説明

光走査装置及び画像形成装置

【課題】異なる波長のレーザー光を出射する光源、又は異なる方式の光源に付け替えても感光体ドラム上の光量分布の均一性を保つこと。
【解決手段】ポリゴンミラーの反射面を構成する金属層の各膜厚について、反射面の主走査方向の各位置における赤色波長領域及び赤外波長領域のレーザー光のS偏光成分及びP偏光成分の反射率をそれぞれ測定する。そして、測定した反射率の最大反射率と最小反射率の差が等しく、最大反射率と最小反射率の差の和が最小であるときの膜厚をポリゴンミラーの金属層の膜厚として採用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源から出射された光をポリゴンミラーを用いて像担持体の主走査方向に走査することによって静電潜像を形成する光走査装置及び画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置に用いられている光走査装置は、光源とポリゴンミラーを有し、光源を出射したレーザー光が、回転駆動しているポリゴンミラーに反射して感光体ドラムの主走査方向に走査することによって感光体ドラム上に静電潜像を形成する。
【0003】
ポリゴンミラーの各面は鏡面になっており、回転しながら面ごとにレーザー光を反射して主走査方向に走査する。そして、感光体ドラムに十分な光量のレーザー光を照射するために、ポリゴンミラーの反射率は主走査方向に対して均一とする等、鏡面はレーザー光に最適な反射特性である必要がある(特許文献1〜4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−51223号公報
【特許文献2】特開2001−337285号公報
【特許文献3】特開2007−156248号公報
【特許文献4】特開2009−25738号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的に、ポリゴンミラーは、材質としてアルミニウム、プラスチック、ガラス等が用いられ、鏡面に蒸着膜や陽極酸化膜を施すことによって反射率を増加させたり、酸化(錆)を防止したりしている。また、レーザー光の鏡面での反射率は、所定の波長のレーザー光にのみ最適化されているのが一般的である。言い換えると、所定の波長のレーザー光を鏡面で反射させて感光体ドラムに照射させたときの感光体ドラム上における光量分布が均一になるように鏡面の反射率が調整されている。
【0006】
その為、所定の波長のレーザー光にのみ最適化されているポリゴンミラーに所定の波長以外のレーザー光を照射した場合、鏡面の反射特性が異なってくるため、感光体ドラム上の光量分布の均一性がなくなり、良好な画質の画像を形成できない。つまり、所定の波長のレーザー光にのみ最適化されているポリゴンミラーは、所定の波長以外のレーザー光を出射する光源と共に用いることができなかった。また、1つの発光部で構成されたシングルビーム方式の光源と複数の発光部で構成されたマルチビーム方式の光源についても、鏡面の反射特性が各光源によって異なるため、1つのポリゴンミラーを2つの方式の光源が共有することは困難であった。
【0007】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたもので、異なる波長のレーザー光を出射する光源、又は異なる方式の光源に付け替えても感光体ドラム上の光量分布の均一性を保つことができる光走査装置及び画像形成装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明の光走査装置は、レーザー光を出射する発光部を1つ有するシングルビーム方式、又は前記発光部を複数有するマルチビーム方式であり、前記マルチビーム方式の場合は当該発光部の光軸周りに予め定められた角度回転して取り付けられる光源と、鏡面を有し、当該鏡面で前記光源が出射したレーザー光を反射させて主走査方向に走査する偏向手段と、を備え、前記レーザー光の前記鏡面での前記主走査方向の各位置における反射率の最大反射率と最小反射率の差を特性差とすると、前記鏡面を構成する金属層の膜厚は、前記シングルビーム方式の光源が出射したレーザー光の特性差と前記マルチビーム方式の光源が出射したレーザー光の特性差が等しい、又は前記2つの特性差の和が最小となる膜厚とする。
【0009】
この構成によれば、シングルビーム方式又はマルチビーム方式の何れの光源を用いても、鏡面の主走査方向の各位置におけるレーザー光の反射率の分布をほぼ均一に抑えることができる。つまり、シングルビーム方式又はマルチビーム方式の何れの光源を用いて光走査装置を構成しても、照射対象物上での光量のバラツキを抑えることができる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の光走査装置であって、前記発光部は赤色波長領域又は赤外波長領域のレーザー光を出射するものであり、前記金属層の膜厚は、シングルビーム方式であって前記発光部が赤色波長領域のレーザー光を出射する光源が出射したレーザー光の特性差、シングルビーム方式であって前記発光部が赤外波長領域のレーザー光を出射する光源が出射したレーザー光の特性差、マルチビーム方式であって前記発光部が赤色波長領域のレーザー光を出射する光源が出射したレーザー光の特性差、マルチビーム方式であって前記発光部が赤外波長領域のレーザー光を出射する光源が出射したレーザー光の特性差のうち、少なくとも2つの前記特性差が等しく且つ前記4つの特性差の和が最小、又は前記4つの特性差の和が最小となる膜厚とする。
【0011】
この構成によれば、赤色波長領域、赤外波長領域のシングルビーム方式又はマルチビーム方式の何れの光源を用いても、鏡面の主走査方向の各位置におけるレーザー光の反射率の分布をほぼ均一に抑えることができる。つまり、何れの光源を用いて光走査装置を構成しても、照射対象物上での光量のバラツキを抑えることができる。
【0012】
従って、赤色波長領域、赤外波長領域のレーザーダイオードを用いたシングルビーム方式又はマルチビーム方式の4種類の光源にて同じ光走査装置を共有することができ、装置の組み立て工程やコストを削減することができる。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の光走査装置であって、前記金属層の膜厚は、赤色波長領域のレーザー光のS偏光成分の特性差、赤色波長領域のレーザー光のP偏光成分の特性差、赤外波長領域のレーザー光のS偏光成分の特性差、赤外波長領域のレーザー光のP偏光成分の特性差のうち、少なくとも2つの前記特性差が等しく且つ前記4つの特性差の和が最小、又は前記4つの特性差の和が最小となる膜厚とする。
【0014】
シングルビーム方式の光源が出射するレーザー光と、マルチビーム方式の光源が出射するレーザー光とでは、S偏光成分とP偏光成分の割合が異なる。そこで、赤色波長領域のレーザー光のS偏光成分の特性差、赤色波長領域のレーザー光のP偏光成分の特性差、赤外波長領域のレーザー光のS偏光成分の特性差、赤外波長領域のレーザー光のP偏光成分の特性差を測定し、鏡面の金属層の膜厚を少なくとも2つの特性差が等しく且つ4つの特性差の和が最小、又は4つの特性差の和が最小となる膜厚とすることで、レーザー光のS偏光成分とP偏光成分の割合が変わっても(つまり、赤色波長領域、赤外波長領域のシングルビーム方式又はマルチビーム方式の何れの光源を用いても)、鏡面の主走査方向の各位置におけるレーザー光の反射率の分布をほぼ均一に抑えることができる。つまり、何れの光源を用いて光走査装置を構成しても、照射対象物上での光量のバラツキを抑えることができる。
【0015】
請求項4に記載の発明は、請求項1又は2に記載の光走査装置であって、前記マルチビーム方式の光源は、前記複数の発光部が一列に配置され、前記発光部の列に沿う方向と、前記主走査方向とが交差する角度は80°以上90°以下の範囲である。
【0016】
この構成によれば、主走査方向と直交する方向である副走査方向の解像度(照射対象物における副走査方向に沿った所定範囲内においてレーザー光が照射できるドットの数)を調整できる。
【0017】
請求項5に記載の発明の画像形成装置は、像担持体と、前記像担持体に画像データに基づいたレーザー光を照射する光走査装置と、を備え、前記光走査装置は請求項1〜4の何れか一項に記載のものである。
【0018】
この構成によれば、偏向手段を反射するレーザー光の光量分布がほぼ均一であるため、像担持体上での光量のバラツキを抑えることができる。従って、光走査装置に搭載される光源の方式が異なっても、画質悪化を防ぐことができる。
【発明の効果】
【0019】
この発明によれば、シングルビーム方式又はマルチビーム方式、或いは赤色波長領域又は赤外波長領域のレーザー光を出射する発光部を有する複数種類の光源のうち、光走査装置が何れの光源を搭載しても、鏡面の主走査方向におけるレーザー光の反射率をほぼ均一にすることができる。従って、何れの種類の光源を用いても像担持体上の光量のバラツキを抑え、画質悪化を抑えることができる。
【0020】
また、赤色波長領域、赤外波長領域のレーザーダイオードを用いたシングルビーム方式又はマルチビーム方式の4種類の光源にて同じ光走査装置を共有することができ、装置の組み立て工程やコストを削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】画像形成装置の内部構造の概略図。
【図2】ポリゴンミラーの反射面にレーザー光を照射した状態を示す模式図。
【図3】レーザー光の照射制御系を示すブロック図。
【図4】光源の外観図。
【図5】赤色波長領域のレーザー光を出射するレーザーダイオードを有するシングルビーム方式の光源とマルチビーム方式の光源を用いたときの、反射面の金属層の膜厚に対する反射面の主走査方向の各位置における反射率の最大反射率と最小反射率の差を示したグラフ。
【図6】赤色波長領域、赤外波長領域のレーザー光を出射するレーザーダイオードを有するシングルビーム方式の光源とマルチビーム方式の光源を用いたときの、反射面の金属層の膜厚に対する反射面の主走査方向の各位置における反射率の最大反射率と最小反射率の差を示したグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明に係る光走査装置を備えた画像形成装置の内部構成を概略的に示す図である。尚、本実施の形態では、画像形成装置としてプリンターを例に説明するが、この他にコピー機、ファクシミリ機、これら複数の機能を備えた複合機等、電子写真方式を採用した画像形成装置であればよい。また、本実施の形態で説明する画像形成装置はカラープリンターであるが、モノクロプリンターであっても構わない。
【0023】
画像形成装置1は、マゼンタ(M)、シアン(C)、イエロー(Y)及びブラック(K)の各色別の画像形成部2(2M、2C、2Y及び2K)を含むタンデム式のカラープリンターである。各画像形成部2M、2C、2Y及び2Kは、現像装置3、帯電器5、光走査装置6、トナー供給部7、クリーナー21及び1次転写ローラー9を含む。
【0024】
トナー供給部7は、マゼンタ、シアン、イエロー及びブラックの各色のトナーを貯蔵する。現像装置3は、トナー供給部7から供給されるトナーを感光体ドラム(像担持体)4に供給する。
【0025】
感光体ドラム4は、後述する転写ベルト8の下方に位置し、転写ベルト8の外表面に接触した状態で配設されている。転写ベルト8の回転方向Bの上流側から、マゼンタ用感光体ドラム4、シアン用感光体ドラム4、イエロー用感光体ドラム4、及びブラック用感光体ドラム4が並設されている。また、感光体ドラム4は、a−Si(アモルファスシリコン)等から構成され、図1における時計回りの方向(図示のA方向)に回転する。
【0026】
感光体ドラム4の対向する位置には、1次転写ローラー9が転写ベルト8の内表面に接触した状態で転写ベルト8を介して配置されている。1次転写ローラー9は、転写ベルト8の回転により従動回転するローラーであり、感光体ドラム4とで転写ベルト8をニップして、感光体ドラム4に形成された各色のトナー像を転写ベルト8に1次転写させる1次転写部Tを構成する。1次転写部Tにおいて、転写ベルト8に各色のトナー像が多重転写される。これにより、転写ベルト8にはカラーのトナー像が形成される。
【0027】
帯電器5は、感光体ドラム4の周面を一様に帯電する。光走査装置6は、外部装置から送信された画像データに基づくレーザー光を感光体ドラム4の周面に導くポリゴンミラー(偏向手段)28を有している。ポリゴンミラー28は、後述するモーター32によって回転しつつ、各感光体ドラム4の周面上にレーザー光を主走査方向に走査して、各周面に静電潜像を形成する。尚、主走査方向とは、レーザー光が感光体ドラム4の長手方向に走査される方向である。ポリゴンミラー28は複数の感光体ドラム4間で共用されている。
【0028】
現像装置3は感光体ドラム4にトナーを供給する。これにより、静電潜像にトナーが付着され、感光体ドラム4にトナー像が形成される。クリーナー21は、各感光体ドラム4の周面上に配置され、周面上の残留トナー等を除去する。
【0029】
転写ベルト8は、感光体ドラム4の列の上方に配置されると共に、外表面が感光体ドラム4の周面に接触した状態となるように、従動ローラー10と駆動ローラー11との間に張設されている。また、転写ベルト8は、テンションローラー19によって上方に付勢されている。駆動ローラー11は、図略の駆動源による駆動力を受けて回転して、転写ベルト8を回転駆動させる。従動ローラー10は、転写ベルト8の回転によって従動回転する。これにより、転写ベルト8はB方向(反時計回りの方向)に回転する。
【0030】
また、転写ベルト8は、駆動ローラー11に巻回されている部位が屈曲した状態となっており、この屈曲部位は、転写ベルト8に1次転写されたトナー像が用紙Pに2次転写される2次転写位置P1として設定されている。この2次転写位置P1には、転写ベルト8を介して駆動ローラー11に対向する2次転写ローラー18が設けられている。2次転写ローラー18は、駆動ローラー11との間でニップを形成して、該ニップを通過する用紙Pに、転写ベルト8の外表面上のトナー像を2次転写する。
【0031】
2次転写位置P1の下方には、一対のレジストローラー17が配設されている。レジストローラー17は、用紙Pを2次転写位置P1に向けて適切なタイミングで搬送すると共に、用紙Pの斜め送りを修正する。
【0032】
2次転写位置P1の上方には、2次転写位置P1でトナー像の2次転写が施された用紙Pに対して定着処理を施す定着装置14が設けられている。定着装置14は、加熱ローラー14aと加圧ローラー14bを有しており、この1対のローラーが定着ニップ部NPを形成している。用紙Pが定着ニップ部NPを通過することによって、加熱ローラー14aが用紙Pを加熱しつつ、加圧ローラー14bが用紙Pを押圧することによって、2次転写されたトナー像が用紙P上に定着する。
【0033】
光走査装置6の下方位置には、用紙束を収納する給紙カセット12が配置されている。給紙カセット12と2次転写位置P1との間には、用紙Pを給紙カセット12から2次転写位置P1まで用紙Pを案内する用紙搬送路13が設けられている。用紙搬送路13には、上述のレジストローラー17が配設されている。また、用紙搬送路13には、レジストローラー17の他に、用紙Pを案内するための複数のローラー対が適所に配設されている。
【0034】
加熱ローラー14a及び加圧ローラー14bは、用紙Pが定着ニップ部NPを通過した後、排出ローラー対151に向けて搬送する。画像形成装置1の上面には、定着装置14によって定着処理が施された用紙Pが排出される排出部16が形成されており、この排出部16と定着装置14との間には、用紙Pを案内するための用紙排出路15が設けられている。用紙Pは排出ローラー対151の駆動によって用紙排出路15に搬送され、排出部16に排出される。
【0035】
図2は、ポリゴンミラー28の反射面(鏡面)282にレーザー光LBを照射した状態を示す模式図である。図3は、レーザー光の照射制御系を示すブロック図である。図4は、光源31の外観図である。尚、図3ではコリメータレンズ及びfθレンズ等の光学部品については図示を省略している。
【0036】
レーザー光生成部30は、レーザー光LBを発光する光源31及び光源31を駆動する駆動回路等から構成される。
【0037】
光源31としては、例えば半導体レーザーが用いられる。本発明における光走査装置6が備える光源としては、先端面Yに1つのレーザーダイオードLDを備えたシングルビーム方式の光源(図4(a))、又は先端面Yに複数のレーザーダイオードLD1及びLD2を備えたマルチビーム方式の光源(図4(b))の何れの方式の光源であってもよい。
【0038】
マルチビーム方式の光源31の場合、レーザーダイオードLD1及びLD2が先端面Yに一定間隔で1列に配列されてなり、先端面Yに対する法線のうち中央を通る法線Gを回転軸として矢印Xの方向に回転されて光走査装置6の所定位置に配設される。具体的には、各レーザーダイオードLD1及びLD2が出射したレーザー光が感光体ドラム135の周面を照射した際に、その照射位置(結像位置)の配列方向が、レーザーダイオードLD1及びLD2を結ぶ線が主走査方向に対して所定の傾斜角度(例えば、80°〜90°)を有するように光源31がX方向に回転されて配置される。こうすることで、副走査方向の解像度を調整できる。通常、装置の仕様に合わせて副走査方向のピッチが決定され、この決定により主走査方向のピッチが決定される。
【0039】
尚、図4(b)では、マルチビーム方式の光源として2個のレーザーダイオードを備えた場合について図示するが、当該光源が備えるレーザーダイオードは2個以上であってもよい。
【0040】
また、本発明における光走査装置6に搭載される光源31に配置されるレーザーダイオードは、赤色波長領域(660nm〜680nm)又は赤外波長領域(770nm〜790nm)のレーザー光を出射するものとする。つまり、光走査装置6は赤色波長領域又は赤外波長領域のレーザーダイオードを用いたシングルビーム方式の光源、若しくは赤色波長領域又は赤外波長領域のレーザーダイオードを用いたマルチビーム方式の光源の合計4種類の光源を付け替え可能である。光走査装置6に何れの種類の光源を搭載させるかは、回路設計時に決定され、決定した光源が回路組み立て時に組み付けられる。
【0041】
ポリゴンミラー28は、モーター32の駆動によって回転軸281を中心に矢印R1の方向に回転し、レーザー光生成部30で生成されたレーザー光LBを反射する。ポリゴンミラー28は、例えば正六角形の側面を有しており、6個の側面が反射面282に相当する。
【0042】
露光制御部303は、レーザー光生成部30にレーザー光LBを照射させて感光体ドラム4に静電潜像を描画させる制御をする。即ち、露光制御部303は、モーター32によりポリゴンミラー28を回転させながら、記憶部301に記憶されている画像データをレーザー光生成部30に送り、レーザー光生成部30にレーザー光LBを出射させる。光源31が出射したレーザー光LBは、回転するポリゴンミラー28を照射し、反射面282で偏向されて、感光体ドラム4上に走査ラインSLを主走査方向D1に描画する。1つの反射面282で1本の走査ラインSLが描画される。こうして回転する感光体ドラム4に1本の走査ラインSLの描画を繰り返すことにより、副走査方向に沿って静電潜像が描画される。副走査方向は感光体ドラム4の回転方向R2に対応している。
【0043】
図3に示すように、タイミング信号生成部305は、BD(Beam Detect)センサー27及びBD信号変換部29を備える。レーザー光LBは、感光体ドラム4の主走査方向D1の寸法よりも長い走査範囲内において、主走査方向D1に繰り返し走査される。BDセンサー27はその走査範囲のうち、レーザー光LBが感光体ドラム4の走査を開始する前にレーザー光LBを受光する位置に設置されている。
【0044】
BDセンサー27はフォトセンサーであり、反射面282で反射されたレーザー光LBを受光すると、その受光信号をBD信号変換部29に出力する。BD信号変換部29は、その受光信号を矩形波のタイミング信号BDに整形し、タイミング信号BDを露光制御部303に出力する。
【0045】
タイミング信号BDは、感光体ドラム4に静電潜像を描画する際の主走査方向D1の書き出し位置を揃えるための基準となる信号である。露光制御部303は、タイミング信号BDを基準として、レーザー光生成部30に対するレーザー光LBを出射させる指示を行う。
【0046】
レーザー光LBの反射面282での反射率は、レーザー光LBが感光体ドラム4上に結像されたときの光量分布が均一になるように調整される必要がある。これは、感光体ドラム4上においてレーザー光LBの光量にバラツキがあると、形成される画像に色ムラが発生し、画質悪化の原因となるためである。光走査装置6は複数の種類の光源が付け替え可能であるため、何れの種類の光源を用いても、反射面282での主走査方向の各点における反射率をできるだけ均一にするよう反射面282の特性を調整する。こうすることで何れの光源を用いても感光体ドラム4上におけるレーザー光LBの光量のバラツキを抑えることができる。
【0047】
反射面282の反射率を調整する手段として、反射面282に成膜される金属層の膜厚を変化させる方法を用いる。最適な膜厚を導出する方法として、金属層の各膜厚について、反射面282の主走査方向の各位置における赤色波長領域のレーザー光のS偏光成分の反射率と赤外波長領域のレーザー光のS偏光成分の反射率を測定し、各膜厚における主走査方向各位置の反射率の最大値と最小値の差(以下、この差を「特性差」という)を算出する。そして、S偏光成分とP偏光成分の特性差が等しい、又は2つの特性差の和が最小であるときの膜厚を、光量分布の抑制が可能な最適な膜厚とする。
【0048】
ここで、最適な膜厚の導出にレーザー光のS偏光成分とP偏光成分の反射率を用いる理由を説明する。レーザー光が反射面282に入射するときの光の成分は、S偏光成分とP偏光成分とに分けることができる。そして、シングルビーム方式の光源が出射するレーザー光と、マルチビーム方式の光源が出射するレーザー光とでは、S偏光成分とP偏光成分の割合が異なる。更に、マルチビーム方式の光源の場合は、レーザーダイオードLD1とLD2を結ぶ線と主走査方向とが交差する角度(傾斜角度)が異なると、上記割合が異なってくる。
【0049】
そこで、赤色波長領域のレーザー光のS偏光成分とP偏光成分の反射率を測定し、それぞれの特性差を算出する。レーザー光はS偏光成分とP偏光成分に区別されるのだから、算出された特性差は、レーザー光のS偏光成分とP偏光成分の割合が変わっても、即ち、シングルビーム方式又はマルチビーム方式の何れの光源を用いても同じとなる。従って、赤色波長領域のレーザー光のS偏光成分とP偏光成分の反射率からそれぞれの特性差を算出し、2つの特性差が等しい又は2つの特性差の和が最小となるときの膜厚は、赤色波長領域のレーザー光を出射するシングルビーム方式、マルチビーム方式のそれぞれの光源にとっても最適な膜厚となる。
【0050】
図5は、金属層の膜厚に対する赤色波長領域のレーザー光のS偏光成分とP偏光成分の特性差を示したグラフである。グラフL1はS偏光成分、グラフL2はP偏光成分のグラフである。
【0051】
図5に示すように、グラフL1が最小になる膜厚は190nmである。一方、グラフL2が最小となる膜厚は140nm又は310nmである。しかし、膜厚190nmのときにグラフL1が最小(0.5%)であってもグラフL2が示す反射率は5.5%であり、マルチビーム方式の光源を用いたときの反射率にばらつきが出てしまう。同様に、膜厚140nmのときにグラフL2が最小(1.2%)であってもグラフL1が示す反射率は7%であり、シングルビーム方式の光源を用いたときの反射率にばらつきが出てしまう。
【0052】
そこで、グラフL1とグラフL2の交点の膜厚、即ちS偏光成分とP偏光成分の特性差が等しいときの膜厚であって、各特性差の和が最小であるときの膜厚(各グラフにおいて交点が存在しないときは、2つの特性差の和が最小であるときの膜厚)を採用する。図5の場合、グラフL1とグラフL2の交点の膜厚は163nmと268nmであり、この2点のうち、特性差の和が小さい方は膜厚163nmである。
【0053】
従って、反射面282の金属層の膜厚を163nmにすることで、赤色波長領域のレーザー光を出射するシングルビーム方式又はマルチビーム方式の何れの光源を用いても、反射面282の主走査方向の各位置における反射率の分布を均一に抑えることができ、感光体ドラム4上での光量分布の均一性を保つことができる。
【0054】
図6は、金属層の膜厚に対する赤色波長領域のレーザー光のS偏光成分とP偏光成分、赤外波長領域のレーザー光のS偏光成分とP偏光成分の特性差を示したグラフである。グラフL1は赤色波長領域のS偏光成分、グラフL2は赤色波長領域のP偏光成分、グラフL3は赤外波長領域のS偏光成分、グラフL4は赤外波長領域のP偏光成分である。
【0055】
4種類の光源に対する金属層の膜厚を決定する際は、少なくとも2つのグラフが交わっており、その交わった点の膜厚における4つの特性差の和が最小であるときの膜厚(グラフの交点が存在しないときは、4つの特性差の和が最小であるときの膜厚)を採用する。図6の場合、上記の条件に合致した膜厚は190nmである。
【0056】
反射面282の金属層の膜厚を190nmにすることで、S偏光成分とP偏光成分の割合が変わったことによる(シングルビーム方式/マルチビーム方式を変えたことによる)、主走査方向における光量分布の均一性に与える影響を小さくできるから、赤色波長領域、赤外波長領域のレーザー光を出射するシングルビーム方式又はマルチビーム方式の4種類の光源のうち、何れの光源を用いても、反射面282の主走査方向の各位置における反射率の分布を均一に抑えることができ、感光体ドラム4上での光量分布の均一性を保つことができる。
【0057】
以上、説明したように、赤色波長領域、赤外波長領域のレーザーダイオードを用いたシングルビーム方式又はマルチビーム方式の4種類の光源について、ポリゴンミラー28の反射面282における反射率を測定し、反射面282の金属層を反射面282の主走査方向における反射率のバラツキを抑えた膜厚とすることにより、何れの種類の光源を用いても感光体ドラム4上の光量のバラツキを抑え、画質悪化を抑えることができる。
【0058】
また、光走査装置6において、単一のポリゴンミラー28にて、赤色波長領域、赤外波長領域のレーザーダイオードを用いたシングルビーム方式又はマルチビーム方式の4種類の光源を搭載させることが可能となるため、部品等を共通化させることができ、組み立て工程やコストを削減することができる。
【符号の説明】
【0059】
1 画像形成装置
2 画像形成部
4 感光体ドラム
6 光走査装置
28 ポリゴンミラー
281 回転軸
282 反射面
27 BDセンサー
29 BD信号変換部
30 レーザー光生成部
31 光源
32 モーター
303 露光制御部
305 タイミング信号生成部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザー光を出射する発光部を1つ有するシングルビーム方式、又は前記発光部を複数有するマルチビーム方式であり、前記マルチビーム方式の場合は当該発光部の光軸周りに予め定められた角度回転して取り付けられる光源と、
鏡面を有し、当該鏡面で前記光源が出射したレーザー光を反射させて主走査方向に走査する偏向手段と、
を備え、前記レーザー光の前記鏡面での前記主走査方向の各位置における反射率の最大反射率と最小反射率の差を特性差とすると、前記鏡面を構成する金属層の膜厚は、前記シングルビーム方式の光源が出射したレーザー光の特性差と前記マルチビーム方式の光源が出射したレーザー光の特性差が等しい、又は前記2つの特性差の和が最小となる膜厚とする光走査装置。
【請求項2】
前記発光部は赤色波長領域又は赤外波長領域のレーザー光を出射するものであり、前記金属層の膜厚は、シングルビーム方式であって前記発光部が赤色波長領域のレーザー光を出射する光源が出射したレーザー光の特性差、シングルビーム方式であって前記発光部が赤外波長領域のレーザー光を出射する光源が出射したレーザー光の特性差、マルチビーム方式であって前記発光部が赤色波長領域のレーザー光を出射する光源が出射したレーザー光の特性差、マルチビーム方式であって前記発光部が赤外波長領域のレーザー光を出射する光源が出射したレーザー光の特性差のうち、少なくとも2つの前記特性差が等しく且つ前記4つの特性差の和が最小、又は前記4つの特性差の和が最小となる膜厚とする請求項1に記載の光走査装置。
【請求項3】
前記金属層の膜厚は、赤色波長領域のレーザー光のS偏光成分の特性差、赤色波長領域のレーザー光のP偏光成分の特性差、赤外波長領域のレーザー光のS偏光成分の特性差、赤外波長領域のレーザー光のP偏光成分の特性差のうち、少なくとも2つの前記特性差が等しく且つ前記4つの特性差の和が最小、又は前記4つの特性差の和が最小となる膜厚とする請求項1に記載の光走査装置。
【請求項4】
前記マルチビーム方式の光源は、前記複数の発光部が一列に配置され、前記発光部の列に沿う方向と、前記主走査方向とが交差する角度は80°以上90°以下の範囲である請求項1又は2に記載の光走査装置。
【請求項5】
像担持体と、
前記像担持体に画像データに基づいたレーザー光を照射する光走査装置と、
を備え、前記光走査装置は請求項1〜4の何れか一項に記載のものである画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−88589(P2013−88589A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−228476(P2011−228476)
【出願日】平成23年10月18日(2011.10.18)
【出願人】(000006150)京セラドキュメントソリューションズ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】