説明

光走査装置

【課題】簡単な構成で確実にポリゴンスキャナ周辺の空間を密閉することのできる光走査装置を提供する。
【解決手段】少なくとも回転偏向器を光学ハウジング51内に配置した光走査装置において、光学ハウジング51を覆うカバー部材は第一カバー52と第二カバー53から構成される。第一カバー52は光学ハウジング51に固定用穴60からネジ孔61へネジ留めされ、第二カバー53は光学ハウジングにネジ留めされる第一カバー52と光学ハウジング51とに挟まれて光学ハウジングに固定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザプリンタ、デジタル複写機、ファクシミリ装置のように光ビームを走査して画像の記録を行なう画像形成装置に使用される光走査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置の高速化・高密度化に伴い、画像形成装置に搭載される光走査装置は光源の数を増やすことと回転偏向器(ポリゴンスキャナ等)の回転数を高めることにより、高生産性、高画質化を実現してきた。
【0003】
光源に関しては、その数を増やすことで高生産性、高密度化を実現できるが、光源を増やすことによるコストアップ、所定の解像度を満たすための光源の位置決め、画像情報に基づく信号処理の複雑化などのデメリットが挙げられる。よって、回転偏向器の回転数をできる限り高くし、光源の数を減らす方法が、部品点数が少なくコストメリットがあり有利である。
【0004】
一方、回転偏向器として最も一般的に用いられるポリゴンスキャナは、ミラー面の軸を軸受によって保持しており、回転数が高くなるにつれ軸受の温度が上昇する。軸受温度の上昇は、ポリゴンスキャナの振動や軸倒れの増幅を引き起こし、画像品質の劣化に繋がる。またポリゴンスキャナからの発熱が走査光学素子に達すると、走査光学素子は伸びるため、画像品質の劣化に繋がる。また複数のミラー面を有し、高速にて回転するため、風切り音による騒音が発生する。
【0005】
ポリゴンスキャナを高速で回転させることによる上述の問題に対しては、例えば特許文献1に対策手法の一例が示されている。上記特許文献1では、ポリゴンスキャナの周辺の空間を密閉するが、その空間のカバーに金属材料を用いることでポリゴンスキャナからの熱を効果的に放熱し、またカバーと光学ハウジングの間に弾性シール部材を介在させることでポリゴンスキャナ周辺の空間の密閉度を高め、騒音を抑えるようにしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ポリゴンスキャナからの発熱と騒音を抑えるためには、ポリゴンスキャナ周辺の空間を金属のような熱伝導率の高い部材にて密閉することが最も効果的である。光走査装置の密閉性や外形状を考慮すると、1枚の金属板でカバーを形成するのは困難である。そこでポリゴンスキャナ部分のカバーを金属材料とし、走査光学素子などの部分を覆うカバーは複雑な形状でも成型可能な樹脂材料とすると、ポリゴンスキャナからの発熱を効果的に放熱し、騒音を遮断でき、光走査装置全体の密閉性を確保することが可能である。
【0007】
しかしながら、上述のように2種類のカバーを用いると、それらを光学ハウジングに取り付ける際は1枚のカバーを用いたときと比較して、2倍の数のネジを必要とする。これは部品点数の増加を招くとともに、組立の工数の増大を招いてしまいコストの面で不利である。
【0008】
本発明は、光学ハウジングのカバーを複数枚で構成する場合の上述の問題を解決し、簡単な構成で確実にポリゴンスキャナ周辺の空間を密閉することのできる光走査装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の課題は、本発明により、少なくとも、光源からの光束を偏向させて走査する回転偏向器を光学ハウジング内に配置した光走査装置において、当該光走査装置は、前記光学ハウジングと光学ハウジングを覆うカバー部材により略密閉されており、前記カバー部材が金属からなる第一カバーと樹脂からなる第二カバーから構成され、前記第一カバーは前記光学ハウジングにネジ留めされ、前記第二カバーは前記光学ハウジングにネジ留めされず、前記光学ハウジングにネジ留めされる第一カバーにより前記光学ハウジングに向けて押圧され、前記第二カバーが前記光学ハウジングにより位置決めされ、前記第一カバーが前記第二カバーにより位置決めされ、前記第一カバーは、前記回転偏向器を収納する光学ハウジングの第一収納部を覆い、前記第二カバーは前記第一収納部とは別の第二収納部を覆うことにより解決される。
【発明の効果】
【0010】
本発明の光走査装置によれば、光走査装置の第二カバーを光学ハウジングにネジ留めする必要がなく、部品点数と組立工数の削減を図ることが可能である。
また、第二カバーが光学ハウジングにより位置決めされるので、第二カバーを光学ハウジングに適切に固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る光走査装置を概念的に示す模式図である。
【図2】別の方向から示した模式図である。
【図3】本発明に係る光走査装置をより具体的な形態で示したもので、(a)は側断面図、(b)は平面図である。
【図4】第一カバーと光学ハウジングの関係を示した部分斜視図である。
【図5】光走査装置に設けられた防塵ガラス部付近を示すもので、(a)は斜視図、(b)は側面図である。
【図6】本発明に係る光走査装置を備える画像形成装置の一例であるプリンタの概略を示す断面構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1及び図2は、本発明に係る光走査装置を概念的に示す模式図である。本例の光走査装置は、従来周知なものと同様に、半導体レーザ、コリメートレンズ、シリンドリカルレンズ、回転偏向器、fθレンズ、反射鏡(ミラー)等から構成され、これらの構成要素が光学ハウジング51内に配置されている。図2に示されるように、光学ハウジング51は、主に回転偏向器が収納される第一収納部54と、fθレンズや反射鏡などが収納される第二収納部55とを有している。その光学ハウジング51は、第一収納部54部を覆う第一カバー52と、第二収納部55部を覆う第二カバー53からなるカバー部材によって覆われ、ハウジングが密閉される。
【0013】
図2に示すように、光学ハウジング51には第二カバー53の位置を決める2本のボス56,56が立設されている。第二カバー53には光学ハウジング上のボス56,56と嵌め合わされる2つの孔57a,57bが形成されている。また第二カバー53には第一カバー52の位置を決める2本のボス58,58が立設されている。
【0014】
一方、第一カバー52には第二カバー53上の2本のボス58,58と嵌め合わされる2つの孔59a,59bが形成されている。さらに光学ハウジング51にネジ留めするために、4箇所の孔60が形成されており、それに伴い光学ハウジング51には4箇所のネジ孔61が形成されている。なお、上記の孔57a及び孔59aは長孔として形成され、各部材間での嵌合性を向上させている。
【0015】
第二カバー53は光学ハウジング51に対しネジ留めされず第一カバー52により押圧され固定されるので、光学ハウジング51に対し直接位置決めされることで、所定の位置に固定されることが可能である。第一カバー52は第二カバー53により位置決めされることで、第一カバー52と第二カバー53を所定の位置関係に保った状態で光学ハウジング51に取り付けることが可能である。これらは、2枚のカバー(第一カバー52及び第二カバー53)を、従来の1枚のカバーを取り付けるために必要なネジの本数にて取り付けることが可能であり、部品点数と工数の削減からコストダウン効果がある。また所定の位置にカバーを取り付けることができるため、光学素子が設置される空間を密閉することが可能となる。
【0016】
図3は、本発明に係る光走査装置をより具体的な形態で示したもので、(a)は側断面図、(b)は平面図である。(a)図には、光学ハウジング51内に配置される回転偏向器62と、回転偏向器62によって偏向された光ビームを反射させる2枚の反射鏡63,63と、その2枚の反射鏡63,63によって光路が変更された光ビームをハウジング外部に出射させる開口部に設けられた防塵ガラス64とが示されている。また、(b)図には、光学ハウジング51の上記第一収納部54及び第二収納部55(図2参照)を覆う第一カバー52と第二カバー53が示されており、両者が重なる部分(第一カバー52が第二カバー53を押さえる部分)に斜線を付して示してある。
【0017】
図4は、光学ハウジング51を覆う第一カバー52と光学ハウジング51の関係を示したものである。第一カバー52は光学ハウジング51上に設置される回転偏向器62を覆っている。回転偏向器62は、取り付け面である光学ハウジング51と、光学ハウジング51上に形成される側壁65と、回転偏向器62への入射光束と偏向された走査光束が透過する光学素子66と、第一カバー52により略密閉される。
【0018】
本例では第一カバー52は板金であり、一部の端部52aが折り曲げ加工されている。さらに光学ハウジング51と第一カバー52との間には弾性体67が介在されている。第一カバー52には光学ハウジング51に取り付ける際に弾性体67が所定量つぶれるように、光学ハウジング51とネジにて締結する位置に対応して凹状の絞り部52bが4箇所に形成されている。該絞り部52bのほぼ中心には、第一カバー52を光学ハウジング51(のネジ孔61)にネジ留めするための固定用穴60が設けられている。
【0019】
上記弾性体67は、第一カバー52の凹状の絞り部52bの位置に孔67aが形成され、第一カバー52と光学ハウジング51は接触して締結することが可能である。また弾性体67の厚みは第一カバー52の凹状の絞り部52bの高さ(第一カバー52の底面に絞り部52bが凸形状に突出している高さ)より大きく、光学ハウジング51に取り付けた際に所定の量だけつぶれ、回転偏向器62の空間を適切に密閉することが可能である。上記弾性体67としては、例えばスポンジを好適に用いることができる。
【0020】
この回転偏向器62の周囲の空間をこのように金属材料により密閉することで、回転偏向器62からの熱を放熱しやすくなる。また弾性体67を介在させることで、回転偏向器62の周囲の密閉度を高め、回転偏向器62からの騒音を抑えることが可能である。また回転偏向器62はハーネス68等の導電体を用いて電気を供給されるため、第一カバー52の一部を曲げ(52a)、その位置(折り曲げ加工部)にハーネスを通すことで、金属板である第一カバー52のエッジがハーネス68に接触して断線する恐れがなくなる。光学ハウジング51と第二カバー53が樹脂にて成型される場合は、第一カバー52に金属材料を用いることで、光走査装置全体の剛性を高めることが可能である。
【0021】
図5は、光走査装置に設けられた防塵ガラス部付近を示すもので、(a)は斜視図、(b)は側面図である。
図5に示すように、第二カバー53端面(第一カバー52と反対側の端面)には、走査光をハウジング外に導くための開口69が形成されており、該開口69には防塵ガラス64が配置される。この防塵ガラス64は、光学ハウジング51と第二カバー53との間に形成される間隙に軽圧入されることで、光学ハウジング51と第一カバー52及び第二カバー53で囲む空間を密閉することが可能である。防塵ガラス64は軽圧入により固定されているため、第一カバー52と第二カバー53が固定されていても着脱が可能である。この防塵ガラス64は光走査装置が設置される雰囲気に接しているため、ごみやちりなどが付着する場合がある。そうした場合の清掃性の向上を図ることが可能である。
【0022】
先に、第二カバー53は光学ハウジング51に対しネジ留めされず第一カバー52により押圧され固定される、と説明したが、本例ではさらに、第二カバー53が有する部材弾性により第二カバー53を光学ハウジング51に固定させる補助固定部を設けている。すなわち、図5に示されるように、補助固定部としてのスナップフィット70により第二カバー53が光学ハウジング51に固定される。スナップフィット70は、防塵ガラス64が配置される側の側面に、少なくとも防塵ガラス幅方向の両端部付近に2個所、または中央部を含む3個所に設けると好適である。このような構成は、第二カバー53をより強固に光学ハウジング51に固定することが可能であり、第二カバー53が第一カバー52よりも大きい場合などに有効である。一つの回転偏向器を用い、複数色の画像を形成するための光走査装置では特に第二のカバーが第一のカバーよりも大きくなる。第一のカバーにより第二のカバーを光学ハウジングに取り付ける場合は、第二のカバーをスナップフィットにより光学ハウジングに固定することは非常に有効である。特に、本例のように第二カバー53の片側で第一カバー52が第二カバー53押圧固定するような場合には、第一のカバーと反対側で第二のカバーをスナップフィットにより光学ハウジングに固定することは非常に有効である。
【0023】
最後に、本発明に係る光走査装置を備える画像形成装置の一例について説明する。
図6は、本発明に係る光走査装置を備える画像形成装置の一例であるプリンタの概略を示す断面構成図である。この図に示すプリンタは、装置下部に2段の給紙カセット11,12を備える給紙部を配し、その給紙部の上に感光体ドラム1を中心とする作像部を配して、給紙部から給送した用紙に作像部で画像を記録し、装置上面の排紙トレイ13に排出する、縦搬送型のモノクロプリンタである。
【0024】
作像部には、像担持体としての感光体ドラム1の周囲に帯電装置2,現像装置3,転写装置4,クリーニング装置15等が配置されている。本例では、感光体ドラム1と帯電装置2,現像装置3及びクリーニング手段4を含む部分をプロセスカートリッジとしてプリンタ本体に着脱可能に設けている。装置本体のほぼ中央部には、本発明による光走査装置であるレーザ書込みユニット5が配設されており、走査光としてのレーザビームを感光体ドラム1に照射する。このレーザ書込みユニット5は、図1〜5により上記説明した光走査装置の一例であり、形態としては図3に示したものである。
【0025】
そして、感光体ドラム1の上方には定着装置6が設けられている。さらに、これら各機器の図において右側に位置して、用紙反転部10が設けられている。用紙反転部10は、プリンタ本体に対して開閉可能に設けられた開閉ユニット14に配置されている。なお、転写装置4も開閉ユニット14に搭載されており、感光体ドラム1に対して接離可能に設けられている。
【0026】
上記のように構成されたプリンタにおける画像形成動作について簡単に説明する。
感光体ドラム1が図示しない駆動手段によって図中反時計方向に回転駆動され、その感光体ドラム1の表面が帯電装置2によって所定の極性に一様に帯電される。帯電された感光体表面には、レーザ書込みユニット5からのレーザ光が照射され、これによって感光体ドラム1表面に静電潜像が形成される。形成された静電潜像に現像装置3からトナーが付与され、トナー像として可視化される。
【0027】
一方、給紙カセット11又は12から給紙手段7によって用紙が給送され、レジストローラ8によって、感光体ドラム1上に形成されたトナー像とのタイミングを取って転写位置に向けて送出される。トナー像が転写された用紙は、転写装置4によって上方に送られ、定着装置6を通過するとき、熱と圧力によってトナー像が用紙に熔融定着される。定着された用紙は、排紙ローラ9により装置本体の上面に構成された排紙トレイ13に排出される。
【0028】
用紙両面にプリントを行う場合は、用紙片面にトナー像を定着した用紙を、用紙反転部10に送り込み、用紙の表裏を反転させてレジストローラ8へと再給紙する。再給紙された用紙裏面にトナー像を転写し、その裏面画像を定着装置6で定着することにより、表裏両面に画像を担持する用紙を、排紙トレイ13に排出することで、両面プリントが完成する。
【0029】
本例の画像形成装置はプリンタとして構成されたものであるが、画像読取装置を備える複写装置として構成することも可能である。
以上、本発明を図示例により説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、光学ハウジングの形状や、その光学ハウジングを覆うカバー部材(第一カバー及び第二カバー)の形状は適宜設定できるものである。また、第一カバーと第二カバーの嵌合部(第一カバーで第二カバーを押さえる部分)の構成も任意である。
【0030】
また、本発明による光走査装置を搭載した画像形成装置はモノクロ画像形成装置だけに限らず複数色による多色機あるいはフルカラー画像形成装置でも良い。また、中間転写体を用いる方式やタンデム型など、多様な構成の画像形成装置とすることができる。もちろん、画像形成装置としてはプリンタに限らず、複写装置やファクシミリであっても構わないし、複数の機能を有する複合機であっても良い。
【符号の説明】
【0031】
5 光走査装置
51 光学ハウジング
52 第一カバー
52a 折り曲げ端部
52b 絞り部
53 第二カバー
54 第一収納部
55 第二収納部
56,58 位置決めボス
60 固定用穴
61 ネジ孔
62 回転偏向器
63 反射鏡
64 防塵ガラス(透過光学素子)
67 弾性体
68 ハーネス
70 スナップフィット(補助固定部)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0032】
【特許文献1】特許第3568399号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、光源からの光束を偏向させて走査する回転偏向器を光学ハウジング内に配置した光走査装置において、
当該光走査装置は、前記光学ハウジングと光学ハウジングを覆うカバー部材により略密閉されており、
前記カバー部材が金属からなる第一カバーと樹脂からなる第二カバーから構成され、
前記第一カバーは前記光学ハウジングにネジ留めされ、
前記第二カバーは前記光学ハウジングにネジ留めされず、前記光学ハウジングにネジ留めされる第一カバーにより前記光学ハウジングに向けて押圧され、
前記第二カバーが前記光学ハウジングにより位置決めされ、前記第一カバーが前記第二カバーにより位置決めされ、
前記第一カバーは、前記回転偏向器を収納する光学ハウジングの第一収納部を覆い、前記第二カバーは前記第一収納部とは別の第二収納部を覆うことを特徴とする光走査装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−54360(P2013−54360A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−219246(P2012−219246)
【出願日】平成24年10月1日(2012.10.1)
【分割の表示】特願2007−231663(P2007−231663)の分割
【原出願日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】