度を1000MPa・s以下とすることである。塗布液の粘度を上記範囲とすることで膜厚分布を均一にして塗布を行うことができる。
紫外線硬化性樹脂としては、ラジカル系紫外線硬化性樹脂とカチオン系紫外線硬化性樹脂とが挙げられ、いずれも使用することができる。
【0067】
カチオン系紫外線硬化性樹脂は、収縮率が小さい性質を有するので、光記録媒体の反りを低減するために用いることが好ましい。以下、ラジカル系紫外線硬化性樹脂及びカチオン系紫外線硬化性樹脂について説明する。
【0068】
ラジカル系紫外線硬化性樹脂は、紫外線硬化性化合物と光重合開始剤を含む組成物が用いられる。紫外線硬化性化合物としては、従来公知の単官能(メタ)アクリレート及び多官能(メタ)アクリレートを重合性モノマー成分として用いることができる。これらは、各々、単独または2種類以上併用して用いることができる。
更に、ラジカル系紫外線硬化性樹脂には、通常、光重合開始剤を配合する。光重合開始剤としては、分子開裂型または水素引き抜き型のものが好ましい。
また、これらの光重合開始剤とともに、増感剤を併用することができる。
【0069】
カチオン系紫外線硬化性樹脂としては、例えば、カチオン重合型の光重合開始剤を含むエポキシ樹脂が挙げられる。エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA−エピクロールヒドリン型、脂環式エポキシ、長鎖脂肪族型、臭素化エポキシ樹脂、グリシジルエステル型、グリシジルエーテル型、複素環式系等が挙げられる。エポキシ樹脂としては遊離した塩素及び塩素イオン含有率が少ないものを用いるのが好ましい。塩素の量は、1重量%以下が好ましく、より好ましくは0.5重量%以下である。
【0070】
また、紫外線硬化性樹脂には、必要に応じてさらにその他の添加剤として、熱重合禁止剤、ヒンダードフェノール、ヒンダードアミン、ホスファイト等に代表される酸化防止剤、可塑剤、及びエポキシシラン、メルカプトシラン、(メタ)アクリルシラン等に代表されるシランカップリング剤等を、各種特性を改良する目的で配合することもできる。これらは、紫外線硬化性化合物への溶解性に優れたもの、紫外線透過性を阻害しないものを選択して用いる。
【0071】
また、中間層18の表面には、通常、その上に積層される記録再生機能層のために、案内溝が形成される場合が多い。多層の記録層を有する光記録媒体において、基板表面以外の樹脂層に案内溝を形成する場合は、フォトポリメリゼーション法(Photo Polymerization:以下、「2P法」と記すことがある。)と呼ばれる公知の製造方法を用いることが一般的である。
【0072】
2P法の場合、基板表面以外の樹脂層への案内溝の形成は、通常以下のようにして行われる。すなわち、まず、基板上に最外記録再生機能層を形成した後に、紫外線硬化性樹脂原料等を塗布して樹脂層を形成した後、この上に案内溝の転写用の凹凸形状(以下適宜、「転写用凹凸形状」という)を有するスタンパを載置する。次いで、上記光硬化性樹脂原料等を硬化させた後に、スタンパを剥離する。このようにして、光硬化性樹脂の表面にスタンパの転写用凹凸形状を転写させて、凹凸形状を有する樹脂層を硬化性樹脂の硬化物によって形成することができるようになっている。
【0073】
この場合、中間層18を2種類の樹脂層により形成することが好ましい。すなわち、第1の樹脂層を形成後、より転写性に優れた材料である第2の樹脂層(以下、転写層と記載)を形成し、転写層上に案内溝を形成することが好ましい。その場合、上述のように転写層を形成する第2の樹脂層材料を塗布形成してからスタンパを載置してもよいが、転写層を形成する第2の樹脂層材料をスタンパに塗布形成して仮硬化を行い、その後、上記第1の樹脂層を形成した基板と貼り合せ、再度十分な硬化を行うことで第1の樹脂層と転写層を接着させた後に、スタンパを剥離し、転写層を含む中間層を形成する方法も好ましく用いられる。この場合、スタンパ剥離後に、更に硬化を行うことが好ましい。
【0074】
(7)その他の層について
前述の通り、単層型の光記録媒体の場合とは異なり、透過型記録再生機能層においては反射層を設けない方が好ましいが、透過率の低下を極力抑えるために、膜厚を極端に薄くした半透明反射層を設けてもよい。
【0075】
半透明反射層の好ましい材料としては、反射層の場合と同様であるが、膜厚は20nm以下が好ましく、更に好ましくは15nm以下、特に好ましくは10nm以下である。また、極端に薄すぎては放熱性悪化により後述のジッタ特性が不良となる可能性があるため、薄くても3nm以上が好ましい。
他の界面層等を設ける場合も、材料及び膜厚は透過率低下を極力抑えるように選択することが好ましい。
【実施例】
【0076】
本発明は、多層記録媒体における透過型記録再生機能層に適用することが好ましいため、以下のとおり基板上に反射層の無い記録再生機能層を1層形成し、その上に75μmの厚さの紫外線硬化樹脂からなる光透過層を形成した光記録媒体を作製し評価した。基板上に形成した案内溝は、溝幅を0.195μm、溝深さを20nm、トラックピッチを0.32μmとした。なお、光記録媒体への記録は、光透過層側から記録再生用のレーザー光を照射し、案内溝の凹凸のうち記録再生用レーザー光の入射側に近い凸部を記録トラックとして行った。上記溝深さ及び溝幅は、記録トラックである凸部の幅と深さである。光透過層以外の記録再生機能層はスパッタリング法を用いて形成した。光透過層はスピンコートにより塗布後、紫外線照射により硬化させて形成した。
【0077】
<記録再生特性(マルチトラックジッタ)の評価法>
記録再生特性の評価には、パルステック社製ODU1000テスター(Blu−ray Disc用、波長約406nm、NA=0.85)を用いた。線速度4.92m/s(1倍速)とし、光透過層側からレーザー光を入射させ記録トラック部にフォーカスサーボ及びトラッキングサーボをかけ、1−7PPの記録符号化方式を用いた信号の記録再生特性を評価した。クロック周波数は、Blu−rayDiscの1倍速における基準クロック周波数66MHzとした。マルチトラックジッタは、連続する5トラックに記録した後、中心トラックの記録信号をリミットイコライザにより波形等化した後2値化をおこない、2値化した信号の立ち上がりエッジおよび立ち下がりエッジと周期信号の立ち上がりエッジとの時間差の分布をタイムインターバルアナライザにより測定した(data to clock jitter)。記録信号には分割パルスを用い、基準クロック周期をTとして、長さnTのマークを記録する場合に記録パワーを有するn−1個のパルスに分割する方式を用いた。パルス分割時の詳細な条件については、光記録媒体ごとに最適化したもの用いた。ジッタ測定時は記録パワーを6〜12mWの範囲で変化させ、得られたマルチトラックジッタ値の中で最も低いジッタ値をボトムジッタとした。ボトムジッタの値が低いほど記録再生特性が優れた光記録媒体であり、実用上ボトムジッタは6.5%以下であることが好ましい。
【0078】
(実施例1)
膜構成は、基板側からSnO−ZnO−In−SiO第1保護層(膜厚20nm)、Nb−N記録層(膜厚10nm)、SnO−ZnO−In−SiO第2保護層(膜厚20nm)、としたものを作製した。
【0079】
SnO−ZnO−In−SiO層は、SnO−ZnO−In−SiOターゲットを用い、Ar流量25sccm(約0.28Pa)、DC300Wのスパッタ条件で形成した。Nb−N層はNbターゲットを用い、Ar流量25sccm、N流量30sccm(約0.5Pa)、DC300Wのスパッタ条件で形成した。作製された記録層の組成比をXPS(X線光電子分光法)により分析したところ、N原子数に対するNb原子数の比は1.7であった。なお、本明細書において単位sccmとは流量の単位で、大気圧(1010hPa)、室温(0℃)で規格化されたcc/min(立方センチメートル毎分)の単位を表わす。
【0080】
(実施例2)
実施例1においてNb−N記録層膜厚を20nmとしたこと以外は実施例1と同条件で作製した。
【0081】
(実施例3)
スパッタ膜は基板側から(ZnS)80(SiO20第1保護層(膜厚25nm)、Nb−N記録層(膜厚10nm)、(ZnS)80(SiO20第2保護層(膜厚25nm)、としたものを作製した。
【0082】
(ZnS)80(SiO20層は、(ZnS)80(SiO20ターゲットを用い、Ar流量25sccm(約0.28Pa)、RF500Wのスパッタ条件で形成した。Nb−N層は実施例1と同条件で形成した。
【0083】
(実施例4)
スパッタ膜は基板側からSnO−ZnO−In−SiO第1保護層(膜厚25nm)、Mn−N記録層(膜厚10nm)、SnO−ZnO−In−SiO第2保護層(膜厚25nm)、としたものを作製した。
【0084】
SnO−ZnO−In−SiO層は、SnO−ZnO−In−SiOターゲットを用い、Ar流量25sccm(約0.28Pa)、DC300Wのスパッタ条件で形成した。Mn−N層はMnターゲットを用い、Ar流量25sccm、N流量30sccm(約0.5Pa)、DC300Wのスパッタ条件で形成した。作製された記録層の組成比をXPSにより分析したところ、N原子数に対するMn原子数の比は3.4であった。
【0085】
(実施例5)
実施例3においてNb−N記録層の代わりにMn−N記録層を用いたこと以外は実施例1と同条件で作製した。Mn−N層は実施例4と同条件で形成した。
【0086】
(比較例1)
実施例3においてNb−N記録層の代わりにTi−N記録層を用いたこと以外は実施例3と同条件で作製した。Ti−N層はTiターゲットを用い、Ar流量25sccm、N流量30sccm(約0.5Pa)、DC300Wのスパッタ条件で形成した。
【0087】
(比較例2)
実施例3においてNb−N記録層の代わりにSn−N記録層を用いたこと以外は実施例3と同条件で作製した。Sn−N層はSnターゲットを用い、Ar流量25sccm、N流量30sccm(約0.5Pa)、DC100Wのスパッタ条件で形成した。
【0088】
(比較例3)
実施例3においてNb−N記録層の代わりにSn−Nb−N記録層を用いたこと以外は実施例3と同条件で作製した。Sn−Nb−N層はNb56Sn44(数値は原子%)ターゲットを用い、Ar流量25sccm、N流量30sccm(約0.5Pa)、DC300Wのスパッタ条件で形成した。記録層としては、Nb−NとSn−Nが混合した状態になっており、ターゲット組成から、窒素を除いたNbの含有率は60原子%以下と考えられる。
【0089】
(評価結果)
各光記録媒体の諸元と、得られたボトムジッタの値を表1に示す。記録層がNb−NまたはMn−Nからなる実施例1〜5においては、いずれも6.5%以下の良好なボトムジッタが得られている。一方、比較例1及び2では、パルス分割条件等を最適化しても、10%以下のジッタ値が得られなかった。比較例3では、ボトムジッタが6.9%と大きく、実施例に比べ明らかに劣る値であった。比較例3では、記録層にNb−Nが含有されているものの、記録層に占めるNb−Nの割合が低くNb−Nが主成分とは言えない状態であるため、実施例に比べボトムジッタが劣る結果になったものと考えられる。
【0090】
【表1】

【符号の説明】
【0091】
1、11・・・基板
2、12・・・第1保護層
3、13・・・記録層
4、14・・・第2保護層
5、15・・・光透過層
6、16・・・記録再生用レーザー光
17 ・・・最外記録再生機能層
18 ・・・中間層
101、102・・・追記型光記録媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニオブ窒化物及びマンガン窒化物から選ばれる少なくとも1種の材料を主成分とする記録層を設けたことを特徴とする光記録媒体。
【請求項2】
反射層を有さないことを特徴とする請求項1記載の光記録媒体。
【請求項3】
記録層を複数有する多層型の光記録媒体において、透過型記録再生機能層の記録層に、前記記録層を用いたことを特徴とする請求項1記載の光記録媒体。
【請求項4】
前記透過型記録再生機能層が半透明反射層を有さないことを特徴とする請求項3記載の光記録媒体。
【請求項5】
誘電体材料からなる保護層を更に有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の光記録媒体。
【請求項6】
前記記録層の両側に、前記保護層を設けたことを特徴とする請求項5に記載の光記録媒体。
【請求項7】
前記保護層が、SnO、ZnO、In、SiO、ZnSの少なくともいずれか一つを含有することを特徴とする請求項5又は6に記載の光記録媒体。
【請求項8】
基板上に少なくとも第1保護層、前記記録層、第2保護層、及び光透過層をこの順序で順次積層され、光透過層側からレーザー光を入射される
ことを特徴とする請求項1に記載の光記録媒体。
【請求項9】
前記基板と前記第1保護層の間に、少なくとも第3保護層、第2記録層、第4保護層、及び放射線硬化樹脂材料からなる中間層をこの順で更に積層される
ことを特徴とする請求項8に記載の光記録媒体。
【請求項10】
前記第1保護層及び前記第2保護層が、誘電体材料からなる
ことを特徴とする請求項8または9に記載の光記録媒体。
【請求項11】
前記第1保護層及び前記第2保護層が、SnO、ZnO、In、SiO、ZnSの少なくともいずれか一つを含有する
ことを特徴とする請求項8〜10のいずれか1項に記載の光記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−105515(P2013−105515A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−250006(P2011−250006)
【出願日】平成23年11月15日(2011.11.15)
【出願人】(501495237)三菱化学メディア株式会社 (105)
【Fターム(参考)】