説明

光走査装置

【課題】光の走査範囲が広く、且つ、高速な走査を可能とする光走査装置を提供する。
【解決手段】基板と、基板において円周に沿って設けられた複数のレンズと、基板を円周の中心軸線周りに回転させる基板駆動機構と、複数のレンズが通過する軌道上に光を出射する光源部と、を備えるようにした。このような構成により、基板が回転することにより一つのレンズが光源部を横切る度に一次元の光の走査が達成される。また、複数のレンズが基板において円周上に設けられているので、基板を回転させることにより、高速に一次元の光の走査を達成することが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光走査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光を走査する光走査装置には、例えば、特開2004−077906号公報に記載されたようなものがある。従来の光走査装置には、圧電素子により超音波を発生して音響光学効果により光を回折させる音響光学素子を用いたものや、モータによりミラーを駆動させることによりミラーで反射させた光を用いるポリゴンミラー、ガルバノミラー、レゾナントミラー等がある。また、従来の光走査装置には、MEMS技術を用いたミラーデバイス等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−077906号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的に、音響光学素子を用いた光走査装置では、数百KHzといった高速走査が可能であるが、その走査範囲が狭いので、光学系に制限が生じやすい。また、モータ駆動の光走査装置では、走査範囲は広くなるが、走査速度が低速である。
【0005】
本発明は、光の走査範囲が広く、且つ、高速な走査を可能とする光走査装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の光走査装置は、基板、複数のレンズ、基板駆動機構、及び、光源部を備えている。複数のレンズは、基板において円周に沿って設けられている。基板駆動機構は、基板を円周の中心軸線周りに回転させる機構である。光源部は、複数のレンズが通過する軌道上に光を出射するように設けられている。
【0007】
本発明の光走査装置によれば、基板が回転することにより一つのレンズが光源部を横切る度に一次元の光の走査が達成される。また、複数のレンズが基板において円周上に設けられているので、当該基板を回転させることにより、高速に一次元の光の走査を達成することが可能である。また、レンズからの光を別のレンズで拡大することにより、走査範囲を拡大することも可能である。
【0008】
本発明の光走査装置は、光源部を円周の半径方向に移動させる光源駆動機構を更に備えることが好適である。例えば、予め定められた移動パターンに従って光源部を移動させることにより、光の走査位置が高精度に制御され得る。
【0009】
本発明の光走査装置は、光源部から出射され複数のレンズの各々を経た光を分離する光分離素子と、光分離素子からの光を収束させる別のレンズと、別のレンズからの光を受ける受光器と、を更に備えており、光源駆動機構は、所定の走査方向に対する受光器における光の入射位置のずれを補正するように、光源部を移動させることが好適である。この光走査装置によれば、所定の走査方向に対する光の照射位置のずれを自動的に補正することが可能となる。
【0010】
本発明の光走査装置では、受光器が、所定の走査方向に応じて二分割された二つの領域を含んでおり、光源駆動装置は、二つの領域の一方における光の強度と当該二つの領域の他方における光の強度との差異に基づいて、光部源を移動させることが好適である。この差異は簡易な演算により算出し得るので、制御速度を早めることが可能である。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したように、本発明によれば、光の走査範囲が広く、且つ、高速な走査を可能とする光走査装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】一実施形態に係る光走査装置を示す図である。
【図2】図1に示す光走査装置の光走査の原理を説明するための図である。
【図3】別の実施形態に係る基板及び複数のレンズを示す断面図である。
【図4】別の実施形態に係る光走査装置を概略的に示す図である。
【図5】図4に示す受光器の光感応領域を概略的に示す図である。
【図6】一実施形態に係る映像表示装置を示す図である。
【図7】図6に示す映像表示装置の光走査装置に利用される光源部の例を示す図である。
【図8】一実施形態に係るレーザ走査顕微鏡を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、各図面において同一又は相当の部分に対しては同一の符号を付すこととする。
【0014】
図1は、一実施形態に係る光走査装置を示す図である。図1に示す光走査装置10は、基板12、複数のレンズ14、基板駆動機構16、及び、光源部18を備えている。
【0015】
本実施形態の基板12は、光源部18からの光に対して透明の基板であり、円板状の基板である。複数のレンズ14は、基板12における円周Cに沿って略同ピッチで設けられている。以下の説明では、複数のレンズ14をレンズアレイと総称することがある。
【0016】
基板駆動機構16は、スピンドルモータ16a及び支軸16bを有している。支軸16bは、円周Cの中心軸線Zに沿って延びており、基板12を軸支している。支軸16bによって軸支された基板12は、スピンドルモータ16aの回転によって、中心軸線Zを中心に回転する。これによって、複数のレンズ14の各々は、円周C上を回転移動する。
【0017】
なお、レンズ14は、光走査装置10では、凸形状を有しているが、凹形状を有していてもよい。また、レンズ14は、光走査装置10では、基板12の一方の主面に設けられているが、反対側の主面に設けられていてもよい。さらに、レンズ14は、複合レンズであってもよく、非球面レンズのようなレンズを一体成形したものであってもよい。
【0018】
光源部18は、複数のレンズ14が回転移動する軌跡上に向けて光を出射する。光源部18から出射される光は、気体レーザ、発光ダイオード(LED)、若しくはレーザダイオード(LD)から出射される光、又は、これらの出射光を光ファイバで導光した光であってもよい。また、光源部18は、他の光源から発生された光を集光した2次的な光源であってもよいし、平行光を出射してもよい。
【0019】
以下、光走査装置10の光走査の原理について説明する。図2は、図1に示す光走査装置の光走査の原理を説明するための図である。レンズ14の焦点距離よりも内側に物点Aがあると、この物点Aから出た光はレンズ14に入射した後に広がる。この光はあたかもA’点から広がった光と等価になる。すなわち、像点が点A’ということになる。また、物点Bに対しても同様に像点が点B’となる。
【0020】
ここで、物点が光源部18であるものとする。レンズ14の各々は基板12に等間隔で配置されたレンズアレイの一部であるから、スピンドルモータ16aを回転させると、レンズ14に対して、光源部18の位置が相対的に点Aから点Bに連続的に変化したことになる。したがって、光源部18の像点も点A’から点B’まで変化することになる。すなわち、光源部18の位置がA’から点B’まで連続的に移動したことになる。よって、光源部18の位置が上述した物点となるようにレンズ20を配置することにより、レンズ20の像面で点A’’から点B’’まで光源部18を相対的に走査させたことになる。
【0021】
換言すると、光源部18から出射された光は、スピンドルモータ16aの回転に伴い、レンズ14の各々によって角度変化を受ける。このように、光源部18から出射された光がレンズアレイを形成するレンズ14のそれぞれに入射する度に、角度変化が繰り返されることになる。レンズ14は基板12において同一円周上に等間隔で配置されており、基板12の回転に伴い光源部18からの光に対して次々とレンズ14が通過していくことになるので、像点A’’からB’’が次々と形成されることになる。
【0022】
この光走査装置10の光学系の後に配置する光学系により、様々な走査光学系を構成することが可能である。例えば、レンズ20を物点A’及びB’からの光を結像するようなレンズとし、レンズ20の像面位置に光走査装置10の走査方向に対して垂直方向に光を走査するガルバノミラー等の走査系を配置し、この像面を更に別のレンズで結像させることにより、2次元の光の走査が可能になる。
【0023】
また、例えば、レンズ20を物点A’及びB’からの光を平行にするようなレンズとし、別の二つのレンズ(図示せず)により瞳伝達レンズ系を構成すると、レンズ20の主面が伝達される。その伝達位置に光走査装置10の走査方向に対して垂直方向に光を走査するガルバノミラー等の走査系を配置することで、2次元の光の走査が可能になる。
【0024】
また、光源部18をレンズ14の焦点位置に配置することで、レンズ14の主面が平行光を発する位置になるので、別の二つのレンズ(図示せず)により瞳伝達レンズ系を構成すると、レンズ14の主面が伝達される。その伝達位置に光走査装置10の走査方向に対して垂直方向に光を走査するガルバノミラー等の走査系を配置することで、2次元の光の走査が可能になる。この場合、レンズ20の機能がレンズ14に統合されたような結果となる。
【0025】
なお、一般的に、ラスタースキャン及びプログレッシブスキャンともに、水平走査周波数を高くする必要性があり、垂直方向の周波数は低くてよいので、水平走査に光走査装置10の走査系を利用することが好ましい。
【0026】
以下、光走査装置10の性能について説明する。ここで、円周Cの半径を100mmとし、レンズ14の半径を0.5mmとすると、円周Cには628個のレンズを配置することが可能である。また、レンズ14を屈折率1.5の平凸レンズとすると、焦点距離は、1mmとなる。また、レンズ14と光源部18との距離を0.6mmとし、光源部18が、LDの出射光のように出射後に広がりをもって進行する光であって半値全幅で広がり角22°のような光を出射するものとする。この光が倍の角度までレンズに入射するものとしても、ビームのけられのない角度が片側で23°程度になる。したがって、光走査装置10によれば、走査全角で46°で光量ロスのない走査角を得ることが可能である。
【0027】
ここで、レンズ14の個数を314個とし、隣り合う二つのレンズ14に同時に光が入射しないように、レンズ14間の間隔を十分に設けた場合であっても、基板12の回転数を3000rpmとすると、18.8kHzの走査周波数が得られる。また、基板12の回転速度を10000rpmとすると、走査周波数は62kHzとなり、ハイビジョンのレートが達成される。レンズ間隔を更に最適化すれば、フルハイビジョンのレートが余裕をもって達成される。レンズ14の半径を更に小さくして、円周Cの大きさを大きくし、基板12の回転数を上げることで、より高速な走査周波数を得ることも可能である。
【0028】
なお、光走査装置10は、以下の構成をとっていてもよい。例えば、複数の光源部18を用意し、当該複数の光源部18からの光が複数のレンズ14の移動軌跡上の異なる位置に照射されるようにする。そして、複数の光源部18から出射された光線が同一の水平走査線上に至るように光学系を構成することにより、複数の光源部18からの光線の合成が可能となる。例えば、RGBといった異なる波長の光を発する複数の光源部18を用いれば、カラー画像を形成することが可能となる。また、上記複数の光源から走査された光を異なる水平走査線上に配置することで、実質的な水平走査速度を向上させることができる。
【0029】
また、複数の光源部18から走査された光線が異なる水平走査線上に至るように光学系を構成することにより、実質的に水平走査速度を向上させることが可能となる。また、複数のレンズ14を異なる複数の同一円周上に配置して、それぞれの円周上に複数の光源部18からの光線が入射するように構成してもよい。これにより、複数の光源部18からの光線を複数の走査線に対応させることができるので、より高速な走査周波数を実現することができる。この場合には、複数の円周上でのレンズ14の密度が一定となるように、半径の小さい円周上ではレンズ14の径は小さくしておく必要がある。このようにすれば、走査速度は、常に一定となる。
【0030】
以下、基板及び複数のレンズの別の実施形態について説明する。図3は、別の実施形態に係る基板及び複数のレンズを示す断面図である。図3に示す基板12及びレンズ14は、三つ以上の異なる色の光を発する光源部18を用いる場合に有効なものである。図3に示す基板12は、遮光部12a、第1の層12b、第2の層12c、第3の層12d、及び、第4の層12eを有する基板である。
【0031】
遮光部12aは、レンズ14以外の開口部を遮光する。第1の層12bと第2の層12cとは互いに密着しており、第2の層12cと第4の層12eとの間には、空気層である第3の層12dが設けられている。
【0032】
第1の層12b、第2の層12c、及び第4の層12eは、光源部18からの光に対して透明である。レンズ14は、第1の層12b、第2の層12c、第3の層12d、及び、第4の層12eに凹凸を設けることにより作成された複合レンズとなっている。
【0033】
図3に示す基板12及びレンズ14によれば、レンズ14の径よりも大きい平行ビームを照射しても、遮光部12aによりレンズ14の開口のみに光を通過させることができる。基板12を回転させると、平行ビームはレンズ14により集光されるので、平行ビームがレンズ14を通過する間に、(平行ビームの径−レンズ径)とレンズにより絞られたビーム径の比のスポット列が作成できる。したがって、基板12を高速に回転させることで、このスポット列がレンズ個数と回転数の積の周波数で、走査されることになる。
【0034】
また、例えば、第1の層12bをポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)、第2の層12cをポリカーボネート(PC)、第4の層12eをチオウレタン系樹脂で作成すると、これら材料のアッベ数はそれぞれ、58、30、36程度であるので、3色の光に対する色収差を取り除くことができ、且つ、回折限界系のNA0.5程度の合成レンズにすることが可能となる。このような構成によれば、平行光ビーム径を3mm、NAを0.5、レンズ14の径を0.5mm程度とすることにより、2000点の約1μmのスポットができることになる。さらに、基板半径を6cmにすると、レンズ14を125個程度並べることが可能であるので、基板12の回転数を15000rpmにすれば、約31.4kHzの走査周波数を得ることが可能となる。
【0035】
なお、上述した実施形態における基板12を薄くして空気安定化を施すように基板12に近接させてスタビライザを配置することにより、基板12の面ぶれを5μm以下に抑えることができる(例えば、空気安定化したフレキシブルディスクへの高密度光記録:Ricoh Technical Report No.30を参照されたい)。このようにスタビライザを用いることにより、基板12の面ぶれは、焦点距離1mmのレンズの焦点深度内に収めることが十分可能となる。その結果、基板12の面ブレを補正するようなフォーカスサーボは不要となる。
【0036】
また、基板12には、複数のレンズ14が並んでいるので、基板12やレンズ14の構成材料とは異なる材料で、レンズ面を保護材でカバーしてもよい。この場合には、レンズ14による空気の乱流が低減され、基板12の回転がより安定化する。或いは、レンズ14の逆側にダミーの凸凹やレンズ状の凹凸を配置することによって、レンズ14を高速回転することによる空気の乱流を打ち消すようにしてもよい。
【0037】
以下、本発明の光走査装置の別の実施形態について説明する。図4は、別の実施形態に係る光走査装置を概略的に示す図である。図4に示す光走査装置10Aでは、基板12、レンズ14、基板駆動機構16、及び、光源部18は、上述した光走査装置10の対応の要素と同じものである。
【0038】
図4に示すように、光走査装置10Aは、更に、ホルダ22、光源駆動機構24、マウント26、光分離素子28、レンズ30、及び、受光器32を備えている。光源部18は、ホルダ22によって保持されている。このホルダ22は、光源駆動機構24に取付けられている。
【0039】
光源駆動機構24は、駆動素子24a及び制御部24bを有している。ホルダ22は、駆動素子24aを介してマウント26上に支持されている。駆動素子24aは、基板12の上述した円周Cの半径方向に光源部18を移動させる。また、駆動素子24aは、制御部24bによる制御によって光源部18を移動させる。なお、駆動素子24aとしては、圧電素子やボイスコイルモータ等を用いることができる。
【0040】
光分離素子28は、光源部18から出射されてレンズ14及びレンズ20を通った光を、反射及び透過により、二方向に分離する。光分離素子28を透過した光は、ガルバノミラー34に入射する。ガルバノミラー34は、光源部18に共役な集光点列が回転軸と一致するように配置されている。このガルバノミラー34は、スピンドルモータ16aの回転による走査方向に対して垂直方向に光の走査を行う。ガルバノミラー34によって走査された光は、結像レンズ36によって像面IPに結像される。
【0041】
一方、光分離素子28によって反射された光は、集光レンズ30を介して受光器32に入射する。この集光レンズ30は、光のビーム径を最適なサイズとし、当該光を受光器32に導く機能を有している。なお、像面IP上に投影する光の光量を大きくするために、光分離素子28によって反射する光の光量は可能な限り少ない方がよい。
【0042】
図5は、図4に示す受光器の光感応領域を概略的に示す図である。受光器32は、光感応領域を有しており、当該光感応領域に入射する光の光量に応じた信号を生成する領域である。受光器32の光感応領域は、二分割されており、第1の領域32a及び第2の領域32bを含んでいる。光走査装置10では、レンズ14の中心に光源部18からの光が入射するときに、当該光の光軸がレンズ20、光分離素子28、及びレンズ30を経て、第1の領域32aと第2の領域32bの境界32cに入射するようになっている。即ち、第1の領域32aと第2の領域32bの境界32cが、光走査装置10Aの光の理想的な走査方向と同一となるように、受光器32が配置されている。なお、この理想的な走査方向は、図4では、紙面に垂直な方向である。
【0043】
制御部24bは、第1の領域32aに入射する光に基づく信号と第2の領域32bに入射する光に基づく信号との間の差信号を受光器32から得て、この差信号を0とするように、駆動素子24aを制御し、光源部18を円周Cの半径方向に移動させる。例えば、図5の光スポットSP1は、第1の領域32aと第2の領域32bに均等に入射しているので、光源部18の移動は行われない。一方、光スポットSP2及びSP3のように、第1の領域32aと第2の領域32bのうち一方に光が多く入射している場合には、制御部24bは、差信号を0とするように、駆動素子24aへのフィードバックを行う。
【0044】
なお、分解点数を向上させるためにレンズ14を高NAのレンズにする場合には、レンズの焦点深度が浅くなり、基板12の面ブレによる影響が大きくなり、この面ぶれに伴うビーム径の変化が現れる。これを防ぐためには、光源部18とレンズ14との距離を変化させる別のアクチュエーターを更に設置し、集光レンズ30と受光器32を含む光学系に焦点検出ができる光学系(既知の非点収差法や臨界角法等に基づく光学系)の機能を与え、焦点検出信号に基づき当該別のアクチュエーターを制御してもよい。
【0045】
以下、上述した実施形態の光走査装置の応用例について説明する。図6は、一実施形態に係る映像表示装置を示す図である。図6の映像表示装置40は、カラーモニタ又はプロジェクタとして利用可能なものである。
【0046】
映像表示装置40は、光走査装置10、ガルバノミラー34、及び、レンズ36を備えている。映像表示装置40では、ガルバノミラー34、及び、レンズ36は、図4に示したものと同様のものである。したがって、像面IPに対する2次元の光の走査は、図4に示した走査と同様である。また、映像表示装置40では、光走査装置10の代わりに、光走査装置10Aが用いられてもよい。
【0047】
図7は、図6に示す映像表示装置の光走査装置に利用される光源部の例を示す図である。図7に示す光源部18は、光源42R、42G、及び、42B、コリメータレンズ44R、44G、及び、44B、ダイクロイックミラー46及び48、集光レンズ50、並びに光ファイバ52を有している。
【0048】
光源42R、42G、及び、42Bは、それぞれ、赤、緑、青の光を出射する。光源42R、42G、及び、42Bとしては、半導体レーザ、又は、LEDを用いることができる。
【0049】
コリメータレンズ44R、44G、及び、44Bはそれぞれ、光源42R、42G、及び、42Bからの光を平行光束とする。コリメータレンズ44R、44G、及び、44Bを経た三色の光は、ダイクロイックミラー46及び48によって波長合成される。ダイクロイックミラー46及び48は、例えば、誘電体多層膜で構成される。ダイクロイックミラー46は、青色の光を透過し、赤色の光を反射する。また、ダイクロイックミラー48は、緑色の光を反射し、青色及び赤色の光を透過する。これにより、三色の光が合成される。
【0050】
集光レンズ50は、合成された三色の光を光ファイバ52の一端面に光学的に結合する。光ファイバ52は、一端面に入射した光を導波して、当該光を他端面から出射する。他端面から出射された光は、図6に示すようにレンズ14に入射する。なお、光源部18は、光ファイバ52を用いずに、光ファイバの入射位置にレンズ14が位置するように配置されていてもよい。しかしながら、光ファイバ52を用いると、光源部18と基板12とを空間的に離しておくことができるので、光源部18や基板12の配置が容易であり、モータ16aの回転に伴う振動等の影響を光源部18が受けることがないといった利点がある。
【0051】
映像表示装置40は、処理部54によって映像信号に基づき、スピンドルモータ16aへの水平走査信号とガルバノミラーの垂直走査信号とを同期させ、光源部18の各光源を変調することによって、映像を表示することができる。この映像表示装置40は、光走査装置10を水平方向の走査に用いているので、水平走査周波数を極めて高くすることが可能である。したがって、映像表示装置40は、フルハイビジョンのカラーモニタやプロジェクタとして用いることができる。
【0052】
また、液晶やプラズマ方式のモニタやプロジェクタでは画素を構成する素子による変調速度の制限が存在するが、映像表示装置40では、光源の変調速度を半導体レーザや後述する他の変調器の変調周波数の上限まで高めることが可能である。さらに、結像レンズ36を光軸方向に動かすことによって、表示サイズも自由に変更することが可能である。
【0053】
また、紫外線LD励起の蛍光発色方式のLEDを映像表示装置40の光源として用いることにより、通常のLEDを用いる場合より、更に変調速度を向上させることが可能となる。
【0054】
また、気体レーザや固体レーザのように直接変調を行うことが不可能な光源を映像表示装置40に用いる場合には、光源の外部に電気変調器や音響光学素子等の外部変調素子を配置することができる。この場合の水平走査線の回転に伴うブレを補正する手段は、光ファイバ52を保持する部材を変位させる駆動素子によって実現され得る。
【0055】
また、404nm等の青色発光のLD光源と青色の光を励起する紫外線LDとビームスプリッタ等により光を合成する光学系を別途用意して、この光学系を新たな青領域発光の光源として映像表示装置40に用いれば、青領域の色域を従来のブラウン管に近似させることが出来る。このように紫外線LD励起の蛍光発色を用いる場合には、当該蛍光発色に対して適宜にLD光源の光を混ぜることにより、色域をある程度自在に制御することができる。なお、この例では、青領域について説明したが、赤や緑、或いは、他の色を混ぜてもよいことは言うまでもないことである。
【0056】
以下、上述した実施形態の光走査装置の応用例について説明する。図8は、一実施形態に係るレーザ走査顕微鏡を示す図である。図8に示すレーザ走査顕微鏡60は、光走査装置10、第1の瞳伝達レンズ系62、ガルバノミラー64、第2の瞳伝達レンズ系66、及び、対物レンズ68を備えている。なお、図8では、光走査装置10については、レンズ14及び光源部18のみを示している。
【0057】
光源部18は、レンズ14の前側焦点位置に配置されている。したがって、レンズ14の光軸上に光源部18が存在する場合には、光源部18からの光はレンズ14の光軸方向に進む平行光L1となる。レンズ14の移動に伴い、レンズ14からの光は、当該レンズ14の光軸に対して傾斜した平行光L2となる。
【0058】
第1の瞳伝達レンズ系62は、レンズ14からの平行光を、ガルバノミラー64に伝達する。レーザ走査顕微鏡60は、共焦点型のレーザ走査顕微鏡であり、対物レンズ68で集光された光の情報を用いた処理を行うために、第2の瞳伝達レンズ系66を備えている。即ち、光源部18と試料面SPが共役な位置関係となっている。また、対物レンズ68の瞳位置は、レンズ14の主面及びガルバノミラー64と共役な位置関係になっている。
【0059】
レーザ走査顕微鏡60は、更に、第1の瞳伝達レンズ系62の二つのレンズの間にビームスプリッタ70を有している。なお、ビームスプリッタ70は、第2の瞳伝達レンズ系66の二つのレンズの間に設けられていてもよい。
【0060】
また、レーザ走査顕微鏡60は、スリット72を更に備えている。スリット72には、ビームスプリッタ70から試料面SPによって反射された光が導かれる。スリット72の位置は、試料面SPのジャストフォーカス位置で、ビーム径が最小になるように固定されている。このスリット72の配置方向は、光走査装置10の走査方向と一致しており、また、スリット72の横幅は集光されるビームサイズよりも小さく設定されている。レーザ走査顕微鏡60は、更に、スリット72を通過した光を受ける受光素子74を有しており、受光素子74によってスリット72を通過した光の光量を測定する。即ち、レーザ走査顕微鏡60は、通常のレーザ走査型共焦点顕微鏡のピンホールに代わるものとして、スリット72を有している。
【0061】
レーザ走査顕微鏡60では、光走査装置10の水平走査とガルバノミラー64の垂直走査とにより1周期で1画面の情報、即ち、受光素子74に受けた光の光量、及び、対物レンズ68と試料面SPとの間の距離の変化量が取得され、当該情報がメモリ76に記憶される。そして、対物レンズ68と試料面SPとの間の距離を相対的に変化させ、一画面の情報を得るプロセスが繰り替えされる。レーザ走査顕微鏡60では、最終的に得られた情報を用いて、各走査位置で光量が最大になる場合の上記変化量が試料面SPのプロファイル情報として選択される。
【0062】
このレーザ走査顕微鏡60は、光走査装置10を用いているので、水平走査周波数を極めて高くすることが可能である。したがって、レーザ走査顕微鏡60は、1画面の情報取得を高速に行うことができる。なお、レーザ走査顕微鏡60には、光走査装置10に代えて光走査装置10Aが用いられてもよい。また、スリット72を2分割受光素子とし、2分割受光素子の分割線の背面に更に受光素子が設けられてもよい。この場合には、図4を参照して上述した2分割受光素子による光源部18の位置制御も行うことができ、同時に共焦点情報も取得することが可能である。
【符号の説明】
【0063】
10,10A…光走査装置、12…基板、12a…遮光部、12b…第1の層、12c…第2の層、12d…第3の層、12e…第4の層、14…レンズ、16…基板駆動機構、16a…スピンドルモータ、16b…支軸、18…光源部。20…レンズ、22…ホルダ、24…光源駆動機構、24a…駆動素子、24b…制御部、26…マウント、28…光分離素子、30…集光レンズ、32…受光器、32a…第1の領域、32b…第2の領域、32c…境界、34…ガルバノミラー、36…結像レンズ、40…映像表示装置、42R,42G,42B…光源、44R,44G,44B…コリメータレンズ、46,48…ダイクロイックミラー、50…集光レンズ、52…光ファイバ、54…処理部、60…レーザ走査顕微鏡、62…第1の瞳伝達レンズ系、64…ガルバノミラー、66…第2の瞳伝達レンズ系、68…対物レンズ、70…ビームスプリッタ、72…スリット、74…受光素子、76…メモリ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板において円周に沿って設けられた複数のレンズと、
前記基板を前記円周の中心軸線周りに回転させる基板駆動機構と、
前記複数のレンズが通過する軌道上に光を出射する光源部と、
を備える光走査装置。
【請求項2】
前記光源部を前記円周の半径方向に移動させる光源駆動機構を更に備える、請求項1に記載の光走査装置。
【請求項3】
前記光走査装置は、前記光源部から出射され前記複数のレンズの各々を経た光を分離する光分離素子と、
前記光分離素子からの光を収束させる別のレンズと、
前記別のレンズからの光を受ける受光器と、
を更に備えており、
前記光源駆動機構は、所定の走査方向に対する前記受光器における光の入射位置のずれを補正するように、前記光源部を移動させる、請求項2に記載の光走査装置。
【請求項4】
前記受光器は、前記所定の走査方向に応じて二分割された二つの領域を含んでおり、
前記光源駆動装置は、前記二つの領域の一方における光の強度と該二つの領域の他方における光の強度との差異に基づいて、前記光源部を移動させる、請求項3に記載の光走査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−175823(P2010−175823A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−18253(P2009−18253)
【出願日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【出願人】(000101330)アストロデザイン株式会社 (28)
【Fターム(参考)】