説明

光起電力装置用保護基板およびその製造方法

【課題】従来構造よりも光電変換過効率の高い光起電力装置を構成するのに最適な光起電力装置用保護基板およびその製造方法を提供する。
【解決手段】透明基板101の一方の面に微細凹凸構造102を有し、前記微細凹凸構造102を構成する凸部面の接線と基板面に対する法線とのなす角が60度以下である部分の面積が全微細凹凸構造面積の5%以上であり、さらに凸部の形状が球の一部を切り出した形状に近似され、この凸部の曲率半径Aと切り出した切断面の近似円の半径Bとの関係が下記式で表される光起電力装置用保護基板。
B≧A/2

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光起電力装置用保護基板およびその製造方法に関するもので、特に、外部光の反射率が小さく、採光効率の良好な光起電力装置用保護基板およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光照射を受けると起電力を発生する光起電力装置は、火力発電所、水力発電所、原子力発電所等の既存発電方法の環境問題を解決する代替エネルギー源として注目される太陽光発電システムなどに用いられている。この太陽光発電システムは、一般に太陽電池と称されるが、現在太陽電池の最も大きな課題の一つとして発電効率が低いという問題がある。発電効率を向上するための手法に関しては、従来より種々の手法が検討されているが、主に太陽電池セル自体の光/電気変換効率(光電変換効率)自体を向上させる点に集中している。
【0003】
ところで太陽電池モジュールは、セルを保護するためにセル表面上にガラスあるいは透明樹脂フィルムといった表面保護部材を有するが、この部分に関しては発電効率を向上するための対策が十分になされているとはいえない。通常、この透明保護部材には、何ら処理の施されていない。このような通常保護部材を用いた太陽電池モジュールは、例えばガラス基板ではその表面で3−4%程度の太陽光を反射してしまう。この反射光は発電には全く寄与しないため、太陽電池モジュールの発電効率を低下させる1つの大きな要因になっていた。
【0004】
特開平9−191115号公報(特許文献1)には、光起電力素子の光入射側に、所定の大きさのピッチの凹凸をもつ繊維状無機化合物を含浸させた透明有機高分子樹脂(EVA等)を配置することで、反射した光が他の住宅や地上に届き、そこにいる人々が眩しくて不快に感じるといった問題を防止し、透明有機高分子樹脂の皺を目立たなくし、表面への汚れ付着を防止し、長期屋外使用に耐えうるようにした太陽電池モジュールが開示されている。
【0005】
しかし、この文献の凹凸構造の目的は、上記のように眩しさを防止したり、汚れの付着を防止するためのもので、発電効率を改善するために表面の反射を防止するための検討はなされていない。また、この文献では被覆材表面に凹凸を設けるために、透明有機高分子化合物に繊維状無機化合物を含浸しているが、これは具体的にはガラス繊維不織布、ガラス繊維織布、ガラスフィラーなどが用いられる。しかし、これらの繊維を樹脂に分散含浸させる行程が必要であり、しかも分散の程度も評定の範囲になるよう厳重に管理する必要があり、量産行程では困難が伴う上、製造コストも上昇する。さらに、この繊維は長期使用に関して、樹脂材料との間で十分な密着力を確保するための下地処理も必要であり、これも工程を増やす要因となる。
【0006】
特開2008−260654号公報(特許文献2)には、カバーガラスの表裏両面もしくは表面のみに高屈折率と低屈折率の薄膜層を組み合わせて積層する手法を用いることで、太陽電池セルが有効に光電変換する波長領域の反射を抑制し、光透過量を向上させる手法が開示されている。
【0007】
しかし、この文献の手法では、屈折率の異なる各薄膜層の組み合わせで反射抑制効果を得ているため、表面自体で反射する光を抑制したり、入射角の小さい光に対する改善効果はあまり期待できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平9−191115号公報
【特許文献2】特開2008−260654号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
解決しようとする問題点は、従来構造よりも光電変換過効率の高い光起電力装置を構成するのに最適な光起電力装置用保護基板およびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
従来の太陽電池セルの保護用として用いられているガラスあるいは透明樹脂フィルムは、屈折率が1.5以上あり、大気(空気)との屈折率差が大きいことから表面での屈折率が大きいという問題があった。空気の屈折率を1.00,ガラスの屈折率を1.52と見なした場合の光の入射角とガラス表面の反射率との関係は以下の表に示すようになる。なお、表における入射角は、ガラス平面の法線方向を入射角0度としたときの角度である。
【表1】

表1から明らかなように、ガラスの場合、垂直入射(0度)でも4%以上の光が反射している。また、斜めに入射した光では更に反射が大きくなり、例えば入射角が70度の場合には反射率は30%以上になる。このため、特に基板表面に対して斜めに入射する光の反射光に対する対策が必要である。
【0011】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の構成とした。
(1)透明基板の一方の面に微細凹凸構造を有し、
前記微細凹凸構造を構成する凸部面の接線と基板面に対する法線とのなす角が60度以下である部分の面積が全微細凹凸構造面積の5%以上である光起電力装置用保護基板。
(2)前記微細凹凸構造を構成する凸部の形状が球の一部を切り出した形状に近似され、
この凸部の曲率半径Aと切り出した切断面の近似円の半径Bとの関係が下記式で表される上記(1)の光起電力装置用保護基板。
B≧A/2
(3)前記微細凹凸構造が紫外線硬化性樹脂または熱硬化性樹脂で形成され、これらの樹脂の硬化後の光の屈折率がガラスの屈折率以下である上記(1)または(2)の光起電力装置用保護基板。
(4)樹脂材料を透明基板上に塗布し、その後硬化処理して微細な凹凸構造を形成する光起電力装置用保護基板の製造方法。
(5)前記塗布は、ディスペンサーまたはインクジェットにより行う上記(4)の光起電力装置用保護基板の製造方法。
(6)上記(1)〜(3)のいずれかの光起電力装置用保護基板を製造する上記(4)または(5)の光起電力装置用保護基板の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば従来構造よりも光電変換過効率の高い光起電力装置を構成するのに最適な光起電力装置用保護基板およびその製造方法を提供することができる。
【0013】
また、本発明の光起電力用保護基板の製造方法によれば、簡単な構成で、かつ低コストで連続的に微細凹凸構造を製造することができ、量産行程において光起電力用保護基板を製造する上できわめて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の光起電力用保護基板の構成例を示した模式図である(実施例1)
【図2】本発明の光起電力用保護基板の他の構成例を示した模式図である。
【図3】本発明の光起電力用保護基板の他の構成例を示した模式図である。
【図4】本発明の原理を示す光起電力用保護基板の模式図である。
【図5】本発明の原理を示す光起電力用保護基板の模式図である。
【図6】半球状の凸部と接線との関係を示す模式図である。
【図7】半球状の凸部の曲率半径Aと凸部半径Bとの関係を示す模式図である。
【図8】本発明の光起電力用保護基板の製造工程示した模式図である。
【図9】本発明の光起電力用保護基板の製造工程示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の光起電力用保護基板は、透明基板の一方の面に微細凹凸構造を有し、前記微細凹凸構造を構成する凸部面の接線と基板面に対する法線とのなす角が60度以下である部分の面積が全微細凹凸構造面積の5%以上としたものである。また、好ましい態様では微細凹凸構造を構成する凸部の形状が球の一部を切り出した形状に近似され、この凸部の曲率半径Aと切り出した切断面の近似円の半径Bとの関係が下記式で表される。
B≧A/2
【0016】
まず、本発明の原理について説明する。図4,5は本発明の原理を示す光起電力用保護基板の模式図である。本発明の微細凹凸構造は、構成する凸部の側面ないし上面が傾斜線ないし曲線により構成された斜面ないし曲面からなる。従って、縦断面および横断面が四角い形状のものは除外される。図4において、基板1上には本発明の微細凹凸構造2が形成されている。この微細凹凸構造は、この例では説明を容易にするために三角形に形成されているとする。
【0017】
いま、この基板に垂直方向から光線L1,L2,L3が照射されたとする。光線L1,L2,L3は、微細凹凸構造2の斜面に到達すると一部は透過し、他の一部は反射する。このときの反射率を4%とする。ここで、光線L2に着目すると、透過光l2は入射光L2から反射光L2’を除いた分であり、微細凹凸構造2中に入射するときに、その材料の屈折率nにより角度θnだけ偏向されて入射し、基板1を透過して図示しないセルに達する。
【0018】
一方、各反射光L1’,L2’,L3’は、他の微細構造に入射し、一部は更に反射光L1”,L2”,L3”として外部に拡散し、逸失する。ここで、他の微細構造に入射した反射光L1”の入射光l1’は、前期同様屈折率θnにより偏向されて入射し、さらに他の界面で反射して、入射光l1”となって基板を透過してセルに到達する。なお、前期同様入射光l1’の一部は図示しないが前期界面で外部に拡散する。他の反射光L2’,L3’も同様にして、他の微細構造に入射して、一部がセルにまで到達する。
【0019】
このように、基板表面に微細構造を設けることで、これまで外部に拡散、逸失していた反射光の一部を取り込み、セルにまで導いて、光電変換エネルギーに寄与させることができ、発電効率が向上する。なお、この例では説明を容易にするためθtが45°の三角形の構造について説明したが、この場合光線の入射角が45°になると、上記構造による効率改善効果が得られ難くなる。このため、三角形状の場合には設置環境などを考慮して最適な角度に設計する必要がある。
【0020】
次に、本発明の好ましい態様である半球状の微細凹凸構造の場合について、図5を参照しつつ説明する。図において、基板1上には本発明の微細凹凸構造2が形成されている。この微細凹凸構造は、この例では各凸部が接するように近接して半球状に形成されている。
【0021】
いま、基板1に垂直な方向から光線L1,L2,L3が照射されたとする。光線L1,L2,L3は、微細凹凸構造2の曲面に到達すると、上記同様一部は透過し、他の一部は反射する。ここで、この微細凹凸構造2の接線のうち基板面に対する法線とのなす角θtが60度になる接線をtとし、凸部曲線との交点をPとする。
【0022】
いま、点Pより接線と法線とのなす角が小さい領域に入射する光線L1に着目すると、透過光l1は入射光L1から反射光L1’を除いた分であり、微細凹凸構造2中に入射するときに、その材料の屈折率nにより角度θnだけ偏向されて入射し、基板1を透過して図示しないセルに達する。一方、反射光L1’は、隣接する微細凹凸構造に再び入射し、前記同様に反射光を除いて角度θnだけ偏向され、基板1を透過してセルに達する。なお、球面に入射した透過光l1,l2,l3は、特定の焦点に収束するよう偏向される。
【0023】
次に、点Pより接線と法線とのなす角が大きい領域に入射する光線L2に着目すると、入射光L2から反射光L2’を除いた透過光l2は、微細凹凸構造2中に入射するときに、その材料の屈折率nにより角度θnだけ偏向されて入射し、基板1を透過して図示しないセルに達する。一方、反射光L2’は上向きの角度で反射するため隣接する微細凹凸構造に再入射することなく逸失する。なお、この例では基板面と垂直方向からの光について検討したが、基板面に斜めに入射する光では、点Pより接線と法線とのなす角が大きい領域でも凹凸構造に再入射する場合もある。しかし、点Pより接線と法線とのなす角が小さい領域に比べて、大きい領域では反射光が再入射することなく逸失する確率が高くなる。
【0024】
このように、曲面の微細凹凸構造を形成することでも、反射光の一部を再入射させ、有効に活用することができる。また、三角形の凹凸に比べて、種々の入射光と平行になるまたは垂直になる面が極端に少なく、入射光による効率の変化が少ない。微細凹凸構造の凸部を構成する面は、その接線と基板面に対する法線とのなす角が60度以下になる部分を一定の割合で有することが好ましい。具体的には、前記60度以下になる部分の面積が全微細凹凸構造面積の5%以上、さらには20%以上、特に30%以上であるとよい。なお、5%以上としたのは、両端に全面積の2.5%の傾斜部を有する台形状の凹凸構造を考えたとき、2%程度の入射光量の増加が望め、0.01%利得向上効果が得られるからである。また、微細凹凸構造の凸部の形状が半球形に近似される場合には、前記面積の上限値は50%程度である。
【0025】
微細凹凸構造は、1つまたは2つ以上の任意の数に形成することができ、凹凸(凸部)が規則正しく配列していてもよいし、ランダムに配置されていてもよい。また、凹凸が規則正しく配置される場合には、グリッド配置でも、ハニカム配置でもよい。個々の凸部(ドット)のサイズは特に限定されるものではなく、樹脂の粘度、チキソ性、形成方法、形成時の条件などの要因により公的な大きさに決定すればよい。具体的には、球形の一部に近似したとき、半径10ミクロンから数100ミクロンのサイズの間に調整することが好ましい。また、ドット間の距離は、特に限定されるものではないが、0〜ドット直径の1/2程度が好ましく、特に距離が0,つまりドット間に隙間がないことが望ましい。
【0026】
前記凸部を構成する面の接線とは、例えば図6に示すように、半球状の凸部を考えたとき、この半球の断面形状2’は半円形になる。そして、この半円に対する接線P1,P2が、凸部を構成する面の接線であり、凸部断面に対する接線である。そして、基板面1’に対する法線P0と前記接線とのなす角が、上記の角度である。この角度は、法線P0と前記接線とのなす角のうち鋭角側の角度である。また、これらは前記凸部断面と同一断面ないで判断する。
【0027】
また、微細凹凸構造を構成する凸部の形状は球の一部を切り出した形状に近似される。通常、形成された凸部は真球に近いものではなく、変形した球状であることが多いが、このような形状を直接評価することは困難である。このため、凸部を評価するときには球状の一部に近似して考える。近似する手法としては、例えば画像解析などにより断面が等価な面積の円形の一部に置換したり、外形が最も近似した円形の一部に置換すればよい。
【0028】
球の一部に近似した凸部の曲率半径Aと切り出した切断面の近似円の半径Bとの関係は、下記式で表される。
B≧A/2
凸部の曲率半径Aとは、上述のように球の一部に近似した凸部断面形状の曲率半径である。また、切り出した切断面の近似円とは、凸部を球の一部を切り出した形状に近似したときの切り出した部分の形状であり、この部分もまた、円に近似されることから、近似円と定義する。そして、近似円の半径Bは、曲率半径Aの1/2以上、つまり上記式の関係を満たすことが好ましい。
【0029】
例えば図7に示すように、凸部が半球形のとき、その断面は半円形になる。そして、この半円の曲率半径と、凸部の基部である切断面の近似円の半径B1とは等しく、B=Aとなる。しかし、同じ曲率半径を有する球形でも、切り出される部分小さくなるにつれ、切断面の近似円の半径はB2,B3,B4と小さくなる。切断面の近似円の半径B4は、丁度曲率半径Aの1/2である。これより小さい切断面の近似円の半径B5になると、切り出された球形はかなり小さくなり、微細凹凸構造としての効果があまり期待できなくなる。そこで、上記式の関係に示すように、切断面の近似円の半径B5を曲率半径Aの1/2以上と規定した。また、好ましくはB≧2A/3であり、より好ましくはB≧3A/4であり、特にB≧4A/5である。凸部形状が半球形に近いほど効率向上効果が得られやすくなる.一方、Bの大きさがある程度Aに近くなると、それ以上近似させてもあまり向上効果が得られなくなる。
【0030】
次に、本発明の光起電力用保護基板の基本構成について、図を参照して説明する。図1は本発明の光起電力用保護基板の構成例を示した模式図である。図において、光起電力用保護基板は、透明基板101と、透明基板上に形成された微細凹凸構造102を有する。また、図2は本発明の光起電力用保護基板の他の構成例を示した模式図である。図において、光起電力用保護基板は、透明基板201と、透明基板上に微細凹凸構造が形成された微細凹凸構造層202を有する。図1例のように、透明樹脂層の上部に直接微細凹凸機構102を形成してもよいし、微細凹凸構造が形成された微細凹凸構造層202を配置してもよい。
【0031】
本発明の透明基板としては、所定の強度と光透過率を有し、後述する微細凹凸構造を形成可能で、太陽電池セルなどを保護できる機能を有するものであれば、ガラス材でも、樹脂材料でも、その他の材料でも特に限定されるものではない。透明基板は波長400〜1100nmの全波長に対する光透過率が、積分値(加重平均)で80%以上であることが好ましい。あるいは、主に発電に寄与する波長帯域について前記光透過率を有するものでもよい。
【0032】
ガラス材としては、特に規制されるものではなく、一般に用いられているソーダ石灰シリカガラスの中から要求を満たす特性のものを選択して用いればよい。このようなガラスは市販品においても、様々な用途向けに種々の特性のガラスが用意されている。また、場合によってはシリカガラス、ホウ珪酸ガラス等他の組成系のガラスを用いることもできる。
【0033】
樹脂材料としては、例えばアクリル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート等が挙げられる。さらに、後述する、微細凹凸構造形成用樹脂と同一の材料でもよい。
【0034】
本発明の微細凹凸構造は、透明な樹脂材料で形成され、その光透過率は上記基板と同様である。樹脂材料の光屈折率は、ガラスの屈折率以下であることが好ましい。具体的には屈折率nが、波長589.3nmのD線で、1.50以下、より好ましくは1.45以下、さらには1.42以下、特に1.40以下が好ましい。屈折率が低くなると空気との界面での反射が低下して、入射光が増加し、光電変換効率が向上する。
【0035】
樹脂材料としては特に限定されるものではなく、所定の強度と光透過率を有し、微細凹凸構造を形成可能で、太陽電池セルなどを保護できる機能を有するものであれば何れの樹脂を用いてもよい。例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、PC(ポリカーボネート)、TAC(トリアセチルセルロース)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PVA(ポリビニルアルコール)、PVB(ポリビニルブチラール)、PEI(ポリエーテルイミド)、ポリエステル、EVA(エチレン−ビニルアセテートコポリマー)、PCV(ポリ塩化ビニル)、PI(ポリイミド)、PA(ポリアミド)、PU(ポリウレタン)、PE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、PS(ポリスチレン)、PAN(ポリアクリロニトリル)、ブチラール樹脂、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンコポリマー)、ETFE(エチレン−テトラフルオロエチレンコポリマー)、PVF(ポリフッ化ビニル)などのフッ素樹脂、シリコーン樹脂、または、これらに熱硬化性あるいは紫外線などの活性エネルギー線硬化性を付与した樹脂組成物等が挙げられる。
【0036】
また、製造、加工の容易性などを考慮すると紫外線等の活性エネルギー線硬化性樹脂または熱硬化性樹脂が好ましい。活性エネルギー線硬化型樹脂としては、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、オキセタン樹脂およびポリビニルエーテル樹脂等が挙げられ、これらの1種または2種以上を用いることができ、さらにこれらをフッ素化した樹脂が好ましい。
【0037】
熱硬化型樹脂としては、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、ウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、およびシリコーン樹脂等が挙げられ、これらの1種または2種以上を用いることができ、さらにこれらをフッ素化したものが好ましい。
【0038】
さらに、前記活性エネルギー線重合型のアクリル樹脂として、フッ素基を含有するものが好ましい。アクリル樹脂にフッ素基を含有させることにより、屈折率を容易に低くすることができる。また、フッ素化することで撥水性を高めることができ、汚れ防止機能が高まり、経時的な光電変換効率の劣化を防止することができる。
【0039】
アクリル樹脂としては、アクリル酸またはメタクリル酸重合体または共重合体が好ましい。このような重合体としては、ポリメチルメタクリレート、ポリ−n−ブチルアクリレート、ポリ−t−ブチル−アクリレート、ポリ−t−ブチル−メタクリレート、ポリステアリルメタクリレート、ポリ−トリフルオロエチルメタクリレート、ポリシクロヘキシルメタクリレート、ポリフェニルメタクリレート、ポリグリシジルメタクリレートおよびポリアリルメタクリレート等が挙げられる。
【0040】
また、好ましい単量体としては、例えばメチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルメタクリレート、エチルアクリレート、プロピルメタクリレート、プロピルアクリレート、ブチルメタクリレート、ブチルアクリレート、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート、メトキシエチルメタクリレート、メトキシエチルアクリレート、プロパノンメタクリレート、ブタノンメタクリレート、アミルアクリレート等が挙げられる。
【0041】
好ましいフッ素化単量体としては、例えばトリフルオロエチルアクリレート、トリフルオロエチルメタクリレート、テトラフルオロプロピルアクリレート、テトラフルオロプロピルメタクリレート、ヘキサフルオロイソプロピルアクリレート、ヘキサフルオロイソプロピルメタクリレート、ヘキサフルオロブチルメタクリレート、ヘプタフルオロブチルアクリレート、ペンタフルオロプロピルメタクリレート、ペンタフルオロプロピルアクリレート等である。
【0042】
好ましいフッ素化アクリル樹脂としては、例えばポリ(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロピルアクリレート)n=1.375,Tg=−23、ポリ(2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロブチルアクリレート)n=1.377,Tg=−30、ポリ(2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロブチルメタクリレート)n=1.383,Tg=6.5、ポリ(2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピルアクリレート)n=1.389,Tg=−26、ポリ(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロピルメタクリレート)n=1.39,Tg=56、ポリ(2,2,3,4,4,4−ヘキサフルオロブチルアクリレート)n=1.394,Tg=−22、ポリ(2,2,3,4,4,4−ヘキサフルオロブチルメタクリレート)、ポリ(2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピルメタクリレート)n=1.395,Tg=70、ポリ(2,2,2−トリフルオロエチルアクリレート)n=1.411,Tg=−10、ポリ(2,2,3,3−テトラフルオロプロピルアクリレート)n=1.415,Tg=−22、ポリ(2,2,3,3−テトラフルオロプロピルメタクリレート)n=1.417,Tg=68、ポリ(2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート)n=1.418,Tg=69等が挙げられる。これらの樹脂は、屈折率nが1.42以下、特に1.40以下であり、低屈折による表面反射率の低減効果が期待できる。
【0043】
重合体の数平均分子量は通常5000〜500000g/モル程度であり、重合体の重量平均分子量は10000〜1000000程度である。
【0044】
上記樹脂材料を得るには、例えば例示された単量体などを公知の方法で重合硬化させて、重合体とすることで得ることができる。具体的には、予め単量体組成物に加熱によりラジカルを発生する熱重合開始剤を添加しておき、加熱して重合させる方法(以下「熱重合」という場合がある)、予め重合性組成物に紫外線等の活性エネルギー線によりラジカルを発生する光重合開始剤を添加しておき、活性エネルギー線を照射して重合させる方法(以下「光重合」という場合がある)等、ラジカル重合開始剤を予め添加しておき、重合させる方法が挙げられ、本発明においては光重合がより好ましい。
【0045】
熱重合開始剤としては、例えば過酸化水素、過酸化ベンゾイル(ベンゾイルパーオキシド)、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、t−ブチルパーオキシ(2−エチルヘキサノエート)、2,2’−アゾビスイソ−ブチロニトリル、4,4’アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル、4,4’−アゾビス(4−シアノ−吉草酸)および2,2’−アゾビス(2−メチルプロパン)などのアゾ化合物等が挙げられる。共に有機過酸化物であるTrigonox 21及びPerkadox 16のような、その他の市販製品も開始剤として用いることができる。
【0046】
これらの重合開始剤は単独で用いても、2種以上を併用してもよい。熱重合開始剤の添加量は、単量体の総計に対して、通常0.01〜20質量%程度である。
【0047】
また光重合開始剤としては、ベンゾフェノン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,6−ジメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホシフィンオキシド、2−ヒロドキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、2−メチル−2−モルホリノ(4−チオメチルフェニル)プロパン−1−オン等が挙げられる。等を用いることができ、特にラジカル系光重合開始剤であれば限定されるものではないが、2−ヒロドキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン (商品名:イルガキュア127)等が好ましい。また、配合した後の貯蔵安定性のよいことが必要である。
【0048】
これらの重合開始剤は単独で用いても、2種以上を併用してもよい。光重合開始剤の添加量は、単量体の総計に対して、通常0.01〜10質量%程度である。光重合開始剤の添加量が多すぎると、重合が急激に進行し、光学的特性、強度などの面で悪影響が生じる恐れがある。一方、少なすぎると原料組成物が充分に重合しないおそれがある。
【0049】
照射する活性エネルギー線の量は、光重合開始剤がラジカルを発生させる範囲であれば任意であるが、極端に少ない場合は重合が不完全となるため硬化物の耐熱性、機械特性が十分に発現されず、逆に極端に過剰な場合は硬化物の黄変等の光による劣化を生じるので、モノマーの組成および光重合開始剤の種類、量に合わせて、例えば200〜400nmの紫外線を好ましくは0.1〜200J/cmの範囲で照射する。活性エネルギー線を複数回に分割して照射すると、より好ましい。すなわち1回目に全照射量の1/20〜1/3程度を照射し、2回目以降に必要残量を照射すると、複屈折のより小さな硬化物が得られる。照射時間は、樹脂量や硬化の程度に応じて適宜調整すればよい。通常1秒〜10分程度の間で調整される。
【0050】
使用する光源としては、LED(発光ダイオード)、キセノンランプ、カーボンアーク、殺菌灯、紫外線用蛍光灯、複写用高圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、無電極ランプ、メタルハライドランプ、あるいは走査型、カーテン型電子線加速路による電子線等を使用することができる。また硬化を十分に行うために、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気中で紫外線等の活性エネルギー線を照射してもよい。
【0051】
重合をすみやかに完了させる目的で、光重合と熱重合を同時に行ってもよい。この場合には、活性エネルギー線照射と同時に重合性組成物を30〜300℃の範囲で加熱して硬化を行う。この場合、原料組成物には、重合を完結するために熱重合開始剤を添加してもよいが、大量に添加すると上記のような悪影響を生じる恐れがあるので、この場合の熱重合開始剤は、原料樹脂の総計に対して0.1〜2質量%程度の範囲で使用するとよい。
【0052】
原料組成物は、溶媒に溶解して用いることができる。溶媒としては特に限定させるものではなく必要に応じて最適なものを選択して用いればよい。具体的にはアルコール及び不飽和アルコール等のアルコール系、あるいは有機系溶媒を用いてもよい。
【0053】
原料組成物中に補助成分を含んでもよい。補助成分としては、ラジカル重合可能な他の単量体、酸化防止剤、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、染顔料、充填剤、シランカップリング剤、重合禁止剤、光安定剤等の添加剤が挙げられる。その添加量は任意であり、樹脂を構成する主成分に悪影響を与えない範囲で、必要に応じて添加すればよい。
【0054】
また、凸部の形状を形成しやすくするために、チキソ付与剤を添加することも有効な方法である。チキソ付与剤は表面積の大きな無機系微粒子であればよく、例えばシリカアルミナ(アエロジルMOX170)、アルミナ(アエロオキサイドAlu C)またはチタニア(アエロオキサイドTiO2 P25)またはジルコニア(住友大阪セメント社のOZC−8YC または東ソーのTZ−8Y)などを用いることができる。これらは1種または2種以上を用いることができ、その添加量は任意であるが、通常原料樹脂総量に対して0.1〜10質量%の範囲で添加される。
【0055】
本発明では、前記基板と微細凹凸層との間に、下地層を形成してもよい。下地層を形成することで、基板の濡れ性を改善し、塗布液との接触角を高めて、塗布液をより半球に近い状態にすることができる。また、微細凹凸層との接着性を改善したり、凹凸構造がない部分での屈折率を改善する効果も期待できる。この場合、図3に示すように、光起電力用保護基板は、透明基板301と、透明基板上に形成された下地層303を有し、さらにその上に微細凹凸構造302が形成される。
【0056】
下地層としては、特に限定されるものではないが、接触角が高い材料が好ましく、具体的には水に対する接触角で、一般的なガラスの接触角(30°)以上必要であり、好ましくは60°以上、より好ましくは70°以上、特に80°以上ものがよい。このような材料としては、例えば、上記微細凹凸構造に用いられる樹脂材料、特にフッ素系樹脂、さらにはフッ素系アクリル樹脂が挙げられる。この材料は、微細凹凸構造との接着性の点でも好ましく、特に微細凹凸構造と同一、もしくは同種の材料を用いることが推奨される。
【0057】
下地層の膜厚としては特に限定されるのものではなく、なるべく薄い方がよいが、形成方法や使用する材料の特性、要求される光学特性、耐久性などにより最適な膜厚に調整すればよい。一般に、濡れ性の改善や、接着性の改善を目的とするのであれば、数100nm〜数100ミクロン程度でよく、その上限も数ミリメートル程度が望ましい。
【0058】
本発明の微細凹凸構造を形成するには、透明基板の表面に上記硬化前の透明樹脂を塗布法、例えばスクリーン印刷、ディスペンサー、またはインクジェット等によりドット状に塗布し、その後、活性エネルギー線を照射するか、熱を加えるかして、硬化処理を行い、その形状を固定し、保持して微細凹凸構造を形成すればよい。
【0059】
さらに具体的に図に沿って説明する。図8,9は本発明の保護基板の製造行程を示した模式図である。まず図8に示すように、透明基板1の表面に、ディスペンス、またはインクジェット法によりノズルないしヘッド4から樹脂液2をドット状に滴下もしくは噴射して塗布する。このとき、塗布された樹脂液2の形状は、液体が滴下してできる形状であり、好ましくは半球ないし球の一部を切り取ったような形状になる。このとき、塗布された直後の樹脂液に対し、紫外線照射装置5から紫外線6を照射して直ちに硬化させる。
【0060】
また、透明基板1は、図示しない搬送装置により矢印10方向に搬送される、そして、図9に示すように塗布速度と搬送速度を調整することで、連続的に所定の間隔に樹脂液2を塗布し、凸部2を形成することができる。
【0061】
個々の凸部(ドット)2のサイズは、樹脂の粘度、チキソ性、ノズル径、温度、吐出圧力などの要因により決定されるが、半径10ミクロンから100ミクロンのサイズの間で自由に調整することが可能である。
【0062】
上記方法では塗布しながら樹脂を硬化させているが、場合によっては一定領域を塗布した後に硬化させてもよい。また、硬化の方法は、上記のように紫外線を照射する方法の他、熱硬化樹脂であれば熱を加えてもよい。連続的な形成作業や、塗布行程の高速化にはUV照射による硬化が可能な紫外線硬化型樹脂が適している。熱硬化樹脂の場合、予め加熱して粘度の低下した状態の樹脂を基板表面に塗布し、更に加熱して硬化させて、微細凹凸構造を形成してもよい。また、その他の樹脂でも、例えば溶媒に溶解した状態で塗布し、その後溶媒を気化させることで形成することができる。
【0063】
また、微細凹凸構造を形成する前に、上記のように予め基板上に下地層を形成してもよい。下地層の形成方法としては特に限定されるものではなく、従来の塗布法の中から好適なものを選択して用いればよい。具体的にはスクリーン印刷などの印刷法、グラビアコート法、リバースコート法、バーコート法、スプレーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ダイコート法等を用いることができ、条件によってはカーテンコート(フローコート)、スピンコート法等を用いてもよい。
【0064】
以上のように、本発明の方法によれば、微細凹凸構造を連続的に製造することができ、量産化がきわめて容易になる。また製造コストも少なくて済むというメリットがある。
【実施例1】
【0065】
まず、ポリエンチレングリコールジメタクリレート(商品名「NKエステル4G」、新中村化学製)82重量部にメチルメタクリレート(クラレ製)15重量部、チタノセン型光重合開始剤(商品名「イルガキュア784」、チバガイギー製)1重量部と、チキソ性を付与するためアエロジル(商品名「アエロジル90」、エボニック製)2重量部を混合、攪拌し、紫外線硬化樹脂原料組成物を得た。
【0066】
次に、300ミリ角の白板ガラスを用意し、ディスペンサーを使用して全面に300ミクロンピッチで、2ナノリットルの液量の樹脂を塗布した。ディスペンスニードルには、武蔵エンジニアリング製の高精細ノズルFN−0.02Nを使用した。吐出された樹脂の形状は、半径約100ミクロンの半球状のものであった。また、ノズル横に紫外線光源としてLED光源を配置し、吐出された直後の樹脂に紫外線を硬化に必要な時間照射することで、ノズルから吐出され、形成された樹脂の半球状の形状が変形しないうちに硬化させることができた。このときの紫外線は、波長365nm、4600mW/cm(4.6J/cm)であった。この、光学半球ドットは、ピッチ250ミクロンでガラス板面上に形成され、微細凹凸構造を有する保護ガラスが得られた。
【0067】
次に、得られた構造物の特性を評価した。硬化した透明樹脂の屈折率は1.49であった。また、樹脂ドット凸部の形状は略半球状であり、その硬度は鉛筆硬度で5Hの硬さがあった。微細凹凸形状が形成された白板ガラスに対して、45度の角度から光を入射してその透過光量を、ガラスの法線方向に設置された分光光度計を用いて測定したところ、テクスチャーが形成されていない白板ガラスを100としたとき、103の透過光量が得られた。また、微細凹凸形状の基板法線とのなす角が60°以下である部分の面積の割合を求めたところ、13.4%程度になることが解った。この凸部の曲率半径A=100ミクロン、切断円の半径B=50ミクロンでB=A/2であった。
【実施例2】
【0068】
フッ素化アクリルモノマーとして、2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレートを90質量%、光重合開始剤として2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(チバガイギー社のイルガキュア651)を2質量%、チキソ付与剤としてシリカ(エヴォニック社のアエロジルOX50)を8質量%配合し、原料組成物を得た。
【0069】
得られた原料組成物を実施例1と同様にして基板上に塗布した。また、実施例1同様に紫外線照射光源としてLEDを用い、吐出された樹脂に照射し、重合硬化させてポリ(2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート)の凸部を得た。得られた樹脂の特性を評価したところ、屈折率n=1.418、ガラス転移温度Tg=69℃であった。また、実施例1同様に透過光量を評価したところ、104.5の透過光量が得られた。また、微細凹凸形状の基板法線とのなす角が60°以下である部分の面積の割合を求めたところ、13.4%程度になることが解った。この凸部の曲率半径A=100ミクロン、切断円の半径B=50ミクロンでB=A/2であった。
【実施例3】
【0070】
フッ素化アクリレートモノマーとして、実施例2の2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレートに代えて2,2,2−トリフルオロエチルアクリレートを用い、その他は実施例2と同様にしてポリ2,2,2−トリフルオロエチルアクリレート樹脂の微細凹凸構造を得た。得られた構造物の特性を評価したところ、屈折率n=1.411、ガラス転移温度Tg=−10であった。また、実施例1同様に透過光量を評価したところ、104.8の透過光量が得られた。また、微細凹凸形状の基板法線とのなす角が60°以下である部分の面積の割合を求めたところ、13.4%程度になることが解った。この凸部の曲率半径A=100ミクロン、切断円の半径B=50ミクロンでB=A/2であった。
【実施例4】
【0071】
2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート90質量%、熱重合開始材としてジ(4−ターシャルブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート(日油社のパーロイルTCP)2質量%とターシャルブチルパーオキシ−2エチルヘキサノエート(日油社のパーオキシO)1質量%、チキソ付与財としてシリカ(エヴォニック社のアエロジルOX50を7質量%配合し、原料組成物を得た。
【0072】
得られた原料組成物を実施例1と同様にして基板上に塗布した。その際に、基板がガラスの場合には事前にガラスを150℃に加熱した状態で原料組成物を塗布している。基板上に吐出された樹脂は基板の熱により硬化し凸部を形成した。得られた樹脂の特性を評価したところ、屈折率n=1.418、ガラス転移温度Tg=69℃であった。また実施例1同様に透過光量を評価したところ104.5の透過光量が得られた。また、微細凹凸形状の基板法線とのなす角が60°以下である部分の面積の割合を求めたところ、13.4%程度になることが解った。この凸部の曲率半径A=100ミクロン、切断円の半径B=50ミクロンでB=A/2であった。
【実施例5】
【0073】
実施例1,2において凹凸構造と同様の樹脂を用いて下地層を形成した。下地層の形成にはノズルコーティング法を用い膜厚は1ミクロンであった。その他は実施例1,2と同様にして微細凹凸構造を形成して評価したところ、実施例1,2より更に半球状に近い形状となり、透過光量も増加することが解った。また、下地層用の樹脂を適当な溶液にて希釈し、スピンコートなど塗布法を選択することで、数百nm程度の膜厚が実現できた。この膜厚においても下地層としての機能を十分に果たすことが解った。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明は、太陽光あるいは屋内光を半導体等の光電変換機能により、電気エネルギーに変換する太陽電池等の光起電力装置用保護基板に好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0075】
1 透明基板
2 透明樹脂
4 ノズルまたはヘッド
5 紫外線光源
101 透明基板
102 微細凹凸構造
201 透明基板
202 微細凹凸構造層
301 透明基板
302 微細凹凸構造層
303 下地層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基板の一方の面に微細凹凸構造を有し、
前記微細凹凸構造を構成する凸部面の接線と基板面に対する法線とのなす角が60度以下である部分の面積が全微細凹凸構造面積の5%以上である光起電力装置用保護基板。
【請求項2】
前記微細凹凸構造を構成する凸部の形状が球の一部を切り出した形状に近似され、
この凸部の曲率半径Aと切り出した切断面の近似円の半径Bとの関係が下記式で表される請求項1の光起電力装置用保護基板。
B≧A/2
【請求項3】
前記微細凹凸構造が紫外線硬化性樹脂または熱硬化性樹脂で形成され、これらの樹脂の硬化後の光の屈折率がガラスの屈折率以下である請求項1または2の光起電力装置用保護基板。
【請求項4】
樹脂材料を透明基板上に塗布し、その後硬化処理して微細な凹凸構造を形成する光起電力装置用保護基板の製造方法。
【請求項5】
前記塗布は、ディスペンサーまたはインクジェットにより行う請求項4の光起電力装置用保護基板の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜3のいずれかの光起電力装置用保護基板を製造する請求項4または5の光起電力装置用保護基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−23515(P2011−23515A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−166768(P2009−166768)
【出願日】平成21年7月15日(2009.7.15)
【出願人】(000157887)KISCO株式会社 (30)
【出願人】(591180358)東ソ−・エフテック株式会社 (91)
【Fターム(参考)】