説明

光走査装置および走査型顕微鏡装置

【課題】光の利用効率を低減することなく走査速度を上げる。
【解決手段】入射されたビームを所定の切替タイミングで複数の方向に切り替えて偏向可能な偏向素子1と、偏向素子1により偏向されたビームの各光路LA〜LD上に互いに異なる角度で配置された複数の角度設定ミラー13を有し、各角度設定ミラー13によって光路LA〜LDごとにビームを同一平面上における相対的な角度を付与して反射して同一箇所に集合させるミラーアレイ3と、前記平面に対して垂直な軸線回りに切替タイミングに同期して揺動可能に設けられ、ミラーアレイ3により同一箇所に異なる方向から入射させられる各ビームを反射して同一の軌跡に沿って走査する第1スキャナ5とを備える光走査装置10を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光走査装置および走査型顕微鏡装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、レーザ光の実質的な走査速度を上げることができる光走査装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1に記載の光走査装置は、レーザ光を反射および透過して複数の光束に分岐するビームスプリッタと、ビームスプリッタを透過したレーザ光を反射するハーフミラーと、これらビームスプリッタおよびハーフミラーにより各々異なる出射角度で反射され同一箇所に集合させられた各レーザ光を走査するスキャナと、スキャナにより走査された各レーザ光を選択的に通過させる絞りとを備えている。
【0003】
この特許文献1に記載の光走査装置は、ビームスプリッタおよびハーフミラーにより反射された各レーザ光をスキャナにより同時に走査し、順次いずれかのレーザ光のみを絞りを通過させることにより、スキャナの1回の揺動によって複数のレーザ光を照射範囲をずらしながら順次走査させ、一定面積の走査に要する時間短縮を実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−173085号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の光走査装置では、ビームスプリッタにより分岐された複数のレーザ光のうち、絞りを通過したレーザ光のみを利用し、絞りを通過しない他のレーザ光は無駄になるため、光量損失が大きく光の利用効率が低いという問題がある。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、光の利用効率を低減することなく走査速度を上げることができる光走査装置および走査型顕微鏡装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
本発明は、入射されたレーザ光を所定の切替タイミングで複数の方向に切り替えて偏向可能な偏向素子と、該偏向素子により偏向されたレーザ光の各光路上に互いに異なる角度で配置された複数の角度設定ミラーを有し、各該角度設定ミラーによって光路ごとにレーザ光を同一平面上における相対的な角度を付与して反射して同一箇所に集合させる角度設定部と、前記平面に対して垂直な軸線回りに前記切替タイミングに同期して揺動可能に設けられ、前記角度設定部により前記同一箇所に異なる方向から入射させられる各レーザ光を反射して同一の軌跡に沿って走査する揺動ミラーとを備える光走査装置を提供する。
【0008】
本発明によれば、レーザ光が偏向素子により所定の切替タイミングで切り替えられながら複数の方向に偏向され、偏向された光路ごとに配置された角度設定部の角度設定ミラーにより反射されて、同一平面上における異なる角度で揺動ミラーの同一箇所に入射させられる。そして、揺動ミラーが軸線回りに揺動することにより、光路ごとに揺動ミラーに順次入射させられたレーザ光がミラーの配列方向に走査される。
【0009】
この場合において、偏向素子により偏向する方向の切替タイミングに同期して揺動ミラーを揺動させることで、各角度設定ミラーから相互に異なる入射角度で揺動ミラーに入射されるレーザ光ごとに、偏向素子の切替タイミングに応じて時間間隔をあけて一定の範囲を順次走査させることができる。したがって、偏向素子によりレーザ光を偏向する方向を高速で切り替えるだけで、ビームスプリッタによりレーザ光を複数の光路に分岐して絞りを通過したもののみを利用する場合と比較して、レーザ光の利用効率を低減することなく走査速度の向上を図ることができる。
【0010】
上記発明においては、前記角度設定部が、前記複数の角度設定ミラーの角度設定が異なる複数の角度設定ミラー群と、前記偏向素子により偏向されたレーザ光を反射して前記角度設定ミラー群の角度設定ミラーに入射させる複数の反射ミラーとの組を複数組備え、これらの角度設定ミラー群および反射ミラーの組ごとに、前記角度設定ミラーにより反射したレーザ光を前記揺動ミラー上の同一箇所に集合させるように、該揺動ミラーからの距離が異なる位置に択一的に挿脱可能に設けられていることとしてもよい。
【0011】
このように構成することで、択一的に挿入する角度設定ミラー群と反射ミラーとの組を変えることにより、角度設定ミラーの角度に応じて揺動ミラーへのレーザ光の入射角度を変更することができる。ここで、揺動ミラーの揺動範囲を変えることで、揺動ミラーにより走査されたレーザ光が照射される試料の画像上における倍率が変動する。したがって、揺動ミラーの揺動角度に合わせて、挿入する角度設定ミラー群および反射ミラーの組を変えるだけの簡易な構成により、偏向素子の偏向動作は通常のままで揺動ミラーによるズーム機能を実現することができる。
【0012】
また、上記発明においては、前記角度設定部が、前記複数の角度設定ミラーの角度設定が異なる複数の角度設定ミラー群と、前記偏向素子により偏向されたレーザ光を反射して前記角度設定ミラー群の角度設定ミラーに入射させる反射ミラーとを備え、前記角度設定ミラー群が、前記角度設定ミラーにより反射したレーザ光を前記揺動ミラー上の同一箇所に集合させるように、該揺動ミラーからの距離が異なる位置に択一的に挿脱可能に設けられ、前記反射ミラーが、前記偏向素子からのレーザ光の光路上に該光路に沿う方向に移動可能および/または前記軸線に平行な他の軸線回りに揺動可能に設けられていることとしてもよい。
【0013】
このように構成することで、択一的に挿入される角度設定ミラー群の位置に合わせて、反射ミラーの位置や向きを変えるだけで、偏向素子からのレーザ光を反射ミラーおよび角度設定ミラー群を介して、揺動ミラーの揺動角度に合わせた入射角度で揺動ミラーに入射させることができる。したがって、部品点数を低減しつつ、偏向素子の偏向動作は通常のままで揺動ミラーによるズーム機能を実現することができる。
【0014】
また、上記発明においては、前記角度設定部が、前記角度設定ミラーの角度および該角度設定ミラーどうしの距離が変更可能に備えられた角度設定ミラー群と、前記偏向素子により偏向されたレーザ光を反射して前記角度設定ミラー群の角度設定ミラーに入射させる反射ミラーとを備え、前記角度設定ミラー群が、前記角度設定ミラーと前記揺動ミラーとの距離が近接または離間する方向に移動可能に設けられ、前記反射ミラーが、前記偏向素子により偏向されたレーザ光の光路上に該光路に沿う方向に移動可能および/または前記軸線に平行な他の軸線回りに揺動可能に設けられていることとしてもよい。
【0015】
このように構成することで、角度設定ミラー群を角度設定ミラーと揺動ミラーとの距離が近接または離間する方向に移動させるとともに、反射するレーザ光に光路ごとに同一平面上における相対的な角度を付与して同一箇所に集合させるように角度設定ミラーの角度および位置を調節することにより、揺動ミラーの揺動角度に合わせた入射角度で揺動ミラーにレーザ光を入射させることができる。したがって、揺動ミラーの揺動角度を変えて試料の画像上における倍率を変動することができる。
【0016】
この場合において、角度設定ミラー群の位置に合わせて、反射ミラーをレーザ光の光路上で光路に沿う方向に移動または他の軸線回りに揺動させるだけで、偏向素子からのレーザ光を角度設定ミラー群の各角度設定ミラーに入射させることができる。したがって、偏向素子の偏向動作は通常のままで、手間をかけずに揺動ミラーによるズーム機能を実現することができる。
【0017】
また、上記発明においては、前記揺動ミラーにより走査された前記レーザ光を該揺動ミラーによる走査方向に対して直交する方向に走査する他の揺動ミラーを備えることとしてもよい。
このように構成することで、一方の揺動ミラーにより同一範囲を連続的に一方向に走査されたレーザ光を他の揺動ミラーによりこれに直交する方向に順次走査することができる。したがって、レーザ光の2次元的な走査速度を向上することができる。
【0018】
本発明は、上記いずれかの光走査装置と、該光走査装置により走査された前記レーザ光を試料に照射する観察光学系と、該観察光学系により前記レーザ光が照射された前記試料からの光を検出する検出部とを備える走査型顕微鏡装置を提供する。
本発明によれば、光走査装置により、観察光学系によって試料に照射されるレーザ光を走査速度を向上して試料上で2次元的に走査させることができる。したがって、検出部により検出された試料からの光に基づいて、試料の観察範囲を時間を短縮して観察することができる。
【0019】
上記発明においては、前記検出部により検出された前記試料からの光と前記レーザ光の走査位置とを対応づけて2次元情報または3次元情報として復元する復元部と、該復元部により復元された前記2次元情報または3次元情報を表示する表示部とを備えることとしてもよい。
このように構成することで、表示部に表示された試料の2次元情報または3次元情報により、試料の観察を行うことができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、光の利用効率を低減することなく走査速度を上げることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】(a)は本発明の第1実施形態に係る光走査装置を示す概略図であり、(b)は(a)のスキャナにより走査される第1光路のビームを示す概略図である。
【図2】(a)は本発明の第1実施形態に係る光走査装置を示す別の概略図であり、(b)は(a)のスキャナにより走査される第4光路のビームの光路を示す概略図である。
【図3】本発明の第1実施形態の第1変形例に係る光走査装置の1倍用角度設定ミラー群を挿入した様子を示す概略図である。
【図4】本発明の第1実施形態の第1変形例に係る光走査装置の2倍用角度設定ミラー群を挿入した様子を示す概略図である。
【図5】本発明の第1実施形態の第1変形例に係る光走査装置の4倍用角度設定ミラー群を挿入した様子を示す概略図である。
【図6】本発明の第1実施形態の第2変形例に係る光走査装置の角度設定ミラー群をスキャナに近接して配置した様子を示す概略図である。
【図7】本発明の第1実施形態の第2変形例に係る光走査装置の角度設定ミラー群をスキャナから離間して配置した様子を示す概略図である。
【図8】本発明の第2実施形態に係る走査型顕微鏡装置を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
〔第1実施形態〕
本発明の第1実施形態に係る光走査装置について、図面を参照して以下に説明する。
本実施形態に係る光走査装置10は、図1(a),図2(a)に示すように、光源2から発せられたビーム(レーザ光)の進行方向を切り替える偏向素子1と、偏向素子1により偏向されたビームを反射するミラーアレイ(角度設定部)3と、ミラーアレイ3により反射されたビームを走査するガルバノミラーのような第1スキャナ(揺動ミラー)5および第2スキャナ(他の走査部)7と、偏向素子1、第1スキャナ5および第2スキャナ7を制御する制御部9とを備えている。
【0023】
偏向素子1は、光源2から入射されたビームを所定の切替タイミングで一次元的に複数の方向に切り替えて偏向することができるようになっている。本実施形態においては、偏向素子1は1次元的に4方向にビームの進行方向を切り替えるようになっている。以下、図1(b),図2(b)に示すように、偏向素子1により偏向されるビームの各光路を順に第1光路LA,第2光路LB,第3光路LC,第4光路LDとする。図1(a)には第1光路LAを通るビームを示し、図2(a)には第4光路LDを通るビームを示している。また、図1(b),図2(b)は第1スキャナ5によるビームの走査を示している。
【0024】
また、偏向素子1は、ビームを偏向する方向を第1光路LAから第4光路LDまで順に高速で切り替えることができるようになっている。偏向素子1としては、例えば、AOD(Acousto−Optic Deflector)や電気光学結晶等を使用することができる。
【0025】
ミラーアレイ3は、一方向に配列された複数(本実施形態においては4つ。)の角度設定ミラー13A,13B,13C,13Dを備えている。
角度設定ミラー13A〜13Dは、偏向素子1により偏向されたビームの各光路LA〜LD上にそれぞれ設けられ、互いに異なる角度で配置されている。具体的には、角度設定ミラー13Aは第1光路LA上に配置され、角度設定ミラー13Bは第2光路LB上に配置され、角度設定ミラー13Cは第3光路LC上に配置され、角度設定ミラー13Dは第4光路LD上に配置されている。
【0026】
これらの角度設定ミラー13A〜13Dは、光路LA〜LDごとに入射されるビームを同一平面上における相対的な角度を付与して反射し、第1スキャナ5の同一箇所に集合させるように設定されている。
【0027】
第1スキャナ5は、ミラーアレイ3から入射されるビームの4つの光路LA〜LDに沿う前記平面に対して垂直な軸線回りに揺動可能に設けられている。これにより、第1スキャナ5は、ミラーアレイ3の各角度設定ミラー13A〜13Dから同一平面上における異なる角度で同一箇所に入射される各ビームを反射して、同一軌跡に沿って、すなわち、角度設定ミラー13A〜13Dの配列方向に沿ってそれぞれ走査することができるようになっている。第1スキャナ5によるビームの走査方向をX方向とする。
【0028】
第2スキャナ7は、第1スキャナ5の軸線に対して直交する軸線回りに揺動可能に設けられている。この第2スキャナ7は、第1スキャナ5により走査されたビームを反射し、第1スキャナ5による走査方向に対して直交する方向、すなわち、Y方向に走査するようになっている。
【0029】
これらの第1スキャナ5および第2スキャナ7は、制御部9の作動により、偏向素子1によって偏向する方向の切替タイミングに同期して揺動するようになっている。これにより、第1スキャナ5および第2スキャナ7は、偏向素子1により偏向する方向の切替タイミングに応じて、順次入射されるビームを常に試料の一定の範囲において2次元的に走査させるようになっている。
【0030】
次に、本実施形態に係る光走査装置10の作用について説明する。
本実施形態に係る光走査装置10によりビームを高速で走査するには、まず、偏向素子1により、光源2から発せられたビームを第1光路LAから第4光路LDまで順に高速で切り替えながら偏向する。
【0031】
偏向素子1により高速で切り替えられながら光路LA,LB,LC,LDに偏向される各ビームは、それぞれミラーアレイ3の角度設定ミラー13A,13B,13C,13Dに順次入射される。そして、角度設定ミラー13A〜13Dにより同一平面上における相対的な角度が付与されて各ビームは反射され、第1スキャナ5の同一箇所に順次入射される。
【0032】
第1スキャナ5の同一箇所に光路LA〜LDごとに同一平面上における異なる角度で順次入射させられる各ビームは、第1スキャナ5が軸線回りに揺動することによりX方向に順次走査され、第2スキャナ7がそれに直交する軸線回りに揺動することによりY方向にずらされていく。これにより、第1スキャナ5および第2スキャナ7によってビームが2次元的に走査される。
【0033】
この場合において、制御部9の作動により、偏向素子1によって偏向する方向の切替タイミングに同期して第1スキャナ5および第2スキャナを揺動させることで、各角度設定ミラー13A〜13Dから相互に異なる入射角度で第1スキャナ5に入射されるビームごとに、第1スキャナ5および第2スキャナ7への入射角度に応じて時間間隔をあけて同一範囲を2次元的に順次走査される。
【0034】
具体的には、図1(a),(b)に示すように、偏向素子1により光路LAに偏向されたビームは、ミラーアレイ3の角度設定ミラー13Aにより反射されて第1スキャナ5および第2スキャナ7により試料(図示略)の一定の範囲を2次元的に走査される。同様にして、図2(a),(b)に示すように、偏向素子1により光路LB,LC、LDに偏向されたビームもそれぞれミラーアレイ3の角度設定ミラー13B,13C,13Dにより反射され、第1スキャナ5および第2スキャナ7の同一箇所に入射されて試料の同一範囲を走査される。これにより、試料上の一定の範囲を偏向素子1の切替タイミングに応じて高速でビームが2次元的に走査される。図2(a),(b)は、偏向素子1により光路LDに偏向されたビームを示している。
【0035】
以上、本実施形態に係る光走査装置10によれば、第1スキャナ5および第2スキャナ7により、偏向素子1により偏向する方向の切替タイミングに同期して各ビームを走査することで、偏向素子1によりビームを偏向する方向を高速で切り替えるだけで、ビームスプリッタによりビームを複数の光路に分岐して絞りを通過したもののみを利用する場合と比較して、ビームの利用効率を低減することなく走査速度の向上を図ることができる。
【0036】
本実施形態は以下のように変形することができる。
本実施形態においては、角度設定部として複数の角度設定ミラー13を備えるミラーアレイ3を例示して説明したが、第1変形例としては、図3〜5に示すように、角度設定部22が、4つの角度設定ミラー13A〜13Dの角度設定が異なる複数の角度設定ミラー群23と、偏向素子1により偏向されたビームを反射して角度設定ミラー群23の角度設定ミラー13A〜13Dに入射させる複数の反射ミラー25A〜25Dとの組を複数組備えることとしてもよい。本実施形態においては、例えば、角度設定部22が、角度設定ミラー群23と反射ミラー25A〜25Dとの組を4組備えることとする。
【0037】
この場合、例えば、図3に示すように、各角度設定ミラー13A〜13Dの傾斜角度が最も大きいものを1倍用の角度設定ミラー群23Aとし、図4に示すように、各角度設定ミラー13A〜13Dの傾斜角度が若干小さくしたものを2倍用の角度設定ミラー群23Bとし、各角度設定ミラー13A〜13Dの傾斜角度がさらに小さくしたものを3倍用の角度設定ミラー群(図示略)とし、図5に示すように、各角度設定ミラー13A〜13Dの傾斜角度が最も小さいものを4倍用の角度設定ミラー群23Dとする。
【0038】
また、角度設定ミラー群23A〜23Dおよび反射ミラー25A〜25Dの組ごとに、角度設定ミラー13A〜13Dにより反射したビームが第1スキャナ5上の同一箇所に集合するように、第1スキャナ5からの距離が異なる位置に択一的に挿脱可能に設けられていることとすればよい。
【0039】
具体的には、第1スキャナ5に対して、最も近接した位置に角度設定ミラー群23Aおよび反射ミラー25Aの組が挿脱可能に設けられ、若干離間した位置に角度設定ミラー群23Bおよび反射ミラー25Bの組が挿脱可能に設けられ、さらに離間した位置に3倍用の角度設定ミラー群および反射ミラーの組(図示略)が挿脱可能に設けられ、最も離間した位置に角度設定ミラー群23Dおよび反射ミラー25Dの組が挿脱可能に設けられている。
【0040】
このようにすることで、択一的に挿入する角度設定ミラー群23A〜23Dおよび反射ミラー25A〜25Dの組を変えることにより、角度設定ミラー13A〜13Dの角度に応じて第1スキャナ5および第2スキャナ7へのレーザ光の入射角度を変更することができる。
【0041】
ここで、第1スキャナ5および第2スキャナ7の揺動範囲を狭くすると、第1スキャナ5および第2スキャナ7により走査されたビームが照射される試料の画像上における倍率が大きくなり(ズーム)、第1スキャナ5および第2スキャナ7の揺動範囲を広くすると、第1スキャナ5および第2スキャナ7により走査されたビームが照射される試料の画像上における倍率が小さくなる。
【0042】
例えば、図3に示すように、第1スキャナ5および第2スキャナ7の揺動範囲を最も大きくすることで、試料の1倍の画像が取得することができる。この場合において、角度設定ミラー群23Aおよび反射ミラー25Aの組を挿入することで、第1スキャナ5および第2スキャナ7の揺動角度に合わせて大きな入射角度で、偏向素子1からのビームを第1スキャナ5および第2スキャナ7に入射させることができる。
【0043】
同様にして、図4に示すように、第1スキャナ5および第2スキャナ7の揺動範囲を若干小さくすることで、例えば、試料の2倍の画像が取得することができる。この場合において、角度設定ミラー群23Bおよび反射ミラー25Bの組を挿入することで、第1スキャナ5および第2スキャナ7の揺動角度に合わせて若干小さくした入射角度で、向素子1からのビームを第1スキャナ5および第2スキャナ7に入射させることができる。
【0044】
同じく、第1スキャナ5および第2スキャナ7の揺動範囲をさらに小さくすることで、例えば、試料の3倍の画像が取得することができ、この場合において、角度設定ミラー群および反射ミラーの組を挿入することで、第1スキャナ5および第2スキャナ7の揺動角度に合わせてさらに小さくした入射角度で、偏向素子1からのビームを第1スキャナ5および第2スキャナ7に入射させることができる。
【0045】
そして、図5に示すように、第1スキャナ5および第2スキャナ7の揺動範囲を最も小さくすることで、例えば、試料の4倍の画像が取得することができる。この場合において、角度設定ミラー群23Dおよび反射ミラー25Dの組を挿入することで、第1スキャナ5および第2スキャナ7の揺動角度に合わせて最も小さい入射角度で、偏向素子1からのビームを第1スキャナ5および第2スキャナ7に入射させることができる。
【0046】
したがって、第1スキャナ5および第2スキャナ7の揺動角度に合わせて、択一的に挿入する角度設定ミラー群23A〜23Dおよび反射ミラー25A〜25Dの組を変えるだけの簡易な構成により、偏向素子1によるビームの偏向動作は通常のままで、第1スキャナ5および第2スキャナ7によるズーム機能を実現することができる。
【0047】
第1変形例においては、角度設定部4が、複数の角度設定ミラー群23A〜23Dおよび複数の反射ミラー25A〜25Dを備えることとしたが、第2変形例としては、図6,7に示すように、角度設定部32が、複数の角度設定ミラー13が備えられた角度設定ミラー群33と、偏向素子1により偏向されたビームを反射して角度設定ミラー群33の角度設定ミラー13A〜13Dに入射させる反射ミラー35とをそれぞれ1つずつ備えることとしてもよい。
【0048】
この場合、各角度設定ミラー13A〜13Dの角度および角度設定ミラー13A〜13Dどうしの距離を手動または自動により変更することができ、角度設定ミラー群33が、角度設定ミラー13A〜13Dと第1スキャナ5との距離が近接または離間する方向に移動可能に設けられていることとすればよい。
【0049】
また、反射ミラー35が、偏向素子1により偏向されたビームの光路上に、光路に沿う方向に移動可能、または、第1スキャナ5の軸線に平行な他の軸線回りに揺動可能に設けられていることとすればよい。
【0050】
このようにすることで、角度設定ミラー群33を角度設定ミラー13A〜13Dと第1スキャナ5との距離が近接または離間する方向に移動させるとともに、反射するビームに対して光路ごとに同一平面上における相対的な角度を付与して第1スキャナ5の同一箇所に集合させるように、角度設定ミラー13A〜13Dの角度を調節することにより、第1スキャナ5および第2スキャナ7の揺動角度に合わせた入射角度で第1スキャナ5および第2スキャナ7にビームを入射させることができる。したがって、第1スキャナ5および第2スキャナ7の揺動角度を変えて試料の画像上における倍率を変動することができる。
【0051】
この場合において、角度設定ミラー群33の位置に合わせて反射ミラー35を移動させたり揺動させたりするだけで、偏向素子1からのビームを角度設定ミラー群33の各角度設定ミラー13A〜13Dに入射させることができる。したがって、偏向素子1によるビームの偏向動作は通常のままで、手間をかけずに第1スキャナ5および第2スキャナ7によるズーム機能を実現することができる。
本変形例に係る角度設定ミラー群33としては、例えば、ディフォーマブルミラー等を用いることとしてもよい。
【0052】
本変形例においては、角度設定部32が、移動可能な角度設定ミラー群33を1つ備えることとしたが、これに代えて、角度設定部が、第1変形例に係る複数の角度設定ミラー群23A〜23Dを択一的に挿脱可能に備えることとしてもよい。
【0053】
このようにすることで、択一的に挿入される角度設定ミラー群23A〜23Dの位置に合わせて、反射ミラー25の位置または向きを変えるだけで、偏向素子1からのビームを反射ミラー25および角度設定ミラー群23A〜23Dを介して、第1スキャナ5および第2スキャナ7の揺動角度に合わせた入射角度で第1スキャナ5に入射させることができる。したがって、部品点数を低減しつつ、偏向素子1によるビームの偏向動作は通常のままで第1スキャナ5および第2スキャナ7によるズーム機能を実現することができる。
【0054】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態に係る光走査装置および走査型顕微鏡装置について、図8を参照して説明する。
本実施形態に係る走査型顕微鏡装置100は、光源2と、光走査装置10と、制御部9と、光走査装置10により走査されたビームを試料Aに照射する観察光学系40と、観察光学系40によりビームが照射された試料Aからの光を検出するフォトダイオード(PD)や光電子倍増管(PMT)等の検出部51と、検出部51により検出された光に基づいて、試料Aの画像を復元する復元部53と、復元された画像を表示する表示部55とを備えている。
以下、第1実施形態に係る光走査装置10と構成を共通する箇所には、同一符号を付して説明を省略する。
【0055】
観察光学系40は、第2スキャナ7により反射されたビームをリレーする瞳投影レンズ41と、瞳投影レンズ41によりリレーされたビームを結像させる結像レンズ43と、結像レンズ43により結像されたビームを試料Aに照射する対物レンズ45とを備えている。
【0056】
復元部53は、検出部51により検出された試料Aからの光と第1スキャナ5および第2スキャナ7によるビームの走査位置とを対応づけて、2次元情報または3次元情報の画像を復元するようになっている。
表示部55は、復元した2次元情報または3次元情報の画像を表示する他、検出部51により検出された各種数値データや画像データを所望の表示内容に変換して表示することができるようになっていてもよい。
【0057】
次に、このように構成された光走査装置10および走査型顕微鏡装置100の作用について説明する。
本実施形態に係る走査型顕微鏡装置100により試料Aを観察するには、まず、光走査装置10により、光源2から発せられたビームを偏向素子1によって進行方向を順に高速で切り替えながら偏向し、反射ミラー25および角度設定ミラー群23を介して、第1スキャナ5によりX方向に走査するとともに第2スキャナ7によりY方向に走査する。
【0058】
具体的には、制御部9の作動により、偏向素子1により偏向する方向の切替タイミングに同期して第1スキャナ5および第2スキャナ7をそれぞれ揺動させることで、偏向素子1により光路が切り替えられた各ビームが、第1スキャナ5によって同一範囲を時間間隔をあけて順次X方向に走査され、さらに、第2スキャナ7によりY方向に一定の速さで走査される。
【0059】
第1スキャナ5および第2スキャナ7により走査された各ビームは、瞳投影レンズ41を介して結像レンズ43により結像され、対物レンズ45により試料Aに照射される。これにより、偏向素子1の切替タイミングに応じて各ビームが試料A上で2次元的に連続して走査される。
【0060】
試料A上でビームが走査されることにより、試料Aの内部で発生した光応答としての信号光である蛍光は、検出部53により検出される。検出部53により蛍光が検出されると、復元部53により試料Aの画像情報が復元されて表示部55に表示される。これにより、表示部55に表示された試料Aの2次元情報または3次元情報の画像により、試料Aの観察を行うことができる。
【0061】
以上説明したように、本実施形態に係る光走査装置10および走査型顕微鏡装置100によれば、光走査装置10により、観察光学系40によって試料Aに照射されるビームを走査速度を向上して試料A上で2次元的に走査させることができる。したがって、検出部51により検出された試料Aからの光に基づいて、試料Aの観察範囲を時間を短縮して観察することができる。
なお、本実施形態においては、角度設定部22を例示して説明したが、これに代えて、第1実施形態に係るミラーアレイ3やその変形例に係る角度設定部32を採用することとしてもよい。
【0062】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。例えば、本発明を上記の各実施形態および変形例に適用したものに限定されることなく、これらの実施形態および変形例を適宜組み合わせた実施形態に適用してもよく、特に限定されるものではない。また、例えば、上記各実施形態においては、偏向素子1によりビームを4つの光路LA,LB,LC,LDに切り替えながら偏向することとしたが、3つ以下の光路に切り替えながら偏向することとしてもよいし、5つ以上の光路に切り替えながら偏向することとしてもよい。
【符号の説明】
【0063】
1 偏向素子
3 ミラーアレイ(角度設定部)
5 スキャナ(揺動ミラー)
10 光走査装置
13 角度設定ミラー
13A,13B,13C,13D 角度設定ミラー
23,33 角度設定ミラー群
25,35 反射ミラー
25A,25B,25D 反射ミラー
40 観察光学系
51 検出部
53 復元部
55 表示部
100 走査型顕微鏡装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射されたレーザ光を所定の切替タイミングで複数の方向に切り替えて偏向可能な偏向素子と、
該偏向素子により偏向されたレーザ光の各光路上に互いに異なる角度で配置された複数の角度設定ミラーを有し、各該角度設定ミラーによって光路ごとにレーザ光を同一平面上における相対的な角度を付与して反射して同一箇所に集合させる角度設定部と、
前記平面に対して垂直な軸線回りに前記切替タイミングに同期して揺動可能に設けられ、前記角度設定部により前記同一箇所に異なる方向から入射させられる各レーザ光を反射して同一の軌跡に沿って走査する揺動ミラーとを備える光走査装置。
【請求項2】
前記角度設定部が、前記複数の角度設定ミラーの角度設定が異なる複数の角度設定ミラー群と、前記偏向素子により偏向されたレーザ光を反射して前記角度設定ミラー群の角度設定ミラーに入射させる複数の反射ミラーとの組を複数組備え、
これらの角度設定ミラー群および反射ミラーの組ごとに、前記角度設定ミラーにより反射したレーザ光を前記揺動ミラー上の同一箇所に集合させるように、該揺動ミラーからの距離が異なる位置に択一的に挿脱可能に設けられている請求項1に記載の光走査装置。
【請求項3】
前記角度設定部が、前記複数の角度設定ミラーの角度設定が異なる複数の角度設定ミラー群と、前記偏向素子により偏向されたレーザ光を反射して前記角度設定ミラー群の角度設定ミラーに入射させる反射ミラーとを備え、
前記角度設定ミラー群が、前記角度設定ミラーにより反射したレーザ光を前記揺動ミラー上の同一箇所に集合させるように、該揺動ミラーからの距離が異なる位置に択一的に挿脱可能に設けられ、
前記反射ミラーが、前記偏向素子からのレーザ光の光路上に該光路に沿う方向に移動可能および/または前記軸線に平行な他の軸線回りに揺動可能に設けられている請求項1に記載の光走査装置。
【請求項4】
前記角度設定部が、前記角度設定ミラーの角度および該角度設定ミラーどうしの距離が変更可能に備えられた角度設定ミラー群と、前記偏向素子により偏向されたレーザ光を反射して前記角度設定ミラー群の角度設定ミラーに入射させる反射ミラーとを備え、
前記角度設定ミラー群が、前記角度設定ミラーと前記揺動ミラーとの距離が近接または離間する方向に移動可能に設けられ、
前記反射ミラーが、前記偏向素子により偏向されたレーザ光の光路上に該光路に沿う方向に移動可能および/または前記軸線に平行な他の軸線回りに揺動可能に設けられている請求項1に記載の光走査装置。
【請求項5】
前記揺動ミラーにより走査された前記レーザ光を該揺動ミラーによる走査方向に対して直交する方向に走査する他の揺動ミラーを備える請求項1から請求項4のいずれかに記載の光走査装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載の光走査装置と、
該光走査装置により走査された前記レーザ光を試料に照射する観察光学系と、
該観察光学系により前記レーザ光が照射された前記試料からの光を検出する検出部とを備える走査型顕微鏡装置。
【請求項7】
前記検出部により検出された前記試料からの光と前記レーザ光の走査位置とを対応づけて2次元情報または3次元情報として復元する復元部と、
該復元部により復元された前記2次元情報または3次元情報を表示する表示部とを備える請求項6に記載の走査型顕微鏡装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−113992(P2013−113992A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−259278(P2011−259278)
【出願日】平成23年11月28日(2011.11.28)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】