説明

光調節装置

【課題】磁石とコイルコアの両先端部との距離が均一となり、安定した動作が可能な光調節装置を提供する。
【解決手段】光学開口がそれぞれ形成された上部基板及び下部基板と、少なくとも1つの光調節手段と、上部基板と下部基板の間に配置され、光調節手段が動作可能なスペースを形成するスペーサと、上部基板上に配置された光調節手段を駆動する駆動手段と、を備え、駆動手段は、光調節手段の回転中心に配置された磁石と、コイルコア及び巻線コイルから構成され、コイルコアが磁石に対向するように配置された電磁駆動源と、を有し、上部基板上には位置決め部材が設置され、位置決め部材によってコイルコアと磁石との距離を一定に規定している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光調節装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、撮像機能を有した携帯機器やマイクロビデオスコープ等の小型光学装置の高性能化に伴い、レンズ、絞り、光学フィルタ等の光学素子も、従来の固定焦点レンズ、固定開口絞り、固定特性フィルタから、フォーカスレンズ、可変絞り、可変光学フィルタを適用する要求が高まっており、小型撮像機器に適用する光学要素を小型化する方法として多くの提案がなされている。
【0003】
図9は、従来の電磁駆動装置の構成を示す平面図である。図9に示す、特許文献1で提案された電磁駆動装置では、地板901に撮影レンズ902が保持されており、撮影レンズ902の周りにめぐらせたコイルコア903(ヨーク)と磁石905(永久磁石)により閉磁気回路が形成されている。コイルコア903の両先端部903a、903bは、磁石905にそれぞれ対向しており、コイルコア903には、励磁用の巻線コイル904が巻かれている。この構成によれば、基板上に巻線コイルを配置していることから径方向のサイズダウンが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−22042号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に示す電磁駆動装置では、巻線コイル904及びコイルコア903が基材としての地板901上に配置されており、磁石905とコイルコア903の両先端部903a、903bとの距離が左右で均一になっていないと、磁石905が安定して動作しない。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、磁石とコイルコアの両先端部との距離が均一となり、安定した動作が可能な光調節装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る光調節装置は、光学開口がそれぞれ形成された上部基板及び下部基板と、少なくとも1つの光調節手段と、上部基板と下部基板の間に配置され、光調節手段が動作可能なスペースを形成するスペーサと、上部基板上に配置された光調節手段を駆動する駆動手段と、を備え、駆動手段は、光調節手段の回転中心に配置された磁石と、コイルコア及び巻線コイルから構成され、コイルコアが磁石に対向するように配置された電磁駆動源と、を有し、上部基板上には位置決め部材が設置され、位置決め部材によってコイルコアと磁石との距離を一定に規定していることを特徴としている。
【0008】
本発明に係る光調節装置において、位置決め部材は、上部基板の面内方向におけるコイルコアの位置を規制することが好ましい。
【0009】
本発明に係る光調節装置において、位置決め部材は一対設けられていることが好ましい。
【0010】
本発明に係る光調節装置において、位置決め部材は、上部基板上に設置された突起部と、コイルコアの一部に開けられた穴部とで構成され、コイルコアの穴部を突起部に嵌合することで位置決めを行うことが好ましい。
【0011】
本発明に係る光調節装置において、位置決め部材は、上部基板上に光軸方向に延びた突起部を有し、かつ、磁石を挟むように形成され、その側面にコイルコアを突き当てることによって、コイルコアの位置決めを行うことが好ましい。
【0012】
本発明に係る光調節装置において、位置決め部材の突起部は磁石の近傍に配置されていることが好ましい。
【0013】
本発明に係る光調節装置において、位置決め部材の突起部は磁性材料で形成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る光調節装置は、磁石とコイルコアの両先端部との距離が均一となり、安定した動作が可能となる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】光調節装置の基本構成を示す分解斜視図である。
【図2】光調節装置の基本構成を示す斜視図である。
【図3】第1実施形態に係る光調節装置の構成を示す平面図である。
【図4】第1実施形態に係る光調節装置の構成を示す斜視図である。
【図5】第2実施形態に係る光調節装置の構成を示す平面図である。
【図6】第2実施形態に係る光調節装置の構成を示す斜視図である。
【図7】第3実施形態に係る光調節装置の構成を示す平面図である。
【図8】第3実施形態に係る光調節装置の構成を示す斜視図である。
【図9】従来の電磁駆動装置の構成を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明に係る光調節装置の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
(基本構成)
以下、図1及び図2を参照しつつ、光調節装置の基本構成について説明する。図1及び図2は光調節装置100の基本構成を示す図であり、図1は分解斜視図、図2は光調節装置100を組み上げた状態を示す斜視図である。
【0017】
光調節装置100は、光学開口112及び回転軸穴113が形成された上部基板111と、光学開口122及び回転軸穴123が形成された下部基板121と、入射光調節部材133が配置された光調節手段としての駆動羽根131と、上部基板111と下部基板121との間に配置され、駆動羽根131が回動可能となるスペースを作るためのスペーサ141と、駆動羽根131を回動駆動する電磁駆動源150と、を備える。
【0018】
上部基板111と下部基板121は、上部基板111の中心に設けた光学開口112と下部基板121の中心に設けた光学開口122が光軸AX上に同心状に位置するように、光軸AXに沿って順に配置される。
【0019】
駆動羽根131の回転中心には、回転軸としての磁石132が接合により直接設けられている。駆動羽根131は、上部基板111と下部基板121の間に配置されている。磁石132は、径方向に磁化されており、光軸AXに沿って延びるように、下端部が下部基板121の回転軸穴123内に嵌め込まれ、上端部が上部基板111の回転軸穴113を貫通している。
入射光調節部材133は、例えばレンズやフィルタであり、これらを配置せずに光学開口を形成して絞りを構成させてもよい。
【0020】
電磁駆動源150は、略コの字状のコイルコア153(ヨーク)に、巻線コイル151、152をそれぞれ巻線したものである。コイルコア153の二つの先端部154、155は互いに対向している。電磁駆動源150は、光学開口112の周りを囲むように上部基板111上に配置され、コイルコア153の二つの先端部154、155の間に、回転軸穴113を貫通した磁石132の上端部が対向配置される。
【0021】
ここで、電磁駆動源150及び磁石132は駆動手段を構成する。この駆動手段において、コイルコア153と磁石132からなる磁気回路が閉じた構成となるため大きな磁力が得られる。駆動羽根131は、駆動手段によって駆動される。より具体的には、巻線コイル151、152に所定の電流を印加すると先端部154、155の間に配置された磁石132がその軸の周りを回動する。この回動にしたがって駆動羽根131は、磁石132を回転軸として、光軸AXの方向に対して鉛直な平面内において、第1の静止位置と、第2の静止位置と、に相互に回動し、これにより入射光調節部材133の位置が変わる。
【0022】
駆動羽根131が第1の静止位置にあるとき、入射光調節部材133は上部基板111の光学開口112及び下部基板121の光学開口122から退避した位置にある。このとき、駆動羽根131は、スペーサ141の内壁に当接することにより、その位置に静止している。この状態においては、光学開口に入射した光は光調節部材133による調整は受けない。
【0023】
一方、駆動羽根131が第2の静止位置にあるとき、入射光調節部材133は上部基板111の光学開口112及び下部基板121の光学開口122に重なる位置にある。このとき、駆動羽根131は、スペーサ141の内壁に当接することにより、その位置に静止している。この状態においては、光学開口に入射した光は光調節部材133によって所定の調整を施される。
【0024】
(第1実施形態)
図3及び図4は、第1実施形態に係る光調節装置200の構成を示す図であり、図3は平面図、図4は斜視図である。
第1実施形態に係る光調節装置200は、図1及び図2に示す光調節装置100に対して2本の位置決め部材261、262を設けた構成としている。以下の説明において、基本構成の光調節装置100と同じ部材については同じ参照符号を使用し、その詳細な説明は省略する。
【0025】
電磁駆動源250は、基本構成の電磁駆動源150と同様に、略コの字状のコイルコア253(ヨーク)に、巻線コイル251、252をそれぞれ巻線したものである。コイルコア253の二つの先端部254、255は互いに対向している。電磁駆動源250は、光学開口112の周りを囲むように上部基板111上に配置され、コイルコア253の二つの先端部254、255の間に、回転軸穴113を貫通した磁石132の上端部が対向配置される。
【0026】
上部基板111には、光軸AXに沿って延びるように一対の突起部としての位置決め部材261、262が固定されている。これらの位置決め部材261、262は、コイルコア253において巻線コイルが巻かれていない部分のうち、磁石132から遠い部位に設けた位置決めのための穴部256、257に嵌合される。ここで、位置決め部材261、262は、磁性材料で形成すると電磁駆動源150が発生した磁束を減らすことがなくなり、安定駆動が可能となるため好ましい。
【0027】
この構成により、コイルコア253と上部基板111とが互いに接合され、上部基板111の面内方向におけるコイルコア253の位置が規制される。これにより、磁石132とコイルコア253の先端部254、255との距離を一定に規定することができる。すなわち、一方の先端部254と磁石132との距離L1が、他方の先端部255と磁石132との距離L2と同一となり、かつ、この関係が維持される。
このように磁石132とコイルコア253の先端部254、255の距離が一定になっていることにより、磁石132に均等な回転力が働き、駆動羽根131を安定して回転動作させることができる。さらに、位置決め部材261、262に嵌合するだけでコイルコア253と磁石132の位置合わせが可能となるため、装置の組み立てが容易になる。
【0028】
(第2実施形態)
図5及び図6は、第2実施形態に係る光調節装置300の構成を示す図であり、図5は平面図、図6は斜視図である。
第2実施形態に係る光調節装置300においては、磁石132の近傍に一対の位置決め部材361、362を設けた点が第1実施形態に係る光調節装置200と異なる。その他の構成は第1実施形態に係る光調節装置200と同様であって、同じ部材については同じ参照符号を使用して、その詳細な説明は省略する。
【0029】
位置決め部材361、362は、磁石132を挟む一対の壁状に、上部基板111上に形成されている。位置決め部材361、362は、光軸AXに沿って延び、磁石132との間に同一の距離をおいて互いに対向している。
【0030】
このように位置決め部材361、362と磁石132との間隔をあらかじめ決めているため、コイルコア153の先端部154、155を位置決め部材361、362の側面にそれぞれつき当てることによって、磁石132とコイルコア153の距離を一定に保つことが可能になる。ここで、第1実施形態の光調節装置では、位置決め部材261、262だけでなく、コイルコア253の穴部256、257を高い寸法精度で形成する必要があるが、第2実施形態の光調節装置では、位置決め部材361、362だけで、直接磁石132とコイルコア153の間隔を決めることとなるため、更なる安定駆動が期待できる。
なお、その他の構成、作用、効果については、第1実施形態と同様である。
【0031】
(第3実施形態)
図7及び図8は、第3実施形態に係る光調節装置400の構成を示す図であり、図7は平面図、図8は斜視図である。
第3実施形態に係る光調節装置においては、磁石132の近傍に一対の位置決め部材461、462を設けた点が第1実施形態に係る光調節装置200と異なる。その他の構成は第1実施形態に係る光調節装置200と同様であって、同じ部材については同じ参照符号を使用して、その詳細な説明は省略する。
【0032】
電磁駆動源450は、基本構成の電磁駆動源150と同様に、略コの字状のコイルコア453(ヨーク)に、巻線コイル451、452をそれぞれ巻線したものである。コイルコア453の二つの先端部454、455は互いに対向している。電磁駆動源450は、光学開口112の周りを囲むように上部基板111上に配置され、コイルコア453の二つの先端部454、455の間に、回転軸穴113を貫通した磁石132の上端部が対向配置される。
【0033】
位置決め部材461、462は、磁石132を挟む一対の突起部として上部基板111上に形成されている。位置決め部材461、462は、光軸AXに沿って延び、磁石132との間に同一の距離をおいて互いに対向している。位置決め部材461、462は、コイルコア453において巻線コイルが巻かれていない部分のうち、磁石132の近傍に設けた位置決めのための穴部456、457に嵌合される。
【0034】
コイルコア453を位置決め部材461、462に接合することにより、コイルコア453と磁石132の位置を規定することができる。磁石132の近傍に位置決め部材461、462が配置されているため、より正確にコイルコア453と磁石132の距離を保つことができ、これにより、さらに安定した動作が可能になる。
なお、その他の構成、作用、効果については、第1実施形態と同様である。
【産業上の利用可能性】
【0035】
以上のように、本発明に係る光調節装置は、小型撮像機器に適用する小型の光学要素に有用である。
【符号の説明】
【0036】
100 光調節装置
111 上部基板
112 光学開口
113 回転軸穴
121 下部基板
122 光学開口
123 回転軸穴
131 駆動羽根
132 磁石
133 入射光調節部材
141 スペーサ
150 電磁駆動源
151、152 巻線コイル
153 コイルコア
154、155 先端部
200 光調節装置
250 電磁駆動源
251、252 巻線コイル
253 コイルコア
254、255 先端部
256、257 孔部
261、262 位置決め部材
300 光調節装置
361、362 位置決め部材
400 光調節装置
450 電磁駆動源
451、452 巻線コイル
453 コイルコア
454、455 先端部
456、457 孔部
461、462 位置決め部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学開口がそれぞれ形成された上部基板及び下部基板と、
少なくとも1つの光調節手段と、
前記上部基板と前記下部基板の間に配置され、前記光調節手段が動作可能なスペースを形成するスペーサと、
前記上部基板上に配置された前記光調節手段を駆動する駆動手段と、を備え、
前記駆動手段は、
前記光調節手段の回転中心に配置された磁石と、
コイルコア及び巻線コイルから構成され、前記コイルコアが前記磁石に対向するように配置された電磁駆動源と、を有し、
前記上部基板上には位置決め部材が設置され、
前記位置決め部材によって前記コイルコアと前記磁石との距離を一定に規定していることを特徴とする光調節装置。
【請求項2】
前記位置決め部材は、前記上部基板の面内方向における前記コイルコアの位置を規制することを特徴とする請求項1に記載の光調節装置。
【請求項3】
前記位置決め部材は一対設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の光調節装置。
【請求項4】
前記位置決め部材は、前記上部基板上に設置された突起部と、前記コイルコアの一部に開けられた穴部とで構成され、前記コイルコアの前記穴部を前記突起部に嵌合することで位置決めを行うことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の光調節装置。
【請求項5】
前記位置決め部材は、前記上部基板上に光軸方向に延びた突起部を有し、かつ、前記磁石を挟むように形成され、その側面に前記コイルコアを突き当てることによって、前記コイルコアの位置決めを行うことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の光調節装置。
【請求項6】
前記位置決め部材の前記突起部は前記磁石の近傍に配置されていることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の光調節装置。
【請求項7】
前記位置決め部材の前記突起部は磁性材料で形成されていることを特徴とする請求項4から請求項6のいずれか1項に記載の光調節装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−76900(P2013−76900A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−217499(P2011−217499)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】