説明

光走査装置

【課題】光走査装置の走査性能を向上することのできる技術を提供する。
【解決手段】プレート部20が、本体部23と、本体部23とミラー部21を連結するヒンジ部と、本体部23および前記ヒンジ部を囲む枠部22とを有している。本体部23は、枠部22の片持部により片持ちされている。プレート部20が、枠部22で支持されて下ケース部40に設けられており、上ケース部50が、枠部22を押さえて下ケース部40と組み付けられている。そして、枠部22と上ケース部50との間で挟まれる弾性を有するスペーサ60を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光走査装置に適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2006−293116号公報(特許文献1)およびWO2008/038649(特許文献2)には、ミラー部を支持する捻れ梁部を有する基板に圧電体を配置し、基板の板波(撓み)を利用してミラー部に捻れ振動を生じさせることができる光走査装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−293116号公報
【特許文献2】WO2008/038649
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図1に本発明者らが検討した光走査装置110の断面を示す。図1に示すように、光走査装置110は、ミラー部121を有する素子部(光スキャナ)であるプレート部120と、プレート部120を固定(収納)するケース130と、ミラー部121に光を投射する光源160とを備えている。光走査装置110は、揺動するミラー部121に対して光源160から光を投射し、そのミラー部121からの反射光161で被対象物を走査するものである。
【0005】
ここで、光走査装置110の構成部品について説明する。光走査装置110のプレート部120は、枠部122と、枠部122の内側で片持ちされた本体部123と、本体部123を撓ませることにより安定した定在波を発生させてミラー部121を揺動させるための軸となるヒンジ部(図1では図示せず)とを有している。また、光走査装置110のケース130は、主に基材として用いる下ケース部140と、その上側で主に押さえとして用いる上ケース部150とを有している。
【0006】
これらにより、プレート部120が枠部122で支持されて下ケース部140に設けられており、枠部122を直接に押さえる上ケース部150が、下ケース部140と組み付けられて(固定されて)、光走査装置110が構成されている。
【0007】
このように、プレート部120がケース130に固定された光走査装置110では、プレート部120の本体部123に、例えば、振動源124を設け、この振動源124を作動させて本体部123を撓ませることによりヒンジ部を揺動軸とするミラー部121を揺動させながら照射光161を反射することができる。
【0008】
しかしながら、本発明者らが検討した光走査装置110では、光走査が不規則に変動する異常振幅や、ループ状の走査現象が発生してしまい、正確なライン状の走査を行うことができない場合が観られた。すなわち、光走査装置としての走査性能が低減してしまう場合が生じた。このような異常振幅などは、プレート部120が動作することによるエネルギーを、ケース130が均一に受け持てなくなるためであると、本発明者らは見出している。
【0009】
なお、特許文献1では、捻れ振動するミラー部を有する基板(特許文献1の例えば図6の符号10)の一端が壁のような支持部材(同図の符号16)に片持ち状に、単に支持(固定)されていることが開示されている。しかしながら、光走査装置110のように、プレート部120を直接に上ケース部150で押さえて、下ケース部140と固定することまでは開示も示唆もされていない。したがって、特許文献1では、光走査装置110で発生した、光走査が不規則に変動する異常振幅や、ループ状の走査現象が発生するといった課題は考慮されていないものと考えられる。このことは、光走査装置110のようなプレート部120を直接に上ケース部150で押さえて、下ケース部140と固定することについて開示されていない特許文献2も同様であると考えられる。
【0010】
本発明の目的は、光走査装置の走査性能を向上することのできる技術を提供することにある。本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0012】
本発明の一実施形態における光走査装置は、ミラー部を有するプレート部と、前記プレート部を第1ケース部と第2ケース部とで組み付けて固定するケースとを備え、揺動する前記ミラー部からの反射光で走査するものである。前記プレート部が、本体部と、前記本体部と前記ミラー部を連結するヒンジ部と、前記本体部および前記ヒンジ部を囲む枠部とを有している。前記本体部は、前記枠部の片持部により片持ちされている。前記プレート部が、前記枠部で支持されて前記第1ケース部に設けられている。前記第2ケース部が、前記枠部を押さえて前記第1ケース部と組み付けられている。そして、前記光走査装置は、前記枠部と前記第2ケース部との間で挟まれる弾性を有するスペーサを備えている。
【発明の効果】
【0013】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば次のとおりである。本発明の一実施形態によれば、走査性能を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明者らが検討した光走査装置(従来例)を模式的に示す断面図である。
【図2】本発明の一実施形態における光走査装置を模式的に示す平面図である。
【図3】図2のX−X線における光走査装置を模式的に示す断面図である。
【図4】図2における光走査装置の下ケース部を模式的に示す平面図である。
【図5】図2における光走査装置の上ケース部を模式的に示す平面図である。
【図6】図2における光走査装置のプレート部を模式的に示す平面図である。
【図7】図2における光走査装置のスペーサを模式的に示す平面図である。
【図8】図2における光走査装置に対するスペーサの作用を説明するための表である。
【図9】本発明の他の実施形態における光走査装置の要部を模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する場合がある。
【0016】
(実施形態1)
図2に本実施形態における光走査装置10の平面を示す。また、図3に図2のX−X線における光走査装置10の断面を示す。また、図4に光走査装置10の下ケース部40の平面を示す。また、図5に光走査装置10の上ケース部50の平面を示す。また、図6に光走査装置10のプレート部20の平面を示す。また、図7に光走査装置10のスペーサ60の平面を示す。また、図2、図4、図5、図6および図7で示される各部材は、各図において左右方向が長手、上下方向が短手となっている。なお、図3の断面図では、説明を明解にするため、ネジ31にはハッチングを付していない。
【0017】
光走査装置10は、ミラー部21を有するプレート部20と、プレート部20を下ケース部40と上ケース部50とで組み付けて固定(収納)するケース30と、ミラー部21に光を投射する光源(図示せず)とを備えている。光走査装置10は、揺動するミラー部21に対して光源から光を投射し、そのミラー部21からの反射光で被対象物を走査するものである。以下に、光走査装置10のより具体的な構成について説明する。
【0018】
光走査装置10のケース30は、主に基材として用いる下ケース部40と、その上側で主に押さえとして用いる上ケース部50とを有している。
【0019】
下ケース部40は、図4に示すように、上面が開放された筐体状となっている。この下ケース部40では、開口端44と、内周縁部に設けられた段付部45と、段付部より深い位置に底部46とが形成されている。言い換えると、下ケース部40を、板状としてみた場合、図4に示すように、平面矩形状をしている。この下ケース部40は、その厚さ方向(深さ方向)に1段目の凹部41と、凹部41よりも深い2段目の凹部42と、開口端面に厚さ方向に貫通したネジ穴43とを有している。
【0020】
下ケース部40の凹部41は、プレート部20(図6参照)が配置できるような平面形状として平面矩形状をしている。この凹部41でプレート部20の枠部22が支持されることとなる(図3、図6参照)。このように、凹部41の平面形状を、プレート部20の外形状と同一のものとすることで、容易に下ケース部40にプレート部20を配置することができる。
【0021】
また、プレート部20は凹部42を覆うように配置される(図3参照)。また、凹部42は、プレート部20の厚さ方向に深く形成されているため、本体部23(プレート本体)の撓みによる振動や、ミラー部21の揺動を妨げないようになっている。
【0022】
次に、板状の上ケース部50は、図5に示すように、平面矩形状をしている。この上ケース部50は、厚さ方向に貫通した開口部51が形成された枠部52と、枠部52に厚さ方向に貫通したネジ固定用の穴53とを有している。開口部51は、光源からの光がミラー部21へ投射(入射)し、そのミラー部21からの反射光が出射すると共に本体部23の撓みによる振動や、ミラー部21の揺動を妨げないように設けられている。
【0023】
本実施形態では、上ケース部50の開口部51の開口部形状と、下ケース部40の凹部42の底面部形状とは、同一となるようにしている。これにより、上ケース部50の枠部52は、下ケース部40の開口端44と重ね合わせて組み付けられる。
【0024】
光走査装置10のプレート部20は、図6に示すように、平面矩形状をしている。このプレート部20は、その枠となる平面矩形状の枠部22と、枠部22の内側で片持ちされた本体部23と、本体部23を撓ませることによりミラー部21を連結し、揺動軸となるヒンジ部25(捻れ梁)と、本体部23と枠部22とに架け渡された支持梁部26とを有している。言い換えると、プレート部20は、本体部23、ヒンジ部25および支持梁部26などを囲む枠部22を有している。
【0025】
このプレート部20は、例えば、ステンレス鋼で構成されている。また、プレート部20は、例えば、板状の金属材料を例えばエッチング加工、打ち抜き加工、レーザ加工、ワイヤーカット加工などによって、図6に示すような平面形状とすることができる。
【0026】
プレート部20では、枠部22と本体部23との間には貫通する開口部27、28が形成されており、このため枠部22の内側で片持ちされた本体部23が撓むようになっている。この開口部27は本体部23の固定端側(枠部22の一方の短手側)に形成されている。また、開口部28は本体部23の自由端側(枠部22の他方の短手側)に形成されている。
【0027】
また、本体部23は、矩形状の中央部から片持ちされる枠部22の一方の短手側に向かってくびれるくびれ部23aと、他方の短手側にヒンジ部25を支持するプレート舌部23bとを有している。また、ミラー部21を揺動するための捻れ梁部であるヒンジ部25がミラー部21の両側に設けられている。片側のヒンジ部25の一端がミラー部21と接続されており、他端がプレート舌部23bと接続されている。
【0028】
本実施形態では、くびれ部23a(本体部23の固定端)と接している枠部22の領域を片持部22a(図6では明解とするためハッチングを付している)としている。すなわち、枠部22が、片持部22aを有している。よって、本体部23は、枠部22の内側で片持部22aにより片持ちされていることとなる。
【0029】
また、プレート部20は、本体部23を片持ちする片持部22aとは別に、本体部23と枠部22とを連結する2つの支持梁部26を有している。2つの支持梁部26は、本体部23の中央部から自由端側であって、本体部23を挟んで対称となるように設けられている。本実施形態では、支持梁部26と接している枠部22の領域を支持梁連結部22d(図6では明確とするためにハッチングを付している)としている。
【0030】
なお、本実施形態では、支持梁部26によって本体部23と枠部22とが連結(接続)されているが、本体部23は枠部22の内側で片持ちされているとしている。支持梁部26はミラー部21の上下方向の変位を抑制するために設けるものであって、本体部23を撓ませるために作用するものではないからである。
【0031】
また、本体部23の中央部には振動源24が設けられている。振動源24としては、例えばチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)からなる圧電素子や、その他に圧電体、磁歪体、永久磁石体などを用いることができる。振動源24として、圧電素子を用いた場合、本体部23に接着などによって振動源24を設けることができる。この際、図示しない配線により交番電圧を加えることでPZTを伸縮させ、本体部23を連続的に撓ませることにより定在波を発生させる。また、振動源24として、圧電体、磁歪体、永久磁石体を用いた場合、本体部23上に例えばエアロゾルデポジション法などによって膜状に振動源24を直接形成することができる。
【0032】
このように、プレート部20がケース30に固定された光走査装置10では、振動源24を作動させて本体部23を撓ませることにより、ヒンジ部25を揺動軸とするミラー部21を揺動させながら照射光を反射することができる。このため、ミラー部21は、プレート部20(本体部23)に金属板を使用する場合には鏡面仕上げされたものを用いると良い。金属板以外の基板や、金属板においてもより高い反射性能が要求される場合には、真空蒸着、スパッタリング、化学的気相成長法等の薄膜形成技術により、ミラー部21へ薄膜(例えば、金、アルミニウムなど)を形成するか、またはミラー部21へ別途ミラー用反射材料(例えば、シリコン、セラミックなど)を貼付けても良い。
【0033】
光走査装置10のシート状のスペーサ60は、図7に示すように、平面矩形状をしている。このスペーサ60は、厚さ方向に貫通した開口部61が形成された枠部62を有している。開口部61は、光源からの光がミラー部21へ投射(入射)し、そのミラー部21からの反射光が出射すると共に本体部23の撓みによる振動や、ミラー部21の揺動を妨げないように設けられている。なお、本実施形態では、スペーサ60の開口部61の開口部形状と、下ケース部40の凹部42の底面部形状や上ケース部50の開口部51の開口部形状とは、同一となるようにしている。また、板状のスペーサ60は、他の部品(プレート部20など)より薄く、シート状になっている。
【0034】
スペーサ60としては、弾性を有するもの(弾性体)を用いている。具体的には、ケース30を剛体としたときに、それに対してスペーサ60を弾性体としている。弾性体としては、例えばポリプロピレン系やポリエステル系などの樹脂材料、シリコーン、ゴムを用いることができる。なお、本実施形態では、スペーサ60の形状を、開口部61が形成された枠部62をシート状にして用いているが、ブロック状、テープ状としても良い。また、厚さ方向に貫通した開口部61が形成された枠部62を有するスペーサ60は、抜き加工や金型加工によって形成することができる。
【0035】
このような部品を有する光走査装置10では、図3に示すように、プレート部20が長手方向一端側(固定端側)の枠部22で支持されて下ケース部40に設けられており、上ケース部50が、プレート部20の枠部22を押さえて下ケース部40と組み付けられている。また、プレート部20の枠部22と上ケース部50との間でスペーサ60が挟まれている。この光走査装置10を動作させたところ、本発明者らが検討した光走査装置110と同様な光走査が不規則に変動する異常振幅や、ループ状の走査現象が発生しまうことは観られなかった。
【0036】
本実施形態における光走査装置10に対して、本発明者らが検討した光走査装置110(図1参照)では、プレート部120の枠部122と上ケース部150との間で、スペーサ60(弾性体)のようなスペーサが挟まれていない点で相違する。プレート部120の本体部123を撓ませて定在波を発生させるという観点から、プレート部120の枠部122の内側で本体部123を片持ちしている。このため、片持ちされている側を、強く固定しなければ、本体部123に安定した定在波を発生させることができないという既成概念が光走査装置110にはあった。また、光走査装置110では共振現象を利用しているので、そのためのエネルギーを逃がさないように、剛性の高い上ケース部150と下ケース部140でプレート部120を強く固定しなければならないという既成概念があり、そのためエネルギーを消費する弾性体を用いるという発想はなかった。
【0037】
しかしながら、本実施形態では、プレート部20の枠部22と上ケース部50との間に弾性を有するスペーサ60(弾性体)を挟むこととしている。これにより、光走査が不規則に変動する異常振幅や、ループ状の走査現象の発生を防いでいる。このことは、ケース30を構成する上ケース部50とプレート部20がそれぞれの固定面にて、片当たり等のアンバランスの発生を抑制することができたためと考えられる。
【0038】
光走査装置110は、下ケース部140と上ケース部150によりプレート部120を挟み込んで構成している。プレート部120、下ケース部140、上ケース部150は、金属材料を用いており、固定方法にはネジ(ボルト)による締結を行っている。ネジの締結にはトルクドライバーによるトルク管理を行っているが、実際には、プレート部120と下ケース部140、上ケース部150との間に片当たりが発生して、これが動作不安定になっているものと考えられる。
【0039】
そこで、本実施形態における光走査装置10では、プレート部20やケース30の金属材料に対して、十分に剛性の低い樹脂材料(弾性体)からなるスペーサ60を、プレート部20の固定時に使用している。このスペーサ60がわずかに変形することにより、固定の際のプレート部20への接触面積が増えて固定の際の片当たりを解消することができ、動作を安定することができる。言い換えると、十分に剛性の低い樹脂材料(弾性体)からなるスペーサ60を用いても、共振現象のためのエネルギーが保持されるとともに、動作を安定とすることができる。
【0040】
このように、本実施形態における光走査装置10では、光走査が不規則に変動する異常振幅や、ループ状の走査現象の発生を防止することができるので、正確なライン状の走査を行うことができる。すなわち、光走査装置の走査性能の向上することができる。
【0041】
以下に、光走査装置10に対するスペーサ60の作用について具体的に説明する。本実施形態における光走査装置を検討するにあたり、図8に検討した種々のスペーサ(材料)を示す。実施例1〜3の光走査装置と実施例4の光走査装置とにより、スペーサの有無による比較ができる。また、実施例1の光走査装置と実施例2の光走査装置とにより、スペーサの剛性の強弱による比較ができる。また、実施例2の光走査装置と実施例3の光走査装置とにより、厚さの厚薄による比較ができる。なお、走査動作の評価は、振動源24としての圧電素子に18〜30Vの駆動電圧を印加させ、周波数、光学走査角および動作状態の観測により行う。
【0042】
まず、実施例1〜3の光走査装置と実施例4の光走査装置から、弾性を有するスペーサを用いたものでは動作が安定しているのに対し、スペーサを用いないものでは、光走査装置110と同様に、走査はするが最も不安定な動作状態となり、光走査が不規則に変動する異常振幅や、ループ状の走査現象が発生してしまい、正確なライン状の走査を行うことができない場合が観られた。これから、光走査装置10の走査性能を向上する上で、スペーサ60は有効である。
【0043】
ここで、弾性を有するスペーサ60は、単に、下ケース部40と上ケース部50との間で挟まれていれば良いわけではないことを本発明者らは見出している。すなわち、プレート部20(枠部22)と上ケース部50との間にスペーサ60を挟むのではなく、プレート部20(枠部22)と下ケース部40との間にスペーサ60を挟んだ場合には、光走査が不規則に変動する異常振幅や、ループ状の走査現象が発生してしまうことを本発明者らは見出している。
【0044】
そこで、本実施形態では基材として用いる下ケース部40にプレート部20を直接固定するようにし、片当たり等のアンバランスの発生を抑制するために、プレート部20(枠部22)と上ケース部50との間にスペーサ60を挟む構成としている。言い換えると、剛性の強い下ケース部40(基材)にプレート部20を直接固定し、プレート部20と剛性の弱い上ケース部50(押さえ)との間に弾性を有するスペーサ60を挟む構成としている。なお、弾性を有するスペーサ60とは別に、下ケース部40と同等の剛性の強いスペーサを用意し、これを下ケース部40とプレート部20との間に設けて、下ケース部40にプレート部20を固定しても良い。
【0045】
次に、実施例1の光走査装置と実施例2の光走査装置から、弾性を有するスペーサのヤング率が高いものに対して、ヤング率が低いものがより安定している状態が観られた。このことは、ヤング率が高くなると、剛性が強くなることが影響しているものと考えられる。すなわち、ヤング率が高くなると、プレート部20を上ケース部50で直接押さえた状態に近づき、結果として動作が不安定な傾向になるものと考えられる。但し、実施例2のスペーサ材を用いた場合であっても、実用上十分である。このため、生産性、コスト性、使用環境を考慮して、実施例1、2の樹脂を選択すれば良い。
【0046】
次に、実施例2の光走査装置と実施例3の光走査装置から、弾性を有するスペーサの厚さが厚いものに対して、薄いものがより安定している状態が観られた。このことは、同一の材料を用いた場合、厚さが厚くなると、スペーサの厚み方向の剛性が低下することが影響しているものと考えられる。すなわち、厚さが厚くなると、スペーサの厚み方向の剛性が低下して、スペーサのプレートに設置されている部分の振動が大きくなり、結果としてスペーサを挟まず片当たりによって部分的に固定力が不足している時のように動作が不安定な傾向になるものと考えられる。但し、実施例3のスペーサ材を用いた場合であっても、実用上十分である。このため、スペーサ60は厚い方が生産過程でのハンドリング性が良いことから生産性などを考慮して、実施例2、3の樹脂を選択すれば良い。
【0047】
また、本実施形態では、プレート部20に枠部22を形成し、その枠部22の内側で本体部23を形成している。このため、片持ちされた本体部23側の枠部22だけでなく、枠部22全体にスペーサ60を設けることによって、光走査が不規則に変動する異常振幅や、ループ状の走査現象の発生をより防止することができる。このことは、プレート部20の枠部22の一部を押さえただけでは、本体部23が撓む影響で、枠部22も振動などの影響を受けるからと考えられる。
【0048】
なお、本実施形態では、弾性を有するスペーサ60として、例えば、ポリプロピレン系樹脂などの樹脂を用いているが、弾性を有するものであれば、塗料を用いても良い。例えば、図6に示すプレート部20の枠部22の表面に塗料を塗布し、プレート部20(枠部22)と上ケース部50との間で弾性を有する塗料が挟まれる構造としても良い。
【0049】
また、本実施形態では、プレート部20の枠部22全体に均等に圧力が加わるように、下ケース部40と上ケース部50とを組み合わせて(重ね合わせて)、平面矩形状の上ケース部50のそれぞれの辺から、下ケース部40と上ケース部50とをネジ31で締結(固定)している。これにより、光走査が不規則に変動する異常振幅や、ループ状の走査現象の発生をより防止することができる。したがって、光走査装置の走査性能を向上することができる。
【0050】
また、本実施形態では、プレート部20は、本体部23と枠部22とに架け渡された支持梁部26(図6参照)を有している。この支持梁部26を設けず、単に、枠部22の内側に本体部23を片持ちした場合では、外乱により有害な低周波の振動成分が生じる可能性がある。より具体的には、低周波の振動成分によりミラー部21に上下方向の変位が生じるため、走査性能が低下してしまう。そこで、本実施形態では、支持梁部26を設けることで、このような外乱による低周波の振動成分の発生を防止し、走査性能を向上している。
【0051】
さらに、本実施形態では、支持梁部26側の枠部22にもスペーサ60が設けられるようになっている。このため、外乱の影響をより防止すると共に、光走査が不規則に変動する異常振幅や、ループ状の走査現象の発生をより防止することができる。したがって、光走査装置の走査性能をより向上することができる。
【0052】
(実施形態2)
前記実施形態1では、プレート部20(図6参照)の枠部22全体を覆うような枠部62を有するスペーサ60(図7参照)を、プレート部20と上ケース部50との間で挟んだ場合(図3参照)について説明した。本実施形態では、枠部22の一部に設けられるスペーサ60a、60bを用いた場合(図9参照)について説明する。なお、枠部22全体のスペーサ60を、枠部22の一部のスペーサ60a、60bに置き換えた他は、前記実施形態1と同様であるので、その点に関しては説明を省略する場合がある。
【0053】
図9に本実施形態における光走査装置11の要部であるプレート部20の平面を示す。プレート部20は、前述したように、枠部22が平面矩形状をしている。プレート部20では、本体部23を片持ちする片持部22aが枠部22の短手にあり、支持梁部26に連結する支持梁連結部22dが枠部22の長手にある。
【0054】
本実施形態では、片持部22aの領域およびその両側の領域22bにスペーサ60aを設け、また、支持梁連結部22dの領域およびその両側の領域22cにスペーサ60bを設けている。ここで、領域22bは、枠部22の短手の長さを100%としたときの10%以上の領域である。また、領域22cは、枠部22の長手の長さを100%としたときの10%以上の領域である。
【0055】
このように、本体部23を片持ちする枠部22の周辺領域、および支持梁部26と連結される枠部22の周辺領域のそれぞれに弾性を有するスペーサ60a、60bを設け、それらを枠部22と上ケース部50との間で挟むことでも、光走査が不規則に変動する異常振幅や、ループ状の走査現象の発生を防止することができる。したがって、光走査装置の走査性能を向上することができる。
【0056】
以上、本発明者によってなされた発明を実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0057】
例えば、前記実施形態では、ケース30を構成する上ケース部50とプレート部20がそれぞれの固定面にて、片当たり等のアンバランスの発生を抑制するために、スペーサ60を用いた場合について説明したが、このアンバランスの発生を抑制できるのであれば、スペーサ60の枠部62に貫通孔を形成しても良い。
【0058】
この際、例えば、枠部62の貫通孔と平面視同一位置において、プレート部20の枠部に貫通孔、下ケース部40に凹部、および上ケース部50に凸部を形成し、これら部品を組み込むことで、スペーサ60やプレート部20の組付精度を向上することができる。組付精度を向上することで、より安定した走査をすることができ、光走査装置10の走査性能を向上することができる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、光走査装置、特に、レーザプリンタ、デジタル複写機などの画像形成装置、投影型ディスプレイなどの画像表示装置、バーコードリーダ、エリアセンサなどに用いられる光走査装置の製造業に幅広く利用されるものである。
【符号の説明】
【0060】
10、11 光走査装置
20 プレート部
21 ミラー部
22 枠部
22a 片持部
22b 第1領域
22c 第2領域
22d 支持梁連結部
23 本体部
23a くびれ部
23b プレート舌部
24 振動源
25 ヒンジ部(捻れ梁部)
26 支持梁部
27 開口部
28 開口部
30 ケース
31 ネジ
40 下ケース部
41、42 凹部
43 ネジ穴
44 開口端
45 段付部
46 底部
50 上ケース部
51 開口部
52 枠部
53 ネジ固定用の穴
60、60a、60b スペーサ
61 開口部
62 枠部
110 光走査装置
120 プレート部
121 ミラー部
122 枠部
123 本体部
124 振動源
130 ケース
140 下ケース部
150 上ケース部
160 光源
161 反射光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミラー部を有するプレート部と、前記プレート部を第1ケース部と第2ケース部とで組み付けて固定するケースとを備え、揺動する前記ミラー部からの反射光で走査する光走査装置であって、
前記プレート部が、本体部と、前記本体部と前記ミラー部を連結するヒンジ部と、前記本体部および前記ヒンジ部を囲む枠部とを有しており、
前記本体部は、前記枠部の片持部により片持ちされており、
前記プレート部が、前記枠部で支持されて前記第1ケース部に設けられており、
前記第2ケース部が、前記枠部を押さえて前記第1ケース部と組み付けられており、
前記枠部と前記第2ケース部との間で挟まれる弾性を有するスペーサを備えていることを特徴とする光走査装置。
【請求項2】
請求項1記載の光走査装置において、
前記プレート部は、前記本体部を片持ちする片持部とは別に、前記本体部と前記枠部とを連結する複数の梁部を有していることを特徴とする光走査装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の光走査装置において、
前記スペーサが、前記枠部の一部に設けられていることを特徴とする光走査装置。
【請求項4】
請求項2記載の光走査装置において、
前記梁部は、前記枠部の梁連結部に接しており、
前記枠部が矩形状をしており、
前記片持部が前記枠部の短手にあり、
前記梁連結部が前記枠部の長手にあり、
前記スペーサが、前記片持部の領域およびその両側の第1領域と、前記梁連結部およびその両側の第2領域とに設けられており、
前記第1領域が、前記枠部の短手の長さを100%としたときの10%以上の領域であり、
前記第2領域が、前記枠部の長手の長さを100%としたときの10%以上の領域であることを特徴とする光走査装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の光走査装置において、
前記スペーサが、樹脂であることを特徴とする光走査装置。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の光走査装置において、
前記スペーサが、塗料であることを特徴とする光走査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−37833(P2012−37833A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−180288(P2010−180288)
【出願日】平成22年8月11日(2010.8.11)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年度経済産業省委託研究「産業技術研究開発委託費/中小企業等製品性能評価事業/レーザープリンター用MEMS光スキャナーユニットの商品化」産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000106944)シナノケンシ株式会社 (316)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】