説明

光調節装置

【課題】光調節装置において、光学フィルタ、レンズ等に形成された光学薄膜の破壊を防ぐことができる光調節装置を提供する。
【解決手段】光学開口が形成された第1基板及び第2基板と、第1基板及び第2基板に回転可能に取り付けられた少なくとも1つの回転軸部材と、回転軸部材に接合された少なくとも1つの光調節手段と、光調節手段を動作させる駆動手段と、を有し、駆動手段により回転軸部材を回転させ、光調節手段を動作させることによって、光調節手段を光学開口に対応する開口位置と、光学開口から退避した退避位置と、に相互に回動させ、光学開口を通過する入射光を調節する光調節装置において、光調節手段は、光学素子からなり、光学素子の第1基板及び第2基板に対向する面と、第1基板及び第2基板と、を離間させる離間手段を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光調節装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、撮像機能を有した携帯機器やマイクロビデオスコープ等の小型光学装置の高性能化に伴い、レンズや絞り、光学フィルタ等の光学素子も、従来の固定焦点レンズ、固定開口絞りから、フォーカスレンズ、可変絞り、可変光学フィルタを適用する要求が高まっており、その光学素子においても更なる小型化(薄型化)が望まれている。
【0003】
図8は、従来の絞り装置の全体構成を示す分解斜視図である。特許文献1記載の絞り装置では、図8に示すように、絞り装置10として光学フィルタユニット15とその装置20を一体的に組み込んだ構成を提案しており、羽根カバー14に覆われた絞り羽根12、13の駆動による光学フィルタ16の切替による光量の調節を可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−017594号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1記載の絞り装置では、光学フィルタ16は2枚の絞り羽根12、13の間で動作している。そのため、光学フィルタ16が駆動する際は上下の絞り羽根12、13に接触してしまう。これにより、光学フィルタ16に形成された光学薄膜がはがれてしまい、連続駆動させると共に光学性能が劣化していく可能性がある。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、光調節装置において、光学フィルタ、レンズ等に形成された光学薄膜の破壊を防ぐことができる光調節装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る光調節装置は、光学開口が形成された第1基板及び第2基板と、第1基板及び第2基板に回転可能に取り付けられた少なくとも1つの回転軸部材と、回転軸部材に接合された少なくとも1つの光調節手段と、光調節手段を動作させる駆動手段と、を有し、駆動手段により回転軸部材を回転させ、光調節手段を動作させることによって、光調節手段を光学開口に対応する開口位置と、光学開口から退避した退避位置と、に相互に回動させ、光学開口を通過する入射光を調節する光調節装置において、光調節手段は、光学素子からなり、光学素子の第1基板及び第2基板に対向する面と、第1基板及び第2基板と、を離間させる離間手段を有することを特徴とする。
【0008】
本発明に係る光調節装置においては、離間手段は、光学素子を周囲から保持する枠部材であり、光軸方向に突出する突出部を有することが好ましい。
【0009】
本発明に係る光調節装置においては、枠部材は、切り欠き部を有しており、光学素子は切り欠き部にて枠部材と接合されていることが好ましい。
【0010】
本発明に係る光調節装置においては、切り欠き部の幅は光学素子の直径よりも小さく、光学素子は枠部材の弾性力によって接合させることが好ましい。
【0011】
本発明に係る光調節装置においては、離間手段は少なくとも2つの局所保持をする突出部よりなり、光学素子は突出部により把持されていることが好ましい。
【0012】
本発明に係る光調節装置においては、回転軸部材は円柱状の磁石で形成され、回転軸部材の駆動源はヨークと巻線コイルからなる電磁駆動源であり、電磁駆動源により円柱状の磁石を回転させることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明にかかる光調節装置は、光学フィルタ、レンズ等に形成された光学薄膜の破壊を防ぐことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第1実施形態に係る光調節装置の分解斜視図である。
【図2】第1実施形態に係る光調節装置を組み立てた状態を示す斜視図である。
【図3】第1実施形態に係る光調節装置の動作を説明する平面図である。
【図4】第1実施形態に係る光調節装置の動作を説明する平面図である。
【図5】第1実施形態における光調節手段の構成を示す図であって、(a)は分解斜視図、(b)は組み立てた状態を示す斜視図である。
【図6】第2実施形態における光調節手段の構成を示す図であって、(a)は分解斜視図、(b)は組み立てた状態を示す斜視図である。
【図7】第3実施形態における光調節手段の構成を示す図であって、(a)は分解斜視図、(b)は組み立てた状態を示す斜視図である。
【図8】従来の絞り装置の全体構成を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明にかかる光調節装置の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。
【0016】
(第1実施形態)
第1実施の形態に係る光調節装置900について、図1から図5を参照して説明する。図1は、光調節装置900の分解斜視図である。図1において、光調節装置900の光軸方向801を一点鎖線で示す。光調節装置900は、基板101、基板201、光調節手段300、スペーサー401、駆動手段としての電磁駆動源500から構成されている。基板101及び基板201は、それぞれ光学開口102、202と、回転軸穴103、203と、から形成されている。光調節手段300は、フィルタ枠部材301と光学フィルタ302と、磁性を有する回転軸部材303と、より構成されている。スペーサー401は、基板101と基板201との間に配置され、光調節手段300が動作可能となるスペースを作る。また、電磁駆動源500は、光調節手段300を回動させ、ヨーク部材502に巻線コイル部501を設けたものである。
【0017】
図2に第1実施形態に係る光調節装置900の組み立てた状態を示す斜視図である。光調節手段300の回転軸部材303は、回転軸穴103、203に支持されている。光調節手段300は基板101、基板201との間に配置される。電磁駆動源500は基板101上に配置される。ヨーク部材502の先端部502a、502bは、磁性を有する回転軸部材303に対向する位置に配置される。そして、光調節手段300は回転軸部材303を電磁駆動源500によって回転させることによって移動する。
【0018】
図3、図4を用いて、第1実施形態に係る光調節装置900の動作を説明する。ここでは、基板101、電磁駆動源500は省略する。図3、図4は、光調節装置の動作を説明する平面図である。
【0019】
図3は、光調節手段300が光学開口202、光学開口102から退避した第1静止位置(退避位置)にある状態を示している。このとき、光調節手段300はスペーサー401の曲面部401aに当接し、その位置に静止する。
図4は、光調節手段300が光学開口202、光学開口102に重なる第2静止位置(開口位置)にある状態を示している。このとき、光調節手段300はスペーサー401の平面部401bに当接し、静止する。第2静止位置において、光調節装置900に入射する光は光学フィルタ302によって調節される。第1実施形態に係る光調節装置900は、巻線コイル部501に電流を印加することで、磁性を有する回転軸部材303を、先端部502a、502bから発生する磁力により回転させる。これにより、光調節手段300を第1静止位置と、第2静止位置へ相互に移動させる。また、第1実施形態では、スペーサー401を光調節手段300の静止位置のストッパーとして機能させているが、別途ストッパー部材を用いてもよい。
【0020】
図5を用いて、第1実施形態における光調節手段300について説明する。図5は、光調節手段300の構成を示す図であって、(a)は光調節手段300の分解斜視図、(b)は組み立てた状態を示す斜視図である。図5(b)は光学フィルタ302をフィルタ枠部材301の保護部304にはめ込んだ状態を示している。図5(b)において、光学フィルタ302を光学開口202上に配置したときの光軸方向801を一点鎖線で示す。光調節手段300は回転軸部材303が接合されたフィルタ枠部材301と光学フィルタ302で構成されている。フィルタ枠部材301には保護部304が一体的に形成されている。光学フィルタ302はフィルタ枠部材301の保護部304にはめ込まれ、保護部304により、光学フィルタ302は保持される。図5(b)に示すとおり、保護部304の光軸方向の高さは光学フィルタ302の高さより高くなるため、光学フィルタ302において基板101及び基板201と対向する面が基板101及び基板201から離間される。第1実施形態において、光学フィルタ302とフィルタ枠部材301の接合方法は、接着剤など、特に指定しない。
【0021】
図5(b)に示すとおり、第1実施形態では、保護部304が光学フィルタ302の周囲を保持し、かつ、保護部304が光学フィルタ302よりも光軸方向に突出している。これにより、光調節手段300を回転動作させる際、保護部304がスペーサー401に当たるため、光学フィルタ302が直接スペーサー401に当たることがない。また、光調節手段300が基板101と基板201の間を回転動作する際、保護部304が基板101、201に接触するため、光学フィルタ302が基板101、201に接触することがない。そのため、光学フィルタ302が突き当て時の衝撃により割れること、欠けることがない。さらに、光学フィルタ302に形成される光学薄膜が劣化することはない。
【0022】
(第2実施形態)
図6を用いて、第2実施形態における光調節装置について説明する。第2実施形態に係る光調節装置は、光調節手段320において、第1実施形態のフィルタ枠部材301に代わるフィルタ枠部材601を用いる点が第1実施形態の光調節装置900と異なり、これ以外の構成、駆動方法に関しては第1実施形態と同様のため、詳細な説明は省略する。図6は、光調節手段320の構成を示す図であって、(a)は光調節手段320の分解斜視図、(b)は組み立てた状態を示す斜視図である。図6(b)は、光学フィルタ302がフィルタ枠部材601に接合された状態を示している。図6(b)において、光学フィルタ302を光学開口202上に配置したときの光軸方向801を一点鎖線で示す。
【0023】
光調節手段320は、回転軸部材303、光学フィルタ302、及びフィルタ枠部材601を備える。フィルタ枠部材601の光軸方向の高さは、光学フィルタ302の高さよりも高くなり、これにより光学フィルタ302において第1基板101及び第2基板201に対向する面が基板101及び基板201から離間される。また、フィルタ枠部材601の先端には切り欠き部601a、601bが形成されている。図6(b)に示すとおり、光学フィルタ302は切り欠き部601a、601bにはめ合わせることで、フィルタ枠部材601と接合され保持される。光学フィルタ302は、切り欠き部601a、601bの径を光学フィルタ302の径よりも小さく形成することで、フィルタ枠部材601の弾性力により固定される。このとき、フィルタ枠部材601の材料は弾性力の高い金属が望ましい。また、第2実施形態では、フィルタ枠部材601の弾性力で接合しているが、他の接合方法として、接着剤などの方法を用いても構わない。
【0024】
第2実施形態では、フィルタ枠部材601が光学フィルタ302の周囲の一部を保持し、かつ、フィルタ枠部材601が光学フィルタ302よりも光軸方向801に沿って突出している。これにより、光調節手段320を回転動作させる際に、フィルタ枠部材601がスペーサー401に当たるため、光学フィルタ302が直接スペーサー401に当たることがない。また、光調節手段320が基板101と基板201の間を回転動作する際に、フィルタ枠部材601が基板101、201に接触するため、光学フィルタ302が基板101、201に接触することがない。これにより、光学フィルタ302が突き当て時の衝撃によって割れることや、欠けることがない。さらに、光学フィルタ302に形成される光学薄膜が劣化することはない。第2実施形態において、光学フィルタ302とフィルタ枠部材601の接合方法は、主にフィルタ枠部材601の弾性力を用いている。そのため、光学フィルタ302をフィルタ枠部材601の切り欠き部にはめ合わせるだけで接合可能となり、接着剤などを用いる必要がなく、より組立が容易になる。
【0025】
(第3実施形態)
図7を用いて、第3実施形態における光調節装置について説明する。第3実施形態に係る光調節装置は、光調節手段330においては、第1実施形態のフィルタ枠部材301に代わるフィルタ枠部材701を用いる点が第1実施形態の光調節装置900と異なり、これ以外の構成、駆動方法に関しては第1実施形態と同様のため、詳細な説明は省略する。図7は、光調節手段330の構成を示す図であって、(a)は光調節手段330の分解斜視図、(b)は組み立てた状態を示す斜視図である。図7(b)は光学フィルタ302がフィルタ枠部材701に接合された状態を示している。図7(b)において、光学フィルタ302を光学開口202上に配置したときの光軸方向801を一点鎖線で示す。
【0026】
第3実施形態において、光調節手段330は、回転軸部材303、光学フィルタ302、及びフィルタ枠部材701を備える。フィルタ枠部材701には3つの突出部701aが等角度間隔で形成されている。突出部701aは、光学フィルタ302の周囲を局所的に把持することにより光学フィルタ302を保持している。また、突出部701aの光軸方向の高さは、光学フィルタ302の高さよりも高くなり、これにより光学フィルタ302において基板101及び基板201に対向する面が基板101及び基板201から離間される。第3実施形態において、光学フィルタ302とフィルタ枠部材701の接合方法は、光学フィルタ302をフィルタ枠部材701に配置後、3つの突出部701aを光軸方向に折り曲げる。その後、突出部701aにより、光学フィルタ302は把持される。第3実施形態の光調節手段330では突出部を3つ設けたが、光学フィルタ302を保持できれば、2つでも4つ以上でもよい。また、第3実施形態では、突出部701aで光学フィルタ302を押さえつけ固定しているが、他の固定方法として接着剤などを用いても構わない。
【0027】
第3実施形態では、突出部701aが光学フィルタ302の周囲の3か所を把持し、かつ、光学フィルタ302よりも光軸方向にも突出している。これにより、光調節手段330を回転動作させる際に、突出部701aがスペーサー401に当たるため、光学フィルタ302が直接スペーサー401に当たることはない。また、光調節手段330が基板101と基板201の間を回転動作する際に、突出部701aが基板101、201に接触するため、光学フィルタ302が基板101、201に接触することはない。これにより、光学フィルタ302が突き当て時の衝撃によって割れることや、欠けることがない。さらに、光学フィルタ302に形成される光学薄膜が劣化することはない。第3実施形態において、光学フィルタ302とフィルタ枠部材701の接合方法は、突出部701aにより光学フィルタ302を押さえつけ、固定している。そのため、接着剤などを用いる必要がなく、より組立が容易になる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
以上のように、本発明にかかる光調節装置は、光学フィルタ、レンズ等に形成された光学薄膜の破壊を防ぎ、光調節手段を安定駆動させる光調節装置に有用である。
【符号の説明】
【0029】
101 基板
102 光学開口
103 回転軸穴
201 基板
202 光学開口
203 回転軸穴
300 光調節手段
301 フィルタ枠部材
302 光学フィルタ
303 回転軸部材
304 保護部
320 光調節手段
330 光調節手段
401 スペーサー
401a 曲面部
401b 平面部
500 電磁駆動源
501 巻線コイル部
502 ヨーク部材
502a 先端部
502b 先端部
601 フィルタ枠部材
601a 切り欠き部
601b 切り欠き部
701 フィルタ枠部材
701a 突出部
801 光軸方向
900 光調節装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学開口が形成された第1基板及び第2基板と、
前記第1基板及び第2基板に回転可能に取り付けられた少なくとも1つの回転軸部材と、
前記回転軸部材に接合された少なくとも1つの光調節手段と、
前記光調節手段を動作させる駆動手段と、を有し、
前記駆動手段により前記回転軸部材を回転させ、前記光調節手段を動作させることによって、前記光調節手段を前記光学開口に対応する開口位置と、前記光学開口から退避した退避位置と、に相互に回動させ、前記光学開口を通過する入射光を調節する光調節装置において、
前記光調節手段は、光学素子からなり、
前記光学素子の前記第1基板及び前記第2基板に対向する面と、前記第1基板及び前記第2基板と、を離間させる離間手段を有することを特徴とする光調節装置。
【請求項2】
前記離間手段は、前記光学素子を周囲から保持する枠部材であり、光軸方向に突出する突出部を有することを特徴とする請求項1に記載の光調節装置。
【請求項3】
前記枠部材は、切り欠き部を有しており、前記光学素子は前記切り欠き部にて前記枠部材と接合されていることを特徴とする請求項2に記載の光調節装置。
【請求項4】
前記切り欠き部の幅は前記光学素子の直径よりも小さく、前記光学素子は前記枠部材の弾性力によって接合させることを特徴とする請求項3に記載の光調節装置。
【請求項5】
前記離間手段は少なくとも2つの局所保持をする突出部よりなり、前記光学素子は前記突出部により把持されていることを特徴とする請求項1に記載の光調節装置。
【請求項6】
前記回転軸部材は円柱状の磁石で形成され、
前記回転軸部材の駆動源はヨークと巻線コイルからなる電磁駆動源であり、
前記電磁駆動源により前記円柱状の磁石を回転させることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の光調節装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−123037(P2012−123037A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−271322(P2010−271322)
【出願日】平成22年12月6日(2010.12.6)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】